説明

分散方法及び分散装置

【課題】低い電力コストで、より粒子径が小さく均一な分散が可能で、あらゆる物質が混入する廃水においても問題なく使用できる分散方法と分散装置を提供する。
【解決手段】不溶性物質6を含んだ液体7が入っている水槽1の、配管9の入口すなわち液体7が引き込まれるところに超音波振動子2を設け、配管9の途中に負圧発生部4を形成し、液体7に含まれる物質を超音波振動子2と負圧発生部4にてせん断し、微細化して該物質を液体7中に分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質を液体に均一に分散させる方法及び装置に関するものであり、さらに詳しくは、液体に含まれる物質を分離回収しなくてもその液体の処理が円滑に行えるようにするために、事前に物質を微細化し分散する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物質を液体に分散させる方法は、超音波振動や攪拌羽のせん断力による方法が一般的である。超音波を利用したものは、物質を微細化し分散させるために、超音波発生部分に効率よく液体を接触させる方法が検討されており、攪拌羽を用いたものは、液体中で攪拌羽を回転させ、攪拌羽による液の流れと攪拌羽のせん断力により物質を微細化し分散できるように、該攪拌羽の構造が種々検討されている。
【0003】
しかしながら、このような処理方法を用いて、大量の液体に物質を分散させるには、あらかじめ小規模で分散させたものを均一に混ぜたり、大規模な攪拌装置を設置したり、ポンプを用いて配管経路中に設けられた分散用スリットを通過させるなどしなければならず、簡易な方法で大量の液体に物質を効率よく分散させる方法がなく、手間がかかり電力コストやランニングコストが嵩み、効率が悪いといった問題点が存在している。特に、廃水中の物質を効率よく分散するには、該物質の大きさ、形状などがまちまちであり、最適な形状が特定できないなどの問題点が存在している。
【0004】
従来、物質の分散方法や装置は、如何に効率よく物質に力を加えるかに関して検討されており、超音波を利用した装置では、物質を含んだ液体をポンプで吸込み、2kg/cm2以上の圧力でノズルに送りノズルから噴出する力を利用して超音波を発生させ、物質を分散する装置が考案されている(特許文献1参照)。この方法は、図9に示すように、循環ポンプ91、超音波発生用ノズル92、気体を混合するコンプレッサー93、排水槽94から構成されている。
【0005】
以上のように構成することで、排水槽94から排水を循環ポンプ91で吸込み、超音波発生ノズル92に2kg/cm2以上の圧力で供給すると、超音波発生ノズル92より超音波が発生し、循環している排水中の物質を分散することができる。
【0006】
また、容器の中に超音波振動子を設け、その超音波振動子に効率よく物質を含んだ液体を接触させ、物質を効率よく分散する装置も考案されている(特許文献2参照)。この装置は図10に示すとおり、有機物を含む汚水またはスラリー状廃棄物を収容する貯槽101と、この貯槽101に汚水またはスラリー状廃棄物を搬入するポンプ102を備えた配管103と貯槽101の内部下方に、超音波照射手段である超音波振動子104が配置され、超音波振動子104の効果を高めるため、貯槽101中の汚水またはスラリー状廃棄物を攪拌する攪拌手段であるインペラータイプの攪拌機105が投入されている。
【0007】
このように構成することで、貯槽101に搬入されたスラリー状廃棄物は、攪拌機105の攪拌により、貯槽101中に設置された超音波振動子104に向かって流れができることから、効率よく超音波が照射できスラリー廃棄物の分散が行えるようになる。更に、スラリーの状態により空気ポンプ107より配管106を経由して空気を貯槽101内に導入し攪拌を強くすることもできる。
【0008】
さらに攪拌装置においては、凹凸のついたケーシング111内で攪拌羽を高速回転させ、物質に衝撃せん弾力を与えて分散する装置が考案されている(特許文献3参照)。この装置は図11に示すとおり、ケーシング111、撹拌軸112、撹拌軸112に取り付けられた撹拌羽根113、ケーシング111内側の溝114、流体導入配管115、処理流体排出管116、ドレイン管117により構成される。
【0009】
このように構成することにより、流体導入配管115より導入された物質を含む液体に、高速で回転する攪拌羽113が衝撃せん弾力を与え、更にケーシング111内側の溝114により分散された物質が均一に液体中に混合されることとなる。
【0010】
【特許文献1】特開平2−86890号公報
【特許文献2】特開2001−104948号公報
【特許文献3】特開2004−41956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記特許文献1及び特許文献2に記載の装置においては、超音波振動子に液体を効率よく接触させることのみを検討しており、液体を送る駆動部にはなんら工夫がなされておらず、電力コストの割には、物質の分散が細かくないといった問題点が存在している。
【0012】
また、前記特許文献3に記載の装置においては、攪拌羽による衝突せん断力のみを高めようとすることから、攪拌羽の回転速度とケーシング111内の形状の検討を行うのみとなっており、前記超音波振動子を用いた分散装置と同様に、単一の効果のみに着目しているために、電力コストに対する分散の効果が低く、物質の粒子径がまちまちで、広い粒度分布を持つという問題点が存在している。
【0013】
本発明は以上のような問題点に鑑みなされたもので、低い電力コストで、より粒子径が小さく均一な分散が可能で、あらゆる物質が混入する廃水においても問題なく使用できる分散方法と分散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一は、液体中に含まれる物質を分散させる分散方法において、物質を含有する液体に負圧を発生させ、同時にまたは前後して、該液体に超音波振動を与えることにより、該液体に該物質を分散させることを特徴とし、以下の好ましい態様を含む。
前記負圧により液体中に微細気泡を発生させ、前記超音波振動により物質をより微細化させること。
前記物質が不溶性物質であること。
前記物質が、微生物由来の汚泥であること。
前記液体が廃水であること。
【0015】
本発明の第二は、液体中に含まれる物質を分散させる分散装置において、物質を液体に分散させる装置が、該液体中で回転する攪拌羽と、該攪拌羽を駆動する駆動部と、該攪拌羽の回転により生ずる負圧発生部を覆うケーシングと、該ケーシング内に連通されて該ケーシング外部から該液体を負圧によって吸引する吸引管と、該吸引管及び/又は近傍に設けられた超音波振動子とを具備したことを特徴とし、以下の好ましい態様を含む。
前記吸引管の他端が前記液体の水面近傍に開口されること。
前記物質が不溶性物質であること。
前記物質が、微生物由来の汚泥であること。
前記液体が廃水であること。
前記攪拌羽の回転によって生ずる負圧を利用して、気体を前記水槽外部から該攪拌羽の中心部に引き込む空気管を具備したこと。
【0016】
本発明の第三は、液体中に含まれる物質を分散させる分散装置において、物質を含有する液体を導入する導入管と分散処理した分散処理液を移送する移送管とが設けられた水槽と、該水槽内に設けられた上下に開口部を有するドラフトチューブと、該ドラフトチューブの下方または内側に設けられた下降流を発生させる攪拌羽と、該ドラフトチューブ及び/又は近傍に設けられた超音波振動子とを具備したことを特徴とし、以下の好ましい態様を含む。
前記物質が不溶性物質であること。
前記物質が、微生物由来の汚泥であること。
前記液体が廃水であること。
前記攪拌羽の回転によって生ずる負圧を利用して、気体を前記水槽外部から該攪拌羽の中心部に引き込む空気管を具備したこと。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上のような構成をしており、以下の優れた効果が得られる。
【0018】
(1)吸引管またはドラフトチューブ及び/又は近傍の任意の位置に超音波振動子を設けることができることから、発生した負圧により引き込まれる該物質を含んだ液体に効率よく超音波を照射することができ、さらに該負圧により、該物質がより細かく分散され、微細気泡により該液体に上向きの流れが生じ、再度、該吸引管へ該物質を導入できることから、くり返し効率よく分散することができる。
【0019】
(2)攪拌羽の回転により起こる負圧により、物質を含んだ液体を効果的に吸引管またはドラフトチューブに引き込み、該吸引管またはドラフトチューブ及び/又は近傍に超音波振動を与えて該物質を分散させ、さらに該攪拌羽まで該物質を含んだ液体を吸引し、該攪拌羽に発生する負圧とせん断力により該物質を再度分散できることから、該物質が不溶性物質であれば、界面活性剤等の薬剤を使用せずとも該不溶性物質のメジアン径が約3μm程度に分散され、さらに最大粒子径も15μm以下になり均一で小さな粒子として分散される。これにより、例えば廃水中における油脂類の生物処理も良好に行える。
【0020】
(3)さらに、外部から気体も併せて吸引できることから液体中の溶存酸素濃度を高く保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明においてメジアン径とは粒子径の分布において累積50%に相当する粒子径のことである。例えば油脂類を含む廃水であれば、メジアン径が1〜100μmの時に生物処理に好適であり、メジアン径は小さければ小さいほど好ましい。また、本発明において不溶性物質とは動植物性の油や、鉱物油等の油脂類のことである。
【0022】
油脂類を含む廃水に外部から引き込む気体は、主に空気を想定しているが、空気のみに限らず、用途に応じてオゾン、窒素等の気体を用いても良い。
【0023】
さらに、本発明で用いる攪拌羽は、自給式の微細気泡を発生させる攪拌羽を想定しているが、回転中心部に負圧が発生し、回転時に該攪拌羽にせん断力が発生すればよく、特に限定されるものではない。
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明が本実施形態に限定されないことは言うまでもない。図1は本発明の第1の実施形態の概略構成を示す模式図である。図2は本発明の第3の実施形態の概略構成を示す模式図である。図3は図2における攪拌部と負圧発生部の断面を示した模式図である。図4は図3における攪拌羽の形状を示した模式図である。図5は本発明の第4の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【0025】
[実施形態1]
図1において、1は不溶性物質6を含んだ液体7が入っている水槽で、水槽1の上方には、液体7を供給するための供給管10が配置されている。2は超音波振動子であり、配管9の入口すなわち液体7が引き込まれるところに設けられている。3は循環ポンプで、水槽1にループを形成するように接続された配管9の途中に設置されている。また、配管9の途中には負圧発生部4が形成され、負圧発生部4には、水槽1の外部から空気を供給する空気管5が接続されている。水槽1は液体7に含まれる物質を超音波振動子2と負圧発生部4にてせん断し、液体7に分散させるために必要な滞留時間を保てるように予め容積を設定している。11は液体を次工程へ移送する移送管である。尚、超音波振動子2は超音波を発生させるものであればよく特に限定されるものではない。さらに、超音波振動子2を設ける場所は本実施形態では配管9の入口すなわち液体7が引き込まれるところになっているが、配管9及び/又はその近傍に設ければよく、配管9に設ける場合は内側でも外側でもよく、その近傍に設ける場合は配管9の入口付近に設けるのが好ましい。しかし、配管9に引き込まれる液体7に超音波振動が照射できればよく、特に限定されるものではない。
【0026】
以上のように構成することで、水槽1に供給された不溶性物質6を含んだ液体7は、循環ポンプ3により配管9に引き込まれることとなる。このときに、不溶性物質6を含んだ液体7が配管9の入口に設置された超音波振動子2の発する超音波振動を受けることで不溶性物質6は分散されながら配管9内に引き込まれていく。ここで配管9は吸引管の役目をはたしている。さらに、配管9には配管径を縮径した負圧発生部4が設けられており、急激な圧力変動を不溶性物質6を含んだ液体7に与えることができる。この圧力変動により、超音波振動によって分散された不溶性物質6はさらに小さな粒子へと分散され、微細化された物質8となって水槽1内の液体7に分散される。尚、負圧発生部4に接続された空気管5から空気を供給することで、不溶性物質6が微細化されると同時に、取込まれた空気が微細気泡として液体7に供給され、該微細気泡により液体7に上向きの流れが生じ、不溶性物質6を再度配管9に導入することができ、さらに液体7の溶存酸素濃度を上げることができる。このようにして、微細化された物質8を含む液体7は、移送管11を通って、次工程(例えば生物処理槽)へ移送される。
【0027】
尚、液体7が廃水であれば、不溶性物質6が微細化された物質8に処理されることで、生物処理に適した廃水となり、効率良く廃水処理が行えることとなる。
【0028】
[実施形態2]
次に、本発明の第2の実施形態を示す。第1の実施形態では、物質が不溶性物質6であったが、本実施形態では、物質は汚泥である。また、本実施形態における構成は第1の実施形態と同様であるため、説明を割愛する。
【0029】
図1において、本発明の第2の実施形態の作用について説明する。本発明において微生物由来の汚泥は、微生物単独で活動できる汚泥ではなく、群(以下、「フロック」と言う。)をなして存在しているものであって、該フロックの中には、該フロックを構成するために主に有機物である可溶性物質と不溶性物質、及び微生物とが混在して存在している。該フロックに超音波振動子2及び、負圧発生部4より発生する圧力変動を与えることにより、該フロックが破砕され、該フロックを構成していた可溶性物質と不溶性物質が、該フロックから一部または全部切り離され微細化されることになる。このように、切り離された可溶性物質と不溶性物質は、微生物により分解されやすい物質となる。その後、該汚泥を含んだ液体を生物処理槽へ再度戻すことにより、該汚泥を構成していた可溶性物質と不溶性物質の微生物分解が促進され、余剰汚泥を削減することができる。
【0030】
[実施形態3]
図2に本発明の第3の実施形態を示す。図2において12は、液体7中で攪拌部13を回転させるための駆動モーターである。攪拌部13の負圧発生部15を覆うようにケーシング14が取り付けられている。ケーシング14には、液体7を吸引できるように配管9が取り付けられ、併せて空気も引き込めるよう空気管5も別途接続されている。
【0031】
図3は攪拌部13と負圧発生部15の一例を示した実施形態で、16は、攪拌羽17を駆動する駆動軸である。攪拌羽17の回転中心部下方には、負圧発生部15を覆うケーシング14が取り付けられ、攪拌羽17の回転中心近傍には空気管5の端部が位置している。さらに図4は、攪拌羽17の1実施形態を示したものである。尚、図1と同じ番号については、図2、図3、図4においても同じであるため、説明を割愛する。
【0032】
このように構成することで、駆動モーター12により攪拌羽17を回転させると、配管9より不溶性物質6を含んだ液体7が引き込まれる。ここで配管9は吸引管の役目をはたしている。このときに、配管9の入口近傍に設置された超音波振動子2の発する超音波振動を受けることで液体7中の不溶性物質6は分散されながら配管9内に引き込まれ、負圧発生部15を通り、攪拌部13より水槽1内に吐出される。不溶性物質6を含んだ液体7が攪拌部13に達したときに、攪拌部13内で高速回転する攪拌羽17によりせん断力を受けると同時に、攪拌羽17付近の液体7が攪拌羽17から離反する方向に移動させられるような攪拌によって生じた圧力変動を受け、微細化された物質8となり、液体7中に細かく分散され、水槽1内に吐出される。尚、攪拌羽17が微細気泡発生用の攪拌羽であれば、より強い負圧とせん断力が得られるため、不溶性物質6の分散に適した攪拌羽となり、さらに突起物がない形状であることから攪拌部13は夾雑物の中の繊維などがからまないものとなる。
【0033】
尚、負圧発生部15に接続された空気管5から空気を供給することで、不溶性物質6が微細化されると同時に、取込まれた空気が攪拌羽17に設けられた開口部19から出てくる際に、攪拌羽17に発生する負圧とせん断力により微細化され、微細気泡として液体7に供給され、該微細気泡により液体7に上向きの流れが生じ、不溶性物質6を再度配管9に導入することができ、さらに液体7の溶存酸素濃度を効率よく上げることができる。このようにして、微細化された物質8を含む液体7は、移送管11を通って、次工程(例えば生物処理槽)へ移送される。
【0034】
尚、液体7が廃水であれば、不溶性物質6が微細化された物質8に処理されることで、生物処理に適した廃水となり、効率良く廃水処理が行えることになる。
【0035】
また、物質が不溶性物質6ではなく、汚泥の場合は、汚泥フロックを微細化でき、さらに、微細化された該汚泥フロックを生物処理槽へ移送することにより、汚泥の消化が促進され、余剰汚泥を削減することができる。
【0036】
[実施形態4]
図5に本発明の第4の実施形態を示す。図5において18は攪拌部13の負圧発生部15を覆うように設置されたドラフトチューブである。2は超音波振動子であり、ドラフトチューブ18の入口すなわち液体7が引き込まれるところに設けられている。超音波振動子2を設ける場所は本実施形態ではドラフトチューブ18の入口すなわち液体7が引き込まれるところになっているが、ドラフトチューブ18及び/又はその近傍に設ければよく、ドラフトチューブ18に設ける場合は内側でも外側でもよく、その近傍に設ける場合はドラフトチューブ18の入口付近に設けるのが好ましい。しかし、ドラフトチューブ18に引き込まれる液体7に超音波振動が照射できればよく、特に限定されるものではない。尚、他の部分は、実施形態1、実施形態3と同じであるため、説明を割愛する。
【0037】
このように構成することで、攪拌部13を駆動モーター12で駆動することにより、負圧発生部15に負圧が発生し、ドラフトチューブ18へ不溶性物質6を含んだ液体7が引き込まれる。ドラフトチューブ18の入口に設置された超音波振動子2の発する超音波振動を受けることで不溶性物質6が分散されながらドラフトチューブ18内に引き込まれ、負圧発生部15、攪拌部13を通り、実施例2と同様の作用を受け、微細化された物質8となり、液体7中に細かく分散され、水槽1内に吐出される。尚、ドラフトチューブ18を用いることで、液体7を攪拌部13までストレートに移送することができ、配管9に生じる可能性のあるごみ等による異物のつまりを防ぐことができる。
【0038】
尚、実施形態1、3と同様に、負圧発生部15に接続された空気管5から空気を供給することで、不溶性物質6が微細化されると同時に、取込まれた空気が微細気泡として液体7に供給され、該微細気泡により液体7に上向きの流れが生じ、不溶性物質6を再度配管9に導入することができ、さらに液体7の溶存酸素濃度を上げることができる。このようにして、微細化された物質8を含む液体7は、移送管11を通って、次工程(例えば生物処理槽)へ移送される。
【0039】
尚、液体7が廃水であれば、不溶性物質6が微細化された物質8に処理されることで、生物処理に適した廃水となり、効率良く廃水処理が行えることになる。
【0040】
また、物質が不溶性物質6ではなく、汚泥の場合は、汚泥フロックを微細化でき、さらに、微細化された該汚泥フロックを生物処理槽へ移送することにより、汚泥の消化が促進され、余剰汚泥を削減することができる。
【実施例】
【0041】
次に、前記した本発明の第4の実施形態の装置を用いて物質の分散試験を行った。その結果について以下に示す。尚、比較例として超音波振動子2を用いない攪拌式の分散装置を用いて試験を行った。本試験においては、液体7は水道水を、物質は、水に分散しにくいサラダ油を用いて実施し、その時の分散粒子の粒子径分布を測定し、粒子径分布よりメジアン径を算出した。測定装置及び試験方法を以下に示す。ここで言うところのメジアン径とは、粒子径の分布において累積50%に相当する粒子径のことである。
【0042】
〔油滴の粒子径分布及びメジアン径の測定装置〕
堀場製作所製:レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−910W)
測定原理:Mie散乱理論に基づく
光源:He−Neレーザー、タングステンランプの併用式
【0043】
〔試験方法〕
水槽に6Lの水道水を入れ、6mlのサラダ油(市販品)を添加し、所定の時間運転した後、上記機器にて測定を行った。尚、攪拌式の分散装置の出力は50Wで、超音波発生装置の出力も50Wであった。
【0044】
表1に実施例及び比較例においてサラダ油を5分間、10分間、30分間分散させた時の分散粒子のメジアン径を示す。また、図6、図7、図8に、5分間、10分間、30分間分散させた時の分散粒子の粒子径分布を示したグラフを表した。
【0045】
表1に示す通り、実施例において5分後のメジアン径は13.63μmであった。また、図6に示す通り、粒子径20μm以下に66.8%が分布し、10μm以下には38.4%が分布していた。さらに、10分後のメジアン径は6.09μmとさらに細かく分散されていた。また図7より粒子径分布を見てみると粒子径20μm以下に99.1%が分布し、10μm以下には79.9%が分布していた。さらにまた、30分後のメジアン径は2.87μmとさらに細かく分散する結果となった。また、図8より、30分間分散後は粒子径20μm以下に100%が分布し、10μm以下には99.5%が分布するという結果が得られた。
【0046】
一方、比較例では5分後のメジアン径は23.88μmで、10分後は17.53μmで、30分後では13.55μmで、ともに超音波振動子2を併用した実施例の方が、分散度合いは5分後で1.75倍、10分後で2.88倍となり、30分後に至っては、4.72倍という驚異的な分散能力を有した。
【0047】
さらに、分布の割合においても、超音波振動子2を併用したものは、最大粒子径が10分後には約26μmとなり、比較例と比べて大きな差が得られた。さらに、実施例の5分後と、比較例の30分後がほぼ同じ分布を取ることから、定格電力コストで67%の削減が可能となる。
【0048】
【表1】

【0049】
次に、分散されたサラダ油と分散しないサラダ油を活性汚泥処理した結果を示す。
【0050】
〔残存油分の測定装置〕
測定装置:堀場製作所 油分濃度計 OCMA−305
測定方法:H−997抽出非分散赤外線吸収法
【0051】
〔試験方法〕
試験は、活性汚泥を200ml三角フラスコに採取し、そこに油分負荷600mg/Lとなるように分散させたサラダ油を添加し、20時間回転培養した後、活性汚泥全量を遠心分離し、油分濃度計で残存油分の濃度を測定した。尚、比較例としては分散しないサラダ油を添加した。
【0052】
試験後の遠心分離後の上澄み水に含まれる残存油分濃度を測定した結果、実施例においては処理後の油分濃度が4mg/Lと良好に処理できていることがわかった。一方、比較例においては、処理はされているものの一般水域への放流基準である30mg/Lには達しない142mg/Lであった。この結果も表1に示している。
【0053】
次に物質6が汚泥の場合の試験結果を示す。尚、試験装置と測定装置はサラダ油の試験装置、測定装置と同じものを用いて試験を行った。
【0054】
〔試験方法〕
水槽に菓子製造工場の廃水処理施設より採取した活性汚泥を6L入れ、所定の時間運転した後、粒子径分布とメジアン径の測定を行った。尚、比較例1として超音波振動子2を用いない撹拌式の分散装置のみを用いたもので試験を行った。また、比較例2として分散処理を行わない活性汚泥も同様に測定した。
【0055】
180分後及び未処理のメジアン径を表2に、各粒子径ごとの分布割合を図12のグラフに表した。
【0056】
表2に示すとおり、実施例においては180分後に27.38μmとなった。一方、比較例1は、180分後に30.57μmであった。比較例2は71.92μmであった。
【0057】
一方、分布割合を図12のグラフから読み取ると、実施例は比較例に比べて30μm以下の粒子が多く存在していることがわかった。
【0058】
【表2】

【0059】
次に、本試験装置を用いて活性汚泥に人工下水を加え、24時間分散運転した後のMLSSの増減を測定した。比較例としてフラスコにおける回転培養を行ったものを用意し、試験を行った。
【0060】
〔試験方法〕
試験は前記廃水処理施設の活性汚泥を6L採取し、そこに人工下水を加え槽内のCODを高めた後、24時間運転させて、それぞれの濃度の変化を測定した。
【0061】
表3に示すとおり、実施例においては運転前もMLSSから665mg/L(初期比9.8%減)低下しており、汚泥の消化が進んだ。即ち、汚泥が削減していることがわかった。
【0062】
一方、実施例のMLSSは低下するが、表4に示すように、実施例のCODの分解能力は比較例と概ね同等であり、微生物処理はきちんと行われていることがわかる。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明を使用することにより、水に分散しにくい物質の分散を従来よりも低い電力コストで実施でき、さらに夾雑物等の影響が多い廃水中の分散も簡易に行えることから、通常は分離し廃棄していたものまで併せて処理でき、廃棄物削減を行うことができるので、廃水処理も良好に行え、環境汚染の防止に大きく寄与できるものである。また、食品加工業などでは液体にゲル状物質を分散させる装置としても利用できる。さらに、気体と液体との反応装置としての利用もできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第3の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図3】図2における攪拌部と負圧発生部の断面を示した模式図である。
【図4】図3における攪拌羽の形状を示した模式図である。
【図5】本発明の第4の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図6】実施例と比較例における5分間処理後の粒子径分布を表したグラフである。
【図7】実施例と比較例における10分間処理後の粒子径分布を表したグラフである。
【図8】実施例と比較例における30分間処理後の粒子径分布を表したグラフである。
【図9】従来の分散装置の概略構成を示す模式図である。
【図10】従来の分散装置の概略構成を示す模式図である。
【図11】従来の分散装置の概略構成を示す模式図である。
【図12】実施例と比較例1及び比較例2における粒子径の分布割合を表したグラフである。
【符号の説明】
【0067】
1 水槽
2 超音波振動子
3 循環ポンプ
4 負圧発生部
5 空気管
6 不溶性物質
7 液体
8 微細化された物質
9 配管
10 供給管
11 移送管
12 駆動モーター
13 攪拌部
14 ケーシング
15 負圧発生部
16 駆動軸
17 攪拌羽
18 ドラフトチューブ
19 開口部
91 循環ポンプ
92 超音波発生用ノズル
93 コンプレッサー
94 排水槽
101 貯槽
102 ポンプ
103,106 配管
104 超音波振動子
105 攪拌機
107 空気ポンプ
111 ケーシング
112 攪拌軸
113 攪拌羽根
114 溝
115 流体導入配管
116 処理流体排出管
117 ドレイン管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に含まれる物質を分散させる分散方法において、物質を含有する液体に負圧を発生させ、同時にまたは前後して、該液体に超音波振動を与えることにより、該液体に該物質を分散させることを特徴とする分散方法。
【請求項2】
前記負圧により液体中に微細気泡を発生させ、前記超音波振動により物質をより微細化させることを特徴とする請求項1に記載の分散方法。
【請求項3】
前記物質が不溶性物質であることを特徴とする請求項1または2に記載の分散方法。
【請求項4】
前記物質が、微生物由来の汚泥であることを特徴とする請求項1または2に記載の分散方法。
【請求項5】
前記液体が廃水であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の分散方法。
【請求項6】
液体中に含まれる物質を分散させる分散装置において、物質を液体に分散させる装置が、該液体中で回転する攪拌羽と、該攪拌羽を駆動する駆動部と、該攪拌羽の回転により生ずる負圧発生部を覆うケーシングと、該ケーシング内に連通されて該ケーシング外部から該液体を負圧によって吸引する吸引管と、該吸引管及び/又は近傍に設けられた超音波振動子とを具備したことを特徴とする分散装置。
【請求項7】
前記吸引管の他端が前記液体の水面近傍に開口されることを特徴とする請求項6に記載の分散装置。
【請求項8】
液体中に含まれる物質を分散させる分散装置において、物質を含有する液体を導入する導入管と分散処理した分散処理液を移送する移送管とが設けられた水槽と、該水槽内に設けられた上下に開口部を有するドラフトチューブと、該ドラフトチューブの下方または内側に設けられた下降流を発生させる攪拌羽と、該ドラフトチューブ及び/又は近傍に設けられた超音波振動子とを具備したことを特徴とする分散装置。
【請求項9】
前記物質が不溶性物質であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の分散装置。
【請求項10】
前記物質が、微生物由来の汚泥であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の分散装置。
【請求項11】
前記液体が廃水であることを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の分散装置。
【請求項12】
前記攪拌羽の回転によって生ずる負圧を利用して、気体を前記水槽の外部から該攪拌羽の中心部に引き込む空気管を具備したことを特徴とする請求項6乃至11のいずれかに記載の分散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−203285(P2007−203285A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354382(P2006−354382)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】