説明

切換弁、及び四方切換弁

【課題】冷媒回路の高圧が比較的高くなっても、弁体を確実に動作させることができる切換弁を提供する。
【解決手段】弁体50には、該弁体50の進退方向と直交する方向の両端部にそれぞれ端面部52,53が形成され、ケーシング30の内部には、上記弁体50の各端面部52,53に対する摺接面を形成する2つの弁座部61,62が、上記弁体50の可動範囲に亘って設けら、上記弁体50が進退することで、吐出側ポート21や他のポート22,23,24の連通状態が切り換わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルが行われる冷媒回路に接続される切換弁、及び主弁とパイロット弁とを有する四方切換弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和装置等の冷媒回路には、冷媒の流路を変更するための切換弁が設けられている。この種の切換弁として、特許文献1には、例えば空気調和装置の冷房と暖房とを切り換えるために、冷媒の循環方向を可逆とする四方切換弁が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている四方切換弁は、同文献の図5に示すように、主弁と、この主弁を駆動するためのパイロット弁とを有している。主弁は、4つのポートが形成されるケーシングの内部に、弁体(いわゆるスライドバルブ)が収容されている。4つのポートは、冷媒回路の圧縮機の吐出側と連通する吐出側ポートと、冷媒回路の圧縮機の吸入側と連通する吸入側ポートと、冷媒回路の室内熱交換器側と連通する室内側ポートと、冷媒回路の室外熱交換器側と連通する室外側ポートとから成る。ケーシングの内部には、吐出側ポートの流出端が連通する高圧空間が区画されている。この高圧空間には、スライドバルブが変位自在に収容されている。このスライドバルブは、縦断面が略半円形状に形成され、その開放端部がケーシング内のバルブシートに当接している。また、スライドバルブの進退方向の両端側には、ピストンがそれぞれ設けられている。これらのピストンとスライドバルブとは、連結部材を介して一体になっている。各ピストンは、ケーシングの内部において、高圧空間と仕切られる2つの背圧室をそれぞれ区画している。各背圧室は、パイロット弁の弁体の切り換えに伴って、一方の背圧室が冷媒回路の高圧側と連通し、他方の背圧室が冷媒回路の低圧側と連通する。このような高圧と低圧の連通状態を、2つの背圧室で相互に反転させることで、各ピストンと一体となるスライドバルブが、第1位置と第2位置との間を変位する。
【0004】
ピストンが第1位置に変位すると、スライドバルブの内部空間を通じて吸入側ポートと室内側ポートとが連通すると同時に、スライドバルブの外部空間(即ち、高圧空間)を通じて吐出側ポートと室外側ポートとが連通する。これにより、冷媒回路では、圧縮機で圧縮された高圧冷媒が、室外熱交換器で凝縮して室内熱交換器で蒸発する冷凍サイクル(いわゆる冷房サイクル)が行われる。また、ピストンが第2位置に変位すると、スライドバルブの内部空間を通じて吸入側ポートと室外側ポートとが連通すると同時に、スライドバルブの外部空間(即ち、高圧空間)を通じて吐出側ポートと室内側ポートとが連通する。これにより、冷媒回路では、圧縮機で圧縮された冷媒が、室内熱交換器で凝縮して室外熱交換器で蒸発する冷凍サイクル(いわゆる暖房サイクル)が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−213537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空気調和装置等では、冷媒回路の冷媒として二酸化炭素(CO)を用い、この冷媒を比較的高い圧力(例えば臨界圧力)まで圧縮する冷凍サイクルを行うものがある。この種の空気調和装置の冷媒回路に、上記のような四方切換弁を適用すると、主弁のケーシング内の高圧空間の圧力も極めて高くなってしまう。このようにして、ケーシング内の高圧空間の圧力が高くなると、スライドバルブ(弁体)をバルブシート(弁座部)側の方向へ押し付けるガス力が増大してしまう。その結果、このような押し付け力に起因して、スライドバルブを確実に動作させることができず、四方切換弁の機能が損なわれてしまう。また、四方切換弁では、上述した従来例の主弁と同様の構造のパイロット弁を採用することもある。このパイロット弁についても、ケーシング内の高圧空間の圧力が高くなることで、スライドバルブの動作不良を招く虞がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷媒回路の高圧が比較的高くなっても、弁体を確実に動作させることができる切換弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる冷媒回路(11)の圧縮機(12)の吐出側と連通する吐出側ポート(21,101)と、上記冷媒回路(11)の所定箇所と連通する少なくとも2つのポート(22,23,24,102,103,104)とが接続され、内部に上記吐出側ポート(21,101)と連通する高圧空間(S1)が形成されるケーシング(30,71,91)と、該ケーシング(30,71,91)内の高圧空間(S1)に収容されて、上記各ポート(21〜24,101〜104)の連通状態を切り換えるように進退する弁体(50,72,95)と、を備えた切換弁を対象とする。そして、この切換弁の弁体(50,72,95)には、該弁体(50,72,95)の進退方向と直交する方向の両端部にそれぞれ端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)が形成され、上記ケーシング(30,71,91)の内部には、上記弁体(50,72,95)の各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)に対する摺接面を形成する2つの弁座部(61,62,73,74,96,97)が、上記弁体(50,72,95)の可動範囲に亘って設けられていることを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、上記ケーシング(30,71,91)内の高圧空間(S1)に弁体(50,72,95)が収容される。この弁体(50,72,95)がケーシング(30,71,91)の内部を進退することで、吐出側ポート(21,101)や他のポート(22〜24,102〜104)の連通状態が切り換わる。本発明の弁体(50,72,95)がケーシング(30,71,91)の内部を進退すると、弁体(50,72,95)の進退方向と直交する方向の両端側の各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)が、2つの弁座部(61,62,73,74,96,97)の摺接面にそれぞれ摺接する。このように弁体(50,72,95)の各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)を各弁座部(61,62,73,74,96,97)と摺接させることで、各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)には、高圧冷媒の押し付け力が作用しにくくなる。しかも、弁体(50,72,95)の各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)と弁座部(61,62,73,74,96,97)の摺接面との間の隙間を通じて、高圧冷媒の押し付け力が各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)に作用したとしても、これらの押し付け力は弁体(50,72,95)の両端にそれぞれ作用する。従って、弁体(50,72,95)では、各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)に作用する押し付け力が互いに向かい合うため、これらの押し付け力が相殺される。その結果、2つの弁座部(61,62,73,74,96,97)の間では、高圧空間(S1)の内部においても、弁体(50,72,95)を円滑に動作させることができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記弁体(50,72,95)は、軸方向両端にそれぞれ開口が形成され、且つ両開口の外周縁部に上記端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)がそれぞれ形成される筒状部材で構成されていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明の弁体(50,72,95)は、軸方向の両端にそれぞれ開口が形成される筒状部材で構成される。そして、弁体(50,72,95)の両開口の外周縁部には、端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)がそれぞれ形成される。つまり、第2の発明では、環状の端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)と弁座部(61,62,73,74,96,97)の摺接面とが互いに摺接する。このようにして弁体(50,72,95)の各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)を環状すると、高圧空間(S1)の高圧冷媒の圧力に対する受圧面が小さくなる。従って、弁体(50,72,95)の両端に作用する押し付け力を更に軽減でき、弁体(50,72,95)を円滑に動作させることができる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、複数の上記ポートが、上記吐出側ポート(21,101)と、上記冷媒回路(11)の圧縮機(12)の吸入側と繋がる吸入側ポート(22,102)と、冷媒回路(11)の所定箇所と繋がる第1ポート(23,103)及び第2ポート(24,104)とを含み、上記筒状部材(50,72,95)は、上記吐出側ポート(21,101)と上記第1ポート(23,103)とが筒状部材(50,72,95)の外部空間(S1)を通じて連通すると同時に上記吸入側ポート(22,102)と上記第2ポート(24,104)とが筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)を通じて連通する第1位置と、上記吐出側ポート(21,101)と第2ポート(24,104)とが筒状部材(50,72,95)の外部空間(S1)を通じて連通すると同時に上記吸入側ポート(22,102)と第1ポート(23,103)とが上記筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)を通じて連通する第2位置との間で進退するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明の切換弁には、吐出側ポート(21,101)と吸入側ポート(22,102)と第1ポート(23,103)と第2ポート(24,104)とが設けられる。筒状部材としての弁体(50,72,95)が第1位置に変位すると、吐出側ポート(21,101)と第1ポート(23,103)とが筒状部材(50,72,95)の外部空間(S1)を通じて連通し、吸入側ポート(22,102)と第2ポート(24,104)とが筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)を通じて連通する。これにより、圧縮機(12)で圧縮された冷媒は、吐出側ポート(21,101)及び筒状部材(50,72,95)の外部空間(S1)を経由して第1ポート(23,103)に流出する。また、第2ポート(24,104)の流入側の冷媒は、この第2ポート(24,104)、筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)、及び吸入側ポート(22,102)を経由して圧縮機(12)に吸入される。
【0014】
また、筒状部材(50,72,95)としての弁体(50,72,95)が第2位置に変位すると、吐出側ポート(21,101)と第2ポート(24,104)とが筒状部材(50,72,95)の外部空間(S1)を通じて連通すると同時に吸入側ポート(22,102)と第1ポート(23,103)とが筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)を通じて連通する。これにより、圧縮機(12)で圧縮された冷媒は、吐出側ポート(21,101)及び筒状部材(50,72,95)の外部空間(S1)を経由して第2ポート(24,104)に流出する。また、第1ポート(23,103)の流入側の冷媒は、この第1ポート(23,103)、筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)、及び吸入側ポート(22,102)を経由して圧縮機(12)に吸入される。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、上記2つの弁座部(61,62,73,74,96,97)のうちの一方の弁座部(61,73,96)には、上記第1位置から第2位置までの間の筒状部材(50,72,95)の一端側の開口面に臨むように上記吸入側ポート(22,102)が接続され、上記2つの弁座部(61,62,73,74,96,97)のうちの他方の弁座部(62,74,97)には、上記第2位置の筒状部材(50,72,95)の他端側の開口面に臨むように第1ポート(23,103)が接続され、且つ上記第1位置の筒状部材(50,72,95)の他端側の開口面に臨むように第2ポート(24,104)が接続されていることを特徴とする。
【0016】
第4の発明では、2つの弁座部(61,62,73,74,96,97)のうちの一方の弁座部(61,73,96)に吸入側ポート(22,102)が接続され、他方の弁座部(62,74,97)に第1ポート(23,103)と第2ポート(24,104)とが接続される。筒状部材(50,72,95)が第1位置になると、吸入側ポート(22,102)が筒状部材(50,72,95)の一端側の開口面に臨み、第2ポート(24,104)が筒状部材(50,72,95)の他端側の開口面に臨む状態となる。これにより、吸入側ポート(22,102)と第2ポート(24,104)とは、筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)を通じて軸方向に連通する状態となる。その結果、第2ポート(24,104)から吸入側ポート(22,102)へ流れる低圧冷媒の圧力損失を低減できる。
【0017】
また、筒状部材(50,72,95)が第2位置になると、吸入側ポート(22,102)が筒状部材(50,72,95)の一端側の開口面に臨み、第1ポート(23,103)が筒状部材(50,72,95)の他端側の開口面に臨む状態となる。これにより、吸入側ポート(22,102)と第1ポート(23,103)とは、筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)を通じて軸方向に連通する状態となる。その結果、第1ポート(23,103)から吸入側ポート(22,102)へ流れる低圧冷媒の圧力損失を低減できる。
【0018】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、上記筒状部材(50,72,95)の各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)に設けられて、該筒状部材(50,72,95)の外部空間(S1)と内部空間(S2)とを仕切るシール部(56,57,86,87)を備えていることを特徴とする。
【0019】
第5の発明では、筒状部材(50,72,95)の各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)にそれぞれシール部(56,57,86,87)が設けられる。これにより、筒状部材(50,72,95)の外部空間(即ち、高圧空間(S1))の冷媒が、筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)に漏れてしまうことが、シール部(56,57,86,87)によって抑制される。
【0020】
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、上記弁体(50,72,95)を進退させるためのパルスモータ式の駆動機構(40)を備えていることを特徴とする。
【0021】
第6の発明では、弁体(50,72,95)が、パルスモータ式の駆動機構(40)によって駆動される。従って、この弁体(50,72,95)を比較的緩やかに変位させることができ、弁体(50,72,95)の変位に伴う騒音を軽減できる。
【0022】
第7の発明は、主弁(70)と、該主弁(70)を駆動するためのパイロット弁(90)とを備えた四方切換弁を対象としている。そして、この四方切換弁は、主弁(70)とパイロット弁(90)のいずれか一方又は両方が、第1乃至第5のいずれか1つの発明の切換弁で構成されていることを特徴とする。
【0023】
第7の発明では、主弁(70)とパイロット弁(90)とを有する、パイロット式の四方切換弁において、主弁(70)とパイロット弁(90)のいずれか一方又は両方が、第1乃至第5のいずれか1つの発明の切換弁で構成される。従って、主弁(70)やパイロット弁(90)の弁体(72,95)を円滑に動作させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、弁体(50,72,95)の両端に端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)を形成し、各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)と摺接する摺接面を有する弁座部(61,62,73,74,96,97)を、弁体(50,72,95)の可動範囲に亘って形成するようにしている。これにより、弁体(50,72,95)が進退する際、高圧空間(S1)の圧力が弁体(50,72,95)の端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)に作用しにくくなる。また、弁体(50,72,95)の両端の各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)にそれぞれ押し付け力を作用させることで、これらの押し付け力を互いに相殺することができる。その結果、弁体(50,72,95)の可動範囲に亘って、この弁体(50,72,95)を円滑に進退させながら、各ポート(21〜24,101〜104)の連通状態を切り換えることができる。従って、例えば二酸化炭素(CO)を臨界圧力以上まで圧縮する冷媒回路に本発明の切換弁を適用した場合にも、弁体(50,72,95)を確実に動作させることができ、切換弁の信頼性を確保できる。また、このようにして弁体(50,72,95)を円滑に動作させるようにすることで、弁体(50,72,95)の進退に伴う動作音(即ち、切り換え弁の切り換え音)の低減が可能となる。
【0025】
第2の発明によれば、弁体(50,72,95)を筒状部材(50,72,95)で構成し、該筒状部材(50,72,95)の両端の開口の外周縁部にそれぞれ端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)を形成している。このため、弁体(50,72,95)の軸方向両端の端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)では、高圧冷媒が作用する受圧面積を最小限に抑えることができる。従って、弁体(50,72,95)を更に円滑に動作させることができ、切換弁の信頼性の向上、切り換え音の低減を図ることができる。
【0026】
第3の発明によれば、吐出側ポート(21,101)と吸入側ポート(22,102)と第1ポート(23,103)と第2ポート(24,104)とを有する4方式の切換弁において、筒状部材(50,72,95)を第1位置と第2位置との間で進退させることで、比較的単純な構成により、各ポート(21〜24,101〜104)の連通状態を切り換えることができる。
【0027】
特に第4の発明によれば、筒状部材(50,72,95)を第1位置とすることで、吸入側ポート(22,102)と第2ポート(24,104)とを筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)を通じて軸方向に連通させることができる。また、筒状部材(50,72,95)を第2位置とすることで、吸入側ポート(22,102)と第1ポート(23,103)とを筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)を通じて軸方向に連通させることができる。以上のようにして、各ポート(22〜24,102〜104)を筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)で軸方向に連通させると、筒状部材(50,72,95)の内部における冷媒の圧力損失を低減できる。特に、吸入側ポート(22,102)へ送られる低圧冷媒は、圧力損失の影響によりその流量が低下し易い。しかしながら、このように低圧冷媒が流れる流路を、筒状部材(50,72,95)の軸方向に確保することで、冷媒流量の低下を確実に回避できる。
【0028】
第5の発明では、筒状部材(50,72,95)の軸方向両端の各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)にそれぞれシール部(56,57,86,87)を設けている。これにより、筒状部材(50,72,95)の外部空間(高圧空間(S1))の冷媒が、筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)に漏れ込んでしまうことを抑制できる。その結果、高圧冷媒から低圧冷媒への熱ロスを回避でき、この切換弁の信頼性を確保できる。
【0029】
第6の発明は、弁体(50,72,95)をパルスモータ式の駆動機構(40)によって駆動させている。このため、高圧空間(S1)内の弁体(50,72,95)を比較的緩やかに変位させることができ、弁体(50,72,95)の切り換え動作に伴う騒音を更に軽減できる。
【0030】
第7の発明では、四方切換弁の主弁(70)やパイロット弁(90)を第1乃至第5の発明の切換弁とするため、弁体(50,72,95)を円滑且つ確実に変位させることができ、信頼性や静粛性に優れた四方切換弁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施形態1に係る空気調和装置の冷媒回路の概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る切換弁の縦断面図であり、弁体が第1位置にある状態を示したものである。
【図3】図3は、実施形態1に係る切換弁のIII-III断面図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る切換弁の縦断面図であり、弁体が第2位置にある状態を示したものである。
【図5】図5は、実施形態1の変形例に係る切換弁の縦断面図であり、弁体が第1位置にある状態を示したものである。
【図6】図6は、実施形態1の変形例に係る切換弁の縦断面図であり、弁体が第2位置にある状態を示したものである。
【図7】図7は、実施形態2に係る四方切換弁であり、主弁側の弁体とパイロット弁側の弁体との双方が第1位置にある状態を示したものである。
【図8】図8は、実施形態2に係る四方切換弁の主弁のVIII-VIII断面図である。
【図9】図9は、実施形態2に係る四方切換弁であり、主弁側の弁体とパイロット弁側の弁体との双方が第2位置にある状態を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0033】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る切換弁(20)は、パイロット弁を有さない四方式の切換弁を構成している。この切換弁(20)は、冷房と暖房とを切り換えて行う空気調和装置(10)の冷媒回路(11)に接続されている。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素(CO)が充填されている。冷媒回路(11)では、冷媒が循環することで冷凍サイクルが行われる。また、冷媒回路(11)では、冷媒が臨界圧力以上まで圧縮される、いわゆる超臨界サイクルが行われる。
【0034】
〈冷媒回路の概略構成〉
図1に示すように、冷媒回路(11)には、圧縮機(12)と室外熱交換器(13)と膨張弁(14)と室内熱交換器(15)とが接続されている。圧縮機(12)は、例えばスクロール式の圧縮機で構成されている。また、圧縮機(12)は、いわゆるインバータ制御によって容量が可変となっている。室外熱交換器(13)は、室外に設けられている。室外熱交換器(13)は、室外ファン(図示省略)が送風する室外空気と冷媒とを熱交換させる。膨張弁(14)は、冷媒を減圧するための減圧機構であり、例えば電子膨張弁で構成されている。室内熱交換器(15)は、室内に配置されている。室内熱交換器(15)は、室内ファン(図示省略)が送風する室内空気と冷媒とを熱交換させる。
【0035】
冷媒回路(11)には、上述の切換弁(20)が接続されている。切換弁(20)は、吐出側ポート(21)と吸入側ポート(22)と室外側ポート(23)と室内側ポート(24)とを有している。吐出側ポート(21)は、圧縮機(12)の吐出側に設けられる吐出管(12a)に接続されている。吸入側ポート(22)は、圧縮機(12)の吸入側に設けられる吸入管(12b)に接続されている。室外側ポート(23)は、室外熱交換器(13)の一端側に設けられるガス配管に接続され、第1ポートを構成している。室内側ポート(24)は、室内熱交換器(14)の一端側に設けられるガス配管に接続され、第2ポートを構成している。
【0036】
〈切換弁の詳細構造〉
図2〜図4に示す切換弁(20)は、筒状のケーシング(30)を備えている。ケーシング(30)は、大径筒部(31)と、該大径筒部(31)よりも小径の小径筒部(32)とが一体的に連結されて構成されている。大径筒部(31)は、円筒状の大径側胴部(31a)と、該大径側胴部(31a)の軸方向の一端側(図2における左側)の開口を閉塞する大径側閉塞部(31b)とを有している。大径側閉塞部(31b)の中央には、ケーシング(30)の内部に向かって膨出する大径側凹部(31c)が形成されている。同様に、小径筒部(32)は、円筒状の小径側胴部(32a)と、該小径側胴部(32a)の軸方向の一端側(図2における右側の開口)を閉塞する小径側閉塞部(32b)とを有している。小径側閉塞部(32b)の中央には、ケーシング(30)の内部に向かって膨出する小径側凹部(32c)が形成されている。
【0037】
切換弁(20)は、駆動機構(40)を備えている。実施形態1に係る切換弁(20)の駆動機構(40)は、いわゆるパルスモータ(ステッピングモータ)で構成されている。駆動機構(40)は、ステータ部(41)とロータ部(42)と一対の軸受け部(43,44)と駆動軸(45)とを有している。
【0038】
ステータ部(41)は、ケーシング(30)の小径筒部(32)の外周に設けられている。ロータ部(42)は、筒部材(42a)と、該筒部材(42a)の内側に嵌合して保持される雌ネジ部(42b)とを有している。軸受け部(43,44)は、ロータ部(42)を軸方向の両側から挟み込むように小径筒部(32)の内壁に固定されている。軸受け部(43,44)は、ロータ部(42)を回転自在に支持する玉軸受けを構成している。駆動軸(45)は、ロータ部(42)の内側に保持されている。駆動軸(45)は、小径筒部(32)の内部から大径筒部(31)の内部に跨るようにして、ケーシング(30)の軸方向に延びている。駆動軸(45)の外周面には、雄ネジ部(45a)が形成されている。雄ネジ部(45a)は、ロータ部(42)の雌ネジ部(42b)に螺合している。また、駆動軸(45)の先端部(図2における左側の端部)には、略円筒状に形成された環状保持部(46)が固定されている。
【0039】
ケーシング(30)の内部には、スライドバルブ(50)と第1バルブシート(61)と第2バルブシート(62)とが設けられている。スライドバルブ(50)は、各ポート(21,22,23,24)の連通状態を切り換えるための弁体を構成している。スライドバルブ(50)は、耐圧性に優れた金属材料で構成されている。また、スライドバルブ(50)は、軸方向の両端にそれぞれ開口(52a,52b)が形成される筒状部材を構成している。スライドバルブ(50)の内部には、円柱状の内部空間(S2)が形成されている。スライドバルブ(50)は、バルブ本体部(51)と第1フランジ部(52)と第2フランジ部(53)とを有している。バルブ本体部(51)の外径は、上記環状保持部(46)の内径と概ね等しくなっている。即ち、スライドバルブ(50)は、環状保持部(46)の内側にバルブ本体部(51)が内嵌することで、環状保持部(46)に保持されている。
【0040】
一対のフランジ部(52,53)は、バルブ本体部(51)の軸方向両端の各開口の外周縁部にそれぞれ形成されている。一対のフランジ部(52,53)は、環状保持部(46)を軸方向の両側から挟み込むように、バルブ本体部(51)から径方向に延出している。各フランジ部(52,53)の外径は、環状保持部(46)の内径よりも大きくなっている。これにより、フランジ部(52,53)は、環状保持部(46)の内部からバルブ本体部(51)が外れてしまうのを防止するための、抜け止めとして機能している。また、フランジ部(52,53)は、軸方向の端面にフラットな面(平面部)を形成している。以上のようにして、各フランジ部(52,53)は、スライドバルブ(50)の進退方向と直交する方向の両端部に端面部を形成している。
【0041】
また、一対のフランジ部(52,53)には、それぞれ環状溝(54,55)が形成されている。具体的に、第1フランジ部(52)の軸方向の端面には、第1環状溝(54)が形成され、第2フランジ部(53)の軸方向の端面には、第2環状溝(55)が形成されている。そして、第1環状溝(54)には、第1オーリング(56)が嵌合し、第2環状溝(55)には、第2オーリング(57)が嵌合している。これらのオーリング(56,57)は、スライドバルブ(50)の外部空間(S1)と内部空間(S2)とを仕切るためのシール部を構成している。
【0042】
第1バルブシート(61)と第2バルブシート(62)とは、スライドバルブ(50)に対応する一対の弁座部を構成している。これらのバルブシート(61,62)は、スライドバルブ(50)の各フランジ部(52,53)に対する摺接面(61a,62a)を構成するように、バルブシート(61,62)の可動範囲(進退範囲)に亘って設けられている。各バルブシート(61,62)は、互いに対向するようにして、大径筒部(31)の内壁に固定されている(図3を参照)。各バルブシート(61,62)は、ケーシング(30)の軸方向に亘る縦断面が三日月状に形成されている。即ち、各バルブシート(61,62)は、フラットな面を構成する摺接面(61a,62a)と、大径筒部(31)の内周壁面に沿うような円弧面(61b,62b)とをそれぞれ有している。各バルブシート(61,62)は、各々の摺接面(61a,62a)が略平行となり、且つ各々の摺接面(61a,62a)の間の距離がスライドバルブ(50)の軸方向の長さと概ね等しくなるように配設されている。そして、第1バルブシート(61)と第2バルブシート(62)との間には、スライドバルブ(50)が進退自在に狭持されている。具体的に、スライドバルブ(50)は、ケーシング(30)の軸方向において、第1位置(図2に示す位置)と第2位置(図4に示す位置)との間を進退するように構成されている。
【0043】
上記ケーシング(30)の大径筒部(31)の外周壁には、吐出側ポート(21)の端部(流出端)が接続している。吐出側ポート(21)の接続部は、大径筒部(31)の外周壁のうち第1バルブシート(61)と第2バルブシート(62)との間に位置している。吐出側ポート(21)の端部は、ケーシング(30)の内部に連通している。これにより、ケーシング(30)の内部には、圧縮機(12)で圧縮された後の高圧冷媒(吐出冷媒)が導入される高圧空間(S1)が形成されている。この高圧空間(S1)は、スライドバルブ(50)の外部空間を構成している。
【0044】
第1バルブシート(61)には、吸入側開口(63)が厚さ方向に貫通して形成されている。吸入側開口(63)には、吸入側ポート(22)の端部が接続している。吸入側ポート(22)は、第1位置のスライドバルブ(50)における第1フランジ部(52)内と、第2位置のスライドバルブ(50)における第1フランジ部(52)内との双方に臨むように配設されている。即ち、第1バルブシート(61)には、第1位置から第2位置までの間のスライドバルブ(50)の一端側の開口面(52a)に臨むように吸入側ポート(22)が接続されている。
【0045】
第2バルブシート(62)には、室内側開口(64)と室外側開口(65)とがケーシング(30)の軸方向に所定の間隔を置いて形成されている。室内側開口(64)と室外側開口(65)とは、第2バルブシート(62)を厚さ方向に貫通して形成されている。
【0046】
室内側開口(64)には、室内側ポート(24)の端部が接続している。室内側ポート(24)は、第1位置のスライドバルブ(50)における第2フランジ部(62)内に臨むように配設されている。即ち、第2バルブシート(62)には、第1位置のスライドバルブ(50)の他端側の開口面(53a)に臨むように室内側ポート(24)が接続している。
【0047】
室外側開口(65)には、室外側ポート(23)の端部が接続している。室外側ポート(23)は、第2位置のスライドバルブ(50)における第2フランジ部(62)内に臨むように配設されている。即ち、第2バルブシート(62)には、第2位置のスライドバルブ(50)の他端側の開口面(53a)に臨むように室外側ポート(23)が接続している。
【0048】
以上ような構成により、駆動機構(40)によって駆動されるスライドバルブ(50)は、各ポート(21,22,23,24)の連通状態を切り換えるように、ケーシング(30)内を進退する。具体的に、スライドバルブ(50)は、吐出側ポート(21)と室内側ポート(24)とがスライドバルブ(50)の外部空間(高圧空間(S1))を通じて連通すると同時に吸入側ポート(22)と室外側ポート(23)とがスライドバルブ(50)の内部空間(S2)を通じて連通する第1位置(図2に示す位置)と、吐出側ポート(21)と室外側ポート(23)とがスライドバルブ(50)の外部空間(高圧空間(S1))を通じて連通すると同時に吸入側ポート(22)と室内側ポート(24)とがスライドバルブ(50)の内部空間(S2)を通じて連通する第2位置(図4に示す位置)との間で進退するように構成されている。以上のように、スライドバルブ(50)の内部空間(S2)は、常に吸入側ポート(22)と連通して低圧空間を構成している。即ち、ケーシング(30)の内部は、スライドバルブ(50)の外部に区画されて高圧冷媒で満たされる高圧空間(S1)と、スライドバルブ(50)の内部に区画されて低圧冷媒で満たされる低圧空間(S2)とに仕切られている。
【0049】
−運転動作−
まず、本実施形態に係る空気調和装置(10)の基本的な運転動作について図1を参照しながら説明する。空気調和装置(10)は、切換弁(20)の切り換え動作に伴って冷房運転と暖房運転とを行う。なお、図1において、実線で示す矢印は冷房運転時における冷媒の流れる方向を意味し、破線で示す矢印は暖房運転時における冷媒の流れる方向を意味している。
【0050】
〈冷房運転〉
冷房運転では、切換弁(20)が、吐出管(12a)と室内熱交換器(15)とを連通させると同時に吸入管(12b)と室外熱交換器(13)とを連通させる状態となる。圧縮機(12)が運転されると、冷媒回路(11)の吸入管(12b)から圧縮機(12)に吸入された冷媒は、臨界圧力よりも高い圧力まで圧縮される。圧縮機(12)で圧縮された冷媒は、吐出管(12a)を流れて切換弁(20)を通過した後、室外熱交換器(13)を流れる。室外熱交換器(13)では、冷媒が室外空気へ放熱する。室外熱交換器(13)で放熱した冷媒は、膨張弁(14)を通過して減圧された後、室内熱交換器(15)を流れる。室内熱交換器(15)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。その結果、室内空気が冷却されて冷房が行われる。室内熱交換器(15)で蒸発した冷媒は、吸入管(12b)から圧縮機(12)に吸入されて再び圧縮される。
【0051】
〈暖房運転〉
暖房運転では、切換弁(20)が、吐出管(12a)と室外熱交換器(13)とを連通させると同時に吸入管(12b)と室内熱交換器(15)とを連通させる状態となる。圧縮機(12)が運転されると、冷媒回路(11)の吸入管(12b)から圧縮機(12)に吸入された冷媒は、臨界圧力よりも高い圧力まで圧縮される。圧縮機(12)で圧縮された冷媒は、吐出管(12a)を流れて切換弁(20)を通過した後、室内熱交換器(15)を流れる。室内熱交換器(15)では、冷媒が室内空気へ放熱する。その結果、室内空気が加熱されて暖房が行われる。室内熱交換器(15)で放熱した冷媒は、膨張弁(14)を通過して減圧された後、室外熱交換器(13)を流れる。室外熱交換器(13)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(13)で蒸発した冷媒は、吸入管(12b)から圧縮機(12)に吸入されて再び圧縮される。
【0052】
〈切換弁の動作〉
空気調和装置(10)において、上述した冷房運転や暖房運転を切り換える際には、切換弁(20)で以下のような動作が行われる。
【0053】
例えば冷房運転を行う際、スライドバルブ(50)が図4に示す第2位置であったとする。この状態から、スライドバルブ(50)を図2に示す第1位置に変位させる際には、ロータ部(42)が所定方向に回転し、雌ネジ部(42b)もこれと同じ方向に回転する。雌ネジ部(42b)が回転すると、雌ネジ部(42b)に螺合する駆動軸(45)が徐々に前進していく。その結果、駆動軸(45)の先端に保持されるスライドバルブ(50)も、一対のバルブシート(61,62)の間を徐々に前進していく。
【0054】
以上のようにして、スライドバルブ(50)が第1位置になると、ロータ部(42)の回転が停止する。なお、スライドバルブ(50)が第1位置になると、環状保持部(46)がケーシング(30)の大径側凹部(31c)に当接する。つまり、大径側凹部(31c)は、第1位置となるスライドバルブ(50)の位置決め部材、ないしストッパ部材として機能する。
【0055】
スライドバルブ(50)が第1位置になると、吐出側ポート(21)と室外側ポート(23)とが、外部空間(S1)を通じて連通する。同時に、室内側ポート(24)と吸入側ポート(22)とがスライドバルブ(50)の内部空間(S2)を通じて軸方向に連通する。これにより、上述した冷房運転において、吐出管(12a)と室外熱交換器(13)とを連通させると同時に吸入管(12b)と室内熱交換器(15)とを連通させることができる。
【0056】
一方、例えば暖房運転を行う際、スライドバルブ(50)が図2に示す第1位置であったとする。この状態から、スライドバルブ(50)を図4に示す第2位置に変位させる際には、ロータ部(42)が上述した冷房運転への切り換え時と反対方向に回転し、雌ネジ部(42b)もこれと同じ方向に回転する。雌ネジ部(42b)が回転すると、雌ネジ部(42b)に螺合する駆動軸(45)が徐々に後退していく。その結果、駆動軸(45)の先端に保持されるスライドバルブ(50)も、一対のバルブシート(61,62)の間を徐々に後退していく。
【0057】
以上のようにして、スライドバルブ(50)が第2位置になると、ロータ部(42)の回転が停止する。なお、スライドバルブ(50)が第2位置になると、駆動軸(45)の後端部がケーシング(30)の小径側凹部(32c)に当接する。つまり、小径側凹部(32c)は、第2位置となるスライドバルブ(50)の位置決め部材、ないしストッパ部材として機能する。
【0058】
スライドバルブ(50)が第2位置になると、吐出側ポート(21)と室内側ポート(24)とが、外部空間(S1)を通じて連通する。同時に、室内側ポート(24)と吸入側ポート(22)とがスライドバルブ(50)の内部空間(S2)を通じて軸方向に連通する。これにより、上述した暖房運転において、吐出管(12a)と室内熱交換器(15)とを連通させると同時に吸入管(12b)と室外熱交換器(13)とを連通させることができる。
【0059】
以上のような切換弁(20)の動作では、スライドバルブ(50)が高圧空間(S1)に収容される。このため、スライドバルブ(50)には、高圧空間(S1)の冷媒の圧力が作用する。特に、本実施形態では、圧縮機(12)によって冷媒を臨界圧力以上にまで圧縮するため、この圧力は極めて高くなっている。しかしながら、本実施形態では、このように高圧空間(S1)の冷媒の圧力が高くなっても、スライドバルブ(50)を確実に動作させることができる。
【0060】
具体的に、スライドバルブ(50)が第1位置と第2位置との間で進退する際には、第1フランジ部(52)が第1バルブシート(61)の摺接面(61a)と実質的に接触し、第2フランジ部(53)が第2バルブシート(62)の摺接面(62a)と実質的に接触している。このため、高圧空間(S1)では、高圧冷媒の圧力に起因してスライドバルブ(50)の軸方向(スライドバルブ(50)の進退方向と直交する方向)の両端に作用する押し付け力を軽減できる。
【0061】
また、スライドバルブ(50)は、軸方向の両端が開口する筒状であるため、各フランジ部(52,53)の軸方向の受圧面の面積を最小限に抑えることができる。しかも、このような受圧面は、スライドバルブ(50)の軸方向の両端に形成される。従って、仮に第1フランジ部(52)の上端面と第2フランジ部(53)の下端面とにそれぞれ押し付け力が作用しても、これらの押し付け力を互いに相殺してキャンセルできる。
【0062】
以上のように、本実施形態の切換弁(20)では、高圧空間(S1)の圧力が極めて高い条件下においても、スライドバルブ(50)に作用する押し付け力を軽減できる。また、スライドバルブ(50)の各フランジ部(52,53)には、スライドバルブ(50)の外部空間(S1)と内部空間(S2)とを密に仕切るオーリング(56,57)が設けられている。従って、外部空間(即ち、高圧空間(S1))内の高圧冷媒が、フランジ部(52,53)とバルブシート(61,62)との間の隙間を通じて、スライドバルブ(50)の内部空間(S2)に入り込んでしまうことを回避できる。
【0063】
−実施形態1の効果−
実施形態1によれば、スライドバルブ(50)の両端に筒状のフランジ部(52,53)を形成し、各フランジ部(52,53)に対する摺接面(61a,62a)を形成するように、スライドバルブ(50)の両側にそれぞれバルブシート(61,62)を設けている。これにより、スライドバルブ(50)を第1位置と第2位置との間で進退させる際、スライドバルブ(50)の軸方向両側からスライドバルブ(50)に作用する高圧冷媒のガス力を低減でき、更にはスライドバルブ(50)の進退方向と直交する方向における押し付け力を低減できる。従って、スライドバルブ(50)の進退動作の円滑化を図ることができる。また、仮にスライドバルブ(50)の各フランジ部(52,53)に押し付け力が作用したとしても、これらの押し付け力が逆方向となるため、これらの押し付け力を互いに相殺できる。従って、スライドバルブ(50)を更に円滑に動作させることができる。
【0064】
以上のようにして、スライドバルブ(50)の動作の円滑化を図ることで、スライドバルブ(50)を確実に動作させて各ポート(21〜24,101〜104)の連通状態を切り換えることができる。従って、高圧冷媒の圧力が比較的高い冷媒回路(11)においても、切換弁(20)で確実な切り換え動作を行うことができる。従って、この切換弁(20)の信頼性を確保できる。
【0065】
また、このようにしてスライドバルブ(50)の動作の円滑化を図ることで、切換弁(20)の切り換え動作に伴う切り換え音の低音化が可能となる。
【0066】
また、上記実施形態1では、スライドバルブ(50)が図2に示す第1位置となることで、室内側ポート(24)と吸入側ポート(22)とがスライドバルブ(50)の内部空間(S1)を通じて軸方向に連通する。従って、室内側ポート(24)から吸入側ポート(22)へ流れる冷媒の圧力損失を低減できる。同様に、スライドバルブ(50)が図4に示す第2位置となることで、室外側ポート(23)と吸入側ポート(22)とがスライドバルブ(50)の内部空間(S1)を通じて軸方向に連通する。従って、室外側ポート(23)から吸入側ポート(22)へ流れる冷媒の圧力損失を低減できる。
【0067】
また、上記実施形態1では、各フランジ部(52,53)にシール部としてのオーリング(56,57)を設けている。このため、高圧空間(S1)内の冷媒が各フランジ部(52,53)と各バルブシート(61,62)との間の隙間を通じて、スライドバルブ(50)の内部空間(S1)に漏れ込んでしまうのを確実に回避できる。従って、この切換弁(20)の信頼性を向上できる。
【0068】
更に、上記実施形態1では、スライドバルブ(50)を駆動するための駆動機構(40)として、ステッピングモータ(パルスモータ)を用いている。このため、スライドバルブ(50)を比較的緩やかに変位させることができるため、スライドバルブ(50)の切り換え動作に伴う切り換え音の低減が可能となる。
【0069】
−実施形態1の変形例−
上記実施形態1の切換弁(20)は、4つのポートの連通状態を切り換える四方式に構成されている。しかしながら、3つのポートの連通状態を切り換える三方式の切換弁(20)において、本発明を適用することもできる。
【0070】
具体的に、図5及び図6に示す変形例では、上記実施形態1の切換弁(20)において、室内側ポート(24)と室内側開口(64)とが省略された構成となっている。つまり、この変形例の切換弁(20)は、吐出側ポート(21)と吸入側ポート(22)と室外側ポート(23)との連通状態を切り換えるように構成されている。
【0071】
より詳細には、この変形例において、スライドバルブ(50)が図5に示す第1位置になると、吐出側ポート(21)と室外側ポート(23)とが高圧空間(S1)を通じて連通する。同時に吸入側ポート(22)とスライドバルブ(50)の内部空間(S2)が連通する。なお、スライドバルブ(50)の内部空間(S2)の下側は第2バルブシート(62)によって閉塞された状態となる。これにより、圧縮機(12)の吐出側の冷媒を室外熱交換器(13)側へ送ることができる。
【0072】
また、この変形例において、スライドバルブ(50)が図6に示す第2位置になると、室外側ポート(23)と吸入側ポート(22)とがスライドバルブ(50)の内部空間(S2)を通じて連通する。これにより、室外熱交換器(13)側の冷媒を圧縮機(12)の吸入側に送ることができる。
【0073】
以上のように、この三方式の切換弁(20)においても、スライドバルブ(50)の各フランジ部(52,53)の両側にそれぞれバルブシート(61,62)を設け、各バルブシート(61,62)の摺接面(61a,62a)と各フランジ部(52,53)を摺接させる構成としている。このため、この変形例においても、スライドバルブ(50)の軸方向両端に作用する押し付け力を軽減できると共に、各フランジ部(52,53)に作用する押し付け力を互いに相殺できる。従って、高圧空間(S1)の冷媒の圧力が極めて高い条件下においても、確実且つ静粛に切り換え動作を行うことができる三方式の切換弁(20)を提供できる。
【0074】
なお、この変形例の三方式の切換弁(20)は、吐出側ポート(21)と吸入側ポート(22)と室外側ポート(23)との連通状態を切り換えるものであるが、これに代わって吐出側ポート(21)と吸入側ポート(22)と室内側ポート(24)との連通状態を切り換える構成としても良いし、他の組み合わせのポートの連通状態を切り換えるものであっても良い。
【0075】
《発明の実施形態2》
実施形態2は、主弁(70)とパイロット弁(90)とを有するパイロット付きの四方切換弁(120)に係るものである。この四方切換弁(120)の主弁(70)は、上記実施形態1と同様の空気調和装置(10)の冷媒回路(11)に接続されている。
【0076】
主弁(70)は、筒状のケーシング(71)を備えている。ケーシング(71)は、両端が開口する円筒状の胴部(71a)と、該胴部(71a)の一端を閉塞する第1閉塞部(71b)と、該胴部(71a)の他端を閉塞する第2閉塞部(71c)とを有している。ケーシング(71)の内部には、筒状部材としてのスライドバルブ(72)と、弁座部としての第1バルブシート(73)及び第2バルブシート(74)が設けられている。スライドバルブ(72)は、上記実施形態1と同様にして、各バルブシート(73,74)の摺接面と摺接するフランジ部(72a,72b)を有している。スライドバルブ(72)及び各バルブシート(73,74)の詳細構造については、上記実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
ケーシング(71)の内部には、第1ピストン(75)と第2ピストン(76)とが設けられている。各ピストン(75,76)は、一対の連結部材(77,78)を介してスライドバルブ(72)と連結している。これにより、各ピストン(75,76)とスライドバルブ(72)とは、ケーシング(71)の軸方向に一体的に進退自在となっている。第1ピストン(75)は、ケーシング(71)内における第1閉塞部(71b)側寄りに設けられ、第2ピストン(76)は、ケーシング(71)内における第2閉塞部(71c)側寄りに設けられている。第1ピストン(75)には、第1閉塞部(71b)側に臨む面の中央に第1凸部(75a)が形成され、第2ピストン(76)には、第2閉塞部(71c)側に臨む面の中央に第2凸部(76a)が形成されている。また、各ピストン(75,76)の外周には、それぞれオーリング(79,79)が嵌め込まれている。
【0078】
実施形態2の主弁(70)のケーシング(71)には、上記実施形態1の切換弁(20)と同様にして、吐出側ポート(21)、吸入側ポート(22)、室外側ポート(23)、及び室内側ポート(24)が接続されている。室外側ポート(23)は、第1ポートを構成し、室内側ポート(24)は、第2ポートを構成している。
【0079】
吐出側ポート(21)の端部は、ケーシング(71)の内壁と第1ピストン(75)と第2ピストン(76)との間に仕切られる内部空間(S1)と連通している。これにより、この内部空間(S1)は、高圧冷媒で満たされる高圧空間を構成している。吐出側ポート(21)には、高圧分岐管(21a)が設けられている(図8を参照)。また、吸入側ポート(22)には、低圧分岐管(22a)が設けられている。
【0080】
主弁(70)は、第1連通管(81)と第2連通管(82)とを有している。第1連通管(81)は、第1閉塞部(71b)に接続されている。第1閉塞部(71b)には、第1絞り通路(81a)と第1拡径通路(81b)と第1円形凹部(81c)とが形成されている。第1絞り通路(81a)は、第1連通管(81)の開口端と接続している。第1絞り通路(81a)の通路断面の面積は、第1連通管(81)の通路断面の面積よりも小さくなっている。第1拡径通路(81b)は、第1絞り通路(81a)と接続している。第1拡径通路(81b)は、ケーシング(71)の内部側に向かうに連れて通路面積を拡大させるような台形円錐状に形成されている。第1円形凹部(81c)は、第1閉塞部(71b)の内側の面の中央に形成されている。そして、この第1円形凹部(81c)の底面に、第1拡径通路(81b)が開口している。以上のようにして、第1連通管(81)は、第1閉塞部(71b)と第1ピストン(75)との間に区画される第1背圧室(83)と連通している。
【0081】
第2連通管(82)は、第2閉塞部(71c)に接続されている。第2閉塞部(71c)には、第2絞り通路(82a)と第2拡径通路(82b)と第2円形凹部(82c)とが形成されている。第2絞り通路(82a)は、第2連通管(82)の開口端と接続している。第2絞り通路(82a)の通路断面の面積は、第2連通管(82)の通路断面の面積よりも小さくなっている。第2拡径通路(82b)は、第2絞り通路(82a)と接続している。第2拡径通路(82b)は、ケーシング(71)の内部側に向かうに連れて通路面積を拡大させるような台形円錐状に形成されている。第2円形凹部(82c)は、第2閉塞部(71c)の内側の面の中央に形成されている。そして、この第2拡径通路(82b)が、第2円形凹部(82c)の底面に開口している。以上のようにして、第2連通管(82)は、第2閉塞部(71c)と第2ピストン(76)との間に区画される第2背圧室(84)と連通している。
【0082】
パイロット弁(90)は、円筒状のケーシング(91)を備えている。ケーシング(91)は、細長の円筒状の胴部(91a)と、該胴部(91a)の一端を閉塞する閉塞部(91b)と、該胴部(91a)の他端を閉塞する封止部材(91c)とを有している。封止部材(91c)の外周には、ソレノイド(92)が設けられている。また、胴部(91a)の内部には、封止部材(91c)側寄りにスプール部(93)が設けられている。スプール部(93)は、ケーシング(91)の内部を軸方向に進退自在に構成されている。スプール部(93)と封止部材(91c)との間には、スプリング(94)が設けられている。スプリング(94)は、スプール部(93)を前方(図7における左側の方向)に付勢している。
【0083】
実施形態2のパイロット弁(90)にも、実施形態1の切換弁と同様、筒状部材としてのスライドバルブ(95)と、弁座部としての第1バルブシート(96)及び第2バルブシート(97)が設けられている。スライドバルブ(95)は、スプール部(93)の先端に形成される保持部(93a)に保持されている。スライドバルブ(95)は、上記実施形態1と同様にして、各バルブシート(96,97)の摺接面と摺接するフランジ部(95a,95b)を有している。スライドバルブ(95)及び各バルブシート(96,97)の詳細構造については、上記実施形態1と同様であるため、説明を省略する。なお、パイロット弁(90)の各フランジ部(95a,95b)にも、上記実施形態1と同様にしてオーリング(図示省略)が設けられている。
【0084】
パイロット弁(90)には、高圧ポート(101)と低圧ポート(102)とパイロット側第1ポート(103)とパイロット側第2ポート(104)とが設けられている。高圧ポート(101)は、吐出側ポートを構成し、低圧ポート(102)は、吸入側ポートを構成している。また、パイロット側第1ポート(103)は、第1ポートを構成し、パイロット側第2ポート(104)は、第2ポートを構成している。
【0085】
高圧ポート(101)の一端は、上記高圧分岐管(21a)と連通している。高圧ポート(101)の他端は、閉塞部(91b)を貫通してケーシング(91)の内部空間(S1)と連通している。これにより、この内部空間(S1)は、高圧冷媒で満たされる高圧空間を構成している。低圧ポート(102)の一端は、上記低圧分岐管(22a)と連通している。低圧ポート(102)の他端は、胴部(91a)及び第1バルブシート(96)を貫通し、上記実施形態1と同様、スライドバルブ(95)の内部空間(S2)と連通している。
【0086】
パイロット側第1ポート(103)の一端は、上記第2連通管(82)と連通している。パイロット側第1ポート(103)の他端は、胴部(91a)及び第2バルブシート(97)を貫通し、上記実施形態1と同様、スライドバルブ(95)の内部空間(S2)と連通可能となっている。パイロット側第2ポート(104)の一端は、上記第1連通管(81)と連通している。パイロット側第2ポート(104)の他端は、胴部(91a)及び第2バルブシート(97)を貫通し、上記実施形態1と同様、スライドバルブ(95)の内部空間(S2)と連通可能となっている。
【0087】
〈切換弁の動作〉
実施形態2の四方切換弁(120)の切り換え動作について、図7及び図9を参照しながら説明する。
【0088】
空気調和装置(10)で冷房運転を行う際には、ソレノイド(92)が非通電状態となる。その結果、スプリング(94)によってスプール部(93)が前方に付勢され、スプール部(93)と共にスライドバルブ(95)が前進して図7に示す第1位置になる。
【0089】
スライドバルブ(95)が第1位置になると、高圧ポート(101)とパイロット側第1ポート(103)とがスライドバルブ(95)の外部空間(高圧空間(S1))を通じて連通し、低圧ポート(102)とパイロット側第2ポート(104)とがスライドバルブ(95)の内部空間(S2)を通じて連通する。その結果、吐出側ポート(21)内の冷媒は、高圧分岐管(21a)、高圧ポート(101)、高圧空間(S1)、パイロット側第1ポート(103)、第2連通管(82)を順に流れて、第2背圧室(84)に導入される。なお、この際、第2背圧室(84)に導入される高圧冷媒は、第2絞り通路(82a)を通過する際に減圧され、更に第2拡径通路(82b)を通過する際に流速が低下する。一方、吸入側ポート(22)は、低圧分岐管(22a)、低圧ポート(102)、スライドバルブ(95)の内部空間(S2)、パイロット側第2ポート(104)、第1連通管(81)を通じて、第1背圧室(83)と連通する。
【0090】
以上のようにして、第1背圧室(83)が低圧雰囲気になり、第2背圧室(84)が高圧雰囲気になると、各ピストン(75,76)は、両者の背圧室(83,84)の高低差圧によって第1閉塞部(71b)側に変位する。すると、各ピストン(75,76)に連結されたスライドバルブ(72)も図7に示す第1位置に変位する。この際、上述したように、第2背圧室(84)に導入される高圧冷媒は、その流速が低下しているため、スライドバルブ(72)及び各ピストン(75,76)が急激に変位することがない。従って、このようなスライドバルブ(95)の変位に伴う騒音を軽減できる。
【0091】
主弁(70)のスライドバルブ(72)が第1位置になると、吐出側ポート(21)と室外側ポート(23)とが、スライドバルブ(72)の外部空間(高圧空間(S1))を通じて連通する。同時に吸入側ポート(22)と室内側ポート(24)とが、スライドバルブ(72)の内部空間(S1)を通じて連通する。その結果、上記実施形態1と同様にして、室外熱交換器(13)を放熱器として室内熱交換器(15)を蒸発器とする冷房運転を行うことができる。
【0092】
空気調和装置(10)で暖房運転を行う際には、ソレノイド(92)が通電状態となる。その結果、スプリング(94)の付勢力に抗してスプール部(93)が後方に引き寄せられる。これにより、スプール部(93)と共にスライドバルブ(95)が後退して図9に示す第2位置になる。
【0093】
スライドバルブ(95)が第2位置になると、高圧ポート(101)とパイロット側第2ポート(104)とがスライドバルブ(95)の外部空間(高圧空間(S1))を通じて連通し、低圧ポート(102)とパイロット側第1ポート(103)とがスライドバルブ(95)の内部空間(S2)を通じて連通する。その結果、吐出側ポート(21)内の冷媒は、高圧分岐管(21a)、高圧ポート(101)、高圧空間(S1)、パイロット側第2ポート(104)、第1連通管(81)を順に流れて、第1背圧室(83)に導入される。なお、この際、第1背圧室(83)に導入される高圧冷媒は、第1絞り通路(81a)を通過する際に減圧され、更に第1拡径通路(81b)を通過する際に流速が低下する。一方、吸入側ポート(22)は、低圧分岐管(22a)、低圧ポート(102)、スライドバルブ(95)の内部空間(S2)、パイロット側第2ポート(104)、第2連通管(82)を通じて、第2背圧室(84)と連通する。
【0094】
以上のようにして、第2背圧室(84)が低圧雰囲気になり、第1背圧室(83)が高圧雰囲気になると、各ピストン(75,76)は、両者の背圧室(83,84)の高低差圧によって第2閉塞部(71c)側に変位する。すると、各ピストン(75,76)に連結されたスライドバルブ(72)も図9に示す第2位置に変位する。この際、上述したように、第1背圧室(83)に導入される高圧冷媒は、その流速が低下しているため、スライドバルブ(72)及び各ピストン(75,76)が急激に変位することがない。従って、このようなスライドバルブ(95)の変位に伴う騒音を軽減できる。
【0095】
主弁(70)のスライドバルブ(72)が第2位置になると、吐出側ポート(21)と室外側ポート(23)とが、スライドバルブ(72)の外部空間(高圧空間(S1))を通じて連通する。同時に吸入側ポート(22)と室内側ポート(24)とが、スライドバルブ(72)の内部空間(S1)を通じて連通する。その結果、上記実施形態1と同様にして、室内熱交換器(15)を放熱器として室外熱交換器(13)を蒸発器とする暖房運転を行うことができる。
【0096】
−実施形態2の効果−
実施形態2によれば、主弁(70)とパイロット弁(90)とを有するパイロット弁付きの四方切換弁(120)において、主弁(70)側とパイロット弁(90)側との双方に、上記実施形態1と同様のスライドバルブ(72,95)及びバルブシート(73,74,96,97)を適用している。このため、パイロット弁(90)においては、ソレノイド(92)の通電状態を切り換えることで、スライドバルブ(95)を円滑に進退させることができる。従って、パイロット弁(90)のスライドバルブ(95)を確実且つ静粛に動作させることができる。また、主弁(70)においても、各背圧室(83,84)の圧力差を利用してスライドバルブ(95)を円滑に進退させることができる。従って、実施形態2では、主弁(70)側のスライドバルブ(95)も確実且つ静粛に動作させることができる。
【0097】
なお、上記実施形態2では、パイロット弁付きの四方切換弁(120)において、主弁(70)とパイロット弁(90)との双方に本発明(上記実施形態1に係る切換弁(20)の構造)を適用している。しかしながら、この種の四方切換弁(120)において、主弁(70)とパイロット弁(90)とのいずれか一方のみに本発明を適用しても良い。
【0098】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0099】
上記各実施形態では、スライドバルブ(50,72,95)として、両端が開口する筒状部材を用いているが、例えば軸方向の一端のみが開口する筒状部材を用いるようにしても良い。この場合にも、スライドバルブ(50,72,95)の軸方向の他端側の閉塞部の端面部をバルブシートと摺接させることで、スライドバルブ(50,72,95)に作用する軸方向の押し付け力を軽減できる。
【0100】
また、上記各実施形態では、スライドバルブ(50,72,95)の各フランジ部(52,53,72a,72b,95a,95b)のシール部としてオーリングを用いているが、オーリング以外の他の構造のシール部を用いても良いし、このようなシール部を省略した構成としても良い。
【0101】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上説明したように、本発明は、冷凍サイクルが行われる冷媒回路に接続される切換弁、及び主弁とパイロット弁とを有する四方切換弁に関し、有用である。
【符号の説明】
【0103】
11 冷媒回路
12 圧縮機
20 切換弁
21 吐出側ポート
22 吸入側ポート
23 室外側ポート(第1ポート)
24 室内側ポート(第1ポート)
30 ケーシング
40 モータ機構(駆動機構)
50 スライドバルブ(筒状部材)
52 第1フランジ部(端面部)
53 第2フランジ部(端面部)
56 第1オーリング(シール部)
57 第2オーリング(シール部)
61 第1バルブシート(弁座部)
62 第2バルブシート(弁座部)
70 主弁
71 ケーシング
72 スライドバルブ(筒状部材)
72a 第1フランジ部(端面部)
72b 第2フランジ部(端面部)
73 第1バルブシート(弁座部)
74 第2バルブシート(弁座部)
90 パイロット弁
91 ケーシング
95 スライドバルブ(筒状部材)
95a 第1フランジ部(端面部)
95b 第2フランジ部(端面部)
96 第1バルブシート(弁座部)
97 第2バルブシート(弁座部)
101 高圧ポート(吐出側ポート)
102 低圧ポート(吸入側ポート)
103 パイロット側第1ポート(第1ポート)
104 パイロット側第2ポート(第2ポート)
S1 外部空間(高圧空間)
S2 内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる冷媒回路(11)の圧縮機(12)の吐出側と連通する吐出側ポート(21,101)と、上記冷媒回路(11)の所定箇所と連通する少なくとも2つのポート(22,23,24,102,103,104)とが接続され、内部に上記吐出側ポート(21,101)と連通する高圧空間(S1)が形成されるケーシング(30,71,91)と、
上記ケーシング(30,71,91)内の高圧空間(S1)に収容されて、上記各ポート(21〜24,101〜104)の連通状態を切り換えるように進退する弁体(50,72,95)と、を備えた切換弁であって、
上記弁体(50,72,95)には、該弁体(50,72,95)の進退方向と直交する方向の両端部にそれぞれ端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)が形成され、
上記ケーシング(30,71,91)の内部には、上記弁体(50,72,95)の各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)に対する摺接面を形成する2つの弁座部(61,62,73,74,96,97)が、上記弁体(50,72,95)の可動範囲に亘って設けられていることを特徴とする切換弁。
【請求項2】
請求項1において、
上記弁体(50,72,95)は、軸方向の両端にそれぞれ開口が形成され、且つ両開口の外周縁部に上記端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)がそれぞれ形成される筒状部材で構成されていることを特徴とする切換弁。
【請求項3】
請求項2において、
複数の上記ポートは、上記吐出側ポート(21,101)と、上記冷媒回路(11)の圧縮機(12)の吸入側と繋がる吸入側ポート(22,102)と、冷媒回路(11)の所定箇所と繋がる第1ポート(23,103)及び第2ポート(24,104)とを含み、
上記筒状部材(50,72,95)は、上記吐出側ポート(21,101)と上記第1ポート(23,103)とが筒状部材(50,72,95)の外部空間(S1)を通じて連通すると同時に上記吸入側ポート(22,102)と上記第2ポート(24,104)とが筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)を通じて連通する第1位置と、上記吐出側ポート(21,101)と第2ポート(24,104)とが筒状部材(50,72,95)の外部空間(S1)を通じて連通すると同時に上記吸入側ポート(22,102)と第1ポート(23,103)とが上記筒状部材(50,72,95)の内部空間(S2)を通じて連通する第2位置との間で進退するように構成されていることを特徴とする切換弁。
【請求項4】
請求項3において、
上記2つの弁座部(61,62,73,74,96,97)のうちの一方の弁座部(61,73,96)には、上記第1位置から第2位置までの間の筒状部材(50,72,95)の一端側の開口面に臨むように上記吸入側ポート(22,102)が接続され、
上記2つの弁座部(61,62,73,74,96,97)のうちの他方の弁座部(62,74,97)には、上記第2位置の筒状部材(50,72,95)の他端側の開口面に臨むように第1ポート(23,103)が接続され、且つ上記第1位置の筒状部材(50,72,95)の他端側の開口面に臨むように第2ポート(24,104)が接続されていることを特徴とする切換弁。
【請求項5】
請求項3又は4において、
上記筒状部材(50,72,95)の各端面部(52,53,72a,72b,95a,95b)に設けられて、該筒状部材(50,72,95)の外部空間(S1)と内部空間(S2)とを仕切るシール部(56,57,86,87)を備えていることを特徴とする切換弁。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つにおいて、
上記弁体(50,72,95)を進退させるためのパルスモータ式の駆動機構(40)を備えていることを特徴とする切換弁。
【請求項7】
主弁(70)と、該主弁(70)を駆動するためのパイロット弁(90)とを備えた四方切換弁であって、
上記主弁(70)と上記パイロット弁(90)のいずれか一方又は両方が、請求項1乃至5のいずれか1つの切換弁で構成されていることを特徴とする四方切換弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−94768(P2011−94768A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251915(P2009−251915)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】