説明

分離膜装置

【課題】 分離膜モジュールによる分離効率を向上できる分離膜装置を提供する。
【解決手段】 分離膜15を有する分離膜モジュール31と、分離膜15を透過する透過流体と分離膜15を透過しない非透過流体とからなる混合流体を分離膜モジュール31に供給する混合流体供給管35と、分離膜15を透過した透過流体を分離膜モジュール31の外部に導出する透過流体導出管37と、分離膜15で透過されなかった透過流体を含む混合流体を分離膜モジュール31の外部に導出する混合流体導出管39と、混合流体供給管37と混合流体導出管39にそれぞれ設けられた開閉バルブ35a、37a、39a、41aと、開閉バルブ35a、37a、39a、41aが閉とされた状態で、分離膜15で透過されなかった透過流体を含む混合流体を分離膜モジュール31の分離膜15に戻すための循環路41とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜装置に関し、特に、含水アルコールの脱水濃縮、天然ガス分離、石油プラントにおける異性体分離等に用いられる分離膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種ガスを含有する混合気体中から特定ガスを分離する分離膜装置や、含水アルコールから水分を除去する分離膜装置等が用いられている。これらの分離膜装置は、安全かつ簡便なことからその適用範囲が拡がり、各種燃焼機関をはじめ、食品工業や医療用機器、化学プラントや石油精製プラントの蒸留の一部代替、更には溶剤の回収処理、廃棄物処理等の分野でも注目されている。
【0003】
例えば、水素ガスを分離する分離膜装置としては、石油精製プラントにおいて発生するオフガスや、アンモニア合成プラントにおいて発生するパージガスからの水素ガスの回収などに、また二酸化炭素を分離する分離膜装置としては、燃費の向上およびパイプラインの腐食防止を目的に天然ガスに含まれる二酸化炭素の除去への応用が研究されている。さらに、酸素を分離する分離膜装置としては、医療機器、スポーツ機器、各種燃焼機関用として応用されている。
【0004】
従来の分離膜装置として、分離膜モジュールが直列に接続されたものが提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載された分離膜装置は、予熱器の後段に複数の分離膜モジュールを直列に接続して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−160482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の分離膜装置では、分離膜モジュールが直列に接続されているため、分離膜装置から排出される濃縮エタノール中のエタノール濃度を向上することができるものの、分離効率を高めるために、複数の分離膜モジュールを直列に接続する必要があった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、分離膜モジュールによる分離効率を向上できる分離膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の分離膜装置は、分離膜を有する分離膜モジュールと、前記分離膜を透過する透過流体と前記分離膜を透過しない非透過流体とからなる混合流体を前記分離膜モジュールに供給する混合流体供給管と、前記分離膜を透過した前記透過流体を前記分離膜モジュールの外部に導出する透過流体導出管と、前記分離膜で透過されなかった前記透過流体を含む混合流体を前記分離膜モジュールの外部に導出する混合流体導出管と、前記混合流体供給管と前記混合流体導出管とにそれぞれ設けられた開閉バルブと、該開閉バルブが閉とされた状態で、前記分離膜で透過されなかった前記透過流体を含む前記混合流体を前記分離膜モジュールの前記分離膜に戻すための循環路とを具備することを特徴とする。
【0009】
本発明の分離膜装置では、混合流体導出管の開閉バルブを閉め、混合流体供給管を介して分離膜モジュールに混合流体を供給し、分離膜モジュールに混合流体を溜め、混合流体
供給管の開閉バルブを閉め、この状態で、分離膜モジュールの分離膜を透過しなかった透過流体を含む混合流体を、循環路を介して分離膜に戻し、混合流体中の透過流体が分離膜を透過することにより、透過流体と非透過流体との分離を十分に行うことができ、分離膜モジュールによる分離効率を向上できる。
【0010】
また、本発明の分離膜装置は、前記分離膜で透過されなかった前記透過流体を含む前記混合流体中の前記透過流体または前記非透過流体の含有量を測定するセンサを具備する場合がある。このような分離膜装置では、分離膜で透過されなかった透過流体を含む混合流体中の透過流体または非透過流体の含有量がセンサにより測定されるので、例えば、混合流体中の分離膜を透過せずに残った透過流体の含有量を測定し、混合流体中における透過流体の含有量が一定以下になった場合に、混合流体導出管の開閉バルブを開として、殆ど非透過流体となった混合流体を分離膜モジュールから外部に導出することができ、センサにより混合流体中の透過流体または非透過流体の含有量を確認して、透過流体を十分に分離し、殆ど非透過流体となった混合流体を外部に導出でき、分離精度を向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分離膜装置では、分離膜モジュールの分離膜を透過しなかった透過流体を含む混合流体を、循環路を介して分離膜に戻し、混合流体中の透過流体が分離膜を透過することにより、透過流体と非透過流体との分離を十分に行うことができ、分離膜モジュールによる分離効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本形態の分離膜装置を示す説明図である。
【図2】分離膜モジュールを示すもので、(a)は分解斜視図、(b)は(a)の左側のチャンバ内の流体の流れを示す説明図、(c)は(a)の右側のチャンバ内の流体の流れを示す説明図である。
【図3】図2の分離膜単管を示すもので、(a)は分離膜単管の一部の断面図、(b)は(a)の一部を拡大して示す断面図である。
【図4】図2の分離膜モジュールのチャンバ形成体を90度回転させた状態を示すもので、(a)は分解斜視図、(b)は(a)の左側のチャンバ内の流体の流れを示す説明図、(c)は(a)の右側のチャンバ内の流体の流れを示す説明図である。
【図5】6本の分離膜単管を有する分離膜モジュールを示すもので、(a)は分解図、(b)は(a)の左側のチャンバ内の流体の流れを示す説明図、(c)は(a)の右側のチャンバ内の流体の流れを示す説明図である。
【図6】12本の分離膜単管を有する分離膜モジュールの分解図である。
【図7】分離膜装置における3個の分離膜モジュールの接続状態を示す説明図である。
【図8】3個の分離膜モジュールを高さ方向に積み重ねた分離膜装置を示す説明図である。
【図9】複数の分離膜単管内を混合流体が並列に流れる他の形態の分離膜装置を示す説明図である。
【図10】外側に分離膜を有する分離膜単管を用いたさらに他の形態の分離膜装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本形態の分離膜装置について図1を基に説明する。本形態の分離膜装置は、分離膜モジュール31を具備して構成されている。
【0014】
分離膜モジュール31には、分離膜を透過しうる透過流体と分離膜を透過しない非透過流体からなる混合流体を供給するための混合流体供給管35が接続されており、さらに、
分離膜モジュール31の分離膜を透過した透過流体を外部に導出する透過流体導出管37と、分離膜モジュール31の分離膜を透過しなかった透過流体を含む混合流体を外部に導出する混合流体導出管39とがそれぞれ接続されている。なお、透過流体とは、分離膜モジュール31の分離膜を通過した流体だけでなく、透過しうる流体も含めた概念である。従って、分離膜モジュール31の分離膜を透過しなかった流体には、透過流体を含んでいる。
【0015】
混合流体供給管35、透過流体導出管37および混合流体導出管39には、それぞれの管を開閉する開閉バルブ35a、37a、39aが設けられている。分離膜モジュール31に接続された透過流体導出管37は冷却装置43に接続され、この冷却装置43には、吸引装置(いわゆる真空状態に近づけるような真空装置)45が接続され、透過流体導出管37内を負圧としている。
【0016】
そして、混合流体中の透過流体の濃度を測定するセンサ47が、混合流体導出管39に設けられている。なお、混合流体中における透過流体の濃度を測定するセンサ47は、混合流体中における透過流体の濃度を測定できる位置であれば、混合流体導出管39に設ける必要はなく、後述する分離膜モジュール31のチャンバ内に設けても良い。また、本形態では、混合流体中における透過流体および非透過流体のうち少なくとも一方の濃度を測定するセンサ47を有していれば良い。
【0017】
分離膜モジュール31としては、水分を含んだ有機液体の脱水や数種類の有機液体から選択的に特定の液体の分離を行うもので、アルコール、例えば混合流体中の透過流体(水分)を分離除去して非透過流体(エタノール)を濃縮するものである。例えば、直径が約0.5nm(5Å)程度の分子レベルの細孔を有する分離膜を隔てて、供給側に供給したエタノールと水分とが混合した混合流体中の水分を、この分離膜で選択的に溶解および拡散させることにより、分離膜の透過側に蒸気として取り出す浸透気化法(透過気化法:パーベーパレーション(Pervaporation) 法:PV法)が用いられている。
【0018】
図1では、分離膜を透過した透過流体(水分:水蒸気)が吸引装置45で吸引され、冷却装置43で冷却され、水として排出されることになる。
【0019】
そして、本形態では、混合流体供給管35と混合流体導出管39とを連結する配管からなる循環路41が設けられており、分離膜モジュール31内の分離膜に一旦供給され、分離膜を透過せずに通過した透過流体を含む混合流体が、混合流体中における透過流体の濃度が一定以下になるまでの間、分離膜モジュール31の分離膜に戻されるようになっている。
【0020】
具体的には、混合流体供給管35の開閉バルブ35aよりも下流側と、混合流体導出管39の開閉バルブ39aよりも上流側とが、配管からなる循環路41により連結されており、循環路41には、開閉バルブ41aおよびポンプ42が設けられている。
【0021】
本形態の分離装置では、混合流体導出管39の開閉バルブ39aを閉め、混合流体供給管35を介して分離膜モジュール31内に混合流体を供給し、分離膜モジュール31内に混合流体を溜め、混合流体供給管35の開閉バルブ35aを閉め、循環路41の開閉バルブ41aが開とされ、ポンプ42を駆動することにより、分離膜モジュール31の分離膜を透過しなかった透過流体を含む混合流体を、循環路41を介して分離膜に戻す運転を行う。混合流体を循環路41を介して分離膜に戻す運転は、例えば、混合流体中の透過流体の含有量を測定し、透過流体の濃度が一定以下になるまで行う。いわゆるバッチ式の分離膜装置において、混合流体を循環路41を介して分離膜に供給することを繰り返すことにより、混合流体中の透過流体の含有量が次第に少なくなり、殆ど非透過流体からなる混合
流体が得られ、分離膜での透過流体と非透過流体との分離を十分に行うことができ、分離膜モジュール31による分離効率を向上できる。
【0022】
そして、例えば、混合流体中の透過流体の濃度が一定以下になると、ポンプ42の駆動を停止し、循環路41の開閉バルブ41aが閉とされ、透過流体導出管37の開閉バルブ37aが閉とされ、混合流体導出管39の開閉バルブ39aを開とし、殆ど非透過流体からなる混合流体が混合流体導出管39を介して分離膜モジュール31の外部に導出される。この際、分離膜モジュール31内に空気が導入されるように構成することにより、分離膜モジュール31内が負圧となることを防止でき、混合流体の混合流体導出管39からの導出を迅速に行うことができる。さらには、分離膜モジュール31内に強制的に空気を供給することにより、混合流体の混合流体導出管39からの導出を迅速に行うことができる。
【0023】
分離膜モジュール31は、例えば、図2に示すようなものを使用できる。図2(a)は分離膜モジュールの分解斜視図を示すもので、分離膜モジュールは両端が開口する4本の円筒状の分離膜単管1を有している。
【0024】
これらの4本の分離膜単管1は、それらの側面間が所定間隔をおいて並列に配列され、4本の分離膜単管1の両端部がそれぞれ単管固定板7に固定されている。さらに、4本の分離膜単管1は円筒状の収納管5内に収容され、この収納管5の両端もそれぞれ単管固定板7に固定されている。分離膜単管1と、収納管5と、単管固定板7とによりモジュール本体3が構成されている。
【0025】
なお、図2では、円筒状の分離膜単管1を用いたが、円筒状である必要はなく、例えば、断面が四角形でも良い。また、図2では、円筒状の収納管5を記載したが、円筒状である必要はなく、例えば、断面が四角形でも良い。
【0026】
分離膜単管1の両端部は、単管固定板7の挿入孔10内にそれぞれ挿入されて固定されている。単管固定板7の材質は、分離膜単管1を単管固定板7に流体が漏れることなく固定できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ゴム製とすることで分離膜単管1の固定時にかかる応力を軽減できる。
【0027】
モジュール本体3の単管固定板7にはそれぞれチャンバ2a、2b(以下、チャンバ2ということがある)が設けられており、チャンバ2a、2b内には、混合流体が複数の分離膜単管1内を直列に流れるように制御する仕切板6が設けられている。言い換えれば、仕切板6により、複数の分離膜単管1内を、流体が順次通過するように制御されている。さらに言い換えれば、複数の分離膜単管1は、チャンバ2a、2bで順次直列に接続されている。
【0028】
チャンバ2a、2bは、チャンバ形成体2a1、2b1と、該チャンバ形成体2a1、2b1に設けられたフランジ部2a2、2b2とを有しており、チャンバ2a、2bのフランジ部2a2、2b2の外周部に形成されている挿入孔8と、単管固定板7の外周部に形成されている挿入孔8とを合わせた状態で、挿入孔8内にボルトを挿入して締め付けることにより、チャンバ形成体2a1、2b1と単管固定板7とが確実に固定されている。なお、図2(a)ではフランジ部2a2、2b2と単管固定板7との固定方法はボルト締めであるが、金属製の留め具などを用いて固定してもよい。
【0029】
モジュール本体3の左側のチャンバ2a内に設けられた仕切板6は、チャンバ2a内を3つの部屋に分割しており、モジュール本体3の右側のチャンバ2b内に設けられた仕切板6は、チャンバ2b内を2つの部屋に分割しており、それぞれの部屋には、分離膜単管
1が連通している。
【0030】
すなわち、凹形状のチャンバ形成体2a1、2b1内に仕切板6が収容固定され、このチャンバ形成体2a1、2b1に、円板状のフランジ部2a2、2b2が、チャンバ形成体2a1、2b1の凹部を塞ぐように接合され、これにより、チャンバ形成体2a1、2b1内が仕切板6とフランジ部2a2、2b2とで仕切られ、複数の部屋が形成されている。円板状のフランジ部2a2、2b2には複数の分離膜単管1とそれぞれ連通する複数の貫通孔16、17が形成されている。
【0031】
なお、円板状のフランジ部2a2、2b2を用いることなく、チャンバ形成体2a1、2b1の外側にはみ出す環状のフランジ部とし、チャンバ形成体2a1、2b1内を仕切板6と単管固定板7とで仕切り、複数の部屋を形成しても良い。
【0032】
モジュール本体3の左側のチャンバ2aには、3つの部屋のうち一つの部屋に連通する混合流体供給管35が設けられ、他の一つの部屋に連通する混合流体導出管39が設けられている。混合流体供給管35から導入される混合流体は、例えば、エタノールと水とを含有するものであり、混合流体導出管39から外部に導出される混合流体は、例えばエタノールを高濃度で含む濃縮エタノールである。
【0033】
分離膜単管1の内部から外部へ透過した透過流体は、例えば水(水分)であり、この水は、収納管5に設けられた透過流体導出管37から導出されるようになっている。透過流体導出管37は1本に限らず、何本でも良い。
【0034】
なお、図2では、左側のチャンバ形成体2a1に混合流体供給管35と混合流体導出管39を設けた例について説明したが、例えば、左側のチャンバ形成体2a1に混合流体供給管35を設け、右側のチャンバ形成体2b1に混合流体導出管39を設けても良い。混合流体供給管35および混合流体導出管39は、配管という点から、チャンバ形成体2a1、2b1のいずれか一方に設けることが望ましい。
【0035】
分離膜単管1は、図3に示すように、多孔質の支持管13の内面に多孔質の中間層14を設け、この中間層14の内面に分離膜15を設けることにより構成されている。支持管13は、例えばセラミックからなり、中間層14は、例えば炭素粒子からなり、分離膜15は、例えばガラス状炭素から構成されている。
【0036】
そして、本形態の分離膜装置では、図2(a)に示したように、分離膜モジュール31の分離膜15で透過されなかった透過流体(水分)を含有する混合流体を、分離膜モジュール31の分離膜に供給する配管からなる循環路41を具備している。
【0037】
このような分離膜モジュール31では、例えば、エタノールと水とを含有する混合流体が、図2(a)の矢印で示すように、混合流体供給管35から左側のチャンバ2aの仕切板6で仕切られた部屋内に導入され、開閉バルブ35aが閉とされ、分離膜単管1a内を通過して、右側のチャンバ2bの仕切板6で仕切られた部屋内に導入され、同じ部屋内に連通する他の分離膜単管1b内を通過して、左側のチャンバ2aの仕切板6で仕切られた部屋内に導入され、同じ部屋内に連通する分離膜単管1c内を通過して、右側のチャンバ2bの仕切板6で仕切られた部屋内に導入され、同じ部屋内に連通する分離膜単管1d内を通過して、左側のチャンバ2aの仕切板6で仕切られた部屋内に導入され、センサ47により、混合流体導出管39の混合流体中における水の含有量を測定し、この水の含有量が一定以上の場合には、混合流体導出管39の開閉バルブ39aは閉のままであり、混合流体導出管39内の混合流体が循環路41を介して混合流体供給管35に戻され、再度、混合流体が分離膜モジュール31内の複数の分離膜単管1を直列に流れる。
【0038】
分離膜単管1(分離膜単管1a、1b、1c、1dを総称して分離膜単管1ということがある)内をエタノールと水とを含有する混合流体が通過する間に、水が分離膜15を透過して透過流体導出管37から排出され、分離膜15を透過しなかった水とエタノールを高濃度で含有する濃縮エタノールが、循環路41を介して分離膜単管1に戻される。
【0039】
そして、センサ47における混合流体中の水の含有量が一定以下となった場合には、混合流体導出管39の開閉バルブ39aが開とされ、混合流体導出管39からエタノール(混合流体)を高濃度で含有する濃縮エタノールが外部に導出される。図2(b)(c)にもチャンバ2a、2b内の混合流体の流れを記載した。
【0040】
このような分離膜モジュール31では、チャンバ形成体2a1、2b1内の仕切板6により、流体が4本の分離膜単管1内を直列に流れるため、言い換えれば、混合流体が、分離膜単管1a、分離膜単管1b、分離膜単管1c、分離膜単管1dの順で流れ、従来のU字管を用いて複数の分離膜単管を接続する場合と比較して単純構造であり、製造時の自動化も容易であり、容易に製造することができる。
【0041】
また、フランジ部2a2、2b2と単管固定板7とを連結するボルトを外すことにより、の分離膜単管1同士の直列接続が解除できるため、分離膜単管1が破損、或いは劣化した際の交換作業が容易であり、また、分離膜単管1内に堆積した水垢等の除去作業も容易に行うことができる。
【0042】
また、分離膜モジュール31は、チャンバ形成体2a1、2b1を回転することにより、チャンバ形成体2a1、2b1の仕切板6で混合流体が複数の分離膜単管1内を流れる順序を変更することができる。
【0043】
すなわち、図4は、モジュール本体3の単管固定板7に対して、図2の状態からチャンバ形成体2a1、2b1をそれぞれ90度回転させて固定した状態を示している。この分離膜モジュール31では、例えば、被分離液体であるエタノールと水とを含有する混合流体が、図4(a)の矢印で示すように、混合流体供給管35から左側のチャンバ形成体2a1の仕切板6で仕切られた部屋内に導入され、分離膜単管1d内を通過して、右側のチャンバ形成体2b1の仕切板6で仕切られた部屋内に導入され、同じ部屋内に連通する他の分離膜単管1a内を通過して、左側のチャンバ形成体2a1の仕切板6で仕切られた部屋内に導入され、同じ部屋内に連通する分離膜単管1b内を通過して、右側のチャンバ形成体2b1の仕切板6で仕切られた部屋内に導入され、同じ部屋内に連通する分離膜単管1c内を通過して、左側のチャンバ形成体2a1の仕切板6で仕切られた部屋内に導入され、混合流体導出管39から導出される。図4(b)(c)にもチャンバ2a、2b内の混合流体の流れを記載した。
【0044】
従って、図2の分離膜モジュール31では、混合流体が、分離膜単管1a、分離膜単管1b、分離膜単管1c、分離膜単管1dの順で直列に流れていたが、図4の分離膜モジュール31では、チャンバ形成体2a1、2b1をそれぞれ90度回転させることにより、混合流体を、分離膜単管1d、分離膜単管1a、分離膜単管1b、分離膜単管1cの順で直列に流すことができ、分離膜単管1内を流れる順序を変更することができ、これにより、ある一定の時間経過後に、チャンバ形成体2a1、2b1をそれぞれ回転させることにより、混合流体が分離膜単管1内を流れる順序を変更でき、各分離膜単管1の劣化の度合いを均一化させることができ、これにより分離膜単管1の寿命を長くでき、分離膜モジュール31の寿命を長くできる。
【0045】
すなわち、混合流体供給管35から供給される混合流体中に含まれる水は、混合流体供
給管35に近い分離膜単管1で多く分離され、混合流体導出管39に近づくに従って水の含有量は少なくなる。つまり、混合流体供給管35に近い分離膜単管1ほど水の影響を受けて劣化しやすい傾向にあるが、チャンバ形成体2a1、2b1をそれぞれ回転させることにより、分離膜単管1内を流れる順序を変更することができるため、各分離膜単管1の劣化の度合いを均一化させることも可能となり、これにより分離膜単管1の寿命を長くでき、分離膜モジュールの寿命を長くできる。
【0046】
なお、図5は6本の分離膜単管1を有する分離膜モジュール31を示すものであり、図6は12本の分離膜単管1を有する分離膜モジュール31を示すものであるが、このような分離膜モジュール31であっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0047】
以上のように構成された分離膜装置では、混合流体導出管39の開閉バルブ39aを閉めた状態で、混合流体供給管35を介して分離膜モジュール31内に混合流体を供給し、分離膜モジュール31内に混合流体を溜め、混合流体供給管35の開閉バルブ35aを閉め、この状態で、分離膜モジュール31の分離膜単管1で透過されなかった透過流体を含む混合流体を、循環路41を介して混合流体供給管35に戻す運転を行う。混合流体を循環路41を介して混合流体供給管35に戻す運転は、混合流体導出管39の開閉バルブ39aよりも上流側に設けられたセンサ47により、混合流体中の水の含有量を測定し、水の含有量が一定以下になるまで行う。混合流体中の水の含有量が一定以下となった場合には、混合流体導出管39の開閉バルブ39aを開とし、混合流体導出管39から水濃度が一定以下の濃縮エタノールが外部に導出される。濃縮エタノールが分離膜モジュール31から排出された後、混合流体導出管39の開閉バルブ39aが閉とされ、混合流体供給管35の開閉バルブ35aが開とされ、分離膜モジュール31内に混合流体が供給される。
【0048】
図1の分離膜装置では、分離膜モジュール31が一つの場合について説明したが、例えば、図7に示すように、3個の分離膜モジュール31を具備して構成することができる。これらの分離膜モジュール31には、混合流体が供給される混合流体供給管35がそれぞれ接続されており、さらに、分離膜モジュール31の分離膜を透過した透過流体を外部に導出する透過流体導出管37と、分離膜モジュール31の分離膜を透過しなかった透過流体を含む混合流体を外部に導出する混合流体導出管39がそれぞれ接続されている。言い換えれば、図2に示すような、分離膜モジュール31が並列に接続されている。分離膜モジュール31は、図8示すように、高さ方向に積み重ねられている。なお、図8では、循環路41は省略した。
【0049】
以上のように構成された分離膜装置では、混合流体供給管35が複数の分離膜モジュール31に接続され、これらの複数の分離膜モジュール31から、透過流体である水分、透過流体を僅かに含む濃縮エタノール(混合流体)がそれぞれ排出されるため、例えば、一つの分離膜モジュール31に故障が生じた場合でも、その分離膜モジュールに接続されている混合流体供給管35、透過流体導出管37および混合流体導出管39のバルブ35a、37a、39aを閉じ、故障した分離膜モジュール31を混合流体供給管35、透過流体導出管37および混合流体導出管39から取り外し、新たな分離膜モジュール31を取り付けることにより、分離膜装置37の運転を継続した状態で分離膜モジュール31を交換でき、分離膜装置を停止することなく故障を直すことができる。一つの分離膜モジュール31の分離性能が劣化した場合も同様である。
【0050】
特に、図2に示す分離膜装置では、混合流体の処理量が少なくなる傾向にあるが、図7に示すように、複数の分離膜モジュール31を並列に接続することにより、混合流体の処理量を多くすることができる。
【0051】
また、分離膜装置の混合流体の処理量に応じて、一種類の分離膜モジュールの個数を増
加して並列接続することで対応できる。
【0052】
本形態では、上記したように、故障した分離膜モジュールのみを分離膜装置全体から切り離して、交換することができるため、他の分離膜モジュールの運転への影響は少なく、分離膜装置全体として、濃度等の品質が安定した濃縮エタノールを得ることができる。
【0053】
さらに、分離膜モジュール31は、多孔質の支持管13の内面に分離膜15が形成された複数の分離膜単管1を順次混合流体が流れるため、それぞれの分離膜モジュール31における混合流体の分離効率を向上することができる。
【0054】
すなわち、分離効率を上げるためには分離膜近傍の混合流体と分離膜から離れた位置での混合流体との間で濃度分布が生じないようにするため、分離膜モジュールを直列に接続し、分離膜と接触する流路を長くし、混合流体の分離効率を高めていたが、分離膜モジュールを並列に接続した場合は、直列に接続した場合と比較し、混合流体と分離膜との接触時間が短くなり、分離効率が直列接続と比較して低くなる傾向がある。これに対し、本発明では、多孔質の支持管13の内面に分離膜15が形成された複数の分離膜単管1を順次混合流体が流れる(直列に混合流体が流れる)ため、分離膜モジュール31における混合流体と分離膜との接触時間も長くなるため、直列接続と同等の分離効率を得ることができる。
【0055】
また、分離膜モジュール31が高さ方向に積み重ねられているため、分離膜装置の占める容積を小さくすることができる。なお、図2に示すように外観が円柱状の分離膜モジュール31の場合、積み重ねを容易に行うべく、分離膜モジュール31に枠体を設けることが望ましい。
【0056】
上記図2の分離膜モジュールでは、複数の分離膜単管が直列接続され、混合流体が複数の分離膜単管を順次流れるように構成したが、図9に示すように、複数の分離膜単管1内を混合流体が並列に流れるような分離膜モジュール65を用いても良い。
【0057】
則ち、この形態の分離膜装置は、図2の分離膜モジュール31の分離膜単管1を複数用いて構成されており、これらの分離膜単管1の両端が、左右のチャンバ61、63にそれぞれ開口し、分離膜単管1内を混合流体が並列に流れるように構成されている。
【0058】
そして、分離膜モジュール65の左のチャンバ61には、混合流体が供給される混合流体供給管35が接続されており、分離膜モジュール65の右のチャンバ63には、分離膜モジュールの分離膜を透過しなかった透過流体を含む混合流体を外部に導出する混合流体導出管39が接続され、さらに、分離膜モジュール65の分離膜を透過した透過流体を外部に導出する透過流体導出管37が接続されている。
【0059】
混合流体供給管35、透過流体導出管37および混合流体導出管39には、それぞれの管を開閉する開閉バルブ35a、37a、39aが設けられている。分離膜モジュール65に接続された透過流体導出管37は、図示しない冷却装置に接続され、この冷却装置には、吸引装置が接続されている。また、混合流体中における透過流体の含有量を測定するセンサ47が、混合流体導出管39に設けられている。
【0060】
そして、この分離膜装置では、混合流体供給管35と混合流体導出管39とが配管からなる循環路41で連結されており、この循環路41には、開閉バルブ41aとポンプ42とが設けられている。
【0061】
このような分離膜装置では、分離膜単管1内をエタノールと水とを含有する混合流体が
通過する間に、水が分離膜15を透過して透過流体導出管37から排出され、分離膜15を透過しなかった水とエタノールを高濃度で含有する濃縮エタノール(混合流体)が、循環路41を介して分離膜単管1に供給され、センサ47における混合流体中の水の含有量が一定以下となった場合には、混合流体導出管39の開閉バルブ39aが開とされ、混合流体導出管39からエタノールを高濃度で含有する濃縮エタノールが外部に導出される。これにより、分離膜モジュール65による分離効率を向上できる。
【0062】
また、図10は、外側に分離膜を有する分離膜単管67を用いた分離膜モジュール69を具備する分離膜装置を示すもので、この分離膜装置では、分離膜単管67の右端が右のチャンバ71に開口し、分離膜単管67の左端は閉塞されており、混合流体が混合流体供給管35から左のチェンバ73に供給され、分離膜単管67間を流れる間に、水が分離膜を透過し、分離膜単管67内を流れて右のチャンバ71に導入され、透過流体導出管37から外部に導出される。
【0063】
一方、分離膜を透過しなかった水を含む混合流体が混合流体導出管39から、循環路41を介して左のチャンバ73に導入され、センサ47における混合流体中の水の含有量が一定以下となった場合には、混合流体導出管39の開閉バルブ39aが開とされ、混合流体導出管39からエタノールを高濃度で含有する混合流体が外部に導出される。これにより、分離膜モジュール69による分離効率を向上できる。
【0064】
さらに、混合流体導出管39が、分離膜モジュール69の下面に接続されているため、混合流体供給管35の開閉バルブ35aを閉めた状態で、ポンプ42を停止し、開閉バルブ39aを閉とし、混合流体導出管39の開閉バルブ39aを開とすることにより、混合流体中の透過流体が十分に分離された殆ど非透過流体である混合流体を、分離膜モジュール69の外部に導出することができる。この場合には、混合流体供給管35からの混合流体の供給圧が生じないため、混合流体を混合流体導出管39から外部に導出しにくくなる傾向があるが、混合流体導出管39を分離膜モジュール69の下面に接続することにより、分離膜モジュール69から混合流体自体の重力により非透過流体を十分にかつ迅速に排出することができる。この点は、図9の場合も同様である。
【0065】
この際、分離膜モジュール69内に空気が導入されるように構成することにより、分離膜モジュール69内が負圧となることを防止でき、混合流体の混合流体導出管39からの導出をさらに迅速に行うことができる。さらには、分離膜モジュール69内に強制的に空気を供給することにより、混合流体の混合流体導出管39からの導出をさらに迅速に行うことができる。この点は、図9の場合も同様である。
【0066】
さらに、上記分離膜装置では、混合流体供給管35と混合流体導出管39とを、配管からなる循環路41で連結したが、混合流体供給管35と、混合流体導出管39が接続されるチャンバ63、71とを配管からなる循環路41で連結してもよく、混合流体供給管35が接続されるチャンバ61、73と、混合流体導出管39とを配管からなる循環路41で連結してもよく、さらには、チャンバ63、71とチャンバ61、73とを配管からなる循環路41で接続しても良い。さらには、配管からなる循環路41を用いることなく、分離膜モジュール65、69内に流路を形成して、循環路としても良い。
【符号の説明】
【0067】
1、67・・・分離膜単管
2a、2b、61、63、71、73・・・チャンバ
15・・・分離膜
31、65、69・・・分離膜モジュール
35・・・混合流体供給管
35a、37a、39a、41a・・・開閉バルブ
37・・・透過流体導出管
39・・・混合流体導出管
41・・・循環路
47・・・センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜を有する分離膜モジュールと、前記分離膜を透過する透過流体と前記分離膜を透過しない非透過流体とからなる混合流体を前記分離膜モジュールに供給する混合流体供給管と、前記分離膜を透過した前記透過流体を前記分離膜モジュールの外部に導出する透過流体導出管と、前記分離膜で透過されなかった前記透過流体を含む混合流体を前記分離膜モジュールの外部に導出する混合流体導出管と、前記混合流体供給管と前記混合流体導出管とにそれぞれ設けられた開閉バルブと、該開閉バルブが閉とされた状態で、前記分離膜で透過されなかった前記透過流体を含む前記混合流体を前記分離膜モジュールの前記分離膜に戻すための循環路とを具備することを特徴とする分離膜装置。
【請求項2】
前記分離膜で透過されなかった前記透過流体を含む前記混合流体中の前記透過流体または前記非透過流体の含有量を測定するセンサを具備することを特徴とする請求項1に記載の分離膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−230032(P2011−230032A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101065(P2010−101065)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】