説明

分散型情報処理システム及び制御方法並びにコンピュータプログラム

【課題】上位のクラスタノードを置かずにシステム全体の消費電力を節減する。
【解決手段】各ノード(ここではノード1,2)は、連携クラスタリング制御ソフトウェア20とネットワークとを介して、互いの状態を監視し合う。また、連携クラスタリング制御ソフトウェア20を介して処理業務を割り当てられたノード(ここではノード1)は、割り当てられた該業務を処理するが、該ノードのCPU(ここではCPU11)を制御するクロック周波数は、所定の高状態に移行される。また、業務の処理中に障害が発生したノード(ここではノード1)については、連携クラスタリング制御ソフトウェア20が、待機中のノードから選択して代替ノード(ここではノード2)を割り当て、該代替ノードに速やかに業務を引き継ぐ。この時、両ノードのCPUを制御するクロック周波数も最適化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分散型情報処理システムに及び分散型情報処理システムの制御方法並びにコンピュータプログラム係り、特に、処理業務に汎用性を有する情報処理端末装置のクラスタ構造として構成され、システム全体の消費電力を節減することができる分散型情報処理システム及び制御方法並びにコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な処理業務に対して或る程度の汎用性を有する情報処理端末装置(以下、「クラスタノード」または単に「ノード」と呼称する)を要素として構成される分散型情報処理システムは、構成要素に汎用性を持たせたことにより、情報処理システム全体の稼動率を向上させることができるので、最近のコンピュータシステムの普及と共に導入ユーザが伸び続けている。
但し、処理業務に対して汎用性を付与することによるシステム全体の稼動率の向上に伴い、システム全体の消費電力を節減する省電力化も1つの大きな課題となってきている。
【0003】
即ち、システム全体の稼動率を向上させる場合、システムには、特に、障害発生時に備えた待機ノードの設置が必要となり、単体ノードのシステムと比べて消費電力が大きくなってしまうことが問題視されている。そこで、待機中のノードについては、可能な限り省電力化を行うことが課題となる。
処理業務に対して汎用性を有する情報処理装置を構成要素とする分散型情報処理システム(以下、単に「分散型のクラスタシステム」と呼称する)においては、これまで、アイドル状態(起動状態で待機中)のクラスタノードについては、これを停止させることでシステム全体の消費電力を削減させる技術が存在している。しかし、分散型のクラスタシステムにおいて、クラスタノードのアイドル状態を判断し、このようなアイドル状態のクラスタノードを停止させることが可能であったのは、クラスタノード全体の状態を統合的に管理する上位のノードが存在する場合だけであり、このような上位のノードが存在せず、同位のノード同士で互いに状態を監視するだけのシステムでは、このような消費電力削減手段は採用されていない。
【0004】
また、障害発生等でクラスタノードが停止した場合や、サスペンドの場合には、システムの障害復旧時間や再起動時間を待つ必要があり、業務の再開始に多大の時間が掛かるといった問題点を解決することも課題であった。
なお、本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、印刷機が相互にジョブを管理する分散処理の記載が有り、この印刷機はCPU機能を有するものと見なせるが、クロック周波数を、待機時にクロックダウンさせ、起動時にはクロックアップさせる機能の記載も見られる。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、各プロセッサが、他のプロセッサと機能的に連携して接続される構成を有するマルチプロセッサの記載が有り、本発明の待機時に相当する「ロック待ち」時に、クロック周波数を下げる機能が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−352694号公報
【特許文献2】特開2008−77640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記背景技術で述べた従来の分散型情報処理システムにあっては、前述のとおり、クラスタノードのアイドル状態を判断し、このようなアイドル状態のクラスタノードを停止させることが可能であったのは、クラスタノード全体の状態を統合的に管理する上位のノードが存在する場合だけであり、上位のノードが存在せず、同位のノード同士で互いに状態を監視するだけのシステムでは、このような消費電力削減手段は採用できないという問題点があった。
【0008】
また、障害発生等でクラスタノードが停止した場合や、サスペンドの場合には、システムの障害復旧時間や再起動時間を待つ必要があり、業務の再開始に多大の時間が掛かるといった問題点も解決されていなかった。
なお、分散型情報処理システムでは、各ノードを特定の業務に専用のノードとし(即ち、各ノードを、業務と1対1に構成し)、所与の業務について、複数のノードの各々が、自ノードが処理すべき業務であるか否かを判断して、自ノードが処理すべき業務である場合には、これを自発的に処理する構成とすることも可能であるが、このような、データフローマシンのアーキテクチャに由来する(いわば業務フローマシン型の)システム構成では、システムに、特定の種類の業務が集中した場合に、1つのノードに該処理が集中するので、システム全体の稼動率が低下することになる。また、障害発生時等において、他の代替ノードに業務を委託することができないという問題点も存在する。
【0009】
なお、前述の特許文献1に開示されているシステムは、請求項の記載から、上位クラスタノードに相当する「ホストマシン」を有する構成となり、本発明の構成とは異なるものである。
また、前述の特許文献2に開示されているシステムは、請求項の記載から、上位クラスタノードに相当する「制御部」を有する構成となり、本発明の構成とは異なるものである。但し、特許文献2では「障害時」を限定する文言は記載されていないが、障害時に適用することは可能であると判断できる。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、複数のクラスタノードを有する分散型情報処理システムにおいて、上位のクラスタノードを置かずに業務の割り当てを可能にすると共に、CPUクロックの周波数を最適化することを可能にしてシステム全体の消費電力を節減することができる分散型情報処理システムを提供することを目的としている。
本発明の他の目的は、複数のクラスタノードを有する分散型情報処理システムにおいて、上位のクラスタノードを置かずに業務の割り当てを可能にすると共に、障害発生時及び手動停止処理時等には、代替ノードを割り当てることができる分散型情報処理システムを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、複数のクラスタノードを有する分散型情報処理システムに適用可能で、上位のクラスタノードを置かずに業務の割り当てを可能にすると共に、CPUクロックの周波数を最適化することを可能にしてシステム全体の消費電力を節減することができる分散型情報処理システムの制御方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、複数のクラスタノードを有する分散型情報処理システムに適用可能で、上位のクラスタノードを置かずに業務の割り当てを可能にすると共に、障害発生時及び手動停止処理時等には、代替ノードを割り当てることができる分散型情報処理システムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る分散型情報処理システムは、複数種類の業務の各々に対して各々が自立して処理することができる複数のクラスタノードで構成された分散型情報処理システムであって、前記複数のクラスタノードには、該クラスタノード間で共有され、かつ該クラスタノード各々の連携動作により、該クラスタノード全体から成るクラスタの制御を行うクラスタリング制御手段を備え、前記クラスタリング制御手段に、業務の処理開始に際して、前記複数のクラスタノードの各々をデジタル制御するクロックの周波数を、所定の低い周波数に一斉に移行させる手段と、所与の業務を処理させるクラスタノードを決定する手段と、前記決定したクラスタノードに所与の業務を処理させる手段と、前記決定したクラスタノードをデジタル制御するクロックの周波数を、所定の高い周波数に移行させる手段と、を備えたことを特徴とする分散型情報処理システムを提供するものである。
【0013】
また、本発明に係る分散型情報処理システムの制御方法は、複数種類の業務の各々に対して各々が自立して処理することができる複数のクラスタノードで構成された分散型情報処理システムの制御方法であって、前記複数のクラスタノードには、該クラスタノード間で共有され、かつ該クラスタノード各々の連携動作により、該クラスタノード全体から成るクラスタの制御を行うクラスタリング制御ステップを有し、前記クラスタリング制御ステップに、業務の処理開始に際して、前記複数のクラスタノードの各々をデジタル制御するクロックの周波数を、所定の低い周波数に一斉に移行させるステップと、所与の業務を処理させるクラスタノードを決定するステップと、前記決定したクラスタノードに所与の業務を処理させるステップと、前記決定したクラスタノードをデジタル制御するクロックの周波数を、所定の高い周波数に移行させるステップと、を有することを特徴とする制御方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明に係るコンピュータプログラムは、複数種類の業務の各々に対して各々が自立して処理することができる複数のクラスタノードで構成された分散型情報処理システムを制御するためのコンピュータプログラムであって、前記複数のクラスタノードには、該クラスタノード間で共有され、かつ該クラスタノード各々の連携動作により、該クラスタノード全体から成るクラスタの制御を行うクラスタリング制御ステップを実行し、前記クラスタリング制御ステップは、業務の処理開始に際して、前記複数のクラスタノードの各々をデジタル制御するクロックの周波数を、所定の低い周波数に一斉に移行させるステップと、所与の業務を処理させるクラスタノードを決定するステップと、前記決定したクラスタノードに所与の業務を処理させるステップと、前記決定したクラスタノードをデジタル制御するクロックの周波数を、所定の高い周波数に移行させるステップと、を実行することを特徴とするコンピュータプログラムを提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の分散型情報処理システムによれば、複数のクラスタノードを有する分散型情報処理システムにおいて、上位のクラスタノードを置かずに各ノードが連携して機能する連携クラスタリング制御ソフトウェアを設置することで、業務の割り当てを可能にし、その結果により、CPUクロックの周波数を最適化することで、システム全体の消費電力を節減すると共に、障害発生時及び手動停止処理時には代替ノードの割り当てを可能にする分散型情報処理システムを提供することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムの全体構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムの動作を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムの障害発生時等における動作を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムにおける各ノードの動作の具体例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムにおける各ノードの動作の他の具体例を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムにおける各ノードの動作の他の具体例を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムにおける各ノードの動作の他の具体例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムにおける各ノードの動作の他の具体例を示す説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムの動作手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の分散型情報処理システムは、複数台のノードを備え、該複数台のノードの各々には互いに独立に業務を実行させ、少なくとも1つの業務実行ノードで障害が発生した際や、少なくとも1つの業務実行ノードを手動で停止させる際に、他の待機中のノードへ業務を引き継ぐことができる連携可能なクラスタ構造を有する。
特に、本発明の分散型情報処理システムは、ノードのCPUクロックを制御し、業務を実行するノードについてはCPUクロックを高状態(所定の高い周波数)とし、待機中のノードについてはCPUクロックを低状態(所定の低い周波数)に移行させることで、システム全体の消費電力量を削減させる機能を付与するものである。
【0018】
以下、本発明の分散型情報処理システムの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムの全体構成を示す構成図である。
同図において、本実施形態の分散型情報処理システムは、ネットワーク10に接続されたノード1〜n(クラスタノード)を備え、これら各ノードは、各ノード間の情報交換が可能な共有の連携クラスタリング制御ソフトウェア20を備える。ここで、n≧2とする。
ノード1〜nは、所定の高周波数状態と所定の低周波数状態のいずれでも動作可能なCPUを備えてさえいれば、例えば、情報処理端末装置であってもよいし、印刷機等の他の機器の制御部であってもよい。
【0019】
ノード1〜nが処理する業務の情報は、ネットワーク10を介してノード1〜nに伝達される。ノード1〜nの各々は、所与の業務については、全て等しく処理できることが好ましいが、各ノード毎に多少の専門性を有していてもよい。なお、ここでは、業務とはコンピュータに行わせる処理作業のことであり、以下、本明細書では、業務をこの意味で用いる。
ノード1〜nの業務に関する適正情報や、稼動状況、専有状態等の情報は、全て連携クラスタリング制御ソフトウェア20によって管理され、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、これらの情報に基づいてノード1〜nの各々に業務を割り当てることができる。
【0020】
また、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、ノード1〜nのいずれか1つが、割り当てられた業務を処理中に、障害発生または手動停止処理が発生した場合には、該業務を自ノードに代わって処理させる代替ノードとして、他のノードを割り当てることができる。
連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、ネットワーク10を介してノード1〜n間の情報交換を行うことが可能である。また、ノード1〜n間の情報交換のために、ネットワーク10とは別個の専用ネットワーク(LAN)を設けることも可能である。
【0021】
本発明に係る分散型情報処理システムでは、複数ノード(ここではノード1〜n)から構成されるクラスタシステムについて、その省電力化を実現するが、その手段として、ノードのCPUクロック(より具体的にはCPUクロック周波数)の低減を行う。但し、単純に全てのノードのCPUクロックを低減させてしまうと、業務の処理性能も低下してしまうため、現在業務を処理していないノード(即ち、待機ノード)のみについて、そのCPUクロックを低減させるものとする。また、CPUクロックの制御自体は、各ノードの連携クラスタリング制御ソフトウェア20が、OS(オペレーティングシステム)を介し、クラスタシステム上の業務起動/ 停止と連動させることで、外部装置(外部ノード)には頼らず、各ノードが自立して行えるようにしている。
【0022】
図2は、本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムの動作を示す説明図である。
以下、図2を参照して、本実施形態に係る分散型情報処理システムの動作を説明する。
図2に示すように、各ノード(ここではノード1,2)は、連携クラスタリング制御ソフトウェア20とネットワーク10とを介して、互いの状態を監視し合う。また、連携クラスタリング制御ソフトウェア20を介して処理業務を割り当てられたノード(ここではノード1)は、割り当てられた該業務を処理する。この際、該ノードのCPU(ここではCPU11)を制御するクロック周波数は、所定の高状態に移行される。
【0023】
図3は、本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムの障害発生時等における動作を示す説明図である。
図3に示すように、業務の処理中に障害を発生させたノード(ここではノード1)については、連携クラスタリング制御ソフトウェア20が、待機中のノードから選択して代替ノード(ここではノード2)を割り当て、該代替ノードに速やかに業務を引き継ぐ。この時、両ノードのCPUを制御するクロック周波数も最適化される。
【0024】
図4〜8は、本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムにおける各ノードの動作の具体例を示す説明図である。
以下、図4〜8を参照して、本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムにおける各ノードの動作の具体例を説明する。
図4〜8における各ノードi(ここではi=1,2)は、連携クラスタリング制御ソフトウェア20と共に、CPUi1と、OSi2(オペレーティングシステム)と、業務処理部i3と、を備える。
【0025】
まず、図4に示すように、各ノードのCPUi1は、起動時、連携クラスタリング制御ソフトウェア20と、OSi2とを介して、そのCPUクロック状態を、一斉に低状態(所定の低周波数で動作する状態)に移行する。この時、業務処理部i3は、CPUi1内で実行可能状態であってもよいし、実行不可能状態であってもよいものとする。ここで、実行可能状態とは、ノードiに割り当てられた業務を実行できる状態を意味する。また、実行不可能状態とは、ノードiに割り当てられた業務を実行できない状態を意味する。
業務処理部i3がプログラム制御で動作する構成の場合、この実行不可能状態においては、業務処理部13または業務処理部23の実行領域のメモリを他の業務の処理のために開放することができる。
【0026】
次に、図5に示すように、連携クラスタリング制御ソフトウェア20が、ネットワーク10を介して伝達された所与の業務を処理するノードを決定し、該決定したノード(ここではノード1)の業務処理部(ここでは業務処理部13)を実行可能状態にすると共に、該ノードに所与の業務を割り当てる。この時、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、各ノード間で通信を行って業務処理ノードの決定に必要な情報交換を行うが、所与の業務を割り当てられたノード(ここではノード1)は、該業務を自立して(即ち、他のノードとは連携せずに)行うことができるものとする。図5に示す例では、各ノードのCPUクロック状態は、この段階で、未だ低状態のままであるが、所与の業務の割り当てを決定したノードについては、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、該ノードのOS(ここではOS12)を介し、前記所与の業務を割り当てる前に、CPUクロック状態を高状態(所定の高周波数で動作する状態)に移行することも可能である。
【0027】
次に、図6に示すように、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、所与の業務の割り当てを決定したノードのCPUクロック状態を高状態に移行する。
なお、図7に示すように、所与の業務を割り当てられて処理中のノード(ここではノード1)に、障害が発生するか、若しくは手動停止処置がとられた場合、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、該ノードのOS(ここではOS12)を介し、CPUクロック状態を低状態に移行すると共に、代替ノード(ここではノード2)を決定して該代替ノードに前記所与の業務を移行する。また、図8に示すように、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、この移行後に、代替ノードのOS(ここではOS22)を介し、CPUクロック状態を高状態に移行する。
【0028】
図9は、本発明の実施形態に係る分散型情報処理システムの動作手順を示すフローチャート図である。
以下、図1〜8を参照しながら、図9に示すフローチャートを使用して、本実施形態に係る分散型情報処理システムの動作手順を示す。
(ステップS1)
まず、ステップS1では、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、各ノードのOSに依頼して、各ノードのCPUクロックを低状態に移行させる。
(ステップS2)
次に、ステップS2では、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、ネットワーク10を介して伝達された所与の業務を処理するノードを決定する。
【0029】
(ステップS3)
次に、ステップS3では、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、所与の業務の処理を決定したノードに、所与の業務を処理させる。
(ステップS4)
次に、ステップS4では、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、所与の業務の処理を決定したノードのOSに依頼して、該ノードのCPUクロックを高状態に移行させる。
(ステップS5)
次に、ステップS5では、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、各ノードのいずれかに障害または手動停止措置のいずれかが発生したか否かを検証し、各ノードのいずれかに障害または手動停止措置のいずれかが発生した場合はステップS8に移る。他方、各ノードのいずれにも障害が発生しておらず、手動停止措置もとられていない場合は、ステップS6に進む。
【0030】
(ステップS6)
ステップS6では、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、ネットワーク10を介して、新規の業務が伝達されたか否かを検証し、前記新規の業務が伝達された場合はステップS2に戻って、前記新規の業務の処理を担うノードの決定以下の処理を実行させる。他方、前記新規の業務が伝達されていない場合はステップS7に進む。
(ステップS7)
ステップS7では、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、本システムに伝達された全ての業務が完了したか否かを検証し、前記全ての業務が完了した場合はステップS6に戻って、新規業務が伝達されるまで待機する。他方、前記全ての業務が完了している場合はステップS10に移る。
【0031】
(ステップS8)
ステップS8では、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、前述の障害が発生したノード、若しくは手動停止措置がとられたノードのOSにクロック周波数低下要求を出力して、該ノードのCPUクロックを低状態に移行させる。
(ステップS9)
ステップS9では、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、前述の障害が発生したノード、若しくは手動停止措置がとられたノードが担当していた業務を代替処理するノードを決定し、その後、ステップS3に戻して、代替処理するノードに、自ノードに代わって業務を処理させる。
【0032】
(ステップS10)
ステップS10では、連携クラスタリング制御ソフトウェア20は、未処理の業務を有するノードについて、その処理実行を継続させる。この間、該ノードの業務が完了すると、該ノードのCPUクロック状態を低状態に移行させた後、ステップS5に戻し、障害発生時の処理や新規業務に対する窓口処理を優先させながら、同様に未処理のノードの業務を完了させる。
なお、ステップS3とステップS4とは、実行順序を入れ換えることが可能である。
【0033】
(他の実施の形態)
前述の実施形態では、待機側ノードの省電力化手法として、コンピュータ(CPU)のクロック周波数を制御する手段を採用している。しかし、この手段は、コンピュータとは限らず、クロック制御が可能な集積回路を備えた装置(例えば、ルータ、ストレージ)でも実施可能であり、該装置に同様の手段を採用することにより、同様に、その総消費電力を削減することが可能である。
前述のとおり、本発明の前記各実施形態では、アイドル状態(処理業務の待機状態)の各ノードは、高クロック状態でのアイドル状態で放置されることはなく、該アイドル状態のノードについては、そのCPUクロックを低減するので、システム全体の消費電力削減に繋がる効果が得られる。
【0034】
また、各ノードのCPU状態(稼動状態や専有状態)の管理は、システム全体のノードが相互に連携して行うため、統合的に管理を行う上位ノードの設置は必要とせず、このため、処理が複雑になることによるオーバーヘッドや、構成要素が増えることによるコスト高を避けることができる。
また、CPUクロックを低減させるだけであれば、クラスタとしての連携機能は問題無く動作可能状態にあるため、汎用性を有するクラスタリングシステムとしての基本機能(例えば、障害監視、障害検知時の業務引継ぎ等) は、常に自立的に行うことができる効果を有する。
さらに、障害発生時等の復旧処理において、CPUクロック状態を移行させるだけであれば、システム全体の起動時間を待つ必要は無いため、素早く業務を再開することができる効果も有する。
【0035】
なお、本発明に係る分散型情報処理システムの各構成要素の処理の少なくとも一部をコンピュータ制御により実行するものとし、かつ、上記処理を、図9のフローチャートで示した手順によりコンピュータに実行せしめるプログラムは、半導体メモリを始め、CD−ROMや磁気テープなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配付してもよい。そして、少なくともマイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ、汎用コンピュータを範疇に含むコンピュータが、上記の記録媒体から上記プログラムを読み出して、実行するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、分散型情報処理システムの構築に好適に採用可能であり、特に、処理業務に汎用性を有する情報処理端末装置のクラスタ構造として構成される分散型情報処理システムの構築に適用すれば、システム全体の消費電力を削減することができる分散型情報処理システムを構築することができる。
【符号の説明】
【0037】
1〜n ノード(クラスタノード)
10 ネットワーク
11,21 CPU(コンピュータ)
12,22 OS(オペレーティングシステム)
13,23 業務処理部
20 連携クラスタリング制御ソフトウェア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の業務の各々に対して各々が自立して処理することができる複数のクラスタノードで構成された分散型情報処理システムであって、
前記複数のクラスタノードには、該クラスタノード間で共有され、かつ該クラスタノード各々の連携動作により、該クラスタノード全体から成るクラスタの制御を行うクラスタリング制御手段を備え、
前記クラスタリング制御手段に、
業務の処理開始に際して、前記複数のクラスタノードの各々をデジタル制御するクロックの周波数を、所定の低い周波数に一斉に移行させる手段と、
所与の業務を処理させるクラスタノードを決定する手段と、
前記決定したクラスタノードに所与の業務を処理させる手段と、
前記決定したクラスタノードをデジタル制御するクロックの周波数を、所定の高い周波数に移行させる手段と、
を備えたことを特徴とする分散型情報処理システム。
【請求項2】
前記クラスタリング制御手段には、更に、
障害が発生したクラスタノード若しくは手動停止されたクラスタノードをデジタル制御するクロックの周波数を、所定の低い周波数に移行させる手段と、
前記障害を発生したクラスタノード若しくは手動停止されたクラスタノードが処理中の業務を、前記障害が発生したクラスタノード若しくは手動停止されたクラスタノードに代わって処理させる代替クラスタノードを決定する手段と、
前記代替クラスタノードに、前記障害を発生したクラスタノード若しくは手動停止されたクラスタノードが処理中の前記業務を処理させる手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の分散型情報処理システム。
【請求項3】
前記クラスタリング制御手段は、前記所与の業務に引き続いて新たな業務が伝達された場合には、該新たな業務に対して、前記所与の業務に対する処理手段と同様の処理手段で処理することを特徴とする請求項1または請求項2記載の分散型情報処理システム。
【請求項4】
複数種類の業務の各々に対して各々が自立して処理することができる複数のクラスタノードで構成された分散型情報処理システムの制御方法であって、
前記複数のクラスタノードには、該クラスタノード間で共有され、かつ該クラスタノード各々の連携動作により、該クラスタノード全体から成るクラスタの制御を行うクラスタリング制御ステップを有し、
前記クラスタリング制御ステップに、
業務の処理開始に際して、前記複数のクラスタノードの各々をデジタル制御するクロックの周波数を、所定の低い周波数に一斉に移行させるステップと、
所与の業務を処理させるクラスタノードを決定するステップと、
前記決定したクラスタノードに所与の業務を処理させるステップと、
前記決定したクラスタノードをデジタル制御するクロックの周波数を、所定の高い周波数に移行させるステップと、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項5】
前記クラスタリング制御ステップには、更に、
障害を発生したクラスタノード若しくは手動停止されたクラスタノードをデジタル制御するクロックの周波数を、所定の低い周波数に移行させるステップと、
前記障害を発生したクラスタノード若しくは手動停止されたクラスタノードが処理中の業務を、前記障害を発生したクラスタノード若しくは手動停止されたクラスタノードに代わって処理させる代替クラスタノードを決定するステップと、
前記代替クラスタノードに、前記障害を発生したクラスタノード若しくは手動停止されたクラスタノードが処理中の前記業務を処理させるステップと、
を有することを特徴とする請求項4記載の制御方法。
【請求項6】
前記クラスタリング制御ステップは、前記所与の業務に引き続いて新たな業務が伝達された場合には、該新たな業務に対して、前記所与の業務に対する処理ステップと同様の処理ステップを実行することを特徴とする請求項4または請求項5記載の制御方法。
【請求項7】
複数種類の業務の各々に対して各々が自立して処理することができる複数のクラスタノードで構成された分散型情報処理システムを制御するためのコンピュータプログラムであって、
前記複数のクラスタノードには、該クラスタノード間で共有され、かつ該クラスタノード各々の連携動作により、該クラスタノード全体から成るクラスタの制御を行うクラスタリング制御ステップを実行し、
前記クラスタリング制御ステップは、
業務の処理開始に際して、前記複数のクラスタノードの各々をデジタル制御するクロックの周波数を、所定の低い周波数に一斉に移行させるステップと、
所与の業務を処理させるクラスタノードを決定するステップと、
前記決定したクラスタノードに所与の業務を処理させるステップと、
前記決定したクラスタノードをデジタル制御するクロックの周波数を、所定の高い周波数に移行させるステップと、
を実行することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記クラスタリング制御ステップは、更に、
障害を発生したクラスタノード若しくは手動停止されたクラスタノードをデジタル制御するクロックの周波数を、所定の低い周波数に移行させるステップと、
前記障害を発生したクラスタノード若しくは手動停止されたクラスタノードが処理中の業務を、前記障害を発生したクラスタノード若しくは手動停止されたクラスタノードに代わって処理させる代替クラスタノードを決定するステップと、
前記代替クラスタノードに、前記障害を発生したクラスタノード若しくは手動停止されたクラスタノードが処理中の前記業務を処理させるステップと、
を実行することを特徴とする請求項7記載のコンピュータプログラム
【請求項9】
前記クラスタリング制御ステップは、前記所与の業務に引き続いて新たな業務が伝達された場合には、該新たな業務に対して、前記所与の業務に対する処理ステップと同様の処理ステップを実行することを特徴とする請求項7または請求項8記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−8419(P2011−8419A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150054(P2009−150054)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】