説明

分析装置

【課題】異なるサンプル容器における全血試料に対しても、必要最小限の潜り込み量となるように、プローブ先端の挿入深さを設定でき、コンタミネーションの発生を未然に防止する。
【解決手段】試料3を貯留した試料容器2A,2B内に挿入されて試料3を吸引採取するプローブ4と、該プローブ4の試料容器2A,2B内への挿入深さを制御するプローブ位置制御部7と、試料容器2A,2Bの種類を識別する容器識別部10と、試料容器2A,2Bの種類とプローブ4による試料3の吸引位置情報とを対応づけて記憶する記憶部11とが備えられ、プローブ位置制御部7が、容器識別部10により識別された試料容器2A,2Bの種類に応じて記憶部11から読み出された吸引位置情報に基づいてプローブ4を制御する分析装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関し、特に、血漿成分および血球成分の分析を行う血液分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の血液分析装置としては、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている自動化学分析装置が知られている。
これらの自動化学分析装置は、全血試料を貯留した試料容器を静置すると、血球成分が沈降して血漿成分から分離するために、血球成分を吸引採取することができなくなる不都合を防止するために、血球成分を測定する測定項目におけるノズルの挿入深さを、他の測定項目におけるノズルの挿入深さよりも大きくするものである。これにより、血球成分を測定する測定項目においては、他の測定項目におけるよりもノズルが深く挿入されるので、静置により沈降した血球成分までノズルの先端を到達させることが可能となる。
【特許文献1】特開平11−316239号公報
【特許文献2】特開2000−46843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、全血試料を貯留するサンプル容器の大きさが変化する場合には、静置により沈降する血球成分と血漿成分との界面位置が変動するため、特許文献1,2の自動化学分析装置による方法では、以下の問題がある。
【0004】
すなわち、特許文献1,2の自動化学分析装置において、血球成分の液面位置が変化する場合に対応するためには、全てのサンプル容器について、血球成分の液面位置よりも深くノズルの先端を挿入できるように、血球成分を測定する測定項目におけるノズルの挿入深さを血球成分の液面位置よりも十分に深く設定しておかなければならない。この場合に、ノズルの全血試料内への潜り込み量が大きくなると、ノズルと全血試料とが必要以上に接触することとなり、コンタミネーションの問題が発生するという不都合が考えられる。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、異なるサンプル容器における試料に対しても、必要最小限の潜り込み量となるように、プローブ先端の挿入深さを設定でき、コンタミネーションの発生を未然に防止することができる分析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、試料を貯留した試料容器内に挿入されて試料を吸引採取するプローブと、該プローブの試料容器内への挿入深さを制御するプローブ位置制御部と、試料容器の種類を識別する容器識別部と、試料容器の種類とプローブによる試料の吸引位置情報とを対応づけて記憶する記憶部とが備えられ、前記プローブ位置制御部が、容器識別部により識別された試料容器の種類に応じて記憶部から読み出された吸引位置情報に基づいてプローブを制御する分析装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、容器識別部の作動により試料容器の種類が識別され、識別された試料容器の種類に基づいて記憶部内が検索され、識別された試料容器の種類に対応するプローブによる試料の吸引位置情報が読み出される。読み出されたプローブの吸引位置情報は、プローブ位置制御部に送られ、プローブの挿入深さが制御される。試料の量は、試料容器毎に予め定められているので、試料容器の種類を判別することにより、必要最小限の潜り込み量となるようにプローブによる試料の吸引位置を設定することができる。その結果、プローブと試料との不必要な接触を防止して、コンタミネーションの発生を未然に防止することができる。
【0008】
上記発明においては、試料が全血試料からなり、前記記憶部に、血球成分を吸引採取する場合のプローブによる試料の吸引位置情報が記憶されていることが好ましい。
このようにすることで、試料容器の種類をキーとして記憶部内に記憶されている血球成分を吸引採取する場合のプローブによる試料の吸引位置情報を検索することができ、試料容器が変動しても、適正な吸引位置にプローブを配置して、血球成分を確実に吸引採取することが可能となる。
【0009】
また、上記発明においては、試料の液面を検出する液面検知部を備え、前記プローブ位置制御部が、血球成分以外を分析する場合は前記液面検知部により検知した液面位置情報に基づいてプローブの挿入深さを制御することが好ましい。
このようにすることで、血球成分以外を分析する場合には、液面検知部の作動により試料の液面が検出され、プローブ位置制御部が、検知された試料の液面位置情報に基づいてプローブの挿入深さを制御する。血球成分以外の血漿あるいは血清等の液面位置は、静置等により変動しないので、検出した液面位置情報そのものを使用して確実にプローブによる試料の吸引位置を設定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異なるサンプル容器における試料に対しても、必要最小限の潜り込み量となるように、プローブ先端の挿入深さを設定でき、コンタミネーションの発生を未然に防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る分析装置について、図1および図2を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る分析装置は、血液分析装置1であって、図1に示されるように、試料容器2A,2Bに挿入されて、試料容器2A,2B内に貯留されている全血試料3を吸引採取するプローブ4と、該プローブ4を全血試料3の吸引位置まで移動させるプローブ駆動装置5と、プローブ4内の圧力を制御する圧力制御部6と、該プローブ駆動装置5および圧力制御部を制御するプローブ制御部(プローブ位置制御部)7と、測定項目を入力させる入力部8と、試料容器2A,2Bに付された識別符号等の識別情報を読み取る読取部9と、読み取られた識別情報に基づいて試料容器2A,2Bの種類を識別する容器識別部10と、全血試料3の吸引位置を記憶する記憶部11と、試料容器2A,2B内の全血試料3の液面を検知する液面センサ21とを備えている。
【0012】
試料容器2A,2Bは、種類の異なるものであり、その口径および深さが相違している。各試料容器2A,2B内に収容される全血試料3の量は、試料容器2A,2Bごとに予め定められている。
【0013】
プローブ4は、圧力制御部6によって内圧を制御され、先端を全血試料3に潜り込ませた状態で内圧を低下させることで、全血試料3を内部に吸引採取し、内圧を増加させることで内部の全血試料3を吐出することができるようになっている。
識別符号は、例えば、試料容器2A,2Bに貼付されたバーコード(図示略)により設定され、読取部9はバーコードリーダにより構成されている。
【0014】
容器識別部10は、バーコードの識別情報と、試料容器2A,2Bの種類とを対応づけて記憶しており、読み取られたバーコードに基づいて試料容器2A,2Bの種類情報を出力することができるようになっている。
【0015】
また、記憶部11には、試料容器2A,2Bの種類情報と、各試料容器2A,2Bにおける吸引位置情報とが対応づけて記憶されている。そして、試料容器2A,2Bの種類情報を入力されると、対応する試料容器2A,2Bにおける吸引位置情報が検索されて出力するようになっている。
【0016】
試料容器2A,2Bにおける吸引位置情報としては、各試料容器2A,2Bに所定量の全血試料3が貯留されたとき、所定時間の静置後に分離した血漿成分3Aと血球成分3Bとの界面の平均的な位置よりも若干下方の位置情報(図中、矢印dの位置情報)が設定されている。
【0017】
液面センサ12は、図1では試料容器2A,2Bの半径方向外方から液面位置を検出するセンサを例示しているが、これに限定されるものではなく、プローブ4とともに移動する間に液面位置を検出する接触式あるいは非接触式のセンサのいずれを採用してもよい。
【0018】
プローブ制御部7は、入力部8から入力された測定項目情報と、液面センサ12により検出された液面位置情報と、記憶部11から送られてくる吸引位置情報とに基づいてプローブ駆動装置5を制御するようになっている。
具体的には、図2に示されるように、まず、入力部8から入力された測定項目情報が、血球成分3Bの測定か否かを判断する(ステップS1)。
【0019】
測定項目情報が血球成分3Bの測定ではない場合には、プローブ制御部7は、液面センサ12を作動させて血漿成分3Aの液面位置を検出し(ステップS2)、検出した液面位置の直下にプローブ4による血漿成分3Aの吸引位置を設定する(ステップS3)。そして、プローブ駆動装置5を作動させてプローブ4を設定された吸引位置まで下降させる(ステップS4)。
【0020】
この状態で圧力制御部6を作動させ、プローブ4内の圧力を低下させて血漿成分3Aを吸引する(ステップS5)。試料容器2A,2B内の全血試料3は、血球成分3Bが沈降して2層に分離しているので、液面直下の全血試料3を吸引することにより血球成分3B以外の成分、すなわち、血漿成分3A(あるいは血清成分)を吸引することが可能となる。
【0021】
一方、測定項目情報が血球成分3Bの測定である場合には、プローブ制御部7は液面センサ12からの液面位置情報を使用することなく、容器識別部10を作動させることにより、読取部9により読み取られた識別情報に基づいて試料容器2A,2Bの種類を識別する(ステップS6)。そして、識別された試料容器2A,2Bの種類をキーとして記憶部11内の吸引位置情報が検索され、プローブ4による血球成分3Bの吸引位置を設定する(ステップS7)。
【0022】
すなわち、容器識別部10により識別された試料容器2A,2Bの種類に基づいて、試料容器2A,2B内に形成される血球成分3Bとそれ以外の成分3Aとの界面直下の位置にプローブ4による吸引位置が設定される。そして、以降、上記ステップS4,S5が行われる。これにより、血球成分3Bが吸引される。
【0023】
このように、本実施形態に係る血液分析装置1によれば、全血試料3から血球成分3Bを吸引採取するときには、試料容器2A,2Bを識別して試料容器2A,2B毎に設定された吸引位置までプローブ4を下降させるので、異なる試料容器2A,2Bに貯留された全血試料3の血球成分3Bをも確実に吸引することができる。このとき、吸引位置を各試料容器2A,2Bごとに定められた血球成分3Bとそれ以外の成分3Aとの界面の位置より若干下方に配置しているので、血球成分3Bを吸引する際の全血試料3へのプローブ4の潜り込み量を必要最小限に抑え、プローブ4と全血試料3との不必要な接触を防止して、コンタミネーションの発生を未然に防止することができる。
【0024】
また、本実施形態に係る血液分析装置1によれば、全血試料3から血球成分3B以外の成分3Aを吸引採取するときには、液面を検出してプローブ4による血漿成分3Aの吸引位置を設定するので、より正確にプローブ4の全血試料3内への潜り込み量を設定し、プローブ4と全血試料3との不必要な接触を防止して、コンタミネーションの発生を未然に防止することができる。
【0025】
なお、本実施形態においては、血球成分3B以外の成分を吸引採取するときには、液面センサ12により液面を検出することとしたが、これに代えて、この場合においても血球成分3Bの吸引採取と同様に、試料容器2A,2Bの種類に対応づけて吸引位置を設定しておくことにしてもよい。このようにすることで、液面センサ12を使用する必要がなく、接触式の液面センサ12を利用する場合のコンタミネーションの問題、および、非接触式の液面センサ12を利用する場合の外来ノイズの問題の発生を未然に防止することができる。
【0026】
また、本実施形態においては、測定項目の判断後に、血球成分3Bの測定項目が入力されている場合にのみ試料容器2A,2Bの種類を判別することとしたが、これに代えて、まず試料容器2A,2Bの種類を判別してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る分析装置を示すブロック図である。
【図2】図1の分析装置による試料の採取方法を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
1 血液分析装置(分析装置)
2A,2B 試料容器
3 全血試料(試料)
3A 血漿成分
3B 血球成分
4 プローブ
7 プローブ制御部(プローブ位置制御部)
10 容器識別部
11 記憶部
12 液面センサ(液面検知部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を貯留した試料容器内に挿入されて試料を吸引採取するプローブと、
該プローブの試料容器内への挿入深さを制御するプローブ位置制御部と、
試料容器の種類を識別する容器識別部と、
試料容器の種類とプローブによる試料の吸引位置情報とを対応づけて記憶する記憶部とが備えられ、
前記プローブ位置制御部が、容器識別部により識別された試料容器の種類に応じて記憶部から読み出された吸引位置情報に基づいてプローブを制御する分析装置。
【請求項2】
試料が全血試料からなり、
前記記憶部に、血球成分を吸引採取する場合のプローブの吸引位置情報が記憶されている請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
試料の液面を検出する液面検知部を備え、
前記プローブ位置制御部が、血球成分以外を分析する場合は前記液面検知部により検知した液面位置情報に基づいてプローブの挿入深さを制御する請求項2に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−322317(P2007−322317A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154634(P2006−154634)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】