分散型低雑音増幅器
分散型低雑音増幅器(DLNA)(10)は少なくとも、増幅器の入力(14)から増幅器の出力(22)までの第1パス(36.1)を形成する第1増幅部(30.1)と、上記入力(14)から上記出力(22)まで第2パスを形成する第2増幅部(30.2)とを備える。上記第1パスおよび上記第2パスのそれぞれは、異なる位相の変化と関連付けられる。上記第1パスに沿って伝搬する、増幅器構成によって生成される雑音と、上記第2パスに沿って伝搬する、増幅器構成によって生成される雑音との間の位相差、及び、DLNAの出力(22)の前における雑音の相殺的干渉を発生させ、これによって雑音抑制帯域における雑音を抑制するために、上記差は雑音抑制帯域における周波数について30度よりも大きい。増幅部(30.1)から(30.n)における各ゲインは、上記増幅器(10)の上記入力(14)から上記出力(10)までの方向に減少し得る。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[導入および背景技術]
本発明は、低雑音増幅器に関し、より具体的には、分散型低雑音増幅器に関する。増幅器については、典型的ではあるが狭い意味ではなく、無線テレスコープアプリケーションにおける応用を見出し得る。
【0002】
無線テレスコープにおける最近の傾向は、広帯域にわたって高い感度を有するテレスコープを組み立てることである。高感度を得るために、非常に大きな収集領域および超低雑音増幅器が求められる。大きな収集領域は、数百のより小さな受信器を備え、それぞれ低雑音増幅器(LNA)を有している。LNAはそのため、広帯域にわたって低雑音指数を有するばかりでなく、大きなダイナミックレンジにわたって直線的であり、あまり高価でないことが必要とされる。
【0003】
出願人の知識の及ぶ範囲では、無線テレスコープにおいて用いられるほとんど全てのLNAは、高調波LNAである。これらの高調波LNAは、第1増幅段階において単一のトランジスタを有する。各周波数において、トランジスタは最小雑音指数Fminを有し、この指数は、トランジスタが入力インピーダンスZoptに接続されるときに達成される。インピーダンス整合回路はこのため、増幅器の入力インピーダンスをトランジスタの最適低雑音インピーダンスZoptに整合させることが求められる。高調波増幅器は、2つの不利な点を有している。第1に、インピーダンス整合回路の高調波特性により、LNAの低雑音性能は広帯域にわたって低下し、第2に、インピーダンス整合回路はまた、信号損失、挿入損失、および回路によって生成される付加的な雑音をもたらす。
【0004】
他の周知である増幅器の態様は、分散型増幅器である。分散型増幅器は、非常に広い増幅帯域を可能にし、高調波増幅器よりもより良好な直線性およびダイナミックレンジを有する。このため、それらの雑音指数は除いて、無線テレスコープにおける帯域増幅器として理想的に適したものとなる。分散型LNA(DLNA)は、高調波LNAよりも高い雑音指数を有することは周知である。
【0005】
分散型増幅器は、その一端部において増幅器に対する入力を有する入力伝送媒体と、その一端部における増幅器に対する出力を有する出力伝送媒体と、各増幅器の入力が入力伝送媒体に接続され、増幅部の出力が出力伝送媒体に接続された状態の、多数の出力部とを備える。増幅部の入力インピーダンスに加えて、通常は容量性である入力伝送媒体は、伝送線を形成する。信号が増幅器に印加されるとき、それは入力伝送媒体を沿って伝搬する。信号が各部を通過するとき、それは増幅され、出力伝送媒体に加えられる。
【0006】
通常の分散型増幅器において、増幅される信号は、出力伝送媒体の位相において加えられる。言い換えると、各増幅部からの信号は、増幅器の出力に同時に到達する。各増幅部を介した、入力から出力までの時間遅延は、各部について同じである(すなわち、差異が、入力信号の期間よりもはるかに短い場合)。それぞれがAv1の電圧ゲインを有するn部を有する理想的な分散型増幅器について、全パワーゲインはA∝(Av1n)2である。理想としては、上記増幅部の他に雑音を生成する他の構成要素はなく、伝送媒体における信号損失がないものと仮定する。
【0007】
しかしながら、各増幅部はまた、出力伝送媒体に伝送される雑音を生成する。各部の伝送がN1,0の雑音パワーを有すると、出力伝送媒体に加えられる全雑音がN0=N1,0nである。なぜなら、増幅部の雑音は無相関であるからである。雑音指数(または、雑音−信号比)はそれゆえ、増幅部N0/Aの数nに反比例して減少する。
【0008】
しかし、各部によって生成されるいくつかの雑音はまた、入力伝送媒体に転送される。この入力雑音は、他の増幅部によって増幅され、出力における増幅された入力雑音N1、i∝n2を与える信号に類似して、出力伝送媒体に加えられる。全ての増幅された入力雑音は、多くの増幅部についてNi∝n3である。
【0009】
そのため、増幅部の数が増加するにつれて、出力雑音−信号比が減少するが、増幅された入力雑音/信号比は増加する。分散型増幅器はそれゆえ、最適な数の増幅部を有し、それに対して全雑音−信号比は最小である。
【0010】
増幅部における、入力雑音と出力雑音との間には、一定の補正が行われる。なぜなら、雑音は共通の雑音源によって生成されるからである。C=Cre+jCimを、複素相関係数として考えてみる。上記増幅部を介する遅延が同じであるとき、出力雑音N1,0の相関する増幅部と増幅された入力雑音N1,iの相関する増幅部との間の位相が、入力雑音と出力雑音との間の位相と同じである。Cの実部分(同相部分)のみが雑音除去を行い、理想的な分散型増幅器の最小雑音指数は1−Crと比例する。
【0011】
高調波LNAにおける適切な入力インピーダンスZoptを用いることによって、入力雑音は、トランジスタにまた反射されるので、相関部分の位相は出力雑音が有する位相となる。増幅される入力雑音は、出力雑音の大部分をキャンセルし、
【0012】
【数1】
に比例する雑音指数をもたらす。雑音増幅器において用いられる高電子移動度トランジスタについて、Cimは1に近く、高調波増幅器の雑音は、分散型増幅器の雑音よりはるかに低い。
【0013】
[発明の目的]
したがって、本発明の目的は、少なくとも上記の不利な点が緩和され得ると出願人が考える、代替の分散型低雑音増幅器を提供することである。
【0014】
[発明の概要]
本発明によると、第1の周波数からより高い第2の周波数へ伸びる増幅帯域を有する分散型増幅器であって、
・第1端部および第2端部を有し、上記第1端部において上記分散型増幅器に入力を与える入力伝送媒体と、
・第1端部および第2端部を有し、上記第2端部において上記分散型増幅器に出力を与える出力伝送媒体と、
・入力信号のための少なくとも第1パスおよび第2パスを、上記分散型増幅器の入力から上記分散型増幅器の出力まで形成するために、少なくとも第1増幅部および第2増幅部を有する増幅器構成であって、上記少なくとも第1増幅部および第2増幅部は、上記構成の入力において上記入力伝送媒体と接続され、上記構成の出力において上記出力伝送媒体と接続される、増幅器構成とを備え、
・第1パスは第1位相変化と関連付けられ、第2パスは第2位相変化と関連付けられ、第1位相変化と第2位相変化との間には差があり、
・上記第1パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音と、上記第2パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音との間の位相差、及び、分散型増幅器の出力の前における雑音の相殺的干渉を発生させ、これによって雑音抑制帯域における雑音を抑制するために、上記差は雑音抑制帯域における周波数について30度よりも大きい、分散型増幅器が提供される。
【0015】
異なる位相の変化は、第1時間遅延および第2時間遅延とそれぞれ関連付けられる第1パスおよび第2パスのそれぞれによって引き起こされ得、第1時間遅延と第2時間遅延との間に差が生じ、上記差は上記第2周波数を12倍したものの逆数よりも大きい。
【0016】
上記第2周波数を12倍したものの逆数よりも大きい差は、30度よりも大きい位相差と等しい。好ましくは、上記差は、45度よりも大きく、より好ましくは、60度よりも大きく、より好ましくは、約90度である。
【0017】
したがって、本発明の他の態様によると、第1からより高い第2の周波数まで伸びる増幅帯域を有する分散型増幅器であって、
・第1端部および第2端部を有し、上記第1端部において上記分散型増幅器に入力を与える入力伝送媒体と、
・第1端部および第2端部を有し、上記第2端部において上記分散型増幅器に出力を与える出力伝送媒体と、
・入力信号のための少なくとも第1パスおよび第2パスを、上記分散型増幅器の入力から上記分散型増幅器の出力まで形成するために、少なくとも第1増幅部および第2増幅部を有する増幅器構成であって、上記少なくとも第1増幅部および第2増幅部は、上記構成の入力において上記入力伝送媒体と接続され、上記構成の出力において上記出力伝送媒体と接続される、増幅器構成とを備え、
・上記第1パスは第1時間遅延と関連付けられ、上記第2パスは第2時間遅延と関連付けられ、上記第1時間遅延と上記第2時間遅延との間に差があり、
・上記第1パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音と、上記第2パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音との間の位相差、及び、分散型増幅器の出力の前における雑音の相殺的干渉を発生させ、これによって雑音抑制帯域における雑音を抑制するために、上記差は上記第2周波数を12倍したものの逆数よりも大きい、分散型増幅器が提供される。
【0018】
第1増幅部は、第2増幅部よりも上記増幅器の入力により近くに接続されてもよく、上記第1増幅部は、上記第2増幅部のゲインよりも高いゲインを有することが好ましい。
【0019】
分散型増幅器は、上記第1増幅部および第2増幅部よりも多くの増幅部を有してもよく、後の増幅部のそれぞれのゲインは、例えば、上記分散型増幅器の出力に向かう方向に、直線的に、または指数関数的に減少してもよい。
【0020】
従来のDLNAでは、増幅器の出力に最も近い増幅部は、増幅器の入力に最も近い増幅部よりも、増幅された入力雑音に貢献する。なぜなら、増幅部は全ての先行する増幅部の入力雑音を増幅するからである。一方、従来の分散型増幅器において、全ての増幅部が、出力信号および出力雑音に対して同じように貢献する。したがって、増幅器の入力に最も近い増幅部に対して、増幅器の出力に最も近い増幅部について、より低いゲインを用いることにより、増幅された入力雑音は、入力信号よりも低減され、DLNAについてのより低い雑音指数をもたらす。
【0021】
多くの増幅部を有する理想的な分散型増幅器について、入力伝送媒体に沿う各増幅部について上記ゲインは指数関数的に減少するとき、上記増幅器の最小雑音指数は、関数√3/2によって減少される。表1は、各増幅部について、また、指数関数的に減少するゲインを有する理想的な分散型増幅器について、同じゲインを有する、理想的な従来の分散型増幅器におけるゲイン、入力雑音および出力雑音、並びに最小雑音指数を比較する。
【0022】
【表1】
減少するゲインは、増幅部、または伝送媒体、またはその両方の組み合わせによって実行され得る。増幅部での実行では、後の(出力に向かう)増幅部において、上記増幅部の増幅装置の出力と、出力伝送媒体との間の、増加する数値の抵抗または減少する数値のコンデンサを用いる。抵抗を用いることは、増幅器を高周波数で安定させるというメリットがあるが、さらなる雑音を導入してしまう虞もある。二重ゲートトランジスタを用いるとき、第2ゲートにおける抵抗は、ゲインを低減するために用いられ得、また、トランジスタを安定化し得る。ゲインの変化はまた、高出力インピーダンスを有する(電流源のように作用する)増幅部を用いるとき、出力伝送媒体のインピーダンスを高インピーダンスから低インピーダンスへ減らすようにすることによって実行され得る。
【0023】
したがって、各増幅部は、周波数プロフィールに対するゲインと関連付けられてもよく、プロフィールは低周波数よりも高周波数についてより速く減衰し得る。
【0024】
増幅部における同じ半導体装置を用いるとき、減少ゲインを実現するために、上記装置のバイアスポイントが異なってもよい。例えば、高周波数を増幅するために重要な第1増幅部についての小さくより高い周波数装置を用いることによって、また、低周波数を増幅し、入力伝送媒体を終了させるための最後の増幅部におけるより大きな装置を用いることによって、異なる半導体装置が、増幅部において用いられ得る。
【0025】
[図面の簡単な説明]
添付の図面を参照して、例示としてのみ本発明をさらに詳しく説明する。
【0026】
[図1]本発明に係る分散型低雑音増幅器(DLNA)の高レベル図である。
【0027】
[図2]本発明に係るDLNAの様々な特性を示すグラフである。
【0028】
[図3]本発明に係るDLNAの一実施形態の図である。
【0029】
[図4]上記増幅器の増幅部を形成する増幅部についての周波数に対する相対ゲインの図である。
【0030】
[図5]上記増幅器の増幅部についての周波数に対する位相変化の図である。
【0031】
[図6]本発明に係るDLNAの他の図である。
【0032】
[図7a]図8aのDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【0033】
[図7b]図8bのDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【0034】
[図8a]従来のDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【0035】
[図9a]本発明に係るDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【0036】
[図8b]図8aにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【0037】
[図9b]図9aにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【0038】
[図8c]全雑音に加えて信号を示し、これによって、図8aのDLNAについての雑音除去効果を示す位相図である。
【0039】
[図9c]全雑音に加えて信号を示し、これによって、図8bのDLNAについての雑音除去効果を示す位相図である。
【0040】
[図10a]本発明に係るDNLAの出力信号の分散を示す図である。
【0041】
[図10b]従来のDLNAと、本発明に係るDLNAとについての出力信号と入力信号とを示す時間ドメイン図である。
【0042】
[図10c]従来のDNLAと、本発明に係るDNLAとについての雑音パワーの図である。
【0043】
[図11]本発明に係るDNLAの代替実施形態における物理的配置を示す平面線図である。
【0044】
[図12]図11の線XIIにおける断面である。
【0045】
[図13]本発明に係るDNLAの電界効果トランジスタ(FET)のソースと増幅部を接地するためにインダクタを用いることによって、どのように雑音指数が低減されるかを示す、周波数に対する雑音温度を示す図である。
【0046】
[図14]DLNAの入力に向かって伝搬する入力雑音を示す、本発明に係るDLNAを示す図である。
【0047】
[図15a]従来のDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【0048】
[図16a]本発明に係るDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【0049】
[図16a]図15aにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音を示す位相図である。
【0050】
[図16b]図15bにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音を示す位相図である。
【0051】
[図17]共通入力伝送媒体における第1および第2入力と、増幅部の2セットと、第1出力伝送媒体および第2出力伝送媒体とを備える、本発明に係る他のDLNAを示す図である。
【0052】
[図18]本発明に係るDNLAのさらに他の実施形態を示す図である。
【0053】
[図19]相関角度に対する最適斜行位相のグラフである。
【0054】
[図20]相関角度に対する斜行による雑音指数の低減のグラフである。
【0055】
[発明の好ましい実施形態の説明]
本発明に係る分散型低雑音増幅器(DLNA)は、図1における参照番号10で概ね示される。DLNAは、第1周波数f1と第2周波数f2との間に伸びる増幅帯域11(図2に示す)を有する。
【0056】
図1を参照すると、DLNAは、第1端部14および第2端部16を有する入力伝送媒体(ITM)12を備える。DLNAは、第1端部20および第2端部22を有する出力伝送媒体(OTM)18をさらに備える。DLNAの入力は、端部14に設けられ、DLNAの出力は端部22に設けられる。適切な終端手段26および適切な終端手段28は、ITM12における第2端部16に設けられてもよく、OTM18の第1端部20に設けられてもよい。DLNAは、分散型増幅器における入力14から分散型増幅器における出力22まで、入力信号についての少なくとも第1パス36.1および第2パス36.2を設けるために、入力伝送媒体への構成の入力32において、また、出力伝送媒体への構成の出力34において接続される、少なくとも第1増幅部30.1から第2増幅部30.nを含む増幅器構成30を備える。第1パス36.1および第2パス36.2のそれぞれは、差である異なる位相の変化と関連付けられ、上記差は、雑音抑制帯域についての周波数における30度よりも大きく、第1パスに沿って伝搬する、増幅器構成30によって生成される雑音と、第2パスに沿って伝搬する、増幅器構成30によって生成される雑音との間の位相差、及び、分散型増幅器10の出力22の前で発生する雑音の相殺的干渉をもたらし、これによって、雑音抑制帯域13における雑音を抑制する。
【0057】
図1に示すように、好ましい実施形態では、第1増幅部30.1および第2増幅部30.2以上の増幅部を、ITMおよびOTMの間に設ける。第1増幅部におけるゲインA1は、第2増幅部のゲインA2とは異なる。好ましい実施形態では、少なくともいくつかの隣接する増幅部のそれぞれのゲインは、例えば、DLNAの入力14から、その出力22に向かった方向に、すなわち、A1>A2>A3.....>Anの方向に直線的に、または指数関数的に減少する。
【0058】
図2は、本発明に係る分散型DLNA10の様々な特性を示す。曲線Bは、第1増幅部30.1と中間増幅部との間の位相差を示す。曲線Aは、第1増幅部30.1と最終増幅部30.nとの間の位相差を示す。曲線Cは、増幅帯域11にわたってほとんど一定のゲインプロフィールを示す。曲線Dは、DLNA10の雑音指数を示す。雑音指数は、雑音抑制の範囲内で低い、または、低雑音帯域13において低い。雑音抑制帯域11よりも低い周波数において、増幅部間の位相差は小さい。これらの小さい差は、わずかな雑音除去しかもたらさない。高周波数において、位相差が180度に近くなるとき、異なる増幅部からの信号が互いを除去し始めるにつれて、増幅器のゲインが減少し始める。この減少したゲインにより、雑音指数は増加する。
【0059】
背景技術として、従来からDLNAにおいて用いられる高電子移動度トランジスタ(HEMT)において、トランジスタのチャンネルにおいて生成される雑音は、ゲート端子に静電的に結合されるが、ドレイン端子には抵抗として結合される。これにより、(ゲートにおける)入力雑音と(ドレインにおける)出力雑音との間にほとんど90°の位相差がもたらされ、その結果Cr<<Ciとなる。従来の分散型増幅器において雑音除去はほとんど全く起こらず、本明細書の導入で参照するように、高調波増幅器よりもはるかに高い雑音指数がもたらされる。
【0060】
入力雑音はより高い周波数においてさらに高くなるので、上記増幅部におけるゲインは、低い周波数よりも高い周波数においてより早く減少し得る。図4および図5は、本発明に係るDLNAにおける増幅部30.1から30.6までについての周波数に対する典型的なゲインプロフィールおよび位相プロフィールをそれぞれ示す。
【0061】
本発明に係るDLNA10は、入力14から各増幅部を介して出力22まで、異なる時間遅延を有する。時間遅延Tと位相遅延aとの間の関係は、周波数fにおいてa=36fT度である。増幅部によって増幅される入力信号38は、出力22において同時に到達せず、そのため同相に加わらない。この位相差は、斜行と称される。
【0062】
この斜行は、上記出力雑音と上記増幅される入力雑音との間の位相を変化させる。斜行を用いて、出力雑音と増幅される入力雑音との間の相関は、約90°から約180°へ増加され得、これによってより良好な雑音除去が行える。多くの増幅部を有する最適斜行分散型増幅器について、雑音指数は高調波増幅器と同様であってもよい(√(1−Cim2)−Creに比例する)(表1参照)。
【0063】
この技術は、図6から図9における例を利用して説明する。図7aおよび図7bにおける位相図は、入力信号Sと比較して、増幅部30.1によって図6のポイント100において生成される入力雑音Niと、ポイント102において生成される出力雑音N0とを示す。入力雑音は出力雑音と関連付けられると仮定するが、この例においては約90°の位相差を有する。図8aおよび図9aは、従来の分散型増幅器、および本発明に係る斜行分散型増幅器10について、各増幅部30.1から30.nを介した、入力14から出力22までの時間遅延を示す。図8aに示される従来の場合、時間差がなく、それに伴って、入力伝送媒体を進む全ての信号(および雑音)は、出力に到達するとき同相にある。増幅される入力雑音Niはこのため、出力雑音N0とともに位相から90°外れた状態のままである。それらは相関するので、図8cにおけるNtによって示されるように、それらは加えられる。図9aに示されるようにいくつかの斜行が加えられるとき、増幅部が入力に近づくほど、信号は入力14から各部を介して出力22に到達するためにより長い時間をかける。その結果、出力22に到達する信号(および増幅された入力雑音)は、図9bに示すように、位相からわずかにはみ出る。結果として得られる増幅された入力雑音は、出力雑音を有する位相から90°以上はみ出るが、その結果、いくつかの雑音が除去される。図9cにおける信号矢印と比べて、全雑音Ntはこのため、斜行を有さない場合よりも小さく、これについては図8cを参照してもらいたい。
【0064】
斜行により出力22における位相の外に到達する信号は、増幅器10のパルス応答を歪め得る。図10aは、どのように斜行がパルスを拡張するかを示して、入力信号に比べて出力信号が分散していることを示す。本来のパルス形状が求められる場合、出力信号は、増幅器10の後で分散されなくてもよい。斜行DLNA10について、図10bは、斜行を有さない従来のDNLAと比べて、第1増幅部30.1の雑音に何が起こっているか(時間ドメインにおいて)を示す。曲線Aは出力雑音であり、曲線Bは90°の位相シフトを有する相関する入力雑音である。増幅された入力雑音は、斜行が全く無く、また、斜行を有する曲線Cのように見えるとき、同様に(曲線A)に見える。この増幅された入力雑音は、出力雑音に加えられる。斜行のため、出力雑音の大部分は、増幅された入力雑音によって除去される。これは、図10cにおいて、曲線Eによって示される斜行を有する場合についての雑音パワーと、斜行がない場合の曲線Dについての雑音パワーとを比較することによって分かることである。斜行を有さない出力雑音は、正しい斜行を有する増幅器10についての出力雑音よりも高い周波数雑音を有する。
【0065】
伝送媒体12、18について、時間遅延Tは通常周波数が独立している。増幅部30.1から30.nを介する時間遅延は、通常周波数が依存している。
【0066】
2つの増幅部の間の周波数独立時間遅延について、位相遅延差がより大きくなると、周波数はより高くなる。その結果、増幅器のゲインは、増幅部が周波数独立ゲインを有するとき周波数とともに落ちる。これは、より高い周波数についての増幅部のゲインを増加することによって修正され得る。入力12に始まり、増幅部30.1から30.nを介して出力22で終わる位相/時間遅延は、3つの構成要素の合計、つまり、増幅器の入力12から増幅部の入力までの第1遅延部と、増幅部を介する第2遅延部と、増幅部の出力から増幅器の出力22までの第3遅延部との合計である。
【0067】
斜行は、多くの方法で実行され得る。これは、増幅部を介する遅延、または、伝送媒体における増幅部の間における遅延、またはこの2つの組み合わせを選択する、または操作することによって実行し得る。
【0068】
増幅部において、遅延はソースのインダクタンスおよび/またはいくつかの付加的な時間遅延回路によって実行され得る。
【0069】
伝送媒体によって実行されるとき、入力伝送媒体および出力伝送媒体における増幅部の間の時間遅延は異なっていなければならない。これは、異なる誘電性物質を用いることによって最も簡単に行えることであり、これによって、異なる速度の媒体を有することができる。2つの増幅部の間における入力伝送媒体および出力伝送媒体の長さはまた異ならせてもよい。
【0070】
速度vおよび長さlを有する伝送媒体について、d=l/vによって遅延が与えられる。2GHzの最高または第2周波数を有する斜行分散型増幅器において、遅延は2GHzにおける90°の位相シフトについてd>125psよりも大きくなければならない。伝送速度が光の速度の半分である場合、長さl>19mmはこの斜行に到達する。なお、これはMMICにおいて実行するには長すぎる。
【0071】
伝送媒体がある長さを有するが、速度v0を有する出力媒体が速度viを有する入力伝送媒体と異なる場合、時間遅延の差は、d=l(1/v0−1/vi)またはl=dv0vi/(vi−v0)である。入力伝送媒体の速度が光の速度であり、出力媒体の速度が光の速度の半分である場合、l=dc。d>125psについては、l>38mmが必要とされる。
【0072】
図11および図12は、斜行分散型増幅器の物理的配置を示し、上記増幅器は5つの増幅部30.1から130.5を有する。出力伝送媒体118は、FR4 PCB 119におけるマイクロストリップ伝送媒体であり、接地平面120は一方にあり、出力伝送媒体118は他方にある。FR4の比誘電率は約4であり、光速の約半分の速度の伝送媒体がもたらされる。
【0073】
入力伝送媒体は、PCBの接地平面の上に位置する大気中に吊るされる0.6mmの銀のワイヤを有する。トランジスタのゲート容量のため、伝送媒体速度は光の速度よりも少し遅いが、出力伝送媒体の速度よりははるかに速い。
【0074】
増幅部の間の伝送媒体長さは5mmから20mmの間であるが、これは0.5GHzから2GHzの間の最小雑音について最適であることが分かった。最終増幅部130.5は、入力伝送媒体112を終結するためにドレイン−ゲートフィードバックを有する。トランジスタのドレインは、15Ωから250Ωまで増加する抵抗を介して出力伝送媒体に連結される。DCバイアス回路は図示しない。トランジスタのソースは、約0.4nHのインダクタンスを有するDCブロッキングコンデンサを用いて接地される。
【0075】
DLNA10における第1増幅部30.1は通常HEMTを備え、HEMTのゲートは入力伝送媒体12に接続され、ソースは接地され、ドレインは他の構成要素または第2増幅段階を介して出力伝送媒体18に接続される。
【0076】
入力伝送媒体に転送されるゲート雑音(入力雑音)および出力伝送媒体に転送されるドレイン雑音(出力雑音)のほかに、第2雑音信号がソースターミナルを介してトランジスタから出て行く。このソース雑音電流は、ドレイン雑音電流を有する位相から180°外れる。あるインピーダンスZsを介してソースを接地するとき、vs、n=Zsis、nのソース雑音電圧が生成される。このソース雑音電圧は増幅され(共通ゲート増幅器と同様に)、そしてこの増幅されたソース雑音がドレイン雑音に加えられる。正しいソースインピーダンスが選択される場合(インダクタンスなど)、増幅されたソース雑音はあるドレイン雑音を除去する。図13は、トランジスタにおける最小雑音指数(雑音温度として測定)が、インダクタを介してソースを接地することによってどのように低減するかを示す。
【0077】
ソースのインダクタンスは、通常増幅器の帯域より高い周波数においてトランジスタを不安定にするという不利な点を有し得る。このため、最適な状態よりも小さいソースインダクタンスが用いられ得る。
【0078】
ソース接地インダクタンスはまた、本発明に係る斜行分散型増幅器において用いられ得る。ソースインダクタおよび斜行による雑音除去の組み合わせは、高調波増幅器よりもはるかに低い雑音指数をもたらす。接地インダクタンスが増幅器の入力14から出力までの方向における各増幅部について増加されるとき、最小雑音指数が達成されることが分かった。図13は、増加するソースインダクタンスを有する斜行分散型増幅器における最小雑音指数を示す。増幅部における減少するゲインのため、より大きなインダクタンスは必ずしも不安定にすることはない。
【0079】
なお、ソースインダクタンスを増加することによって、増幅部を介する位相遅延が異なり、これは斜行に貢献する。
【0080】
入力伝送媒体12の第2端部における終端素子の雑音が、低周波数における増幅器の雑音に重要な影響を与えることは周知である。トランジスタをアクティブターミネータとして用いるとき、抵抗を用いるときよりも低い終端雑音が生成されることも知られている。米国特許5,365,197は、このような技術を教示している。アクティブターミネーションは増幅器の入力として見られ、出力は終端インピーダンスを判定するフィードバック回路を介して入力にフィードバックされる。終端増幅器の出力はまた、出力伝送媒体に追加され得、終端増幅器を最終増幅部とする。最終増幅部30.nをコールドターミネータとして用いることによって、ターミネータとしての追加の増幅器が必要でなくなる。ターミネーションフィードバックによって増幅器10のゲインが減少するので、これはゲイン増幅器を減少してはじめて可能になる。
【0081】
図14に示すように、増幅部230.1から230.7によって入力伝送媒体12に加えられる雑音の一部は、入力14の方向に伝搬する。この雑音はまた、それが通過する増幅部によって増幅される。増幅部間の伝送媒体における位相遅延は4分の1の波長である場合、増幅された雑音間の位相差は180°よりも大きく、これによって雑音除去が可能となる。このため、増幅部間の異なる遅延時間を有する、入力媒体および出力媒体を用いることによって斜行を実行する場合、例えば遅延における差が波長の4分の1と比較し得る場合、これが後方への雑音の除去を引き起こす。
【0082】
図15および図16は、伝送媒体(図15aおよび図15b)における小さな遅延を有する第1分散型増幅器についての最終増幅部230.7によって生成される増幅された後方への雑音と、伝送媒体(図16aおよび図16b)における波長の4分の1と比較し得る遅延を有する第2分散型増幅器についての最終増幅部230.7によって生成される増幅された後方への雑音とを比較する。
【0083】
入力伝送媒体12における誤った、または対向する方向の信号伝搬が出力を打ち消すので、2つの斜行分散型増幅器400についての入力伝送媒体12を、図17に示すように用いることができる。入力伝送媒体12は、第1入力および第2入力のそれぞれによってその第1端部および第2端部において終結される。いくつかのアプリケーションにおいて、無線アストロノミーと同様に、入力は非常に小さい雑音を有し、それゆえ良好な低雑音ターミネータである。広い帯域にわたる2つの増幅器の入力間における隔離は、増幅部の数の逆数に比例する。多くの増幅部はそのため、良好な隔離を必要とする。
【0084】
図18は、連続二重ゲートFETを用い、低雑音指数を実現するものと出願人が考える、連続増幅器300の例とを示す。FETにおける第1ゲート312は入力伝送媒体を形成し、FETにおけるドレイン318は出力伝送媒体を形成する。ゲート線およびドレイン線についての異なる誘電性媒体を用いることによって、速度を異ならせることが可能であり、斜行をもたらすことができる。減少するゲインは、ドレイン線を徐々に細くし、第2ゲート320の抵抗を変化させることによって、または、第2ゲートおよびドレイン318の間の半導体322の抵抗を変化させることによって実行し得る。
【0085】
再び図1を参照して、第1増幅部30.1が増幅器10を介してθ1の位相遅延を有するようにし、第2増幅部30.2がθ2の位相遅延を有するようにする。位相(または斜行角度)における差は、θs=θ2−θ2である。第1増幅部30.1の雑音による雑音指数におけるこの斜行角度の効果について考察する。
【0086】
単純化のため、増幅部は同じゲインA1を有するものと仮定する。これらの2つの増幅部による増幅器10のゲインは、
A=A1[(1+cos(θs))2+sin2(θs)]である。
【0087】
第1増幅部30.1が、出力ターミナル22へ伝搬する出力雑音i0と、第2部30.2によって増幅される入力雑音とを有するようにし、出力22において雑音ijを与える。また単純化のために、出力雑音および増幅された入力雑音が出力22において同じ大きさを有すると仮定する。すなわち、
【0088】
【数2】
と仮定する。上記(斜行を有しない)増幅された入力雑音は、3つの部分に分割することができる。すなわち、出力雑音と同相にある相関する部分と、出力雑音が有する位相から90度外れた相関する部分と、出力雑音と相関しない部分とである。ii=iocr+ioci+ii,uである。
【0089】
第1増幅部30.1による全出力雑音はまた、3つの対応する要素を有する。
【0090】
【数3】
cは相関係数の大きさであり、θcが相関位相である場合、cr=cos(θc)およびcr=csin(θc)である。
【0091】
斜行位相θsについての雑音指数Fは、以下の状態でN/Aと比例する。
【0092】
【数4】
雑音指数は、斜行位相θsが以下のように選択されるとき最小である。
【0093】
【数5】
図19および図20は、最適な斜行位相θs、optと、異なる相関係数についての斜行を有する、また斜行を有さない増幅器F(θs、opt)/F(0)の間の雑音指数における対応する減少とを示す。最適斜行角度が約30°よりも小さいとき、斜行が雑音指数を著しく減少させることはない。
【0094】
アジレントATF35143のような典型的な低雑音高電子移動度トランジスタ(HEMT)は、およそc=0.9の相関係数と、およそθc=90°の相関角度とを有する。第1増幅部30.1についてのこのようなトランジスタを用いるとき、最適斜行位相は90度であり、5の因数を有する第1増幅部雑音指数を減少させる。実際、第2増幅部30.2の雑音のため、最適斜行はおよそ
【0095】
【数6】
の因数を有する増幅器10の雑音指数を減少させる。
【0096】
図3は、本発明に係る斜行増幅器10の他の実施形態を示す図である。出力伝送媒体18のインピーダンスは、その第1端部28から増幅器の出力22までの方向に減少する。入力伝送媒体12のインピーダンスは、第1伝送媒体の第1端部14から、その第2端部16までの方向に増加する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係る分散型低雑音増幅器(DLNA)の高レベル図である。
【図2】本発明に係るDLNAの様々な特性を示すグラフである。
【図3】本発明に係るDLNAの一実施形態の図である。
【図4】上記増幅器の増幅部を形成する増幅部についての周波数に対する相対ゲインの図である。
【図5】上記増幅器の増幅部についての周波数に対する位相変化の図である。
【図6】本発明に係るDLNAの他の図である。
【図7a】図8aのDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【図7b】図8bのDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【図8a】従来のDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【図9a】本発明に係るDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【図8b】図8aにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【図9b】図9aにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【図8c】全雑音に加えて信号を示し、これによって、図8aのDLNAについての雑音除去効果を示す位相図である。
【図9c】全雑音に加えて信号を示し、これによって、図8bのDLNAについての雑音除去効果を示す位相図である。
【図10a】本発明に係るDNLAの出力信号の分散を示す図である。
【図10b】従来のDLNAと、本発明に係るDLNAとについての出力信号と入力信号とを示す時間ドメイン図である。
【図10c】従来のDNLAと、本発明に係るDNLAとについての雑音パワーの図である。
【図11】本発明に係るDNLAの代替実施形態における物理的配置を示す平面線図である。
【図12】図11の線XIIにおける断面である。
【図13】本発明に係るDNLAの電界効果トランジスタ(FET)のソースと増幅部を接地するためにインダクタを用いることによって、どのように雑音指数が低減されるかを示す、周波数に対する雑音温度を示す図である。
【図14】DLNAの入力に向かって伝搬する入力雑音を示す、本発明に係るDLNAを示す図である。
【図15a】従来のDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【図16a】本発明に係るDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[導入および背景技術]
本発明は、低雑音増幅器に関し、より具体的には、分散型低雑音増幅器に関する。増幅器については、典型的ではあるが狭い意味ではなく、無線テレスコープアプリケーションにおける応用を見出し得る。
【0002】
無線テレスコープにおける最近の傾向は、広帯域にわたって高い感度を有するテレスコープを組み立てることである。高感度を得るために、非常に大きな収集領域および超低雑音増幅器が求められる。大きな収集領域は、数百のより小さな受信器を備え、それぞれ低雑音増幅器(LNA)を有している。LNAはそのため、広帯域にわたって低雑音指数を有するばかりでなく、大きなダイナミックレンジにわたって直線的であり、あまり高価でないことが必要とされる。
【0003】
出願人の知識の及ぶ範囲では、無線テレスコープにおいて用いられるほとんど全てのLNAは、高調波LNAである。これらの高調波LNAは、第1増幅段階において単一のトランジスタを有する。各周波数において、トランジスタは最小雑音指数Fminを有し、この指数は、トランジスタが入力インピーダンスZoptに接続されるときに達成される。インピーダンス整合回路はこのため、増幅器の入力インピーダンスをトランジスタの最適低雑音インピーダンスZoptに整合させることが求められる。高調波増幅器は、2つの不利な点を有している。第1に、インピーダンス整合回路の高調波特性により、LNAの低雑音性能は広帯域にわたって低下し、第2に、インピーダンス整合回路はまた、信号損失、挿入損失、および回路によって生成される付加的な雑音をもたらす。
【0004】
他の周知である増幅器の態様は、分散型増幅器である。分散型増幅器は、非常に広い増幅帯域を可能にし、高調波増幅器よりもより良好な直線性およびダイナミックレンジを有する。このため、それらの雑音指数は除いて、無線テレスコープにおける帯域増幅器として理想的に適したものとなる。分散型LNA(DLNA)は、高調波LNAよりも高い雑音指数を有することは周知である。
【0005】
分散型増幅器は、その一端部において増幅器に対する入力を有する入力伝送媒体と、その一端部における増幅器に対する出力を有する出力伝送媒体と、各増幅器の入力が入力伝送媒体に接続され、増幅部の出力が出力伝送媒体に接続された状態の、多数の出力部とを備える。増幅部の入力インピーダンスに加えて、通常は容量性である入力伝送媒体は、伝送線を形成する。信号が増幅器に印加されるとき、それは入力伝送媒体を沿って伝搬する。信号が各部を通過するとき、それは増幅され、出力伝送媒体に加えられる。
【0006】
通常の分散型増幅器において、増幅される信号は、出力伝送媒体の位相において加えられる。言い換えると、各増幅部からの信号は、増幅器の出力に同時に到達する。各増幅部を介した、入力から出力までの時間遅延は、各部について同じである(すなわち、差異が、入力信号の期間よりもはるかに短い場合)。それぞれがAv1の電圧ゲインを有するn部を有する理想的な分散型増幅器について、全パワーゲインはA∝(Av1n)2である。理想としては、上記増幅部の他に雑音を生成する他の構成要素はなく、伝送媒体における信号損失がないものと仮定する。
【0007】
しかしながら、各増幅部はまた、出力伝送媒体に伝送される雑音を生成する。各部の伝送がN1,0の雑音パワーを有すると、出力伝送媒体に加えられる全雑音がN0=N1,0nである。なぜなら、増幅部の雑音は無相関であるからである。雑音指数(または、雑音−信号比)はそれゆえ、増幅部N0/Aの数nに反比例して減少する。
【0008】
しかし、各部によって生成されるいくつかの雑音はまた、入力伝送媒体に転送される。この入力雑音は、他の増幅部によって増幅され、出力における増幅された入力雑音N1、i∝n2を与える信号に類似して、出力伝送媒体に加えられる。全ての増幅された入力雑音は、多くの増幅部についてNi∝n3である。
【0009】
そのため、増幅部の数が増加するにつれて、出力雑音−信号比が減少するが、増幅された入力雑音/信号比は増加する。分散型増幅器はそれゆえ、最適な数の増幅部を有し、それに対して全雑音−信号比は最小である。
【0010】
増幅部における、入力雑音と出力雑音との間には、一定の補正が行われる。なぜなら、雑音は共通の雑音源によって生成されるからである。C=Cre+jCimを、複素相関係数として考えてみる。上記増幅部を介する遅延が同じであるとき、出力雑音N1,0の相関する増幅部と増幅された入力雑音N1,iの相関する増幅部との間の位相が、入力雑音と出力雑音との間の位相と同じである。Cの実部分(同相部分)のみが雑音除去を行い、理想的な分散型増幅器の最小雑音指数は1−Crと比例する。
【0011】
高調波LNAにおける適切な入力インピーダンスZoptを用いることによって、入力雑音は、トランジスタにまた反射されるので、相関部分の位相は出力雑音が有する位相となる。増幅される入力雑音は、出力雑音の大部分をキャンセルし、
【0012】
【数1】
に比例する雑音指数をもたらす。雑音増幅器において用いられる高電子移動度トランジスタについて、Cimは1に近く、高調波増幅器の雑音は、分散型増幅器の雑音よりはるかに低い。
【0013】
[発明の目的]
したがって、本発明の目的は、少なくとも上記の不利な点が緩和され得ると出願人が考える、代替の分散型低雑音増幅器を提供することである。
【0014】
[発明の概要]
本発明によると、第1の周波数からより高い第2の周波数へ伸びる増幅帯域を有する分散型増幅器であって、
・第1端部および第2端部を有し、上記第1端部において上記分散型増幅器に入力を与える入力伝送媒体と、
・第1端部および第2端部を有し、上記第2端部において上記分散型増幅器に出力を与える出力伝送媒体と、
・入力信号のための少なくとも第1パスおよび第2パスを、上記分散型増幅器の入力から上記分散型増幅器の出力まで形成するために、少なくとも第1増幅部および第2増幅部を有する増幅器構成であって、上記少なくとも第1増幅部および第2増幅部は、上記構成の入力において上記入力伝送媒体と接続され、上記構成の出力において上記出力伝送媒体と接続される、増幅器構成とを備え、
・第1パスは第1位相変化と関連付けられ、第2パスは第2位相変化と関連付けられ、第1位相変化と第2位相変化との間には差があり、
・上記第1パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音と、上記第2パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音との間の位相差、及び、分散型増幅器の出力の前における雑音の相殺的干渉を発生させ、これによって雑音抑制帯域における雑音を抑制するために、上記差は雑音抑制帯域における周波数について30度よりも大きい、分散型増幅器が提供される。
【0015】
異なる位相の変化は、第1時間遅延および第2時間遅延とそれぞれ関連付けられる第1パスおよび第2パスのそれぞれによって引き起こされ得、第1時間遅延と第2時間遅延との間に差が生じ、上記差は上記第2周波数を12倍したものの逆数よりも大きい。
【0016】
上記第2周波数を12倍したものの逆数よりも大きい差は、30度よりも大きい位相差と等しい。好ましくは、上記差は、45度よりも大きく、より好ましくは、60度よりも大きく、より好ましくは、約90度である。
【0017】
したがって、本発明の他の態様によると、第1からより高い第2の周波数まで伸びる増幅帯域を有する分散型増幅器であって、
・第1端部および第2端部を有し、上記第1端部において上記分散型増幅器に入力を与える入力伝送媒体と、
・第1端部および第2端部を有し、上記第2端部において上記分散型増幅器に出力を与える出力伝送媒体と、
・入力信号のための少なくとも第1パスおよび第2パスを、上記分散型増幅器の入力から上記分散型増幅器の出力まで形成するために、少なくとも第1増幅部および第2増幅部を有する増幅器構成であって、上記少なくとも第1増幅部および第2増幅部は、上記構成の入力において上記入力伝送媒体と接続され、上記構成の出力において上記出力伝送媒体と接続される、増幅器構成とを備え、
・上記第1パスは第1時間遅延と関連付けられ、上記第2パスは第2時間遅延と関連付けられ、上記第1時間遅延と上記第2時間遅延との間に差があり、
・上記第1パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音と、上記第2パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音との間の位相差、及び、分散型増幅器の出力の前における雑音の相殺的干渉を発生させ、これによって雑音抑制帯域における雑音を抑制するために、上記差は上記第2周波数を12倍したものの逆数よりも大きい、分散型増幅器が提供される。
【0018】
第1増幅部は、第2増幅部よりも上記増幅器の入力により近くに接続されてもよく、上記第1増幅部は、上記第2増幅部のゲインよりも高いゲインを有することが好ましい。
【0019】
分散型増幅器は、上記第1増幅部および第2増幅部よりも多くの増幅部を有してもよく、後の増幅部のそれぞれのゲインは、例えば、上記分散型増幅器の出力に向かう方向に、直線的に、または指数関数的に減少してもよい。
【0020】
従来のDLNAでは、増幅器の出力に最も近い増幅部は、増幅器の入力に最も近い増幅部よりも、増幅された入力雑音に貢献する。なぜなら、増幅部は全ての先行する増幅部の入力雑音を増幅するからである。一方、従来の分散型増幅器において、全ての増幅部が、出力信号および出力雑音に対して同じように貢献する。したがって、増幅器の入力に最も近い増幅部に対して、増幅器の出力に最も近い増幅部について、より低いゲインを用いることにより、増幅された入力雑音は、入力信号よりも低減され、DLNAについてのより低い雑音指数をもたらす。
【0021】
多くの増幅部を有する理想的な分散型増幅器について、入力伝送媒体に沿う各増幅部について上記ゲインは指数関数的に減少するとき、上記増幅器の最小雑音指数は、関数√3/2によって減少される。表1は、各増幅部について、また、指数関数的に減少するゲインを有する理想的な分散型増幅器について、同じゲインを有する、理想的な従来の分散型増幅器におけるゲイン、入力雑音および出力雑音、並びに最小雑音指数を比較する。
【0022】
【表1】
減少するゲインは、増幅部、または伝送媒体、またはその両方の組み合わせによって実行され得る。増幅部での実行では、後の(出力に向かう)増幅部において、上記増幅部の増幅装置の出力と、出力伝送媒体との間の、増加する数値の抵抗または減少する数値のコンデンサを用いる。抵抗を用いることは、増幅器を高周波数で安定させるというメリットがあるが、さらなる雑音を導入してしまう虞もある。二重ゲートトランジスタを用いるとき、第2ゲートにおける抵抗は、ゲインを低減するために用いられ得、また、トランジスタを安定化し得る。ゲインの変化はまた、高出力インピーダンスを有する(電流源のように作用する)増幅部を用いるとき、出力伝送媒体のインピーダンスを高インピーダンスから低インピーダンスへ減らすようにすることによって実行され得る。
【0023】
したがって、各増幅部は、周波数プロフィールに対するゲインと関連付けられてもよく、プロフィールは低周波数よりも高周波数についてより速く減衰し得る。
【0024】
増幅部における同じ半導体装置を用いるとき、減少ゲインを実現するために、上記装置のバイアスポイントが異なってもよい。例えば、高周波数を増幅するために重要な第1増幅部についての小さくより高い周波数装置を用いることによって、また、低周波数を増幅し、入力伝送媒体を終了させるための最後の増幅部におけるより大きな装置を用いることによって、異なる半導体装置が、増幅部において用いられ得る。
【0025】
[図面の簡単な説明]
添付の図面を参照して、例示としてのみ本発明をさらに詳しく説明する。
【0026】
[図1]本発明に係る分散型低雑音増幅器(DLNA)の高レベル図である。
【0027】
[図2]本発明に係るDLNAの様々な特性を示すグラフである。
【0028】
[図3]本発明に係るDLNAの一実施形態の図である。
【0029】
[図4]上記増幅器の増幅部を形成する増幅部についての周波数に対する相対ゲインの図である。
【0030】
[図5]上記増幅器の増幅部についての周波数に対する位相変化の図である。
【0031】
[図6]本発明に係るDLNAの他の図である。
【0032】
[図7a]図8aのDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【0033】
[図7b]図8bのDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【0034】
[図8a]従来のDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【0035】
[図9a]本発明に係るDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【0036】
[図8b]図8aにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【0037】
[図9b]図9aにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【0038】
[図8c]全雑音に加えて信号を示し、これによって、図8aのDLNAについての雑音除去効果を示す位相図である。
【0039】
[図9c]全雑音に加えて信号を示し、これによって、図8bのDLNAについての雑音除去効果を示す位相図である。
【0040】
[図10a]本発明に係るDNLAの出力信号の分散を示す図である。
【0041】
[図10b]従来のDLNAと、本発明に係るDLNAとについての出力信号と入力信号とを示す時間ドメイン図である。
【0042】
[図10c]従来のDNLAと、本発明に係るDNLAとについての雑音パワーの図である。
【0043】
[図11]本発明に係るDNLAの代替実施形態における物理的配置を示す平面線図である。
【0044】
[図12]図11の線XIIにおける断面である。
【0045】
[図13]本発明に係るDNLAの電界効果トランジスタ(FET)のソースと増幅部を接地するためにインダクタを用いることによって、どのように雑音指数が低減されるかを示す、周波数に対する雑音温度を示す図である。
【0046】
[図14]DLNAの入力に向かって伝搬する入力雑音を示す、本発明に係るDLNAを示す図である。
【0047】
[図15a]従来のDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【0048】
[図16a]本発明に係るDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【0049】
[図16a]図15aにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音を示す位相図である。
【0050】
[図16b]図15bにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音を示す位相図である。
【0051】
[図17]共通入力伝送媒体における第1および第2入力と、増幅部の2セットと、第1出力伝送媒体および第2出力伝送媒体とを備える、本発明に係る他のDLNAを示す図である。
【0052】
[図18]本発明に係るDNLAのさらに他の実施形態を示す図である。
【0053】
[図19]相関角度に対する最適斜行位相のグラフである。
【0054】
[図20]相関角度に対する斜行による雑音指数の低減のグラフである。
【0055】
[発明の好ましい実施形態の説明]
本発明に係る分散型低雑音増幅器(DLNA)は、図1における参照番号10で概ね示される。DLNAは、第1周波数f1と第2周波数f2との間に伸びる増幅帯域11(図2に示す)を有する。
【0056】
図1を参照すると、DLNAは、第1端部14および第2端部16を有する入力伝送媒体(ITM)12を備える。DLNAは、第1端部20および第2端部22を有する出力伝送媒体(OTM)18をさらに備える。DLNAの入力は、端部14に設けられ、DLNAの出力は端部22に設けられる。適切な終端手段26および適切な終端手段28は、ITM12における第2端部16に設けられてもよく、OTM18の第1端部20に設けられてもよい。DLNAは、分散型増幅器における入力14から分散型増幅器における出力22まで、入力信号についての少なくとも第1パス36.1および第2パス36.2を設けるために、入力伝送媒体への構成の入力32において、また、出力伝送媒体への構成の出力34において接続される、少なくとも第1増幅部30.1から第2増幅部30.nを含む増幅器構成30を備える。第1パス36.1および第2パス36.2のそれぞれは、差である異なる位相の変化と関連付けられ、上記差は、雑音抑制帯域についての周波数における30度よりも大きく、第1パスに沿って伝搬する、増幅器構成30によって生成される雑音と、第2パスに沿って伝搬する、増幅器構成30によって生成される雑音との間の位相差、及び、分散型増幅器10の出力22の前で発生する雑音の相殺的干渉をもたらし、これによって、雑音抑制帯域13における雑音を抑制する。
【0057】
図1に示すように、好ましい実施形態では、第1増幅部30.1および第2増幅部30.2以上の増幅部を、ITMおよびOTMの間に設ける。第1増幅部におけるゲインA1は、第2増幅部のゲインA2とは異なる。好ましい実施形態では、少なくともいくつかの隣接する増幅部のそれぞれのゲインは、例えば、DLNAの入力14から、その出力22に向かった方向に、すなわち、A1>A2>A3.....>Anの方向に直線的に、または指数関数的に減少する。
【0058】
図2は、本発明に係る分散型DLNA10の様々な特性を示す。曲線Bは、第1増幅部30.1と中間増幅部との間の位相差を示す。曲線Aは、第1増幅部30.1と最終増幅部30.nとの間の位相差を示す。曲線Cは、増幅帯域11にわたってほとんど一定のゲインプロフィールを示す。曲線Dは、DLNA10の雑音指数を示す。雑音指数は、雑音抑制の範囲内で低い、または、低雑音帯域13において低い。雑音抑制帯域11よりも低い周波数において、増幅部間の位相差は小さい。これらの小さい差は、わずかな雑音除去しかもたらさない。高周波数において、位相差が180度に近くなるとき、異なる増幅部からの信号が互いを除去し始めるにつれて、増幅器のゲインが減少し始める。この減少したゲインにより、雑音指数は増加する。
【0059】
背景技術として、従来からDLNAにおいて用いられる高電子移動度トランジスタ(HEMT)において、トランジスタのチャンネルにおいて生成される雑音は、ゲート端子に静電的に結合されるが、ドレイン端子には抵抗として結合される。これにより、(ゲートにおける)入力雑音と(ドレインにおける)出力雑音との間にほとんど90°の位相差がもたらされ、その結果Cr<<Ciとなる。従来の分散型増幅器において雑音除去はほとんど全く起こらず、本明細書の導入で参照するように、高調波増幅器よりもはるかに高い雑音指数がもたらされる。
【0060】
入力雑音はより高い周波数においてさらに高くなるので、上記増幅部におけるゲインは、低い周波数よりも高い周波数においてより早く減少し得る。図4および図5は、本発明に係るDLNAにおける増幅部30.1から30.6までについての周波数に対する典型的なゲインプロフィールおよび位相プロフィールをそれぞれ示す。
【0061】
本発明に係るDLNA10は、入力14から各増幅部を介して出力22まで、異なる時間遅延を有する。時間遅延Tと位相遅延aとの間の関係は、周波数fにおいてa=36fT度である。増幅部によって増幅される入力信号38は、出力22において同時に到達せず、そのため同相に加わらない。この位相差は、斜行と称される。
【0062】
この斜行は、上記出力雑音と上記増幅される入力雑音との間の位相を変化させる。斜行を用いて、出力雑音と増幅される入力雑音との間の相関は、約90°から約180°へ増加され得、これによってより良好な雑音除去が行える。多くの増幅部を有する最適斜行分散型増幅器について、雑音指数は高調波増幅器と同様であってもよい(√(1−Cim2)−Creに比例する)(表1参照)。
【0063】
この技術は、図6から図9における例を利用して説明する。図7aおよび図7bにおける位相図は、入力信号Sと比較して、増幅部30.1によって図6のポイント100において生成される入力雑音Niと、ポイント102において生成される出力雑音N0とを示す。入力雑音は出力雑音と関連付けられると仮定するが、この例においては約90°の位相差を有する。図8aおよび図9aは、従来の分散型増幅器、および本発明に係る斜行分散型増幅器10について、各増幅部30.1から30.nを介した、入力14から出力22までの時間遅延を示す。図8aに示される従来の場合、時間差がなく、それに伴って、入力伝送媒体を進む全ての信号(および雑音)は、出力に到達するとき同相にある。増幅される入力雑音Niはこのため、出力雑音N0とともに位相から90°外れた状態のままである。それらは相関するので、図8cにおけるNtによって示されるように、それらは加えられる。図9aに示されるようにいくつかの斜行が加えられるとき、増幅部が入力に近づくほど、信号は入力14から各部を介して出力22に到達するためにより長い時間をかける。その結果、出力22に到達する信号(および増幅された入力雑音)は、図9bに示すように、位相からわずかにはみ出る。結果として得られる増幅された入力雑音は、出力雑音を有する位相から90°以上はみ出るが、その結果、いくつかの雑音が除去される。図9cにおける信号矢印と比べて、全雑音Ntはこのため、斜行を有さない場合よりも小さく、これについては図8cを参照してもらいたい。
【0064】
斜行により出力22における位相の外に到達する信号は、増幅器10のパルス応答を歪め得る。図10aは、どのように斜行がパルスを拡張するかを示して、入力信号に比べて出力信号が分散していることを示す。本来のパルス形状が求められる場合、出力信号は、増幅器10の後で分散されなくてもよい。斜行DLNA10について、図10bは、斜行を有さない従来のDNLAと比べて、第1増幅部30.1の雑音に何が起こっているか(時間ドメインにおいて)を示す。曲線Aは出力雑音であり、曲線Bは90°の位相シフトを有する相関する入力雑音である。増幅された入力雑音は、斜行が全く無く、また、斜行を有する曲線Cのように見えるとき、同様に(曲線A)に見える。この増幅された入力雑音は、出力雑音に加えられる。斜行のため、出力雑音の大部分は、増幅された入力雑音によって除去される。これは、図10cにおいて、曲線Eによって示される斜行を有する場合についての雑音パワーと、斜行がない場合の曲線Dについての雑音パワーとを比較することによって分かることである。斜行を有さない出力雑音は、正しい斜行を有する増幅器10についての出力雑音よりも高い周波数雑音を有する。
【0065】
伝送媒体12、18について、時間遅延Tは通常周波数が独立している。増幅部30.1から30.nを介する時間遅延は、通常周波数が依存している。
【0066】
2つの増幅部の間の周波数独立時間遅延について、位相遅延差がより大きくなると、周波数はより高くなる。その結果、増幅器のゲインは、増幅部が周波数独立ゲインを有するとき周波数とともに落ちる。これは、より高い周波数についての増幅部のゲインを増加することによって修正され得る。入力12に始まり、増幅部30.1から30.nを介して出力22で終わる位相/時間遅延は、3つの構成要素の合計、つまり、増幅器の入力12から増幅部の入力までの第1遅延部と、増幅部を介する第2遅延部と、増幅部の出力から増幅器の出力22までの第3遅延部との合計である。
【0067】
斜行は、多くの方法で実行され得る。これは、増幅部を介する遅延、または、伝送媒体における増幅部の間における遅延、またはこの2つの組み合わせを選択する、または操作することによって実行し得る。
【0068】
増幅部において、遅延はソースのインダクタンスおよび/またはいくつかの付加的な時間遅延回路によって実行され得る。
【0069】
伝送媒体によって実行されるとき、入力伝送媒体および出力伝送媒体における増幅部の間の時間遅延は異なっていなければならない。これは、異なる誘電性物質を用いることによって最も簡単に行えることであり、これによって、異なる速度の媒体を有することができる。2つの増幅部の間における入力伝送媒体および出力伝送媒体の長さはまた異ならせてもよい。
【0070】
速度vおよび長さlを有する伝送媒体について、d=l/vによって遅延が与えられる。2GHzの最高または第2周波数を有する斜行分散型増幅器において、遅延は2GHzにおける90°の位相シフトについてd>125psよりも大きくなければならない。伝送速度が光の速度の半分である場合、長さl>19mmはこの斜行に到達する。なお、これはMMICにおいて実行するには長すぎる。
【0071】
伝送媒体がある長さを有するが、速度v0を有する出力媒体が速度viを有する入力伝送媒体と異なる場合、時間遅延の差は、d=l(1/v0−1/vi)またはl=dv0vi/(vi−v0)である。入力伝送媒体の速度が光の速度であり、出力媒体の速度が光の速度の半分である場合、l=dc。d>125psについては、l>38mmが必要とされる。
【0072】
図11および図12は、斜行分散型増幅器の物理的配置を示し、上記増幅器は5つの増幅部30.1から130.5を有する。出力伝送媒体118は、FR4 PCB 119におけるマイクロストリップ伝送媒体であり、接地平面120は一方にあり、出力伝送媒体118は他方にある。FR4の比誘電率は約4であり、光速の約半分の速度の伝送媒体がもたらされる。
【0073】
入力伝送媒体は、PCBの接地平面の上に位置する大気中に吊るされる0.6mmの銀のワイヤを有する。トランジスタのゲート容量のため、伝送媒体速度は光の速度よりも少し遅いが、出力伝送媒体の速度よりははるかに速い。
【0074】
増幅部の間の伝送媒体長さは5mmから20mmの間であるが、これは0.5GHzから2GHzの間の最小雑音について最適であることが分かった。最終増幅部130.5は、入力伝送媒体112を終結するためにドレイン−ゲートフィードバックを有する。トランジスタのドレインは、15Ωから250Ωまで増加する抵抗を介して出力伝送媒体に連結される。DCバイアス回路は図示しない。トランジスタのソースは、約0.4nHのインダクタンスを有するDCブロッキングコンデンサを用いて接地される。
【0075】
DLNA10における第1増幅部30.1は通常HEMTを備え、HEMTのゲートは入力伝送媒体12に接続され、ソースは接地され、ドレインは他の構成要素または第2増幅段階を介して出力伝送媒体18に接続される。
【0076】
入力伝送媒体に転送されるゲート雑音(入力雑音)および出力伝送媒体に転送されるドレイン雑音(出力雑音)のほかに、第2雑音信号がソースターミナルを介してトランジスタから出て行く。このソース雑音電流は、ドレイン雑音電流を有する位相から180°外れる。あるインピーダンスZsを介してソースを接地するとき、vs、n=Zsis、nのソース雑音電圧が生成される。このソース雑音電圧は増幅され(共通ゲート増幅器と同様に)、そしてこの増幅されたソース雑音がドレイン雑音に加えられる。正しいソースインピーダンスが選択される場合(インダクタンスなど)、増幅されたソース雑音はあるドレイン雑音を除去する。図13は、トランジスタにおける最小雑音指数(雑音温度として測定)が、インダクタを介してソースを接地することによってどのように低減するかを示す。
【0077】
ソースのインダクタンスは、通常増幅器の帯域より高い周波数においてトランジスタを不安定にするという不利な点を有し得る。このため、最適な状態よりも小さいソースインダクタンスが用いられ得る。
【0078】
ソース接地インダクタンスはまた、本発明に係る斜行分散型増幅器において用いられ得る。ソースインダクタおよび斜行による雑音除去の組み合わせは、高調波増幅器よりもはるかに低い雑音指数をもたらす。接地インダクタンスが増幅器の入力14から出力までの方向における各増幅部について増加されるとき、最小雑音指数が達成されることが分かった。図13は、増加するソースインダクタンスを有する斜行分散型増幅器における最小雑音指数を示す。増幅部における減少するゲインのため、より大きなインダクタンスは必ずしも不安定にすることはない。
【0079】
なお、ソースインダクタンスを増加することによって、増幅部を介する位相遅延が異なり、これは斜行に貢献する。
【0080】
入力伝送媒体12の第2端部における終端素子の雑音が、低周波数における増幅器の雑音に重要な影響を与えることは周知である。トランジスタをアクティブターミネータとして用いるとき、抵抗を用いるときよりも低い終端雑音が生成されることも知られている。米国特許5,365,197は、このような技術を教示している。アクティブターミネーションは増幅器の入力として見られ、出力は終端インピーダンスを判定するフィードバック回路を介して入力にフィードバックされる。終端増幅器の出力はまた、出力伝送媒体に追加され得、終端増幅器を最終増幅部とする。最終増幅部30.nをコールドターミネータとして用いることによって、ターミネータとしての追加の増幅器が必要でなくなる。ターミネーションフィードバックによって増幅器10のゲインが減少するので、これはゲイン増幅器を減少してはじめて可能になる。
【0081】
図14に示すように、増幅部230.1から230.7によって入力伝送媒体12に加えられる雑音の一部は、入力14の方向に伝搬する。この雑音はまた、それが通過する増幅部によって増幅される。増幅部間の伝送媒体における位相遅延は4分の1の波長である場合、増幅された雑音間の位相差は180°よりも大きく、これによって雑音除去が可能となる。このため、増幅部間の異なる遅延時間を有する、入力媒体および出力媒体を用いることによって斜行を実行する場合、例えば遅延における差が波長の4分の1と比較し得る場合、これが後方への雑音の除去を引き起こす。
【0082】
図15および図16は、伝送媒体(図15aおよび図15b)における小さな遅延を有する第1分散型増幅器についての最終増幅部230.7によって生成される増幅された後方への雑音と、伝送媒体(図16aおよび図16b)における波長の4分の1と比較し得る遅延を有する第2分散型増幅器についての最終増幅部230.7によって生成される増幅された後方への雑音とを比較する。
【0083】
入力伝送媒体12における誤った、または対向する方向の信号伝搬が出力を打ち消すので、2つの斜行分散型増幅器400についての入力伝送媒体12を、図17に示すように用いることができる。入力伝送媒体12は、第1入力および第2入力のそれぞれによってその第1端部および第2端部において終結される。いくつかのアプリケーションにおいて、無線アストロノミーと同様に、入力は非常に小さい雑音を有し、それゆえ良好な低雑音ターミネータである。広い帯域にわたる2つの増幅器の入力間における隔離は、増幅部の数の逆数に比例する。多くの増幅部はそのため、良好な隔離を必要とする。
【0084】
図18は、連続二重ゲートFETを用い、低雑音指数を実現するものと出願人が考える、連続増幅器300の例とを示す。FETにおける第1ゲート312は入力伝送媒体を形成し、FETにおけるドレイン318は出力伝送媒体を形成する。ゲート線およびドレイン線についての異なる誘電性媒体を用いることによって、速度を異ならせることが可能であり、斜行をもたらすことができる。減少するゲインは、ドレイン線を徐々に細くし、第2ゲート320の抵抗を変化させることによって、または、第2ゲートおよびドレイン318の間の半導体322の抵抗を変化させることによって実行し得る。
【0085】
再び図1を参照して、第1増幅部30.1が増幅器10を介してθ1の位相遅延を有するようにし、第2増幅部30.2がθ2の位相遅延を有するようにする。位相(または斜行角度)における差は、θs=θ2−θ2である。第1増幅部30.1の雑音による雑音指数におけるこの斜行角度の効果について考察する。
【0086】
単純化のため、増幅部は同じゲインA1を有するものと仮定する。これらの2つの増幅部による増幅器10のゲインは、
A=A1[(1+cos(θs))2+sin2(θs)]である。
【0087】
第1増幅部30.1が、出力ターミナル22へ伝搬する出力雑音i0と、第2部30.2によって増幅される入力雑音とを有するようにし、出力22において雑音ijを与える。また単純化のために、出力雑音および増幅された入力雑音が出力22において同じ大きさを有すると仮定する。すなわち、
【0088】
【数2】
と仮定する。上記(斜行を有しない)増幅された入力雑音は、3つの部分に分割することができる。すなわち、出力雑音と同相にある相関する部分と、出力雑音が有する位相から90度外れた相関する部分と、出力雑音と相関しない部分とである。ii=iocr+ioci+ii,uである。
【0089】
第1増幅部30.1による全出力雑音はまた、3つの対応する要素を有する。
【0090】
【数3】
cは相関係数の大きさであり、θcが相関位相である場合、cr=cos(θc)およびcr=csin(θc)である。
【0091】
斜行位相θsについての雑音指数Fは、以下の状態でN/Aと比例する。
【0092】
【数4】
雑音指数は、斜行位相θsが以下のように選択されるとき最小である。
【0093】
【数5】
図19および図20は、最適な斜行位相θs、optと、異なる相関係数についての斜行を有する、また斜行を有さない増幅器F(θs、opt)/F(0)の間の雑音指数における対応する減少とを示す。最適斜行角度が約30°よりも小さいとき、斜行が雑音指数を著しく減少させることはない。
【0094】
アジレントATF35143のような典型的な低雑音高電子移動度トランジスタ(HEMT)は、およそc=0.9の相関係数と、およそθc=90°の相関角度とを有する。第1増幅部30.1についてのこのようなトランジスタを用いるとき、最適斜行位相は90度であり、5の因数を有する第1増幅部雑音指数を減少させる。実際、第2増幅部30.2の雑音のため、最適斜行はおよそ
【0095】
【数6】
の因数を有する増幅器10の雑音指数を減少させる。
【0096】
図3は、本発明に係る斜行増幅器10の他の実施形態を示す図である。出力伝送媒体18のインピーダンスは、その第1端部28から増幅器の出力22までの方向に減少する。入力伝送媒体12のインピーダンスは、第1伝送媒体の第1端部14から、その第2端部16までの方向に増加する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係る分散型低雑音増幅器(DLNA)の高レベル図である。
【図2】本発明に係るDLNAの様々な特性を示すグラフである。
【図3】本発明に係るDLNAの一実施形態の図である。
【図4】上記増幅器の増幅部を形成する増幅部についての周波数に対する相対ゲインの図である。
【図5】上記増幅器の増幅部についての周波数に対する位相変化の図である。
【図6】本発明に係るDLNAの他の図である。
【図7a】図8aのDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【図7b】図8bのDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【図8a】従来のDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【図9a】本発明に係るDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【図8b】図8aにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【図9b】図9aにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音の位相図である。
【図8c】全雑音に加えて信号を示し、これによって、図8aのDLNAについての雑音除去効果を示す位相図である。
【図9c】全雑音に加えて信号を示し、これによって、図8bのDLNAについての雑音除去効果を示す位相図である。
【図10a】本発明に係るDNLAの出力信号の分散を示す図である。
【図10b】従来のDLNAと、本発明に係るDLNAとについての出力信号と入力信号とを示す時間ドメイン図である。
【図10c】従来のDNLAと、本発明に係るDNLAとについての雑音パワーの図である。
【図11】本発明に係るDNLAの代替実施形態における物理的配置を示す平面線図である。
【図12】図11の線XIIにおける断面である。
【図13】本発明に係るDNLAの電界効果トランジスタ(FET)のソースと増幅部を接地するためにインダクタを用いることによって、どのように雑音指数が低減されるかを示す、周波数に対する雑音温度を示す図である。
【図14】DLNAの入力に向かって伝搬する入力雑音を示す、本発明に係るDLNAを示す図である。
【図15a】従来のDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【図16a】本発明に係るDLNAについての、増幅部を介する時間遅延を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数からより高い第2の周波数へ伸びる増幅帯域を有する分散型増幅器であって、
・第1端部および第2端部を有し、上記第1端部において上記分散型増幅器に入力を与える入力伝送媒体と、
・第1端部および第2端部を有し、上記第2端部において上記分散型増幅器に出力を与える出力伝送媒体と、
・入力信号のための少なくとも第1パスおよび第2パスを、上記分散型増幅器の入力から上記分散型増幅器の出力まで形成するために、少なくとも第1増幅部および第2増幅部を有する増幅器構成であって、上記少なくとも第1増幅部および第2増幅部は、上記構成の入力において上記入力伝送媒体と接続され、上記構成の出力において上記出力伝送媒体と接続される、増幅器構成とを備え、
・第1パスは第1位相変化と関連付けられ、第2パスは第2位相変化と関連付けられ、第1位相変化と第2位相変化との間には差があり、
・上記第1パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音と、上記第2パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音との間の位相差、及び、分散型増幅器の出力の前における雑音の相殺的干渉を発生させ、これによって雑音抑制帯域における雑音を抑制するために、上記差は雑音抑制帯域における周波数について30度よりも大きい、分散型増幅器。
【請求項2】
上記雑音抑制帯域は、増幅帯域と重なる、請求項1に記載の分散型増幅器。
【請求項3】
各時間遅延に関連付けられる第1パスおよび第2パスのそれぞれによって、各位相変化が発生させられ、第1時間遅延および第2時間遅延の間には差があり、上記差は、上記第2周波数を12倍したものの逆数よりも大きい、請求項1または2に記載の分散型増幅器。
【請求項4】
上記増幅器の上記出力に最も近い上記少なくとも2つの増幅部は、上記入力伝送媒体を終結するために、上記入力伝送媒体の上記第2端部において用いられる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項5】
上記出力伝送媒体のインピーダンスは、上記出力伝送媒体の上記第1端部から、上記第2端部までの方向に減少する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項6】
上記入力伝送媒体のインピーダンスは、上記入力伝送媒体の上記第1端部から、上記第2端部までの方向に増加する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項7】
各増幅部は、ゲート、ソース、およびドレインを有する少なくとも1つの電界効果トランジスタ(FET)を備え、上記ゲートは上記入力伝送媒体に接続され、上記ドレインは上記出力伝送媒体に接続され、上記ソースは接地される、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項8】
各FETにおける上記ソースは、各インダクタを介して接地される、請求項7に記載の分散型増幅器。
【請求項9】
上記インダクタにおける数値は、上記増幅器の上記入力から、上記出力までの方向に増加する、請求項8に記載の分散型増幅器。
【請求項10】
上記増幅部における上記各ゲインは、上記増幅器の上記入力から、上記出力までの方向に減少する、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項11】
少なくともいくつかの隣接する増幅部における上記各ゲインは、指数関数的に減少する、請求項10に記載の分散型増幅器。
【請求項12】
各増幅部は、上記各ゲインが減少するように構成されるゲイン調節回路を備える、請求項10または11に記載の分散型増幅器。
【請求項13】
上記ゲイン調節回路は、上記増幅部の出力と上記出力伝送媒体との間に接続される、コンデンサ、抵抗、インダクタ、および電界効果トランジスタのうちの1つ以上を備える、請求項12に記載の分散型増幅器。
【請求項14】
上記ゲイン調節回路は、上記増幅部における各増幅装置に別々にバイアスをかけるための回路を1つ備え、上記増幅部は適切な異なる増幅装置を備える、請求項12ないし13のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項15】
上記位相差は、上記入力伝送媒体によって影響され、上記出力伝送媒体は、それぞれ異なる誘電性物質を含む、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項16】
上記入力伝送媒体における少なくとも2つのすぐ隣り合う増幅部の間の空間は、他のいかなる2つの増幅部の間の空間とは異なる、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項17】
上記出力伝送媒体における少なくとも2つのすぐ隣り合う増幅部の間の空間は、他のいかなる2つの増幅部の間の空間とは異なる、請求項1ないし16のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項18】
第1の周波数からより高い第2の周波数まで伸びる増幅帯域を有する分散型増幅器であって、
・第1端部および第2端部を有し、上記第1端部において上記分散型増幅器に入力を与える入力伝送媒体と、
・第1端部および第2端部を有し、上記第2端部において上記分散型増幅器に出力を与える出力伝送媒体と、
・入力信号のための少なくとも第1パスおよび第2パスを、上記分散型増幅器の入力から上記分散型増幅器の出力まで形成するために、少なくとも第1増幅部および第2増幅部を有する増幅器構成であって、上記少なくとも第1増幅部および第2増幅部は、上記構成の入力において上記入力伝送媒体と接続され、上記構成の出力において上記出力伝送媒体と接続される、増幅器構成とを備え、
・上記第1パスは第1時間遅延と関連付けられ、上記第2パスは第2時間遅延と関連付けられ、上記第1時間遅延と上記第2時間遅延との間に差があり、
・上記第1パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音と、上記第2パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音との間の位相差、及び、分散型増幅器の出力の前における雑音の相殺的を発生させ、これによって雑音抑制帯域における雑音を抑制するために、上記差は上記第2周波数を12倍したものの逆数よりも大きい、分散型増幅器。
【請求項19】
第1の周波数からより高い第2の周波数まで伸びる増幅帯域を有する分散型増幅器によって生成される雑音を減少させる方法であって、上記分散型増幅器は、第1端部および第2端部を有し、上記第1端部において上記分散型増幅器に入力を与える入力伝送媒体と、第1端部および第2端部を有し、上記第2端部において上記分散型増幅器に出力を与える出力伝送媒体と、入力信号のための少なくとも第1パスおよび第2パスを、上記分散型増幅器の入力から上記分散型増幅器の出力まで形成するために、少なくとも第1増幅部および第2増幅部を有する増幅器構成であって、上記少なくとも第1増幅部および第2増幅部は、上記構成の入力において上記入力伝送媒体と接続され、上記構成の出力において上記出力伝送媒体と接続される、増幅器構成とを備え、上記方法は、
・上記第1パスにおいて第1位相変化を発生させる工程と、
・上記第2パスにおいて第2の異なる位相変化を発生させる工程とを有し、
・上記第1パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音と、上記第2パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音との間の位相差、及び、分散型増幅器の出力の前における雑音の相殺的干渉を発生させ、これによって雑音抑制帯域における雑音を抑制するために、上記差は雑音抑制帯域における周波数について30度よりも大きい、方法。
【請求項1】
第1の周波数からより高い第2の周波数へ伸びる増幅帯域を有する分散型増幅器であって、
・第1端部および第2端部を有し、上記第1端部において上記分散型増幅器に入力を与える入力伝送媒体と、
・第1端部および第2端部を有し、上記第2端部において上記分散型増幅器に出力を与える出力伝送媒体と、
・入力信号のための少なくとも第1パスおよび第2パスを、上記分散型増幅器の入力から上記分散型増幅器の出力まで形成するために、少なくとも第1増幅部および第2増幅部を有する増幅器構成であって、上記少なくとも第1増幅部および第2増幅部は、上記構成の入力において上記入力伝送媒体と接続され、上記構成の出力において上記出力伝送媒体と接続される、増幅器構成とを備え、
・第1パスは第1位相変化と関連付けられ、第2パスは第2位相変化と関連付けられ、第1位相変化と第2位相変化との間には差があり、
・上記第1パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音と、上記第2パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音との間の位相差、及び、分散型増幅器の出力の前における雑音の相殺的干渉を発生させ、これによって雑音抑制帯域における雑音を抑制するために、上記差は雑音抑制帯域における周波数について30度よりも大きい、分散型増幅器。
【請求項2】
上記雑音抑制帯域は、増幅帯域と重なる、請求項1に記載の分散型増幅器。
【請求項3】
各時間遅延に関連付けられる第1パスおよび第2パスのそれぞれによって、各位相変化が発生させられ、第1時間遅延および第2時間遅延の間には差があり、上記差は、上記第2周波数を12倍したものの逆数よりも大きい、請求項1または2に記載の分散型増幅器。
【請求項4】
上記増幅器の上記出力に最も近い上記少なくとも2つの増幅部は、上記入力伝送媒体を終結するために、上記入力伝送媒体の上記第2端部において用いられる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項5】
上記出力伝送媒体のインピーダンスは、上記出力伝送媒体の上記第1端部から、上記第2端部までの方向に減少する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項6】
上記入力伝送媒体のインピーダンスは、上記入力伝送媒体の上記第1端部から、上記第2端部までの方向に増加する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項7】
各増幅部は、ゲート、ソース、およびドレインを有する少なくとも1つの電界効果トランジスタ(FET)を備え、上記ゲートは上記入力伝送媒体に接続され、上記ドレインは上記出力伝送媒体に接続され、上記ソースは接地される、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項8】
各FETにおける上記ソースは、各インダクタを介して接地される、請求項7に記載の分散型増幅器。
【請求項9】
上記インダクタにおける数値は、上記増幅器の上記入力から、上記出力までの方向に増加する、請求項8に記載の分散型増幅器。
【請求項10】
上記増幅部における上記各ゲインは、上記増幅器の上記入力から、上記出力までの方向に減少する、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項11】
少なくともいくつかの隣接する増幅部における上記各ゲインは、指数関数的に減少する、請求項10に記載の分散型増幅器。
【請求項12】
各増幅部は、上記各ゲインが減少するように構成されるゲイン調節回路を備える、請求項10または11に記載の分散型増幅器。
【請求項13】
上記ゲイン調節回路は、上記増幅部の出力と上記出力伝送媒体との間に接続される、コンデンサ、抵抗、インダクタ、および電界効果トランジスタのうちの1つ以上を備える、請求項12に記載の分散型増幅器。
【請求項14】
上記ゲイン調節回路は、上記増幅部における各増幅装置に別々にバイアスをかけるための回路を1つ備え、上記増幅部は適切な異なる増幅装置を備える、請求項12ないし13のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項15】
上記位相差は、上記入力伝送媒体によって影響され、上記出力伝送媒体は、それぞれ異なる誘電性物質を含む、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項16】
上記入力伝送媒体における少なくとも2つのすぐ隣り合う増幅部の間の空間は、他のいかなる2つの増幅部の間の空間とは異なる、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項17】
上記出力伝送媒体における少なくとも2つのすぐ隣り合う増幅部の間の空間は、他のいかなる2つの増幅部の間の空間とは異なる、請求項1ないし16のいずれか1項に記載の分散型増幅器。
【請求項18】
第1の周波数からより高い第2の周波数まで伸びる増幅帯域を有する分散型増幅器であって、
・第1端部および第2端部を有し、上記第1端部において上記分散型増幅器に入力を与える入力伝送媒体と、
・第1端部および第2端部を有し、上記第2端部において上記分散型増幅器に出力を与える出力伝送媒体と、
・入力信号のための少なくとも第1パスおよび第2パスを、上記分散型増幅器の入力から上記分散型増幅器の出力まで形成するために、少なくとも第1増幅部および第2増幅部を有する増幅器構成であって、上記少なくとも第1増幅部および第2増幅部は、上記構成の入力において上記入力伝送媒体と接続され、上記構成の出力において上記出力伝送媒体と接続される、増幅器構成とを備え、
・上記第1パスは第1時間遅延と関連付けられ、上記第2パスは第2時間遅延と関連付けられ、上記第1時間遅延と上記第2時間遅延との間に差があり、
・上記第1パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音と、上記第2パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音との間の位相差、及び、分散型増幅器の出力の前における雑音の相殺的を発生させ、これによって雑音抑制帯域における雑音を抑制するために、上記差は上記第2周波数を12倍したものの逆数よりも大きい、分散型増幅器。
【請求項19】
第1の周波数からより高い第2の周波数まで伸びる増幅帯域を有する分散型増幅器によって生成される雑音を減少させる方法であって、上記分散型増幅器は、第1端部および第2端部を有し、上記第1端部において上記分散型増幅器に入力を与える入力伝送媒体と、第1端部および第2端部を有し、上記第2端部において上記分散型増幅器に出力を与える出力伝送媒体と、入力信号のための少なくとも第1パスおよび第2パスを、上記分散型増幅器の入力から上記分散型増幅器の出力まで形成するために、少なくとも第1増幅部および第2増幅部を有する増幅器構成であって、上記少なくとも第1増幅部および第2増幅部は、上記構成の入力において上記入力伝送媒体と接続され、上記構成の出力において上記出力伝送媒体と接続される、増幅器構成とを備え、上記方法は、
・上記第1パスにおいて第1位相変化を発生させる工程と、
・上記第2パスにおいて第2の異なる位相変化を発生させる工程とを有し、
・上記第1パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音と、上記第2パスに沿って伝搬する、上記増幅器構成によって生成される雑音との間の位相差、及び、分散型増幅器の出力の前における雑音の相殺的干渉を発生させ、これによって雑音抑制帯域における雑音を抑制するために、上記差は雑音抑制帯域における周波数について30度よりも大きい、方法。
【図16a】図15aにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音を示す位相図である。
【図16b】図15bにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音を示す位相図である。
【図17】共通入力伝送媒体における第1および第2入力と、増幅部の2セットと、第1出力伝送媒体および第2出力伝送媒体とを備える、本発明に係る他のDLNAを示す図である。
【図18】本発明に係るDNLAのさらに他の実施形態を示す図である。
【図19】相関角度に対する最適斜行位相のグラフである。
【図20】相関角度に対する斜行による雑音指数の低減のグラフである。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図16a】
【図16b】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図16b】図15bにおけるDLNAについての信号、入力雑音、および出力雑音を示す位相図である。
【図17】共通入力伝送媒体における第1および第2入力と、増幅部の2セットと、第1出力伝送媒体および第2出力伝送媒体とを備える、本発明に係る他のDLNAを示す図である。
【図18】本発明に係るDNLAのさらに他の実施形態を示す図である。
【図19】相関角度に対する最適斜行位相のグラフである。
【図20】相関角度に対する斜行による雑音指数の低減のグラフである。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図16a】
【図16b】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2010−541450(P2010−541450A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527583(P2010−527583)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【国際出願番号】PCT/IB2008/053997
【国際公開番号】WO2009/044353
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(506061794)ノース−ウエスト ユニヴァーシティ (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【国際出願番号】PCT/IB2008/053997
【国際公開番号】WO2009/044353
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(506061794)ノース−ウエスト ユニヴァーシティ (9)
【Fターム(参考)】
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