説明

判断装置及び判断方法

【課題】ガス器具が使用されたか等の判断をするにあたり、マイコン等の演算部の負担増大を抑制することが可能な判断装置及び判断方法を提供する。
【解決手段】ガスメータ40は、正規計測モード実行部43aが約2秒に1回の流量計測を行っている。また、簡易計測モード実行部43bは約2秒に1回の計測間隔を埋めるように約0.1秒に1回の間隔で、所定値以上のガス流量の変化を計測している。高速計測モード実行部43cは、所定値以上のガス流量の変化が計測された場合に、圧力センサ42からの電気信号を取得して得られた波形の周波数及び振幅から、ガバナ付きガス器具10の使用等を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判断装置及び判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波式や熱式のガスメータが知られている。このようなガスメータでは、約2秒に1回ガス流量を計測するようになっている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2008−202948号公報
【特許文献2】特開2001−324368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、本件出願人は、特願2008−86022の技術を発明している。この発明では、ガス圧力の波形に基づいてガバナ付きガス器具が使用されたか、ガバナ無しガス器具が使用されたか、及び、ガス漏れが発生しているか否かを判断するようになっている。また、ガス圧力とガス流量とには一定の相関があり、ガス流量に基づいてガバナ付きガス器具が使用されたか、ガバナ無しガス器具が使用されたか、及び、ガス漏れが発生しているか否かを判断することも可能である。
【0004】
しかし、ガスメータは、通常電池により10年間駆動しなければならず、約2秒に1回の流量計測と、ガス器具が使用されたか等の判断の判断処理を実行するために圧力波形を取得する処理とを並行して実行すると、電力消費量が多大となってしまう。
【0005】
なお、本明細書では特願2008−86022の一部技術を説明しているが、この説明は特願2008−86022の技術の公知性を認めるものではない。また、ガス流量に基づくガス器具が使用されたか等の判断についても公知性を認めるものではない。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ガス器具が使用されたか等の判断をするにあたり、消費電力の増大を抑制することが可能な判断装置及び判断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の判断装置は、流量センサからの電気信号に基づいて流路内のガス流量を所定時間毎に計測する正規計測モード実行手段と、正規計測モード実行手段による今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に、流量センサからの電気信号に基づいて所定値を超えるガス流量の変化を計測する簡易計測モード実行手段と、簡易計測モード実行手段によりガス流量の変化が計測された場合に、流量センサからの電気信号に基づくガス流量、及び、圧力センサからの電気信号に基づく流路内のガス圧力の少なくとも一方からなる計測対象を計測して、計測対象の波形を取得する高速計測モード実行手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この判断装置によれば、流路内のガス流量を所定時間毎に計測し、今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に、所定値を超えるガス流量の変化を計測する。そして、ガス流量の変化が計測された場合に、ガス流量及びガス圧力の少なくとも一方からなる計測対象を計測して、計測対象の波形を取得する。このように、計測対象の波形の取得については、今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に所定値を超えるガス流量の変化が計測された場合のみに行われることとなる。これにより、計測対象の波形の取得については、常時実行されることなく、特定の時間帯においてのみ実行されることとなって、マイコン等の演算部の消費電力増大を抑制することとなる。従って、ガス器具が使用されたか等の判断をするにあたり、マイコン等の演算部の消費電力増大を抑制することができる。
【0009】
また、本発明の判断装置において、高速計測モード実行手段は、計測対象の波形に基づいて、ガス器具が使用されたか及びガス漏れが発生したかの少なくとも一方を判断することが好ましい。
【0010】
この判断装置によれば、ガス器具が使用されたか及びガス漏れが発生したかの少なくとも一方を判断する。このため、今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に所定値を超えるガス流量の変化が計測され、ガス漏れが発生したことを判断する場合はもとより、ガス器具が使用されたかを判断する場合においても、ガス器具の使用でないと判断したときには、ガス漏れであると判断できる。このように、ガス漏れに関して特化して判断することが可能となり、遮断弁制御などの保安処理を迅速に行うことができる。
【0011】
また、本発明の判断装置において、高速計測モード実行手段は、計測対象の波形に基づいて、ガス漏れであるか、ガス器具のうちガバナを有したガス器具の使用であるか、又は、ガバナを有さないガス器具の使用であるかを判断することが好ましい。
【0012】
この判断装置によれば、計測対象の波形に基づいて、ガス漏れであるか、ガス器具のうちガバナを有したガス器具の使用であるか、又は、ガバナを有さないガス器具の使用であるかを判断する。ここで、ガス漏れ発生時と、ガバナを有するガス器具の使用開始時と、ガバナを有しないガス器具の使用開始時とでは、圧力や流量の波形の周波数や振幅に特徴的な差がある。よって、計測対象の波形の周波数や振幅から、ガス漏れ又はガス器具のうちガバナを有したガス器具の使用であるか、ガバナを有さないガス器具の使用であるかを判断でき、ガス漏れ判断の誤検出防止につなげることができる。
【0013】
また、本発明の判断装置において、高速計測モード実行手段は、計測対象の波形に基づいて、ガス器具の種類を判断することが好ましい。
【0014】
この判断装置によれば、計測対象の波形に基づいて、ガス器具の種類を判断する。ここで、ガス器具の使用時には、ガス器具の種類毎に周波数や振幅に特徴があらわれる。このため、計測対象の波形に基づいて、ガス器具の種類を判断することができる。特に、ガス器具の種類を特定できれば、特定のガス器具使用時にガス料金を割引くなどができる。
【0015】
また、本発明の判断装置において、高速計測モード実行手段は、計測対象を特定時間だけ計測し、簡易計測モード実行手段は、特定時間経過後に、再度ガス流量の変化を計測することが好ましい。
【0016】
この判断装置によれば、高速計測モード実行手段は、計測対象を特定時間だけ計測し、簡易計測モード実行手段は、特定時間経過後に、再度ガス流量の変化を計測する。このように、ガス器具の使用等の判断後には再度ガス流量の変化を計測することとなり、ガス器具の使用等の判断処理は、特定時間に演算時間を加えた時間だけ実行させることができる。
【0017】
また、本発明の判断装置において、簡易計測モード実行手段は、正規計測モード実行手段による今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に複数回流量の変化を計測することが好ましい。
【0018】
この判断装置によれば、今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に複数回流量の変化を計測するため、細かな時間間隔で流量変化を判断することとなり、流量変化の発生を取りこぼす可能性を減じることができる。
【0019】
また、本発明の判断装置において、正規計測モード実行手段は、今回検出した流量と過去に検出した流量との差が一定値以内である場合が複数回連続するとき、所定時間の計測間隔を長く変化させて流量を計測することが好ましい。
【0020】
この判断装置によれば、今回検出した流量と過去に検出した流量との差が一定値以内である場合が複数回連続するとき、所定時間の計測間隔を長く変化させて流量を計測する。このため、長時間一定量のガスが使用される場合、例えばガスコンロを使用して長時間の煮込みを行う場合などに、計測間隔を長くすることとなり、流量変化がない場合において一層消費電力を低減することができる。
【0021】
また、本発明の判断装置において、流量センサが超音波式であり、簡易計測モード実行手段による超音波計測回数は、正規計測モード実行手段による超音波計測回数よりも少なくされていることが好ましい。
【0022】
この判断装置によれば、簡易計測モード実行手段による超音波計測回数は、正規計測モード実行手段による超音波計測回数よりも少なくされているため、正規計測モード実行手段によるガス流量の計測間隔の間に実行される流量変化の計測について消費電力の増加を抑制することができ、流量変化の計測処理の実行による電池への負担を軽減することができる。
【0023】
また、本発明の判断装置において、流量センサが超音波式であり、高速計測モード実行手段による超音波計測回数は、正規計測モード実行手段による超音波計測回数よりも少なくされていることが好ましい。
【0024】
この判断装置によれば、高速計測モード実行手段による超音波計測回数は、正規計測モード実行手段による超音波計測回数よりも少なくされているため、ガス器具の使用等の判断にあたり、消費電力の増加を抑制することができ、ガス器具の使用等の判断処理実行による電池への負担を軽減することができる。
【0025】
また、本発明の判断装置において、流量センサが超音波式であり、簡易計測モード実行手段が伝搬時間を計測するためのクロック周波数は、正規計測モード実行手段が伝搬時間を計測するためのクロック周波数よりも小さくされていることが好ましい。
【0026】
この判断装置によれば、簡易計測モード実行手段が伝搬時間を計測するためのクロック周波数は、正規計測モード実行手段が伝搬時間を計測するためのクロック周波数よりも小さくされているため、正規計測モード実行手段によるガス流量の計測間隔の間に実行される流量変化の計測について消費電力の増加を抑制することができ、流量変化の計測処理の実行による電池への負担を軽減することができる。
【0027】
また、本発明の判断装置において、流量センサが超音波式であり、簡易計測モード実行手段により所定値を超えるガス流量の変化が計測されたか否かは、今回の計測における超音波の伝搬時間が過去の伝搬時間よりも一定値以上変化したか否かに基づいて判断されることが好ましい。
【0028】
この判断装置によれば、簡易計測モード実行手段により所定値を超えるガス流量の変化が計測されたか否かは、今回の計測における超音波の伝搬時間が過去の伝搬時間よりも一定値以上変化したか否かに基づいて判断される。このため、ガス流量が超音波により検出される場合において超音波の伝搬時間の相異からガス流量の変化を知ることができ、ガス流量そのものを算出する必要がなく演算量を低減させることができるため、一層消費電力量を低減させることができる。
【0029】
また、本発明の判断装置において、流量センサが熱式であり、簡易計測モード実行手段によるヒータ電圧は、正規計測モード実行手段によるヒータ電圧よりも小さくされていることが好ましい。
【0030】
この判断装置によれば、簡易計測モード実行手段によるヒータ電圧は、正規計測モード実行手段によるヒータ電圧よりも小さくされているため、ガス流量の変化を測定する場合におけるヒータの消費電力を低減させて、流量変化の計測処理の実行による電池への負担を軽減することができる。
【0031】
また、本発明の判断装置において、流量センサが熱式であり、高速計測モード実行手段によるヒータ電圧は、正規計測モード実行手段によるヒータ電圧よりも小さくされていることが好ましい。
【0032】
この判断装置によれば、高速計測モード実行手段によるヒータ電圧は、正規計測モード実行手段によるヒータ電圧よりも小さくされているため、ガス器具の使用等の判断処理におけるヒータの消費電力を低減させて、ガス器具の使用等の判断処理実行による電池への負担を軽減することができる。
【0033】
また、本発明の判断方法は、流量センサからの電気信号に基づいて流路内のガス流量を所定時間毎に計測する正規計測モード実行工程と、正規計測モード実行工程における今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に、流量センサからの電気信号に基づいて所定値を超えるガス流量の変化を計測する簡易計測モード実行工程と、簡易計測モード実行工程においてガス流量の変化が計測された場合に、流量センサからの電気信号に基づくガス流量、及び、圧力センサからの電気信号に基づく流路内のガス圧力の少なくとも一方からなる計測対象を計測して、計測対象の波形を取得する高速計測モード実行工程と、を備えることを特徴とする。
【0034】
この判断方法によれば、流路内のガス流量を所定時間毎に計測し、今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に、所定値を超えるガス流量の変化を計測する。そして、ガス流量の変化が計測された場合に、ガス流量及びガス圧力の少なくとも一方からなる計測対象を計測して、計測対象の波形を取得する。このように、計測対象の波形の取得については、今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に所定値を超えるガス流量の変化が計測された場合のみに行われることとなる。これにより、計測対象の波形の取得については、常時実行されることなく、特定の時間帯においてのみ実行されることとなって、マイコン等の演算部の消費電力増大を抑制することとなる。従って、ガス器具が使用されたか等の判断をするにあたり、マイコン等の演算部の消費電力増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、ガス器具が使用されたか等の判断をするにあたり、マイコン等の演算部の消費電力増大を抑制することが可能な判断装置及び判断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る計測装置を含むガス供給システムの構成図である。
【図2】図1に示したガバナの一例を示す側方断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るガスメータの構成図である。
【図4】本実施形態に係るガスメータのモード移行方法の概略を示す状態遷移図である。
【図5】ガバナ付きガス器具の使用を開始したときの圧力変化の様子を示すグラフである。
【図6】ガバナ無しガス器具の使用を開始したときの圧力変化の様子を示すグラフである。
【図7】ガバナ無しガス器具での燃料ガスの供給の様子を示す概略図である。
【図8】ガス漏れ時の圧力変化の様子を示すグラフである。
【図9】本実施形態に係るガスメータの判断方法を示すフローチャートであり、正規計測モードにおける動作を示している。
【図10】本実施形態に係るガスメータの判断方法を示すフローチャートであり、簡易計測モードにおける動作を示している。
【図11】本実施形態に係るガスメータの判断方法を示すフローチャートであり、高速計測モードにおける動作を示している。
【図12】図11に示したステップS33の詳細を示すフローチャートであり、ガス器具の使用及びガス漏れ判断に関する処理を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る計測装置を含むガス供給システムの構成図である。ガス供給システム1は、各ガス器具10に燃料ガスを供給するものであって、複数のガス器具10と、ガス供給元の調整器20と、配管31,32と、ガスメータ(判断装置)40とを備えている。なお、図1に示す例では、ガスメータ40を判断装置の一例として挙げるが、判断装置はガスメータ40に限らず、他の装置であってもよい。
【0038】
調整器20は上流からの燃料ガスを所定圧力に調整して第1配管31に流すものである。第1配管31は、調整器20とガスメータ40とを接続するものである。第2配管32はガスメータ40とガス器具10とを接続する配管である。ガスメータ40は、燃料ガスの流量を測定して積算流量を表示するものである。このようなガス供給システム1では、ガスメータ40内に第1配管31及び第2配管32とつながる流路が形成されており、調整器20を通じて流れてきた燃料ガスは第1配管31からガスメータ40、及び第2配管32を通じてガス器具10に到達し、ガス器具10において燃焼されることとなる。
【0039】
また、ガス器具10は、概略的に、遮断弁12、ガバナ13、及びバーナー14を備えている。遮断弁12は、ガス器具10に設けられた弁である。ガバナ13は、ガバナ内弁13aを有し、ガス器具10のバーナー14に供給するガスの圧力をガバナ内弁13aの開度によって調整するものである。圧力調整された燃料ガスはガバナ13の先端のノズル13bを通じてバーナー14に至り、燃焼することとなる。なお、ガス器具10は、全てがガバナ13を有しているわけでなく、ガスコンロなどのようにガバナ13を有さないものもある。
【0040】
図2は、図1に示したガバナ13の一例を示す側方断面図である。なお、図2では、ガバナ13の一例を示すに過ぎず、ガバナ13の構成は図2に示すものに限られない。また、図2に示すガバナ13については図1に示したノズル13bを省略して図示する。
【0041】
図2に示すようにガバナ13は、外壁13cとガバナキャップ13dとによって形成される内部空間の一部をガス流路として用いるものである。このようなガバナ13は、ガバナ内弁13aに加えて、内部空間に、ダイヤフラム13e、調整スプリング13f、及び調整ネジ13gを備えている。
【0042】
ダイヤフラム13eは、ガバナ13の内部空間を仕切る膜状の部材である。このダイヤフラム13eには、一方側(流路側)にガバナ内弁13aが取り付けられている。また、ダイヤフラム13eの他方側(流路として機能しない側)に調整スプリング13fが取り付けられている。調整スプリング13fは、一端にダイヤフラム13eが取り付けられ、他端に調整ネジ13gが取り付けられている。調整ネジ13gは、ねじ切り溝が形成されたガバナ13の内壁に固定される構造となっており、ねじ切り溝との固定位置を変化させることで調整スプリング13fの圧縮率を変更可能となっている。また、調整ネジ13gは外部にむき出しとなっておらず、ガバナキャップ13dによって覆われた構造となっている。
【0043】
また、ガバナ13の外壁13cには、ダイヤフラム13eの他方側に通じる空気孔13hが形成されている。このため、ダイヤフラム13eの他方側は空気圧となっている。さらに、図2に示す例においてガバナ内弁13aは半球形状となっており、上下動によって通過口13iの開口割合を制御可能となっている。
【0044】
このようなガバナ13では、ガス入側のガス圧力が高くなると、ダイヤフラム13eが上へ押し上げられ、同時にダイヤフラム13eに取り付けられているガバナ内弁13aも上に引き上げられる。これにより、通過口13iの開口割合が小さくなって、ガス流量が減少する。一方、ガス入側のガス圧力が低くなると、ダイヤフラム13eが下がり、同時にダイヤフラム13eに取り付けられているガバナ内弁13aも下がる。これにより、通過口13iの開口割合が大きくなって、ガス流量が増大する。このように、ガバナ13は上流側の圧力の変動に対して下流側の流量を一定に保つことで、下流側の圧力を調整することとなる。
【0045】
図3は、本発明の実施形態に係るガスメータ40の構成図である。同図に示すガスメータ40は、流量センサ41と、圧力センサ42と、マイコン43と、駆動回路44とを備えている。
【0046】
流量センサ41は、ガスメータ40内の流路に設置され、流路内のガス流量を検出するためのものである。本実施形態に係るガスメータ40が超音波式のガスメータである場合、流量センサ41は、流路内に一定距離だけ離れて配置された例えば圧電式振動子からなる2つの音響トランスジューサ等によって構成される。また、本実施形態に係るガスメータ40がフローセンサなどの熱式センサを搭載したガスメータである場合、温度分布をつくり出すヒータと、その温度分布に応じた信号を発生させる温度センサ等によって構成される。
【0047】
圧力センサ42は、ガスメータ40内の流路内に存在するガスのガス圧力を検出するためのものである。なお、圧力センサ42は、ガスメータ40内の流路に限らず、可能であればガスメータ40の外部に存在する第1配管31内や第2配管32内に設置されていてもよい。同様に、流量センサ41についても設置箇所については変更可能である。
【0048】
なお、本実施形態では、図3において流量センサ41及び圧力センサ42からの信号が直接マイコン43に入力されているが、場合によっては増幅器等の他の要素が両者間に追加されていてもよい。
【0049】
マイコン43は、ガスメータ40の全体を制御するものであり、流量の積算制御、表示制御、遮断弁の遮断制御等を行うものである。また、本実施形態においてマイコン43は、正規計測モードと、簡易計測モードと、高速計測モードとの3つの計測モードを実行可能となっており、これらモードに対応して、正規計測モード実行部(正規計測モード実行手段)43aと、簡易計測モード実行部(簡易計測モード実行手段)43bと、高速計測モード実行部(高速計測モード実行手段)43cとを有している。
【0050】
正規計測モード実行部43aは、正規計測モードを実行させるものであり、詳細には流量センサ41からの電気信号に基づいて流路内のガス流量を第1所定時間(所定時間)毎に計測する処理を実行させるものである。簡易計測モード実行部43bは、簡易計測モードを実行させるものであり、正規計測モード実行部43aによる今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に、流量センサ41からの電気信号に基づいて所定値(例えば1.5L/hrであってガスメータ40で計測可能な最低流量、又は流量の脈動により発生し得ない程度の流量)を超えるガス流量の変化を計測する処理を実行させるものである。高速計測モード実行部43cは、高速計測モードを実行させるものであり、簡易計測モード実行部43bにより流量の変化が計測された場合に、圧力センサ42からの電気信号に基づく流路内のガス圧力を計測して、ガス器具10が使用されたか及びガス漏れが発生したかを判断する処理を実行させるものである。
【0051】
駆動回路44は、流量センサ41及び圧力センサ42の駆動を制御するものであり、正規計測モード駆動回路44aと、簡易計測モード駆動回路44bと、高速計測モード駆動回路44cとを備えている。これらの駆動回路44a〜44cは、上記した3つの各計測モードに対応している。従って、ガスメータ40を正規計測モードで駆動させたい場合には、正規計測モード駆動回路44aが機能し、簡易計測モードで駆動させたい場合には、簡易計測モード駆動回路44bが機能する。同様に、高速計測モードで駆動させたい場合には、高速計測モード駆動回路44cが機能する。
【0052】
ここで、各計測モードについて詳細に説明する。まず、正規計測モードとは、第1所定時間毎に1回の計測間隔でガス流量を計測するモードである。具体的に説明すると、正規計測モードは、積算流量を求めるために、約2秒に1回の計測間隔でガス流量を計測するモードである。本実施形態に係るガスメータ40では、約2秒に1回の間隔で常時ガス流量が計測され、計測されたガス流量に応じてメータ本体に表示される積算流量の値を増加させていくこととなる。
【0053】
簡易計測モードとは、流量センサ41からの電気信号に基づいて第2所定時間毎に1回のタイミングでガス流量の所定値以上の変化を計測するモードである。具体的に説明すると、簡易計測モードでは、正規計測モードにおける約2秒に1回の計測間隔を補うように、約0.1秒に1回の計測間隔でガス流量の変化を計測するモードである。このような簡易計測モードは、極めて高い流量の計測精度を必要としておらず流量の変化を判断すればよいため、消費電力は正規計測モードに比べて少なくなっている。この点について詳説する。
【0054】
例えば、本実施形態に係る流量センサ41が超音波センサである場合、簡易計測モード実行部43bは、超音波計測回数を、正規計測モードにおける超音波計測回数よりも少なくする。これにより、超音波発振に必要となる電流や演算による電力を抑えることができ、消費電力を抑制できることとなる。なお、超音波計測回数が少なくなれば、ガス流量の計測精度が悪化するが、簡易計測モードでは、流量変化のみを計測すればよいため、多少の精度低下は問題ない。
【0055】
例えば、正規計測モードの超音波計測回数が100回である時、簡易計測モードの超音波計測回数を10回とすると、計測精度は約1/3(≒√(1/10))と悪くなるが、消費電力は1/10と低減される。正規計測モードの最低感度が0.5L/hrであるならば、簡易計測モードの感度は約1.5L/hrとなる。たとえガス漏れで1.5L/hrの微量の流量が2秒間続いても、0.8cc程度のガス漏れしかなく、1.5L/hr未満の流量変化は正規計測モードで計測すれば十分なので、簡易計測モードでは1.5L/hr以上の流量変化を計測すれば十分である。
【0056】
また、上記とは別の方法で、簡易計測モードにおける消費電力を少なくするようにしてもよい。例えば、本実施形態に係る流量センサ41が超音波センサである場合、簡易計測モード実行部43bは、伝搬時間を計測するためのクロック周波数を、正規計測モードにおける伝搬時間を計測するためのクロック周波数よりも小さくする。これにより、簡易計測モードのクロックに要する消費電力を抑えることができるからである。クロック周波数を小さくすると計測精度は悪くなるが、上記と同様の理由により、簡易計測モードでは多少の精度低下は問題ない。
【0057】
さらに、本実施形態に係る流量センサ41がフローセンサなどの熱式センサである場合、簡易計測モード実行部43bは、ヒータ電圧を、正規計測モードにおけるヒータ電圧よりも小さくする。これにより、簡易計測モードにおいてヒータへの供給電圧が減少することとなり、消費電力を抑えることができるからである。ヒータ電圧を小さくすると計測精度は悪くなるが、上記と同様の理由により、簡易計測モードでは多少の精度低下は問題ない。
【0058】
また、高速計測モードとは、流路内のガス圧力を検出するモードであって、簡易計測モードにおいて所定値以上のガス流量の変化が計測された場合に、第3所定時間毎に1回のタイミングでガス圧力を計測するモードである。より具体的に説明すると、高速計測モードは、約1ミリ秒に1回の計測間隔でガス圧力を計測するモードである。この高速計測モードにおいて高速計測モード実行部43cは、ガス圧力の変化をとらえ、ガス流路下流側に設置されたガス器具10の使用を判断すると共に、ガス漏れが発生しているか否かを判断する。なお、ガス圧力の変化とガス流量の変化とは相関関係がある。このため、高速計測モードでは、約1ミリ秒に1回の計測間隔でガス流量を計測してもよいし、約1ミリ秒に1回の計測間隔でガス圧力とガス流量との双方を計測してもよい。また、高速計測モードにおける計測間隔は1ミリ秒に限らず、0.1ミリ秒のようにより短くてもよいし、10ミリ秒や100ミリ秒のようにより長くても良い。
【0059】
以上のようなガス供給システム1において、ガスメータ40は以下のようにモード移行する。図4は、本実施形態に係るガスメータ40のモード移行方法の概略を示す状態遷移図である。図4に示すように、まず、ガスメータ40は、正規計測モードで駆動されている。すなわち、正規計測モード実行部43a及び正規計測モード駆動回路44aが機能しており、約2秒に1回の流量計測が実行されている。ここで、正規計測モードにおける流量計測は、約2秒の全ての時間を要するわけではなく、例えば200ミリ秒などの一部の時間を用いて行われている。
【0060】
そして、例えば200ミリ秒の時間が経過して計測が終了したとする(S1)。これにより、正規計測モード実行部43aは正規計測モードの実行を終了し、簡易計測モード実行部43bが簡易計測モードを実行させることとなる。そして、簡易計測モード実行部43bと共に簡易計測モード駆動回路44bが機能し、約0.1秒に1回のタイミングで所定値以上の流量変化が計測される。従って、簡易計測モード実行部43bは、正規計測モード実行部43aによる今回の計測が終了してから、次回の計測が開始するまでの間に複数回流量の変化を計測することとなる。
【0061】
次に、簡易計測モード実行中の状態で、前回の正規計測モードにおける計測開始から約2秒経過したとする(S2)。これにより、簡易計測モード実行部43bは簡易計測モードの実行を終了し、正規計測モード実行部43aは正規計測モードを実行させることとなる。
【0062】
また、簡易計測モードの実行中において、所定値以上の流量変化が計測されたとする(S3)。これにより、簡易計測モード実行部43bは簡易計測モードの実行を終了し、高速計測モード実行部43cは高速計測モードを実行させることとなる。そして、高速計測モード実行部43cと共に高速計測モード駆動回路44cが機能し、約1ミリ秒に1回のタイミングでガス圧力が計測される。そして、高速計測モード実行部43cは、高速計測モードにおいて計測されたガス圧力に基づいて、ガバナ付きガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具10の使用、ガス漏れのいずれかの状態に該当するか否かを判断する。高速計測モードにおいてガス漏れが発生していると判断した場合、ガスメータ40は、遮断弁を動作させて流路を閉じ、ガス漏れの防止を図ることとなる。
【0063】
また、高速計測モードにおけるガス圧力の計測が特定時間(例えば約2秒)実行されたとする(S4)。これにより、高速計測モード実行部43cは高速計測モードの実行を終了し、簡易計測モード実行部43bは簡易計測モードを実行させることとなる。そして、簡易計測モード実行部43bと共に簡易計測モード駆動回路44bが機能し、約0.1秒に1回のタイミングで所定値以上の流量変化が計測される。なお、簡易計測モードへの移行時点において正規計測モードにおける流量計測の開始タイミングとなっている場合、計測モードは、簡易計測モードへの移行後すぐに正規計測モードに移行することとなる。
【0064】
また、高速計測モードにおいて、特別な場合には特定時間経過後であっても高速計測モードを継続させる(S5)。ここで、特別な場合とは、例えば、ガス器具10が一度着火に失敗し、失敗直後に再度着火動作を開始すると予想された場合などである。
【0065】
なお、図4を参照した説明では、正規計測モード、簡易計測モード、及び高速計測モードのそれぞれが重複して実行されないようになっているが、これに限らず、正規計測モードと高速計測モードが重複するようになっていてもよい。例えば、高速計測モードに移行している間であっても、正規計測モードの計測間隔である約2秒の時間が経過した場合には、正規計測モードにおける流量計測を実行するようになっていてもよい。これにより、流量の計測が中断してしまう事態を防止できるからである。
【0066】
次に、高速計測モードにおけるガス器具10の使用、及びガス漏れについての判断方法について説明する。ガバナ付きガス器具10が使用された場合、ガバナ無しガス器具10が使用された場合、及びガス漏れが発生した場合、それぞれ異なる圧力変化を示す。具体的には、圧力変化の波形において、その振幅及び周波数は特徴的なものとなる。マイコン43は、高速計測モード時において、圧力変化の振幅及び周波数から、ガバナ付きガス器具10が使用されたか否か、ガバナ無しガス器具10が使用されたか否か、及びガス漏れが発生したか否かを判断する。
【0067】
図5は、ガバナ付きガス器具10の使用を開始したときの圧力変化の様子を示すグラフである。なお、図5において縦軸は、圧力変化量(kPa)を示し、横軸はガバナ付きガス器具10の使用を開始してからの経過時間(秒)を示している。
【0068】
ガバナ付きガス器具10の使用が開始された場合、圧力は、図5に示す所定の振幅を示した後に、安定状態となる。具体的には、ガバナ付きガス器具10の使用開始直後に、一度「−0.1」kPa弱への圧力低下を示した後(符号a1参照)、約「0.05」kPaへの圧力上昇を示す(符号a2参照)。その後、圧力は約「−0.05」kPa強への圧力低下を示した後に(符号a3参照)、約「0.05」kPa弱への圧力上昇を示す(符号a4参照)。以後、徐々に振幅が小さくなりつつも圧力は振動を繰り返し、最終的には圧力変化がない安定状態となる。
【0069】
このような圧力の振動が発生する理由は、ガバナ13内に調整スプリング13fが設けられているからである。すなわち、ガバナ付きガス器具10の使用が開始されると、調整スプリング13fが振動すると共に、ガバナ内弁13aについても振動し、通過口13iの開口割合についても小刻みに大きくなったり小さくなったりと変化するからである。
【0070】
特に、ガバナ付きガス器具10の使用開始時においては、圧力振動の周波数や振幅に特徴が見られる。具体的には調整スプリング13fが小刻みに振動することから、圧力について細かな振動を示すこととなる。この結果、圧力波形は比較的高い周波数成分を多く含むこととなる。また、ガバナ付きガス器具10の使用開始時に調整スプリング13fの振動によって通過口13iが大きくなったり小さくなったりすることから、圧力波形は大きな振幅を示す。
【0071】
なお、圧力Pは、
【数1】


なる演算式で表すことができる。ここで、Cは振幅を示し、kは摩擦力(減衰定数)を示し、ωは復元力を示し、αは初期位相を示している。この式は多くの周波数f=ω/2πの振動の重ね合わせであることを示している。
【0072】
図6は、ガバナ無しガス器具10の使用を開始したときの圧力変化の様子を示すグラフである。なお、図6において縦軸は、圧力変化量(kPa)を示し、横軸はガバナ無しガス器具10の使用を開始してからの経過時間(秒)を示している。
【0073】
ガバナ無しガス器具10の使用が開始された場合、圧力は、図6に示す所定の振幅を示した後に、安定状態となる。具体的には、ガバナ付きガス器具10の使用開始直後に、一度「−0.1」kPa弱への圧力低下を示した後(符号b1参照)、約「0.01」kPaへの圧力上昇を示す(符号b2参照)。その後、圧力は約「−0.05」kPa強への圧力低下を示す(符号b3参照)。以後、圧力上昇が無い状態のまま、圧力は振動を繰り返す。そして、振幅が徐々に振幅が小さくなり、最終的には圧力変化がない安定状態となる。このような圧力の振動が発生する理由は、以下による。
【0074】
図7は、ガバナ無しガス器具10での燃料ガスの供給の様子を示す概略図である。図7に示すように、ガバナ無しガス器具10が使用された場合、燃料ガスは第2配管32からノズルホルダ100を通じてバーナー14等に至る。ここで、ノズルホルダ100にある流速を持った気体が流入したときはその慣性力で急には流速が小さくならずに一端ガスが圧縮され圧力が上昇する。その後上昇した圧力により流入流速が小さく(場合によっては逆流)なって圧力が下がる。これを繰り返すことで圧縮膨張の振動が発生する。
【0075】
以上のように、ガバナ付きガス器具10の使用時と、ガバナ無しガス器具10の使用時とでは、圧力は振動することとなる。しかしながら、図6に示す圧力波形を図5に示す圧力波形と比較すると、以下のような差異がある。
【0076】
まず、ガバナ付きガス器具10の場合、調整スプリング13fのように細かく振動する物質を有しているのに対し、ガバナ無しガス器具10の場合、そのような物質を有していない。このため、図6に示す圧力波形は、図5に示す圧力波形と同様に振動を示しているものの、全体として振動周波数が図5に示す圧力波形よりも低くなる。
【0077】
さらに、ガバナ付きガス器具10の場合、調整スプリング13fの振動によって振幅が大きくなっているが、ガバナ付きガス器具10の場合、調整スプリング13fが無く、ノズルホルダ100の圧縮性による振動が発生しているのみである。このため、図6に示す圧力波形は、図5に示す圧力波形よりも振幅が小さくなる。
【0078】
このような特徴から、マイコン43は、ガバナ付きガス器具10の使用であるか、ガバナ無しガス器具10の使用であるか否かを判断できることとなる。
【0079】
図8は、ガス漏れ時の圧力変化の様子を示すグラフである。なお、図8において縦軸は、圧力変化量(kPa)を示し、横軸はガス漏れが発生してからの経過時間(秒)を示している。
【0080】
図8に示すように、ガス漏れが発生した場合、圧力は明確な振動を示すことなく緩やかに低下していくこととなる。このように、ガス漏れの場合、調整スプリング13fの振動、及び、ノズルホルダ100の圧縮性による振動の双方が発生しないため、圧力波形には明確な振動が見られない。
【0081】
以上のように、ガバナ付きガス器具10の使用開始時と、ガバナ無しガス器具10の使用開始時と、ガス漏れ発生時とでは、圧力波形の周波数や振幅に特徴的な差異がある。マイコン43は、上記の特徴から、ガバナ付きガス器具10の使用であるか、ガバナ無しガス器具10の使用であるか、ガス漏れであるかを判断することができる。なお、ガバナ付きガス器具10の使用であるかなどを判断するにあたり、マイコン43は、周波数や振幅の値を用いても良いし、周波数や振幅を示す演算結果(例えばフーリエ変換により得られるスペクトルデータ)を用いるようにしてもよい。
【0082】
また、図5〜図8を参照して説明したガス圧力の周波数及び振幅の特徴は、圧力変動が開始してから数秒程度で発生するものである。従って、高速計測モードでは、特定時間(0.3〜2秒程度)だけ圧力を計測すれば充分であり、本実施形態に係るガスメータ40では、短時間でガバナ付きガス器具10が使用されたか否か、ガバナ無しガス器具10が使用されたか否か、及びガス漏れが発生したか否かを判断できるようになっている。
【0083】
次に、フローチャートを参照して、本実施形態に係るガスメータ40の動作を説明する。なお、以下のフローチャートでは超音波式のガスメータを例に説明する。図9は、本実施形態に係るガスメータ40の判断方法を示すフローチャートであり、正規計測モードにおける動作を示している。
【0084】
正規計測モードにおいて、正規計測モード実行部43aは、まず伝搬時間を測定するためのクロック周波数を高速に設定する(S10)。具体的に、ガスメータ40は、簡易計測モードにおいて数十MHzのクロック周波数を使用するのに対し、正規計測モードにおいては約10倍程度の数百MHzのクロック周波数を使用する。
【0085】
クロック周波数の設定後、正規計測モード実行部43aは、流量センサ41からの電気信号に基づいて流量を計測する(S11)。そして、正規計測モード実行部43aは、ステップS11において計測された流量を積算する(S12)。次に、正規計測モード実行部43aは、ステップS11において計測された流量と、過去に計測した流量との差が一定値以内である場合が複数回連続したか否かを判断する(S13)。ここで、過去に計測した流量とは、前回計測された流量であってもよいし、過去複数回分の流量の平均値であってもよい。
【0086】
ステップS11において計測された流量と、過去に計測した流量との差が一定値以内である場合が複数回連続していないと判断した場合(S13:NO)、処理はステップS15に移行する。一方、ステップS11において計測された流量と、過去に計測した流量との差が一定値以内である場合が複数回連続したと判断した場合(S13:YES)、正規計測モード実行部43aは、第1所定時間を延長する(S14)。すなわち、約2秒の流量の計測間隔を例えば4秒にしたり10秒にしたりと長く変化させる。これにより、例えばガスコンロを使用して長時間の煮込みを行う場合など、流量変化がない場合において一層消費電力を低減することができる。
【0087】
その後、正規計測モード実行部43aは第1トリガ信号を発生させる(S15)。これにより、簡易計測モード実行部43b及び簡易計測モード駆動回路44bが機能して、計測モードが簡易計測モードに移行することとなる(S16)。その後、図9に示す処理は終了する。
【0088】
図10は、本実施形態に係るガスメータ40の判断方法を示すフローチャートであり、簡易計測モードにおける動作を示している。簡易計測モードにおいて、簡易計測モード実行部43bは、まず伝搬時間を測定するためのクロック周波数を低速に設定する(S20)。具体的に、ガスメータ40は、正規計測モードのクロック周波数の1/10程度である数十MHzのクロック周波数を使用することとなる。これにより、簡易計測モードにおける消費電力を低減するようにしている。
【0089】
クロック設定後、簡易計測モード実行部43bは、第1所定時間(例えば2秒)経過したか否かを判断する(S21)。すなわち、正規計測モードの計測タイミングが到来したか否かを判断する。第1所定時間経過したと判断した場合(S21:YES)、簡易計測モード実行部43bは第2トリガ信号を発生させる(S22)。これにより、正規計測モード実行部43a及び正規計測モード駆動回路44aが機能して、計測モードが正規計測モードに移行することとなる(S23)。その後、図10に示す処理は終了する。
【0090】
また、第1所定時間経過していないと判断した場合(S21:NO)、簡易計測モード実行部43bは、第2所定時間(例えば0.1秒)経過したか否かを判断する(S24)。すなわち、簡易計測モードにおける計測タイミングが到来したか否かを判断する。第2所定時間経過していないと判断した場合(S24:NO)、経過したと判断されるまで、この処理が繰り返される。
【0091】
一方、第2所定時間経過したと判断した場合(S24:YES)、簡易計測モード実行部43bは伝搬時間の情報を取得するとともに次回の判断のために過去の伝搬時間として記憶する(S25)。そして、簡易計測モード実行部43bは、今回の計測における超音波の伝搬時間が過去の伝搬時間よりも一定値(例えば1.5L/hrに相当する値)以上変化したか否かを判断する(S26)。ここで、過去の伝搬時間とは、前回計測時の伝搬時間であってもよいし、過去複数回分の伝搬時間の平均値であってもよい。
【0092】
今回の計測における超音波の伝搬時間が過去の伝搬時間よりも一定値以上変化していないと判断した場合、あるいは、過去の伝搬時間の記憶がない場合(S26:NO)、処理はステップS21に移行する。なお、過去の伝搬時間の記憶がない場合とは、例えば簡易計測モードに移行した直後などである。一方、今回の計測における超音波の伝搬時間が過去の伝搬時間よりも一定値以上変化したと判断した場合(S26:YES)、簡易計測モード実行部43bは第3トリガ信号を発生させる(S27)。これにより、高速計測モード実行部43c及び高速計測モード駆動回路44cが機能して、計測モードが高速計測モードに移行することとなる(S28)。
【0093】
その後、第1所定時間が初期値より延長されている場合、第1所定時間を初期値に戻すと共に、過去の伝搬時間の記憶を消去する(S29)。具体的には、初期値が2秒であるのに対して、現在の値が10秒である時、初期値の2秒に戻したうえで、過去の伝搬時間の記憶を消去することとなる。その後、図10に示す処理は終了する。
【0094】
図11は、本実施形態に係るガスメータ40の判断方法を示すフローチャートであり、高速計測モードにおける動作を示している。図11に示すように、まず高速計測モード実行部43cは第3所定時間(例えば1ミリ秒)が経過したか否かを判断する(S30)。すなわち、高速計測モードにおける計測タイミングが到来したか否かを判断する。
【0095】
第3所定時間が経過していないと判断した場合(S30:NO)、経過したと判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、第3所定時間が経過したと判断した場合(S30:YES)、高速計測モード実行部43cは、圧力センサ42からの信号に基づいて、流路内のガス圧力を検出すると共に、検出したガス圧力を記憶する(S31)。
【0096】
その後、高速計測モード実行部43cは、特定時間(例えば約2秒)経過したか否かを判断する(S32)。この処理において高速計測モード実行部43cは、圧力データが所定個数(例えば2000個)溜まったか否かによって特定時間経過したか否かを判断することとなる。特定時間を経過していないと判断した場合(S32:NO)、処理はステップS30に移行する。
【0097】
一方、特定時間経過したと判断した場合(S32:YES)、高速計測モード実行部43cは、特定時間中にステップS31において計測及び記憶したガス圧力のデータに基づいて、ガス器具10の使用やガス漏れを判断する(S33)。その後、高速計測モード実行部43cは、ステップS33の処理においてガス漏れ無しと判断されたか否かを判断する(S34)。
【0098】
ガス漏れ無しと判断されていた場合(S34:YES)、高速計測モード実行部43cは、第4トリガ信号を発生させる(S35)。これにより、簡易計測モード実行部43b及び簡易計測モード駆動回路44bが機能して、計測モードが簡易計測モードに移行することとなる(S36)。その後、図11に示す処理は終了する。
【0099】
一方、ガス漏れ無しと判断されていなかった場合(S26:NO)、すなわち、ガス漏れがあったと判断されていた場合、高速計測モード実行部43cは、遮断弁によりガス供給を遮断すると共に、警報等を行う(S37)。その後、図11に示す処理は終了する。
【0100】
なお、図11に示すフローチャートにおいてステップS35,S36の処理は、ステップS34において「YES」と判断された場合に実行されるが、これに限らず、ステップS32で「YES」と判断された直後に実行されるようになっていてもよい。これにより、迅速に簡易計測モードに移行できるからである。この際、ステップS36の処理は、簡易計測モードの実行をマルチタスクによる別プログラムによる実行として指示する処理であることが望ましい。
【0101】
また、ステップS34において「YES」と判断されてからステップS35とステップS36を実行するまでに短い時間(例えば1〜10秒間)待機しておいてもよい。ガス器具が使用された直後のガス圧力(または流量)の振動がまだ残っている可能性があり、十分振動がなくなってから簡易計測を実施したほうが良い場合があるためである。
【0102】
図12は、図11に示したステップS33の詳細を示すフローチャートであり、ガス器具10の使用及びガス漏れ判断に関する処理を示している。図12に示すように、まず、高速計測モード実行部43cは、図11のステップS31において記憶したガス圧力の波形の周波数を分析すると共に(S40)、振幅を分析する(S41)。
【0103】
その後、高速計測モード実行部43cは、ステップS40の分析結果に基づいて、波形内に判別値以上の周波数成分が規定値以上含まれるか否かを判断する(S42)。判別値以上の周波数成分が規定値以上含まれると判断した場合(S42:YES)、すなわち図5に示した圧力波形のように、波形内にある程度高い周波数成分を多く含む場合、高速計測モード実行部43cは、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断する(S43)。そして、図12に示す処理は終了し、処理は図11のステップS34に移行する。
【0104】
また、波形内に判別値以上の周波数成分が規定値以上含まれないと判断した場合(S42:NO)、高速計測モード実行部43cは、第1の山の振幅値(すなわち圧力が変化してから最初に振幅が正方向に大きくなったときの最大値、又は、全体を通して最も振幅が正方向に大きくなったときの値)が元圧(図5等の縦軸で「0」の圧力)に所定量を加えた値以上であるか否かを判断する(S44)。第1の山の振幅値が元圧に所定量を加えた値以上であると判断した場合(S44:YES)、高速計測モード実行部43cは、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断する(S43)。そして、図12に示す処理は終了し、処理は図11のステップS34に移行する。
【0105】
一方、第1の山の振幅値が元圧に所定量を加えた値以上でないと判断した場合(S44:NO)、高速計測モード実行部43cは、第1の山の振幅値が元圧とほぼ同等の値(具体的には元圧±規定の値)であるか否かを判断する(S45)。第1の山の振幅値が元圧とほぼ同等の値であると判断した場合(S45:YES)、高速計測モード実行部43cは、ガバナ無しガス器具10の使用であると判断する(S46)。そして、図12に示す処理は終了し、処理は図11のステップS34に移行する。
【0106】
また、第1の山の振幅値が元圧とほぼ同等の値でないと判断した場合(S45:NO)、高速計測モード実行部43cは、第1の山の振幅値が元圧に所定量を減算した値以下であるか否かを判断する(S47)。第1の山の振幅値が元圧に所定量を減算した値以下であると判断した場合(S47:YES)、高速計測モード実行部43cは、流量センサ41からの信号に基づいて規定量以上の流量が検出されるか否かを判断する(S48)。
【0107】
規定量以上の流量が検出されると判断した場合(S48:YES)、すなわち、ガス器具10の使用による周波数及び振幅の特徴が得られず、流路内のガス圧力が低下し、しかも規定量以上の流量が検出された場合、高速計測モード実行部43cは、ガス漏れであると判断する(S49)。そして、図12に示す処理は終了し、処理は図11のステップS34に移行する。
【0108】
ところで、第1の山の振幅値が元圧に所定量を減算した値以下でないと判断した場合(S47:NO)、及び、規定量以上の流量が検出されないと判断した場合(S48:NO)、高速計測モード実行部43cは、ガス器具10の使用及びガス漏れのいずれにも該当しないと判断する(S50)。そして、図12に示す処理は終了し、処理は図11のステップS34に移行する。
【0109】
なお、ガス器具10の使用及びガス漏れについては、図12に示すものに限らず、例えば、他の方法によって判断されてもよい。例えば、マイコン43は、ステップS42又はステップS44において「YES」と判断した場合、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断するが、これに限らず、ステップS42及びステップS44の双方において「YES」と判断した場合、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断してもよい。
【0110】
また、マイコン43は、圧力波形の減衰係数が予め定められた値以下である場合に、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断してもよい。また、マイコン43は、第1の山の振幅値が、第1の谷の振幅値(すなわち圧力が変化してから最初に振幅が負方向に大きくなったときの最小値、又は、全体を通して最も振幅が負方向に大きくなったときの値)よりも小さい場合に、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断してもよい。さらに、上記した内容を各種組み合わせて、ガバナ付きガス器具10の使用を判断してもよい。
【0111】
さらには、得られた波形をフーリエ変換して周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出し、算出したスペクトルデータと予め記憶したガバナ付きガス器具10の使用時におけるスペクトルデータとの類似度を求め、類似度が特定値以上である場合にガバナ付きガス器具10の使用であると判断してもよい。加えて、ガバナ無しガス器具10の使用、及びガス漏れについても同様に判断してもよい。
【0112】
このようにして、本実施形態に係るガスメータ40、及び判断方法によれば、流路内のガス流量を所定時間毎に計測し、今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に、所定値を超えるガス流量の変化を計測する。そして、ガス流量の変化が計測された場合に、ガス流量及びガス圧力の少なくとも一方を計測して、ガス器具10が使用されたか及びガス漏れが発生したかを判断する。このように、ガス器具10が使用されたか及びガス漏れが発生したかの判断については、今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に所定値を超えるガス流量の変化が計測された場合のみに行われることとなる。これにより、ガス器具10が使用されたか及びガス漏れが発生したかの判断については、常時実行されることなく、特定の時間帯においてのみ実行されることとなって、マイコン43等の演算部の消費電力増大を抑制することとなる。従って、ガス器具10が使用されたか等の判断をするにあたり、マイコン43等の演算部の消費電力増大を抑制することができる。
【0113】
また、計測したガス圧力及びガス流量の少なくとも一方の波形から、波形の周波数及び振幅の少なくとも一方を求めて得られた値、又は波形の周波数及び振幅の少なくとも一方の状態を示す演算結果に基づいて、ガス漏れ等を判断する。ここで、ガス漏れ発生時と、ガバナ13を有するガス器具10の使用開始時と、ガバナ13を有しないガス器具10の使用開始時とでは、圧力や流量の波形の周波数や振幅に特徴的な差がある。よって、この特徴的な差によってガス漏れ又はガス器具10のうちガバナ13を有したガス器具10の使用であるか、ガバナを有さないガス器具10の使用であるかを判断して、ガス漏れ判断の誤検出防止につなげることができる。
【0114】
また、高速計測モード実行部43cは、ガス圧力及びガス流量の少なくとも一方を特定時間だけ計測し、簡易計測モード実行部43bは、特定時間経過後に、再度ガス流量の変化を計測する。このように、ガス器具10の使用等の判断後には再度ガス流量の変化を計測することとなり、ガス器具10の使用等の判断処理は、特定時間に演算時間を加えた時間だけ実行させることができる。
【0115】
また、今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に複数回流量の変化を計測するため、細かな時間間隔で流量変化を判断することとなり、流量変化の発生を取りこぼす可能性を減じることができる。
【0116】
また、今回検出した流量と過去に検出した流量との差が一定値以内である場合が複数回連続するとき、所定時間の計測間隔を長く変化させて流量を計測する。このため、長時間一定量のガスが使用される場合、例えばガスコンロを使用して長時間の煮込みを行う場合などに、計測間隔を長くすることとなり、流量変化がない場合において一層消費電力を低減することができる。
【0117】
また、簡易計測モード実行部43bによる超音波計測回数は、正規計測モード実行部43aによる超音波計測回数よりも少なくされているため、正規計測モード実行部43aによるガス流量の計測間隔の間に実行される流量変化の計測について消費電力の増加を抑制することができ、流量変化の計測処理の実行による電池への負担を軽減することができる。
【0118】
また、簡易計測モード実行部43bが伝搬時間を計測するためのクロック周波数は、正規計測モード実行部43aが伝搬時間を計測するためのクロック周波数よりも小さくされているため、正規計測モード実行部43aによるガス流量の計測間隔の間に実行される流量変化の計測について消費電力の増加を抑制することができ、流量変化の計測処理の実行による電池への負担を軽減することができる。
【0119】
また、高速計測モード実行部43cが伝搬時間を計測するためのクロック周波数は、正規計測モード実行部43aが伝搬時間を計測するためのクロック周波数よりも小さくされているため、ガス器具10の使用等の判断にあたり、消費電力の増加を抑制することができ、ガス器具10の使用等の判断処理実行による電池への負担を軽減することができる。
【0120】
また、簡易計測モード実行部43bにより所定値を超えるガス流量の変化が計測されたか否かは、今回の計測における超音波の伝搬時間が過去の伝搬時間よりも一定値以上変化したか否かに基づいて判断される。このため、ガス流量が超音波により検出される場合において超音波の伝搬時間の相異からガス流量の変化を知ることができ、ガス流量そのものを算出する必要がなく演算量を低減させることができるため、一層消費電力量を低減させることができる。
【0121】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、本実施形態において、流量センサ41は超音波式を用いていたが、これに限らず、温度分布を作り出すヒータとその温度分布に応じた信号を発生させる温度センサを用いた熱式の流量センサを用いても良い。その場合、簡易計測モード実行部43bによるヒータ電圧は、正規計測モード実行部43aによるヒータ電圧よりも小さくされ、ガス流量の変化を測定する場合におけるヒータの消費電力を低減させて、流量変化の計測処理の実行による電池への負担を軽減することができる。また、高速計測モード実行部43cによるヒータ電圧は、正規計測モード実行部43aによるヒータ電圧よりも小さくされ、ガス器具10の使用等の判断処理におけるヒータの消費電力を低減させて、ガス器具10の使用等の判断処理実行による電池への負担を軽減することができる。
【0122】
また、本実施形態の高速計測モードにおいて、圧力センサ42によりガス圧力を計測していたが、これに限らず、流量センサ41によりガス流量を計測するようにしても良い。これにより圧力センサ42が不要となり、圧力センサ42を削減できるからである。なお、流量を計測する高速計測モードにおける計測精度や感度は、流量振動の波形を計測できる精度であればよく、正規計測モードよりも悪くすることができるため、低消費電力の駆動状態で使用することが望ましい。
【0123】
さらに、本実施形態の高速計測モードは、約1ミリ秒に1回の計測間隔となっていたが、ガス漏れ、ガバナ無しガス器具10の使用、ガバナ付きガス器具10の使用の判断を行えるようなガス圧力又はガス流量の波形を得られる範囲であれば、計測間隔を変更することが可能である。例えば計測間隔は、0.1ミリ秒であってもよいし、10ミリ秒であってもよいし、100ミリ秒であってもよい。
【0124】
また、本実施形態においてガスメータ40を判断装置の一例として説明したが、これに限らず、判断機能をガスメータ40から取り出して判断装置のみを構成してもよい。さらに、マイコン43の各実行部43a〜43cやその一部機能のみをマイコン43の周辺アナログ回路として構成してもよいし、周辺アナログ回路ではなく、ASICやFPGAなどのようにマイコン43の機能を基幹機能として備える回路モジュールとして構成されていてもよい。
【0125】
また、本実施形態に係るガスメータ40の流量センサ41が超音波式であるとき、高速計測モードの超音波計測回数は、正規計測モードの超音波計測回数よりも少なくされていることが望ましい。これにより、高速計測モードにおいても消費電力を低減できるからである。
【0126】
さらに、本実施形態では、正規計測モードにおいて約2秒に1回の計測間隔で流量を計測し、又は、図9のステップS13にて「YES」と判断された場合には約4秒や約10秒など計測間隔を長くするようにしているが、流量変化の激しいガス器具が使われていると判断される時などに、計測間隔を約1秒や約0.5秒など短くしてもよい。
【0127】
さらに、本実施形態では、簡易計測モードにおいて約0.1秒に1回の計測間隔で流量変化を計測しているが、これに限らず、計測間隔は、ガス漏れかガス器具10の使用が始まった直後の圧力又は流量の変動が計測できる範囲(最大で2秒程度)で変更可能である。ここで、計測間隔は短ければ短いほど好ましいが、その分消費電力が多くなってしまう。このような場合、流量センサ41が超音波センサである場合、超音波の発振回数をさらに少なくして消費電力を抑えてもよいし、流量センサ41が熱式センサである場合、ヒータ電圧をさらに小さくして消費電力を抑えてもよい。
【0128】
さらに、本実施形態の高速計測モードにおいて、圧力センサ42のみから信号を取得する場合、特定時間中に流量計測が行われないこととなる。よって、本実施形態では、高速計測モード中に正規計測モードに相当する流量計測を行うようにしてもよい。例えば、図10のフローチャートにおいて、ステップS28で高速計測モードをマルチタスクによる別プログラムによる実行として実行指示した後に、図示していない別プログラムにより第1所定時間の経過を監視し、第1所定時間が経過するたびに、正規計測モードを動作させる図9のフローチャートのプログラムを別タスクで並列に実行するとよい。これにより、特定時間中に発生した流量を取りこぼすことなく、積算流量を求めることができるからである。
【0129】
また、本実施形態において、高速計測モード実行部43cは、ガス器具10が使用されたか及びガス漏れが発生したかを判断するが、これに限らず、いずれか一方のみを判断するようになっていてもよい。また、高速計測モードで計測した圧力波形及び流量波形の少なくとも一方を詳細に解析してガス漏れやガス器具の種類を判断しても良い。例えば、圧力波形や流量波形をフーリエ変換し、スペクトルデータを得る。一方、ガスメータ40は、予めガス器具の種類毎に基本となるスペクトルデータを記憶しており、フーリエ変換により得たスペクトルデータと、記憶していたスペクトルデータとの類似度を求め、この類似度に基づいて、ガス漏れやガス器具の種類を判断するようにしてもよい。
【0130】
さらに、本実施形態に係る高速計測モード実行部43cは、周波数及び振幅の双方に基づいて、ガバナ付きガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具10の使用、及びガス漏れを判断するが、これに限らず、周波数及び振幅のいずれか一方のみに基づいて、ガバナ付きガス器具10の使用等を判断するようになっていてもよい。周波数は、ガバナ付きガス器具10の使用時が最も高い成分が多く含まれ、次いでガバナ無しガス器具10の使用、及びガス漏れの順となる。このため、高速計測モード実行部43cは周波数のみに基づいてガバナ付きガス器具10の使用等を判断するようになっていてもよい。同様に、振幅は、ガバナ付きガス器具10の使用時が最も大きくなり、次いでガバナ無しガス器具10の使用、及びガス漏れの順となる。このため、高速計測モード実行部43cは振幅のみに基づいてガバナ付きガス器具10の使用等を判断するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1…ガス供給システム
10…ガス器具
12…遮断弁
13…ガバナ
13a…ガバナ内弁
13b…ノズル
13c…外壁
13d…ガバナキャップ
13e…ダイヤフラム
13f…調整スプリング
13g…調整ネジ
13h…空気孔
14…バーナー
20…調整器
31…第1配管
32…第2配管
40…ガスメータ(判断装置)
41…流量センサ
42…圧力センサ
43…マイコン
43a…正規計測モード実行部(正規計測モード実行手段)
43b…簡易計測モード実行部(簡易計測モード実行手段)
43c…高速計測モード実行部(高速計測モード実行手段)
44…駆動回路
44a…正規計測モード駆動回路
44b…簡易計測モード駆動回路
44c…高速計測モード駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量センサからの電気信号に基づいて流路内のガス流量を所定時間毎に計測する正規計測モード実行手段と、
前記正規計測モード実行手段による今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に、流量センサからの電気信号に基づいて所定値を超えるガス流量の変化を計測する簡易計測モード実行手段と、
前記簡易計測モード実行手段によりガス流量の変化が計測された場合に、流量センサからの電気信号に基づくガス流量、及び、圧力センサからの電気信号に基づく流路内のガス圧力の少なくとも一方からなる計測対象を計測して、計測対象の波形を取得する高速計測モード実行手段と、
を備えることを特徴とする判断装置。
【請求項2】
前記高速計測モード実行手段は、前記計測対象の波形に基づいて、ガス器具が使用されたか及びガス漏れが発生したかの少なくとも一方を判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の判断装置。
【請求項3】
前記高速計測モード実行手段は、前記計測対象の波形に基づいて、ガス漏れであるか、ガス器具のうちガバナを有したガス器具の使用であるか、又は、ガバナを有さないガス器具の使用であるかを判断する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の判断装置。
【請求項4】
前記高速計測モード実行手段は、前記計測対象の波形に基づいて、ガス器具の種類を判断する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項5】
前記高速計測モード実行手段は、前記計測対象を特定時間だけ計測し、
前記簡易計測モード実行手段は、特定時間経過後に、再度ガス流量の変化を計測する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項6】
前記簡易計測モード実行手段は、前記正規計測モード実行手段による今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に複数回流量の変化を計測する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項7】
前記正規計測モード実行手段は、今回検出した流量と過去に検出した流量との差が一定値以内である場合が複数回連続するとき、所定時間の計測間隔を長く変化させて流量を計測する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項8】
前記流量センサが超音波式であり、
前記簡易計測モード実行手段による超音波計測回数は、前記正規計測モード実行手段による超音波計測回数よりも少なくされている
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項9】
前記流量センサが超音波式であり、
前記高速計測モード実行手段による超音波計測回数は、前記正規計測モード実行手段による超音波計測回数よりも少なくされている
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項10】
前記流量センサが超音波式であり、
前記簡易計測モード実行手段が伝搬時間を計測するためのクロック周波数は、前記正規計測モード実行手段が伝搬時間を計測するためのクロック周波数よりも小さくされている
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項11】
前記流量センサが超音波式であり、
前記簡易計測モード実行手段により所定値を超えるガス流量の変化が計測されたか否かは、今回の計測における超音波の伝搬時間が過去の伝搬時間よりも一定値以上変化したか否かに基づいて判断される
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項12】
前記流量センサが熱式であり、
前記簡易計測モード実行手段によるヒータ電圧は、前記正規計測モード実行手段によるヒータ電圧よりも小さくされている
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項13】
前記流量センサが熱式であり、
前記高速計測モード実行手段によるヒータ電圧は、前記正規計測モード実行手段によるヒータ電圧よりも小さくされている
ことを特徴とする請求項1から請求項7、及び請求項12のいずれか1項に記載の判断装置。
【請求項14】
流量センサからの電気信号に基づいて流路内のガス流量を所定時間毎に計測する正規計測モード実行工程と、
前記正規計測モード実行工程における今回の流量計測が終了してから次回の流量計測が開始するまでの間に、流量センサからの電気信号に基づいて所定値を超えるガス流量の変化を計測する簡易計測モード実行工程と、
前記簡易計測モード実行工程においてガス流量の変化が計測された場合に、流量センサからの電気信号に基づくガス流量、及び、圧力センサからの電気信号に基づく流路内のガス圧力の少なくとも一方からなる計測対象を計測して、計測対象の波形を取得する高速計測モード実行工程と、
を備えることを特徴とする判断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−181383(P2010−181383A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27720(P2009−27720)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】