説明

分析装置の運転制御方法

【課題】分析装置が転倒するなどのエラー状態の発生を検出して、分析精度の低下した結果を出力しない分析装置の運転制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】エラーが発生したことを検出して分析処理プログラムの実施を中止し、セットされている分析用デバイスの固有コードを書き込んで管理し、エラーから復帰したことを検出した際に、分析用デバイスが排出されたかをチェックし、分析用デバイスが排出されたことを検出して運転を再開するので、分析精度の低下した結果が出力されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料が入った分析用デバイスがセットされて、処理プログラムを自動で実施して前記試料の分析結果を出力する分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の分析装置としては、特許文献1に記載されたものがある。
これは、毛細管力が作用する隙のマイクロチャネル構造が内部に形成された分析用デバイスを使用している。血液のHDLなどを自動計測する場合には、試料液体である血液を分析用デバイスの注入口から毛細管力によって定量だけ吸い上げ、この分析用デバイスを分析装置にセットすると、軸心周りに分析用デバイスを回転させて加速、減速し、また軸心周りに分析用デバイスを正転,逆転させて攪拌して、取り込んだ定量の血液と定量の希釈液と混合して希釈し、試薬と希釈した試料とを反応させ、最終的には定量の反応試料の特定成分だけを前記分析用デバイスに形成された測定スポットにまで移送して、この測定スポットに検出光を照射し、前記測定スポットを透過した光を検出することでアクセスして定量分析を実現している。
【0003】
また、分析装置ではないが特許文献2には、転倒検出手段を備えた電気ストーブが記載されている。この電気ストーブは、転倒検出手段の検出出力を規定時間だけ空けて複数回読み取って、前後の読み取り結果が「転倒中」の場合には機器本体が転倒した状態にあると判定して通電を停止し、前の読み取り結果が「転倒中」で、後の読み取り結果が「正立」の場合には、ユーザーが機器本体を移動させるために機器本体を持ち上げて移動させた状態であると判断して通電を停止しないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−92390号公報
【特許文献2】特開平6−337121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような分析装置においては、分析用デバイスを分析装置にセットするだけで自動処理されて定量分析できる利便性がある。また、自動分析であるため分析のばらつきも少ない。しかし、分析中に前記分析用デバイスの姿勢が正常でなくなるような事態、具体的には運転中の分析装置が転倒したような場合には、前記測定スポットに向かって正常な反応試料の移送を期待できないため、分析精度を確保できない。
【0006】
また、軸心周りに分析用デバイスを高速回転(5000rpm〜8000rpm)させて分析用デバイスの前記マイクロチャネル経路中の内周側に位置している液体試料を、分析用デバイスの外周側へ遠心力で振り切って移動させたりしているので、分析用デバイスの前記注入口の周辺に付着した試料の血液は、前記遠心力によって前記注入口から飛び散って、前記分析用デバイスに設けられているキャップの内側の最外周に受け止めることによって分析装置の庫内に飛散して汚染しないように工夫されている。しかし、分析装置が運転中に転倒したような場合には、分析装置にセットされている分析用デバイスの前記キャップから試料の血液が流れ出て分析装置の庫内を汚染するような危険の発生が危惧される。
【0007】
そこで、特許文献2の転倒検出手段の技術を採用して、分析装置が転倒した場合には通電をオフして分析を終了するように構成することが考えられるが、分析装置が転倒して正立に復帰したような場合には分析を再開することになって、分析精度を確保できない。
【0008】
本発明は、分析装置が転倒するなどのエラー状態の発生を検出して、分析精度の低下した結果を出力しない分析装置の運転制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1記載の分析装置の運転制御方法は、試料がセットされた分析用デバイスに対して分析処理プログラムを実行して、前記分析用デバイスにアクセスして測定結果を読み取る分析装置において、前記分析処理プログラムでは、セットされている前記分析用デバイスの固有コードがメモリ装置に書き込んで管理している使用済み分析用デバイスの固有コードに一致しないかチェックして一致を検出しない場合に、セットされた前記分析用デバイスを軸心周りに回転させて前記液体試料を試薬と反応させると共に前記分析用デバイスの測定スポットに向かって移送し前記測定スポットに到着した反応試料にアクセスして分析結果を読み取る分析処理工程を実施し、エラーが発生したことを検出して前記分析処理プログラムの実施を中止し、セットされている前記分析用デバイスの固有コードを前記メモリ装置に書き込んで管理し、前記エラーから復帰したことを検出した際に、前記分析用デバイスが排出されたかをチェックし、前記分析用デバイスが排出されたことを検出して運転を再開することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2記載の分析装置の運転制御方法は、請求項1において、前記分析処理プログラムは、前記分析処理工程の前に、試料が血液などの液体試料の場合に分析装置の庫内を目標温度に近付ける前処理工程を実施し、前記分析処理工程の後に、前記分析処理工程で読み取った結果を外部へ出力する後処理工程を実施するよう構成され、前記エラーの発生を検出した工程が前記前処理工程または前記後処理工程の場合には、前記エラーから復帰したことを検出した際に、前記エラーの発生を検出したときの前記前処理工程または前記後処理工程に復帰することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この構成によると、エラーが発生したことを検出して前記分析処理プログラムの実施を中止するので、分析精度の低下した結果が出力されない。さらに、前記エラーから復帰したことを検出した際に、前記エラーの発生を検出した工程が前記分析処理工程であった場合には運転を中止するとともに、セットされている分析用デバイスの固有コードをメモリ装置に書き込んで管理してエラーが発生した分析用デバイスが排出されたことを検出して運転を再開するので、誤った分析用デバイスの再セットによる誤動作を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の分析装置の運転制御方法の工程図
【図2】同実施の形態の転倒エラー検出処理の工程図
【図3】転倒エラー検出が前処理工程あるいは分析処理工程の場合の処理工程図
【図4】転倒エラー検出が結果出力中あるいは次分析開始待機中の場合の処理工程図
【図5】転倒エラー検出がスリープモード中の場合の処理工程図
【図6】同実施の形態のヒータの電源回路図
【図7】同実施の形態のモータードライバとドアロック装置および転倒検出センサとマイクロコンピュータの関係図
【図8】同実施の形態の庫内の斜視図
【図9】同実施の形態の分析用デバイスを庫内にセットした状態の断面図
【図10】同実施の形態の信号処理系の構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の分析装置の運転制御方法を具体的な実施の形態に基づいて説明する。
図8〜図10は分析装置を示している。
分析用デバイス1は、微細な凹凸形状を表面に有するマイクロチャネル構造が片面に形成されたベース基板3と、ベース基板3の表面を覆うカバー基板4が、希釈液容器5などを内部にセットした状態で接合され、この接合されたものに保護キャップ2が取り付けられている。
【0014】
この分析用デバイス1を使用した分析工程の概要は、分析用デバイス1の注入口に試料液を点着した後に、保護キャップ2を閉じることによって希釈液容器5が移動して希釈液が流れ出す。この流れ出した希釈液で試料液を希釈して測定する。
【0015】
図8は分析装置100のドア103を開放した状態を示し、ターンテーブル101に分析用デバイス1をセットする様子を示しており、図9はドア103を閉じた状態を示している。
【0016】
分析装置100のターンテーブル101の上面には溝102が形成されており、分析用デバイス1をターンテーブル101にセットした状態では分析用デバイス1のカバー基板4と保護キャップ2に形成された回転支持部15,16が溝102に係合してこれを収容している。
【0017】
ターンテーブル101に分析用デバイス1をセットして、ターンテーブル101を回転させる前に分析装置100のドア103を閉じると、セットされた分析用デバイス1は、ドア103の側に設けられた可動片104によって、ターンテーブル101の回転軸心上の位置がバネ105の付勢力でターンテーブル101の側に押さえられて、分析用デバイス1は、ブラシレスモータ106によって回転駆動されるターンテーブル101と一体に回転する。107はターンテーブル101の回転中の軸心を示している。
【0018】
図10は分析装置100の構成を示す。
この分析装置100は、前記ブラシレスモータ106と、分析用デバイス1内の溶液を光学的に測定するための光学測定手段108と、ターンテーブル101の回転速度や回転方向および光学測定手段の測定タイミングなどを制御する制御手段109と、光学測定手段108によって得られた信号を処理し測定結果を演算するための演算部110と、演算部110で得られた結果を表示するための表示部111とで構成されている。
【0019】
ブラシレスモータ106は、ターンテーブル101を介して分析用デバイス1を回転軸心107の回りに任意の方向に所定の回転速度で回転させるだけではなく、所定の停止位置で回転軸心107を中心に所定の振幅範囲、周期で左右に往復運動をさせて分析用デバイス1を揺動させることができるように構成されている。
【0020】
光学測定手段108には、分析用デバイス1の測定スポットに検出光を照射するための光源112と、測定スポットにアクセスして信号を読み取る読み取り手段として分析用デバイス1を通過した透過光の光量を検出するフォトディテクタ113とを備えている。
【0021】
分析用デバイス1をターンテーブル101によって回転駆動して、前記注入口から内部に取り込んだ試料液を、回転軸心107を中心に分析用デバイス1を回転させて発生する遠心力と、分析用デバイス1内に設けられた毛細管流路の毛細管力を用いて、分析用デバイス1の内部で溶液を、最終的に前記測定スポットに向かって移送していくよう構成されている。
【0022】
なお、分析装置100は転倒検出センサ114を備えている。転倒検出センサ114は、図9に示したように分析用デバイス1をセットして分析装置のドア103を閉じた姿勢から、分析装置100が規定角度だけ傾きが発生したことを検出する。さらに、分析装置100はセットされた分析用デバイス1に記入されている固有コードとしてのバーコードを非接触で読み取る固有コード読み取り装置としてのバーコードリーダ115を備えている。
【0023】
ブラシレスモータ106をコントロールする制御手段109と、演算部110をマイクロコンピュータ116で実現した信号処理装置117は、図1に示すように構成されている。
【0024】
分析装置100の電源スイッチをオンすると、これを検出したマイクロコンピュータ116は、図1に示す分析処理プログラム118を実行する。
分析処理プログラム118は、前処理工程119と分析処理工程120と後処理工程121とで構成されている。
【0025】
前処理工程119は、分析装置100の各部を自己点検するセルフテスト119aと、庫内を保温するためにドア103などに取り付けられたヒータ122に通電して目標温度(37℃程度)に近付ける保温動作119bと、分析用デバイス1が図9に示したようにセットされたかを繰り返し読み取る装着待ち検出119cとで構成されている。
【0026】
前記セルフテスト119aとは、ヒータ122または温度ヒューズ123の断線チェック、光源112とフォトディテクタ113のチェック、転倒検出センサ114のチェックなどである。
【0027】
図6はヒータ122の電源回路を示す。
ヒータ122の電源回路は、ヒータ122と温度ヒューズ123および第1のスイッチ素子124の直列回路で構成されている。第1のスイッチ素子124は、前記マイクロコンピュータ116からの制御信号S1によってオン−オフが制御される素子である。この場合、ヒータ122または温度ヒューズ123の断線チェックは、次のように実行されている。
【0028】
まず、第1のスイッチ素子124をオフ状態にして、温度ヒューズ123と第1のスイッチ素子124との接続点Pの電圧を読み取って、そのレベルに応じて「正常」「機器エラー」を判定する。ヒータ122ならびに温度ヒューズ123が共に断線していない場合には、電源電圧Vccにほぼ等しくなり、この場合は「正常」と判定する。ヒータ122または温度ヒューズ123が断線している場合には、前記接続点Pが0ボルトになり、この場合は「機器エラー」と判定する。
【0029】
次に第1のスイッチ素子124をオン状態にして、前記接続点Pの電圧を読み取って、そのレベルに応じて「正常」「機器エラー」を判定する。前記接続点Pが0ボルトであれば第1のスイッチ素子124が「正常」と判定する。前記接続点Pが電源電圧Vccにほぼ等し場合には第1のスイッチ素子124が故障している「機器エラー」と判定する。
【0030】
光源112とフォトディテクタ113のチェックは、光源112を点灯させてそのときのフォトディテクタ113での受光量のレベルが規定値である場合には「正常」と判定し、前記受光量のレベルが規定値でない場合には「機器エラー」と判定する。
【0031】
転倒検出センサ114のチェックは、分析装置100が正立姿勢にあることを検出して「正常」と判定する。転倒姿勢にあることを検出して「機器エラー」と判定する。
セルフテストをパスすると、分析装置100の庫内が分析中に所定温度(37℃程度)に近づくように第1のスイッチ素子124を制御して保温動作119bを実行する。保温動作119bを開始後には、分析用デバイス1がターンテーブル101にセットされたを繰り返し検出する装着待ち検出状態119cに切り換わる。前記マイクロコンピュータ116は、ドア103の開閉状態を検出しているドアスイッチ125の状態を読み取って、ドア103が開状態から閉状態へ反転したことを検出して分析用デバイス1がターンテーブル101にセットされたと判定して前処理工程119を終了して分析処理工程120へ移る。
【0032】
図7はブラシレスモータ106の駆動回路を示している。分析処理工程120では、前記マイクロコンピュータ116がモータードライバ126を介してブラシレスモータ106の回転を制御する。モータードライバ126には第2のスイッチ素子127を介して電源電圧Vccが印加されている。
【0033】
なお、ドア103が閉じられた状態ではマイクロコンピュータ116がモータードライバ126を介してブラシレスモータ106に通電するよりも先に、ドア103を閉状態にロックする。具体的には、図8に示したロックレバー128が動かないようにドアロック装置129の電磁プランジャ(図示せず)へ通電する。
【0034】
第2のスイッチ素子127は、転倒検出センサ114が「規定角度未満の傾き状態」と判定している場合にオン状態に切り換えられる。また、転倒検出センサ114のセンサ信号は前記マイクロコンピュータ116にも供給されている。転倒検出センサ114のセンサ信号を検出したマイクロコンピュータ116は、分析処理工程120の最中だけでなく、その他の工程においても転倒エラーが発生したと認識して、「転倒エラー」が発生したと認識した処理工程に応じて決められたエラー処理を実行するよう構成されている。
【0035】
このようにして分析処理工程120では、ターンテーブル101にセットされた分析用デバイス1を正転、反転、振動させながら試料を試薬と反応させると共に前記測定スポットに向かって移送し、第2のスイッチ素子127をオンして前記測定スポットに到着した反応試料に検出光を透過させてフォトディテクタ113によって透過光の光量を検出する。また、分析用デバイス1を回転中には、分析用デバイス1に表示されているバーコードをバーコードリーダ115が読み取ってマイクロコンピュータ116がメモリ装置130に書き込む。これによって分析処理工程120を終了する。分析処理工程120を終了する際にはドアロック装置129が解除される。
【0036】
なお、上記のようにメモリ装置130に使用済み分析用デバイスの固有コードを蓄積することによって、分析処理工程120の開始時にバーコードリーダ115が分析用デバイス1から読み取った最新の固有コードと前記蓄積した使用済み分析用デバイスの固有コードとを照合して、使用済み分析用デバイスの固有コードの中に一致する固有コードを検出した場合には分析処理工程120を終了するよう構成されている。
【0037】
また、分析処理工程120の最中には回転中の分析用デバイス1から輻射される赤外線を固定側から赤外線センサ131によって非接触で検出して、ベース基板3の温度が目標温度(37℃程度)になるようにマイクロコンピュータ116が第1のスイッチ素子124を介してヒータ122への通電を制御して保温動作119bを実行している。
【0038】
上記の分析処理工程120を終了した後の後処理工程121の結果出力133では、マイクロコンピュータ116は、フォトディテクタ113の読み取った光量に基づいて、演算部110において成分量を計算し表示部111に成分量を表示する。さらに、演算部110の計算結果をプリンタ132によってプリントアウトする。
【0039】
プリントアウトを完了したマイクロコンピュータ116は、次回の測定開始かどうか(次分析開始待機中134)を規定時間にわたって検出する。具体的には、マイクロコンピュータ116は、ドアスイッチ125の状態を読み取って、ドア103が閉状態から開状態へ反転し、さらに開状態から閉状態に反転したことを検出して分析用デバイス1がターンテーブル101に再セットされたと判定して、分析処理工程120を再実行する。規定時間内に分析用デバイス1の再セットを検出しなかった場合には、スリープモード135に移行する。
【0040】
スリープモード135は、ヒータ122とブラシレスモータ106への通電だけをオフする運転モードである。
前記転倒エラーを検出した場合にマイクロコンピュータ116が実行するエラー処理を、図2〜図4に基づいて上記の各処理工程毎に説明する。
【0041】
図2はマイクロコンピュータ116の前記転倒エラーを処理するメインルーチンを示している。
転倒検出センサ114のセンサ信号に基づいて前記転倒エラーを検出したマイクロコンピュータ116は、ステップS1において工程フラグ136と日時をメモリ装置130に記憶する。工程フラグ136とは、転倒エラーの検出のタイミングが分析処理プログラム118の何れの段階の途中に発生したのかを示すもので、ここでは前処理工程119のセルフテスト中に発生したことを検出した場合には“a”が記録されるとする。前処理工程119の保温動作119b中に発生したことを検出した場合には“b”が記録され、前処理工程119の装着待ち検出中に発生したことを検出した場合には“c”が記録されるとする。
【0042】
分析処理工程120で転倒エラーを検出した場合には“d”が工程フラグ136として記録される。後処理工程121で転倒エラーを検出した場合には、プリンタ出力を完了するまでに転倒エラーを検出した場合には“e”が工程フラグ136として記録され、 プリンタ出力を完了してから次回の測定開始かどうかを検出している間に転倒エラーを検出した場合には“f”が工程フラグ136として記録され、スリープモード135中に転倒エラーを検出した場合には“g”が工程フラグ136として記録される。
【0043】
ステップS2では、ブラシレスモータ106とヒータ122への通電をオフすると共に、ドアロック装置129をロック状態にセットし、エラー表示ならびに必要に応じてアラームを出力する。
【0044】
ステップS3では、転倒検出センサ114のセンサ信号に基づいて前記転倒エラーから復帰した正立状態に復帰したかをチェックする。正立状態に復帰したことを検出した場合には、ステップS2で発生したエラー表示ならびにアラームをステップS4で解除するとともに、転倒履歴を表示する。
【0045】
ステップS5では、ステップS1で記録した工程フラグ136に基づいて図3〜図5のルーチンが実行される。
工程フラグ136が“a”“b”“c”の何れかの場合には、図3に示すステップS13において、ドア103が閉状態であることを確認した後に、セルフテスト119aと同じテスト内容の再セルフテスト137を実施する。再セルフテスト137によってステップS14で「機器エラー」と判定された場合にはステップS15で「転倒ダメージエラー」と判定し、ステップS16で分析装置100を終了停止する。ステップS14で「正常」と判定された場合には保温動作119bへ移る。
【0046】
工程フラグ136が“d”の場合には、図3に示すステップS11において、バーコードリーダ115が読み取った分析用デバイス1の固有コードをメモリ装置130に不良分析用デバイスとして書き込む。次にステップS12において、分析用デバイス1(不良分析用デバイス)が取り外されたかをチェックし、不良分析用デバイスが取り外されたことを検出するとステップS13を実行する。
【0047】
なお、ステップS12では具体的には、バーコードリーダ115が分析用デバイス1から読み取った最新の固有コードと、ステップS11においてメモリ装置130に書き込まれた不良分析用デバイスに一致していないことを検出して不良分析用デバイスが取り外されたと判定している。
【0048】
工程フラグ136が“e”の場合には、図4に示すステップS21において、分析結果を表示部111に再表示し、次にステップS22において、ステップS12と同じにして分析用デバイス1が取り外されたかをチェックし、分析用デバイス1が取り外されたことを検出するとステップS23を実行する。ドア103が閉状態であることを確認した後に再セルフテスト137を実施する。再セルフテスト137によってステップS24で「機器エラー」と判定された場合にはステップS25で「転倒ダメージエラー」と判定し、ステップS26で分析装置100を終了停止する。ステップS24で「正常」と判定された場合には次分析開始待機中134へ移る。
【0049】
工程フラグ136が“f”の場合には、図4に示すステップS23を実行する。
工程フラグ136が“g”の場合には、図5に示すステップS31を実行する。ステップS31では、ドア103が閉状態であることを確認した後に再セルフテスト137を実施する。再セルフテスト137によってステップS32で「機器エラー」と判定された場合にはステップS33で「転倒ダメージエラー」と判定し、ステップS34で分析装置100を終了停止する。ステップS32で「正常」と判定された場合にはスリープモード135へ移る。
【0050】
このように「転倒ダメージエラー」を検出した工程に応じて、分析工程120よりも手前の前処理工程119において「転倒ダメージエラー」を検出した場合には、再度のセルフチェック137を経て保温動作119bへ自動復帰して分析処理工程120を実行して、分析結果を結果出力133で出力するので、分析精度を確保した結果を迅速に出力できる。
【0051】
分析工程120よりも後の後処理工程121の結果出力133において「転倒ダメージエラー」を検出した場合には、その回の良好な分析精度の結果をステップS21で測定結果を迅速に再出力するとともに、再度のセルフチェック137を経て次分析開始待機中134に自動復帰する。
【0052】
分析工程120よりも後の後処理工程121の次分析開始待機134において「転倒ダメージエラー」を検出した場合には、ステップS24での再セルフテスト137をパスした場合に限って次分析開始待機134に復帰するので、速やかに次回の分析を実施することができる。
【0053】
また、分析工程120よりも後の後処理工程121のスリープモード135において「転倒ダメージエラー」を検出した場合には、ステップS32での再セルフテスト137をパスした場合に限ってスリープモード135に復帰するので、速やかに次回の分析を実施することができる。
【0054】
分析工程120において「転倒ダメージエラー」を検出した場合には、ステップS11において分析用デバイスの固有コードをメモリ装置130に書き込んでブラックリストを作成し、分析用デバイス1が取り外されたことをステップS12において検出した場合に限って、再度のセルフチェック137を経て保温動作119bへ自動復帰して分析処理工程120を実行して、「転倒ダメージエラー」時の分析用デバイス1の後処理工程121を実行しないので、不正確な分析精度の結果が出力されないものである。
【0055】
さらに、「転倒ダメージエラー」を検出した場合には、ステップS2においてドア103がドアロック装置129によってロック状態にセットされているため、ステップS16,S26,S34の何れかの終了停止状態では、特別な解除動作を実施しなければドア103を開放することができないように構成されているため、分析装置の庫内を汚染するような危険の発生を回避できる。
【0056】
上記の実施の形態では、エラーの発生の検出手段として転倒検出センサ114を設け、検出しているエラーが転倒エラーであったが、一連の動作中の温度を検出する温度センサをエラーの発生の検出手段として一連の動作中の異常な温度検出によるエラーを検出するように構成した場合や、一連の動作中の振動を検出する振動センサをエラーの発生の検出手段として一連の動作中の異常な振動検出によるエラーを検出するように構成した場合も同様である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、生物などから採取した液体の成分分析の精度の向上に寄与する。
【符号の説明】
【0058】
1 分析用デバイス
2 保護キャップ
3 ベース基板
4 カバー基板
5 希釈液容器
100 分析装置
103 ドア
101 ターンテーブル
106 ブラシレスモータ
108 光学測定手段
109 制御手段
110 演算部
111 表示部
112 光源
113 フォトディテクタ
114 転倒検出センサ
115 バーコードリーダ(固有コード読み取り装置)
116 マイクロコンピュータ
117 信号処理装置
118 分析処理プログラム
119 前処理工程
119a セルフテスト
119b 保温動作
119c 装着待ち検出
120 分析処理工程
121 後処理工程
122 ヒータ
125 ドアスイッチ
129 ドアロック装置
130 メモリ装置
132 プリンタ
133 結果出力中
134 次分析開始待機中
135 スリープモード中
136 工程フラグ
137 再セルフテスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料がセットされた分析用デバイスに対して分析処理プログラムを実行して、前記分析用デバイスにアクセスして測定結果を読み取る分析装置において、
前記分析処理プログラムでは、セットされている前記分析用デバイスの固有コードがメモリ装置に書き込んで管理している使用済み分析用デバイスの固有コードに一致しないかチェックして一致を検出しない場合に、セットされた前記分析用デバイスを軸心周りに回転させて前記液体試料を試薬と反応させると共に前記分析用デバイスの測定スポットに向かって移送し前記測定スポットに到着した反応試料にアクセスして分析結果を読み取る分析処理工程を実施し、
エラーが発生したことを検出して前記分析処理プログラムの実施を中止し、セットされている前記分析用デバイスの固有コードを前記メモリ装置に書き込んで管理し、
前記エラーから復帰したことを検出した際に、前記分析用デバイスが排出されたかをチェックし、前記分析用デバイスが排出されたことを検出して運転を再開する
分析装置の運転制御方法。
【請求項2】
前記分析処理プログラムは、
前記分析処理工程の前に、試料が血液などの液体試料の場合に分析装置の庫内を目標温度に近付ける前処理工程を実施し、
前記分析処理工程の後に、前記分析処理工程で読み取った結果を外部へ出力する後処理工程を実施するよう構成され、
前記エラーの発生を検出した工程が前記前処理工程または前記後処理工程の場合には、前記エラーから復帰したことを検出した際に、前記エラーの発生を検出したときの前記前処理工程または前記後処理工程に復帰する
請求項1記載の分析装置の運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−33415(P2011−33415A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178480(P2009−178480)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】