説明

制御された水和環境を提供する容器

事前に湿らせた事前調整済みのマイクロ流体「吸入器」チップを輸送及び保管するための容器が提供される。この容器は、乾燥したコンポーネントと湿った区画の両方を備える。ベースは、毛細管を収容するよう構成され流体の満たされたリザーバを備える。リザーバの開口部はOリングにより密封される。チップのプラスチック製マウントが、乾燥した区画においてベース上に載っている。チップの上面は、流体を含んだ複数のウェルを備える。ガスケットは、ウェル内に配置されて該ウェルを密封するように構成されたプラグを備える。別法として、ウェルはまず、接着剤でウェル開口部に固着されたホイル膜により密封され、ベースに着脱自在に取り付けられるガスケットが、このホイルとカバーの間に配置され。カバーが閉じられると、ガスケットとOリングが湿った区画を密閉して漏洩を防止し蒸発を遅くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願はまた、米国出願第10/449,517号(2003年6月2日提出)の一部継続出願であり、35U.S.C.§120による利益を主張する。この関連出願の開示全体がここで援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に容器に関するものであり、特に、マイクロ流体デバイスを輸送及び保管するために制御された水和環境を提供する容器に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体技術は、分析化学的及び生化学的な多くの操作で利用することが提案されてきた。この技術は、容易に自動化可能な高スループット低容積システムにおいて化学及び生化学反応、高分子分離など簡単なものから比較的複雑なものまで実行することができる利点をもつ。用語「マイクロ流体」は、一般にミクロン規模又はサブミクロン規模で製造されるチャネル及びチャンバーをもったシステム又はデバイスについていう。特に、これらのシステムは、集積化された微小規模チャネル網を用い、このチャネル中で物質が移動させられ、混合され、分離され、検出される。デバイス又はチップの作業部分は、石英、溶融シリカ又はガラスから作られる。次にこの作業部分は、アクリル又は熱可塑性物質製のマウントなどのプラスチック製マウントに紫外線硬化型の接着剤で接着される。
【0004】
マイクロ流体デバイスのうち1つの種類が、「吸入器(sipper)」チップと称される。吸入器チップでは、少なくとも1つの小さなガラス管又は毛細管(前述の「吸入器」)が、チップの基板に垂直に接着される。典型的な吸入器チップでは1〜12個の吸入器を用いる。一旦使用者がチップを準備して該チップを読み取り機器内に配置すると、微量の試料物質を毛細管を通してチップに導入又は「吸入」することができる。この吸入プロセスは、何度も繰り返すことができ、1つのチップで人間の介入なしに数千の試料を迅速に分析することができる。この吸入器は、チップ中への試料物質の流れを開始可能にするために、使用の前に湿らせなければならない。吸入器はチップに対して垂直な方向に向いているので、気泡が吸入器内で容易に形成し得る。この気泡は、吸入器の毛管現象により試料物質をチップのチャネル中に引き込むのを妨げる場合がある。吸入器を正しく(すなわち気泡を形成することなく)湿らせることは、困難な場合もあり訓練と熟練を要する。よって、吸入器は製造の最終段階中に事前に湿らせ、それにより気泡の形成が防止できる。吸入器は使用するまでは湿ったままでなければならず、そのためチップは水和環境内で輸送及び保管される。
【0005】
加えて、一般に吸入器チップは、加圧下にて水酸化ナトリウムにより事前調整された後に輸送される。事前調整プロセスは、使用のためにチップ表面を下処理し、チップの寿命を延ばす。事前調整用流体は極度に腐食性の性質をもっているので、エンドユーザーに水酸化ナトリウムを適用させるのではなく、輸送の前に専門家に事前調整させるのが望ましい。それから、チップは、事前調整された表面状態を保持すべく湿らせて輸送される。
【0006】
湿ったマイクロ流体チップの現在の輸送及び保管方法は、一般に、流体の満たされた容器の使用を伴う。一般にこの流体は、EDTAなどの防腐剤又はトリストライセン(Tris-Tricene)などの緩衝剤を含んだ蒸留水である。次に、チップは該流体中に沈められ、沈められた位置にて吊るされる。この種の輸送容器は様々な理由から望ましくない。第一に、エンドユーザーが、輸送されてきた流体からチップを「釣り上げ」なければならない。第二に、沈めていることにより、チップの作業部分をプラスチック製マウントに接着剤で接着しているところを弱くし、層間剥離を生じさせチップを使用できなくさせるかもしれない。最後に、チップは何回も再使用可能であるので、使用者は使用と使用の間にはチップを保管流体の中に戻さなければならず、このことにより、チップを汚染する危険性が高まる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
したがって、本発明は、マイクロ流体チップを輸送及び保管するのに適した再使用可能な容器を提供する。この容器は、マイクロ流体チップのマウントを収容する第1区画と、第1区画の上方又は下方に配置されマイクロ流体チップの毛細管を収容する第2区画とを備える。好ましくは、第1区画は乾燥し、第2区画は水和され、この第2区画は、第2区画内に含まれる流体が漏れるのを防ぐために密封される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
容器の第1の実施態様は、リザーバを備えた上面をもつベースを含み、このリザーバは、その開口部から下方向に延びている。カバーが、着脱自在にベースに取り付けられる。Oリングなどの密封デバイスが、リザーバを密封して漏洩を防ぐ。カバーからリザーバ密封デバイスに閉鎖力を伝えるためにその一方の面に力誘導器を配置した平らなガスケットをカバーとベースの間に置くことができる。加えて、このガスケットには、その一方の面に、マイクロ流体チップのウェル内に密封式に配置されるように構成されたプラグを設けることができる。ベース及び/又はカバーは透明な物質から作ることができ、使用者はそれを通してチップ連続番号などの情報を視覚的に調べることができる。また、ベース及び/又はカバーは、電波伝送などの信号伝送や光学式スキャニングを妨害しない物質から作ることができ、それにより、これらの信号を機械により検出及び読出すことができる。
【0009】
別の実施態様では、容器は、リザーバを備えた上面をもつベースを含み、このリザーバは、その開口部から下方向に延びている。カバーが、着脱自在にベースに取り付けられる。Oリングなどの密封デバイスが、リザーバを密封して漏洩を防ぐ。チップのウェルは、カバーを閉じる前に接着性ホイルで密封される。この場合も、ベース及び/又はカバーは透明な物質から作ることができ、使用者はそれを通してチップ連続番号などの情報を視覚的に調べることができる。加えて、ベース及び/又はカバーは、電波伝送などの信号伝送や光学式スキャニングを妨害しない物質から作ることができ、それにより、これらの信号を機械により検出及び読出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明の詳細な説明
以下、本発明の特定の実施態様を図面を参照して説明するが、図面において同じ番号は同一の要素又は機能的に類似の要素を示している。関連技術における専門家ならば、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく他の構成及び配置を用い得ることを認識するであろう。
【0011】
まず、図1には、本発明の第1の実施態様が示されている。容器100は、4つの基本的な部品、すなわち、ベース102、Oリングガスケット104、カバーガスケット108、及びカバー110を備える。明確にするため、マイクロ流体チップ106が本来の場所に示されており、チップ106の一方の面上には少なくとも1つの吸入器が設けられ(図示せず)、チップ106のもう一方の面上には一連の水和ウェル112が設けられる。示された容器100は1つのチップ106のみを収容するのに使用するよう表されているが、容器100はもっと多くのチップを保持すべく容易に変更することができる。例えば、カバー110は、一連の容器を積み重ね配置にて連結させるように、カバーとベースの両方として機能すべく適応させることができる。別法として、ベース102は複数の区画を含むことができ、その場合、その各区画が容器100中に示された受入部及び密封構成を複製したものとなる。単一のチップの保管のための容器100の実際の大きさは、チップ106の大きさと設計者の美的好みに大きく依存する。完全に組み立てた閉鎖容器100の代表的な寸法は、幅93mm、長さ102mm、高さ50mmである。ベース102及びカバー110の壁は、重量と輸送費用を小さくするために、約2.5mmと薄くするのが好ましい。
【0012】
図2は、ベース102を詳細に示す。ベース102の外周は、一般にチップ106の形状に適合した四角形とするのが好ましい。しかしながら、この形状はそのように限定されるものではなく、円形、三角形などの任意の幾何形状又は不規則な形状とさえすることができる。
【0013】
ベース102は、堅い物質、好ましくは射出成形プラスチックから作られる。アクリル、ポリエチレン及びポリカーボネートなどの熱可塑性物質が、本発明に特に適するが、ガラス繊維や他のエポキシベース物質などの複合材料も使用できる。容器100の内容物を視覚的に容易に調べることができるので、透明な物質が好ましい。加えて、マイクロ流体チップ106はスキャン可能なバーコードなどの機械読み取り可能な情報、又はマイクロチップ上に記憶された情報を含むことができるので、当該物質は、このような情報の伝送を妨害しないことが好ましい。このような物質の一例は、GE Plastics(ピッツフィールド、マサチューセッツ州)及びその他のプラスチック製造業者から入手可能な透明なLEXAN(登録商標)HF1110である。
【0014】
ベース102はリザーバ220を備える。チップ106の下面には、少なくとも1つの事前に湿らせた毛細管又は小管(「吸入器」(図示せず))が設けられる。チップ106が容器100内に置かれると、チップ106は、ベース102の上面の一部を形成する高プラットフォーム225上に載る。高プラットフォーム225に開口部を配したリザーバ220が、吸入器を受け入れる。加えて、あらゆる容器の方向においても吸入器の湿った状態を維持すべく、リザーバ220内に流体が配置されるのが好ましい。この流体は、EDTAなどの防腐剤を含んだ蒸留水とするのが好ましいが、限定するものではないがトリストライスン(Tris-Tricine)緩衝剤又は普通の蒸留水を含めて他の流体の使用も考えられる。別法として、リザーバ220は、例えば空気、窒素又は不活性ガスを含んで乾燥したままにすることもできる。
【0015】
リザーバ220内に含まれる流体を止めるために、その開口部は、チップ106のマウントの下面に対して密封されなければならない。好ましくは、この密封は、リザーバ220の開口部を取り囲む浅い溝222内に座したOリング104(図1に図示)などの密封手段を用いて行われる。好ましくは、Oリング104は、楕円又は円形の断面幾何形状を有し、浅い溝222の形状に適合する。別法として、Oリング104は、正方形又は長方形の断面幾何形状を有することもできる。Oリング104は、リザーバ220内に含まれる流体に対して化学的に不活性な任意の軟質で柔軟な物質、好ましくはシリコーンから作られるが、限定するものではないがネオプレン、ゴム、ポリウレタン及び熱可塑性エラストマーを含めて他の物質も適当である。容器100が閉じられると、Oリング104が変形してチップ106の底に対して流体密封シールを形成し、リザーバ220内に含まれる流体の漏洩を防止する。
【0016】
別法として、リザーバ220を密封する密封手段として、平らなガスケットを使用できる。このガスケットは、高プラットフォーム225の表面の形状を反映する(mirroring)形状を有する。吸入器を通過させるために、ガスケットに孔を設ける。このガスケットは、Oリング104と同じ物質から作られる。Oリング104を備えているので、容器100が閉じられると、ガスケットが変形して、チップ106の底に対する流体密封シールを形成する。リザーバ220を密封する更に別の選択肢は、流体不浸透性の接着テープによりチップ106を高プラットフォームの表面に固着することである。リザーバ220は乾燥していてもよい、すなわち、リザーバ220は吸入器を収容するための場所を提供するが、さらなる水和は行わない。この場合、個別の各吸入器は、ダックビル弁又はキャップを備えているので密封できる。これらの弁又はキャップは、吸入器の端部に配置でき、又は弁若しくはキャップは、リザーバ220の下面に取り付けてもよく、チップ106が容器100中に挿入されると、吸入器の端部が弁又はキャップ中に挿入される。別法として、従順な物質でリザーバ220の底を裏打ちしてもよく、吸入器が該物質に対して押されると、この物質が吸入器の端部を密封する。更なる別法として、容器100の内部環境から湿気と残留ガスを吸収するために、Axon Cable,Inc.(Poway,CA)から市販されているような乾燥剤袋をリザーバに備えることもできる。このようにして、チップ106はその動作特性を十分長く維持することができ、それにより、本容器に収容された場合にはチップの潜在的なライフサイクル時間を延ばすことができる。
【0017】
ベース102の別の特徴は、高プラットフォーム225の隅に配置された複数のパイロン228である。パイロン228は、高プラットフォーム225から上方向にわずかに延びた円筒形の小さな突出部である。パイロン228は、ガスケット104とチップ106の間の密封の生成をパイロン228が妨害しないような高さを有する。パイロン228は、容器100の閉鎖中にチップ106が揺れ動くのを防ぐことによりチップ106を安定にする働きをする。この実施態様では、ベース102の各隅に1つづつで、4つのパイロン228が示されている。しかしながら、パイロン228の数は、プラットフォーム225の表面上のパイロン228の分布が揺動の防止に十分でありさえすれば、変えることもできる。特に、ベース102の形状が四角形でない場合に、パイロンの数のこのような変更が考えられる。
【0018】
図3に詳細に示されたカバー110の外周形状は、ベース102と相補的であり、好ましくは一般的な四角形の形状である。ベース102と同様に、カバー110は好ましくは熱可塑性物質から作られるが、複合材料から作られてもよい。カバー110に用いられる物質は、好ましくはベース102に用いられる物質と同じであるが、両者の物質を異ならせることもできる。チップ106はおそらくラベルを有するので、カバー110をベース102から取り外す必要なくラベルを視覚的に調べることができるように、カバー110は透明な物質から作られるのが好ましい。また、チップ106はスキャン可能なバーコードなどの光学的、電子的又はデジタル的な機械読み取り可能な情報、又はマイクロチップ上に記憶された情報を含み得るので、ベース102と同様に、機械読み取り可能な情報の伝送を妨害しない物質からカバー110を作るのが好ましい。
【0019】
図2及び3を参照して、カバー110へのベース102の確実な取り付けについて説明する。ベース102の一側面に、一連の逆U字構造部224が配置され、これがベース102をカバー110に連結するためのヒンジの半分を形成する。図3から分かるように、カバー110の一側面の棒部334が、U字構造部224内に配置されるべく構成される。棒部334は、構造部224内で回転でき、カバー110とベース102のヒンジ式の取り付けを実現する。ヒンジ式の取り付けにより、容器100を何回も開け閉めできる。U字構造部224及び棒部334は、それぞれベース102及びカバー110と共に一体成形するのが好ましいが、分離したヒンジ装置などの他の連結デバイスを代わりに用いることもできる。別法として、ヒンジ又は他の連結部分を用いずに、カバー110をベース102から完全に分離可能とすることもできる。
【0020】
また、図2に示されているように、ベース102は、構造部224が設けられたベース102の側面に隣接した側面に、互いに向き合って配置された2つの開口部226を備える。開口部226は、その中に形成されたステー227を備える。開口部226は、図3に示されるように、平面332の一方の側にてカバー110に設けられた圧入フランジ330の受入部である。フランジ330の下端には、小さな突出部331が設けられる。フランジ330が開口部226に押し込められる際、突出部331はステー227を通り過ぎるよう強いられる。一旦開口部226に挿入されると、ステー227が突出部331に対する保持力を与えることにより、外れるのが防止される。容器100を開くためには、突出部331がステー227を通り抜けることができるように、フランジ330を同時に握って開口部226から取り外さなければならない。この操作は、何回でも容器100の開閉のために繰り返すことができる。カバー110をベース102に固定するために圧入フランジと受入部が示されているが、当業者には明らかなように、ラッチやスナップ・クロージャなどの他の種類の従来クロージャを使用することもできる。
図4及び5を参照すると、チップ106の保管中にチップ106上のウェル112を密封するためのガスケット108が用いられる。ウェル112は、リザーバ220中の流体と同様の流体を含む。Oリング104と同様に、ガスケット108は、カバー110とチップ106の間を効果的に密封すべく変形可能な流体不浸透性の軟質物質から作られる。適当な物質例として、限定するものではないがゴム、シリコーン、ネオプレン、ポリウレタン及び他の熱可塑性エラストマーが挙げられる。この実施態様では、ガスケット108の一方の表面上の力誘導器(force director)440、442が、カバー110とベース102の一部との間に力伝達機構を形成する。一般に、力誘導器440、442は、ガスケット108の表面から上方向に延びるトロイダル突出部である。力誘導器440、442は、好ましくはガスケット108の残りと共に形成される。力誘導器440は、チップ106の隅に対応するようにガスケット108の一方の表面に配置される。力誘導器440は、閉鎖力を均一にチップ106に伝達し、それにより、閉鎖中に閉鎖力の不均一な伝達によってチップが揺動し場合によっては損傷するのを防止する。
【0021】
力誘導器442は、ガスケット108の外周の内側に配置され、閉鎖力をOリング104に伝達する。よって、リザーバ220の開口部にてしっかりした密封が形成されることをなお一層保証しつつも容器を閉じるのに必要な力は小さい。力誘導器442などの突出部がなければ、密封するのに必要な力はとても大きくなり、均一に密封できなくなり、それにより漏洩が生じ得る。
【0022】
図5に示されるように、ガスケット108のもう一方の面には、複数のプラグ550が配置される。これらのプラグは、チップ106上のウェル112のパターンに対応するようなガスケット108上のパターンにて配列される。プラグ550の数は、チップ106上のウェル112の数に依存するが、少なくとも1つのプラグ550が各ウェル112に対して設けられる。容器100はウェル112の数を変えた一群のチップ106用に設計できるので、プラグ550の数は、個々のチップ106上のウェル112の数より多くしてもよい。チップ106上のウェル112の一般的な数は、8〜32個の範囲であるが、この数はチップ106の用途によって広く変わり得る。図1及び6に示された実施態様は、24個のウェルをもったチップ用に構成されている。
【0023】
プラグ550は、ガスケット108からの円筒形の突出部である。プラグ550は好ましくはソリッドである。ソリッドな構成は、プラグ550を通る水浸透距離が大きく増大する点において、中空設計に対して有利である。しかしながら、別法として、中心穴552が、プラグ550の円筒に中空内部を形成してもよい。
【0024】
ガスケット108は、好ましくは容器100から着脱自在である。使用者が最初にカバー110を開けたとき、ガスケット108は、プラグ550がチップ106のウェル112内にあって該ウェル112を密封しているように配置される。チップ106を使用するためには使用者がプラグ550をウェル112から取り外さなければならないが、この取り外しは、引き剥がし動作にてガスケット108をチップ106から手動で引き離すことで実施できる。チップ106は再使用できるので、ウェル112を適切に密封して蒸発を制御するように保管前にガスケット108を元の位置に戻さなければならない。このため、ガスケット108は適宜に形状キー553を備えることができる。形状キー553が備わっている場合、該形状キーは、好ましくはガスケット108の1つの隅から外方向に延びた突起である。カバー110はその内部に相補的な幾何形状を備えているので、この突起は、もしガスケット108が適切な方向にて容器100に挿入されないならば、カバー110の適切な閉鎖を妨げる。
【0025】
図5Aに示されるように、突起554がプラグ550の自由端部に又はその近くに設けられる。突起554はOリングとして働き、ウェル112内で変形してしっかりした密封を形成して蒸発を制限する。
【0026】
別法として、ガスケット108はまた、単に、チップ106の頂部とカバー110の平面332の間でぴったり適合するような形状を有し流体不浸透性の変形可能な物質からなる平らな部品(図示せず)とすることもできる。この実施態様では、ガスケット108は、単に、物質の固有の変形性ゆえにウェルの頂部を横切って密封する。平らなガスケット108では、プラグ550により作られる密封に比べて、カバー110による更なる密封力の伝達を要する。
図6には、本発明の別の実施態様の分解図が示される。図1の実施態様と同様に、容器600はベース602、Oリング604、ガスケット608及びカバー610を備える。この場合も、明確にするため、マイクロ流体チップ606を本来の位置にて示す。容器600のこれらのコンポーネントは、材料や型のすべての変更を含めて、容器100について上述した対応するコンポーネントと実質的に同じである。しかしながら、容器600は、シール膜607と頂部ラベル609をさらに備える。
【0027】
シール膜607は、一方の面に接着剤が塗布された防湿物質からなる非常に薄いホイルである。好ましくは、この接着剤は、チップ606に適用するまでは紙が裏付けされている。ホイルの物質は、金属ホイル、プラスチックホイル、又は金属とプラスチックの両方を用いた複合ホイルなどのように蒸気が漏れないものとすべきである。シール膜の物質はアルミニウムが好ましいが、当技術において公知の多くの物質も適し得る。
【0028】
シール膜607に用いられる接着剤は、ウェル612に入れられた緩衝剤溶液に対して化学的に不活性としなければならず、その結果、ウェルの水和とその化学的な純粋性は弱められない。シール膜607の接着剤の面は、好ましくはホイルをそれに押し付けることにより、ウェル612の上面に接着され、それによりウェル612に対し蒸気の漏れない密封が形成される。別法として、この接着剤は、熱硬化性の物質からなる薄い層とすることもできる。この場合、密封ホイル607がウェル612の上に配置され、熱及び圧力処理される。この処理により接着剤が硬化するが、プラスチック製チップマウントの上面を傷つけないように注意しなければならない。
【0029】
図7に示されるように、シール膜607は、ホイル面がカバー610に面するようにチップ606のウェル612の上面に接着される。この追加の密封層は、顧客が最初に使用する前において輸送段階中に非常に確実な密封を与える。再使用可能なシール膜607を容器600において使用できるが、シール膜607は最初の使用後は容器600内で再使用できないのが好ましい。図8に示されるように、シール膜607は、使用者によりチップ606から引き剥がされて捨てられるのが好ましい。
【0030】
図9A及び9Bを参照して、容器600内のガスケット608の方向を説明する。シール膜607がウェル612を密封しているときは、ガスケット608のプラグ550はウェル612を密封するには不要である。実際、プラグ550がチップ606に面しているようにガスケット608が容器600内で方向付けられているならば、シール膜607がプラグ550のウェル612中への進入を阻止するので、プラグ550が容器600の閉鎖を妨害してしまう。したがって、輸送中、シール膜607がチップ606に接着される場合には、ガスケット608は、プラグ550がチップ606に背を向けるようにカバー610内にて方向付けられる。この方向付けは図9Aに示されている。
【0031】
しかしながら、一旦シール膜607が取り除かれると、チップ606の保管中にウェル612を密封するのにプラグ550が必要とされる。保管期間は、約6ヶ月と予想される。チップ606の使用者は、図9Bに示されるように、プラグ550が今度はチップ606に面するようにガスケット608を反転する。容器600を再び閉じる際、プラグ550がチップ606のウェル612に挿入され、突起554がウェル612を密封する。この実施態様では、最初の実施態様について上記説明したように、ガスケット608は、使用者に対して配置ガイドとして機能する形状キー553を好ましくは備え、すなわち、ガスケット608は、適切な方向でのみ容器600に適合する。ガスケット608のこの形状ガイドの特徴は、図6に最もよく示されている。
【0032】
本発明の様々な実施態様を説明してきたが、これらは例として提示されてきたのであって限定するものではないことに留意されたい。本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において様々な変更が可能なことは、関連技術の専門家には明らかであろう。よって、本発明の幅及び範囲は、上述した例示の実施態様のいずれによっても限定されべきでなく、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ定められるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による容器の第1の実施態様の分解図を示す。
【図2】図1の容器のベースの斜視図を示す。
【図3】図1の容器のカバーの内側の斜視図を示す。
【図4】図1の容器のガスケットの第1面を示す。
【図5】図4のガスケットの裏面を示す。
【図5A】図5に示されたガスケット表面のプラグの拡大側面図を示す。
【図6】本発明による容器の第2の実施態様の分解図を示す。
【図7】エンドユーザーが最初に開けたときの図6の容器を示す。
【図8】ホイルシールが除去された後の図6の容器を示す。
【図9】図9Aはガスケットが反転した輸送位置にある図6の容器の一部の断面図を示す。図9Bはガスケットが保管位置にある図6の容器の一部の断面図を示す。
【符号の説明】
【0034】
100 容器
102 ベース
104 Oリングガスケット
106 マイクロ流体チップ
108 カバーガスケット
110 カバー
112 水和ウェル
220 リザーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体チップを保管するための容器であって、
複数の水和リザーバを備えたマイクロ流体チップを上面に保持するための取り付け領域を該上面に有するベース;
前記複数のリザーバを密封するための密封要素;及び
前記ベースに着脱自在に取り付けられるカバー;
を備えた容器。
【請求項2】
前記密封要素が、前記カバーと前記ベースの間に配置される変形可能なガスケットからなる請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記ベースが、該ベース中に形成され該ベースの上面の開口部から下方向に延びたリザーバと、該リザーバを密封するための密封手段とを有する請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記密封手段が変形可能なOリングである請求項3に記載の容器。
【請求項5】
前記Oリングがゴム、シリコーン、ネオプレン、ポリウレタン又は他の熱可塑性エラストマーから作られる請求項4に記載の容器。
【請求項6】
少なくとも1つの力誘導器が前記ガスケットの少なくとも1つの表面上に配置され、前記カバーに加えられる下方向の閉鎖力が閉鎖力を前記密封手段に伝達する請求項3に記載の容器。
【請求項7】
前記ガスケットが、前記カバー内で該ガスケットの配置をガイドするような形状を有する請求項2に記載の容器。
【請求項8】
前記ガスケットがゴム、シリコーン、ネオプレン、ポリウレタン又は他の熱可塑性エラストマーから作られる請求項2に記載の容器。
【請求項9】
前記カバーが回転自在に前記ベースにヒンジ式に取り付けられる請求項1に記載の容器。
【請求項10】
前記カバーが着脱自在に前記ベース上を閉鎖したとき容器内から湿気を吸収するための少なくとも1つの乾燥剤袋を該容器中に配置した請求項1に記載の容器。
【請求項11】
前記ベースが硬質物質から作られる請求項1に記載の容器。
【請求項12】
前記硬質物質が射出成形プラスチック物質からなる請求項11に記載の容器。
【請求項13】
前記プラスチック物質が、アクリル、ポリエチレン及びポリカーボネートからなる群から選ばれる請求項12に記載の容器。
【請求項14】
マイクロ流体チップを輸送及び保管するための容器であって、前記チップが、マウントに取り付けられた作業部分と、前記チップの表面に垂直に取り付けられた少なくとも1つの毛細管とを備え、前記容器が、
前記マウントを収容するよう構成された第1区画、及び
前記第1区画の上方又は下方に配置され前記毛細管を収容するよう構成された第2区画、
を含む容器。
【請求項15】
前記第1区画が乾燥し前記第2区画が水和される請求項14に記載の容器。
【請求項16】
前記第2区画が、その中に含まれる流体が漏洩するのを防止するために密封される請求項14に記載の容器。
【請求項17】
前記容器が再使用可能である請求項14に記載の容器。
【請求項18】
マイクロ流体チップを輸送及び保管するための容器であって、
ベースの上面の開口部から下方向に延びるリザーバを該上面に形成したベース;
リザーバを密封するための密封手段;及び
前記ベースに着脱自在に取り付けられるカバー
を備える容器。
【請求項19】
前記密封手段が変形可能なOリングである請求項18に記載の容器。
【請求項20】
前記Oリングがゴム、シリコーン、ネオプレン、ポリウレタン又は他の熱可塑性エラストマーから作られる請求項18に記載の容器。
【請求項21】
前記カバーと前記ベースの間に配置された変形可能なガスケットをさらに備える請求項18に記載の容器。
【請求項22】
少なくとも1つの力誘導器が前記ガスケットの少なくとも1つの表面上に配置され、前記カバーに加えられる下方向の閉鎖力が前記力誘導器により前記密封手段に伝達される請求項21に記載の容器。
【請求項23】
前記ガスケットが、前記カバー内で該ガスケットの配置をガイドするような形状を有する請求項21に記載の容器。
【請求項24】
前記ガスケットがゴム、シリコーン、ネオプレン、ポリウレタン又は他の熱可塑性エラストマーから作られる請求項21に記載の容器。
【請求項25】
マイクロ流体チップのウェル中に密封式に配置されるべく構成された少なくとも1つのプラグが、前記ガスケットの少なくとも1つの表面上に配置される請求項21に記載の容器。
【請求項26】
前記リザーバが流体を含む請求項18に記載の容器。
【請求項27】
前記流体が、蒸留水、防腐剤を含んだ蒸留水、又は緩衝液である請求項26に記載の容器。
【請求項28】
前記リザーバが空気、窒素ガス、又は不活性ガスを含む請求項18に記載の容器。
【請求項29】
前記カバーがプラスチック物質から作られる請求項18に記載の容器。
【請求項30】
前記カバーの少なくとも一部が透明又は半透明の物質から作られる請求項18に記載の容器。
【請求項31】
前記カバーの少なくとも一部が、機械読み取り可能なデータの伝送を妨害しない物質から作られる請求項18に記載の容器。
【請求項32】
前記ベースがプラスチック物質から作られる請求項18に記載の容器。
【請求項33】
前記ベースの少なくとも一部が透明又は半透明の物質から作られる請求項18に記載の容器。
【請求項34】
前記ベースの少なくとも一部が、機械読み取り可能なデータの伝送を妨害しない物質から作られる請求項18に記載の容器。
【請求項35】
ラベルが前記カバーの上面に配置される請求項18に記載の容器。
【請求項36】
複数のパイロンが前記ベースの前記上面に配置される請求項18に記載の容器。
【請求項37】
輸送及び保管のためのシステムであって:
少なくとも1つのウェルをその表面に配置したマイクロ流体チップ;及び
容器、
を含み、該容器が、
ベースの上面の開口部から下方向に延びるリザーバを該上面に形成したベース、
リザーバを密封するための密封手段、及び
前記ベースに着脱自在に取り付けられるカバー、
を含み、前記マイクロ流体チップが前記容器内に配置されるシステム。
【請求項38】
前記密封手段が変形可能なOリングである請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記カバーと前記ベースの間に配置された変形可能なガスケットをさらに備える請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
少なくとも1つの力誘導器が前記ガスケットの少なくとも1つの表面上に配置され、前記カバーに加えられる下方向の閉鎖力が前記力誘導器により前記密封手段に伝達される請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記ウェル中に密封式に配置されるべく構成された少なくとも1つのプラグが、前記ガスケットの少なくとも1つの表面上に配置される請求項39に記載のシステム。
【請求項42】
前記ガスケットが、前記カバー内で該ガスケットの配置をガイドするような形状を有する請求項39に記載のシステム。
【請求項43】
シール膜が前記少なくとも1つのウェルを密封する請求項37に記載のシステム。
【請求項44】
前記リザーバが流体を含む請求項37に記載のシステム。
【請求項45】
前記カバーがプラスチック物質から作られる請求項37に記載のシステム。
【請求項46】
前記カバーの少なくとも一部が透明又は半透明の物質から作られる請求項37に記載のシステム。
【請求項47】
前記ベースがプラスチック物質から作られる請求項37に記載のシステム。
【請求項48】
前記ベースの少なくとも一部が透明又は半透明の物質から作られる請求項37に記載のシステム。
【請求項49】
ラベルが前記カバーの上面に配置される請求項37に記載のシステム。
【請求項50】
前記マイクロ流体チップが機械読み取り可能な情報を含み、前記容器の少なくとも一部が、前記機械読み取り可能な情報の伝送を妨害しない物質から作られる請求項37に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−518837(P2006−518837A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518602(P2005−518602)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/015723
【国際公開番号】WO2004/108290
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505319027)カリパー・ライフ・サイエンシズ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】