説明

分光計システム内の信号を処理する装置、方法及びコンピュータ可読の記憶媒体

【課題】 サンプル信号スキャンを受け取りかつ処理するステップを含む方法が提供される。
【解決手段】 このサンプル信号スキャンを処理するステップには、内積演算をサンプル信号スキャンと複数の固有ベクトルのそれぞれに適用して、複数の対応する係数を発生するステップ、及びこのサンプル信号スキャンを固有ベクトルと対応する係数との1次結合から減算して、これにより補正されたサンプル信号スキャンを発生するステップが含まれる。この点で、複数のバックグラウンド基準信号スキャンを特異値分解技術に基づいて分解することによって、固有ベクトルが発生される。信号スキャンには、周波数の別個のセットにおける複数の電磁信号測定値が含まれる。ここで、電磁信号がベース媒体だけを含む(バックグラウンド基準信号スキャン用)、又はベース媒体とサンプル媒体との両方を含む(サンプル信号スキャン用)サンプル・セルを通過する分光計システムによって取得される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の具体例としての実施形態は、全体的に、分光計システム及び電磁信号を伝搬させる方法に関し、さらに詳細には、分光計システム内の信号を処理するための装置、方法及びコンピュータ可読の記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
スペクトル線幅が狭く、コヒーレント長が長い持続波(CW)チューナブル・ソースを用いる分光分析には、高いスペクトル・コントラスト、周波数選択性及び優れた感度に対して周知の利点がある。スキャニング式CWテラヘルツ(THz)分光計は、この技術の最良な例である。そのようなシステムでは、送信機−受信機復調処理における位相安定性は、送信された電界強度の正確な測定を得るため及び分光計内のサンプルからの結果として生じる吸収損失の特性を示すために必要とされる。しかしながら、THz分光計によって発生される信号は、分光計のキャビティ又はサンプル・セル内で重ね合わされた定在波パターンによって作られた強いバックグラウンド・シグナチャーを含むことがある。
【0003】
分光計の経路長が増加するにつれて、測定波長の関数として振幅内の変動も、周波数において増加する。その時、THz周波数の別個のセットにおける分光計取得データは、サンプル下でバックグラウンド・パターンとすることができる。結果として生じたバックグラウンド・シグナチャーは、機器内の実際の定在波構造のエイリアシングの可能性があり、測定周波数のサンプリングを変えるにつれて形状および振幅を変える可能性がある。
【0004】
スキャニング分光計内で発生する小さな周波数キャリブレーション・ドリフトが存在する中で、周波数サンプリングに対するバックグラウンド構造体の感度は、複数の測定にわたってその構成体の中で変化を引き起こす可能性がある。スキャン間のバックグラウンドにおける変動は、供試サンプルのスペクトル特性を正確に決定するために、サンプルを用いない基準値で測定値を除算する単一比率技術(simple ratio technique)の効果を減少させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の背景に照らして、本発明の実施形態は、分光計システム内の信号を処理するための改良された装置、方法及びコンピュータ可読の記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、サンプル信号スキャンを受信及び処理するステップを含む方法が提供される。このサンプル信号スキャンを処理するステップには、複数の対応する係数を発生するために内積演算(inner-product operation)をサンプル信号スキャンと複数の固有ベクトルのそれぞれに加えるステップと、サンプル信号スキャンを固有ベルトと対応する係数との1次結合から減算するステップとが含まれ、これにより、補正されたサンプル信号スキャンが発生される。この関連で、固有ベクトルは、特異値分解技術に基づいて複数のバックグラウンド基準信号スキャンを分解することによって発生され、またこのため、この方法には、固有ベクトルを発生するために、複数のバックグラウンド基準信号スキャンを受信及び分解するステップが含まれる。
【0007】
信号スキャンは、別個の周波数のセットにおいて複数の電磁信号測定値を含む。ここで各測定値は、電磁信号がサンプル媒体を有する(サンプル信号スキャン用)又はサンプル媒体を有しない(バックグラウンド基準信号スキャン用)ベース媒体を含むサンプル・セルを通過する分光計システムによって取得される。
【0008】
この方法は、サンプル信号スキャンを複数の周波数セグメントに分けるステップ、サンプル信号スキャン・セグメントを処理して、複数の補正サンプル信号スキャン・セグメントのそれぞれを発生するステップ、及び補正サンプル信号スキャン・セグメントを組み立てるステップを含むこともできる。各サンプル信号スキャン・セグメントに対して、これらのサンプル信号スキャン・セグメントを処理するステップは、対応する係数のそれぞれのセットを発生するために内積演算をサンプル信号スキャン・セグメントと固有ベクトルのそれぞれのセットとに加えるステップと、このサンプル信号スキャン・セグメントを固有ベクトル及び対応する係数のそれぞれのセットの1次結合から減算するステップとを含むことができ、これにより、それぞれ補正されたサンプル信号スキャン・セグメントを発生する。
【0009】
前述された固有ベクトルのセットは、複数のバックグラウンド基準信号スキャンをバックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの複数のセットに分けて、かつ特異値分解技術に基づいて、これらのバックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの各セットを分解することによって発生され得る。このため、この方法は、複数のバックグラウンド基準信号スキャンを受け取り、かつ複数のバックグラウンド基準信号スキャン・セグメントのセットに分けるステップ、及び複数の固有ベクトルのセットを発生するために、これらのバックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの各セットを分解するステップも含むことができる。
【0010】
この方法は、補正されたサンプル信号の中の電磁信号測定値に対応する、指定された吸収しきい値を超える電磁信号測定値をサンプル信号スキャンの中で識別するステップをさらに含むことができる。次に、この方法は、修正されたサンプル信号スキャンを発生するために識別された電磁信号測定値を取り除くステップ、及びこの修正されたサンプル信号スキャンを処理するステップを含むことができる。そのような場合、修正されたサンプル信号スキャンを処理するステップは、第2の複数の対応する係数を発生するために、修正されたサンプル信号スキャンと複数の固有ベクトルのそれぞれとに内積演算を加えるステップ、及びサンプル信号スキャンを固有ベクトル及び第2の対応する係数の1次結合から減算するステップとを含むことができ、これにより、さらに補正されたサンプル信号スキャンを発生する。
【0011】
さらに、この方法は、サンプル信号スキャンのバックグラウンド基準信号スキャンの平均に対する比率を計算するステップ、及びこの比率に基づいて、この補正されたサンプル信号スキャンを調整するステップを含むことができる。
【0012】
本発明の別の態様によれば、分光計システム内の信号を処理するための装置及びコンピュータ可読の記憶媒体が提供される。従って、本発明の例示的な実施形態は、分光計システム内の信号を処理するための改良された装置、方法及びコンピュータ可読の記憶媒体を提供する。前述され、また以下で説明されるように、本発明の例示的な実施形態は、従来技術によって特定された問題を解決しかつ付加的な利点を提供することができる。
【0013】
本発明をこのように一般的な用語で説明してきたが、ここで添付の図面を参照する。これらの図面は、必ずしも縮尺通りには描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の1つの例示的な実施形態による分光計システムの概略ブロック図である。
【図2】本発明の例示的な実施形態に基づいて、周波数スペクトルを通して分光計システムを掃引する方法における種々のステップを示すフローチャートである。
【図3】処理装置が本発明の例示的な実施形態に基づいて実行するように構成される動作を例示するブロック図である。
【図4】処理装置が本発明の例示的な実施形態に基づいて実行するように構成される動作を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで添付した図面を参照して、本発明を以下で一層完全に説明する。これらの図面には、本発明の好ましい実施形態が示されている。しかしながら、これらの発明は多くの異なった形態で具体化することができ、また本願に記載された実施形態に限定されると解釈してはならない。むしろ、この開示内容が詳細で完全であり、そして発明の範囲を当業者に十分に伝えるように、これらの実施形態が提供される。この件について、等式によって関連付けられた多数の数学的又は数値的表現が、本願では参照される。しかしながら、この等式は絶対的又は近似の等式を指す可能性があり、本発明の代表的な実施形態が技術的な許容差などによってシステム及び方法の中で発生することがある変動の原因になる可能性があることは理解されたい。さらに、多数の変数が様々な実例において添え字を含む数学的な記号によって表されるが、これらの記号や添え字は説明の目的に対してのみ示されるのであり、本発明の範囲を限定すると解釈してはならないことは理解されよう。同じ参照番号は、全体を通じて同じ構成部品を示している。
【0016】
図1及び図2は、本発明の例示的な実施形態から恩恵を受ける分光計のシステム及び方法を例示している(本願で使用されている「例示的な」という用語は、「実施例、具体例、又は例証として機能する」ことを指している)。しかしながら、例示されまた後で説明されるこの分光計のシステム及び方法は、本発明の例示的な実施形態から恩恵を受けるシステム及び方法の1つのタイプを例示しているだけであり、このため、本発明の範囲を限定すると解釈してはならないことは理解されたい。本発明の例示的な実施形態から恩恵を受ける別の分光計のシステム及び方法の実施例は、2010年2月25日に出願された「System and Method for Magnitude and Phase Retrieval by Path Modulation」という題名の、米国特許出願第12/712,736号の中で説明されている。第12/713,736号出願の内容は、引用することにより、本明細書の一部を成すものとする。
【0017】
分光計のシステム及び方法に関する幾つかの実施形態が、実施例のために例示されまた以下で説明されるが、電磁信号が伝搬する他の種類のシステム及び方法も、本発明を容易に利用できる。さらに、本発明のシステム及び方法は、主に、電磁スペクトルのTHz(又はmmW)領域の信号に関連して説明される。しかし、本発明の実施形態のシステム及び方法は、電磁スペクトルのTHz領域の内外の両方で種々の他の用途に関連して使用されることができる。
【0018】
図示のように、本発明の1つの例示的な実施形態の分光計システム10は、所与の周波数のコヒーレント放射ビーム(電磁波)を伝送するように構成されたトランスミッタ12を備えている。このトランスミッタは、当業者に周知の多数の異なるトランスミッタのいずれかを備えることができる。例えば、1つの例示的な実施形態では、このトランスミッタはフォトミキサ式トランスミッタ(photomixer transmitter)を備えている。そのような場合、トランスミッタは高速光導電性ダイオード(すなわち、フォトミキサ)を備える。この光導電性ダイオードは、ビーム・コンバイナ/スプリッタ16及び光結合された第1の光学経路18(例えば、光ファイバ)を介して2つのレーザ光源14a、14bで励起される。これに関して、レーザ光源は、ω及びωでオフセット周波数を含む電界(すなわち、Eω1及びEω2)を有する信号を放射するように構成することができる。また、周波数ω及びωは、角周波数として又は対応する時間周波数(f=ω/2π)として表すことができることに注意されたい。
【0019】
トランスミッタ12は、正弦波変調電圧を発生するように構成された、電源22を含むトランスミッタ・バイアス変調器(transmitter bias modulator)20に接続される。この正弦波変調電圧を用いて、トランスミッタのフォトミキサがバイアスされるが、システムは信号を周波数変調する必要はないことは理解されよう。フォトミキサを、螺旋、ダイポール又はスロット・アンテナなどのアンテナの駆動点に配置することによって、差周波数電流(difference-frequency current)が差周波数フォトンに変換される。この結果は、高度にチューナブルで、連続波(CW)であり、1つの(擬似ガウス)空間モード内に含まれた高度にコヒーレントな放射ソースで、また送信された電界ETMを有する。そのようなトランスミッタに関するより多くの情報については、2002年2月19日に発行された「Quasi-Optical Transceiver Having an Antenna with Time Varying Voltage」という題名の米国特許第6,348,683号を参照されたい。
【0020】
このように、1つの例示的な実施形態の方法には、図2のブロック42及び48に示されているように、伝送周波数を選択するステップ、その後、トランスミッタ12からその周波数で放射ビーム(すなわち、ソース・ビーム)を伝送するステップが含まれる。この伝送周波数は、多数の異なる方法のいずれかを用いて選択されることができる。しかしながら、測定吸収シグナチャー(measured absorption signature)に基づいてサンプルを検出するために、伝送周波数が一般に、吸収シグナチャーが規定される周波数の範囲の中で選択される。次に、フォトミキサ式トランスミッタでは、フォトミキサは、選択された周波数ω及び周波数ωでチューナブル・レーザ光源を用いて励起されることができ、これにより、差周波数又は伝送周波数(すなわち、ω−ω)が選択される。
【0021】
トランスミッタ12からの放射ビームは、コリメートされた放射ビームを作るためにコリメータ・レンズ24を通過する。次に、このビームは、ビームが通過する反射器26a及び26bによって跳ね返され、また分析されるサンプル媒体と周囲空気などのベース媒体とを含むサンプル・セル26を通過する。理解されるように、サンプル媒体とベース媒体とは、放射ビームが少なくとも部分的に透過できる多数の種々の形状のいずれかを有することができる。例えば、サンプル媒体とベース媒体は、固体、液体、ガス、プラズマ又はエアゾールを含むことができる。より詳細には、種々の好ましい実施形態では、周囲空気のベース媒体は、ガスの形態にすることができるが、サンプルはガス又はエアゾールの形態にすることができる。
【0022】
放射ビームがサンプル・セル26を通過するため、このサンプル・セルの中のサンプル及びベース媒体は、ビームの少なくとも一部、より詳細には、ビームの電界の少なくとも一部を吸収する。放射ビームの残りの吸収されない部分(すなわち、受け取られた信号)は次に、サンプル・セルを抜け出る。サンプル信号は、次に、集束レンズ28に伝搬する。この集束レンズ28から、集束信号が受取り信号ERPとしてレシーバ30によって取り出される又は他の場合は受け取られる。
【0023】
レシーバは、図2のブロック50で示されたような、受け取られた電界ERPを示す測定値を得る。トランスミッタ12と同様に、レシーバはフォトミキサ・レシーバ(photomixer receiver)(ホモダイン・レシーバ)などの電界検出器を備えている。このフォトミキサ・レシーバは、電界を受け取りまたそれに呼応して対応する電圧を発生するように構成されたアンテナを備えている。このアンテナは、高速光導電体に向けられている。この光導電体はまた、フォトミキサ式トランスミッタ12を励起している同じ2つのレーザ光源14a、14bからのビームで光導電体を励起するために、第2の光学経路32に電気的に接続されている。この関連で、ビーム・コンバイナ/スプリッタ16は、レーザ光源からの信号のそれぞれを、前述された第1の光学経路18と、レシーバのフォトミキサを励起するために別の第2の光学経路(例えば、光ファイバ)に分離することができる。次に、これらの信号は、フォトミキサのコンダクタンスを変調することができる。
【0024】
レシーバ用アンテナによって発生された電圧はフォトミキサ活性物質に与えられ、また変調されたコンダクタンスを通過する電流を生ずる。積の結果である差周波数は、ダウンコンバートされた信号電流IDownである。この信号電流は、対応するダウンコンバートされた電界Eを有し、その1つ又は両方は信号を構成する又は他の態様では信号を表すことができる。そのようなレシーバに関する詳細は、前述された’683号特許を参照されたい。
【0025】
ダウンコンバートされた信号電流IDown及び/又は電界Eは、例えばエイリアス除去フィルタ36を含むレシーバ信号コンディショニング回路34に与えられる。次に、この信号コンディショニング回路の出力は、例えばディジタル信号処理動作を実行する処理装置38に入力される。この点に関しては、この処理装置は、本発明の例示的な実施形態に基づいて動作することができる多数の種々の装置のいずれかを用いて構成することができる。例えば、この処理装置は、コンピュータ(例えば、パーソナル・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、サーバ・コンピュータ、ワークステーション・コンピュータ)又は他の計算装置を備えることができる。この処理装置は、プロセッサやコンピュータ可読の記憶媒体を備えることができる。プロセッサは、例えば、1つ以上のプログラムされた又はプログラム可能な汎用プロセッサ、マイクロプロセッサ、コプロセッサ、コントローラ、専用のディジタル信号プロセッサ及び/又は1つ以上の集積回路(例えば、ASIC、FPGA)、ハードウェア・アクセラレータ、処理回路などを備えることができる。
【0026】
処理装置38のコンピュータ可読記憶媒体は、揮発性及び/又は不揮発性のメモリを含むことができ、そのメモリは組み込み型及び/又は取外し可能とすることができる。またコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、リードオンリー・メモリ、フラッシュ・メモリ、磁気記憶装置(例えば、ハードディスク、フロッピー(登録商標)・ディスク・ドライブ、磁気テープなど)、光ディスク・ドライブ及び/又はメディア、不揮発性ランダム・アクセス・メモリ(NVRAM)などを含むことができる。このコンピュータ可読記憶媒体は、本発明の例示的な実施形態に基づいて、任意の多数の様々なデータ、コンテンツなどを格納することができる。例えば、このコンピュータ可読の記憶媒体は、コンピュータが実行する、又は別の態様では、コンピュータが処理する実行可能な命令又はコンピュータ可読の命令を格納するように構成されうる。
【0027】
分光計システム10が信号を周波数変調する場合、プロセッサ38が実行する信号処理動作には、アナログ−ディジタル変換器(A/D)40で信号を変調周波数で直接サンプリングすること、及びサンプル・データをプロセッサの離散フーリエ変換(DFT)処理を行うことなどによって、ダウンコンバートされた信号Eの振幅を回復する動作が含まれる。別の方法では、例えば、分光計システムは、ダウンコンバートされた信号Eをさらに処理するために、ロックイン増幅器(不図示)などの同期復調器をさらに備えることができる。この点に関して、そのような同期復調器は、変調周波数ωで動作する局部発振器を備えて、これによりダウンコンバートされた信号の振幅を回復することができる。
【0028】
分光計としての動作に当たっては、システム10は、図2のブロック54及び56の中で示されているように、多数の周波数を通してスキャンされる、周波数ω及び周波数ωでチューナブル・レーザ光源を用いてトランスミッタ12及びレシーバ30のフォトミキサを励起することによって、周波数範囲の多数の伝送周波数を通してスキャンする。周波数範囲内の各伝送周波数に対して、またこれにより異なる伝送周波数を有する各放射ビームに対して、プロセッサ38はダウンコンバートされた信号電流IDownの振幅及び/又は位相を測定することができる。結果として生じた伝送振幅及び/又は位相、及び関連付けられた伝送周波数のコレクションは、図2のブロック58の中で示されているように、サンプルが識別されるサンプル・セル26内のサンプルに対して測定された吸収又は分散シグナチャーを明確にすることができる。
【0029】
背景技術のセクションで説明されたように、分光計(例えば、THz分光計)が発生した信号は、サンプル・セル(例えば、サンプル・セル26)内の重ね合わされた定在波パターンによって作られた強いバックグラウンド・シグナチャーを含んでいる。分光計の経路長が増加するにつれて、測定波長の関数として振幅内の変動もまた周波数の中で増加する。その時、所定のスペクトルにわたってTHz周波数の別個のセットにおける分光計取得データは、サンプル下でバックグラウンド・パターンであってよい。結果として生じたバックグラウンド・シグナチャーは、計器内の実際の定在波構造のエイリアシングの可能性があり、測定周波数のサンプリングを変えるにつれて形状および振幅を変える可能性がある。
【0030】
また背景技術の中で説明されたように、スキャニング分光計内で発生する小さな周波数キャリブレーション・ドリフトが存在する中で、周波数サンプリングに対するバックグラウンド構造体の感度は、複数の測定にわたってその構成体の中で変化を引き起こす可能性がある。スキャン間のバックグラウンドにおける変動は、試験されるサンプルのスペクトル特性を正確に決定するために、サンプルを用いない基準値で測定値を除算する単一比率技術の効果を減少させる可能性がある。
【0031】
上記に鑑みて、本発明の例示的な実施形態による処理装置38は、直交バックグラウンド減算又は抑制(OBS)技術に基づいて得られた測定値を処理し、複雑で変化するバックグラウンド構造体を得られた測定値から少なくとも部分的に分離して、これにより、供試サンプルのスペクトルを明らかにするように構成されることができる。本願で説明されるように、得られた測定値は、所定のスペクトル内の別個の周波数のセットで測定されたダウンコンバートされた電界(又は信号)Eの形式にすることができるが、これらの測定値は、同様の周波数の別個のセットにわたって測定されたダウンコンバートされた信号電流IDownの形式にすることもできることは理解されたい。また本願で説明されているように、OBS技術を処理するステップは、対数空間内で実行されても良いが実行される必要もないため、基準測定値の除算は減算に相当する。
【0032】
ここで、図3及び図4を参照する。これらの図面は、本発明の例示的な実施形態に基づいて処理装置38が実行するように構成された動作のブロック図を例示している。例示されたブロック図は、処理装置によって受け取られた又は計算された信号又は信号の測定値を例示するために多数のスキャンを含んでいる。「信号」に言及することは、処理装置によって受け取られるように、「信号の測定値」に言及するのと同じように使用されることを理解されたい。例示されたスキャンは単に例証するために提示されるのであり、また信号、測定値又は他のデータは、本発明の精神や範囲から逸脱することなく多数の異なった形式で受け取られ、計算され又は提示されることも理解されたい。
【0033】
本発明の例示的な実施形態によれば、処理装置38は、N個のバックグラウンド基準信号スキャン60を取得するステップ又は他の態様では呼び込むステップを含む工程によって信号スキャンを処理するように構成されることができる。本願で説明されているように、各信号スキャンは、着目するスペクトル内の別個の周波数のセットにおける信号測定値を含んでいる。バックグラウンド基準信号スキャンが行われる場合、各測定値は、ベース媒体(例えば、周囲空気)を含むがサンプル媒体を含まないサンプル・セル26を通過する伝送された信号から得られる。次に、処理装置は、特異値分解(SVD)技術62などに基づいて、N個の直交固有ベクトル(orthogonal eigenvector)64のセットを発生するようにバックグラウンド基準信号スキャンを分解するように構成されうる。結果として生じる固有ベクトルは、周波数の関数としてバイアス関数のセットを示すことができ、その1次結合はN個のバックグラウンド基準信号スキャンのそれぞれを再生することができる。次に、固有ベクトルは処理装置によって使用されて、続いて起こるサンプル信号スキャンを処理することができる。バックグラウンド基準信号スキャンはサンプル信号を処理する前のいかなる時点でも取得及び分解されうることは理解されたい。その結果、バックグラウンド基準信号スキャン又は結果として生じる固有ベクトルは、処理装置の中に又は他の態様ではそれに関連して組み入れられたメモリに格納されることができ、また固有ベクトルを発生する及び/又はサンプル信号スキャンを処理するために適当な時点で使用されることができる。
【0034】
固有ベクトル64を発生した後のある時点で、サンプル・セル26内に挿入されたサンプル媒体を用いて、サンプル信号スキャン66を得ることができる。ここで、スキャンの各測定値が、サンプル及びベース媒体を含むサンプル・セルを通過する伝送信号から得られる。処理装置38は、サンプル信号スキャンを受け取りかつ固有ベクトルのそれぞれに投影するように構成されて、対応する係数70を発生することができる。この投影は、例えば、内積(ドット積)演算68を固有ベクトル及びサンプル信号スキャンに適用することによって達成されることができる。それ自体、固有ベクトル及びサンプル信号スキャンの転置行列を乗算することによって達成されうる。サンプル信号スキャンが固有ベクトルのそれぞれに投影される方法には関係なく、固有ベクトルはその対応する係数と線形結合72されて、補正値74を発生する。この補正値はサンプル信号スキャンから減算76されて、補正されたサンプル信号スキャンを生じる。
【0035】
処理装置38が実行するOBS技術は、バックグラウンド基準固有ベクトルによって測られたスペクトルの空間に対して直交するサンプル信号スキャンのコンテンツを明らかにすることができる。処理装置によって実行された技術は、振幅が時間的に変化する重ね合わされた定在波を含むバックグラウンド・シグナチャーを除くことができる。さらに、テラヘルツで、着目するガス・スペクトルは、分子の回転特性によってもたらされたスペクトル線であることを考慮されたい。本発明の例示的な実施形態による分光計システムの分解能は、多数のサンプルの多数のスペクトルをサンプリングする必要がある、多くのこれらの線を分解するには十分である。
【0036】
理解されるように、それぞれM個の測定周波数を有するN個のバックグラウンド基準信号スキャン60のセットに対してSVDを実行することは、N×Mマトリックスの割当てと操作を必要とする。代表的なTHzスペクトルは、10,000から100,000の測定点(周波数)を含み、50個もの数のバックグラウンド基準信号スキャンを得ることができる。図4により詳細に示されるように、他の態様ではそのような信号スキャンを処理するように要求される、別の方法では、高い計算及び記憶リソースの少なくとも一部を軽減するために、種々の実施形態による処理装置38は、信号スキャンをセグメントに分ける、処理する、及び次に、縫い合わせるように構成されることができる。より詳細には、処理装置は、バックグラウンド基準信号スキャン及びサンプル信号スキャン66を複数の重なり合う周波数セグメントに分けるように構成され、そのそれぞれが、図3に関連して前述されたOBS技術に基づいて個別に処理される。セグメントを別個に処理することから生じる重なり合ったスペクトル・セグメントは、スペクトル・バイアス及び傾斜に関連した最小2乗不一致最小化技術(least squares minimization of discrepancy technique)に基づいて組み立てられ(又は縫合され)また平均化される。
【0037】
本発明の例示的な実施形態に基づいてOBS技術を実行する場合、処理装置38は任意のOBS残留物にバイアス補正を与えるように構成されることができる。この点で、発生された固有ベクトル64(又は各セグメントに対する固有ベクトルのセグメント)において、バックグラウンドの平均値は、固有ベクトルの1次結合として表される。その結果、処理装置38によって実行されたOBS技術は、各セグメントの平均値を変えることができる。さらに、縫合再構成処理の間に、1つのセグメントは一定に保たれ、この間に、処理装置は一定に保たれているセグメントに基づいて、バイアス及び傾斜に関連して最適に他のセグメントを再構成する。結果として、補正されない場合、測定されたスペクトルの絶対バイアスは、この処理の間に失われる。
【0038】
広帯域吸収ガス種(broadband absorbing gas species)を正確に検出することは、絶対吸収振幅が処理された測定値に対して復元されることを必要とする。このため、本発明の例示的な実施形態の処理装置38は、サンプル信号とバックグラウンド信号との間の比率を計算し、次に、この比率に適合するように最終スペクトルの平均信号を設定し、これにより、OBS残留物によりバイアスを補正するように構成されることができる。より詳細には、例えば、処理装置は、平均サンプル信号と平均バックグラウンド信号との間の差を計算するように構成されうる。この動作は全ての周波数に対して実行される。次に、処理された最終スペクトルは、その平均が全ての周波数にわたって計算された差に一致するように調整される。これらの計算がサンプル及びバックグラウンド振幅に対して実行されると、これは、バックグラウンド信号に対するサンプル信号の比率に対して処理されたデータの平均値伝送を設定する効果がある。
【0039】
さらに、サンプル信号のスペクトルの中に高い傾斜が存在する場合、対応する固有ベクトルにセグメントを投影することにより、異常に高い係数70が発生され、これは今度は結果として、高い傾斜の形態を有するセグメント内のバックグラウンド信号を正確に抑制することを不可能にする。この状態に対処するために、例示的な実施形態の処理装置38は、OBS技術を反復的な方法で使用する。例えば、最初にサンプル信号スキャン(図3を参照のこと)を処理した後で、規定の吸収しきい値を超える補正されたサンプル信号スキャン内の点に対応するサンプル信号スキャン内のデータポイントが識別され、一時的に元のサンプル信号スキャンから除かれる。次に、修正された未加工のサンプル信号スキャンは、二度目に固有ベクトルに投影されて(例えば、内積演算68を適用されて)、より正確な係数を決定する。次に、固有ベクトルのより正確な係数との結果として生じる1次結合が、元のサンプル信号スキャンから差し引かれて(高い吸収点を含む)、さらにより正確な修正されたサンプル信号スキャンが得られる。
【0040】
本発明の実施形態の1つの態様によれば、図3や図4のブロック図で例示されているような、処理装置38が実行した動作は、様々な手段によって実行されることができる。ブロック図の各ブロック又は動作、及び/又はブロック図内のブロックと動作の組み合わせは、種々の手段によって実行され得ることは理解されよう。ブロック図のブロック又は動作を実行する手段、ブロック図内のブロックと動作の組み合わせ、又は本願で説明された本発明の実施形態の他の機能は、格納されている1つ以上のコンピュータ・プログラム・コード命令、プログラム命令、又は実行可能なコンピュータ可読のプログラム・コードを有するコンピュータ可読の記憶媒体を備えるハードウェア、及び/又はコンピュータ・プログラム製品を含むことができる。これに関連して、プログラム・コード命令は、コンピュータ可読の記憶媒体に記憶され、処理装置などのプロセッサによって実行される。
【0041】
理解されるように、プログラム・コード命令は、コンピュータ可読の記憶媒体からコンピュータ又は他のプログラム可能装置(例えば、プロセッサ、メモリなど)にロードされて特定の装置を作り、この特定の装置がブロック図のブロック又は動作で指定された動作を実行する手段になる。これらのプログラム・コード命令も、特別な方法で機能するように、コンピュータ、プロセッサ、又は他のプログラム可能な装置に命令できるコンピュータ可読の記憶媒体に格納されて、特定の装置又は特定の製品を作ることができる。コンピュータ可読の記憶媒体の中に格納された命令は、製品を製造することができ、これらの製品はブロック図のブロック又は動作の中で指定された機能を実施する手段になることができる。プログラム・コード命令はコンピュータ可読の記憶媒体から取り出され、そしてコンピュータ、プロセッサ、又は他のプログラム可能な装置にロードされて、これらのコンピュータ、プロセッサ、又は他のプログラム可能な装置がコンピュータ、プロセッサ、又は他のプログラム可能な装置上で又はそれらによって実行される動作を実行するように構成することができる。プログラム・コード命令の読み出し、ロード、及び実行は、1つの命令が同時に取り出され、ロードされまた実行されるように、順次実行される。幾つかの実施形態では、読み出し、ロード、及び実行は並行して行われるため、複数の命令が一緒に読み出され、ロードされ、及び/又は実行されることができる。プログラム・コード命令の実行はコンピュータ実行によるプロセスを作り出して、コンピュータ、プロセッサ、又は他のプログラム可能な装置によって実行される命令が、ブロック図のブロック又は動作の中で指定された機能を実行する動作を提供することができる。
【0042】
その結果、ブロック図のブロック又は動作に関連した命令のプロセッサによる実行、又はブロック図のブロック又は動作に関連したコンピュータ可読の記憶媒体内の命令の格納は、指定された機能を実行するための動作の組み合わせを支援する。ブロック図の1つ以上のブロック又は動作、及びブロック図のブロック又は動作の組み合わせが、特殊目的のハードウェア・ベースのコンピュータ・システム及び/又は特定の機能を実行するプロセッサ、又は特殊目的のハードウェアとプログラム・コード命令の組み合わせによって実行されることも理解されたい。
【0043】
本発明の多くの変形例及び他の実施形態は、前述された説明及び関連付けられた図面の中で提示された教義の利点を有する本発明が属する技術分野に精通した者には思い浮かぶであろう。従って、本発明は開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、また変形例及び他の実施形態は添付された特許請求の範囲の中に含まれるものとすることは理解されたい。本願の中で特定の用語が使用されるが、それらの用語は一般的でまた説明のためのみに使用されるものであり、本発明の範囲を限定する目的で使用されたものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
別個の周波数のセットにおいて複数の電磁信号測定値を含むサンプル信号スキャンを受け取るように構成されたプロセッサであって、前記各測定値は、電磁信号がサンプル媒体とベース媒体とを含むサンプル・セルを通過する分光計システムによって取得された、プロセッサを備え、
前記プロセッサは、前記サンプル信号スキャンを複数の周波数セグメントに分けるように構成され、
前記プロセッサは、サンプル信号スキャン・セグメントを処理してそれぞれ複数の補正されたサンプル信号スキャン・セグメントを発生するように構成され、前記サンプル信号スキャン・セグメントを処理するように構成されたプロセッサが、各サンプル信号スキャン・セグメントに対して、
内積演算を前記サンプル信号スキャン・セグメントと固有ベクトルの複数のセットから固有ベクトルのそれぞれのセットとに適用して、対応する係数のそれぞれのセットを発生し、前記固有ベクトルのセットは、複数のバックグラウンド基準信号スキャンをバックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの複数のセットに分割し、かつ前記バックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの各セットを特異値分解技術に基づいて分解することによって発生され、前記各バックグラウンド基準信号スキャンが周波数の別個のセットにおいて複数の電磁信号測定値を含み、前記各それぞれの測定値は電磁信号がサンプル媒体なしのベース媒体を含むサンプル・セルを通過する前記分光計システムによって取得され、
前記サンプル信号スキャン・セグメントを前記固有ベルトのそれぞれのセットと対応する係数との1次結合から減算して、これによりそれぞれ補正されたサンプル信号スキャンを発生する
ように構成され、
前記プロセッサは、前記補正されたサンプル信号スキャン・セグメントを組み立てるように構成される、
装置。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記複数のバックグラウンド基準信号スキャンを受け取り、そしてバックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの複数のセットに分割し、かつ前記バックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの各セットを分解して、固有ベクトルの複数のセットを発生する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサが、指定された吸収しきい値を超える補正されたサンプル信号内の電磁信号測定値に対応するサンプル信号スキャン内の電磁信号測定値を識別するように構成され、
前記プロセッサは、前記識別された電磁信号測定値を取り除いて、修正されたサンプル信号スキャンを生成するように構成され、
前記プロセッサは、前記修正されたサンプル信号スキャンを処理するように構成され、
内積演算を前記修正されたサンプル信号スキャンと複数の固有ベクトルのそれぞれとに適用して、第2の複数の対応する係数を発生し、かつ、
前記サンプル信号スキャンを前記固有ベルトと前記第2の対応する係数との1次結合から減算して、これによりさらに補正されたサンプル信号スキャンを発生する
ように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記サンプル信号スキャンの前記バックグラウンド基準信号スキャンの平均値との比率を計算し、かつ前記比率に基づいて補正されたサンプル信号スキャンを調整するようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
別個の周波数のセットにおいて複数の電磁信号測定値を含むサンプル信号スキャンを受け取るように構成されたプロセッサであって、前記各測定値は、電磁信号がサンプル媒体とベース媒体とを含むサンプル・セルを通過する分光計システムによって取得される、プロセッサを備え、
前記プロセッサは、前記サンプル信号スキャンを処理するように構成され、
内積演算を前記サンプル信号スキャンと複数の固有ベクトルのそれぞれとに適用して、複数の対応する係数を発生し、前記複数の固有ベクトルが、複数のバックグラウンド基準信号スキャンを特異値分解技術に基づいて分解することによって発生され、前記各バックグラウンド基準信号スキャンは周波数の別個のセットにおいて複数の電磁信号測定値を含み、前記各それぞれの測定値は電磁信号がサンプル媒体なしのベース媒体を含むサンプル・セルを通過する前記分光計システムによって取得され、かつ、
前記サンプル信号スキャンを前記固有ベルトと前記対応する係数との1次結合から減算して、補正されたサンプル信号スキャンを発生する、
ように構成されることを含み、
前記プロセッサは、指定された吸収しきい値を超える補正されたサンプル信号内の電磁信号測定値に対応するサンプル信号スキャン内の電磁信号測定値を識別するように構成され、
前記プロセッサは、前記識別された電磁信号測定値を取り除いて、修正されたサンプル信号スキャンを作るように構成され、
前記プロセッサは、前記修正されたサンプル信号スキャンを処理するように構成され、
内積演算を前記修正されたサンプル信号スキャンと複数の固有ベクトルのそれぞれとに適用して、第2の複数の対応する係数を発生し、かつ、
前記サンプル信号スキャンを前記固有ベルトと前記第2の対応する係数との1次結合から減算して、これによりさらに補正されたサンプル信号スキャンを発生する、
ように構成されることを含む、
装置。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記サンプル信号スキャンの前記バックグラウンド基準信号スキャンの平均値との比率を計算し、かつ前記比率に基づいて補正されたサンプル信号スキャンを調整するようにさらに構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
別個の周波数のセットにおいて複数の電磁信号測定値を含むサンプル信号スキャンを受け取るステップであって、前記各測定値は、電磁信号がサンプル媒体とベース媒体とを含むサンプル・セルを通過する分光計システムによって取得される、受け取るステップと、
前記サンプル信号スキャンを複数の周波数セグメントに分けるステップと、
サンプル信号スキャン・セグメントを処理してそれぞれ複数の補正されたサンプル信号スキャン・セグメントを発生するステップであって、前記サンプル信号スキャン・セグメントを処理するステップは、前記各サンプル信号スキャン・セグメントに対して、
内積演算を前記サンプル信号スキャン・セグメントと固有ベクトルの複数のセットから固有ベクトルのそれぞれのセットとに適用して、対応する係数のそれぞれのセットを発生し、前記固有ベクトルのセットは、複数のバックグラウンド基準信号スキャンをバックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの複数のセットに分割し、かつ前記バックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの各セットを特異値分解技術に基づいて分解することによって発生され、前記各バックグラウンド基準信号スキャンが周波数の別個のセットにおいて複数の電磁信号測定値を含み、前記各それぞれの測定値は電磁信号がサンプル媒体なしのベース媒体を含むサンプル・セルを通過する前記分光計システムによって取得され、かつ、
前記サンプル信号スキャン・セグメントを前記固有ベルトのそれぞれのセットと対応する係数との1次結合から減算して、それぞれ補正されたサンプル信号スキャンを発生する、
ステップを含む、処理するステップと、
前記補正されたサンプル信号スキャン・セグメントを組み立てるステップと、
を含む方法。
【請求項8】
前記複数のバックグラウンド基準信号スキャンを受け取って、バックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの複数のセットに分割するステップと、前記バックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの各セットを分解して、固有ベクトルの複数のセットを発生するステップと、をさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
指定された吸収しきい値を超える補正されたサンプル信号内の電磁信号測定値に対応するサンプル信号スキャンの中の電磁信号測定値を識別するステップと、
前記識別された電磁信号測定値を取り除いて、修正されたサンプル信号スキャンを生成するステップと、
前記修正されたサンプル信号スキャンを処理するステップであって、前記修正されたサンプル信号スキャンを処理するステップは、
内積演算を前記修正されたサンプル信号スキャンと複数の固有ベクトルのそれぞれとに適用して、第2の複数の対応する係数を発生し、かつ、
前記サンプル信号スキャンを前記固有ベルトと前記第2の対応する係数との1次結合から減算して、これによりさらに補正されたサンプル信号スキャンを発生する
ステップを含む、処理するステップと、
を含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプル信号スキャンの前記バックグラウンド基準信号スキャンの平均値との比率を計算するステップと、
前記比率に基づいて補正されたサンプル信号スキャンを調整するステップと、
をさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項11】
周波数の別個のセットにおいて複数の電磁信号測定値を含むサンプル信号スキャンを受け取るステップであって、前記各それぞれの測定値は電磁信号がサンプル媒体とベース媒体を含むサンプル・セルを通過する分光計システムによって取得される、受け取るステップと、
前記サンプル信号スキャンを処理するステップであって、前記サンプル信号スキャンを処理するステップは、
内積演算をサンプル信号スキャンと複数の固有ベクトルのそれぞれとに適用して、複数の対応する係数を発生するステップであって、前記複数の固有ベクトルが、複数のバックグラウンド基準信号スキャンを特異値分解技術に基づいて分解することによって発生され、前記各バックグラウンド基準信号スキャンは周波数の別個のセットにおいて複数の電磁信号測定値を含み、前記各それぞれの測定値は電磁信号がサンプル媒体なしのベース媒体を含むサンプル・セルを通過する前記分光計システムによって取得される、発生するステップと、
前記サンプル信号スキャンを前記固有ベクトルと前記対応する係数との1次結合から減算して、補正されたサンプル信号スキャンを発生するステップと
を含む、処理するステップと、
指定された吸収しきい値を超える補正されたサンプル信号内の電磁信号測定値に対応するサンプル信号スキャンの中の電磁信号測定値を識別するステップと、
前記識別された電磁信号測定値を取り除いて、修正されたサンプル信号スキャンを生成するステップと、
前記修正されたサンプル信号スキャンを処理するステップであって、前記修正されたサンプル信号スキャンを処理するステップは、
内積演算を前記修正されたサンプル信号スキャンと前記複数の固有ベクトルのそれぞれとに適用して、第2の複数の対応する係数を発生するステップと、
前記サンプル信号スキャンを前記固有ベルトと前記第2の対応する係数との1次結合から減算して、これによりさらに補正されたサンプル信号スキャンを発生するステップと
を含む、処理するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記サンプル信号スキャンの前記バックグラウンド基準信号スキャンの平均値との比率を計算するステップと、前記比率に基づいて補正されたサンプル信号スキャンを調整するステップと、をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータ可読のプログラム・コード部分が中に格納されたコンピュータ可読の記憶媒体であって、前記コンピュータ可読のプログラム部分が、
別個の周波数のセットにおいて複数の電磁信号測定値を含むサンプル信号スキャンを受け取るように構成された第1の実行可能な部分であって、前記各測定値は、電磁信号がサンプル媒体とベース媒体とを含むサンプル・セルを通過する分光計システムによって取得される、第1の実行可能な部分と、
前記サンプル信号スキャンを複数の周波数セグメントに分割するように構成された第2の実行可能な部分と、
前記サンプル信号スキャン・セグメントを処理して、それぞれ複数の補正されたサンプル信号スキャン・セグメントを発生するように構成された第3の実行可能な部分であって、前記サンプル信号スキャン・セグメントを処理するように構成された第3の実行可能な部分は、各サンプル信号スキャン・セグメントに対して、
内積演算を前記サンプル信号スキャン・セグメントと固有ベクトルの複数のセットからの固有ベクトルのそれぞれのセットとに適用して、対応する係数のそれぞれのセットを発生し、前記固有ベクトルのセットは、複数のバックグラウンド基準信号スキャンをバックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの複数のセットに分割し、かつ前記バックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの各セットを特異値分解技術に基づいて分解することによって発生され、前記各バックグラウンド基準信号スキャンが周波数の別個のセットにおいて複数の電磁信号測定値を含み、前記各それぞれの測定値が電磁信号がサンプル媒体なしのベース媒体を含むサンプル・セルを通過する前記分光計システムによって取得され、かつ、
前記サンプル信号スキャン・セグメントを前記固有ベルトのそれぞれのセットと対応する係数との1次結合から減算して、これによりそれぞれ補正されたサンプル信号スキャンを発生する
ように構成される、第3の実行可能な部分と、
前記補正されたサンプル信号スキャン・セグメントを組み立てるように構成された第4の実行可能な部分と、
を備えるコンピュータ可読の記憶媒体。
【請求項14】
前記コンピュータ可読のプログラム部分が、
前記複数のバックグラウンド基準信号スキャンを受け取り、そしてバックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの複数のセットに分割するように構成された第5の実行可能な部分と、
前記バックグラウンド基準信号スキャン・セグメントの各セットを分解して、固有ベクトルの複数のセットを発生するように構成された第6の実行可能な部分と、
をさらに備える請求項13に記載のコンピュータ可読の記憶媒体。
【請求項15】
前記コンピュータ可読のプログラム部分が、
指定された吸収しきい値を超える補正されたサンプル信号内の電磁信号測定値に対応するサンプル信号スキャン内の電磁信号測定値を識別するように構成された第5の実行可能な部分と、
前記識別された電磁信号測定値を取り除いて、修正されたサンプル信号スキャンを生成するように構成された第6の実行可能な部分と、
前記修正されたサンプル信号スキャンを処理するように構成された第7の実行可能な部分であって、
内積演算を前記修正されたサンプル信号スキャンと複数の固有ベクトルのそれぞれとに適用して、第2の複数の対応する係数を発生し、かつ
前記サンプル信号スキャンを前記固有ベルトと前記第2の対応する係数との1次結合から減算して、これによりさらに補正されたサンプル信号スキャンを発生する
ように構成される、第7の実行可能な部分と
をさらに備える請求項13に記載のコンピュータ可読の記憶媒体。
【請求項16】
前記コンピュータ可読のプログラム部分が、
前記サンプル信号スキャンの前記バックグラウンド基準信号スキャンの平均値との比率を計算するように構成された第5の実行可能な部分と、
前記比率に基づいて補正されたサンプル信号スキャンを調整するように構成された第6の実行可能な部分と、
をさらに備える請求項13に記載のコンピュータ可読の記憶媒体。
【請求項17】
コンピュータ可読のプログラム・コード部分が中に格納されたコンピュータ可読の記憶媒体であって、前記コンピュータ可読のプログラム部分が、
別個の周波数のセットにおいて複数の電磁信号測定値を含むサンプル信号スキャンを受け取るように構成された第1の実行可能な部分であって、前記各測定値は、電磁信号がサンプル媒体とベース媒体とを含むサンプル・セルを通過する分光計システムによって取得された、第1の実行可能な部分と、
前記サンプル信号スキャンを処理するように構成された第2の実行可能な部分であって、
内積演算を前記サンプル信号スキャンと複数の固有ベクトルのそれぞれとに適用して、複数の対応する係数を発生し、
前記複数の固有ベクトルが、複数のバックグラウンド基準信号スキャンを特異値分解技術に基づいて分解することによって発生され、前記各バックグラウンド基準信号スキャンは周波数の別個のセットにおいて複数の電磁信号測定値を含み、前記各それぞれの測定値は電磁信号がサンプル媒体なしのベース媒体を含むサンプル・セルを通過する前記分光計システムによって取得され、
前記サンプル信号スキャンを前記固有ベルトと対応する係数との1次結合から減算して、これにより補正されたサンプル信号スキャンを発生する
ように構成されるステップを含む、第2の実行可能な部分と、
指定された吸収しきい値を超える補正されたサンプル信号内の電磁信号測定値に対応するサンプル信号スキャン内の電磁信号測定値を識別するように構成された第3の実行可能な部分と、
前記識別された電磁信号測定値を取り除いて、修正されたサンプル信号スキャンを作るように構成された第4の実行可能な部分と、
前記修正されたサンプル信号スキャンを処理するように構成された第5の実行可能な部分であって、
内積演算を前記修正されたサンプル信号スキャンと複数の固有ベクトルのそれぞれとに適用して、第2の複数の対応する係数を発生し、
前記サンプル信号スキャンを前記固有ベルトと前記第2の対応する係数との1次結合から減算して、これによりさらに補正されたサンプル信号スキャンを発生する
ように構成されるステップを含む、第5の実行可能な部分と、
を備えるコンピュータ可読の記憶媒体。
【請求項18】
前記コンピュータ可読のプログラム部分が、前記サンプル信号スキャンの前記バックグラウンド基準信号スキャンの平均値との比率を計算し、かつ前記比率に基づいて補正されたサンプル信号スキャンを調整するように構成された第6の実行可能な部分をさらに備える、請求項17に記載のコンピュータ可読の記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−174930(P2011−174930A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−39898(P2011−39898)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(501348092)グッドリッチ コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】