説明

制御装置および制御方法

【課題】オフセット追従において、追従中の交通状況やオフセットの影響を考慮した制御装置を提供する。
【解決手段】オフセット・サブエリアトリー生成装置10は、隣接する信号機5間の青開始の時間差を示すオフセットを制御する。隣接する信号機間を結合するリンクを探索し(16)、オフセット情報に基づいて、前記リンクにおける複数のオフセット候補を所定の範囲で生成し(17)、前記リンクにおける交通状況およびオフセット候補に基づいて、前記リンクにおける遅れ時間を複数算出し(18)、複数の遅れ時間のうち最小の遅れ時間が算出されたオフセット候補を新たなオフセットとして選択する(19)。これにより、適切なオフセットが設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御方法に関し、特に、信号の青開始時刻差であるオフセットと、オフセットを伝播させるトリー状の経路であるサブエリアトリーを得る制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車による交通渋滞の問題が顕著となり、道路を効率良く利用することが一層求められている。効率良く道路を利用する方法として、個々の信号を独立に扱い、他の信号の影響は考慮しない単独制御や、同一道路や道路網における信号群を制御する系統制御などが行われている。
【0003】
系統制御では、主に、信号が各方向の交通流に与える青信号時間の比を示すスプリットや、隣接する信号同士の青信号開始時刻の差を示すオフセットや、信号の周期を示すサイクル長が調整されている。
【0004】
系統制御の方法の一例として、オンライン・リアルタイム信号制御において、オフセットが5、15分といった制御周期で目標値が与えられ、それに向けて値の変更がなされる方法が知れている(例えば、非特許文献1参照)。この際、1回の変更で可能な調整量が決められており、目標値がこれを超える場合は、複数サイクルに渡って段階的な調整をするオフセット追従と呼ばれる処理が行われる。また、隣接ノード(交差点)にオフセットを与える方向と順番は、予め交通調査等の結果に基づいて設定されたリンクによって決められている。
【0005】
以下、このリンクによって構成する最小単位の領域をサブエリア、1つ以上のサブエリアを結合してできるリンクの集合をサブエリアトリーと呼ぶ。サブエリア内では、信号機を同一周期で動作させる。
【0006】
また、系統制御の方法の他の一例として、オフセットの変更方向をプラス(サイクル長を徐々にのばす)とマイナス(サイクル長を徐々に縮める)に分け、目標となるオフセットに対して追従の回数とその過程の反転数を最小化し、線形計画法に帰着させて追従方向の組合せを求める方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、系統制御の方法の他の一例として、隣接する2つのサブエリアをそれぞれのサイクル長で系統制御した場合と、長い方のサイクル長で結合した場合の評価値を比較し、評価値が小さいほど良いものとして、結合した場合の評価値が小さければ結合する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
図14は従来のオフセット追従の概念図であり、従来のオフセット追従過程における時刻と到着車両の累積台数の関係(図14(a)参照)、およびオフセットと遅れ時間の関係(図14(b)参照)を示している。iは追従に伴うオフセットの変更回数であり、追従発生時には、目標値に向けて追従幅ΔOずつオフセットを増加(プラス追従)または減少(マイナス追従)させる。図14は、追従前の状態(i=0)から2回プラス追従した場合の累積台数を表している。この累積台数の面積が到着車両の延べ停止時間、つまり遅れ時間PIに相当する。
【0009】
制御パラメータには、サイクルC(信号の周期)、スプリットS(信号が各方向の交通流に与える青信号時間の比)、オフセットO(隣接する信号同士の青信号開始時刻の差)が存在するが、C、Sを固定してPIとOの関係をPI=f(O)と単純化すると、オフセット変更後のPIi+1が取り得る値はf(O+ΔO)またはf(O−ΔO)となる。
【0010】
【非特許文献1】「改訂交通信号の手引き」、社団法人交通工学研究会、平成18年7月、p.57−60
【特許文献1】特開2000−259985号公報
【特許文献2】特開2000−20882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図14に示したオフセット追従では、オフセット変更後のPIi+1の値は、追従幅と追従方向によって決定するため、必ずしも追従前のPIよりも小さくなるとは限らなかった。
【0012】
また、非特許文献1の方法では、追従過程のオフセットは過渡的なものである。このため、追従が収まるまでの間は意図したオフセットが運用されず、交通流を妨げる可能性があった。また、結合したサブエリア間では系統制御が行われるが、結合の判定はサイクル長の大きさのみによって行われる。与えられるオフセットの影響を考慮しているわけではなく、必ずしも適切なオフセットが設定されるとは限らない。
【0013】
また、特許文献1の方法では、できるだけ早く追従が完了するようにオフセットの変更がなされるが、追従中の交通状況を考慮しているわけではない。追従中も、何らかの手段によって適切にオフセットを制御することが望ましい。
【0014】
また、特許文献2の方法では、評価値に基づいて結合の判定を行い、サブエリアトリーを構成するが、オフセットを与える方向や結合先のノードを変えることはできない。交通状況は常に変化しており、車群の流れに適した系統制御を行うためには、任意の方向や相手先とのオフセットを与えることが望ましい。
【0015】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、オフセット追従において、追従中の交通状況やオフセットの影響を考慮した制御装置、制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の第1の制御装置は、隣接する信号機間の青開始の時間差を示すオフセットを制御する制御装置であって、前記隣接する信号機間を結合するリンクを探索する対象リンク探索部と、前記オフセットに関するオフセット情報に基づいて、前記リンクにおける複数のオフセット候補を所定の範囲で生成するオフセット候補生成部と、前記リンクにおける交通状況および前記オフセット候補に基づいて、前記リンクにおける車両全体の停止時間に相当する遅れ時間を複数算出する遅れ時間算出部と、複数の遅れ時間のうち最小の遅れ時間が算出されたオフセット候補を新たなオフセットとして選択するオフセット選択部とを有する構成としている。
【0017】
上記構成によれば、実際の交通流を再現しながらオフセットを変更していくので、伝播過程の交通状況への影響を考慮したオフセットを得ることができる。また、任意の調整範囲でオフセットを調整するので、目標値に向けた段階的なオフセットを与える必要が無く、追従可能な範囲で遅れ時間を最小化するオフセットが得られる。
【0018】
また、本発明の第2の制御装置は、前記新たなオフセットに対応するリンクを結合し、前記新たなオフセットを伝搬させるトリー状の経路であるサブエリアトリーを生成するサブエリアトリー生成部を有する構成としている。
【0019】
上記構成によれば、各リンクにおける遅れ時間を最小とした最適な信号制御を行うことが可能なサブエリアトリーを生成することができる。
【0020】
また、本発明の第3の制御装置は、前記サブエリアトリー生成部が、信号機を同一周期で動作させる領域を示すサブエリア同士が隣接し、かつ、サイクル長の差が所定範囲である場合、サブエリア間に存在するリンクを含めて1つのサブエリアトリーを生成する構成としている。
【0021】
上記構成によれば、信号機が同一周期のサブエリア同士が所定の条件を満たした場合に、1つのサブエリアトリーとして生成することが可能である。
【0022】
また、本発明の第1の制御方法は、隣接する信号機間の青開始の時間差を示すオフセットを制御する制御方法であって、制御装置において、前記隣接する信号機間を結合するリンクを探索する工程と、前記オフセットに関するオフセット情報に基づいて、前記リンクにおける複数のオフセット候補を所定の範囲で生成する工程と、前記リンクにおける交通状況および前記オフセット候補に基づいて、前記リンクにおける車両全体の停止時間に相当する遅れ時間を複数算出する工程と、複数の遅れ時間のうち最小の遅れ時間が算出されたオフセット候補を新たなオフセットとして選択する工程とを有する方法としている。
【0023】
上記方法によれば、実際の交通流を再現しながらオフセットを変更していくので、伝播過程の交通状況への影響を考慮したオフセットを得ることができる。また、任意の調整範囲でオフセットを調整するので、目標値に向けた段階的なオフセットを与える必要が無く、追従可能な範囲で遅れ時間を最小化するオフセットが得られる。
【0024】
また、本発明の第2の制御方法は、前記新たなオフセットに対応するリンクを結合し、前記新たなオフセットを伝搬させるトリー状の経路であるサブエリアトリーを生成するサブエリアトリー生成工程を有する方法としている。
【0025】
上記方法によれば、各リンクにおける遅れ時間を最小とした最適な信号制御を行うことが可能なサブエリアトリーを生成することができる。
【0026】
また、本発明の第3の制御方法は、前記サブエリアトリー生成工程において、信号機を同一周期で動作させる領域を示すサブエリア同士が隣接し、かつ、サイクル長の差が所定範囲である場合、サブエリア間に存在するリンクを含めて1つのサブエリアトリーを生成する方法としている。
【0027】
上記方法によれば、信号機が同一周期のサブエリア同士が所定の条件を満たした場合に、1つのサブエリアトリーとして生成することが可能である。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明は、サブエリアトリーに従って交通流を再現しながらオフセットを変更していくので、伝播過程の交通状況への影響を考慮したオフセットを得ることができる。
【0029】
また、伝播過程において任意の調整範囲でオフセットを調整するので、目標値に向けた段階的なオフセットを与える必要が無く、追従可能な範囲で遅れ時間を最小化するオフセットが得られる。
【0030】
また、遅れ時間を最小化するようにリンクを探索し、サブエリアトリーを構成していくので、交通調査等を行うことなく、交通状況に応じた適切なリンクの向きと結合の有無を設定することができる。
【0031】
また、交通流シミュレーションを用いて、任意の交通流データに対するサブエリアトリーとオフセットを生成する。このため、交通状況の変化に対して、動的にサブエリアトリーとオフセットを変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態にかかるオフセット・サブエリアトリー生成装置および方法について説明する。まず、本実施形態おけるオフセット追従の概念について説明する。
【0033】
図13は本発明の実施形態におけるオフセット追従の一例の概要を示す図である。オフセット追従動作の過程において、変更可能な範囲で遅れ時間を最小化するオフセットを求める。
【0034】
図13では、iは追従に伴うオフセットの変更回数を示している。また、図13(a)累積台数軸と時刻軸からなるグラフにおいて、三角形の面積(PI、PI、PI)が到着車両の延べ停止時間、つまり遅れ時間PIに相当する。ここでは、i=0、1、2の場合を例示している。
【0035】
オフセットOから追従幅ΔO以内を変更可能範囲(O−ΔO〜O+ΔO)として、この中で複数のオフセット侯補を生成する。図13(b)の棒ブラフは、各侯補に対する遅れ時間PIを表している。この中で最小の遅れ時間となるオフセット変更量ΔOを採用し、追従過程のオフセット(Oi+1=O+ΔO)を決定する。ここでは、i=0、1の場合を例示している。
【0036】
次に、上記のようなオフセット追従を行うための道路システム100の構成の一例について説明する。
【0037】
図1は本発明の実施形態における道路システム100の概略構成の一例を示すブロック図である。道路システム100は、道路網1、信号制御装置7、オフセット・サブエリアトリー生成装置10を有して構成される。尚、オフセット・サブエリアトリー生成装置10は「制御装置」の一例である。
【0038】
道路網1において、交差点(ノード)2、道路3はそれぞれ交差点、道路を模式化したものである。サブエリア4は、複数のノードを含み、それらを同一のサイクル長で動作させる領域である。信号機5は道路網1内の交差点2に設置され、交通制御を行う。感知器6は道路3に設置され、超音波、マイクロ波、光学、ループコイルなどの方式により車両の断面交通量や占有率、速度を計測可能なものとする。
【0039】
信号制御装置7は、道路網1上の信号機5等を制御可能であり、オンライン・リアルタイムで交通情報の収集と信号制御パラメータの生成を行う装置である。信号制御装置7は、感知器情報計測部8および信号制御情報算出部9を有して構成される。
【0040】
感知器情報計測部8は、感知器6が計測した交通量、速度を含む感知器情報を5分、あるいは2.5分毎などに集計する。
【0041】
信号制御情報算出部9は、時間帯や曜日属性毎に設定されたパターンから選択されたパラメータ、あるいは感知器情報計測部8の感知器情報に基づいて生成した信号制御パラメータを道路網1の各信号機に送出する。ここでは、信号制御パラメータであるサイクル長(信号の周期)、スプリット(信号が各方向の交通流に与える青信号時間の比)を既存の方法で算出し、オフセット(隣接する信号同士の青信号開始時刻の差)のみを本実施形態の方法で算出する。
【0042】
オフセット・サブエリアトリー生成装置10は、図示しない通信手段によって信号制御装置7に接続されており、相互にデータの送受が行えるものとする。オフセット・サブエリアトリー生成装置10は、対象リンク探索探索手段16、オフセット候補生成手段17、遅れ時間算出手段18、オフセット選択手段19、サブエリアトリー生成手段20、メモリ30を有して構成される。
【0043】
メモリ30は、リンク情報蓄積手段11、現行パラメータ蓄積手段12、交通流データ蓄積手段13、生成オフセット蓄積手段14、トリー情報蓄積手段15を有して構成され、リンク情報やトリー情報、その他各種情報を記憶する。
【0044】
リンク情報蓄積手段11は、交差点2間にオフセットを与える方向を表すリンクの情報を管理する。
【0045】
現行パラメータ蓄積手段12は、信号制御情報算出部9にて計算した制御パラメータを格納する。
【0046】
交通流データ蓄積手段13は、感知器情報計測部8が集計した交通量、速度を含む交通流データを格納する。ここでは、制御周期あるいは任意のタイミングで時系列の交通流データを図示しない通信手段で受信し、交通流データ蓄積手段13に保存するものとする。
【0047】
生成オフセット蓄積手段14は、生成された各リンクのオフセット情報を格納する。リンクとは、隣接する交差点2を結合したものである。また、オフセット情報には、オフセット選択手段19に選択されたオフセットの情報が含まれる。
【0048】
トリー情報蓄積手段15は、生成されたサブエリアトリーの結合関係を示すトリー情報を保持する。サブエリアトリーとは、1つ以上のサブエリア4を結合してできるリンクの集合である。
【0049】
対象リンク探索手段16、オフセット侯補生成手段17、遅れ時間算出手段18、オフセット選択手段19、サブエリアトリー生成手段20は、道路網1の各リンクにおけるオフセットの調整量を生成し、信号制御装置7に送出する。
【0050】
対象リンク探索手段16は、任意のリンクについて、リンク情報蓄積手段11の保持する情報に基づき、オフセットを伝達可能なリンクを探索して抽出する。
【0051】
オフセット侯補生成手段17は、現行パラメータ蓄積手段12で抽出したリンクについて、現行のオフセットから調整可能な範囲で新たなオフセットを生成する。
【0052】
遅れ時間算出手段18は、交通流データ蓄積手段13から当該リンクの交通量および速度を取得し、上流側交差点から出発して拡散を伴い下流側へ到達する車群を推計する。さらに、下流側に到着する車両の停止時間および停止回数から遅れ時間を算出する。
【0053】
オフセット選択手段19は、遅れ時間算出手段18で算出した各オフセットに対する遅れ時間を比較し、遅れ時間のより小さいオフセットを選択する。
【0054】
サブエリアトリー生成手段20は、オフセット選択手段19で選択されたオフセットが与えられたリンクをサブエリアトリーに加える。
【0055】
次に、道路網1におけるサブエリア構成の一例について説明する。図2(a)は道路網1におけるサブエリア構成の一例を示す図である。
【0056】
サブエリア202にトリーの根となるキーノード203とそれ以外の一般交差点204が含まれ、リンク205を介して互いに結合されている。また、各交差点にはユニークな識別記号(図中A〜K)が付与されており、これらの接続関係であるリンクを、たとえばAB、ACのように始終端ノードの記号列として表現する。接続関係を表す全ての要素をリストLALLに格納する。尚、リストLALLは以下のように表せる。
【0057】
ALL={AB、AC、BD、BE、CD、CJ、・・・、GI}
【0058】
また、LGETおよびLSETをLALLのサブセットとし、探索対象のリンクをLGET、オフセット設定済みのリンクをLSETに格納する。LGET、LSET、LALLはメモリ30に格納される。尚、LGET、LSET、LALLは以下のような関係を満たす。
【0059】
SET⊆LALL
GET⊆LALL
【0060】
また、図2(b)はサブエリアトリーの構成例を示す図である。このような構成は、例えば、キーノードA203を起点として、ノードAと接続されるノードB、C、ノードBに接続されるノードA以外のノードD、E・・・をトリー状に連結させることで作成される。サブエリアトリーの生成においては、トリー情報が参照される。
【0061】
次に、オフセット・サブエリアトリー生成装置10の動作の一例について説明する。図3にオフセット・サブエリアトリー生成装置10の全体処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0062】
まず、対象リンク探索手段16が処理を行う(ステップS301)。主に、オフセットを伝達可能なリンクを探索して抽出したリンクをリストLGETに追加する。
【0063】
続いて、オフセット侯補生成手段17が処理を行う(ステップS302)。主に、LGETに格納された各リンクの終端ノードについて各リンクのオフセット侯補を得る。
【0064】
続いて、遅れ時間算出手段18が処理を行う(ステップS303)。主に、感知器データと生成したオフセット侯補に基づいて交通流を再現し、遅れ時間を算出する。
【0065】
続いて、オフセット選択手段19が処理を行う(ステップS304)。主に、LGETの中で最も遅れ時間の小さいノードとオフセット侯補の組を抽出し、オフセットを設定する。そして、設定したリンクをLGETから除き、設定済みリンクのリストLSETに追加する。
【0066】
続いて、図示しない制御部が、未探索のリンクが存在するか否かを判定する(ステップS305)。存在する場合は、ステップS301の直前に戻る。存在しない場合は、サブエリアトリー生成手段20が処理を行う(ステップS306)。主に、トリー構成の情報を得る。
【0067】
次に、対象リンク探索手段16について説明する。
図4は対象リンク探索手段16の動作の一例を示すフローチャートである。図5〜図7は対象リンク探索手段16による探索の一例の概念図である
【0068】
まず、メモリ30から全てのリンク情報が納められたリストLALLと、オフセット設定済みリンクのリンク情報が収められたリストLSETを呼び出す(ステップS401)。
【0069】
続いて、探索対象リンクのリストLGETが空か否かを判定する(ステップS402)。空の場合は、トリーの根(キーノード、図2ではAのキーノード203に相当)を始端とするリンクをLGETに格納して処理を終了する(図5参照)(ステップS403)。
【0070】
空でない場合は、設定済みのリンクに接続関係を持ち、オフセットが未設定かつ閉ループとならないリンクを探索し(ステップS404)、このようなリンクが存在するか否かを判定する(ステップS405)。
【0071】
条件を満たすリンクが存在する場合は、LGETに追加して処理を終了し(図6(a)、(b)参照)(ステップS406)、存在しない場合はLGETに空集合を設定して処理を終了する(図7参照)(ステップS407)。
【0072】
次に、オフセット生成手段17について説明する。図8はオフセット候補生成手段17の動作の一例を示すフローチャートである。
【0073】
まず、未設定リンクのリストLGETの先頭から要素を取り出し、終端ノードの記号iを取り出す(ステップS801)。
【0074】
続いて、現行パラメータ蓄積手段12からノードi(=1、2、・・・、N)のオフセット現在値Oを得る(ステップS802)。続いて、現在値Oに基づいて、任意の範囲でM個のオフセット侯補Oij(j=1、2、・・・、M)を生成し(ステップS803)、メモリ30に保存して終了する(ステップS804)。尚、上記任意の範囲は、オフセット候補生成手段17が設定することが可能である。
【0075】
次に、遅れ時間算出手段18について説明する。図9は遅れ時間算出手段18の動作の一例を示すフローチャートである。
【0076】
まず、メモリ30から始端ノードのオフセット候補Oijを読み込み(ステップS901)、交通流データ蓄積手段13から当該リンクの交通量と速度データを読み込む(ステップS902)。
【0077】
続いて、オフセット侯補Oijと交通流データに基づいて、当該リンクを走行する車群の時系列データ(車群プロファイル)を生成する(ステップS903)。この車群プロファイルと下流交差点のパラメータに基づいて、停止回数Sと停止時間Dを算出する(ステップS904)。これらを加重結合した値である遅れ時間PIijをメモリ30へ保存する(ステップS905)。
【0078】
次に、オフセット選択手段19について説明する。図10はオフセット選択手段19の動作の一例を示すフローチャートである。
【0079】
まず、対象リンクLGET、オフセット侯補Oij、遅れ時間PIijをメモリ30から読み込む(ステップS1001)。
【0080】
続いて、遅れ時間の最も小さいオフセットとリンクの組合せを抽出する(ステップS1002)。抽出したリンクを探索済のリストLSETに追加し(ステップS1003)、抽出したオフセットをオフセット蓄積手段14に蓄積して終了する(ステップS1004)。
【0081】
次に、サブエリアトリー生成手段20について説明する。図11はサブエリアトリー生成手段20の動作の一例を示すフローチャートである。
【0082】
まず、メモリ30から探索済リンクのリストLSETを読み込む(ステップS1101)。リストLSETの先頭から要素(リンク)を取りだし(ステップS1102)、その始終端ノードの接続関係をトリー情報に追加する(ステップS1103)。
【0083】
続いて、LSETが空かどうか判定する(ステップS1104)。空でなければ、S1102の直前に戻る。空の場合は、得られた結合関係を示すトリー情報をトリー情報蓄積手段15に保存し、終了する(S1105)。
【0084】
例えば、探索によって図7の探索済リストが得られた場合、生成されるサブエリアトリーの形状を示す生成サブエリア1201は図12のようになる。図12はオフセット・サブエリアトリー生成装置10が生成したサブエリアトリーの形状の一例を示す図である。
【0085】
尚、サブエリアトリーを生成する際には、サイクル長の差が所定範囲のサブエリア4同士が隣接する場合に、サブエリア間に存在するリンクを含めて1つのサブエリアトリーを構成するように、トリー情報が生成される。
【0086】
このような道路システム100によれば、信号の青開始時刻差であるオフセットを、伝播過程の遅れ時間が小さくなるように設定することができる。したがって、このオフセットを交通管制システムに適用すれば、追従中においても円滑な交通流を得ることができる。
【0087】
さらに、交差点間にオフセットを与えるリンクを探索して、トリー状の経路であるサブエリアトリーを生成することができる。したがって、交通管制システムに対して、交通状況に応じたリンクの向きや結合先を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、オフセット追従において、追従中の交通状況やオフセットの影響を考慮した制御装置および制御方法ならびに交通管制システム等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態におけるシステム構成の一例を示す図
【図2】本発明の実施形態におけるサブエリア構成の一例を示す概念図
【図3】本発明の実施形態におけるオフセット・サブエリアトリー生成装置の動作の一例を示すフローチャート
【図4】本発明の実施形態における対象リンク探索手段の動作の一例を示すフローチャート
【図5】本発明の実施形態における対象リンク探索手段による探索の一例を示す概念図
【図6】本発明の実施形態における対象リンク探索手段による探索の一例を示す概念図
【図7】本発明の実施形態における対象リンク探索手段による探索の一例を示す概念図
【図8】本発明の実施形態におけるオフセット侯補生成手段の動作の一例を示すフローチャート
【図9】本発明の実施形態における遅れ時間算出手段の動作の一例を示すフローチャート
【図10】本発明の実施形態におけるオフセット選択手段の動作の一例を示すフローチャート
【図11】本発明の実施形態におけるサブエリアトリー生成手段の動作の一例を示すフローチャート
【図12】本発明の実施形態におけるサブエリアトリー生成手段によって生成されたサブエリアトリーの一例を示す概念図
【図13】本発明の実施形態におけるオフセット追従の一例を示す概念図
【図14】従来のオフセット追従の概念図
【符号の説明】
【0090】
100 道路システム
1、201 道路網
2 交差点(ノード)
3 道路
4、202 サブエリア
5 信号機
6 感知器
7 信号制御装置
8 感知器情報計側部
9 信号制御情報算出部
10 オフセット・サブエリアトリー生成装置
11 リンク情報蓄積手段
12 現行パラメータ蓄積手段
13 交通流データ蓄積手段
14 生成オフセット蓄積手段
15 トリー情報蓄積手段
16 対象リンク探索手段
17 オフセット侯補生成手段
18 遅れ時間算出手段
19 リンク・オフセット選択手段
20 サブエリアトリー生成手段
203 キーノード
204 一般ノード
205 リンク
206 グラフ
1201 生成サブエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する信号機間の青開始の時間差を示すオフセットを制御する制御装置であって、
前記隣接する信号機間を結合するリンクを探索する対象リンク探索部と、
前記オフセットに関するオフセット情報に基づいて、前記リンクにおける複数のオフセット候補を所定の範囲で生成するオフセット候補生成部と、
前記リンクにおける交通状況および前記オフセット候補に基づいて、前記リンクにおける車両全体の停止時間に相当する遅れ時間を複数算出する遅れ時間算出部と、
複数の遅れ時間のうち最小の遅れ時間が算出されたオフセット候補を新たなオフセットとして選択するオフセット選択部と
を有する制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、更に、
前記新たなオフセットに対応するリンクを結合し、前記新たなオフセットを伝搬させるトリー状の経路であるサブエリアトリーを生成するサブエリアトリー生成部を有する制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記サブエリアトリー生成部は、信号機を同一周期で動作させる領域を示すサブエリア同士が隣接し、かつ、サイクル長の差が所定範囲である場合、サブエリア間に存在するリンクを含めて1つのサブエリアトリーを生成する制御装置。
【請求項4】
隣接する信号機間の青開始の時間差を示すオフセットを制御するための制御方法であって、
制御装置において、
前記隣接する信号機間を結合するリンクを探索する工程と、
前記オフセットに関するオフセット情報に基づいて、前記リンクにおける複数のオフセット候補を所定の範囲で生成する工程と、
前記リンクにおける交通状況および前記オフセット候補に基づいて、前記リンクにおける車両全体の停止時間に相当する遅れ時間を複数算出する工程と、
複数の遅れ時間のうち最小の遅れ時間が算出されたオフセット候補を新たなオフセットとして選択する工程と
を有する制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の制御方法であって、更に、
前記新たなオフセットに対応するリンクを結合し、前記新たなオフセットを伝搬させるトリー状の経路であるサブエリアトリーを生成するサブエリアトリー生成工程を有する制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の制御方法であって、
前記サブエリアトリー生成工程において、信号機を同一周期で動作させる領域を示すサブエリア同士が隣接し、かつ、サイクル長の差が所定範囲である場合、サブエリア間に存在するリンクを含めて1つのサブエリアトリーを生成する制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図12】
image rotate