説明

切断装置

【課題】大径,薄肉の外周刃鋸を回転振れすること無く安定して回転駆動できるようにし、より大きな円柱状シリコンインゴットの外周部の切断および切り粉の削減に対応可能とする。
【解決手段】切断機構80の回転モータにより回転駆動され、ワークW1の外周部を切断する外周刃鋸81と、切断機構80およびスライダ機構50に設けられ、外周刃鋸81の回転駆動時における回転振れを抑制する回転振れ抑制機構(サブチャック63,カバー部材83,液圧供給パイプ84,液圧導入室および液圧安定部材)を備えている。これにより、外周刃鋸81を大径,薄肉にしてもその回転振れを抑制でき、より大径のワークW1の外周部の切断および切り粉の削減に対応できる。また、基台の長手方向に沿って移動するスライダ機構50によりワークW1を移動させるので、より長尺のワークW1の外周部の切断に対応できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円柱状シリコンインゴットの外周部を切断し、角柱状シリコンインゴットに加工する切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電に用いられる太陽電池モジュールは、略正方形に形成した複数枚の太陽電池用シリコンウェハ(以下、ウェハと言う)を備えている。そして、これらのウェハを互いに近接させて複数段かつ複数列で並べることで、太陽電池モジュールの単位面積当たりの発電効率を向上させている。
【0003】
ウェハは、円柱状に形成された単結晶シリコンインゴットや、鋳造成形により形成された多結晶シリコンインゴットを薄くスライシングすることにより形成され、当該スライシングの前段工程においては、シリコンインゴットの外形を整える切断加工や研磨加工等が行われる。特に、単結晶シリコンインゴット(円柱状シリコンインゴット)においては、その外周部を4箇所切断することで、円柱状シリコンインゴットから角柱状シリコンインゴットに加工するようにしている。
【0004】
このような円柱状シリコンインゴットから角柱状シリコンインゴットに加工する装置(切断装置)としては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1に記載された切断装置は、一対の回転軸と、当該各回転軸により回転されるバンドソーとを備え、バンドソーはバンドソーユニットの上方側に昇降自在に配置されている。また、バンドソーユニットの下方側には、バンドソーと上下で対向するようにして、円柱状シリコンインゴット(ワーク)を保持するワークヘッドが傾斜自在に設けられている。ワークヘッドには一対のチャッキング部が設けられ、当該各チャッキング部によりワークを長手方向から保持するようにしている。
【0005】
そして、ワークヘッドを所定角度傾斜させた状態のもとでバンドソーを下降駆動することにより、円柱状シリコンインゴットの外周部を切断するようにしている。つまり、円柱状シリコンインゴットを周方向に回転させつつ、その外周部を4箇所切断することで、円柱状シリコンインゴットから角柱状シリコンインゴットに加工される。ここで、切断により発生した断面が略半月型の端材は、ワーク本体から完全に切断して分離されるまでは、バンドソーと各回転軸とに囲まれた領域に配置されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−178984号公報(図1,図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された切断装置によれば、円柱状シリコンインゴットを傾斜させた状態のもとでバンドソーにより切断し、端材はバンドソーと各回転軸とに囲まれた領域に配置される。したがって、当該切断装置により切断し得る円柱状シリコンインゴットの大きさが規制され、生産効率の低下を招いていた。例えば、より長尺の円柱状シリコンインゴットに対応するには、各回転軸間の軸間距離を長くしたり、ワークヘッドの傾斜角度をきつくしつつバンドソーの昇降駆動距離を長くしたりする等、切断装置の構造変更が必要となる。
【0008】
各回転軸の軸間距離を長くする場合にはバンドソーの長さも長くなるため、回転するバンドソーに振れが生じ、ひいてはバンドソーの耐久性低下等が問題となる。また、ワークヘッドの傾斜角度をきつくしつつバンドソーの昇降駆動距離を長くする場合には、ワークヘッドを傾斜させるためのシリンダやバンドソーを昇降させるための昇降機構が大型化するという別の問題を生じ得る。
【0009】
本発明の目的は、大径,薄肉の外周刃鋸を回転振れすること無く安定して回転駆動できるようにし、より大きな円柱状シリコンインゴットの外周部の切断および切り粉の削減に対応可能な切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の切断装置は、円柱状シリコンインゴットの外周部を切断し、角柱状シリコンインゴットに加工する切断装置であって、床面に設置され、前記床面の水平方向に延在する基台と、前記基台に設けられ、前記円柱状シリコンインゴットの長手方向両側をチャックした状態のもとで前記基台の長手方向に沿って移動するワーク移動機構と、前記基台に設けられ、前記基台の短手方向から前記円柱状シリコンインゴットと対向する切断機構と、前記切断機構の駆動源により回転駆動され、前記円柱状シリコンインゴットの外周部をその長手方向に沿って切断する外周刃鋸と、前記ワーク移動機構および前記切断機構のうちの少なくともいずれか一方に設けられ、前記外周刃鋸の回転駆動時における回転振れを抑制する回転振れ抑制機構とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の切断装置は、前記回転振れ抑制機構は、前記切断機構に設けられ、前記外周刃鋸の一側面および他側面を部分的に覆うカバー部材と、前記カバー部材に設けられて前記外周刃鋸の両側面に液体を圧送する液体圧送部材とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の切断装置は、前記回転振れ抑制機構は、前記ワーク移動機構に設けられ、前記外周刃鋸による切断加工により生じた端材の長手方向両側をチャックする端材チャックからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の切断装置によれば、切断機構の駆動源により回転駆動され、円柱状シリコンインゴットの外周部をその長手方向に沿って切断する外周刃鋸と、ワーク移動機構および切断機構のうちの少なくともいずれか一方に設けられ、外周刃鋸の回転駆動時における回転振れを抑制する回転振れ抑制機構とを備えている。したがって、外周刃鋸を大径,薄肉にしてもその回転振れを抑制できるので、より大径の円柱状シリコンインゴットの外周部の切断に対応可能となり、ひいては生産効率を向上させることができる。また、外周刃鋸を薄肉にできるので、切断時に生じる切り粉の削減を図ることができる。さらに、基台の長手方向に沿って移動するワーク移動機構により円柱状シリコンインゴットを移動させるので、より長尺の円柱状シリコンインゴットの外周部の切断に対応可能となり、ひいては生産効率を向上させることができる。
【0014】
本発明の切断装置によれば、回転振れ抑制機構は、切断機構に設けられ、外周刃鋸の一側面および他側面を部分的に覆うカバー部材と、カバー部材に設けられて外周刃鋸の両側面に液体を圧送する液体圧送部材とを有するので、外周刃鋸の回転振れを液圧によって抑制することができる。したがって、外周刃鋸の回転抵抗の増大を抑制できるので、外周刃鋸の広範囲をカバー部材で覆うことも可能となる。よって、より大径,より薄肉の外周刃鋸の回転振れを抑制でき、切断時に生じる切り粉をより削減することができる。また、液体を用いるため外周刃鋸を効果的に冷却してその寿命を延ばすことができ、さらには切断時に生じる切り粉の飛散を防止できる。
【0015】
本発明の切断装置によれば、回転振れ抑制機構は、ワーク移動機構に設けられ、外周刃鋸による切断加工により生じた端材の長手方向両側をチャックする端材チャックからなるので、切断中において円柱状シリコンインゴットから端材がその自重で落下するのを防止しつつ、円柱状シリコンインゴットと端材とで外周刃鋸の一側面および他側面を保持できる。したがって、円柱状シリコンインゴットおよび端材によって、外周刃鋸の回転振れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a),(b),(c)は、円柱状シリコンインゴットの加工手順を説明する説明図である。
【図2】本発明に係る切断装置をその短手方向一側から見た図である。
【図3】図2の切断装置をその長手方向一側から見た図である。
【図4】搬送リフトをワークの長手方向一側から見た図である。
【図5】搬送リフトをワークの短手方向一側から見た図である。
【図6】LED照明および撮像カメラの取り付け構造を説明する説明図である。
【図7】プライマリチャック部のワーク側を示す平面図である。
【図8】図7のプライマリチャック部の詳細構造を説明する断面図である。
【図9】切断機構を示す斜視図である。
【図10】図9の切断機構のワーク側を示す平面図である。
【図11】図9の切断機構の詳細構造を説明する断面図である。
【図12】図11の破線円A部分を拡大して示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る切断装置の説明に先立ち、加工対象となる太陽電池用シリコンインゴット(ワーク)の加工手順について、図面を用いて詳細に説明する。図1(a),(b),(c)は円柱状シリコンインゴットの加工手順を説明する説明図を表している。
【0018】
図1(a)に示すワークW1は、単結晶シリコンインゴットであり、シリコン原料を坩堝の中で溶かして回転させながら徐々に引き上げることで、1つの大きな結晶からなる略円柱状に形成される。ワークW1の周囲には、その長手方向に沿うよう4本の晶癖線(シーム)Sが形成され、各晶癖線Sは、坩堝からシリコン原料を引き上げる際に、ワークW1の周方向に沿って略等間隔(略90°間隔)で形成される。
【0019】
坩堝から引き上げて冷却されたワークW1は、その後、切断装置10(図2参照)による切断工程を経るようになっている。切断工程では、図1(b)に示すように、ワークW1の外周部の4箇所を長手方向に沿って切断し、角柱状のワークW1を形成する。つまり、ワークW1から断面が略半月型の4つの端材Dを切断分離する。ここで、4つの端材Dは、ワークW1の各晶癖線Sを残して切断分離されるようになっている。
【0020】
ここで、図1(a)に示す切断工程前のワークW1は、本発明における円柱状シリコンインゴットを構成し、図1(b)に示す切断工程後のワークW1は、本発明における角柱状シリコンインゴットを構成している。
【0021】
切断工程を経たワークW1は、続いて、研磨工程を経るようになっている。具体的には、研磨工程においては、図示しない研磨装置により、ワークW1の外周部の各晶癖線Sが存在する略円弧部分の凹凸を無くし、ワークW1の形状を整える加工が行われる。研磨工程を経たワークW1は、ワークW1の長手方向に沿う略全域において、幅寸法や表面粗さ等が略均一とされる。
【0022】
研磨加工を経たワークW1は、続いてスライス工程を経るようになっている。つまり、スライス工程においては、図示しないスライス装置により、ワークW1をその短手方向に沿って薄肉にスライスしていき、これにより最終的に、図1(c)に示すような複数枚のウェハW2となる。ここで、ワークW1をスライスするスライス装置としては、複数のワイヤソーを有するスライス装置や、内周刃鋸を有するスライス装置等が用いられる。
【0023】
なお、各ウェハW2は、何れも精度良く同じ形状に形成され、互いに近接して並べられるようになっている。つまり、太陽電池モジュールの単位面積当たりの発電効率を高められるようになっている。
【0024】
本発明に係る切断装置は、円柱状のワークW1(図1(a)参照)を、角柱状のワークW1(図1(b)参照)に加工するための切断工程(切断加工)に用いられ、以下、その詳細について図面を用いて説明する。
【0025】
図2は本発明に係る切断装置をその短手方向一側から見た図を、図3は図2の切断装置をその長手方向一側から見た図をそれぞれ表している。
【0026】
図2,3に示すように、切断装置10は、工場等の敷地内における床面FLに設置される基台11を備え、基台11は、床面FLの水平方向(図2中左右方向)に延在されている。基台11には、複数の調節脚12が設けられ、床面FLに凹凸がある場合等に各調節脚12の長さをそれぞれ調節することで、基台11を床面FLにがたつくことなく水平に設置できるようにしている。
【0027】
基台11は、その長手方向に沿うようワーク搬入領域(図2中左側)とワーク加工領域(図2中右側)とに分けられ、ワーク搬入領域には、ワーク搬入機構20,ワーク搬送リフト30および端材搬送リフト40が設けられている。また、ワーク搬入領域とワーク加工領域との間にはワークW1を各領域間で往復移動させるスライダ機構50が移動自在に設けられ、ワーク加工領域には切断機構80が設けられている。
【0028】
基台11のワーク搬入領域側には、基台11から上方に延びるようフレーム部材11aが一体に設けられ、フレーム部材11aには、ワーク搬送リフト30と一対の端材搬送リフト40とが垂下するよう設けられている。
【0029】
図3に示すように、フレーム部材11aには、基台11の短手方向に延びるようリフト用ボールネジ機構11bが設けられている。リフト用ボールネジ機構11bを駆動することにより、各搬送リフト30,40を基台11の短手方向に沿って移動させることができる。また、フレーム部材11aには、基台11の上下方向に延びるよう昇降機構11cが設けられている。昇降機構11cを昇降駆動することにより、各搬送リフト30,40を基台11の上下方向に沿って移動させることができる。
【0030】
図2に示すように、フレーム部材11aには、切断装置10の作動状況を目視可能なモニタを備えたコントロールユニット11dが設けられている。コントロールユニット11dには、切断装置10の駆動部、つまりリフト用ボールネジ機構11b,昇降機構11c,各搬送リフト30,40等を統括的に制御するコントローラ(図示せず)が搭載されている。
【0031】
そして、作業者によりコントロールユニット11dを操作することで切断装置10が作動し、ひいてはワークW1の切断加工が実施される。切断装置10の作動状況はコントロールユニット11dのモニタに表示され、当該モニタには、さらに、例えば、切断機構80を構成する外周刃鋸81の交換時期等、切断装置10のメンテナンス情報(積算運転時間等)も表示される。なお、図3においては、図面を明確化するためにコントロールユニット11dの図示を省略している。
【0032】
基台11のワーク加工領域側には、切断機構80を覆うようにして略直方体形状のカバー11eが設けられている。カバー11eは、基台11に固定され、ワークW1の切断加工時における水や切り粉(図示せず)の外部への飛散を防止している。カバー11eの側部には、例えば、透明のアクリル板等によって開閉可能な開口窓11fが設けられ、作業者は当該開口窓11fからワークW1の切断状況を確認することができる。また、切断装置10を停止させた状態のもとで開口窓11fを開けることで、カバー11e内の清掃作業等(メンテナンス作業)を容易に行うことができる。
【0033】
基台11のワーク搬入領域に設けられるワーク搬入機構20は、図3に示すように、一端側が基台11に固定され、他端側が基台11の側部から突出されたスライドレール21と、スライドレール21上を移動し、切断装置10の内部と外部との間でワークW1を往復移動させるワーク支持台22とを備えている。
【0034】
ここで、ワーク支持台22のワークW1側の形状は、切断前の円柱状のワークW1および切断後の角柱状のワークW1の双方を安定的に載置し得る段付き形状に形成されている。また、ワーク搬入機構20においても、コントロールユニット11dのコントローラによって制御され、ワーク搬入機構20は、切断前の円柱状のワークW1を切断装置10内に搬入するとともに、切断後の角柱状のワークW1を切断装置10外に搬出するようになっている。
【0035】
スライドレール21の長手方向略中央部分には、円柱状のワークW1を切断装置10内に搬入する際に、ワークW1の直径寸法を計測する第1センサ23が配置されている。第1センサ23はフレーム部材11aに固定され、ワーク搬入機構20の駆動により通過するワークW1の直径寸法を計測するようになっている。ここで、第1センサ23としては、例えば、レーザー光をワークW1に照射して、ワークW1からの反射光を受光するまでの時間を計測し、これによりワークW1の直径寸法を計測するセンサを採用している。
【0036】
スライドレール21の一端側には、円柱状のワークW1を切断装置10内に搬入する際に、ワークW1の長さ寸法を計測するとともにワークW1の長手方向に沿う切断装置10に対する位置調整を行う第2センサ24が配置されている。第2センサ24はフレーム部材11aに移動自在に設けられ、ワーク搬入機構20により切断装置10内に搬入されたワークW1をその長手方向から掴み、これによりワークW1の長さ寸法を計測するようになっている。
【0037】
また、第2センサ24は、ワークW1をその長手方向に微小距離移動して、ワークW1の切断装置10に対する位置を微調整するようになっている。これにより、ワークW1をスライダ機構50の各チャック部60,70間に精度良く配置できるようになっている。
【0038】
図4は搬送リフトをワークの長手方向一側から見た図を、図5は搬送リフトをワークの短手方向一側から見た図を、図6はLED照明および撮像カメラの取り付け構造を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0039】
基台11のワーク搬入領域に設けられるワーク搬送リフト30は、基台11の上方側で、リフト用ボールネジ機構11bおよび昇降機構11cの駆動により移動自在となっている。ワーク搬送リフト30は、図4に示すように、本体部31,一対のアーム部32およびアーム駆動部33を備えている。
【0040】
本体部31はリフト用ボールネジ機構11bおよび昇降機構11cの駆動により移動し、各アーム部32およびアーム駆動部33は、何れも本体部31に設けられている。ここで、ワーク搬送リフト30は、図5に示すようにワークW1の長手方向に沿って一対設けられ、これによりワークW1を安定的に把持できるようになっている。
【0041】
各アーム部32は、それぞれ断面が略U字形状に形成され、当該U字形状の各開口側を互いに向き合わせた状態のもとで、アーム駆動部33を介して本体部31に設けられている。各アーム部32の各開口側には、円柱状のワークW1をその短手方向から把持した状態のもとで、ワークW1の回転を許容するローラ32aがそれぞれ2個ずつ設けられている。これにより、ワークW1をスムーズかつ安定的に把持できるとともに、スライダ機構50の各チャック部60,70の回転によるワークW1の回転方向の位置決めを精度良く行うことができる。
【0042】
各アーム部32の開口側には、各ローラ32aの内側に位置するよう一対の支持駒32bがそれぞれ設けられ、各支持駒32bは角柱状のワークW1(図3参照)を安定的に把持するようになっている。つまり、ワーク搬送リフト30の各アーム部32は、切断前の円柱状のワークW1および切断後の角柱状のワークW1の双方を安定的に把持し得る形状に形成されている。
【0043】
一方のアーム部32には、図5,6に示すように、円柱状のワークW1の周囲に形成された晶癖線Sを検出するためのLED照明34および撮像カメラ35が固定されている。LED照明34および撮像カメラ35は、何れも各アーム部32により把持されたワークW1の周囲に向けられており、LED照明34はワークW1を照らし、撮像カメラ35はワークW1を撮像するようになっている。
【0044】
LED照明34は、例えば、白色の複数の高輝度LED34aを備えており、図6に示すように撮像カメラ35に対して所定角度(例えば45°)傾斜して設けられている。これにより各高輝度LED34aから照射された光は、ワークW1の表面で反射して撮像カメラ35に向けて略真っ直ぐに進む。撮像カメラ35は、ワークW1の周囲の形状(晶癖線Sの有無)を撮像し、例えば、白および黒の二値データ(撮像信号)をコントローラに送出するようになっている。
【0045】
コントローラは、撮像カメラ35からの二値データを分析し、ワークW1の長手方向に延びる晶癖線Sが存在する箇所を特定する。そして、コントローラはさらにスライダ機構50の各チャック部60,70を回転して、ワークW1の回転方向の位置決めを行う。これにより、各晶癖線Sを残して円柱状のワークW1の外周部(4箇所)を切断加工することができる。ここで、各晶癖線Sは、略90°間隔で形成されているため、各晶癖線Sのうちの少なくとも1箇所を特定すれば良い。
【0046】
図4に示すように、アーム駆動部33は、本体部31に固定される駆動モータ33aと、駆動モータ33aにより正逆方向に回転されるボールネジ33bと、ボールネジ33bにそれぞれネジ結合され、かつ各アーム部32にそれぞれ固定されたナット33cとを備えている。ボールネジ33bには、一方のアーム部32用のネジG1と他方のアーム部32用のネジG2とが形成され、各ネジG1,G2はそれぞれ逆巻きに形成されている。これにより、駆動モータ33aを正方向に回転させることで各アーム部32は互いに近接してワークW1を把持し、駆動モータ33aを逆方向に回転させることで各アーム部32は互いに離間してワークW1を離すようになっている。
【0047】
基台11のワーク搬入領域に設けられる端材搬送リフト40は、基台11の上方側で、リフト用ボールネジ機構11bおよび昇降機構11cの駆動により移動自在となっている。端材搬送リフト40は、図3に示すように一対の端材支持爪41を備えており、各端材支持爪41は、対向する一対の端材D(図1(b)参照)を引っ掛けて支持するようになっている。
【0048】
端材搬送リフト40は、ワーク搬送リフト30と同様に、端材D(ワークW1)の長手方向に沿って一対設けられ(詳細図示せず)、これにより各端材Dを安定的に支持できるようになっている。端材搬送リフト40は、切断加工を終えたワークW1および各端材Dが、スライダ機構50によりワーク加工領域からワーク搬入領域(図2参照)に戻った際に作動し、ワーク搬入領域に戻った各端材Dを引っ掛けるよう取り上げて、その後、各端材Dを基台11に隣接して設けた端材ボックスDBに搬送する(図中二点鎖線参照)。なお、端材ボックスDBに溜められた端材Dは、坩堝の中で再度溶融し、新たな単結晶シリコンインゴットとして再生される。
【0049】
基台11のワーク搬入領域とワーク加工領域との間に設けられるスライダ機構(ワーク移動機構)50は、図2に示すように、プライマリチャック部60とスレーブチャック部70とを備えている。
【0050】
各チャック部60,70は、ワークW1を長手方向両側から挟持(チャック)するもので、何れも基台11の長手方向に沿って延びるボールネジ機構(図示せず)の駆動により、ワーク搬入領域とワーク加工領域との間で同期して移動自在となっている。つまり、スライダ機構50は、各チャック部60,70によりワークW1をチャックした状態のもとで、ワークW1を基台11の長手方向に沿って移動させるようになっている。
【0051】
プライマリチャック部60には、スレーブチャック部70との離間距離を調整する距離調整モータ(図示せず)が設けられ、当該距離調整モータを正逆方向に回転させることにより、ワークW1を挟持したり開放したりする。なお、スレーブチャック部70は距離調整モータを備えていない。
【0052】
図7はプライマリチャック部のワーク側を示す平面図を、図8は図7のプライマリチャック部の詳細構造を説明する断面図をそれぞれ表している。
【0053】
プライマリチャック部60およびスレーブチャック部70は、何れも略同様に構成されている。スレーブチャック部70は、プライマリチャック部60に比して、距離調整モータおよびチャック駆動モータ64a(図8参照)を備えず、この点のみが異なっている。よって、以下、プライマリチャック部60のみを図示して説明し、重複するスレーブチャック部70の説明を省略する。
【0054】
図7に示すように、プライマリチャック部60は、ボールネジ機構の駆動により移動する移動ベース61を備え、当該移動ベース61には、ワークW1の端部をチャックするメインチャック62と、外周刃鋸81による切断加工により生じた一対の端材Dの端部をチャックする一対のサブチャック63とが設けられている。ここで、各サブチャック63は、本発明における端材チャックを構成している。
【0055】
メインチャック62と、その両脇に配置された各サブチャック63との間には、切断機構80の外周刃鋸81の逃げとなる逃げ隙間EOが形成されている。各逃げ隙間EOの最も狭い部分の幅寸法は、外周刃鋸81の厚み寸法の略3倍の寸法に設定され、これにより外周刃鋸81と各チャック62,63とが干渉するのを確実に防止している。
【0056】
メインチャック62は、図8に示すように、移動ベース61に固定された略円筒状の支持ケース64を備えている。支持ケース64の内部には、チャック駆動モータ64aが設けられ、当該チャック駆動モータ64aは、軸受64bを介して支持ケース64に回転自在に支持されたチャック支持部材64cを、正逆方向に回転させるようになっている。
【0057】
チャック支持部材64cにはワークチャック65が取り付けられており、ワークチャック65はチャック支持部材64cの回転に伴って回転するようになっている。ワークチャック65は、略有底筒状に形成されたチャック本体65aを備えており、チャック本体65aには、チャック支持部材64cに設けた嵌合凹部64dに差し込まれる嵌合凸部65bが一体に設けられている。このようにワークチャック65とチャック支持部材64cとを互いに凹凸嵌合させ、両者を同軸上で回転するよう位置決めしている。
【0058】
ワークチャック65は、図7に示すように、チャック本体65aの周方向に沿って等間隔(60°間隔)で6つの伸縮部材66を備えている。各伸縮部材66は、図8に示すようにそれぞれシリンダ室66aを備えており、各シリンダ室66aには、ピストン部材66bが出入り自在に設けられている。
【0059】
各ピストン部材66bの長手方向一側(図中左側)には、ワークW1の端部を支持する支持ボルト66cが設けられ、各ピストン部材66bの長手方向他側(図中右側)には、各ピストン部材66bを各シリンダ室66aの外部に押圧する板バネ66dが設けられている。これにより、各ピストン部材66b(各支持ボルト66c)をワークW1に向けて押圧し、スレーブチャック部70側のメインチャック(図示せず)とともに、ワークW1を長手方向両側から挟持するようになっている。
【0060】
各サブチャック63は、メインチャック62を挟んで対称に配置され、それぞれチャック本体63aを備えている。各チャック本体63aには、図7に示すように、それぞれ一対の伸縮部材67が設けられている。各伸縮部材67は、図8に示すように、各伸縮部材66と同様にシリンダ室67aをそれぞれ備えており、各シリンダ室67aには、ピストン部材67bがそれぞれ出入り自在に設けられている。
【0061】
各ピストン部材67bの長手方向一側(図中左側)には、端材Dの端部を支持する支持ボルト67cが設けられ、各ピストン部材67bの長手方向他側(図中右側)には、各ピストン部材67bを各シリンダ室67aの外部に押圧するコイルバネ67dが設けられている。これにより、各ピストン部材67b(各支持ボルト67c)を端材Dに向けて押圧し、スレーブチャック部70側のサブチャック(図示せず)とともに、端材Dを長手方向両側から挟持するようになっている。
【0062】
図8に示すように、一点鎖線で示す中心線Cから下方側は、ワークW1(端材D)とプライマリチャック部60とが最も近接した状態(離間距離L1)を示している。また、一点鎖線で示す中心線Cから上方側は、ワークW1(端材D)とプライマリチャック部60とが所定距離離間した状態(離間距離L2)を示している(L1<L2)。
【0063】
プライマリチャック部60の距離調整モータを駆動し、ワークW1(端材D)とプライマリチャック部60との離間距離をL1とした場合には、ワークW1(端材D)とスレーブチャック部70との離間距離もL1となり、ワークW1および各端材Dは、それぞれメインチャック62および各サブチャック63によりチャック(挟持)された状態となる。
【0064】
一方、プライマリチャック部60の距離調整モータを駆動し、ワークW1(端材D)とプライマリチャック部60との離間距離をL2とした場合には、ワークW1(端材D)とスレーブチャック部70との離間距離もL2となり、ワークW1はメインチャック62によりチャックされた状態のままで、各端材Dは各サブチャック63により開放された状態となる。つまり、各チャック部60,70は、離間距離をL2とすることで、ワークW1をチャックしつつ各端材Dを開放するようになっている。
【0065】
図9は切断機構を示す斜視図を、図10は図9の切断機構のワーク側を示す平面図を、図11は図9の切断機構の詳細構造を説明する断面図を、図12は図11の破線円A部分を拡大して示す部分拡大図をそれぞれ表している。
【0066】
基台11のワーク加工領域に設けられる切断機構80は、基台11の短手方向からワークW1の側部と対向するよう一対設けられ、各切断機構80は、基台11(図2参照)にそれぞれ支持されている。各切断機構80は、それぞれ外周刃鋸81,回転軸82,カバー部材83,液圧供給パイプ84および駆動機構(図示せず)を備えている。
【0067】
外周刃鋸81は、ワークW1の外周部をその長手方向に沿って切断するもので、板厚寸法T(例えば、2.0mm)の薄肉に設定された硬質の鋼板よりなる円盤基材81aを備えている。円盤基材81aの外周部には、人工ダイヤ等の粉末を固着して凹凸形状に形成した高硬度のダイヤ刃部81bが設けられている。このように、外周刃鋸81は、単結晶シリコンインゴットよりなるワークW1を切断加工するのに適した硬度に設定されている。
【0068】
外周刃鋸81は、回転軸82の先端側に固定されており、回転軸82の回転に伴って高速回転するようになっている。回転軸82の基端側には、駆動機構が設けられ、当該駆動機構は、回転軸82を駆動する駆動源としての回転モータ(図示せず)と、回転軸82をワークW1の短手方向に往復移動させる移動モータ(図示せず)とを備えている。つまり外周刃鋸81は、ワークW1に対して近付いたり離れたりするようになっている。
【0069】
外周刃鋸81の一側面および他側面は、その半分以上が回転振れ抑制機構としてのカバー部材83によって覆われている。カバー部材83は、外周刃鋸81の回転駆動時における回転振れを抑制するもので、ステンレス鋼材等により略半月形状に形成され、回転軸82を回転自在に支持する中空部材85に固定されている。ここで、回転軸82は、複数の軸受部材86を介して中空部材85に回転自在に支持され、スムーズに回転できるようになっている。また、中空部材85の先端側には蛇腹状の伸縮カバー87が設けられ、これによりワークW1の切断加工時に発生する切り粉等が、中空部材85内に進入するのを防止している。
【0070】
カバー部材83の内部で、かつ外周刃鋸81の両側には、図12に示すように一対の液圧導入室88a,88bが形成されている。各液圧導入室88a,88bは、外周刃鋸81の周方向に沿うよう略180°の円弧形状に形成され、カバー部材83の内部の略全域に亘って延びている。
【0071】
各液圧導入室88a,88bの内部には、外周刃鋸81との間に微小隙間Oを形成しつつ、その反対側から液体としての水WTが供給される液圧安定部材89a,89bがそれぞれ設けられている。各液圧安定部材89a,89bは、各液圧導入室88a,88bの形状に倣って略180°の円弧形状に形成され(詳細図示せず)、複数のオリフィス孔(絞り穴)90a,90bをそれぞれ備えている。
【0072】
各オリフィス孔90a,90bは、各液圧供給パイプ84から各液圧導入室88a,88bに導入された水WT(破線矢印参照)の圧力を、外周刃鋸81に向けて安定化させるもので、これにより、液圧ポンプ等(図示せず)からの水WTの脈動等が外周刃鋸81に伝達されるのを抑えて、微小隙間Oに安定した液圧を供給できるようにしている。よって、安定した液圧が外周刃鋸81の両側に負荷されて、外周刃鋸81を回転振れすること無く安定状態で支持でき、ひいては外周刃鋸81を大径化,薄肉化しても、その破損を防止しつつ長寿命化を図ることができる。
【0073】
図9,10に示すように、カバー部材83の一側面および他側面には、それぞれ液圧供給パイプ84が設けられている。各液圧供給パイプ84は、可撓性を有するゴム等のチューブ材から形成され、各液圧供給パイプ84の一端側は、略等間隔(略30°間隔)で6つに分岐され、各液圧導入室88a,88bに接続されている。一方、各液圧供給パイプ84の他端側には、液圧ポンプ等が接続されており、当該液圧ポンプ等を駆動することで、高圧の水WTが各液圧導入室88a,88bに導入される。
【0074】
ここで、各液圧供給パイプ84,各液圧導入室88a,88b,各液圧安定部材89a,89bは、本発明における液体圧送部材を構成し、カバー部材83とともに本発明における回転振れ抑制機構を形成している。
【0075】
次に、以上のように構成した切断装置10の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0076】
[ワークセット工程]
まず、図3の矢印(1)に示すように、ワーク搬入機構20のワーク支持台22に、予め所定の長さ寸法に調整された切断前の円柱状のワークW1を、作業者またはワーク供給装置(図示せず)によりセットする。次いで、切断装置10のコントロールユニット11dを操作して切断装置10を作動させる。すると、矢印(2)に示すように、ワーク支持台22がスライドレール21上をスライドし、切断装置10の内部に向かって移動を開始する。
【0077】
ワーク支持台22は、第1センサ23と対向する位置で一旦停止し、ワークW1を第1センサ23と対向させる。次いで、第1センサ23が作動し、当該第1センサ23からコントロールユニット11dのコントローラに検出信号が送出される。そして、コントローラは、第1センサ23からの検出信号に基づいて、ワークW1の直径寸法を算出する。これにより、ワークW1の中心位置等の位置データが割り出される。ここで割り出した位置データは、切断装置10に対するワークW1の位置決めに利用される。
【0078】
その後さらに、ワーク支持台22がスライドレール21上を移動し、これによりワークW1は切断装置10の内部に移動する。すると、第2センサ24が作動してワークW1をその長手方向から掴み、コントローラによってワークW1の長さ寸法を計測する。次いで、第2センサ24は、ワークW1をその長手方向に微小距離移動させて、ワークW1の切断装置10に対する位置を微調整する。
【0079】
ワークW1の長手方向への位置決めがなされた後、搬送リフト30が昇降機構11cの駆動により下降し、搬送リフト30の各アーム部32間にワークW1が配置される。次いで、搬送リフト30のアーム駆動部33が駆動されて、図4の矢印(3)に示すように、各アーム部32が互いに近接するよう移動する。これにより、各アーム部32の各ローラ32aがワークW1の外周部に接触し、各アーム部32はワークW1を安定的に把持する(図中二点鎖線参照)。
【0080】
ワークW1を把持した搬送リフト30は、昇降機構11cの駆動により上昇し、かつリフト用ボールネジ機構11bの駆動により各チャック部60,70の上方に移動する。これによりワークW1は、図3の矢印(4)に示すように、ワーク搬入機構20からスライダ機構50に搬送される。その後、ワークW1は昇降機構11cの駆動により下降して、ワークW1の両端部が各チャック部60,70のそれぞれに対向する。
【0081】
次いで、ワークW1の両端部が各チャック部60,70と対向した状態のもとで、プライマリチャック部60の距離調整モータが駆動され、これにより、図2の矢印(5)に示すように、プライマリチャック部60がスレーブチャック部70に近接するよう移動し、各チャック部60,70はワークW1をその長手方向からチャックする。ここで、ワークW1のチャック状態は、図8における中心線Cから下方側の状態、つまり、メインチャック62およびサブチャック63の双方によりワークW1(後に端材Dとなる部分を含む)をチャックした状態となっている。
【0082】
次に、ワークW1を各チャック62,63によりチャックしつつ、搬送リフト30の各アーム部32により把持した状態のもとで、図6の矢印(6)に示すように、プライマリチャック部60のチャック駆動モータ64aの駆動によりワークW1を低速で回転させる。また、チャック駆動モータ64aの駆動と同時に、LED照明34が点灯し、さらに撮像カメラ35が作動する。これにより、ワークW1の外周部に形成された晶癖線Sの検出が行われる。
【0083】
撮像カメラ35により晶癖線Sを検出した後、図6に示す状態からチャック駆動モータ64aが駆動されて、ワークW1が略45°回転される。これにより、ワークW1の各晶癖線S間の部分が各切断機構80と対向されて、ワークW1の回転方向への位置決めがなされる。ワークW1の切断装置10に対する位置決めをした後、搬送リフト30によるワークW1の把持が開放され、搬送リフト30は昇降機構11cの駆動により上昇する(逃げる)。これにより、ワークW1の切断装置10へのセット(ワークセット工程)が完了する。
【0084】
[ワーク切断工程]
ワークセット工程を終えると、引き続き、各切断機構80が作動するとともにスライダ機構50が作動し、図2の矢印(7)に示すように、ワークW1がワーク搬入領域からワーク加工領域に移動し、ワークW1の切断加工が行われる。
【0085】
ここで、各切断機構80が作動すると、各切断機構80の回転モータにより各回転軸82が駆動され、これにより各切断機構80の各外周刃鋸81が高速で回転駆動される。また、各外周刃鋸81の回転駆動とともに、液圧ポンプ(図示せず)が駆動されて、各液圧供給パイプ84から各液圧導入室88a,88bに水WTが圧送される。そして、図12の破線矢印に示すように、各液圧安定部材89a,89bの各オリフィス孔90a,90bから、外周刃鋸81の両側の各微小隙間Oに水WTが供給される。外周刃鋸81の両側には水WTの供給に伴う高圧が作用して、これにより外周刃鋸81の回転振れが抑制される。
【0086】
なお、外周刃鋸81の両側の各微小隙間Oに供給された水WTは、外周刃鋸81を冷却した後、外周刃鋸81とカバー部材83との間の隙間(図示せず)からカバー部材83の外部に排出される。そして、カバー部材83の外部に排出された水WTは、外周刃鋸81を伝ってワークW1の切断面に供給される。これにより、ワークW1を切断し易くするとともに、ワークW1の切断により生じる切り粉を湿らせて飛散し難くしている。
【0087】
高速回転する各外周刃鋸81は、ワークW1を切断しつつ、図8の右側から左側に向けて各逃げ隙間EOを通過する。各逃げ隙間EOを通過中の各外周刃鋸81、つまりワークW1を切断中の各外周刃鋸81は、図7に示すように、メインチャック62でチャックされたワークW1と、各サブチャック63でチャックされた各端材Dとの間に保持されている。このように、ワークW1の切断中において各端材Dを各サブチャック63によりチャックすることで、ワークW1と各端材Dとの間の間隔(=外周刃鋸81の板厚寸法T)が一定に保持され、これにより各外周刃鋸81の回転振れが抑制される。ここで、各端材Dをそれぞれチャックする各サブチャック63においても、本発明における回転振れ抑制機構を構成している。
【0088】
スライダ機構50および各切断機構80の作動により、ワークW1の長手方向に沿う全域を切断し終えると、断面が略小判形状のワークW1と、断面が略半月型の一対の端材Dとに分けられる。このとき、各端材Dは各サブチャック63によりチャックされているので、ワークW1の切断中において各端材Dがその自重でワークW1から落下して、ワークW1を欠損させるようなことは無い。
【0089】
ワークW1を切断し終えると、ワークW1が図2の破線位置にある状態のもとで、各切断機構80の移動モータが駆動される。これにより、回転軸82がワークW1の短手方向に移動して、各外周刃鋸81がワークW1から離間する。その後、スライダ機構50の駆動により、ワークW1および各端材Dが図2の矢印(8)方向に移動して、メインチャック62によりチャックされたワークW1と、各サブチャック63によりチャックされた各端材Dとが、ワーク加工領域からワーク搬入領域に搬送される。
【0090】
ワーク搬入領域にワークW1および各端材Dが搬送されると、リフト用ボールネジ機構11bと昇降機構11cとが駆動され、端材搬送リフト40が作動する。そして、端材搬送リフト40の各端材支持爪41が、ワークW1および各端材Dを挟む位置に移動し、各端材Dにそれぞれ引っ掛けられる。次いで、プライマリチャック部60の距離調整モータが駆動され、図8の矢印(9)に示すように、プライマリチャック部60がスレーブチャック部70から離間する。
【0091】
これにより、図8に示すように、ワークW1(端材D)とプライマリチャック部60との離間距離L1が離間距離L2となり、各サブチャック63による各端材Dのチャックのみが開放される。その後、再び端材搬送リフト40が作動し、各端材Dを引っ掛けた各端材支持爪41が基台11に隣接した端材ボックスDBに移動して、図3の矢印(10)に示すように、各端材Dが端材ボックスDBに搬送される。
【0092】
次いで、プライマリチャック部60のチャック駆動モータ64aが駆動され、ワークW1が90°回転される。すると、図8に示すようにワークW1の切断すべき他の各端材Dとなる部分が、各サブチャック63と対向するようになる。その後、プライマリチャック部60の距離調整モータが駆動され、ワークW1(他の各端材D)とプライマリチャック部60との離間距離L2が離間距離L1となる。
【0093】
これにより、他の各端材Dとなる部分が各サブチャック63によりそれぞれチャックされ、以降、上述したワーク切断工程と同様に他の各端材Dが切断される。このようにして円柱状のワークW1から4つの端材Dを切断分離して、最終的に角柱状のワークW1に加工されて、ワーク切断工程が完了する。
【0094】
[ワーク搬出工程]
角柱状に加工されたワークW1は、メインチャック62にチャックされた状態となっており、この状態のもとでリフト用ボールネジ機構11bと昇降機構11cとが駆動され、ワーク搬送リフト30が作動する。ワーク搬送リフト30は、メインチャック62にチャックされたワークW1のところまで移動し、各アーム部32によりワークW1を把持する。このとき、各アーム部32の各支持駒32b(図4参照)によって角柱状のワークW1は安定的に把持される。
【0095】
その後、プライマリチャック部60の距離調整モータが駆動され、スレーブチャック部70からプライマリチャック部60が離間し、メインチャック62によるワークW1のチャックが開放される。次いで、リフト用ボールネジ機構11bと昇降機構11cとが駆動されてワーク搬送リフト30が作動し、ワークW1がスライダ機構50からワーク搬入機構20に搬送される。このとき、ワークW1はワーク支持台22に安定的に載置される。
【0096】
そして、ワーク搬入機構20が駆動され、図3の矢印(11)に示すように、ワーク支持台22がスライドレール21上を移動し、ワークW1が切断装置10の内部から外部に搬送される。これにより、作業者またはワーク搬出装置(図示せず)によって、図3の矢印(12)に示すように、ワークW1を次工程(研磨工程)に搬出できるようになり、ワーク搬出工程が完了する。
【0097】
以上詳述したように、本実施の形態に係る切断装置10によれば、切断機構80の回転モータにより回転駆動され、円柱状のワークW1の外周部をその長手方向に沿って切断する外周刃鋸81と、切断機構80およびスライダ機構50に設けられ、外周刃鋸81の回転駆動時における回転振れを抑制する回転振れ抑制機構、つまり、サブチャック63,カバー部材83,液圧供給パイプ84,液圧導入室88a,88bおよび液圧安定部材89a,89bを備えている。
【0098】
したがって、外周刃鋸81を大径,薄肉にしてもその回転振れを抑制できるので、より大径の円柱状のワークW1の外周部の切断に対応可能となり、ひいては生産効率を向上させることができる。また、外周刃鋸81を薄肉にできるので、切断時に生じる切り粉の削減を図ることができる。さらに、基台11の長手方向に沿って移動するスライダ機構50により円柱状のワークW1を移動させるので、より長尺の円柱状のワークW1の外周部の切断に対応可能となり、ひいては生産効率を向上させることができる。
【0099】
また、本実施の形態に係る切断装置10によれば、切断機構80に設けた回転振れ抑制機構を、外周刃鋸81の一側面および他側面を部分的に覆うカバー部材83と、カバー部材83に設けられて外周刃鋸81の両側面に液体を圧送する液体圧送機構、つまり、液圧供給パイプ84,液圧導入室88a,88bおよび液圧安定部材89a,89bとから形成している。
【0100】
したがって、外周刃鋸81の回転振れを水WTの圧力(液圧)により抑制することができる。また、外周刃鋸81の回転抵抗の増大が抑制されるので、外周刃鋸81の広範囲をカバー部材83で覆うことができ、より大径,より薄肉の外周刃鋸81の回転振れを抑制できる。さらに、水WTを用いるため外周刃鋸81を効果的に冷却してその寿命を延ばしつつ、切断時に生じる切り粉の飛散を防止できる。
【0101】
さらに、本実施の形態に係る切断装置10によれば、スライダ機構50に設けた回転振れ抑制機構を、外周刃鋸81による切断加工により生じた端材Dの長手方向両側をチャックするサブチャック63から形成している。
【0102】
したがって、切断中においてワークW1から端材Dがその自重で落下するのを防止しつつ、ワークW1と端材Dとで外周刃鋸81の一側面および他側面を保持できる。したがって、外周刃鋸81の回転振れをワークW1および端材Dによって抑制することができる。
【0103】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、回転振れ抑制機構を構成する液体圧送部材として、各液圧安定部材89a,89bを備えたものを示したが本発明はこれに限らない。例えば、液圧供給パイプ84を高剛性のものとしつつ、脈動を発生し難い液圧ポンプ等を採用することで、微小隙間Oに安定した液圧を供給でき、したがって、各液圧安定部材89a,89bを省略することもできる。
【0104】
また、上記実施の形態においては、回転振れ抑制機構を、スライダ機構50および切断機構80の双方に設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、使用する外周刃鋸81の剛性(板厚寸法T)等によっては、何れか一方を省略することもできる。例えば、切断加工の対象となるワークW1の長手方向の寸法が短い場合は、各端材Dは軽量となる。よって、ワークW1の切断中において、当該ワークW1を欠損させるような各端材Dの落下が抑えられるため、スライダ機構50の回転振れ抑制機構、つまりサブチャック63を省略することもできる。
【0105】
さらに、上記実施の形態においては、液体として水WTを用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、防錆剤や砥粒を含むオイルベース系の液体等を用いることもできる。
【符号の説明】
【0106】
10 切断装置
11 基台
11a フレーム部材
11b リフト用ボールネジ機構
11c 昇降機構
11d コントロールユニット
11e カバー
11f 開口窓
12 調節脚
20 ワーク搬入機構
21 スライドレール
22 ワーク支持台
23 第1センサ
24 第2センサ
30 ワーク搬送リフト
31 本体部
32 アーム部
32a ローラ
32b 支持駒
33 アーム駆動部
33a 駆動モータ
33b ボールネジ
33c ナット
34 LED照明
34a 高輝度LED
35 撮像カメラ
40 端材搬送リフト
41 端材支持爪
50 スライダ機構(ワーク移動機構)
60 プライマリチャック部
61 移動ベース
62 メインチャック
63 サブチャック(端材チャック,回転振れ抑制機構)
63a チャック本体
64 支持ケース
64a チャック駆動モータ
64b 軸受
64c チャック支持部材
64d 嵌合凹部
65 ワークチャック
65a チャック本体
65b 嵌合凸部
66 伸縮部材
66a シリンダ室
66b ピストン部材
66c 支持ボルト
66d 板バネ
67 伸縮部材
67a シリンダ室
67b ピストン部材
67c 支持ボルト
67d コイルバネ
70 スレーブチャック部
80 切断機構
81 外周刃鋸
81a 円盤基材
81b ダイヤ刃部
82 回転軸
83 カバー部材(回転振れ抑制機構)
84 液圧供給パイプ(液体圧送部材,回転振れ抑制機構)
85 中空部材
86 軸受部材
87 伸縮カバー
88a,88b 液圧導入室(液体圧送部材,回転振れ抑制機構)
89a,89b 液圧安定部材(液体圧送部材,回転振れ抑制機構)
90a,90b オリフィス孔
D 端材
DB 端材ボックス
EO 逃げ隙間
FL 床面
G1,G2 ネジ
O 微小隙間
S 晶癖線
W1 ワーク
W2 ウェハ
WT 水(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状シリコンインゴットの外周部を切断し、角柱状シリコンインゴットに加工する切断装置であって、
床面に設置され、前記床面の水平方向に延在する基台と、
前記基台に設けられ、前記円柱状シリコンインゴットの長手方向両側をチャックした状態のもとで前記基台の長手方向に沿って移動するワーク移動機構と、
前記基台に設けられ、前記基台の短手方向から前記円柱状シリコンインゴットと対向する切断機構と、
前記切断機構の駆動源により回転駆動され、前記円柱状シリコンインゴットの外周部をその長手方向に沿って切断する外周刃鋸と、
前記ワーク移動機構および前記切断機構のうちの少なくともいずれか一方に設けられ、前記外周刃鋸の回転駆動時における回転振れを抑制する回転振れ抑制機構とを備えることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
請求項1記載の切断装置において、前記回転振れ抑制機構は、前記切断機構に設けられ、前記外周刃鋸の一側面および他側面を部分的に覆うカバー部材と、前記カバー部材に設けられて前記外周刃鋸の両側面に液体を圧送する液体圧送部材とを有することを特徴とする切断装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の切断装置において、前記回転振れ抑制機構は、前記ワーク移動機構に設けられ、前記外周刃鋸による切断加工により生じた端材の長手方向両側をチャックする端材チャックからなることを特徴とする切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−240259(P2012−240259A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110970(P2011−110970)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(594002288)株式会社BBS金明 (8)
【Fターム(参考)】