分光装置
【課題】分光装置における光学部材の位置調整を容易化する。
【解決手段】本発明に係る分光装置1は、互いに異なる波長帯域特性を有する複数のダイクロイックミラーDMnが配列された分光部5と、ダイクロイックミラーDMnの各々に対向して設けられた複数のバンドパスフィルタBPFkを有する波長選択部25と、光電面7、複数のバンドパスフィルタBPFkの各々に対応して設けられた複数のチャンネルCm及び複数のアノード14を有する光電子増倍管2と、波長選択部25を筐体内で保持する保持部50とを備え、保持部50は、バンドパスフィルタBPFkが一方向に配列された本体部51と、本体部51から互いに対向するように突出する一対の壁部52,52と、を含み、ダイクロイックミラーDMnは、バンドパスフィルタBPFkの配列方向に沿って一対の壁部52,52の間に配列されていることを特徴とする。
【解決手段】本発明に係る分光装置1は、互いに異なる波長帯域特性を有する複数のダイクロイックミラーDMnが配列された分光部5と、ダイクロイックミラーDMnの各々に対向して設けられた複数のバンドパスフィルタBPFkを有する波長選択部25と、光電面7、複数のバンドパスフィルタBPFkの各々に対応して設けられた複数のチャンネルCm及び複数のアノード14を有する光電子増倍管2と、波長選択部25を筐体内で保持する保持部50とを備え、保持部50は、バンドパスフィルタBPFkが一方向に配列された本体部51と、本体部51から互いに対向するように突出する一対の壁部52,52と、を含み、ダイクロイックミラーDMnは、バンドパスフィルタBPFkの配列方向に沿って一対の壁部52,52の間に配列されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を互いに異なる波長帯域の光に分光して各波長帯域の光を検出する分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入射光を互いに異なる波長帯域の光に分光して各波長帯域の光を検出する分光装置がある。例えば、下記の特許文献1には、波長を選別するための複数のダイクロイックミラーと、ダイクロイックミラーの各々に対応して設けられたバンドパスフィルターと、光を検出するための光電子増倍管とを備える分光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−50089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された分光装置にあっては、複数のダイクロイックミラー及び複数のバンドパスフィルターといった、複数の光学部材を個々に配置する必要がある。このため、複数の光学部材を精度良く配置するには、各光学部材の位置調整の作業が煩雑になるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、各光学部材の位置調整を容易化して組み立て可能な分光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る分光装置は、入射光を互いに異なる波長帯域の光に分光して各波長帯域の光を検出する分光装置であって、互いに異なる波長帯域特性を有する複数の分光素子が配列された分光部と、分光素子の各々に対向して設けられた複数の波長選択素子を有する波長選択部と、複数の波長選択素子からの透過光を光電変換する光電面と複数の波長選択素子の各々に対応して設けられた複数の電子増倍経路と電子増倍経路の各々に対応して設けられた複数のアノードとを有する光電子増倍管を備えた光検出部と、波長選択部を筐体内で保持する保持部と、を備え、保持部は、波長選択素子が一方向に配列された本体部と、本体部から互いに対向するように突出する一対の壁部と、を含み、分光素子は、波長選択素子の配列方向に沿って一対の壁部の間に配列されていることを特徴とする。
【0007】
この分光装置においては、複数の波長選択素子が本体部に一方向に配列され、本体部から互いに対向するように突出する一対の壁部の間に、波長選択素子の配列方向に沿って分光素子が配列されている。これにより、複数の波長選択素子が設けられた本体部の面において、波長選択素子の配列方向と直交する方向における分光素子の位置を波長選択部の位置に合わせることができる。このため、分光素子及び波長選択部の位置をより確実に決定することができ、分光素子及び波長選択部の位置調整を容易化して組み立てることが可能となる。
【0008】
また、分光部は、透光性を有する材料からなるロッド部材を更に有し、分光素子は、ロッド部材の長手方向に沿って配列されていることが好ましい。この場合、ロッド部材に複数の分光素子を設けることで、分光部を一体化することができ、各分光素子を個々に配置及び位置調整することなく、一括して配置及び位置調整を行うことができる。
【0009】
また、壁部は、ロッド部材を超える高さを有していることが好ましい。この場合、壁部によって、より確実にロッド部材を位置決めすることができる。
【0010】
また、ロッド部材と保持部とが非接触となっていることが好ましい。この場合、壁部間におけるロッド部材の位置調整が行い易く、ロッド部材を所望の位置に調整することができる。
【0011】
また、ロッド部材の両端には、それぞれ弾性部材が嵌合されており、ロッド部材は、弾性部材を介して一対の壁部の間に収容されていることが好ましい。この場合、ロッド部材を保持部と離間させつつ、確実に位置決めすることができる。
【0012】
また、ロッド部材の一端に嵌合された状態で筐体に固定される固定用部材と、ロッド部材の他端に設けられ、ロッド部材を他端側から一端側に押圧した状態で筐体に固定される押圧用部材と、を更に備えることが好ましい。この場合、固定用部材によってロッド部材の一端を固定しつつ、押圧用部材によってロッド部材を長手方向に位置調整しながら固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分光装置における各光学部材の位置調整を容易化して、分光装置を組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る分光装置を示す一部切欠斜視図である。
【図2】図1の分光装置のII−II線断面図である。
【図3】図1の分光装置の光電子増倍管の拡大断面図である。
【図4】図1の分光装置の分光部周辺部分を示す拡大断面図である。
【図5】ダイクロイックミラーの波長帯域特性を示す図である。
【図6】バンドパスフィルタの通過帯域特性を示す図である。
【図7】図1の分光装置の分光部の拡大斜視図である。
【図8】図1の分光装置の組立手順を示す図である。
【図9】(a)は図1の分光装置の保持部の拡大斜視図、(b)はフィルタ嵌込孔周辺部分の拡大斜視図である。
【図10】図1の分光装置の分光部周辺部分の一部切欠斜視図である。
【図11】図1の分光装置の出力特性を示す図である。
【図12】図1の分光装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る分光装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る分光装置を示す図である。図2は、図1の分光装置のII−II線断面図である。図1及び図2に示すように、分光装置1は、透過型の分光装置であって、リニアマルチアノード型の光電子増倍管(光検出部)2と、入射光を分光する分光部5と、波長選択部25と、を備えている。また、分光装置1は、光電子増倍管2、分光部5及び波長選択部25を収容する筐体10を備えている。
【0017】
光電子増倍管2は、マルチアノード型であって、後述する分光部5からの各反射光をそれぞれ電気信号に変換して出力する装置である。図3は、光電子増倍管2の拡大断面図である。この光電子増倍管2は四角柱状の金属製側管3を有しており、この側管3の一端側の開口部には、ガラス等の光透過性材料により形成された矩形状の光入射板4が融着等により気密に固定されている。この光入射板4は、図3において紙面に垂直な方向(以下、「幅方向」という)に延在する複数の光遮蔽板6によって略等間隔に仕切られ、これにより、光入射板4には、幅方向に延在する光入射部4aが複数形成されることになる。また、光入射板4の内側表面には光電面7が形成されている。
【0018】
一方、側管3の他端側の開口部には、ガラス等の絶縁性材料により形成された矩形状のステム8が取り付けられている。より具体的には、ステム8には、その側面を取り囲む金属製の包囲部材9が融着等により気密に固定されており、この包囲部材9の一端に形成されたフランジ9aと、側管3の他端に形成されたフランジ部3aとが抵抗溶接等により気密に接合されている。
【0019】
このように側管3、光入射板4及びステム8等により形成された真空空間S内には、複数層のダイノード11を有するメタルチャンネルダイノード12が設置されている。また、真空空間S内においてメタルチャンネルダイノード12と光電面7との間には、平板状の収束電極13が設置されている。この収束電極13には、幅方向に延在する複数のスリット13aが形成されており、各スリット13aは、光電面7の垂線方向において光入射板4の各光入射部4aと対向している。
【0020】
更に、真空空間S内においてメタルチャンネルダイノード12とステム8との間には、幅方向に延在する複数のマルチアノード14がリニアに配列され、各マルチアノード14は、光電面7の垂線方向において光入射板4の各光入射部4aと対向している。なお、ステム8の内側表面には、隣り合うマルチアノード14,14間を隔てる隔壁16が立設され、クロストークの発生が抑制されている。また、各マルチアノード14には、出力信号を取り出すためのステムピン17の一端が接続されており、各ステムピン17の他端は、ステム8を気密に貫通して外部に突出している。
【0021】
以上のように構成された光電子増倍管2においては、光電面7の垂線方向において対向する光入射部4aとマルチアノード14との間に位置する収束電極13のスリット13a及びメタルチャンネルダイノード12の電子通過孔によって複数のチャンネル(電子増倍経路)Cm(ここでは、m=1〜8)が形成される。従って、光電子増倍管2は、リニアに配列された複数のチャンネルCmを有することになる。
【0022】
ここで、任意の1つのチャンネルCmに着目して電子増倍作用について説明する。光入射部4aを透過した光が光電面7に入射すると、光電面7にて光電変換され、真空空間S中に光電子が放出される。放出された光電子は収束電極13のスリット13aを通って最前段のダイノード11上に収束される。これにより、光電子は、光入射部4aとマルチアノード14との間に位置する電子通過孔を通りながら、メタルチャンネルダイノード12により二次電子増倍され、最後段のダイノード12から二次電子群が放出される。この二次電子群はマルチアノード14に到達し、このマルチアノード14に接続されたステムピン17を介して出力信号が送出される。
【0023】
また、図2及び図4に示すように、光電子増倍管2の光入射板4の光入射側には、分光部5及び波長選択部25が配置されている。分光部5は、入射光を複数の異なる波長帯域の光に分光する部分であって、ダイクロイックミラーアレイ21と、入射部22と、を有している。
【0024】
ダイクロイックミラーアレイ21は、入射光の入射方向に沿って配置されている。このダイクロイックミラーアレイ21は、互いに異なる波長帯域特性を有する複数のダイクロイックミラー(分光素子)DMn(ここでは、n=1〜8)の配列である。ここでは、長波長帯域側が光透過帯域であって且つ光透過帯域の最短波長が互いに異なる複数のダイクロイックミラーDMnが、入射光の入射方向に沿って最短波長が小さい順に配列されている。各ダイクロイックミラーDMnは、図4において紙面に垂直な方向(以下、「幅方向」という)に延在しており、入射光の入射方向において45度の角度をもって配置され、光電面7の垂線方向において光電面7に対し45度の角度をもって各光入射部4aと対向している。
【0025】
ここで、長波長帯域側が光透過帯域である場合の光透過帯域の最短波長とは、図5に示すように、例えば、各ダイクロイックミラーDMnにおいて光透過率が50%のときの波長αnを意味する。なお、ダイクロイックミラーアレイ21においては、ダイクロイックミラーDM1,DM2,DM3・・・DM8という順序で光透過帯域の最短波長αnが徐々に大きくなっているものとする。
【0026】
更に、図2及び図4に示すように、ダイクロイックミラーアレイ21に対する光の入射側には、入射部22が入射光の入射方向に直交するように配置されている。入射部22は、検出対象の光(入射光)が入射する部分である。
【0027】
また、光電面7とダイクロイックミラーアレイ21との間には、波長選択部25が配置されている。波長選択部25は、光電面7の垂線方向においてダイクロイックミラーDMnの各々に対応する位置に、バンドパスフィルタ(波長選択素子)BPFk(ここでは、k=1〜8)を有している。このバンドパスフィルタBPFkは、互いに異なる透過波長帯域特性を有するフィルタであって、例えば柱状の形状を呈している。
【0028】
図6は、バンドパスフィルタBPFkの通過波長帯域特性を示す図である。図6に示すように、バンドパスフィルタBPF1〜バンドパスフィルタBPF8によって、略可視光領域に相当する波長域を8つの検出領域に分割している。バンドパスフィルタBPFkは、対応するダイクロイックミラーDMnの光反射帯域のうち一部の波長帯域(中心波長λk)を透過する特性を有している。例えば、バンドパスフィルタBPF1は、波長β11より長波長で波長β12より短波長の光を透過する。この波長β11及び波長β12はいずれも、波長α1より短波長である。バンドパスフィルタBPF2は、波長β21より長波長で波長β22より短波長の光を透過する。この波長β21及び波長β22はいずれも、波長α1より長波長で波長α2より短波長である。
【0029】
続いて、上述した分光部5について更に詳細に説明する。図7は、分光部5の拡大斜視図である。図7に示すように、分光部5は、透光ロッド(ロッド部材)20を更に有し、この透光ロッド20に、上述のダイクロイックミラーアレイ21及び入射部22が一体成形されている。なお、各ダイクロイックミラーDMnは、透光ロッド20に蒸着等によって形成された誘電体多層膜等の薄膜である。
【0030】
透光ロッド20は、入射光に対して透光性を有する材料からなり、例えば石英ガラス又はBK7(硼珪酸ガラス)等のガラスから構成されている。透光ロッド20は、一方向(入射光の入射方向)に延在する断面矩形の長尺の形状を呈し、入射部22が設けられている入射面20aと、ダイクロイックミラーアレイ21によって分光された光が出射する分光面20bと、を有している。また、透光ロッド20は、例えば端面にダイクロイックミラーDMnが形成された複数の柱状の透光部材を接合してロッド状とすることで形成される。
【0031】
入射面20aは、透光ロッド20の延在方向の一端面であって、入射光の入射方向に対して略垂直に設けられている。この入射面20aに反射防止膜(ARコート;Anti Reflection Coating)が蒸着等によって形成されて入射部22を構成しており、透光ロッド20の入射面20aにおける入射光の反射を低減することで、透光ロッド20内への入射光量の低下を抑制している。分光面20bは、透光ロッド20の延在方向(長手方向)に沿って透光ロッド20に設けられたダイクロイックミラーアレイ21の反射側の面であって、ダイクロイックミラーアレイ21の配列方向に沿って設けられている。また、透光ロッド20の延在方向の両端部には、リング状の弾性部材23,23が嵌合されている。この弾性部材23は、例えばゴム等の樹脂材料である。
【0032】
次に、筐体10について説明する。筐体10は、遮光性を有する容器であって、図1及び図8に示すように、分光部5及び波長選択部25を収容する上側筐体30と、光電子増倍管2を収容する下側筐体40とで構成されている。分光部5は、上側筐体30に保持され、波長選択部25は、後述の保持部50に保持されて、上側筐体30に収容される。上側筐体30は、一方向に延びる直方体箱型形状を呈し、下面が開口している。この下面から保持部50が収容される。上側筐体30の上面には、開口部31が設けられており、この開口部31を介して、ネジ部材により保持部50が上側筐体30に固定される。上側筐体30の長手方向に直交する両側面には、分光部5を挿通可能な開口部32,32が設けられている。
【0033】
ここで、保持部50について説明する。図9の(a)は保持部50の斜視図、(b)はフィルタ嵌込孔53周辺部分の拡大斜視図である。保持部50は、遮光性を有する材料によって形成されており、図9に示すように、一方向に延在し、延在方向に直交する断面の形状が凹型を呈している。この保持部50は、波長選択部25を保持し、分光部5のうち、少なくともダイクロイックミラーアレイ21を収容する部材であって、本体部51及び壁部52,52を備えている。
【0034】
本体部51は、一方向に延びる板材であって、一定の厚さを有している。本体部51の上平面である嵌込面51aの幅方向の略中央に、本体部51の延在方向に沿って複数のフィルタ嵌込孔53が形成されている。このフィルタ嵌込孔53はそれぞれ、その位置に対応するバンドパスフィルタBPFkの外形に沿って形成されており、本体部51を上下方向に貫通している。本体部51の下面側において、フィルタ嵌込孔53の周縁に沿って開口縁53aが形成されている。この開口縁53aは、対応するバンドパスフィルタBPFkの下面の外周よりも小さい開口を形成している。また、隣り合うフィルタ嵌込孔53,53の間には、光遮蔽部54が形成されている。なお、フィルタ嵌込孔53の深さはバンドパスフィルタBPFkの高さよりも大きいため、バンドパスフィルタBPFkをフィルタ嵌込孔53内に固定した際には、バンドパスフィルタBPFkの上面は嵌込面51aに対して窪んだ位置に配置される。
【0035】
壁部52,52は、フィルタ嵌込孔53が設けられた本体部51の嵌込面51aから互いに対向するように突出している一対の部材である。壁部52,52は、複数のフィルタ嵌込孔53を挟んで嵌込面51aから略垂直に設けられ、互いに対向する対向面52a,52aをそれぞれ備えている。対向面52a,52aは、分光部5(透光ロッド20及びダイクロイックミラーDMn)の高さを超える高さを有しており、分光部5(透光ロッド20及びダイクロイックミラーDMn)の幅よりも広い間隔で離間している。そして、この嵌込面51a及び対向面52a,52aによって囲まれた収容空間Saに分光部5のダイクロイックミラーアレイ21が収容される。
【0036】
このとき、透光ロッド20の長尺方向の長さは収容空間Saの同方向の長さよりも長いため、透光ロッド20の両端部は保持部50から突出している。そして、透光ロッド20の両端部に嵌合された弾性部材23が上側筐体30と接触して固定されることにより、透光ロッド20が収容空間Sa内で本体部51及び壁部52,52に対して離間した宙吊りの状態で保持される。したがって、透光ロッド20と保持部50との間には、一定の隙間が存在し、両者は非接触となっている。
【0037】
なお、壁部52(対向面52a,52a)は、分光部5が保持部50に宙吊りに保持された状態においても、その状態の分光部5(透光ロッド20及びダイクロイックミラーDMn)を超える高さを有している。つまり、壁部52(対向面52a,52a)の高さは、分光部5(透光ロッド20及びダイクロイックミラーDMn)の高さと、透光ロッド20の分光面20bと嵌込面51aとの離間距離と、を足した長さよりも大きい。壁部52の上平面である取付面52bには、本体部51の延在方向の両端に雌ネジ部55が設けられている。この雌ネジ部55によって、保持部50は上側筐体30に取り付けられる。
【0038】
次に、図8を参照して、分光装置1の組立手順を説明する。まず、各バンドパスフィルタBPFkを保持部50のフィルタ嵌込孔53にそれぞれ装着する。具体的には、各バンドパスフィルタBPFkをフィルタ嵌込孔53の上側から挿入し、バンドパスフィルタBPFkの上部に光路を遮らないように固定用シリコン接着剤等の接着剤を塗布して、フィルタ嵌込孔53の周縁部に固定する。続いて、バンドパスフィルタBPFkが装着された保持部50を上側筐体30の下面から収容し、取付面52bと上側筐体30の上内面とを面接触する。そして、上側筐体30の上面に設けられた開口部31を介して、保持部50の雌ネジ部55にネジ部材を螺入し、保持部50を上側筐体30に固定する。次に、分光部5を開口部32から上側筐体30内に挿入し、保持部50の壁部52,52間に収容する。
【0039】
そして、取付用板(固定用部材)35を分光部5(透光ロッド20)の入射端に嵌め込み、取付用板35を上側筐体30の長手方向に直交する一側面にネジ部材等により固定する。さらに、分光部5(透光ロッド20)の他端に押子(押圧用部材)36及び位置調整ネジ(押圧用部材)38を取り付け、遮光板37を上側筐体30の長手方向に直交する他側面にネジ部材等で固定する。そして、光電子増倍管2を収容している下側筐体40に上側筐体30をネジ部材で固定する。以上の手順により、分光装置1が組み立てられる。
【0040】
次に、分光装置1の各光学部材の位置調整について説明する。図10は、分光部5の周辺部分の一部切欠斜視図である。図2及び図10に示すように、分光装置1では、各バンドパスフィルタBPFkは、保持部50のフィルタ嵌込孔53によって、対応する光入射部4aに対して光電面7の垂線方向に高精度に配置されている。また、分光部5は、本体部51の幅方向において、壁部52,52により波長選択部25の上方に高精度に配置されている。したがって、分光装置1では、各ダイクロイックミラーDMnが対応するバンドパスフィルタBPFkに対して、光電面7の垂線方向に配置されるように位置調整を行う。この位置調整は、入射光の入射方向、すなわち透光ロッド20の長手方向において、分光部5を位置調整すればよい。
【0041】
図10に示すように、透光ロッド20の入射端は、取付用板35の嵌合部35aに嵌合されている。この嵌合部35aは、取付用板35を貫通する孔である。嵌合部35aの一端は透光ロッド20の外形よりも小さい開口を有し、嵌合部35aの他端は透光ロッド20の外形に沿って開口されている。このように、取付用板35は、嵌合部35aの他端において透光ロッド20の一端を嵌合可能に形成され、嵌合部35a内をその一端まで透光ロッド20を押込可能となるように形成されている。
【0042】
また、透光ロッド20の他端には、押子36及び位置調整ネジ38が取り付けられている。この位置調整ネジ38の頂部には、例えば六角形の凹部が形成されている。この凹部を介してレンチ等の工具により位置調整ネジ38が螺入されることで、押子36によって透光ロッド20の他端を入射端側に押圧可能とし、入射光の入射方向における分光部5の位置を調整可能としている。また、位置調整ネジ38は、遮光板37の開口部を介して分光装置1の外部から螺入可能に設けられている。
【0043】
このように、分光装置1の組み立て後、分光装置1の外部から位置調整ネジ38を螺入することで、透光ロッド20を他端側から入射端側に押圧して、入射光の入射方向における分光部5の位置を微調整する。例えば、ダイクロイックミラーDMnの反射光がそれぞれ対応するバンドパスフィルタBPFkの上面の略中心位置に垂直に入射するように、分光部5の位置を微調整する。そして、位置調整ネジ38は、位置調整後の状態で筐体10に固定される。なお、透光ロッド20の入射端は、取付用板35の嵌合部35aに嵌合されているため、透光ロッド20の回転を抑制しつつ、分光部5の位置調整を行うことができる。
【0044】
以上のように構成された分光装置1における入射光の分光作用について説明する。図2に示すように、入射光は、入射部22に略垂直に入射する。この入射部22は透光ロッド20の入射面20aに形成された反射防止膜であるので、入射光は入射部22において殆ど反射されることなく透光ロッド20内に入射する。そして、入射光は、透光ロッド20内を通って、入射部22と入射方向において45度の角度をもって対面しているダイクロイックミラーDM1に入射する。
【0045】
ここで、ダイクロイックミラーDM1により反射された光(主に波長α1より短波長帯域の光)は、バンドパスフィルタBPF1及び光入射部4aを透過して光電面7に略垂直に入射する。一方、ダイクロイックミラーDM1を透過した光(主に波長α1より長波長帯域の光)は、透光ロッド20内を通って、光透過帯域の最短波長が2番目に小さいダイクロイックミラーDM2に対し45度の角度をもって入射することになる。
【0046】
このため、ダイクロイックミラーDM2により反射された光(主に、波長α1より長波長帯域の光のうち、波長α2より短波長帯域の光)は、バンドパスフィルタBPF2及び光入射部4aを透過して光電面7に略垂直に入射する。さらに、ダイクロイックミラーDM2を透過した光(主に波長α2より長波長帯域の光)は、透光ロッド20内を通って、ダイクロイックミラーDM3に対し入射する。このようにして、光透過帯域の最短波長が最大のダイクロイックミラーDM8に到達するまで透過光が透光ロッド20内を通過することになる。
【0047】
次に、分光装置1の作用効果を説明する。図11は、分光装置1の各チャンネルの出力特性を示す図である。図11において、横軸は分光された光の波長を示し、縦軸は光透過率(分光された光の強度の入射光の強度に対する割合)を示す。なお、比較のため、従来品(型名:H11454)の各チャンネルの出力特性を併せて示している。この従来品は、分光装置1と同様の透過型の分光装置であって、分光部の光路を大気としたものである。グラフA1〜A4はそれぞれ、分光装置1のチャンネルC4,C5,C7,C8(中心波長λ4,λ5,λ7,λ8)の,出力特性を示すグラフである。グラフB1〜B4はそれぞれ、従来品のチャンネルC4,C5,C7,C8(中心波長λ4,λ5,λ7,λ8)の出力特性を示すグラフである。
【0048】
分光装置1の出力特性と従来品の出力特性とを比較すると、チャンネルC4では、いずれも光透過率が92〜93%程度であり、その差は殆ど認められない。しかし、チャンネルC5では、従来品の光透過率は85〜88%程度であるのに対して、分光装置1の光透過率は90%程度である。チャンネルC7では、従来品の光透過率は80〜82%程度であるのに対して、分光装置1の光透過率は87〜90%程度である。チャンネルC8では、従来品の光透過率は67〜70%程度であるのに対して、分光装置1の光透過率は80%程度で、従来品の光透過率に対して約2割程度高い。このように、後段のチャンネルCmになるほど、分光装置1の光透過率が従来品の光透過率より大きくなっている。この傾向は、分光装置1では、従来品と比較して入射光の光路において光の損失が低減されていることを示している。従って、分光装置1では、従来品と比較して光の損失が低減されている。
【0049】
このように、分光装置1では、透光ロッド20内にダイクロイックミラーアレイ21が設けられた構成とすることで、入射光の光路において、光の拡散を抑制することができ、分光部5内における光の損失を抑制することができる。また、透光ロッド20の両端に弾性部材23が嵌合されることで、透光ロッド20を保持部50に対して離間させた状態で、分光部5を配置することができる。このため、透光ロッド20と保持部50との間の接触をなくすことができ、壁部52,52の間の収容空間Sa内での透光ロッド20の位置調整が容易になるとともに、接触界面からの光の損失をなくすことができる。
【0050】
また、上述したように、入射部22は反射防止膜で構成されているため、入射部22において入射光が反射するのを抑制することができ、入射部22における光の損失を抑制することができる。
【0051】
また、上述したように、各ダイクロイックミラーDMnにより反射された光はバンドパスフィルタBPFkを透過することになるため、波長弁別性をより一層向上させることができる。従って、入射光を分光する際の分解能を向上させることが可能になる。しかも、各ダイクロイックミラーDMnにより反射された光はバンドパスフィルタBPFkに略垂直に入射することになるため、バンドパスフィルタBPFkを透過した光の波長域がシフトするのを防止することができる。
【0052】
また、上述のような出力特性を得るためには、分光装置1の各光学部材が正確に配置されている必要がある。分光装置1では、波長選択部25の各バンドパスフィルタBPFkが、保持部50の本体部51の一方向に形成された複数のフィルタ嵌込孔53にそれぞれ保持されている。また、その複数のバンドパスフィルタBPFkが設けられた本体部51の上面から突出し、複数のフィルタ嵌込孔53を挟んで互いに対向する一対の壁部52,52の間に、分光部5(ダイクロイックミラーDMn)が収容されている。これにより、本体部51の上面において、一方向と直交する方向における分光部5(ダイクロイックミラーDMn)の位置を波長選択部25の位置に合わせることができる。このため、分光部5(ダイクロイックミラーDMn)及び波長選択部25の位置をより確実に決定することができ、分光部5(ダイクロイックミラーDMn)及び波長選択部25の位置調整を容易化して、分光装置1を組み立てることが可能となる。また、遮光性の材料からなる本体部51に設けられたフィルタ嵌込孔53にバンドパスフィルタBPFkを収容し、遮光性の材料からなる壁部52,52がフィルタ嵌込孔53及び分光部5を挟むように設けられているため、これらの光学部材間の光路の遮光性も向上する。
【0053】
また、分光部5は、透光ロッド20にダイクロイックミラーアレイ21及び入射部22が形成されているため、ダイクロイックミラーDMnを個々に配置及び位置調整を行うことなく、一括して配置及び位置調整を行うことができる。その結果、ダイクロイックミラーDMnの位置調整を容易化して、分光装置1を組み立てることが可能となる。
【0054】
さらに、透光ロッド20の光入射端の外形に沿った形状の嵌合部35aを有する取付用板35が、透光ロッド20の光入射端に嵌合された状態で上側筐体30に固定され、押子36及び位置調整ネジ38が透光ロッド20の他端に設けられている。これにより、透光ロッド20の回転を抑制しつつ、分光部5の長手方向の位置調整を行うことができ、分光部5の位置調整を容易化して、分光装置1を組み立てることが可能となる。
【0055】
また、透光ロッド20の両端に弾性部材23が嵌合されることで、壁部52,52の間に、分光部5を保持部50に対して離間させつつしっかりと位置決めされた状態で固定されるように、透光ロッド20を筐体10で保持することができる。また、透光ロッド20の耐振動性を確保でき、透光ロッド20を保護することができる。
【0056】
また、分光部5が保持部50に収容された状態において、壁部52,52は、透光ロッド20を超える高さを有している。このため、壁部52,52によって透光ロッド20の位置決めがより確実になるとともに、透光ロッド20及びダイクロイックミラーDMnを保護することができる。
【0057】
さらに、透光ロッド20に薄膜のダイクロイックミラーDMnが形成されることで、分光部5をコンパクト化することができ、分光装置1をコンパクト化することが可能となる。また、複雑な構成の分光部5とすることも可能となる。
【0058】
(変形例)
図12は、分光装置1の変形例を示す図である。ここでは、上記実施形態の分光装置1との相違点を中心に説明する。図12に示すように、この変形例の分光装置1では、保持部50の壁部52,52の互いに対向する面である対向面52a,52aのそれぞれに複数のミラー溝56が設けられている。複数のミラー溝56はそれぞれ、各フィルタ嵌込孔53の中心軸と本体部51の幅方向とで規定される平面が対向面52a,52aに交差する直線上に中心点を有し、本体部51の延在方向において45度の角度をもって形成されている。また、複数のミラー溝56はそれぞれ、他方の対向面52aに設けられたミラー溝56と対向しており、対向するミラー溝56と略同一の形状を有している。また、各ミラー溝56は、一端が取付面52bまで達しており、ダイクロイックミラーDMnの幅方向の端部を挿入可能な程度の幅を有している。
【0059】
また、分光部5は、ダイクロイックミラーアレイ21のみから構成されており、透光ロッド20及び弾性部材23を有しない。このダイクロイックミラーアレイ21は、板状のダイクロイックミラーDMnの配列である。各ダイクロイックミラーDMnは、対向面52a,52a間の離間距離よりも大きい幅を有し、互いに対向するミラー溝56,56に嵌合可能に形成されている。
【0060】
変形例の分光装置1では、このミラー溝56のそれぞれに直接ダイクロイックミラーDMnが挿入され、嵌合されることで、分光部5が保持部50に保持される。このため、入射光の入射方向における分光部5(ダイクロイックミラーDMn)の位置調整を行うことなく、分光装置1を組み立てることが可能となる。
【0061】
なお、本発明に係る分光装置は本実施形態に記載したものに限定されない。本発明に係る分光装置は、各請求項に記載した要旨を変更しないように実施形態に係る分光装置1を変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0062】
例えば、ダイクロイックミラーDMnはそれぞれ、特定波長より短波長の光を透過し、該波長以上の波長を反射する波長帯域特性を有してもよい。この場合、ダイクロイックミラーDM1は、ダイクロイックミラーDMnのうち光透過帯域の最長波長が最大のダイクロイックミラーである。そして、ダイクロイックミラーDM1〜ダイクロイックミラーDM8は、光透過帯域の最長波長が大きい順に、入射光の入射方向において45度の角度をもって透光ロッド20内に配列されている。また、最終段のダイクロイックミラーであるダイクロイックミラーDM8は、入射光を反射する反射ミラーとしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…分光装置、2…光電子増倍管(光検出部)、5…分光部、10…筐体、14…マルチアノード、20…透光ロッド(ロッド部材)、23…弾性部材、25…波長選択部、30…保持部、35…取付用板(固定用部材)、36…押子(押圧用部材)、38…位置調整ネジ(押圧用部材)、50…保持部、51…本体部、52…壁部、BPFk…バンドパスフィルタ(波長選択素子)、Cm…チャンネル(電子増倍経路)、DMn…ダイクロイックミラー(分光素子)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を互いに異なる波長帯域の光に分光して各波長帯域の光を検出する分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入射光を互いに異なる波長帯域の光に分光して各波長帯域の光を検出する分光装置がある。例えば、下記の特許文献1には、波長を選別するための複数のダイクロイックミラーと、ダイクロイックミラーの各々に対応して設けられたバンドパスフィルターと、光を検出するための光電子増倍管とを備える分光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−50089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された分光装置にあっては、複数のダイクロイックミラー及び複数のバンドパスフィルターといった、複数の光学部材を個々に配置する必要がある。このため、複数の光学部材を精度良く配置するには、各光学部材の位置調整の作業が煩雑になるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、各光学部材の位置調整を容易化して組み立て可能な分光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る分光装置は、入射光を互いに異なる波長帯域の光に分光して各波長帯域の光を検出する分光装置であって、互いに異なる波長帯域特性を有する複数の分光素子が配列された分光部と、分光素子の各々に対向して設けられた複数の波長選択素子を有する波長選択部と、複数の波長選択素子からの透過光を光電変換する光電面と複数の波長選択素子の各々に対応して設けられた複数の電子増倍経路と電子増倍経路の各々に対応して設けられた複数のアノードとを有する光電子増倍管を備えた光検出部と、波長選択部を筐体内で保持する保持部と、を備え、保持部は、波長選択素子が一方向に配列された本体部と、本体部から互いに対向するように突出する一対の壁部と、を含み、分光素子は、波長選択素子の配列方向に沿って一対の壁部の間に配列されていることを特徴とする。
【0007】
この分光装置においては、複数の波長選択素子が本体部に一方向に配列され、本体部から互いに対向するように突出する一対の壁部の間に、波長選択素子の配列方向に沿って分光素子が配列されている。これにより、複数の波長選択素子が設けられた本体部の面において、波長選択素子の配列方向と直交する方向における分光素子の位置を波長選択部の位置に合わせることができる。このため、分光素子及び波長選択部の位置をより確実に決定することができ、分光素子及び波長選択部の位置調整を容易化して組み立てることが可能となる。
【0008】
また、分光部は、透光性を有する材料からなるロッド部材を更に有し、分光素子は、ロッド部材の長手方向に沿って配列されていることが好ましい。この場合、ロッド部材に複数の分光素子を設けることで、分光部を一体化することができ、各分光素子を個々に配置及び位置調整することなく、一括して配置及び位置調整を行うことができる。
【0009】
また、壁部は、ロッド部材を超える高さを有していることが好ましい。この場合、壁部によって、より確実にロッド部材を位置決めすることができる。
【0010】
また、ロッド部材と保持部とが非接触となっていることが好ましい。この場合、壁部間におけるロッド部材の位置調整が行い易く、ロッド部材を所望の位置に調整することができる。
【0011】
また、ロッド部材の両端には、それぞれ弾性部材が嵌合されており、ロッド部材は、弾性部材を介して一対の壁部の間に収容されていることが好ましい。この場合、ロッド部材を保持部と離間させつつ、確実に位置決めすることができる。
【0012】
また、ロッド部材の一端に嵌合された状態で筐体に固定される固定用部材と、ロッド部材の他端に設けられ、ロッド部材を他端側から一端側に押圧した状態で筐体に固定される押圧用部材と、を更に備えることが好ましい。この場合、固定用部材によってロッド部材の一端を固定しつつ、押圧用部材によってロッド部材を長手方向に位置調整しながら固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分光装置における各光学部材の位置調整を容易化して、分光装置を組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る分光装置を示す一部切欠斜視図である。
【図2】図1の分光装置のII−II線断面図である。
【図3】図1の分光装置の光電子増倍管の拡大断面図である。
【図4】図1の分光装置の分光部周辺部分を示す拡大断面図である。
【図5】ダイクロイックミラーの波長帯域特性を示す図である。
【図6】バンドパスフィルタの通過帯域特性を示す図である。
【図7】図1の分光装置の分光部の拡大斜視図である。
【図8】図1の分光装置の組立手順を示す図である。
【図9】(a)は図1の分光装置の保持部の拡大斜視図、(b)はフィルタ嵌込孔周辺部分の拡大斜視図である。
【図10】図1の分光装置の分光部周辺部分の一部切欠斜視図である。
【図11】図1の分光装置の出力特性を示す図である。
【図12】図1の分光装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る分光装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る分光装置を示す図である。図2は、図1の分光装置のII−II線断面図である。図1及び図2に示すように、分光装置1は、透過型の分光装置であって、リニアマルチアノード型の光電子増倍管(光検出部)2と、入射光を分光する分光部5と、波長選択部25と、を備えている。また、分光装置1は、光電子増倍管2、分光部5及び波長選択部25を収容する筐体10を備えている。
【0017】
光電子増倍管2は、マルチアノード型であって、後述する分光部5からの各反射光をそれぞれ電気信号に変換して出力する装置である。図3は、光電子増倍管2の拡大断面図である。この光電子増倍管2は四角柱状の金属製側管3を有しており、この側管3の一端側の開口部には、ガラス等の光透過性材料により形成された矩形状の光入射板4が融着等により気密に固定されている。この光入射板4は、図3において紙面に垂直な方向(以下、「幅方向」という)に延在する複数の光遮蔽板6によって略等間隔に仕切られ、これにより、光入射板4には、幅方向に延在する光入射部4aが複数形成されることになる。また、光入射板4の内側表面には光電面7が形成されている。
【0018】
一方、側管3の他端側の開口部には、ガラス等の絶縁性材料により形成された矩形状のステム8が取り付けられている。より具体的には、ステム8には、その側面を取り囲む金属製の包囲部材9が融着等により気密に固定されており、この包囲部材9の一端に形成されたフランジ9aと、側管3の他端に形成されたフランジ部3aとが抵抗溶接等により気密に接合されている。
【0019】
このように側管3、光入射板4及びステム8等により形成された真空空間S内には、複数層のダイノード11を有するメタルチャンネルダイノード12が設置されている。また、真空空間S内においてメタルチャンネルダイノード12と光電面7との間には、平板状の収束電極13が設置されている。この収束電極13には、幅方向に延在する複数のスリット13aが形成されており、各スリット13aは、光電面7の垂線方向において光入射板4の各光入射部4aと対向している。
【0020】
更に、真空空間S内においてメタルチャンネルダイノード12とステム8との間には、幅方向に延在する複数のマルチアノード14がリニアに配列され、各マルチアノード14は、光電面7の垂線方向において光入射板4の各光入射部4aと対向している。なお、ステム8の内側表面には、隣り合うマルチアノード14,14間を隔てる隔壁16が立設され、クロストークの発生が抑制されている。また、各マルチアノード14には、出力信号を取り出すためのステムピン17の一端が接続されており、各ステムピン17の他端は、ステム8を気密に貫通して外部に突出している。
【0021】
以上のように構成された光電子増倍管2においては、光電面7の垂線方向において対向する光入射部4aとマルチアノード14との間に位置する収束電極13のスリット13a及びメタルチャンネルダイノード12の電子通過孔によって複数のチャンネル(電子増倍経路)Cm(ここでは、m=1〜8)が形成される。従って、光電子増倍管2は、リニアに配列された複数のチャンネルCmを有することになる。
【0022】
ここで、任意の1つのチャンネルCmに着目して電子増倍作用について説明する。光入射部4aを透過した光が光電面7に入射すると、光電面7にて光電変換され、真空空間S中に光電子が放出される。放出された光電子は収束電極13のスリット13aを通って最前段のダイノード11上に収束される。これにより、光電子は、光入射部4aとマルチアノード14との間に位置する電子通過孔を通りながら、メタルチャンネルダイノード12により二次電子増倍され、最後段のダイノード12から二次電子群が放出される。この二次電子群はマルチアノード14に到達し、このマルチアノード14に接続されたステムピン17を介して出力信号が送出される。
【0023】
また、図2及び図4に示すように、光電子増倍管2の光入射板4の光入射側には、分光部5及び波長選択部25が配置されている。分光部5は、入射光を複数の異なる波長帯域の光に分光する部分であって、ダイクロイックミラーアレイ21と、入射部22と、を有している。
【0024】
ダイクロイックミラーアレイ21は、入射光の入射方向に沿って配置されている。このダイクロイックミラーアレイ21は、互いに異なる波長帯域特性を有する複数のダイクロイックミラー(分光素子)DMn(ここでは、n=1〜8)の配列である。ここでは、長波長帯域側が光透過帯域であって且つ光透過帯域の最短波長が互いに異なる複数のダイクロイックミラーDMnが、入射光の入射方向に沿って最短波長が小さい順に配列されている。各ダイクロイックミラーDMnは、図4において紙面に垂直な方向(以下、「幅方向」という)に延在しており、入射光の入射方向において45度の角度をもって配置され、光電面7の垂線方向において光電面7に対し45度の角度をもって各光入射部4aと対向している。
【0025】
ここで、長波長帯域側が光透過帯域である場合の光透過帯域の最短波長とは、図5に示すように、例えば、各ダイクロイックミラーDMnにおいて光透過率が50%のときの波長αnを意味する。なお、ダイクロイックミラーアレイ21においては、ダイクロイックミラーDM1,DM2,DM3・・・DM8という順序で光透過帯域の最短波長αnが徐々に大きくなっているものとする。
【0026】
更に、図2及び図4に示すように、ダイクロイックミラーアレイ21に対する光の入射側には、入射部22が入射光の入射方向に直交するように配置されている。入射部22は、検出対象の光(入射光)が入射する部分である。
【0027】
また、光電面7とダイクロイックミラーアレイ21との間には、波長選択部25が配置されている。波長選択部25は、光電面7の垂線方向においてダイクロイックミラーDMnの各々に対応する位置に、バンドパスフィルタ(波長選択素子)BPFk(ここでは、k=1〜8)を有している。このバンドパスフィルタBPFkは、互いに異なる透過波長帯域特性を有するフィルタであって、例えば柱状の形状を呈している。
【0028】
図6は、バンドパスフィルタBPFkの通過波長帯域特性を示す図である。図6に示すように、バンドパスフィルタBPF1〜バンドパスフィルタBPF8によって、略可視光領域に相当する波長域を8つの検出領域に分割している。バンドパスフィルタBPFkは、対応するダイクロイックミラーDMnの光反射帯域のうち一部の波長帯域(中心波長λk)を透過する特性を有している。例えば、バンドパスフィルタBPF1は、波長β11より長波長で波長β12より短波長の光を透過する。この波長β11及び波長β12はいずれも、波長α1より短波長である。バンドパスフィルタBPF2は、波長β21より長波長で波長β22より短波長の光を透過する。この波長β21及び波長β22はいずれも、波長α1より長波長で波長α2より短波長である。
【0029】
続いて、上述した分光部5について更に詳細に説明する。図7は、分光部5の拡大斜視図である。図7に示すように、分光部5は、透光ロッド(ロッド部材)20を更に有し、この透光ロッド20に、上述のダイクロイックミラーアレイ21及び入射部22が一体成形されている。なお、各ダイクロイックミラーDMnは、透光ロッド20に蒸着等によって形成された誘電体多層膜等の薄膜である。
【0030】
透光ロッド20は、入射光に対して透光性を有する材料からなり、例えば石英ガラス又はBK7(硼珪酸ガラス)等のガラスから構成されている。透光ロッド20は、一方向(入射光の入射方向)に延在する断面矩形の長尺の形状を呈し、入射部22が設けられている入射面20aと、ダイクロイックミラーアレイ21によって分光された光が出射する分光面20bと、を有している。また、透光ロッド20は、例えば端面にダイクロイックミラーDMnが形成された複数の柱状の透光部材を接合してロッド状とすることで形成される。
【0031】
入射面20aは、透光ロッド20の延在方向の一端面であって、入射光の入射方向に対して略垂直に設けられている。この入射面20aに反射防止膜(ARコート;Anti Reflection Coating)が蒸着等によって形成されて入射部22を構成しており、透光ロッド20の入射面20aにおける入射光の反射を低減することで、透光ロッド20内への入射光量の低下を抑制している。分光面20bは、透光ロッド20の延在方向(長手方向)に沿って透光ロッド20に設けられたダイクロイックミラーアレイ21の反射側の面であって、ダイクロイックミラーアレイ21の配列方向に沿って設けられている。また、透光ロッド20の延在方向の両端部には、リング状の弾性部材23,23が嵌合されている。この弾性部材23は、例えばゴム等の樹脂材料である。
【0032】
次に、筐体10について説明する。筐体10は、遮光性を有する容器であって、図1及び図8に示すように、分光部5及び波長選択部25を収容する上側筐体30と、光電子増倍管2を収容する下側筐体40とで構成されている。分光部5は、上側筐体30に保持され、波長選択部25は、後述の保持部50に保持されて、上側筐体30に収容される。上側筐体30は、一方向に延びる直方体箱型形状を呈し、下面が開口している。この下面から保持部50が収容される。上側筐体30の上面には、開口部31が設けられており、この開口部31を介して、ネジ部材により保持部50が上側筐体30に固定される。上側筐体30の長手方向に直交する両側面には、分光部5を挿通可能な開口部32,32が設けられている。
【0033】
ここで、保持部50について説明する。図9の(a)は保持部50の斜視図、(b)はフィルタ嵌込孔53周辺部分の拡大斜視図である。保持部50は、遮光性を有する材料によって形成されており、図9に示すように、一方向に延在し、延在方向に直交する断面の形状が凹型を呈している。この保持部50は、波長選択部25を保持し、分光部5のうち、少なくともダイクロイックミラーアレイ21を収容する部材であって、本体部51及び壁部52,52を備えている。
【0034】
本体部51は、一方向に延びる板材であって、一定の厚さを有している。本体部51の上平面である嵌込面51aの幅方向の略中央に、本体部51の延在方向に沿って複数のフィルタ嵌込孔53が形成されている。このフィルタ嵌込孔53はそれぞれ、その位置に対応するバンドパスフィルタBPFkの外形に沿って形成されており、本体部51を上下方向に貫通している。本体部51の下面側において、フィルタ嵌込孔53の周縁に沿って開口縁53aが形成されている。この開口縁53aは、対応するバンドパスフィルタBPFkの下面の外周よりも小さい開口を形成している。また、隣り合うフィルタ嵌込孔53,53の間には、光遮蔽部54が形成されている。なお、フィルタ嵌込孔53の深さはバンドパスフィルタBPFkの高さよりも大きいため、バンドパスフィルタBPFkをフィルタ嵌込孔53内に固定した際には、バンドパスフィルタBPFkの上面は嵌込面51aに対して窪んだ位置に配置される。
【0035】
壁部52,52は、フィルタ嵌込孔53が設けられた本体部51の嵌込面51aから互いに対向するように突出している一対の部材である。壁部52,52は、複数のフィルタ嵌込孔53を挟んで嵌込面51aから略垂直に設けられ、互いに対向する対向面52a,52aをそれぞれ備えている。対向面52a,52aは、分光部5(透光ロッド20及びダイクロイックミラーDMn)の高さを超える高さを有しており、分光部5(透光ロッド20及びダイクロイックミラーDMn)の幅よりも広い間隔で離間している。そして、この嵌込面51a及び対向面52a,52aによって囲まれた収容空間Saに分光部5のダイクロイックミラーアレイ21が収容される。
【0036】
このとき、透光ロッド20の長尺方向の長さは収容空間Saの同方向の長さよりも長いため、透光ロッド20の両端部は保持部50から突出している。そして、透光ロッド20の両端部に嵌合された弾性部材23が上側筐体30と接触して固定されることにより、透光ロッド20が収容空間Sa内で本体部51及び壁部52,52に対して離間した宙吊りの状態で保持される。したがって、透光ロッド20と保持部50との間には、一定の隙間が存在し、両者は非接触となっている。
【0037】
なお、壁部52(対向面52a,52a)は、分光部5が保持部50に宙吊りに保持された状態においても、その状態の分光部5(透光ロッド20及びダイクロイックミラーDMn)を超える高さを有している。つまり、壁部52(対向面52a,52a)の高さは、分光部5(透光ロッド20及びダイクロイックミラーDMn)の高さと、透光ロッド20の分光面20bと嵌込面51aとの離間距離と、を足した長さよりも大きい。壁部52の上平面である取付面52bには、本体部51の延在方向の両端に雌ネジ部55が設けられている。この雌ネジ部55によって、保持部50は上側筐体30に取り付けられる。
【0038】
次に、図8を参照して、分光装置1の組立手順を説明する。まず、各バンドパスフィルタBPFkを保持部50のフィルタ嵌込孔53にそれぞれ装着する。具体的には、各バンドパスフィルタBPFkをフィルタ嵌込孔53の上側から挿入し、バンドパスフィルタBPFkの上部に光路を遮らないように固定用シリコン接着剤等の接着剤を塗布して、フィルタ嵌込孔53の周縁部に固定する。続いて、バンドパスフィルタBPFkが装着された保持部50を上側筐体30の下面から収容し、取付面52bと上側筐体30の上内面とを面接触する。そして、上側筐体30の上面に設けられた開口部31を介して、保持部50の雌ネジ部55にネジ部材を螺入し、保持部50を上側筐体30に固定する。次に、分光部5を開口部32から上側筐体30内に挿入し、保持部50の壁部52,52間に収容する。
【0039】
そして、取付用板(固定用部材)35を分光部5(透光ロッド20)の入射端に嵌め込み、取付用板35を上側筐体30の長手方向に直交する一側面にネジ部材等により固定する。さらに、分光部5(透光ロッド20)の他端に押子(押圧用部材)36及び位置調整ネジ(押圧用部材)38を取り付け、遮光板37を上側筐体30の長手方向に直交する他側面にネジ部材等で固定する。そして、光電子増倍管2を収容している下側筐体40に上側筐体30をネジ部材で固定する。以上の手順により、分光装置1が組み立てられる。
【0040】
次に、分光装置1の各光学部材の位置調整について説明する。図10は、分光部5の周辺部分の一部切欠斜視図である。図2及び図10に示すように、分光装置1では、各バンドパスフィルタBPFkは、保持部50のフィルタ嵌込孔53によって、対応する光入射部4aに対して光電面7の垂線方向に高精度に配置されている。また、分光部5は、本体部51の幅方向において、壁部52,52により波長選択部25の上方に高精度に配置されている。したがって、分光装置1では、各ダイクロイックミラーDMnが対応するバンドパスフィルタBPFkに対して、光電面7の垂線方向に配置されるように位置調整を行う。この位置調整は、入射光の入射方向、すなわち透光ロッド20の長手方向において、分光部5を位置調整すればよい。
【0041】
図10に示すように、透光ロッド20の入射端は、取付用板35の嵌合部35aに嵌合されている。この嵌合部35aは、取付用板35を貫通する孔である。嵌合部35aの一端は透光ロッド20の外形よりも小さい開口を有し、嵌合部35aの他端は透光ロッド20の外形に沿って開口されている。このように、取付用板35は、嵌合部35aの他端において透光ロッド20の一端を嵌合可能に形成され、嵌合部35a内をその一端まで透光ロッド20を押込可能となるように形成されている。
【0042】
また、透光ロッド20の他端には、押子36及び位置調整ネジ38が取り付けられている。この位置調整ネジ38の頂部には、例えば六角形の凹部が形成されている。この凹部を介してレンチ等の工具により位置調整ネジ38が螺入されることで、押子36によって透光ロッド20の他端を入射端側に押圧可能とし、入射光の入射方向における分光部5の位置を調整可能としている。また、位置調整ネジ38は、遮光板37の開口部を介して分光装置1の外部から螺入可能に設けられている。
【0043】
このように、分光装置1の組み立て後、分光装置1の外部から位置調整ネジ38を螺入することで、透光ロッド20を他端側から入射端側に押圧して、入射光の入射方向における分光部5の位置を微調整する。例えば、ダイクロイックミラーDMnの反射光がそれぞれ対応するバンドパスフィルタBPFkの上面の略中心位置に垂直に入射するように、分光部5の位置を微調整する。そして、位置調整ネジ38は、位置調整後の状態で筐体10に固定される。なお、透光ロッド20の入射端は、取付用板35の嵌合部35aに嵌合されているため、透光ロッド20の回転を抑制しつつ、分光部5の位置調整を行うことができる。
【0044】
以上のように構成された分光装置1における入射光の分光作用について説明する。図2に示すように、入射光は、入射部22に略垂直に入射する。この入射部22は透光ロッド20の入射面20aに形成された反射防止膜であるので、入射光は入射部22において殆ど反射されることなく透光ロッド20内に入射する。そして、入射光は、透光ロッド20内を通って、入射部22と入射方向において45度の角度をもって対面しているダイクロイックミラーDM1に入射する。
【0045】
ここで、ダイクロイックミラーDM1により反射された光(主に波長α1より短波長帯域の光)は、バンドパスフィルタBPF1及び光入射部4aを透過して光電面7に略垂直に入射する。一方、ダイクロイックミラーDM1を透過した光(主に波長α1より長波長帯域の光)は、透光ロッド20内を通って、光透過帯域の最短波長が2番目に小さいダイクロイックミラーDM2に対し45度の角度をもって入射することになる。
【0046】
このため、ダイクロイックミラーDM2により反射された光(主に、波長α1より長波長帯域の光のうち、波長α2より短波長帯域の光)は、バンドパスフィルタBPF2及び光入射部4aを透過して光電面7に略垂直に入射する。さらに、ダイクロイックミラーDM2を透過した光(主に波長α2より長波長帯域の光)は、透光ロッド20内を通って、ダイクロイックミラーDM3に対し入射する。このようにして、光透過帯域の最短波長が最大のダイクロイックミラーDM8に到達するまで透過光が透光ロッド20内を通過することになる。
【0047】
次に、分光装置1の作用効果を説明する。図11は、分光装置1の各チャンネルの出力特性を示す図である。図11において、横軸は分光された光の波長を示し、縦軸は光透過率(分光された光の強度の入射光の強度に対する割合)を示す。なお、比較のため、従来品(型名:H11454)の各チャンネルの出力特性を併せて示している。この従来品は、分光装置1と同様の透過型の分光装置であって、分光部の光路を大気としたものである。グラフA1〜A4はそれぞれ、分光装置1のチャンネルC4,C5,C7,C8(中心波長λ4,λ5,λ7,λ8)の,出力特性を示すグラフである。グラフB1〜B4はそれぞれ、従来品のチャンネルC4,C5,C7,C8(中心波長λ4,λ5,λ7,λ8)の出力特性を示すグラフである。
【0048】
分光装置1の出力特性と従来品の出力特性とを比較すると、チャンネルC4では、いずれも光透過率が92〜93%程度であり、その差は殆ど認められない。しかし、チャンネルC5では、従来品の光透過率は85〜88%程度であるのに対して、分光装置1の光透過率は90%程度である。チャンネルC7では、従来品の光透過率は80〜82%程度であるのに対して、分光装置1の光透過率は87〜90%程度である。チャンネルC8では、従来品の光透過率は67〜70%程度であるのに対して、分光装置1の光透過率は80%程度で、従来品の光透過率に対して約2割程度高い。このように、後段のチャンネルCmになるほど、分光装置1の光透過率が従来品の光透過率より大きくなっている。この傾向は、分光装置1では、従来品と比較して入射光の光路において光の損失が低減されていることを示している。従って、分光装置1では、従来品と比較して光の損失が低減されている。
【0049】
このように、分光装置1では、透光ロッド20内にダイクロイックミラーアレイ21が設けられた構成とすることで、入射光の光路において、光の拡散を抑制することができ、分光部5内における光の損失を抑制することができる。また、透光ロッド20の両端に弾性部材23が嵌合されることで、透光ロッド20を保持部50に対して離間させた状態で、分光部5を配置することができる。このため、透光ロッド20と保持部50との間の接触をなくすことができ、壁部52,52の間の収容空間Sa内での透光ロッド20の位置調整が容易になるとともに、接触界面からの光の損失をなくすことができる。
【0050】
また、上述したように、入射部22は反射防止膜で構成されているため、入射部22において入射光が反射するのを抑制することができ、入射部22における光の損失を抑制することができる。
【0051】
また、上述したように、各ダイクロイックミラーDMnにより反射された光はバンドパスフィルタBPFkを透過することになるため、波長弁別性をより一層向上させることができる。従って、入射光を分光する際の分解能を向上させることが可能になる。しかも、各ダイクロイックミラーDMnにより反射された光はバンドパスフィルタBPFkに略垂直に入射することになるため、バンドパスフィルタBPFkを透過した光の波長域がシフトするのを防止することができる。
【0052】
また、上述のような出力特性を得るためには、分光装置1の各光学部材が正確に配置されている必要がある。分光装置1では、波長選択部25の各バンドパスフィルタBPFkが、保持部50の本体部51の一方向に形成された複数のフィルタ嵌込孔53にそれぞれ保持されている。また、その複数のバンドパスフィルタBPFkが設けられた本体部51の上面から突出し、複数のフィルタ嵌込孔53を挟んで互いに対向する一対の壁部52,52の間に、分光部5(ダイクロイックミラーDMn)が収容されている。これにより、本体部51の上面において、一方向と直交する方向における分光部5(ダイクロイックミラーDMn)の位置を波長選択部25の位置に合わせることができる。このため、分光部5(ダイクロイックミラーDMn)及び波長選択部25の位置をより確実に決定することができ、分光部5(ダイクロイックミラーDMn)及び波長選択部25の位置調整を容易化して、分光装置1を組み立てることが可能となる。また、遮光性の材料からなる本体部51に設けられたフィルタ嵌込孔53にバンドパスフィルタBPFkを収容し、遮光性の材料からなる壁部52,52がフィルタ嵌込孔53及び分光部5を挟むように設けられているため、これらの光学部材間の光路の遮光性も向上する。
【0053】
また、分光部5は、透光ロッド20にダイクロイックミラーアレイ21及び入射部22が形成されているため、ダイクロイックミラーDMnを個々に配置及び位置調整を行うことなく、一括して配置及び位置調整を行うことができる。その結果、ダイクロイックミラーDMnの位置調整を容易化して、分光装置1を組み立てることが可能となる。
【0054】
さらに、透光ロッド20の光入射端の外形に沿った形状の嵌合部35aを有する取付用板35が、透光ロッド20の光入射端に嵌合された状態で上側筐体30に固定され、押子36及び位置調整ネジ38が透光ロッド20の他端に設けられている。これにより、透光ロッド20の回転を抑制しつつ、分光部5の長手方向の位置調整を行うことができ、分光部5の位置調整を容易化して、分光装置1を組み立てることが可能となる。
【0055】
また、透光ロッド20の両端に弾性部材23が嵌合されることで、壁部52,52の間に、分光部5を保持部50に対して離間させつつしっかりと位置決めされた状態で固定されるように、透光ロッド20を筐体10で保持することができる。また、透光ロッド20の耐振動性を確保でき、透光ロッド20を保護することができる。
【0056】
また、分光部5が保持部50に収容された状態において、壁部52,52は、透光ロッド20を超える高さを有している。このため、壁部52,52によって透光ロッド20の位置決めがより確実になるとともに、透光ロッド20及びダイクロイックミラーDMnを保護することができる。
【0057】
さらに、透光ロッド20に薄膜のダイクロイックミラーDMnが形成されることで、分光部5をコンパクト化することができ、分光装置1をコンパクト化することが可能となる。また、複雑な構成の分光部5とすることも可能となる。
【0058】
(変形例)
図12は、分光装置1の変形例を示す図である。ここでは、上記実施形態の分光装置1との相違点を中心に説明する。図12に示すように、この変形例の分光装置1では、保持部50の壁部52,52の互いに対向する面である対向面52a,52aのそれぞれに複数のミラー溝56が設けられている。複数のミラー溝56はそれぞれ、各フィルタ嵌込孔53の中心軸と本体部51の幅方向とで規定される平面が対向面52a,52aに交差する直線上に中心点を有し、本体部51の延在方向において45度の角度をもって形成されている。また、複数のミラー溝56はそれぞれ、他方の対向面52aに設けられたミラー溝56と対向しており、対向するミラー溝56と略同一の形状を有している。また、各ミラー溝56は、一端が取付面52bまで達しており、ダイクロイックミラーDMnの幅方向の端部を挿入可能な程度の幅を有している。
【0059】
また、分光部5は、ダイクロイックミラーアレイ21のみから構成されており、透光ロッド20及び弾性部材23を有しない。このダイクロイックミラーアレイ21は、板状のダイクロイックミラーDMnの配列である。各ダイクロイックミラーDMnは、対向面52a,52a間の離間距離よりも大きい幅を有し、互いに対向するミラー溝56,56に嵌合可能に形成されている。
【0060】
変形例の分光装置1では、このミラー溝56のそれぞれに直接ダイクロイックミラーDMnが挿入され、嵌合されることで、分光部5が保持部50に保持される。このため、入射光の入射方向における分光部5(ダイクロイックミラーDMn)の位置調整を行うことなく、分光装置1を組み立てることが可能となる。
【0061】
なお、本発明に係る分光装置は本実施形態に記載したものに限定されない。本発明に係る分光装置は、各請求項に記載した要旨を変更しないように実施形態に係る分光装置1を変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0062】
例えば、ダイクロイックミラーDMnはそれぞれ、特定波長より短波長の光を透過し、該波長以上の波長を反射する波長帯域特性を有してもよい。この場合、ダイクロイックミラーDM1は、ダイクロイックミラーDMnのうち光透過帯域の最長波長が最大のダイクロイックミラーである。そして、ダイクロイックミラーDM1〜ダイクロイックミラーDM8は、光透過帯域の最長波長が大きい順に、入射光の入射方向において45度の角度をもって透光ロッド20内に配列されている。また、最終段のダイクロイックミラーであるダイクロイックミラーDM8は、入射光を反射する反射ミラーとしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…分光装置、2…光電子増倍管(光検出部)、5…分光部、10…筐体、14…マルチアノード、20…透光ロッド(ロッド部材)、23…弾性部材、25…波長選択部、30…保持部、35…取付用板(固定用部材)、36…押子(押圧用部材)、38…位置調整ネジ(押圧用部材)、50…保持部、51…本体部、52…壁部、BPFk…バンドパスフィルタ(波長選択素子)、Cm…チャンネル(電子増倍経路)、DMn…ダイクロイックミラー(分光素子)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を互いに異なる波長帯域の光に分光して各波長帯域の光を検出する分光装置であって、
互いに異なる波長帯域特性を有する複数の分光素子が配列された分光部と、
前記分光素子の各々に対向して設けられた複数の波長選択素子を有する波長選択部と、
前記複数の波長選択素子からの透過光を光電変換する光電面と、前記複数の波長選択素子の各々に対応して設けられた複数の電子増倍経路と、前記電子増倍経路の各々に対応して設けられた複数のアノードとを有する光電子増倍管を備えた光検出部と、
前記波長選択部を筐体内で保持する保持部と、
を備え、
前記保持部は、前記波長選択素子が一方向に配列された本体部と、前記本体部から互いに対向するように突出する一対の壁部と、を含み、
前記分光素子は、前記波長選択素子の配列方向に沿って前記一対の壁部の間に配列されていることを特徴とする分光装置。
【請求項2】
前記分光部は、透光性を有する材料からなるロッド部材を更に有し、
前記分光素子は、前記ロッド部材の長手方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項1に記載の分光装置。
【請求項3】
前記壁部は、前記ロッド部材を超える高さを有していることを特徴とする請求項2に記載の分光装置。
【請求項4】
前記ロッド部材と前記保持部とが非接触となっていることを特徴とする請求項2又は3に記載の分光装置。
【請求項5】
前記ロッド部材の両端には、それぞれ弾性部材が嵌合されており、
前記ロッド部材は、前記弾性部材を介して前記一対の壁部の間に収容されていることを特徴とする請求項4に記載の分光装置。
【請求項6】
前記ロッド部材の一端に嵌合された状態で前記筐体に固定される固定用部材と、
前記ロッド部材の他端に設けられ、前記ロッド部材を前記他端側から前記一端側に押圧した状態で前記筐体に固定される押圧用部材と、
を更に備える請求項2〜5のいずれか一項に記載の分光装置。
【請求項1】
入射光を互いに異なる波長帯域の光に分光して各波長帯域の光を検出する分光装置であって、
互いに異なる波長帯域特性を有する複数の分光素子が配列された分光部と、
前記分光素子の各々に対向して設けられた複数の波長選択素子を有する波長選択部と、
前記複数の波長選択素子からの透過光を光電変換する光電面と、前記複数の波長選択素子の各々に対応して設けられた複数の電子増倍経路と、前記電子増倍経路の各々に対応して設けられた複数のアノードとを有する光電子増倍管を備えた光検出部と、
前記波長選択部を筐体内で保持する保持部と、
を備え、
前記保持部は、前記波長選択素子が一方向に配列された本体部と、前記本体部から互いに対向するように突出する一対の壁部と、を含み、
前記分光素子は、前記波長選択素子の配列方向に沿って前記一対の壁部の間に配列されていることを特徴とする分光装置。
【請求項2】
前記分光部は、透光性を有する材料からなるロッド部材を更に有し、
前記分光素子は、前記ロッド部材の長手方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項1に記載の分光装置。
【請求項3】
前記壁部は、前記ロッド部材を超える高さを有していることを特徴とする請求項2に記載の分光装置。
【請求項4】
前記ロッド部材と前記保持部とが非接触となっていることを特徴とする請求項2又は3に記載の分光装置。
【請求項5】
前記ロッド部材の両端には、それぞれ弾性部材が嵌合されており、
前記ロッド部材は、前記弾性部材を介して前記一対の壁部の間に収容されていることを特徴とする請求項4に記載の分光装置。
【請求項6】
前記ロッド部材の一端に嵌合された状態で前記筐体に固定される固定用部材と、
前記ロッド部材の他端に設けられ、前記ロッド部材を前記他端側から前記一端側に押圧した状態で前記筐体に固定される押圧用部材と、
を更に備える請求項2〜5のいずれか一項に記載の分光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−242117(P2012−242117A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109426(P2011−109426)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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