説明

分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法

【課題】スプリングバックによる巻緩みを矯正可能な分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法の提供。
【解決手段】平角導体Dを九十九折状にエッジワイズ曲げ加工して九十九折部材Cを形成し、九十九折部材Cを複数重ねてコイルサブアシーCSaを形成し、コイルサブアシーCSaを渦巻状に巻いてコイルアシーSaを形成する、分布巻きコイルを用いた固定子100の製造方法において、コイルアシーSaの内径を、内径ガイド部m541で内径規定寸法に規制し、コイルアシーSaの有するティース挿入孔121へ、コイルアシーSaの内周側から内矢m532を挿入し、コイルアシーSaの外周に配置する第1外径巻絞装置M51及び第1外矢機構M52により、コイルアシーSaの外周を周方向に移動させ、ティース挿入孔121へ、コイルアシーSaの外周側から外矢m511及び外矢m513を挿入して位置決めし、コイルアシーSaを整形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法に関するものであり、詳しくは九十九折り形状に曲げ加工した平角導線を重ねて渦巻き状に丸めたコイルの位置ズレを修正し、固定子コア挿入可能な状態に整形する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に鑑みて自動車に駆動用のモータを搭載するケースが多くなってきている。車載される駆動用のモータは、車両を動かす為に大出力でかつ車載されるために省スペースであることが望ましい。特にハイブリッド車はエンジンとモータをエンジンルームの中に納める必要があるため、小型化の要請が高い。モータの出力を向上させるためにはモータに用いるコイルの断面積を増やし、固定子の占積率を高める方法が模索されている。一方、モータの小型化に関しては様々なアプローチで小型化が検討されている。ただ、固定子やモータの小型化や高出力化によって、固定子の製造も困難性が増すと考えられる。
【0003】
特許文献1には、インナーロータ型回転電機の分割コア型ステータの組み立て方法について開示されている。分割コアのティースを、円環状に配置した分布巻きコイルの外周部に放射状に配置し、分布巻きコイルのスロット収容導体部を導体案内矢羽根により周方向所定位置に保持した状態で、分割コアを求心方向に移動させる。それと同時にスロット収容導体部を求心方向に移動させる。これにより、分割コアを分布巻きコイル外周側から挿入する際に、スロット収容導体部の絶縁被覆を分割コアが接触することで損傷するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−254137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術を適用して分布巻きのコイルを形成するにあたっては、以下に説明する課題があると考えられる。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、分布巻きコイルが円筒状に形成された後、分割コアを求心方向に挿入する際に、導体案内矢羽根を用いてスロット収容導体部のバラツキを抑えている。しかし、出願人が確認した限り導体案内矢羽根をティース挿入孔に挿入するには、少なくとも円筒状の分布巻きコイルの外周側からティース挿入孔を介して中心が見える程度には揃っている必要がある。しかし、分布巻きコイルを円筒状に形成する際には、コイルに用いた平角導体のスプリングバックの影響を受けるので、導体案内矢羽根を挿入するために分布巻きコイルを調整する工程を必要すると考えられる。
【0007】
特に、固定子の出力の向上を狙って分布巻きコイルの層数を増やし、コイルの巻回数を稼ぐ必要がある場合には、導体案内矢羽根を挿入する作業は難しくなると考えられる。また、固定子の小型化にあたっても作業性は悪化し、導体案内矢羽根で分布巻きコイルのティース挿入孔を揃えることは更に困難になると予想される。実際に、出願人の試作段階においては、固定子コアの挿入にあたって分布巻きコイルを揃えるのに人手で、導体案内矢羽根に類する物をティース挿入孔に挿入するという勘に頼った作業で組み付けていた。しかし、量産するにあたっては、円筒状に形成した分布巻きコイルへ固定子コアを挿入する作業も自動化を図ることを切望されている。
【0008】
そこで、本発明はこのような課題を解決するために、スプリングバックによる巻緩みを矯正可能な分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法の提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法は以下のような特徴を有する。
【0010】
(1)平角導体を九十九折状にエッジワイズ曲げ加工し九十九折部材を形成し、前記九十九折部材を複数重ねてコイルサブアシーを形成し、前記コイルサブアシーを渦巻状に巻いてコイルアシーを形成する、分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法において、前記コイルアシーの内径を、内径ガイドで内径規定寸法に規制し、前記コイルアシーの有するティース挿入孔へ、前記コイルアシーの内周側から内矢を挿入し、前記コイルアシーの外周に配置する外径巻き絞り装置により、前記コイルアシーの外周を周方向に移動させ、前記ティース挿入孔へ、前記コイルアシーの外周側から外矢を挿入して位置決めし、コイルアシーを整形すること、を特徴とする。
【0011】
(2)(1)に記載の分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法において、前記内矢は、前記外矢が挿入される前記ティース挿入孔に挿入されること、を特徴とする。
【0012】
(3)(1)又は(2)に記載の分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法において、前記外径巻き絞り装置は対角に位置するよう2つ設けられること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このような特徴を有する本発明の一態様による分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法により、以下のような作用、効果が得られる。
【0014】
上記(1)に記載の態様により、平角導体を九十九折状にエッジワイズ曲げ加工し九十九折部材を形成し、九十九折部材を複数重ねてコイルサブアシーを形成し、コイルサブアシーを渦巻状に巻いてコイルアシーを形成する、分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法において、コイルアシーの内径を、内径ガイドで内径規定寸法に規制し、コイルアシーの有するティース挿入孔へ、コイルアシーの内周側から内矢を挿入し、コイルアシーの外周に配置する外径巻き絞り装置により、コイルアシーの外周を周方向に移動させ、ティース挿入孔へ、コイルアシーの外周側から外矢を挿入して位置決めし、コイルアシーを整形するものである。
【0015】
平角導体を九十九折状にエッジワイズ曲げ加工した九十九折部材を用いたコイルサブアシーは、コイルサブアシーを渦巻状に巻いた際には、巻ズレなどが発生して内径側は規定寸法より小さく、外径側は規定寸法より大きくなる傾向にある。これは、平角導体を曲げ加工して成形しているのでスプリングバック等の影響によると考えられる。この結果、課題に示したように外矢をティース挿入孔に挿入することは困難になる。このため、まず内径を内径ガイドで押し広げた後、内矢を挿入して内径側がズレ無いようにしてから、外径巻き絞り装置を用いて巻き絞っていくことで、ティース挿入孔のズレを矯正する。
【0016】
そして、ティース挿入孔の左右に配置されるコイルアシーのスロット内挿入部分が、所定のバラツキに抑えられた状況で、外矢を挿入してコイルアシーが解けない状態とし、この状態で固定子コアを外周側から挿入することで、固定子コアの挿入をスムーズに行う事が可能となる。この結果、スプリングバックによる巻緩みを矯正可能な分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法を提供でき、固定子製造工程における固定子コア自動組み付けが実現できる。
【0017】
また、上記(2)に記載の態様により、(1)に記載の分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法において、内矢は、外矢が挿入されるティース挿入孔に挿入されるものである。内矢が先に挿入されていることで、内矢が挿入されているティース挿入孔では、他のティース挿入孔に比べてズレが少ないことが出願人の実験で確認されている。このため、外矢をティース挿入孔に挿入することで、合理的にズレの矯正が行え、この結果、固定子コアでコイルの絶縁被覆を剥離するリスクを軽減することが可能になる。
【0018】
また、上記(3)に記載の態様により、(1)又は(2)に記載の分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法において、外径巻き絞り装置は対角に位置するよう2つ設けられたものである。出願人の実験によって外径巻き絞り装置は対角に2つ配置した状態で適切な巻き絞りが可能であることが判明しており、また、外矢をティース挿入孔に挿入する上でも、外径巻き絞り装置の数が少ない方が望ましい。また、対角に外径巻き絞り装置を配置することで、均等にコイルアシーを巻き絞ることが期待出来る。この結果、分布巻きコイルを用いた固定子の製造に関して、生産工程の自動化に貢献することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態の、固定子の斜視図である。
【図2】本実施形態の、コイル籠の斜視図である。
【図3】本実施形態の、コイル籠に分割コアを挿入する様子の斜視図である。
【図4】本実施形態の、部材束の斜視図である。
【図5】本実施形態の、コイルサブアシーの平面図である。
【図6】本実施形態の、コイルサブアシーの側面図である。
【図7】本実施形態の、コイルサブアシー整形機の平面図である。
【図8】本実施形態の、コイルサブアシー整形機の側面図である。
【図9】本実施形態の、コイルアシー整形機の斜視図である。
【図10】本実施形態の、コイルアシー整形機の平面図である。
【図11】本実施形態の、コイルアシー整形機の内矢駆動機構の模式平面図である。
【図12】本実施形態の、コイルアシー整形機の内径保持機構の模式平面図である。
【図13】本実施形態の、ティース挿入孔が揃った状態のコイルアシーの断面図である。
【図14】本実施形態の、ティース挿入孔が揃っていない状態のコイルアシーの断面図である。
【図15】本実施形態の、コイルアシーの断面の拡大図である。
【図16】本実施形態の、コイルアシーに内矢を挿入した様子の断面図である。
【図17】本実施形態の、コイルアシーに外矢を挿入する様子の断面図である。
【図18】本実施形態の、固定子の形成工程に関するフローである。
【図19】本実施形態の、コイルアシー整形機の動作フローである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
図1に、本実施形態の固定子100の斜視図を示す。図2に、コイル籠120の斜視図を示す。図3に、コイル籠120に分割コア111を挿入する様子を斜視図に示す。固定子100及びコイル籠120は部分的に簡略化して描かれている。固定子100は、図1に示すように固定子コア110及びコイル籠120を備え、固定子コア110の周囲にはアウターリング130を備えている。固定子コア110は複数の分割コア111からなる略円筒形状のものであり、分割コア111はプレス加工等によって所定の形状に形成された電磁鋼板が積層されて形成されている。分割コア111には図3に示すように、ティース115が備えられ、隣り合うティース115の間にはスロット116が形成される。
【0022】
分割コア111を円筒形に並べて形成される固定子コア110は、内周側にティース115が突出するように有している状態となる。ティース115は48本用意され、スロット116もティース115と同数用意されている。したがって、分割コア111は24個が用意される。この分割コア111に挿入されるコイル籠120は、図2に示すように、外周方向に放射状にティース挿入孔121が設けられている。ティース挿入孔121は分割コア111に備えられるティース115が挿入される部分であり、隣り合うスロット内導線部122の間に配置される。
【0023】
図4に、部材束CSの斜視図を示す。部材束CSは6本の九十九折部材Cが重ねられて形成される。第1九十九折部材C1乃至第6九十九折部材C6は何れも同じ形状に、平角導体Dがエッジワイズ曲げ加工して形成されている。平角導体Dは矩形断面を有する銅材等の導電性の高い金属よりなり、その周囲にはエナメル等の絶縁性の高い樹脂によって絶縁被覆されている。この平角導体Dを図4に示される様に九十九折状にエッジワイズ曲げ加工することで、九十九折部材Cが形成される。
【0024】
九十九折部材Cは図4に示される様に、第1九十九折部材C1乃至第6九十九折部材C6が単純に重ねられて部材束CSは形成される。図5に、コイルサブアシーCSaの平面図を示す。図6に、コイルサブアシーCSaの側面図を示す。コイルサブアシーCSaは、図5及び図6に示される様に、渦巻き状に丸めて形成された部材束CSである。部材束CSは渦巻き状に丸められた後、後述するコイルサブアシー整形機M10に整形されて図5及び図6に示すコイルサブアシーCSaの形状となるので、内周端部CS1と外周端部CS2を有する。
【0025】
渦巻き状に形成されたコイルサブアシーCSaは8つ用意されて重ねられ、コイルアシーSaが形成される。そして、コイルアシーSaのコイルエンドを加工し、図2に示す状態のコイル籠120を形成する。その後、分割コア111をコイル籠120の外周から挿入し、その外周にアウターリング130を嵌め込んで固定子100とする。
【0026】
次に、コイルサブアシー整形機M10の説明を行う。図7に、コイルサブアシー整形機M10の平面図を示す。図8に、コイルサブアシー整形機M10の側面図を示す。なお、図7及び図8で示すコイルサブアシー整形機M10はテスト治具であるが、生産ラインに用いるものと構成は同様であるため、構造の単純なテスト治具を用いて説明を行う。コイルサブアシー整形機M10は、ベースM17に内径固定ガイドM11とスライドガイドM12を2つ、内径ガイド用シリンダM13と、シリンダに接続されるリンクシャフトM14と、端部押圧ガイド用シリンダM15と、端部押圧ガイドM16と、ズレ止メ突起M18と、を備えている。
【0027】
ベースM17は上段ベースM17aと下段ベースM17bとが複数のポストM17cで連結して構成されており、上段ベースM17aにはコイルサブアシーCSaが配置され、下段ベースM17bには駆動機構である内径ガイド用シリンダM13と端部押圧ガイド用シリンダM15とが配置されている。内径固定ガイドM11は、コイルサブアシーCSaの内周端付近の内径を支持するガイドであり、内径固定ガイドM11の外周面でコイルサブアシーCSaが内径側に変形しないように保持する機能を有している。
【0028】
スライドガイドM12は、コイルサブアシーCSaの中央辺りの内径を支持するガイドであり、スライドガイドM12は内径ガイド用シリンダM13がリンクシャフトM14でリンクされていて、スライドガイドM12はコイルサブアシーCSaの外径側に移動する機能を有している。内径ガイド用シリンダM13の前進端でスライドガイドM12は内径側に後退し、内径ガイド用シリンダM13の後退端でスライドガイドM12は外径側に前進する。スライドガイドM12の外周面でコイルサブアシーCSaの内周面を支持する。
【0029】
端部押圧ガイドM16は、端部押圧ガイド用シリンダM15に接続されており、端部押圧ガイド用シリンダM15の前進端でコイルサブアシーCSaの外周側端部を押圧する位置に配置されている。ズレ止メ突起M18には突起部分M18aが備えられ、コイルサブアシーCSaの移動を規制している。コイルサブアシーCSaは図6に示すように下面側凹部CSa1を有しており、この下面側凹部CSa1はティース挿入孔121の幅と同等である。この下面側凹部CSa1にズレ止メ突起M18の突起部分M18aを挿入することで、ズレ止めとして機能する。
【0030】
次に、コイルアシー整形機M50の説明を行う。図9に、コイルアシー整形機M50の斜視図を示す。図10に、コイルアシー整形機M50の平面図を示す。なお、コイルアシー整形機M50についても、構造の簡単なテスト機を用いて説明を行うが、実際の製造ラインでも同等の構成の装置が用いられる。コイルアシー整形機M50は、第1外径巻絞装置M51と、第1外矢機構M52と、第2外矢機構M53と、第3外矢機構M54と、第2外径巻絞装置M55と、第4外矢機構M56と、第5外矢機構M57と、第6外矢機構M58と、第1内矢機構M59と、第2内矢機構M60とをベースM65上に有している。昇降機M63は、コイルアシーSaを上面に配置する部材でベースM65に配置される。なお、M63はコイルサブアシーCSaを組み付ける機能も有しているが説明については割愛する。昇降機M63の中央には第1内矢機構M59、第2内矢機構M60、第1内径ガイドM61及び第2内径ガイドM62が配置される。
【0031】
第1外径巻絞装置M51及び第2外径巻絞装置M55は対角には位置される同じ構成よりなる装置であり、シリンダm501と、ブラケットm502と、テンショナブラケットm503と、押し付け用プーリーm504と、サブプーリーm505と、メインプーリーm506と、タイミングベルトm507とを有する。メインプーリーm506とサブプーリーm505はテンショナブラケットm503に取り付けられて、ブラケットm502に取り付けられた押し付け用プーリーm504とで、タイミングベルトm507を支持しており、テンショナブラケットm503を移動させることでタイミングベルトm507のテンションを調整する。具体的には、コイルアシーSaの外周に沿うように若干緩めのテンションに調整されている。
【0032】
シリンダm501にはブラケットm502が取り付けられており、シリンダm501の前進端でタイミングベルトm507がコイルアシーSaの外表面に押し付けられ、シリンダm501の後退端でタイミングベルトm507は退避位置に配置される。
【0033】
第1外矢機構M52及び第4外矢機構M56は対角に配置される同様の構成よりなる装置であり、シリンダm512と外矢m511よりなる。第2外矢機構M53と第5外矢機構M57、第3外矢機構M54と第6外矢機構M58もそれぞれ対角に配置され、外矢m513とシリンダm512よりなる。シリンダm512の前進端で、外矢m511及び外矢m513はコイルアシーSaのティース挿入孔121に挿入される位置に移動し、シリンダm512の後退端で、外矢m511及び外矢m513はコイルアシーSaの外周面より外側に退避する位置に移動する。
【0034】
図11に、コイルアシー整形機M50の内矢駆動機構の模式平面図を示す。コイルアシー整形機M50に配置されるコイルアシーSaの内側には、第1内矢機構M59及び第2内矢機構M60が配置される。第1内矢機構M59と第2内矢機構M60とは、同様の構造で隣り合わせに配置されており、それぞれシリンダm531と内矢m532とを有する。第1内矢機構M59の有する内矢m532と第2内矢機構M60の有する内矢m532とは反対方向に突出するようにシリンダm531が備えられ、シリンダm531に対して内矢m532が取り付けられている。
【0035】
図12に、コイルアシー整形機M50の内径保持機構の模式平面図を示す。第1内矢機構M59と第2内矢機構M60の下部には第1内径ガイドM61と第2内径ガイドM62が配置されている。第1内径ガイドM61と第2内径ガイドM62にはそれぞれ内径ガイド部m541と突起部m542が備えられている。内径ガイド部m541は図示しないチャックシリンダに取り付けられて、第1内径ガイドM61と第2内径ガイドM62とがお互いに離れるように、前進し近接し合う様に後退する。内径ガイド部m541の前進端では、コイルアシーSaの内径の規定位置、即ちコイル籠120の内径となる位置まで内径ガイド部m541の外周面が移動する。内径ガイド部m541の後退端ではコイルアシーSaの内径と干渉しない位置に退避することが可能である。
【0036】
内径ガイド部m541の外周面に突出するように設けられる突起部m542は、コイルアシーSaの内周側からティース挿入孔121に挿入される。突起部m542の先端形状は、ティース挿入孔121に挿入された際に、スロット内導線部122の2層分、すなわち平角導体Dの2本分の幅だけ直線に形成されその先端が面取りされて形成されている。これは、スロット内導線部122の一部に先端が引っかかり、ティース挿入孔121への突起部m542の挿入をスムーズにする狙いがある。
【0037】
本実施形態の固定子100に用いるコイル籠120の組み付け方法について、次に説明する。
【0038】
まず、固定子100の形成工程について、フローを用いて簡単に説明する。図18に、固定子100の形成工程に関するフローを示す。まずS1で、「九十九折部材の形成」を行う。平角導体Dを用いて九十九折部材Cを形成する。平角導体Dはエッジワイズ曲げ加工機によって九十九折り状に折り曲げられる。そしてS2で、「部材束の形成」を行う。具体的には、九十九折部材Cを1つずつずらして6本、図4の様に重ねる。ずらし量は固定子コア110のティース115が挟まる幅に決定される。そしてS3で、「コイルサブアシーの形成」を行う。コイルサブアシーCSaは、図示しない形成機によって渦巻き状に巻き癖がつく様に曲げられる。その後、コイルサブアシー整形機M10によってコイルサブアシーCSaの形状の整形が行われる。コイルサブアシー整形機M10での整形については後述する。
【0039】
そしてS4で、「コイルサブアシーの組み付け」を行う。コイルサブアシーCSaを8組重ねることで、コイルアシーSaを形成する。そしてS5で、「コイルアシー整列」を行う。コイルアシーSaの整列はコイルアシー整形機M50を用いて行われ、コイルアシーSaの有するティース挿入孔121に分割コア111のティース115が挿入できるように九十九折部材Cを揃える。そしてS6で、「コイル籠に固定子コアを挿入」する。ここで言うコイル籠120は整列されたコイルアシーSaであり、図2に示すコイル籠120とは若干コイルエンドの処理が異なる。そしてS7で、「固定子コアの外周に外筒を嵌合」する。分割コア111が略円筒状になるようにコイル籠120の周囲から挿入された後、これを保持するためにアウターリング130が焼きバメされる。
【0040】
こうして固定子100は形成される。なお、厳密に言うと、コイルアシーSaからコイル籠120の形状とするために、コイルアシーSaのコイルエンドに突出するリード部を外側に曲げ、溶接する工程や、溶接部を保護するために粉体塗装などを用いて絶縁被覆する工程、コイルエンドのリード部に図示しない外部出力用の端子を取り付ける工程などを必要とする。しかし、本発明の本質には直接関係しないので、ここでは説明を省略する。
【0041】
次に、コイルサブアシー整形機M10でのコイルサブアシーCSaの形成過程について説明する。コイルサブアシーCSaは図4に示された九十九折部材Cを6枚ずらして重ねて形成される部材束CSを図5及び図6に示すように渦巻き状に丸められたものである。ただし、部材束CSを単純に渦巻き状に丸めた段階では、形成によるバラツキやスプリングバックによって綺麗にまとまっていない。このため、図7に示されるコイルサブアシー整形機M10を用いて癖を付けることで、所定の形状のコイルサブアシーCSaを得ることが可能となる。
【0042】
まず、ロボットなどを用いてコイルサブアシーCSaを、図7に示すように、コイルサブアシー整形機M10上に仮置きする。この際に、コイルサブアシー整形機M10上に固定されたズレ止メ突起M18に、コイルサブアシーCSaの下面側凹部CSa1を挿入するように配置する。これによって、コイルサブアシーCSaの内周端付近と外周端付近に形成される下面側凹部CSa1がズレ止メ突起M18の凸部と係合することになる。この状態で、コイルサブアシー整形機M10上にコイルサブアシーCSaが大体の位置で配置されることになる。
【0043】
そして、次に内径ガイド用シリンダM13を動かすことで、スライドガイドM12によってコイルサブアシーCSaの内周を押し広げ、スライドガイドM12が所定の位置で停止した状況で、コイルサブアシーCSaはスライドガイドM12の外周面と内径固定ガイドM11の外周面で固定され、コイルサブアシーCSaは所定の位置に所定の大きさで保持される結果となる。そして、次に、端部押圧ガイド用シリンダM15を動かすことで、端部押圧ガイドM16によって、コイルサブアシーCSaの外周端を押圧し、コイルサブアシーCSaの形状を整える。
【0044】
次に、コイルアシー整形機M50でのコイルアシーSaの整形過程について説明する。図19に、コイルアシー整形機M50の動作フローを示す。まずS10で、「コイルアシーの配置」を行う。コイルアシーSaをコイルアシー整形機M50の昇降機M63上に配置する。配置されるコイルアシーSaは図5に示す8つ組み付けたものであり、九十九折部材Cを48セット用いたものである。この際のコイルアシーSaは、コイルアシーSaのティース挿入孔121は揃っておらず、コイルアシーSaの内径は規定寸法よりも小さく、コイルアシーSaの外径は規定寸法よりも大きくなっている状態である。
【0045】
次にS11で、「内矢挿入」を行う。昇降機M63の上に配置されたコイルアシーSaに、図11に示すように第1内矢機構M59及び第2内矢機構M60の有する内矢m532をコイルアシーSaの内周側からティース挿入孔121に挿入する。この際に、内矢m532の挿入深さは、スロット内導線部122の途中までとなっている。そしてS12で、「内径拡張」を行う。第1内径ガイドM61及び第2内径ガイドM62の内径ガイド部m541が図12に示すように所定の位置まで移動することで、内径ガイド部m541の外周面がコイルアシーSaの内径を拡大し、コイルアシーSaの内径を内径規定寸法とする。
【0046】
次にS13で、「外径巻絞装置前進」を行う。図10に示される第1外径巻絞装置M51及び第2外径巻絞装置M55をコイルアシーSaの中心方向に前進させる。第1外径巻絞装置M51及び第2外径巻絞装置M55は、進行方向先端にタイミングベルトm507を有しており、コイルアシーSaの外周面にタイミングベルトm507を密着させる。第1外径巻絞装置M51及び第2外径巻絞装置M55の前進にはコイルアシーSaの外形寸法を規定寸法になるように縮小させる目的もある。
【0047】
次にS14で、「コイル巻き絞り」を行う。第1外径巻絞装置M51及び第2外径巻絞装置M55の有するメインプーリーm506を回転させて、タイミングベルトm507を動かすことで、コイルアシーSaの外径の巻き絞りを開始する。そして、メインプーリーm506が所定の角度回転することで、コイルアシーSaは巻き絞られ、結果的にコイルアシーSaの外形寸法が外径規定寸法となる。
【0048】
次にS15で、「第1、第4外矢挿入」を行う。コイルアシーSaが第1外径巻絞装置M51及び第2外径巻絞装置M55によって巻き絞られた状況で、コイルアシーSaの有するティース挿入孔121は、外矢m511及び外矢m513を挿入させる程度には揃っている。このため、第1外矢機構M52及び第4外矢機構M56を前進させて、それぞれの有する外矢m511をコイルアシーSaの有するティース挿入孔121に挿入することが出来る。外矢m511は内矢m532と同じ位置、コイルアシーSaの0度位相位置に挿入されるが、外矢m511と内矢m532は高さ方向でかわしているので、お互いに干渉しない。
【0049】
次にS16で、「外径巻絞装置が退避」する。第1外径巻絞装置M51と第2外径巻絞装置M55を退避させることで、コイルアシーSaの外表面はフリーな状態となる。ただし、既に外矢m511が挿入され終わった後なので、コイルアシーSaが緩むようなことはない。次にS17で、「第2、第5外矢挿入」が行われる。第2外矢機構M53、第5外矢機構M57を前進させて、コイルアシーSaの45度位相位置にあるティース挿入孔121に外矢m513を挿入する。
【0050】
次にS18で、「第3、第6外矢挿入」が行われる。第3外矢機構M54及び第6外矢機構M58を前進させて、コイルアシーSaの90度位相位置にあるティース挿入孔121に外矢m513を挿入する。なお、外矢m513に関しても、内径ガイド部m541との干渉はしないように設計されている。こうしてコイルアシーSaのティース挿入孔121を揃えて、次工程にコイルアシーSaが搬送される。そして、コイルアシーSaにガイドが挿入された後に分割コア111がコイルアシーSaに挿入されて固定子100を形成する。
【0051】
本実施形態は上記に説明したような構成であるので、以下に説明するような作用及び効果を奏する。
【0052】
まず、効果として分布巻きコイルを用いた固定子100の製造に関して、生産工程の自動化を図ることができる点が挙げられる。課題でも示したが、平角導体Dをエッジワイズ曲げ加工して形成した九十九折部材Cは曲げ加工という加工の特性上、スプリングバックの影響が残りやすく、形状精度を出すことが難しい。そこで、本発明では平角導体Dを九十九折状にエッジワイズ曲げ加工して九十九折部材Cを形成し、九十九折部材Cを複数重ねてコイルサブアシーCSaを形成し、コイルサブアシーCSaを渦巻状に巻いてコイルアシーSaを形成する、分布巻きコイルを用いた固定子100の製造方法において、コイルアシーSaの内径を、内径ガイド部m541で内径規定寸法に規制し、コイルアシーSaの有するティース挿入孔121へ、コイルアシーSaの内周側から内矢m532を挿入し、コイルアシーSaの外周に配置する第1外径巻絞装置M51及び第1外矢機構M52により、コイルアシーSaの外周を周方向に移動させ、ティース挿入孔121へ、コイルアシーSaの外周側から外矢m511及び外矢m513を挿入して位置決めし、コイルアシーSaを整形するという手法を採っている。
【0053】
図13に、ティース挿入孔121が揃った状態のコイルアシーSaの断面図を示す。図14に、ティース挿入孔121が揃っていない状態のコイルアシーSaの断面図を示す。図15に、コイルアシーSaの断面の拡大図を示す。なお、図14は模式的に示したコイルアシーSaは、フリーの状態ではスプリングバックの影響を受けて、外径方向及び内径方向に平角導体Dが広がっているが、説明のため、コイルアシーSaの内径側と外径側をそれぞれ内径ガイド部m541とタイミングベルトm507とで加圧された状態として描かれている。このスプリングバックは、平角導体Dを九十九折部材Cにエッジワイズ曲げ加工した際、或いは九十九折部材Cを部材束CSとし、渦巻き状に曲げてコイルサブアシーCSaの形状とした際に、材料内に蓄積された歪みによるものであると考えられる。
【0054】
コイルアシーSaは、図9に示すようにコイルアシー整形機M50上で内径ガイド部m541とタイミングベルトm507で保持された状態でも、図14に示される様にスロット内導線部122を構成する平角導体Dがずれている状態となっている。これは、コイルアシーSaに前述したスプリングバックが発生している為と考えられる。この状態では課題で指摘した通り外矢m513を挿入することは困難である。
【0055】
外矢m513をティース挿入孔121に挿入することが困難である理由は、図15に示すように外矢m513を挿入するにあたって許容される寸法は、寸法a程度である為である。寸法aは、実験的にティース挿入孔121の幅の1/4から1/3程度であることを確認されている。外矢m511は、外矢m513に比較して先端が細くなっているため若干この寸法aの許容幅が増える傾向にはあるが、図14に示すコイルアシーSaのような状態では挿入は難しい。
【0056】
図16に、コイルアシーSaに内矢m532を挿入した様子の断面図を示す。図17に、コイルアシーSaに外矢m511又は外矢m513を挿入する様子の断面図を示す。本発明ではコイルアシー整形機M50に備える内径ガイド部m541で内径を規定寸法となるように拡大した後、内矢m532を所定の位置まで挿入する。その後、第1外径巻絞装置M51及び第2外径巻絞装置M55のタイミングベルトm507により外径を巻き絞ることで、コイルアシーSaの外側の平角導体Dが動き、図17の状態にすることができる。この図17の状態のコイルアシーSaのティース挿入孔121における平角導体Dのズレは、図15に示す寸法aの範囲内に納められるので、外矢m511及び外矢m513をコイルアシーSaの外周側から挿入することができる。
【0057】
外矢m511を、内矢m532と同じティース挿入孔121に最初に挿入してコイルアシーSaの有するスロット内導線部122を揃えた後、外矢m513を順次挿入する。こうすることで、コイルアシーSaの全てのティース挿入孔121を揃えることが可能となる。こうして揃えられたコイルアシーSaは、次工程に運ばれて分割コア111を挿入するために更に図示しない外矢を挿入してガイドし、分割コア111を挿入することで固定子100を形成することが可能となる。
【0058】
なお、挿入する外矢m511及び外矢m513の本数が合計6本であるのは、部材束CSが九十九折部材Cを6つ重ねて形成されていることと関連する。部材束CSは九十九折部材Cが6つ重ねられて、1ピッチが1スロットの幅に相当することとすると、第1九十九折部材C1の形状は、スロット内導線部122は1スロット目の手前で立ち上がったとすると、6スロット目の次で立ち下がり、12スロット目の次で立ち上げられるパターンが繰り返される。すなわち、6スロット毎に外矢m511又は外矢m513が挿入されることで、第1九十九折部材C1のスロット内導線部122は必ず外矢m511又は外矢m513に接して支えられることとなる。
【0059】
外矢m511及び外矢m513について、図16を用いて説明すれば、コイルアシーSaの1スロット目に第1外矢機構M52の外矢m511が挿入され、この位置が位相0度である。次に第2外矢機構M53の外矢m513が位相45度の7スロット目に挿入され、第3外矢機構M54の外矢m513が位相90度の13スロット目に挿入される。第4外矢機構M56の外矢m511は位相180度の25スロット目に挿入され、第5外矢機構M57の外矢m513は位相225度の31スロット目に挿入され、第6外矢機構M58の外矢m513は位相270度の37スロット目に挿入される。こうして第1九十九折部材C1の位置が規定されることで、第2九十九折部材C2乃至第6九十九折部材C6に関しても、第1九十九折部材C1と接していることで位置が規定される。
【0060】
出願人は、第1外径巻絞装置M51及び第2外径巻絞装置M55の接する部分を除いた24スロット全てに外矢m513を挿入した場合と、外矢m511及び外矢m513の合計6本を用いた場合と比較したが、ほぼ同様の効果が得られた。これは上記に説明する理屈で位置が決定されるためだと考えられ、6本より本数を減らした場合には位置ズレ量が規定範囲内に収まらなかった。したがって、本実施形態に示したように外矢m511及び外矢m513の合計6本を用いることで、コイルアシーSaの整形が規定範囲内で行う事が出来ることが確認できた。
【0061】
課題にも示したが、コイルアシー整形機M50を用いてコイルアシーSaのスロット内導線部122を放射線上に揃える作業は従来、作業者の経験と勘に依存した手作業で行われていた。このため、非常に作業効率が悪く、作業者のスキルによって仕上がりにバラツキが出たり平角導体Dの外周を覆う絶縁被覆を傷つけたりといった不具合が生じる虞もあった。しかしながら、本発明によりコイルアシーSaの整形について自動化の手法を得ることで、固定子100の生産を自動化することが可能となり、結果的に固定子100の製造コストを引き下げることに貢献することが出来る。
【0062】
また、第1外径巻絞装置M51と第2外径巻絞装置M55が図9等に示すように対角に設けられている理由は、コイルアシーSaの巻き絞りをするにあたって、適度な力が加えられる配置であることと、外矢m511及び外矢m513を挿入する関係で、外周面に空間を確保する必要があることが理由となる。出願人の実験では第1外径巻絞装置M51と同等な物を4つ用意して巻き絞った場合に比べ、巻き絞り過ぎとならずに図15に示す寸法aに収まることが確認できている。
【0063】
また、第1外径巻絞装置M51等の装置と第1外矢機構M52等の外矢m511とが干渉する位置にある場合、第1外径巻絞装置M51等で巻き絞った後に第1外径巻絞装置M51等を退避させて外矢m511又は外矢m513を挿入する必要があるため、リードタイムが長くなる。第1外径巻絞装置M51と第2外径巻絞装置M55を対角に用意し、これだけでコイルアシーSaを巻き絞ることが出来れば、第1外径巻絞装置M51及び第2外径巻絞装置M55を退避させることなく第1外径巻絞装置M51及び第4外矢機構M56の外矢m511を挿入することが出来るので、リードタイムの短縮に貢献することも出来る。
【0064】
次に、コイルサブアシー整形機M10を用いることで、部材束CSのスプリングバックの影響を抑え、コイルサブアシーCSaの形成を助けることが可能である点について説明する。コイルサブアシー整形機M10は、部材束CSの形状的な特性を利用して、端部押圧ガイドM16で押圧することで九十九折部材Cの整形を行っている。従来、この部材束CSの整形作業は、コイルサブアシー整形機M10に比べて高価な機器を用いて数秒かけて行われていた。しかしながら、コイルサブアシー整形機M10を用いることで、装置のコストを下げ、サイクルタイムも1/4程度に短縮が可能となった。したがって、固定子100のコストダウンに貢献することが出来る。
【0065】
具体的に、部材束CSの形状的な特性について言及する。まず、部材束CSの形状は図4に示すように九十九折部材Cを6枚ずらしながら重ねたものである。このため、図7に示すように、スライドガイドM12でコイルサブアシーCSaを外周側に押すことで範力が得られ、部材束CSを構成する九十九折部材C同士が押し合いをする形でコイルサブアシーCSaの形状が、コイルサブアシー整形機M10の上段ベースM17a上で螺旋形状に安定することとなる。また、部材束CSの内周端部CS1では第1九十九折部材C1の内側への飛び出しを内径固定ガイドM11でガイドしていることで、コイルサブアシーCSaが内側で型崩れすることを防いでいる。
【0066】
また、部材束CSの外周端部CS2では、端部押圧ガイドM16で第1九十九折部材C1乃至第6九十九折部材C6を周方向に押圧することで、コイルサブアシーCSaの形状が安定することになる。なお、ズレ止メ突起M18の突起部分M18aで下面側凹部CSa1に挿入されていることで、端部押圧ガイドM16から生じた力をコイルサブアシーCSaの整列に使う事が可能となっている。
【0067】
こうした構成によって、サイクルタイムの短縮の他にコイルサブアシーCSaの表面とコイルサブアシー整形機M10の部品が直接接触する部分が最小限で抑えられているので、平角導体Dの絶縁被覆を損傷する虞も低減できるメリットがある。
【0068】
また、コイルアシー整形機M50について、内径ガイド部m541の外表面に突起部m542が設けられていることで、コイルアシーSaに対して外径巻き絞りを行う際に内周側のティース挿入孔121がずれることを防止することが出来る。巻き絞りは、コイルアシーSaの外周側に直接力がかけられるが、コイルアシーSaの最外周に接する九十九折部材Cも、直接的に周方向から引っ張られる他に、外周側に配置される九十九折部材Cとの摩擦によっても巻き絞りの影響を受ける。
【0069】
この結果、最内周の九十九折部材Cに関しても径方向に移動する力を受ける。内矢m532が挿入されている状態で巻き絞りの力を受けるものの、最内周側は基準となる必要があるためにずれることは好ましくない。しかしながら、内径ガイド部m541に突起部m542が設けられていることで、内径ガイド部m541と平角導体Dとの摩擦に加えて突起部m542によって移動を規制されるため、内周側の変形を防ぐことが出来る。このような内径ガイド部m541や突起部m542がコイルアシー整形機M50に備えられることで、スロット内導線部122がコイルアシーSaに放射線上に綺麗に配置されることとなり、分割コア111が有するティース115のティース挿入孔121への挿入の妨げになることを防ぐことが出来る。
【0070】
以上、本実施形態に則して発明を説明したが、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。
【0071】
例えば、本実施形態では固定子100は48スロットの物を採用しているが、設計思考によってこれを変更することを妨げない。またこれに伴い、外矢m513の本数や配置位置を変更することを妨げない。また、コイルサブアシー整形機M10やコイルアシー整形機M50等の装置構成に関しても、その趣旨を逸脱しない範囲での変更を妨げない。
【符号の説明】
【0072】
100 固定子
120 コイル籠
121 ティース挿入孔
122 スロット内導線部
130 アウターリング
C 九十九折部材
CS 部材束
CS1 内周端部
CS2 外周端部
CSa コイルサブアシー
CSa1 下面側凹部
D 平角導体
M10 コイルサブアシー整形機
M11 内径固定ガイド
M12 スライドガイド
M16 端部押圧ガイド
M18 ズレ止メ突起
M50 コイルアシー整形機
M51 第1外径巻絞装置
M52 第1外矢機構
M53 第2外矢機構
M54 第3外矢機構
M55 第2外径巻絞装置
M56 第4外矢機構
M57 第5外矢機構
M58 第6外矢機構
M59 第1内矢機構
M60 第2内矢機構
M61 第1内径ガイド
M62 第2内径ガイド
Sa コイルアシー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角導体を九十九折状にエッジワイズ曲げ加工し九十九折部材を形成し、前記九十九折部材を複数重ねてコイルサブアシーを形成し、前記コイルサブアシーを渦巻状に巻いてコイルアシーを形成する、分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法において、
前記コイルアシーの内径を、内径ガイドで内径規定寸法に規制し、
前記コイルアシーの有するティース挿入孔へ、前記コイルアシーの内周側から内矢を挿入し、
前記コイルアシーの外周に配置する外径巻き絞り装置により、前記コイルアシーの外周を周方向に移動させ、
前記ティース挿入孔へ、前記コイルアシーの外周側から外矢を挿入して位置決めし、コイルアシーを整形すること、
を特徴とする分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法において、
前記内矢は、前記外矢が挿入される前記ティース挿入孔に挿入されること、
を特徴とする分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法において、
前記外径巻き絞り装置は対角に位置するよう2つ設けられること、
を特徴とする分布巻きコイルを用いた固定子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−70498(P2013−70498A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206774(P2011−206774)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】