説明

分娩の開始を遅らせるためのかつ/または分娩の継続を阻止するためのシクロペンテノンプロスタグランジンの使用

本発明は女性の分娩の開始を遅らせかつ/またはその継続を阻止するための医薬品の製造におけるシクロペンテノンプロスタグランジンの使用を提供する。好ましくは、このシクロペンテノンプロスタグランジンは女性生殖系において炎症反応を阻止および/または低減する。好ましくは、このシクロペンテノンプロスタグランジンは15-デオキシ-Δ12,14-プロスタグランジンJ2またはプロスタグランジンA1またはその前駆体である。本発明は、さらに、シクロペンテノンプロスタグランジンを含む医薬組成物およびその使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、早期分娩における分娩結果を改善するための薬剤に関するものである。詳細には、本発明は女性の生殖器系において炎症性反応を予防および/または低減し、それによって分娩の開始を遅らせるためのプロスタグランジンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特に先進諸国において、妊娠37週前(妊娠期間39週)に起こる自然分娩と定義されるヒト早期分娩は、現在も、特に発展途上国で重大な問題である。早産はすべての妊娠の5〜10%で起こるが、すべての新生児死亡の70%、および新生児罹患率の最高75%と関連する(Rushら、1976)。早産新生児は、脳性麻痺、発達の遅れ、視覚および聴力の障害ならびに慢性肺疾患のリスクが高い。
【0003】
妊娠中は、子宮は非収縮性の静止状態で維持されるが、子宮頸は堅く閉じている。分娩の開始と共に、子宮頸はより柔らかくなって加えられる力に対する抵抗性を弱くし、また緊張下で動く繊維を有する必要がある。子宮も、収縮を開始する必要がある。
【0004】
それが予定日であれ早期であれ、分娩の生化学は炎症反応に類似し、分娩過程における炎症誘発性サイトカインおよびプロスタグランジン(PG)の重要な役割を示す証拠が蓄積しつつある。インターロイキン-1β(IL-1β)レベルは、予定日分娩では羊水(Romeroら、1990)、妊娠膜(Keelanら、1999;Elliotら、2001)および子宮下部(Maulら、2002)で上昇し、IL-8およびPGの合成を刺激することによって、分娩開始に寄与することができる(Mitchellら、1990;Brownら、1998)。PGは、分娩に関連して母体の尿中および血中、ならびに胎膜で増加する(Satohら、1979;SkinnerおよびChallis、1985)。PGE2は子宮収縮を刺激し(DyalおよびCrankshaw、1985)、オキシトシン受容体の上方制御および収縮の同期によって基本的に支配的な子宮筋収縮を間接的に増加させ(Garfieldら、1990)、IL-8と協力して子宮頸を再構築する(Kelly、2002によりレビューされている)。
【0005】
分娩の開始は、炎症誘発性遺伝子、例えばインターロイキン8(IL-8)、インターロイキン6(IL-6)およびシクロ-オキシゲナーゼ1および2(COX-1およびCOX-2)の発現において役割を果たす、羊膜内の核因子κB(NFκB)転写因子系の活性化と関連している。COX遺伝子は、プロスタグランジンHシンターゼまたはPGシンターゼとも称される。生じる炎症性浸潤(サイトカインによって媒介される)およびプロスタグランジン合成の増加(シクロ-オキシゲナーゼによって媒介される)は、子宮頸部の成熟、胎膜破裂および子宮筋収縮をもたらす。
【0006】
NF-κB/Relファミリーの5つのメンバーが哺乳類で特定された:NF-κB1(p50およびその前駆体p105)、NF-κB2(p52およびその前駆体p100)、p65(RelA)、c-relならびにRel B。これらのタンパク質は、Rel相同性ドメイン(RHD)と呼ばれる構造的に保存されたアミノ末端領域を共有する。RHDは、二量体化、DNA結合およびκB(IκB)タンパク質阻害剤との相互作用を担う。それは、核局在化シグナル(NLS)も含む。その活性なDNA結合形態では、NF-κBは、NF-κBサブユニットの様々な組合せの異種二量体から成る。NF-κBファミリーの各メンバーは、Rel Bを除いてお互いにホモダイマーおよびヘテロダイマーを形成することができる。p65、c-relおよびRel Bタンパク質は、カルボキシ末端の非相同的トランス活性化ドメインを含み、これは標的遺伝子内のκB部位からの転写を活性化する。対照的に、p50およびp52タンパク質は、トランス活性化ドメインを欠く。様々なNF-κB二量体は、特定のκB部位に対して異なる結合親和性を示し(Kunschら、1992、Phelpsら、2000)、互いに異なるκBエレメントを介してディファレンシャルに転写を刺激する(Linら、1995)。
【0007】
休止細胞では、NF-κB二量体は、通常IκBα、IκBβおよびIκBεを含む抑制性IκBタンパク質との結合により細胞質内で不活性型で隔離されている。IκBは、RHDとの結合を媒介してNF-κBのNLSを覆い隠す複数のアンキリン反復の存在を特徴とする。
【0008】
炎症誘発性刺激およびLPSによって活性化される主なNF-κBシグナル経路は、IκBαおよびIκBβと結合したNF-κBを対象とする(レビューについてはLiおよびVerma、2002を参照)。p50/p65二量体は大部分の細胞型においてNF-κBの最も豊富に存在する形態であり、IκBαと結合したp50/p65二量体の活性化は最も特徴が明らかにされている経路である。この「古典的」経路では、多様な刺激が、最終的に特定のIκBキナーゼ(IKK)の活性化に収束するシグナル伝達カスケードを起動させる。IKK複合体はいくつかのタンパク質から成り、主なものはIKKα(IKK1)、IKKβ(IKK2)およびNF-κB必須のモジュレーター(NEMOまたはIKKγ)である。活性化されたIKK複合体はセリン32および36でIκBαをリン酸化し、それはリジン21および22におけるIκBαのポリユビキチン結合をもたらす。この修飾は、IκBαを26Sプロテアソームによる急速な分解の標的にする。IκB阻害因子の分解はNF-κBのNLSを露出させ、それにより、50/p65二量体が核へ移行し、核で、標的遺伝子プロモーターのκB部位と結合して転写を促進する。
【0009】
大部分の刺激は、NF-κBの一時的な活性化を引き起こすだけである。NF-κB不活化における重要な阻害段階は、新しく合成されたIκBαの核内NF-κBへの結合を含む。IκBαは、その分解の後に速やかに再合成される。新しく合成されたIκBαは核内に局在化され、NFκBをそのDNA結合部位から移動させる。IκBαはロイシンリッチな核外輸送配列(NES)を含み(Johnsonら、1999)、これらは次にそれがNF-κBを細胞質へ戻し、それによって自己調節的な誘導後抑制を完了することを可能にする。
【0010】
多くの細胞では、NF-κBの半分近くは他の主要なIκBアイソフォームIκBβによって隔離される(Whitesideら、1997)。IκBαと対照的に、IκBβはNF-κB誘導性ではなく、NF-κB活性の急速な誘導後抑制を引き起こさない。むしろ、IκBβは持続的なNF-κB活性化との関係が示唆されている。ある種の刺激、例えばLPSなどへの長期曝露は、新しく合成された高レベルのIκBαにもかかわらず、NF-κB活性の長期誘導をもたらす。刺激で誘導した分解の後、新しく合成されたIκBβは脱リン酸化され、その後、IκBαまたは構成的にリン酸化されているIκBβと対照的に、NF-κBをDNAから移動させることなく標的プロモーターと結合したNF-κBと相互作用することができる(Suyangら、1996)。脱リン酸化IκBβとDNAに結合したNF-κBとの相互作用は、NF-κBをIκBαによる核外輸送、したがって阻害から保護し、その結果NF-κB反応を持続すると考えられる。
【0011】
PGは、プロスタグランジン型および細胞標的に依存した多様な作用を有する生物活性分子のファミリーである。ヒト分娩におけるPGの中心的な役割を裏付ける、かなりの証拠がある。分娩は、子宮内(Turnbull 1977)、特に胎膜におけるPG合成の増加と関連している(SkinnerおよびChallis 1985)。PGの作用は子宮頸部の成熟を媒介し、子宮収縮を刺激し(CranckshawおよびDyal 1994)、オキシトシン受容体の上方制御および収縮同期により基本的に支配的な子宮筋収縮を間接的に増加させる(Garfieldら、1990)。羊膜、絨毛膜-脱落膜および子宮筋層におけるPG合成は、分娩に伴い増加する(レビューに関しては、BennettおよびSlater 1996を参照)。絨毛膜プロスタグランジンデヒドロゲナーゼは妊娠中に子宮を基底膜プロスタグランジン合成から保護すると考えられるが、満期には下方制御される。絨毛膜のプロスタグランジンデヒドロゲナーゼの欠乏は、早期分娩と関連付けされている(van Meir 1996、1997)。
【0012】
したがって、プロスタグランジン合成阻害は早期分娩を予防または阻止するための効果的な方法である(Keirse、1995)。逆に言えば、プロスタグランジンは妊娠を終了させる手段として分娩を誘導するために投与されてきた(Ganstromら、1987)。
【0013】
大部分のPGは細胞表面に局在化しているプロスタノイド受容体と結合し、二次メッセンジャー系を介して作用する(Narumiya、1995)。しかし、PGD2代謝産物は細胞核に活発に組み込まれ(Narumiyaら、1987)、核内受容体との直接相互作用を通してそれらの影響を及ぼすことができる。ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、核内受容体スーパーファミリーに属しているリガンド活性化転写因子である。それらは、3つの互いに異なる形態、PPAR-α、PPAR-δおよびPPAR-γで存在し、これらはレチノイン酸X受容体(RXR)とヘテロダイマーを形成し、標的遺伝子プロモーター内のPPAR応答エレメント(PPRE)と結合して転写を誘導する。PPAR-γは、NF-κB、AP-1、STATおよびC/EBP経路に負に干渉することによって、遺伝子転写を抑制することもできる(Zhouら、1999;Subbaramaiahら、2001;Takataら、2002;Suzawaら、2003)。
【0014】
早期分娩の病因は多要因であるが、特に初期の在胎齢では細菌感染が重要な役割を演ずると思われている(レビューに関しては、Romeroら、2002を参照)。膨張を続ける疫学データは、子宮内感染は妊娠32週前に生まれる幼児の脳損傷の重要な原因であることを示唆している。上昇する子宮内感染の間、微生物は炎症誘発性サイトカイン、例えば腫瘍壊死因子α(TNFα)およびIL-1β、ならびにPGおよび他の炎症伝達物質の産生を刺激することができ、結果として分娩の早期開始が起こる。子宮内感染/炎症は脳性麻痺(CP)および精神分裂症の発生の重要な誘因としても特定され(Urakuboら、2001;Gibsonら、2003)、またCPは満期産児でも起こるが、CPのリスクは早産と強く関連している(Dammannら、1999)。
【0015】
さらに、子宮の力学的伸展に起因する炎症性反応は、分娩の開始に寄与することがある。子宮の力学的伸展は妊娠の正常な一部としてある程度は起こるので、満期近くに起こり満期分娩の正常な開始を引き起こす生化学変化を多少は担っているかもしれない。早期分娩との関連で、力学的伸展は、多胎妊娠または過剰な羊水(臨床上、羊水過多または羊水過多症と呼ばれる)によって子宮が過度に膨張している場合に起こる可能性がある。子宮頸部が弱い場合(臨床上、頸管不全症と呼ばれる)には、子宮下部、子宮頸および上に横たわっている胎膜のより局所の伸展があるかもしれない。伸展は、COX-2(これは次にプロスタグランジン合成を増加させる)、IL-8およびIL-1bなどのサイトカインならびにオキシトシン受容体を含む一連の「分娩関連」タンパク質の産生を増加させる。プロスタグランジンおよびサイトカインの産生増加は、子宮頸部の成熟またはさらなる子宮頸部の成熟を起因する(また、新生児の脳損傷に至ることもある)。プロスタグランジンおよびOTR受容体は、子宮収縮をもたらす。
【0016】
早期分娩の産科管理は、まだ概して反動的であり、分娩を遅らせるために収縮を阻止することを目的とする薬剤の使用が中心である。これは、主に在胎齢に依存すると考えられ、このことが、妊娠の延長は常に結果を向上させるとの概念に至った。しかし、現在、早期出産をもたらすメカニズムは胎児の脳損傷も引き起こすことの証拠が蓄積しつつある。特徴として、損傷は白質に局在し、ミエリンを産生するオリゴデンドロサイトの以降の損失を伴う広範なアストログリオーシスならびに嚢状の変化(脳室周囲白質軟化症、PVL)をもたらす多病巣性壊死の両方を含む。そのような病変は、罹患幼児の60〜90%で脳性麻痺を起こす(Vlope、2001で記載されている)。
【0017】
早期収縮を安全にかつ効果的に阻止するのに利用できる薬剤は、現在、存在しない。最も一般的に用いられる剤であるリトドリン(Ritodrine)、サルブタモール(Salbutamol)およびテルブタリン(Terbutaline)などのβ-交感神経作用薬は、母体に対してかなりの心血管、呼吸および代謝系の副作用を引き起こし、肺水腫、心不全および妊産婦死亡をもたらすおそれがある。さらに、それらはタキフィラキシーの問題があり、24〜48時間後に効果がなくなる。無作為対照臨床試験のメタアナリシスは、β-交感神経作用薬の価値は、胎児の肺表面活性物質の産生を向上させるために一時的に分娩を遅らせて、ステロイドの子宮内移動または投与を可能にすることだけにあることを示している。
【0018】
新生児の集中治療の向上は生存率を劇的に増加させたが、コルチコステロイドの出産前投与以外には、いかなる産科の診療も新生児の結果に影響を及ぼしていない。一般的に用いられる薬は、デキサメタゾン(dexamethasone)またはベタメタゾン(betamethasone)である。コルチコステロイドの出産前投与は早期新生児の結果を改善するが、その理由はそれが呼吸窮迫症候群、頭蓋内出血および壊死性全腸炎の発生率および程度を減少させるからである。コルチコステロイドの1つの機能は、胎児の肺を成熟させて表面活性物質の産生を増加させ、それにより新生児の呼吸系疾患を予防するかその程度を弱めることである。このような剤は当業者には公知である。
【0019】
早期分娩(または切迫した早期分娩または満期前の早期破水)の現在の産科管理は、ステロイド投与に時間的余裕を与えるために「子宮収縮抑制」剤を使用して分娩を遅らせようと試みることである。
【0020】
一般的に、有効な子宮収縮抑制剤は、オキシトシン受容体アンタゴニスト、カルシウムチャネル遮断剤、交感神経作用薬および一酸化窒素供与剤である。
【0021】
一般的に用いられるオキシトシン受容体アンタゴニストはアトシバン(Atosiban)であり、これはオキシトシン受容体をブロックし、それにより子宮収縮を刺激する内因性オキシトシンによる受容体の活性化を阻止することによって機能する。一般的に用いられるカルシウムチャネル遮断剤はニフェジピン(Nifedipine)であり、これは収縮が起こるための要件である子宮筋細胞へのカルシウムの流入を妨げる機能を有す。一般的に用いられる交感神経作用薬はリトドリン(Ritodrine)であり、これは筋細胞膜上のアドレナリン受容体を活性化し、収縮に必須の酵素であるミオシン軽鎖キナーゼのリン酸化およびその活性の下方制御を導く機能を有す。一般的に用いられる一酸化窒素供与剤はニトログリセリンであり、これは筋細胞cGMPを増加させ、それにより収縮に必須の酵素であるミオシン軽鎖キナーゼの活性を下方制御する機能を有す。
【0022】
シクロ-オキシゲナーゼ阻害薬のインドメタシン(Indomethacin)は、早期分娩の収縮を予防する効果がある。インドメタシンは妊娠の短期の延長に対してβ-交感神経作用薬よりも有効であり、またβ-交感神経作用薬と異なり、早期分娩のリスクを低減することができる(Keirse、1995)。インドメタシンの使用は、胎児への副作用によって制限される。インドメタシンは、胎児の尿産生および動脈管の狭窄を低減する(Moiseら、1995)。臨床的にかなりの管狭窄は一定割合だけで起こり、26週の10%から32週の50%に、在胎齢に伴い増加する。したがって、医療現場でのインドメタシンの使用は32週以下での使用、および短いコース(≦48時間)に制限され、それ以後は、管狭窄に対する影響が反転することが示された(Tulzerら、1991;Moiseら、1993;Respondekら、1995)。
【0023】
これらの副作用のため、一部の産科医は現在スリンダク(Sulindac)を使用しているが、これはインドメタシンの代わりの子宮収縮抑制剤として同等に良好なようである(Carlonら、1992)。スリンダクは、胎児の尿産生の減少がより少なく、また管開存性に対する影響も最小限である(Carlonら、1992;RasanenおよびJouppila、1995)。しかし、スリンダクは理想的な子宮収縮抑制薬の選択からは遠い。
【非特許文献1】Rush RW, Keirse MJNC, Howat P, Baum JD, Anderson AB, Turnbull AC. Contribution of preterm delivery to perinatal mortality. Br Med J 1976; 2: 965
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、女性の生殖器系における炎症性反応を低減および/または予防することができる新しい剤または療法が非常に望まれる。そのような医薬品または手法は、女性の生殖器系内の病原体感染の治療を可能にし、かつ/または胎児/新生児に損傷を引き起こすことなく早期分娩を遅らせることになろう。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記を考慮して、驚くべきことに、本発明者は、プロスタグランジンが女性の分娩の開始を遅らせ、かつ/またはその継続を阻止するために使用することができることを発見した。
【0026】
したがって、第1の態様では、本発明は女性の分娩の開始を遅らせ、かつ/またはその継続を阻止するための医薬品の製造におけるシクロペンテノンプロスタグランジンの使用を提供する。
【0027】
好ましくは、このことは女性の生殖器系内の炎症性反応を阻止し、かつ/または低減することによって達成される。
【0028】
本発明は、シクロペンテノンプロスタグランジン、例えば15-デオキシ-Δ12,14プロスタグランジンJ2(15-dPGJ2)およびプロスタグランジンA1(PGA1)が女性生殖器系の子宮細胞内のNFκB活性を阻止しかつ/または低減するという、予想外の知見に基づいている。したがって、シクロペンテノンプロスタグランジンは、女性の生殖器系内のNFκB活性の阻害および/または減少のための手段を提供する。本発明の医薬品はサイトカイン合成を阻止して分娩の生物化学過程を阻止し、それにより安全に妊娠を延長すると考えられる。したがって、胎児/新生児を傷つけることなく分娩の開始を遅らせることができるので、本発明は早期分娩の産科管理を改善する。
【0029】
シクロペンテノンプロスタグランジンは、シクロペンテノン環構造を含む天然物質である。シクロペンテノン環は、化学的に反応性のα、β-不飽和カルボニルの存在を特徴とし、前駆体プロスタグランジンのシクロペンタン環の脱水によって形成される。
【0030】
通常、プロスタグランジンの生合成の第1段階は、ホスホリパーゼA2の作用による原形質膜リン脂質からのアラキドン酸の細胞内放出を含む。次にアラキドン酸は、PGHシンターゼ、PGH1および2のシクロ-オキシゲナーゼおよびペルオキシダーゼ活性によって順番にPGG2およびPGH2に変換される。プロスタグランジンPGE2、PGD2およびPGFは、その後それぞれPGE2、PGD2およびPGFシンターゼの作用により、PGH2から合成される。シクロペンテノンプロスタグランジン、プロスタグランジンA2(PGA2)、プロスタグランジンA1(PGA1)およびプロスタグランジンJ2(PGJ2)は、それぞれプロスタグランジンE2(PGE2)、プロスタグランジンE1(PGE1)およびプロスタグランジンD2(PGD2)の脱水により形成される。PGJ2は、さらにΔ12-プロスタグランジンJ212-PGJ2)および15-デオキシ-Δ12,14プロスタグランジンJ2(15-dPGJ2)に代謝される。
【0031】
他の非天然または合成のプロスタグランジンは、化学的合成法によって作製することができる。プロスタグランジンの全合成は、1960年代にCorey(Corey、1991、によってレビューされる)によって最初に達成され、その後Suzukiら(1990)によって単純化された。この後者スキームは、1つの側鎖のためにC8有機金属試薬を、他の側鎖のためにはC7アセチレンハロゲン化物を使用し、これらは所望の化学的頭部基に加えられる。この合成法は応用自在であり、シクロペンテノンプロスタグランジンを含む様々な天然および非天然のプロスタグランジンの合成を可能にする。プロスタグランジンおよびシクロペンテノンプロスタグランジンの自然合成および化学合成の一般経路は、本明細書に組み込まれているStrausおよびGlass(2001)で記載されている。
【0032】
化学の当技術分野で公知の技術を使用するシクロペンテノンプロスタグランジンの化学修飾により、分子の臨床効果を変化させることができる。そのような変更は、例えば、シクロペンテノンプロスタグランジンの安定性または他の特性を高めたりまたは低めたりして、所望の活性変化を与えることができる。例えば、シクロペンテノンプロスタグランジンの15C残基の修飾はその化合物の代謝を低下させ、それによりそのin vivo半減期を長くする。そのような修飾は、当業者により明らかであろう。
【0033】
したがって、「シクロペンテノンプロスタグランジン」には、シクロペンテノン環を有するあらゆる天然の、非天然のまたは化学修飾されたプロスタグランジンが含まれるものとする。シクロペンテノンプロスタグランジンは、しばしば「cyPG」と略される。特に好ましいシクロペンテノンプロスタグランジンとしては、プロスタグランジンD2(PGD2)およびその代謝産物15-デオキシ-Δ12,14プロスタグランジンJ2(15-dPGJ2)がある。また、プロスタグランジンA1(PGA1)も好ましい。
【0034】
15-dPGJ2は、Cayman Chemical、1180 East Ellsworth Road、Ann Harbour、MI 48108 USA(カタログ番号18570)から得ることができる。9,10-ジヒドロ-15-デオキシ-Δ12,14-プロスタグランジンJ2は、Alexis Biochemicals社、PO Box 6757、Bingham、Nottingham、NG13 8LS、UK(カタログ番号CAY-18590-M001)から得ることができる。PGA1は、Alexis Biochemicals社(上記住所;カタログ番号340-045-M005)から得ることができる。
【0035】
「分娩の開始」および/または「分娩の継続」は、分娩のための女性生殖器系組織の準備と関連する生化学的かつ/または生理的変化を含むものとする。例えば、子宮は収縮性が増加して収縮が起こる。子宮頸も、分娩の準備のために成熟する。そのような変化は産科学、婦人科医学および助産学の分野で公知であり、例えばBishopのスコアは子宮頸部の成熟の程度を示す(Hermanら、1993で記載されている)。「女性の分娩の開始を遅らせかつ/または女性の分娩の継続を阻止すること」は、これらの生化学的かつ/または生理的変化の少なくとも1つが遅らせられるかまたは阻止されるという意味を含むものとする。
【0036】
「女性」は、あらゆる哺乳類、例えばヒト、または家畜哺乳類、好ましくはウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、イヌおよびネコを含む農業上重要な哺乳類の雌を含むものとする。好ましくは、この女性はヒト女性である。
【0037】
第2の態様では、本発明は女性の生殖系における炎症性反応を予防しかつ/または低減するための医薬品の製造におけるシクロペンテノンプロスタグランジンの使用を提供する。そのような医薬品は、子宮細胞内のNFκB活性を阻止および/または低減することができる。
【0038】
「NFκB」は、RelA(p65)、RelB、NFκB1(p50)、NFκB2(p52)およびcRelのホモダイマーおよびヘテロダイマーを含むものとする。RelA(p65)、RelB、NFκB1(p50)、NFκB2(p52)およびcRel遺伝子ならびにそのポリペプチド生成物の配列は、Liら(2002)で記載されている。
【0039】
「NFκB活性」は、NFκB転写因子ファミリーのRelA(p65)、RelB、NFκB1(p50)、NFκB2(p52)またはcRelのいかなるホモダイマーまたはヘテロダイマーによって制御される遺伝子の発現と関連するNFκBの活性を含むものとする。特に、例えば対象とするタンパク質についての核およびサイトゾル細胞分画のウェスタンブロット解析で測定することができるNFκBの核移行(Sambrookら、1989;Leeら、2003、で記載されている);例えばElectro-Mobility Shift Assay(EMSA、Dignamら、1983;Leeら、2003、で記載されている)で測定することができるNFκBの標的核酸配列(例えばDNAの特定の領域および配列)への結合;および、例えばノーザンブロット法および/またはウェスタンブロット法(Sambrookら、1989;Leeら、2003)で測定することができるNFκBによって媒介される標的遺伝子の発現を含むものとする。NFκBのこれらの活性を測定するための方法は、生化学および分子生物学の当業者に公知である。
【0040】
「子宮細胞」は、女性の子宮内のあらゆる細胞、または女性の子宮に由来し、一次または形質転換された細胞培養または細胞系として維持される細胞、特に胎盤細胞、羊膜細胞、筋細胞、子宮および子宮頸部の線維芽細胞を含むものとする。これらの細胞型は、「妊娠性組織」と一般的に称される。
【0041】
羊膜細胞培養物の組織からの調製は、胎盤上に横たわっている部分を除いてすべての羊膜を絨毛膜から分離し、次に羊膜上皮細胞を線維芽細胞から分離して哺乳類細胞培養技術(Leeら、2003)を使用してその上皮細胞を維持することによって実施することができる。子宮筋細胞培養は、ジスパーゼおよびコラゲナーゼ/エラスターゼ/デオキシリボヌクレアーゼ溶液とのインキュベーションにより細胞を分離し、哺乳類細胞培養技術(Pieberら、2001)を使用して子宮筋細胞を維持することにより、子宮下部組織から調製することができる。一次および形質転換された哺乳類の細胞培養の生成および維持のための技術は、関連分野の当業者に公知である。
【0042】
「女性の生殖器系」は、妊娠中のあらゆる段階における新生児、胚または胎児の形成、栄養、維持および発達に直接または間接的に関与する女性のあらゆる細胞および/または組織および/または器官を含むものとする。特に、子宮、胎盤、羊膜、絨毛膜、脱落膜、子宮頸および膣の細胞および/または組織を含むものとする。
【0043】
好ましくは、この医薬品は妊娠女性の生殖器系内の炎症性反応を阻止し、かつ/または低減するためのものである。
【0044】
「炎症性反応」は、宿主の免疫系の細胞によって媒介される炎症と関連している生化学的および生理的変化を含むものとする。そのような変化は、ヒトの医学および獣医学、免疫学、分子生物学および生物科学の技術分野で公知である。
【0045】
膣内フィブロネクチン検出、超音波検査による子宮頸短縮の識別、臨床検査による子宮頸管拡張の識別、または収縮開始に基づき早期産のリスクが高い患者が臨床的に検出される場合は、子宮内に炎症があるリスクが高い。子宮内の炎症の他の臨床測定手段は、異常な場合に子宮内の高リスク炎症を示唆する母体温度、白血球数、血清C反応性タンパク質濃度および羊膜のサイトカイン濃度(羊水穿刺でとられる)である。そのような変化を測定する方法は、当業者には公知である。
【0046】
「妊娠している」は、女性が子宮内に受精卵、または妊娠性発達のいかなる段階にある胚もしくは新生児もしくは胎児を有しているという意味を含むものとする。
【0047】
好ましくは、本発明は対象がヒト女性であり妊娠期間がヒト妊娠の約13週以上である場合の使用を提供する。より好ましくは、妊娠期間は約20〜32週である。
【0048】
好ましくは、この医薬品は、女性の生殖器系内の分娩の開始または継続と関連する炎症性反応を、低減および/または阻止する。分娩の開始または継続と関連している生化学的および生理的変化は、上で言及されている。
【0049】
多くの状況では、分娩の開始または継続と関連している女性生殖器系の変化の少なくとも1つを実質的に予防または低減することが有用である。例えば、妊婦のある群は早期分娩のリスクが高いことは公知である。以前に早期分娩を1回または複数回経験している女性は、妊娠するとさらなる早期分娩のリスクがかなり高い。早期分娩のリスクの増加は、癌胎児性フィブロネクチンレベルの測定により、および当技術分野で公知の方法を使用した子宮頸部の検査により判定することもできる。
【0050】
そうすることが望ましい状況では、分娩の継続と関連している女性生殖器系の変化の少なくとも1つ、特に子宮収縮を一時的に予防または低減することも有用である。例えば、胎児の肺をクリアするか妊婦を1つの場所から他の場所へ移すために、分娩の間一時的に子宮収縮を阻止することは望ましいことがある。女性を本人およびその子供のためにより適切な管理を提供できるより適当な場所へ移動させることが、しばしば望ましい。
【0051】
かなりの期間、本発明の方法を使用して早期分娩を実質的に阻止することも有用である。特に、早期子宮収縮が最初に起こる時(またはその直後)から正常な分娩時期まで、それを阻止することが有用である。
【0052】
好ましくは、この医薬品は、女性の生殖器系内の病原体による感染と関連する炎症性反応を、低減および/または阻止する。
【0053】
より好ましくは、この病原体はウイルス、細菌または真菌である。
【0054】
好ましくは、この医薬品は、女性の生殖器系内の子宮の伸展と関連する炎症性反応を、低減および/または阻止する。
【0055】
「子宮の伸展」は、多胎妊娠または過剰な羊水(臨床上、羊水過多または羊水過多症と呼ばれる)によって子宮が過度に膨張している場合に起こる子宮の力学的伸展を含む。子宮頸部が弱い場合(臨床上、頸管不全症と呼ばれる)には、子宮下部、子宮頸および上に横たわっている胎膜のより局所の伸展があるかもしれない。
【0056】
好ましくは、この医薬品は以下の状態、すなわち早期分娩、病原体感染、子宮頸部の成熟、子宮収縮の1つまたは複数を低減しかつ/または予防する。
【0057】
「早期分娩」は、通常の計算された分娩時期よりも早く起こる自発分娩の意味を含む。ヒトでは、早期分娩は妊娠37週前(妊娠期間39週)に起こる自然分娩と定義される。本発明によって定義される女性の通常の計算された分娩時期は、ヒトの医学および獣医学の分野で公知である。
【0058】
好ましくは、この医薬品は胎児または新生児の損傷を低減および/または予防する。
【0059】
より好ましくは、この医薬品は以下の状態、すなわちアストログリオーシス(astrogliosis)、ミエリン産生オリゴデンドロサイト(myelin-producing oligodendrocytes)の減少、嚢胞化(cystic change)(脳室周囲白質軟化症(periventricular leucomalacia)、PVL)をもたらす多病巣性壊死(multifocal necroses)の1つまたは複数を低減および/または予防する。
【0060】
「アストログリオーシス」は、通常損傷に応じて起こる星状膠細胞の肥大(すなわち、細胞サイズの増加)の意味を含む。星状膠細胞は、脳および脊髄で最大のかつ最も多数の神経膠細胞である。星状神経膠細胞(「星」細胞に由来)は多くの長い突起を有する不規則形状であり、例えば神経膠の(制限)膜を形成し、直接かつ間接的に血液脳関門に寄与する「神経線維末端」を有するものがある。それらは細胞外のイオン性および化学的環境を調節し、「反応性星状細胞」(小神経膠細胞と共に)は損傷に反応する。星状神経膠細胞は神経伝達物質を放出することができるが、シグナリング(他の多くの機能と同様に)におけるそれらの役割は十分理解されていない。
【0061】
「オリゴデンドロサイト」は、CNS軸索をミエリン化する機能を有する脊椎動物中枢神経系(CNS)の神経膠細胞の意味を含む。「ミエリン産生オリゴデンドロサイトの減少」は、これらの細胞数の減少を意味する。
【0062】
「多病巣性壊死」は、2つ以上の部位で起こる組織の死の意味を含む。「嚢胞化」は、壊死が起こった領域内での流体で満たされた空間の発達の意味を含む。「脳室周囲白質軟化症」または「PVL」は、サイトカイン誘導性のまたは低酸素症/虚血誘導性の壊死の後に見られ、いずれ嚢胞化をもたらす可能性のある、室周囲脳白質への損傷の意味を含む。
【0063】
本発明の特に好ましい実施形態は、シクロペンテノンプロスタグランジン15-デオキシ-Δ12,14-プロスタグランジンJ2および/またはプロスタグランジンA1の使用である。
【0064】
あるいは、シクロペンテノンプロスタグランジンは、15-デオキシ-Δ12,14-プロスタグランジンJ2および/またはプロスタグランジンA1のプロドラッグの形で提供される。
【0065】
当業者ならば、シクロペンテノンプロスタグランジンのある種の代謝前駆体はこのような薬理活性を所有していないが、場合によっては患者に投与された後に体内で代謝されて薬理活性のある本発明の化合物を形成することが可能なことを理解しよう。そのような誘導体は、したがって「プロドラッグ」と記載することができる。
【0066】
シクロペンテノンプロスタグランジンのすべてのプロドラッグ、特に15-デオキシ-Δ12,14-プロスタグランジンJ2および/またはプロスタグランジンA1のそれらは、本発明の範囲に含まれる。
【0067】
好ましくは、プロドラッグはPGD2(15-dPGJ2の前駆体)またはPGE1(PGA1の前駆体)である。
【0068】
好ましくは、この医薬品は薬剤として許容される賦形剤、希釈剤または担体をさらに含む。
【0069】
「薬剤として許容される」は、その担体はレシピエントに対する悪影響を有しないことを意味する。一般的に、担体は無菌でありかつ発熱物質を含まない。
【0070】
好ましくは、この医薬品は経口投与、静脈内注射または羊膜内注射による送達に適合した形態である。
【0071】
好ましくは、この医薬品は羊水に適合する形態である。より好ましくは、この医薬品は羊水と実質的に同じpHおよび/または浸透圧を有する形態である。
【0072】
羊水は互いに異なるpHおよび互いに異なる浸透圧を有する。羊水のpHおよび浸透圧は当業者に公知であるか、または当業者によって容易に測定することができる。
【0073】
好ましくは、この医薬品は以下の状態、すなわち早期分娩、病原体感染、子宮頸部の成熟、子宮収縮の1つまたは複数を有するかまたはそのリスクを有する女性を治療するための薬剤をさらに含む。
【0074】
「以下の状態、すなわち早期分娩、病原体感染、子宮頸部の成熟、子宮収縮の1つまたは複数を有するかまたはそのリスクを有する女性を治療するための薬剤」は、コルチコステロイド、子宮収縮抑制薬および抗炎症性プロスタグランジンを含む。
【0075】
好ましくは、前記薬剤はコルチコステロイドである。
【0076】
より好ましくは、前記薬剤は呼吸窮迫症候群を予防しかつ/または低減することができる。
【0077】
コルチコステロイドの1つの機能は、胎児の肺を成熟させて表面活性物質の産生を増加させ、それにより新生児の呼吸系疾患を予防するかその程度を弱めることである。
【0078】
より好ましくは、前記薬剤はデキサメタゾンまたはベタメタゾンから選択される。このような剤は当業者には公知である。そのような剤の投与は、12mgの筋注(IM)の12時間または24時間間隔の2回投与でよい。
【0079】
好ましくは、前記薬剤は分娩を遅延させることができる。
【0080】
より好ましくは、前記分娩を遅延させることができる剤は、オキシトシン受容体アンタゴニスト、カルシウムチャネル遮断剤、交感神経作用薬、一酸化窒素供与剤から選択される。
【0081】
好ましくは、前記薬剤は子宮収縮抑制薬である。
【0082】
「子宮収縮抑制」は、その作用が子宮収縮を制止することである薬剤の意味を含む。
【0083】
より好ましくは、前記子宮収縮抑制剤は、オキシトシン受容体アンタゴニスト、カルシウムチャネル遮断剤、交感神経作用薬、一酸化窒素供与剤から選択される。
【0084】
より好ましくは、前記オキシトシン受容体アンタゴニストはアトシバンである。より好ましくは、前記カルシウムチャネル遮断剤はニフェジピンである。より好ましくは、前記交感神経作用薬はリトドリンである。より好ましくは、前記一酸化窒素供与剤は、ニトログリセリンである。
【0085】
好ましくは、前記炎症性反応は子宮細胞内のNFκBによって媒介される。
【0086】
より好ましくは、前記シクロペンテノンプロスタグランジンは、子宮細胞におけるNFκBのDNA結合を阻止および/または低減することによって、NFκB活性を抑制および/または低減することができる。
【0087】
より好ましくは、前記シクロペンテノンプロスタグランジンは、子宮細胞におけるNFκBの媒介による転写調節を阻止および/または低減することによって、NFκB活性を抑制および/または低減することができる。
【0088】
より好ましくは、前記シクロペンテノンプロスタグランジンは、子宮細胞におけるNFκBの産生を阻止および/または低減することによって、NFκB活性を抑制および/または低減することができる。
【0089】
本発明の他の態様は、シクロペンテノンプロスタグランジンおよび薬剤として許容される担体または賦形剤を含み、前記シクロペンテノンプロスタグランジンは女性生殖器系における炎症性反応を予防および/または低減するのに有効な量で存在する医薬組成物を提供することである。
【0090】
本発明の他の態様は、女性生殖器系内の炎症を治療するための、本発明の医薬品の有効量を投与することを含む方法である。
【0091】
本発明の他の態様は、女性の分娩の開始を遅らせかつ/またはその継続を阻止するためのシクロペンテノンプロスタグランジンを同定するための、PPAR-γとは独立して子宮細胞内のNFκB活性を阻止および/または低減することができるかどうか判断するために前記シクロペンテノンプロスタグランジンを試験する工程を含む方法を提供することである。
【0092】
「NFκB活性」は、NFκBのDNA結合活性および/またはNFκBの媒介による転写調節を含む。
【0093】
シクロペンテノンプロスタグランジンがPPAR-γからは独立して子宮細胞内のNFκB活性を抑制および/または低減することができるかどうか判断するためにそれを試験することは、下記実施例1で記載されている方法によって実施することができる。例えばシクロペンテノンプロスタグランジンがPPAR-γからは独立して子宮細胞内のNFκB活性を抑制および/または低減することができるかどうかは、下記図6に示すようにPPAR-γ阻害剤GW-9662を使用して判断することができる。
【0094】
「PPAR-γとは独立して」は、シクロペンテノンプロスタグランジンの活性が、それがPPAR-γ受容体と結合しかつ/またはPPAR-γ受容体を活性化することなく起こるという意味を含む。
【0095】
シクロペンテノンプロスタグランジンが子宮細胞内のNFκB活性を抑制および/または低減することができるかどうか判断するために、シクロペンテノンプロスタグランジンをin vitro、in vivoまたはex vivoで試験することができることは理解されよう。
【0096】
本発明の他の態様は、女性の分娩の開始を遅らせかつ/またはその継続を阻止するために使用する医薬組成物を作製するための、本発明の方法によって同定されたシクロペンテノンプロスタグランジンを提供する工程と、それを薬剤として許容される担体と組み合わせる工程とを含む方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0097】
以下に、本発明のある態様を具現化する好ましい、それには限定されない実施例を、図面を参照しながら記載する。
【実施例】
【0098】
(実施例1−実験データ)
(方法)
略記号
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EGTA エチレングリコールビス-アミノエチル四酢酸
DTT ジチオトレイトール
HEPES 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸
NP-40 ノニデットP-40
SDS-PAGE ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法
PVDF ポリビニリデンジフルオリド
PBS-T リン酸緩衝生理食塩水+Tween
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PCS ウシ胎仔血清
DMEM ダルベッコの修正イーグル培地
【0099】
(組織生検および細胞培養)
これらの組織の収集のためにLocal Ethics committeeの承認を得、また、患者にはインフォームドコンセントを提供された。
【0100】
(ヒト子宮筋細胞培養)
子宮筋組織は、分娩開始の前(L-)または胎児仮死(L+)の間の下部帝王切開のときに、子宮切開部の上縁から収集した。L+試料は、Chelsea & Westminster病院のMark Johnson博士およびS Soorrana博士によって収集された。子宮筋組織を切開し、PBSで洗浄し、15mg/mlのコラゲナーゼ1A(Sigma)、15mg/mlのコラゲナーゼXおよび50mg/mlのウシ血清アルブミンを含んでいる無血清DMEM中で、37℃で45分間酵素処理した。細胞懸濁液は細胞ストレーナでろ過して400gで5分間遠心分離し、ペレットは再懸濁して10%のFCS(Helena BioScience)、1%のL-グルタミン、1%のペニシリン-ストレプトマイシンを含むDMEMへプレーティングした。細胞は、1〜4の継代数で使用した。
【0101】
(ヒト羊膜細胞培養)
胎盤は、分娩より前の選択的な帝王切開時(L-)または自発的な分娩開始および経膣分娩の後(L+)に、満期患者から得た。Bennettら(1989)で記載されているように羊膜細胞を準備した。つまり、羊膜を胎盤から分離し、PBSで3回洗浄し、細片に切断し、0.5mMのEDTAを含むPBSで15分間インキュベートした。細片はPBSで2回洗浄し、無血清DMEM内の2.5mg/mlジスパーゼにより37℃で35分間酵素処理した。次に羊膜を10%のFCSを含むDMEM中で激しく振とうして細胞を解離させ、残りの細片を廃棄し、細胞懸濁液は10分間の175gでペレットにして10%のFCS(Sigma)、1%のL-グルタミン、1%のペニシリン-ストレプトマイシンを含むDMEMで培養した。
【0102】
(培養細胞からのタンパク質抽出物)
核およびサイトゾルのタンパク質抽出物は、Schreiberら(1989)によって記載されているように、培養羊膜細胞から得た。核/サイトゾル分画のために、集密細胞単層を削り取って10mMのHEPES、10mMのKCl、0.1mMのEDTA、0.1mMのEGTA、2mMのDTT、1%(v/v)のNP-40およびメーカーの説明書通りに希釈した完全プロテアーゼインヒビター錠剤(CPI、Roche)を含んでいる緩衝液を使用して溶解した。細胞溶解物は氷の上で10分間インキュベートし、NP-40を1%(v/v)の最終濃度で加えた。溶解物を10秒間攪拌し、12000gで30秒間、4℃で遠心分離した。上清は、サイトゾルタンパク質抽出物として保持した。ペレットは、10mMのHEPES、10mMのKCl、0.1mMのEDTA、0.1mMのEGTA、2mMのDTT、400mMのNaCl、1%のNP-40(v/v)およびCPIを含んでいる緩衝液中で再懸濁した。試料は、氷浴で15分間激しく振とうした。核タンパク質抽出物は、4℃での12000gで5分の遠心分離の後に、上清中で得られた。
【0103】
全細胞溶解物については、集密細胞単層を削り取り、0.4MのKCl、20mMのHEPES、20%(v/v)のグリセリン、1mMのDTTおよびCPIを含んでいる高塩抽出緩衝液中で溶解した。
【0104】
(新鮮な組織生検材料からのタンパク質抽出物)
組織試料は氷冷PBSで洗浄し、切開し、アルミニウム箔に挟んで平らにし、液体窒素で急速冷凍し、-80℃で保存した。試料は、乳棒および乳鉢を使用して液体窒素中で粉末にした。粉末状の組織は氷上のDounceホモジナイザー中の、0.6%(v/v)のNP-40、150mMのHEPES、1mMのEDTA、0.5mMのPMSFを含んでいる緩衝液中でホモゲナイズし、未破砕組織はすべて0℃における2000rpmで30秒間の遠心分離によって除去した。上清は5分間氷上でインキュベートし、0℃において4000rpmで10分間遠心分離し、核ペレットは25%(v/v)のグリセリン、20mMのHEPES、0.42MのNaCl、1.2mMのMgCl2、0.2mMのEDTA、0.5mMのDTTおよびCPI中で再懸濁した。
【0105】
すべての抽出物を等分し、ドライアイス上で凍らせ、-80℃で保存した。抽出物は、メーカーの説明書に従い、Bio-Radタンパク質検定用試薬(Bio-Rad Laboratories)を使用したローリー法によるタンパク質定量化のために処理した。
【0106】
(電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA))
(オリゴヌクレオチド標識)
センスおよびアンチセンスストランド(各175nmole/ml)を65℃で10分間アニーリング緩衝液(10mMのトリス-HCl、pH7.5、100mMのNaCl、1mMのEDTA)中でインキュベートし、室温で2h放冷させた。3.5pmole二本鎖オリゴヌクレオチドは、T4ポリヌクレオチドキナーゼと37℃で30分間インキュベートすることによって、0.37MBqの32P(γATP)で末端標識した。標識されたオリゴヌクレオチドは、MicroSpin G-25を通して3000rpmで2分間の遠心分離により、またはG-50セファデックスカラム(Amersham Biosciences)により回収した。
【0107】
(EMSA)
3〜5μgのタンパク質抽出物は結合緩衝液(20%(v/V)のグリセリン、5mMのMgCl2、2mMのEDTA、50mMのトリス-HCl、pH7.5、250mMのNaCl、2mMのDTT)中で非放射性標識非特異的オリゴヌクレオチド(ポリ(dI-dC)またはOct-1)と氷上で1hインキュベートし、その後0.035pmoleの32P(γATP)で末端標識されたオリゴヌクレオチドプローブと45分間インキュベートした:
コンセンサスNF-κB: 5'-AGT TGA GGG GAC TTT CCC AGG C-3'
コンセンサスOct-1: 5'-TGT CGA ATG CAA ATC ACT AGA A-3'
コンセンサスSP-1: 5'-ATT CGA TCG GGG CGG GGC GAG
上流側COX-2κB: 5'-CGG GAG AGG GGA TTC CCT GCG C-3'
下流側COX-2κB: 5'-AGA GTG GGG ACT ACC CCC TCT-3'
【0108】
Oct-1またはSP-1コンセンサス配列は、NF-κB特異的効果のための対照として使用した。得られたタンパク質/DNA複合体は4%アクリルアミドゲルで分離し、ゲルは80℃の真空下で乾燥してX線フィルムに露光させた。スーパーシフト解析のために、試料はオリゴヌクレオチドとのインキュベーションの前に、氷上で2μgの抗体と30分間インキュベートした。非放射標識オリゴヌクレオチドは、DNA結合についての特異的および非特異的競合のために、100倍のモル過剰で使用した。EMSA用の試薬は、Promega Life Sciences、Delta House、Chilworth Research Center、Southampton SO16 7NS、United Kingdomから入手した。
【0109】
(SDS-PAGEおよびウェスタンブロット分析)
タンパク質試料(20〜70μg)はβ-メルカプトエタノール(5%)を含んでいるLaemmli試料緩衝液と混合し(1:1)、5分間沸騰した。次にタンパク質をSDS-PAGE(12〜14%のゲル)によって分離してPVDF膜(Amersham Pharmacia Biotech)に転写した。膜はPBS-T緩衝液で調製した5%の脱脂乳中で、4℃で一晩ブロックした。ブロットはPBS-T緩衝液内の1%脱脂乳内の一次抗体と1hインキュベートし、次に激しく振とうしながらPBS-Tで3回(それぞれ10分)洗浄した。次にブロットを西洋わさびペルオキシダーゼ結合二次抗体(PBS-T緩衝液内の1%脱脂乳で1:2000に希釈)と1hインキュベートし、その後PBS-Tで3回(それぞれ10分)洗浄した。シグナル検出は、メーカーの説明書に従って、増幅した化学発光(ECL plus system、Amersham Pharmacia Biotech)を使用して行なった。
【0110】
膜を再検出するために、ブロットを50℃のストリッピング緩衝液(2%SDS、62.5mMトリス-HCl、pH6.7、100mM 2-メルカプトエタノール)中で30分間インキュベートし、PBS-Tで2回洗浄し、ブロット(blotto)に一晩入れ、次に、上と同様にして新しい抗体で検出した。
【0111】
30〜50μgのタンパク質抽出物を、SDS-PAGEおよびウェスタンイムノ-ブロッティング法で分析した。二次抗体はIgG-HRPであり、ECL PLus検出キット(Amersham Pharmacia Biotech、Amersham Place、Little Chalfont、Bucks、HP7 9NA)をバンドの可視化のために使用した。
【0112】
(トランスフェクションおよびルシフェラーゼアッセイ)
24穴プレート内の集密度が70〜80%の細胞を、リポソームTransfast(Promega)を使用してトランスフェクションした。1ウェルにつき0.5μgのルシフェラーゼリポーター構築物を、無血清DMEM内の1:1のトランスフェクション比率(すなわち1μgのDNAにつき3μlのTransfast)を使用して1hトランスフェクションした。DMEM、10%FCSを次に加え、細胞を37℃で24hインキュベートした。培地はDMEM、2%FCSに交換してさらに24h培養し、細胞を様々なアゴニスト/阻害剤または溶媒で6〜8h処理した。トランスフェクションは、ルミノメータを使用してデュアルfirefly/renilla(Packard BioSciences/Calbiochem)ルシフェラーゼアッセイまたはfirefly/β-ガラクトシダーゼ(Promega/Galacton)アッセイで分析した。
【0113】
pGL3.6κB.BG.lucがNF-κB媒介の転写を評価するために使用したリポーター構築物であり、変異pGL3.6κBmut.lucおよび空のpGL3.BG.lucを対照として使用した(Schwarzerら、1998)。
【0114】
pGL3.6κB.BG.luc:6コピーのNF-κB結合部位を有するNF-κB依存性リポーター構築物。それは、ルシフェラーゼ遺伝子を誘導する最小限のβ-グロビンプロモーターの上流側の十量体NF-κB結合部位(下線部)3コピーを含む、配列5'-GGG GAC TTT C CC TGG GGA CTT TCC CTG GGG ACT TTC CC-3'の2つのタンデムリピートを含む。
【0115】
pGL3.6κBmut.luc:このリポーター構築物は、コアのNF-κB結合部位が5'-GCC ACT TTC C-3'に変異している(変異塩基は下線部)こと以外は上と同様である。
【0116】
pGL3.BG.luc:このリポーター構築物は、最小限のβ-グロビンプロモーターだけを含む。
【0117】
トランスフェクション効率のための内部標準として、細胞はrenillaベクターpRL-CMVまたはβ-ガラクトシダーゼベクターpCH110でコトランスフェクションした。
【0118】
(in vitro翻訳およびプラスミドプレップ)
p65の組換え産生のために、メーカーの説明書に従ってTNT Coupled Reticulocyte Lysate System(Promega)を使用して、pSG5/p65発現構築物を転写および翻訳した。形質転換されたJM109大腸菌細胞からプラスミドを単離するためにQIAGEN Maxi Prepキットを使用し、その後すべての構築物をポリエチレングリコールで沈殿させた。
【0119】
(試薬/抗体)
組換えサイトカインIL-1βおよびTNFαはR&D Systemsから;15d-PGJ2、PGA1、トログリタゾン、GW-9662および16,16-ジメチル-PGE2はCayman Chemicalから;WY-14643、MG132プロテアソーム阻害剤およびPG490(トリプトリド)はCalbiochemから;HRP結合二次抗体およびp50、p65、c-rel、Rel B、COX-2、IκBα、IκBβおよびPPARγに対する抗体はSanta Cruzから;p52、Bcl-3および平滑筋アクチンに対する抗体はUpstate Biotechnologiesから入手。PPAR-γに対する抗体はAffinity BioReagentsから、ホスホ-p65に対する抗体はCell Signalingから、COX-1に対する抗体はAlexis Biochemicalsから、およびラミンBに対する抗体はOncogene Research Productsから入手。
【0120】
(早期分娩のマウスモデル)
時間を合わせた妊娠MF1マウスに対して、妊娠16日に手術を実施した。母体を深く麻酔させた後、下腹部の小開腹不妊手術を実施した。切開を通して子宮角を露出させ、250μgのリポ多糖体(LPS、Sigma)の妊娠角への子宮内注射により、早期分娩を誘導した。この直後に4μgの5d-PGJ2(Cayman)または等容積の溶媒(酢酸メチル)を同じ部位に注射した。次に子宮を腹部に戻し、筋膜および皮膚は連続ビクリル(vicryl)縫合で閉じた。
【0121】
(炎症性反応に及ぼすLPSおよび15d-PGJ2の効果)
マウスは、LPS±15d-PGJ2の注射の6時間後に屠殺した。胎盤はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、液体窒素中で急速冷凍してさらなる処理まで-80℃で保存した。胎児はPBSで洗浄し、直後に4%のパラホルムアルデヒドで24h固定し、さらなる処理まで70%のエタノールに保存した。胎盤は、400mMのKCl、20mMのHEPES、pH7.4、1mMのジチオスレイトール、20%のグリセリンおよび5%(v/v)のプロテアーゼ阻害剤混合を含んでいる溶解緩衝液の存在下で、1分間ホモゲナイズした。
【0122】
胎盤の溶解物中のインターロイキン-1β(IL-1β)および腫瘍壊死因子α(TNFα)のホモジネートレベルは、メーカーの説明に従ってELISA(R and D systems)により測定した。総タンパク濃度は、各ホモジネートについて測定し、IL-1βおよびTNFαレベルはpg/mg総タンパクで表した。ホモジネートは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法でも分析した。一定量のタンパク質が各レーンへ供給されるように、ローディング量を各ホモジネートのタンパク量に従って調節した。リン酸化されたp65(ホスホ-p65)は、特異抗体(Santa Cruz)を使用してウェスタンイムノブロッティング法により検出し、濃度測定分析によって定量化した。
【0123】
(結果)
(PPARアゴニストではなくcyPGが羊膜および子宮筋細胞内のNF-κBのDNA結合を阻止する。)
15d-PGJ2は子宮筋細胞ならびにL-およびL+羊膜細胞において用量依存的にIL1-β-誘導性NF-κBのDNA結合を阻止した(図1)。コンセンサスOct-1またはSp-1プローブへのタンパク質結合は、IL-1βまたは15d-PGJ2による処理の影響を受けなかったが、このことは観察された効果がNF-κB特異的であることを確認するものである。
【0124】
PPAR-γは15d-PGJ2の推定される内因性の受容体であり、PPAR発現はサイトカインの影響を受ける可能性がある(Tontonozら、1998、Tanakaら、1999)ので、PPAR-γタンパク質発現を子宮筋および羊膜細胞で検査した。PPAR-γは両細胞型の核で主に発現されることが示され、その発現はIL-1βまたは15d-PGJ2処理の影響を受けなかった(図2)。15d-PGJ2はPPAR-αをトランス活性化することもできるが、その作用はPPAR-γよりも弱い(Formanら、1995)。子宮筋および羊膜細胞内のPPAR-α発現は、主に細胞質性であった(図3)。
【0125】
15d-PGJ2の抑制効果を模倣する合成PPARアゴニストの能力を検討した。PPAR-γアゴニストのトログリタゾンは、10〜50μMの用量ではNF-κBのDNA結合に影響しなかったが、100μMではわずかな減少を引き起こした(図4、5)。トログリタゾンは1μMでPPAR-γをトランス活性化でき、10μMの用量ではPPAR-γと補活性化因子p300およびステロイド受容体補活性化因子(SRC-1)との間で弱い相互作用を誘導する。脂質生成はPPAR-γによって正に調節され、トログリタゾンは5〜10μMの用量で脂肪生成マーカーの発現を誘導することができる(Prustyら、2002)。したがって、100μMの濃度では、トログリタゾンがPPAR-γを通して特定の影響を及ぼす可能性は低い。構造的に互いに異なるPPARリガンドは活性化補助因子/コリプレッサー補充にディファレンシャルに影響を及ぼすことができるので、TZD部分を欠いている新しい強力なPPAR-γアゴニストも使用した。このGW1929リガンドは、NF-κBのDNA結合を阻止することができなかった(図6)。合成PPAR-αアゴニストWY-14643はGAL4キメラトランスフェクション系で5〜25μMの用量でPPARαをトランス活性化することができるが(Kehrerら、2001)、WY-14643は10〜100μMの濃度ではNF-κBのDNA結合に影響しなかった。15d-PGJ2の抑制効果の媒介におけるPPAR-γの潜在的役割をさらに調査するために、選択的PPAR-γ阻害剤GW-9662の存在下で15d-PGJ2処理した細胞内でNF-κBのDNA結合を評価した。GW9662は、リガンド結合ドメイン(Leesnitzerら、2002)でのCys285の共有結合性修飾を通して、PPAR-γと不可逆的に結合する。GW-9662は、15d-PGJ2のNF-κB阻害を軽減することができなかった(図6)。
【0126】
対照的に、PPARリガンドとして作用しないがシクロペンテノン環を含むPGA1は、15d-PGJ2よりも非常に高い用量であったが、羊膜および子宮筋細胞内でNF-κBのDNA結合を阻止することができた(図7)。
【0127】
(PPARアゴニストではなくcyPGがNF-κB転写活性を阻止する。)
NF-κBのDNA結合に及ぼすcyPGの影響がNF-κBトランス活性化ポテンシャルの阻害に及ぶかどうか判断するために、羊膜細胞をNF-κB依存性リポーターκB.BG.Lucでトランスフェクションし、15d-PGJ2、PGA1、トログリタゾン、WY-14643または溶媒で処理し、その後IL-1βで刺激した(図8)。構成的リポーター活性はL-およびL+両方の羊膜細胞で見られたが、そのレベルはより低くまたL-細胞におけるIL-1βに伴う増加はより大きく、この結果は以前のAllportら(2001)による研究と一致する。15d-PGJ2およびPGA1は両方ともIL-1β誘導性のNF-κB転写活性を阻止したが、トログリタゾンおよびWY-14643は阻止しなかった。
【0128】
子宮筋細胞では、15d-PGJ2はIL-1β誘導性のNF-κB転写活性を用量依存的に阻止してリポーター活性を基礎レベルまで低下させた(図9)。IL-1β誘導性のNF-κB転写活性はPGA1によっても基礎レベルまで低下したが、トログリタゾン、GW1929またはWY-14643では低下しなかった(図10、11)。
【0129】
GW1929およびトログリタゾンはPPAR-γリガンドとして機能し、両細胞型におけるPPRE依存性リポーターのPPAR-γ媒介性の転写を増すことが示された。内因性のPPAR-γレベルは、使用されたトランスフェクション系でPPREリポーターを機能させるには十分でなく、転写は受容体の過剰発現を必要とした。トログリタゾンもPPARγ-トランスフェクション細胞におけるNF-κB依存性のリポーターを阻止することができなく、PPARγ過剰発現は15d-PGJ2によるNF-κB転写活性の阻害を促進しなかった(図12、13、14)。
【0130】
(PGE2ではなくcyPGがNF-κB活性化およびIκB分解を阻止する。)
15d-PGJ2は、子宮筋細胞ならびにL-およびL+羊膜細胞で、IL-1β誘導性のp65核移行およびp50リン酸化を用量依存的に阻止した(図15)。このことは、IL-1β誘導性のIκBαおよびIκBβ分解の阻害により明らかである。同様に、PGA1は子宮筋細胞で、p65核移行およびIκBα分解を阻止した(図16)。
【0131】
半減期の長いPGE2類似体である16,16-ジメチル-PGE2は、子宮筋および羊膜細胞で、NF-κBのDNA結合(Oct-1結合を対照にする)またはIL-1β誘導性のp65核移行を阻止しなかった(図17)。cyPGと対照的に、PGE2は炎症誘発性であり、シクロペンテノン環を含まず、またPPAR-γを活性化しないことが知られているので、このことは予想外でない(Formanら、1995)。16,16-ジメチル-PGE2は、子宮筋細胞におけるNF-κBのDNA結合またはp65核移行を阻止しなかった(図18)。しかし、それはT細胞で報告されている(Dumaiseら、1998)ようにNF-κB活性を刺激しなかったし、IL-1βまたはTNFαとの相乗効果を示すこともなかった。
【0132】
(NF-κB上流アクチベータおよび下流標的に及ぼす15-dPGJ2の効果。)
IL-1β誘導性のIκBα分解を阻止して未分解のリン酸化IκBαの蓄積をもたらしたプロテアソーム阻害剤MG132と対照的に、15-dPGJ2による処理の後にはリン酸化IκBαの蓄積は検出されず、15-dPGJ2はIKKまたは他の上流のキナーゼに影響を及ぼしていることが示唆された(図19)。IL-1βおよび15-dPGJ2の両方による処理はIKKαおよびIKKβのタンパク質発現に対して影響を及ぼさなかったが、15d-PGJ2はIKKのキナーゼ活性を阻止する可能性が高い。
【0133】
COX-2は分娩におけるNF-κBの重要な標的遺伝子であるので、COX-2発現に及ぼす15-dPGJ2およびPPARアゴニストの効果を評価した。IL-1β誘導性のCOX-2発現は15-dPGJ2によって阻止されたが、トログリタゾンまたはWY-14643によっては阻止されなかった(図20)。同様の結果がL-およびL+羊膜細胞で得られた。
【0134】
(早期分娩に及ぼすLPSの効果。)
上の方法で示されているように、早期分娩のマウスモデルを使用すると子の早期分娩はLPSの注射から16時間までに起こった。
【0135】
(炎症性反応に及ぼすLPSおよび15d-PGJ2の効果。)
すべてのマウスで、TNFαおよびIL-1βのレベルは、反対側の角と比較して注射部位の近位の胎盤でかなり高かった。IL-1βのレベルは、LPS + 溶媒を投与されたものと比較してLPS + 15d-PGJ2を注入された近位胎盤で約40%低かった(図22)。この差は統計学的に有意であった(p<0.05)。対照的に、TNFαのレベルは薬剤処理によって有意に変化することはなかった。
【0136】
有意には、胎盤のIL-1βレベルは胎盤と注射部位との近接性に従って変化することはなく、炎症性反応は感染の部位にかかわりなく子宮全体に分布することが示された。しかしホスホ-p65のレベルは、LPS + 溶媒を投与されたものと比較してLPS + 15d-PGJ2を注入された近位胎盤で約35%低く(図23)、この差は統計的に有意であった(p<0.05)。
【0137】
(シクロペンテノン環はcyPGのNF-κB阻害のために必須である。)
いくつかの研究によると、15d-PGJ2はPPARアゴニストであるが、PGA1など他のプロスタグランジンはそうでないことが証明された(Formanら、1995;Kliewerら、1995;Ferryら、2001)。発明者らは、PGA1がNF-κBに対する15d-PGJ2の効果は共有するが、9,10-ジヒドロ-15d-PGJ2(PPARγアゴニスト活性を保持するがシクロペンテノン環を有さない15d-PGJ2の類似体)は15d-PGJ2(図24)の効果を再現することができないことを示した。これらの知見を合わせ考えると、羊膜上皮および子宮筋細胞内のNF-κBに及ぼす15d-PGJ2の抑制効果はその求電子性の環によるものであり、類似した効果は他のシクロペンテノンプロスタグランジンで期待されるが他の非シクロペンテノンPPARアゴニストでは期待されないことが示された。
【0138】
(結論)
(cyPGによるNF-κB阻害)
15d-PGJ2は子宮筋細胞ならびにL-およびL+羊膜細胞においてIL1-β誘導性のNF-κBのDNA結合およびNF-κB媒介性のトランス活性化を阻止した。15d-PGJ2は、少なくとも部分的ににはIL-1βによるIκBαの分解を阻止することによって、NF-κBの核移行および活性化を阻止した。
【0139】
PPAR-αおよびPPAR-γの受容体を発現した子宮筋および羊膜細胞において、PPAR-γおよびPPAR-αアゴニストの両者は、他の細胞型ではNF-κBを阻止することが示された(Chinettiら、1998;Guptaら、2001)用量、またはより高い濃度でも、IL-1β誘導性のNF-κBのDNA結合およびNF-κB転写活性を阻止することができなかった。脂肪細胞でPPAR-γおよびNF-κBの間の潜在的機能的相互作用を調査した研究において、PPAR-γアゴニストはTNFα誘導性のNF-κB活性化、核移行およびDNA結合活性を阻害しなかった。むしろ、それらはNF-κBの転写調節活性と拮抗し、そのような阻害を示すためにPPAR-γ過剰発現が要求された(Ruanら、2003)。本研究において、PPAR-γ過剰発現はPPREのトランス活性化を増した一方で、PPAR-γアゴニストがNF-κB転写を阻止することを可能にしなかった。さらに、15d-PGJ2は外来性のPPAR-γが存在しない場合にNF-κB転写を阻止することができ、この受容体の過剰発現は阻害を促進しなかった。
【0140】
IL-1β誘導性のCOX-2発現は15-dPGJ2によって阻止されたが、PPARアゴニストによっては阻止されなかった。PPARアゴニストは抗炎症性であってCOX-2発現を阻止できることは公知であるが(Staelsら、1998;Subbaramaiahら、2001)、それらはある種の細胞型でCOX-2発現を増すことも報告されている(Meadeら、1999;Ikawaら、2001;Pangら、2003)。
【0141】
15d-PGJ2などのcyPGは、求電子性の炭素を含んでいるシクロペンテノン環構造が存在することが特徴である。この環は細胞タンパク質のグルタチオン残基およびシステイン残基の遊離スルフヒドリルなどの求核試薬と共有結合することができる。15d-PGJ2の受容体非依存性作用は、そのシクロペンテノン環が原因である。NF-κBタンパク質はそれらのDNA結合ドメイン(DBD)に保存されたシステイン残基を含み、このシステインのアルキル化はDNA結合を阻害する(Toledanoら、1993)。本研究では、PPAR-γリガンドとして作用しないcyPGであるPGA1は、15d-PGJ2より高い濃度であったがNF-κBのDNA結合およびトランス活性化を阻止することができた。PGE2またはPPARアゴニストではなくてPGA1が有する15d-PGJ2の効果を模倣するこの能力によって、これらのcyPGはそれらのシクロペンテノン環が原因で羊膜および子宮筋細胞におけるNF-κBを阻止することができることが示唆される。事実、発明者らの結果は、羊膜上皮および子宮筋細胞内のNF-κBに及ぼす15d-PGJ2の抑制効果はその求電子性の環によるものであり、類似した効果は他のシクロペンテノンプロスタグランジンで期待されるが他の非シクロペンテノンPPARアゴニストでは期待されないことを示している。
【0142】
NF-κBシステインの直接修飾は本研究では論じられていないが、15d-PGJ2およびPGA1の両方によって媒介されるNF-κBの阻害はIκBα分解の阻害を含むことが示され、NF-κBカスケードのさらに上流の事象が標的になっていることが示唆される。
【0143】
したがってPPAR活性化は羊膜および子宮筋層では抗炎症性に対しては効果的ではないかもしれないが、cyPGの使用はこれらの組織でのNF-κBの抑制、したがって一団の炎症誘発性および分娩関連の遺伝子の抑制に有用であることが判明するはずである。IKKβ/IκBαに対するcyPGの潜在的特異性は、より広い範囲のNF-κB阻害剤によって阻害することができるNF-κB活性化の他の潜在的に有益な経路(例えばp105のプロセシングおよびp50ホモダイマーの形成)に影響を及ぼさないので、cyPGの投与は抗炎症治療の魅力的な代替手段を提供する。炎症誘発性NF-κBの阻害を引き起こすと同時に内因性細胞保護分子の消炎作用の利用を可能にするcyPGの使用は、早期分娩および新生児の神経発生的障害の治療における新規治療手段となるものである。
【0144】
この研究は、使用したマウスモデルは、早期分娩および早期分娩の開始を遅らせることができる剤の研究のための有効なモデルであるという証拠を提供する。シクロペンテノンプロスタグランジン15d-PGJ2で処理したマウスにおけるIL-1βおよびホスホ-p65のレベルの低下は、この化合物はLPS処理によって誘導される炎症経路をin vivoで阻止する効果があることを示唆する。
【0145】
(実施例2−好ましい医薬組成物および投与の様式および用量)
本発明の化合物は、注射可能な徐放性薬物送達系を使用して送達することができる。これらは、特に注射の回数を低減するように設計されている。そのような系の一例はNutropin Depotであり、これは生物分解可能なマイクロスフェアー内に組換えヒト成長ホルモン(rhGH)を封入し、一旦注入されると長期間にわたって徐々にrhGHを放出する。
【0146】
本発明の化合物は、外科的に移植され、要求された部位に直接薬剤を放出する装置によって投与することができる。例えば、VitrasertはCMV網膜炎を治療するために、眼球内に直接ガンシクロビルを放出する。疾患部位へのこの治療薬剤の直接投与は、薬剤の全身性副作用があまりなく有効な治療を達成する。
【0147】
エレクトロポレーション療法(EPT)系も、投与のために使用することができる。細胞へパルス電場を送達する装置は薬剤に対する細胞膜の透過性を増加させ、結果として細胞内薬剤送達がかなり増す。
【0148】
化合物は、エレクトロインコーポレーション(EI)によっても送達することができる。皮膚表面の直径最高30ミクロンの小粒子がエレクトロポレーションで使用されるものと同一であるか類似した電気パルスに曝されたときに、EIは起こる。EIでは、これらの粒子は角質層を通して、皮膚のより深い層に運ばれる。粒子は薬剤または遺伝子で装填またはコーティングすることができ、あるいは単に薬剤が入ることができる孔を皮膚に生成する「弾丸」の役割をすることができる。
【0149】
投与の別法は、温度感受性であるReGel注射剤系である。体温より下ではReGelは注射液であるが、体温では即座にゲル貯蔵器を形成し、これは徐々に侵食されて公知の、安全な生物分解性ポリマーに分解する。生体高分子が溶けるに従い、活性薬剤は経時的に送達される。
【0150】
本発明の化合物は経口的に送達することもできる。この方法は、タンパク質およびペプチドを同時送達するための、体内へのビタミンB12の経口取込みの自然過程を使用する。ビタミンB12取込み系に利用することによって、タンパク質またはペプチドは腸壁を通過することができる。ビタミンB12類似体および薬剤の間で複合体が合成され、これらは複合体のビタミンB12部分の内性因子(IF)に対するかなりの親和性、および複合体の薬剤部分のかなりの生物活性を保持する。
【0151】
化合物は、「Trojan peptides」によって細胞に導入することができる。これらは、転位特性を有しており原形質膜を越えて親水性化合物を運ぶことができ、ペネトラチン(penetratin)と呼ばれているポリペプチドのクラスである。この系は、細胞質および核へのオリゴペプチドの直接の標的化を可能にし、非細胞型特異性かつ非常に効率的である(Derossiら、1998)。
【0152】
好ましくは、本発明の医薬製剤は、有効成分の1日用量もしくは単位を含んでいる単位用量、1日サブ用量またはその適当な部分である。
【0153】
本発明の化合物は、任意選択に非毒性の有機もしくは無機の酸もしくは塩基の付加塩の形で有効成分を薬剤として許容される剤形で含んでいる医薬製剤の形で、経口によりまたはいかなる腸管外経路により投与することができる。治療対象の障害および患者、ならびに投与経路により、組成物は様々な用量で投与することができる。
【0154】
本発明に従う経口投与に適当な製剤は、それぞれ有効成分の所定量を含んでいるカプセル、カシェ剤または錠剤などの独立した単位として、散剤または顆粒として、水性もしくは非水性の液体中の溶液または懸濁液として、あるいは水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして提供することができる。有効成分はボーラス、舐剤またはペーストとしても提供することができる。
【0155】
錠剤は圧縮または成形により、また任意選択に1つまたは複数の副成分と製造することができる。圧縮錠剤は適当な機械で粉体または顆粒のような易流動性の形態の有効成分を圧縮することにより、また任意選択に結合剤(例えばポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばナトリウム澱粉グリコール酸塩、架橋ポビドン、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、界面活性または分散性の剤を混ぜ合わせて調製することができる。成形錠剤は、不活性の液状希釈剤で湿らせた粉末状の化合物の混合物を適当な機械で成形することによって作製することができる。錠剤は任意選択にコーティングするか切れ目を入れることができ、また、例えば所望の放出プロフィールを提供するためにヒドロキシプロピルメチルセルロースを様々な割合で使用して、錠剤中の有効成分の緩徐放出または制御放出を提供するように製剤化することができる。
【0156】
口への局所投与のために適当な製剤としては、有効成分を口当たりの良い基剤、通常ショ糖およびアカシアまたはトラガカンタの中に含むロゼンジ、有効成分を不活性な基剤、例えばゼラチンおよびグリセリンまたはショ糖およびアカシアに含むトローチ、ならびに有効成分を適当な液状担体に含む洗口液がある。
【0157】
ヒトの療法では、本発明の化合物は単独で投与することができるが、通常、意図された投与経路および標準の医薬慣行を考慮して選択される適当な医薬賦形希釈剤または担体と混合されて投与される。
【0158】
例えば、本発明の化合物は、即時放出、遅延放出または徐放性投与のために、錠剤、カプセル、腔坐剤、エリキシル、液剤または懸濁液の形で経口、バッカルまたは舌下により投与することができ、これらは着香剤または着色剤を含むことができる。本発明の化合物は、海綿体内注射を通して投与することもできる。
【0159】
そのような錠剤は、微結晶性セルロース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウムおよびグリシンなどの賦形剤、澱粉(好ましくはコーン、ジャガイモまたはタピオカ澱粉)、ナトリウム澱粉グリコール酸塩、クロスカルメロースナトリウムおよびある種の錯体ケイ酸塩などの崩壊剤、ならびにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ショ糖、ゼラチンおよびアカシアなどの造粒結合剤を含むことができる。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、グリセリルベヘネートおよびタルクなどの平滑剤を含むことができる。
【0160】
類似した種類の固体組成物は、ゼラチンカプセルの充填剤としても使用することができる。この点に関して好ましい賦形剤としては、ラクトース、澱粉、セルロース、乳糖または高分子ポリエチレングリコールがある。水性懸濁液および/またはエリキシルについては、本発明の化合物は様々な甘味料または着香剤、着色料または色素と、乳化剤および/または懸濁剤と、水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリンなどの希釈剤と、ならびにそれらの組合せと組み合わせることができる。
【0161】
本発明の化合物は腸管外経路でも、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下、脳室内、胸骨内、脳内、筋肉内または皮下に投与することもでき、あるいはそれらは注入技術によって投与することができる。それらは、他の物質、例えば溶液を血液と等張にするのに十分な塩類またはグルコースを含むことができる無菌の水溶液の形で使用するのが最良である。必要に応じて、水溶液は適切に緩衝するべきである(好ましくはpH 3〜9)。無菌条件下での適当な腸管外製剤の調製は、当業者に公知の標準的製薬技術によって容易に達成される。
【0162】
非経口投与のために適当な製剤としては抗酸化剤、緩衝液、静菌薬および製剤を予定レシピエントの血液と等張にする溶質を含んでもよい水性および非水性の無菌注射液、ならびに懸濁化剤および増粘剤を含んでもよい水性および非水性の無菌懸濁液がある。製剤は単位用量または複数回投与容器、例えば密封アンプルおよびバイアルで提供することができ、またフリーズドライ(凍結乾燥)され、無菌の液状担体、例えば注射用水を使用直前に加えることだけを必要とする状態で保存することができる。即席の注射液および懸濁液は、前に記載した種類の無菌の粉体、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0163】
通常、ヒトでは、本発明の化合物の経口または腸管外の投与が好ましい経路であり、また最も便利である。
【0164】
獣医学での使用については、本発明の化合物は通常の獣医慣行に従って十分に許容できる製剤として投与され、獣医が特定の動物に最も適当である投薬計画および投与経路を決定する。
【0165】
本発明の医薬組成物製剤は便利な単位用量剤形で提供することができ、また薬学の分野で公知の方法のいずれかで調製することができる。そのような方法は、有効成分を1つまたは複数の副成分を構成する担体と組み合わせる工程を含む。一般に、製剤は有効成分を液状担体または微粉固体担体またはその両方と一様にかつ緊密に組み合わせ、次に、必要に応じて生成物を形づくることによって調製される。
【0166】
好ましい単位用量製剤は、有効成分の1日用量もしくは単位、1日サブ用量またはその適当な部分を含んでいるものである。
【0167】
本発明の好ましい送達系は本発明の化合物を含浸させたヒドロゲルを含むことができ、これは好ましくは、子宮頸に挿入することができ、また一旦適当な子宮頸部の成熟または女性生殖器系への他の望ましい影響が生じたならば引き抜くことができる、タンポンにのせて運ばれる。
【0168】
上で特記された成分に加えて、本発明の製剤は当の製剤の種類を顧慮して当技術分野で慣用される他の剤を含むことができることを理解するべきであり、例えば、経口投与に適当なものとしては着香剤がある。
【0169】
(実施例3−例示的な医薬組成物)
本発明の化合物は単独で投与することが可能であるが、1つまたは複数の許容できる担体と共に医薬製剤として提供することが好ましい。担体は本発明の化合物と適合するという意味において「許容される」ものでなければならず、またそのレシピエントに対して有害であってはならない。一般的に、担体は無菌のかつ発熱性物質を含まない水または生理食塩水である。
【0170】
以下の実施例は本発明に従う医薬組成物を例示し、その有効成分は本発明の化合物である。
【0171】
(実施例3A:錠剤)
有効成分 100mg
ラクトース 200mg
澱粉 50mg
ポリビニルピロリドン 5mg
ステアリン酸マグネシウム 4mg
359mg
【0172】
錠剤は湿潤造粒、続いての圧縮によって前記成分から調製される。
【0173】
(実施例3B:眼科用液剤)
有効成分 0.5g
塩化ナトリウム、分析用 0.9g
チオメルサール 0.001g
精製水、定容 100ml
pH 7.5
【0174】
(実施例3C:錠剤製剤)
下記製剤AおよびBは、ポビドン溶液による成分の湿式造粒、その後のステアリン酸マグネシウム添加および圧縮によって調製される。
【0175】
製剤A
mg/錠剤 mg/錠剤
(a)有効成分 250 250
(b)ラクトースB.P. 210 26
(c)ポビドンB.P. 15 9
(d)ナトリウム澱粉グリコール酸塩 20 12
(e)ステアリン酸マグネシウム 5 3
500 300
【0176】
製剤B
mg/錠剤 mg/錠剤
(a)有効成分 250 250
(b)ラクトース 150 -
(c)Avicel PH101(登録商標) 60 26
(d)ポビドンB.P. 15 9
(e)ナトリウム澱粉グリコール酸塩 20 12
(f)ステアリン酸マグネシウム 5 3
500 300
【0177】
製剤C
mg/錠剤
有効成分 100
ラクトース 200
澱粉 50
ポビドン 5
ステアリン酸マグネシウム 4
359
【0178】
以下の製剤DおよびEは、混合した成分の直接圧縮によって調製される。製剤Eで使用されるラクトースは、直接圧縮型である。
【0179】
製剤D
mg/カプセル
有効成分 250
前ゼラチン化澱粉NF15 150
400
【0180】
製剤E
mg/カプセル
有効成分 250
ラクトース 150
Avicel(登録商標) 100
500
【0181】
製剤F(放出制御製剤)
この製剤は、ポビドン溶液による(下記)成分の湿式造粒、その後のステアリン酸マグネシウム添加および圧縮によって調製される。
mg/錠剤
有効成分 500
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 112
(Methocel K4M Premium)(登録商標)
ラクトースB.P. 53
ポビドンB.P.C. 28
ステアリン酸マグネシウム 7
700
【0182】
薬物放出は約6〜8時間にわたって起き、12時間後に完了。
【0183】
(実施例3D:カプセル製剤)
製剤A
カプセル製剤は、上の実施例Cの製剤Dの成分を混ぜて2つの部分から成る硬質ゼラチンカプセルに封入することによって調製される。製剤B(下)は、同様の方法で調製される。
【0184】
製剤B
mg/カプセル
有効成分 250
ラクトースB.P. 143
ナトリウム澱粉グリコール酸塩 25
ステアリン酸マグネシウム 2
420
【0185】
製剤C
mg/カプセル
有効成分 250
マクロゴール4000 BP 350
600
【0186】
カプセルは、マクロゴール4000 BPを融解し、有効成分を融解物内に分散させ、融解物を2つの部分から成る硬質ゼラチンカプセルに封入することによって調製される。
【0187】
製剤D
mg/カプセル
有効成分 250
レシチン 100
落花生油 100
450
【0188】
カプセルは有効成分をレシチンおよび落花生油で分散させ、分散物を柔らかく弾性のあるゼラチンカプセルに封入することによって調製される。
【0189】
製剤E(放出制御カプセル)
下記放出制御カプセル製剤は、成分a、bおよびcを押出機を使用して押し出し、その後の押出品の球状化および乾燥により調製される。乾燥ペレットを次に放出制御膜(d)でコーティングし、2つの部分から成る硬質ゼラチンカプセルに封入する。
mg/カプセル
有効成分 250
微結晶性セルロース 125
ラクトースBP 125
エチルセルロース 13
513
【0190】
(実施例3E:注射製剤)
有効成分 0.200g
無菌、無発熱物質のリン酸緩衝液(pH7.0)、定容 10ml
【0191】
有効成分を大部分のリン酸緩衝液(35〜40℃)に溶かした後に定容とし、次に無菌のミクロポアフィルターでろ過して無菌の10mlのアンバーガラスバイアル(タイプ1)に入れ、無菌の栓およびオーバーシールで密封する。
【0192】
(実施例3F:筋肉内注射)
有効成分 0.20g
ベンジルアルコール 0.10g
Glucofurol 75(登録商標) 1.45g
注射用水q.s.、定容 3.00ml
【0193】
有効成分をグリコフロールに溶かす。ベンジルアルコールを次に加えて溶かし、水を3mlまで加える。次に混合物を無菌のミクロポアフィルターでろ過し、無菌の3mlガラスバイアル(タイプ1)に密封する。
【0194】
(実施例3G:シロップ懸濁液)
有効成分 0.2500g
ソルビトール溶液 1.5000g
グリセリン 2.0000g
分散可能なセルロース 0.0750g
安息香酸ナトリウム 0.0050g
風味、モモ17.42.3169 0.0125ml
精製水q.s.、定容 5.0000ml
【0195】
安息香酸ナトリウムを一部の精製水に溶かし、ソルビトール溶液を加える。有効成分を加えて分散する。グリセリン内で増粘剤(分散性セルロース)を分散する。2つの分散物を混合し、精製水を加えて要求された量に定容とする。必要に応じて懸濁液の追加のシアリングによってさらなる濃縮を達成する。
【0196】
(実施例3H:坐薬)
mg/坐薬
有効成分(63μm)* 250
硬質脂肪、BP(Witepsol H15-Dynamit Nobel) 1770
2020
*有効成分は粉体として使用され、粒子の少なくとも90%は直径が63μm以下である。
【0197】
Witepsol H15の1/5を、最大45℃の蒸気ジャケットパン内で溶かす。有効成分を200μmの篩でふるい、むらのない分散が達成されるまでカッターを取り付けたシルバーソン(silverson)を使用して攪拌しながら溶融ベースに加える。混合物を45℃に維持し、残りのWitepsol H15を懸濁液に加えて均質の混合物が得られるように攪拌する。すべての懸濁液を250μmステンレス鋼スクリーンでろ過し、連続的に攪拌しながら40℃に放冷させる。38℃から40℃の温度で、混合物の2.02gを適当なプラスチックの型に詰める。坐薬を室温まで放冷させる。
【0198】
(実施例3I:ペッサリー)
mg/ペッサリー
有効成分 250
無水ブドウ糖 380
ジャガイモ澱粉 363
ステアリン酸マグネシウム 7
1000
【0199】
上記の成分を直接混合し、得られた混合物の直接圧縮によりペッサリーは調製される。
【0200】
(実施例3J:クリームおよび軟膏)
Remingtonで記載されている。
【0201】
(実施例3K:マイクロスフェアー製剤)
本発明の化合物は、マイクロスフェアー製剤、例えばCleland(1997;2001)で記載されているものなどを使用しても送達することができる。
【0202】
(実施例3L:乾燥粉末吸入)
Ansel(1999)で記載されているように、本発明の化合物は、超微粉砕された粒子を一定量送達する乾燥粉末吸入器を用いて、吸入により送達することができる。
【0203】
(実施例3M:エアゾール吸入)
Ansel(1999)で記載されているように、本発明の化合物は、非CFC推進剤を使用して超微粉砕された粒子を一定量送達する適当な吸入器を用いて、吸入により送達することができる。
【0204】
(参考文献)











【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】NF-κBのDNA結合についての15dPGJ2による阻害を示す図である。 15dPGJ2または溶媒で2hの間+/- IL-1b刺激(15分)で処理した(A)子宮筋細胞、(B)L+羊膜細胞および(C)L-羊膜細胞からの核タンパク質抽出物のNF-κBのDNA結合の電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)分析。NF-kB DNA結合を評価するために使用されたコンセンサスkBプローブ、および対照として使用されたコンセンサスOct-1プローブ。
【図2】PPAR-γタンパク質発現を示す図である。 (A)15分のIL-1β刺激を行なったか行なっていない子宮筋および羊膜細胞からの核およびサイトゾルタンパク質抽出物、および(B)15d-PGJ2 +/- IL-1bで処理された子宮筋細胞の核抽出物のウェスタンイムノブロット図。PPAR-γに対する抗体によって検出。
【図3】PPAR-αタンパク質発現を示す図である。 15分のIL-1b刺激を行なったか行なっていない子宮筋および羊膜細胞からの核およびサイトゾルタンパク質抽出物のウェスタンイムノブロット図。PPAR-αに対する抗体によって検出。
【図4】PPAR-γアゴニストはNFκBのDNA結合を阻止しないことを示す図である。 (A)トログリタゾン、(B)GW1929または溶媒で2hの間+/- IL-1b刺激(15分)で処理した子宮筋細胞からの核タンパク質抽出物のEMSA分析。NF-κBのDNA結合を評価するために使用されたコンセンサスκBプローブ、および対照として使用したコンセンサスOct-1プローブ。スーパーシフト分析については、抽出物はp50またはp65に対する抗体でプレインキュベートした。
【図5】トログリタゾンおよびWY-14643はNFκBのDNA結合を阻止しないことを示す図である。 (A)WY-14643または溶媒、および(B)高用量のトログリタゾン、WY-14643または溶媒で2h、その後IL-1b刺激(15分)で処理した子宮筋細胞からの核タンパク質抽出物のEMSA分析。NF-κBのDNA結合を評価するために使用したコンセンサスκBプローブ、対照として使用したコンセンサスOct-1およびSp-1プローブ。
【図6】PPAR-γアンタゴニストGW9662は15dPGJ2によるNF-κBのDNA結合阻害を軽減しないことを示す図である。 15dPGJ2 +/- GW9662または溶媒で2h、その後IL-1β刺激(15分)で処理した羊膜細胞からの核タンパク質抽出物のEMSA分析。NF-κBのDNA結合を評価するために使用したコンセンサスkBプローブ、および対照として使用したコンセンサスOct-1プローブ。
【図7】NF-κBのDNA結合についてのPGA1による阻害を示す図である。 PGA1または溶媒で2h、その後IL-1b刺激(15分)で処理した(A)子宮筋細胞および(B)羊膜細胞からの核タンパク質抽出物のEMSA分析。NF-κBのDNA結合を評価するために使用したコンセンサスκBプローブ、および対照として使用したコンセンサスOct-1プローブ。スーパーシフト分析については、抽出物はp50またはp65に対する抗体とプレインキュベートした。
【図8】羊膜におけるNFκB転写活性に及ぼすcyPGおよびPPARアゴニストの効果を示す図である。 L-またはL+胎盤に由来する羊膜細胞をNFκB依存性リポーター構築物κB.BG.Lucで一時的にトランスフェクションし、15dPGJ2、PGA1、トログリタゾン、WY-14643または溶媒で2h処理し、次にIL-1β(1ng/ml)で6h刺激した。変異κBmut.Luc構築物は、NFκB媒介性のトランス活性化を確認するための対照として使用した。値は、b-galリポーター活性について標準化されている。
【図9】15dPGJ2による子宮筋層内のNFκB転写活性阻害を示す図である。 子宮筋細胞をNFκB依存性リポーター構築物κB.BG.Lucで一時的にトランスフェクションし、15dPGJ2または溶媒で2hの間、+/- IL-1β(1ng/ml)で6hの間処理した。変異κBmut.Luc構築物は、NFκB媒介性のトランス活性化を確認するための対照として使用した。値は、b-galリポーター活性について標準化されている。(NS=刺激されていない)。
【図10】子宮筋におけるNFκB転写活性に及ぼすPGA1およびPPARアゴニストの効果を示す図である。 子宮筋細胞をNFκB依存性リポーター構築物κB.BG.Lucで一時的にトランスフェクションし、トログリタゾン、WY-14643、PGA1または溶媒で2hの間、+/- IL-1b(1ng/ml)で6hの間処理した。変異κBmut.Luc構築物は、NFκB媒介性のトランス活性化を確認するための対照として使用した。値は、CMV-Renillaリポーター活性について標準化されている。(NS=刺激されていない)。
【図11】PPAR-γアゴニストGW1929はNFκB転写活性を阻止しないことを示す図である。 子宮筋細胞をNFκB依存性リポーター構築物κB.BG.Lucで一時的にトランスフェクションし、GW1929または溶媒で2hの間、+/- IL-1b(1ng/ml)で6hの間処理した。値は、CMV-renillaリポーター活性について標準化されている。(NS=刺激されていない)。
【図12】トログリタゾンおよびGW1929はPPREリポーターのPPAR-γ活性化を増すことを示す図である。 子宮筋細胞を、0.4mgのPPAR-γ依存性リポーター構築物3-PPRE-TK.pGL3および100ng、200ngまたは300ngのPPAR-γ発現構築物でコトランスフェクションした。細胞は、10mMまたは20mMの(A)トログリタゾンもしくは(B)GW1929、または溶媒で24h処理した。値は、CMV-renillaリポーター活性について標準化されている。同様の結果が羊膜細胞のトランスフェクションで得た。
【図13】トログリタゾンはPPAR-γでトランスフェクションした細胞におけるNFκB転写活性を阻止しないことを示す図である。 子宮筋細胞を0.4mgのκB.BG.Lucリポーターおよび200ngのPPAR-γ発現ベクターでトランスフェクションし、10mMのトログリタゾンまたは溶媒で7hの間、+/- IL-1b(1ng/ml)で17hの間処理した。値は、CMV-renillaリポーター活性について標準化されている。(NS=刺激されていない)。
【図14】PPAR-γ過剰発現は15d-PGJ2によるNFκB活性阻害を増加しないことを示す図である。 子宮筋細胞を0.4mgのκB.BG.Lucリポーターおよび200ngのPPAR-γ発現ベクターでトランスフェクションし、15d-PGJ2で2hの間、その後IL-1β(1ng/ml)で6hの間処理した。値は、β-ガラクトシダーゼリポーター活性について標準化されている。(NS=刺激されていない)。
【図15】15dPGJ2による、p65核局在化、p50リン酸化およびIκBα分解についての阻害を示す図である。 15dPGJ2または溶媒で2hの間、+/- IL-1β刺激(15分)で処理した(A)子宮筋細胞、(B)L-羊膜細胞および(C)L+羊膜細胞からの核またはサイトゾルのタンパク質抽出物のウェスタンイムノブロット図。ブロットは、p65、p50またはIκBαに対する抗体で検出した。
【図16】PGA1による、p65核局在化およびIκBα分解についての阻害を示す図である。 PGA1または溶媒で2hの間、その後IL-1β刺激(15分)で処理した子宮筋細胞からの核またはサイトゾルのタンパク質抽出物のウェスタンイムノブロット図。ブロットは、p65またはIκBaに対する抗体で検出した。
【図17】PGE2はTNFαおよびIL-1βで誘導されるNFκB活性化を阻止しないことを示す図である。 PGE2または溶媒で2hの間、+/- TNFαまたはIL-1b刺激(15分)で処理した子宮筋細胞からの核タンパク質抽出物の分析。(A)コンセンサスκBプローブを使用したEMSA。(B)ウェスタンイムノブロットによる核p65の検出。
【図18】PGE2はNF-κBのDNA結合を誘導しないことを示す図である。 溶媒、PGE2またはIL-1βで処理した(A)L-羊膜細胞および(B)子宮筋細胞からの核タンパク質抽出物のEMSA分析。コンセンサスκBプローブを使用。
【図19】15dPGJ2はIκBαリン酸化を阻止することを示す図である。 (A)15dPGJ2で2hの間、+/- IL1bで15分間処理してIKKについて検出した、および(B)30mMの15dPGJ2、40mMのMG132または溶媒で2hの間、+/- IL-1βで15分間処理してIκBαについて検出した子宮筋細胞からのサイトゾル抽出物のウェスタンイムノブロット図。
【図20】IL-1β誘導性のCOX-2タンパク質発現に及ぼす15dPGJ2およびPPARアゴニストの効果を示す図である。 15dPGJ2、トログリタゾン、WY-14643または溶媒で2h、その後IL-1β刺激で6h処理した子宮筋細胞からのサイトゾルタンパク質抽出物のウェスタンイムノブロット図。(A) COX-2および(B)平滑筋アクチンに対する抗体で検出した。
【図21】(A)プロスタグランジンA1(PGA1)および(B)15-デオキシ-Δ12,14プロスタグランジンJ2(15-dPGJ2)の構造の概略図である。
【図22】炎症性反応に及ぼすLPSおよび15d-PGJ2の効果を示す図--IL-1βレベル。 250μg LPS + 溶媒または250μg LPS + 4μg 15d-PGJ2の子宮内注射から6時間後に妊娠16日のマウスから収集した胎盤ホモジネートのIL-1β濃度。*は統計学的に有意な差を表す(t検定(p<0.05))。
【図23】炎症性反応に及ぼすLPSおよび15d-PGJ2の効果を示す図--ホスホ-p65レベル。 250μg LPS + 溶媒または250μg LPS + 4μg 15d-PGJ2の子宮内注射から6時間後に妊娠16日のマウスから収集した胎盤ホモジネートのホスホ-p65相対濃度。*は統計学的に有意な差を表す(t検定(p<0.05))。
【図24】シクロペンテノン環はcyPGのNF-κB阻害のために必須であることを示す図である。 (A) NF-κBのDNA結合は、溶媒、15d-PGJ2またはPGA1で2h前処理され、その後IL-1β(1ng/ml)で15分間刺激された子宮筋細胞からの核タンパク質抽出物におけるEMSAで測定した。p50およびp65に対する抗体は、スーパーシフト分析のために使用した。(B)子宮筋細胞をNF-κB-LUCリポーターおよびβ-galなリポータープラスミドで一時的にトランスフェクションし、溶媒またはPGA1で2h前処理し、次にIL-1β(1ng/ml)で6h刺激した。ルシフェラーゼ活性は、β-galリポーターリードアウトについて標準化した。値は、3回行なった実験の各処理で得られた平均+/-SEMで提示されている。(C) PGA1または(D)15d-PGJ2で2h処理し、IL-1β(1ng/ml)で15分間刺激した子宮筋細胞内の核p65およびp50の発現のウェスタンブロット分析。(E) 15d-PGJ2または9,10-ジヒドロ-15d-PGJ2で2h処理され、IL-1β(1ng/ml)で15分間刺激された子宮筋細胞からの全細胞溶解物のウェスタンブロット分析。膜は、p65およびSer 536リン酸化p65に対する抗体で検出した。同様の結果が羊膜表皮細胞で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性の分娩の開始を遅らせかつ/またはその継続を阻止するための医薬品の製造における、シクロペンテノンプロスタグランジンの使用。
【請求項2】
女性の生殖系における炎症性反応を阻止しかつ/または低減するための医薬品の製造におけるシクロペンテノンプロスタグランジンの使用。
【請求項3】
前記女性が妊娠中である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記女性がヒトであり妊娠期間が約13週を超える、請求項1または3に記載の使用。
【請求項5】
妊娠期間が約20から32週である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記医薬品が女性の生殖器系内の分娩の開始または継続と関連する炎症性反応を低減および/または阻止する、請求項1から5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記医薬品が女性の生殖器系内の病原体による感染と関連する炎症性反応を低減および/または阻止する、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記病原体がウイルス、細菌または真菌である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記炎症性反応が子宮の伸展によって活性化される、請求項6に記載の使用。
【請求項10】
前記医薬品が以下の状態:早期分娩、病原体感染、子宮頸部の成熟、子宮収縮の1つまたは複数を低減および/または阻止する、請求項1から9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記医薬品が胎児または新生児の損傷を低減および/または予防する、請求項1から10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記胎児または新生児の損傷が脳損傷である請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記胎児または新生児の損傷が以下の状態:アストログリオーシス、ミエリン産生オリゴデンドロサイトの減少、嚢胞化(脳室周囲白質軟化症、PVL)をもたらす多病巣性壊死の1つまたは複数である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記シクロペンテノンプロスタグランジンが15-デオキシ-Δ12,14-プロスタグランジンJ2および/またはプロスタグランジンA1ならびに/あるいは15-デオキシ-Δ12,14-プロスタグランジンJ2および/またはプロスタグランジンA1のプロドラッグである、請求項1から13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
前記プロドラッグがPGD2またはPGE1である請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記医薬品が薬剤として許容される賦形剤、希釈剤または担体をさらに含む、請求項1から15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
前記医薬品が経口送達に適合した形態である、請求項1から16のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
前記医薬品が静脈内注射による送達に適合した形態である、請求項1から17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
前記医薬品が羊膜内注射による送達に適合した形態である、請求項1から18のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
前記医薬品が羊水と相溶性の形態である、請求項1から19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
前記医薬品が以下の状態:早期分娩、病原体感染、子宮頸部の成熟、子宮収縮の1つまたは複数を有するかまたはそのリスクを有する女性を治療するための薬剤をさらに含む、請求項1から20のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
前記薬剤がコルチコステロイドである請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記薬剤が前記新生児の呼吸窮迫症候群を予防しかつ/または低減することができる、請求項21または22に記載の使用。
【請求項24】
前記薬剤がデキサメタゾンまたはベタメタゾンから選択される請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記状態が早期分娩であり、前記薬剤が分娩を遅延させることができる、請求項21に記載の使用。
【請求項26】
前記状態が子宮収縮であり、前記薬剤が子宮収縮抑制薬である、請求項21に記載の使用。
【請求項27】
前記子宮収縮抑制剤が、オキシトシン受容体アンタゴニスト、カルシウムチャネル遮断剤、交感神経作用薬、一酸化窒素供与剤から選択される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記オキシトシン受容体アンタゴニストがアトシバンである請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記カルシウムチャネル遮断剤がニフェジピンである請求項27に記載の使用。
【請求項30】
前記交感神経作用薬がリトドリンである請求項27に記載の使用。
【請求項31】
前記一酸化窒素供与剤がニトログリセリンである、請求項27に記載の使用。
【請求項32】
前記炎症性反応が子宮細胞内のNFκBによって媒介される、請求項1から31のいずれかに記載の使用。
【請求項33】
前記シクロペンテノンプロスタグランジンが、子宮細胞におけるNFκBのDNA結合を阻止および/または低減することによってNFκB活性を抑制および/または低減することができる、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記シクロペンテノンプロスタグランジンが、子宮細胞におけるNFκB媒介性の転写調節を阻止および/または低減することによってNFκB活性を抑制および/または低減することができる、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記シクロペンテノンプロスタグランジンが、子宮細胞におけるNFκBの産生を阻止および/または低減することによってNFκB活性を抑制および/または低減することができる、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
シクロペンテノンプロスタグランジンおよび薬剤として許容される担体または賦形剤を含み、前記シクロペンテノンプロスタグランジンが女性生殖器系における炎症性反応を予防および/または低減するのに有効な量で存在する医薬組成物。
【請求項37】
女性生殖器系内の炎症を治療するための、治療を必要とする対象に請求項1から36のいずれか一項に記載の医薬品の有効量を投与することを含む方法。
【請求項38】
女性の分娩の開始を遅らせかつ/またはその継続を阻止するためのシクロペンテノンプロスタグランジンを同定するための、PPAR-γとは独立して子宮細胞内のNFκB活性を阻止および/または低減することができるかどうかについて判断するために前記シクロペンテノンプロスタグランジンを試験する工程を含む方法。
【請求項39】
女性の分娩の開始を遅らせかつ/またはその継続を阻止するために使用する医薬組成物を作製するための、請求項38に記載の方法によって同定されたシクロペンテノンプロスタグランジンを提供する工程と、それを薬剤として許容される担体と組み合わせる工程とを含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公表番号】特表2007−513133(P2007−513133A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542016(P2006−542016)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005087
【国際公開番号】WO2005/053706
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(500165809)インペリアル・イノベイションズ・リミテッド (32)
【Fターム(参考)】