説明

分析装置および分析処理方法

【課題】 分析結果の良否を簡単に判定して、否となる問題点を簡単に見つけることができる分析装置および分析処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 分析結果判定部44は、第1情報記憶部43に記憶された分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準に基づいて今回の分析結果の良否を判定し、解決方法提示部46は、第2情報記憶部45に記憶された互いに関連付けられた過去の問題点および解決方法の情報に基づいて今回の分析結果の問題点に対する解決方法を提示する。したがって、分析結果の良否を簡単に判定して、否となる問題点を簡単に見つけることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の分析を行う分析装置および分析処理方法に係り、特に、分析条件に基づいてその所定の分析を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置として、高周波プラズマ発光分析装置を例に採って説明する。高周波プラズマ発光分析装置は、プラズマ中の試料から発光された光を分光し、その分光によって得られたスペクトル線を用いて定量分析を行う。例えば、シーケンシャル型の高周波プラズマ発光分析装置は、回折格子などに代表される光学系を動かしながら定量分析を行う。一方、同時分析型の高周波プラズマ発光分析装置は、多チャンネル型の検出器を備え、装置の測定波長範囲内にある分析元素・波長全てについてスペクトル線などに代表される測定データを一括して同時に取得することができる。
【0003】
そして、分析条件(すなわち分析パラメータ)を設定して、取得された測定データと分析条件とに基づいて分析を行う。より具体的には、例えば分析条件として分析対象となる元素や波長を設定して、その元素・波長についての検量線やプロファイルといった情報を取得し、その情報から計算された試料中元素濃度を出力する。そして、これらを分析者が参照し、分析結果の良否を判定している。
【0004】
分析結果に問題点を見つけた場合、すなわち分析結果が否だと判定した場合には、分析者がその問題点の原因を特定する。そして、(α)分析パラメータを新たに設定して、測定データを新たに取得することなく今回取得された測定データから再計算して、その問題点を解決するのか、(β)試料の再測定を行って測定データを新たに取得する必要があるかを分析者が判断して問題点の解決を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、分析経験の浅い分析者にとって、検量線やプロファイルなどの情報から、その分析結果の良否を判定することは難しい。さらに、問題点を見つけた場合でも、(α)再計算して問題点を解決できるのか、(β)試料の再測定が必要なのかを判断するのは難しい。
【0006】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、分析結果の良否を簡単に判定して、否となる問題点を簡単に見つけることができる分析装置および分析処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、分析条件を設定する分析条件設定手段を備え、その分析条件設定手段で設定された分析条件に基づいて所定の分析を行う分析装置であって、分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準を予め記憶する第1情報記憶手段と、その第1情報記憶手段に記憶された判断基準に基づいて今回の分析結果の良否を判定する分析結果判定手段と、分析結果が否の場合において否となる過去の問題点およびその問題点に対する解決方法を互いに関連付けて情報を予め記憶する第2情報記憶手段と、その第2情報記憶手段に記憶された前記関連付けられた過去の問題点および解決方法の情報に基づいて今回の分析結果の問題点に対する解決方法を提示する解決方法提示手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、分析条件設定手段で設定された分析条件に基づいて所定の分析を行う際に、分析結果判定手段は、第1情報記憶手段に記憶された分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準に基づいて今回の分析結果の良否を判定する。したがって、分析経験の浅い分析者でも、分析結果の良否を簡単に判定することができる。そして、解決方法提示手段は、第2情報記憶手段に記憶された互いに関連付けられた過去の問題点および解決方法の情報に基づいて今回の分析結果の問題点に対する解決方法を提示する。したがって、分析経験の浅い分析者でも、否となる問題点を簡単に見つけることができる。
【0009】
上述した発明において、分析の基となる測定データを新たに測定して取得する必要がなく、新たなる分析条件を設定して分析を行うことで分析結果が良となる場合には、上述した解決方法提示手段によって提示された今回の問題点および解決方法のうちから、上述した新たなる分析条件を選択して、その新たなる分析条件に基づいて今回の分析結果を再計算して、上述した測定データを新たに測定して取得することなく新たなる分析結果を求めるように各手段を構成するのが好ましい(請求項2に記載の発明)。このように構成することで、新たなる分析条件を設定して分析を行うことで分析結果が良となるような場合では、測定データを新たに測定して取得することなく新たなる分析結果を求めることができる。そして、求められたその新たなる分析結果が良となる。
【0010】
また、この発明における解決方法提示手段によって提示された今回の問題点および解決方法を出力する手段については、装置と別体であってもよいし、装置内に備えられていてもよい。装置内に備えられる場合には、出力する手段の代表的な一例は、今回の問題点および解決方法を表示する表示手段である(請求項3に記載の発明)。かかる表示手段を備えることで、分析者は問題点および解決方法の表示を簡単に閲覧することができる。なお、出力する手段は、出力表示を行う表示手段に限定されず、出力印刷する手段(例えばプリンタ)であってもよい。
【0011】
また、上述した第1情報記憶手段または/および第2情報記憶手段は、最新の情報に書き換え可能に構成されていてもよい(請求項4に記載の発明)。このように各記憶手段を書き換え可能に構成することで、第1情報記憶手段の場合では分析結果判定手段は、第2情報記憶手段の場合では解決方法提示手段は、最新の情報を常に参照することができて、第1情報記憶手段の場合では分析結果の良否を正確に判定することができ、第2情報記憶手段の場合では否となる問題点を正確に見つけることができる。
【0012】
また、所定の分析の一例は、分析の基となる測定データを測定して、その測定データを一括して取得する分析である(請求項5に記載の発明)。かかる分析の場合には、一括して測定データを取得した後に、その測定データと分析条件とに基づいて分析結果を求める。したがって、個々の分析条件に対応して分析結果を求める場合には、同一の測定データと個々の分析結果とに基づいて分析結果がそれぞれ求まるので、測定データを再度測定、すなわち試料の再測定を行う必要がない。特に、請求項6に記載の発明が、請求項2に記載の発明に従属されている場合には、同一の測定データのみで新たなる分析結果を求めることができる。
【0013】
また、測定データを一括して取得する分析の一例は、多チャンネル型の検出器を備え、測定波長範囲内の測定データを同時に取得可能な同時分析型高周波プラズマ発光分析である(請求項6に記載の発明)。この発明における分析装置を、かかる高周波プラズマ発光分析を行う装置として用いることになる。同時分析型の高周波プラズマ発光分析装置の場合には、多チャンネル型の検出器を備えているので、スペクトル線などに代表される測定データを一括して同時に取得することができる。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、設定された分析条件に基づいて所定の分析を行う分析工程を含んだ一連の分析処理を実行する分析処理方法であって、分析条件を設定する分析条件設定工程と、その分析条件設定工程で設定された分析条件に基づいて所定の分析を行う分析工程と、分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準に基づいて今回の分析結果の良否を判定する分析結果判定工程と、分析結果が否の場合において否となる過去の問題点およびその問題点に対する解決方法が互いに関連付けられているときにおいて、その関連付けられた過去の問題点および解決方法の情報に基づいて今回の分析結果の問題点に対する解決方法を提示する解決方法提示工程とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]請求項7に記載の発明によれば、分析条件設定工程で設定された分析条件に基づいて分析工程で所定の分析を行い、分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準に基づいて分析結果判定工程で今回の分析結果の良否を判定する。したがって、分析経験の浅い分析者でも、分析結果の良否を簡単に判定することができる。そして、互いに関連付けられた過去の問題点および解決方法の情報に基づいて今回の分析結果の問題点に対する解決方法を解決方法提示工程で提示する。したがって、分析経験の浅い分析者でも、否となる問題点を簡単に見つけることができる。
【0016】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の分析処理方法において、前記測定データを新たに測定して取得する必要がなく、新たなる分析条件を設定して分析を行うことで分析結果が良となる場合には、前記解決方法提示工程で提示された前記今回の問題点および解決方法のうちから、前記新たなる分析条件を選択して再設定する分析条件再設定工程と、その新たなる分析条件に基づいて今回の分析結果を再計算する再計算工程と、前記測定データを新たに測定して取得することなく新たなる分析結果を求める分析結果再導出工程とを備えることを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]請求項8に記載の発明によれば、このような工程を備えることで、新たなる分析条件を設定して分析を行うことで分析結果が良となるような場合では、測定データを新たに測定して取得することなく分析結果再導出工程で新たなる分析結果を求めることができる。そして、求められたその新たなる分析結果が良となる。
【0018】
なお、本明細書は、次のような分析処理方法および分析処理プログラム、並びに分析処理記憶媒体に係る発明も開示している。
【0019】
(1)請求項7または請求項8に記載の分析処理方法において、前記解決方法提示工程で提示された前記今回の問題点および解決方法を表示する表示工程を備えることを特徴とする分析処理方法。
【0020】
前記(1)に記載の発明によれば、表示工程を備えることで、分析者は問題点および解決方法の表示を簡単に閲覧することができる。
【0021】
(2)請求項7、請求項8または前記(1)のいずれかに記載の分析処理方法において、前記所定の分析は、多チャンネル型の検出器によって検出して、測定波長範囲内の測定データを同時に取得可能な同時分析型高周波プラズマ発光分析であることを特徴とする分析処理方法。
【0022】
前記(2)に記載の発明によれば、多チャンネル型の検出器によって、スペクトル線などに代表される測定データを一括して同時に取得することができる。
【0023】
(3)設定された分析条件に基づいて所定の分析を行う分析工程を含んだ一連の分析処理をコンピュータに実行させるための分析処理プログラムであって、分析条件を設定する分析条件設定工程と、その分析条件設定工程で設定された分析条件に基づいて所定の分析を行う分析工程と、分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準に基づいて今回の分析結果の良否を判定する分析結果判定工程と、分析結果が否の場合において否となる過去の問題点およびその問題点に対する解決方法が互いに関連付けられているときにおいて、その関連付けられた過去の問題点および解決方法の情報に基づいて今回の分析結果の問題点に対する解決方法を提示する解決方法提示工程とを含む分析処理をコンピュータに実行させることを特徴とする分析処理プログラム。
【0024】
前記(3)に記載の発明によれば、これらの工程を含む分析処理をコンピュータに実行させることによって、分析結果の良否を簡単に判定して、否となる問題点を簡単に見つけることができる。
【0025】
(4)前記(3)に記載の分析処理プログラムにおいて、前記測定データを新たに測定して取得する必要がなく、新たなる分析条件を設定して分析を行うことで分析結果が良となる場合には、前記解決方法提示工程で提示された前記今回の問題点および解決方法のうちから、前記新たなる分析条件を選択して再設定する分析条件再設定工程と、その新たなる分析条件に基づいて今回の分析結果を再計算する再計算工程と、前記測定データを新たに測定して取得することなく新たなる分析結果を求める分析結果再導出工程とを前記分析処理にさらに含み、その分析処理をコンピュータに実行させることを特徴とする分析処理プログラム。
【0026】
前記(4)に記載の発明によれば、このような工程をコンピュータに実行させることによって、新たなる分析条件を設定して分析を行うことで分析結果が良となるような場合では、測定データを新たに測定して取得することなく分析結果再導出工程で新たなる分析結果を求めることができる。そして、求められたその新たなる分析結果が良となる。
【0027】
(5)前記(3)または(4)に記載の分析処理プログラムにおいて、前記解決方法提示工程で提示された前記今回の問題点および解決方法を表示する表示工程を前記分析処理にさらに含み、その分析処理をコンピュータに実行させることを特徴とする分析処理プログラム。
【0028】
前記(5)に記載の発明によれば、表示工程をコンピュータに実行させることによって、分析者は問題点および解決方法の表示を簡単に閲覧することができる。
【0029】
(6)前記(3)から(5)のいずれかに記載の分析処理プログラムにおいて、前記所定の分析は、多チャンネル型の検出器によって検出して、測定波長範囲内の測定データを同時に取得可能な同時分析型高周波プラズマ発光分析であることを特徴とする分析処理プログラム。
【0030】
前記(6)に記載の発明によれば、多チャンネル型の検出器によって、スペクトル線などに代表される測定データを一括して同時に取得することができる。
【0031】
(7)設定された分析条件に基づいて所定の分析を行う分析工程を含んだ一連の分析処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータに読み取り可能な分析処理記憶媒体であって、分析条件を設定する分析条件設定工程と、その分析条件設定工程で設定された分析条件に基づいて所定の分析を行う分析工程と、分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準に基づいて今回の分析結果の良否を判定する分析結果判定工程と、分析結果が否の場合において否となる過去の問題点およびその問題点に対する解決方法が互いに関連付けられているときにおいて、その関連付けられた過去の問題点および解決方法の情報に基づいて今回の分析結果の問題点に対する解決方法を提示する解決方法提示工程とを含む分析処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録することを特徴とする分析処理記憶媒体。
【0032】
前記(7)に記載の発明によれば、これらの工程を含む分析処理をコンピュータに実行させることによって、分析結果の良否を簡単に判定して、否となる問題点を簡単に見つけることができる。
【0033】
(8)前記(7)に記載の分析処理記憶媒体において、前記測定データを新たに測定して取得する必要がなく、新たなる分析条件を設定して分析を行うことで分析結果が良となる場合には、前記解決方法提示工程で提示された前記今回の問題点および解決方法のうちから、前記新たなる分析条件を選択して再設定する分析条件再設定工程と、その新たなる分析条件に基づいて今回の分析結果を再計算する再計算工程と、前記測定データを新たに測定して取得することなく新たなる分析結果を求める分析結果再導出工程とを前記分析処理にさらに含み、その分析処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録することを特徴とする分析処理記憶媒体。
【0034】
前記(8)に記載の発明によれば、このような工程をコンピュータに実行させることによって、新たなる分析条件を設定して分析を行うことで分析結果が良となるような場合では、測定データを新たに測定して取得することなく分析結果再導出工程で新たなる分析結果を求めることができる。そして、求められたその新たなる分析結果が良となる。
【0035】
(9)前記(7)または(8)に記載の分析処理記憶媒体において、前記解決方法提示工程で提示された前記今回の問題点および解決方法を表示する表示工程を前記分析処理にさらに含み、その分析処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録することを特徴とする分析処理記憶媒体。
【0036】
前記(9)に記載の発明によれば、表示工程をコンピュータに実行させることによって、分析者は問題点および解決方法の表示を簡単に閲覧することができる。
【0037】
(10)前記(7)から(9)のいずれかに記載の分析処理記憶媒体において、前記所定の分析は、多チャンネル型の検出器によって検出して、測定波長範囲内の測定データを同時に取得可能な同時分析型高周波プラズマ発光分析であることを特徴とする分析処理記憶媒体。
【0038】
前記(10)に記載の発明によれば、多チャンネル型の検出器によって、スペクトル線などに代表される測定データを一括して同時に取得することができる。
【発明の効果】
【0039】
この発明に係る分析装置および分析処理方法によれば、分析結果判定手段は、第1情報記憶手段に記憶された分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準に基づいて今回の分析結果の良否を判定し、解決方法提示手段は、第2情報記憶手段に記憶された互いに関連付けられた過去の問題点および解決方法の情報に基づいて今回の分析結果の問題点に対する解決方法を提示する。したがって、分析結果の良否を簡単に判定して、否となる問題点を簡単に見つけることができる。
【実施例】
【0040】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係る分析装置の概略を示すブロック図である。なお、本実施例では、分析として、測定データを一括して取得することが可能なエシェル型の分光器を用いた同時分析型高周波プラズマ発光分析(以下、「エシェル型の高周波プラズマ発光分析」と略記する)を例に採って説明する。
【0041】
エシェル型の高周波プラズマ発光分析は、図1に示すように、プラズマ中の試料Sから発光されたスペクトル線Lを、光の回折効果を利用した分散素子である回折格子Gを用いて定量分析を行う。より具体的に説明すると、エシェル型の高周波プラズマ発光分析を行う分析装置1は、光源部10と分光部20と測光部30と分析処理制御部40とを備えている。
【0042】
光源部10は、アルゴン(Ar)ガス、プラズマトーチと高周波電源とによって生成されるプラズマを発生させるプラズマ処理室からなり、プラズマ処理室内に試料Sを導入する。試料Sは溶液試料などである。試料Sが光源部10に導入されると、高温のプラズマにより気化して原子状態となり、同時に励起される。励起状態にある原子は、励起状態から定常状態に状態遷移するときに、各元素特有の光をスペクトル線Lとして発光する。
【0043】
分光部20は、回折格子Gや次数分離用回折格子21からなり、これらの格子G,21によってスペクトル線Lを分光する。
【0044】
測光部30は、CCDカメラやラインセンサなどの多チャンネル型の検出器からなり、分光された各光を電気信号にそれぞれ変換する。その電気信号に基づいた光の波長ごとの強度を測定データとして、分析処理制御部40に送り込む。この測定データは、分析の基となるデータである。
【0045】
分析処理制御部40は、パーソナルコンピュータで構成され、分析パラメータ設定部41と分析結果導出部42と第1情報記憶部43と分析結果判定部44と第2情報記憶部45と解決方法提示部46とモニタ47とを備えている。分析パラメータ設定部41、分析結果導出部42、分析結果判定部44、解決方法提示部46は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されており、第1情報記憶部43、第2情報記憶部45は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体などで構成されている。
【0046】
分析パラメータ設定部41は、分析対象となる元素や波長などの分析パラメータ(すなわち分析条件)を設定する。この分析パラメータ設定部41は、図示を省略する入力部からの入力データに基づいて分析パラメータを設定する。この入力部は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。本実施例での分析パラメータ設定部41の具体的な機能については後述する。分析パラメータ設定部41で設定された分析パラメータを分析結果導出部42に送り込む。分析パラメータ設定部41は、この発明における分析条件設定手段に相当する。
【0047】
分析結果導出部42は、分析パラメータ設定部41で設定された分析パラメータ、および測光部30で測定された測定データに基づいて、光の強度から濃度への計算を行って分析結果を求める。本実施例での分析結果導出部42での具体的な機能については後述する。分析結果導出部42で求まった分析結果を分析結果判定部44に送り込む。
【0048】
第1情報記憶部43は、分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準を予め記憶する。本実施例での判断基準については後述する。第1情報記憶部43に記憶された判断基準を分析結果判定部44に送り込む。第1情報記憶部43は、この発明における第1情報記憶手段に相当する。
【0049】
なお、第1情報記憶部43を、RAMなどの書き換え可能な記憶媒体などで構成することにより、最新の情報などに内容を更新することができる。更新の方法は装置メーカなどによる一括書き換えとしてもよいし、自己学習型としてもよい。
【0050】
分析結果判定部44は、第1情報記憶部43に記憶された判断基準の情報に基づいて今回の分析結果の良否を判定する。本実施例での分析結果判定部44での具体的な構成については後述する。分析結果判定部44で判定された今回の分析結果の良否を解決方法提示部46に送り込む。分析結果判定部44は、この発明における分析結果判定手段に相当する。
【0051】
第2情報記憶部45は、分析結果が否の場合において否となる過去の問題点およびその問題点に対する解決方法を互いに関連付けて情報を予め記憶する。本実施例でのその関連付けられた過去の問題点および解決方法の情報については後述する。第2情報記憶部45に記憶された過去の問題点および解決方法の情報を解決方法提示部46に送り込む。第2情報記憶部45は、この発明における第2情報記憶手段に相当する。なお、第2情報記憶部45についても、第1情報記憶部43と同様に、RAMなどの書き換え可能な記憶媒体などで構成してもよい。
【0052】
解決方法提示部46は、第2情報記憶部45に記憶された前記関連付けられた過去の問題点および解決方法の情報に基づいて、分析結果判定部43で判定された今回の分析結果の良否のうち否となる問題点に対する解決方法を提示する。本実施例での解決方法提示部46での具体的な構成については後述する。解決方法提示部46で提示された問題点および解決方法をモニタ47に送り込む。解決方法提示部46は、この発明における解決方法提示手段に相当する。
【0053】
また、分析の基となる測定データを測光部30で新たに測定して取得する必要がなく、新たなる分析パラメータを分析パラメータ設定部41で設定して計算処理を行うことで分析結果が良となる場合には、解決方法提示部46で提示された問題点および解決方法を、分析パラメータ設定部41にも送り込む。そして、分析パラメータ設定部41で、今回の問題点および解決方法のうちから新たなる分析パラメータを選択して再設定する。そして、分析パラメータ設定部41で再設定された分析パラメータを分析結果導出部42に送り込んで、分析結果導出部42は、分析パラメータ設定部41で再設定された分析パラメータに基づいて、測定データを新たに測定して取得することなく新たなる分析結果を再計算して求める。
【0054】
モニタ47は、解決方法提示部46で提示された今回の問題点および解決方法を表示する。本実施例でのモニタ47に表示される今回の問題点および解決方法については後述する。モニタ47は、この発明における表示手段に相当する。
【0055】
次に、本実施例に係る分析処理方法について、図2のフローチャートおよび図3〜図11の説明図を参照して説明する。図2は、本実施例に係る分析処理方法のフローチャートであり、図3は、検量線の説明図であり、図4〜図7はプロファイルの説明図であり、図8は、分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準の説明図であり、図9は、分析結果が否の場合において否となる過去の問題点およびその問題点に対する解決方法を互いに関連付けた情報の説明図であり、図10は、提示された今回の問題点および解決方法の表示に関する説明図であり、図11は、新たなる分析パラメータを設定する表示に関する説明図である。
【0056】
(ステップS1)測定データの取得
先ず、分析結果を求めるために、分析の基となる測定データを測光部30が求める。この測定データは、回折格子Gなどによって2次元に展開されて分光された複数の波長ごとの光に応じた強度として求められている。
【0057】
(ステップS2)分析パラメータ設定
分析対象となる元素や波長を分析パラメータとして設定する。例えば、定量分析を行う元素がアルミニウム(Al)の場合には、分析対象となるAlを設定するとともに、Alの波長と想定される値を設定する。これらの設定された入力データに基づいて分析パラメータ設定部41は分析パラメータを設定して、分析結果導出部42に送り込む。このステップS2は、この発明における分析条件設定工程に相当する。本実施例では、ステップS1で測定データを取得してからステップS2で分析パラメータを設定したが、ステップS2で分析パラメータを設定してから、ステップS1で測定データを取得して、次のステップS3で分析を行ってもよい。
【0058】
(ステップS3)分析
分析パラメータ設定部41で設定された分析パラメータ、および測光部30で測定された測定データに基づいて、分析結果導出部42は光の強度から濃度への計算を行う。この分析では、例えば、図3に示す既知の濃度の試料の測定に基づいた検量線や図4に示すプロファイルを作成して、これら作成された検量線やプロファイルに基づいて分析を行う。あるいは、プロファイルを作成して、作成されたプロファイルや予め作成された検量線に基づいて分析を行う。
【0059】
元素は波長ごとに固有の感度を有している。検量線は、横軸に濃度(図3ではAl濃度)をとって、縦軸に濃度に対応する強度(図3ではAlの強度I)をとる。元素Alが設定されるとともに、ある所定の値の波長が設定されている場合には、設定された元素Al、設定された所定の値の波長に応じた検量線のグラフ(図3を参照)と、測光部30で測定された強度に基づいて、Al濃度を求める。
【0060】
プロファイルは、横軸に波長(図4ではAlの実際の波長)をとって、縦軸に波長に対応する強度(図4ではAlの強度I)をとる。強度がピークになっている波長λ1が実際の波長となる。ところで、プラズマを生成するガス(例えばアルゴン(Ar))や試料中に大量に含まれる元素から独自の強度がバックグラウンドとして図4のプロファイルに重畳されている場合がある。また、波長によってバックグラウンドの強度が変化する場合がある。この波長に対する変化の傾きを図4ではdとする。これらの場合には、重畳された強度であるバックグラウンド値BGおよび傾きdに基づいて補正する『バックグラウンド補正』を行う。バックグラウンド補正後のプロファイルは図5に示すようなグラフとなる。
【0061】
また、図6に示すように、プロファイル中にピークが2つ以上存在する場合がある。この場合には、2つ以上存在するピークのうち1つが分析対象となる元素(図6ではAl)の波長に対応して、残りのピークは分析対象となる元素の波長に近傍した元素(『妨害元素』あるいは『共存元素』と呼ぶ)の波長に対応する。そこで、妨害元素に関するプロファイルを、図7に示すように作成して、妨害元素の濃度を他の波長λ3で求めることにより、図6に重畳している妨害元素の波長λ2のプロファイル中のスペクトルを推定し、図6から減算して補正する『元素間補正』を行う。
【0062】
これらの検量線やプロファイルに基づいて分析対象となる元素の濃度を求めて分析を行う。分析結果導出部42は、これらの分析結果を分析結果判定部44に送り込む。このステップS3は、この発明における分析工程に相当する。
【0063】
(ステップS4)分析結果判定
一方、第1情報記憶部43には、分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準が、例えば図8に示すように記憶されている。
【0064】
具体的に判断基準としては、3パターンに分けられ、検出器などの装置のハードウェアの状態から判断されるパターン、測定データのプロファイルから数学的観点により判断されるパターン、各元素の既知のスペクトルの状態から経験的に蓄積されるパターンと分けられる。各判断基準項目には、判断点とその点について良否を決めるための状態と基準値とが登録されている。
【0065】
例えば、図8中の問題点で『オーバーフローした元素がある』は、測光部30の検出器(例えばCCDのフォトダイオードや電荷電圧変換器)の検出能力を超えたときである。すなわち、検出器の性能に基づいて今回の分析結果において強度がオーバーフローしたか否かを判定する。図8中の判断基準としては、『検出器の性能による強度上限A以上』となる。なおAはオーバーフローの閾値(所定値)である。この判断基準は、検出器などの装置のハードウェアの状態から判断されるパターンの一例である。
【0066】
例えば、図8中の問題点で『バックグラウンドや分光干渉に対し、分析元素の強度の正しい値がだせない』は、プラズマを生成するガスによるバックグラウンドや、分光による干渉で、分析対象となる元素の強度が低下したときである。過去の値から所定値を予め決定して、その所定値以下なら正しい値が求められないと判定する。図8中の判断基準としては、『分析元素の強度がI以下』となる。なお、Iは上述した所定値である。この判断基準は、測定データのプロファイルから数学的観点により判断されるパターンの一例である。
【0067】
例えば、図8中の問題点で『バックグラウンドの変動がある』は、図4のバックグラウンドによってピーク近傍の箇所で強度が強く変動しているときである。このときは、強度の変動が測定強度に重複している。バックグラウンドはある程度は平坦であることが前提であり、本来であればピークでバックグラウンド値BGを取得したいが、平坦でなく変動しているときにはピークで測定できないので、ピーク近傍の箇所でバックグラウンド値BGを取得する。したがって、決められた強度の精度に対してバックグラウンド値BGが所定値以下の影響しか与えない場合には、バックグラウンド変動なしであるが、所定値以上の影響があれば、バックグラウンドに変動ありとして、バックグラウンド補正を行う。すなわち、バックグラウンド値BGに対して強度不足かあるいは適当な強度かを判定する。図8中の判断基準としては、『バックグラウンドの傾きがd以上』となる。
【0068】
例えば、図8中の問題点で『共存元素から分光干渉がある』は、共存元素、すなわち妨害元素のピークが分析対象となる元素のピークの近傍にあり、分析対象となる元素波長の強度(あるいは濃度)に影響を与える場合である。図6のプロファイルから分析対象となる元素波長の強度(あるいは濃度)に対する妨害元素の強度(あるいは濃度)が、ある所定値以上の場合には、干渉の影響があると判定する。図8中の判断基準としては、『妨害元素の分析値がA以上』となる(ただしAは所定値)。この判断基準は、各元素の既知のスペクトルの状態から経験的に蓄積されるパターンの一例である。
【0069】
例えば、図8中の問題点で『試料濃度が不適切である』は、図3の検量線において濃度の範囲外のときである。例えば作成した検量線の上限・下限濃度の範囲を超えているか否かを判定する。図8中の判断基準としては、『分析値が検量線の信頼範囲外』となる。
【0070】
例えば、図8中の問題点で『高濃度元素Naが分析値に影響を与えている可能性がある』は、試料が海水を含んでいる場合には、海水の主成分のナトリウム(Na)による影響を受けているときである。このときは、Naによる影響でプラズマの状態が変わり、感度が影響を受ける。過去の分析結果(例えば高濃度元素Naの濃度に関するデータ)などに基づいてNaによる影響を受けているか否かを判定する。図8中の判断基準としては、『高濃度元素Naの濃度がC以上』となる。なお、Cは濃度に関する所定値である。
【0071】
ステップS3の分析で行われた今回の分析結果において、これらの分析結果の良否を分析結果判定部44が判定する。そして、今回の分析結果の良否を解決方法提示部46に送り込む。このステップS4は、この発明における分析結果判定工程に相当する。
【0072】
(ステップS5)問題あり?
分析結果が否となる問題点があれば、次のステップS6に進む。分析結果が良の場合には、一連の分析処理を終了する。
【0073】
例えば、今回の分析結果において強度がオーバーフローすれば問題あり(否)と判定する。プラズマを生成するガスによるバックグラウンドや、分光による干渉で、分析対象となる元素の強度が低下して所定値以下なら問題あり(否)と判定する。バックグラウンドの傾きが所定値を超えたら問題あり(否)と判定する。妨害元素のピークが分析対象となる元素のピークの近傍にあって、妨害元素の分析値が所定値以上なら問題あり(否)と判定する。検量線において濃度の範囲外ならば問題あり(否)と判定する。Naによる影響が大きすぎる場合には問題あり(否)と判定する。
【0074】
(ステップS6)問題点および解決方法の提示
一方、第2情報記憶部45には、分析結果が否の場合において否となる過去の問題点およびその問題点に対する解決方法を互いに関連付けた情報(テーブル)が、例えば図9に示すように記憶されている。
【0075】
例えば、図9中の問題点で『オーバーフローした元素があります。』の場合には、設定した波長において感度が高すぎて強度がオーバーフローする可能性がある。この場合には、測定データをステップS1で新たに測定して取得する必要がなく、より感度の低い分析波長を分析パラメータとして分析パラメータ設定部41で再設定して、今回の分析結果を分析結果導出部42で再計算することで解決することができる。そこで、図9中の解決方法で『より感度の低い分析波長を追加することで解決する可能性があります。再測定を行わずに、再計算が可能です。システムが分析波長を選択します。』を『オーバーフローした元素があります。』に関連付けて、第2情報記憶部45に予め記憶している。
【0076】
他の問題点においても、その問題点に対する解決方法を互いに関連付けて図9のテーブルとして第2情報記憶部45に予め記憶する。
【0077】
なお、図9中の問題点で『試料濃度が不適切です。』の場合には、ステップS1で再測定する必要があるので、図9注の解決方法で『その範囲の試料での再測定が必要です。システムが検量線の濃度を推定します。』を『試料濃度が不適切です。』に関連付けて、第2情報記憶部45に予め記憶している。
【0078】
これらの関連付けられた問題点および解決方法を第2情報記憶部45から読み出して、今回の分析結果の問題点およびそれに対する解決方法を解決方法提示部46は提示する。解決方法提示部46は、モニタ47に送り込んで、提示された今回の問題点および解決方法を、例えば図10に示すようにモニタ47は表示する。このステップS6は、この発明における解決方法提示工程および表示工程に相当する。
【0079】
(ステップS7)再計算で解決?
再計算で解決する場合、例えば図9、図10に示すように問題点が『オーバーフローした元素があります。』で、より感度の低い分析波長を分析パラメータとして再設定して再計算を行うことで解決する場合には、次のステップS8に進む。再計算でも解決しない場合には、ステップS1の測定データの取得に戻る。
【0080】
(ステップS8)分析パラメータ再設定
再計算で解決する場合、すなわち測定データをステップS1で新たに測定して取得する必要がなく、新たなる分析パラメータを設定して分析を行うことで分析結果が良となる場合には、解決方法提示部46で提示された今回の問題点および解決方法のうちから、新たなる分析パラメータを選択して再設定する。
【0081】
例えば図10中のモニタ47上で問題点『オーバーフローした元素があります。』を表示するとともに、解決方法『より感度の低い分析波長を追加することで解決する可能性があります。再測定を行わずに、再計算が可能です。システムが分析波長を選択します。』を表示する。この他に、試料名や分析の対象となる元素(図10の場合にはカドミウム(Cd))を表示するとともに、ステップS2で設定した波長を表示する。また、モニタの右端部分には、図10に示すように『解決を図る』ボタンを設けており、このボタンをタッチパネルで構成している。このボタンを押下して解決方法を選択することで、その解決方法に応じた分析パラメータを新たに設定する。図10の場合には、より感度の低い分析波長を分析パラメータとして分析パラメータ設定部41で再設定することになる。
【0082】
そして、分析パラメータ設定部41で再設定する場合には、例えば図11中のモニタ47上で追加波長を表示するとともに、再設定をキャンセルする『Cancel』と再設定を行う『OK』ボタンを表示する。これらのボタンもタッチパネルで構成している。『OK』ボタンを押下することで、新たなる分析パラメータを再設定する。図11の場合には、より感度の低い波長を追加波長として、その追加波長を新たなる分析パラメータとする。
【0083】
このように解決方法提示部46で提示された問題点および解決方法を、分析パラメータ設定部41に送り込んで、『OK』ボタンが押下されることで分析パラメータ設定部41は今回の問題点および解決方法のうちから新たなる分析パラメータを選択して再設定する。そして、分析パラメータ設定部41で再設定された分析パラメータを分析結果導出部42に送り込む。このステップS8は、この発明における分析条件再設定工程に相当する。
【0084】
(ステップS9)分析結果の再計算
分析結果導出部42は、分析パラメータ設定部41で再設定された分析パラメータに基づいて、再計算を行う。このステップS9は、この発明における再計算工程に相当する。
【0085】
(ステップS10)分析結果再導出
そして、再計算から新たなる分析結果を求める。このステップS10は、この発明における分析結果再導出工程に相当する。
【0086】
上述した本実施例に係る分析装置1によれば、分析パラメータ設定部41で設定された分析パラメータ(分析条件)に基づいて所定の分析(本実施例では高周波プラズマ発行分析)を行う際に、分析結果判定部44は、第1情報記憶部43に記憶された分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準に基づいて今回の分析結果の良否を判定する。したがって、分析経験の浅い分析者でも、分析結果の良否を簡単に判定することができる。そして、解決方法提示部46は、第2情報記憶部45に記憶された互いに関連付けられた過去の問題点および解決方法の情報に基づいて、今回の分析結果の問題点に対する解決方法を提示する。したがって、分析経験の浅い分析者でも、否となる問題点を簡単に見つけることができる。
【0087】
本実施例では、分析の基となる測定データを新たに測定して取得する必要がなく、新たなる分析パラメータを設定して分析を行うことで分析結果が良となる場合には、解決方法提示部46によって提示された今回の問題点および解決方法のうちから、上述した新たなる分析条件を選択して、その新たなる分析条件に基づいて今回の分析結果を再計算して、上述した測定データを新たに測定して取得することなく新たなる分析結果を求めるように、分析処理制御部40の各手段を構成している。このように構成することで、新たなる分析パラメータを設定して分析を行うことで分析結果が良となるような場合では、測定データを新たに測定して取得することなく新たなる分析結果を求めることができる。そして、求められたその新たなる分析結果が良となる。
【0088】
また、本実施例では、今回の問題点および解決方法を表示するモニタ47を備えることで、分析者は問題点および解決方法の表示を簡単に閲覧することができる。
【0089】
また、本実施例のようにエシェル型の高周波プラズマ発光分析では、CCDカメラやラインセンサなどの多チャンネル型の検出器を備えているので、測定データを一括して同時に取得することが可能である。かかるエシェル型の分光器を用いた分析に代表される同時分析型の場合には、目的の対象であるピークの他の波長についても測定データが同時に取得されるので、他の波長でのデータを用いた再計算により分析結果を良としたり、他の波長でのデータとの比較により、元素間補正に使用される分光干渉情報を得ることができる。このように、同時分析型高周波プラズマ発光分析に適用するのは有用である。
【0090】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0091】
(1)上述した実施例では、エシェル型の高周波プラズマ発光分析を例に採って説明したが、エシェル型以外の同時分析型の高周波プラズマ発光分析であってもよい。また、同時分析型の高周波プラズマ発光分析以外にも、シーケンシャル型の高周波プラズマ発光分析であってもよい。さらに、高周波プラズマ発光分析以外の分析であって、分析パラメータを設定して、その分析パラメータに基づいて所定の分析を行うものであれば、特に限定されない。例えば、固相反応用のレジン粒を反応容器に入れて、試薬や溶媒を反応容器に注入して固相反応を進行させて、レジン粒内部に生成された化合物を分析するクロマトグラフィー分析装置にもこの発明は適用することができる。その他に、熱分析熱量計や、放射線で例えば食品中の異物を検出する放射線異物検出装置や、粘度分布測定装置や、におい識別装置などの分析装置にも適用することができる。
【0092】
(2)上述した実施例を実行するのに、ステップS1〜S10を実行させるための分析処理プログラムや、ステップS1〜S10を実行させるためのプログラムを記録した分析処理記憶媒体を用いてもよい。分析処理プログラムの場合には、かかるプログラムを電気通信回線(例えばRS−232C規格のケーブルやLAN(Local Area Network)ケーブル)を介して分析装置にダウンロード(取得)して、そのプログラムをパーソナルコンピュータで構成された分析処理制御部40に実行させればよい。分析処理記憶媒体の場合には、上述した分析処理プログラムをROMやRAMなどに代表される記憶媒体に予め記憶させておいて、その記憶媒体内に記憶されたプログラムを分析処理制御部40に読み取って実行させればよい。
【0093】
(3)上述した実施例では、測定データを新たに測定して取得する必要がなく、新たなる分析条件を設定して分析を行うことで分析結果が良となる場合には、新たなる分析パラメータを再設定して、今回の分析結果を再計算したが、必ずしも再設定および再計算の機能を備える必要はない。
【0094】
(4)上述した実施例では、提示された今回の問題点および解決方法を出力するのにモニタなどに代表される表示手段を出力手段として備えたが、出力印刷する手段(例えばプリンタ)であってもよい。また、モニタやプリンタを分析装置に対して外付けにして、外付けされたモニタやプリンタに分析装置内の解決方法提示部が出力データを送信してもよい。
【0095】
(5)上述した実施例でも述べたように、第1情報記憶部43または第2情報記憶部45のいずれか一方を、あるいは第1情報記憶部43および第2情報記憶部45を、最新の情報に書き換え可能に構成してもよい。このように構成する場合には、記憶部43,45にはROMでなくRAMを用いる。このように各記憶43,45を書き換え可能に構成することで、第1情報記憶部43の場合では分析結果判定部44は、第2情報記憶部45の場合では解決方法提示部46は、最新の情報を常に参照することができる。第1情報記憶部43の場合では分析結果の良否を正確に判定することができ、第2情報記憶部45の場合では否となる問題点を正確に見つけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施例に係る分析装置の概略を示すブロック図である。
【図2】実施例に係る分析処理方法のフローチャートである。
【図3】検量線の説明図である。
【図4】プロファイルの説明図である。
【図5】プロファイルの説明図である。
【図6】プロファイルの説明図である。
【図7】プロファイルの説明図である。
【図8】分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準の説明図である。
【図9】分析結果が否の場合において否となる過去の問題点およびその問題点に対する解決方法を互いに関連付けた情報の説明図である。
【図10】提示された今回の問題点および解決方法の表示に関する説明図である。
【図11】新たなる分析パラメータを設定する表示に関する説明図である。
【符号の説明】
【0097】
1 … 分析装置
41 … 分析パラメータ設定部
43 … 第1情報記憶部
44 … 分析結果判定部
45 … 第2情報記憶部
46 … 解決方法提示部
47 … モニタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析条件を設定する分析条件設定手段を備え、その分析条件設定手段で設定された分析条件に基づいて所定の分析を行う分析装置であって、分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準を予め記憶する第1情報記憶手段と、その第1情報記憶手段に記憶された判断基準に基づいて今回の分析結果の良否を判定する分析結果判定手段と、分析結果が否の場合において否となる過去の問題点およびその問題点に対する解決方法を互いに関連付けて情報を予め記憶する第2情報記憶手段と、その第2情報記憶手段に記憶された前記関連付けられた過去の問題点および解決方法の情報に基づいて今回の分析結果の問題点に対する解決方法を提示する解決方法提示手段とを備えることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分析装置において、前記測定データを新たに測定して取得する必要がなく、新たなる分析条件を設定して分析を行うことで分析結果が良となる場合には、前記解決方法提示手段によって提示された前記今回の問題点および解決方法のうちから、前記新たなる分析条件を選択して、その新たなる分析条件に基づいて今回の分析結果を再計算して、前記測定データを新たに測定して取得することなく新たなる分析結果を求めるように各手段を構成することを特徴とする分析装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の分析装置において、前記解決方法提示手段によって提示された前記今回の問題点および解決方法を表示する表示手段を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の分析装置において、前記第1情報記憶手段または/および前記第2情報記憶手段は、最新の情報に書き換え可能に構成されていることを特徴とする分析装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の分析装置において、前記所定の分析は、分析の基となる測定データを測定して、その測定データを一括して取得する分析であることを特徴とする分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載の分析装置において、多チャンネル型の検出器を備え、測定波長範囲内の測定データを同時に取得可能な同時分析型高周波プラズマ発光分析を行うことを特徴とする分析装置。
【請求項7】
設定された分析条件に基づいて所定の分析を行う分析工程を含んだ一連の分析処理を実行する分析処理方法であって、分析条件を設定する分析条件設定工程と、その分析条件設定工程で設定された分析条件に基づいて所定の分析を行う分析工程と、分析の基となる測定データの良否を判断するための判断基準に基づいて今回の分析結果の良否を判定する分析結果判定工程と、分析結果が否の場合において否となる過去の問題点およびその問題点に対する解決方法が互いに関連付けられているときにおいて、その関連付けられた過去の問題点および解決方法の情報に基づいて今回の分析結果の問題点に対する解決方法を提示する解決方法提示工程とを備えることを特徴とする分析処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の分析処理方法において、前記測定データを新たに測定して取得する必要がなく、新たなる分析条件を設定して分析を行うことで分析結果が良となる場合には、前記解決方法提示工程で提示された前記今回の問題点および解決方法のうちから、前記新たなる分析条件を選択して再設定する分析条件再設定工程と、その新たなる分析条件に基づいて今回の分析結果を再計算する再計算工程と、前記測定データを新たに測定して取得することなく新たなる分析結果を求める分析結果再導出工程とを備えることを特徴とする分析処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−24679(P2007−24679A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207256(P2005−207256)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】