説明

制御放出組成物

本発明は薬理学の分野に関する。より詳細には、本発明は制御放出組成物に関する。本発明は、架橋したゼラチンおよび少なくとも1種類の療法用タンパク質を含む制御放出組成物であって、ゼラチンマトリックスの平均メッシュサイズ(ξ)と療法用タンパク質の平均流体力学的半径(RH)の比が2より小さく、好ましくは1.5より小さい制御放出組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬理学の分野に関する。より詳細には、本発明は制御放出組成物、その制御放出組成物を含む医薬組成物、その制御放出組成物を含む医療用品、およびその制御放出組成物を調製するための方法、ならびにその制御放出組成物を調製するための組換えゼラチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非経口投与した療法用タンパク質の薬理活性濃度の長期間にわたる維持は、タンパク質の構造を変更してそれらの循環時間を延長することにより、また制御放出配合物の使用により達成できる。あるタンパク質、たとえば組織プラスミノーゲンアクチベーター、エリスロポエチン、およびインターフェロンについては、タンパク質の天然構造の変更が効果的な方法であった。しかし、多くの場合、徐放性配合物の開発がより実行可能な方法である。現在、徐放性配合物はしばしばタンパク質をポリマーマトリックスに封入することにより調製され、これから数日、数週または数カ月以内に、拡散またはマトリックスの分解により放出される。封入されたタンパク質の天然構造および機能の保存が、徐放性配合物の開発に際しての主要な問題点である。さらに、配合物は良好に耐容されるべきであり、また非経口投与に関しては空のマトリックスの外科的摘出を避けるためにそれらの全体が生分解性であることがしばしば好ましい。
【0003】
ヒドロゲルは療法用タンパク質の制御放出にとって魅力的な特定のタイプのマトリックス系である。それらは親水性ポリマーの物理的または化学的な架橋により形成され、大量の水を含有する。埋込み可能または注射可能なインサイチューゲル化系としてのヒドロゲルを開発することができる。ヒドロゲルの親水性は取り込まれたタンパク質の天然構造および機能を保存するために好ましいことが示された。ヒドロゲルの高い含水率および軟質コンシステンシーは、投与に際しての機械的刺激を最小限に抑える。さらに、ヒドロゲルはインビボで良好に耐容され、生体適合性であることが示された。ポリマーのタイプおよび架橋のタイプによっては、それらは生分解性でもある。
【0004】
ヒドロゲル製造用のポリマーは、一般に天然由来のものまたは合成によるものとして分類される。天然由来のポリマー、たとえばデキストランおよびゼラチンがタンパク質送達のためのヒドロゲルの開発に用いられている;これらのポリマーは生体適合性かつ生分解性だからである。しかし、特定の要求に対する天然由来のポリマーの適応はポリマー主鎖中の官能基の化学的誘導体化に限定される。これに対し、合成ポリマーの主鎖は自由に定めることができ、このためこれらの分子の物理化学的および生物学的特性をより大幅に制御できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在用いられているゼラチンベースの制御放出組成物の主な問題のひとつは、内包された医薬の放出に先立って一般に初期にその医薬が急激に放出されることである。
本発明の目的は、内包された医薬のこの初期の急激な放出を少なくとも部分的に低下させ、ただし好ましくは完全に除くことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、架橋ゼラチンおよび少なくとも1種類の療法用タンパク質を含む制御放出組成物であって、ゼラチンマトリックスの平均メッシュサイズ(ξ)と療法用タンパク質の平均流体力学的半径(R)の比が2より小さく、好ましくは1.5より小さい制御放出組成物を提供することにより、制御放出組成物に内包された医薬の初期の急激な放出に対する解決策を提供する。
【0007】
架橋したゼラチンを製造する架橋方法は本質的に化学架橋である。本明細書中で用いる化学架橋という用語は、架橋が架橋剤の添加により、または架橋性の基によるゼラチンの修飾により達成されるという事実を表わす。本明細書中で用いる架橋という用語はヒドロキシル化ゼラチン中のリジン残基間の架橋を表わすのではないことを特に明記しなければならない。それから天然ゼラチンが得られる天然コラーゲン(たとえば骨または皮に由来する)においては、一定量のプロリンおよびリジン残基がヒドロキシラーゼによりヒドロキシル化されている。個々のコラーゲン分子内および分子間に存在する生成したヒドロキシル化リジル残基がインビボで生合成により架橋し、これによってコラーゲンが架橋して線維状構造体になる可能性がある。得られる天然ゼラチンはコラーゲンの線維状構造を失っているが、生合成架橋の一部は残るであろう。このタイプの架橋は制御できないので望ましくない。さらに、このタイプの架橋は天然ゼラチンに本来、すなわちそれが生成した瞬間から、種々の程度で存在する。本発明において、架橋はゼラチンを医薬有効成分と混合した時点で初めて生じるべきである。したがって、架橋のレベルと同様にその開始も制御できることが望ましい。したがって、本発明の観点に使用するゼラチンは好ましくは組換えゼラチンであり、より好ましくはリジン残基のヒドロキシル化および生合成架橋のための生合成酵素を欠如した発現系において産生され、したがって本質的にヒドロキシリジン架橋を含まない(本質的にヒドロキシリジン架橋が無い)。本発明の観点に用いられるゼラチンは本質的にヒドロキシプロリン残基も含まない。
【0008】
本発明はさらに、本発明の制御放出組成物を使用した医薬組成物および医療用品に関する。本発明はさらに、本発明の制御放出組成物を調製するための方法、および有効量の本発明の制御放出組成物で対象を処置する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】HU4ゼラチンのアミノ酸配列を示す。
【図2】CBEのアミノ酸配列を示す。
【図3】CBE5のアミノ酸配列を示す。
【図4】P4のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1態様において本発明は、架橋ゼラチンおよび少なくとも1種類の療法用タンパク質を含む制御放出組成物であって、ゼラチンマトリックスの平均メッシュサイズ(ξ)と療法用タンパク質の平均流体力学的半径(R)の比が2より小さく、好ましくは1.5より小さい制御放出組成物を提供する。
【0011】
制御放出組成物(または系)またはヒドロゲル(これらの用語は本明細書中で互換性をもって用いられる)は一般に、実質的な量の水を含むポリマー鎖の三次元網状構造体を表わす。用途に応じて、すなわち含有される医薬の目的とする放出プロフィールに応じて、およびヒドロゲルが受ける機械的応力に応じて、幾つかのタイプのヒドロゲルを使用できる。たとえば、40%〜60%の水を含有するきわめて剛性かつ非弾性であるヒドロゲル、60%〜85%の水を含有する弾性であるけれどもなお剛性であるヒドロゲル、および85%〜99%の水を含有する軟質かつきわめて弾性であるヒドロゲル。ヒドロゲルは天然または合成ポリマーから製造できる。ヒドロゲル形成ポリマーは、実質的な量の水を吸収して弾性または非弾性のゲルを形成しうるポリマーである。合成ポリマーの例は、ポリエチレンオキシド、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ナトリウムポリアクリレート、アクリレートポリマー、および多量の親水基をもつコポリマーである。天然ポリマーおよびそれらの誘導体の例は、多糖類、たとえばデキストリン、デキストラン、キチン、キトサン、カラゲナンおよび寒天、セルロースおよびその誘導体、アルギネート、天然ガム、たとえばキサンタンガム、ローカストビーンガム、ならびにコラーゲンおよびその誘導体、たとえばゼラチンである。
【0012】
前記の制御放出組成物を調製する方法に際して、少なくとも1種類の療法用タンパク質が架橋プロセスの前または途中に存在し、したがって化学架橋したゼラチンにより形成された三次元網状構造体に内包されるであろう。本発明の薬物送達デバイスに取り込ませることができるタンパク質の例には、下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ヘモグロビン、バソプレッシン、オキシトシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮増殖因子、プロラクチン、ルリベリンまたは黄体形成ホルモン放出因子、ヒト成長因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、血管形成増殖因子、血管内皮増殖因子、骨形態形成増殖因子、神経増殖因子など;インターロイキン、酵素、たとえばアデノシンデアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、キサンチンオキシダーゼなど;酵素系;血液凝固因子;凝血阻害物質または凝血溶解物質、たとえばストレプトキナーゼおよび組織プラスミノーゲンアクチベーター;免疫化のための抗原;ホルモン。
【0013】
本発明の制御放出組成物中に用いるゼラチンは広範なゼラチンから選択でき、組換え法により製造される。本発明の観点に用いるゼラチンは、好ましくは本質的に完全に、約2.5kDを超える分子量をもつゼラチン分子からなる。
【0014】
原則としてあらゆるゼラチンを、使用する療法用タンパク質に適合するように修飾することができる;たとえば特定の電荷を組換えゼラチンに導入することにより、使用する療法用タンパク質の制御放出組成物に対する結合を強化する。第四級アンモニウム基をもつ修飾ゼラチンの例は、Croda Colloids Ltd.が製造する“Croquat(商標)”ゼラチンである。修飾ゼラチンの出発点として使用できるゼラチンには、石灰処理(lime-processed)または酸処理したものであっても、いかなる既知のゼラチンも含めることができ、たとえば石灰処理(lime treated)したブタ、ウシもしくは魚類の骨もしくは皮のゼラチン、組換えゼラチン、またはその組合わせの群から選択できる。したがって、あらゆる療法用タンパク質について、適切な環境を作り出すことができる。組換えゼラチンをベースとする制御放出組成物を医薬としての療法用タンパク質と一緒に使用することは、本発明の好ましい態様である。組換えゼラチンは幾つかの理由でタンパク質送達系の開発のためのポリマーとして特に魅力的である。バイオテクノロジーによる製造では、動物源ゼラチン中に存在する可能性のあるプリオンの混入のリスクが除外される。組換えゼラチンは、発現するゼラチン遺伝子により決定される良好に規定された分子量をもつ。さらに、組換えDNA技術はゼラチンのアミノ酸配列を操作する可能性を開く。これは、架橋に関与するアミノ酸の数および位置を規定するために、または前記に述べたプロテアーゼの基質(開裂部位)であるアミノ酸配列の導入によりゼラチンの生分解性を操作するために有用な可能性がある。
【0015】
大部分の医薬にとって、低速で徐々に放出され、その放出は数日から数週間またはさらに数カ月にすら及ぶ期間、好ましくは多少とも一定の速度であることが好ましい。現在用いられているゼラチンベースの制御放出組成物の主な問題のひとつは、内包された医薬の放出に先立って一般に初期にその医薬が急激に放出されることである。この現象は2つのパラメーターによって大幅に支配される。ひとつは医薬を制御放出マトリックスに取り込ませる方法である。先行技術における方法は、架橋により制御放出マトリックスをます樹立すると記載している。架橋後に医薬を添加し、制御放出マトリックス内へ拡散させる。さらに他の処理(たとえば制御放出マトリックスの液体含量を変更する)により、大部分の医薬をマトリックスに閉じ込めることができる。しかし、調製に際してその医薬の一部は閉じ込められないであろう。さらに、制御放出組成物の使用中に液体含量が変化し、さらに多量の閉じ込められた医薬が遊離する可能性がある。したがって、その医薬の一部はその周囲に急速に拡散することができ、急激な放出をもたらすであろう。しかし、本発明の制御放出組成物の調製方法は医薬の存在下でマトリックスを架橋させ、これにより架橋に際して正真正銘の閉込めが起き、不都合な急激放出が少なくなる。制御放出マトリックスの放出特性を支配するもうひとつのパラメーターはマトリックスのメッシュサイズである。ゼラチンマトリックスの平均メッシュサイズ(ξ)は、生理的条件(pH7.4、37℃および300mOsm/L)における絡まった/架橋したゼラチン網状構造体の平均“細孔サイズ”である。放出が拡散制御によるものであれば、放出速度は比較的速やかであり、通常は数時間の時間スケールである。低速での放出を希望する場合、ヒドロゲルのマトリックスは好ましくは医薬成分に対して、より拘束的でなければならない。最も好ましいのは、放出が主にマトリックスの分解によって支配される状態である。
【0016】
本明細書中で用いる用語“閉じ込める(entrap)”または“閉じ込められた(entrapped)”は、個々に架橋したゼラチン分子により(規定された空間内に)医薬が捕獲された状態に保持されるという事実を表わす。この用語は、用語“封入された(encapsulated)”とは異なる;この場合は、封入材料により囲まれた(surrounded)、内包された(enclosed)、または覆われた(enveloped)位置に医薬が収容されている。
【0017】
本発明の制御放出組成物から医薬が放出される速度(すなわち放出速度)は、制御放出組成物を水溶液中に入れた場合に(たとえば実施例の記載に従って)、制御放出組成物中に閉じ込められた医薬のうち好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満、よりさらに好ましくは30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%または1%未満の画分が24時間の期間で放出されるものである。そのような遅い放出速度は、拡散により支配された放出ではなく分解により支配された放出の指標である。
【0018】
タンパク質などの医薬がマトリックスから放出される際、拡散として知られる現象が重要な役割を果たす。医薬の単分子、ポリマー、複合体、凝集体または他のいかなる形状であってもよい粒子について、拡散定数からストークス−アインシュタイン(Stokes−Einstein)方程式により流体力学的半径を計算することができる;その際、厳密な定義による半径は、考慮している粒子と同一速度で拡散する仮想硬質球体の半径である。この半径は、本発明においては医薬である動的な水和/溶媒和粒子の見掛けサイズの指標であるという方が適正である。
【0019】
流体力学的半径の測定に適切な方法は、動的光散乱(DLS)である。たとえばリゾチームなどのタンパク質については1.90nmの数値が測定された。本発明において流体力学的半径は、好ましくは生理的条件で測定される。
【0020】
好ましい態様において本発明は、架橋ゼラチンおよび少なくとも1種類の療法用タンパク質を含む制御放出組成物であって、ゼラチンマトリックスの平均メッシュサイズ(ξ)と療法用タンパク質の平均流体力学的半径(R)の比が2より小さく、好ましくは1.5より小さく、最も好ましくは1より小さい制御放出組成物を提供する。
【0021】
したがって、好ましいメッシュサイズは療法用タンパク質の流体力学的半径に依存する。理論により拘束されるわけではないが、2より小さい平均メッシュサイズと平均流体力学的半径の比については拡散の影響が次第に少なくなり、1より小さい比については生分解が放出の主な機序になると予想されると本発明者らは考える。高い架橋密度に対応するきわめて小さいメッシュサイズが徐放を達成するために要求されるわけではないが、他方で、療法用タンパク質がヒドロゲル構造体に架橋反応と同時に取り込まれると仮定して、機能上の欠点を形成しない可能性は最も高いと考えられる。平均メッシュサイズと平均流体力学的半径の比について、機能上の下限はない。実際上、得ることができるメッシュサイズはゼラチン分子内の架橋性位置の数により制限され、測定条件にも依存する。好ましくは、関連パラメーターは生理的条件で測定される。
【0022】
平均メッシュサイズはマトリックスの弾性により判定され、これはたとえば動的機械的分析(DMA)により測定できる。平衡膨潤状態のヒドロゲルの動的機械的分析(DMA)は、たとえばヒドロゲルから水が蒸発するのを防ぐための液体充填試料ホルダーを備えた37℃で作動するDMA 2980動的機械的分析計(TA Instruments、デラウェア州ニューキャッスル)で実施される。
【0023】
理論により拘束されるわけではないが、普通の一般的に単離されるゼラチンには常にある画分の低分子量ペプチド(より具体的には2.5kD未満)が存在すると考えられる。これらのペプチドの架橋を制御してゼラチンマトリックスにするのはきわめて困難である。その結果、天然由来のゼラチンのヒドロゲルはゼラチン網状構造内の空間に関して均一性をもたない。一部は密に架橋しているのに対し、高濃度のペプチドを含む他の部分は架橋がより少ないであろう。これらの網状構造体には荒く架橋した領域が存在し、その領域についてはヒドロゲルのメッシュサイズ(ξ)はゲル内に収容された療法用タンパク質の流体力学的半径(R)より実質的に大きい(両方とも生理的なpH条件下および塩条件下で測定)。これらの領域では、療法用タンパク質の運動および放出は拡散により支配される。拡散による放出(時間スケールは時)は生分解による放出(時間スケールは週)よりはるかに速やかなので、ペプチドに富む不均一な網状構造体は療法用タンパク質の少なくとも一部の意図しない不都合な早期放出をもたらす;すなわち、内包された医薬の意図しない不都合な初期急激放出が生じる。
【0024】
最近では、ゼラチンおよびコラーゲンなど、本来は天然由来であったタンパク質ポリマーも、組換えDMA技術を用いてバイオテクノロジーにより製造される。1態様において、組換えゼラチンは酵母を発現系として用いて製造される。酵母細胞はハンゼヌラ属(Hansenula)、トリコデルマ属(Trichoderma)、コウジカビ属(Aspergillus)、アオカビ属(Penicillium)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、クライベラミセス属(Kluyveromyces)、アカパンカビ属(Neurospora)、アルクスラ属(Arxula)またはピキア属(Pichia)から選択できる。メチロトローフ(mehylotrophic)酵母宿主が最も好ましい。メチロトローフ酵母の例には、ハンゼヌラ属またはピキア属菌種に属する菌株が含まれる。好ましい種にはハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)が含まれる。本発明の観点に用いる組換えゼラチンは、好ましくはヒドロキシル化されていない。一般的なゼラチンではプロリンおよびリジン残基がヒドロキシル化されている可能性がある。ヒドロキシル化ゼラチンは二次および三重らせん構造体を形成することが知られており、これはそれらから製造したヒドロゲルの均一性に有害な影響を及ぼす可能性がある。したがって、本発明の組換えゼラチンは好ましくはヒドロキシル化されていない。本発明の組換えゼラチンは好ましくはグリコシル化されていない。タンパク質のグリコシル化はそれらの免疫原性に有害な影響を及ぼすことが知られており、これは医療用の組成物にとって望ましくない。組換えによらないゼラチンと組換えゼラチンの間で可能性のある多数の相異の結果として、組換えゼラチンは新規クラスのバイオポリマーとみなすべきである。
【0025】
組換えゼラチン(組換えコラーゲンまたは組換えコラーゲン様ペプチドとも表記する)は一般に、組換え法により、たとえばそのペプチドをコードするヌクレオチドを微生物、昆虫、植物または動物宿主において発現させることにより製造した1種類以上のゼラチンまたはゼラチン様ポリペプチドを表わす。そのようなペプチドは、Gly−Xaa−Yaaトリプレットを含むことを特徴とし、ここでGlyはアミノ酸グリシンであり、XaaおよびYaaは同一でも異なってもよく、いかなる既知のアミノ酸であってもよい。少なくとも40%のアミノ酸は好ましくは連続Gly−Xaa−Yaaトリプレットの形で存在する。より好ましくは少なくとも60%、よりさらに好ましくは少なくとも80%、またはさらに90%より多いアミノ酸が、Gly−Xaa−Yaaトリプレットの形で存在する。好ましくは、これらのペプチドは約2.5kD以上の分子量をもつ。約2.5〜約100kDまたは約15〜約90kDの分子量がより好ましい。2.5kD未満の分子量は、それらの分子が一般に目的構造を備えたヒドロキシルを得るのに十分な架橋性の基を含まないので好ましくない。約60kD以下、好ましくは約5〜約50kD、より好ましくは約7〜約40kDの分子量の組換えゼラチンも好ましい。組換えゼラチンはEP−A−0926543およびEP−A−1014176の記載、またはUS 6,150,081の記載に従って製造できる。
【0026】
組換えゼラチンは、たとえばいずれかのタイプのコラーゲン、たとえばI、II、IIIまたはIV型コラーゲンから誘導できる。好ましい態様において、有害な免疫原応答の可能性を避けるために組換えゼラチンは哺乳動物(好ましくはヒト)コラーゲンから誘導または設計される。他の例において、組換えゼラチンはヒドロゲルが配置される組織との相互作用に関して特定の用途の要望に適合するように設計できる。たとえば、組換えゼラチンはRGDモチーフ(すなわちアルギニン−グリシン−アスパラギン酸配列)が富化されてもよい。タンパク質中のRGDモチーフは細胞結合特性に影響を及ぼし、増強することが周知である。
【0027】
(組換え)ゼラチンおよび医薬の溶液を調製できる種々の方法がある。たとえば、組換えゼラチンを適切な溶剤に溶解することによりまず(組換え)ゼラチンの溶液を調製し、続いてこの調製した組換えゼラチン溶液に医薬を添加または溶解することができる。水溶液が最も好ましい。水混和性有機溶剤、たとえばテトラヒドロフラン、アセトンまたはエタノールとの混合物も使用できる。使用できる他の溶剤は、グリコール、テトラフルオロエタン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、およびN−メチル−ピロリジノン(NMP)である。すべての溶剤を単独で、または他の溶剤との混合物として使用できる。ある場合には、たとえばゼラチンマトリックスと医薬の間の静電相互作用を操作するために、特定のpHが必要である。pHはいずれかの酸または塩基を用いて調整できる。さらに、一般に知られているあらゆる有機または無機の緩衝剤を用いて溶液を緩衝化することができる。(組換え)ゼラチンが既に溶液として存在する場合、この例の最初の部分を省くか、またはその組換えゼラチンを適切な希釈剤中に希釈することと置き換えることができるのは明らかである。他の例においては、医薬を適切な希釈剤または溶剤に添加または溶解することによりまず医薬の溶液を調製し、続いて医薬を含むこの溶液に組換えゼラチンを添加または溶解する。さらに他の例においては、(組換え)ゼラチンと医薬を同時に適切な希釈剤または溶剤に添加および/または溶解する。
【0028】
医薬を必ずしも溶解する必要はない。使用する溶剤系における医薬の溶解度が限られている場合、医薬の粒子懸濁液を使用することもできる。これらの粒子懸濁液を予め調製しておいてゼラチン溶液に添加するか、またはその逆も可能であり、あるいはゼラチン溶液中で形成する、すなわち沈殿させることもできる。
【0029】
制御放出組成物の重要な特色は、ヒドロゲルの製造に用いるポリマーが生分解性であり、したがって医薬を完全に放出した後に取り出すための侵襲性の外科的方法を必要としないものでなければならないことである。さらに、生分解性は組成物中に使用する医薬を放出するために要求されるであろう。組換えゼラチンが天然ゼラチンの分解を引き起こすのと同じ機序で破壊されるかどうかは推測では明らかにならない。天然のゼラチンおよびコラーゲンがヒトの体内でプロテアーゼ、より具体的にはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)により分解されることは知られている。マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は亜鉛依存性エンドペプチダーゼである。MMPはメトジンシン(metzincin)スーパーファミリーとして知られるより大きなプロテアーゼファミリーに属する。共通してそれらはあらゆる種類の細胞外マトリックスタンパク質を分解しうるが、多数の生物活性分子も処理することができる。MMPの重要なグループはコラゲナーゼである。これらのMMPは三重らせん線維性コラーゲンを別個の3/4と1/4のフラグメントに分解することができる。これらのコラーゲンは骨および軟骨の主成分であり、MMPはこれらを分解しうる唯一の既知の哺乳動物酵素である。伝統的にコラゲナーゼはMMP−1(間質性コラゲナーゼ)、MMP−8(好中球コラゲナーゼ)、MMP−13(コラゲナーゼ3)、およびMMP−18(コラゲナーゼ4)である。MMPの他の重要なグループはゼラチナーゼにより形成される。これらのMMPの主な基質はIV型コラーゲンおよびゼラチンであり、これらの酵素は触媒ドメインに挿入された追加ドメインが存在することにより識別される。このゼラチン結合領域は亜鉛結合モチーフの直前に位置し、触媒ドメインの構造を妨害しない別個のフォールディングユニットを形成する。このサブグループの2つのメンバーは、MMP−2(72kDaゼラチナーゼ、ゼラチナーゼ−A)およびMMP−9(92kDaゼラチナーゼ、ゼラチナーゼ−B)である。
【0030】
好ましい態様において本発明は、架橋ゼラチンおよび少なくとも1種類の療法用タンパク質を含む制御放出組成物であって、ゼラチンマトリックスの平均メッシュサイズ(ξ)と療法用タンパク質の平均流体力学的半径(R)の比が2より小さく、好ましくは1.5より小さく、その際、ゼラチンが組換えゼラチンである制御放出組成物を提供する。
【0031】
特に好ましい態様において本発明は、架橋組換えゼラチンおよび少なくとも1種類の療法用タンパク質を含む制御放出組成物であって、ゼラチンマトリックスの平均メッシュサイズ(ξ)と療法用タンパク質の平均流体力学的半径の比が2より小さく、好ましくは1.5より小さく、その際、組換えゼラチンがヒトまたはヒト様のものである制御放出組成物を提供する。ヒト様ゼラチンは、ヒトコラーゲン中のゼラチンのアミノ酸配列に対して少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%同一であると定義される。組換えによるヒトまたはヒト様ゼラチンを製造するための出発点は、たとえばヒトCol1A1配列である。しかし、出発点として他のヒトコラーゲン配列を使用することもできる。組換えヒトゼラチンは、本明細書において、ヒトのアミノ酸配列、ヒトゼラチンと等しいグリコシル化レベル、およびヒトゼラチンと等しいヒドロキシル化レベルをもつゼラチンと定義される。ヒト様ゼラチンは、タンパク質のアミノ酸配列中の1以上の変異、内因性ヒトレベルと比較して変化したレベルのグリコシル化(組換えゼラチンの免疫原性を低下させるために、好ましくは低下している)、および/または内因性ヒトレベルと比較して変化したレベルのリジンおよび/またはプロリン残基のヒドロキシル化をもつ組換えゼラチンを表わす。哺乳動物様は、対応する用語であって、哺乳動物由来のゼラチンに関するものである。
【0032】
本発明方法に用いる組換えゼラチンは、広範な組換えゼラチン、たとえばヒトI、II、IIIまたはIV型コラーゲンから選択できる。前記のように、組換えゼラチンはいずれか適切な(過剰)発現系、たとえば酵母、細菌、真菌または植物における発現により産生させることができる。ある発現系の使用が産生される組換えゼラチンに特定の性質、たとえば異なるグリコシル化パターン(天然バリアントと比較した場合)を付与するか、または全くグリコシル化が無い可能性があることは当業者に明らかである。
【0033】
組換えゼラチンを使用することの重要な利点は、明確に規定された制御放出組成物を調製できることである。動物由来のゼラチンと比較した組換えゼラチンの一定の品質(たとえば純度および良好に規定された分子量)は、制御放出組成物中の医薬の品質保持にも寄与する。
【0034】
組換えゼラチンの別の重要な利点は、アミノ酸配列を操作して、特定の特性を作り出せることである。現在操作できる特性の例は下記のものである:(i)架橋性アミノ酸の量(たとえば(ヒドロキシ)リジンの量)、(ii)グリコシル化パターン(たとえば、特定のトリプレット中にトレオニンおよび/またはセリンアミノ酸が存在しないとグリコシル化が生じない)、(iii)組換えゼラチンのサイズ、(iv)組換えゼラチンの電荷密度を補正することができ(たとえば荷電アミノ酸、たとえばアスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)またはリジン(Lys)を導入または除外することができる)、したがって医薬(特に療法用タンパク質)の装入および放出に影響を及ぼすことができる、または(v)メタロプロテアーゼに対する開裂部位の存在もしくは不存在により生分解性を補正できる。
【0035】
前記に述べたように、組換えゼラチンの重要な特性のひとつは架橋性アミノ酸の量、たとえば(ヒドロキシ)−リジン基の量、ならびにアスパラギン酸およびグルタミン酸から誘導されるカルボン酸基の量である。
【0036】
好ましい態様において本発明は、架橋(組換え)ゼラチンおよび少なくとも1種類の療法用タンパク質を含む制御放出組成物であって、ゼラチンマトリックスの平均メッシュサイズ(ξ)と療法用タンパク質の平均流体力学的半径の比が2より小さく、好ましくは1.5より小さく、その際、(組換え)ゼラチンが少なくとも0.05mmol/gの(ヒドロキシ)リジン基を含む制御放出組成物を提供する。好ましくは、組換えゼラチンは架橋後に適切な構造体を得るために少なくとも0.10mmol/g、より好ましくは少なくとも0.20mmol/gのリジンまたはヒドロキシリジン基を含む。目的とする三次元網状構造に応じて、より高い、約0.40または最高0.60もしくは0.80mmol/gのリジンまたはヒドロキシリジン含量も適用できる。
【0037】
架橋性の基の量が架橋度に影響を及ぼすことは明らかである。架橋性の基がより多量あれば、架橋性の基がより少量存在する状況と比較した場合、架橋の量は原則としてより高い可能性がある。架橋性の基の下限は、なおゲルを形成しうる量である。架橋性の基の量は、原則としてメッシュサイズも決定する;これは、生理的条件(pH7.4、37℃および300mOsm/L)における絡まった/架橋したゼラチン網状構造体の平均“細孔サイズ”の尺度である。最終的に、架橋性の基の量は形成された制御放出組成物の生分解性を決定する。組換えゼラチンの使用により、架橋性の基の量に影響を及ぼし、したがってゲルのメッシュサイズおよび生分解性を操作することができる。
【0038】
用途に応じて、制御放出組成物はそれを型に注入し、続いて(化学)架橋させることにより、多様な形状のゲルまたは弾性半固体として得ることができる。さらに、制御放出組成物を乳化し、架橋後に形成された乳濁液滴を多少とも固体状の粒子として単離することにより、制御放出粒子を得ることができる。制御放出粒子を得るための他の方法は、噴霧乾燥によるものである。粒度は0.1マイクロメートルから1000マイクロメートルの範囲であってよいが、用途および目的とする放出プロフィールに応じて、より特定の範囲を選択できる。注射用配合物を用いる場合、粒度は好ましくは200マイクロメートルを超えるべきでない。さらに、制御放出組成物をキャストしてフィルムまたはシートにすることができる。適切なキャスチング技術の例には、スピンコーティング、グラビアコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ブラシまたはローラーによるコーティング、スクリーン印刷、ナイフコーティング、カーテンコーティング、スライドカーテンコーティング、押出し、スクィーズコーティングなどが含まれる。フィルムまたはシートの厚さは1マイクロメートルから1センチメートルまでの範囲であってよい。たとえば、創傷包帯の場合は1ミリメートル〜1センチメートルの厚さが好ましく、一方、医療用具、たとえばステントまたは血管移植片その他のインプラントのコーティングには1mmまでのコーティング厚さが好ましい。組成物の乾燥は、一般的な方法、たとえば風乾、真空乾燥、凍結乾燥または噴霧乾燥により行なうことができる。
【0039】
たとえば、架橋プロセス中における使用する医薬の安定性に応じて、まず医薬の不存在下で架橋ヒドロゲルを調製し、場合によりそれを乾燥させ、次いで医薬を含有させることも可能である。マトリックスの架橋に際して、療法用タンパク質(TP)が共架橋して活性を失ない、最悪の場合には毒性を生じるという可能性がある。したがって、ヒドロゲル調製後にTPを取り込ませるのが有利である。医薬を(乾燥)ヒドロゲルに取り込ませるために幾つかの方法を適用できる;たとえば(乾燥)ヒドロゲルを医薬の溶液に浸漬するか、または医薬の溶液を上に滴下することによる。
【0040】
化学架橋の場合、組換えゼラチンにたとえば(化学)リンカーを供給し、続いて連結反応させる。したがって本発明は、化学架橋したゼラチンおよび少なくとも1種類の療法用タンパク質を含む制御放出組成物であって、ゼラチンマトリックスの平均メッシュサイズ(ξ)と療法用タンパク質の平均流体力学的半径の比が2より小さく、好ましくは1.5より小さく、その際、ゼラチンは架橋性の基で化学修飾されているを提供する。
【0041】
前記の架橋性の基は、エポキシ化合物、オキセタン誘導体、ラクトン誘導体、オキサゾリン誘導体、環状シロキサン類、またはエテン性不飽和化合物、たとえばアクリレート類、メタクリレート類、ポリエン−ポリチオール類、ビニルエーテル類、ビニルアミド類、ビニルアミン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、アリルアミン類、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、ポリブタジエン類およびスチレン類の群から選択できるが、これらに限定されない。好ましくは、(メタ)アクリレート類、たとえばアルキル−(メタ)アクリレート類、ポリエステル−(メタ)アクリレート類、ウレタン−(メタ)アクリレート類、ポリエーテル−(メタ)アクリレート類、エポキシ−(メタ)アクリレート類、ポリブタジエン−(メタ)アクリレート類、シリコーン−(メタ)アクリレート類、メラミン−(メタ)アクリレート類、ホスファゼン−(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、およびその組合わせは、それらの反応性が高いので架橋性の基として使用される。よりさらに好ましくは、架橋性の基はメタクリレートであり、したがって本発明はメタクリル化した(組換え)ゼラチンをも提供する。そのようなメタクリル化した(組換え)ゼラチンは、制御放出組成物の調製にきわめて有用である。一般に連結基(たとえばメタクリレート)を(組換え)ゼラチンに結合させ、レドックス重合により架橋を得る(たとえば化学的開始剤、たとえば組合わせペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)/N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED))で処理することによるか、または開始剤の存在下でのラジカル重合、たとえば熱反応、もしくはUV線などの電磁線による)。
【0042】
本発明によれば光開始剤を使用でき、これを組換えゼラチンの溶液に混合することができる。光開始剤は通常は混合物をUV線または可視光線により硬化させる際に必要である。適切な光開始剤は当技術分野で既知のもの、たとえばラジカルタイプ、カチオンタイプまたはアニオンタイプの光開始剤である。
【0043】
ラジカルI型光開始剤の例は下記のものである:α−ヒドロキシアルキルケトン類、たとえば2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(Irgacure(商標)2959:Ciba)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(Irgacure(商標)184:Ciba)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(Sarcure(商標)SR1173:Sartomer)、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン](Sarcure(商標)SR1130:Sartomer)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−tert−ブチル−)フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−[4’−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパノン(Darcure(商標)1116:Ciba);α−アミノアルキルフェノン類、たとえば2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルホリノブチロフェノン(Irgacure(商標)369:Ciba)、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン(Irgacure(商標)907:Ciba);α,α−ジアルコキシアセトフェノン類、たとえばα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン(Irgacure(商標)651:Ciba)、2,2−ジエチオキシ−1,2−ジフェニルエタノン(Uvatone(商標)8302:Upjohn)、α,α−ジエトキシアセトフェノン(DEAP:Rahn)、α,α−ジ−(n−ブトキシ)アセトフェノン(Uvatone(商標)8301:Upjohn);フェニルグリオキソレート類、たとえばメチルベンゾイルホルメート(Darocure(商標)MBF:Ciba);ベンゾイン誘導体、たとえばベンゾイン(Esacure(商標)BO:Lamberti)、ベンゾインアルキルエーテル類(エチル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチルなど)、ベンジルベンゾインベンジルエーテル類、アニソイン(Anisoin);モノ−およびビス−アシルホスフィンオキシド類、たとえば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin(商標)TPO:BASF)、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(Lucirin(商標)TPO−L:BASF)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure(商標)819:Ciba)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシド(Irgacure 1800または1870)。他の市販の光開始剤は下記のものである:1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]−1,2−オクタンジオン(Irgacure OXE01)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)エタノン(Irgacure OXE02)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(Irgacure127)、オキシ−フェニル−酢酸2−[2 オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル(Irgacure754)、オキシ−フェニル−アセティック−2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル(Irgacure754)、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure 379)、1−[4−[4−ベンゾイルフェニル)チオ]フェニル]−2−メチル−2−[(4−メチルフェニル)スルホニル)]−1−プロパノン(Esacure 1001M,Lambertiから)、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール(Omnirad BCIM,IGMから)。
【0044】
II型光開始剤の例は下記のものである:ベンゾフェノン誘導体、たとえばベンゾフェノン(Additol(商標)BP:UCB)、4−ヒドロキシベンゾフェノン、3−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,5−ジメチルベンゾフェノン、3,4−ジメチルベンゾフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、[4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル]フェニル−メタノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタナミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミウムクロリド、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン(Uvecryl(商標)P36:UCB)、4−ベンゾイル−N,N−ジメチ−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニル)オイ]エチルベンゼンメタナミニウムクロリド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、アントラキノン、エチルアントラキノン、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩、ジベンゾスベレノン;アセトフェノン誘導体、たとえばアセトフェノン、4’−フェノキシアセトフェノン、4’−ヒドロキシアセトフェノン、3’−ヒドロキシアセトフェノン、3’−エトキシアセトフェノン;チオキサンテノン誘導体、たとえばチオキサンテノン、2−クロロチオキサンテノン、4−クロロチオキサンテノン、2−イソプロピルチオキサンテノン、4−イソプロピルチオキサンテノン、2,4−ジメチルチオキサンテノン、2,4−ジエチルチオキサンテノン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミウムクロリド(Kayacure(商標)QTX:日本化薬);ジオン類、たとえばベンジル、カンファーキノン、4,4’−ジメチルベンジル、フェナントレンキノン、フェニルプロパンジオン;ジメチルアニリン類、たとえば4,4’,4”−メチリジン−トリス(N,N−ジメチルアニリン)(Omnirad(商標)LCV,IGMから);イミダゾール誘導体、たとえば2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール;チタノセン類、たとえばビス(エタ−5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス−[2,6−ジフルオロ−3−1H−ピロール−1−イル]フェニル]チタン(Irgacure(商標)784:Ciba);ヨードニウム塩、たとえばヨードニウム、(4−メチルフェニル)−[4−(2−メチルプロピル−フェニル)−ヘキサフルオロホスフェート(1−)。所望により光開始剤の組合わせも使用できる。
【0045】
アクリレート類、ジアクリレート類、トリアクリレート類または多官能性アクリレート類、I型光開始剤が好ましい。特にアルファ−ヒドロキシアルキルフェノン類、たとえば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−tert−ブチル−)フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−[4’−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン]、アルファ−アミノアルキルフェノン類、アルファ−スルホニルアルキルフェノン類およびアシルホスフィンオキシド類、たとえば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルホスフィネートおよびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドが好ましい。
【0046】
赤外線による架橋は熱硬化としても知られている。したがって架橋は、エチレン性不飽和基をフリーラジカル開始剤および場合により触媒と組み合わせ、この混合物を加熱することにより実施できる。フリーラジカル開始剤の例は下記のものである:有機過酸化物、たとえば過酸化エチルおよび過酸化ベンジル;ヒドロペルオキシド類、たとえばメチルヒドロペルオキシド、アシロイン類、たとえばベンゾイン;特定のアゾ化合物、たとえばα,α’−アゾビスイソブチロニトリルおよびγ,γ’−アゾビス(γ−シアノ吉草酸);ペルスルフェート類;ペルオキソスルフェート類;ペルアセテート類、たとえば過酢酸メチルおよび過酢酸tert−ブチル;ペルオキサレート類、たとえば過シュウ酸ジメチルおよび過シュウ酸ジ(tert−ブチル);ジスルフィド類、たとえばジメチルチウラムジスルフィド;ならびにケトンペルオキシド類、たとえばメチルエチルケトンペルオキシド。約23℃から約150℃までの範囲の温度が一般に用いられる。約37℃から約110℃までの範囲の温度がより多く用いられる。
【0047】
架橋方法を選択する際、療法用タンパク質がその反応により‘損傷を受ける’ことなく、その療法活性を保持するのを保証することがきわめて重要である。
メタクリル化されたゼラチンを医薬としての療法用タンパク質と組み合わせて使用するのは特に好ましい;メタクリル化ゼラチンの架橋は療法用タンパク質の存在下で、療法用タンパク質を共架橋せずに、かつ療法用タンパク質の活性を失うことなく実施できるからである。
【0048】
架橋の結果、医薬を含む制御放出組成物が得られる。得られる生成物のメッシュサイズまたは細孔サイズは、使用する(組換え)ゼラチンおよび架橋密度に依存する。メッシュサイズは、ヒドロゲルポリマー網状構造中の2つの隣接架橋間の平均距離と定義される。療法用タンパク質を医薬として用いる場合、メッシュサイズは療法用タンパク質の流体力学的半径より大きい場合と小さい場合の両方の可能性がある。流体力学的半径Rは、すべての環境作用を考慮したゼラチンマトリックス中のタンパク質の見掛け半径である。したがって、流体力学的半径は拡散定数Dから関係式D=kT/6πηRにより求められ、ここでkはボルツマン定数であり、Tは温度(ケルビン)であり、πは3.14であり、ηは溶液の粘度(mPa)である。本発明において、流体力学的半径は好ましくは生理的条件で測定される。得られる生成物の分解速度は架橋の量に依存する:架橋が多いほど分解は遅い。好ましい態様において、分解速度は1年以内である。医薬の放出プロフィールは通常は数週間または最大で数カ月間に延長するので、(組換え)ゼラチンからなるマトリックスは同様な時間ウインドウで分解することが好ましい。得られる生成物の最終電荷密度は、使用する組換えゼラチンのアミノ酸配列および架橋度の両方に依存する。得られる生成物は種々の外観をもつ可能性がある:たとえば緻密/均質またはマクロ多孔質。使用する医薬の放出プロフィールは、数時間(拡散による制御)から数週間または数カ月間(分解速度による制御)までの可能性がある。両方の機序の組合わせが起きる可能性もある。大部分の用途について徐放が好ましく、したがって生分解が主な機序である。
【0049】
前記のように、架橋は組換えゼラチンの前修飾に際して導入した(メタ)アクリレート残基の架橋により得ることができる。しかし、使用する組換えゼラチンへの別個の結合を必要としない化学架橋剤を用いることも可能である。他の態様において、本発明は下記の工程を含む制御放出組成物の製造方法を提供する:
−組換えゼラチンおよび医薬の溶液を調製する;
−組換えゼラチンを架橋させて三次元網状構造体を得る;その際、架橋は下記のものから選択される化学架橋剤の使用により得られる:水に可溶性のカルボジイミド、不溶性のカルボジイミド、ジ−アルデヒド ジ−イソシアネート、アルデヒド化合物、たとえばホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒド、ケトン化合物、たとえばジアセチルおよびクロロペンタンジオン、ビス(2−クロロエチル尿素)、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、反応性ハロゲン含有化合物:US−A−3288 775に開示、ピリジン環がスルフェートまたはアルキルスルフェート基をもつカルバモイルピリジニウム化合物:US−A−4 063 952およびUS−A−5 529 892に開示、ジビニルスルホン類など。S−トリアジン誘導体、たとえば2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−s−トリアジンは周知の架橋化合物である。
【0050】
基本的に、架橋は異なるゼラチン分子上の2つの反応性基の間で起きる。特に好ましいのは水溶性カルボジイミド1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩の使用である。
【0051】
選択したゼラチンのタイプ(架橋性の基の数)および架橋方法に応じて一定の架橋密度を得ることができ、これは達成できる平均メッシュサイズに強く関係する。架橋性の基を別個の工程でゼラチンに結合させる場合、およびそのヒドロゲルについて緻密な構造を得たい場合、ゼラチン中の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%の架橋性の基が活性化されることが好ましい。最も好ましくは、置換度は100%に近い。
【0052】
あらゆる種類の医薬を前記の制御放出組成物に取り込ませることができる。用語“医薬”は、治療、診断または予防効果を、好ましくはインビボでもたらす化学分子または生体分子を表わす。医薬という用語は、そのプロドラッグ形態をも示すものとする。医薬の“プロドラッグ形態”は、その医薬の構造関連化合物または誘導体であって、ホストに投与した際に目的とする医薬に変換されるものを意味する。プロドラッグ形態は、それが変換される医薬が示す目的薬理活性をほとんどまたは全くもたない場合がある。
【0053】
本発明の薬物送達デバイスに取り込ませることができるタンパク質の例には、下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ヘモグロビン、バソプレッシン、オキシトシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮増殖因子、プロラクチン、ルリベリンまたは黄体形成ホルモン放出因子、ヒト成長因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、血管形成増殖因子、血管内皮増殖因子、骨形態形成増殖因子、神経増殖因子など;インターロイキン、酵素、たとえばアデノシンデアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、キサンチンオキシダーゼなど;酵素系;血液凝固因子;凝血阻害物質または凝血溶解物質、たとえばストレプトキナーゼおよび組織プラスミノーゲンアクチベーター;免疫化のための抗原;ホルモン。
【0054】
制御放出組成物は、少なくとも1種類/タイプの組換えゼラチンを含むことができるが、少なくとも2種類/タイプの(組換え)ゼラチン(好ましくは異なる特性をもつもの)を用いて実施することもできる。さらに、ゼラチンと少なくとも1種類の水溶性ポリマー(好ましくは生分解性、潜在的に架橋性であり、ゼラチンではない)の組合わせも可能である。前記の本発明の範囲を限定することなく、これらの生分解性ポリマーは天然もしくは合成であってもよく、または組換え法により作成されてもよい。例はデキストラン、ヒアルロン酸、ポリ−乳酸、ポリ−グリコール酸、またはそれらのコポリマー、キチン、キトサン、アルギネート、ポリエステルなどである。さらに他の適切なポリマーはUS 2004/0235161、2頁に開示されている。架橋剤の量も少なくとも1、または少なくとも2から2を超えるまで(たとえば3または4)変更できる。
【0055】
本発明の観点は、制御放出配合物が架橋に関して本質的に均一であり、急激な放出特性を示さないこと、すなわち拡散により支配され、実験の部に記載する条件下で試験した際に架橋ゼラチンマトリックスから50%を超える医薬が24時間以内に放出される放出速度と一致する特性を示さないことである。
【0056】
さらに、調製過程での佐剤、たとえば緩衝剤、塩類、界面活性剤、保湿剤および補助溶剤の添加も採用できる。
使用する医薬の量および種類も変更できる;たとえば少なくとも2種類の療法用タンパク質の使用または療法用タンパク質と抗生物質の併用。
【0057】
さらに他の態様において、本発明は下記を含む、本明細書に記載する制御放出組成物の製造方法を提供する:
−療法用タンパク質を選択し、場合によりそのタンパク質の流体力学的半径(R)を測定する;
−予め定めた架橋条件下で架橋させた際に療法用タンパク質の流体力学的半径(R)の2倍より小さいメッシュサイズを含む(組換え)ゼラチンを選択する;
−前記の療法用タンパク質を前記の(組換え)ゼラチンと接触させる;
−(組換え)ゼラチンを前記の予め定めた架橋条件下で架橋させる;
−場合により、得られた制御放出組成物を精製する。
【0058】
好ましい予め定めた架橋条件は、原則として実験的に、裸のゼラチンマトリックスを架橋させ、メッシュサイズを測定し、それを療法用タンパク質の流体力学的半径と比較することにより決定される。しかし、経験的に少なくとも20%のゼラチン濃度と少なくとも0.3mmol/g(ゼラチン)の架橋剤量との組み合わせについては、拡散放出が低下し、生分解による放出が優勢になると言える。好ましくは30%以上のゼラチン濃度を、少なくとも0.3mmol/g(ゼラチン)、好ましくは少なくとも0.4mmol/g(ゼラチン)の架橋剤量と組み合わせて用いる。
【0059】
ヒドロゲルに架橋後に装填することもでき、したがって本発明は下記を含む、本明細書に記載する制御放出組成物の製造方法をも提供する:
−療法用タンパク質を選択し、場合によりそのタンパク質の流体力学的半径(R)を測定する;
−予め定めた架橋条件下で架橋させた際に療法用タンパク質の流体力学的半径(R)の2倍より小さいメッシュサイズを含む(組換え)ゼラチンを選択する;
−(組換え)ゼラチンを前記の予め定めた架橋条件下で架橋させて、制御放出組成物を得る;
−前記の療法用タンパク質が制御放出組成物中に進入しうる条件下で、療法用タンパク質を前記で得られた制御放出組成物構造体と接触させる;
−場合により、得られた制御放出組成物を精製する。
【0060】
本明細書に記載する制御放出組成物は、続いて医薬組成物の調製に使用できる。したがって、さらに他の態様において本発明は制御放出組成物を含む医薬組成物を提供し、その際、制御放出組成物は少なくとも化学架橋した(組換え)ゼラチンおよび療法用タンパク質を含む。そのような医薬組成物は、さらに佐剤または希釈剤を含むことができる。適切な医薬組成物の例は、注射用配合物、皮下送達デポ剤、包帯、またはインプラント(ゲルまたは成形ゲル)である。注射用配合物の例は、EP 1 801 122に記載されるように1〜500μmの(マトリックス)粒子を含む配合物である。
【0061】
本明細書に記載する制御放出組成物は、医療用品の製造にも使用でき、したがって本発明は制御放出組成物を含む医療用品をも提供し、その際、制御放出組成物は少なくとも化学架橋した(組換え)ゼラチンおよび医薬を含む。適切な用品の例は、インプラント、たとえばステントまたは人工血管移植片、骨インプラント、または不溶性薬物粒子、創傷包帯、皮膚移植片である。
【0062】
本発明による医薬組成物は、いずれかの経路により、すなわち注射(たとえば皮下、静脈内または筋肉内)、または外科的埋込み、経口、吸入、または外部創傷包帯もしくは経皮により投与できる。
【0063】
本発明はさらに、その必要がある対象を処置する方法であって、対象に有効量の制御放出組成物、すなわち少なくとも架橋した(組換え)ゼラチンおよび療法用タンパク質を含む制御放出組成物を付与することを含む方法を提供する。制御放出系の使用がより効果的となりうる処置は、たとえば痛みの処置、癌療法、心血管疾患、心筋修復、血管形成、骨の修復および再生、創傷の処置、神経刺激/療法、糖尿病などである。制御放出組成物は、注射(皮下、静脈内または筋肉内)もしくは経口により、または吸入により投与できる。しかし、使用する制御放出組成物を外科処置により埋込むこともできる。さらに他の適切な投与経路は外部創傷包帯、またはさらには経皮によるものである。
【0064】
本発明はさらに、痛みの処置、癌療法、心血管疾患、心筋修復、血管形成、骨の修復および再生、創傷の処置、神経刺激/療法または糖尿病に用いる医薬の調製のための、本明細書に記載する制御放出組成物の使用を提供する。
【0065】
本発明を以下の限定ではない例においてさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0066】
本発明においては、組換えゼラチンおよび天然ゼラチンをタンパク質の制御放出のためのヒドロゲルの製造に用いた。1態様においては、メタクリレート残基を組換えゼラチンに結合させて化学架橋を可能にした。メタクリル化ゼラチンをH−NMRにより分析して置換度(DS)を判定し、SDS−PAGEにより分析して純度を判定した。ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を開始剤として用いるラジカル重合によりメタクリル化ゼラチンのヒドロゲルを形成した。
【0067】
(組換え)ゼラチンヒドロゲルからの幾つかの‘療法用’タンパク質の放出速度を、ゼラチン濃度および架橋量により判定したメッシュサイズの関数として調べた。
材料および方法
組換えゼラチンHU4(MW 72.6kDa)、CBE(17.2kDa)、CBE3(68kDa)(CBEのトリマー)、CBE5(85kDa)(CBEのペンタマー、およびP4(36.8kDa)を用いた。これらの組換えゼラチンの製造は他に記載されている(EP−A−1398324、EP−A−0926543およびEP−A−1014176)。図1〜4はこれらの組換えゼラチンのアミノ酸配列を示す。これらの配列は、主にヒトI型コラーゲンに基づき、一方、CBEおよびそれのトリマーCBE3またはペンタマーCBE5は、増加した数のRGDモチーフ、および増大した比率のリジンアミノ酸を含む。さらに、天然ゼラチンとして、酸処理、加水分解したブタのゼラチン(平均MW 26kDa,多分散度D 1.6,DGF Stoess、および加水分解、アルカリ処理したウシゼラチン(平均MW 23kDa,多分散度D 1.6,Nitta)を用いた。分子量および多分散度は、GPCによりTSKgel superSW3000および2000カラムを、溶離剤としての10mM NaSO、1% SDS、pH5.3と共に用いて測定された。
【0068】
組換えゼラチンのうち、CBE(またはそれのマルチマー)、特にCBE3またはCBE5およびP4が好ましい。最も好ましいのはCBE3およびP4である。
無水メタクリル酸(MA−Anh)はSigma−Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から購入した。ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)はMerck(ドイツ、ダルムシュタット)から入手した。20mg/mlのKPSを含むストック溶液をpH7.4の等張リン酸緩衝液で調製し、エッペンドルフ試験管に分注し、−20℃に保存した。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)はFluka(スイス、ブーフス)から入手した。20%(v/v)のTEMEDを含むストック溶液をpH7.4の等張リン酸緩衝液中に調製し、エッペンドルフ試験管に分注し、−20℃に保存した。用いたタンパク質は下記のものであった:鶏卵リゾチームはFluka(スイス、ブーフス)から、ウシ血清アルブミン(BSA)はSigma−Aldrich、オランダから入手した。10mg/mlのタンパク質を含むストック溶液をpH7.4の等張リン酸緩衝液中に調製し、0.2mmのHPLCフィルター(Alltech、イリノイ州ディーアフィールド)により濾過し、低結合性エッペンドルフ試験管(Eppendorf、ドイツ、ハンブルグ)に分注し、−20℃に保存した。生理的リン酸緩衝液は、0.76mg/mlのNaHPO×HO、0.79mg/mlのNaHPO、および0.06mg/mlのNaClを溶解し、NaOH溶液でpHを7.4に調整し、この緩衝液を0.2mmのフィルター(Schleicher und Schuell、ドイツ、ダッセル)で濾過することにより調製した。
【0069】
【表1】

【0070】
aaは‘アミノ酸’である。
A)(組換え)ゼラチンのメタクリル化
組換えゼラチンおよび天然ゼラチンを下記に従ってメタクリレート残基で誘導体化した。2.5gのゼラチンを200mlのリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解した。溶液を窒素雰囲気下で50℃に加熱し、無水メタクリル酸(MA−Anh)を添加した。種々の置換度を達成するために、MA−Anh:ゼラチン比を変化させた。メタクリル化反応中に溶液のpHを定期的に制御し、必要であれば1M NaOH溶液の添加により7〜7.4に維持した。50℃で1時間激しく撹拌した後、溶液を水に対して十分に透析した(透析チューブ:14kDa MWCO Medicell International、英国ロンドン)。凍結乾燥により乾燥生成物が得られ、これを密閉ガラス容器内に4℃で保存した。
【0071】
B)置換度(DS)の測定
実際の置換度(DS)、すなわち組換えゼラチンの第一級アミノ基の総数に対するメタクリル化アミノ酸の画分をH−NMRにより測定した。300MHzで作動するGemini分光計(Varian Associates,Inc. NMR Instruments、カリフォルニア州パロアルト)により測定を行なった。40mg/mlのゼラチンを重水に溶解することにより試料を調製した。62.5°のパルスおよび2秒間の緩和遅れ(relaxation delay)を用いて40のスキャンを累積した。フェニルアラニンの信号を積算し、それの面積をゼラチン分子の既知のフェニルアラニンプロトン数で割ることにより、1個のプロトンの面積が得られた。2つのメタクリレート信号の総面積を1個のプロトンの面積で割ることにより、それらのメタクリレート信号を構成するプロトンの数が得られた。この値を2で割ったものがゼラチン鎖当たりのメタクリレート残基の平均数に相当し、DSの計算が可能になった。
【0072】
C)療法用タンパク質を含有するヒドロゲルの調製
初期ゼラチン濃度5、10、15、20、25、30および40%(w/w)のヒドロゲルを調製した。0.05%のNaN3を含有するリン酸緩衝液(pH7.4)にメタクリル化ゼラチンを溶解し、溶液を遠心分離した(5分間、10000RPM)。遠心分離した時点で596mgのゼラチン溶液をエッペンドルフ試験管に充填し、75マイクロリットルのリン酸緩衝液、pH7.4(または放出実験用のタンパク質ストック溶液)を添加し、穏やかに混合した。KPS 20mg/ml原液(56.5μl)およびTEMED 20%原液(22.5μl)を添加し、混合してゼラチンメタクリレート残基の架橋を誘発した。この溶液を1mlの注射器(Becton−Dickinson、ニュージャージー州フランクリン・レイク)に充填した。1.5時間後、注射器を開いてヒドロゲルを取り出し、これを長さ6mmおよび半径2.3mmの円筒に切断した。
【0073】
D)ヒドロゲルのメッシュサイズ
ステンレス鋼円錐板(直径40mm、角度1°)および試料からの水の蒸発を防ぐための溶剤トラップを備えたAR 1000−N制御式応力検流計(TA Instruments、デラウェア州ニューキャッスル)を用いて、振動剪断実験を行なった。ヒドロゲル成分を前記に従って混合し、検流計にピペットで装入した。20℃でのゲル形成を1.5時間、剪断貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)の測定により追跡した。ゲル形成の完了後にも37℃でG’およびG”を測定した。測定に用いた標準設定は、0.1%の歪みおよび角度振動数6.283rad/秒であった。実験が直線粘弾性率範囲で行なわれるのを保証するために、振動数掃引(0.6283〜62.83rad/秒)および歪み掃引(0.05〜2%の歪み)実験を行なった。
【0074】
平衡膨潤状態のヒドロゲルの動的機械的分析(DMA)は、ヒドロゲルから水が蒸発するのを防ぐための液体充填試料ホルダーを備えた37℃で作動するDMA 2980動的機械的分析計(TA Instruments、デラウェア州ニューキャッスル)で実施された。
【0075】
実験を力制御様式で実施した。ヒドロゲルに付与する静的力を0.001Nから0.95Nまで0.05Nずつ高めた。ヒドロゲルが受けた応力(MPa)を静的力および既知のゲル円筒上面の面積から計算した。ヒドロゲルの高さの変化を用いてパラメーターαを歪みの尺度として計算した:
【0076】
【数1】

【0077】
ここで△hはヒドロゲルの高さの変化、hgelは最初のヒドロゲルの高さである。ヒドロゲルの弾性率(E)をαに対する応力の傾きから判定した(1)。
Eを用いて、架橋間の分子量(M)を判定した:(2,3)
【0078】
【数2】

【0079】
ここでρはゲル密度であり、Rは気体定数であり、Tは絶対温度(°K)である。
の知見から、組換えによらないゼラチンヒドロゲルに適用した方程式を用いて、平衡膨潤状態のヒドロゲルの平均メッシュサイズ(ξ)を推定できた:(4)
【0080】
【数3】

【0081】
ここでMはゼラチン鎖の1個のアミノ酸の平均分子量であり、100g/molと概算された。
【0082】
【数4】

【0083】
の数値は、ゼラチン鎖の2つの架橋間の自由回転末端−末端距離二乗平均の(理論)値に相当する。この数値に2α’を掛けると、2つの架橋間の末端−末端距離二乗平均の実験値が得られる。組換えによらないゼラチンについて報告するように、係数α’は2の値をもつと推定された(4,5)。Qは平衡体積膨潤比である。それは平衡膨潤状態のポリマー体積分率の逆数である(υ2,s)。
【0084】
E.放出実験
タンパク質を装填したヒドロゲル円筒を、3mlのリン酸緩衝液(pH7.4、0.05%のNaNを含有)を収容したガラスバイアルに入れた。バイアルを37℃の振とう水浴内に保存した。種々の時点で1mlのリン酸緩衝液をサンプリングし、低結合性エッペンドルフ試験管に充填し、分析するまで−20℃に保存した。取り出した容量の代わりに新鮮なリン酸緩衝液を入れた。試料をHPLCによりAlltima C18 RP−HPLCカラム(Alltech、イリノイ州ディーアフィールド)で分析した。注入容量は40マイクロリットルであった。70%の溶離剤A(10%のアセトニトリル、90%の水、0.1%のトリフルオロ酢酸)および30%の溶離剤B(90%のアセトニトリル、10%の水、0.1%のトリフルオロ酢酸)の出発混合物を55%の溶離剤Aおよび45%の溶離剤Bまで変化させる直線勾配を15分間で実施した。1分で出発溶離剤組成に戻した。280nmでのUV吸収により検出を行ない、タンパク質ストック溶液から調製した標準品を用いてHPLC信号の曲線下面積(AUC)によりタンパク質濃度を判定した。
【0085】
結果
下記の表には、種々の濃度で調製したヒドロゲルから24時間後に放出されたタンパク質リゾチームおよびBSAの画分を示す。この時間スケールで試料はいわゆる平衡状態にあり、追加のタンパク質が拡散により放出されることはなかった。したがって、残りの放出されていないタンパク質はヒドロゲルの内部に捕獲されており、酵素分解により放出されるはずである。薬物送達デバイスにとってきわめて重要なのは、この数週間または数カ月間の酵素分解時間スケールである。
【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
以上の結果から、妥当な画分のタンパク質がヒドロゲルの内部に捕獲されるためには、流体力学的半径はヒドロゲル網状構造のメッシュサイズまたは細孔サイズに対比して有意に大きくなければならないことが明らかになる。このメッシュサイズは使用するゼラチンの濃度および置換度により支配され、これらは共に架橋密度を決定する。
【0093】
言い換えると、比率ξ/Rが2より大きければ療法用タンパク質の有意部分が拡散により放出されて、療法用タンパク質の不都合な初期の急激な放出が起きることが明らかに分かる。
【0094】
前記の本発明の他の意外な効果は、一定の比率ξ/Rでは組換えゼラチンが一般的なゼラチンと比較してより少ない拡散放出を示すことである。この効果を説明するためにはより多くの研究が必要であるが、顕微鏡レベルでのヒドロゲルにおける局所不均一性を引き起こす天然ゼラチンの不均一かつ多分散性の性質と対照的に均一かつ単分散性の組換えゼラチンの性質が、改善された挙動に寄与すると推測される。これらの不均一性はたとえば2.5kDa未満の小さなフラグメントの存在に関係する可能性がある。密度がより低い領域では拡散放出がなお起きると予想できる。
【0095】
さらに、他のゼラチンと比較してリジン量が増加したCBEおよびCBE5ゼラチンはメッシュサイズの低下を示すことも明らかになる。明らかに、これはリジン量の増加による架橋数の増加に帰因する。したがって、これらの特定のゼラチンは制御放出用途に優先的に使用できる。
【0096】
参考文献
1. T. K. L. Meyvis, B. G. Stubbe, M. J. van Steenbergen, W. E. Hennink, S. C. De Smedt and J. Demeester. A comparison between the use of dynamic mechanical analysis and oscillatory shear rheometry for the characterisation of hydrogels. Int J Pharm 244: 163-168 (2002).
2. W. W. Graessly. Viscoelasticity and flow in polymeric liquids. In J.E. Mark, K.L. Ngai, W.W. Graessly, L. Mandelkern, E.T. Samulski, J.L. Koenig and G.D. Wignall (eds), Physical properties of polymers, Cambridge University Press, Cambridge, 2004.
3. R. J. Stenekes, S. C. De Smedt, J. Demeester, G. Sun, Z. Zhang and W. E. Hennink. Pore sizes in hydrated dextran microspheres. Biomacromolecules 1: 696-703 (2000).
4. J. W. Mwangi and C. M. Ofner. Crosslinked gelatin matrices: release of a random coil macromolecular solute. Int J Pharm 278: 319-327 (2004).
5. A. Veis. The macromolecular chemistry of gelatin, Academic Press, New York, 1964.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋した組換えゼラチンおよび少なくとも1種類の療法用タンパク質を含む制御放出組成物であって、ゼラチンマトリックスの平均メッシュサイズ(ξ)と療法用タンパク質の平均流体力学的半径(R)の比が2より小さく、好ましくは1.5より小さい制御放出組成物。
【請求項2】
制御放出組成物からの療法用タンパク質の放出速度は、制御放出組成物を水溶液中に入れた場合に、制御放出組成物中に閉じ込められた療法用タンパク質のうち50%未満の画分が24時間の期間で放出されるものである、請求項1に記載の制御放出組成物。
【請求項3】
ゼラチンが組換えゼラチンである、請求項1〜2のいずれか1項に記載の制御放出組成物。
【請求項4】
組換えゼラチンがヒトのものまたはヒト様のものである、請求項3に記載の制御放出組成物。
【請求項5】
ゼラチンが架橋性の基で化学修飾されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の制御放出組成物。
【請求項6】
架橋性の基が、エポキシ化合物、オキセタン誘導体、ラクトン誘導体、オキサゾリン誘導体、環状シロキサン類、またはエテン性不飽和化合物、たとえばアクリレート類、メタクリレート類、ポリエン−ポリチオール類、ビニルエーテル類、ビニルアミド類、ビニルアミン類、アリルエーテル類、アリルエステル類、アリルアミン類、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、ポリブタジエン類およびスチレン類の群から選択される、請求項5に記載の制御放出組成物。
【請求項7】
架橋性の基が、アクリレート類およびメタクリレート類の群から選択される、請求項5または6に記載の制御放出組成物。
【請求項8】
架橋したゼラチンが、水に可溶性のカルボジイミド、不溶性のカルボジイミド、ホルムアルデヒド、ジ−アルデヒドおよびジ−イソシアネートの群から選択される化学架橋剤の使用により得られる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の制御放出組成物。
【請求項9】
架橋したゼラチンが、I型光開始剤、II型光開始剤、有機過酸化物、たとえば過酸化ベンゾイル、およびペルオキソ二硫酸カリウムとN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの混合物などの混合物の群から選択される開始剤により開始されるレドックス重合またはラジカル重合により得られる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の制御放出組成物。
【請求項10】
組換えゼラチンが本質的にヒドロキシリジン架橋および/またはヒドロキシプロリン残基を含まない、請求項1〜6のいずれか1項に記載の制御放出組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の制御放出組成物を含む医薬組成物。
【請求項12】
注射用配合物、皮下送達デポ剤、包帯、またはインプラントである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の制御放出組成物を含む医療用品。
【請求項14】
インプラント、骨インプラント、不溶性薬物粒子、創傷包帯または皮膚移植片である、請求項13に記載の医療用品。
【請求項15】
痛みの処置、癌療法、心血管疾患、心筋修復、血管形成、骨の修復および再生、創傷の処置、神経刺激/療法、または糖尿病のための化合物または薬物を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の制御放出組成物。
【請求項16】
下記を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の制御放出組成物の製造方法:
−療法用タンパク質を選択し、そのタンパク質の流体力学的半径(R)を測定する;
−予め定めた架橋条件下で架橋させた際にゼラチンマトリックスの平均メッシュサイズと前記の療法用タンパク質の平均流体力学的半径の比が2より小さい平均メッシュサイズを特徴とする組換えゼラチンを選択する;
−前記の療法用タンパク質および前記の組換えゼラチンを含む溶液を調製する;
−組換えゼラチンを前記の予め定めた架橋条件下で架橋させる;そして
−場合により、得られた制御放出組成物を精製する。
【請求項17】
下記を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の制御放出組成物の製造方法:
−療法用タンパク質を選択し、そのタンパク質の流体力学的半径(R)を測定する;
−予め定めた架橋条件下で架橋させた際にゼラチンマトリックスの平均メッシュサイズと前記の療法用タンパク質の平均流体力学的半径の比が2より小さい平均メッシュサイズを特徴とする組換えゼラチンを選択する;
−組換えゼラチンを前記の予め定めた架橋条件下で架橋させて、制御放出組成物を得る;
−前記の療法用タンパク質が制御放出組成物中に進入しうる条件下で、療法用タンパク質を前記で得られた制御放出組成物構造体と接触させる;
−場合により、得られた制御放出組成物を精製する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−520860(P2010−520860A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550818(P2009−550818)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050106
【国際公開番号】WO2008/103046
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509077761)フジフィルム・マニュファクチュアリング・ヨーロッパ・ベスローテン・フエンノートシャップ (25)
【Fターム(参考)】