説明

制御弁

【課題】駆動体が収容されている空間と流体が流れる空間との均圧化を図りつつ、水滴の凍結によって駆動体が作動不能になることのない制御弁を提供すること。
【解決手段】流体が流入する入口ポート2と、入口ポート2から流入した流体が通過する弁ポート8と、弁ポート8を通過した流体が流出する出口ポート6と、を有する弁室Aと、弁室Aと感圧部材10によって画成されるとともに、弁体28を移動させる駆動体20が収容されている駆動体収容室Bと、を備え、駆動体20によって弁体28が移動し、弁体28が弁ポート8を開放または閉止するように構成された制御弁1であって、弁室Aと駆動体収容室Bとは、防水透湿部材18を介して連通されるとともに、駆動体収容室Bには、駆動体収容室Bに掃気ガスgを導入する掃気ガス導入路35が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体を制御する制御弁に関し、詳しくは、燃料電池システムの湿潤流体流路に配置され、湿潤流体を制御するのに好適な制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、電気自動車の燃料電池システムにおける湿潤流体流路に配置される排出弁など、多量の水分を含有する湿潤流体を制御する制御弁において、水滴などがプランジャなどに付着して凍結することで、プランジャが作動不能となることがあり、かかる問題を解決するための種々の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、湿潤流体が流れる弁室とプランジャなどが収容される駆動体収容室とをダイアフラムによって画成し、駆動体収容室を気密に形成することで、プランジャに水分が付着することを防止する燃料電池用電磁弁が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、湿潤流体が流れる空間とプランジャが収容される空間とが共有されている燃料電池システム用の排出弁において、湿潤流体が流れる流路に掃気ガスを流すことで、プランジャに付着した水滴など除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−179118号公報
【特許文献2】特開2009−176498号公報
【特許文献3】特開2001−227671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の電磁弁のように、駆動体収容室を気密に形成すると、プランジャを駆動するソレノイド部などからの放熱によって駆動体収容室内の温度が上昇し、駆動体収容室内の空気の体積が増大してしまう。駆動体収容室内の空気の体積が増大すると、駆動体収容室と弁室との間に圧力差が生じ、ダイアフラムが変位して、ダイアフラムによって画成されている弁室内での流体の制御に影響を及ぼしてしまう。
【0007】
特許文献1の電磁弁では、上述した温度上昇による駆動体収容室内の空気体積の増大を防止するために、駆動体収容室と外気とを連通する通路を形成している。しかしながら、この場合でも、駆動体収容室と弁室とが必ずしも均圧化されるわけではないため、駆動体収容室と弁室との圧力差によって、弁室内での流体の制御に影響を及ぼすことがある。
【0008】
また、特許文献3には、駆動体収容室と弁室とがダイアフラムで画成された電磁弁において、駆動体収容室と弁室とを連通する空気孔を設けて両室間の均圧化を図るとともに、この空気孔に、水滴等を遮断し、空気は通過する撥水フィルターを配置する技術が開示されている。しかしながら、撥水フィルターは、水滴等は遮断するものの、空気中に含まれる水蒸気は透過させてしまうため、撥水フィルターを透過して駆動体収容室内に流入した水蒸気が低温下で凝縮し、プランジャなどに付着して凍結することがある。
【0009】
また、特許文献2の燃料電池システム用の排出弁は、燃料電池システムを停止した状態でしか排出弁に掃気ガスを流すことができないため、例えば、自動車の運転中に掃気ガスを排出弁に流すことはできず、自動車の運転を停止した後にだけ、掃気ガスが排出弁に流されることとなる。よって、自動車の運転を停止した後も、一定時間、掃気ガスを排出弁に流すためのシステムを駆動させる必要がある。
【0010】
また、特許文献2の燃料電池システム用の排出弁では、燃料電池システムが稼働している間中、例えばプランジャのバネ穴などに水が溜まり続けるため、掃気に必要な時間が長くなるとの問題がある。
【0011】
本発明はこのような従来の課題に鑑みなされた発明であって、プランジャなどの駆動体が収容されている駆動体収容室と、流体が流れる弁室との均圧化を図りつつ、水滴の凍結によって駆動体などが作動不能になることのない制御弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の制御弁は、
流体が流入する入口ポートと、該入口ポートから流入した流体が通過する弁ポートと、該弁ポートを通過した流体が流出する出口ポートと、を有する弁室と、
前記弁室と感圧部材によって画成されるとともに、弁体を移動させる駆動体が収容されている駆動体収容室と、を備え、
前記駆動体によって前記弁体が移動し、該弁体が前記弁ポートを開放または閉止するように構成された制御弁であって、
前記弁室と前記駆動体収容室とは、防水透湿部材を介して連通されるとともに、
前記駆動体収容室には、前記駆動体収容室に掃気ガスを導入する掃気ガス導入路が接続されていることを特徴とする。
【0013】
このように構成することによって、流体が流れる弁室と弁体を移動させる駆動体が収容されている駆動体収容室とが、防水透湿部材を介して連通されているため、駆動体収容室に水滴などが浸入することを防止できるとともに、弁室と駆動体収容室との間を均圧化することができる。また、駆動体収容室には、掃気ガスを導入する掃気ガス導入路が接続されているため、掃気ガス導入路から駆動体収容室に掃気ガスを導入することで、水蒸気が駆動体収容室に浸入するのを防止することや、駆動体侵入室に浸入した水蒸気を掃気することができる。
【0014】
また、本発明の制御弁は、
流体が流入する入口ポートと、該入口ポートから流入した流体が通過する弁ポートと、該弁ポートを通過した流体が流出する出口ポートと、を有する弁室と、
前記弁室と感圧部材によって画成されるとともに、弁体を移動させる駆動体が収容されている駆動体収容室と、を備え、
前記駆動体によって前記弁体が移動し、該弁体が前記弁ポートを開放または閉止するように構成された制御弁であって、
前記弁室と前記駆動体収容室とは、防水透湿部材を介して連通されるとともに、
前記弁室と前記駆動体収容室との連通部には、掃気ガスを導入する掃気ガス導入路が接続されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成することによって、流体が流れる弁室と弁体を移動させる駆動体が収容されている駆動体収容室とが、防水透湿部材を介して連通されているため、駆動体収容室に水滴などが浸入することを防止できるとともに、弁室と駆動体収容室との間を均圧化することができる。また、弁室と駆動体収容室との連通部には、掃気ガスを導入する掃気ガス導入路が接続されているため、掃気ガス導入路から連通部に掃気ガスを連続して導入することで、水蒸気が駆動体収容室に浸入するのを防止することができる。
【0016】
上記発明において、
前記感圧部材の少なくとも一部または全部が防水透湿部材により形成されており、該感圧部材の防水透湿部材を介して、前記弁室と前記駆動体収容室とが連通されていることが望ましい。
【0017】
このように構成すれば、バルブボディ自体を穿孔して連通部を形成する必要がないため、製作性に優れた制御弁とすることができる。
【0018】
上記発明において、
前記掃気ガス導入路には、掃気ガス導入路を流れる掃気ガスを減圧する減圧手段が形成されていることが望ましい。
【0019】
このように構成すれば、減圧手段によって掃気ガスを適当な圧力に減圧してから駆動体収容室や連通部に導入することができるため、導入された掃気ガスの圧力が高すぎることに起因する駆動体の作動性に対する影響や弁室内の流体の流れに対する影響を最小限に抑えることができる。
【0020】
上記発明において、
前記制御弁が、燃料電池システムに用いられる制御弁であって、
水素ガスを燃料電池システムの外部へ排出する水素ガス排出路に配置されることが望ましい。
【0021】
燃料電池システムにおいて、余剰の水素ガスは水素ガス排出路を介してシステムの外部に排出されるようになっているが、この余剰の水素ガスは加湿された状態にあって多量の水蒸気を含んでいる。本発明の制御弁は、このような水素ガス排出路に配置される例えばパージ弁や水捨弁として、特に好適に用いることができる。
【0022】
また、上記発明において、
前記掃気ガス導入路が、燃料電池システムの燃料電池スタックに空気を供給する空気供給流路と接続されていることが望ましい。
【0023】
燃料電池システムには、燃料電池スタックに空気(酸素)を供給する空気供給流路が設けられているが、掃気ガス導入路をこの空気供給流路と接続することで、簡単な構成で、燃料電池スタックに供給される空気を掃気ガスとして利用することが可能となる。
【0024】
また、上記発明において、
前記掃気ガス導入路には、該掃気ガス導入路を遮断可能に構成された遮断弁が配置されていることが望ましい。
【0025】
このように構成すれば、遮断弁を開閉制御することで、必要に応じて適宜、掃気ガスを制御弁に導入することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の制御弁では、駆動体が収容されている駆動体収容室と流体が流れる弁室とが防水透湿部材を介して連通されているため、両室間を均圧化することができる。
【0027】
また、駆動体収容室に掃気ガス導入路が接続されているため、水蒸気が駆動体収容室に浸入するのを防止することができるとともに、駆動体侵入室に浸入した水蒸気を掃気することもできる。
【0028】
また、弁室と駆動体収容室との連通部に掃気ガス導入路が接続されているため、水蒸気が駆動体収容室に浸入するのを防止することができる。
【0029】
よって、このような本発明によれば、プランジャなどの駆動体が収容されている駆動体収容室と、流体が流れる弁室との均圧化を図りつつ、水滴の凍結によって駆動体などが作動不能になることのない制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態の制御弁を示した断面図である。
【図2】図2は、本発明の制御弁が適用される燃料電池システムの概略システム図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態の制御弁において、特に弁室部分を拡大して示した断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態の制御弁を示した断面図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施形態の制御弁において、特に弁室部分を拡大して示した断面図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施形態の制御弁において、特に弁室部分を拡大して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
【0032】
ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限り、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明に過ぎない。
<第1の実施形態>
本発明の制御弁1は、後述する電気自動車用の燃料電池システム50における湿潤流体の流れを制御する弁として、特に好適に用いられるものである。よって、以下の実施形態の説明では、燃料電池システム50において、余剰の水素ガスを外部へと排出する水素ガス排出路に、本発明の制御弁1を配置した場合を例にして説明する。
<制御弁1>
図1は、本発明の制御弁を示した断面図である。
【0033】
本発明の制御弁1は、図1に示したように、駆動体収容室Bに収容された駆動体(プランジャ20)が電磁力によって軸方向に駆動することで、弁体28が軸方向に移動して弁ポート8を開放または閉止し、入口ポート2から弁室Aに流入した流体の流れを制御するように構成された、例えば電磁式の制御弁1である。
【0034】
図1に示したように、弁室Aは、流体が流入する入口ポート2と、入口ポート2から流入した流体が通過する弁ポート8と、弁ポート8を通過した流体が流出する出口ポート6と、を有している。
【0035】
入口ポート2は、弁ハウジング3に形成されている入口側流路5と接続している。そして、入口側流路5を図中の矢印方向に流れる流体は、この入口ポート2から弁室Aの上流側流体室9へと流入する。また、入口ポート2にはフィルター19が配置されており、流体中に含まれる塵などのゴミが上流側流体室9に流入するのを防止している。
【0036】
弁ポート8は、下バルブボディ12の中央部に形成された導入流路4の下流端に位置しており、後述する弁体28によって、開放または閉止されるように構成されている。また、弁ポート8の流路断面は、導入流路4の流路断面よりも小さい断面形状に形成されており、入口ポート2から弁室A内に流入して導入流路4を通過した流体は、この弁ポート8を通過する際に、おおむね大気圧程度にまで減圧されて、弁室Aの下流側流体室11に流出されるようになっている。
【0037】
出口ポート6は、弁ハウジング3に形成されている出口側流路7と接続している。弁ポート8から弁室Aの下流側に流出した流体は、この出口ポート6から弁室Aの外部へと流出する。また、出口ポート6にはフィルター19が配置されており、出口側流路7から下流側流体室11に塵などが流入するのを防止している。
【0038】
また図1に示したように、下バルブボディ12の上方には、固定金具13を介して、上バルブボディ14が螺合されている。そして、上バルブボディ14の上方には、プランジャ20を軸方向に往復動自在に収容したプランジャチューブ22が設置されており、この上バルブボディ14およびプランジャチューブ22によって、駆動体収容室Bが形成されている。また、固定金具13と下バルブボディ12との間には、感圧部材(ダイアフラム10)が介装されており、このダイアフラム10によって、上述した弁室Aと駆動体収容室Bとが画成されている。
【0039】
また、プランジャチューブ22の上部開口端には吸引子23が固定されるとともに、プランジャチューブ22および吸引子23の外周には、外函31に挟持された筒状のモールドコイル24が外装されている。また、吸引子23の下方にはプランジャバネ21が連結されており、このプランジャバネ21を介してプランジャ20と吸引子23とが接続されている。
【0040】
プランジャバネ21は、プランジャ20を軸方向下向きに付勢した状態で、プランジャ20および吸引子23と連結されており、これによりプランジャ20は非通電時には下方側に付勢されて移動した状態にある。一方、不図示の外部電源からモールドコイル24に通電がなされると、上述した吸引子23が励磁されてプランジャ20を吸引し、これによりプランジャ20はプランジャバネ21の下向きの付勢力に抗して上方側へと移動する。
【0041】
また、プランジャ20の下方には連結棒26が固定されており、この連結棒26の下端には弁体28が設けられている。よって弁体28は、非通電時において、プランジャ20を介して上述したプランジャバネ21により軸方向下向きに付勢されている。したがって、弁体28は、非通電時には下方側に移動した位置にあり、上述したダイアフラム10を介して弁室Aの弁ポート8を閉止している。図1に示した状態では、モールドコイル24が非通電の状態にあり、弁体28がダイアフラム10を介して弁ポート8を閉止している。なお、連結棒26には、その中央部を軸方向に貫通し、プランジャ20の上方と下方とを連通する均圧孔26aが設けられている。
【0042】
また、モールドコイル24に通電がなされてプランジャ20が上方側へ移動すると、弁体28もこのプランジャ20の動きに合わせて上方側へと移動する。また、弁体28の先端部外周面には周状の凹部が形成されており、この凹部にはダイアフラム10の凸部が嵌挿されている。このため、弁体28の上下動に合わせてダイアフラム10も上下方向に作動するようになっている。
【0043】
また、下バルブボディ12および固定金具13には、弁室Aの下流側流体室11と駆動体収容室Bの空間29とを連通する連通部(均圧流路16)が穿孔されている。また、均圧流路16の駆動体収容室B側の開口端部には、防水透湿部材18が設置されている。
【0044】
本発明の防水透湿部材18は、水滴は遮断するが水蒸気は透過するとの防水透湿性を備えた部材から構成されている。このような防水透湿性を備えた部材としては、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの撥水性樹脂を延伸加工して作成したフィルムに、水滴の5,000〜20,000分の1程度(約0.2μm)の大きさの微細な孔を多数形成することで構成された撥水性多孔質膜などが挙げられる。この撥水性多孔質膜は、孔径が水滴よりも遥かに小さいため水滴は遮断するが、孔径が水蒸気分子よりは大きいため、水蒸気は透過する。このような撥水性多孔質膜としては、例えばWLゴア&アソシエイツ社のゴアテックス(登録商標)や大成プラス株式会社のミクロベント(登録商標)などが挙げられる。
【0045】
また、上述した吸引子23には、その中央部を軸方向に貫通する掃気流路32が形成されるとともに、吸引子23の上部には、ナット33によって掃気ガス流入路30が接続固定され、前述した掃気流路32と連通している。そして、掃気ガス流入路30を流れる掃気ガスgが、掃気流路32を流れ、駆動体収容室Bへと流入するように構成されている。すなわち、上述した掃気流路32と掃気ガス流入路30によって、駆動体収容室Bに掃気ガスgを導入する掃気ガス導入路35が構成されている。
【0046】
そして、この掃気ガス導入路35から流入した掃気ガスgは、吸引子23とプランジャ20との間に形成されている空間27、およびプランジャチューブ22とプランジャ20との間の空間25ならびに連結棒26に設けられた均圧孔26aを介して、プランジャ20の下方に形成されている空間29へと流入するようになっている。
【0047】
また、上述した掃気ガス流入路30の途中には、掃気ガス流入路30を流れる掃気ガスgを減圧する減圧手段34が形成されている。減圧手段34は、掃気ガス流入路30を流れる掃気ガスgを減圧できるように構成されていればよく、その構成、材質等は特に限定されないが、例えば、板部材に流体が通過する小さな孔が設けられたオリフィス板や、網状のメッシュが形成されたフィルター部材などが挙げられる。また、上述した撥水性多孔質膜を減圧手段34として適用することも可能である。なお、この減圧手段34は、掃気ガス流入路30ではなく、掃気流路32に形成されていてもよいものである。
<燃料電池システム50>
次に、本発明の制御弁1が適用される燃料電池システム50について、図2を基に説明する。図2は、本発明の制御弁1が適用される燃料電池システム50の概略システム図である。
【0048】
図2に示したように、燃料電池システム50は、固体高分子型燃料電池本体である燃料電池スタック60を備えており、この燃料電池スタック60には、燃料ガス供給源である水素タンク52から水素ガスが供給されるアノード(水素極)62と、酸化剤ガスである空気がコンプレッサー54を介して供給されるカソード(空気極)64とが備えられている。
【0049】
燃料ガスである水素ガスは、高圧水素ガスとして水素タンク52に貯留されており、水素タンク52から供給される高圧水素ガスは、水素圧力調整弁56によって、燃料電池システムの運転圧力にまで減圧され、水素供給流路58を介してアノード62へと供給される。また、アノード62で消費されなかった水素ガスは、水素循環ポンプ66、水素循環流路72を介して水素供給流路58に還流されるようになっている。
【0050】
一方、酸化剤ガスとしての空気は、図示しないエアフィルタを介してコンプレッサー54により圧縮され、空気供給流路68を介してカソード64へと供給される。そして、カソード64で空気中の酸素が反応に供せられ、残りの空気が空気圧を調整する空気圧調整弁70を介して、システム外部に排出されるようになっている。
【0051】
また、水素循環流路72からは水素ガス排出路74A、74Bが分岐している。そして、余剰の水素ガスの内、水滴などを多く含んだ気液体は、水素ガス排出路74Aからシステム外部へと排出され、比較的水分の少ない水素ガスは、水素ガス排出路74Bからシステム外部へと排出されるようになっている。なお、本明細書では、これら水素ガス排出路74Aおよび水素ガス排出路74Bをまとめて、燃料電池システム50の「湿潤流体流路」と称することがある。また、上述した水滴などを多く含んだ気液体、および比較的水分の少ない水素ガスのことを、まとめて「湿潤流体」と称することがある。
【0052】
また、水素ガス排出路74Aおよび74Bには、流路を開閉する制御弁として、水捨弁76およびパージ弁78が配置される。そして、これら水捨弁76およびパージ弁78は、上述した本発明の制御弁1により構成されている。
【0053】
また、空気供給流路68からは掃気ガス流入路30が分岐している。そして、その下流端が制御弁1(水捨弁76およびパージ弁78)の吸引子23の上部に接続固定されており、これにより、コンプレッサー54から供給される空気(掃気ガスg)が、制御弁1(水捨弁76およびパージ弁78)の駆動体収容室Bに導入されるようになっている。また、掃気ガス流入路30の途中には遮断弁82が配置されており、この遮断弁82を開閉することで、制御弁1(水捨弁76およびパージ弁78)への空気(掃気ガスg)の導入を制御できるようになっている。また、掃気ガス流入路30には、上述した減圧手段34が配置されている。
<作用>
次に、上述のように形成されている本発明の制御弁1の作用について、図3を基に説明する。図3は、本発明の制御弁の一部を拡大して示した断面図である。なお、この図3に示した状態は、モールドコイル24が通電された状態にあり、プランジャ20およびこれと連結棒26を介して連結されている弁体28が軸方向上方に移動して、弁ポート8が開放されている。
【0054】
上述した燃料電池システム50の湿潤流体流路から、制御弁1の入口ポート2を介して弁室Aの上流側流体室9に流入した湿潤流体fは、図3に示したように、導入流路4を通過し、弁ポート8を通過する際に大気圧程度(約100kPa)に減圧されて下流側流体室11へと流出し、出口ポート6を介して弁室Aの外部へと放出される。
【0055】
モールドコイル24の放熱などによって駆動体収容室Bの温度が上昇した場合は、駆動体収容室Bの内部にある空気の体積が膨張し、膨張した体積分の空気が均圧流路16を通って、弁室Aの下流側流体室11へと流出する。
【0056】
一方、駆動体収容室Bの温度が低下した場合は、駆動体収容室Bの内部にある空気の体積が収縮し、収縮した体積分の湿潤流体fが均圧流路16を通って、駆動体収容室Bの空間29へと流入する。この際、均圧流路16の駆動体収容室B側の開口端部には、防水透湿部材18が設置されているため、湿潤流体fに含まれている水滴などは、防水透湿部材18で除去され、湿潤流体fの水蒸気分だけが、防水透湿部材18を通過して空間29に流入する。
【0057】
このように、本発明の制御弁1では、弁室Aと駆動体収容室Bとが連通されているため、駆動体収容室Bの温度変化などによって気圧の変化が生じた場合でも、弁室Aと駆動体収容室Bとの間は常に均圧された状態にある。したがって、駆動体収容室Bの温度変化によってダイアフラム10が変位することはなく、弁室Aにおける湿潤流体fの制御に影響を及ぼすこともない。
【0058】
また、弁室Aと駆動体収容室Bとが防水透湿部材18を介して連通されているため、弁室Aから駆動体収容室Bに湿潤流体fが流入する場合であっても、湿潤流体fに含まれる水滴などは防水透湿部材18で除去され、駆動体収容室Bに水滴などが浸入することもない。
【0059】
また上述したように、燃料電池システム50の遮断弁82を開放することで、掃気ガス流入路30および掃気流路32(掃気ガス導入路35)を介して、駆動体収容室Bに空気(掃気ガスg)を導入することができる。駆動体収容室Bに導入された掃気ガスgは、空間27、空間25ならびに均圧孔26aを介して、プランジャ20の下方に形成される空間29へと流入し、防水透湿部材18を介して弁室Aの下流側流体室11へと流出する。このとき、駆動体収容室Bに導入された掃気ガスgと一緒に、駆動体収容室Bに滞留している水蒸気も下流側流体室11へと流出するため、駆動体収容室Bの水蒸気が掃気される。
【0060】
また、遮断弁82を継続して開放状態とし、掃気ガス導入路35から駆動体収容室Bに連続して掃気ガスgを導入すれば、弁室Aから駆動体収容室Bに水蒸気が流入すること自体を防止することもできる。
【0061】
このように、本発明の制御弁1では、プランジャ20が収容されている駆動体収容室Bに水滴などが浸入することがなく、さらに浸入した水蒸気についても、駆動体収容室Bに掃気ガスgを導入することによって掃気することができる。また、駆動体収容室Bに連続して掃気ガスgを導入することで、駆動体収容室Bに水蒸気が流入すること自体を防止することもできる。よって、プランジャ20に付着した水滴が凍結して、プランジャ20が作動不能になることを防止することができる。
【0062】
また、下流側流体室11に流出した掃気ガスgは、出口ポート6を介して、出口側流路7から排出されるが、この際、出口ポート6に配置されているフィルター19に付着している水滴や、出口側流路7の内面に付着している水滴なども併せて除去することができる。よって、これら水滴が凍結して出口ポート6の断面が閉塞することや、燃料電池システム50の停止後にこれら水滴が気化して、水蒸気が駆動体収容室Bに流れ込んだりすることを防止することもできる。
【0063】
また本発明の制御弁1では、上述した特許文献2の排出弁とは異なり、駆動体収容室Bに掃気ガスgを導入する掃気ガス導入路35が、湿潤流体fを弁室Aに導入する流路(入口側流路5)とは別の流路として形成されているため、燃料電池システム50が作動している状態でも、駆動体収容室Bに掃気ガスgを導入することができる。また、本実施形態では、掃気ガス流入路30に遮断弁82が配置されているため、この遮断弁82を開閉制御することによって、適宜、制御弁1への空気(掃気ガスg)の導入を制御することができる。したがって、例えば自動車の運転中などにも、適宜、駆動体収容室Bに掃気ガスgを導入することができるため、従来の特許文献2のように、自動車の運転を停止した後に、一定時間システムを駆動させて掃気ガスgを導入しなくとも、自動車運転中に掃気を同時に行うことが可能である。
【0064】
また本発明の制御弁1では、掃気ガス流入路30に、掃気ガス流入路30を流れる掃気ガスgを減圧する減圧手段34が形成されており、この減圧手段34によって、掃気ガス流入路30を流れる掃気ガスgの圧力が大気圧程度(約100kPa)に減圧されるようになっている。このため、掃気ガスgを駆動体収容室Bに導入した場合でも、弁室Aと駆動体収容室Bとの間に圧力差は生じないため、圧力差によってダイアフラム10が変位してプランジャ20の作動性に影響を与えることや、弁室Aの湿潤流体fの制御に影響を与えることもない。
【0065】
また万一、ダイアフラム10が破損し、弁室Aから多量の水素ガスを含む湿潤流体fが駆動体収容室Bに流れ込んだ場合でも、掃気ガス流入路30に減圧手段34が形成されていれば、水素ガスが掃気ガス流入路30を逆流して、燃料電池システム50の酸素系流路に混入することを防止することができる。また、上述した遮断弁82が掃気ガス流入路30に配置されていれば、この遮断弁82を閉止することによって、逆流した水素ガスが酸素系流路に混入することを確実に防止することができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態の制御弁1について、図4、図5を基に説明する。
【0066】
本実施形態の制御弁1は、上述した第1の実施形態の制御弁1と基本的には同様の構成であり、同一の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0067】
本実施形態の制御弁1は、上述した実施形態とは異なり、掃気ガス流入路30が吸引子23の上部ではなく、弁ハウジング3の側面に形成されている掃気ガス流入ポート30aと接続固定されている。また、掃気流路32は吸引子23には形成されておらず、下バルブボディ12と固定金具13との間に形成されている。
【0068】
また、本実施形態では、上述した実施形態とは異なり、均圧流路16が、下バルブボディ12に穿孔された第1の均圧流路16aと、固定金具13に穿孔された第2の均圧流路16bとに区分されている。そして、上述した掃気流路32が、この第1の均圧流路16aと、第2の均圧流路16bとの間に接続されている。また、防水透湿部材18は、第2の均圧流路16bの弁室A側に配置されている。
【0069】
すなわち、本実施形態では、掃気ガス流入路30、掃気ガス流入ポート30a、および掃気流路32によって、制御弁1に掃気ガスgを導入する掃気ガス導入路35が構成されている。そして、この掃気ガス導入路35は、弁室Aと駆動体収容室Bとを連通する連通部に接続されている。なお、本明細書において連通部とは、弁室Aと駆動体収容室Bとを連通する部分を指すものとし、本実施形態における連通部は、第1の均圧流路16aおよび第2の均圧流路16bとから構成されている。
【0070】
このように構成される本実施形態の制御弁1では、上述した実施形態と同様に、燃料電池システム50の湿潤流体流路から、制御弁1の入口ポート2を介して弁室Aの上流側流体室9に流入した湿潤流体fが、図5に示したように、導入流路4および弁ポート8を通過して下流側流体室11へと流出し、出口ポート6を介して弁室Aの外部へと放出される。そしてこの際、弁室Aと駆動体収容室Bとが、防水透湿部材18を介して連通されているため、駆動体収容室Bに水滴などが浸入することを防止できるとともに、弁室Aと駆動体収容室Bとの間を均圧化することができる。
【0071】
また、弁室Aと駆動体収容室Bとを連通する連通部に掃気ガス導入路35が接続されているため、掃気ガス導入路35から連通部に掃気ガスgを導入することで、水蒸気が弁室Aから駆動体収容室Bに浸入するのを防止することができる。
【0072】
なお、本実施形態の制御弁1では、上述した実施形態とは異なり、駆動体収容室Bに掃気ガス導入路35が直接接続されていないため、駆動体収容室Bに水蒸気が流入してしまうと、これを掃気するのが難しい。よって、本実施形態の制御弁1では、弁室Aに湿潤流体fが流れている間は、遮断弁82を開放状態にして連通部に掃気ガスgを連続して導入し、駆動体収容室Bに水蒸気が浸入しないように制御されるのが好ましい。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態の制御弁1について、図6を基に説明する。
【0073】
本実施形態の制御弁1は、上述した第1の実施形態の制御弁1と基本的には同様の構成であり、同一の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0074】
本実施形態の制御弁1は、上述した第1の実施形態とは異なり、下バルブボディ12および固定金具13に、弁室Aと駆動体収容室Bとを連通する均圧流路16が形成されていない。代わりに、ダイアフラム10の一部が防水透湿部材18によって形成されており、このダイアフラム10の防水透湿部材18を介して、弁室Aと駆動体収容室Bとが連通されている。
【0075】
このように構成される本実施形態の制御弁1では、上述した実施形態と同様に、燃料電池システム50の湿潤流体流路から、制御弁1の入口ポート2を介して弁室Aの上流側流体室9に流入した湿潤流体fが、図6に示したように、導入流路4および弁ポート8を通過して下流側流体室11へと流出し、出口ポート6を介して弁室Aの外部へと放出される。そしてこの際、弁室Aと駆動体収容室Bとが、ダイアフラム10の防水透湿部材18によって連通されているため、駆動体収容室Bに水滴などが浸入することを防止できるとともに、弁室Aと駆動体収容室Bとの間を均圧化することができる。
【0076】
また、上述した第1の実施形態と同様に、駆動体収容室Bに浸入した水蒸気についても、駆動体収容室Bに掃気ガスgを導入することによって掃気することができるため、プランジャ20に付着した水滴が凍結して、プランジャ20が作動不能になることを防止することができる。また、上述した第1の実施形態と同様に、遮断弁82を継続して開放状態とし、掃気ガス導入路35から駆動体収容室Bに連続して掃気ガスgを導入すれば、弁室Aから駆動体収容室Bに水蒸気が流入すること自体を防止することもできる。
【0077】
このような本実施形態の制御弁1では、上述した第1,第2の実施形態のように、バルブボディなどを穿孔して均圧流路16を形成する必要がないため、製造が容易である。なお、ダイアフラム10の全部を防水透湿部材18によって形成することも可能である。
【0078】
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【0079】
例えば、上述した実施形態における弁室A内の流体の流れ方向は一例に過ぎず、弁室A内の流体の流れは、上記説明とは逆方向であってもよいものである。
【0080】
また上述した実施形態における掃気ガス導入路35が接続される位置は一例に過ぎず、制御弁1の構造等に応じて種々の変更が可能なことは勿論である。
【0081】
また上述した実施形態では、制御弁1が電磁式の制御弁である場合を例に説明したが、本発明の制御弁1はこれに限定されず、例えば、電動式の制御弁や手動式の制御弁であってもよいものである。
【0082】
また上述の説明では、本発明の制御弁1を燃料電池システム50において、余剰の水素ガスを外部へと排出する水素ガス排出路74A、74Bに配置する場合を例にしたが、本発明の制御弁1の用途はこれに限定されない。本発明の制御弁1は、水または水分を含んだ流体の流れを制御する制御弁として好適に用いられ、例えば給湯器等の水用制御弁にも好適に用いることができるものである。
【符号の説明】
【0083】
1 制御弁
2 入口ポート
3 弁ハウジング
4 導入流路
5 入口側流路
6 出口ポート
7 出口側流路
8 弁ポート
9 上流側流体室
10 ダイアフラム(感圧部材)
11 下流側流体室
12 下バルブボディ
13 固定金具
14 上バルブボディ
16,16a,16b 均圧流路(連通部)
18 防水透湿部材
19 フィルター
20 プランジャ(駆動体)
21 プランジャバネ
22 プランジャチューブ
23 吸引子
24 モールドコイル
26 連結棒
26a 均圧孔
28 弁体
25,27,29 空間
30 掃気ガス流入路
30a 掃気ガス流入ポート
31 外函
32 掃気流路
33 ナット
34 減圧手段
35 掃気ガス導入路
50 燃料電池システム
52 水素タンク
54 コンプレッサー
56 水素圧力調整弁
58 水素供給流路
60 燃料電池スタック
62 アノード(水素極)
64 カソード(空気極)
66 水素循環ポンプ
68 空気供給流路
70 空気圧調整弁
72 水素循環流路
74A 水素ガス排出路
74B 水素ガス排出路
76 水捨弁
78 パージ弁
82 遮断弁
A 弁室
B 駆動体収容室
f 湿潤流体
g 掃気ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する入口ポートと、該入口ポートから流入した流体が通過する弁ポートと、該弁ポートを通過した流体が流出する出口ポートと、を有する弁室と、
前記弁室と感圧部材によって画成されるとともに、弁体を移動させる駆動体が収容されている駆動体収容室と、を備え、
前記駆動体によって前記弁体が移動し、該弁体が前記弁ポートを開放または閉止するように構成された制御弁であって、
前記弁室と前記駆動体収容室とは、防水透湿部材を介して連通されるとともに、
前記駆動体収容室には、前記駆動体収容室に掃気ガスを導入する掃気ガス導入路が接続されていることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
流体が流入する入口ポートと、該入口ポートから流入した流体が通過する弁ポートと、該弁ポートを通過した流体が流出する出口ポートと、を有する弁室と、
前記弁室と感圧部材によって画成されるとともに、弁体を移動させる駆動体が収容されている駆動体収容室と、を備え、
前記駆動体によって前記弁体が移動し、該弁体が前記弁ポートを開放または閉止するように構成された制御弁であって、
前記弁室と前記駆動体収容室とは、防水透湿部材を介して連通されるとともに、
前記弁室と前記駆動体収容室との連通部には、掃気ガスを導入する掃気ガス導入路が接続されていることを特徴とする制御弁。
【請求項3】
前記感圧部材の少なくとも一部または全部が防水透湿部材により形成されており、該感圧部材の防水透湿部材を介して、前記弁室と前記駆動体収容室とが連通されていることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項4】
前記掃気ガス導入路には、掃気ガス導入路を流れる掃気ガスを減圧する減圧手段が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の制御弁。
【請求項5】
前記制御弁が、燃料電池システムに用いられる制御弁であって、
水素ガスを燃料電池システムの外部へ排出する水素ガス排出路に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の制御弁。
【請求項6】
前記掃気ガス導入路が、燃料電池システムの燃料電池スタックに空気を供給する空気供給流路と接続されていることを特徴とする請求項5に記載の制御弁。
【請求項7】
前記掃気ガス導入路には、該掃気ガス導入路を遮断可能に構成された遮断弁が配置されていることを特徴とする請求項6に記載の制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−2529(P2013−2529A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133335(P2011−133335)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】