説明

制御された熱膨張係数を有する導電性複合材料

本発明は、負の熱膨張係数を有することを特徴とするセラミック成分と、カーボンナノフィラメントとを含む複合材料、複合材料の生成工程、および複合材料の、マイクロエレクトロニクス、精密工学部品、航空学、および航空宇宙産業における導電体としての利用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負の熱膨張係数を有することを特徴とするセラミック成分と、カーボンナノフィラメントとを含む複合材料、複合材料の生成工程、および複合材料の、マイクロエレクトロニクス、精密工学部品、航空学、および航空宇宙産業における導電体としての利用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱膨張係数(CTE)の低い材料は、様々な分野で広範囲の用途を有している。これらの種の材料は、マイクロエレクトロニクス産業および精密工学部品において、多くの種類の精密器具およびハイテクノロジーシステムの計測設備において必要とされている。手短に言えば、温度変化に対する精密要素の寸法安定性が保証されなければならないこれらの全ての用途において、これらの要素を形成する材料の熱膨張係数を減らすことが必要とされている。異なる材料から製造される要素における熱膨張の不均衡は、所要の(かつ、均一の)熱膨張係数を有する合成物の設計を用いて解決される。調整された熱膨張係数を有するこれらの材料の設計は、正の膨張と負の膨張とを有する構成要素の組み合わせを用いて取り組むことができる。熱膨張係数が零の合成物の最終的な利用分野が、その用途における特定の機能性である他の特徴が得られるか否かに基づいて、合成物の熱膨張係数を調整するための設計は、異なる温度において実施される。リチウムセラミックス、ガラスセラミックス(LAS)、およびマグネシウムアルミノ珪酸塩(コージライト)の族は、キッチンのガラスセラミックスから人工衛星のミラーまで、多くの利用分野において、しばしばこの目的のために利用される。この族のいくつかの無機物相は負の熱膨張係数を有しており、これにより、制御され、調整された熱膨張係数を有する合成物における利用を可能にしている。しばしば、負の熱膨張係数を有する材料は、これらの負の熱膨張係数が、異なる結晶の方向性の間の強い異方性に起因するため、破損に対する耐性が低い。負の性質はたいていこれらのうちの一つに見出すことができ、正の性質は他の二つに見出すことができる。異方性は、たいてい微小な亀裂を引き起こし、結果としてこれらの材料の機械的特性の低い値を与える。そこで、酸化物または非酸化物のセラミック相を付加することで、機械的特性を向上させた材料を得ることができる。熱膨張係数を制御されたこれらの材料は、工学、光通信学、電子工学、および/または構造学での用途において興味深い(Roy, R. et al., Annual Review of Materials Science, 1989, 19, 59-81)。
【0003】
LAS系において負の膨張を有する相は、β−ユークリプタイトであり、一つの結晶軸の方向における大きな負の膨張に起因する。リシア輝石(LiAlSi)の相および葉長石(LiAlSi10)の相は、零に近い熱膨張係数を有している。LASの組成を有する材料の従来の製造方法は、ガラスセラミックスを生産するためのガラスの加工である。この方法は、ガラスを形成する工程を含み、ガラスは後に、低温の熱処理をされ、LAS相の結晶を析出する。これにより、熱膨張係数を制御する。ときとして、この工程は不均質な材料を形成する。そして、言うまでもなくガラスとして、この材料の機械的特性(硬さおよび耐性)は、他のセラミック材料と比較して、多くの産業上の利用分野において十分ではない。これは、多数の分野で広く利用されているが、耐性が低すぎて破損しない、Zerodur(Schottの登録商標)の事例である。それゆえ、より良い機械的特性が要求される場合、ガラスセラミックに代わるものが必要である。コージライトなどの零に近い熱膨張係数を有する他のセラミック材料が、US4403017に開示され、またInvar(登録商標)として知られている。低い熱膨張係数を有する材料の調整の代替案は、US6953538、JP2007076949、JP2002220277、および特許出願P200803530に記載されるように、負の熱膨張係数を有するセラミック成分に正の熱膨張係数を有する第2相を添加することから成る。この最後のオプションはとても興味深く、適切な割合の第2相を母組織に添加することによって、熱膨張係数の値および他の特性を調整することができる。これに対し、材料の最終的な特性は、2つまたはそれ以上の構成要素の組み合わせの結果であるということに留意すべきであり、これらの合成物の主な課題は、広い温度範囲で熱膨張係数の値の制御を管理することにある。US6953538、JP2007076949、およびJP2002220277は、高い寸法安定性が得られる温度範囲は、約30〜50℃である。特許出願P200803530では、熱膨張係数の値が零に近いときの温度範囲が広げられている。
【0004】
特許出願P200803530では、マグネシウム(コージライト)とリチウムアルミノ珪酸塩とが用いられている。出願番号P200803530の出願には、カオリンと、リチウムカーボネートと、溶液中のシリカおよびアルミナの前駆体とから、リチウムアルミノ珪酸塩を合成する方法が記載されており、これにより、Al:LiO:SiOの状態図の中から異なる組成を選択することで、制御された熱膨張係数を有するLASセラミックスを得ることができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、セラミック組織とカーボンナノフィラメントとを含み、優れた機械的特性、導電性特性、および熱特性を有する複合材料を提供する。また、本発明は、上記材料の生成工程、および、マイクロエレクトロニクス、精密工学部品、航空学、および航空宇宙産業の機器の製品における導電体としての利用方法を提供する。
【0006】
本発明の第1の形態に係る材料は、セラミック成分と、カーボンナノフィラメントとを含む材料であって、−6×10−6−1〜6.01×10−6−1の熱膨張係数を有することを特徴とする。
【0007】
この材料は複合材料であり、これらのカーボンナノフィラメントは導電体として作用する。さらに、カーボンナノフィラメントは、本発明に開示される材料のセラミックス組織(負の熱膨張係数を有する)において補強となる。これにより、この材料は導電性を有する。
【0008】
本発明において、“複合材料”とは、互いに区別される2つまたはそれ以上の構成要素によって形成される材料と理解される。また、“複合材料”は、これらの構成要素の組み合わせから得られる特性を有しており、その特性は、それぞれの構成要素単独で形成された材料よりも優れている。
【0009】
本発明において、セラミック成分は、セラミックス組織となり、複合材料の母組織として作用する。
【0010】
本発明において、“導電体”とは、電流または電子を通す能力を備える材料として理解される。
【0011】
本発明において、“熱膨張係数(CTE)”とは、材料を熱したときの材料の体積変化を反映するパラメーターとして理解される。
【0012】
より好ましい実施例として、材料は、体積百分率80%未満の、酸化物セラミックまたは非酸化物セラミックをさらに含んでもよい。
【0013】
上記セラミック成分は、LiO:Al:SiO系、またはMgO:Al:SiO系から選ばれることが好ましい。この組織は、β‐ユークリプタイトまたはコージライトであることが好ましい。
【0014】
負の体積膨張率を有する上記セラミック成分の体積比率は、最終的に得られる上記材料に関して、10%より大きいことが好ましい。
【0015】
上記組織に含まれ、補強として作用する上記カーボンナノフィラメントは、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブであり、好ましくはカーボンナノファイバーである。上記カーボンナノファイバーの直径は、20〜80nmであることがより好ましい。上記カーボンナノファイバーの、長さ/直径の比は、100よりも大きいことがより好ましい。上記カーボンナノファイバーは、70%よりも多くの黒鉛組織を有することがより好ましい。
【0016】
本発明において、“カーボンナノファイバー”とは、高い黒鉛組織を有するカーボンナノフィラメントとして理解される。
【0017】
上記酸化物セラミックまたは上記非酸化物セラミックは、炭化物、窒化物、ホウ化物、酸化物金属、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる1つであることが好ましい。上記酸化物セラミックまたは上記非酸化物セラミックは、SiC、TiC、AlN、Si、TiB、Al、ZrO、およびMgAlからなる群より選ばれる1つであることがより好ましい。
【0018】
上記酸化物セラミックは、Alであることが好ましく、アルミナ(Al)の粒径は、20〜1000nmであることがより好ましい。上記セラミックが非酸化物である場合、上記非酸化物セラミックは、SiCであることが好ましく、炭化珪素の粒径は、10μm未満であることがより好ましい。
【0019】
上記複合材料を構成する相の高温における反応性を制御する。導電性セラミック材料が、広い温度範囲で、与えたい用途に基づいた熱膨張係数を有するように、合成物の熱膨張係数を制御する。これらの合成物における導電性の相を用いる利点は、一方では、熱膨張係数と低密度とを維持し、高い導電性を有する材料を得ることにあり、他方では、酸化物セラミックまたは非酸化物セラミックによれば、機械的特性が改善された材料を得ることが可能になることにある。
【0020】
セラミックス組織を有する上記導電性複合材料は、制御された寸法安定性を有することを特徴とする。また、上記導電性複合材料は、その合成物中にカーボンナノフィラメントを含み、上記セラミック組織の合成物は負の熱膨張係数を有し、1×10Ωcm未満の電気抵抗率の値とともに10体積%未満の空隙率と、−150℃〜450℃の温度範囲において上記合成物に応じて−6×10−6−1〜6.01×10−6−1に調整された熱膨張係数と、60MPaより大きい破損耐性と、低い絶対密度とを有することを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の形態に係る上記材料の製造方法は、溶媒中で、上記セラミック成分を上記ナノフィラメントと混合する第1工程と、上記第1工程で得られた混合物を乾燥させる第2工程と、上記第2工程で得られた材料を形成する第3工程と、上記第3工程で得られた材料を焼結する第4工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
より好ましい実施例として、上述した第1工程において、酸化物セラミックまたは非酸化物セラミックを加える。
【0023】
上記第1工程で用いる上記溶媒は、水、無水アルコール、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる1つであることが好ましく、上記無水アルコールは、無水エタノールであることがより好ましい。
【0024】
第1工程における上記混合は、100〜400rpmで行われることが好ましい。この混合は、アトリションミルにより行うことができる。
【0025】
第2工程における上記乾燥は、微粒化により行われることが好ましい。
【0026】
本発明において、“微粒化”とは、気流とともに、溶液および懸濁液の粉状化によって乾燥させる方法として理解される。
【0027】
第3工程における上記形成は、コールドアイソスタティック成形またはホットアイソスタティック成形により行われることが好ましい。
【0028】
本発明において、“アイソスタティック成形”とは、一般的に粉末状態の材料をモールドに密閉して囲み、流体により静水圧を加えることにより圧縮する方法として理解され、このようにして得られた部品は、均一で等方的な特性を有している。
【0029】
上記コールドアイソスタティック成形を行うときは、100〜400MPaの気圧の下で行われることが好ましい。
【0030】
上記ホット成形を行う場合は、900〜1600℃の温度において、2〜50℃/minの加熱ランプとともに、5〜150MPaの一軸の圧力を加え、上記温度で0.5時間から10時間保持する。
【0031】
第4工程における上記焼結温度は、700〜1600℃であることが好ましい。第4工程における焼結は、圧力を加えることなく、または一軸の圧力を加えて、行うことができる。
【0032】
圧力を加えることなく焼結を行うときは、従来型のオーブンの中で焼結を行うことができる。焼結を行う間、一軸の圧力を加えるときは、スパークプラズマ焼結(SPS)または加熱圧搾機により行うことができる。
【0033】
上記焼結を、圧力を加えることなく行うときは、上記焼結は、2〜10℃/minの加熱ランプとともに、1100〜1600℃の不活性雰囲気下において行われ、上記温度で0.5時間および10時間保持する。上記不活性雰囲気は、アルゴン雰囲気であることがより好ましい。
【0034】
2〜10℃/minのランプを用いて900℃まで冷却する次工程を含むことが好ましい。
【0035】
一軸の圧力を加えて上記焼結を行う場合は、700〜1600℃の温度において、2〜300℃/minの加熱ランプとともに、5〜150MPaの一軸の圧力を加え、上記温度で1〜30分間保持する。この焼結方法によれば、短時間で、粒径を制御された材料を得ることができる。
【0036】
上記の処理は、ガラスの形成を避けて、固体状態において形成および焼結を行うという、単純な製造工程により実施することができる。そして、その結果、機械的特性の向上を達成する。
【0037】
高温において相の反応が起こることのない、第3の酸化物相または非酸化物相を加え得る導電性の相とともに、リチウムまたはマグネシウムアルミノ珪酸塩の組織を選択した場合、製造工程を単純化し、超軽量でありながら高密度で、機械的特性、電気的特性、熱的特性を向上させることができる。このような制御は、特に、負の熱膨張係数を有する相を用いることにより、行うことができる。
【0038】
本発明に開示される他の案は、広い温度範囲において制御される熱膨張係数を有する導電性のセラミック材料の製造である。これにより、低密度(または軽量)のセラミック材料を多くの機械的用途に適合させることができる。導電体であることに加えて、本発明は、要求される形状の構成要素を得ることができるようにするための電食技術を用いて材料を加工する可能性を広げる。
【0039】
本発明の第3の形態に係る材料の使用方法は、上記材料を、導電体、および高寸法安定性を有するセラミック成分の製品の材料のうち、少なくとも何れか1つとして使用する材料の使用方法である。上記材料は、マイクロエレクトロニクス、精密光学部品、または航空の領域において適用可能である。好ましい実施例として、上記導電性材料を、高精密測定システム、宇宙観測システムのミラー、フォトリソグラフィースキャナー、ホログラフィー、レーザー機器、または放熱体の製品として使用する。
【0040】
手短に言えば、これらの複合材料は、高い寸法安定性を要求される構成要素の製品、より具体的には、天体観測用望遠鏡のミラー構造、衛星のX線テレスコープ、彗星探知プローブ、気象衛星、およびマイクロリソグラフィーの光学部品、レーザーリングジャイロスコープのミラーおよび高周波結合器、共振レーザー航程指示器、測定棒、および高精密測定技術の基準などとして用いられる。
【0041】
明細書および請求項の記載において、“含む”という文言およびその変形は、他の技術的特徴、追加要素、構成要素、および工程を排除するものではない。当業者にとって、本発明の他の目的、有利な効果、および特徴は、明細書の記載および本発明の実施によって推察されるであろう。以下の図および実施例の記載は、説明図として与えられたものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施の形態で用いられる組成を示す、LiO−Al−SiO系の状態図である。
【図2】SPS焼結により得られたLAS材料‐カーボンナノファイバー、従来型のオーブンにより得られたコージライト‐カーボンナノファイバー、加熱圧搾機焼結により得られたLAS‐カーボンナノファイバー‐SiC、およびSPS焼結により得られたLAS‐カーボンナノファイバー‐Alのそれぞれに対応する熱膨張係数(α曲線)である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
〔実施の形態〕
以下に、本発明の製造物の特定の実施例として、(−150,+450)℃の範囲で熱膨張係数を制御された導電性複合材料の特異性と効果を明らかにする説明を、発明者によって行われた評価とともに記載する。
【0044】
<実施例1>
出発物質は、(a)組成がLiAlSiO(図1の組成A)であり、平均粒径が1μmであり、密度が2.39g/cmであるLAS粉末、(b)直径がほぼ20〜80nmであり、密度が1.97g/cmであるカーボンナノファイバー、および、(c)無水エタノール(純度99.97%)である。
【0045】
700gのLASを、1400gのエタノールに分散させた。これを、2000gのエタノールの中の146.6gのカーボンナノファイバーの懸濁液と混合した。混合物を60分間の機械的攪拌により均質化し、その後、300rpmのアトリションミルにより60分間製粉した。調製された懸濁液は、微粒化によって乾燥され、工程においてエタノールを回収する間にナノ合成物の顆粒が得られる。製粉の段階では、最終材料の焼きしまりを整える、均質でナノメートルサイズの粉末を調製することができる。
【0046】
このようにして得られた乾燥生成物に、形成工程と、スパークプラズマ焼結(SPS)を用いた焼結工程とを施した。この工程では、14.5gの材料を直径40mmのグラファイトモールドに入れ、単軸の方向に10MPaで押圧する。次に、100℃/minの加熱ランプで1200℃まで加熱し、1分間保持するとともに、80MPaの最大圧力を加えることで、焼結を行う。
【0047】
この結果得られた材料は、実密度(ヘリウム比重瓶法)、見かけ密度(アルキメデス法)、ヤング率(Grindosonic装置の共振周波数法)、破損耐性(INSTRON 8562装置の4点曲げ法)、および熱膨張係数(NETZCHのDIL402Cモデルの膨張計)により特徴付けた。対応する値を表1に示す。温度に対する熱膨張係数の変化を、図2に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
<実施例2>
出発物質は、(a)組成が2Al・5SiO・2MgOであり、密度が2.65g/cmであるコージライト粉末、(b)直径がほぼ20〜80nmであり、密度が1.97g/cmであるカーボンナノファイバー、および、(c)無水エタノール(純度99.97%)である。
【0050】
900gのコージライトを、1600gのエタノールに分散させた。これを、400gのエタノールの中の21gのカーボンナノファイバーの懸濁液と混合した。混合物を60分間の機械的攪拌により均質化し、その後、300rpmのアトリションミルにより60分間製粉した。調製された懸濁液は、微粒化によって乾燥され、工程においてエタノールを回収する間にナノ合成物の顆粒が得られる。
【0051】
乾燥生成物に、200MPaのコールドアイソスタティック成形を用いた形成工程を施した。120分間保持し、5℃/minの加熱ランプで加熱するとともに、従来式のオーブンにより1400℃のアルゴン雰囲気下で焼結することで、形成された材料を得た。
【0052】
この結果得られた材料は、実密度(ヘリウム比重瓶法)、見かけ密度(アルキメデス法)、ヤング率(Grindosonic装置の共振周波数法)、破損耐性(INSTRON 8562装置の4点曲げ法)、および熱膨張係数(NETZCHのDIL402Cモデルの膨張計)により特徴付けた。対応する値を表2に示す。温度に対する熱膨張係数の変化を、図2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
<実施例3>
出発物質は、(a)組成がLiAlSiO(図1の組成)であり、平均粒径が1μmであり、密度が2.39g/cmであるLAS粉末、(b)直径がほぼ20〜80nmであり、密度が1.97g/cmであるカーボンナノファイバー、(c)平均粒径が100nm未満であり、密度が3.20g/cmであるSiC粉末、および、(d)無水エタノール(純度99.97%)である。
【0055】
600gのLASを、1300gのエタノールに分散させた。これを、1100gのエタノールの中の63gのカーボンナノファイバーの懸濁液、および1000gのエタノールの中の143.8gのn‐SiCの懸濁液と混合した。混合物を60分間の機械的攪拌により均質化し、その後、300rpmのアトリションミルにより60分間製粉した。調製された懸濁液は、微粒化によって乾燥され、工程においてエタノールを回収する間にナノ合成物の顆粒が得られる。
【0056】
このようにして得られた乾燥生成物に、形成工程と、加熱圧搾機を用いた焼結工程とを施した。この工程では、30gの材料を直径50mmのグラファイトモールドに入れ、単軸の方向に5MPaで押圧する。次に、5℃/minの加熱ランプで1150℃まで加熱し、120分間保持するとともに、35MPaの最大圧力を加えることで、焼結を行う。
【0057】
この結果得られた材料は、実密度(ヘリウム比重瓶法)、見かけ密度(アルキメデス法)、ヤング率(Grindosonic装置の共振周波数法)、破損耐性(INSTRON 8562装置の4点曲げ法)、および熱膨張係数(NETZCHのDIL402Cモデルの膨張計)により特徴付けた。対応する値を表3に示す。温度に対する熱膨張係数の変化を、図2に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
<実施例4>
出発物質は、(a)組成がLiAlSiO(図1の組成)であり、平均粒径が1μmであり、密度が2.39g/cmであるLAS粉末、(b)直径がほぼ20〜80nmであり、密度が1.97g/cmであるカーボンナノファイバー、(c)平均粒径が160nm未満であり、密度が3.93g/cmであるアルミナ粉末、および、(d)無水エタノール(純度99.97%)である。
【0060】
250gのLASを、800gのエタノールに分散させた。これを、1300gのエタノールの中の104.6gのカーボンナノファイバーの懸濁液、および1000gのエタノールの中の411.2gのAlの懸濁液と混合した。混合物を60分間の機械的攪拌により均質化し、その後、300rpmのアトリションミルにより60分間製粉した。調製された懸濁液は、微粒化によって乾燥され、工程においてエタノールを回収する間にナノ合成物の顆粒が得られる。
【0061】
このようにして得られた乾燥生成物に、形成工程と、スパークプラズマ焼結(SPS)を用いた焼結工程とを施した。この工程では、18.4gの材料を直径40mmのグラファイトモールドに入れ、単軸の方向に10MPaで押圧する。次に、100℃/minの加熱ランプで1250℃まで加熱し、1分間保持するとともに、80MPaの最大圧力を加えることで、焼結を行う。
【0062】
この結果得られた材料は、実密度(ヘリウム比重瓶法)、見かけ密度(アルキメデス法)、ヤング率(Grindosonic装置の共振周波数法)、破損耐性(INSTRON 8562装置の4点曲げ法)、および熱膨張係数(NETZCHのDIL402Cモデルの膨張計)により特徴付けた。対応する値を表4に示す。温度に対する熱膨張係数の変化を、図2に示す。
【0063】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック成分と、カーボンナノフィラメントとを含む材料であって、
−6×10−6−1〜6.01×10−6−1の熱膨張係数を有することを特徴とする材料。
【請求項2】
体積百分率80%未満の、酸化物セラミックまたは非酸化物セラミックをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項3】
上記セラミック成分は、LiO:Al:SiOまたはMgO:Al:SiOから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の材料。
【請求項4】
上記セラミック成分は、β‐ユークリプタイトまたはコージライトであることを特徴とする請求項3に記載の材料。
【請求項5】
上記セラミック成分の、最終的に得られる上記材料に関する体積百分率は、10%より大きいことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の材料。
【請求項6】
上記カーボンナノフィラメントは、カーボンナノファイバーであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の材料。
【請求項7】
上記カーボンナノファイバーの直径は、20〜80nmであることを特徴とする請求項6に記載の材料。
【請求項8】
上記カーボンナノファイバーの、長さ/直径の比は、100よりも大きいことを特徴とする請求項6または7に記載の材料。
【請求項9】
上記カーボンナノファイバーは、70%よりも多くの黒鉛組織を有することを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の材料。
【請求項10】
上記酸化物セラミックまたは上記非酸化物セラミックは、炭化物、窒化物、ホウ化物、酸化物金属、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる1つであることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の材料。
【請求項11】
上記酸化物セラミックまたは上記非酸化物セラミックは、SiC、TiC、AlN、Si、TiB、Al、ZrO、およびMgAlからなる群より選ばれる1つであることを特徴とする請求項10に記載の材料。
【請求項12】
上記酸化物セラミックは、Alであることを特徴とする請求項11に記載の材料。
【請求項13】
上記Alの粒径は、20〜1000nmであることを特徴とする請求項12に記載の材料。
【請求項14】
上記非酸化物セラミックは、SiCであることを特徴とする請求項11に記載の材料。
【請求項15】
上記SiCの粒径は、10μm未満であることを特徴とする請求項14に記載の材料。
【請求項16】
請求項1〜15の何れか1項に記載の材料を製造する製造方法であって、
溶媒中で、上記セラミック成分を上記ナノフィラメントと混合する第1工程と、
上記第1工程で得られた混合物を乾燥させる第2工程と、
上記第2工程で得られた材料を形成する第3工程と、
上記第3工程で得られた材料を焼結する第4工程と、を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項17】
第1工程において、酸化物セラミックまたは非酸化物セラミックをさらに加えることを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
上記溶媒は、水、無水アルコール、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる1つであることを特徴とする請求項16または17に記載の製造方法。
【請求項19】
上記無水アルコールは、無水エタノールであることを特徴とする請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
第1工程における上記混合は、100〜400rpmで行われることを特徴とする請求項16〜19の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
第2工程における上記乾燥は、微粒化により行われることを特徴とする請求項16〜20の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
第3工程における上記形成は、コールドアイソスタティック成形またはホットアイソスタティック成形により行われることを特徴とする請求項16〜21の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項23】
上記コールドアイソスタティック成形は、100〜400MPaの気圧の下で行われることを特徴とする請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
上記ホット成形は、900〜1600℃の温度において、2〜50℃/minの加熱ランプとともに、5〜150MPaの一軸の圧力を加え、上記温度で0.5時間から10時間保持することを特徴とする請求項22に記載の製造方法。
【請求項25】
第4工程における上記焼結は、700〜1600℃の温度において行われることを特徴とする請求項16〜24の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項26】
第4工程における焼結は、圧力を加えることなく、または一軸の圧力を加えて、行われることを特徴とする請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
上記焼結は、2〜10℃/minの加熱ランプとともに、1100〜1600℃の不活性雰囲気下において行われ、上記温度で0.5時間および10時間保持することを特徴とする請求項25または26に記載の製造方法。
【請求項28】
上記不活性雰囲気は、アルゴン雰囲気であることを特徴とする請求項27に記載の製造方法。
【請求項29】
2〜10℃/minのランプを用いて900℃まで冷却する次工程を含むことを特徴とする請求項27または28に記載の製造方法。
【請求項30】
上記焼結は、700〜1600℃の温度において、2〜300℃/minの加熱ランプとともに、5〜150MPaの一軸の圧力を加え、上記温度で1〜30分間保持することを特徴とする請求項25または26に記載の製造方法。
【請求項31】
請求項1〜15の何れか1項に記載の材料を使用する方法であって、
導電体、および高寸法安定性を有するセラミック成分の製品の材料のうち、少なくとも何れか1つとして使用することを特徴とする方法。
【請求項32】
高精密測定システム、宇宙観測システムのミラー、フォトリソグラフィースキャナー、ホログラフィー、レーザー機器、または放熱体の製品として使用することを特徴とする請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−514251(P2013−514251A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543851(P2012−543851)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070827
【国際公開番号】WO2011/073483
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511000083)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS(CSIC)
【住所又は居所原語表記】C/Serrano,117,E−28006 Madrid,Spain
【Fターム(参考)】