説明

制御装置、カメラシステム、及びプログラム

【課題】操作性に優れた監視カメラシステムを提供する。
【解決手段】ディスプレイの画面41上に、監視カメラの撮影した画像を表示するとともに、この画像に重畳してポインティングデバイスの座標位置を示すポインタARを表示する。ポインティングデバイスの操作により監視カメラの撮影した画像上の第1の点P1から第2の点P2までポインタARを移動させたとき、遠隔操作・監視装置から監視カメラに所定の制御信号を送信する。この制御信号により、監視カメラを、ポインタARの移動方向に、第1の点P1から第2の点P2までの長さに比例した速度で移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、監視カメラシステム、遠隔操作・監視装置、制御方法およびその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通状況などを遠隔地から監視する監視カメラシステムとして、パン・チルト機能を備えるものがある。そのような監視カメラシステムにおいて、監視カメラのパン・チルトを行う方法として、以下が知られている。なお、この明細書においては、「監視カメラの視野方向の移動」を、簡単のため、「監視カメラの移動」と略記する。
【0003】
(A) 図8に示すように、監視用ディスプレイの画面1の監視画面エリア1Aに、監視カメラの撮影した画像を表示するとともに、その横に4方向(あるいは8方向)にボタン1Bを表示する。そして、ボタン1Bのいずれかをマウスでクリックすると、そのクリックされたボタンの方向に、クリックされている間、監視カメラが移動する。
【0004】
(B) 図8に示すように、監視画面エリア1Aの横に、タブレット1Cを表示する。そして、このタブレット1Cに対して、マウスでクリックあるいはドラッグをすると、これに対応する方向に監視カメラが移動する。
【0005】
(C) (B)のバリエーションで、監視画面エリア1Aの任意の点をマウスでドラッグすると、そのドラッグの方向に、ドラッグした長さだけ監視カメラが移動する。
【0006】
(D) 監視画面エリア1Aの任意の点をマウスでクリックすると、あるいは矩形に選択すると、そのクリックした点、あるいは矩形の中心が監視画面エリア1Aの中央に位置するように、監視カメラが移動する。
【0007】
(E) 監視カメラで撮影可能なすべての範囲をあらかじめ撮影してパノラマ画像を用意しておく。そして、そのパノラマ画像の任意の点をマウスでクリックすると、その方向に監視カメラが移動する。
【0008】
(F) ジョイスティックなどの専用のハードウェアを使用する。
【0009】
などが知られている。
【0010】
なお、先行技術文献として例えば以下のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−268556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記(A)、(B)の場合、走行中の車のような移動体を追跡・監視する場合、監視者の視線は、監視画面エリア1Aとボタン1Bあるいはタブレット1Cとの間を行き来することになり、安定した監視を実行できない。
【0013】
また、(A)〜(D)の場合、監視カメラを監視画面エリア1Aの範囲内で移動させるときには、操作性に問題はない。しかし、監視カメラを監視画面エリア1Aの範囲外まで移動させるときには、静止と移動とを繰り返す必要があり、操作性が悪い。また、その撮影内容を別のディスプレイでも表示・監視している場合や、その撮影内容の録画結果を再生している場合、静止と移動とが繰り返されて監視カメラが移動していくので、見苦しいものとなってしまう。
【0014】
さらに、(E)の場合には、広範囲な視界から監視エリアを指定できるが、それ以外の操作状況では、上記と同様の問題を生じてしまう。また、(F)の場合には、ジョイスティックの傾きとその方向で監視カメラが決まるので、監視者の感性に近い操作性を得ることができるが、専用のハードウェアを必要とするので、監視用ディスプレイ側を一般のパーソナルコンピュータで構成する場合、コストが上昇してしまう。しかも、操作性はジョイスティックの性能(傾きおよび方向の分解能、精度、ガタつき、通信速度など)に大きく依存してしまう。
【0015】
この発明は、以上のような問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明においては、
パン・チルト機能を備えた監視カメラと、
遠隔操作・監視装置と
を有し、
上記遠隔操作・監視装置は、
上記監視カメラの撮影した画像を表示するためのディスプレイと、
上記監視カメラの視野方向の移動を指示するためのポインティングデバイスと
を有し、
上記ディスプレイの画面上に、上記監視カメラの撮影した画像を表示するとともに、この画像に重畳して上記ポインティングデバイスの座標位置を示すポインタを表示し、
上記ポインティングデバイスの操作により上記監視カメラの撮影した画像上の第1の点から第2の点まで上記ポインタを移動させたとき、上記遠隔操作・監視装置から上記監視カメラに所定の制御信号を送信し、
この制御信号により、上記監視カメラを、上記ポインタの移動方向に、上記第1の点から上記第2の点までの長さに比例した速度で移動させる
ようにした監視カメラシステム
とするものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、監視カメラを移動させるとき、操作が簡単であり、直感的に操作することができる。また、監視対象から視線を外すこともない。さらに、専用の操作手段を追加する必要もなく、標準のマウスだけで遠隔操作をすることもできる。また、その遠隔操作時、監視カメラの移動方向と移動速度を自由に制御することができる。そして、これらの結果、監視者の感性に近い監視が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明によるシステムの操作方法および監視画面の一形態を示す図である。
【図2】図1の続きを示す図である。
【図3】この発明によるシステムの全体の一形態を示す図である。
【図4】この発明における処理ルーチンの一形態を示すフローチャートである。
【図5】この発明を説明するための図である。
【図6】この発明を説明するため図である。
【図7】この発明を説明するための特性図である。
【図8】従来例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔1〕 アウトライン
図1および図2は、この発明による監視システムの操作方法および監視画面の表示状態
を説明するための図である。
【0020】
そして、符号41は監視用ディスプレイの画面を示し、この画面41には、その右側および下側を除いた長方形のエリア42が監視画面エリアとされている。また、画面41の右側には、ズーム用のボタン43Z、手動フォーカス用のボタン43F、自動フォーカス用のボタン43A、従来の装置との互換をとるための方向用のボタン43Dが表示されている。
【0021】
さらに、画面41の下側には、監視カメラの撮影した画像を録画・再生するための各種の操作ボタン43Vが表示されている。なお、これらの操作ボタンはマウスで操作されるものである。また、符号MPはマウスポインタであり、このマウスポインタMPは、監視画面エリア42に表示されている監視対象の画像に重畳して表示されている。
【0022】
そして、監視カメラの操作は以下のようにして行われる。すなわち、
(1) 図1Aに示すように、監視画面エリア42の中の任意の点(座標)P1をマウスでクリックする(マウスボタンを押し続ける)。
【0023】
(2) 図1Bに示すように、点P1から任意の点(座標)P2までマウスでドラッグする(マウスボタンを押しながらマウスポインタを移動させる)。
【0024】
(2-1) このドラッグにより、図1Bに示すように、点P1から点P2まで矢印ARが描画される。
【0025】
(2-2) 矢印ARの描画と同時に、図2Aに示すように、矢印ARの方向に、矢印ARの長さに比例した速度で、監視カメラが移動する。したがって、このとき、エリア42の撮影画像は、矢印ARとは逆方向に移動する。
【0026】
(2-3) この場合、矢印ARの描画および監視カメラの移動は、ドラッグ中、一定の時間間隔でマウスポインタMPの座標P2を検出して行う。したがって、図2Bに破線で示すように、マウスポインタMPの座標P2を連続して移動させると、矢印ARの方向に対応して監視カメラが連続して移動する。
【0027】
(3) 監視カメラが目的とする視野方向になったとき、マウスのドラッグを解除する(マウスボタンを離す)。
【0028】
(3-1) すると、監視画面エリア42の矢印ARは消え、監視カメラの移動も停止する。したがって、監視カメラは、目的とする視野方向を向いて状態で移動を停止したことになる。
【0029】
こうして、マウスを操作すると、監視カメラが移動するが、この場合、マウスは監視画面エリア42の範囲内で操作すればよいので、視線をあまり動かす必要がなく、監視が楽になる。特に走行中の車のような移動体を追跡・監視する場合、これを安定に実行できる。
【0030】
また、マウスを操作すると、図2Aに示すように、監視カメラは、矢印ARの方向に、矢印ARの長さに比例した速度で移動するので、監視カメラを監視画面エリア42の範囲外に移動させるときでも、静止と移動とを繰り返さずに連続して移動させることができる。また、監視カメラが連続して移動していくので、撮影内容の別のディスプレイでも表示・監視している場合や、その撮影内容の録画結果を再生している場合、視野方向はスムーズに移動して見やすいものとなる。
【0031】
さらに、マウスにより監視カメラの移動を制御できるので、特別なハードウェアが不要であり、しかも、移動の分解能や精度あるいは通信速度などについて、十分な操作性を得ることができる。
【0032】
〔2〕 システムの詳細
〔2−1〕 各部の構成
図3は、この発明による監視システムの全体の構成例を示す。そして、符号10は監視カメラ、符号20はインターネットなどのネットワーク、符号30は遠隔操作・監視装置を示す。
【0033】
監視カメラ10は、ビデオカメラ本体11と、信号処理回路12と、通信回路13とを有する。この場合、ビデオカメラ本体11は、監視対象を撮影するためのものであり、この例においては、夜間の撮影を考慮して赤外線ビデオカメラとされている。
【0034】
また、信号処理回路12は、ビデオカメラ本体11の撮影出力であるビデオ信号に対して、AGC、γ補正、A/D変換などの処理を実行するものである。さらに、通信回路13は、信号処理回路12から得られるビデオ信号を、ネットワーク20を通じて遠隔操作・監視装置30に送信するとともに、ネットワーク20を通じて遠隔操作・監視装置30から送られてくる各種の信号を受信するものである。
【0035】
さらに、監視カメラ10は、駆動機構15と、制御回路16とを有する。駆動機構15は、制御回路16により制御されてビデオカメラ本体11を機械的に移動させてパン・チルトを実現するものである。この場合、ビデオカメラ本体11の移動速度は変更可能とされている。また、制御回路16は、これに制御コマンドおよびパラメータが供給されると、その制御コマンドおよびパラメータにしたがって駆動機構12を制御し、その結果、ビデオカメラ本体11の移動方向およびその移動速度を制御するものである。
【0036】
すなわち、制御回路16に[移動開始を指示する制御コマンド、パン方向(水平方向)の移動速度成分VXを示すパラメータ、チルト方向(垂直方向)の移動速度成分VYを示すパラメータ]が供給されると、ビデオカメラ本体11は、そのパラメータの示す水平速度VXおよび垂直速度VYで移動を開始し、以後、その移動を続ける。また、[移動停止を指示する制御コマンド]が供給されると、ビデオカメラ本体11は移動を停止する。
【0037】
さらに、遠隔操作・監視装置30は、監視カメラ10を遠隔操作するとともに、監視カメラ10の撮影した画像を表示するものであり、この例においては、パーソナルコンピュータ30により構成されている。このパーソナルコンピュータ30は、一般的な仕様のものでよいので、その詳細については説明を省略するが、パーソナルコンピュータ30は、プログラムを実行するためのCPU31、プログラムおよびデータを保存するためのハードディスク装置32、ワークエリア用のメモリ33、表示制御回路34、ユーザインターフェイス回路35、通信回路36などを有する。
【0038】
この場合、ハードディスク装置32には、監視カメラ10の撮影した画像をディスプレイ40により表示するためのソフトウェアが用意されているとともに、その一部として、例えば図4に示すルーチン100も用意されている。このルーチン100の詳細については、後述するが、ルーチン100はマウス52の操作にしたがって、監視カメラ10を〔1〕により説明したように遠隔制御するものである。
【0039】
さらに、表示制御回路34には、ディスプレイ40が接続され、インターフェイス回路35には、キーボード51およびマウス52が接続されている。また、通信回路36は、ネットワーク20を通じて通信回路13との間で通信を実行するためのものである。この場合、ディスプレイ40の画面41における表示は、図1および図2により説明した内容とされる。
【0040】
そして、監視カメラ10の撮影した画像のビデオ信号が、処理回路12から通信回路13に供給され、さらに、通信回路13からネットワーク20を通じてパーソナルコンピュータ30へと送信される。すると、パーソナルコンピュータ30においては、監視カメラ10から送信されてきたビデオ信号が通信回路36により受信され、この受信されたビデオ信号が表示制御回路34により処理されてディスプレイ40に供給される。
【0041】
したがって、監視カメラ10の撮影した画像がディスプレイ40の監視画面エリア42(図1および図2)に表示され、監視カメラ10の撮影した状況を監視することができる。また、この監視時、操作ボタン43Vを操作することにより監視画面エリア42に表示された画像がハードディスク装置32あるいは専用のサーバ(図示せず)に記録・保存され、必要なときに再生される。
【0042】
そして、このとき、マウス52を操作すると、ルーチン100が実行されて監視カメラ10の移動が次のように遠隔制御される。
【0043】
〔2−2〕 監視カメラ10の移動処理
図4に示すルーチン100は、ハードディスク装置32から読み出されてメモリ33にロードされている。そして、マウス52のボタンを押すと、CPU31の処理がルーチン100のステップ101からスタートし、次にステップ102において、このときのマウスポインタMPの座標P1が取得される。続いて、ステップ103において、マウス52のボタンが押されているか否かが判別され、押されているときには、処理はステップ103からステップ104に進み、このステップ104において、このときのマウスポインタMPの座標が座標P2として取得される。
【0044】
続いて、ステップ105において、ステップ102で取得した座標P1と、ステップ104で取得した座標P2との距離L12、すなわち、ドラッグした長さL12が規定値以上であるか否かが判別され、規定値以上のときには、処理はステップ105からステップ111に進み、監視カメラ10の移動処理が実行される。
【0045】
すなわち、ステップ111において、マウス52のドラッグ長L12から水平方向および垂直方向の移動速度成分VX、VYが算出され(その算出方法の詳細は後述する)、次にステップ112において、移動開始の制御信号、すなわち、[移動開始を指示する制御コマンド、パン方向の移動速度成分VXを示すパラメータ、チルト方向の移動速度成分VYを示すパラメータ]が形成され、この制御信号が通信回路36を通じて監視カメラ10へと送信される。
【0046】
すると、監視カメラ10においては、この制御信号がネットワーク20を通じて通信回路13により受信され、この受信された制御信号が制御回路16に供給される。この結果、駆動機構15によりビデオカメラ本体11は制御され、送信されてきた制御コマンドのパラメータにしたがった水平速度VXおよび垂直速度VYで移動を開始し、以後、その移動を続ける。
【0047】
そして、CPU31の処理はステップ112に続いてステップ113に進み、このステップ113において、座標P1とP2とを結ぶ矢印ARの描画処理が実行される。この描画処理では、最初の座標P1と最新の座標P2との間に、新しく矢印ARを描画するとともに、それ以前の矢印ARを消去する。なお、矢印ARは背景である監視画像と明瞭に区別できることが好ましく、今の場合、ビデオカメラ本体11は赤外線ビデオカメラであって監視画像は白黒表示となるので、矢印ARは例えば赤色とされる。
【0048】
次にステップ114において、監視カメラ10の応答能力やパーソナルコンピュータ30の処理能力に応じて所定の時間τのウェイトが行われ、その後、処理はステップ103に戻る。
【0049】
したがって、マウス52のボタンが押されている場合には、ステップ103〜105、111〜114が、期間τの周期で繰り返されることになるとともに、その繰り返しごとに矢印ARの描画および監視カメラ10の移動速度が更新されることになる。この結果、マウスボタンを押しながらマウス52を動かすと、図2Bに示すように、最初のマウスポインタMPの位置P1と、最新のマウスポインタMPの位置P2との間に、矢印ARが描画されるとともに、その矢印ARの方向に、矢印ARの長さに対応する速度で監視カメラ10が移動することになる。
【0050】
そして、監視カメラ10が目的とする視野方向まで移動したとき、マウス52のボタンを離すと、これがステップ103により判別され、処理はステップ103からステップ121に進み、このステップ121において、移動停止を指示する制御コマンドが形成され、この制御コマンドが通信回路36から監視カメラ10へと送信される。
【0051】
すると、監視カメラ10においては、この制御コマンドが通信回路13により受信され、この受信された制御コマンドが制御回路16に供給される。この結果、駆動機構15によりビデオカメラ本体11は移動を停止する。さらに、次のステップ122において、矢印ARの描画が停止され、その後、ステップ123によりルーチン100を終了する。
【0052】
なお、ステップ105において、座標P1と座標P2との距離L12、すなわち、マウス52のドラッグ長L12が規定値に達していないときには、処理はステップ105からステップ131に進み、このステップ131において、ステップ121と同様、監視カメラの移動停止を指示する制御コマンドが形成されて監視カメラ10へと送信される。そして、ステップ132において、矢印ARの描画が停止され、その後、処理はステップ103に戻る。したがって、マウス52のドラッグ長L12が規定値よりも短いときには、そのドラッグは無視されることになる。
【0053】
こうして、ルーチン100によれば、〔1〕で述べたように、マウス52をドラッグして矢印ARを描画すると、その矢印ARの方向に、矢印ARの長さに比例した移動速度で監視カメラ10を移動させることができる。
【0054】
〔3〕 監視カメラ10の移動速度の算出方法
監視カメラ10の移動方向および移動速度は、例えば図5Aに示すようにして決定することができる。すなわち、図5Aにおいて、
X1、Y1:座標P1のX座標およびY座標
X2、Y2:座標P2のX座標およびY座標
LX :マウスポインタMPのパン方向(X軸方向)の移動量成分
LY :マウスポインタMPのチルト方向(Y軸方向)の移動量成分
とすると、
LX=X2−X1
LY=Y2−Y1 ・・・(11)
である。
【0055】
そこで、
VX:監視カメラ10のパン方向の移動速度成分
VY:監視カメラ10のチルト方向の移動速度成分
とすると、(11)式から
VX=aX・LX+bX
VY=aY・LY+bY ・・・(12)
ただし、aX、bX、aY、bYは、所定の定数とすることができる。
【0056】
こうして、ルーチン100のステップ111においては、(12)式にしたがって監視カメラ10のパン方向およびチルト方向における移動速度成分VX、VYを算出することができる。
【0057】
なお、移動速度成分VX、VYの最大値および最小値を、監視画面エリア42におけるドラッグ可能な最大長および最小長に対応させることにより、監視カメラ10の移動速度の変更可能な範囲のすべてを使用することができる。ただし、すべてを使用する必要のないこともある。
【0058】
図5Bは、マウス52のドラッグ長L12と、監視カメラ10の移動速度V12との関係を示す。ただし、速度V12は、水平速度VXおよび垂直速度VYをベクトル合成した値、すなわち、矢印ARの方向の速度である。また、図5Bにおいては、簡単のため、bX=bY=0としている。そして、今の場合、(12)式から移動速度V12を算出しているので、移動速度V12はドラッグ長L12に対してリニアに変化する。
【0059】
〔4−1〕 監視カメラ10の移動速度の制御(その1)
〔3〕においては、監視カメラ10の移動速度V12がマウス52のドラッグ長L12に対してリニアに変化する場合であるが、図6Aに示すように、ノンリニアとすることもできる。すなわち、図6Aにおいては、マウス52のドラッグ長L12が規定値LTH未満のときには、移動速度V12の変化率は小さくされ、規定値LTH以上のときには、移動速度V12の変化率は大きくされる。
【0060】
さらに、この場合、マウス52のドラッグ長L12が規定値LTH未満のときには、矢印ARは、例えば図6Bに示すように、細線で描画されるとともに、その描画色は寒色、例えば青色とされ、規定値LTH以上のときには、矢印ARは、例えば図6Cに示すように、太線で描画されるとともに、その描画色は暖色、例えば赤色とされる。
【0061】
このようにすると、L12<LTHの範囲では、マウス52を大きくドラッグしても監視カメラ10の移動は遅いので、監視カメラ10を小さく移動させるとき、これが容易になる。また、L12≧LTHの範囲では、監視カメラ10を大きく移動させるとき、より高速に移動させることができる。さらに、移動速度V12の変化率を矢印ARの太さや色によって確認できるので、使い勝手が向上する。
【0062】
〔4−2〕 監視カメラ10の移動速度の制御(その2)
図7においては、マウス52のドラッグ長L12に対する監視カメラ10の移動速度V12の変化率を2段階に切り換え可能とした場合である。
【0063】
すなわち、例えば、マウス52が2ボタンマウスの場合であれば、左のマウスボタンが押されたときには、直線Sで示すように、移動速度V12の変化率は小さくされ、右のマウスボタンが押されたときには、直線Fで示すように、移動速度V12の変化率は大きくされる。
【0064】
あるいは、マウス52のボタンだけを押したときには、直線Sで示すように、移動速度V12の変化率は小さくされ、キーボード51のうちの特定のキー、例えばシフトキーを押しながらマウス52のボタンを押したときには、直線Fで示すように、移動速度V12の変化率は大きくされる。
【0065】
そして、この場合も、移動速度V12の変化率が小さいときには、矢印ARは、細線で描画されるとともに、その描画色は例えば青色とされ、大きいときには、矢印ARは、太線で描画されるとともに、その描画色は例えば赤色とされる。したがって、やはり、監視カメラ10を移動させるときの使い勝手がよくなる。
【0066】
〔5〕 まとめ
上述の監視カメラシステムによれば、マウス52は監視画面エリア42の範囲内で操作すればよいとともに、マウス52を操作すると、監視カメラ10は、マウス52をドラッグした方向に、そのドラッグ長L12に比例した速度で移動するようにしている。したがって、操作が簡単であり、直感的に操作をすることができる。また、監視画面エリア42の範囲内だけを見ていればよいので、監視対象から視線を外すこともない。
【0067】
さらに、ジョイスティックなどの操作手段を追加する必要もなく、標準のマウス52だけで遠隔操作ができる。また、その遠隔操作時、監視カメラ10の移動方向と移動速度を自由に制御することができる。そして、これらの結果、監視者の感性に近い監視が可能となる。
【0068】
また、上述のシステムは、パン・チルト機能だけを有する監視カメラと1台のパーソナルコンピュータとから構成される小規模な監視カメラシステムにおいて効果的なだけでなく、監視カメラがさらにズーム機能を有する広域監視カメラシステムにおいても、効果的である。
【0069】
〔6〕 その他
上述において、ドラッグ時、マウスポインタMPのドラッグ方向およびドラッグ長L12が分かればよいので、矢印ARは単なる直線とすることもできる。また、〔4−1〕あるいは〔4−2〕において、移動速度V12の変化率が小さいときと、大きいときで、マウスポインタMPの形状を変更することもでき、そのようにすれば、マウスポインタMPの形状から移動速度V12の変化率を知ることができる。
【0070】
また、図6あるいは図7に示すように、監視カメラ10の移動速度V12の変化率を変更する場合には、ステップ102に続いて、ステップ102で座標P1を取得したとき、マウスボタンが左ボタンおよび右ボタンのどちらが押されたか、あるいは同時にシフトキーが押されていたか否かを判別し、ステップ111において、移動速度成分VX、VYを算出するとき、その判別結果にしたがって定数aX、aYの大きさを変更すればよい。
【0071】
さらに、上述においては、ドラッグ長L12に対して、移動速度V12の変化率を2段階に変更する場合であるが、さらに多段階に、あるいは指数関数のような曲線的に変更することもできる。また、画面41に表示されたボタンをクリックすることにより移動速度V12の変化率が変更されるようにすることもできる。さらに、矢印ARの描画の許可・禁止を選択可能とすることもできる。
【0072】
また、上述においては、ポインティングデバイスとしてマウス52を使用しているが、トラックボールやタッチパネルなどをとすることもできる。さらに、監視カメラ10が移動速度を変更できないタイプの場合には、(12)式で示される値VX、VYに比例した大きさだけ監視カメラ10を移動させればよい。そして、この場合には、ステップ114におけるウェイト時間τを変更することにより、見かけの移動速度を調整することができる。
【0073】
〔略語の一覧〕
A/D:Analog to Digital
AGC:Automatic Gain Control
CPU:Central Processing Unit
【符号の説明】
【0074】
10…監視カメラ、11…ビデオカメラ本体、15…駆動機構、16…制御回路、20…ネットワーク、30…パーソナルコンピュータ、40…ディスプレイ、42…監視画面エリア、52…マウス、AR…矢印、MP…マウスポインタ、P1およびP2…点あるいは座標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン・チルト機能を備えた監視カメラと、
遠隔操作・監視装置と
を有し、
上記遠隔操作・監視装置は、
上記監視カメラの撮影した画像を表示するためのディスプレイと、
上記監視カメラの視野方向の移動を指示するためのポインティングデバイスと
を有し、
上記ディスプレイの画面上に、上記監視カメラの撮影した画像を表示するとともに、この画像に重畳して上記ポインティングデバイスの座標位置を示すポインタを表示し、
上記ポインティングデバイスの操作により上記監視カメラの撮影した画像上の第1の点から第2の点まで上記ポインタを移動させたとき、上記遠隔操作・監視装置から上記監視カメラに所定の制御信号を送信し、
この制御信号により、上記監視カメラを、上記ポインタの移動方向に、上記第1の点から上記第2の点までの長さに比例した速度で移動させる
ようにした監視カメラシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視カメラシステムにおいて、
上記第1の点から第2の点まで上記ポインタを移動させるとき、上記第1の点から第2の点まで直線を描画する
ようにした監視カメラシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の監視カメラシステムにおいて、
上記第1の点から第2の点まで上記直線を描画するとき、その直線の長さに対応して上記監視カメラの視野方向の移動速度の変化率を変更する
ようにした監視カメラシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の監視カメラシステムにおいて、
上記監視カメラの視野方向の移動速度の変化率を変更するとき、上記直線の太さ、描画色あるいは上記ポインタの形状のうちの少なくとも1つを変更する
ようにした監視カメラシステム。
【請求項5】
パン・チルト機能を備えた監視カメラを遠隔操作するとともに、この監視カメラの撮影した画像を表示するようにした遠隔操作・監視装置において、
上記監視カメラの視野方向の移動を指示するためのポインティングデバイスと、
上記監視カメラの撮影した画像を表示するためのディスプレイと
を有し、
上記ディスプレイの画面上に、上記監視カメラの撮影した画像を表示するとともに、この画像に重畳して上記ポインティングデバイスの座標位置を示すポインタを表示し、
上記ポインティングデバイスの操作により上記監視カメラの撮影した画像上の第1の点から第2の点まで上記ポインティングデバイスのポインタを移動させたとき、
上記監視カメラを、上記ポインタの移動方向に、上記第1の点から上記第2の点までの長さに比例した速度で移動させる制御信号を形成し、
この制御信号を上記監視カメラに送信する
ようにした遠隔操作・監視装置。
【請求項6】
パン・チルト機能を備えた監視カメラを遠隔操作するとともに、この監視カメラの撮影した画像をディスプレイに表示するようにした監視カメラシステムの制御方法であって、
上記ディスプレイの画面上に、上記監視カメラの撮影した画像を表示する第1の手順と、
上記ポインティングデバイスの座標位置を示すポインタを、上記第1の手順により表示された画像に重畳して表示する第2の手順と、
上記ポインティングデバイスの操作により上記監視カメラの撮影した画像上の第1の点から第2の点まで上記ポインティングデバイスのポインタを移動させたとき、上記監視カメラを、上記ポインタの移動方向に、上記ポインタの移動速度に比例した速度で移動させる制御信号を形成する第3の手順と、
この第3の手順により形成された制御信号を上記監視カメラに送信する第4の手順と
を有する制御方法。
【請求項7】
パン・チルト機能を備えた監視カメラを遠隔操作するとともに、この監視カメラの撮影した画像をディスプレイに表示するようにした監視カメラシステムにおいて、上記監視カメラを遠隔操作するプログラムであって、
上記ディスプレイの画面上に、上記監視カメラの撮影した画像を表示する第1の手順と、
上記ポインティングデバイスの座標位置を示すポインタを、上記第1の手順により表示された画像に重畳して表示する第2の手順と、
上記ポインティングデバイスの操作により上記監視カメラの撮影した画像上の第1の点から第2の点まで上記ポインティングデバイスのポインタを移動させたとき、上記監視カメラを、上記ポインタの移動方向に、上記ポインタの移動速度に比例した速度で移動させる制御信号を形成する第3の手順と、
この第3の手順により形成された制御信号を上記監視カメラに送信する第4の手順と
を、コンピュータに実行させるための制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−225471(P2009−225471A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152463(P2009−152463)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【分割の表示】特願2005−272158(P2005−272158)の分割
【原出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】