切削加工経路創成装置及び方法並びにプログラム
【課題】干渉を回避しつつ、加工にかかる時間を短縮すること。
【解決手段】ワークをカッタにより加工する加工工程と加工終了後にカッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返し、ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成装置10であって、ワークの位置を基準とするワーク座標系において、加工工程におけるカッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定部21と、推定されたカッタ形状データとワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、交点の情報に基づいて、加工工程終了後のワーク形状データを新たなワーク形状データとして更新するワーク形状更新部22と、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合にワーク形状更新部22によって更新された新たなワーク形状データとワーク座標系における移動時のカッタ形状データとの干渉可能性を判定する干渉判定部23とを具備する。
【解決手段】ワークをカッタにより加工する加工工程と加工終了後にカッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返し、ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成装置10であって、ワークの位置を基準とするワーク座標系において、加工工程におけるカッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定部21と、推定されたカッタ形状データとワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、交点の情報に基づいて、加工工程終了後のワーク形状データを新たなワーク形状データとして更新するワーク形状更新部22と、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合にワーク形状更新部22によって更新された新たなワーク形状データとワーク座標系における移動時のカッタ形状データとの干渉可能性を判定する干渉判定部23とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成装置及び方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加工対象物であるワークをカッタにより加工し、加工終了後にカッタを次の加工開始位置まで移動させる動作を繰り返すことによりワークを加工する工作機械では、加工を終えて次の工程に移る場合に、ワークと工具(カッタ)とが干渉しないようにワークと工具とを離して動かす必要がある。ワークと工具とが干渉すると、ワークまたは/および工具の破損につながるため、加工により形状の変化するワークと工具が干渉しないか、予め確認する必要がある。従来は熟練者が経験に基づいて目視で判断したり、3次元CADモデルを用いたシミュレーションで判断したりされている。
加工によるワーク形状の変化を表現する方法として、例えば、特許文献1には、測定した歯車の形状と目標とする歯車の形状とから算出される歯形の修正データをシュービングカッタの形状データに転写し、シェービングカッタの形状を決定することによりシェービング加工後の歯形形状を目標形状にする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−62026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、全行程に対してでなく、熟練者が経験に基づいて干渉発生が予想される位置を選定し、目視により干渉有無をチェックしていたため、干渉量が定量的に評価できないという問題があった。また、上記特許文献1の方法では、予め離散的に設定された位置間隔で計測される歯形のデータがシェービングカッタの形状データとして転写されるが、設定された位置間隔が大きいとその間隔の間における形状が正確に表現されていない場合、適切に干渉チェックができず、干渉有無のチェック漏れが発生し、干渉を回避できない可能性があることから、この間隔を短く設定する必要がある、即ち膨大な計算量が必要になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ワークとカッタの干渉を回避しつつ、全ての加工工程に対する干渉チェックを簡便に行うことのできる切削加工経路創成装置及び方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、加工対象物であるワークをカッタにより加工する加工工程と、該加工工程終了後に前記カッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことにより前記ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成装置であって、前記ワークの位置を基準とするワーク座標系において、前記加工工程における前記カッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定手段と、推定された前記カッタ形状データと、前記ワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、前記交点の情報に基づいて、前記加工工程終了後の前記ワーク形状データを新たな前記ワーク形状データとして更新するワーク形状更新手段と、前記カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、前記ワーク形状更新手段によって更新された新たな前記ワーク形状データと、前記ワーク座標系における移動時の前記カッタ形状データとの干渉の有無を判定する干渉判定手段とを備える切削加工経路創成装置を提供する。
【0007】
このような構成によれば、カッタにより加工対象物であるワークを加工する加工工程と、加工工程終了後に加工開始位置までカッタを移動させる工程とを繰り返すことによりワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成装置において、加工工程において推定されるカッタ形状データの位置と、ワーク形状データとに交点がある場合には、該交点の情報に基づいてワーク形状データが更新され、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合には、更新されたワーク形状データと移動時のカッタ形状データとの干渉有無が判定される。このように、加工工程と移動させる工程とを繰り返す加工の都度、カッタ形状データ位置の推定、ワーク形状データの更新、及びカッタとワークとの干渉有無の判定がなされるので、全ての加工工程において、干渉有無の判定を抜けなく行うことができる。また、加工の都度、干渉の判定を行うことにより、干渉が発生するタイミングが把握できるので、予測される干渉を回避することが容易となる。
【0008】
上記切削加工経路創成装置のワーク形状更新手段は、前記ワークの表面形状を線分で示したワーク線分データと、前記カッタの形状を線分で示したカッタ線分データとの交点である線分交点を求め、該線分交点が生じた部分の前記カッタ線分データを前記ワーク線分データとし、新たな前記ワーク線分データを作成することが好ましい。
【0009】
このように、ワークとカッタとの形状をそれぞれ線分で示し、ワーク線分データとカッタ線分データとの線分交点を用いてワーク形状データを更新するので、干渉の有無を判定するワーク形状データとカッタ形状データとを構成する点を闇雲に増やすことなく、精度よく計算することができる。また、ワークの形状データは、カッタの形状データの重ね合わせだけでなく、交点をも新たなワーク形状データとして更新されるので、元のワーク形状データの線分を構成する点の間隔が空いている場合であっても、干渉有無の判定に有効な精度の高い点で構成されたワーク形状データを得ることができる。さらに、従来のような線分除去法では分割数の粗さに応じて線分間のクリアランス判定が甘くなり干渉有無のチェック漏れを生じる可能性があったが、本発明では、そうしたチェック漏れを防止することができる。
【0010】
上記切削加工経路創成装置において、前記ワーク形状データと前記カッタ形状データとの重複する領域の面積を算出し、該面積に基づいて切削負荷を算出し、該切削負荷が所定値以下となるように加工条件を調整する負荷調整手段を備えることとしてもよい。
【0011】
重複する領域の面積は、加工工程における加工(例えば、切削)の負荷量と相関があるので、重複する領域の面積を算出して把握することにより、例えば、過負荷の状態であると推定される場合には切削面積を減少させるべく切り込み量を減らす等の加工条件の調整を行うことで、過負荷を防止することができる。また、切削負荷に余裕がある場合には、切削面積を増大させるべく切り込み量を増やす等の加工条件の調整を行うことで、加工時間を短縮することができる。
【0012】
上記切削加工経路創成装置は、前記カッタの曲率が大きい箇所には、カッタの曲率が小さい箇所よりも狭い間隔で、線分を構成する点列データを与え、前記カッタ形状データを作成する形状作成手段を備えることが好ましい。
これにより狭い間隔で与えられた点列データの部分は、より正確にカッタ形状データが表現され、さらにカッタ形状データは後に切削加工後のワーク形状データとして転写されるので、切削加工後の形状が正確に表現されることとなる。
【0013】
本発明は、加工対象物であるワークをカッタにより加工する加工工程と、該加工工程終了後に前記カッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことにより前記ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成方法であって、前記ワークの位置を基準とするワーク座標系において、前記加工工程における前記カッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定ステップと、推定された前記カッタ形状データと、前記ワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、前記交点の情報に基づいて、前記加工工程終了後の前記ワーク形状データを新たな前記ワーク形状データとして更新するワーク形状更新ステップと、前記カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、前記ワーク形状更新手段によって更新された新たな前記ワーク形状データと、前記ワーク座標系における移動時の前記カッタ形状データとの干渉の有無を判定する干渉判定ステップとを有する切削加工経路創成方法を提供する。
【0014】
本発明は、加工対象物であるワークをカッタにより加工する加工工程と、該加工工程終了後に前記カッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことにより前記ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成プログラムであって、前記ワークの位置を基準とするワーク座標系において、前記加工工程における前記カッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定処理と、推定された前記カッタ形状データと、前記ワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、前記交点の情報に基づいて、前記加工工程終了後の前記ワーク形状データを新たな前記ワーク形状データとして更新するワーク形状更新処理と、前記カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、前記ワーク形状更新処理によって更新された新たな前記ワーク形状データと、前記ワーク座標系における移動時の前記カッタ形状データとの干渉の有無を判定する干渉判定処理とをコンピュータに実行させるための切削加工経路創成プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、干渉を回避しつつ、加工にかかる時間を短縮できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る切削加工経路創成装置のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る切削加工経路創成装置の機能を展開して示したブロック図である。
【図3】ワーク形状更新部の交点生成法を説明するための図である。
【図4】干渉判定及び負荷算出処理の動作フローである。
【図5】処理におけるワーク形状データとカッタ形状データとの関係を説明するための図である。
【図6】処理におけるワーク形状データとカッタ形状データとの関係の続きを説明するための図である。
【図7】ワーク形状データとカッタ形状データとにより囲まれた面積を説明するための図である。
【図8】面積を算出する閉曲面の一例を示した図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る切削加工経路創成装置において、カッタの点から外向き法線方向長さLcの位置に点を設けることを説明するための図である。
【図10】カッタの点から内向き法線方向長さLcの位置に点を設けることを説明するための図である。
【図11】カッタの点から外向きと内向きの両側に交点がある場合を説明するための図である。
【図12】歯車形状でのクリアランス計算結果の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る切削加工経路創成装置及び方法並びにプログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
〔第1の実施形態〕
本実施形態に係る切削加工経路創成装置10は、加工対象物(以下「ワーク」という。)をカッタにより切削加工する加工工程と、加工工程の終了後にカッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことによりワークを加工する工作機械に適用される場合を例に挙げて説明する。また、本実施形態においては、ワークが歯車であることを例に挙げ、カッタとワークとの形状を2次元データ(平面xy上の点列)として表現し、直交するz方向に複数枚の2次元データを積層させて3次元空間のモデルを表現する歯車加工機械に適用される切削加工経路創成装置10であることとして説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る切削加工経路創成装置10の概略構成を示したブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る切削加工経路創成装置10は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、CPU(中央演算処理装置)11、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置12、HDD(Hard Disk Drive)などの補助記憶装置13、キーボードやマウスなどの入力装置14、及びモニタやプリンタなどの出力装置15などを備えて構成されている。
補助記憶装置13には、各種プログラム(切削加工経路創成プログラム)が格納されており、CPU11が補助記憶装置13からRAMなどの主記憶装置12にプログラムを読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
【0020】
図2は、切削加工経路創成装置10が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。図2に示されるように、切削加工経路創成装置10は、形状作成部20、カッタ位置推定部(カッタ位置推定手段)21、ワーク形状更新部(ワーク形状更新手段)22、干渉判定部(干渉判定手段)23、及び負荷調整部24を備えている。
【0021】
形状作成部20は、入力されたカッタ緒元に基づいてカッタの形状を示すカッタ形状データを作成するとともに、入力されたワーク緒元に基づいてワークの形状を示すワーク形状データを作成する。具体的には、形状作成部20は、ワークの表面形状を線分で示したワーク線分データをワーク形状データとし、カッタの形状を線分で示したカッタ線分データをカッタ形状データとして作成する。より具体的には、形状作成部20は、カッタの曲率が大きい箇所には、カッタの曲率が小さい箇所よりも狭い間隔で、線分を構成する点列データを与え、曲率が小さい(略直線の)箇所は広い間隔で点列データを与え、カッタ線分データをカッタ形状データとして作成する。
【0022】
そうすることにより、狭い間隔の点列データの部分は、より正確に形状が表現され、それが後に切削加工後のワーク形状データとして転写されるので、切削加工後の形状が正確に表現されることとなる。また、例えば、形状作成部20には所定の閾値を設け、曲率が所定の閾値より大きい場合を曲率が大きいこととし、曲率が所定の閾値以下となる場合を曲率が小さいこととする等によって曲率の大小を決定することとする。
【0023】
カッタ位置推定部21は、入力されたワークの加工条件及びカッタの軌跡条件に基づいて、ワーク位置を基準とするワーク座標系における加工工程のカッタ形状データの位置を推定する。また、カッタ位置推定部21は、ワークの加工条件及びカッタの軌跡条件に基づいて、ワークからカッタを移動させる場合のカッタ形状データの位置を推定する。
【0024】
ワーク形状更新部22は、推定されたカッタ形状データと、ワーク形状データとに交点がある場合に、交点の情報に基づいて加工工程終了後のワーク形状データを新たなワーク形状データとして更新する。具体的には、ワーク形状更新部22は、ワーク形状データを構成するワーク線分データと、カッタ形状データを構成するカッタ線分データとの交点である線分交点を求め、線分交点が生じた部分のカッタ線分データをワーク線分データとし、新たなワーク線分データを作成する。
【0025】
より具体的なワーク形状更新部22の処理について、図3を用いて説明する。
ワーク形状更新部22は、ワーク形状データを構成する点列データの隣り合う各点間で構成されるワーク線分データを用い、ワーク形状データの線分データとカッタ形状データの線分データとの線分交点を推定し(図3(a))、線分交点間(カッタがワークを切削している領域を構成する各線分データの交点間)のカッタ形状データをワーク形状データとして転写し、新たなカッタ形状データとして更新する(図3(b))。また、全ての加工工程が終了している場合には、処理を終了し、次の加工工程がある場合には上記図3(a)から図3(b)の処理を繰り返す(図3(c)から(d))。また、図3(e)には、加工後に、ワークからカッタを移動させる場合のカッタ形状データとワーク形状データとが示されている。
また、本実施形態においてワーク形状更新部22は、前回の交点のデータが含まれる領域が切削された場合に、前回の交点のデータは削除してワーク形状データを更新するので、切削の都度、無闇に点列データを増加させることがない。
【0026】
干渉判定部23は、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、ワーク形状更新部22によって更新された新たなワーク形状データと、ワーク座標系における移動時のカッタ形状データとの干渉可能性の有無を判定できるクリアランス量を算出する。具体的には、干渉判定部23は、カッタ形状データを構成する点列データの各点と、切削によって更新されたワーク形状データの点列データの各点とのそれぞれにおいて、クリアランス量を算出する。算出されたクリアランス量は、所定のクリアランス閾値と比較され、クリアランス閾値以下となった場合には、干渉の可能性が高いこととして判定される。
【0027】
負荷調整部24は、ワーク形状データとカッタ形状データとの重複する領域の面積を算出し(面積の算出方法は後述する。)、この面積に基づいて切削負荷を算出し、切削負荷が所定値以下となるように加工条件を調整する。重複する領域の面積は、カッタ形状データとワーク形状データとで閉じられた点列データで形成される面積を示す。また、所定値とは、機械の能力から決まる所定の切削負荷のことである。
【0028】
このように、切削面積が切削負荷と相関があることに着目し、切削面積を算出することにより、切削負荷を定量的に把握することができるので、例えば、過負荷の状態であると推定される場合には切削面積を減少させるべく切り込み量を減らす等の加工条件の調整を行うことで、過負荷を防止することができる。また、切削負荷に余裕がある場合には、切削面積を増大させるべく切り込み量を増やす等の加工条件の調整を行うことで、加工時間を短縮することができる。また、求められた切削負荷と予め設定された閾値とを比較することにより、(工具の消耗度合いが定量的に把握できるようになるので)工具寿命を提案することもできる。
【0029】
次に、上述した切削加工経路創成装置10における制御方法について、図1から図5を用いて説明する。
入力装置14を介して、カッタの形状等を示すカッタ緒元、ワークの形状等を示すワーク緒元、及びワークの加工条件やカッタの軌跡の条件等の加工工程に関わる各種条件が入力される(図4のステップSA1)。入力されたカッタ緒元に基づいてカッタ形状データ、及び入力されたワーク緒元に基づいてワーク形状データが作成される(ステップSA2)。図5(a)に示されるように、例えば、カッタ形状データは■印がプロットされて示され、切削加工前のワーク形状データは▲印がプロットされて示される。
【0030】
また、カッタ位置推定部21において、加工工程に関わる各種条件に基づいてワーク座標系を基準とした場合の加工工程におけるカッタ形状データの位置が推定され(ステップSA3)、推定されたカッタ形状データの位置と、上述したワーク形状データとの交点が算出される(ステップSA4)。このとき、図5(b)に示されるように、カッタによりワークの切削加工が開始されると、ワーク形状データとカッタ形状データとに交点が生じ、重複(オーバーラップ)する領域が現れる。
【0031】
交点がある場合には、カッタによりワークが切削加工されているので、交点の情報に基づいて、加工後のワーク形状データが新たなワーク形状データとして更新される(ステップSA5)。具体的には、図5(c)に示されるように、ワーク形状データを構成するワーク線分データと、カッタ形状データを構成するカッタ線分データとの交点である線分交点を求め、線分交点が生じた部分のカッタ線分データをワーク線分データとし、これを切削加工後の新たなワーク形状データとして更新する。
【0032】
さらに、予め入力された加工工程に関わる各種条件に基づいて、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、カッタ形状データの位置が推定される(ステップSA6)。カッタ形状データとワーク形状データとのクリアランス量が算出され、干渉可能性の有無が判定されるとともに干渉可能性の有無の判定結果が出力される(ステップSA7)。干渉の可能性があると判定された場合には、カッタをワークから遠ざける軌道を通らせる制御がなされる。
図5(d)に示されるように、カッタがワークから移動させる場合のカッタ形状データの位置が推定されると、カッタ形状データを構成する点列データの点(例えば、■印の各点)と、切削によって更新されたワーク形状データの点列データとにおいて、クリアランス量が算出される。全ての切削加工工程に対して、クリアランス算出が行われたか否かが判定され、全加工工程終了した場合には、本処理を終了する(ステップSA10)。
【0033】
全加工工程終了していない場合には、ステップSA3に戻り、次の加工工程に対し、それぞれのステップを継続する。例えば、図6(e)には次の加工工程の様子が示されており、次の切削加工時におけるカッタ形状データの推定された位置、及びカッタ形状データとワーク形状データとの交点の情報が示されている。図6(f)では、切削加工がなされたため、切削加工後のワーク形状データを新たなワーク形状データとして更新している。
【0034】
図6(g)では、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、推定されたカッタ形状データの位置が示され、算出されたクリアランス量に基づいてカッタ形状データとワーク形状データとの位置関係が示されており、カッタ位置がワーク側に重なっているので、干渉が発生している図の例が示されている。
一方、カッタ形状データとワーク形状データとの交点がある場合には、カッタ形状データとワーク形状データとの重複する領域の面積が算出され(ステップSA8)、算出された切削負荷に応じた調整を行い、本処理を終了する(ステップSA9)。
【0035】
ここで、負荷調整部24における切削面積の算出方法について説明する。
ワーク形状データとカッタ形状データとで囲まれた面積(図7(a))は、図7(b)のような多角形の面積として算出する。
ここで、多角形の面積の算出方法は、以下の(1)式のようになる。
例えば、図8に示される多角形の場合、頂点座標の列Pi=(Xi,Yi)(i=1,2,・・・n,n≧3)で与えられるものとし、数式を単純にするためPn+1≡P1と定義する。また、閉曲線C=(P1,P2,・・・Pn,Pn+1=P1)は左回り(反時計回り)であるとする。また、多角形は凸多角形である必要はないが、穴は開いていないものとする。このような場合には、以下の数式(1)に基づいて、多角形の面積を算出する。
【数1】
【0036】
以上説明してきたように、本実施形態に係る切削加工経路創成装置10及び方法並びにプログラムによれば、加工工程において推定されるカッタ形状データの位置と、ワーク形状データとに交点がある場合には、交点の情報に基づいてワーク形状データが更新され、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合には、更新されたワーク形状データと移動時のカッタ形状データとの干渉可能性が判定される。このように、加工工程と移動させる工程とを繰り返す加工の都度、カッタ形状データ位置の推定、ワーク形状データの更新、及びカッタとワークとの干渉可能性の判定がなされるので、全ての加工工程において、干渉可能性の判定を抜けなく行うことができる。
【0037】
また、ワークとカッタとをそれぞれ線分で示し、ワーク線分データとカッタ線分データとの線分交点を生成していき(交点生成法)、干渉可能性を解析することで、形状データ(ワーク形状データ及びカッタ形状データ)を構成する点を闇雲に増やすことなく、精度よく計算することができ、正確な形状データを作成することができる。また、従来のような線分除去法では分割数の粗さに応じて線分間のクリアランス判定が甘くなり、干渉有無のチェック漏れを生じる可能性があったが、本実施形態では、そうしたチェック漏れを防止することができる。
さらに、クリアランスを定量的に算出することにより、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合において、干渉が発生する条件、タイミング、量を把握することができ、干渉回避の具体的な対策を行うことができる。また、クリアランスを定量的に算出し、クリアランス精度が向上することで、干渉を回避する目的で過度にワークから工具(ワーク)を回避させる必要がなくなるので、加工時間の短縮につながる。
【0038】
なお、本実施形態においては、切削加工経路創成装置10が、カッタ及びワーク形状をXYZ軸の3次元のモデルとして表現し、歯車を加工する歯車加工機械に適用される場合を例に挙げて説明していたが、これに限定されない。例えば、切削加工経路創成装置10は、スロット加工機械、NC加工機械、或いは、XYZ軸に加えて回転軸を2軸設けた5軸加工機で加工する任意の立体形状を成す加工物を加工する機械に適用されることとしてもよい。
例えば、ワークが5軸加工機で加工するような任意の立体形状の場合、ワークの種類(形状、精度よく加工したい面の方向等)に応じて、3次元モデルの表現形式を選ぶことが望ましい。この場合には、直交座標系を選んでもよいし、ワークの形状に応じて極座標系(r,θ,φ)や円筒座標系(r,θ,z)でのモデルを選んでもよいこととする。
【0039】
なお、本実施形態においては、干渉判定部23が、カッタ形状データの点列データの各点と、ワーク形状データの点列データの各点とのそれぞれにおいてクリアランス量を算出することとして説明していたが、これに限定されない。例えば、ワーク形状データを数ブロックに分割し、カッタ形状データが位置するブロック或いは隣接するブロックに属するワーク形状データの点列データと、カッタ形状データとのそれぞれにおいてクリアランス量を算出することとしてもよい。または、切削加工されることで生じた新しいワーク形状データの点列データと、カッタ形状データの点列データとのそれぞれにおいてクリアランス量を算出することとしてもよい。このようにクリアランス量を算出する点列データを限定することにより、クリアランス量の算出にかかる計算量を低減させることができる。
【0040】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る切削加工経路創成装置について図9から図12を用いて説明する。
本実施形態に係る切削加工経路創成装置は、第1の実施形態における構成に加え、干渉判定部が線分データを用いてクリアランスを算出する点で、上述の第1の実施形態と異なる。以下、本実施形態に係る切削加工経路創成装置について、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0041】
干渉判定部は、以下の手順でカッタ形状データを構成する点列データの各点において、それぞれクリアランスを算出し、干渉可能性を判定する。
(1)カッタ形状データを構成する点列データの任意の点(xci,yci)(i=1,2,・・・m;カッタ形状データを構成する点列データの点の数に対応する。)から、カッタの外向きの法線方向に対し、長さLcの位置に点(x1a,y1a)を設ける。なお、Lcはカッタの寸法から経験的に予め定める値であり、計算量低減の目的で使用される。(図9参照)
(2)カッタ形状データの点(xci,yci)から、カッタの内向きの法線方向に対し、長さLcの位置に点(x1b,y1b)を設ける。(図10参照)
(3)ワーク形状データを構成する点列データの2点間の線分(xwj,ywj)−(xwj+1,ywj+1)(j=1,2,・・・n;ワーク形状データを構成する点列データの点の数に対応する。)、とカッタ形状データの2点間の線分(xci,yci)−(x1a,y1a)との交点(xpa,ypa)の有無を判定し、交点が有る場合には、点(xci,yci)−交点(xpa,ypa)間の距離Laを算出する。(図9参照)
【0042】
(4)ワーク形状データを構成する点列データの2点間の線分(xwj,ywj)−(xwj+1,ywj+1)と線分(xci,yci)−(x1b,y1b)の交点(xpb,ypb)の有無を判定し、交点が有る場合には、点(xci,yci)−交点(xpb,ypb)間の距離Lbを算出する。(図10参照)
(5)交点(xpa,ypa)のみが有る場合は、クリアランス量C(i)=La(干渉なし)とする(図3参照)。交点(xpb,ypb)のみが有る場合は、クリアランス量C(i)=−Lb(干渉あり)とする(図4参照)。また、両者が有る場合は、LaとLbとの長さを比較し、Laが短ければC(i)=La(干渉なし)、Lbが短ければ、C(i)=−Lb(干渉あり)とする。(図11参照)
【0043】
また、図12には、上述したようにカッタ形状データの点列データを構成する各点においてそれぞれ算出したクリアランス量C(i)を、ワーク形状データの各点と比較して図示したものである。
【0044】
なお、本実施形態においては、クリアランス計算方法の一例を挙げて説明したが、クリアランス計算方法は、特に限定されない。例えば、特開平8−118202、特開平9−27046、特開平11−250122等で示される計算方法によってクリアランス量を算出することとしてもよい。
【0045】
このように、カッタ形状データの点列データを構成する各点におけるクリアランス量を全加工工程に対して算出することにより、カッタ形状データがワーク形状データと干渉が発生する位置、発生する干渉の程度、干渉が発生する切削加工工程のタイミング等の干渉に関する情報が把握できる。また、クリアランス精度が向上されることで、干渉を回避するために過度にワークから工具(カッタ)を回避させる必要がなくなり、加工時間の短縮につながる。
【符号の説明】
【0046】
10 切削加工経路創成装置
20 形状作成部
21 カッタ位置推定部(カッタ位置推定手段)
22 ワーク形状更新部(ワーク形状更新手段)
23 干渉判定部(干渉判定手段)
24 負荷調整部(負荷調整手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成装置及び方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加工対象物であるワークをカッタにより加工し、加工終了後にカッタを次の加工開始位置まで移動させる動作を繰り返すことによりワークを加工する工作機械では、加工を終えて次の工程に移る場合に、ワークと工具(カッタ)とが干渉しないようにワークと工具とを離して動かす必要がある。ワークと工具とが干渉すると、ワークまたは/および工具の破損につながるため、加工により形状の変化するワークと工具が干渉しないか、予め確認する必要がある。従来は熟練者が経験に基づいて目視で判断したり、3次元CADモデルを用いたシミュレーションで判断したりされている。
加工によるワーク形状の変化を表現する方法として、例えば、特許文献1には、測定した歯車の形状と目標とする歯車の形状とから算出される歯形の修正データをシュービングカッタの形状データに転写し、シェービングカッタの形状を決定することによりシェービング加工後の歯形形状を目標形状にする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−62026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、全行程に対してでなく、熟練者が経験に基づいて干渉発生が予想される位置を選定し、目視により干渉有無をチェックしていたため、干渉量が定量的に評価できないという問題があった。また、上記特許文献1の方法では、予め離散的に設定された位置間隔で計測される歯形のデータがシェービングカッタの形状データとして転写されるが、設定された位置間隔が大きいとその間隔の間における形状が正確に表現されていない場合、適切に干渉チェックができず、干渉有無のチェック漏れが発生し、干渉を回避できない可能性があることから、この間隔を短く設定する必要がある、即ち膨大な計算量が必要になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ワークとカッタの干渉を回避しつつ、全ての加工工程に対する干渉チェックを簡便に行うことのできる切削加工経路創成装置及び方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、加工対象物であるワークをカッタにより加工する加工工程と、該加工工程終了後に前記カッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことにより前記ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成装置であって、前記ワークの位置を基準とするワーク座標系において、前記加工工程における前記カッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定手段と、推定された前記カッタ形状データと、前記ワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、前記交点の情報に基づいて、前記加工工程終了後の前記ワーク形状データを新たな前記ワーク形状データとして更新するワーク形状更新手段と、前記カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、前記ワーク形状更新手段によって更新された新たな前記ワーク形状データと、前記ワーク座標系における移動時の前記カッタ形状データとの干渉の有無を判定する干渉判定手段とを備える切削加工経路創成装置を提供する。
【0007】
このような構成によれば、カッタにより加工対象物であるワークを加工する加工工程と、加工工程終了後に加工開始位置までカッタを移動させる工程とを繰り返すことによりワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成装置において、加工工程において推定されるカッタ形状データの位置と、ワーク形状データとに交点がある場合には、該交点の情報に基づいてワーク形状データが更新され、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合には、更新されたワーク形状データと移動時のカッタ形状データとの干渉有無が判定される。このように、加工工程と移動させる工程とを繰り返す加工の都度、カッタ形状データ位置の推定、ワーク形状データの更新、及びカッタとワークとの干渉有無の判定がなされるので、全ての加工工程において、干渉有無の判定を抜けなく行うことができる。また、加工の都度、干渉の判定を行うことにより、干渉が発生するタイミングが把握できるので、予測される干渉を回避することが容易となる。
【0008】
上記切削加工経路創成装置のワーク形状更新手段は、前記ワークの表面形状を線分で示したワーク線分データと、前記カッタの形状を線分で示したカッタ線分データとの交点である線分交点を求め、該線分交点が生じた部分の前記カッタ線分データを前記ワーク線分データとし、新たな前記ワーク線分データを作成することが好ましい。
【0009】
このように、ワークとカッタとの形状をそれぞれ線分で示し、ワーク線分データとカッタ線分データとの線分交点を用いてワーク形状データを更新するので、干渉の有無を判定するワーク形状データとカッタ形状データとを構成する点を闇雲に増やすことなく、精度よく計算することができる。また、ワークの形状データは、カッタの形状データの重ね合わせだけでなく、交点をも新たなワーク形状データとして更新されるので、元のワーク形状データの線分を構成する点の間隔が空いている場合であっても、干渉有無の判定に有効な精度の高い点で構成されたワーク形状データを得ることができる。さらに、従来のような線分除去法では分割数の粗さに応じて線分間のクリアランス判定が甘くなり干渉有無のチェック漏れを生じる可能性があったが、本発明では、そうしたチェック漏れを防止することができる。
【0010】
上記切削加工経路創成装置において、前記ワーク形状データと前記カッタ形状データとの重複する領域の面積を算出し、該面積に基づいて切削負荷を算出し、該切削負荷が所定値以下となるように加工条件を調整する負荷調整手段を備えることとしてもよい。
【0011】
重複する領域の面積は、加工工程における加工(例えば、切削)の負荷量と相関があるので、重複する領域の面積を算出して把握することにより、例えば、過負荷の状態であると推定される場合には切削面積を減少させるべく切り込み量を減らす等の加工条件の調整を行うことで、過負荷を防止することができる。また、切削負荷に余裕がある場合には、切削面積を増大させるべく切り込み量を増やす等の加工条件の調整を行うことで、加工時間を短縮することができる。
【0012】
上記切削加工経路創成装置は、前記カッタの曲率が大きい箇所には、カッタの曲率が小さい箇所よりも狭い間隔で、線分を構成する点列データを与え、前記カッタ形状データを作成する形状作成手段を備えることが好ましい。
これにより狭い間隔で与えられた点列データの部分は、より正確にカッタ形状データが表現され、さらにカッタ形状データは後に切削加工後のワーク形状データとして転写されるので、切削加工後の形状が正確に表現されることとなる。
【0013】
本発明は、加工対象物であるワークをカッタにより加工する加工工程と、該加工工程終了後に前記カッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことにより前記ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成方法であって、前記ワークの位置を基準とするワーク座標系において、前記加工工程における前記カッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定ステップと、推定された前記カッタ形状データと、前記ワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、前記交点の情報に基づいて、前記加工工程終了後の前記ワーク形状データを新たな前記ワーク形状データとして更新するワーク形状更新ステップと、前記カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、前記ワーク形状更新手段によって更新された新たな前記ワーク形状データと、前記ワーク座標系における移動時の前記カッタ形状データとの干渉の有無を判定する干渉判定ステップとを有する切削加工経路創成方法を提供する。
【0014】
本発明は、加工対象物であるワークをカッタにより加工する加工工程と、該加工工程終了後に前記カッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことにより前記ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成プログラムであって、前記ワークの位置を基準とするワーク座標系において、前記加工工程における前記カッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定処理と、推定された前記カッタ形状データと、前記ワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、前記交点の情報に基づいて、前記加工工程終了後の前記ワーク形状データを新たな前記ワーク形状データとして更新するワーク形状更新処理と、前記カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、前記ワーク形状更新処理によって更新された新たな前記ワーク形状データと、前記ワーク座標系における移動時の前記カッタ形状データとの干渉の有無を判定する干渉判定処理とをコンピュータに実行させるための切削加工経路創成プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、干渉を回避しつつ、加工にかかる時間を短縮できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る切削加工経路創成装置のハードウェア構成の一例を示したブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る切削加工経路創成装置の機能を展開して示したブロック図である。
【図3】ワーク形状更新部の交点生成法を説明するための図である。
【図4】干渉判定及び負荷算出処理の動作フローである。
【図5】処理におけるワーク形状データとカッタ形状データとの関係を説明するための図である。
【図6】処理におけるワーク形状データとカッタ形状データとの関係の続きを説明するための図である。
【図7】ワーク形状データとカッタ形状データとにより囲まれた面積を説明するための図である。
【図8】面積を算出する閉曲面の一例を示した図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る切削加工経路創成装置において、カッタの点から外向き法線方向長さLcの位置に点を設けることを説明するための図である。
【図10】カッタの点から内向き法線方向長さLcの位置に点を設けることを説明するための図である。
【図11】カッタの点から外向きと内向きの両側に交点がある場合を説明するための図である。
【図12】歯車形状でのクリアランス計算結果の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る切削加工経路創成装置及び方法並びにプログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
〔第1の実施形態〕
本実施形態に係る切削加工経路創成装置10は、加工対象物(以下「ワーク」という。)をカッタにより切削加工する加工工程と、加工工程の終了後にカッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことによりワークを加工する工作機械に適用される場合を例に挙げて説明する。また、本実施形態においては、ワークが歯車であることを例に挙げ、カッタとワークとの形状を2次元データ(平面xy上の点列)として表現し、直交するz方向に複数枚の2次元データを積層させて3次元空間のモデルを表現する歯車加工機械に適用される切削加工経路創成装置10であることとして説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る切削加工経路創成装置10の概略構成を示したブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る切削加工経路創成装置10は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、CPU(中央演算処理装置)11、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置12、HDD(Hard Disk Drive)などの補助記憶装置13、キーボードやマウスなどの入力装置14、及びモニタやプリンタなどの出力装置15などを備えて構成されている。
補助記憶装置13には、各種プログラム(切削加工経路創成プログラム)が格納されており、CPU11が補助記憶装置13からRAMなどの主記憶装置12にプログラムを読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
【0020】
図2は、切削加工経路創成装置10が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。図2に示されるように、切削加工経路創成装置10は、形状作成部20、カッタ位置推定部(カッタ位置推定手段)21、ワーク形状更新部(ワーク形状更新手段)22、干渉判定部(干渉判定手段)23、及び負荷調整部24を備えている。
【0021】
形状作成部20は、入力されたカッタ緒元に基づいてカッタの形状を示すカッタ形状データを作成するとともに、入力されたワーク緒元に基づいてワークの形状を示すワーク形状データを作成する。具体的には、形状作成部20は、ワークの表面形状を線分で示したワーク線分データをワーク形状データとし、カッタの形状を線分で示したカッタ線分データをカッタ形状データとして作成する。より具体的には、形状作成部20は、カッタの曲率が大きい箇所には、カッタの曲率が小さい箇所よりも狭い間隔で、線分を構成する点列データを与え、曲率が小さい(略直線の)箇所は広い間隔で点列データを与え、カッタ線分データをカッタ形状データとして作成する。
【0022】
そうすることにより、狭い間隔の点列データの部分は、より正確に形状が表現され、それが後に切削加工後のワーク形状データとして転写されるので、切削加工後の形状が正確に表現されることとなる。また、例えば、形状作成部20には所定の閾値を設け、曲率が所定の閾値より大きい場合を曲率が大きいこととし、曲率が所定の閾値以下となる場合を曲率が小さいこととする等によって曲率の大小を決定することとする。
【0023】
カッタ位置推定部21は、入力されたワークの加工条件及びカッタの軌跡条件に基づいて、ワーク位置を基準とするワーク座標系における加工工程のカッタ形状データの位置を推定する。また、カッタ位置推定部21は、ワークの加工条件及びカッタの軌跡条件に基づいて、ワークからカッタを移動させる場合のカッタ形状データの位置を推定する。
【0024】
ワーク形状更新部22は、推定されたカッタ形状データと、ワーク形状データとに交点がある場合に、交点の情報に基づいて加工工程終了後のワーク形状データを新たなワーク形状データとして更新する。具体的には、ワーク形状更新部22は、ワーク形状データを構成するワーク線分データと、カッタ形状データを構成するカッタ線分データとの交点である線分交点を求め、線分交点が生じた部分のカッタ線分データをワーク線分データとし、新たなワーク線分データを作成する。
【0025】
より具体的なワーク形状更新部22の処理について、図3を用いて説明する。
ワーク形状更新部22は、ワーク形状データを構成する点列データの隣り合う各点間で構成されるワーク線分データを用い、ワーク形状データの線分データとカッタ形状データの線分データとの線分交点を推定し(図3(a))、線分交点間(カッタがワークを切削している領域を構成する各線分データの交点間)のカッタ形状データをワーク形状データとして転写し、新たなカッタ形状データとして更新する(図3(b))。また、全ての加工工程が終了している場合には、処理を終了し、次の加工工程がある場合には上記図3(a)から図3(b)の処理を繰り返す(図3(c)から(d))。また、図3(e)には、加工後に、ワークからカッタを移動させる場合のカッタ形状データとワーク形状データとが示されている。
また、本実施形態においてワーク形状更新部22は、前回の交点のデータが含まれる領域が切削された場合に、前回の交点のデータは削除してワーク形状データを更新するので、切削の都度、無闇に点列データを増加させることがない。
【0026】
干渉判定部23は、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、ワーク形状更新部22によって更新された新たなワーク形状データと、ワーク座標系における移動時のカッタ形状データとの干渉可能性の有無を判定できるクリアランス量を算出する。具体的には、干渉判定部23は、カッタ形状データを構成する点列データの各点と、切削によって更新されたワーク形状データの点列データの各点とのそれぞれにおいて、クリアランス量を算出する。算出されたクリアランス量は、所定のクリアランス閾値と比較され、クリアランス閾値以下となった場合には、干渉の可能性が高いこととして判定される。
【0027】
負荷調整部24は、ワーク形状データとカッタ形状データとの重複する領域の面積を算出し(面積の算出方法は後述する。)、この面積に基づいて切削負荷を算出し、切削負荷が所定値以下となるように加工条件を調整する。重複する領域の面積は、カッタ形状データとワーク形状データとで閉じられた点列データで形成される面積を示す。また、所定値とは、機械の能力から決まる所定の切削負荷のことである。
【0028】
このように、切削面積が切削負荷と相関があることに着目し、切削面積を算出することにより、切削負荷を定量的に把握することができるので、例えば、過負荷の状態であると推定される場合には切削面積を減少させるべく切り込み量を減らす等の加工条件の調整を行うことで、過負荷を防止することができる。また、切削負荷に余裕がある場合には、切削面積を増大させるべく切り込み量を増やす等の加工条件の調整を行うことで、加工時間を短縮することができる。また、求められた切削負荷と予め設定された閾値とを比較することにより、(工具の消耗度合いが定量的に把握できるようになるので)工具寿命を提案することもできる。
【0029】
次に、上述した切削加工経路創成装置10における制御方法について、図1から図5を用いて説明する。
入力装置14を介して、カッタの形状等を示すカッタ緒元、ワークの形状等を示すワーク緒元、及びワークの加工条件やカッタの軌跡の条件等の加工工程に関わる各種条件が入力される(図4のステップSA1)。入力されたカッタ緒元に基づいてカッタ形状データ、及び入力されたワーク緒元に基づいてワーク形状データが作成される(ステップSA2)。図5(a)に示されるように、例えば、カッタ形状データは■印がプロットされて示され、切削加工前のワーク形状データは▲印がプロットされて示される。
【0030】
また、カッタ位置推定部21において、加工工程に関わる各種条件に基づいてワーク座標系を基準とした場合の加工工程におけるカッタ形状データの位置が推定され(ステップSA3)、推定されたカッタ形状データの位置と、上述したワーク形状データとの交点が算出される(ステップSA4)。このとき、図5(b)に示されるように、カッタによりワークの切削加工が開始されると、ワーク形状データとカッタ形状データとに交点が生じ、重複(オーバーラップ)する領域が現れる。
【0031】
交点がある場合には、カッタによりワークが切削加工されているので、交点の情報に基づいて、加工後のワーク形状データが新たなワーク形状データとして更新される(ステップSA5)。具体的には、図5(c)に示されるように、ワーク形状データを構成するワーク線分データと、カッタ形状データを構成するカッタ線分データとの交点である線分交点を求め、線分交点が生じた部分のカッタ線分データをワーク線分データとし、これを切削加工後の新たなワーク形状データとして更新する。
【0032】
さらに、予め入力された加工工程に関わる各種条件に基づいて、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、カッタ形状データの位置が推定される(ステップSA6)。カッタ形状データとワーク形状データとのクリアランス量が算出され、干渉可能性の有無が判定されるとともに干渉可能性の有無の判定結果が出力される(ステップSA7)。干渉の可能性があると判定された場合には、カッタをワークから遠ざける軌道を通らせる制御がなされる。
図5(d)に示されるように、カッタがワークから移動させる場合のカッタ形状データの位置が推定されると、カッタ形状データを構成する点列データの点(例えば、■印の各点)と、切削によって更新されたワーク形状データの点列データとにおいて、クリアランス量が算出される。全ての切削加工工程に対して、クリアランス算出が行われたか否かが判定され、全加工工程終了した場合には、本処理を終了する(ステップSA10)。
【0033】
全加工工程終了していない場合には、ステップSA3に戻り、次の加工工程に対し、それぞれのステップを継続する。例えば、図6(e)には次の加工工程の様子が示されており、次の切削加工時におけるカッタ形状データの推定された位置、及びカッタ形状データとワーク形状データとの交点の情報が示されている。図6(f)では、切削加工がなされたため、切削加工後のワーク形状データを新たなワーク形状データとして更新している。
【0034】
図6(g)では、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、推定されたカッタ形状データの位置が示され、算出されたクリアランス量に基づいてカッタ形状データとワーク形状データとの位置関係が示されており、カッタ位置がワーク側に重なっているので、干渉が発生している図の例が示されている。
一方、カッタ形状データとワーク形状データとの交点がある場合には、カッタ形状データとワーク形状データとの重複する領域の面積が算出され(ステップSA8)、算出された切削負荷に応じた調整を行い、本処理を終了する(ステップSA9)。
【0035】
ここで、負荷調整部24における切削面積の算出方法について説明する。
ワーク形状データとカッタ形状データとで囲まれた面積(図7(a))は、図7(b)のような多角形の面積として算出する。
ここで、多角形の面積の算出方法は、以下の(1)式のようになる。
例えば、図8に示される多角形の場合、頂点座標の列Pi=(Xi,Yi)(i=1,2,・・・n,n≧3)で与えられるものとし、数式を単純にするためPn+1≡P1と定義する。また、閉曲線C=(P1,P2,・・・Pn,Pn+1=P1)は左回り(反時計回り)であるとする。また、多角形は凸多角形である必要はないが、穴は開いていないものとする。このような場合には、以下の数式(1)に基づいて、多角形の面積を算出する。
【数1】
【0036】
以上説明してきたように、本実施形態に係る切削加工経路創成装置10及び方法並びにプログラムによれば、加工工程において推定されるカッタ形状データの位置と、ワーク形状データとに交点がある場合には、交点の情報に基づいてワーク形状データが更新され、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合には、更新されたワーク形状データと移動時のカッタ形状データとの干渉可能性が判定される。このように、加工工程と移動させる工程とを繰り返す加工の都度、カッタ形状データ位置の推定、ワーク形状データの更新、及びカッタとワークとの干渉可能性の判定がなされるので、全ての加工工程において、干渉可能性の判定を抜けなく行うことができる。
【0037】
また、ワークとカッタとをそれぞれ線分で示し、ワーク線分データとカッタ線分データとの線分交点を生成していき(交点生成法)、干渉可能性を解析することで、形状データ(ワーク形状データ及びカッタ形状データ)を構成する点を闇雲に増やすことなく、精度よく計算することができ、正確な形状データを作成することができる。また、従来のような線分除去法では分割数の粗さに応じて線分間のクリアランス判定が甘くなり、干渉有無のチェック漏れを生じる可能性があったが、本実施形態では、そうしたチェック漏れを防止することができる。
さらに、クリアランスを定量的に算出することにより、カッタを次の加工開始位置に移動させる場合において、干渉が発生する条件、タイミング、量を把握することができ、干渉回避の具体的な対策を行うことができる。また、クリアランスを定量的に算出し、クリアランス精度が向上することで、干渉を回避する目的で過度にワークから工具(ワーク)を回避させる必要がなくなるので、加工時間の短縮につながる。
【0038】
なお、本実施形態においては、切削加工経路創成装置10が、カッタ及びワーク形状をXYZ軸の3次元のモデルとして表現し、歯車を加工する歯車加工機械に適用される場合を例に挙げて説明していたが、これに限定されない。例えば、切削加工経路創成装置10は、スロット加工機械、NC加工機械、或いは、XYZ軸に加えて回転軸を2軸設けた5軸加工機で加工する任意の立体形状を成す加工物を加工する機械に適用されることとしてもよい。
例えば、ワークが5軸加工機で加工するような任意の立体形状の場合、ワークの種類(形状、精度よく加工したい面の方向等)に応じて、3次元モデルの表現形式を選ぶことが望ましい。この場合には、直交座標系を選んでもよいし、ワークの形状に応じて極座標系(r,θ,φ)や円筒座標系(r,θ,z)でのモデルを選んでもよいこととする。
【0039】
なお、本実施形態においては、干渉判定部23が、カッタ形状データの点列データの各点と、ワーク形状データの点列データの各点とのそれぞれにおいてクリアランス量を算出することとして説明していたが、これに限定されない。例えば、ワーク形状データを数ブロックに分割し、カッタ形状データが位置するブロック或いは隣接するブロックに属するワーク形状データの点列データと、カッタ形状データとのそれぞれにおいてクリアランス量を算出することとしてもよい。または、切削加工されることで生じた新しいワーク形状データの点列データと、カッタ形状データの点列データとのそれぞれにおいてクリアランス量を算出することとしてもよい。このようにクリアランス量を算出する点列データを限定することにより、クリアランス量の算出にかかる計算量を低減させることができる。
【0040】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る切削加工経路創成装置について図9から図12を用いて説明する。
本実施形態に係る切削加工経路創成装置は、第1の実施形態における構成に加え、干渉判定部が線分データを用いてクリアランスを算出する点で、上述の第1の実施形態と異なる。以下、本実施形態に係る切削加工経路創成装置について、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0041】
干渉判定部は、以下の手順でカッタ形状データを構成する点列データの各点において、それぞれクリアランスを算出し、干渉可能性を判定する。
(1)カッタ形状データを構成する点列データの任意の点(xci,yci)(i=1,2,・・・m;カッタ形状データを構成する点列データの点の数に対応する。)から、カッタの外向きの法線方向に対し、長さLcの位置に点(x1a,y1a)を設ける。なお、Lcはカッタの寸法から経験的に予め定める値であり、計算量低減の目的で使用される。(図9参照)
(2)カッタ形状データの点(xci,yci)から、カッタの内向きの法線方向に対し、長さLcの位置に点(x1b,y1b)を設ける。(図10参照)
(3)ワーク形状データを構成する点列データの2点間の線分(xwj,ywj)−(xwj+1,ywj+1)(j=1,2,・・・n;ワーク形状データを構成する点列データの点の数に対応する。)、とカッタ形状データの2点間の線分(xci,yci)−(x1a,y1a)との交点(xpa,ypa)の有無を判定し、交点が有る場合には、点(xci,yci)−交点(xpa,ypa)間の距離Laを算出する。(図9参照)
【0042】
(4)ワーク形状データを構成する点列データの2点間の線分(xwj,ywj)−(xwj+1,ywj+1)と線分(xci,yci)−(x1b,y1b)の交点(xpb,ypb)の有無を判定し、交点が有る場合には、点(xci,yci)−交点(xpb,ypb)間の距離Lbを算出する。(図10参照)
(5)交点(xpa,ypa)のみが有る場合は、クリアランス量C(i)=La(干渉なし)とする(図3参照)。交点(xpb,ypb)のみが有る場合は、クリアランス量C(i)=−Lb(干渉あり)とする(図4参照)。また、両者が有る場合は、LaとLbとの長さを比較し、Laが短ければC(i)=La(干渉なし)、Lbが短ければ、C(i)=−Lb(干渉あり)とする。(図11参照)
【0043】
また、図12には、上述したようにカッタ形状データの点列データを構成する各点においてそれぞれ算出したクリアランス量C(i)を、ワーク形状データの各点と比較して図示したものである。
【0044】
なお、本実施形態においては、クリアランス計算方法の一例を挙げて説明したが、クリアランス計算方法は、特に限定されない。例えば、特開平8−118202、特開平9−27046、特開平11−250122等で示される計算方法によってクリアランス量を算出することとしてもよい。
【0045】
このように、カッタ形状データの点列データを構成する各点におけるクリアランス量を全加工工程に対して算出することにより、カッタ形状データがワーク形状データと干渉が発生する位置、発生する干渉の程度、干渉が発生する切削加工工程のタイミング等の干渉に関する情報が把握できる。また、クリアランス精度が向上されることで、干渉を回避するために過度にワークから工具(カッタ)を回避させる必要がなくなり、加工時間の短縮につながる。
【符号の説明】
【0046】
10 切削加工経路創成装置
20 形状作成部
21 カッタ位置推定部(カッタ位置推定手段)
22 ワーク形状更新部(ワーク形状更新手段)
23 干渉判定部(干渉判定手段)
24 負荷調整部(負荷調整手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物であるワークをカッタにより加工する加工工程と、該加工工程終了後に前記カッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことにより前記ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成装置であって、
前記ワークの位置を基準とするワーク座標系において、前記加工工程における前記カッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定手段と、
推定された前記カッタ形状データと、前記ワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、前記交点の情報に基づいて、前記加工工程終了後の前記ワーク形状データを新たな前記ワーク形状データとして更新するワーク形状更新手段と、
前記カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、前記ワーク形状更新手段によって更新された新たな前記ワーク形状データと、前記ワーク座標系における移動時の前記カッタ形状データとの干渉の有無を判定する干渉判定手段と
を備える切削加工経路創成装置。
【請求項2】
ワーク形状更新手段は、前記ワークの表面形状を線分で示したワーク線分データと、前記カッタの形状を線分で示したカッタ線分データとの交点である線分交点を求め、該線分交点が生じた部分の前記カッタ線分データを前記ワーク線分データとし、新たな前記ワーク線分データを作成する請求項1に記載の切削加工経路創成装置。
【請求項3】
前記ワーク形状データと前記カッタ形状データとの重複する領域の面積を算出し、該面積に基づいて切削負荷を算出し、該切削負荷が所定値以下となるように加工条件を調整する負荷調整手段を備える請求項1または請求項2に記載の切削加工経路創成装置。
【請求項4】
前記カッタの曲率が大きい箇所には、カッタの曲率が小さい箇所よりも狭い間隔で、線分を構成する点列データを与え、前記カッタ形状データを作成する形状作成手段を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の切削加工経路創成装置。
【請求項5】
加工対象物であるワークをカッタにより加工する加工工程と、該加工工程終了後に前記カッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことにより前記ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成方法であって、
前記ワークの位置を基準とするワーク座標系において、前記加工工程における前記カッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定ステップと、
推定された前記カッタ形状データと、前記ワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、前記交点の情報に基づいて、前記加工工程終了後の前記ワーク形状データを新たな前記ワーク形状データとして更新するワーク形状更新ステップと、
前記カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、前記ワーク形状更新手段によって更新された新たな前記ワーク形状データと、前記ワーク座標系における移動時の前記カッタ形状データとの干渉の有無を判定する干渉判定ステップと
を有する切削加工経路創成方法。
【請求項6】
加工対象物であるワークをカッタにより加工する加工工程と、該加工工程終了後に前記カッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことにより前記ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成プログラムであって、
前記ワークの位置を基準とするワーク座標系において、前記加工工程における前記カッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定処理と、
推定された前記カッタ形状データと、前記ワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、前記交点の情報に基づいて、前記加工工程終了後の前記ワーク形状データを新たな前記ワーク形状データとして更新するワーク形状更新処理と、
前記カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、前記ワーク形状更新処理によって更新された新たな前記ワーク形状データと、前記ワーク座標系における移動時の前記カッタ形状データとの干渉の有無を判定する干渉判定処理と
をコンピュータに実行させるための切削加工経路創成プログラム。
【請求項1】
加工対象物であるワークをカッタにより加工する加工工程と、該加工工程終了後に前記カッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことにより前記ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成装置であって、
前記ワークの位置を基準とするワーク座標系において、前記加工工程における前記カッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定手段と、
推定された前記カッタ形状データと、前記ワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、前記交点の情報に基づいて、前記加工工程終了後の前記ワーク形状データを新たな前記ワーク形状データとして更新するワーク形状更新手段と、
前記カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、前記ワーク形状更新手段によって更新された新たな前記ワーク形状データと、前記ワーク座標系における移動時の前記カッタ形状データとの干渉の有無を判定する干渉判定手段と
を備える切削加工経路創成装置。
【請求項2】
ワーク形状更新手段は、前記ワークの表面形状を線分で示したワーク線分データと、前記カッタの形状を線分で示したカッタ線分データとの交点である線分交点を求め、該線分交点が生じた部分の前記カッタ線分データを前記ワーク線分データとし、新たな前記ワーク線分データを作成する請求項1に記載の切削加工経路創成装置。
【請求項3】
前記ワーク形状データと前記カッタ形状データとの重複する領域の面積を算出し、該面積に基づいて切削負荷を算出し、該切削負荷が所定値以下となるように加工条件を調整する負荷調整手段を備える請求項1または請求項2に記載の切削加工経路創成装置。
【請求項4】
前記カッタの曲率が大きい箇所には、カッタの曲率が小さい箇所よりも狭い間隔で、線分を構成する点列データを与え、前記カッタ形状データを作成する形状作成手段を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の切削加工経路創成装置。
【請求項5】
加工対象物であるワークをカッタにより加工する加工工程と、該加工工程終了後に前記カッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことにより前記ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成方法であって、
前記ワークの位置を基準とするワーク座標系において、前記加工工程における前記カッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定ステップと、
推定された前記カッタ形状データと、前記ワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、前記交点の情報に基づいて、前記加工工程終了後の前記ワーク形状データを新たな前記ワーク形状データとして更新するワーク形状更新ステップと、
前記カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、前記ワーク形状更新手段によって更新された新たな前記ワーク形状データと、前記ワーク座標系における移動時の前記カッタ形状データとの干渉の有無を判定する干渉判定ステップと
を有する切削加工経路創成方法。
【請求項6】
加工対象物であるワークをカッタにより加工する加工工程と、該加工工程終了後に前記カッタを加工開始位置まで移動させる工程とを繰り返すことにより前記ワークを加工する工作機械に適用される切削加工経路創成プログラムであって、
前記ワークの位置を基準とするワーク座標系において、前記加工工程における前記カッタの形状を示すカッタ形状データの位置を推定するカッタ位置推定処理と、
推定された前記カッタ形状データと、前記ワークの形状を示すワーク形状データとに交点がある場合には、前記交点の情報に基づいて、前記加工工程終了後の前記ワーク形状データを新たな前記ワーク形状データとして更新するワーク形状更新処理と、
前記カッタを次の加工開始位置に移動させる場合に、前記ワーク形状更新処理によって更新された新たな前記ワーク形状データと、前記ワーク座標系における移動時の前記カッタ形状データとの干渉の有無を判定する干渉判定処理と
をコンピュータに実行させるための切削加工経路創成プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−8276(P2013−8276A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141665(P2011−141665)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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