説明

分散剤とその製造方法、および該分散剤を含む組成物

【課題】平均一次粒子径が100nm以下の金属酸化物を分散可能な分散剤を提供することを目的とする。更に詳しくは、ハードコート性、透明性において優れた物性を併せ持つ塗膜を形成可能な、経時安定性のある金属酸化物分散体を含む組成物、及びそれを用いた積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】下記一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する分散剤。 一般式(1)
OOCC(R)C(R)COOR
一般式(2)
OOCC(R)=C(R)COOR
[一般式(1)および(2)において、R1およびR2は、それぞれ独立に1価の有機残基を表す。R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子もしくは1価の有機残基を表す。R3、R4は、それぞれが一体となって環を形成しても良い。R1〜R4のうち少なくとも一つは、ヒドロキシル基を有する。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性、流動性、および保存安定性に優れた金属酸化物分散体を製造することのできる分散剤とその製造方法に関する。さらに、ハードコート性、透明性に優れた塗膜を形成可能な該分散体を含む組成物、および該組成物からなる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報通信機器の性能確保と安全対策の面から、機器の表面に、耐擦傷性、密着性、高屈折率性などを有するハードコート性塗膜や、帯電防止性塗膜を形成することが行われている。これらの機能を発現させるためには無機酸化物を配合すると良好な物性を発現させることができることが知られている。
【0003】
例えば、以下のような技術提案を挙げることができる(特許文献1〜3参照)。特許文献1では、酸化スズなどの導電性粉末と複数のモノマー成分とを有機溶剤中、ボールミルなどを用いて混合し、導電性塗料を作成する方法が開示されている。特許文献2では、アンチモンドープ酸化スズと紫外線硬化性のあるシランカップリング剤とを有機溶剤中、ボールミルを用いて混合し、導電性塗料用の分散体を作成する方法が開示されている。さらに特許文献3では、導電性酸化物微粉末を易分散性低沸点溶剤と難分散性高沸点溶剤の混合溶剤中に分散し、導電性塗料を作成する方法が開示されている。
【0004】
しかし、上記方法により、ハードコート性、帯電防止性などにおいて良好な物性を併せ持つ硬化性組成物を作成することが可能となっても、有機溶剤など疎水性の高い媒体に対して、平均一次粒子径が100nm以下の金属酸化物を安定に、一次粒子レベルで分散および安定化させることはできないため、塗膜の透明性や経時安定性等の観点で問題を生じる。また、一般的に市販されている分散剤[例えば、Disperbyk−111、130、161、162、163、164、165、166、170等(ビッグケミージャパン社製)、Solsperse20000、24000SC、24000GR、28000、32000、21000、36000、41000等(LUBRIZOL社製)、EFKA−44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766等(EFKA社製)等]を使用すると分散性は良好であるが、分散剤自体に架橋性がないためハードコート性に問題を生じる。
【特許文献1】特開平04−172634号公報
【特許文献2】特開平06−264009号公報
【特許文献3】特開2001−131485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、平均一次粒子径が100nm以下の金属酸化物を分散可能な分散剤を提供することを目的とする。さらに詳しくは、ハードコート性、透明性において優れた物性を併せ持つ塗膜を形成可能な、経時安定性のある金属酸化物分散体を含む組成物、およびそれを用いた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する分散剤に関する。
【0007】
一般式(1)
【0008】
【化1】

一般式(2)
【0009】
【化2】

[一般式(1)および(2)において、R1およびR2は、それぞれ独立に1価の有機残基を表す。R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子もしくは1価の有機残基を表す。R3、R4は、それぞれが一体となって環を形成しても良い。R1〜R4のうち少なくとも一つは、ヒドロキシル基を有する。]
【0010】
さらに本発明は、酸無水物基を有する化合物(A)中の酸無水物基と、
酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)中の酸無水物と反応しうる官能基と、を反応させてなるカルボキシル基含有化合物(C)中のカルボキシル基と、さらに、
グリシジル基またはオキセタン基を有する化合物(D)中のグリシジル基またはオキセタン基と、を反応させてなる上記分散剤に関する。
【0011】
さらに本発明は、酸無水物基を有する化合物(A)中の酸無水物基と、
酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)中の酸無水物基と反応しうる官能基と、を反応させてなるカルボキシル基含有化合物(C)中のカルボキシル基と、さらに、
グリシジル基またはオキセタン基を有する化合物(D)中のグリシジル基またはオキセタン基と、を反応させてなるヒドロキシル基含有化合物(E)中のヒドロキシル基と、さらに、
イソシアネート基を有する化合物(F)中のイソシアネート基と、を化合物(E)中のヒドロキシル基に対して0.1〜80mol%の割合で反応させてなる上記分散剤に関する。
【0012】
さらに本発明は、化合物(B)中の酸無水物基に反応しうる官能基が、ヒドロキシル基である上記分散剤に関する。
【0013】
さらに本発明は、化合物(B)が、酸無水物基と反応しうる官能基として、ヒドロキシル基を2つ以上有する、または、グリシジル基を2つ以上有する、または、ヒドロキシル基とアミノ基とを有する化合物であって、
化合物(A)中の酸無水物基に対して、前記酸無水物基と反応しうる官能基の101〜1000mol%を反応してなる上記分散剤に関する。
【0014】
さらに本発明は、平均一次粒子径が5〜100nmの金属酸化物(G)と、上記分散剤とを含む組成物に関する。
【0015】
さらに本発明は、平均一次粒子径が5〜100nmの金属酸化物(G)と、上記分散剤と、硬化剤(H)とを含む組成物に関する。
【0016】
さらに本発明は、酸無水物基を有する化合物(A)と、
酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)と、を反応させてカルボキシル基含有化合物(C)を得る第一の工程、
および、上記カルボキシル基含有化合物(C)と、
グリシジル基またはオキセタン基を有する化合物(D)と、を反応させる第二の工程を含むことを特徴とする分散剤の製造方法に関する。
【0017】
さらに本発明は、酸無水物基を有する化合物(A)と、
酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)と、を反応させてカルボキシル基含有化合物(C)を得る第一の工程、
上記カルボキシル基含有化合物(C)と、
グリシジル基またはオキセタン基を有する化合物(D)と、を反応させてヒドロキシル基含有化合物(E)を得る第二の工程、
および、上記ヒドロキシル基含有化合物(E)と、
イソシアネート基を有する化合物(F)と、を化合物(E)中のヒドロキシル基に対して0.1〜80mol%の割合で反応させる第三の工程を含むことを特徴とする分散剤の製造方法に関する。
【0018】
さらに本発明は、化合物(B)中の酸無水物基に反応しうる官能基が、ヒドロキシル基であることを特徴とする上記分散剤の製造方法に関する。
【0019】
さらに本発明は、化合物(B)が、酸無水物基と反応しうる官能基として、ヒドロキシル基を2つ以上有する、または、グリシジル基を2つ以上有する、または、ヒドロキシル基とアミノ基とを有する化合物であって、
化合物(A)中の酸無水物基に対して、前記酸無水物基と反応しうる官能基の101〜1000mol%を反応することを特徴とする上記分散剤の製造方法に関する。
【0020】
さらに本発明は、上記組成物を基材上に積層してなる積層体に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の分散剤は、平均一次粒子径が100nm以下の金属酸化物を容易に分散でき、経時安定性に優れた金属酸化物分散体を得ることができる。さらに、本発明の分散剤で分散した金属酸化物分散体を含む組成物は、ハードコート性、透明性において優れた物性を併せ持つ塗膜を形成可能であり、プラスチック光学部品、光ディスク、反射防止膜、タッチパネル、フィルム型液晶素子などの積層体として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の、下記一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する分散剤は、顔料、金属酸化物に対して分散剤として良好に機能する。
【0023】
一般式(1)
【0024】
【化3】

一般式(2)
【0025】
【化4】

[一般式(1)および(2)において、R1およびR2は、それぞれ独立に1価の有機残基を表す。R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子もしくは1価の有機残基を表す。R3、R4は、それぞれが一体となって環を形成しても良い。R1〜R4のうち少なくとも一つは、ヒドロキシル基を有する。]
【0026】
特に、金属酸化物に対しての分散性が優れているため、平均一次粒子径が5〜100nmの金属酸化物の分散性を高めることができる。その結果、本発明の組成物は、硬化性に優れ、さらに帯電防止性、ハードコート性、透明性、耐光性、高屈折率性に優れた硬化膜およびその積層体を形成することが可能である。したがって、特にプラスチック光学部品、光ディスク、反射防止膜、タッチパネル、フィルム型液晶素子に好適に使用できるほか、各種プラスチック積層体のハードコート剤としても好適に使用できる。
【0027】
さらに、この組成物は、屈折率の高い硬化膜を形成することができ、これを屈折率が同程度の基材に塗布した場合、得られた積層体は反射干渉縞が生じず、光学用途に好適に用いられる。さらに、金属酸化物を含んだ硬化物の屈折率を高く制御可能であることから、光半導体素子封止材としても好適である。
【0028】
<一般式(1)および(2)の説明>
本発明の下記一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する分散剤は、顔料、金属酸化物に対して分散剤として働き、後述する酸無水物基含有原料を出発原料として合成することができる。
【0029】
一般式(1)
【0030】
【化5】

一般式(2)
【0031】
【化6】

[一般式(1)および(2)において、R1およびR2は、それぞれ独立に1価の有機残基を表す。R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子もしくは1価の有機残基を表す。R3、R4は、それぞれが一体となって環を形成しても良い。R1〜R4のうち少なくとも一つは、ヒドロキシル基を有する。]
【0032】
ここで、1価の有機残基とは、脂肪族、芳香族、ヘテロ原子を含む原子団を単独もしくは組み合わせてなる原子団であり、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基などの脂肪族、アリール基などの芳香族の有機残基が挙げられ、これらは、さらに、置換基を有していても良い。
【0033】
本発明でいう置換基とは、特に、断らない限り、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシル基などをいう。
【0034】
本発明でいう分散剤は、酸無水物基を有する化合物(A)中の酸無水物基と、酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)中の酸無水物と反応しうる官能基と、を反応させてなるカルボキシル基含有化合物(C)中のカルボキシル基と、さらに、グリシジル基またはオキセタン基を有する化合物(D)中のグリシジル基またはオキセタン基と、を反応させてなる分散剤である。さらに、前記分散剤[ヒドロキシル基含有化合物(E)]中のヒドロキシル基と、イソシアネート基を有する化合物(F)中のイソシアネート基と、を化合物(E)中のヒドロキシル基に対して0.1〜80mol%の割合で反応させてなる分散剤である。
【0035】
<酸無水物基を有する化合物(A)>
化合物(A)としては、1分子内に1つの酸無水物基を有する単官能酸無水物(A1)と、1分子内に2つ以上の酸無水物基を有する多官能酸無水物(A2)とを挙げることができる。
【0036】
単官能酸無水物(A1)としては、例えば無水フタル酸、無水トリメリット酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルペンタヒドロ無水フタル酸、メチルトリヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロへキセンジカルボン酸無水物、無水ヘット酸、テトラブロモ無水フタル酸などの脂環構造または芳香環構造を有する酸無水物基を含む酸無水物が挙げられる。その他の化合物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、ブチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ブチルマレイン酸無水物、ペンチルマレイン酸無水物、ヘキシルマレイン酸無水物、オクチルマレイン酸無水物、デシルマレイン酸無水物、ドデシルマレイン酸無水物、ブチルグルタミン酸無水物、ヘキシルグルタミン酸無水物、ヘプチルグルタミン酸無水物、オクチルグルタミン酸無水物、デシルグルタミン酸無水物、ドデシルグルタミン酸無水物などが挙げられる。
【0037】
次に、多官能酸無水物(A2)としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物、無水マレイン酸共重合樹脂が挙げられる。
【0038】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸ニ無水物、無水マレイン酸共重合樹脂などの多価カルボン酸無水物類等が挙げられる。市販品としては新日本理化株式会社製「リカシッドBT−100」などが挙げられる。
【0039】
また、芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル骨格を有するビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン骨格を有するナフタレンテトラカルボン酸二無水物等、フルオレン骨格を有する9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、あるいは、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、テトロヒドロナフタレン骨格を有するテトラヒドロナフタレンカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート等が挙げられる。市販品としては新日本理化株式会社製「リカシッドTMTA−C」、「リカシッドMTA−10」、「リカシッドMTA−15」、「リカシッドTMEGシリーズ」、「リカシッドTDA」、「リカシッドDSDA」、などが挙げられる。
【0040】
また、無水マレイン酸共重合樹脂としては、サートマー社製SMAレジンシリーズ、株式会社岐阜セラック製造所製GSMシリーズなどのスチレン-無水マレイン酸共重合樹脂、p−フェニルスチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、ポリエチレン−無水マレイン酸などのα−オレフィン−無水マレイン酸共重合樹脂、ダイセル化学工業株式会社製「VEMA」(メチルビニルエ−テルと無水マレイン酸との共重合体)、無水マレイン酸アクリル変性ポリオレフィン(「アウローレンシリーズ」:日本製紙ケミカル株式会社製)、無水マレイン酸共重合アクリル樹脂などが挙げられる。
【0041】
また、反応中に脱水反応を経由して無水物と成りうるポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハーフエステルなどは、本発明でいう2つ以上のカルボン酸無水物基を有する化合物に含まれる。
【0042】
本発明では、化合物(A)として上記で例示した酸無水物の1種類もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
<化合物(B)>
化合物(B)は、酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物である。化合物(B)における「酸無水物基と反応しうる官能基」としては、ヒドロキシル基、アミノ基、グリシジル基などが挙げられるが、反応の制御のし易さから、ヒドロキシル基が特に好ましい。
【0044】
化合物(B)における「酸無水物基と反応しうる官能基」が、ヒドロキシル基の場合、酸無水物基を有する化合物(A)と、ヒドロキシル基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)との反応は、酸無水物基を有する化合物(A)の有する酸無水物基と、ヒドロキシル基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)のヒドロキシル基との反応であり、それ自体当該分野においてよく知られている。例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物とヒドロキシル基含有化合物とを、シクロヘキサノンのような有機溶媒中、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンのような触媒の存在下、50〜120℃の温度で反応させることができる。このような反応で得られる反応生成物は、酸無水物由来のカルボキシル基とエステル基とを有するカルボキシル基含有化合物(C)となる。
【0045】
酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)の中で、酸無水物基と反応しうる官能基がヒドロキシル基である化合物(B)としては、ヒドロキシル基を有し、不飽和二重結合を有さない公知の化合物を用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、シクロヘプタノールなどのモノアルコール類が挙げられる。
【0046】
化合物(B)における「酸無水物基と反応しうる官能基」が、アミノ基の場合、酸無水物基を有する化合物(A)と、アミノ基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)との反応は、酸無水物基を有する化合物(A)の有する酸無水物基と、アミノ基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)のアミノ基との反応であり、それ自体当該分野においてよく知られている。このような反応で得られる反応生成物は、酸無水物由来のカルボキシル基とアミド基を有するカルボキシル基含有化合物(C)となる。
【0047】
酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)の中で、酸無水物基と反応しうる官能基がアミノ基である化合物(B)としては、アミノ基を有し、不飽和二重結合を有さない公知の化合物を用いることができる。具体的には、プロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、3−エチルへキシルアミンなどのものアミン類が上げられる。
【0048】
化合物(B)における「酸無水物基と反応しうる官能基」が、グリシジル基の場合、酸無水物基を有する化合物(A)と、グリシジル基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)との反応は、酸無水物基を有する化合物(A)の有する酸無水物基と、グリシジル基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)のグリシジル基との反応であり、それ自体当該分野においてよく知られている。このような反応で得られる反応生生物は、酸無水物由来のカルボキシル基とエステル基とヒドロキシル基とを有するカルボキシル基含有化合物(C)となる。この場合、カルボキシル基含有化合物(C)は、ヒドロキシル基を有するため、後述する硬化剤(H)との反応点となり好ましい。
【0049】
酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)の中で、酸無水物基と反応しうる官能基がグリシジル基である化合物(B)としては、グリシジル基を有し、不飽和二重結合を有さない公知の化合物を用いることができる。具体的には、2−エチルへキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレン、プロピレングリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0050】
また、本発明では、化合物(B)が、酸無水物基と反応しうる官能基として、ヒドロキシル基を2つ以上有する、または、グリシジル基を2つ以上有する、または、ヒドロキシル基とアミノ基とを有する化合物であることが好ましい。この場合、化合物(A)中の酸無水物基に対して、前記酸無水物基と反応しうる官能基の101〜1000mol%を反応することで、さらにヒドロキシル基をカルボキシル基含有化合物(C)中に導入することができ、後述する硬化剤(H)との反応点となり好ましい。ヒドロキシル基を2つ以上有する化合物(B)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメチロール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールを使用した際には溶剤への溶解性やアクリル樹脂への相溶性があがることから特に好ましい。
【0051】
また、グリシジル基を2つ以上有する化合物(B)としては、多官能のエポキシ化合物を使用することができる。グリシジル基を2つ以上有する化合物(B)中のグリシジル基と、化合物(A)中の酸無水物基と、が反応してヒドロキシル基が生成し、後述する硬化剤(H)との反応点となり好ましい。例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、グリセリン・エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、エチレングリコール・エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン等が挙げられる。
【0052】
また、ヒドロキシル基とアミノ基とを有する化合物(B)の場合は、酸無水物基との反応が、ヒドロキシル基よりアミノ基の方が速く、ヒドロキシル基を優先的に残すことができる。ヒドロキシル基とアミノ基とを有する化合物(B)としては、2−(ヒドロキシメチルアミノ)エタノール、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノールなどが挙げられる。
【0053】
さらに、酸無水物基と反応しうる官能基として、グリシジル基とヒドロキシル基とを有する化合物も使用することができ、例えば、グリシドールなどが挙げられる。
【0054】
<化合物(C)>
化合物(C)は、酸無水物基を有する化合物(A)中の酸無水物基と、
酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)中の酸無水物と反応しうる官能基と、を反応させてなるカルボキシル基含有化合物である。後述する、グリシジル基またはオキセタン基を有する化合物(D)と反応させることにより本願発明の分散剤を得ることができる。
【0055】
<化合物(D)>
化合物(D)は、グリシジル基またはオキセタン基を有する化合物である。化合物(C)中のカルボキシル基と反応することによって後述する硬化剤(H)との反応点となりうるヒドロキシル基を生成する。
【0056】
本発明の化合物(D)中のグリシジル基またはオキセタン基と化合物(C)中のカルボキシル基との反応は、それ自体当該分野においてよく知られている。例えば、この反応は、ジメチルベンジルアミン等のようなアミン触媒の存在下、50〜120℃の温度で行なうことができる。
【0057】
これらの反応は、無溶媒で行なってもよく、あるいは反応に対して不活性な溶媒中で行なってもよい。かかる溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、ベンゼンまたはトルエン等の炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルまたは酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサン等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンまたはパークレン等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等の極性溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、2種類以上を併用しても差し支えない。
【0058】
グリシジル基を有する化合物(D)としては、グリシジル基を有する公知の化合物を用いることができる。具体的には、2−エチルへキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリシジルエーテル、プロピレングリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0059】
また、オキセタン基を有する化合物(D)としては、オキセタン基を有する公知の化合物を用いることができる。具体的には、オキセタンアルコール、オキセタニル(メタ)アクリレート、オキセタニル桂皮酸、3−エチルオキセタンー3−メタノール、3,3−ジメチルオキセタン、3−メチルオキセタン−3−メタノール、2−メチルオキセタン、2,2−ジメチルオキセタン、2−プロピルオキセタンなどが挙げられる。
【0060】
本発明では、化合物(D)と併用して、カルボキシル基と反応しうる官能基を有する化合物を使用することができる。ここでいう、「カルボキシル基と反応しうる官能基」としては、オキサゾリン基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボジイミド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ビニルエーテル基などが挙げられる。
【0061】
<化合物(E)>
化合物(E)は、カルボキシル基を有する化合物(C)中のカルボキシル基と、グリシジル基またはオキセタン基を有する化合物(D)中のグリシジル基またはオキセタン基と、を反応させてなるヒドロキシル基含有化合物である。カルボキシル基と、グリシジル基またはオキセタン基と、が反応することでエステル結合とヒドロキシル基とが生成する。
【0062】
<化合物(F)>
イソシアネート基を有する化合物(F)としては、例えば、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート(MAI)、アクリロイルイソシアネート、イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(TMI)等の分子中に1個のイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。
【0063】
さらに、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を使用すると、分散剤の分子量が大きくなり、ハードコート性などの耐久性が増す。分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、従来公知のポリイソシアネートを使用することができ、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0064】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0065】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0066】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0067】
脂環族ポリイソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0068】
また一部上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート環を有する3量体等も併用することができる。ポリフェニルメタンポリイソシアネート(PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネート変性物等を使用し得る。なおポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のいずれかの基、またはこれらの基の2種以上を有する変性物を使用できる。ポリオールとジイソシアネートの反応物もイソシアネート基を有する化合物(F)として使用することができる。
【0069】
分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物の市販品としては、スミジュールT−80(住友バイエルウレタン株式会社製)、スミジュール44Vシリーズ(住友バイエルウレタン株式会社製)、デスモジュールH(住友バイエルウレタン株式会社製)、デスモジュールI(住友バイエルウレタン株式会社製)、デスモジュールW(住友バイエルウレタン株式会社製)、スミジュールN−75(住友バイエルウレタン株式会社製)、スミジュールN−3200(住友バイエルウレタン株式会社製)、スミジュールN−3500(住友バイエルウレタン株式会社製)、スミジュールHT(住友バイエルウレタン株式会社製)などが挙げられる。
【0070】
化合物(F)と化合物(E)との反応において、化合物(F)中のイソシアネート基は、化合物(E)中のヒドロキシル基に対して0.1〜80mol%の割合で反応させる。化合物(E)に化合物(F)を付加することにより、分子量が大きくなり、ハードコート性などの耐久性が増加する。化合物(F)中のイソシアネート基が、化合物(E)中のヒドロキシル基に対して0.1mol%未満で反応させると、分子量の増加が極わずかであり、耐久性が改善されない場合がある。化合物(F)中のイソシアネート基が、化合物(E)中のヒドロキシル基に対して80mol%を超える量で反応させると、残存ヒドロキシル基が少なくなり、硬化剤(H)との架橋反応が十分に進行しないため硬化性で問題がでる場合がある。
【0071】
<金属酸化物(G)>
金属酸化物は、平均一次粒子径が5〜100nmの金属酸化物である。金属酸化物の平均一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて、粒子自身を直接観察することによって測定できる。平均一次粒子径が5nm未満の金属酸化物の場合、微粒子同士の凝集力が非常に大きいことから、透明性の高い一次粒子レベルの分散をさせることが非常に困難である。一方、平均一次粒子径が100nmを超える金属酸化物の場合、一次粒子レベルで分散させることは容易になるが、粒子径が大きいことから可視光などの光に対して散乱が生じ易く、硬化膜の透明性を悪化させる問題が生じる。
【0072】
金属酸化物としては、チタニウム、亜鉛、ジルコニウム、アンチモン、インジウム、スズ、アルミニウム、セリウム、および珪素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有するものが好ましい。特に、アンチモン、インジウム、スズおよび亜鉛のいずれか一種の元素を含有するものは、導電性も良好であることから、より好ましい。具体的には、五酸化アンチモン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ケイ素、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、アンチモン酸亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、酸化スズ、ATO被覆酸化チタン、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛等が挙げられる。これらの金属酸化物は、2種類以上を併用しても差し支えない。
【0073】
また本発明に用いる金属酸化物は、予めカップリング剤、オルガノシリコーン、高級脂肪酸、リン酸エステルおよび高級アルコール等で疎水化処理されていても良い。
【0074】
金属酸化物の市販品としては、
日産化学工業(株)製:サンエポックEFR−6N、サンエポックEFR−6NP(五酸化アンチモン);
石原産業(株)製:SN−100P(ATO)、FS−10P(ATO)、SN−102P(ATO)、FS−12P(ATO)、ET−300W(ATO被覆酸化チタン)、TTO−55(A)(酸化チタン)、TTO−55(B)(酸化チタン)、TTO−55(C)(酸化チタン)、TTO−55(D)(酸化チタン)、TTO−55(S)(酸化チタン)、TTO−55(N)(酸化チタン)、TTO−51(A)(酸化チタン)、TTO−51(C)(酸化チタン)、TTO−S−1(酸化チタン)、TTO−S−2(酸化チタン)、TTO−S−3(酸化チタン)、TTO−S−4(酸化チタン)、TTO−V−3(酸化チタン)、TTO−V−4(酸化チタン)、TTO−F−1(鉄含有酸化チタン)、TTO−F−2(鉄含有酸化チタン)、TTO−F−3(鉄含有酸化チタン)、TTO−F−11(鉄含有酸化チタン)、ST−01(酸化チタン)、ST−21(酸化チタン)、ST−30L(酸化チタン)、ST−31(酸化チタン);
三菱マテリアル(株)製:T−1(ITO)、S−1200(酸化スズ);
三井金属工業(株)製:パストラン(ITO、ATO);
シーアイ化成(株)製:ナノテックITO、ナノテックSnO2、ナノテックTiO2、ナノテックSiO2、ナノテックAl23、ナノテックZnO、ナノテックCeO2
触媒化成工業(株)製:TL−20(ATO)、TL−30(ATO)、TL−30S(PTO)、TL−120(ITO)、TL−130(ITO);
ハクスイテック(株)製:PazetCK(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、PazetGK(ガリウムドープ酸化亜鉛);
堺化学工業(株)製:SC−18(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FINEX−25(酸化亜鉛)、FINEX−25LP(酸化亜鉛)、FINEX−50(酸化亜鉛)、FINEX−50LP(酸化亜鉛)、FINEX−75(酸化亜鉛)、NANOFINE50A(酸化亜鉛)、NANOFINE50W(酸化亜鉛)、NANOFINE50W−LP2、(酸化亜鉛)、STR−60C(酸化チタン)、STR−60C-LP(酸化チタン)、STR−100C(酸化チタン);
テイカ(株)製:MT−100S(酸化チタン)、MT−100SA(酸化チタン)、MT−100SAS(酸化チタン)、MT−100HD(酸化チタン)、MT−100F(酸化チタン)、MT−05(酸化チタン)、MTY−02(酸化チタン)、MZ−500(酸化亜鉛)、MZ−505S(酸化亜鉛)、MZY−505S(酸化亜鉛)、MZ−505M(酸化亜鉛);
住友大阪セメント(株)製:OZC−3YC(酸化ジルコニウム)、OZC−3YD(酸化ジルコニウム)、OZC−3YFA(酸化ジルコニウム)、OZC−8YC(酸化ジルコニウム)、OZC−0S100(酸化ジルコニウム);
日本電工(株)製:PCS(酸化ジルコニウム)、T−01(酸化ジルコニウム);
日本アエロジル(株)製:Aluminium Oxide C(酸化アルミニウム)、AEROSIL130(酸化ケイ素)、AEROSIL200(酸化ケイ素)、AEROSIL200V(酸化ケイ素)、AEROSIL200CF(酸化ケイ素)、AEROSIL200FA(酸化ケイ素)、AEROSIL300(酸化ケイ素)、AEROSIL300CF(酸化ケイ素)、AEROSIL380(酸化ケイ素)、AEROSILR972(酸化ケイ素)、AEROSILR974(酸化ケイ素)、AEROSILR976(酸化ケイ素)、AEROSILR202(酸化ケイ素)、AEROSILR805(酸化ケイ素)、AEROSILR812(酸化ケイ素)、AEROSILR812S(酸化ケイ素)、AEROSILMOX50(酸化ケイ素)、AEROSILTT600(酸化ケイ素)、AEROSILMOX80(酸化ケイ素/酸化アルミニウム)、AEROSILMOX170(酸化ケイ素/酸化アルミニウム)、AEROSILCOX84(酸化ケイ素/酸化アルミニウム);等が挙げられる。
【0075】
本発明の組成物における金属酸化物の添加量は、特に制限されないが、組成物中の固形分合計量100重量部中、好ましくは1〜80重量部、より好ましくは10〜70重量部である。金属酸化物の添加量が1重量部未満では、金属酸化物由来の帯電防止性、ハードコート性や高屈折率性が劣る場合があり、80重量部を超えると有機成分量が少ないことにより成膜性が劣る場合がある。
【0076】
本発明の組成物は、金属酸化物粉末と分散剤を単に混合して調製しても、十分に目的とする効果が得られる。ただし、ニーダー、ロール、アトライター、スーパーミル、乾式粉砕処理機などにより機械的に混合するか、金属酸化物粉末と有機溶剤などによるサスペンジョン系に、分散剤を含む溶液を添加し、金属酸化物表面に分散剤を沈着させるなどの緊密な混合系で行なえば、さらに良好な結果を得ることができる。
【0077】
有機溶剤などの非水系ビヒクル中への金属酸化物、分散剤の分散または溶解、およびこれらの混合などには、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」)、微小ビーズミル(寿工業(株)製「スーパーアペックミル」、「ウルトラアペックミル」)等の分散機が使用できる。分散機にメディアを使う場合には、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズ等を用いることが好ましい。分散に関しては、2種類以上の分散機、または大きさの異なる2種類以上のメディアをそれぞれ用い、段階的に使用しても差し支えない。
【0078】
<硬化剤(H)>
本発明に用いられる硬化剤(H)としては、本発明の分散剤中に存在するヒドロキシル基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物である。ヒドロキシル基と反応しうる官能基としては、イソシアネート基や酸無水物基などが挙げられる。硬化剤(H)としては、前述した、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物や、分子内に2つ以上の酸無水物基を有する化合物が挙げられる。具体例は、それぞれ前述したとおりである。
【0079】
本発明の分散剤と硬化剤(H)の配合比は、分散剤100重量部に対して硬化剤(H)が、0.1〜100重量部である。硬化剤(H)が0.1重量部より少ないと、凝集力が低下する場合があり、100重量部より多いと、分散性が悪くなる場合がある。好ましくは、1〜50重量部である。硬化剤(H)の配合については、公知の配合方法を用いることができる。
【0080】
本発明の組成物は、少なくとも金属酸化物、分散剤を含有するものであり、さらに溶剤や様々な添加剤を、本発明の目的や効果を損なわない範囲において含むことができる。具体的には、溶剤、光重合開始剤、光硬化性化合物、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、導電性ポリマー、導電性界面活性剤、無機充填剤、顔料、染料などが挙げられる。
【0081】
金属酸化物および分散剤以外の成分を含む組成物の製造方法としては、特に制限されないが、いくつかの方法が挙げられる。具体的には、初めに金属酸化物および分散剤を有機溶剤中で混合分散し、安定な金属酸化物分散体を得た後、他の様々な添加剤を添加および調整し製造する方法;初めから、金属酸化物、分散剤、有機溶剤およびその他の添加剤の全てが混合された状態で、分散し製造する方法;などが挙げられる。
【0082】
溶剤を加える場合は、溶剤を揮発させた後に硬化処理を行なうことが好ましい。溶剤としては、特に制限されるものでなく、様々な公知の有機溶剤を用いることができる。具体的には例えば、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン、トルエン、キシレン、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−2−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ブチルアセテート、イソアミルアセテート、アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、テトラヒドロフラン、メチルピロリドンなどが挙げられるが、硬化剤(H)との反応を阻害するためヒドロキシル基を含まない溶剤の使用が好ましい。また、これらの有機溶剤は、2種類以上を併用しても差し支えない。
【0083】
組成物は、分散剤の他に、その他のバインダー樹脂を含んでいてもよい。バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂、スチレンマレイン酸共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、一種類で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。バイダー樹脂は、組成物の固形分(溶剤以外の成分。以下、同じ。)の全量を基準(100重量部)として、20重量部以下の範囲内で使用することが好ましい。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を表す。
【0085】
(実施例1)
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコに無水フタル酸(和光純薬工業株式会社製)50.0部、ヘキサノール(和光純薬工業株式会社製)34.5部、シクロヘキサノン84.5部を仕込み85℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(東京化成工業製)0.42部を加え、85℃で8時間撹拌しながら反応した。次に、Phenyl Glycidyl Ether(ナガセケムテックス株式会社製、商品名 EX−141)50.7部、シクロヘキサノン51.1部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン0.68部を加え、85℃で6時間撹拌しながら反応した。室温まで冷却して化合物(1)のシクロヘキサノン溶液を得た。この反応溶液は淡黄色透明で固形分50%、数平均分子量(Mn)468、重量平均分子量(Mw)481であった。
【0086】
(実施例2)
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコに無水コハク酸(和光純薬工業株式会社製)50.0部、ヘキサノール(和光純薬工業株式会社製)51.1部、シクロヘキサノン101.1部を仕込み85℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(東京化成工業製)0.51部を加え、85℃で8時間撹拌しながら反応した。次に、Phenyl Glycidyl Ether(ナガセケムテックス株式会社製、商品名 EX−141)75.0部、シクロヘキサノン75.5部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン0.81部を加え、85℃で6時間撹拌しながら反応した。室温まで冷却して化合物(2)のシクロヘキサノン溶液を得た。この反応溶液は淡黄色透明で固形分50%、数平均分子量(Mn)456、重量平均分子量(Mw)461であった。
【0087】
(実施例3)
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコにビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学製)80.0部、ブタノール(和光純薬工業株式会社製)40.3部、シクロヘキサノン120.3部を仕込み85℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(東京化成工業製)0.60部を加え、85℃で8時間撹拌しながら反応した。次に、Phenyl Glycidyl Ether(ナガセケムテックス株式会社製、商品名 EX−141)81.7部、シクロヘキサノン82.3部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン0.97部を加え、85℃で6時間撹拌しながら反応した。室温まで冷却して化合物(3)のシクロヘキサノン溶液を得た。この反応溶液は淡黄色透明で固形分50%、数平均分子量(Mn)777、重量平均分子量(Mw)884であった。
【0088】
(実施例4)
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコにビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学製)80.0部、ヘキサノール(和光純薬工業株式会社製)55.6部、シクロヘキサノン135.6部を仕込み85℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(東京化成工業製)0.68部を加え、85℃で8時間撹拌しながら反応した。次に、Phenyl Glycidyl Ether(ナガセケムテックス株式会社製、商品名 EX−141)81.7部、シクロヘキサノン82.3部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン1.09部を加え、85℃で6時間撹拌しながら反応した。室温まで冷却して化合物(4)のシクロヘキサノン溶液を得た。この反応溶液は淡黄色透明で固形分50%、数平均分子量(Mn)865、重量平均分子量(Mw)972であった。
【0089】
(実施例5)
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコにビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学製)50.0部、プロピレングリコール(三洋化成株式会社製 商品名PP−600)199.7部、シクロヘキサノン249.7部を仕込み85℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(東京化成工業製)1.25部を加え、85℃で8時間撹拌しながら反応した。次に、2−Ethylhexyl Glycidyl Ether(ナガセケムテックス株式会社製、商品名 EX−121)63.3部、シクロヘキサノン64.6部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン2.01部を加え、85℃で6時間撹拌しながら反応した。室温まで冷却して化合物(5)のシクロヘキサノン溶液を得た。この反応溶液は淡黄色透明で固形分50%、数平均分子量(Mn)1,852、重量平均分子量(Mw)4,402であった。
【0090】
(実施例6)
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコにシクロヘキサノン68部を入れて窒素を導入し30分間放置した後110℃に昇温した。ついで2,2−アゾビスイソブチロニトリル(日本ヒドラジン工業株式会社製)0.4部を添加し、メタクリル酸メチル(株式会社日本触媒製)40部、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル(株式会社日本触媒製)40部、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(日本ヒドラジン工業株式会社製)5.6部を混合したものを2時間かけて滴下した後、シクロヘキサノン8.0部を添加した。滴下終了後30分置きに2,2−アゾビスイソブチロニトリル(日本ヒドラジン工業株式会社製)0.2部を4回添加してから、シクロヘキサノン4.0部を添加して2時間攪拌した後、室温まで冷却した。
【0091】
ついで無水トリメリット酸59.1部、シクロヘキサン120.9部を仕込み100℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(東京化成工業製)1.13部を加え、85℃で8時間撹拌しながら反応した。次に、2−Ethylhexyl Glycidyl Ether(ナガセケムテックス株式会社製、商品名 EX−121)114.6部、シクロヘキサノン170.8部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン1.11部を加え、85℃で6時間撹拌しながら反応した。室温まで冷却して化合物(6)のシクロヘキサノン溶液を得た。この反応溶液は淡黄色透明で固形分40%、数平均分子量(Mn)3,050、重量平均分子量(Mw)11,515であった。
【0092】
(実施例7)
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコにビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学製)20.0部、プロピレングリコール(三洋化成株式会社製 商品名PP−2000)271.4部、シクロヘキサノン291.4部を仕込み85℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(東京化成工業製)1.46部を加え、85℃で8時間撹拌しながら反応した。次に、2−Ethylhexyl Glycidyl Ether(ナガセケムテックス株式会社製、商品名 EX−121)25.3部、シクロヘキサノン26.8部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン2.34部を加え、85℃で6時間撹拌しながら反応した。室温まで冷却して化合物(7)のシクロヘキサノン溶液を得た。この反応溶液は淡黄色透明で固形分50%、数平均分子量(Mn)3,740、重量平均分子量(Mw)8,137であった。
【0093】
(実施例8)
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコにビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学製)80.0部、プロピレングリコール(三洋化成株式会社製 商品名PP−200)108.8部、シクロヘキサノン188.8部を仕込み85℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(東京化成工業製)0.94部を加え、85℃で8時間撹拌しながら反応した。次に、2−Ethylhexyl Glycidyl Ether(ナガセケムテックス株式会社製、商品名 EX−121)101.3部、シクロヘキサノン102.3部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン1.52部を加え、85℃で6時間撹拌しながら反応した。室温まで冷却して化合物(8)のシクロヘキサノン溶液を得た。この反応溶液は淡黄色透明で固形分50%、数平均分子量(Mn)1,602、重量平均分子量(Mw)3,228であった。
【0094】
(実施例9)
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコに無水フタル酸(和光純薬工業株式会社製)50.0部、1,6−ヘキサンジオール(和光純薬工業株式会社製)39.9部、シクロヘキサノン89.9部を仕込み85℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(東京化成工業製)0.45部を加え、85℃で8時間撹拌しながら反応した。次に、Phenyl Glycidyl Ether(ナガセケムテックス株式会社製、商品名 EX−141)50.7部、シクロヘキサノン51.1部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン0.72部を加え、85℃で6時間撹拌しながら反応した。さらに、カレンズMOI(昭和電工株式会社製)52.5部、シクロヘキサノン52.5部、次いで触媒として、ジラウリン酸ジブチル錫(IV)(和光純薬工業株式会社製)0.97部を加え、100℃で6時間攪拌しながら反応した。室温まで冷却して化合物(9)のシクロヘキサノン溶液を得た。この反応溶液は淡黄色透明で固形分50%、数平均分子量(Mn)532、重量平均分子量(Mw)562であった。
【0095】
(実施例10)
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコにビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学製)80.0部、ブタノール(和光純薬工業株式会社製)40.3部、シクロヘキサノン120.3部を仕込み85℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(東京化成工業製)0.60部を加え、85℃で8時間撹拌しながら反応した。次に、3−エチルオキセタンー3−メタノール(宇部興産株式会社製、商品名 EHO)63.2部、シクロヘキサノン63.8部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン0.97部を加え、85℃で6時間撹拌しながら反応した。室温まで冷却して化合物(10)のシクロヘキサノン溶液を得た。この反応溶液は淡黄色透明で固形分50%、数平均分子量(Mn)690、重量平均分子量(Mw)810であった。
【0096】
(金属酸化物分散組成物の作成:実施例11〜20、比較例1)
上記実施例により作成した各化合物を用い、表1に示す配合により金属酸化物分散を行ない、金属酸化物分散ペーストを作成した。分散方法は、仮分散(ジルコニアビーズ(1.25mm)をメディアとして用い、ペイントシェイカーで1時間分散)と、本分散(ジルコニアビーズ(0.1mm)をメディアとして用い、寿工業(株)製分散機UAM−015で分散)の2段階で行なった。なお、比較例1として、本発明の分散剤の換わりに市販の分散剤[Disperbyk−111(ビックケミー・ジャパン株式会社製)]を使用して分散を行った。
【0097】
上記で調整した金属酸化物分散ペーストを用いて、表1に示す組成の組成物を調整した。得られた組成物を、100μm厚の易接着処理PETフィルム(東洋紡(株)製「コスモシャインA−4100」)に、バーコーターで、乾燥後の膜厚が5μmになるように塗工した後、100℃で2分間乾燥し、ハードコート層を形成した。得られたハードコート層について、下記の方法で鉛筆硬度、透明性(ヘイズ)を評価した。その結果を表1に示す。
【0098】
(評価方法)
鉛筆硬度
JIS−K5600に準拠し、鉛筆硬度試験機(HEIDON社製Scratching Tester HEIDON−14)を用い、鉛筆の芯の硬さを種々変えて、荷重500gにて5回試験をした。5回中、1回も傷がつかない、もしくは1回のみ傷が付く時の芯の硬さを、その硬化膜の鉛筆硬度とした。実用的な要求物性を考慮して、硬化膜の鉛筆硬度が、
2H以上:A
2Hより低い:D
と判定した。
【0099】
透明性(Haze値)
得られた塗工物における濁度(Haze値)を、Hazeメーターを用いて測定した。
【0100】
【表1】

【0101】
ZnO:堺化学工業(株)製「FINEX−50」(平均一次粒子径:20nm)
TiO2:石原産業(株)製「TTO−51(A)」(平均一次粒子径:20nm)
ZrO2:日本電工(株)製「PCS」(平均一次粒子径:30nm)
Al23:日本アエロジル(株)製「Aluminium Oxide C」(平均一次粒子径:13nm)
Sb25:日産化学工業(株)製「サンエポックEFR−6N」(平均一次粒子径:20nm)
ATO:石原産業(株)製「SN−100P」(平均一次粒子径:20nm)
ITO:シーアイ化成(株)製「ナノテックITO」(平均一次粒子径:30nm)
PTO:触媒化成工業(株)製「TL−30S」(平均一次粒子径:30nm)
AlドープZnO:ハクスイテック(株)製「PazetCK」(平均一次粒子径:30nm)
市販分散剤:Disperbyk−111(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
市販樹脂:JONCRYL611(BASFジャパン株式会社製)
硬化剤(1):スミジュールN−3500(住友バイエルウレタン株式会社製)
硬化剤(2):スミジュールHT(住友バイエルウレタン株式会社製)
硬化剤(3):リカシッドTMTA−C(新日本理化株式会社製)
【0102】
表1に示すように、本発明の実施例1〜10で得られた分散剤を使用して金属酸化物を分散した組成物である実施例11〜20は、塗膜の透明性と硬度のいずれも良好であったのに対し、市販の分散剤を使用した比較例1は、硬化性を有していないため硬度が不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する分散剤。
一般式(1)
【化1】

一般式(2)
【化2】

[一般式(1)および(2)において、R1およびR2は、それぞれ独立に1価の有機残基を表す。R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子もしくは1価の有機残基を表す。R3、R4は、それぞれが一体となって環を形成しても良い。R1〜R4のうち少なくとも一つは、ヒドロキシル基を有する。]
【請求項2】
酸無水物基を有する化合物(A)中の酸無水物基と、
酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)中の酸無水物と反応しうる官能基と、を反応させてなるカルボキシル基含有化合物(C)中のカルボキシル基と、さらに、
グリシジル基またはオキセタン基を有する化合物(D)中のグリシジル基またはオキセタン基と、を反応させてなる請求項1記載の分散剤。
【請求項3】
酸無水物基を有する化合物(A)中の酸無水物基と、
酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)中の酸無水物基と反応しうる官能基と、を反応させてなるカルボキシル基含有化合物(C)中のカルボキシル基と、さらに、
グリシジル基またはオキセタン基を有する化合物(D)中のグリシジル基またはオキセタン基と、を反応させてなるヒドロキシル基含有化合物(E)中のヒドロキシル基と、さらに、
イソシアネート基を有する化合物(F)中のイソシアネート基と、を化合物(E)中のヒドロキシル基に対して0.1〜80mol%の割合で反応させてなる請求項1記載の分散剤。
【請求項4】
化合物(B)中の酸無水物基に反応しうる官能基が、ヒドロキシル基である請求項2または3記載の分散剤。
【請求項5】
化合物(B)が、酸無水物基と反応しうる官能基として、ヒドロキシル基を2つ以上有する、または、グリシジル基を2つ以上有する、または、ヒドロキシル基とアミノ基とを有する化合物であって、
化合物(A)中の酸無水物基に対して、前記酸無水物基と反応しうる官能基の101〜1000mol%を反応してなる請求項2または3記載の分散剤。
【請求項6】
平均一次粒子径が5〜100nmの金属酸化物(G)と、請求項1〜5いずれか記載の分散剤とを含む組成物。
【請求項7】
さらに、硬化剤(H)を含む請求項6記載の組成物。
【請求項8】
酸無水物基を有する化合物(A)と、
酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)と、を反応させてカルボキシル基含有化合物(C)を得る第一の工程、
および、上記カルボキシル基含有化合物(C)と、
グリシジル基またはオキセタン基を有する化合物(D)と、を反応させる第二の工程を含むことを特徴とする分散剤の製造方法。
【請求項9】
酸無水物基を有する化合物(A)と、
酸無水物基と反応しうる官能基を有し、不飽和二重結合を有しない化合物(B)と、を反応させてカルボキシル基含有化合物(C)を得る第一の工程、
上記カルボキシル基含有化合物(C)と、
グリシジル基またはオキセタン基を有する化合物(D)と、を反応させてヒドロキシル基含有化合物(E)を得る第二の工程、
および、上記ヒドロキシル基含有化合物(E)と、
イソシアネート基を有する化合物(F)と、を化合物(E)中のヒドロキシル基に対して0.1〜80mol%の割合で反応させる第三の工程を含むことを特徴とする分散剤の製造方法。
【請求項10】
化合物(B)中の酸無水物基に反応しうる官能基が、ヒドロキシル基であることを特徴とする請求項8または9記載の分散剤の製造方法。
【請求項11】
化合物(B)が、酸無水物基と反応しうる官能基として、ヒドロキシル基を2つ以上有する、または、グリシジル基を2つ以上有する、または、ヒドロキシル基とアミノ基とを有する化合物であって、
化合物(A)中の酸無水物基に対して、前記酸無水物基と反応しうる官能基の101〜1000mol%を反応することを特徴とする請求項8または9記載の分散剤の製造方法。
【請求項12】
請求項6または7記載の組成物を基材上に積層してなる積層体。

【公開番号】特開2008−173547(P2008−173547A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7744(P2007−7744)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】