分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラム
【課題】 所定エリア内の任意地点における平常時から洪水時までのあらゆる時点の流出予測が可能なシステムであって、演算処理の負荷が小さく、且つ、精度よく流出予測を実行することができる分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムを提供する。
【解決手段】 地下層の構造をモデル化したデータを含んだ流域モデルデータに付与してあるエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアとこの単位エリアを構成するメッシュを識別し、識別したメッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該メッシュに対応付けられている範囲の流出予測演算を実行し、この範囲が1つのメッシュの大きさに満たないときや複数の単位エリアで分割されているときは、当該範囲を1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、置換したメッシュに基づいて流出予測演算を実行する。
【解決手段】 地下層の構造をモデル化したデータを含んだ流域モデルデータに付与してあるエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアとこの単位エリアを構成するメッシュを識別し、識別したメッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該メッシュに対応付けられている範囲の流出予測演算を実行し、この範囲が1つのメッシュの大きさに満たないときや複数の単位エリアで分割されているときは、当該範囲を1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、置換したメッシュに基づいて流出予測演算を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムに関するものである。詳細は、河川や下水道など水路、ダム施設や内水排除施設、流出域や氾濫域などの任意地点における平常時から洪水時までのあらゆる時点の流出予測が可能な分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化や都市化などの影響から短期間での集中豪雨あるいは長期間での少量降雨発生など気象現象に変化が見られ、また、河川や下水道などの流出域についても、地球温暖化や都市化などによる土地利用形態や植生など流域状況の変化が影響を与えている。
【0003】
この気象現象や流域状況の変化により、洪水や渇水の発生する危険性が高まり、平常時あるいは洪水時を含んだあらゆる時点において、河川や下水道などの水路からの流出予測が可能なシステムが必要とされている。
【0004】
このような河川や下水道などの水路の流出予測手法として、平常時の流出予測にはタンクモデル法、洪水時の流出予測には貯留関数法など、いわゆる、集中型モデルと呼ばれる流出予測手法が使用されている。
【0005】
この集中型モデルによる流出予測システムでは、地形・土地利用・植生などの多様な形態の流域を1つの単位流域として定め、集中化して流出予測する手法であり、本来特定地域に集中している降雨量や多様な土地利用・地形・土壌を1つの単位流域として平均化して流出予測していることから、1単位流域内の最下流地点での流出予測しか出来ないことや、1単位流域内を平均化するために予測精度が悪くなるというような問題を有している。
【0006】
そこで、近年、予測するエリアを均等な大きさのメッシュによって区分した分布型モデルと呼ばれる流出予測モデルを使用して洪水時の流出予測を行うシステムが登場し、この分布型流出予測システムによって、洪水時における任意地点での流出予測が可能になり、その予測精度も向上している。
【0007】
例えば、テレメータ雨量データを用いて補正した雨量データと合わせて、雨域の移動ベクトルを算出して短時間雨域移動解析を行って得られた結果を、予め設定されている任意の洪水予測地点における流域定数及び河川断面データを流域の特徴ならびにユーザの分析を踏まえ、集中型モデル、或いは分布型モデルに当て嵌め、数時間先までの河川の流量及び又は河川断面データがある場合にはその水位を算出して表示できるようした洪水予測情報提供システムなどが考案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−14868号公報(第3−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の分布型モデルでは、河川の平常時流量を求めるための地下層がモデルデータに組み込まれておらず、洪水時のみに限定された流出予測であるため、平常時から洪水時までのあらゆる時点での流出予測を精度よく算出することができないという問題がある。
【0009】
また、上述したように、均等な大きさのメッシュで区分する分布型モデルの流出予測では、予測する最小の単位(範囲)となるメッシュ1つのサイズを細分化することにより、予測精度を高くすることができるが、メッシュの総数と演算ステップが増大し、演算時間が大幅に増加してしまうという問題があり、一方、メッシュ1つのサイズを大きくして演算処理速度を上げようとすると予測精度が低下してしまうという問題が発生してしまう。
【0010】
また、河川などの自然に存在する水路の流域境界や合流点や分岐点などには水位観測施設が配置されることが多いが、均等な大きさのメッシュで区分したときの境界部は、自然に存在する水路の境界部と一致することの方がまれであり、河川などの自然に存在する水路の境界部における流出予測を精度よく行うことが困難である。
【0011】
更に、均等な大きさのメッシュで区分して流出予測演算をする場合、最上流のメッシュから最下流のメッシュまで、個々のメッシュ全てに対して通し番号を付与し、この番号に基づいた計算順序で演算処理するため、メッシュ数が多い場合、例えば、ダム施設や内水排除施設などの計画施設における流出予測演算に利用するときなど、データ入力の作業ミスを誘発しやすく、また、計画変更などにより番号を再度付与し直さなければならないようなことがあると、多大な労力が必要となるという問題もある。
【0012】
従って、河川や下水道など水路又は流出域や氾濫域の任意地点における平常時から洪水時までのあらゆる時点の流出予測が可能なシステムであって、演算処理の負荷が小さく、且つ、精度よく流出予測できるシステムを提供することに解決しなければならない課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明に係る分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムは次のような構成にすることである。
【0014】
(1)レーダ観測手段により測定されたレーダ降雨データ、テレメータ観測手段により測定された地上降雨データ、気象や水路などの実測データ、前記レーダ降雨データ及び地上降雨データや前記実測データに基づいて予測された予測データを通信ネットワークを介して取得するためのデータ取得手段と、流出予測するエリアをモデル化した流域モデルデータを格納し、前記データ取得手段で取得した前記レーダ降雨データ及び地上降雨データ、実測データ、予測データ及び各部で演算処理された演算データをデータベース化して蓄積することができるデータベース蓄積手段と、前記データベース蓄積手段から読み出した前記流域モデルデータ、前記レーダ降雨データ及び地上降雨データ、前記予測データに基づいてメッシュ降雨データを生成するメッシュ降雨データ作成手段と、前記データベース蓄積手段から読み出した前記流域モデルデータ及び所定の実測データに基づいてメッシュ蒸発散データを生成するメッシュ蒸発散データ作成手段と、前記データベース蓄積手段から読み出した前記流域モデルデータと前記メッシュ降雨データ作成手段で作成されたメッシュ降雨データ並びに前記メッシュ蒸発散データ作成手段で作成された前記メッシュ蒸発散データに基づいて流出予測演算を実行し、前記流出予測するエリアの流出予測結果データを生成する流出予測データ演算処理手段と、前記流出予測データ演算処理手段で生成された流出予測結果データを通信ネットワークを介して配信することができるデータ配信手段と、を具備し、前記データベース蓄積手段には、前記流出予測するエリア全体を任意の範囲或いは該エリア内に存在する水路の分岐点や合流点を基にした範囲によって定めた単位エリアで区分し、又、同エリア全体を個々の形と大きさが同じ所定のメッシュで区分すると共に、前記単位エリアと区分された個々のメッシュとを照合して対応付けし、前記単位エリアに対しては通し番号であるエリア番号を付与し、又、各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対しては前記エリア番号と別の番号となるメッシュ番号を付与するとともに、前記対応付けられた単位エリア内で完結する通し番号である演算番号を付与し、更に、前記個々のメッシュに該当する範囲の地下層の構造を、前記メッシュと同じ形状で所定の厚みを持つ複数の地下層が地表下に積重している構造にモデル化したデータを含んだ流域モデルデータを格納し、前記流出予測データ演算処理手段は、前記流域モデルデータを前記データベース蓄積手段から読み出し、該流域モデルデータに付与されたエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアと該単位エリアを構成するメッシュを識別し、該識別したメッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該メッシュに対応付けられている範囲の流出予測演算を実行し、前記メッシュに対応付けられている範囲が1つのメッシュの大きさに満たないときや前記複数の単位エリアで分割されているときは、当該範囲を前記1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、該置換したメッシュに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする分布型流出予測システム。
(2)前記流出予測データ演算処理手段は、前記メッシュに該当する範囲における降雨分布を均一とし、前記地表と該地表直下の地下層を一体化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行することを特徴とする(1)に記載の分布型流出予測システム。
(3)前記流出予測データ演算処理手段は、前記地表直下の地下層を、飽和層、不飽和層、土粒層の順に区分し、前記飽和層に流れる水流を飽和流、前記不飽和層に流れる水流を不飽和流、前記地表面を流れる水流を地表面流とし、前記メッシュに該当する範囲における前記メッシュ降雨データと前記メッシュ蒸発散データに応じて前記不飽和流が発生し、前記メッシュ降雨データや前記メッシュ蒸発散データの増加量に応じて前記飽和流や前記地表面流が発生する構造にモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行することを特徴とする(1)又は(2)に記載の分布型流出予測システム。
(4)前記流出予測データ演算処理手段は、前記メッシュに該当する範囲の土地の利用形態が混在している場合、該当する流域モデルデータを前記土地の利用形態別に土地の利用面積に比例した大きさで区分してモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行することを特徴とする(1)、(2)又は(3)に記載の分布型流出予測システム。
(5)前記流出予測データ演算処理手段は、前記地表と該地表直下の地下層を一体化する部分と一体化しない部分を区別して前記流出予測演算を実行することを特徴とする(1)、(2)、(3)又は(4)に記載の分布型流出予測システム。
(6)前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアごとに前記流出予測結果データを生成し、該生成した単位エリアごとの流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたことを特徴とする(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)に記載の分布型流出予測システム。
(7)前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュごとに前記流出予測結果データを生成し、該生成した個々のメッシュの流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたことを特徴とする(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)に記載の分布型流出予測システム。
(8)前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の土地の利用形態別に前記流出予測結果データを生成し、該生成した土地の利用形態別の流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたことを特徴とする(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)又は(7)に記載の分布型流出予測システム。
(9)前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の地表下に積重している地下層別に前記流出予測結果データを生成し、該生成した地下層別の流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたことを特徴とする(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)又は(8)に記載の分布型流出予測システム。
【0015】
(10)所定のエリアにおける流出予測演算をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記コンピュータを、流出予測するエリア全体を任意の範囲或いは該エリア内に存在する水路の分岐点や合流点を基にした範囲によって定めた単位エリアで区分し、又、同エリア全体を個々の形と大きさが同じ所定のメッシュで区分すると共に、前記単位エリアと区分された個々のメッシュとを照合して対応付けし、前記単位エリアに対しては通し番号であるエリア番号を付与し、又、各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対しては前記エリア番号と別の番号となるメッシュ番号を付与するとともに、前記対応付けられた単位エリア内で完結する通し番号である演算番号を付与し、更に、前記個々のメッシュに該当する範囲の地下層の構造を、前記メッシュと同じ形状で所定の厚みを持つ複数の地下層が地表下に積重している構造にモデル化したデータを含んだ流域モデルデータを取り込むための流域モデルデータ取得手段と、前記流域モデルデータに基づいて生成されたメッシュ降雨データを取り込むためのメッシュ降雨データ取得手段と、前記流域モデルデータに基づいて生成されたメッシュ蒸発散データを取り込むためのメッシュ蒸発散データ取得手段と、前記流域モデルデータ取得手段で取り込んだ流域モデルデータ及び前記メッシュ降雨データ取得手段で取り込んだメッシュ降雨データ並びに前記メッシュ蒸発散データ取得手段で取り込んだメッシュ蒸発散データに基づき、前記流域モデルデータに付与されたエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアと該単位エリアを構成するメッシュを識別し、該識別したメッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該メッシュに対応付けられている範囲の流出予測演算を実行し、前記メッシュに対応付けられている範囲が1つのメッシュの大きさに満たないときや前記複数の単位エリアで分割されているときは、当該範囲を前記1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、該置換したメッシュに基づいて前記流出予測演算を実行して、前記流出予測するエリアの流出予測結果データを生成する流出予測演算手段として機能させるための分布型流出予測プログラム。
(11)前記流出予測演算手段は、前記メッシュに該当する範囲における降雨分布を均一とし、前記地表と該地表直下の地下層を一体化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行することを特徴とする(10)に記載の分布型流出予測プログラム。
(12)前記流出予測演算手段は、前記地表直下の地下層を、飽和層、不飽和層、土粒層の順に区分し、前記飽和層に流れる水流を飽和流、前記不飽和層に流れる水流を不飽和流、前記地表面を流れる水流を地表面流とし、前記メッシュに該当する範囲における前記メッシュ降雨データと前記メッシュ蒸発散データに応じて前記不飽和流が発生し、前記メッシュ降雨データや前記メッシュ蒸発散データの増加量に応じて前記飽和流や前記地表面流が発生する構造にモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行することを特徴とする(10)又は(11)に記載の分布型流出予測プログラム。
(13)前記流出予測演算手段は、前記メッシュに該当する範囲の土地の利用形態が混在している場合、該当する流域モデルデータを前記土地の利用形態別に土地の利用面積に比例した大きさで区分してモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行することを特徴とする(10)、(11)又は(12)に記載の分布型流出予測プログラム。
(14)前記流出予測演算手段は、前記地表と該地表直下の地下層を一体化する部分と一体化しない部分を区別して前記流出予測演算を実行することを特徴とする(10)、(11)、(12)又は(13)に記載の分布型流出予測プログラム。
(15)前記流出予測演算手段は、前記単位エリアごとに前記流出予測結果データを生成することを特徴とする(10)、(11)、(12)、(13)又は(14)に記載の分布型流出予測プログラム。
(16)前記流出予測演算手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュごとに前記流出予測結果データを生成することを特徴とする(10)、(11)、(12)、(13)、(14)又は(15)に記載の分布型流出予測プログラム。
(17)前記流出予測演算手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の土地の利用形態別に前記流出予測結果データを生成することを特徴とする(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)又は(16)に記載の分布型流出予測プログラム。
(18)前記流出予測演算手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の地表下に積重している地下層別に前記流出予測結果データを生成することを特徴とする(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)又は(17)に記載の分布型流出予測プログラム。
【0016】
上記分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムでは、流域モデルデータに付与されたエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアとこの単位エリアを構成するメッシュを識別し、識別したメッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該メッシュに対応付けられている範囲の流出予測演算を実行し、メッシュに対応付けられている範囲が1つのメッシュの大きさに満たないときや複数の単位エリアで分割されているときは、当該範囲を1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、この置換したメッシュに基づいて流出予測演算を実行することによって、単位エリアを任意に設定できるようになり、また、メッシュの大きさを細分化しなくても予測精度を保つことができる。
【0017】
また、流域モデルデータには、個々のメッシュに該当する範囲の地下層の構造をメッシュと同じ形状で所定の厚みを持つ層が地表下に積重している構造にモデル化したデータが含まれているので平常時及び洪水時双方の流出予測が可能となる。
【0018】
更に、単位エリアごと、単位エリアに対応付けられた個々のメッシュごと、個々のメッシュに該当する範囲の土地の利用形態別、又は、地下層別に流出予測結果データを生成することにより、単位エリアにおける詳細な流出予測が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、河川などの平常時の流量を求めるための地下層をモデル化して流域モデルデータに組み込むことで、平常時から洪水時までのあらゆる時点における流出予測が可能となり、又、流出予測の精度も向上するという優れた効果を奏するものである。
【0020】
また、1つのメッシュの大きさに満たない範囲に対応付けられているメッシュや複数の単位エリアで分割されている範囲に対応付けられているメッシュを、1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、該当単位エリアの流出予測演算に含めることによって、予測精度を向上させるために全てのメッシュを細分化する必要がなくなるので、メッシュ数が増大することなく、流出予測するためのエリアを流域境界や河川の合流点など自然に存在する境界に基づいて任意に設定することが可能となり、演算処理の負荷も抑えられ、且つ、予測精度も向上させることができるという優れた効果を奏するものである。
【0021】
また、流出予測するエリアを任意に区分した単位エリアに対して付与してあるエリア番号と各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対して付与してあるメッシュ番号によって該当するメッシュを識別し、識別したメッシュに付与してある演算番号の順序に従って流出予測演算が実行されるので、例えば、ダム施設や内水排除施設などの流出予測を行うとき、施設計画の変更になった場合でも、エリア全体のデータを変更せず、該当する一部のデータのみを変更すればよいので、データ変更作業が容易になり、データ入力作業の手間も大幅に軽減できるというメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムによる実施の形態について図面を参照して説明する。但し、図面は専ら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0023】
[1]分布型モデルの流域構成
まず、本発明の分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムで用いる分布型モデルの流域構成について説明する。
【0024】
本発明では、流出予測するエリアをモデル化したデータによって流出予測演算をするため、流出予測する全エリアを任意の範囲の単位エリアで区分すると共に、全エリアを個々の形、大きさ(面積)が同じメッシュで区分し、各単位エリアと区分された個々のメッシュを照合し、単位エリアと個々のメッシュとの対応付けを行う。
【0025】
例えば、ある河川流域を流出予測する場合、河川流域(全エリア)を流出域や氾濫域、支川などに基づいて定めた任意の大きさの単位流域(単位エリア)で区分すると共に、この河川流域(全エリア)を個々の形、大きさ(面積)が同じ矩形のメッシュ(以下、均等メッシュ)で区分し、各単位流域と個々のメッシュとを照合して、各単位流域と個々のメッシュとの対応付けを行う。
【0026】
このとき、単位流域(単位エリア)を構成するメッシュのうち、例えば、メッシュ1つの大きさ(面積)に満たない範囲に対応付けられているメッシュや、複数の単位流域によって分割される範囲に対応付けられているメッシュ(以下、不均等メッシュ)が存在することがある。
【0027】
このような不均等メッシュが存在する場合、エリア全てを均等メッシュで区分できるように、1メッシュの大きさを更に細かく設定すればよいが、メッシュの総数が増加して演算量が増大してしまうという問題が発生する。しかし、この不均等メッシュは、メッシュ1つの大きさ(面積)に満たないだけであり、地形勾配などその他の構造は均等メッシュと同じである。
【0028】
そこで、本発明では、1つのメッシュの大きさに満たない範囲に対応付けられているメッシュや複数の単位流域によって分割された範囲に対応付けられているメッシュのみを、1つのメッシュの大きさ(面積)との比率に応じて縮小した同形(矩形)のメッシュ(以下、細分メッシュ)に置き換え、置き換えた細分メッシュに該当する範囲を該当する単位流域の流出予測演算処理に含めることにする。
【0029】
例えば、図1(a)に示すようなエリアの流出予測を行う場合、流出予測エリアを支川X,Y,Zの合流点(又は分岐点)などの河川流域界(単位エリア)で区分して単位流域x、y、zとし、また、同流出予測エリアを1つの大きさ(面積)が同じ矩形(四角の点線)で示した均等メッシュ(メッシュ番号11〜15,21〜25,31〜33,41〜42)で区分し、単位流域x、y、zと個々のメッシュとを照合して対応付けする。
【0030】
このとき、例えば、メッシュ番号23に該当する範囲は、単位流域x、y、zに3分割されており、均等メッシュと比べると、矩形ではなく、1メッシュの大きさ(面積)に満たない不均等メッシュとなっている。
【0031】
そこで、図1(b)に示すように、このメッシュ番号23のメッシュを均等メッシュと同じ矩形で、且つ、それぞれを分割された比率に応じた大きさ(面積)の細分メッシュ(メッシュ番号23x、23y、23z)に置き換え、それぞれの単位流域の構成メッシュに含める。
【0032】
また、単位流域xを構成するメッシュ番号11,12,13,21,22、単位流域yを構成するメッシュ番号13,14,15,24,25,32,33、単位流域zを構成するメッシュ番号22,31,32,33,41,42に該当する各範囲についても1メッシュの大きさ(面積)に満たない範囲に対応しているので、これらの不均等メッシュについても上記と同様に細分メッシュに置き換える。
【0033】
従って、単位流域xを構成するメッシュは、メッシュ番号11x,12x,13x,21x,22x,23x、同様に、単位流域yを構成するメッシュは、メッシュ番号13y,14y,15y,23y,24y,25y,32y,33y、単位流域zを構成するメッシュは、メッシュ22z,23z,31z,32z,33z,41z,42zとなる。
【0034】
なお、これ以降の説明において特に記載がない限りは、均等メッシュと細分メッシュとの区別をせずに、すべてのメッシュを細分メッシュとして説明する。
【0035】
また、各単位エリアに付与されるエリア番号は、流出予測するエリア全体からみて上流方向から順に通し番号が付与されおり、このエリア番号の順序に従って、流出予測演算する単位エリアが識別される。
【0036】
例えば、図2に示すように、各単位流域T〜Zには、流出予測するエリア全体からみて上流方向から順に単位エリア番号[1]〜[7]を付与して完結させる。流出予測演算は、この単位エリア番号[1]〜[7]の順序に基づいて単位流域T→U→V→W→X→Y→Zの順で実行される。
【0037】
一方、各単位エリアに対応付けされている細分メッシュには、エリア番号とは別の番号で、流出予測するエリアにおいて重複することのないメッシュ番号(図1(a)参照)が付与してあり、更に、対応付けされている単位エリア内で完結する演算番号が上流方向から順に付与されている。
【0038】
例えば、図3に示すように、流出予測エリアの個々のメッシュには、メッシュ番号11〜15,21〜25,31〜33,41〜42が付与されている。
【0039】
更に、各単位流域X,Y,Z(単位エリア)内で完結し、同単位エリアを構成するメッシュの演算処理の順序を示す演算番号が上流方向から順に付与されている。
【0040】
単位流域Xの場合、この単位エリアを構成するメッシュ番号11,12,13,21,22,23のメッシュに対して、単位流域X(単位エリア)内で完結し、同単位エリアを構成するメッシュの演算処理の順序を示す演算番号「1」〜「6」が上流方向から順に付与してあり、単位流域Y、単位流域Zについても、上述と同様、各単位エリア内で完結し、当該単位エリア内における演算処理の順序を示す演算番号「1」〜「7」、「1」〜「6」がそれぞれ上流方向から順に付与されている。
【0041】
このように、流域モデルデータに付与されたエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアと当該単位エリアを構成するメッシュが識別され、続いて、識別したメッシュに付与されている演算番号に従った順序で各メッシュに該当する範囲の流出予測演算が実行されるので、単位エリア内における各メッシュ→単位エリア→全エリアの順で流出予測結果データが算出されることになる。
【0042】
次に、上述した細分メッシュの構造について説明する。
【0043】
図4に示すように、細分メッシュの形状は矩形とし、地表以下の地下層の構造は、上層から順にA層、B層、C層、D層・・・というように均等な厚さの層が積重した構造とする。なお、各地下層の厚さは、それぞれ異なる厚さにすることも可能である。
【0044】
また、細分メッシュに該当する範囲における土地の利用形態が都市のみ、水田のみ、山地のみというように単一な利用形態ではなく、図5(a)に示すように、例えば、都市と山地と水田というような複数の利用形態が混在している範囲である場合は、図5(b)で示す土地利用モデルのように、土地の利用形態別に同一の斜面長を持つ短冊状の平面形状に置き換え、斜面幅は土地の利用面積に比例した大きさで区分してモデル化する。
【0045】
この土地利用モデルでは、地表と地表直下のA層(図3参照)までを影響範囲として扱い、地表とA層は一体化させて、細分メッシュ内を短冊状の土地利用形態で区分し、B層以下の地下層を細分メッシュ内で均一な構造とする。
【0046】
なお、細分メッシュに該当する範囲は、山地が無い場合や針葉樹と広葉樹に区分する場合など土地の利用形態に応じて自由な組み合わせで構成し、実際の土地利用形態を反映することが可能であるので、メッシュごとに異なった土地利用モデルとなる。
【0047】
次に、細分メッシュにおける降雨流出の構造について説明する。
【0048】
細分メッシュ内では、降雨分布が均一であるものとし、例えば、細分メッシュ内の土地利用形態が山地、畑地、水田、水域、都市という構成である場合、図6に示すように、水田・水域・都市におけるA層の厚さをゼロと仮定して地表のみを流下し、山地・畑地については地表とA層までを流下するというように、土地利用形態に応じてA層を地表と一体化するか否かを区別し、下流側の細分メッシュあるいは河川や下水道などの水路に合流する構造にモデル化する。
【0049】
また、細分メッシュ内において、B層以下の地下層については均一であるものとして一体化し、降雨はこの一体化したB層以下の地下層を流下して中間成分流や基底流を形成し、下流側の細分メッシュあるいは河川や下水道などの水路に合流するものとする。
【0050】
また、降雨がA層以下あるいはB層以下の全ての地下層に鉛直方向へ浸透する構造にすることも可能とし、各層の許容水分量を越えた場合には、許容水分量を超える水量については上層への復帰流が生じ、蒸発散量については、地表、A層、B層の順に上層面から順次差し引くものとする。
【0051】
続いて、細分メッシュにおける流下モデルの構造について説明する。
【0052】
細分メッシュの流下モデルの構造は、図7に示す構造のように、地表直下のA層を下層に向かって「飽和層」、「不飽和層」、「土粒層(固相)」の順に区分し、A層内の空隙部分の水流を「飽和流」と「不飽和流」、地表面の水流を「地表面流」に分離し、細分メッシュ内の降雨量に応じて「不飽和層」の最下面から「不飽和流」が発生し、降雨量や上流からの流入水が増加すると、水流面が順次上昇して「飽和流」や「地表面流」が発生する構造となっている。
【0053】
まず、図7の流下モデルにおける「不飽和層」について説明する。
【0054】
図8に示すように、不飽和層内における不飽和流は、水深hが0<h≦dc(不飽和層厚)の場合であり、その平均流速vcは次に示す(1)〜(3)式から求められる。
【0055】
(1)式
(2)式
(3)式
【0056】
また、単位幅流量qが0<q≦qcmaxの場合、水深hは(4)、(5)式から算出する。
【0057】
(4)式
(5)式
【0058】
ただし、
vc(mm/hr):不飽和流平均流速、qc(mm2/hr):不飽和流単位幅流量、h(mm):水深
d(mm):A層厚、dc(mm):不飽和層厚(dc=γc・d)、γc:不飽和間隙率
κc(mm/hr):不飽和透水係数、κa(mm/hr):飽和透水係数
β:透水係数比(β=κa/κc)、i:動水勾配(i=sinθ=sin(arctan(I)))、I:斜面勾配
とする。
【0059】
次に、図7の流下モデルにおける「飽和層」について説明する。
【0060】
図9に示すように、飽和層内における飽和流は、水深hがdc<h≦dsの場合であり、その平均流速vaは(6)[ダルシー則]、(7)、(8)式から求められる。
【0061】
(6)式
(7)式
(8)式
【0062】
単位幅流量qがqcmax<q≦qamaxの場合、水深hは(9)〜(11)式から算出する。
【0063】
(9)式
(10)式
(11)式
【0064】
ただし、
va(mm/hr):飽和流平均流速、qa(mm2/hr):A層内単位幅流量
qc(mm2/hr):不飽和流単位幅流量、h(mm):水深、d(mm):A層厚
dc(mm):不飽和層厚(dc=γc・d)、γc:不飽和間隙率、κc(mm/hr):不飽和透水係数
ds(mm):間隙層厚(ds=γa・d)、γa:有効間隙率、κa(mm/hr):飽和透水係数
β:透水係数比(β=κa/κc)、i:動水勾配(i=sinθ=sin(arctan(I)))、I:斜面勾配
とする。
【0065】
次に、図7の流下モデルにおける「地表面」について説明する。
【0066】
図10に示すように、流下モデルにおける地表の「地表面流」の平均流速を求めるときは、次に示す(12)、(13)式によるkinematic waveモデルを適用する。
【0067】
kinematic waveモデル
(12)式 連続式:
(13)式 運動式:
h:水深(mm)、t:時間(s)、q:単位幅流量(mm2/hr)、x:斜面長(mm)、
re:有効降雨強度(mm/h)、α(mm1/3hr-1)及びm:流れの形態で決まる定数
【0068】
ただし、マニング則でのαとmは、次に示す(14-1)〜(14-7)式から求められる。
【0069】
マニング平均流速:
(14-1)式
(14-2)式
(14-3)式
【0070】
横断形状を矩形とすれば、
(14-4)式
【0071】
横断形状が幅広な矩形とすれば
(14-5)式
(14-6)式
(14-7)式
【0072】
従って、αとmは下記のようになる。
n(mm-1/3hr):マニングの粗度係数(等価粗度)、I:斜面勾配
【0073】
このため、地表の表面流は水深hがh>dsの場合、地表の流速vsは、次に示す(15)〜(17)式から求められる。
【0074】
(15)式
(16)式
(17)式
【0075】
単位幅流量qがq>qamaxの場合、水深hは(18)、(19)式から求める。
【0076】
(18)式
(19)式
【0077】
ただし、
vs(mm/hr):表面流流速、qs(mm2/hr):地表面単位幅流量
va(mm/hr):飽和流平均流速、qa(mm2/hr):A層内単位幅流量
qc(mm2/hr):不飽和流単位幅流量、h(mm):水深、d(mm):A層厚
dc(mm):不飽和層厚(dc=γc・d)、γc:不飽和間隙率、κc(mm/hr):不飽和透水係数
ds(mm):間隙層厚(ds=γa・d)、γa:有効間隙率、κa(mm/hr):飽和透水係数
β:透水係数比(β=κa/κc)、i:動水勾配(i=sinθ=sin(arctan(I)))
I:斜面勾配、n(mm-1/3hr):マニングの粗度係数等価粗度
m:定数(マニング則よりm=5/3)
とする。
【0078】
また、細分メッシュのB層以下の地下層における水深hの平均流速vaは、ダルシー則にもとづき、次に示す(20)式(ダルシー則)から算出される。なお、計算式の詳細は、上述した不飽和流あるいは飽和流の平均流速のものと同様であるため省略する。
【0079】
(20)式
【0080】
[2]分布型流出予測システム
続いて、上記[1]で説明した「分布型モデルの流域構成」に基づいた具体的な分布型流出予測システムについて説明する。
【0081】
図11は、本発明の分布型流出予測システムを中心とした概略構成を示した図であり、流出予測するための基礎となるデータを収集・蓄積しているデータ蓄積施設100と、分布型流出予測システム200と、流出予測の結果を表示する流出予測表示端末機300などから構成される。
【0082】
データ蓄積施設100には、レーダやテレメータなどによって観測された降雨データや実測データ、また、これらのデータに基づく予測データなど各種データが収集・蓄積されている。
【0083】
例えば、レーダ観測手段により測定された降雨位置・降雨強度などのレーダ実測降雨データ(d1)、レーダ予測降雨算出システムにより予測されたレーダ予測降雨データ(d2)、テレメータ観測手段により測定された地上降雨データ(d3)、過去の地上降雨データを使用するなど様々な手段で予測された地上予測降雨データ(d4)、テレメータ観測手段により測定された気温・風速データ(d5)/河川・下水道などの水路の水位・流量データ(d6)/ダムあるいは内水排除施設の水位・流入量・放流量データ(d7)/地下水位データ(d8)などが収集・蓄積されており、これら各種データ(d1)〜(d8)は、分布型流出予測システム200からの要求に応じて適宜送出される。
【0084】
流出予測表示端末機300は、受信処理システム310、流出予測地点特定システム320、特定地点表示システム330などから構成され、分布型流出予測システム200により算出された流出予測結果データを受信処理システム310で受信処理し、流出予測地点特定システム320及び特定地点表示システム330によって流出予測地点の予測結果を表示する。
【0085】
分布型流出予測システム200は、データ蓄積施設100から通信ネットワークなどを介してデータを取得するためのデータ取得部210、取得したデータをデータベース化して蓄積するデータベース部220、流出予測演算に必要なデータを作成するデータ加工部230、蓄積されているデータに基づいて分布型モデルによる流出予測演算を実行し、流出予測結果データを生成する分布型演算システム部240、生成された流出予測結果データを流出予測表示端末機300に配信する配信システム部250などから構成される。
【0086】
以下、分布型流出予測システム200を構成する各部について説明する。
【0087】
データ取得部210は、レーダ降雨データ取得システム211、地上降雨データ取得システム212、気温・風速データ取得システム213、フィードバック用データ取得システム214などから構成されており、通信ネットワークなどを介し、データ蓄積施設100から適宜必要なデータを取得する。
【0088】
レーダ降雨データ取得システム211では、レーダ実測降雨データ(d1)とレーダ予測降雨データ(d2)を取得し、地上降雨データ取得システム212では、地上降雨データ(d3)と地上予測降雨データ(d4)を取得し、気温・風速データ取得システム213では、気温・風速データ(d5)を取得し、フィードバック用データ取得システム214では、河川・水路・下水道の水位・流量データ(d6)/ダムあるいは内水排除施設の水位・流入量・放流量データ(d7)/地下水位データ(d8)を取得し、各システム211〜214によって取得されたそれぞれのデータ(d1)〜(d8)はデータベース部220に送られ、蓄積される。
【0089】
データベース部220は、モデルデータエリア(a1)、レーダ降雨データエリア(a2)、地上降雨データエリア(a3)、気温・風速データエリア(a4)、フィードバックデータエリア(a5)、メッシュ降雨データエリア(a6)、メッシュ蒸発散量データエリア(a7)、流出予測結果データエリア(a8)など、種々のデータを蓄積するため、データ別にエリアが設けられており、データ取得部210によって取得された各種データ(d1)〜(d8)、データ加工部230によって作成されたメッシュ降雨データやメッシュ蒸発散量データ、分布型演算システム部240によって演算処理された流出予測結果データなどが蓄積され、また、データ加工部230や分布型演算システム部240に対して蓄積しているデータを送出したり、配信システム部250に流出予測結果データを送出したりする。
【0090】
なお、データベース部220のモデルデータエリア(a1)には格納される流域モデルデータは、流出予測するエリア全体を、任意の範囲或いはエリア内に存在する水路の分岐点や合流点を基にした範囲によって定めた単位エリアで区分し、又、同エリア全体を個々の形と大きさが同じ所定のメッシュで区分すると共に、単位エリアと区分された個々のメッシュとを照合して対応付けしてある。
【0091】
そして、上記単位エリアにはエリア番号を付与し、又、各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対してはエリア番号とは別の番号となるメッシュ番号が付与してあり、当該単位エリアを構成するメッシュを識別できるようになっている。
【0092】
更に、上記メッシュには、メッシュ番号とともに対応付けられている単位エリア内で完結する演算番号が上流方向から順に付与してあり、この演算番号に従って各メッシュの流出予測演算が実行される。
【0093】
また、流域モデルデータには、個々のメッシュに該当する範囲の地下層の構造を、メッシュと同じ形状で所定の厚みを持つ複数の地下層が地表下に積重した構造にモデル化したデータが含まれている。
【0094】
データ加工部230は、メッシュ降雨データ作成システム231とメッシュ蒸発散データ作成システム232を備えており、メッシュ蒸発散データ作成システム232によって、データベース部220のレーダ降雨データエリア(a2)及び地上降雨データエリア(a3)に蓄積されているレーダ実測降雨データ(d1)とレーダ予測降雨データ(d2)、あるいは地上降雨データ(d3)と地上予測降雨データ(d4)を取り込み、分布型モデルで利用するため、個々のメッシュに該当する範囲ごとの降雨位置・降雨強度からなるメッシュ降雨データを作成し、データベース部220のメッシュ降雨データエリア(a6)に蓄積する。
【0095】
また、メッシュ蒸発散データ作成システム232によって、データベース部220のモデルデータエリア(a1)、気温・風速データエリア(a4)に蓄積されている流域モデルデータと気温・風速データを取り込み、分布型モデルで利用するため、個々のメッシュに該当する範囲ごとの蒸発散量からなるメッシュ蒸発散データを作成し、データベース部220のメッシュ蒸発散データエリア(a7)に蓄積する。
【0096】
分布型演算システム部240は、分布型モデルによって、流出予測するエリア内の任意地点のメッシュ降雨データ、メッシュ蒸発散データに基づき、現時点(リアルタイム)又は予測する時間(時間帯)における流出予測演算処理を実行し、また、フィードバックデータに基づいてフィードバック演算処理を実行するためのモデルデータ読込モジュール241、メッシュ降雨データ読込モジュール242、メッシュ蒸発散量データ読込モジュール243、分布型モデル演算モジュール244、フィードバックデータ読込モジュール245、フィードバック演算モジュール246などを具備している。
【0097】
このようなモジュールから構成される分布型演算システム部240では、まず、モデルデータ読込モジュール241、メッシュ降雨データ読込モジュール242、メッシュ蒸発散量データ読込モジュール243によって、データベース部220のモデルデータエリア(a1)、メッシュ降雨データエリア(a6)、メッシュ蒸発散量データエリア(a7)に蓄積された流域モデルデータ、メッシュ降雨データ、メッシュ蒸発散量データをそれぞれ取り込む。
【0098】
続いて、分布型モデル演算モジュール244により、流域モデルデータ、メッシュ降雨データ、メッシュ蒸発散量データに基づいて、所定エリア内の河川や下水道・などの水路・ダム施設・内水排除施設の流量・水位・水深・流速の演算処理を実行したり、所定エリア内の流出域や氾濫域の任意地点における地表の流量・水深・流速や地下水位・地下浸透量・蒸発散量などの演算処理を実行することにより、個々のメッシュに該当する範囲の流出予測結果データを算出して行く。
【0099】
そして、更にフィードバックデータ読込モジュール245により、データベース部220のフィードバックデータエリア(a5)に蓄積されているフィードバックデータを取り込み、フィードバック演算モジュール246によってフィードバック数学モデルを適用した流出予測演算を実行し、その演算結果である流出予測結果データをデータベース部220の流出予測結果データエリア(a8)に蓄積する。
【0100】
配信システム部250は、データベース部220の流出予測結果データエリア(a8)に蓄積されている流出予測結果データを通信ネットワーク(例えば、インターネットやイントラネットなど)によって接続されている流出予測表示端末機300に流出予測結果を配信する。
【0101】
続いて、図11で示した分布型流出予測システムによる流出予測結果データの算出過程を図12のフローチャートを参照しながら説明する。
【0102】
なお、分布型流出予測システム200は、データ取得部210の各システム211〜214によって、データ蓄積施設100から各種データ(d1)〜(d8)を取得し、データベース部220の所定のエリアに蓄積した状態にあるものとする。
【0103】
また、データ加工部230のメッシュ降雨データ作成システム231によってメッシュ降雨データを作成し、また、メッシュ蒸発散データ作成システム232によってメッシュ蒸発散データを作成し、作成されたメッシュ降雨データ及びメッシュ蒸発散データがそれぞれデータベース部220のメッシュ降雨データエリア(a6)及びメッシュ蒸発散データエリア(a7)に蓄積された状態にあるものとする。
【0104】
分布型流出予測システム200が演算処理を開始すると、まず、分布型演算システム部240は、モデルデータ読込モジュール241によって、データベース部200のモデルデータエリア(a1)から流域モデルデータを取り込む(ST100)。
【0105】
次に、分布型演算システム部240は、メッシュ降雨データ読込モジュール242によって、データベース部200のメッシュ降雨データエリア(a6)からメッシュ降雨データを取り込む(ST101)。
【0106】
続いて、分布型演算システム部240は、メッシュ蒸発散量データ読込モジュール243によって、データベース部200のメッシュ蒸発散データエリア(a7)からメッシュ蒸発散データを取り込む(ST102)。
【0107】
そして、流域モデルデータ、メッシュ降雨データ、メッシュ蒸発散データの取り込みが完了すると、分布型演算システム部240は、分布型モデル演算モジュール244によって、流域モデルデータの単位エリアに付与されたエリア番号と当該単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに付与されているメッシュ番号に基づいて演算対象となる細分メッシュを識別し、識別した細分メッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該細分メッシュに該当する範囲の流出予測演算を開始する。
【0108】
まず、細分メッシュ内の土地利用形態別に表層(地表+A層)における表層演算(流出予測演算)を実行し、全ての利用形態について終了するまでこの演算処理を繰り返す(ST103→ST104→ST103→・・・)。
【0109】
次に、細分メッシュ内に水路(河川・下水道など)がある場合は、分布型演算システム部240は、分布型モデル演算モジュール244により水路(河川・下水道など)について分布型数学モデルを適用し、細分メッシュ内の河道演算(流出予測演算)を実行する(ST105)。
【0110】
続いて、分布型演算システム部240は、分布型モデル演算モジュール244により、細分メッシュ内のB層以下の地下層についての地層演算(流出予測演算)を実行する(ST106)。
【0111】
そして、メッシュ番号に基づき当該単位流域内における全ての細分メッシュの演算処理が終了するまで、上述したステップST101〜ST106の処理を実行する(ST107→ST101→・・・)。
【0112】
分布型演算システム部240は、当該単位流域内の全ての細分メッシュについての演算処理が完了すると、フィードバックデータ読込モジュール245によって、データベース部200のフィードバックデータエリア(a5)に蓄積されているフィードバックデータを取り込む(ST108)。
【0113】
そして、フィードバック演算モジュール246により、取り込んだフィードバックデータとステップST108までに演算処理したデータをもとに、フィードバック数学モデルを適用した流出予測演算を実行し、その演算結果である流出予測結果データをデータベース部220の流出予測結果データエリア(a8)に蓄積する(ST109)。
【0114】
分布型演算システム部240は、フィードバック演算モジュール246によって、当該単位流域内の全ての細分メッシュについての演算処理が完了すると、エリア番号に基づき、次の単位流域について、上述したステップST101〜ST109の処理を実行して流出予測結果データを算出し、全ての単位流域についての流出予測結果データを算出するまでステップST101〜ST109の処理を繰り返す(ST110→ST101→・・・)。
【0115】
分布型演算システム部240は、全ての単位流域についての流出予測結果データを算出すると、再び上述したステップST101の処理に戻り、所定の予測時間になるまでの間、上述したステップST101〜ST110の処理を繰り返し実行し、所定エリアの予測時間における流出予測結果データの算出を行う(ST111→ST101→・・・)。
【0116】
このようにして分布型演算システム部240によって算出された流出予測結果データは、データベース部220の流出予測結果データエリア(a8)に蓄積される。
【0117】
また、上述したステップST101〜ST110の処理の過程において、個々のメッシュごとの流出予測結果データや土地の利用形態別の流出予測結果データを生成するようにして、生成したこれらの流出予測結果データをデータベース部220の流出予測結果データエリア(a8)に蓄積しておくことも可能である。
【0118】
そして、データベース部220の流出予測結果データエリア(a8)に蓄積された流出予測結果データは、配信システム部250によって通信ネットワーク(例えば、インターネットやイントラネットなど)を介して流出予測表示端末機300に配信される。
【0119】
流出予測表示端末機300では、通信ネットワーク(例えば、インターネットやイントラネットなど)を介して配信されてくる流出予測結果データを受信処理システム310で受信すると、流出予測地点特定システム320で所定の処理を施し、特定地点表示システム330によって予め定めた流出予測地点における流出予測結果データ(例えば、水位、水深、流量など)を表示する。
【0120】
なお、分布型演算システム部240では、上述したステップST101〜ST110の処理を実行するとき、すなわち、個々のメッシュの演算処理を実行するときは、図4に示す構造の流域モデルデータを基本とし、図6に示す降雨流出の構造を適用して、土地の利用形態が単一でない場合は、図5に示すような土地利用モデルに変換し、更に、地表直下の地下層であるA層には、図7に示す流下モデルの構造を適用して演算処理が行われる。
【0121】
このとき、1つのメッシュの大きさに満たない範囲に対応付けられているメッシュや複数の単位流域によって分割された範囲に対応付けられているメッシュがあるときは、1つのメッシュの大きさ(面積)に対する比率に応じて縮小した同形の細分メッシュに置き換え、この細分メッシュの大きさ(面積)に応じて上述と同様の流出予測演算が実行される。
【0122】
なお、流出予測演算をリアルタイムで実行しない場合は、フィードバックデータ読込モジュール245とフィードバック演算モジュール246による処理が不要となるので、図12のステップST108、ST109の処理が省略される。
【0123】
例えば、PC(パーソナルコンピュータ)などによって流出予測するような場合、図12のステップST108、ST109の処理が省略されているフローチャートに基づいた分布型流出予測プログラムを用いることによって流出予測演算処理を実行することが可能となる。
【0124】
このような場合、流出予測するエリアの流域モデルデータと、この流域モデルデータをもとに作成したメッシュ降雨データ、メッシュ蒸散データを別途用意しておき、まず、PCによって、図12のステップST100の処理である流域モデルデータを取り込み、続いて、ST101〜ST102の処理であるメッシュ降雨データ、メッシュ蒸散データが取り込まれ、以降、図12のステップST108、ST109の処理が省略された流出予測演算処理が実行されることになる。
【0125】
なお、上述と同様に、ステップST101〜ST110(ST108、ST109除く)の処理過程において、個々のメッシュごとの流出予測結果データや土地の利用形態別の流出予測結果データあるいは地下層別の流出予測結果データを生成させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本願発明に係る分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムにおいて用いられる流域モデルデータの単位エリア及び細分メッシュについて説明するための説明図である。
【図2】図1に示す流域モデルデータにおいて、エリア全体(河川流域全体)を単位エリア(単位流域)で区分したときに付与する通し番号(エリア番号)について説明するための説明図である。
【図3】図1に示す流域モデルデータにおいて、各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対して付与されている演算番号について説明するための説明図である。
【図4】細分メッシュの構造を説明するための説明図である。
【図5】細分メッシュを土地の利用形態別にモデル化したときの構成例を説明するための説明図である。
【図6】細分メッシュの土地利用形態別の降雨流出構造を説明するための説明図である。
【図7】細分メッシュの流下モデルの構造を説明するため説明図である。
【図8】図7における不飽和流について説明するための説明図である。
【図9】図7における飽和流について説明するための説明図である。
【図10】図7における地表面流について説明するための説明図である。
【図11】本願発明に係る分布型流出予測システムの概略構成を示したブロック図である。
【図12】図11に示した分布型流出予測システムによる流出予測演算の過程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0127】
100;データ蓄積施設
200;分布型流出予測システム
210;データ取得部
211;レーダ降雨データ取得システム
212;地上降雨データ取得システム
213;気温・風速データ取得システム
214;フィードバック用データ取得システム
220;データベース部
230;データ加工部
231;メッシュ降雨データ作成システム
232;メッシュ蒸発散データ作成システム
240;分布型演算システム部
241;モデルデータ読込モジュール
242;メッシュ降雨データ読込モジュール
243;メッシュ蒸発散量データ読込モジュール
244;分布型モデル演算モジュール
245;フィードバックデータ読込モジュール
246;フィードバック演算モジュール
250;配信システム部
300;流出予測表示端末機
310;受信処理システム
320;流出予測地点特定システム
330;特定地点表示システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムに関するものである。詳細は、河川や下水道など水路、ダム施設や内水排除施設、流出域や氾濫域などの任意地点における平常時から洪水時までのあらゆる時点の流出予測が可能な分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化や都市化などの影響から短期間での集中豪雨あるいは長期間での少量降雨発生など気象現象に変化が見られ、また、河川や下水道などの流出域についても、地球温暖化や都市化などによる土地利用形態や植生など流域状況の変化が影響を与えている。
【0003】
この気象現象や流域状況の変化により、洪水や渇水の発生する危険性が高まり、平常時あるいは洪水時を含んだあらゆる時点において、河川や下水道などの水路からの流出予測が可能なシステムが必要とされている。
【0004】
このような河川や下水道などの水路の流出予測手法として、平常時の流出予測にはタンクモデル法、洪水時の流出予測には貯留関数法など、いわゆる、集中型モデルと呼ばれる流出予測手法が使用されている。
【0005】
この集中型モデルによる流出予測システムでは、地形・土地利用・植生などの多様な形態の流域を1つの単位流域として定め、集中化して流出予測する手法であり、本来特定地域に集中している降雨量や多様な土地利用・地形・土壌を1つの単位流域として平均化して流出予測していることから、1単位流域内の最下流地点での流出予測しか出来ないことや、1単位流域内を平均化するために予測精度が悪くなるというような問題を有している。
【0006】
そこで、近年、予測するエリアを均等な大きさのメッシュによって区分した分布型モデルと呼ばれる流出予測モデルを使用して洪水時の流出予測を行うシステムが登場し、この分布型流出予測システムによって、洪水時における任意地点での流出予測が可能になり、その予測精度も向上している。
【0007】
例えば、テレメータ雨量データを用いて補正した雨量データと合わせて、雨域の移動ベクトルを算出して短時間雨域移動解析を行って得られた結果を、予め設定されている任意の洪水予測地点における流域定数及び河川断面データを流域の特徴ならびにユーザの分析を踏まえ、集中型モデル、或いは分布型モデルに当て嵌め、数時間先までの河川の流量及び又は河川断面データがある場合にはその水位を算出して表示できるようした洪水予測情報提供システムなどが考案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−14868号公報(第3−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の分布型モデルでは、河川の平常時流量を求めるための地下層がモデルデータに組み込まれておらず、洪水時のみに限定された流出予測であるため、平常時から洪水時までのあらゆる時点での流出予測を精度よく算出することができないという問題がある。
【0009】
また、上述したように、均等な大きさのメッシュで区分する分布型モデルの流出予測では、予測する最小の単位(範囲)となるメッシュ1つのサイズを細分化することにより、予測精度を高くすることができるが、メッシュの総数と演算ステップが増大し、演算時間が大幅に増加してしまうという問題があり、一方、メッシュ1つのサイズを大きくして演算処理速度を上げようとすると予測精度が低下してしまうという問題が発生してしまう。
【0010】
また、河川などの自然に存在する水路の流域境界や合流点や分岐点などには水位観測施設が配置されることが多いが、均等な大きさのメッシュで区分したときの境界部は、自然に存在する水路の境界部と一致することの方がまれであり、河川などの自然に存在する水路の境界部における流出予測を精度よく行うことが困難である。
【0011】
更に、均等な大きさのメッシュで区分して流出予測演算をする場合、最上流のメッシュから最下流のメッシュまで、個々のメッシュ全てに対して通し番号を付与し、この番号に基づいた計算順序で演算処理するため、メッシュ数が多い場合、例えば、ダム施設や内水排除施設などの計画施設における流出予測演算に利用するときなど、データ入力の作業ミスを誘発しやすく、また、計画変更などにより番号を再度付与し直さなければならないようなことがあると、多大な労力が必要となるという問題もある。
【0012】
従って、河川や下水道など水路又は流出域や氾濫域の任意地点における平常時から洪水時までのあらゆる時点の流出予測が可能なシステムであって、演算処理の負荷が小さく、且つ、精度よく流出予測できるシステムを提供することに解決しなければならない課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明に係る分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムは次のような構成にすることである。
【0014】
(1)レーダ観測手段により測定されたレーダ降雨データ、テレメータ観測手段により測定された地上降雨データ、気象や水路などの実測データ、前記レーダ降雨データ及び地上降雨データや前記実測データに基づいて予測された予測データを通信ネットワークを介して取得するためのデータ取得手段と、流出予測するエリアをモデル化した流域モデルデータを格納し、前記データ取得手段で取得した前記レーダ降雨データ及び地上降雨データ、実測データ、予測データ及び各部で演算処理された演算データをデータベース化して蓄積することができるデータベース蓄積手段と、前記データベース蓄積手段から読み出した前記流域モデルデータ、前記レーダ降雨データ及び地上降雨データ、前記予測データに基づいてメッシュ降雨データを生成するメッシュ降雨データ作成手段と、前記データベース蓄積手段から読み出した前記流域モデルデータ及び所定の実測データに基づいてメッシュ蒸発散データを生成するメッシュ蒸発散データ作成手段と、前記データベース蓄積手段から読み出した前記流域モデルデータと前記メッシュ降雨データ作成手段で作成されたメッシュ降雨データ並びに前記メッシュ蒸発散データ作成手段で作成された前記メッシュ蒸発散データに基づいて流出予測演算を実行し、前記流出予測するエリアの流出予測結果データを生成する流出予測データ演算処理手段と、前記流出予測データ演算処理手段で生成された流出予測結果データを通信ネットワークを介して配信することができるデータ配信手段と、を具備し、前記データベース蓄積手段には、前記流出予測するエリア全体を任意の範囲或いは該エリア内に存在する水路の分岐点や合流点を基にした範囲によって定めた単位エリアで区分し、又、同エリア全体を個々の形と大きさが同じ所定のメッシュで区分すると共に、前記単位エリアと区分された個々のメッシュとを照合して対応付けし、前記単位エリアに対しては通し番号であるエリア番号を付与し、又、各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対しては前記エリア番号と別の番号となるメッシュ番号を付与するとともに、前記対応付けられた単位エリア内で完結する通し番号である演算番号を付与し、更に、前記個々のメッシュに該当する範囲の地下層の構造を、前記メッシュと同じ形状で所定の厚みを持つ複数の地下層が地表下に積重している構造にモデル化したデータを含んだ流域モデルデータを格納し、前記流出予測データ演算処理手段は、前記流域モデルデータを前記データベース蓄積手段から読み出し、該流域モデルデータに付与されたエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアと該単位エリアを構成するメッシュを識別し、該識別したメッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該メッシュに対応付けられている範囲の流出予測演算を実行し、前記メッシュに対応付けられている範囲が1つのメッシュの大きさに満たないときや前記複数の単位エリアで分割されているときは、当該範囲を前記1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、該置換したメッシュに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする分布型流出予測システム。
(2)前記流出予測データ演算処理手段は、前記メッシュに該当する範囲における降雨分布を均一とし、前記地表と該地表直下の地下層を一体化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行することを特徴とする(1)に記載の分布型流出予測システム。
(3)前記流出予測データ演算処理手段は、前記地表直下の地下層を、飽和層、不飽和層、土粒層の順に区分し、前記飽和層に流れる水流を飽和流、前記不飽和層に流れる水流を不飽和流、前記地表面を流れる水流を地表面流とし、前記メッシュに該当する範囲における前記メッシュ降雨データと前記メッシュ蒸発散データに応じて前記不飽和流が発生し、前記メッシュ降雨データや前記メッシュ蒸発散データの増加量に応じて前記飽和流や前記地表面流が発生する構造にモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行することを特徴とする(1)又は(2)に記載の分布型流出予測システム。
(4)前記流出予測データ演算処理手段は、前記メッシュに該当する範囲の土地の利用形態が混在している場合、該当する流域モデルデータを前記土地の利用形態別に土地の利用面積に比例した大きさで区分してモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行することを特徴とする(1)、(2)又は(3)に記載の分布型流出予測システム。
(5)前記流出予測データ演算処理手段は、前記地表と該地表直下の地下層を一体化する部分と一体化しない部分を区別して前記流出予測演算を実行することを特徴とする(1)、(2)、(3)又は(4)に記載の分布型流出予測システム。
(6)前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアごとに前記流出予測結果データを生成し、該生成した単位エリアごとの流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたことを特徴とする(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)に記載の分布型流出予測システム。
(7)前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュごとに前記流出予測結果データを生成し、該生成した個々のメッシュの流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたことを特徴とする(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)に記載の分布型流出予測システム。
(8)前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の土地の利用形態別に前記流出予測結果データを生成し、該生成した土地の利用形態別の流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたことを特徴とする(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)又は(7)に記載の分布型流出予測システム。
(9)前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の地表下に積重している地下層別に前記流出予測結果データを生成し、該生成した地下層別の流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたことを特徴とする(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)又は(8)に記載の分布型流出予測システム。
【0015】
(10)所定のエリアにおける流出予測演算をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記コンピュータを、流出予測するエリア全体を任意の範囲或いは該エリア内に存在する水路の分岐点や合流点を基にした範囲によって定めた単位エリアで区分し、又、同エリア全体を個々の形と大きさが同じ所定のメッシュで区分すると共に、前記単位エリアと区分された個々のメッシュとを照合して対応付けし、前記単位エリアに対しては通し番号であるエリア番号を付与し、又、各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対しては前記エリア番号と別の番号となるメッシュ番号を付与するとともに、前記対応付けられた単位エリア内で完結する通し番号である演算番号を付与し、更に、前記個々のメッシュに該当する範囲の地下層の構造を、前記メッシュと同じ形状で所定の厚みを持つ複数の地下層が地表下に積重している構造にモデル化したデータを含んだ流域モデルデータを取り込むための流域モデルデータ取得手段と、前記流域モデルデータに基づいて生成されたメッシュ降雨データを取り込むためのメッシュ降雨データ取得手段と、前記流域モデルデータに基づいて生成されたメッシュ蒸発散データを取り込むためのメッシュ蒸発散データ取得手段と、前記流域モデルデータ取得手段で取り込んだ流域モデルデータ及び前記メッシュ降雨データ取得手段で取り込んだメッシュ降雨データ並びに前記メッシュ蒸発散データ取得手段で取り込んだメッシュ蒸発散データに基づき、前記流域モデルデータに付与されたエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアと該単位エリアを構成するメッシュを識別し、該識別したメッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該メッシュに対応付けられている範囲の流出予測演算を実行し、前記メッシュに対応付けられている範囲が1つのメッシュの大きさに満たないときや前記複数の単位エリアで分割されているときは、当該範囲を前記1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、該置換したメッシュに基づいて前記流出予測演算を実行して、前記流出予測するエリアの流出予測結果データを生成する流出予測演算手段として機能させるための分布型流出予測プログラム。
(11)前記流出予測演算手段は、前記メッシュに該当する範囲における降雨分布を均一とし、前記地表と該地表直下の地下層を一体化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行することを特徴とする(10)に記載の分布型流出予測プログラム。
(12)前記流出予測演算手段は、前記地表直下の地下層を、飽和層、不飽和層、土粒層の順に区分し、前記飽和層に流れる水流を飽和流、前記不飽和層に流れる水流を不飽和流、前記地表面を流れる水流を地表面流とし、前記メッシュに該当する範囲における前記メッシュ降雨データと前記メッシュ蒸発散データに応じて前記不飽和流が発生し、前記メッシュ降雨データや前記メッシュ蒸発散データの増加量に応じて前記飽和流や前記地表面流が発生する構造にモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行することを特徴とする(10)又は(11)に記載の分布型流出予測プログラム。
(13)前記流出予測演算手段は、前記メッシュに該当する範囲の土地の利用形態が混在している場合、該当する流域モデルデータを前記土地の利用形態別に土地の利用面積に比例した大きさで区分してモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行することを特徴とする(10)、(11)又は(12)に記載の分布型流出予測プログラム。
(14)前記流出予測演算手段は、前記地表と該地表直下の地下層を一体化する部分と一体化しない部分を区別して前記流出予測演算を実行することを特徴とする(10)、(11)、(12)又は(13)に記載の分布型流出予測プログラム。
(15)前記流出予測演算手段は、前記単位エリアごとに前記流出予測結果データを生成することを特徴とする(10)、(11)、(12)、(13)又は(14)に記載の分布型流出予測プログラム。
(16)前記流出予測演算手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュごとに前記流出予測結果データを生成することを特徴とする(10)、(11)、(12)、(13)、(14)又は(15)に記載の分布型流出予測プログラム。
(17)前記流出予測演算手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の土地の利用形態別に前記流出予測結果データを生成することを特徴とする(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)又は(16)に記載の分布型流出予測プログラム。
(18)前記流出予測演算手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の地表下に積重している地下層別に前記流出予測結果データを生成することを特徴とする(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)又は(17)に記載の分布型流出予測プログラム。
【0016】
上記分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムでは、流域モデルデータに付与されたエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアとこの単位エリアを構成するメッシュを識別し、識別したメッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該メッシュに対応付けられている範囲の流出予測演算を実行し、メッシュに対応付けられている範囲が1つのメッシュの大きさに満たないときや複数の単位エリアで分割されているときは、当該範囲を1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、この置換したメッシュに基づいて流出予測演算を実行することによって、単位エリアを任意に設定できるようになり、また、メッシュの大きさを細分化しなくても予測精度を保つことができる。
【0017】
また、流域モデルデータには、個々のメッシュに該当する範囲の地下層の構造をメッシュと同じ形状で所定の厚みを持つ層が地表下に積重している構造にモデル化したデータが含まれているので平常時及び洪水時双方の流出予測が可能となる。
【0018】
更に、単位エリアごと、単位エリアに対応付けられた個々のメッシュごと、個々のメッシュに該当する範囲の土地の利用形態別、又は、地下層別に流出予測結果データを生成することにより、単位エリアにおける詳細な流出予測が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、河川などの平常時の流量を求めるための地下層をモデル化して流域モデルデータに組み込むことで、平常時から洪水時までのあらゆる時点における流出予測が可能となり、又、流出予測の精度も向上するという優れた効果を奏するものである。
【0020】
また、1つのメッシュの大きさに満たない範囲に対応付けられているメッシュや複数の単位エリアで分割されている範囲に対応付けられているメッシュを、1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、該当単位エリアの流出予測演算に含めることによって、予測精度を向上させるために全てのメッシュを細分化する必要がなくなるので、メッシュ数が増大することなく、流出予測するためのエリアを流域境界や河川の合流点など自然に存在する境界に基づいて任意に設定することが可能となり、演算処理の負荷も抑えられ、且つ、予測精度も向上させることができるという優れた効果を奏するものである。
【0021】
また、流出予測するエリアを任意に区分した単位エリアに対して付与してあるエリア番号と各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対して付与してあるメッシュ番号によって該当するメッシュを識別し、識別したメッシュに付与してある演算番号の順序に従って流出予測演算が実行されるので、例えば、ダム施設や内水排除施設などの流出予測を行うとき、施設計画の変更になった場合でも、エリア全体のデータを変更せず、該当する一部のデータのみを変更すればよいので、データ変更作業が容易になり、データ入力作業の手間も大幅に軽減できるというメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムによる実施の形態について図面を参照して説明する。但し、図面は専ら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0023】
[1]分布型モデルの流域構成
まず、本発明の分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムで用いる分布型モデルの流域構成について説明する。
【0024】
本発明では、流出予測するエリアをモデル化したデータによって流出予測演算をするため、流出予測する全エリアを任意の範囲の単位エリアで区分すると共に、全エリアを個々の形、大きさ(面積)が同じメッシュで区分し、各単位エリアと区分された個々のメッシュを照合し、単位エリアと個々のメッシュとの対応付けを行う。
【0025】
例えば、ある河川流域を流出予測する場合、河川流域(全エリア)を流出域や氾濫域、支川などに基づいて定めた任意の大きさの単位流域(単位エリア)で区分すると共に、この河川流域(全エリア)を個々の形、大きさ(面積)が同じ矩形のメッシュ(以下、均等メッシュ)で区分し、各単位流域と個々のメッシュとを照合して、各単位流域と個々のメッシュとの対応付けを行う。
【0026】
このとき、単位流域(単位エリア)を構成するメッシュのうち、例えば、メッシュ1つの大きさ(面積)に満たない範囲に対応付けられているメッシュや、複数の単位流域によって分割される範囲に対応付けられているメッシュ(以下、不均等メッシュ)が存在することがある。
【0027】
このような不均等メッシュが存在する場合、エリア全てを均等メッシュで区分できるように、1メッシュの大きさを更に細かく設定すればよいが、メッシュの総数が増加して演算量が増大してしまうという問題が発生する。しかし、この不均等メッシュは、メッシュ1つの大きさ(面積)に満たないだけであり、地形勾配などその他の構造は均等メッシュと同じである。
【0028】
そこで、本発明では、1つのメッシュの大きさに満たない範囲に対応付けられているメッシュや複数の単位流域によって分割された範囲に対応付けられているメッシュのみを、1つのメッシュの大きさ(面積)との比率に応じて縮小した同形(矩形)のメッシュ(以下、細分メッシュ)に置き換え、置き換えた細分メッシュに該当する範囲を該当する単位流域の流出予測演算処理に含めることにする。
【0029】
例えば、図1(a)に示すようなエリアの流出予測を行う場合、流出予測エリアを支川X,Y,Zの合流点(又は分岐点)などの河川流域界(単位エリア)で区分して単位流域x、y、zとし、また、同流出予測エリアを1つの大きさ(面積)が同じ矩形(四角の点線)で示した均等メッシュ(メッシュ番号11〜15,21〜25,31〜33,41〜42)で区分し、単位流域x、y、zと個々のメッシュとを照合して対応付けする。
【0030】
このとき、例えば、メッシュ番号23に該当する範囲は、単位流域x、y、zに3分割されており、均等メッシュと比べると、矩形ではなく、1メッシュの大きさ(面積)に満たない不均等メッシュとなっている。
【0031】
そこで、図1(b)に示すように、このメッシュ番号23のメッシュを均等メッシュと同じ矩形で、且つ、それぞれを分割された比率に応じた大きさ(面積)の細分メッシュ(メッシュ番号23x、23y、23z)に置き換え、それぞれの単位流域の構成メッシュに含める。
【0032】
また、単位流域xを構成するメッシュ番号11,12,13,21,22、単位流域yを構成するメッシュ番号13,14,15,24,25,32,33、単位流域zを構成するメッシュ番号22,31,32,33,41,42に該当する各範囲についても1メッシュの大きさ(面積)に満たない範囲に対応しているので、これらの不均等メッシュについても上記と同様に細分メッシュに置き換える。
【0033】
従って、単位流域xを構成するメッシュは、メッシュ番号11x,12x,13x,21x,22x,23x、同様に、単位流域yを構成するメッシュは、メッシュ番号13y,14y,15y,23y,24y,25y,32y,33y、単位流域zを構成するメッシュは、メッシュ22z,23z,31z,32z,33z,41z,42zとなる。
【0034】
なお、これ以降の説明において特に記載がない限りは、均等メッシュと細分メッシュとの区別をせずに、すべてのメッシュを細分メッシュとして説明する。
【0035】
また、各単位エリアに付与されるエリア番号は、流出予測するエリア全体からみて上流方向から順に通し番号が付与されおり、このエリア番号の順序に従って、流出予測演算する単位エリアが識別される。
【0036】
例えば、図2に示すように、各単位流域T〜Zには、流出予測するエリア全体からみて上流方向から順に単位エリア番号[1]〜[7]を付与して完結させる。流出予測演算は、この単位エリア番号[1]〜[7]の順序に基づいて単位流域T→U→V→W→X→Y→Zの順で実行される。
【0037】
一方、各単位エリアに対応付けされている細分メッシュには、エリア番号とは別の番号で、流出予測するエリアにおいて重複することのないメッシュ番号(図1(a)参照)が付与してあり、更に、対応付けされている単位エリア内で完結する演算番号が上流方向から順に付与されている。
【0038】
例えば、図3に示すように、流出予測エリアの個々のメッシュには、メッシュ番号11〜15,21〜25,31〜33,41〜42が付与されている。
【0039】
更に、各単位流域X,Y,Z(単位エリア)内で完結し、同単位エリアを構成するメッシュの演算処理の順序を示す演算番号が上流方向から順に付与されている。
【0040】
単位流域Xの場合、この単位エリアを構成するメッシュ番号11,12,13,21,22,23のメッシュに対して、単位流域X(単位エリア)内で完結し、同単位エリアを構成するメッシュの演算処理の順序を示す演算番号「1」〜「6」が上流方向から順に付与してあり、単位流域Y、単位流域Zについても、上述と同様、各単位エリア内で完結し、当該単位エリア内における演算処理の順序を示す演算番号「1」〜「7」、「1」〜「6」がそれぞれ上流方向から順に付与されている。
【0041】
このように、流域モデルデータに付与されたエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアと当該単位エリアを構成するメッシュが識別され、続いて、識別したメッシュに付与されている演算番号に従った順序で各メッシュに該当する範囲の流出予測演算が実行されるので、単位エリア内における各メッシュ→単位エリア→全エリアの順で流出予測結果データが算出されることになる。
【0042】
次に、上述した細分メッシュの構造について説明する。
【0043】
図4に示すように、細分メッシュの形状は矩形とし、地表以下の地下層の構造は、上層から順にA層、B層、C層、D層・・・というように均等な厚さの層が積重した構造とする。なお、各地下層の厚さは、それぞれ異なる厚さにすることも可能である。
【0044】
また、細分メッシュに該当する範囲における土地の利用形態が都市のみ、水田のみ、山地のみというように単一な利用形態ではなく、図5(a)に示すように、例えば、都市と山地と水田というような複数の利用形態が混在している範囲である場合は、図5(b)で示す土地利用モデルのように、土地の利用形態別に同一の斜面長を持つ短冊状の平面形状に置き換え、斜面幅は土地の利用面積に比例した大きさで区分してモデル化する。
【0045】
この土地利用モデルでは、地表と地表直下のA層(図3参照)までを影響範囲として扱い、地表とA層は一体化させて、細分メッシュ内を短冊状の土地利用形態で区分し、B層以下の地下層を細分メッシュ内で均一な構造とする。
【0046】
なお、細分メッシュに該当する範囲は、山地が無い場合や針葉樹と広葉樹に区分する場合など土地の利用形態に応じて自由な組み合わせで構成し、実際の土地利用形態を反映することが可能であるので、メッシュごとに異なった土地利用モデルとなる。
【0047】
次に、細分メッシュにおける降雨流出の構造について説明する。
【0048】
細分メッシュ内では、降雨分布が均一であるものとし、例えば、細分メッシュ内の土地利用形態が山地、畑地、水田、水域、都市という構成である場合、図6に示すように、水田・水域・都市におけるA層の厚さをゼロと仮定して地表のみを流下し、山地・畑地については地表とA層までを流下するというように、土地利用形態に応じてA層を地表と一体化するか否かを区別し、下流側の細分メッシュあるいは河川や下水道などの水路に合流する構造にモデル化する。
【0049】
また、細分メッシュ内において、B層以下の地下層については均一であるものとして一体化し、降雨はこの一体化したB層以下の地下層を流下して中間成分流や基底流を形成し、下流側の細分メッシュあるいは河川や下水道などの水路に合流するものとする。
【0050】
また、降雨がA層以下あるいはB層以下の全ての地下層に鉛直方向へ浸透する構造にすることも可能とし、各層の許容水分量を越えた場合には、許容水分量を超える水量については上層への復帰流が生じ、蒸発散量については、地表、A層、B層の順に上層面から順次差し引くものとする。
【0051】
続いて、細分メッシュにおける流下モデルの構造について説明する。
【0052】
細分メッシュの流下モデルの構造は、図7に示す構造のように、地表直下のA層を下層に向かって「飽和層」、「不飽和層」、「土粒層(固相)」の順に区分し、A層内の空隙部分の水流を「飽和流」と「不飽和流」、地表面の水流を「地表面流」に分離し、細分メッシュ内の降雨量に応じて「不飽和層」の最下面から「不飽和流」が発生し、降雨量や上流からの流入水が増加すると、水流面が順次上昇して「飽和流」や「地表面流」が発生する構造となっている。
【0053】
まず、図7の流下モデルにおける「不飽和層」について説明する。
【0054】
図8に示すように、不飽和層内における不飽和流は、水深hが0<h≦dc(不飽和層厚)の場合であり、その平均流速vcは次に示す(1)〜(3)式から求められる。
【0055】
(1)式
(2)式
(3)式
【0056】
また、単位幅流量qが0<q≦qcmaxの場合、水深hは(4)、(5)式から算出する。
【0057】
(4)式
(5)式
【0058】
ただし、
vc(mm/hr):不飽和流平均流速、qc(mm2/hr):不飽和流単位幅流量、h(mm):水深
d(mm):A層厚、dc(mm):不飽和層厚(dc=γc・d)、γc:不飽和間隙率
κc(mm/hr):不飽和透水係数、κa(mm/hr):飽和透水係数
β:透水係数比(β=κa/κc)、i:動水勾配(i=sinθ=sin(arctan(I)))、I:斜面勾配
とする。
【0059】
次に、図7の流下モデルにおける「飽和層」について説明する。
【0060】
図9に示すように、飽和層内における飽和流は、水深hがdc<h≦dsの場合であり、その平均流速vaは(6)[ダルシー則]、(7)、(8)式から求められる。
【0061】
(6)式
(7)式
(8)式
【0062】
単位幅流量qがqcmax<q≦qamaxの場合、水深hは(9)〜(11)式から算出する。
【0063】
(9)式
(10)式
(11)式
【0064】
ただし、
va(mm/hr):飽和流平均流速、qa(mm2/hr):A層内単位幅流量
qc(mm2/hr):不飽和流単位幅流量、h(mm):水深、d(mm):A層厚
dc(mm):不飽和層厚(dc=γc・d)、γc:不飽和間隙率、κc(mm/hr):不飽和透水係数
ds(mm):間隙層厚(ds=γa・d)、γa:有効間隙率、κa(mm/hr):飽和透水係数
β:透水係数比(β=κa/κc)、i:動水勾配(i=sinθ=sin(arctan(I)))、I:斜面勾配
とする。
【0065】
次に、図7の流下モデルにおける「地表面」について説明する。
【0066】
図10に示すように、流下モデルにおける地表の「地表面流」の平均流速を求めるときは、次に示す(12)、(13)式によるkinematic waveモデルを適用する。
【0067】
kinematic waveモデル
(12)式 連続式:
(13)式 運動式:
h:水深(mm)、t:時間(s)、q:単位幅流量(mm2/hr)、x:斜面長(mm)、
re:有効降雨強度(mm/h)、α(mm1/3hr-1)及びm:流れの形態で決まる定数
【0068】
ただし、マニング則でのαとmは、次に示す(14-1)〜(14-7)式から求められる。
【0069】
マニング平均流速:
(14-1)式
(14-2)式
(14-3)式
【0070】
横断形状を矩形とすれば、
(14-4)式
【0071】
横断形状が幅広な矩形とすれば
(14-5)式
(14-6)式
(14-7)式
【0072】
従って、αとmは下記のようになる。
n(mm-1/3hr):マニングの粗度係数(等価粗度)、I:斜面勾配
【0073】
このため、地表の表面流は水深hがh>dsの場合、地表の流速vsは、次に示す(15)〜(17)式から求められる。
【0074】
(15)式
(16)式
(17)式
【0075】
単位幅流量qがq>qamaxの場合、水深hは(18)、(19)式から求める。
【0076】
(18)式
(19)式
【0077】
ただし、
vs(mm/hr):表面流流速、qs(mm2/hr):地表面単位幅流量
va(mm/hr):飽和流平均流速、qa(mm2/hr):A層内単位幅流量
qc(mm2/hr):不飽和流単位幅流量、h(mm):水深、d(mm):A層厚
dc(mm):不飽和層厚(dc=γc・d)、γc:不飽和間隙率、κc(mm/hr):不飽和透水係数
ds(mm):間隙層厚(ds=γa・d)、γa:有効間隙率、κa(mm/hr):飽和透水係数
β:透水係数比(β=κa/κc)、i:動水勾配(i=sinθ=sin(arctan(I)))
I:斜面勾配、n(mm-1/3hr):マニングの粗度係数等価粗度
m:定数(マニング則よりm=5/3)
とする。
【0078】
また、細分メッシュのB層以下の地下層における水深hの平均流速vaは、ダルシー則にもとづき、次に示す(20)式(ダルシー則)から算出される。なお、計算式の詳細は、上述した不飽和流あるいは飽和流の平均流速のものと同様であるため省略する。
【0079】
(20)式
【0080】
[2]分布型流出予測システム
続いて、上記[1]で説明した「分布型モデルの流域構成」に基づいた具体的な分布型流出予測システムについて説明する。
【0081】
図11は、本発明の分布型流出予測システムを中心とした概略構成を示した図であり、流出予測するための基礎となるデータを収集・蓄積しているデータ蓄積施設100と、分布型流出予測システム200と、流出予測の結果を表示する流出予測表示端末機300などから構成される。
【0082】
データ蓄積施設100には、レーダやテレメータなどによって観測された降雨データや実測データ、また、これらのデータに基づく予測データなど各種データが収集・蓄積されている。
【0083】
例えば、レーダ観測手段により測定された降雨位置・降雨強度などのレーダ実測降雨データ(d1)、レーダ予測降雨算出システムにより予測されたレーダ予測降雨データ(d2)、テレメータ観測手段により測定された地上降雨データ(d3)、過去の地上降雨データを使用するなど様々な手段で予測された地上予測降雨データ(d4)、テレメータ観測手段により測定された気温・風速データ(d5)/河川・下水道などの水路の水位・流量データ(d6)/ダムあるいは内水排除施設の水位・流入量・放流量データ(d7)/地下水位データ(d8)などが収集・蓄積されており、これら各種データ(d1)〜(d8)は、分布型流出予測システム200からの要求に応じて適宜送出される。
【0084】
流出予測表示端末機300は、受信処理システム310、流出予測地点特定システム320、特定地点表示システム330などから構成され、分布型流出予測システム200により算出された流出予測結果データを受信処理システム310で受信処理し、流出予測地点特定システム320及び特定地点表示システム330によって流出予測地点の予測結果を表示する。
【0085】
分布型流出予測システム200は、データ蓄積施設100から通信ネットワークなどを介してデータを取得するためのデータ取得部210、取得したデータをデータベース化して蓄積するデータベース部220、流出予測演算に必要なデータを作成するデータ加工部230、蓄積されているデータに基づいて分布型モデルによる流出予測演算を実行し、流出予測結果データを生成する分布型演算システム部240、生成された流出予測結果データを流出予測表示端末機300に配信する配信システム部250などから構成される。
【0086】
以下、分布型流出予測システム200を構成する各部について説明する。
【0087】
データ取得部210は、レーダ降雨データ取得システム211、地上降雨データ取得システム212、気温・風速データ取得システム213、フィードバック用データ取得システム214などから構成されており、通信ネットワークなどを介し、データ蓄積施設100から適宜必要なデータを取得する。
【0088】
レーダ降雨データ取得システム211では、レーダ実測降雨データ(d1)とレーダ予測降雨データ(d2)を取得し、地上降雨データ取得システム212では、地上降雨データ(d3)と地上予測降雨データ(d4)を取得し、気温・風速データ取得システム213では、気温・風速データ(d5)を取得し、フィードバック用データ取得システム214では、河川・水路・下水道の水位・流量データ(d6)/ダムあるいは内水排除施設の水位・流入量・放流量データ(d7)/地下水位データ(d8)を取得し、各システム211〜214によって取得されたそれぞれのデータ(d1)〜(d8)はデータベース部220に送られ、蓄積される。
【0089】
データベース部220は、モデルデータエリア(a1)、レーダ降雨データエリア(a2)、地上降雨データエリア(a3)、気温・風速データエリア(a4)、フィードバックデータエリア(a5)、メッシュ降雨データエリア(a6)、メッシュ蒸発散量データエリア(a7)、流出予測結果データエリア(a8)など、種々のデータを蓄積するため、データ別にエリアが設けられており、データ取得部210によって取得された各種データ(d1)〜(d8)、データ加工部230によって作成されたメッシュ降雨データやメッシュ蒸発散量データ、分布型演算システム部240によって演算処理された流出予測結果データなどが蓄積され、また、データ加工部230や分布型演算システム部240に対して蓄積しているデータを送出したり、配信システム部250に流出予測結果データを送出したりする。
【0090】
なお、データベース部220のモデルデータエリア(a1)には格納される流域モデルデータは、流出予測するエリア全体を、任意の範囲或いはエリア内に存在する水路の分岐点や合流点を基にした範囲によって定めた単位エリアで区分し、又、同エリア全体を個々の形と大きさが同じ所定のメッシュで区分すると共に、単位エリアと区分された個々のメッシュとを照合して対応付けしてある。
【0091】
そして、上記単位エリアにはエリア番号を付与し、又、各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対してはエリア番号とは別の番号となるメッシュ番号が付与してあり、当該単位エリアを構成するメッシュを識別できるようになっている。
【0092】
更に、上記メッシュには、メッシュ番号とともに対応付けられている単位エリア内で完結する演算番号が上流方向から順に付与してあり、この演算番号に従って各メッシュの流出予測演算が実行される。
【0093】
また、流域モデルデータには、個々のメッシュに該当する範囲の地下層の構造を、メッシュと同じ形状で所定の厚みを持つ複数の地下層が地表下に積重した構造にモデル化したデータが含まれている。
【0094】
データ加工部230は、メッシュ降雨データ作成システム231とメッシュ蒸発散データ作成システム232を備えており、メッシュ蒸発散データ作成システム232によって、データベース部220のレーダ降雨データエリア(a2)及び地上降雨データエリア(a3)に蓄積されているレーダ実測降雨データ(d1)とレーダ予測降雨データ(d2)、あるいは地上降雨データ(d3)と地上予測降雨データ(d4)を取り込み、分布型モデルで利用するため、個々のメッシュに該当する範囲ごとの降雨位置・降雨強度からなるメッシュ降雨データを作成し、データベース部220のメッシュ降雨データエリア(a6)に蓄積する。
【0095】
また、メッシュ蒸発散データ作成システム232によって、データベース部220のモデルデータエリア(a1)、気温・風速データエリア(a4)に蓄積されている流域モデルデータと気温・風速データを取り込み、分布型モデルで利用するため、個々のメッシュに該当する範囲ごとの蒸発散量からなるメッシュ蒸発散データを作成し、データベース部220のメッシュ蒸発散データエリア(a7)に蓄積する。
【0096】
分布型演算システム部240は、分布型モデルによって、流出予測するエリア内の任意地点のメッシュ降雨データ、メッシュ蒸発散データに基づき、現時点(リアルタイム)又は予測する時間(時間帯)における流出予測演算処理を実行し、また、フィードバックデータに基づいてフィードバック演算処理を実行するためのモデルデータ読込モジュール241、メッシュ降雨データ読込モジュール242、メッシュ蒸発散量データ読込モジュール243、分布型モデル演算モジュール244、フィードバックデータ読込モジュール245、フィードバック演算モジュール246などを具備している。
【0097】
このようなモジュールから構成される分布型演算システム部240では、まず、モデルデータ読込モジュール241、メッシュ降雨データ読込モジュール242、メッシュ蒸発散量データ読込モジュール243によって、データベース部220のモデルデータエリア(a1)、メッシュ降雨データエリア(a6)、メッシュ蒸発散量データエリア(a7)に蓄積された流域モデルデータ、メッシュ降雨データ、メッシュ蒸発散量データをそれぞれ取り込む。
【0098】
続いて、分布型モデル演算モジュール244により、流域モデルデータ、メッシュ降雨データ、メッシュ蒸発散量データに基づいて、所定エリア内の河川や下水道・などの水路・ダム施設・内水排除施設の流量・水位・水深・流速の演算処理を実行したり、所定エリア内の流出域や氾濫域の任意地点における地表の流量・水深・流速や地下水位・地下浸透量・蒸発散量などの演算処理を実行することにより、個々のメッシュに該当する範囲の流出予測結果データを算出して行く。
【0099】
そして、更にフィードバックデータ読込モジュール245により、データベース部220のフィードバックデータエリア(a5)に蓄積されているフィードバックデータを取り込み、フィードバック演算モジュール246によってフィードバック数学モデルを適用した流出予測演算を実行し、その演算結果である流出予測結果データをデータベース部220の流出予測結果データエリア(a8)に蓄積する。
【0100】
配信システム部250は、データベース部220の流出予測結果データエリア(a8)に蓄積されている流出予測結果データを通信ネットワーク(例えば、インターネットやイントラネットなど)によって接続されている流出予測表示端末機300に流出予測結果を配信する。
【0101】
続いて、図11で示した分布型流出予測システムによる流出予測結果データの算出過程を図12のフローチャートを参照しながら説明する。
【0102】
なお、分布型流出予測システム200は、データ取得部210の各システム211〜214によって、データ蓄積施設100から各種データ(d1)〜(d8)を取得し、データベース部220の所定のエリアに蓄積した状態にあるものとする。
【0103】
また、データ加工部230のメッシュ降雨データ作成システム231によってメッシュ降雨データを作成し、また、メッシュ蒸発散データ作成システム232によってメッシュ蒸発散データを作成し、作成されたメッシュ降雨データ及びメッシュ蒸発散データがそれぞれデータベース部220のメッシュ降雨データエリア(a6)及びメッシュ蒸発散データエリア(a7)に蓄積された状態にあるものとする。
【0104】
分布型流出予測システム200が演算処理を開始すると、まず、分布型演算システム部240は、モデルデータ読込モジュール241によって、データベース部200のモデルデータエリア(a1)から流域モデルデータを取り込む(ST100)。
【0105】
次に、分布型演算システム部240は、メッシュ降雨データ読込モジュール242によって、データベース部200のメッシュ降雨データエリア(a6)からメッシュ降雨データを取り込む(ST101)。
【0106】
続いて、分布型演算システム部240は、メッシュ蒸発散量データ読込モジュール243によって、データベース部200のメッシュ蒸発散データエリア(a7)からメッシュ蒸発散データを取り込む(ST102)。
【0107】
そして、流域モデルデータ、メッシュ降雨データ、メッシュ蒸発散データの取り込みが完了すると、分布型演算システム部240は、分布型モデル演算モジュール244によって、流域モデルデータの単位エリアに付与されたエリア番号と当該単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに付与されているメッシュ番号に基づいて演算対象となる細分メッシュを識別し、識別した細分メッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該細分メッシュに該当する範囲の流出予測演算を開始する。
【0108】
まず、細分メッシュ内の土地利用形態別に表層(地表+A層)における表層演算(流出予測演算)を実行し、全ての利用形態について終了するまでこの演算処理を繰り返す(ST103→ST104→ST103→・・・)。
【0109】
次に、細分メッシュ内に水路(河川・下水道など)がある場合は、分布型演算システム部240は、分布型モデル演算モジュール244により水路(河川・下水道など)について分布型数学モデルを適用し、細分メッシュ内の河道演算(流出予測演算)を実行する(ST105)。
【0110】
続いて、分布型演算システム部240は、分布型モデル演算モジュール244により、細分メッシュ内のB層以下の地下層についての地層演算(流出予測演算)を実行する(ST106)。
【0111】
そして、メッシュ番号に基づき当該単位流域内における全ての細分メッシュの演算処理が終了するまで、上述したステップST101〜ST106の処理を実行する(ST107→ST101→・・・)。
【0112】
分布型演算システム部240は、当該単位流域内の全ての細分メッシュについての演算処理が完了すると、フィードバックデータ読込モジュール245によって、データベース部200のフィードバックデータエリア(a5)に蓄積されているフィードバックデータを取り込む(ST108)。
【0113】
そして、フィードバック演算モジュール246により、取り込んだフィードバックデータとステップST108までに演算処理したデータをもとに、フィードバック数学モデルを適用した流出予測演算を実行し、その演算結果である流出予測結果データをデータベース部220の流出予測結果データエリア(a8)に蓄積する(ST109)。
【0114】
分布型演算システム部240は、フィードバック演算モジュール246によって、当該単位流域内の全ての細分メッシュについての演算処理が完了すると、エリア番号に基づき、次の単位流域について、上述したステップST101〜ST109の処理を実行して流出予測結果データを算出し、全ての単位流域についての流出予測結果データを算出するまでステップST101〜ST109の処理を繰り返す(ST110→ST101→・・・)。
【0115】
分布型演算システム部240は、全ての単位流域についての流出予測結果データを算出すると、再び上述したステップST101の処理に戻り、所定の予測時間になるまでの間、上述したステップST101〜ST110の処理を繰り返し実行し、所定エリアの予測時間における流出予測結果データの算出を行う(ST111→ST101→・・・)。
【0116】
このようにして分布型演算システム部240によって算出された流出予測結果データは、データベース部220の流出予測結果データエリア(a8)に蓄積される。
【0117】
また、上述したステップST101〜ST110の処理の過程において、個々のメッシュごとの流出予測結果データや土地の利用形態別の流出予測結果データを生成するようにして、生成したこれらの流出予測結果データをデータベース部220の流出予測結果データエリア(a8)に蓄積しておくことも可能である。
【0118】
そして、データベース部220の流出予測結果データエリア(a8)に蓄積された流出予測結果データは、配信システム部250によって通信ネットワーク(例えば、インターネットやイントラネットなど)を介して流出予測表示端末機300に配信される。
【0119】
流出予測表示端末機300では、通信ネットワーク(例えば、インターネットやイントラネットなど)を介して配信されてくる流出予測結果データを受信処理システム310で受信すると、流出予測地点特定システム320で所定の処理を施し、特定地点表示システム330によって予め定めた流出予測地点における流出予測結果データ(例えば、水位、水深、流量など)を表示する。
【0120】
なお、分布型演算システム部240では、上述したステップST101〜ST110の処理を実行するとき、すなわち、個々のメッシュの演算処理を実行するときは、図4に示す構造の流域モデルデータを基本とし、図6に示す降雨流出の構造を適用して、土地の利用形態が単一でない場合は、図5に示すような土地利用モデルに変換し、更に、地表直下の地下層であるA層には、図7に示す流下モデルの構造を適用して演算処理が行われる。
【0121】
このとき、1つのメッシュの大きさに満たない範囲に対応付けられているメッシュや複数の単位流域によって分割された範囲に対応付けられているメッシュがあるときは、1つのメッシュの大きさ(面積)に対する比率に応じて縮小した同形の細分メッシュに置き換え、この細分メッシュの大きさ(面積)に応じて上述と同様の流出予測演算が実行される。
【0122】
なお、流出予測演算をリアルタイムで実行しない場合は、フィードバックデータ読込モジュール245とフィードバック演算モジュール246による処理が不要となるので、図12のステップST108、ST109の処理が省略される。
【0123】
例えば、PC(パーソナルコンピュータ)などによって流出予測するような場合、図12のステップST108、ST109の処理が省略されているフローチャートに基づいた分布型流出予測プログラムを用いることによって流出予測演算処理を実行することが可能となる。
【0124】
このような場合、流出予測するエリアの流域モデルデータと、この流域モデルデータをもとに作成したメッシュ降雨データ、メッシュ蒸散データを別途用意しておき、まず、PCによって、図12のステップST100の処理である流域モデルデータを取り込み、続いて、ST101〜ST102の処理であるメッシュ降雨データ、メッシュ蒸散データが取り込まれ、以降、図12のステップST108、ST109の処理が省略された流出予測演算処理が実行されることになる。
【0125】
なお、上述と同様に、ステップST101〜ST110(ST108、ST109除く)の処理過程において、個々のメッシュごとの流出予測結果データや土地の利用形態別の流出予測結果データあるいは地下層別の流出予測結果データを生成させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本願発明に係る分布型流出予測システム及び分布型流出予測プログラムにおいて用いられる流域モデルデータの単位エリア及び細分メッシュについて説明するための説明図である。
【図2】図1に示す流域モデルデータにおいて、エリア全体(河川流域全体)を単位エリア(単位流域)で区分したときに付与する通し番号(エリア番号)について説明するための説明図である。
【図3】図1に示す流域モデルデータにおいて、各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対して付与されている演算番号について説明するための説明図である。
【図4】細分メッシュの構造を説明するための説明図である。
【図5】細分メッシュを土地の利用形態別にモデル化したときの構成例を説明するための説明図である。
【図6】細分メッシュの土地利用形態別の降雨流出構造を説明するための説明図である。
【図7】細分メッシュの流下モデルの構造を説明するため説明図である。
【図8】図7における不飽和流について説明するための説明図である。
【図9】図7における飽和流について説明するための説明図である。
【図10】図7における地表面流について説明するための説明図である。
【図11】本願発明に係る分布型流出予測システムの概略構成を示したブロック図である。
【図12】図11に示した分布型流出予測システムによる流出予測演算の過程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0127】
100;データ蓄積施設
200;分布型流出予測システム
210;データ取得部
211;レーダ降雨データ取得システム
212;地上降雨データ取得システム
213;気温・風速データ取得システム
214;フィードバック用データ取得システム
220;データベース部
230;データ加工部
231;メッシュ降雨データ作成システム
232;メッシュ蒸発散データ作成システム
240;分布型演算システム部
241;モデルデータ読込モジュール
242;メッシュ降雨データ読込モジュール
243;メッシュ蒸発散量データ読込モジュール
244;分布型モデル演算モジュール
245;フィードバックデータ読込モジュール
246;フィードバック演算モジュール
250;配信システム部
300;流出予測表示端末機
310;受信処理システム
320;流出予測地点特定システム
330;特定地点表示システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ観測手段により測定されたレーダ降雨データ、テレメータ観測手段により測定された地上降雨データ、気象や水路などの実測データ、前記レーダ降雨データ及び地上降雨データや前記実測データに基づいて予測された予測データを通信ネットワークを介して取得するためのデータ取得手段と、
流出予測するエリアをモデル化した流域モデルデータを格納し、前記データ取得手段で取得した前記レーダ降雨データ及び地上降雨データ、実測データ、予測データ及び各部で演算処理された演算データをデータベース化して蓄積することができるデータベース蓄積手段と、
前記データベース蓄積手段から読み出した前記流域モデルデータ、前記レーダ降雨データ及び地上降雨データ、前記予測データに基づいてメッシュ降雨データを生成するメッシュ降雨データ作成手段と、
前記データベース蓄積手段から読み出した前記流域モデルデータ及び所定の実測データに基づいてメッシュ蒸発散データを生成するメッシュ蒸発散データ作成手段と、
前記データベース蓄積手段から読み出した前記流域モデルデータと前記メッシュ降雨データ作成手段で作成されたメッシュ降雨データ並びに前記メッシュ蒸発散データ作成手段で作成された前記メッシュ蒸発散データに基づいて流出予測演算を実行し、前記流出予測するエリアの流出予測結果データを生成する流出予測データ演算処理手段と、
前記流出予測データ演算処理手段で生成された流出予測結果データを通信ネットワークを介して配信することができるデータ配信手段と、を具備し、
前記データベース蓄積手段には、前記流出予測するエリア全体を任意の範囲或いは該エリア内に存在する水路の分岐点や合流点を基にした範囲によって定めた単位エリアで区分し、又、同エリア全体を個々の形と大きさが同じ所定のメッシュで区分すると共に、前記単位エリアと区分された個々のメッシュとを照合して対応付けし、前記単位エリアに対しては通し番号であるエリア番号を付与し、又、各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対しては前記エリア番号と別の番号となるメッシュ番号を付与するとともに、前記対応付けられた単位エリア内で完結する通し番号である演算番号を付与し、更に、前記個々のメッシュに該当する範囲の地下層の構造を、前記メッシュと同じ形状で所定の厚みを持つ複数の地下層が地表下に積重している構造にモデル化したデータを含んだ流域モデルデータを格納し、
前記流出予測データ演算処理手段は、前記流域モデルデータを前記データベース蓄積手段から読み出し、該流域モデルデータに付与されたエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアと該単位エリアを構成するメッシュを識別し、該識別したメッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該メッシュに対応付けられている範囲の流出予測演算を実行し、前記メッシュに対応付けられている範囲が1つのメッシュの大きさに満たないときや前記複数の単位エリアで分割されているときは、当該範囲を前記1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、該置換したメッシュに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする分布型流出予測システム。
【請求項2】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記メッシュに該当する範囲における降雨分布を均一とし、前記地表と該地表直下の地下層を一体化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項1に記載の分布型流出予測システム。
【請求項3】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記地表直下の地下層を、飽和層、不飽和層、土粒層の順に区分し、前記飽和層に流れる水流を飽和流、前記不飽和層に流れる水流を不飽和流、前記地表面を流れる水流を地表面流とし、前記メッシュに該当する範囲における前記メッシュ降雨データと前記メッシュ蒸発散データに応じて前記不飽和流が発生し、前記メッシュ降雨データや前記メッシュ蒸発散データの増加量に応じて前記飽和流や前記地表面流が発生する構造にモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の分布型流出予測システム。
【請求項4】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記メッシュに該当する範囲の土地の利用形態が混在している場合、該当する流域モデルデータを前記土地の利用形態別に土地の利用面積に比例した大きさで区分してモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項1、2又は3に記載の分布型流出予測システム。
【請求項5】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記地表と該地表直下の地下層を一体化する部分と一体化しない部分を区別して前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の分布型流出予測システム。
【請求項6】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアごとに前記流出予測結果データを生成し、該生成した単位エリアごとの流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の分布型流出予測システム。
【請求項7】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュごとに前記流出予測結果データを生成し、該生成した個々のメッシュの流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたこと
を特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の分布型流出予測システム。
【請求項8】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の土地の利用形態別に前記流出予測結果データを生成し、該生成した土地の利用形態別の流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたこと
を特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の分布型流出予測システム。
【請求項9】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の地表下に積重している地下層別に前記流出予測結果データを生成し、該生成した地下層別の流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたこと
を特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8に記載の分布型流出予測システム。
【請求項10】
所定のエリアにおける流出予測演算をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
流出予測するエリア全体を任意の範囲或いは該エリア内に存在する水路の分岐点や合流点を基にした範囲によって定めた単位エリアで区分し、又、同エリア全体を個々の形と大きさが同じ所定のメッシュで区分すると共に、前記単位エリアと区分された個々のメッシュとを照合して対応付けし、前記単位エリアに対しては通し番号であるエリア番号を付与し、又、各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対しては前記エリア番号と別の番号となるメッシュ番号を付与するとともに、前記対応付けられた単位エリア内で完結する通し番号である演算番号を付与し、更に、前記個々のメッシュに該当する範囲の地下層の構造を、前記メッシュと同じ形状で所定の厚みを持つ複数の地下層が地表下に積重している構造にモデル化したデータを含んだ流域モデルデータを取り込むための流域モデルデータ取得手段と、
前記流域モデルデータに基づいて生成されたメッシュ降雨データを取り込むためのメッシュ降雨データ取得手段と、
前記流域モデルデータに基づいて生成されたメッシュ蒸発散データを取り込むためのメッシュ蒸発散データ取得手段と、
前記流域モデルデータ取得手段で取り込んだ流域モデルデータ及び前記メッシュ降雨データ取得手段で取り込んだメッシュ降雨データ並びに前記メッシュ蒸発散データ取得手段で取り込んだメッシュ蒸発散データに基づき、前記流域モデルデータに付与されたエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアと該単位エリアを構成するメッシュを識別し、該識別したメッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該メッシュに対応付けられている範囲の流出予測演算を実行し、前記メッシュに対応付けられている範囲が1つのメッシュの大きさに満たないときや前記複数の単位エリアで分割されているときは、当該範囲を前記1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、該置換したメッシュに基づいて前記流出予測演算を実行して、前記流出予測するエリアの流出予測結果データを生成する流出予測演算手段として機能させるための分布型流出予測プログラム。
【請求項11】
前記流出予測演算手段は、前記メッシュに該当する範囲における降雨分布を均一とし、前記地表と該地表直下の地下層を一体化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項10に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項12】
前記流出予測演算手段は、前記地表直下の地下層を、飽和層、不飽和層、土粒層の順に区分し、前記飽和層に流れる水流を飽和流、前記不飽和層に流れる水流を不飽和流、前記地表面を流れる水流を地表面流とし、前記メッシュに該当する範囲における前記メッシュ降雨データと前記メッシュ蒸発散データに応じて前記不飽和流が発生し、前記メッシュ降雨データや前記メッシュ蒸発散データの増加量に応じて前記飽和流や前記地表面流が発生する構造にモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項10又は11に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項13】
前記流出予測演算手段は、前記メッシュに該当する範囲の土地の利用形態が混在している場合、該当する流域モデルデータを前記土地の利用形態別に土地の利用面積に比例した大きさで区分してモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項10、11又は12に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項14】
前記流出予測演算手段は、前記地表と該地表直下の地下層を一体化する部分と一体化しない部分を区別して前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項10、11、12又は13に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項15】
前記流出予測演算手段は、前記単位エリアごとに前記流出予測結果データを生成すること
を特徴とする請求項10、11、12、13又は14に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項16】
前記流出予測演算手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュごとに前記流出予測結果データを生成すること
を特徴とする請求項10、11、12、13、14又は15に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項17】
前記流出予測演算手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の土地の利用形態別に前記流出予測結果データを生成すること
を特徴とする請求項10、11、12、13、14、15又は16に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項18】
前記流出予測演算手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の地表下に積重している地下層別に前記流出予測結果データを生成すること
を特徴とする請求項10、11、12、13、14、15、16又は17に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項1】
レーダ観測手段により測定されたレーダ降雨データ、テレメータ観測手段により測定された地上降雨データ、気象や水路などの実測データ、前記レーダ降雨データ及び地上降雨データや前記実測データに基づいて予測された予測データを通信ネットワークを介して取得するためのデータ取得手段と、
流出予測するエリアをモデル化した流域モデルデータを格納し、前記データ取得手段で取得した前記レーダ降雨データ及び地上降雨データ、実測データ、予測データ及び各部で演算処理された演算データをデータベース化して蓄積することができるデータベース蓄積手段と、
前記データベース蓄積手段から読み出した前記流域モデルデータ、前記レーダ降雨データ及び地上降雨データ、前記予測データに基づいてメッシュ降雨データを生成するメッシュ降雨データ作成手段と、
前記データベース蓄積手段から読み出した前記流域モデルデータ及び所定の実測データに基づいてメッシュ蒸発散データを生成するメッシュ蒸発散データ作成手段と、
前記データベース蓄積手段から読み出した前記流域モデルデータと前記メッシュ降雨データ作成手段で作成されたメッシュ降雨データ並びに前記メッシュ蒸発散データ作成手段で作成された前記メッシュ蒸発散データに基づいて流出予測演算を実行し、前記流出予測するエリアの流出予測結果データを生成する流出予測データ演算処理手段と、
前記流出予測データ演算処理手段で生成された流出予測結果データを通信ネットワークを介して配信することができるデータ配信手段と、を具備し、
前記データベース蓄積手段には、前記流出予測するエリア全体を任意の範囲或いは該エリア内に存在する水路の分岐点や合流点を基にした範囲によって定めた単位エリアで区分し、又、同エリア全体を個々の形と大きさが同じ所定のメッシュで区分すると共に、前記単位エリアと区分された個々のメッシュとを照合して対応付けし、前記単位エリアに対しては通し番号であるエリア番号を付与し、又、各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対しては前記エリア番号と別の番号となるメッシュ番号を付与するとともに、前記対応付けられた単位エリア内で完結する通し番号である演算番号を付与し、更に、前記個々のメッシュに該当する範囲の地下層の構造を、前記メッシュと同じ形状で所定の厚みを持つ複数の地下層が地表下に積重している構造にモデル化したデータを含んだ流域モデルデータを格納し、
前記流出予測データ演算処理手段は、前記流域モデルデータを前記データベース蓄積手段から読み出し、該流域モデルデータに付与されたエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアと該単位エリアを構成するメッシュを識別し、該識別したメッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該メッシュに対応付けられている範囲の流出予測演算を実行し、前記メッシュに対応付けられている範囲が1つのメッシュの大きさに満たないときや前記複数の単位エリアで分割されているときは、当該範囲を前記1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、該置換したメッシュに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする分布型流出予測システム。
【請求項2】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記メッシュに該当する範囲における降雨分布を均一とし、前記地表と該地表直下の地下層を一体化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項1に記載の分布型流出予測システム。
【請求項3】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記地表直下の地下層を、飽和層、不飽和層、土粒層の順に区分し、前記飽和層に流れる水流を飽和流、前記不飽和層に流れる水流を不飽和流、前記地表面を流れる水流を地表面流とし、前記メッシュに該当する範囲における前記メッシュ降雨データと前記メッシュ蒸発散データに応じて前記不飽和流が発生し、前記メッシュ降雨データや前記メッシュ蒸発散データの増加量に応じて前記飽和流や前記地表面流が発生する構造にモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の分布型流出予測システム。
【請求項4】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記メッシュに該当する範囲の土地の利用形態が混在している場合、該当する流域モデルデータを前記土地の利用形態別に土地の利用面積に比例した大きさで区分してモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項1、2又は3に記載の分布型流出予測システム。
【請求項5】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記地表と該地表直下の地下層を一体化する部分と一体化しない部分を区別して前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の分布型流出予測システム。
【請求項6】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアごとに前記流出予測結果データを生成し、該生成した単位エリアごとの流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の分布型流出予測システム。
【請求項7】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュごとに前記流出予測結果データを生成し、該生成した個々のメッシュの流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたこと
を特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の分布型流出予測システム。
【請求項8】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の土地の利用形態別に前記流出予測結果データを生成し、該生成した土地の利用形態別の流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたこと
を特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の分布型流出予測システム。
【請求項9】
前記流出予測データ演算処理手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の地表下に積重している地下層別に前記流出予測結果データを生成し、該生成した地下層別の流出予測結果データを前記データベース蓄積手段に蓄積するようにしたこと
を特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8に記載の分布型流出予測システム。
【請求項10】
所定のエリアにおける流出予測演算をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
流出予測するエリア全体を任意の範囲或いは該エリア内に存在する水路の分岐点や合流点を基にした範囲によって定めた単位エリアで区分し、又、同エリア全体を個々の形と大きさが同じ所定のメッシュで区分すると共に、前記単位エリアと区分された個々のメッシュとを照合して対応付けし、前記単位エリアに対しては通し番号であるエリア番号を付与し、又、各単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに対しては前記エリア番号と別の番号となるメッシュ番号を付与するとともに、前記対応付けられた単位エリア内で完結する通し番号である演算番号を付与し、更に、前記個々のメッシュに該当する範囲の地下層の構造を、前記メッシュと同じ形状で所定の厚みを持つ複数の地下層が地表下に積重している構造にモデル化したデータを含んだ流域モデルデータを取り込むための流域モデルデータ取得手段と、
前記流域モデルデータに基づいて生成されたメッシュ降雨データを取り込むためのメッシュ降雨データ取得手段と、
前記流域モデルデータに基づいて生成されたメッシュ蒸発散データを取り込むためのメッシュ蒸発散データ取得手段と、
前記流域モデルデータ取得手段で取り込んだ流域モデルデータ及び前記メッシュ降雨データ取得手段で取り込んだメッシュ降雨データ並びに前記メッシュ蒸発散データ取得手段で取り込んだメッシュ蒸発散データに基づき、前記流域モデルデータに付与されたエリア番号とメッシュ番号によって演算処理する単位エリアと該単位エリアを構成するメッシュを識別し、該識別したメッシュに付与されている演算番号の順序に従って当該メッシュに対応付けられている範囲の流出予測演算を実行し、前記メッシュに対応付けられている範囲が1つのメッシュの大きさに満たないときや前記複数の単位エリアで分割されているときは、当該範囲を前記1つのメッシュの大きさとの比率に応じて縮小した同形のメッシュに置換し、該置換したメッシュに基づいて前記流出予測演算を実行して、前記流出予測するエリアの流出予測結果データを生成する流出予測演算手段として機能させるための分布型流出予測プログラム。
【請求項11】
前記流出予測演算手段は、前記メッシュに該当する範囲における降雨分布を均一とし、前記地表と該地表直下の地下層を一体化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項10に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項12】
前記流出予測演算手段は、前記地表直下の地下層を、飽和層、不飽和層、土粒層の順に区分し、前記飽和層に流れる水流を飽和流、前記不飽和層に流れる水流を不飽和流、前記地表面を流れる水流を地表面流とし、前記メッシュに該当する範囲における前記メッシュ降雨データと前記メッシュ蒸発散データに応じて前記不飽和流が発生し、前記メッシュ降雨データや前記メッシュ蒸発散データの増加量に応じて前記飽和流や前記地表面流が発生する構造にモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項10又は11に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項13】
前記流出予測演算手段は、前記メッシュに該当する範囲の土地の利用形態が混在している場合、該当する流域モデルデータを前記土地の利用形態別に土地の利用面積に比例した大きさで区分してモデル化した前記流域モデルデータに基づいて前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項10、11又は12に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項14】
前記流出予測演算手段は、前記地表と該地表直下の地下層を一体化する部分と一体化しない部分を区別して前記流出予測演算を実行すること
を特徴とする請求項10、11、12又は13に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項15】
前記流出予測演算手段は、前記単位エリアごとに前記流出予測結果データを生成すること
を特徴とする請求項10、11、12、13又は14に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項16】
前記流出予測演算手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュごとに前記流出予測結果データを生成すること
を特徴とする請求項10、11、12、13、14又は15に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項17】
前記流出予測演算手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の土地の利用形態別に前記流出予測結果データを生成すること
を特徴とする請求項10、11、12、13、14、15又は16に記載の分布型流出予測プログラム。
【請求項18】
前記流出予測演算手段は、前記単位エリアに対応付けられた個々のメッシュに該当する範囲の地表下に積重している地下層別に前記流出予測結果データを生成すること
を特徴とする請求項10、11、12、13、14、15、16又は17に記載の分布型流出予測プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−184206(P2006−184206A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380231(P2004−380231)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(595076592)三井共同建設コンサルタント株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(595076592)三井共同建設コンサルタント株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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