説明

切替弁

【課題】シンプルな構成で、小型・低コストでありながら、多彩な出水パターンを実現できる切替弁を提供する。
【解決手段】流体が流入する一又は複数の流入口を有する弁ケース内に、円板状に形成された弁体が自身の中心軸線周りに回転自在に収容され、上記弁ケースの上記弁体の円板面に当接する面に、流体が流出する一又は複数の流出口が配設され、上記弁体の上記円板面の上記流出口と対向する位置に上記中心軸を中心とする円弧上に開口が設けられ、上記弁体が自身の中心軸線周りに回転することにより、上記開口が上記流出口と対向する間は上記開口と上記流出口は連通し、それ以外の間は上記円板面が上記流通口を閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入水した流体を出水要求に基づいて切り替える切替弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流路の切替を行う切替弁はボールバルブやシリンダーバルブが一般的である。両者ともシンプルな構造で出水要求に対し一つの動作で簡単に操作できることから利便性の良い水洗装置として利用されている。
【0003】
しかしながら、従来のこのようなタイプの切替弁は、流路を切り替える弁体がまともに水圧を受けることが多く、大きな操作力を必要とする切替弁になっている。そのため、一般家庭に普及させるべく水圧の影響を小さくするために、切替弁前段に減圧弁や定量弁を設ける等機械的に水圧を低減させる必要があり、その結果、吐水量が減少する、或いは装置が大掛かりになる等のデメリットがある。
【0004】
この問題を解決するものとして、弁ケース内部に一又は複数の流入口と同一円周上に配設した複数の流出口を有し、前記流出口を配置している円周の中心を回転軸として回転して前記流出口を切替える弁体を収納してなる切替弁において、前記弁体が回転部材と前記流出口を閉塞する閉塞部材とで構成した切替弁が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この回転式の切替弁によれば、低操作トルクで切替え動作を行うことができるという優れた効果を奏する。
【特許文献1】特許第3103185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この切替弁は、回転弁体の円周方向に流入口と流出口の両者が配設されているので、入水に対する出水パターンの様々なバリエーション(1の入水に対して多数の出水口を有する、ソフトスタートやフェードアウト等、水量を時間的に変化させる等)を成立させ難いという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、シンプルな構成で、小型・低コストでありながら、多彩な出水パターンを実現できる切替弁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る切替弁は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、流体が流入する一又は複数の流入口を有する弁ケース内に、円板状に形成された弁体が自身の中心軸線周りに回転自在に収容され、上記弁ケースの上記弁体の円板面に当接する面に、流体が流出する一又は複数の流出口が配設され、上記弁体の上記円板面の上記流出口と対向する位置に上記中心軸を中心とする円弧上に開口が設けられ、上記弁体が自身の中心軸線周りに回転することにより、上記開口が上記流出口と対向する間は上記開口と上記流出口は連通し、それ以外の間は上記円板面が上記流通口を閉塞するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る切替弁によれば、シンプルな構成で、小型・低コストでありながら、多彩な出水パターンを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る切替弁の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る切替弁を採用した下肢吐水装置1を、右足側と左足側とに切断して全体的な概要を示す斜視図である。
【0011】
同図に示すように、本実施形態に係る下肢吐水装置1は、外形が略直方体状の本体2内に、上部が開口して使用者の下肢を収納する下肢収納空間LSが形成されている。
【0012】
下肢収納空間LSの下端を画成する底面3には、図示しないメッシュ状の板が載置されて、使用者の足を支持する足置き台となり、底面3より下の部分には、使用者の足に向かって吐出された湯水を回収する貯水ピット4が形成される。
【0013】
下肢収納空間LS内には、吐水手段としての上方ノズル5、下方ノズル6、後方ノズル7(以下、これらを総称する場合は、「吐水ノズル」という。)が配設される。
【0014】
上方ノズル5は、下肢収納空間LSの前方(使用者のつま先が位置する側、図1では紙面に対して左側)上部コーナー近傍において、本体2の左右の側面間に架設された筒状のシャフト5aに、複数の吐水口が設けられて成る。シャフト5aは、その内部を湯水が流通し、本体2の側面に取設された電動モータ8によって回転され、複数の吐水口5bが使用者のつま先から踝近傍までを指向する間のみ吐水する。
【0015】
下方ノズル6は、貯水ピット4内において、本体2の左右の側面間に架設されたシャフト6aに、左右一対の吐水口が設けられて成る。シャフト6aは、その内部を湯水が流通し、本体2の側面に取設された電動モータ9によって駆動され、吐水口6bが使用者の足裏のつま先から踵近傍までを往復運動しながら吐水する。
【0016】
後方ノズル7は、本体2の側面後方及び左右の足を分離する立上り部10に設けられ、使用者の下腿に対して左右から吐水する。
【0017】
本体2前方の外部最上部に、本体2に着脱自在に装着された給排水タンク30は、吐水される湯水を本体2に供給するとともに、使用された湯水を回収排水するものである。給排水タンク30は、上部が2段に形成され、キャップ33に閉蓋された給排水口は低い方の段に設けられる。また、給排水タンク30側面には水量観察窓31、32が設けられる。
【0018】
本体2外部の両側面には、給排水タンク30の湯水を本体内に取り込む取り込まない、又は排水するしないを操作するバルブ11,12が設けられる。
【0019】
本体2外部の前方下部には、キャスター13が設けられ、本体2外部の後方中段に設けられた把手14を持って引き上げることで、キャスター13近傍に設けられたストッパーゴム足が床から離れ、キャスターのみが接地することとなるため、下肢吐水装置1の移動を比較的容易に行うことができる。
【0020】
給排水タンク30により供給された湯水は、本体2の最低部に設置された循環ポンプ15により、本体2内を循環する。この循環の概要を図2を参照して説明する。
【0021】
給排水タンク30からポンプ流入管16を経由して循環ポンプ15へ、またピット流入管17を経由して貯水ピット4への送水が完了し、吐水開始のスイッチが入れられると、循環ポンプ15は送水管18へ湯水を圧送する。
【0022】
送水管18は、上方ノズル5に接続される上方送水管19、下方ノズル6に接続される下方送水管20に分岐し、後方ノズル7に接続される後方送水管21は、上方ノズル5近傍において、上方送水管19末端から切替弁40を介して分岐する。
【0023】
下方送水管20に送られた湯水は、下方ノズル4から下肢収納空間LSに吐出される。他方、上方送水管19に送られた湯水は、切替弁40により行き先が上方ノズル5と後方送水管21とに周期的に切り替えられる。したがって、後方ノズル7は、上方ノズル5が吐水しない間(使用者のつま先から踝近傍までを指向する間以外の間)湯水を断続的に吐出する。
【0024】
吐出された湯水は貯水ピット4内に回収され、戻り管22を介して循環ポンプ15に戻され、再度循環ポンプ15から圧送され、これを繰り返して吐水が継続される。
【0025】
切替弁40は、図3に示すように、通水ブロック41とロータ平板42と、ロータ平板支持蓋43とを備え、本体2の側面に取設される。
【0026】
通水ブロック41は、ロータ平板支持蓋43とともに弁ケースを形成し、円筒状凹陥部41aの中心に軸穴41bが設けられ、ここにシャフト5aの一端が挿通されて支持される。なお、シャフト5aの他端はモータ軸受け23を介して電動モータ8に接続される
凹陥部41aにはまた、同心円上に流出口41c、41dが設けられ、流出口41cは上方ノズル5と連通し、流出口41dは、後方ノズル7へと続く後方送水管21に連通する。
【0027】
さらに凹陥部41aの側面には、流入口41eが設けられ(図4参照。)、この流入口41eは、上方送水管と連通している。
【0028】
平板ロータ42は、弁体を形成し、その中心に軸穴42aが設けられ、通水ブロック41の軸穴41b同様シャフト5aの一端が挿通される。平板ロータ42は、その一面が凹陥部41aの底部と当接して嵌装される。平板ロータ42にはまた、流出口41c、41dと同心円上に円弧状の長穴42bが設けられる。
【0029】
ロータ平板支持蓋43は、通水ブロック41の凹陥部41a外周と当接して、凹陥部41a内を、流入口41eから流入した湯水を流出口41c、41dへと通過する空間を形成する。
【0030】
本実施の形態に係る切替弁40は上記のように構成されており、以下その動作について説明する。
【0031】
ロータ平板43は、電動モータ8に駆動されて、シャフト5aに追従して回転するので、これにつれて長穴42bは軸穴41bの周りを回転する。
【0032】
長穴42bが、図4(a)に示すように、流出口41cと重なる位置にあるとき、流出口41cは開放され、流出口41dは閉止される。そのため、流入口41eから流入した湯水は、図4(b)に示すように、流出口41cを介して上方ノズル5へと流出する。これは長穴42bが流出口41cと重なっている間持続する。
【0033】
ロータ平板43がさらに回転して、長穴42bが、図5(a)に示すように、流出口41dと対向する位置にあるとき、流出口41dは開放され、流出口41cは閉止される。そのため、流入口41eから流入した湯水は、図5(b)に示すように、流出口41dを介して後方送水管21へと流出する。これは長穴42bが流出口41dと重っている間持続する。
【0034】
そして、長穴42bが流出口41c,41dのいずれにも重ならない位置にあるときは、いずれの流出口にも湯水は流出せず、この間吐水は停止する。
【0035】
このように、本願発明によれば、部品点数がすくなく、単純な形状でありながら、一の入水路から、二方又はそれ以上の出水路に水路を分岐することができる。
【0036】
そして、流出口は、流入口41eに直接対向していないので、止水時において水圧をまともに受けることもないので操作に大きな力を必要としない。
【0037】
さらに、電動モータ8の回転速度を変えることにより、切替周期を変更することができる。
【0038】
本実施形態のように、下肢吐水装置に採用すれば、電動モータ8の回転に従って、吐水の切替えを繰り返すので、上方ノズル5が使用者の足に向いていない間は、湯水は後方ノズル7に回されるので使用水に無駄が生じない。
【0039】
また、後方ノズル7は間欠的に吐水を繰り返すので、連続的に吐水される場合に比べて、変化のあるマッサージ感を与えることができる。
【0040】
この切替弁は、長穴の形状、サイズ、位置や流出口との位置関係を変えることにより、様々なパターンの吐水切替が可能である。以下、幾つか例を挙げて説明する。
【0041】
図6(a)は、長穴42bの弧長が2つの流出口41c,41d間の円周に沿った距離と等しくしたものであるが、図6(b)に示すものは、長穴42bの弧長を2つの流出口41c,41d間の円周に沿った距離よりも長く形成している。
【0042】
後者の場合、2つの流路に同時に吐水する期間が生じ、その期間は流出量が二分されて水勢が落ちるので、前者の吐水がシャープに立ち上がり、また立ち下がるのに対し、比較的ソフトに立ち上がって、また立ち下がる。
【0043】
図6(c)に示すものは、長穴42bがさらに長く、先細りに形成されている。これにより、図6(b)に示したものより、流路をさらにソフトに切り替えることができる。
【0044】
同様の効果は、図6(d)に示すもののように、流出口41c,41dを長穴に形成することによっても得ることができる。
【0045】
図7に示す切替弁40は、3つの流出口41c,41d,41fを有する。流出口はさらに、4つ又はそれ以上設けることもできる。
【0046】
図7(a)は、長穴42bの弧長が2つの流出口41c,41d間の円周に沿った距離と等しくしたものであるが、図7(b)に示すものは、長穴42bの弧長を2つの流出口41c,41d間の円周に沿った距離よりも長く形成している。
【0047】
後者の場合、2つの流路に同時に吐水する期間が生じ、その期間は流出量が二分されて水勢が落ちるので、前者の吐水がシャープに立ち上がり、また立ち下がるのに対し、比較的ソフトに立ち上がって、また立ち下がる。
【0048】
図7(c)に示す切替弁40は、長穴42bに加えて、円形の穴42cが設けてある。この穴42cを設けることにより、周期的に一瞬吐水する期間を作ることができる。したがって、下肢吐水装置に用いた場合では、マッサージに変化をもたらすことができ、馴化を防止することができる。
【0049】
図7(d)に示す切替弁40は、流出口42d,42fは通水ブロック41内で合流させて、外部に流出させるようにしたものである。この構成によれば、一方の流出口からの吐出期間は120°分、もう一方の流出口からの吐出期間は240°分となるので、一方の流出口からの吐出期間を他方の流出口からの吐出期間の2倍にすることができる。
【0050】
これを下肢吐水装置に適用すれば、例えば、上方ノズル5からの吐水期間を120°として使用者のつま先から踝近傍に至るまで吐水し、後方ノズル7は残りの期間中ずっと吐水させることができる。
【0051】
図8は、2つの同心円上に流出口を配したもので、流出口41cと41dとを切り替える長穴42bと、流出口41f,41g,41hを切り替える長穴42cとを備える。この構成によれば、複雑な流路の切替えも可能となる。
【0052】
以上に説明した実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものによって置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
【0053】
例えば、本実施形態では、切替弁が下肢吐水装置に採用された場合を例にとって説明したが、切替弁の適用はこれに限られず、例えば、食器洗浄機等にも用いることが可能である。
【0054】
また、ロータ平板42に設けられた長穴42bも、一定のタイミングで吐水経路を切り替え可能な開口であれば、長穴に限られず、例えば、穴42cのように真円であってもよい。切り替わった吐水経路での吐水期間は、長穴であれば流出路と連通する間、真円であればその一瞬となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る実施形態の切替弁を備える下肢吐水装置の概要を示す縦断面を含む斜視図。
【図2】本実施形態に係る下肢吐水装置における湯水の循環を模式的に示す図。
【図3】本実施形態に係る上方吐水ノズルの分解斜視図。
【図4】(a)は長穴がある位置にある場合を示す図、(b)はそのときの水流を示す図。
【図5】(a)は長穴が他の位置にある場合を示す図、(b)はそのときの水流を示す図。
【図6】本実施形態に係る切替弁の幾つかの変形例を示す図。
【図7】本実施形態に係る切替弁の他の幾つかの変形例を示す図。
【図8】本実施形態に係る切替弁のさらに他の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0056】
1 下肢吐水装置
2 本体
3 底面
4 貯水ピット
5 上方ノズル
5a シャフト
5b 吐水口
6 下方ノズル
7 後方ノズル
8,9 電動モータ
10 立上り部
11,12 バルブ
13 キャスター
14 把手
15 循環ポンプ
16 ポンプ流入管
17 ピット流入管
18 流出管
19 上方送水管
20 下方送水管
21 後方送水管
22 戻り管
23 モータ軸受け
30 給排水タンク
31,32 水量観察窓
33 キャップ
40 切替弁
41 通水ブロック
41a 凹陥部
41b 軸穴
41c,41d,41f,41g,41h 流出口
41e 流入口
42 ロータ平板
42a 軸穴
42b 長穴
42c 穴
42d 流出口
43 ロータ平板支持蓋
LS 下肢収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する一又は複数の流入口を有する弁ケース内に、
円板状に形成された弁体が自身の中心軸線周りに回転自在に収容され、
上記弁ケースの上記弁体の円板面に当接する面に、流体が流出する一又は複数の流出口が配設され、
上記弁体の上記円板面の上記流出口と対向する位置に上記中心軸を中心とする円弧上に開口が設けられ、
上記弁体が自身の中心軸線周りに回転することにより、
上記開口が上記流出口と対向する間は上記開口と上記流出口は連通し、
それ以外の間は上記円板面が上記流通口を閉塞する
ことを特徴とする切替弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−271020(P2007−271020A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99230(P2006−99230)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】