説明

分割ランナ

【課題】カバープレートの設置が不要となる分割ランナの締結方法を採用したランナを提供する。
【解決手段】水車又はポンプ水車のランナの中心を通る垂直平面で複数に分割された分割ランナ1A,1Bにおいて、前記分割ランナ1A,1Bは、一体締結時に他の分割ランナと対向接面する分割接合面5と、前記分割接合面5のクラウン2側及びバンド3側に設けられた締結溝6,7,8と、前記締結溝6,7,8に嵌め込まれ、前記分割接合面5に平行する引掛かり部13を有する締結部材とを備え、前記引掛かり部13が前記締結溝6,7,8を締め付けることで、前記分割ランナ1A,1B同士を締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水車もしくはポンプ水車の分割ランナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に大型で高重量の水車ランナ又はポンプ水車ランナは、重量制限や道路交通上の輸送制限があるため、ランナを分割型構造にすることが多い。このランナの2分割構造を図7乃至図9により説明する。図7は従来のボルト・ナットにより締結された分割ランナをクラウン側から示す平面図、図8は図7に示す分割ランナの断面図、図9は図7に示す分割ランナをバンド側から示す平面図である。図7乃至図9に示すように、ランナ20は、分割して輸送された分割ランナ21の分割接合面22同士を合わせ、接合フランジ24をボルト・ナット25で一体締結させる構造となっている。接合フランジ24は流水面に対して突起した構造になっており、接合フランジ24を流水中に露出したままランナを回転させると接合フランジ24による流水の攪拌損失のため、水力効率の著しい低下を来す。この水力効率低下を回避するために、この接合フランジ24の部分を流水面と隔離するカバープレート27が、図7における接合フランジ24と放射状に配置された放射状リブ26の間、それぞれの放射状リブ26,26の間に、これらの上面(図9にあっては下面)を覆うように取り付けられている。
【0003】
このカバープレートの取付け方法としては、放射状リブ26とカバープレート27とをボルトで締結する方法(例えば、特許文献1参照。)や溶接により取り付ける方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−138777号公報
【特許文献2】特開昭61−218779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボルトによるカバープレートの取付けの場合、ランナの高速回転により発生する遠心力や、水圧脈動による加重力がカバ−プレートに繰り返し作用することで、カバープレートやボルトの疲労強度が低下し、折損等の疲労破壊の発生する可能性がある。上述した特許文献1においては、カバープレートを取り付ける連結板とボルトの疲労強度を向上させる方策が開示されている。しかし、この方策を採用した場合であっても、多本数のボルトを使用する作業となるため、使用するボルトの品質管理やボルト締付け/緩み止め等の作業管理が煩雑であり作業性の改善が難しい等の課題が指摘されていた。
【0006】
一方、溶接によるカバープレートの取付けの場合、溶接時の溶接部収縮により残留応力がカバープレートに発生し、残留応力の残った状態ではカバープレートの疲労強度が著しく低下する。この状態でカバープレートに水圧脈動や自励振動による繰り返し応力がかかると、高応力部の溶接部で疲労破壊が発生する可能性がある。上述した特許文献2においては、残留応力が最大となるカバープレートの隅の部分にバランスホールを設けることで、カバープレートの自励振動を防ぐと共に、溶接時の収縮を吸収し、残留応力を極めて小さくさせる方策が開示されている。しかし、この方策を採用した場合であっても、製造熱処理に要するコストがかかるという課題が指摘されていた。
【0007】
また、上述したいずれのカバープレートの取付け方法であっても、現地における作業工数が多くかかり不経済であるという共通の課題が指摘されていた。
【0008】
本発明は上述の事項に基づいてなされたもので、その目的は、カバープレートの設置が不要となる分割ランナの締結方法を採用したランナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、水車又はポンプ水車のランナの中心を通る垂直平面で複数に分割された分割ランナにおいて、前記分割ランナは、一体締結時に他の分割ランナと対向接面する分割接合面と、前記分割接合面のクラウン側及びバンド側に設けられた締結溝と、前記締結溝に嵌め込まれ、前記分割接合面に平行する引掛かり部を有する締結部材とを備え、前記引掛かり部が前記締結溝を締め付けることで、前記分割ランナ同士を締結するものとする。
【0010】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記締結部材は、一体成型されたソリッド型締結部材であるものとする。
【0011】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記締結部材は、前記ソリッド型締結部材に加えて、締め付け調整が可能なボルト形締結部材を使用するものとする。
【0012】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかにおいて、好ましくは、前記締結部材は、予め加熱して前記締結溝に嵌め込まれるものとする。
【0013】
(5)上記(1)乃至(3)のいずれかにおいて、好ましくは、前記締結部材は、予め冷却された前記冷却溝に嵌め込まれるものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分割ランナを締結部材で一体締結するので、ランナ組立てにおいてカバープレートの取付け作業が発生せず、容易に締結作業が行える。この結果、現地におけるランナ組立のための作業工数の減少が図れ、製品の品質の向上が図れる。また、分割ランナの締結面が表に出ているため、締結部品の施工検査等についても、一体締結後のランナを分解することなく実施でき、点検作業の負担も軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の分割ランナの一実施の形態をクラウン側から示す平面図である。
【図2】本発明の分割ランナの一実施の形態を示す断面図である。
【図3】本発明の分割ランナの一実施の形態をバンド側から示す平面図である。
【図4】本発明の分割ランナの一実施の形態を構成するH字形締結部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】本発明の分割ランナの一実施の形態を構成するコ字形締結部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図6】本発明の分割ランナの一実施の形態を構成するボルト形締結部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図7】従来のボルト・ナットにより締結された分割ランナをクラウン側から示す平面図である。
【図8】図7に示す分割ランナの断面図である。
【図9】図7に示す分割ランナをバンド側から示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の分割ランナの実施の形態を図面を用いて説明する。
図1乃至図6は本発明の分割ランナの一実施の形態を示すもので、図1は本発明の分割ランナの一実施の形態をクラウン側から示す平面図、図2は本発明の分割ランナの一実施の形態を示す断面図、図3は本発明の分割ランナの一実施の形態をバンド側から示す平面図、図4は本発明の分割ランナの一実施の形態を構成するH字形締結部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図、図5は本発明の分割ランナの一実施の形態を構成するコ字形締結部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図、図6は本発明の分割ランナの一実施の形態を構成するボルト形締結部材を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【0017】
図1乃至図3において、ランナ1はクラウン2と、バンド3と、このバンド3とクラウン2との間に設けた羽根4とを備えている。ランナ1は、ランナ1の軸線方向に沿う分割接合面5によって分割ランナ1A,1Bに分割されている。
【0018】
ランナ1のクラウン2側の分割接合面5には、図1及び図2に示すように、クラウン2の外周側から内側に向かって、4個のH字形締結溝6と1個のコ字形締結溝7と、2個のH字形締結溝6とが分割接合面5を跨ぐように順次形成されている。
【0019】
上述したクラウン2の外周側から内側に順次形成した第1番目から第3番目の3個のH字形締結溝6及び第6番目のH字形締結溝6は、後述する同形状のH字形締結部材が嵌め込まれるため、図2に示すように横断面が角形形状となっている。また、外側から第5番目のコ字形締結溝7は、後述する同形状のコ字形締結部材が嵌め込まれるため、図2に示すように横断面が角形形状になっている。また、外側から第4番目及び第7番目の締結溝6は後述するボルト形締結部材が嵌め込まれるため、図2に示すように横断面がU字形形状になっている。
【0020】
ランナ1のバンド3側の分割接合面5には、図3及び図2に示すように、平面視4個のH字形締結溝8が分割接合面5を跨ぐように順次形成されている。4個のH字形締結溝8のうち、中間の2個の締結溝8は後述する同形状のH字形締結部材が嵌め込まれるため、図2に示すように横断面が角形形状となっている。また、外側及び内側の締結溝8は後述するボルト形締結部材が嵌め込まれるため、図2に示すように横断面がU字形形状になっている。
【0021】
前述したH字形締結部材9の構成を図4に、またコ字形締結部材10の構成を図5に、さらに、ボルト形締結部材11の構成を図6に示す。H字形締結部材9,コ字形締結部材10が鋼材等の固体で一体成型されたソリッド型締結部材であるのに対し、ボルト形締結部材11は、鋼材等の固体から成り一端側にネジ山が形成された締結部と、このネジ山に嵌合され、ハンマー等の打ちこみで回動される円筒型ナット12とから構成される締め付け調整が可能な締結部材である。円筒型ナット12は、円筒内周側にネジ山加工が施されていて、円筒外周側には、横断面形状をノコギリ歯状とする凹凸部が形成されている。なお、このボルト形締結部材11のネジ山加工部の反対側には、いわゆるボルト頭部に該当する凸部が形成されている。この凸部と凸部に対向する円筒型ナット12の正面部とが、後述する嵌め込みの際に分割接合面5に平行し、締結溝6,8を締め付ける引掛かり部13を形成している。つまり、引掛かり部13の長さである凸部と円筒型ナット12との軸方向の間隙を縮小させることにより、被締結体の締結溝6,8を締め付け、被締結体の締結を可能とするものである。
【0022】
H字形締結部材9は、図4に示すように、3個の直方体部材から構成されていて、平面視H字の対向する2つの短辺に相当する2個の側部直方体9A,9Aと、この側部直方体9A,9Aを接続する形で、中間に位置する中間部直方体9Bとで形成されている。したがって、図4(b)に示すように、このH字形締結部材9は、側面高さを、一定にしかも低く形成することができる。また、締結溝6,8を締め付ける引掛かり部13は、2個の側部直方体9Aの対向する側面両端部が該当し、後述する嵌め込みの際に分割接合面5に平行する。なお、詳細は後述するが、被締結体の締結は、平面視H字の対向する2つの短辺に相当する2個の側部直方体9Aの軸方向間隙(引掛かり部13の間)に被締結体を配置し、この軸方向の間隙を縮小させ、引掛かり部13が被締結体の締結溝6,8を締め付けることで、被締結体の締結を可能とする。
【0023】
コ字形締結部材10は、図5に示すように、3個の直方体部材から構成されていて、平面視コ字の対向する2つの短辺に相当する2個の側部直方体10A,10Aと、この側部直方体10A,10Aを接続する形で、中間に位置する中間部直方体10Bとで形成されている。したがって、図5(b)に示すように、このコ字形締結部材10は、側面高さを、一定にしかも低く形成することができる。また、締結溝7を締め付ける引掛かり部13は、2個の側部直方体10Aの対向する側面部が該当し、後述する嵌め込みの際に分割接合面5に平行する。なお、被締結体の締結は、H字形締結部材9と同様に、平面視コ字の対向する2つの短辺に相当する2個の側部直方体10Aの軸方向間隙(引掛かり部13の間)に被締結体を配置し、この軸方向の間隙を縮小させ、引掛かり部13が被締結体の締結溝7を締め付けることで、被締結体の締結を可能とする。
【0024】
分割ランナ1A,1Bは、図2に示す分割接合面5同士を対向させた後、締結溝6,7,8に締結部材を嵌合させることで、締結されて、一体のランナ1に形成されている。具体的には、図1に示すように、ランナ1のクラウン2側の分割接合面5において、平面視H字形の12個の締結溝6と平面視コ字形の2個の締結溝7が形成され、それぞれの締結溝6,7にH字形締結部材8,コ字形締結部材9,ボルト形締結部材10のいずれかが嵌め込まれている。また、ランナ1のバンド3側の分割接合面5においては、平面視H字形の8個の締結溝8が形成され、クラウン2側と同様にいずれかの締結部材が嵌め込まれている。
【0025】
次に、ランナ1の締結手段である締結溝6,7,8に締結部材を嵌めこむ方法について説明する。
まず、H字形締結部材9,コ字形締結部材10からなるソリッド型締結部材をランナ1側に設けた締結溝6,7,8に嵌め込む方法としては、以下の3個の方法がある。
(1)予めソリッド型締結部材を加熱し、熱膨張によってその寸法を伸ばした後に、締結溝6,7,8に嵌め込み、その後自然放熱させ、この締結部材の寸法が常温まで冷却されて縮まることで、締結部材の引掛かり部13が被締結体の締結溝6,7,8を締める熱嵌め。
(2)予め締結溝6,7,8を冷却し、熱膨張によってその寸法を縮めた後に、ソリッド型締結部材を嵌め込み、その後自然放置させ、この締結溝6,7,8の寸法が常温に加熱されて伸びることで、締結部材の引掛かり部13が被締結体の締結溝6,7,8を締める冷嵌め。
(3)締結部材を締結溝6,7,8の上部に配置し、締結部材を打撃することで嵌め込み、締結部材の引掛かり部13が被締結体の締結溝6,7,8を締める中間嵌め。
【0026】
これら3個の方法は、作業環境や作業性により適宜選択されるものである。なお、ソリッド型締結部材によるランナ1締結手段の場合、これらの締結部材と締結溝6,7,8とのギャップを、例えば締結部材の伸び量分だけ設定すればよく、ランナ1側の取付けスペースである締結溝6,7,8を形成する部分を小さくすることができる。また、上述したように、これら締結部材の高さも低いことから、締結部材を分割ランナ1A,1Bに取り付ける際の作業スペースも小さくすることができる。
【0027】
一方、上述した締結手段の場合、一旦、締結部材が締結溝6,7,8に嵌合された場合、締り嵌めで取り付けられた締結部材を取り外したり、やり直しをしたりすることが困難である。また、分割ランナ1A,1Bの締結作業において、例えば、締結部材による被締結体に対する締め付け力を微調整することなども、困難である。
【0028】
次に、ボルト形締結部材11をランナ1側に設けた締結溝6,8に嵌め込む方法を説明する。この方法によれば、上述したソリッド型締結部材の締結手段で困難であった問題を解消することができる。
まず、図6に示すように、ボルト形締結部材11の軸方向片側に切られたネジ山に円筒型ナット12を取り付け、締結溝6,8に挿入する。次に、円筒型ナット12の表面凹部に例えばのみ状のあて金を当て、ハンマーを打ち込むことで、円筒型ナット12を回動嵌合させる。この結果、引掛かり部13の長さであるボルト形締結部材11の凸部と円筒型ナット12との軸方向の間隙が縮小し、引掛かり部13が被締結体の締結溝6,8を締めることで被締結体が締め付けられるので、被締結体の締結がなされる。つまり、ボルト形締結部材11を使用した締結方法によれば、上述したソリッド型締結部材の締結手段で困難であった一体締結時の締め付け力の微調整が可能となり、円筒型ナット12を緩めることで締結作業のやり直し等も容易に行うことができる。
【0029】
一方、この締結手段の場合、締め付け力を微調整するために、円筒型ナット12を回す必要が発生する。したがって、円筒型ナット12が回動するためのスペースをランナ側の締結溝6,8に設ける必要があり、また、このナット回動のための作業スペースも必要となるという問題がある。
【0030】
そこで、本実施の形態においては、上述したソリッド型締結部材とボルト形締結部材11とを併用して、分割ランナ1A,1Bを締結する方法を採用している。
まず、分割ランナ1A,1Bを、図2に示す分割接合面5同士を対向させた後、ボルト形締結部材11を使用して仮締結を行う。具体的には、図2に示すクラウン2側、バンド3側それぞれ4箇所の曲線部を備えた断面形状の締結溝6,8の部分において、上述したボルト形締結部材11の嵌め込みと締め付けを行う。
【0031】
次に、この状態で、分割接合面5の位置調整を行う。この際、必要であれば、上述したボルト締結部材11の円筒型ナット12を回動させることにより、締め付け力を弱め、分割ランナ1A,1Bの位置調整が可能となる。
【0032】
分割接合面5の位置調整が完了した場合、分割ランナ1A,1Bの一体締結を行う。具体的には、図2に示すクラウン2側10箇所、バンド3側4箇所の矩形部のみからなる断面形状の締結溝6,7,8の部分において、上述したソリッド型締結部材の嵌め込みを行う。
【0033】
このような手順でソリッド型締結部材とボルト形締結部材11とを併用することにより、ランナ1組立作業において、ランナ1の締め付け力を調整できると共に、全体的には、締結部材を嵌合する締結溝6,7,8のスペースを少なくすることが可能になる。
【0034】
上述した本発明の分割ランナの一実施の形態によれば、分割ランナ1A,1Bを締結部材で一体締結するので、ランナ組立においてカバープレート27の取付け作業が発生せず、容易に締結作業が行える。この結果、現地におけるランナ組立のための作業工数の減少が図れ、製品の品質の向上が図れる。また、分割ランナ1A,1Bの締結面が表に出ているため、締結部品の施工検査等についても、一体締結後のランナ1を分解することなく実施でき、点検作業の負担も軽減することができる。
【0035】
また、本実施の形態によれば、締結部材による一体締結ランナ1としたことから、従来の一体締結ランナで必要であった、放射状リブ26と合わせ目フランジ24で挟まれた狭いスペースでのボルト・ナット25の取り付け作業が不要となり、代わって、分割ランナ1A,1Bのクラウン2側上面及びバンド3側下面から締結部材を取り付ける作業となる。この結果、分割ランナ1A,1Bの現地作業の作業工数が削減できると共に、作業性の向上が図れる。また、従来必要であったボルト・ナットの品質管理や締付および緩み止め等の作業管理が不要なため製品の品質向上が図れる。
【0036】
また、本実施の形態によれば、分割ランナ1A,1Bのクラウン2側上面、バンド3側下面から締結部材を取り付ける構造であるため、従来の一体締結構造と比較し、締結部材の施工検査を行うことが容易である。この結果、製品の品質向上が図れる。
【0037】
さらに、従来の分割ランナ1A,1Bと比較してボルト・ナット25を取り付けるスペースを必要としないため、ランナ高さ方向の接合フランジ24の厚みを減少でき、ボルト・ナット25露出部の水中攪拌損失防止および重量軽減を目的とした放射状リブ26の取り付けを行う必要がない。つまり、放射状リブ26と放射状リブ26を覆うためのカバープレート27の取り付け作業が不要となり、現地作業工数を削減できる。また、カバープレート27取り付け部の破損の可能性がないため製品の品質向上が図れる。
【0038】
なお、本発明の実施の形態において2分割ランナを例に説明したが、本発明の適用にあっては、2分割ランナに限られるものではない。従来のボルト・ナット25によって、一体締結されていた分割ランナであれば、本発明を適用することができる。
【0039】
また、本発明の実施の形態における分割ランナ1A,1Bを締結する方法では、ボルト形締結部材11とソリッド型締結部材をランナの締結溝6,8に嵌合させているが、例えば、ランナの一体締結完了後、ボルト形締結部材11を取り外し、この締結溝6,8にソリッド型締結部材を嵌合させてもよい。この場合、締結作業時には、位置調整などの微調整などが可能となり、高作業性が得られ、位置調整完了後の運転時には、高い締結力が確保され、製品の信頼性を向上させることができる。
【0040】
なお、上述した実施の形態において、クラウン2側に2個のコ字形締結溝7、12個のH字形締結溝6を、バンド3側に8個のH字形締結溝8を設けた例を示したが、これらの締結溝6,7,8の配置位置及び個数は適宜変更することも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 ランナ
1A,1B 分割ランナ
2 クラウン
3 バンド
4 羽根
5 分割接合面
6 H字形締結溝
7 コ字形締結溝
8 H字形締結溝
9 H字形締結部材
10 コ字形締結部材
11 ボルト形締結部材
12 円筒型ナット
13 引掛かり部
26 放射状リブ
27 カバープレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車又はポンプ水車のランナの中心を通る垂直平面で複数に分割された分割ランナにおいて、
前記分割ランナは、
一体締結時に他の分割ランナと対向接面する分割接合面と、
前記分割接合面のクラウン側及びバンド側に設けられた締結溝と、
前記締結溝に嵌め込まれ、前記分割接合面に平行する引掛かり部を有する締結部材とを備え、
前記引掛かり部が前記締結溝を締め付けることで、前記分割ランナ同士を締結する
ことを特徴とする水車又はポンプ水車の分割ランナ。
【請求項2】
前記請求項1記載の水車又はポンプ水車の分割ランナにおいて、
前記締結部材は、一体成型されたソリッド型締結部材である
ことを特徴とする水車又はポンプ水車の分割ランナ。
【請求項3】
前記請求項2に記載の水車又はポンプ水車の分割ランナにおいて、
前記締結部材は、前記ソリッド型締結部材に加えて、締め付け調整が可能なボルト形締結部材を使用する
ことを特徴とする水車又はポンプ水車の分割ランナ。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水車又はポンプ水車の分割ランナにおいて、
前記締結部材は、予め加熱して前記締結溝に嵌め込まれる
ことを特徴とする水車又はポンプ水車の分割ランナ。
【請求項5】
前記請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水車又はポンプ水車の分割ランナにおいて、
前記締結部材は、予め冷却された前記冷却溝に嵌め込まれる
ことを特徴とする水車又はポンプ水車の分割ランナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−196546(P2010−196546A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40826(P2009−40826)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】