説明

分岐シールド導電路及びシールド部材の製造方法

【課題】分岐した導電路が好適にシールドされた分岐シールド導電路の提供。
【解決手段】本発明の分岐シールド導電路1は、分岐するように機器間に配索される複数組の電線束4と、前記電線束4を覆う分岐したシールド部材6と、このシールド部材6に導通可能に接続される金属製の筒体7,71,72を備える。シールド部材6は、金属細線が網目状に編み込まれた編組材料から、入り口穴61を有する1本の筒状の幹通路64と、その幹通路64から電線束4の組数に応じて複数本に分かれ各々が出口穴62,63を有する複数本の筒状の枝通路65,66とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐シールド導電路及びシールド部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気自動車等のモータ駆動電流を供給する電線からは、電磁波ノイズが発生することが知られている。この電磁波ノイズは、外部機器に対して悪影響を与え得るため、遮蔽されることが好ましい。
【0003】
特許文献1には、複数本のノンシールド電線(ワイヤーハーネス)を、金属製のパイプと可撓性を有する筒状のシールド部材とを接続したもの中に挿入して、シールドする技術が記載されている。このように前記電線を前記シールド部材等で一括して包囲することで、電磁波ノイズの発生を抑制している。この種のシールドされた電線(所謂、シールド導電路)は、例えば、電気自動車におけるインバータ装置やモータ等の機器間に配索される導電路として利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−171952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、機器間には、用途の異なる複数本のシールド導電路が配索されることもある。例えば、一方の機器側として、2種類のインバータ装置を1つのケース内に収容したものが配置され、他方の機器側として、前記インバータ装置にそれぞれ対応した2種類のモータ(モータジェネレータ)を1つのケース内に収容したものが配置される場合がある。このような場合、機器間には、2種類のシールド導電路が並ぶように配索される。
【0006】
近年、種々の目的で、機器側のコネクタ配置等が適宜、変更される場合がある。例えば、2種類のインバータ装置の各コネクタが1つにまとめられて配置されることも考えられる。何故ならば、コネクタ同士を近接して配置すると、コネクタにおけるシールド部材等との接続部分(所謂、カシメ部分)が互いに干渉し合うため、これを防止するために、2個のコネクタを一まとめにすることも考えられるからである。
【0007】
一方の機器側のコネクタが1つにまとめられた場合、前記コネクタに接続された2種類の電線(ワイヤーハーネス)は二股に分かれるように機器間に配索されることになる。このように分岐して配索される電線(ワイヤーハーネス)は、特許文献1等に示される直線的なシールド部材では好適にシールドすることができず、問題となっている。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、分岐した導電路が好適にシールドされた分岐シールド導電路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の分岐シールド導電路は、各組が複数本の電線を含み、各組同士が一端側から他端側に向かって分岐するように機器間に配索される複数組の電線束と、入り口穴を有する1本の筒状の幹通路と、その幹通路から前記電線束の組数に応じて複数本に分かれ各々が出口穴を有する複数本の筒状の枝通路とを有し、各電線束が分岐するように前記幹通路から各枝通路に向かって通される、金属細線が網目状に編み込まれた編組材料からなるシールド部材と、前記電線束の各組の一端がまとめて挿通され、かつ周縁に前記幹通路の入り口穴側の開口端部が被せられて導通接続される金属製の入り口側筒体と、前記電線束の各組の他端がそれぞれ挿通され、かつ各々の周縁に前記幹通路の出口穴側の開口端部がそれぞれ被せられて導通接続される複数個の金属製の出口側筒体と、を備えることを特徴とする。
【0010】
前記分岐シールド導電路において、前記筒体と、その周縁に被せられた前記シールド部材の開口端部とが、環状のカシメ部材によって締付け固定されて導通接続されることが好ましい。
【0011】
前記分岐シールド導電路において、前記電線束の各電線の端末部に固着された電線側端子を有し、前記筒体が、機器のシールドケースに接続固定されるシールドシェルからなり、前記電線側端子が、機器のシールドケース内に設けられた機器側端子と接続されることが好ましい。
【0012】
前記分枝シールド導電路において、前記シールド部材が、前記幹通路と複数本の前記枝通路との接続部分に継ぎ目がないことが好ましい。
【0013】
本発明のシールド部材の製造方法は、入り口穴を有する1本の筒状の幹通路と、その幹通路から二股状に分かれ各々が出口穴を有する2本の筒状の枝通路とを有し、金属細線が網目状に編み込まれてなり両端に前記出口穴となる出口仮穴を有する1本の編組筒基材から製造されるシールド部材の製造方法であって、前記編組筒基材の途中の周面に、前記網目を押し広げて形成される前記入り口穴となる入り口仮穴を設ける工程と、前記入り口仮穴と対向する面側において前記編組筒基材の両端が互いに近づくように前記編組筒基材が折り曲げられて、前記幹通路と前記枝通路とからなる前記シールド部材を得る工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
このようにして製造されるシールド部材は、前記幹通路と2本の前記枝通路との接続部分に継ぎ目がない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、分岐した導電路が好適にシールドされた分岐シールド導電路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る分岐シールド導電路の平面図
【図2】図1に示される分岐シールド導電路の水平断面図
【図3】シールド部材の斜視図
【図4】編組筒基材の斜視図
【図5】シールド部材の製造方法を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1ないし図5を参照しつつ説明する。図1は、第1実施形態に係る分岐シールド導電路の平面図であり、図2は、図1に示される分岐シールド導電路の水平断面図である。本実施形態の分岐シールド導電路1は、例えば、直列方式のハイブリッド自動車で利用されるものであり、2つのインバータ(不図示)を有する一方の機器2と、2つのモータジェネレータ(不図示)を有する他方の機器3との間に配索される。これらのモータジェネレータはそれぞれ異なる目的で利用され、それぞれ異なるインバータに対して2組のワイヤーハーネス(電線束)4(4A,4B)を利用して電気的に接続される。
【0018】
2つのインバータは、共に1つの機器2側の導電性を有するシールドケース20内に収納されている。これらのインバータ側のコネクタ23,24は、隣接するように1つにまとめられている。各コネクタ23,24は、1つのコネクタ台21を共用し、そのコネクタ台21上に、それぞれ3個ずつ端子(機器2側端子)25が設けられており、そしてこれら6個の端子25が所定間隔を置いて一列に並ぶように配置されている。前記端子25は、バスバーと称される肉厚の金属製板状物からなり、中央に上下方向に貫通したボルト孔26が設けられている。
【0019】
これに対し、2つのモータジェネレータも、1つの機器3側の導電性を有するシールドケース30内に収納されている。ただし、それらのモータジェネレータ側の巻線に連なるコネクタ33,34は、互いに離れた位置にある。各コネクタ33,34は、それぞれコネクタ台31,32を有し、各コネクタ台31,32上に、それぞれ3個ずつ端子(機器3側端子)35が一列に並ぶように配置されている。前記端子35も、前記端子25と同様、バスバーと称される肉厚の金属製板状物からなり、中央に上下方向に貫通したボルト孔36が設けられている。
【0020】
各組のワイヤーハーネス4(4A,4B)は、3本の非シールドタイプの電線41が一束にまとめられたものからなる。前記電線41は、多芯の芯線とその外周を絶縁層で被覆したものからなり、可撓性を有する。
【0021】
前記ワイヤーハーネス4(4A,4B)における各電線41のインバータ側の端末部には、それぞれ端子(電線側端子)42が固着されている。前記端子42は、肉厚の金属板材からなる。その略前半部分は概ね平板状をなし、その中央に上下方向に貫通したボルト孔43が設けられている。そして、その略後半部分(不図示)はオープンバレル形状の電線圧着部となっている。この電線圧着部に、電線41の導体が圧着されて、前記端子42が前記電線41に対して導通可能に接続されている。
【0022】
また、前記ワイヤーハーネス4(4A,4B)における各電線41のモータジェネレータ側の端末部には、それぞれ端子(電線側端子)43が固着されている。前記端子43は、インバータ側の端子42と同様、肉厚の金属板材からなる。その略前半部分は概ね平板状をなし、その中央に上下方向に貫通したボルト孔45が設けられている。そして、その略後半部分(不図示)はオープンバレル形状の電線圧着部となっている。この電線圧着部に、電線41の導体が圧着されて、前記端子43が前記電線41に対して導通可能に接続されている。
【0023】
2組のワイヤーハーネス4A,4Bは、インバータ側において端部同士が互いに近づけられ、かつモータジェネレータ側において端部同士が互いに離されるように、機器2と機器3との間に配索される。つまり、2組のワイヤーハーネス4A,4Bは、インバータ側からモータジェネレータ側に向かって二股に分かれるように配索される。
【0024】
ワイヤーハーネス4A,4Bにおける各電線41のインバータ側の端部は、共に1つのホルダ5によって一まとめに保持される。ホルダ5は、ブラスチック等の非導電性材料からなり、左右方向に広がった扁平形状を有する。このホルダ5は、その内部に前記電線41の端部を挿通させて、前記端子42の前半部分が露出するように6本の電線41端部を横並びに保持する。前記端子42は、このホルダ5と一体となって前記インバータ側の端子25と対向できるように、所定間隔を置いて一列に並ぶ。
【0025】
これに対し、ワイヤーハーネス4Aにおける各電線41のモータジェネレータ側の端部は、ホルダ15によって保持される。ホルダ15は、前記ホルダ5と同様、プラスチック等の非導電性材料からなり、左右方向に広がった扁平形状を有する。ただし、ホルダ15は、前記ホルダ5よりも小型である。このホルダ15は、その内部に前記電線41の端部を挿通させて、前記端子44の前半部分が露出するように3本の電線41端部を横並びに保持する。ワイヤーハーネス4Aの前記端子44は、このホルダ15と一体となって前記一方のモータジェネレータ側の端子35と対向できるように、所定間隔を置いて一列に並ぶ。
【0026】
また、ワイヤーハーネス4Bにおける各電線41のモータジェネレータ側の端部は、前記ホルダ15と同種のホルダ25によって保持される。このホルダ25も、前記端子44の前半部分が露出するように3本の電線41端部を横並びに保持する。ワイヤーハーネス4Bの前記端子44は、このホルダ25と一体となって前記他方のモータジェネレータ側の端子35と対向できるように、所定間隔を置いて一列に並ぶ。
【0027】
前記ワイヤーハーネス4A,4Bは、シールド部材6によって包囲される。このシールド部材6は、金属細線(例えば、銅細線)を網目状に編み込んで得られる編組材料からなり、可撓性及び伸縮性を備える。シールド部材6は、1つの入り口穴61に対して、2つの出口穴62,63を有する分岐した筒状の構造を有する。このシールド部材6は、説明の便宜上、前記入り口穴61を有する1本の筒状の幹通路64と、その幹通路64から二股に分かれ各々が前記出口穴62,63を有する2本の筒状の枝通路65,66とに、仮想的に区分けされる。図1には、シールド部材6を、1つの幹通路64と,2つの枝通路65,66に仮想的に区分けするための破線が示されている。なお、シールド部材6の分岐数は、ワイヤーハーネス4の組数(分岐数)に応じて定められている。
【0028】
図3は、シールド部材6の斜視図である。図3において、奥側に入り口穴61が配置され、手前側に2つの出口穴62,63が配置されている。前記入り口穴61から手前側に向かう1本の筒状の部分が前記幹通路64に相当し、そしてその幹通路64から更に手前側に向かって二股に分岐した筒状の部分が、それぞれ前記枝通路65,66に相当する。前記幹通路64内には、2組のワイヤーハーネス4A,4Bがまとめ通される。これに対して、前記枝通路65内には一方のワイヤーハーネス4Aのみが通され、そして前記枝通路66内には他方のワイヤーハーネス4Bのみが通される。前記幹通路65の内径は、各枝通路65,66の内径よりも大きく設定されている。
【0029】
前記シールド部材6は、前記ワイヤーハーネス4A,4Bに対して、例えば、以下の手順を経て包囲するように被せられる。先ず、インバータ側の前記ワイヤーハーネス4A,4Bの2つの端部をそれぞれ前記入り口穴61から幹通路64内へ進入させる。次いで、ワイヤーハーネス4Aの前記端部を、前記枝通路65内に進入させ、更に前記出口穴62から露出させる。次いで、同様に、ワイヤーハーネスBの前記端部を、前記枝通路66内に進入させ、更に前記出口穴63から露出させる。このようにすれば、前記ワイヤーハーネス4A,4Bに前記シールド部材6を被せることができる。
【0030】
なお、前記幹通路64における入り口側の開口端部64aは、シールドシェル7に接続され、前記枝通路65における出口側の開口端部65a、シールドシェル71に接続され、前記枝通路66における出口側の開口端部66aは、シールドシェル72に接続される。これらの接続構造の詳細は後述する。
【0031】
ここで、図4及び図5を参照しつつ、図3に示される先端が二股に分岐した筒状のシールド部材6の製造方法を説明する。図4に示されるように、先ず、1本の編組筒基材6Aを用意する。この編組筒基材6Aは、金属細線が網目状に編み込まれてなる筒状の基材であり、その両端が開口されている。編組筒基材6Aは、長さ方向に渡って、略同じ大きさの外径、及び略同じ大きさの内径を備える。編組筒基材6Aの一方の端部には、将来的にシールド部材6の一方の出口穴62となる出口仮穴62Aがあり、他方の端部には、将来的に他方の出口穴63となる出口仮穴63Aがある。
【0032】
次いで、編組筒基材6Aの長さ方向における略中央の1つの網目(穴)67を選択し、その網目67を押し広げて、前記編組筒基材6Aの周面に、網目よりも大きな穴(大穴)67Aを形成する。編組筒基材6Aは、上述したように、金属細線が網目状に編み込まれて形成されており、網目を外側へ押し広げれば、その網目よりも大きな所定形状の穴(大穴)67Aを形成できる。なお、この大穴67Aは、図5に示されるような筒状の治具Xを利用すると、編組筒基材6Aの長さ方向における途中の周面に形成し易い。この治具Xは、プラスチック等からなる円筒状の部材であり、その外径は、編組筒基材6Aの内径よりも若干小さく設定されている。そして、この治具Xの周面には、穴Yが設けられている。この治具Xは、編組筒基材6Aにおける一方の出口仮穴63Aから他方の出口仮穴62Aへ向けて挿入される。そして、選択された前記網目67の真下に穴Yがくるように、編組筒基材6A内に治具Xが配置される。1つの前記網目67を押し広げる際、前記穴Yの周縁形状を基準にすれば、目的とする大きさ及び形状の大穴67Aを容易に形成できる。大穴76Aを形成した後、組筒基材6A内の治具Xは、一方の出口仮穴63Aから引き抜かれ、取り除かれる。なお、上記のように編組筒基材6Aの周面に形成された大穴67Aは、将来的にシールド部材6の入り口穴61となる入り口仮穴に相当する。
【0033】
次いで、前記入り口仮穴(大穴)67Aと対向する、編組筒基材6Aの周面M側において、両端が互いに近づくように前記編組筒基材6Aが折り曲げられる。つまり、編組筒基材6Aは、入り口仮穴(大穴)67Aを基点として、両端が折り曲げられる。すると、図3に示されるような、先端が二股に分岐した筒状のシールド部材6が得られる。なお、必要に応じて、二股に分岐した治具(不図示)等を用意し、その治具を利用して、折り曲げ後の編組筒基材6Aを所定形状に整形してもよい。
【0034】
以上のようにして製造されたシールド部材6には、1本の幹通路64と、2本の枝通路65,66との間には、接続部分(継ぎ目)がない。そのため、前記シールド部材6には、一般的に、編組材料同士の接続部分に生じやすい隙間の発生の問題もない。また、シールド部材6は、接続部分(各枝通路65,66の根元)の柔軟性(可撓性)にも優れる。したがって、たとえ各組のワイヤーハーネス4が途中で大きく湾曲しつつ分岐した状態で機器間に配索されても、シールド部材6は、その分岐した複数組のワイヤーハーネス4の形状(特に、分岐方向)に対応させることができる。
【0035】
図2に示されるように、機器2側のシールドケース20の側壁27には、左右方向に広がった略楕円形状の取付穴28が設けられている。そして、この取付穴28に隣接するように、前記側壁27には、左右方向に扁平状に広がった筒状のシールドシェル(入り口側筒体)7が固定されている。シールドシェル7は金属製(例えば、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス)であり、扁平状に広がった筒状の本体部7aと、その内側に配置する中空部7bを有する。この中空部7bの大きさ(本体部7aの内径)は、前記端子42を備える前記ワイヤーハーネス4A,4Bの端部が通過できるように設定されている。前記本体部7aは、前記側壁27側の端部周縁に、外側へ突出した板状の取付部7cを有する。シールドシェル7は、その取付部7cと側壁27とに挿しこまれたボルト29で締結(螺着)されることによって、シールドケース20に導通可能に固定される。なお、シールドシェル7は、その中空部7bが前記取付穴28と連続するように固定されている。
【0036】
これに対して、機器3側のシールドケース30の側壁37には、前記取付穴28よりも小さく、左右方向に広がった略楕円形状の2つの取付穴38A,38Bが設けられている。これらのうち、一方の取付穴38Aに隣接するように、前記側壁37には、左右方向に扁平状に広がった筒状のシールドシェル(出口側筒体)71が固定されている。また、他方の取付穴38Bに隣接するように、前記側壁37には、左右方向に扁平状に広がった筒状のシールドシェル(出口側筒体)72が固定されている。前記シールドシェル71及び72は、略同形状であり、共に金属製(例えば、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス)である。これらのシールドシェル71及び72は、共に扁平状に広がった筒状の本体部71a及び72aと、それらの内側に配置する中空部71b及び72bを有する。前記本体部71a及び72aは、前記壁37側の端部周縁に、それぞれ外側へ突出した板状の取付部71c及び71cを有する。
【0037】
一方のシールドシェル71は、その取付部71cと側壁37とに挿しこまれたボルト39で締結(螺着)されることによって、シールドケース30に導通可能に固定される。なお、シールドシェル71は、その中空部71bが前記取付穴38Aと連続するように固定されている。他方のシールドシェル72は、その取付部72cと側壁37とに挿しこまれたボルト39で締結(螺着)されることによって、シールドケース30に導通可能に固定される。なお、シールドシェル72は、その中空部72bが前記取付穴38Bと連続するように固定されている。
【0038】
図2に示されるように、シールドシェル7内には、ワイヤーハーネス4A,4Bの一まとめにされたインバータ側の端部が挿通される。なお、ワイヤーハーネス4A,4Bの前記端子42は、シールドシェル7の中空部7b及び前記壁27に設けられた取付穴28を通って、シールドケース20内に収納される。ワイヤーハーネス4Aの前記端子42はインバータ21が備える前記端子25に対して、互いのボルト孔43,26に挿しこまれたボルト(不図示)にナット(不図示)を螺合して締付けることにより、導通可能に接続固定される。同様に、ワイヤーハーネス4Bの前記端子42はインバータ22が備える前記端子25に対して、互いのボルト孔43,26に挿しこまれたボルト(不図示)にナット(不図示)を螺合させて締付けることにより、導通可能に接続固定される。なお、上述したシールドシェル7のシールドケース20に対する固定は、前記端子43,25同士の接続後に行われる。
【0039】
これに対し、一方のシールドシェル71内には、ワイヤーハーネス4Aのモータジェネレータ側の端部が挿通される。ワイヤーハーネス4Aの前記端子44は、シールドシェル71の中空部71b及び前記側壁37に設けられた取付穴38Aを通って、シールドケース30内に収納される。ワイヤーハーネス4Aの前記端子44は、モータジェネレータが備える前記端子35に対して、互いのボルト孔45,36に挿しこまれたボルト(不図示)にナット(不図示)を螺合させて締付けることにより、導通可能に接続固定される。なお、上述したシールドシェル71のシールドケース30に対する固定は、前記端子44,35同士の接続後に行われる。
【0040】
また、他方のシールドシェル72内には、ワイヤーハーネス4Bのモータジェネレータ側の端部が挿通される。ワイヤーハーネス4Bの前記端子44は、シールドシェル72の中空部72b及び前記側壁37に設けられた取付穴38Bを通って、シールドケース30内に収納される。ワイヤーハーネス4Bの前記端子44は、モータジェネレータが備える前記端子35に対して、互いのボルト孔45,36に挿しこまれたボルト(不図示)にナット(不図示)を螺合させて締付けることにより、導通可能に接続固定される。なお、上述したシールドシェル72のシールドケース30に対する固定は、前記端子44,35同士の接続後に行われる。
【0041】
シールドシェル7は、その本体部7aの先端側が、根元側(機器2側)よりも若干外径が小さく設定されている。このような先端側の周縁に、前記シールド部材6(幹通路64)における入り口側の開口端部64aが被せられる。そしてその被せられた開口端部64aの外側から金属製のカシメリング(環状のカシメ部材)8が外嵌される。このカシメリング8をカシメ付けることにより、前記開口端部64aが、シールドシェル7の先端に対して、導通可能に接続固定される。なお、シールドシェル7の外周面、即ち、開口端部64aと接触する面には、錫メッキ処理が施されており、この錫メッキ処理によって、シールドシェル7とシールド部材6の開口端部64aとの接触抵抗が低減されている。
【0042】
また、シールドシェル71は、その本体部71aの先端側が、根元側(機器3側)よりも若干外径が小さく設定されている。このような先端側の周縁に、前記シールド部6(枝通路65)における出口側の開口端部65aが被せられている。そしてその被せられた開口端部65aの外側から金属製のカシメリング(環状のカシメ部材)81が外嵌される。このカシメリング81は、前記カシメリング8より小径である。このカシメリング81をカシメ付けることにより、前記開口端部65aが、シールドシェル71の先端に対して、導通可能に接続固定される。なお、シールドシェル71の外周面にも、シールドシェル7と同様、錫メッキ処理が施されており、この錫メッキ処理によって、シールドシェル71とシールド部材6の開口端部65aとの接触抵抗が低減されている。
【0043】
また、シールドシェル72は、その本体部72aの先端側が、根元側(機器3側)よりも若干外径が小さく設定されている。このような先端側の周縁に、前記シールド部6(枝通路66)における出口側の開口端部66aが被せられている。そしてその被せられた開口端部66aの外側から金属製のカシメリング(環状のカシメ部材)82が外嵌される。このカシメリング82は、前記カシメリング81と同種のものからなり、このカシメリング82をカシメ付けることにより、前記開口端部66aが、シールドシェル72の先端に対して、導通可能に接続固定される。なお、シールドシェル72の外周面にも、シールドシェル7と同様、錫メッキ処理が施されており、この錫メッキ処理によって、シールドシェル72とシールド部材6の開口端部66aとの接触抵抗が低減されている。
【0044】
以上のように、本実施形態の分岐シールド導電路1は、2組のワイヤーハーネス4A,4Bからなる分岐した導電路を、先端が二股に分かれた筒状のシールド部材6と、このシールド部材6に導通可能に接続される各シールドシェル7,71,72と、各シールドシェル7,71,72に導通可能に接続される各シールドケース20,30とを利用して、シールドしている。シールド部材6は、導電性を有する各シールドケース20,30に導通可能に接続されて、導電性を有する各シールドケース20,30にアース接続されている。前記シールド部材6は、前記導電路の形状に対応した分岐形状(二股形状)を有し、かつ可撓性を有する編組材料からなるため、前記導電路の形状に沿って各ワイヤーハーネス4A,4Bを包囲でき、その結果、各ワイヤーハーネス4A,4Bから発せられる電磁波ノイズを好適に遮蔽できる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
(1)上記実施形態では、2組のワイヤーハーネス(電線束)からなる分岐導電路に、先端が二股に分岐したシールド部材を利用してシールドするものであったが、他の実施形態においては、3組以上のワイヤーハーネスからなる分岐導電路を、先端が3つ以上に分岐したシールド部材を利用してシールドしてもよい。
【0047】
(2)上記実施形態では、筒体(入り口側筒体、出口側筒体)が、所謂、コネクタに使用されるシールドシェルであったが、他の実施形態におていは、例えば、ワイヤーハーネスを一括して包囲してシールド機能と共に、外部からの異物干渉を防止するための金属パイプであってもよい。ただし、この場合、金属パイプは導電性を有するシールドケース等に導通可能に接続されているか、或いは金属パイプ自身がボディーアースとして利用できるように電気的に接続されている必要がある。
【0048】
(3)上記実施形態では、インバータ側のコネクタが1つにまとめられ、モータジェネレータ側のコネクタが互いに離されていたが、他の実施形態においては、反対に、モータジェネレータ側のコネクタが1つにまとめられ、インバータ側のコネクタが互いに離されてもよい。
【0049】
(4)上記実施形態では、分岐シールド導電路がハイブリッド自動車のインバータと、モータジェネレータとの間に配索されるものであったが、他の実施形態においては、他の車両、又は車両以外の装置における機器間に配索されるものであってもよい。
【0050】
(5)上記実施形態では、ワイヤーハーネス(電線束)は、3本の電線からなるものであったが、他の実施形態においては、2本又は4本以上であってもよい。
【0051】
(6)上記実施形態では、シールド部材は、筒体(入り口側筒体、出口側筒体)に対してカシメ付けにより導通可能に接続されていたが、他の実施形態においては、例えば、超音波溶接、抵抗溶接、ろう付け、半田付け等の任意の手法により接続されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…分岐シールド導電路
2…一方の機器(インバータ側)
3…他方の機器(モータジェネレータ側)
4…ワイヤーハーネス(電線束)
41…電線
42,44…端子(電線側端子)
25…端子(機器2側端子)
35…端子(機器3側端子)
5,15,25…ホルダ
6…シールド部材
7…シールドシェル(入り口側筒体)
71…シールドシェル(出口側筒体)
72…シールドシェル(出口側筒体)
8,81,82…カシメリング(環状のカシメ部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各組が複数本の電線を含み、各組同士が一端側から他端側に向かって分岐するように機器間に配索される複数組の電線束と、
入り口穴を有する1本の筒状の幹通路と、その幹通路から前記電線束の組数に応じて複数本に分かれ各々が出口穴を有する複数本の筒状の枝通路とを有し、各電線束が分岐するように前記幹通路から各枝通路に向かって通される、金属細線が網目状に編み込まれた編組材料からなるシールド部材と、
前記電線束の各組の一端がまとめて挿通され、かつ周縁に前記幹通路の入り口穴側の開口端部が被せられて導通接続される金属製の入り口側筒体と、
前記電線束の各組の他端がそれぞれ挿通され、かつ各々の周縁に前記幹通路の出口穴側の開口端部がそれぞれ被せられて導通接続される複数個の金属製の出口側筒体と、を備える分岐シールド導電路。
【請求項2】
前記筒体と、その周縁に被せられた前記シールド部材の開口端部とが、環状のカシメ部材によって締付け固定されて導通接続される請求項1に記載の分岐シールド導電路。
【請求項3】
前記電線束の各電線の端末部に固着された電線側端子を有し、
前記筒体が、機器のシールドケースに接続固定されるシールドシェルからなり、
前記電線側端子が、機器のシールドケース内に設けられた機器側端子と接続される請求項1又は請求項2に記載の分岐シールド導電路。
【請求項4】
入り口穴を有する1本の筒状の幹通路と、その幹通路から二股状に分かれ各々が出口穴を有する2本の筒状の枝通路とを有し、金属細線が網目状に編み込まれてなり両端に前記出口穴となる出口仮穴を有する1本の編組筒基材から製造されるシールド部材の製造方法であって、
前記編組筒基材の途中の周面に、前記網目を押し広げて形成される前記入り口穴となる入り口仮穴を設ける工程と、
前記入り口仮穴と対向する面側において前記編組筒基材の両端が互いに近づくように前記編組筒基材が折り曲げられて、前記幹通路と前記枝通路とからなる前記シールド部材を得る工程と、を備えるシールド部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−84275(P2012−84275A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227796(P2010−227796)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】