説明

分枝型ポリ乳酸ポリマーとその製法

ポリラクチドポリマーに長鎖の分枝を導入するために、エポキシ機能性アクリルポリマーと反応させた。アクリルポリマーは、ゲル化又は極めて架橋度の高い構造を持つリスクが殆ど無しに、ポリラクチドポリマーにコントロールできる量の分枝を導入するための順応性のある手段となる。分枝したポリラクチドポリマーは優れたレオロジー的特性を有し、様々な溶融加工の用途により容易に加工できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2004年6月23日出願の米国仮出願60/582,156の恩恵を受けている。この発明は、レオロジー的性質を変化させたポリ乳酸ポリマー及びこれらポリ乳酸ポリマーの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸ポリマー(ポリ乳酸又はPLAとしても知られている。)に対する商業的関心は急速に高まっている。もし何らかの方法で改変させなければ、PLAポリマーは直鎖状分子であり、熱可塑性物質の性質を持つ。これらは様々なフィルム及び繊維などの産物を作る際に有用である。PLAは再生可能な資源から得ることが出来て(乳酸はデキストロースのような植物炭化水素より製造できる)また、生物分解性があるという特筆すべき利点を持っている。しかしながら、これらのポリマーのレオロジー的性質により、或る種の物へ応用するために加工することが困難である。加工上に困難があるために、これらのポリマーを用いた応用範囲はこれまで限られていた。例えば、押し出し成型の場合、レオロジー的特性が劣るために、ネックイン及び不安定な延伸性(延伸共鳴及び端部ジグザグ)のような現象が起こる。レオロジー的特性が劣るために、成型品を作製するのが非常に困難であり、また操作窓が極端に狭いので、押し出された発泡体の破壊をもたらす。
【0003】
主要な関心対象であるレオロジー的な性質は、しばしば"溶融強度"と表される溶融弾性である。概して、熱可塑性ポリマーは、直ちに加工できるためにかなりの低剪断粘度を持つ溶融体を形成する。同時に、溶融したポリマーは充分な強度、及び/又は寸法安定性を持たねばならず、この性質により望みの形が作られた時その形が保たれる、また幾つかの例においては、この性質は、冷却し、固くなるまで保たれる。一般的な規則として、熱可塑性樹脂の溶融強度は、分子量が増すにつれて増加する。しかしながら、分子量が増加すると、剪断粘度も増加し、従って、溶融強度の改善による利点は、もともとポリマーを成型するためにより大きな力が必要となることで相殺される。より大きな力を必要とすると、最低限、ポリマーを加工するための高電力消費が要求される。
このことは、幾つかの例において、より重量のある、より高価な設備を必要とすることになる、あるいは、そうでなければ、加工速度を低下させなければならない。さらに、分子量が増加すると、必要となる加工温度を上げることが要求され、このことはポリマーの分解を促進させる。
【0004】
従って、PLAの加工特性を改善する試みが行われ、ある種の手段により長鎖の分枝を導入することに集中されてきた。例えば、ラクチドをエポキシ化した脂肪又は油と共重合すること(特許文献1)や二環式ラクトンコモノマーと共重合すること(特許文献2)が試みられ、またPLAを過酸化物と反応させること(特許文献3及び4)や重合化の際ある種の多機能性イニシエーターを用いること(特許文献5〜8)が提案されてきた。
【0005】
【特許文献1】USP5,359,026
【特許文献2】WO02/100921
【特許文献3】USP5,594,095
【特許文献4】USP5,798,435
【特許文献5】USP5,210,108
【特許文献6】USP5,225,521
【特許文献7】GB2277324
【特許文献8】EP632081
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、不幸なことに、これらのどの方法も充分に満足のいくものではなかった。幾つかの例では、このポリマーのレオロジー的な性質は期待した程改善されなかった。他の例では、レオロジー的性質は改善されたが製造工程をコントロールすることが困難であり、再現性良く望みの産物を製造することが困難であった。またある例では、分枝剤と単環エステル又は炭酸塩との反応性が異なるため、反応システムにおいて共重合が上手く行かぬと言う結果になる。上記のことは、特にラクチドの場合当てはまる。さらに他の例においては、分枝を起こすに要求される段階が重合を阻害するということもある。この様な場合、重合時間を増すことになり、産物の品質にむらがあり、また他の問題を引き起こす。
【0007】
ラクチドが二環式ラクトンコモノマーと共重合する場合、ポリマーの性質は良いが、コポリマーは高価であり、ゲル化しない様注意が必要である。この場合、共重合体の性質はコモノマー濃度により敏感に変わり、期待するレオロジー的性質を得るには注意深いコントロールが必要である。さらに、二環式ラクトンはラクチドと共重合するので、別々に製造したポリマーを改変するためには、この方法は適さない。大部分の場合、特別な産物としてコポリマーを製造しなければならない。
都合良く予想可能で、再現性の良い特性を持って製造できる直鎖型PLA樹脂と比較して、改善されたレオロジー的性質をもつ溶融加工可能なPLAポリマーを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様として、本発明は、末端水酸基若しくはカルボン酸基、又は末端水酸基及びカルボン酸基の両反応基を持つポリラクチド樹脂と、1分子当たり平均約2〜約15個の遊離エポキシ基を持つアクリルポリマー又はコポリマーとの反応産物からなる、長鎖の分枝を持つ溶融加工可能なポリラクチド樹脂である。
【0009】
第2の態様として、本発明は、溶融加工可能なポリラクチド樹脂とアクリルポリマー又はコポリマーとの混合物を該ポリラクチド樹脂のガラス転移温度以上まで加熱する工程からなる方法であって、該ポリラクチド樹脂が少なくとも40℃のガラス転移温度を有し、かつ末端水酸基若しくはカルボン酸基、又は末端巣酸基及びカルボン酸基の両反応基を有し、該アクリルポリマー又はコポリマーが1分子当たり平均約2〜約15個の遊離エポキシ基を持つ溶融加工可能なポリラクチド樹脂に長鎖分枝を導入する方法である。この第2の態様の方法は、第1の態様の樹脂を製造する上で有用である。
【0010】
本発明は分枝型のPLA樹脂を製造するために、驚く程柔軟性があり、効果的な方法を提供する。もし望むならば、標準的な溶融加工工程としてこの分枝反応を組み込むことができる。
本発明により、高濃度のアクリルポリマー又はコポリマーを用いた場合でも、最小限のゲル化又はゲル化なしで、産物のレオロジー的性質を良くコントロールすることができる。分枝型PLA樹脂は対応する分枝のない樹脂と比較して、改変されたレオロジー的性質を持ち、様々な用途に溶融加工可能である。例えば、分枝型ポリマーは、対応する直鎖型樹脂と比べ、押し出し塗工の際、ネックインが減り、膜安定性の増加を示し、またフィルム及びシート押し出し、発泡体、吹き込み成型、及び押し出し発泡体操作の際、より容易に加工できる。
【0011】
他の態様として、本発明は(1)末端水酸基若しくはカルボン酸基又は末端水酸基及びカルボン酸基の両反応基を有する溶融加工可能ポリラクチド樹脂と、(2)1分子当たり平均2〜15個の遊離エポキシ基を有する固体アクリルポリマー又はコポリマーとの乾式混合物である。この乾式混合物を様々な溶融加工操作により加工して、ポリラクチド樹脂に溶融操作の工程で長鎖の分枝を導入することが出来て、その結果別々な分枝及び溶融加工は不必要となる。乾式混合物を用いることで、さらに溶融加工操作の間の計量段階を、除く又は単純化し、何時も同じ産物を形成するのに役立つ。
【0012】
第4の態様として、本発明は遊離エポキシ基をもつPLA樹脂である。このPLA樹脂は、有利には、PLA樹脂(開始ポリラクチド樹脂)と、1分子当たり平均約2〜約15個の遊離エポキシ基を持つアクリルポリマー又はコポリマーとの反応産物であって、開始ポリラクチド樹脂1モルに対し、アクリルポリマー又はコポリマーが約0.5〜約20モルの反応産物からなる。この態様におけるエポキシド含有PLA樹脂は、特に"マスターバッチ"材料として有用であり、希望する分枝レベルを得るために、溶融加工段階において非分枝ポリマーと調合し、融合することができる。さらに、エポキシド含有PLA樹脂は、複合シートの共押し出し及び同様の応用における、反応性のある相溶化剤、又は反応性のある"連結層"として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の目的のために、互換性を持って、"ポリラクチド"、"ポリ乳酸"及び"PLA"は構造−OC(O)CH(CH)−の繰り返し単位を持つポリマーを示すために、これらの繰り返し単位が如何にポリマーの中に形成されたかに関係なく使われる。PLA樹脂は好ましくは、少なくとも50重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%又は少なくとも98重量%のこの繰り返し単位を含有する。
【0014】
好ましいPLA樹脂はラクチドのポリマー又はコポリマーである。特別のヒドロキシ酸、特に乳酸のようなα−ヒドロキシ酸、は2個の光学対掌体として存在し、これらは一般的に"D"及び"L"対掌体と呼ばれる。D−又はL−乳酸のいずれかが合成工程で製造されるが、発酵工程では通常(常にではない)L対掌体の産生が有利である。ラクチドは、同様に様々な対掌体型、即ち、2個のL−乳酸分子の二量体である"L−ラクチド"、2個のD−乳酸分子の二量体である"D−ラクチド"、及び1個のL−乳酸分子と1個のD−乳酸分子から作られる二量体である"メソ−ラクチド"、として存在する。さらに、融解温度約126℃を持つL−ラクチドとD−ラクチドの50/50混合物は屡々"D,L−ラクチド"と呼ばれる。これらいずれの型のラクチド、又はこれらの混合物、からなるポリマーも本発明において有用である。光学純度が高くなる(即ち、D−又はL−対掌体のいずれか優勢な方の対掌体濃度が高くなる)と、出来上がったポリマーはより結晶性になる傾向がある。半結晶性のポリマーを望む場合は、単独のL−又はD−乳酸対掌体単位、又はL−及びD−乳酸単位の混合物で、一方の対掌体(L−又はD−)が重合化される繰り返し単位の最大限約5モル%まで、好ましくは約3モル%まで、より好ましくは2モル%まで、特に好ましくは約1.6モル%までであることが好ましい。特に好まれる半結晶性コポリマーは98.4〜100%のL−異性体及び0〜1.6%のD−異性体(乳酸繰り返し単位の全モル数をベースとして)を含有する。より非結晶性のポリマーを望む場合は、コポリマー中の優勢な対掌体繰り返し単位の、他の対掌体に対する割合は、約80:20〜約98:2で、好ましくは88:12〜98:2で、特に好ましくは約90〜98%L−対掌体及び対応して約10〜2%D−対掌体(乳酸対掌体繰り返し単位の全モル数をベースとして)である。一般的に、対掌体比の選択は特定の応用、及び/あるいは希望するコポリマーの性質に依って変わるであろう。一般的に、結晶性が高くなるにつれ、熱的性能、寸法安定性及びコポリマーの係数が高くなる。
【0015】
好ましいラクチドは乳酸を重合しプレポリマーを作製し、その後プレポリマーを脱重合し同時に生成したラクチドを溜去することで作られる。この工程は、USP5,274,073に記載されているので参照されたい。
【0016】
PLA樹脂は、さらに、(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラメチレンオキシド等の)アルキレンオキシド又は環状ラクトン、又は炭酸塩などの、ラクチド又は乳酸と共重合可能な他のモノマー由来の繰り返し単位を持つことも可能である。これら他のモノマー由来の繰り返し単位はブロックとして、及び/又はランダムな並びとして取り込むことができる。これら他の繰り返し単位は、PLA樹脂の約10重量%まで、好ましくは約0〜5重量%まで、うまく構成要素とすることができる。ポリマーのレオロジー的性質をコントロールすることがより困難となるので、いかなるこのようなコモノマーがPLA樹脂に分枝ポイントを導入しないことが好ましい。
【0017】
PLA樹脂はまた、重合化の工程で分子量をコントロールするためにしばしば用いられる、イニシエーター化合物の残基を含んでも良い。このようなイニシエーターとして適切な化合物としては、例えば、水、アルコール類、グリコールエーテル類、様々な種類のポリヒドロキシ化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、水酸基で終わるブタジエンポリマー等)がある。
【0018】
しかしながら、PLA樹脂は、平均、分子当たり、約0.5〜ら約2.0の末端カルボキシル基を持つことが好ましい。このようなPLA樹脂は1又は2以上のカルボキシル基、又は1又は2以上のカルボキシル基と1又は2以上の水酸基をもつイニシエーター化合物を用いて、都合良く作られる。乳酸又は乳酸の二量体又はオリゴマーは特に適切なイニシエーターである。PLA樹脂の末端カルボキシル基はコポリマー上のエポキシ基と優先的に反応し、望みの分枝状のPLA樹脂が合成されると信じられている。他方、平均的に分子当たり約1以上のカルボキシル基を持つPLA樹脂は、クロスリンクを引き起こしやすく、ゲルを形成する。PLA樹脂が、1分子当たり約0.8〜約1.5の末端カルボキシル基を、より好ましくは約0.9〜約1.25の末端カルボキシル基を、特に好ましくは約0.95〜約1.1の末端カルボキシル基を持つことで、分枝形成の容易さとゲル排除の間のバランスは、容易に達成できる。このようなPLA樹脂は、また、末端非カルボキシル基、典型的には末端水酸基を持つこともできる。これらの末端水酸基はカルボキシル基よりもエポキシ基に対して反応性が低い。末端カルボキシル基がコポリマーと反応するが、末端水酸基は本質的に反応しないままであるように、反応条件は簡単に選ぶことができる。このことにより、クロスリンク及びゲル化を避けて分枝化を可能にする。
【0019】
PLA樹脂は、有利に、アクリルポリマー又はコポリマーとの反応で分枝化する前に、以下に述べるGPC法を用いた測定により、約10,000から、好ましくは約30,000から、より好ましくは約40,000から、約500,000まで、好ましくは約300,000まで、より好ましくは250,000までの数平均分子量を持つ。
【0020】
ラクチドを重合させPLAを合成するために特に適切な工程がUSP5,247,059、同5,258,488及び同5,274,073に記載されている。この好ましい重合工程には、通常揮発分除去段階があり、その段階においてポリマーの遊離ラクチド含量が、好ましくは1重量%まで、より好ましくは0.5重量%まで減少する。安定した融解状態のラクチドポリマーを合成するために、重合工程終了後触媒を除く、又は不活性化することが好ましい。これは触媒を沈殿させる、又は好ましくは、ポリマーに有効量の不活化剤を加えることで実現することができる。触媒不活性化は、好ましくは揮発分除去の段階前に、重合容器に不活化剤を加えることで適切に行うことができる。適切な不活化剤はカルボン酸を含有し、中でもポリアクリル酸が好ましい:即ち、立体障害のあるアルキル、アリール及びフェノールヒドラジド;脂肪族及び芳香族のモノ−及びジ−カルボン酸のアミド類;環状アミド、脂肪族及び芳香族アルデヒドのヒドラゾン及びビス−ヒドラゾン、脂肪族及び芳香族のモノ−及びジ−カルボン酸のヒドラジド、ビス−アシル化ヒドラジン誘導体、亜リン酸塩化合物及び複素環化合物などである。
【0021】
アクリルポリマー及びコポリマーは、23℃で固体であること、1分子当たり平均約2〜約15個(例えば、約3〜約10個又は約4〜約8個)の遊離エポキシ基を含むこと、及び、好ましくは、少なくとも1個の付加されたモノマーと共重合した、少なくとも1個のエポキシ機能性を持つアクリル酸塩又はメタクリル酸モノマーの重合産物であることで特徴づけられる。
アクリルポリマー又はコポリマーのエポキシ基当たりの分子量は、約200〜500又は約200〜400の様に、約150〜約700が適切である。アクリルポリマー又はコポリマーの数平均分子量は、約1500〜5000又は約1800〜3000のように、約1000〜6000が適切である。
【0022】
エポキシ機能性のモノマーは、エポキシ基及び少なくとも1個のアクリル基(CH=CH−C(O)−)又はメタクリル基(CH=C(CH)−C(O)−)を有する。このようなエポキシ機能性モノマーの例としては、アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルがある。付加されたモノマーとしては、例えば、メタクリル酸モノマー、アクリル酸モノマー、ビニル芳香属性モノマー、又はこれら2個又は3個の混合である。
付加されたモノマーがPLA樹脂と反応する反応基、特に樹脂上の末端水酸基又は末端カルボキシル基と反応する反応基を欠く場合、付加されたモノマーは"非機能性"である。付加されたモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロへキシル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、スチレン、及びビニルナフタレン等、又はこれらの2又は3個の混合物。好ましいコポリマーはエポキシ機能性のアクリル酸又はメタクリル酸モノマー、少なくとも1個付加されたアクリル又はメタクリルモノマー、及びスチレンのようなビニル芳香属性モノマーである。
【0023】
アクリルポリマー又はコポリマーはUSP6,552,144に記載された重合工程に従い、便利に合成される。
安定なアクリルコポリマーはJohnson Polymers, Inc.より、Joncryl(R)と言う商品名で商業的に入手できる。特に好ましい製品としては、Joncryl(R)4300,Joncryl(R)4368、及びJoncryl(R)4369ポリマーがある。
【0024】
長鎖の分枝の形成するために、PLA樹脂のモル当たり、約0.5モルまでのアクリルポリマー又はコポリマーが用いられる。約0.5モル/モルまでの濃度において、平均2個のPLA樹脂がそれぞれアクリルポリマー又はコポリマー分子と連結する(平均的に、それぞれのPLA樹脂分子は、単官能基のようにコポリマーと末端カルボキシル基を使って反応すると仮定して)。実際上、反応産物の分布は、連結しないPLA樹脂分子、単一PLA樹脂分子と1個のアクリルポリマー又はコポリマー分子との付加体、また2個の連結したPLA樹脂分子から、アクリルポリマー又はコポリマーのエポキシ機能性に等しい分子数まで連結したPLA樹脂を含有する連結分子にまで至る。アクリルポリマー又はコポリマーの量がPLA樹脂のモル当たり約0.5より減少すると、均一な混合物とはならない傾向となり、高度に分枝した産物と、余り分枝してない産物をより多く含むようになる。長鎖の分枝型PLA樹脂産物を望むならば、PLA樹脂のモル当たり約0.02〜約0.45モルのアクリルポリマー又はコポリマーを用いることが好ましい。長鎖分枝型産物を合成する他の適切な範囲は、PLA樹脂モル当たり約0.05〜約0.4モルのアクリルポリマー又はコポリマーである。PLA樹脂モル当たりのアクリルポリマー又はコポリマー上のエポキシ基の当量数は約0.1〜約4の範囲であり、特に約0.3〜約2.7の範囲である。PLA樹脂モル当たり1当量以上のエポキシドを用いた場合、分枝型産物は幾つかの遊離エポキシ基を有するであろう。
【0025】
PLA樹脂モル当たり、0.5モル以上のアクリルポリマー及びコポリマーの量があっても、更に分枝は増えない。その代わり、1モルのPLA樹脂と1モルのアクリルポリマー又はコポリマーの直鎖型反応産物の割合が増す。この傾向は、多くの他の分枝反応において常に問題となるゲル生成を抑える。結果として合成された付加体は遊離エポキシ基を有し、以下に述べるように、多くの応用に適している。
【0026】
エポキシを有するPLA樹脂付加体の合成能力は非常に有用であり、高濃度のアクリルポリマー又はコポリマーを用いて容易にマスターバッチを作ることができる。この様なマスターバッチはPLA樹脂のモル当たり約0.5、1.0又は2.0モルのアクリルポリマー又はコポリマーから、PLA樹脂のモル当たり、約20、特に約8及び、特別に約3モルまでのアクリルポリマー又はコポリマーで合成できる。出来上がったマスターバッチは、主として1:1直鎖型反応産物と、少量のより多く分枝した産物を有する。また、マスターバッチは、他のPLA樹脂分子と反応性がある遊離エポキシ基を有し、その後の溶融加工操作においてさらなる分枝を合成する。PLA樹脂モル当たり1モル以上のアクリルポリマー又はコポリマーを用いた場合、マスターバッチはまた、幾つかの反応してないアクリルポリマー又はコポリマーを有する。
【0027】
これらのマスターバッチ産物は、溶融加工するPLA樹脂に適した温度において、溶融流動可能であるという利点を有する。その後、マスターバッチ産物は、望みのレオロジー的性質を持つ改変されたPLA樹脂を合成するために、溶融加工操作において添加されたPLA樹脂と融解ブレンドできる。このマスターバッチ法はいくつかの利点を有し、利点としては寸法上の精度が改善されること、及びアクリルポリマー又はコポリマーの濃度が局所的に上がることを回避できること(及び高度に分枝した反応産物濃度が局所的に上がることを回避できること)及び、PLA樹脂にするためにより容易な、そして均一な混合ができること等である。加えたPLAはマスターバッチ中の未反応エポキシ基と反応して、さらなる分枝を導入する。
【0028】
エポキシ機能性のあるPLA樹脂は反応性のある相溶化剤としてもまた有用である。これは、通常は相溶化しないが、エポキシ基と反応性のある機能的反応基を有する2種又はそれ以上の異なる樹脂を溶融混合することができる。溶融加工状態(又は、単に高温)において、機能的反応基はマスターバッチ上のエポキシ基と反応し、エポキシ機能性PLA樹脂があることで連結したグラフト重合体を形成する。カルボン酸とアミノ基を持つ樹脂は特に興味深い。この種の化合物としては、(改変されて反応基が導入された、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖型低密度ポリエチレン、実質的に直鎖のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、及びエチレン−スチレンインターポリマー等のような)カルボキシル−又はアミノ−機能性ポリオレフィン、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアクリル酸、(Huntsuman Chemicalsから入手可能なJeffamine(R)材料のような)末端アミノポリエーテル、末端カルボキシポリカーボネート及びポリエステル、及びポリ乳酸がある。
【0029】
同様に、エポキシ機能性PLA樹脂は、同時押し出しのように、非相溶性樹脂の接着に役立つ、連結層として用いることができる。前と同様、この樹脂は、エポキシ機能性PLA樹脂との結合位置を提供する、エポキシ反応性の官能基を持たねばならない。直前のパラグラフで記載したような樹脂は、この様にして互いに接着できる。
【0030】
アクリルポリマー又はコポリマーとPLA樹脂との反応は、通常、PLA樹脂のガラス転移温度以上の高温において行われる。反応温度約100〜250℃は、一般的に適当であり、約140〜220℃はPLA樹脂の末端分解を最小に押さえ、良好な反応速度を得るために好ましい。反応速度は温度により変わる。前記の加工温度において、約0.1〜20分、特に約0.2〜10分の反応時間で通常充分である。分枝した産物を合成する便利な方法として、PLA樹脂及びアクリルポリマー及びコポリマーを前記範囲内の混合温度にある押し出し機に加える。通常、混合物の押し出し機内滞在時間が上述の範囲になるよう、操作速度を選択する。
【0031】
分枝段階は、PLA樹脂を、例えば、繊維、フィルム、シート、発泡体、熱成型品又は型で作った品に加工するための、通常の溶融工程に組み込まれても良い。アクリルポリマー又はコポリマーは、溶融加工工程において、PLA樹脂と反応して希望の分枝を合成するに充分な時間をとって、加える。アクリルポリマー又はコポリマーは、幾つかの方法で加えることができる、即ち、別々な供給、前述のマスターバッチとして、又はPLA樹脂との乾式混合物がある。加工温度、滞在時間が充分であるならば、分枝反応は溶融加工段階で行われる。新規合成の分枝PLA樹脂は、その後、適切な金型を通して押し出される、又は、繊維、フィルム、シート、発泡体、熱成型品又は型で作った品等の、望みの加工品を作るために適切な型に注入される。溶融工程の間に分枝反応が完了しない条件であるなら、PLA製品は、その後、分枝反応を停止させるために、熱硬化される。
【0032】
さらに分枝を増やす、又は他の理由のために、アクリルポリマー又はコポリマーと併せて他の分枝試薬を用いることも可能である。パーオキシド分枝試薬は、アクリルポリマー又はコポリマー内の不純物となるモノマー又はオリゴマー物質と反応出来、またこれらの不純物をポリマーに結合できるので、パーオキシド分枝試薬を同時に用いることは特に興味を持たれる。このことで製品中の揮発物を減少させ、予期しない低分子量物質の生成を阻止することに役立つ。
【0033】
分枝型PLA樹脂は、好都合なことに、少なくとも約1.9〜約5、好ましくは少なくとも2.1〜約4、より好ましくは少なくとも約2.5〜約3.5の多重分散度指数(PDI、数平均分子量に対する重量平均分子量の比として定義され、以下に示すGPCで測定する)を示す。分枝型PLA樹脂は、好都合なことに、以下記載する条件の下で測定して、少なくとも約1.05、好ましくは少なくとも約1.2、より好ましくは少なくとも約1.4、特に約1.5より約2.0、好ましくは約1.8までのダイ膨張を示す。
【0034】
本発明の分枝型PLA樹脂は、繊維(人造繊維、単フィラメント繊維、混合紡糸、織物繊維、二成分繊維、及び織り糸等)、流延フィルム、吹き込みフィルム、(同時又は順次、2方向に引き延ばした2軸性配向フィルムなどの)配向膜などのフィルム、押し出し発泡体、吹き込み成型、圧縮成型、シート成型、注入成型、押し出し塗工、紙塗工 及び他の用途などの、様々な用途に有用である。一般的に、本発明の分枝型PLA樹脂は対応する直鎖型PLA樹脂が用いられる同じ用途に加えて、よりよいレオロジー的特性が望ましい他の用途に、用いることが可能である。分枝型PLA樹脂は、優れた剪断滅粘性及び/又は高い溶融張力が望まれる用途には特に有用である。
【0035】
本発明の分枝型PLA樹脂は、抗酸化剤、保存剤、触媒不活剤、安定剤、可塑剤、充填剤、核生成剤、全種類の染料、及び膨張剤を含め、あらゆる種類の添加剤と混合することができる。分枝型PLA樹脂は他の樹脂と混合出来て、また他の材料を薄板で覆ったり、同時押し出しして複雑なかたちを形成できる。
【0036】
本発明の分枝型PLA樹脂は、余分の直鎖ポリ乳酸ポリマーと混ぜ合わせ、注文通りのレオロジー的性質を持つ混合ポリマーを作ることができる。本発明の分枝型PLA樹脂は、ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカーボネート、ポリスチレニクス、ポリオレフィン等の他のポリマーと混合可能である。
【実施例】
【0037】
以下の実施例は本発明を例証するものであり、本発明を限定するものではない。すべての割合、パーセントは特に示さなければ重量による。
【0038】
実施例1〜4及び比較試料A
PLA樹脂Aは、1重量%のクロロホルム溶液として、30℃で相対粘度4.05を有する、88.6%L−及び11.4%D−ラクチドのコポリマーである。PLA樹脂Aは、約1個の末端カルボキシル基/分子及び1個の末端水酸基/分子を持つ。
そのMwは約218,000である。これらの実施例における分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより以下のように測定される:1.0gの試料を10mL塩化メチレンに溶かす。0.25mlの保存溶液を20mLバイアルに移し、5mLテトラヒドロフランで稀釈する。0.45ミクロン注射器フィルターを通して、試料を自動サンプラーバイアルに入れる。ポンプ及び自動サンプラーとしてWaters Alliance 2690液体クロマトグラフィーシステムを用いた。溶出液としてテトラヒドロフランを用い、流速は1mL/分であり、温度は35℃であった。注入容積は50μLであった。3個のWatersゲル浸透カラム(7.8X300mm Stryragel HR5, HR4及びHR1)を用いた。検出器はWaters Model410示差屈折率検出器である。データーの収集と、解析は、American Polymer StandardsCorporationから得た狭い分画の標準ポリスチレンを用いて作製した3次元キャリブレーションを用いて、Waters Empowersoftwareを搭載したパーソナルコンピューターで行った。
【0039】
実施例1〜4の分枝型PLA樹脂は、別々に、PLA樹脂A及びJoncryl(R)4368アクリルコポリマーを50mmの同時回転する2軸式押し出し機に加えることで合成した。Joncryl(R)4368アクリルコポリマーは、エポキシ基当たりの分子量が約285である約2000の数平均分子量を有し、また平均〜7個のエポキシ基/分子を有する。押し出し機の加熱ゾーンの温度設定は、ゾーン1は120℃、ゾーン2は170℃、ゾーン3は220℃、ゾーン4〜10は240℃、またゾーン11は236℃である。表1に示すように、成分比は様々である。反応物の押し出し機内での滞在時間を変えるために、以下に示すように供給速度は様々である。合成された分枝型PLA樹脂は押し出され、ペレット化する。分子量、相対粘度、溶融流速及びダイ膨張を測定する。比較のために、アクリルコポリマーの添加無しに同一条件でPLA樹脂Aを溶融加工した。表1に結果を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
*:本発明の実施例ではない。
1:ブレンドAの重量に基づく。
2:PLA樹脂モル当たりのアクリルコポリマーの近似的当量。これら値は、ポリスチレンを標準として用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより得たMn測定値から計算した。Mn測定のために、分子量が4000又はそれ以下の産物を無視した。Mn測定値は、PLAと標準ポリスチレンとの間の膨張差を考慮し、0.6を乗じて調整した。
3:1時間当たり押し出された混合物のポンド数。
4:粒子は100℃、真空下、一晩、100cc/分の窒素気流中の真空オーブン中で乾燥した。乾燥試料をオーブンから取りだし、栓をし、直ちに測定した。溶融流速は、210℃で、2.16Kgの重量のTinius Olsen Extrusion Plastometerを用いて、また直径約0.0825インチの金型を用いて測定した。試料粒子を装置の容器に入れ、負荷を与えるまえに5分間容器内に保った。各1分間の測定を少なくとも3回測定し平均したものを、溶融流速を計算するために用いた。ダイ膨張のための試料は溶融流速測定の間に集めた。約1インチ長の融解したポリマー撚糸を金型の所で切断し、冷却した。撚糸の直径を測定し、既知の金型直径で割り、ダイ膨張を得た。報告した結果は少なくとも5回の測定結果の平均値である。
5:標準ポリスチレンに対する相対値。
【0042】
溶融流速、ダイ膨張、相対粘度、分子量及び多重分散度測定値のすべては、これらの条件で、PLA樹脂が著しく分枝を起こしていることを示す。
【0043】
実施例5〜7及び比較試料B
PLA樹脂Bは、1重量%のクロロホルム溶液として、30℃で相対粘度3.04を有する、90.5%L−及び9.5%D−ラクチドのコポリマーである。このMwは約170,000である。PLA樹脂Bは約1末端カルボキシル基/分子及び1末端水酸基/分子を有する。
実施例5〜7の分枝型PLA樹脂は、実施例1〜4に記載されたと同一の方法で合成され、評価される。
比較のために、PLA樹脂Bを、アクリルコポリマーの添加無しに、同じ条件で溶融加工する。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

*:本発明の実施例ではない。1〜5:表1の注釈1〜5を参照。
前記同様、溶融流速、ダイ膨張、相対粘度、分子量及び多重分散度測定値のすべては、これらの条件で、PLA樹脂が著しく分枝を起こしていることを示す。
【0045】
実施例8〜10及び比較試料C
PLA樹脂Cは、1重量%のクロロホルム溶液として、30℃で相対粘度2.60を有する、93.1%L−及び6.9%D−ラクチドのコポリマーである。このMwは約124,000である。PLA樹脂Cは約1末端カルボキシル基/分子及び1末端水酸基/分子を有する。
実施例8〜10の分枝型PLA樹脂を、11加熱ゾーンを有するより小型の34−mm押し出し機を用いた以外は、実施例1〜4に記載した同一の方法で合成し、評価した。比較のために、PLA樹脂Cを、アクリルコポリマーの添加無しに、同じ条件で溶融加工する。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

*:本発明の実施例ではない。1〜4:表1の注釈1,2,4及び5を参照。
前記同様、分子量及び多重分散度測定値により、これらの条件で、PLA樹脂には著しい分枝が生じていることを示す。
【0047】
実施例11〜14及び比較試料D
PLA樹脂Dは、1重量%のクロロホルム溶液として、30℃で相対粘度2.52を有する、95%L−及び5%D−ラクチドのコポリマーである。このMwは約108,000である。PLA樹脂Dは約1末端カルボキシル基/分子及び1末端水酸基/分子を有する。
実施例11〜14の分枝型PLA樹脂は、実施例8〜10に記載されたと同一の方法で合成され、評価される。比較のために、PLA樹脂Dを、アクリルコポリマーの添加無しに、同じ条件で溶融加工する。結果を表4に示す。
【0048】
【表4】

*:本発明の実施例ではない。1〜4:表1の注釈1,2,4及び5を参照。
前記同様、分子量及び多重分散度測定値により、これらの条件で、PLA樹脂には著しい分枝が生じていることを示す。
【0049】
実施例15
一定量のPLA樹脂B及びJoncyl(R)4368アクリルポリマーを別々に、一晩、45℃真空オーブン中で乾燥する。乾燥材料を、回転刃を装着し、容量60cc3区画の混合容器を備えた、Brabender Plasticorder PL2100ミキサーを用いて混合する。回転刃の速度を、最大剪断速度〜150/秒に相当する、60rpmにセットする。99.5重量%のPLA樹脂Bを容器に加え、6分間210℃に加熱する。その後、0.5重量%のアクリルポリマーを加えて、9分間混合する。PLA樹脂とアクリルポリマー間の反応進行の間接的な表示として、混合の間の回転力を測定する。アクリルポリマー添加4.7分後、回転力は最大となる。
実験を混合温度225℃で繰り返すと、回転力はアクリルポリマー添加3.3分後に最大となる。240℃で繰り返すと、アクリルポリマー添加後2.1分で最大となる。
【0050】
実施例16〜20及び比較試料E
マスターバッチを、〜90,000のMnと〜170,000のMwを持つPLA樹脂Bのロット及びJoncryl(R)4368アクリルポリマーから、34−mm、11−加熱ゾーンを持つ押し出し機を用いて合成する。実施例16の場合、ゾーン1に対する加熱ゾーン温度は170℃、ゾーン2に対しては180℃、ゾーン3〜10に対しては200℃、そしてゾーン11に対しては220℃である。実施例17における加熱ゾーン温度は、最終ゾーンの温度が225℃である以外は、同一である。実施例16において、PLA樹脂を約20ポンド/時間の速度で供給し、アクリル樹脂を約2ポンド/時間の速度で供給する。実施例17において、供給速度はそれぞれ、18及び2ポンド/時間である。これはPLA樹脂モル当たり、約19.64当量のエポキシ基に対応する。
分枝剤の濃度が高いにも拘わらず、両材料は容易に押し出し機を通過する。
実施例17のマスターバッチを、PLA樹脂Bの更なる添加、混合を行い、実施例18〜20の溶解作業に用いる。
実施例18を合成するために、実施例17のマスターバッチとPLA樹脂Bを、同じ34−mm押し出し機上に4:96重量比で混合する。加熱ゾーン温度は、ゾーン1に対し150℃、ゾーン2に対し170℃、ゾーン3〜10に対し210℃及びゾーン11に対し235℃である。実施例19及び20においては、重量比がそれぞれ8:92及び15:85である以外は同一方法で合成する。混合比が異なるために、実施例19と20とでは分枝剤の濃度が異なる。比較のために、混合物のないストレートのPLA樹脂Bの一部を、同一条件で押し出し機を通して加工する。分子量及び多重分散度を表5に示す。
【0051】
【表5】

実施例18〜19の各々は、ゲル化の証拠として視覚的にシートを吟味するために、流延フィルム金型を通して押し出し、〜1mmのシートを作る。実施例20では、〜15milシートまで押し出す。実施例20は分子量が大きいので、薄いゲージまで下ろすことが出来ない。どのシート材料も著しいゲル化を示さない。
【0052】
ここで記載した発明には、発明の精神から離れることなく、多くの改変が可能であり、この有効範囲は添付の請求項で定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端水酸基若しくはカルボン酸基、又は末端水酸基及びカルボン酸基の両反応基を持つポリラクチド樹脂と、1分子当たり平均2〜15個の遊離エポキシ基を持つアクリルポリマー又はコポリマーとの反応産物からなる、長鎖の分枝を持つ溶融加工可能なポリラクチド樹脂。
【請求項2】
前記反応産物において、前記アクリルポリマー又はコポリマーが、開始ポリラクチド樹脂1モル当たり0.5モル以下である請求項1に記載のポリラクチド樹脂。
【請求項3】
前記アクリルポリマー又はコポリマーが、開始ポリラクチド樹脂1モル当たり0.05〜0.4モルである請求項2に記載のポリラクチド樹脂。
【請求項4】
前記開始ポリラクチド樹脂が、分子当たり平均0.8〜1.5個のカルボキシル基を含有する請求項2に記載のポリラクチド樹脂。
【請求項5】
前記開始ポリラクチド樹脂が、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィーによる測定で、数平均分子量が30,000〜250,000である請求項4に記載のポリラクチド樹脂。
【請求項6】
前記開始ポリラクチド樹脂が、1分子当たり平均0.8〜1.25個の末端カルボン酸基を有し、かつ前記アクリルポリマー又はコポリマーが、1分子当たり、平均2〜10個の遊離エポキシ基を有する請求項1に記載のポリラクチド樹脂。
【請求項7】
溶融加工可能なポリラクチド樹脂とアクリルポリマー又はコポリマーとの混合物を該ポリラクチド樹脂のガラス転移温度以上まで加熱する工程からなる方法であって、該ポリラクチド樹脂が少なくとも40℃のガラス転移温度を有し、かつ末端水酸基若しくはカルボン酸基、又は末端巣酸基及びカルボン酸基の両反応基を有し、該アクリルポリマー又はコポリマーが1分子当たり平均2〜15個の遊離エポキシ基を持つ溶融加工可能なポリラクチド樹脂に長鎖分枝を導入する方法。
【請求項8】
開始ポリラクチド樹脂に対するアクリルポリマー又はコポリマーのモル比が0.5以下である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
開始ポリラクチド樹脂に対するアクリルポリマー又はコポリマーのモル比が0.05〜0.4である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記開始ポリラクチド樹脂が、分子当たり平均0.8〜1.5個のカルボキシル基を含有する請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記開始ポリラクチド樹脂が、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィーによる測定で、数平均分子量が30,000〜250,000である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記開始ポリラクチド樹脂が、1分子当たり平均0.8〜1.25個の末端カルボン酸基を有し、かつ前記アクリルポリマー又はコポリマーが、1分子当たり、平均2〜10個の遊離エポキシ基を有する請求項7に記載の方法。
【請求項13】
遊離エポキシ基を有するポリラクチド樹脂。
【請求項14】
開始ポリラクチド樹脂と、1分子当たり平均2〜10個の遊離エポキシ基を持つアクリルポリマー又はコポリマーとの反応産物であって、開始ポリラクチド樹脂1モルに対し、アクリルポリマー又はコポリマーが0.5〜20モルの反応産物である請求項13に記載のポリラクチド樹脂。
【請求項15】
前記開始ポリラクチド樹脂が、分子当たり平均0.8〜1.5個のカルボキシル基を含有する請求項14に記載のポリラクチド樹脂。
【請求項16】
前記開始ポリラクチド樹脂が、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィーによる測定で、数平均分子量が30,000〜250,000である請求項15に記載のポリラクチド樹脂。
【請求項17】
前記開始ポリラクチド樹脂が、1分子当たり平均0.8〜1.25個の末端カルボン酸基を有し、かつ前記アクリルポリマー又はコポリマーが、1分子当たり、平均2〜10個の遊離エポキシ基を有する請求項16に記載のポリラクチド樹脂。
【請求項18】
末端水酸基又はカルボン酸基を有する溶融加工可能ポリラクチド樹脂と、1分子当たり平均2〜15個の遊離エポキシ基を有する固体アクリルポリマー又はコポリマーとの乾式混合物。
【請求項19】
ポリラクチド樹脂に対するアクリルポリマー又はコポリマーのモル比が0.5以下である請求項18に記載の乾式混合物。
【請求項20】
ポリラクチド樹脂に対するアクリルポリマー又はコポリマーのモル比が0.05〜0.4である、請求項19に記載の乾式混合物。
【請求項21】
前記ポリラクチド樹脂が、1分子当たり0.8〜1.5個の末端カルボン酸基を有し、かつ前記アクリルポリマー又はコポリマーが、1分子当たり、平均2〜10個の遊離エポキシ基を有する請求項18に記載の乾式混合物。
【請求項22】
請求項18〜20のいずれか一項に記載の乾式混合物を溶融加工することからなる、長鎖の分枝を有するポリラクチドの製法。
【請求項23】
請求項13〜17のいずれか一項に記載のポリラクチド樹脂と、及び、エポキシドに反応性の官能基を有する少なくとも1種の他の樹脂との混合物を溶融加工することからなる方法。
【請求項24】
前記少なくとも1種の他の樹脂が、複数のカルボキシル基を有する他のポリラクチド樹脂である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリラクチド樹脂が、互いに異なる少なくとも2種の他の樹脂と溶融加工された請求項23に記載の方法。
【請求項26】
その方法の溶融加工産物が、前記ポリラクチド樹脂と前記少なくとも2種の他の樹脂との相溶体である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1個の連結層を有する多層構造物であって、該連結層が、請求項13〜17のいずれか一項に記載のポリラクチド樹脂であって、互いに異なる樹脂から作られ、かつ、それぞれエポキシ機能性反応基を有する他の2層に挟まれた中間層である多層構造物。

【公表番号】特表2008−504404(P2008−504404A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518309(P2007−518309)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/022480
【国際公開番号】WO2006/002372
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(398074751)ネイチャーワークス・エル・エル・シー (8)
【Fターム(参考)】