説明

分析プロトコルを実行するための方法、システム、及び装置

分析プロトコルを実施するための方法、システム、及び装置が提供される。本方法の実施形態は、少なくとも1つの構成要素の結合同一性(binding identity)を少なくとも決定するために、クロマトグラフィ条件下において、サンプルを少なくとも第1の固定相と第2の固定相とに連続的に接触させることを含み、該サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する該第1の固定相の特異性が、少なくとも不確定であり、少なくとも1つの構成要素に対する該第2の固定相の特異性が確定的である。少なくとも前記第1及び第2の固定相を備えるシステム及び装置もまた提供される。前記本方法の実施に使用するためのキットもまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、分析プロトコルであり、特にクロマトグラフィプロトコルであり、より具体的には液体クロマトグラフィである。
【背景技術】
【0002】
複合サンプル混合物内に存在する少量の構成要素のような構成要素の分析は、対象とする構成要素を検出し及び特徴付けるために、より多量の構成要素のような他の構成要素を該混合物から特定的に取り除くことを、頻繁に必要とする。例えば、複合タンパク質サンプルの混合物の場合には、存在するタンパク質全体の約2%から約60%までの範囲の量において、1つか又は複数の多量のタンパク質が存在する可能性がある。しかしながら、これらの多量のタンパク質は、少量のタンパク質の検出及び特徴付けを混同させる可能性があることから、前記混合物から除去される必要がある。しかしながら、サンプルからの構成要素の除去は、上述の多量の構成要素の除去に限られず、汚染物質か又は他の干渉物質をサンプルから除去することのような、様々な理由に対して必要とする可能性がある。
【0003】
複合混合物内に存在するサンプル構成要素、例えばタンパク質及びそれに類するものの分析に、多くの技法が従来から用いられている。例えば、そのような技法は、1次元及び2次元ゲル電気泳動、多次元液体クロマトグラフィ、及び質量分光プロトコルを含む。しかしながら、これらの従来のプロトコルは、使用前に不必要な構成要素の除去を必要とする制限を受ける。例えば、多くのプロトコルは、多量の構成要素の存在に起因して、ダイナミックレンジの制限を受け、並びに、他の構成要素が存在することに起因して、より少量の構成要素か又はそれらの誘導体(derivative)を選択的に検出する能力における制限を受ける。例えば、複合タンパク質サンプルの分析において、血しょうか内又は血清内に存在するタンパク質を特徴付けることを試みるであろうことは明らかである。そのようなサンプル内において、対象とするタンパク質及びペプチドが、総タンパク質(例えば、血清アルブミン)量の約55%から総タンパク質量の約10−10未満までの範囲の量において存在し、従って、これらのタンパク質の特徴付けにおいて、サンプル混合物から他の構成要素を選択的に除去することが重要である。
【0004】
サンプル混合物から、多量のタンパク質のような構成要素を除去することに、双方向(interactive)固定相液体クロマトグラフィ(「LC」)の様々な形式が従来から用いらている。しかしながら、これらの従来から用いられているプロトコルは、特定の構成要素(例えば、多量のタンパク質)の除去に関して、選択性が不十分であり、頻繁に、不必要な対象構成要素の枯渇中に、対象となる構成要素の除去が生じる結果となり、及び/又は、不必要な構成要素の除去が完全には行われない結果となる。残念なことには、対象とする構成要素を分析するためのプロトコルが実施される後まで、多くの場合に、構成要素除去の程度がわからないことから、時間、労力、及びサンプルが浪費される。
【0005】
明らかなように、これらの固定相プロトコル(solid phase protocol)を設計することにおける重要なステップは、ある特定の固定相と移動相との組み合わせ(以下、「分離システム」と記される)の選択であり、この組み合わせは、サンプル内の構成要素の除去に使用されることが可能であり、多量のタンパク質のようなターゲットとされた構成要素を結合するチャンスを最大化する一方で、結合されることが意図されていない構成要素を結合するチャンスを最小化すると同時に、固定相の選択及び最適化に伴う時間及び費用を最小化する。実際には、最適化された固定相を設計することは、典型的には、固定相と様々なプロトコル反応物(移動相(mobile phase)、溶出緩衝液(elution buffer)など)とパラメータ(温度、流速など)とを1回か又は複数回、反復して、所与のプロトコルに最も適した固定相を見つけることを含む。そのような反復は、コストが高く、時間がかかる。
【特許文献1】米国特許第4,722,896号明細書
【特許文献2】米国特許第5,567,317号明細書
【特許文献3】米国特許第5,801,225号明細書
【特許文献4】米国特許第6,495,016号明細書
【特許文献5】米国特許第5,567,317号明細書
【特許文献6】米国特許第4,963,263号明細書
【特許文献7】米国特許第4,722,896号明細書
【特許文献8】米国特許出願第2003/0000835号明細書
【特許文献9】米国特許出願第2002/0127739号明細書
【特許文献10】米国特許出第2002/0127739号明細書
【特許文献11】国際特許第WO02/055654号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、サンプルから対象とする構成要素を分離するための新規の方法及びシステム、及び、具体的には、対象とするターゲット構成要素を分離するためのクロマトグラフィプロトコルで用いられる材料を設計及び最適化するための方法及びシステムとの開発に対する関心が続いている。特に関心が持たれていることは、クロマトグラフィ材料の結合特性を容易に且つ効率的に評価し、使用することが容易であり、コスト効率が良く、並びに固定相の開発及び最適化に伴う時間及び経費を最小化する方法及び分離システムの開発である。
【0007】
[対象とする参考文献]
対象とする参考文献は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、及び特許文献7、及び特許文献8、特許文献9、及び特許文献10、並びに特許文献11を含む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
分析プロトコルを実施するための方法、システム、及び装置が提供される。本方法の実施形態は、少なくとも1つの構成要素の結合同一性(binding identity)を少なくとも決定するために、クロマトグラフィ条件下において、連続的にサンプルを少なくとも第1の固定相と第2の固定相とに接触させることを含み、前記サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する前記第1の固定相の特異性が、少なくとも不確定であり、少なくとも1つの構成要素に対する前記第2の固定相の特異性が、確定的である。少なくとも第1及び第2の固定相を備えるシステム及び装置もまた提供される。本方法を実施する際に使用するためのキットもまた提供される。
【実施例】
【0009】
[定義]
本明細書内において使用される用語である「固定相(stationary phase)」は、クロマトグラフィプロトコル等の分析プロトコルにおいて用いられる不動相(immobile phase)か又は非流動相(non-fluid phase)のことを指す。
【0010】
本明細書内において使用される用語である「移動相(mobile phase)」は、クロマトグラフィプロトコル等の分析プロトコルにおいて固定相の中を通してか又は固定相を越えてサンプルを移動させるために用いられる流動相(fluid phase)のことを指す。
【0011】
本明細書内において使用される用語である「分離システム」は、クロマトグラフィプロトコル等の分離プロトコルにおいて使用される特定の固定相/移動相の組み合わせのことを広範囲に指す。
【0012】
本明細書内において使用される用語である「サンプル」は、典型的には(必ずしもそうではないが)、液状形状において、1つか又は複数の構成要素、すなわち対象とする成分か又は分析物を含む、1つの材料か又は材料の混合物のことを指す。
【0013】
「オプションの」か又は「オプション的な」は、引き続いて記載される状況が、生ずる場合があるか又は生じない場合があることを意味し、従って、その記載は、状況が生ずる例とその状況が生じない例とを含む。
【0014】
「コンピュータベースシステム」は、本発明の、ある関数の実行及び/又は情報の分析に使用されるハードウェア手段、ソフトウェア手段、及びデータ格納手段のことを指す。本発明のコンピュータベースシステムの最小ハードウェアは、中央処理装置(CPU)、入力手段、出力手段、及びデータ格納手段を含むことができる。当業者であれば、現在利用可能なコンピュータベースシステムのうちの任意の1つが、本発明内における使用に適合可能であることを容易に理解することが可能である。前記データ格納手段は、本発明に関する情報の記録を含む任意の製品か、又はそのような製品にアクセスすることが可能なメモリアクセス手段を含むことができる。
【0015】
[発明の詳細な説明]
分析プロトコルを実施するための方法、システム、及び装置が提供される。本方法の実施形態は、少なくとも1つの構成要素の結合同一性を少なくとも決定するために、クロマトグラフィ条件下において、連続的にサンプルを少なくとも第1の固定相と第2の固定相とに接触させることを含み、前記サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する前記第1の固定相の特異性が、少なくとも不確定であり、少なくとも1つの構成要素に対する前記第2の固定相の特異性が、確定的である。少なくとも第1及び第2の固定相を備えるシステム及び装置もまた提供される。本方法を実施する際に使用するためのキットもまた提供される。
【0016】
本発明の説明に先立って、本発明が、記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、当然改変される可能性があるようなものであることを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることから、本明細書内において使用される用語が、特定の実施形態のみを説明することを目的とするためのものであり、制限することを意図したものでないこともまた理解されたい。
【0017】
値の範囲が提供される場合には、各介在値は、コンテキストによって明確に指示されない限り、規定された範囲が本発明内において包含される状態において、下限の単位の十分の一まで、別様には、その範囲の上限と下限との間、及び任意の他の規定値又は介在値であることを理解されたい。より狭い範囲もまた本発明内において包含される状態において、これらのより狭い範囲の上限及び下限は、規定された範囲内における任意の特定の除外された制限を条件として、単独に包含されることができる。規定された範囲が前記制限の一方か又は両方を含む場合には、それらの包含された制限のいずれかか又は両方を除いた範囲もまた、本発明に含まれる。
【0018】
別様に定義されない限り、本明細書内において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当該技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を持つ。本明細書内に記載した方法及び材料に類似のか又は等価の任意の方法及び材料もまた、本発明の実施か又は試験において使用されることが可能であるが、好適な方法及び材料が、ここでは説明される。本明細書内において言及される全ての刊行物は、該刊行物が引用されるものに関連して方法及び/又は材料を開示し且つ説明するために、参照によって本明細書内において組み込まれる。
【0019】
本明細書内において使用されるように、及び添付の特許請求の範囲において使用されるように、単一形態の「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その(the)」は、コンテキストが別様を明確に指定しない限り、複数の指示対象を含むことに留意すべきである。
【0020】
本明細書内において記載された刊行物は、それらの開示が、本出願のファイリング日時よりも先であるため、単独に提供される。本明細書内には、本発明が、先行発明の効力によってそのような刊行物に先行する権利がないことの了承として解釈されるものは何もない。更に、提供された刊行物の日付は、実際の刊行物の日付とは異なる可能性があり、個別に確認される必要がある場合がある。
【0021】
この開示を読み解く際に、当業者であれば理解されるように、本明細書内において説明され及び図示された個々の実施形態の各々が、別個の構成要素及び特徴を有し、これらの特徴は、本発明の範囲か又は原理から逸脱することなく、任意の他のいくつかの実施形態の特徴から容易に分離されるか又は、任意の他のいくつかの実施形態の特徴と組み合わされることが可能である。
【0022】
本明細書内において示される図面は、必ずしも縮尺通りというわけではなく、明瞭化のために、いくつかの構成要素と特徴が誇張されている。
【0023】
[概要]
上述のように、本方法の実施形態は、少なくとも第1の固定相と第2の固定相とを用いることによって特徴付けられる。本発明のある実施形態の特徴は、前記固定相の少なくとも1つが、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対して少なくとも不確定な特異性を有し、且つ、少なくとも1つの構成要素に対する少なくとも1つの他方の固定相の特異性が確定的であるか、又は不確定な固定相の特異性よりも少なくともより確定的である。
【0024】
以下においてより詳細に述べられるように、本発明において、前記固定相が用いられる順番、すなわちサンプルが固定相と接触させられる順番は、変更することが可能である。例えば、ある実施形態において、対象とするサンプルが、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対して不確定の特異性を有する固定相と最初に接触させられ、次いで、結果として得られた結合分画(binding fraction)が、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する特異性が確定的な固定相と接触させられる。ある他の実施形態において、対象とするサンプルが、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する特異性が確定的である固定相と最初に接触させられ、次いで、結果として得られる結合分画が、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する特異性が不確定の固定相と接触させられる。従って、本方法は、この点に関して応用がきき、従って、以下により詳細に記載されるように、様々な異なる用途における使用のために適用されることが可能である。
【0025】
本発明の更なる記載において、本方法が最初に記載され、続いて、本方法を実施する際に用いられることが可能なシステム及び装置が再検討される。最後に、本方法を実施する際に使用するためのキットが提供される。
【0026】
[方法]
上記に要約したように、本方法の実施形態は、少なくとも第1の固定相及び第2の固定相にサンプルを連続的に接触させることを含む。従って、本方法の実施形態を実施する際には、接触したサンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素が、固定相に結合する。上述のように、本発明の特徴は、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素(例えば、「ターゲット」構成要素)に対する特異性か又は選択性(本明細書内において互いに交換可能に使用される)が、少なくとも1つの固定相に対して、少なくとも不確定、例えば未知であり、少なくとも1つの他の固定相に対して、確定的か又は少なくともより確定的であることである。「不確定な特異性」は、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する固定相の結合特異性(例えば、結合特異性の程度、及びそれに類するもの)のいくつかの態様が、本方法を実施している人にとって少なくとも不確定であり、例えば未知であることを意味する。例えば、第1の固定相が所定の構成要素に結合することができることが、知られている可能性がある。しかしながら、結合の程度(すなわち、いくつかの意図された構成要素が固定相を通過するか又は通り超すように、「意図された」又は「ターゲット」構成要素が、どの程度完全に結合されていないか、又は完全に結合されていないかどうか、及び/又は、他の又は任意の「意図されていない」又は「非ターゲット」構成要素が結合されているかどうか)が知られていない可能性があるか、又は結合の程度に関していくらかの不確定さがある可能性がある。「確定的な特異性」は、本方法を実施している人にとって、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する固定相の結合特異性が、確定的(例えば、既知)であるか、又は少なくとも、未知の固定相の特異性よりも確定されていることを意味する。ある実施形態において、特異性の確定性はまた、固定相が、「不確定な」固定相よりも、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対するより高い特異性を有することの識別(knowledge)又は確定性を、すなわち、確定及び不確定、例えば既知及び未知を含むことができ、そのような例において、固定相のうちの1つが、別の固定相よりも、少なくとも1つの構成要素に対するより高い特異性を有するという確定性、例えば識別のことを指すことができる。
【0027】
ある実施形態において、少なくとも1つの固定相の結合特異性が、不確定である、例えば未知であることから、例えば、本方法の目的が、固定相の結合特異性についてその固定相を評価することか又は特徴付けることである場合には、この固定相を「試験」固定相と記述することができる。更に後述されるように、本発明を様々な用途に用いることが可能である。例えば、ある実施形態において、少なくとも不確定な特異性の少なくとも1つの固定相の結合特異性に関連付けられた情報が、将来のプロトコルの開発か又は最適化、例えば、将来のプロトコルのために固定相を最適化することか又は適合可能な固定相を決定することにおいて使用されることが可能である本方法の実施から得られることができる。従って、本発明の方法の実施形態を、所与の構成要素の結合同一性を決定する方法として特徴づけることができる。「結合同一性」は、少なくとも1つの結合分析に関する特定の結合複合体の少なくとも1つの結合相手メンバの少なくとも1つの態様(例えば、化学的態様、物理的態様、生物学的態様、及びこれらに類するもの)を意味する。例えば、そのような結合同一性は、分子の分子構造、例えばタンパク質リガンド結合相互作用におけるタンパク質成分の分子構造を含むことができる。
【0028】
本方法の実施形態は、単一の第1の固定相及び単一の第2の固定相に関連して、主に説明される。しかしながら、そのようなことは便宜上のためだけであり、本方法は、並列プロトコル、例えば多くの異なる固定相を評価するために用いられることが可能であるため、本発明を限定することが意図されるものではない。例えば、既知か又は未知の特異性を有する多くの異なる固定相は、並列なやり方で、すなわち、例えば並列に複数のクロマトグラフィカラムを用いること等によって(例えば、従来の96,384,1024、等のカラムのウェルアレイを用いて)、同時にすなわち一斉に、用いられることが可能である。並列なやり方で用いられることが可能な様々な固定相のいくつか、又は全てが、同等とすることができるか、又は1つか又は複数の物理的及び/又は化学的特性が異なるものとすることができ、例えば複数のリガンドからなる様々な組成物、及び/又は、様々な結合か又は溶出条件等によって調整されたものとすることができる。並列プロトコルのパフォーマンスを高めることが可能であるマイクロ流体素子を用いて、本方法を実施することができることが、更に検討される。そのようなマイクロ流体素子は、当該技術分野において既知であり、米国特許第6,495,016号、及び米国特許出願第2003/0000835号(これらの開示は、参照により本明細書内において組み込まれる)に記載されたようなナノメートルのオーダーの少なくとも1つの次元(例えば、長さ、深さ、幅、等)を有する少なくとも1つの流体チャンネルを有することによって特徴付けられる。
【0029】
本方法の実施において、対象とする少なくとも1つの構成要素を含むか、又は少なくとも含むと思われるサンプルが、最初に固定相のうちの1つに接触させられて、少なくとも1つの構成要素を含むサンプルの結合分画が提供される。結合した構成要素(複数可)は、意図的に結合させられることができる(すなわち、ターゲットにされることができる)か、又はその結合が意図されなかったように意図せずに結合させられることができる。結合した構成要素は、1つか又は複数の点において、全てが同一か又は異なるものとすることができる。次いで、連続的な手法で、結合分画は、固定相から分離され、他の固定相に接触させられる。上述のように、特定のプロトコルに依存して、固定相の接触の順序を変えることが可能であり、従って、一般に、本方法のステップは、(a)サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対して少なくとも不確定である特異性を持つ固定相を最初に接触させ、次いで、少なくとも1つの構成要素に対して確定的か又は既知である特異性を持つ別の固定相か又は第2の固定相を接触させ、或いは(b)サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対して確定的である特異性を有する固定相を最初に接触させ、次いで、少なくとも1つの構成要素に対して少なくとも不確定か又は未知である特異性を持つ別の固定相か又は第2の固定相を接触させることとして、特徴付けられることが可能である。
【0030】
本方法を更に説明する前に、ここで本発明の固定相をより詳細に説明し、続いて、本方法を実施する際に本固定相によって使用されることが可能な代表的なサンプルを説明する。
【0031】
[例示的な固定相]
上記に要約されたように、本発明は、本発明の少なくとも2つの固定相を含む。これにより、少なくとも第1の固定相と第2の固定相とが、本発明を実施する際に用いられることとなる。前記固定相は、任意の適合可能な固定相とすることができ、実施されている特定のプロトコルに依存して変ることとなる。「固定相」は、不動相を意味する。この不動相を、移動相か又は溶離液(すなわち液体)か又は詳細に後述される流動相と対比させることができる。一般に、本発明の第1の固定相及び第2の固定相は、結合した相を有する固相支持体か又は基体を含み、この結合した相は、固相支持体に取り付けられるか、会合されるか、接続されるか、又はさもなければ結合されるか又は連結される。前記結合した相は、固定相に接触させられるサンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に結合するように選択される。すなわち、この結合している相を、特定結合複合体、例えば特定結合対か又は相互作用の結合メンバ等の結合剤として説明することも可能である。
【0032】
固定相は、固体、固相支持体上に結合されたか又は被覆された相、或いは壁被覆相(wall-coated phase)とすることができる。多くの実施形態において、第1の固定相及び第2の固定相が、例えば液体クロマトグラフィプロトコルのために用いられるように、複数の粒子(例えば当該技術分野で既知のもの)から作られており、多孔質か又は非多孔質とすることができる。多孔質であるならば、所与の固定相の平均孔寸法及び全多孔率(すなわち、間隙の体積と固体粒子の量との比率)が選択されて、実施されている特定の分離手順を最適化する。本発明の所与の固定相の多孔率は、実施されている特定の分離プロトコルに依存して変更することが可能である。実施形態は、平均孔寸法が約100オングストローム〜約10,000オングストローム、例えば300オングストローム〜約3,000オングストローム、例えば約300オングストローム〜約1,000オングストロームの範囲にある多孔性基体を含むことができる。
【0033】
固定相の固相支持体か、基体か、又はマトリックスに様々な材料が、使用されることが可能であり、このような材料が少なくとも不確定な特異性の少なくとも第1の固定相、及び特異性が確定的である少なくとも1つの他の固定相のための材料と同一である必要はない。代表的な材料は、磁粉、シリカ(例えば、SiO)、アルミナ(例えば、Al)、任意の他の適合可能な酸化金属(遷移金属酸化物(transition metal oxide)を含む)、並びにポリマー材料及びコラプシブル・ポリマー、例えばスチレン、ポリアクリルアミド、ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン(PS−DVB)、セルロース、糖、及び糖ポリマー(例えば、Amersham Biosciencesから入手可能なSepharose(商標)等のアガロース、デキストラン、及びこれらに類似のもの)、シリカ被覆ポリマー、メンブレン、オルガノ修正された金属又は遷移金属酸化物(ハイブリッド)、並びに連続金属酸化物又は化学的に修正された金属酸化物モノリシック構造を含む(但しこれらに限定されない)。これらの材料は、単なる例示であり、本発明の範囲を限定することを意図しておらず、他のクロマトグラフィ固相支持体か、樹脂か、又はマトリックスを、他のアフィニティクロマトグラフィ樹脂等として、同様に用いることが可能である。
【0034】
上述のように、特異性が確定的及び不確定の少なくとも固体相は、サンプル内に存在する1つか又は複数のターゲット構成要素に結合するように選択された結合した相を含む。すなわち、少なくとも第1の固定相及び第2の固定相の結合した相は、相補的結合物質であり、このような物質は、サンプルに存在する「結合相手構成要素(複数可)」か又は相補的構成要素(複数可)を結合する。結合した相(「リガンド」ともいう)は、任意の適合可能な技法によって固定相の固相支持体と安定的に会合されるものであり、前記リガンドは、固相支持体に対して、共有結合か、吸着か、又はさもなければ付着されることが可能である。固定相のリガンドは、適合可能な溶出プロトコルを用いて(例えば適合可能な溶出緩衝液を用いて)該リガンドに結合する任意の構成要素(複数可)が溶出されることが可能なように、通常、少なくとも1つの構成要素に可逆的に結合する。
【0035】
リガンドは、一般的なリガンドか又は集団的リガンドか又は特異的リガンドである。一般的リガンドは、特異的リガンドの場合にみられるような単一の構成要素か又は物質よりも、少なくともある構造的か又は機能的な類似性を有する関連付けられた構成要素か又は物質の一群に対する親和性を有する。従って、一般的リガンドは、類似か又は同一の動力学的特性か又は熱動力学的特性を持ついくつかの物質(例えば、リガンド結合タンパク質のクラス又は集団、例えば補因子か又はその類似体に結合する酵素)に結合する。それとは対照的に、特異的リガンドは、他の潜在的結合相手か又は関連付けられた結合相手とは反対に、特異的結合相手に対して、より高い相関的親和性(熱力学的か又は動力学的な特性)を持つか、この特異的結合相手と特異的に結合する。
【0036】
代表的なリガンドは、抗体又はその結合フラグメント(例えば、Fv、F(ab)、Fab)を含み、一価、二価、及び多価の機能性抗体、二重特異性抗体(diabody)、最小特異性抗体(minibody)、抗原、色素、AMP NADH及びNADPHの誘導体、コンカナバリンA、レクチン(例えば、レンティル・レクチン、小麦胚芽レクチン、及びこれらに類するもの)等のタンパク質、プロテインA、プロテインG、ベンズアミジン、フェニルボロン酸、糖タンパク質、ペプチド、核酸(DNA、RNA)、ヌクレオシド、ヌクレオチド、様々なアミノ酸のメチルエステル、D−アミノ酸、ビタミン、受容体、酵素、大豆トリプシン阻害剤、無機化学物質、有機化学物質を含む(但しこれらに限定されない)。固定相のリガンド密度は、特定のリガンド、固相支持体、特定のプロトコル等に依存して変化する。
【0037】
ある実施形態において、前記結合した相は、色素分子としても知られているクロロトリアジンアフィニティリガンド、例えばシバクロンブルーF3G−A色素か又はリアクティブブルー2を含むことができる。ある実施形態で特に問題とすることは、そのような色素分子を含む特異性が未知の固定相であることであり、すなわち、本発明を用いて、そのような固定相の結合特異性の評価を行うことが可能である。同様に問題とすることは、免疫親和性リガンド(すなわち、抗体か又はその結合フラグメント(例えば、上述のように、Fv、F(ab)、F(ab))であり、ある実施形態で特に問題とするものは、特異性が既知の固定相であり、そのような免疫親和性リガンドが含まれる。ある実施形態では、少なくとも第1の固定相は、シバクロンブルー等の色素分子リガンドを含み、第2の固定相は、免疫親和性リガンドを含む。色素分子リガンド及び/又は免疫親和性リガンドを用いるそのような実施形態は、存在量が多い構成要素、例えば、複合タンパク質由来サンプルのヒト血清アルブミン(「HSA」)構成要素を結合して、HSAに対する第1の固定相の結合特異性を特徴付けるか、又は他の構成要素に対してサンプルを濃縮するためにサンプルからアルブミンを取り除く時に、特に有用である。
【0038】
ある実施形態において、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する少なくともある特異性を持つ固定相は、特異度が高いか、或いはその構成要素に対する相関的な親和性がサンプルの他の構成要素に対する相関的な親和性よりも高い。「特異度が高い」ことは、サンプルの少なくとも1つの構成要素に対するこの固定相の相対的結合親和性が、サンプルの少なくとも1つの他の構成要素、例えば不要か、又は混入した、サンプルの構成要素に対する結合親和性よりも高いことを意味する。高親和性結合は、約10〜1010L/モルか又はそれよりも大きい範囲とすることができ、一方、低親和性は約10L/モルか又はそれよりも小さい範囲とすることができる(例えば、参照により本明細書内において組み込まれる米国特許第4,963,263号を参照のこと)。従って、構成要素に対する相対的親和性が、サンプルに存在する他の構成要素、例えば不要な構成要素の親和性よりも著しく大きい場合には、サンプル内に存在する少なくとも1つの該構成要素に対して、特異性が高くなると所与の固定相を考えることができる。この態様において、著しく大きい相対的親和性は、ある実施形態では10倍〜10倍の差のオーダーとすることができるか、又はそれよりも大きくすることができる。相対的親和性か又は特異性におけるそのような差は、環境条件に、例えば、ターゲット構成要素と固定相との会合が生ずる溶液のpHか又はイオン組成に、大きく依存している。更に、特異性はまた、サンプル内に存在する構成要素の相対的濃度レベルと性質との関数でもあり、これにより、結合に関する競合が、低濃度において存在する可能性のある高親和性構成要素と比較して、高濃度において存在する可能性のある低親和性結合構成要素の間において生ずる可能性がある。高特異的結合を達成するための1つの特に効果的な方法は、ターゲット構成要素に対する特異的抗体を用いることが可能である免疫クロマトグラフィリガンドを使用することである。従って、上述のように、多くの実施形態において、本発明の固定相の少なくとも1つは、用いたリガンドが抗体か又はその結合分画であるように、免疫親和性固定相である。
【0039】
多くの実施形態において、固定相の少なくとも1つ(例えば、少なくとも確定された特異性の固定相)は、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する特異性が、少なくとも1つの他の固定相(例えば、不確定の特異性を有する固定相)よりも高い。例えば、固定相の実施形態は、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する特異度が高く、且つ、結合同一性決定プロトコルにおいて用いられた少なくとも1つの他の固定相のものよりも、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する特異性がより高い、特異性確定固定相を含むことが可能である。
【0040】
リガンドを基体にカップリングして適合可能な固定相を提供することにおいて、任意の適合可能なカップリング技法を用いて、リガンドを所与の固相支持体か又は基体に付着させること(例えば、臭化シアン活性化、及びそれに類すること)が可能であり、そのようなプロトコルは当該技術分野において既知である。ある実施形態において、所与の固定相が用いられた特定のリガンドを、例えばリガンドの活性部位が分子内の奥深くに配置されている場合には、リンカーか又はスペーサー・アームを介して固相支持体か又はマトリックスに付着することが可能である。従って、ある実施形態において、効果的結合を促進するために、マトリックスとリガンドとの間に適合可能な「リンカー」か又は「スペーサー・アーム」を挿入することが可能である。
【0041】
典型的には、第2の固定相は、本発明を実施するための適合可能な装置に存在する。例えば、各々が異なるクロマトグラフィカラム内とすることができ、又は両方とも同一のクロマトグラフィカラム内とすることができ、或いはある実施形態において、各固定相はマイクロ流体素子のチャンネル(同一又は異なる)に存在することができる。
【0042】
[例示的なサンプル及び構成要素]
上記で再検討したように、1つか又は複数の構成要素がサンプル内に存在する。本明細書内において用いられるように「サンプル」という用語は、1つの材料か又は複数の材料の混合物を指し、典型的には、必ずしもそうである必要はないが、流体状であり、対象とする1つか又は複数の構成要素を含む。サンプルは、植物、動物、及びそれらに類するものに関連した天然に生じるサンプル及び合成して取り出されたサンプルのようなターゲット構成要素を含む任意の適合可能なサンプルとすることができ、該サンプル及び/又は該構成要素は、第1の固定相に接触する前に予備的処理をすることができ、例えば増幅、変性、ろ過、遠心、分画化等をすることができる。例えば、代表的で例示的なサンプルは、全血、血清、血漿、器官体液、精液、胆汁、汗、細胞懸濁液、細胞可溶化物、細胞質、タンパク質溶液、尿、涙、脳脊髄液、及びこれらに類するもののような体液、並びに、水(例えば、廃水、処理済み及び未処理の都市用水源からの水)、緩衝液、有機体液、及びこれらに類するもののような非生物学的、工業的、及び環境的流体を含む(但しこれらに限定されない)。
【0043】
サンプルは、又はサンプルとして考えられるものは、少なくとも1つの構成要素か又は検体(以下、同義的に用いる)を含み、ここで該構成要素(複数可)は、例えばサンプルの自然の状態で、サンプル内に自然に存在するものであってよく、或いは、例えば研究者等によって、サンプルに添加されるものであってもよい。所与のサンプル内に存在する特定の構成要素は、サンプルの種類等のような様々な因子に依存する。従って、構成要素は、任意の適合可能な構成要素(複数可)を含み、該構成要素は、タンパク質(例えば、血液、及びアルブミン、ヌクレアーゼ、ポリメラーゼ、インターフェロン等の血清タンパク質)、ペプチド、ポリペプチド、糖タンパク質、糖類(単糖、多糖、及びオリゴ糖)、核酸(DNA及びRNA−単鎖及び二重鎖)、脂質、リン脂質、糖脂質、フラーレン化合物、カルボン酸、ビタミン、免疫グロビン、カテコールアミン、プリン、ピリミジン、ヌクレオチド、極性薬剤のような様々な薬剤、微生物、細菌、ウイルス等を含む(但しこれらに限定されない)。ある実施形態において、構成要素は、例えば血清サンプル中に存在する存在量の多いタンパク質(例えば、血清アルブミン)を含む。上述の代表的なサンプル及び構成要素は単なる例示であり、本発明の範囲を制限することを意図するものではないことを理解されたい。本発明の固定相と接触させる前に、サンプル内に存在する構成要素(複数可)のいくつか又は全てを、そのような組み合わせに先立って処理することができる。
【0044】
第1の固定相と接触したサンプル内に存在する異なる構成要素の数は、様々な因子に依存して変動可能であり、該因子として、例えばサンプルの性質等が挙げられる。従って、ターゲット構成要素の数、すなわち、第1の固定相に結合されることを意図される異なる構成要素(一方、残りの構成要素は結合しないか、又は通り過ぎる)の数は、わずかに約1種類の構成要素か又はそれよりも多くてもよく、例えば10種類ほどに多くてもよく又はそれよりも多くてもよく、例えば何百もの種類でもよく又はそれより多くてもよく、例えば何千もの種類でもよく又はそれより多くてもよく、例えば数万もの種類でもよく又はそれより多くてもよく、例えば数十万もの種類でもよく又はそれより多くてもよく、何百万もの種類でもよく又はそれより多くてもよい。
【0045】
例えば、単一の「ターゲット」構成要素(例えば血清アルブミン)に対する固定相の結合特異性を評価することが求められる可能性があるか、或いは、1種類より多い構成要素、すなわち異なる構成要素がターゲットにされるように、構成要素の群か又はクラス(例えば、共通の特性を共有するターゲット構成要素の群又はクラス、例えばタンパク質の特定クラスのメンバ)に対する固定相の特異性を評価することが求められる可能性がある。ある実施形態において、血清サンプル内に存在する存在量が多いタンパク質に対する固定相の結合特異性を評価することが求められる可能性がある。
【0046】
通常、移動相か又は流体(ある例において、「結合緩衝液」か又は「充填緩衝液」としても知られる)は、本発明の固定相と接触させられる前に、構成要素含有サンプルと組み合わされて、該構成要素含有サンプルを、特定の固定相の中か又は特定の固定相を越えて移動させる。実施される特定プロトコルに依存して、前記移動相を変更することができ、該移動相を1つか又は複数の異なる移動相流体で作ることも可能である。適合可能な移動相か又は「結合緩衝液」は、固定相のリガンドに対するターゲット構成要素の特異的結合を促進する。多くの実施形態では、前記移動相は、中性であり、アルカリ性のpHを弱め、任意の非特異的イオン相互作用を最小化するのに十分なイオン強度を有する。そのような移動相の1つは、約7.2〜約7.4のpHを有する低塩リン酸緩衝液(例えば、PBS)である。ある実施形態において、例えば、シバクロンブルー(「CB」)固定相を用いて、適合可能な充填緩衝液は、中性塩、例えばNaCl又はKClを約50〜約500mM、pH6〜8の範囲内において添加されたか、又は未添加である状態の50mM KPOとすることができる。所与の移動相を作ることが可能な他の代表的な流体は、水(すなわち、100%水)、及び水性流体、様々なリン酸緩衝液、中性塩溶液、メタノール、ヘプタフルオロブチル酸(HFBA)、アセトニトリル、蟻酸、N,N’−ジエチルアミン(DEA)、テトラヒドロフラン、トリフルオロ酢酸(TFA)、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ヘキサン、n−ヘプタン、プロパノール、エタノール、イソプロパノール、及びこれらに類するものを含む(但しこれらに限定されない)。様々な他の成分又は添加物を、流体に含有させることが可能であり、そのような成分は、界面活性剤、適合可能な緩衝系、及びこれらに類するものを含む(但しこれらに限定されない)。
【0047】
少なくとも1つの構成要素を持つサンプルが、適合可能な移動相か又は結合緩衝液と組み合わされると、構成要素含有サンプル/移動相混合物が、適合可能な条件(例えば、適合可能なクロマトグラフィ条件)下において本発明の固定相のうちの1つと接触させられて、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素を含むサンプル分画が結合され、すなわちサンプル内に存在する他の構成要素から少なくとも1つの構成要素(複数可)を分離させる。このようにして、1つか又は複数の構成要素が結合されるか、別様にはこの固定相によってある期間保持される。一方、例えば更なる分析のために、他の構成要素は、固定相を通過させられるか、又は該固定相の上を通され、溶出される。これらの他の構成要素が固定相に結合せず、かわりに固定相(任意の非特異的結合構成要素と同様に)を「貫流する」ことから、それらを「貫流」構成要素として説明することが可能である。「接触」という用語は、本明細書内では広義の意味で使用されており、任意の種類の組み合わせ動作を意味し、この組み合わせ動作は、構成要素に、固定相と十分に密接させること、より詳しくは固定相のリガンドと十分に密接させることをもたらす。これにより、結合相互作用がリガンドとサンプル内に存在する任意の結合相手との間で生じることとなる。結合分画結合に存在する少なくとも1つの構成要素に結合するのに適合可能な条件下において、構成要素含有サンプル/移動相混合物は、固定相上を流されるか、又は該固定相を貫流させられ、固定相の結合相手に結合する。
【0048】
全てのサンプルが固定相に接触された後に、カラムは典型的には1回か又は複数回洗浄されて、固定相から、任意の結合構成要素を除くすべての非特異的結合構成要素を除去する。そのような洗浄は、基準線が確立するまで、サンプルを含まない1つか又は複数の適合可能な量の移動相か又は結合緩衝液か又は適合可能な緩衝液によって達成されることが可能である。洗浄容量は、約1カラム容量〜約20カラム容量か又はそれよりも多い範囲とすることができ、例えば約2カラム容量〜約15カラム容量である。
【0049】
1つか又は複数の結合構成要素(すなわち、結合分画)は、意図的に結合されるか又は意図せずに結合されるかにかかわらず、固定相から溶出されることによって、該固定相から分離される。ある実施形態において、貫流構成要素はまた、適合可能なプロトコルを用いて収集され及び分析され、例えば固定相に結合することを意図された任意の構成要素が結合に失敗して、その代わりに固定相の上を通るか又は該固定相を通過してたかどうかを決定する。適合可能な溶出緩衝液か又は移動相を用いてpHか、イオン強度か、比誘電率か、又は温度を変えることによる結合の中断のように、任意の適合可能な技法を用いて結合分画を溶出することが可能である。ある実施形態において、このことは、結合構成要素と固定相との間の相互作用を減少させるために設計された適合可能な移動相か又は「溶出緩衝液」を用いることによって、例えば移動相の極性を利用することによって(既に使用したものよりも低い極性か又は高い極性の移動相を用いて)、達成されることが可能である。1つの適合可能な溶出緩衝液(例えば、シバクロンブルー固定相から構成要素を溶出するためのもの)は、50mM KPO/1.5M KCl、pH7のようなリン酸緩衝液である。ある実施形態において、既に用いられた移動相の流体の比率(例えば、勾配溶出)を変えることによってか、或いは異なる移動相を全て一緒に用いることによって、溶出を達成することが可能である。例えば、この溶出は、水に対して有機変性剤(例えば、アセトニトリル又はメタノール)の濃度を増加させる移動相勾配を用いることによって、例えば疎水性が増加するようにして、構成要素を溶出することで、達成されることが可能である。
【0050】
結合分画が固定相から分離されると、少なくとも1つの他の固定相と接触させられる。これにより、以前に接触した固定相が少なくとも不確定の特異性、例えば未知の特異性を持つ固定相であった場合には、この結合分画が、確定の、例えば既知の特異性を持つ固定相と接触させられる。逆に、以前に接触した固定相が、確定された特性を持つ固定相であった場合には、結合分画が、少なくとも不確定の特異性を持つ固定相と接触させられる。ある実施形態において、これらの第1の固定相及び第2の固定相が、(例えば、同一の装置内においてか又は流体チャンネルか又は導管によって結合される)流体連結状態とすることができ、それにより、中断されることなく2つの固定相間で、例えば連続的に、物質、例えば移動相、溶出緩衝液、結合分画、及びこれらに類似なものの連続流動が可能になる。そのことは、例えば互いに接触した状態にある(例えば、互いに連続して接触している)両方の固定相によって充填された単一のクロマトグラフィカラムを用いることによって、或いは2つか又それより多くのマイクロ流体チャンネルが流動的に連結されるか又は2つの固定相が同一のマイクロ流体チャンネル内に存在する適合可能なマイクロ流体素子を用いることによって、達成されることが可能である。そのような連続的貫流実施形態では、第1のカラムの生成物を第2のカラムの影響下に置く前に、この第1のカラム生成物を1つか又は複数の点において調整することができるか又は変更することができる。
【0051】
上述したものと類似するように、典型的には、結合分画を、移動相か、流体か、又は結合緩衝液と組み合わせて、結合分画内に存在する少なくとも1つの構成要素との結合に適合可能な条件下において、固定相の上を流すか又は固定相を貫流させる。このようにして、結合分画内に存在する少なくとも1つの構成要素が、固定相に結合し、任意の未結合構成要素が固定相を貫流するか或いは固定相上を通過して回収される。
【0052】
従って、この第2の結合ステップに続いて、任意の未結合構成要素か又は任意の「貫流」構成要素が回収され、そのことは一般に、結合分画の全てが適用された後に1回か又は複数回、固定相を洗浄して、いっさいの非特異的結合構成要素を除去することを含む。そのような洗浄は、基線が確立されるまで、サンプルを含まない1つか又は複数の適合可能な量の移動相か又は適合可能な緩衝液で、達成されることが可能である。洗浄容量を、約1〜約20カラム容量か又はそれより多くの範囲とすることができ、例えば約2〜約15カラム容量である。
【0053】
特定の固定相か又はサンプルそのものに関連した情報を与えることが可能である構成要素の更なる分析のために、設定波長でのUV−VIS吸収変化の検出、屈折率、適合可能な波長による励起後の蛍光、電気化学応答、1次元又は2次元ゲル電気泳動(例えば、SDS−PAGE)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析、液体クロマトグラフィ/質量分析、生体分子相互作用(例えば、表面プラスモン共鳴他)、免疫化学分析(例えば、免疫アッセイ、ウエスタン・ブロッティング)、様々な付加的な分光学的アプローチ(例えば、核磁気共鳴(「NMR」)、円偏光二色性(「CD」等)、及びこれらに類似のものによるような任意の適合可能な分析プロトコルを用いて、貫流構成要素は、従って、分析されることができ及び同定されることができる。
【0054】
この第2の結合ステップの洗浄プロトコルに続いて、この第2の固定相から結合構成要素は分離されることが可能であり、設定波長でのUV−VIS吸収変化の検出、屈折率、適合可能な波長による励起後の蛍光、電気化学応答、1次元又は2次元ゲル電気泳動(例えば、SDS−PAGE)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析、液体クロマトグラフィ/質量分析、生体分子相互作用(例えば、表面プラスモン共鳴他)、免疫化学分析(例えば、免疫アッセイ、ウエスタン・ブロッティング)、様々な付加的な分光学的アプローチ(例えば、核磁気共鳴(「NMR」)、円偏光二色性(「CD」等)、及びこれらに類似のものによるような任意の適合可能な検出プロトコルを用いて検出され及び同定されることが可能である。任意の適合可能な溶出液を用いて、上述のような第2の固定相から、結合構成要素を除去することができる。
【0055】
従って、ある実施形態において、貫流及び/又は結合構成要素の分析の結果を、固定相の1つの結合特異性に関連付けることができる。例えば、第2の固定相に結合しなかった他の構成要素(すなわち、貫流構成要素)の存在は、特異性が未知の固定相の特異性の度合いを示すことができ、例えばこの固定相が、所与の又は「ターゲット」構成要素に対する特異性が高くなく、その結果としてこの固定相が、貫流分画内における存在によって証拠付けられるようにターゲットを除く構成要素に結合したことを示すことができる。
【0056】
本方法は、情報を提供することが可能であり、この情報は、将来のプロトコルにおいて特定の移動相と組み合わせて特定の固定相を使用するかどうかについて(例えば、固定相/移動相の組み合わせが所与の構成要素に対して十分に特異的であるかどうか)、或いは固定相/移動相の組み合わせが将来のプロトコルにおいて使用されることに先立って更なる最適化を必要とするかどうか、或いは特定の固定相/移動相の組み合わせが将来のプロトコルでまったく使用不可能であるかどうかに関する決定において、使用されることが可能である。
【0057】
ある実施形態において、例えば更なる分析のため残りの構成要素を濃縮するために、確定構成要素(例えば、干渉構成要素)のみをサンプル(ターゲット)から取り除き、他のものは除かないことが望ましく、そのような構成要素の除去が、ゲル分離技法か又はこれに類する技法を用いた適合可能な分離のような、これら残留構成要素の適合可能な分析を達成するために必要である可能性がある。しかしながら、固定相が、カラムの貫流が意図され、且つ、ゲル電気泳動のように将来のプロトコルでは結合及び使用されない結合構成要素である場合には、貫流構成要素の任意の将来の分析は、この意図しない結合によって悪影響を受ける可能性がある。従って、本方法は、サンプルからの確定構成要素の選択的除去に関して、特定の固定相/移動相の組み合わせの結合特性を評価するために、用いられることが可能である。
【0058】
ある実施形態は、上述の方法に関連したデータ、例えば、所与の分離システムの結合特異性に関連したデータ、上述の方法によって同定された構成要素に関連したデータ等を得ること、及びそのデータを更に処理するか又は操作すること、及び/又は、例えば通信によって転送することか、又はデータを伝達することを含むことができる。そのような結果は、生の結果か或いは処理された結果とすることができ、該結果は、結果又はデータ点を、所定の基準か又は標準と比較して、(特定の構成要素がサンプルに存在するかどうか、特定の構成要素が固定相の一方か又は両方によって結合されるかどうか等)この比較に基づいた結論を形成することによって得られる。以下に詳細に述べるように、結果(処理済み又は未処理)は、必要に応じて遠隔地に(通信等によって)転送されることが可能であり、(更なる処理のような)更なる使用のためにそこで受信されることが可能である。
【0059】
ある実施形態において、本方法に関連するデータを、遠隔地に送信することが可能である。「遠隔地」とは、分離プロトコル及び/又は構成要素検出が生ずる場所を除いた場所を意味する。例えば、遠隔地は、同じ都市内の別の場所(例えば、事務所、研究所等)、異なる都市における別の場所、異なる州における別の場所、異なる国における別の場所等とすることができる。そのようなことから、一方のアイテムが、他方から「遠隔」であるように示される時には、それが意味することは、2つのアイテムが少なくとも異なる建物内にあり、少なくとも1.60931キロメートル(1マイル)か、16.0931キロメートル(10マイル)か、又は少なくとも160.931キロメートル(100マイル)離れている可能性があるということである。「通信」情報は、その情報を電気信号として表すデータを、適合可能な通信チャンネル(例えば、専用ネットワークか又は公衆ネットワーク)上にわたって伝達することを意味する。アイテムを「転送」することは、そのアイテムを物理的に輸送するか又は別様に(可能である場所に)輸送するかどうかにかかわらず、そのアイテムを1つの場所から次の場所で得る任意の手段のことを指し、少なくともデータの場合には、データを担持する媒体の物理的な輸送か或いはデータ通信をおこなうことを含む。更なる評価及び/又は使用のために、データを遠隔地に伝達することができる。データを伝達するために、任意の簡便な電子又は電気通信手段(例えば、ファクシミリ、モデム、インターネット等)を用いることが可能である。
【0060】
[効用]
本方法を、様々な用途に用いることが可能であり、該用途は、サンプル内の少なくとも1つの構成要素の結合同一性を決定することを含む(但しこれに限定されない)。実施形態は、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する固定相の1つの選択性を評価すること、サンプル内に存在する所与の構成要素(例えば、タンパク質)に対する薬剤の選択性を評価すること、タンパク質のクラスからタンパク質のサブクラスを分離すること、温度、pH、溶出緩衝液、結合緩衝液等の1つか又は複数のクロマトグラフィパラメータを評価することを含む。これらの代表的な用途の各々は、次に後述される。
【0061】
[固定相結合選択性評価]
上述のように、本方法を、固定相(すなわち、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素についての「試験固定相」)の選択性の評価に用いることができる。本方法に従って、このことは、最初にサンプルを、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する未知の特異性を持つ第1のすなわち試験固定相に接触させ、次いで、この第1の固定相から分離した結合分画を、少なくとも1つの構成要素に対する既知の特異性を持つ第2の固定相に接触させることによって、達成されることが可能である。そのことは、試験固定相に結合する構成要素(例えば、種類、量、等)を決定するために用いられることが可能であり、例えば、特異的又は「ターゲット」(すなわち、意図された)構成要素を除く構成要素に結合するかどうかを決定し、もしそうであるならば、これらの他の「非ターゲット」結合構成要素の同一性を決定するために用いられることが可能である。そのようなことを、ターゲットの結合の度合いか、又は任意のターゲットが試験固定相に結合せずに、代わり貫流するかどうかの決定にも用いることが可能である。
【0062】
ターゲット構成要素(複数可)は、上述のような任意の適合可能なターゲット構成要素とすることができ、例えば、血清サンプル中の存在量が多いタンパク質(例えば、血清アルブミンか又はHSA)か、薬剤によって結合されることが意図された特異的タンパク質か、又はサンプル内に存在する混入物質か又は干渉物質のようなの任意の他の構成要素である。例えば、ある実施形態において、本発明を用いて、特定のタンパク質に対する薬剤(例えば、開発中の薬剤)の結合特異性を評価することが可能である。例えば、薬剤は、特定のタンパク質(すなわち、意図された、すなわちターゲットタンパク質)のみに対して結合することか又は高い選択性を持つことが意図されることが可能である。従って、薬剤が同様に他のタンパク質に結合するのかどうかを判断するのに加えて、特定の薬剤に対するターゲットタンパク質の結合同一性(例えば、特異性)を効率よく且つ効果的に決定するための手段として、本方法を用いることが可能である。
【0063】
従って、使用した特定の第1の固定相は、ターゲット構成要素、サンプル等のようなプロトコルの詳細に依存して変動することとなる。しかしながら、上述のように、この第1の固定相の結合特異性は未知である。例えば、前記ターゲットが血清サンプル内に存在するHSAのような存在量の多いタンパク質であり、そのプロトコルがHSAに結合するための(及び/又はサンプル内の存在量の少ないタンパク質の濃度を高めるための)第1の固定相の特異性の評価を含む場合には、第1の固定相は、シバクロンブルー・リガンドか又はそれに類するもののような色素分子リガンドを含むことができる。別の実施形態では、特定のターゲットタンパク質(すなわち、ターゲット)に対する薬剤の結合特異性を評価することのようなことは、評価中の薬剤を第1の固定相のリガンドとして用いることが可能である。これにより、そのような実施形態において、対象とする薬剤が、適合可能な基体上に固定化(その結合活性を阻害することなく)されて、第1の固定化相が提供されることとなる。
【0064】
少なくとも対象とするターゲットを含むサンプルが、クロマトグラフィ条件下においてサンプル内の少なくとも1つの構成要素か又はターゲットに対する特異性が少なくとも不確定性(例えば、未知である)を有する第1の固定相と接触させられて、少なくとも1つの構成要素を含むサンプルの一分画をその第1の固定相に結合させる。ここで、少なくとも1つのターゲットに対する第1の固定相の特異性は、少なくとも未確定である。上述のように、接触は、注射、ピペット等のような任意の簡便な方法において達成されることが可能である。上述のように、任意の適合可能なクロマトグラフィ条件を用いることが可能である。
【0065】
少なくとも1つの構成要素(ターゲット構成要素であってもなくてもよい)を含むサンプルの結合分画を提供するために、サンプルが第1の固定相と接触させられた後、この第1の固定相は、通常、上述のように洗浄されて、いっさいの非特異的結合構成要素を取り除く。ある実施形態において、第1の固定相に結合せずに、代わり妨げられずに第1の固定相を通過させられた構成要素、すなわち貫流構成要素を、回収して分析して同定することができる。例えば、そのような貫流構成要素の分析及び同定は、第1の固定相の結合特異性に関する情報を提供することが可能である。例えば、貫流状態にあるターゲット構成要素の同定は、第1の固定相の特異性の度合いの指標を提供する。これにより、第1の固定相が、ターゲット構成要素が貫流に存在することから該ターゲット構成要素の全てに(又はおそらくいくらか)に結合しなかったこととなる。
【0066】
貫流が分析されたかどうかにかかわらず、本方法は更に、第1の固定相から結合分画を分離することを含み、ここで、そのようなことは、上述のような任意の適合可能な手法において、達成されることが可能である。次に、この結合分画は、少なくともターゲット構成要素に対する結合特異性が確定的(例えば既知)である第2の固定相に接触させられる。この第2の固定相は、典型的には、ターゲット(複数可)に対して高い特異性を有し、例えば多くの実施形態において、第2の固定相が、ターゲット構成要素に対して高い特異性を有する免疫クロマトグラフィ固定相である。第2の固定相の細部は、様々な因子に依存して変動することとなる。例えば、ターゲットがHSAである場合には、HSAと選択的に結合するために第2の固定相が選択される。例えば、抗HSA抗体(又は結合分画)を含むことができる。第1の固定相が薬剤を含むこれらの実施形態において、第2の固定相が選択されて、ターゲットタンパク質に対する選択性を有する抗体か又はその結合分画のような、薬剤の意図されたターゲットタンパク質と選択的に結合する。
【0067】
従って、結合分画は、クロマトグラフィ条件下において第2の固定相と接触させられ、ここで、接触を、注射、ピペット等のような任意の簡便な手法において達成することができる。上述のように、任意の適合可能なクロマトグラフィ条件を用いることが可能である。
【0068】
貫流構成要素は、回収され且つ分析されて、第1の固定相か又は未知の特異性を持った固定相の結合特異性についての情報が提供される。任意の適合可能な分析プロトコルは、(例えば、設定波長でのUV−VIS吸収変化の検出、屈折率、適合可能な波長による励起後の蛍光、電気化学応答、1次元又は2次元ゲル電気泳動(例えば、SDS−PAGE)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析、液体クロマトグラフィ/質量分析、生体分子相互作用(例えば、表面プラスモン共鳴他)、免疫化学分析(例えば、免疫アッセイ、ウエスタン・ブロッティング)、様々な付加的な分光学的アプローチ(例えば、核磁気共鳴(「NMR」)、円偏光二色性(「CD」等)によって)上述のように用いられることが可能である。例えば、貫流に存在する任意の構成要素は、この構成要素が第1の固定相によって結合されたこと、すなわちターゲット構成要素(複数可)を除く構成要素に第1の固定相が結合されたことを示す。
【0069】
例えば、血清サンプル内に存在するHSAに結合する第1の固定相の結合特性の評価において、第2の固定相からの貫流において検出された構成要素は、HSAを除く構成要素に結合した第1の固定相を示す。ターゲットタンパク質に対する薬剤の結合特異性の評価では、第2の固定相からの貫流において検出されたタンパク質が、ターゲットタンパク質を除くタンパク質に結合した第1の固定相を示す。
【0070】
[薬剤結合選択性評価]
上述のように、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する薬剤の選択性の評価に、本方法を用いることが可能である。最初に、サンプルを結合特異性が少なくとも不確定である固定相に接触させ、次いで、そこから得られた結合分画を、確定性を有するか又は特異性が既知である別の固定相に接触させることが含まれる上述の方法は、上記で再検討されたように、薬剤の選択性の評価に用いられることが可能であるが、代替の一実施形態が次に説明される。一般には、この代替の実施形態は、最初にサンプルを、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する結合特異性が確定的か又は既知である固定相に接触させ、次いで、そこから得られた結合分画を、少なくとも1つの構成要素に対して不確定性を有するか又は特異性が未知である別の固定相に接触させることを含む。
【0071】
従って、少なくとも1つのターゲット構成要素を含むサンプルが、クロマトグラフィ条件下において、サンプル内に存在する少なくともターゲット構成要素に対する結合特異性が確定的であるか又は既知の第1の固定相と接触させられて、少なくともターゲットを含むサンプルの結合分画がこの固定相に結合させられる。この特定の実施形態では、この固定相は、ターゲット(複数可)に対して高い特異性を有することが可能であり(例えば、ターゲット構成要素(複数可)に対する特異性が高い免疫親和性固定相)、従ってサンプル内に存在する他の構成要素からターゲットを分離する機能を果たすことができる。この固定相の細部は、特定のターゲット構成要素等のような様々な因子に依存して変動することとなる。この実施形態における第1の接触固定相が選択されて、薬剤の意図されたターゲットタンパク質と選択的に結合されることが可能である。これにより、多くの例において、この固定相のリガンドが、ターゲットタンパク質に対する高い特異性を有する抗体か又はその結合分画となることとなる。
【0072】
接触を、注射、ピペット等のような上述のような任意の簡便な手法において達成することが可能である。上述のように、任意の適合可能なクロマトグラフィ条件を用いることが可能である。
【0073】
少なくともターゲット構成要素を含むサンプルの結合分画を提供するために、この固定相にサンプルが、接触させられた後、この固定相は、通常、上述のように洗浄されて、いっさいの非特異的結合構成要素が取り除かれる。
【0074】
洗浄ステップに続いて、本方法は、固定相から結合分画を分離することを含み、このことは、上述のような任意の適合可能な手法において、達成されることが可能である。次いで、この結合分画は、別の固定相か又は第2の固定相か又は試験固定相(すなわち、ターゲットに対して不確定性か又は未知の特異性を有する)と接触させられる。第2の固定相の細部は、様々な因子に依存して変動することとなるが、この固定相は、評価中の薬剤を含む。
【0075】
従って、注射、ピペット等のような任意の簡便な手法において接触を成し遂げることができるクロマトグラフィ条件下において、結合分画は、固定相の薬剤と接触させられる。上述のように、任意の適合可能なクロマトグラフィ条件を用いることが可能である。
【0076】
第2の固定相構成要素からの貫流は、回収され及び分析されて、薬剤の結合特異性についての情報が提供される。任意の適合可能な分析プロトコルを、(設定波長でのUV−VIS吸収変化の検出、屈折率、適合可能な波長による励起後の蛍光、電気化学応答、1次元又は2次元ゲル電気泳動(例えば、SDS−PAGE)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析、液体クロマトグラフィ/質量分析、生体分子相互作用(例えば、表面プラスモン共鳴他)、免疫化学分析(例えば、免疫アッセイ、ウエスタン・ブロッティング)、様々な付加的な分光学的アプローチ(例えば、核磁気共鳴(「NMR」)、円偏光二色性(「CD」)等によって)上述のように用いることが可能である。例えば、第2の固定相の貫流において存在するターゲットタンパク質は、薬剤が、もしあるとすれば、ターゲットタンパク質の全てに結合するわけではなかったことを示す。上記本方法を、例えば、薬剤のスクリーニング及び薬物開発目的のために用いることが可能である。
【0077】
実施形態はまた、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する薬剤の特異性を決定する方法を含み、この方法は、クロマトグラフィ条件下において、サンプルを少なくとも第1の固定相及び第2の固定相に連続的に接触させることを含む。これにより、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する第1の固定相の特異性が、少なくとも不確定であり、少なくとも1つの構成要素に対する第2の固定相の特異性が、確定的であることとなる。そのような実施形態は、最初にサンプルを、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する特異性が確定された固定相に接触させること、次いで、該サンプルを、少なくとも1つの構成要素に対して少なくとも特異性が不確定である第2の固定相に接触させることを含むことができ、ある実施形態において、少なくとも特異性が不確定であるこの固定相は、対象とする薬剤(すなわち、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する、特異性が少なくとも未知である薬剤)を含む。ある実施形態において、そのような実施形態は、サンプルを特異性が確定された固定相と接触させて、少なくとも1つの構成要素を含むサンプルの一分画をその固定相に結合させること、特異性が確定された固定相から未結合分画を分離すること(すなわち、特異性が確定された固定相に結合していない貫流構成要素又は任意の構成要素)、次いで、未結合分画を少なくとも特異性が不確定である固定相に接触させることを含む。次に、第2の接触固定相に対して結合しなかった任意の構成要素(すなわち、少なくとも特異性が不確定の固定相)は、上述のような任意の適合可能な分析プロトコルを用いて分析されて、少なくとも1つのサンプル構成要素に対する薬剤の特異性を決定することが可能である。
【0078】
[タンパク質のクラスからタンパク質のサブクラスを分離]
本方法を用いて、サンプル内に存在する構成要素のクラスか又は母集団(例えば、タンパク質のクラス)から構成要素のサブクラス(例えば、タンパク質のサブクラス)を分離することが可能である。より詳しくは、本方法は、リガンド結合特性を共有するがターゲット構成要素の免疫化学的特異結合部位は共有しない任意の一連の機能的に関連付けられたタンパク質のような類似か又は同様の構成要素のクラスの分離における使用法を見いだす。
【0079】
例えば、1つか又は複数の機能的に関連付けられた(リガンド結合特性を共有するサンプル中の全てのタンパク質のような)タンパク質に結合する第1の固定相が用いられることが可能であり、例えば特定の炭水化物部分を有する全てのタンパク質は、レクチン・リガンドに結合する。従って、第1の結合分画からサブクラスか又はターゲットを除去するか又は分離するために、対象とするタンパク質のクラスを含むサンプルが、タンパク質のクラスに少なくとも結合するリガンドを有するこの第1の固定相と接触させられる。上述のように、レクチン・リガンドを有する第1の固定相を用いて、全てのタンパク質を特定の炭水化物部分に結合させることが可能である。
【0080】
接触を、上述のように、注射、ピペット等のような任意の簡便な手法において達成することが可能である。上述のように、任意の適合可能なクロマトグラフィ条件を用いることが可能である。
【0081】
少なくとも対象とするターゲットタンパク質クラスを含むサンプルの結合分画を提供するために、サンプルが第1の固定相に接触させられた後に、該第1の固定相は通常、上述のように洗浄させられて、いっさいの非特異的結合構成要素が除去される。
【0082】
洗浄ステップに続いて、結合分画が第1の固定相から分離される。ここで、そのことは上述のような任意の適合可能な手法において達成されることが可能である。次に、この結合分画が、第2の固定相に接触させられる。クラスの1つか又は複数のサブクラスを選択的に結合し、該クラスの他のメンバのいずれにも結合しないように、第2の固定相が選択される。このようにして、1つか又は複数のサブクラスを、クラスから分離することが可能である。言い換えれば、タンパク質のクラスを含む結合分画は、第1の固定相よりもサブクラスか又はターゲットに対してより特異的であり、且つ、該クラスの他のメンバに対しては特異的ではない第2の固定相に接触させられる。例えば、第2の固定相は、サブクラスか又はターゲットに対して特異的である抗体か又は抗体分画リガンドを含むが、そのクラスの他のメンバは含まないことが可能である。
【0083】
多くの実施形態において、第2の固定相は、免疫親和性固定相のように、対象とするターゲット(複数可)に対する特異性が確定的か又は既知である(及び前記第1の相は不確定な特異性とすることもできる)。そのような免疫親和性固定相は、すなわち、抗体か又はその結合分画を含み、分離されることを意図された1つか又は複数のサブクラスに対する高い特異性を有する。
【0084】
従って、接触を、注射、ピペット等のような任意の簡便な手法において達成することが可能であるクロマトグラフィ条件下において、タンパク質のクラスを含む結合分画が、第2の固定相に接触させられる。上述のように、任意の適合可能なクロマトグラフィ条件を用いることが可能である。
【0085】
例えば、クラス及び/又はサブクラス等に対する第1の固定相の結合特異性に関する情報を提供するために、結合サブクラス及び/又は第2の固定相からの貫流が、次いで回収され及び分析される。上述の本方法を用いて、将来のプロトコルにおいて使用されるためのサブクラス及び/又はクラスの他のメンバを分離することができることは明白であろう。
【0086】
[クロマトグラフィパラメータの評価]
本方法は、様々なクロマトグラフィパラメータを評価するために用いられることが可能であり、所与の分離システムの結合特異性における該パラメータの効果とを、例えばそれらのパラメータを最適化するために用いられることが可能である。そのようなパラメータは、結合緩衝液、溶出緩衝液、温度、流速、移動相組成物等を含む(但しこれらに限定されない)。簡便に、本方法による複数のプロトコルを並列にか又は同時に用いて、所与のパラメータを評価するために必要とされる時間を最小化することが可能である。例えば、所与のパラメータは、固定相の間で変動させることができる一方で、全ての他のパラメータは一定に保持されることが可能である。
【0087】
例えば、本方法を用いて、ターゲットに対して最良の結合特異性を提供する一方で、非特異的結合を最小化する結合緩衝液のようなパラメータを評価することが可能である。従って、各々が同一である(すなわち、唯一の変化可能なものは、使用される結合緩衝液である)複数の第1か又は試験固定相を用いることができる。次に、上述の手法に類似した手法において、少なくともターゲット構成要素を含むサンプルの結合分画を提供するために、第1の固定相が、少なくともターゲット構成要素を含むサンプルに接触させられることが可能である。貫流が回収され及び分析されて、各々の緩衝液に結合しなかったターゲットの量を決定することができ、すなわちどの緩衝液がターゲット結合の量を最も多く促進させられたかを評価することができる。
【0088】
次いで、上述の手法と類似な手法において、結合分画が、第1の固定相から分離させられることが可能であり、ターゲットに対する高い特異性を有する(例えば、第1の固定相よりも特異性が高い)第2の固定相に接触させられることが可能である。このようにして、結合分画に存在するターゲットは、第2の固定相と結合する一方で、非ターゲットは、第2の固定相を貫流するか又は第2の固定相の上を流れる。第2の固定相に結合しなかったこれらの構成要素が、全ての他の変量がプロトコル全体を通じて同一のままであるため、上述のように回収され及び分析されて、用いられた緩衝液の各々の結合特異性に関する情報が提供される。例えば、第1の固定相/緩衝液の組み合わせが最低量の非ターゲットに結合されたことを示すことから、最小量の非ターゲット構成要素を有する第2のカラムからの貫流分画に対応する緩衝液は、他の変量に関して最適緩衝液を示すものとすることができる。上述のように、第1の固定相からの貫流の分析は、どの固定相/緩衝液組み合わせが最大量か又は最小量のターゲットに結合されるかを示すために用いられることが可能である。
【0089】
[システム]
本方法の実施において使用されることが可能なシステムもまた提供される。この本発明のシステムは、上述のような少なくとも1つの構成要素を有するサンプルと、該サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する未知の結合特異性を有する少なくとも1つの固定相と、上述のような少なくとも1つの構成要素に対して既知の特異性を有する第2の固定相とを備える。ある実施形態において、少なくとも1つの固定相は、クロロトリアジン親和性リガンド、例えばCB親和性樹脂、及び/又は免疫親和性相を含む。ある実施形態において、少なくとも1つの固定相は、上記で再検討したように、評価中の薬剤を含む。本発明の固定相は、本方法を実行するための適合可能な装置内に存在することが可能であり、代表的な装置はより詳細に以下に説明される。
【0090】
本システムはまた、結合緩衝液、溶出緩衝液、洗浄緩衝液、及びこれらに類するもののような、本方法を実施する際に使用されるための1つか又は複数の移動相か又は流体を含むことが可能である。本発明において用いられることが可能な代表的な流体は、上記に述べられており、例えばリン酸緩衝液、及びこれに類するものである。所与のシステムは、1つか、2つか、3つか、又はそれよりも多くの流体を含むことができ、該流体は単独でか、又は他の流体の1つか又は複数と組み合わせて使用されることが可能であり、例えば組み合わせて使用されて、所定の移動相が提供される。例えば、実施形態は、少なくとも第1の流体と第2の流体とを含むことができる。これにより、用いられた移動相が、約100%の第1の流体と約0%の第2の流体のような各流体の変化比率を含むことができ、第1の流体の割合が小さくなると第2の流体の割合は大きくなって、これにより、該移動相が約0%の第1の流体と約100%の第2の流体とを有する移動層へと遷移することが可能である。第3、第4、第5等の流体も、2つの流体を用いた上記の説明と類似の手法で、プロトコルに組み込むことが可能である。
【0091】
実施されている特定のプロトコルに依存して、個々の流体のpHは、任意の2つか又はそれより多くの流体(すなわち移動相)からなる混合物のpHと同様に、変動することとなり、酸性か、中性か、又は塩基性とすることができ、これにより、pHは、1〜14の範囲とすることができる。実施されている特定の分析プロトコルに依存して、本システムと共に様々な異なる流体が用られることが可能であることから、流体は極性、無極性、有機、無機等とすることができる。特定の比率で2つか又はそれより多くの種類の流体を混合した後に、様々な他の成分か又は添加剤が、1つか又は複数の流体に含まれることができるか、又は移動相に添加されることができ、そのような成分は、界面活性剤、適合可能な緩衝系、中和塩、カオトロピック添加剤、及びこれらに類するものを含む(但しこれらに限定されない)。
【0092】
本システムの他の成分は、フラクション・コレクタ、構成要素検出器、電気泳動ゲル装置(例えば、1次元又は2次元ゲル電気泳動システム)のような構成要素分析コンポーネント、質量分析装置、液体クロマトグラフィ装置、免疫化学的分析装置、ウエスタンブロット法装置、NMR装置、円偏光二色性装置、及びこれらに類するものを含むことが可能である(但しこれらに限定されない)。
【0093】
[装置]
本方法を実施する際に使用されることが可能な装置もまた提供される。一般に、本発明の装置は、サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対して未知の結合特異性を有する少なくとも第1の固定相と、上述のように少なくとも1つの構成要素に対して既知の特異性を有する第2の固定相とを含む。ある実施形態において、少なくとも1つの固定相が、クロロトリアジン親和性リガンド、例えばCB親和性樹脂、及び/又は免疫親和性相を含む。ある実施形態において、少なくとも1つの固定相が、上記で再検討したように、評価中の薬剤を含む。
【0094】
任意の適合可能な装置を用いることが可能であり、クロマトグラフィプロトコルにおいて使用されるために適合可能な装置が対象となる。例えば、本発明の固定相は、1つか又は複数の適合可能なクロマトグラフィカラム内に存在させられるか又は充填されるか、或いは適合可能なマイクロ流体素子と会合させられることが可能である。固定相が1つか又は複数のクロマトグラフィカラム内に存在する場合には、図1A及び図1Bにおいて示されるように、ある実施形態において、2本の分離カラムを用いることが可能である(図1A)。ここで、第1の固定相3を有する第1のカラム2が用いられ、第2の固定相5を有する第2のカラム4が用いられることが可能である。図1Bに示されるある実施形態において、単一のカラム10が用いられることが可能であり、少なくとも第1の固定相12と第2の固定相14とがその中に存在する。本発明のカラムは、カラムへの物質の導入か又は移入のために、図1Aのカラム2及び4のそれぞれについて流体導入口6、8を備え、図1Aのカラム10について流体導入口26を備える。カラムから物質を排出するために、図1Aのカラム2及び4のそれぞれについての流体導出口7,9、及び図1Bのカラム10についての流体導出口27もまた提供される。ある実施形態において、図1Aに示されるような2本の別個のカラムを用いることは、カラムは、常にではないが、流動的に結合されることが可能である。これにより、連続的にか又は途切れなく流体がカラム間を流れるために、流体連結管11が2本のカラムの間に存在することができる。本結合同一性プロトコルにおいて用いられる2つか又はそれより多くのカラムが、流動的に結合されない可能性もあることは明らかであろう。
【0095】
代替の実施形態は、本固定相を有するマイクロ流体素子を含む。そのようなマイクロ流体素子の例示的な一実施形態は、図2に示される。図2において、マイクロ流体素子20は、少なくとも1つの流動チャンネル21を含み、少なくとも第1の固定相22と、第2の固定相24とが、該流動チャンネル21の中に存在する。この特定の実施形態において、それら固定相は、同一のチャンネル内において示されるが、他の実施形態においては、2つの固定相は、2つの異なる(但し流動的に連結された)マイクロ流体素子チャンネルに存在することができる。上述のように、マイクロ流体素子は、当該技術分野において既知であり、米国特許第6,495,016号、及び米国特許出願第2003/0000835号(これらの開示は、参照により本明細書内に組み込まれる)に記載されているように、ナノメートルのオーダーで少なくとも1次元(例えば、長さ、深さ、幅等)を有する少なくとも1つの流体チャンネルを有することによって特徴づけられる。マイクロ流体素子はまた、ここで示されるようにマイクロ流体素子上に直接配置された適合可能な検出器29を含むことができるか又は別個の構成要素とすることができる。
【0096】
[キット]
本発明によってキットもまた提供され、該キットは、本発明に従って、少なくとも第1の固定相及び第2の固定相と、本方法において固定相を用いるための指示書とを含む。本方法で固定相を用いるための指示書は、適合可能な記録媒体に印刷されたものであってもよい。例えば、指示書を紙か又はプラスチック等のような基材上に印刷することが可能である。従って、指示書を、キットの容器のラベル内か又はその構成要素(すなわちパッケージングか又はサブパッケージングに関連付けられて)内において、挿入パッケージとして、キット内に存在させることができる。他の実施形態において、指示書は、適合可能なコンピュータ読み取り可能記憶媒体(例えば、CD−ROM、ディスケット等)上に存在する電気的か、磁気的か、又は光学的な記憶データファイルとして存在する。
【0097】
更に別の実施形態において、本方法において本固定相を用いるための指示書は、それ自体がキット内に存在させなくすることができるが、遠隔の供給源から指示書を得るための手段が、例えばインターネットを介して提供される。この実施形態の一例は、ワールド・ワイド・ウェブのアドレスを含むキットであり、該アドレスによって、指示書が視覚化されれることが可能であり、及び/又は、該アドレスから、指示書がダウンロードされることが可能である。アクセスセキュリティか又は識別プロトコルのいくつかの形態は、本発明を使用するための資格を与えられたものに対するアクセスを制限するために使用されることが可能である。
【0098】
固定相に加えて、キットは、適合可能な移動相流体、例えば結合緩衝液、溶出緩衝液、構成要素ステイニング(staining)試薬、(フィルター、微小遠心装置のような)本方法によって得られた分画を濃縮するための装置、及びこれらに類するもののような本方法を実行するための1つか又は複数の追加的な構成要素を更に含むことが可能である。
【0099】
[実験]
以下の例は、当業者に、本発明をどのようにして作成し且つ使用するのかの完全な開示及び説明を提供するために述べられ、発明者が発明としてみなすものの範囲を制限することは意図されていない。使用される数(例えば、量、温度等)に関する精度を確実する努力がなされてきたが、いくつかの実験誤差及び偏差は原因が説明される必要がある。別様に指摘されない限り、パーツは、重量、分子量が重量平均分子量によるパーツであり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧か又はほぼ大気圧である。
【0100】
[本方法を用いることによって生成された分画内のタンパク質成分の分析]
125μlのヒト血清が、シバクロンブルー(「CB」:Cibacron Blue)樹脂充填緩衝液(50mM KPO、pH7)によって4倍に希釈されて、CB樹脂、すなわちCB樹脂(ハイトラップ・ブルー(HiTrap Blue)HP、Amersham Pharmacia Biotech AB)で作られた第1の固定相に、流速1ml/分において通過させられた。このカラムは、10カラム容量の充填緩衝液によって洗浄され、結合タンパク質は、50mM KPO/1.5mM KCl、pH7によって溶出させられた。結合分画内のタンパク質は、Millipore Corp.のスピン・フィルタ(Ultrafree-4、Biomax-5K)を用いて濃縮された。この手順の後に、分画のタンパク質含有量は、Pierce BiotechnologyによるBCAタンパク質アッセイを用いて評価され、サンプルは、4〜20%勾配ゲル上における非還元SDS−PAGEによって分析された。ゲル内のタンパク質バンドは、コロイド状のクーマシー・ブルー(ゲル・コード・ブルー、Pierce Biotechnology)によって染色することによって視覚化された。
【0101】
図3は、この実験の結果を示し、レーン2〜4は、この実験の相の結果を示す(レーン1は分子量標準)。レーン2〜4に示されるように、血清アルブミンは、明らかに結合分画の主要タンパク質成分であるが、他のマイナーなバンドが、より高い分子量及びより低い分子量において観察されている。大量の分画を充填することは、これらのマイナーなバンドの視覚化を助けるが、これらのマイナーなバンド(レーン4、6μg)を検出するために必要とされる高タンパク質充填は、電気泳動的な分離の解像度を甘くする。
【0102】
アルブミン濃縮CB−結合分画は、中和リン酸塩緩衝液において4倍に希釈されて、次いで、流速0.25ml/分において第2の抗HSA親和性固定相上を通過させられた。貫流は、Millipore Corp.のスピン・フィルタ(Ultrafree-4、Biomax-5K)を用いて濃縮され、この貫流タンパク質混合物は、図1のレーン6〜8に充填された。示されるように、多数の異なったタンパク質バンドが、ゲル上において視覚化され、目に見える分子量が6kDaから200kDaを上まわる幅広い範囲にわたっている。血清アルブミンに対応しているバンドはこれらのレーンにおいて観察されないが、より上下に質量を有するバンドが観察される。レーン6〜8におけるバンドが、切り取られ、続いて質量分析(「MS」)及びLC/MS/MS分析でトリプシン消化がなされて、これにより、これらのCB結合タンパク質が同定され、血清アルブミンとは異なるそれらの同一性が確認された。65kDal質量範囲に存在するタンパク質の分析によって、少量のHSAが検出されたが、免疫親和性の第2の固定相によるHSAの効果的除去と一致するレベルであった。これらの結果は、第1の固定相、特に第1の固定相がHSAを除くタンパク質に結合したことに関する結合情報を提供する。
【0103】
従って、この実験は、固定相(この特定例においてはシバクロンブルー固定相)についての結合情報を提供するために、本発明の連続的なクロマトグラフィプロトコルを用いて、効果的に且つ効率的にサンプルを分画化し、生成された分画内のタンパク質成分を分析することに、本発明を用いることが可能であることを示す。
【0104】
ターゲットの結合同一性を特徴付けるための効果的な方法及び装置を上述の発明が提供することは、上記の結果及び考察から明白である。本発明は、多くの利点を提供し、該利点は、クロマトグラフィプロトコルにおいて使用される材料の結合特異性を容易に且つ効果的に評価する能力を含む(但しこれに限定されない)。他の利点は、使いやすさとコスト効果とを含む。従って、本発明は当該技術分野に対して顕著な貢献を示す。
【0105】
この明細書内において引用された全ての刊行物及び特許は、あたかも各々の刊行物か又が特許が、参照によって組み込まれるために詳細に且つ個別に示されるように、参照によって本明細書内に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日に先行したその開示に関するものであり、先行発明の利点によってそのような刊行物に先行するための権利が与えられないことを認めたものとして解釈されるべきではない。
【0106】
本発明は、その特定の実施形態に関して説明されてきたが、本発明の真の原理及び範囲から逸脱することなく、様々な改変がなされることができ、等価物に置換できることは当業者によって理解されるべきである。更には、特定の状況か、材料か、物質の組成か、プロセスか、プロセスステップか、又は複数のステップを、本発明の目的、原理、及び範囲に適応させるために、多くの修正がなされることが可能である。全てのそのような修正は、本明細書に添付の特許請求の範囲内となることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1A】1つか又は複数のカラムを用いて本固定相を保持する本発明のシステムの例示的な一実施形態を示す。具体的には、図1Aは、分離した2本のカラムを用いるシステムの例示的な一実施形態を示し、第1のカラムが第1の固定相を含み、第2のカラムが第2の固定相を含む。
【図1B】1つか又は複数のカラムを用いて本固定相を保持する本発明のシステムの例示的な一実施形態を示す。具体的には、図1Bは、単一のカラムを用いるシステムの例示的な一実施形態を示し、少なくとも第1の固定相及び第2のカラムがサンプルカラム内に存在する。
【図2】マイクロ流体素子を用いて本固定相を保持する本発明のシステムの例示的な一実施形態を示す図である。
【図3】本方法を用いることによって得られた、分画におけるタンパク質構成要素をSDS−PAGE分析した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィ条件下において、サンプルを少なくとも第1の固定相及び第2の固定相に連続的に接触させることを含む方法であって、
前記サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素の結合同一性を少なくとも決定するために、前記少なくとも1つの構成要素に対する前記第1の固定相の特異性が、少なくとも不確定であり、及び、前記少なくとも1つの構成要素に対する前記第2の固定相の特異性が、確定的であることからなる、方法。
【請求項2】
前記方法が、前記サンプル内に存在する前記少なくとも1つの構成要素に対する前記第1の固定相の特異性を評価する方法であることからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルが、前記第1の固定相に接触させられ、次いで前記第2の固定相に接触させられることからなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、
(a)前記少なくとも1つの構成要素を含む前記サンプルの分画に結合させるために、前記サンプルを前記第1の固定相に接触させ、
(b)前記第1の固定相から前記結合分画を分離させ、及び、
(c)前記結合分画を前記第2の固定相に接触させる
ことを更に含むことからなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の固定相が薬剤を含み、前記方法は、前記サンプル内に存在する前記少なくとも1つの構成要素に対する前記薬剤の特異性を決定する方法であることからなる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の固定相に結合しなかった任意の構成要素を分析することを更に含むことからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分析が、1次元ゲル電気泳動、2次元ゲル電気泳動、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析、液体クロマトグラフィ/質量分析、生体分子相互作用、免疫化学的分析、核磁気共鳴、及び円偏光二色性、のうちの少なくとも1つを用いることを含むことからなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する薬剤の特異性を決定する方法であることからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルが、最初に前記第2の固定相に接触させられ、2番目に前記第1の固定相に接触させられることからなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、
(a)少なくとも1つの構成要素を含む前記サンプルの分画に結合させるために、前記サンプルを前記第2の固定相に接触させ、
(b)前記第2の固定相から前記結合分画を分離させ、及び、
(c)前記結合分画を前記第1の固定相に接触させる
ことを更に含むことからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の固定相が前記薬剤を含むことからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の固定相に結合しなかった任意の構成要素を分析することを更に含むことからなる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記分析が、1次元ゲル電気泳動、2次元ゲル電気泳動、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析、液体クロマトグラフィ/質量分析、生体分子相互作用、免疫化学的分析、核磁気共鳴、及び円偏光二色性、のうちの少なくとも1つを実施することを含むことからなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルが、タンパク質の母集団を含み、前記方法は、タンパク質の前記母集団からタンパク質の小集団を分離する方法であることからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記分離が、
(a)タンパク質の前記母集団を含む前記サンプルの分画に結合させるために、タンパク質のクラスを含む前記サンプルを、前記第1の固定相に接触させ、
(b)前記第1の固定相から前記結合分画を回収し、及び、
(c)タンパク質の前記小集団が前記第2の固定相に結合し、且つ、前記母集団のうちの任意の残りのメンバが、前記第2の固定相に結合しないようにするために、前記結合分画を前記第2の固定相に接触させる
ことを含むことからなる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の固定相及び前記第2の固定相は、抗体又はその結合フラグメント、二重特異性抗体、最小特異性抗体、抗原、色素、単鎖変異体、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、核酸、ビタミン、無機化学物質、及び有機化学物質、のうちから選択されるリガンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの固定相が、クロロトリアジン親和性リガンドを含むことからなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの固定相が、免疫親和性リガンドを含むことからなる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の固定相がクロロトリアジン親和性リガンドを含み、前記第2の固定相が免疫親和性リガンドを含むことからなる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の固定相及び前記第2の固定相が、導管によって接続されることからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
サンプルに存在する少なくとも1つの構成要素に対する薬剤の特異性を決定する方法であって、クロマトグラフィ条件下において、サンプルを少なくとも第1の固定相及び第2の固定相に連続的に接触させることを含み、
前記少なくとも1つの構成要素の結合同一性を少なくとも決定するために、前記サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する前記第1の固定相の特異性は、少なくとも不確定であり、及び、前記少なくとも1つの構成要素に対する前記第2の固定相の特異性は確定的であることからなる、方法。
【請求項22】
前記サンプルが、最初に前記第2の固定相に接触させられ、2番目に前記第1の固定相に接触させられることからなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、
(a)少なくとも1つの構成要素を含む前記サンプルの分画に結合させるために、前記サンプルを前記第2の固定相に接触させ、
(b)前記第2の固定相から前記非結合分画を分離し、及び、
(c)前記非結合分画を前記第1の固定相に接触させる
ことを更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の固定相が、前記薬剤を含むことからなる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の固定相に結合しなかった任意の構成要素を分析することを更に含むことからなる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記分析が、1次元ゲル電気泳動、2次元ゲル電気泳動、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析、液体クロマトグラフィ/質量分析、生体分子相互作用、免疫化学的分析、核磁気共鳴、及び円偏光二色性、のうちの少なくとも1つを実施することを含むことからなる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
固定相の特異性を評価する方法であって、クロマトグラフィ条件下において、サンプルを少なくとも第1の固定相及び第2の固定相に接触させることを含み、
前記サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する前記第1の固定相の特異性は、少なくとも不確定であり、及び、前記少なくとも1つの構成要素に対する前記第2の固定相の特異性が確定的であることからなる、方法。
【請求項28】
請求項6に記載の方法、請求項12に記載の方法、及び請求項25に記載の方法の、少なくとも1つによって得られる分析ステップの結果を表すデータを転送することを含む方法。
【請求項29】
前記データが遠隔地に伝達されることからなる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法によって得られた分析ステップの結果を表すデータを受け取ることを含む方法。
【請求項31】
(a)少なくとも1つの構成要素を含むサンプルと、
(b)前記サンプル内に存在する少なくとも1つの構成要素に対する特異性が少なくとも不確定である、第1の固定相と、
(c)前記少なくとも1つの構成要素に対する特異性が確定的である、第2の固定相
とを備えるシステム。
【請求項32】
前記少なくとも1つの固定相が、クロロトリアジン親和性リガンドを含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
サンプルの少なくとも1つの構成要素に対して特異性が不確定な第1の固定相と、サンプルの前記少なくとも1つの構成要素に対して特異性が確定的である第2の固定相とを備える、装置。
【請求項34】
前記装置が、クロマトグラフィカラムである、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記装置が、マイクロ流体素子である、請求項33に記載の装置。
【請求項36】
(a)少なくとも特異性が不確定な第1の固体相と、
(b)特異性が確定的である第2の固体相と、
(c)請求項1に記載の方法で前記第1の固定相及び前記第2の固定相を用いるための指示書
とを備えるキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−513327(P2007−513327A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539832(P2006−539832)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/037575
【国際公開番号】WO2005/050210
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】5301 Stevens Creek Boulevard Santa Clara California U.S.A.
【Fターム(参考)】