説明

制御/調整放出型メチルフェニデート経口製剤

【課題】作用の初期発現が迅速であり、かつ作用持続時間が延長された調整/制御放出型メチルフェニデート経口製剤の提供。
【解決手段】有効量のメチルフェニデートまたは製薬上許容し得るその塩と、基材の約2〜約25%の重量を得るように適用される少なくとも1種のpH依存性コーティングとを含有する基材を含んでなる経口製剤であって、製剤の最大血漿濃度に至るまでの時間を経口投与後約0.5〜約4時間とし、ピーク血漿濃度を経口製剤に含まれるメチルフェニデートの用量20mg当たり約3ng/ml〜約6.5ng/mlとするものであり、該ピーク血漿濃度が、経口投与してから約9時間後に製剤によってもたらされるメチルフェニデートの血漿濃度の約1.0〜約2.0倍である。
【効果】即時放出型メチルフェニデート製剤の標準品よりもピーク濃度が低く、作用が投与間隔の最後で急速に低下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、1998年12月17日に出願された米国特許仮出願第60/112,617号に基づいて優先権
主張し、当該出願の開示内容を本明細書内に参考として組み込むものとする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
徐放性剤形は、(患者の服薬遵守の改善および有害な薬物反応の発生率の低減の両方に
よる)改良された治療法の研究において中心的なものである。即時放出性剤形の投与後に
通常得られるものよりも長い投与後の薬理学的作用時間を提供することは、全ての徐放性
製剤が意図するものである。徐放性組成物を用いて、消化管のある部分に到達するまで薬
物の吸収を遅らせ、従来の即時放出性剤形を投与した時のものよりも長い時間、血流中に
おいて前記薬物を所望の濃度に保つことができる。このようなより長い反応時間は、対応
する作用時間の短い即時放出性調製物を用いては得られない多くの治療上の利益を提供す
る。したがって、治療は、患者の睡眠を妨げることなく継続することができる。これは、
例えば中程度から重度の痛みを伴う患者(例えば術後の患者や癌患者等)、または起床時
に偏頭痛を起こす患者を治療する場合、ならびに睡眠が不可欠な衰弱した患者などを治療
する場合、特に重要である。作用時間の長い薬物調製物のさらなる一般的な利点は、患者
の怠慢や健忘により投与をし損なうのを回避することによる患者の服薬遵守の改善である

【0003】
従来の即効型薬物療法では、周到かつ頻繁に投与することで薬物の有効な定常状態血中
レベルを維持しない限りは、化合物の急速な吸収と全身からの排泄、および代謝による不
活化のために、活性薬物の血中レベルに山と谷が発生し、その結果、患者の維持療法にお
いて特殊な問題が生じてしまう。このことから、制御放出剤形によって、理想的には、濃
度の山/谷比を軽減しながら投与間隔全体にわたって維持される薬物の血中治療濃度を達
成することが、多くの当業者の目標であると考えられる。開発過程の中心をなすのは、有
効成分のin vivoでの放出とこれに続く胃腸管からの吸収に影響を及ぼす数多くの変数で
ある。
【0004】
薬学の分野において、ヒトおよび動物に経口投与した後に組成物中に含まれる薬理学的
に活性な物質の徐放性を提供する該組成物を調製することは公知である。当分野で公知の
徐放性製剤としては、特に、調製物のコーティングの選択的な崩壊を介して、または特別
なマトリックスとの混ぜ合わせによって、活性薬物の放出に影響を及ぼすことにより、該
薬物がゆっくりと放出される、コーティングしたペレット、コーティングした錠剤、およ
びイオン交換樹脂が挙げられる。幾つかの徐放性製剤は、投与後の所定時間の間、単一用
量の活性化合物の関連する連続的な放出を提供する。
【0005】
制御放出および/または徐放性組成物は、当該技術分野において確実に進歩しているも
のの、このような組成物を、特に、注意欠陥過活動性障害(ADHD)や糖尿病等の症状に適用
し得る製剤用に改良することが求められている。
【0006】
注意欠陥障害は、子供における最も一般的な精神障害(Campbellら、1992)であり、そ
の罹患率は4%〜9%であると報告されている(Amanら、1993)。注意欠陥障害(ADD)は
、不注意および衝動性によって特徴付けられ、多動を伴う場合もある(ADHD)(Shaywitz
ら、1984)。他の特徴としては、攻撃性、盗み、虚言、無断欠席、放火、家出、かんしゃ
く、認識および学習問題、ならびに社会的能力の乏しさが挙げられる(Campbellら、1992
)。女児に比べ男児では罹患率が4〜5倍高い(Campbellら、1992)。
【0007】
アンフェタミンなどの興奮薬は、活動調節および注意力調節の障害を持つ子供の治療に
おいて最も効果的な物質であることが分かっており、罹患した子供の70〜80%において有
意な改善をもたらす(Shaywitzら, 1984)。興奮薬の良い効果は、行動能力、社会能力、
知覚能力、運動活動、衝動制御、注意力調節および認識能力を含む様々な領域において実
証されている(Barkley 1977, Kavale 1983, Offenbacherら, 1983, Rosenthalら, 1978
)。
【0008】
メチルフェニデート[dl-トレオ-メチル-2-フェニル-2-(2-ピペリジル)アセテート]は、
多動および注意欠陥障害の治療に最も良く使用される精神興奮薬である。この薬は、他の
精神興奮薬に比べて、良い効果を発現する率が高く、悪い影響を発現する率が低いと思わ
れる。注意力および行動的症状の改善におけるメチルフェニデート(「MPH」)の効力は
、多くの研究によって確認されている。
【0009】
即時放出性メチルフェニデート調製物は、半減期が短いため、子供の授業時間を通して
、適切な治療を確実に行うために、短い間隔で頻繁に投与する必要がある。即時放出性メ
チルフェニデート調製物の急速な効力の発揮(onset)および低下(offset)は、注意欠陥
障害を持つ薬物治療中の子供が、その日のうちの比較的短い時間しか最大効果を得られな
いことを意味する。その短い半減期のため、MPHは通常1日2回投与され、通常は、朝食
後に1回および授業中に1回であり、これは一部の子供達および一部の学校関係者等が明
らかに避ける事柄であって、その結果、処方投薬レジメの服薬遵守が不充分となる(Brow
nら, 1985; Firestone 1982)。服薬遵守は、真昼または午後中頃の投薬を必要とする子
供達にとって大きな問題である。というのは、多くの学校は、授業中に子供たちが薬を服
用することを禁じており、またある学校はしばしば全ての薬は看護婦によって投与される
べきであると主張しているからである。薬の服用における不充分な服薬遵守は、一部には
、多動性の子供の行動の改善に及ぼす薬の影響についての多くの研究において報告された
様々で且つ矛盾する結果を説明し得るものである。即時放出性メチルフェニデートのこれ
らの限界は、効果的な作用期間が長い製品へと関心を向けさせた。即時放出性メチルフェ
ニデート調製物のこれらの限界は、効果的な作用期間が長い製品へと関心を向けさせた。
【0010】
メチルフェニデートの徐放性形態は、市販されている(Ritalin(登録商標)SR)。多
くの臨床試験の結果、注意欠陥多動性障害の治療に携る様々なオピニオンリーダーは、Ci
ba-Geigyにより製造されたRitalin(登録商標)SR(徐放性メチルフェニデート)につい
て以下のコメントを作成した:(i)Ritalin(登録商標)SRは、早朝における行動管理を
可能とする程十分早くは効果を発揮しない;(ii)Ritalin(登録商標)SRは、即時放出
性メチルフェニデートの昼食時の服用によって生成されるような有益な後半の(late)効
果を持たないので、SR製剤を用いることの目的が果たせない;(iii)Ritalin(登録商標
)SRの効果は、1日を通して一貫していないかまたは不安定である。
【0011】
当分野では、当分野の現状の欠点を克服するために、急速に効果を発揮して長時間作用
した後に効力が急速に低下する薬物製剤を開発する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明の目的
患者の服薬遵守の改善につながるメチルフェニデートまたは同様の作用を持つ薬物の新
しい経口投与製剤を提供することが、本発明の目的である。
【0013】
注意欠陥多動性障害(ADHD)等の症状に有効な現在利用可能な調製物に比べて改良され
た新しい経口投与製剤を提供することが、本発明の目的である。
【0014】
子供の授業時間中ずっと適切な治療を確実に行う、メチルフェニデートまたは同様の作
用を持つ薬物の新しい経口投与製剤を提供することが、本発明の目的である。
【0015】
一回(即ち朝)の投与を行うだけで、注意欠陥障害を持つ子供を日中ずっと最大限に治
療することができるようにする新しい経口投与製剤を提供することが本発明の目的である

【0016】
急速に効果を発揮して剤形中に組み込まれた活性薬物が長時間放出された後に急激に効
力が低下する、新しい制御/調節放出性経口投与製剤を提供することが、本発明のさらな
る目的である。
【0017】
全てのタイプの薬学的に活性な成分に対して有用であり、および全てのこのような成分
の放出時間を延長することができる、新しい制御/調節放出性経口投与製剤を提供するこ
とが、本発明の更に別の目的である。
【0018】
急速に効果を発揮し且つ1日中ずっと血漿濃度を持続した後に薬物の血漿濃度が最小効
果濃度未満まで急速に低下する経口制御放出性製剤を提供することが、本発明の更に別の
目的である。
【0019】
全てのタイプの薬学的に活性な成分に有用であり、且つ作用時間を所望の長さに延長す
ることができる「複数層放出(multi-layer release)」(MLR)技術を提供することが、
本発明の更に別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の概要
上記欠点および他の目的に目を向けて、本発明は、一部には、急速な効果の発揮および
1日中ずっと持続される血漿濃度の両方を組合せることを意図する制御放出性製品に関す
る。重要なことに、本発明の製剤は、急速な効力の発揮、延長された作用時間およびその
後の効果の急速な低下、即ち「方形波」状プロフィールを提供する。
【0021】
上記および他の目的に従って、本発明は、有効量のメチルフェニデートまたは製薬上許
容し得るその塩と、少なくとも1種の放出調整物質とを含んでなる経口剤形に一部関する
。該放出調整物質は、製剤の最大血漿濃度に至るまでの時間を経口投与後約0.5〜約4時
間とし、ピーク血漿濃度を経口剤形に含まれるメチルフェニデート20mg用量当たり約3ng
/ml〜約6.5ng/mlとするものであり、該ピーク血漿濃度は、経口投与してから約9時間後
に製剤から放出されるメチルフェニデートの血漿濃度の約1.0〜約2.0倍であり、製剤に含
まれるメチルフェニデートによる作用は、経口投与してから約8〜約12時間後に有効血漿
濃度以下となる。ある好適な実施形態では、経口剤形の最大血漿濃度に至るまでの時間が
経口投与後約0.5〜約2時間である。さらに好適なある実施形態では、ピーク血漿濃度が
、経口投与してから約9時間後に経口剤形から放出されるメチルフェニデートの血漿濃度
の約1.0〜約1.7倍である。さらに好適なある実施形態では、経口剤形に含まれるメチルフ
ェニデートによる作用は、経口投与してから約8〜約10時間後に有効血漿濃度以下となる

【0022】
ある更なる好適な実施形態において該製剤は、経口投与後約0.5〜約4時間で最大血漿濃
度を示し、投与後少なくとも約6時間にわたって効果的な血中レベルを提供する。
【0023】
ある更なる好適な実施形態において該製剤は、血液血漿曲線において約2時間〜約6時間
続く「プラトー」を示す。他の実施形態は、約6時間〜約12時間続く「プラトー」を示す
。「プラトー」は、測定区間の最終点での血漿レベルと測定区間の開始時点での血漿濃度
との差が20%を超えない、好ましくは10%を超えない、安定した血漿濃度によって特徴付
けられる。
【0024】
ある更なる好適な実施形態において、該製剤は、剤形からの活性剤の2峰性放出(bimod
al release)を示す。活性剤の2峰性放出は、剤形から活性剤が2種以上の異なった放出
速度で放出されていることにより特徴付けられる。幾つかの実施形態において、放出速度
は非放出期間または実質的な非放出期間によって隔てられうる、これが常に必要であるわ
けではない。
【0025】
ある更なる好適な実施形態において、該製剤は、活性剤の2相性吸収を示す。活性剤の2
相性吸収は、活性剤が2以上の異なった吸収速度で天然障壁(例えば胃腸管の粘膜内層等
)を通して吸収されることによって特徴付けられる。幾つかの実施形態において、この吸
収速度は、非吸収期間または実質的な非吸収期間によって隔てられ得るが、これは常に必
要であるわけではない。製剤は、活性剤の2相性吸収および2峰性放出の両方を示すことが
でき、この場合、2相性吸収は、2峰性放出速度の関数である。しかし、2相性吸収が常に
放出速度に依存するというわけではなく、2峰性放出を示さない製剤においても起こり得
る。
【0026】
好適な実施形態では、製剤は2峰性放出および/または二相吸収を示し、血漿曲線にお
いて約2時間〜約6時間持続する「プラトー」を示す。他の実施形態では、約6時間〜約
12時間持続する「プラトー」を示す2峰性放出および/または二相吸収が見られる。他の
実施形態では、活性薬剤の有効血漿レベルが剤形の投与後約16〜約18時間持続する。
【0027】
本発明はさらに、有効量のメチルフェニデートまたは製薬上許容し得るその塩と、少な
くとも1種の放出調整物質とを含んでなる経口剤形に関する。該放出調整物質は、製剤を
in vitroで溶解させた場合に、薬物を0.25時間後に約0〜約45%、約1時間後に約10〜約
50%、約4時間後に約30〜約80%、8時間後に約65%以上、約12時間後に約80%以上放出
させるものであり、該経口剤形はさらに、ヒト患者へ経口投与した場合に、最大血漿濃度
に至るまでの時間が経口投与後約0.5〜約2時間であり、経口投与後約8〜約10時間持続
する作用持続時間を示し、該薬物血漿濃度は、経口投与後約8〜約10時間で最小有効血漿
濃度未満のレベルまで急速に低下する。ある好適な実施形態では、経口剤形は、ヒト患者
へ経口投与した場合に、経口剤形に含まれるメチルフェニデート20mg用量当たり約4ng/m
l〜約6.5ng/mlのピーク血漿濃度を示す。ある好適な実施形態では、経口剤形は、経口投
与した場合に、経口剤形に含まれるメチルフェニデート20mg用量当たり約5ng/ml〜約6.5
ng/mlのピーク血漿濃度を示す。さらに好適なある実施形態では、経口剤形は、経口投与
約9時間後に製剤から放出されるメチルフェニデートの血漿濃度の約1.0〜約2.0倍のピー
ク血漿濃度を示し、より好ましくは、経口投与約9時間後に製剤から放出されるメチルフ
ェニデートの血漿濃度の約1.0〜約1.7倍のピーク血漿濃度を示す。
【0028】
薬物であるメチルフェニデートとADHDについては、本明細書に記載の新規製剤の利点と
して以下の事項を含む:a)学校で昼食時に服用する必要がなくなる、b)即時放出型メチル
フェニデート製剤と同等の薬効を発現することができる、c)作用の持続時間が授業時間よ
りも長い(即ち、有効血中レベルが10〜12時間持続する)。
【0029】
本発明のある実施形態では、制御/調整放出製剤は、多層放出(「MLR」)技術に基づく
ものであり、薬剤製品はビーズを含む経口カプセルの形状であってよい。カプセルに封入
されたビーズの場合、各ビーズには異なる特性を有する一連の層、即ち、即時放出外層、
放出遅延層(腸溶性コート)、即時放出層を覆う制御放出層が含まれる。MLR製剤は、経口
投与した際に、即時放出型薬物の一部を含む製剤の外層が急速に溶解して吸収され、これ
により薬物が治療血漿レベルまで急速に上昇するように設計されている。この後、吸収の
起こらない期間が続き(腸溶性コーティングのため)、その後、薬物が製剤から制御放出さ
れて血漿レベルが維持される。即時放出コアから薬物が吸収された後は、血漿レベルが急
速に低下する。MLR製剤から薬物を放出させることにより、薬物の血漿レベルは、時間/
濃度曲線上にプロットすると「方形波」の形状を示す。
【0030】
ある好適な実施形態において、アクリル樹脂を用いて、所定の若しくは指定された期間
にわたって治療的活性成分の制御遅延放出を提供する。このため、アクリル樹脂は、「基
礎組成物」の有意な部分を含む。このようなアクリル樹脂から調製される基礎組成物は、
ヒトまたは動物への投与(一般的には経口投与)後5時間〜24時間もの時間にわたる治療
的活性成分の徐放性を提供する。
【0031】
本発明の他の実施形態において、本発明の製剤は、
(i)即時放出性粒子(例えばビーズなど)と腸溶性コーティングを施した即時放出性粒
子(例えばビーズなど)との混合物;(ii)即時放出性粒子(例えばビーズなど)と腸溶
性コーティングを施した制御放出性粒子(例えばビーズなど)との混合物;または(iii
)即時放出性粒子(例えばビーズなど)と制御放出性粒子(例えばビーズなど)との混合
物を含む。これらの各ケースにおいては、異なる放出特性を有する粒子の混合物が一緒に
ブレンドされ、硬質ゼラチンカプセルの中に充填される。
【0032】
ある好適な実施形態では、本発明の制御/調整放出型メチルフェニデート製剤は、複数
の単一ビーズからなり、各ビーズには、即時放出成分と、吸収過程において遅れを生じさ
せるための腸溶性制御放出成分とが含まれる。薬剤製品は、メチルフェニデートビーズを
含む経口カプセルである。各ビーズには、異なる放出特性を有する一連の層、即ち、即時
放出外層、遅延放出層、制御放出層、および即時放出コアが含まれる。最終製品は、即時
放出成分と制御放出成分の双方を有する多層放出(MLR)ビーズを含むカプセルである。こ
のカプセルは、胃内容排出後まで溶解を遅らせるために腸溶性コーティングされた制御放
出ビーズからなる。腸溶性制御放出ビーズは、吸収の初期速度をリタリン(Ritalin)即時
放出型錠剤と同等またはそれ以上にするための即時放出性トップコートを有する。即時放
出成分はビーズ当たりの総用量の40%に相当し、制御放出成分は60%に相当する。この製
剤は、経口投与後に治療血漿レベルまで急速な上昇を示し(外層の急速な溶解と吸収のた
め)、その後、吸収の低下した期間が続き、次いで即時放出コアからの制御放出が生じて
治療血漿レベルが維持されるように設計されている。即時放出コアの吸収が終わると、メ
チルフェニデートの排泄動態に従って血漿レベルは急速に低下すると考えられる。本製剤
の生体利用性の研究結果からは、本明細書中に示す薬学的な理論的解釈と一致する二相放
出プロフィールが明らかである。
【0033】
本発明の他の実施形態において、該製剤のビーズサイズは、胃排出とビーズのサイズと
の間の相関関係に基づいて、所望の薬物動力学プロフィールを得るために、調節すること
ができる。ビーズのサイズが小さいほど、大きなサイズのビーズに比べて胃排出が速くな
る。
【0034】
本発明の他の目的および利点は、本明細書および添付の特許請求の範囲をさらに読み深
めていくに従い、明らかとなろう。
【0035】
本発明の意図において、「pH依存性」という用語は、環境pH(例えばin-vitro溶出媒体
における変化によるもの、または剤形の胃腸管通過によるものなど)によって変化する特
性(例えば溶出)を有するものとして定義される。
【0036】
本発明の目的において、「pH非依存性」という用語は、pHによって実質的に影響を受
けない特性(例えば溶出)を有するものと定義され、例えば、つまり米国薬局方XXIIのUS
P Paddle法(1990)を用いて100rpmにて900mlの緩衝水溶液中においてin-vitroで測定し
たときの、あるpHで放出されるメチルフェニデートの量とそれ以外のpHで放出される量と
の差がどの時間においても10%未満であるというようなことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
詳細な説明
メチルフェニデート(2-ピペリジン酢酸,α-フェニル-,メチルエステル)は、アンフェタ
ミンに構造上関連性のあるピペリジン誘導体であり、塩酸塩の状態で市販されている。メ
チルフェニデートは、多動および注意欠陥障害の治療に最も頻繁に使用される精神刺激薬
である。メチルフェニデートは、他の精神刺激薬よりも陽性作用が高く、かつ有害作用が
低い傾向がある。本発明の制御/調整放出型メチルフェニデート製剤は、神経終末トラン
スポーターにおける取込み阻止の推定作用機序によって、細胞外ドーパミンおよびノルエ
ピネフリンを増加させることで作用すると考えられる。
【0038】
メチルフェニデートの薬理特性は、本質的にはアンフェタミンと同一である。しかしな
がら、アンフェタミンとは対照的に、メチルフェニデートは、運動活動よりも精神活動に
対してより顕著な効果を示すマイルドなCNS刺激薬である。メチルフェニデートにはエリ
トロ異性体およびトレオ異性体が存在する。運動刺激作用は立体構造に特異的なものであ
るが、モノアミンオキシダーゼ阻害はそうではない。メチルフェニデートの運動刺激作用
の機序は、モノアミンオキシダーゼの阻害以外の機序であると考えられている。d-トレオ
体メチルフェニデートによるカテコールアミン取込みのシナプス抑制は、ラセミ薬物の挙
動および昇圧作用に本来関与している可能性が研究から示唆されている。メチルフェニデ
ートは、アンフェタミンに十分匹敵する用量依存性の挙動プロフィールを促進する。アン
フェタミンは、ドーパミンに対する作用だけでなく、細胞外ノルエピネフリンとセロトニ
ンを増加させる。最近の研究から、メチルフェニデートは、一時的に投与すると細胞外ド
ーパミンとノルエピネフリンが増加することが明らかになっており、神経終末トランスポ
ーターの取込み阻害薬であると推定されているメチルフェニデートの作用機序と一致する

【0039】
メチルフェニデートを投与した後のピーク血中レベルは1〜3時間目に確認されている
(Farajら, 1974; Milbergら, 1975)。該薬物の半減期は、成人および小児で2〜4時間で
ある(Farajら、1974; Hungundら、1979; Soldinら, 1979)。Hungundら(1979)には、4人
の多動症小児におけるメチルフェニデートの薬物動態ついて報告されている。半減期の平
均は2.5時間であった。このパラメータには殆どばらつきはなかったが、全身クリアラン
スは3倍の変動があった。このことから、血漿メチルフェニデートレベルは、患者間でか
なりばらつくことが示唆された。
【0040】
メチルフェニデートに対する代謝の主な経路は、リタリン酸(ritalinic acid)への脱エ
ステル化であり、リタリン酸は尿中に排泄される総メチルフェニデートの75%〜91%を占
めている。他の代謝産物は、ラクタムへのp-ヒドロキシル化または酸化によって生じる。
【0041】
本発明のメチルフェニデート製剤は6歳以上の小児へ投与可能であり、好ましくは、そ
の作用持続時間が約8〜約12時間、好ましくは約8〜約10時間である。本発明のメチルフ
ェニデート製剤は朝食時に服用すべきであり、朝食時および昼食時の2回に分けて服用さ
れるメチルフェニデート即時放出型製剤の代わりになるよう設計されている。即時放出型
メチルフェニデートを日に3回以上の高頻度で投与する必要のある患者に、本発明のメチ
ルフェニデート製剤を服用する場合には、即時放出型メチルフェニデートを夕食時にさら
に処方してもよい。メチルフェニデートMLRカプセルの内容物を軟らかい食品にふりかけ
て服用させてもよい。
【0042】
本発明の制御/調節放出性製剤は、顆粒、球状物、ビーズ、ペレット、イオン交換樹脂
ビーズ、およびその他の多粒子系などの任意の多粒子系と共に使用して、治療的活性剤の
所望の徐放性を得ることができる。本発明に従って調製されたビーズ、顆粒、球状物また
はペレットなどは、カプセルまたは他の適切な単位剤形に入れて提供することができる。
時間をかけて所望の用量の薬物を提供するのに有効な量の多粒子を、カプセルに入れたり
、パケットに入れたり、食事に振りかけたり、錠剤などのその他の任意の適切な経口固体
剤形に取り入れたりしてもよい。一方、本発明は、マトリックス錠剤の形態をとってもよ
い。このような任意の製剤全てについては、薬物の最初の即時放出により急速に効果を発
揮し、この効果の発揮が即時放出性製剤に類似するものであり、さらに製剤により血漿中
に治療上有効なレベルの薬物を所望の時間にわたって維持し、その後、典型的な徐放性製
剤に比べて比較的速い血中血漿レベルの減衰をもたらす徐放性成分が得られるように調製
されることが望ましい。in vivo時間/濃度プロットとして見た場合、本発明の製剤から得
られる薬物の血漿レベルは「方形波」を呈している。即時放出性成分は本発明の製剤に含
まれるメチルフェニデートの合計用量の約30%〜約40%を占めることが好ましく、制御放
出性成分は該合計用量の約60%〜約70%を占めることが好ましい。本発明のMLR実施形態
を含む特定の好適な実施形態では、即時放出性成分は、製剤に含まれるメチルフェニデー
トの合計用量の約40%を占め、制御放出性成分は、該合計用量の約60%を占める。
【0043】
メチルフェニデートの場合、作用の開始は、経口剤形を投与した約0.5〜約4時間で生じ
ることが望ましく、約0.5〜約2時間後に生じることが好ましく、さらに、用量の経口投与
後約8〜約12時間、より好ましくは約8〜約10時間で該剤形がメチルフェニデートの有効な
血漿レベルを示さなくなることが望ましい。このようにして、メチルフェニデートの用量
を、朝、学校が始まる前に子供に投与して、学校の始まりと共に所望の効果をもたらし、
学校が終わるまで、好ましくは夕食の前までは薬物の薬理学的作用が衰えずに、食欲抑制
剤として作用する副作用を生じないようにできる。
【0044】
本発明の製剤は、経口投与後に治療血漿レベルまで急速な上昇を示し(外層の急速な溶
解と吸収のため)、その後、吸収の低下した期間が続き、次いで即時放出コアからの制御
放出が生じて治療血漿レベルが維持されるように設計されている。即時放出コアの吸収が
終わると、メチルフェニデートの排泄動態に従って血漿レベルは急速に低下すると考えら
れる。
【0045】
胃腸液中に活性物質が単に存在するだけでは、生物学的利用能を保証しないことが一般
に理解されている。生物学的利用能は、より分かりやすく言い換えると、薬物物質が体循
環に吸収されて標的組織部位に効く程度または量である。吸収されるためには、活性薬物
物質は溶液に含まれていなければならない。用量ユニットに含まれる所与の割合の活性薬
物物質が、適切な生理学的液の溶液に入るのに必要とされる時間は、溶出時間として知ら
れている。用量ユニットからの活性物質の溶出時間は、特定の時間にわたって用量ユニッ
トから放出される活性薬物物質の量の割合として、標準的条件下で行われる検査法により
決定される。胃腸管の生理学的液が、溶出時間を決定するための媒介である。従来技術の
医薬組成物の溶出時間、および検査方法は、世界中の公的解説に記載されている。
【0046】
薬物物質がその担体から溶出するのに影響を及ぼす多数の様々な因子があるが、特定の
組成物からの薬理学上活性な物質について決定された溶出時間は、比較的一定で再現可能
である。溶出時間に影響を及ぼす様々な因子としては、溶出溶媒媒体に提示される薬物物
質の表面積、溶液のpH、特定の溶媒媒体中での物質の溶解度、および溶媒媒体中での溶出
物質の飽和濃度の推進力がある。従って、組織部位にわたる吸収により溶出媒体から成分
が移動することにより、活性薬物物質の溶出濃度はこの安定状態において動的に変化する
。生理学的条件下では、溶出物質の飽和レベルは、用量形態レザーブから補充されること
によって溶媒媒体中の溶出濃度を比較的均一および一定に維持して、安定状態の吸収を得
る。
【0047】
胃腸管の組織吸収部位にわたる輸送は、膜の両側に対するドナン浸透平衡力により影響
を受ける。なぜなら、推進力の方向は、膜の両側における活性物質の濃度(すなわち、胃
腸液に溶出される量と、血液中に存在する量と)間の差異であるからである。血中レベル
は、希釈、循環変化(circulatory changes)、組織貯留(tissue storage)、代謝交換およ
び全身性分泌により常に変化するため、活性物質の流れは、胃腸間から血流へと向けられ
る。
【0048】
薬物物質の溶出及び吸収の両方に影響を及ぼす様々な因子に関わらず、多くの場合、用
量形態について決定されたin vitro溶出時間と、in vivo生物学的利用能との間に重要な
相関関係が成立する。この相関関係は、当該分野においてあまりに確固として成立してい
るので、溶出時間は、特定の用量形態に含まれる多くのクラスの活性成分について生物学
的利用能の可能性を一般的に示すものとなった。この関係を考慮すると、組成物について
決定した溶出時間は、制御放出性製剤をin vivoで検査するべきかを評価する場合の考慮
のための重要な根本的特徴の1つである。
【0049】
上述したことを念頭にいれて、本発明による製剤について、様々な時点での薬物のin v
itro溶出を以下に示す:

【0050】
本発明のある好ましい実施形態における、本発明による製剤について、様々な時点での
薬物のin vitro溶出を以下に示す:

【0051】
徐放性コーティング
ある好ましい実施形態においては、薬物は物質中または物質上に組み入れられ、その上
に徐放性コーティングを施す。例えば、以下のようにして、薬物を物質中または物質上に
含ませることができる。すなわち、(i)(例えば、微晶性セルロースなどの製薬上許容され
る球状化剤(spheronizing agent)と共に)マトリクス球状物に組み入れる、(ii)不活性の
製薬上許容されるビーズ(例えば、ノンパレイユビーズ)上にコーティングする、(iii)通
常の放出性錠剤コアに組み入れる、または(iv)徐放性担体物質を含むマトリクスを含んで
なる錠剤コアに組み入れる。その後、徐放性コーティングを、上記(i)〜(iv)のような基
質に施す。本発明の用量形態は、放出の調節または製剤の保護に好適な1つ以上の物質に
より随意にコーティングできる。一実施形態では、コーティングは、(例えば、胃腸液に
曝された場合に)pH依存性放出またはpH非依存性放出のいずれかを可能にするために施さ
れる。pH依存性コーティングは、胃腸(GI)管(例えば、胃または小腸)の所望の領域での薬
物の放出をもたらす。pH非依存性コーティングが望ましい場合、環境液(例えば、GI管)の
pH変化とは無関係に最適な放出を得られるようにコーティングを設計する。また、GI管の
1つの所望される領域(例えば、胃)において用量の一部を放出し、残りの用量をGI管のそ
の他の領域(例えば、小腸)において放出する組成物を調製することも可能である。
【0052】
pH依存性コーティングを利用して製剤を得る本発明による製剤には、また繰返し作用効
果を授けてもよい。すなわち、非保護薬物を腸溶性被覆物上にコーティングして胃で放出
させ、残りの腸溶性コーティングにより保護されたものをさらに下の胃腸管で放出させる
ようにしてもよい。本発明に従って使用することができるpH依存性のコーティングには、
シェラック、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、フタル酸
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxyproplmethylcellulose phthalate)、メタ
クリル酸エステルコポリマー、ゼインなどが含まれる。
【0053】
ある好ましい実施形態においては、薬物を含む基質(例えば、錠剤コアビーズ、マトリ
クス粒子)を、(i)アルキルセルロース、(ii)アクリルポリマー、または(iii)それらの混
合物から選択される疎水性物質でコーティングする。コーティングは、有機または水性の
溶液または分散溶液の形態で適用できる。コーティングは、基質の約2〜約25%の重量を
得るように適用し、所望の徐放性プロフィールを得ることができる。このような調製は、
例えば、本発明の譲受人に譲渡され、参照より本明細書中に組み込まれる米国特許第5,27
3,760号および同第5,286,493号に詳細に記載されている。粒子は、他の所定の性質と組み
合わせて、所望のin vitro放出速度およびin vivo血漿レベルが得られるような、薬物の
放出を可能にする物質で膜コーティングされることが好ましい。本発明の徐放性コーティ
ング製剤は、平滑かつ見かけ良く、顔料および他のコーティング添加物を支持可能で、非
毒性、不活性および不粘着な強固かつ連続した膜を作製することが可能である。
【0054】
本発明に従って使用できる徐放性製剤およびコーティングの他の例としては、参照より
その全体が本明細書中に組み込まれる譲受人の米国特許第5,324,351号、同第5,356,467号
、および同第5,472,712号のものが含まれる。
【0055】
アルキルセルロースポリマー
アルキルセルロースを含むセルロース物質およびポリマーは、本発明によるビーズをコ
ーティングするのに良く適した疎水性物質を提供する。単なる例示であるが、好ましいア
ルキルセルロースポリマーの1つは、エチルセルロースである。しかし、他のセルロース
および/またはアルキルセルロースポリマーも単独または任意に組合せられて、本発明に
よる疎水性コーティングの全体または一部として容易に用いることができることを当業者
は理解するであろう。
【0056】
市販のエチルセルロースの分散水溶液の1つに、Aquacoat(登録商標)(FMC Corp., Phil
adelphia, Pennsylvania, U.S.A.)がある。Aquacoat(登録商標)は、エチルセルロースを
水不混和性の有機溶媒に溶解させ、界面活性剤および安定剤の存在下で水中で乳化させる
ことにより調製される。サブミクロン小滴を生成するために均質化した後、真空下で有機
溶媒を蒸発させて、偽ラテックスを形成する。製造工程の間、偽ラテックスには可塑剤が
取り入れらない。従って、偽ラテックスをコーティングに使用する場合、使用前に、Aqua
coat(登録商標)を適切な可塑剤と密接に混合する必要がある。
【0057】
別のエチルセルロースの分散水溶液は、Surelease(登録商標)(Colorcon, Inc., West P
oint, Pennsylvania, U.S.A.)として市販されている。この製品は、製造工程の間、可塑
剤を分散溶液に取り入れることで調製される。ポリマー、可塑剤(セバシン酸ジブチル)お
よび安定剤(オレイン酸)のホットメルトを、均質混合物として調製し、それをアルカリ溶
液で希釈して、基質上に直接適用できる分散水溶液を得る。
【0058】
アクリルポリマー
制御放出性コーティングを含む疎水性物質は、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマ
ー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメ
タクリレート、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコ
ポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレ
ート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポ
リ(無水メタクリル酸)、ならびにグリシジルメタクリレートコポリマーを含む(ただしこ
れらに限定されない)、製薬上許容可能なアクリルポリマーを含んでいてもよい。
【0059】
特定の好適な実施形態では、アクリルポリマーは、1つ以上のアンモニアメタクリレー
トコポリマーを含む。アンモニアメタクリレートコポリマーは、当該分野で周知であり、
低量の4級アンモニウム基を有する、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの
完全に重合されたコポリマーとしてNF XVIIに記載されている。
【0060】
所望の溶出プロフィールを得るために、異なる物理的特性を有する2つ以上のアンモニ
アメタクリレートコポリマー(例えば、4級アンモニウム基のモル比が異なるもの)を中性(
メト)アクリル酸エステルに入れる必要があるかもしれない。
【0061】
特定のメタクリル酸エステル系ポリマーは、本発明に従って使用されうるpH依存性コー
ティングを調製するのに有用である。例えば、Rohm Tech, Inc.製のEudragit(登録商標)
として市販され、メタクリル酸コポリマーまたは重合化メタクリレートとしても知られて
いる、ジエチルアミノエチルメタクリレートおよび他の中性メタクリル酸エステルから合
成されるコポリマーのファミリーがある。Eudragit(登録商標)は、いくつかの異なる種類
がある。例えば、Eudragit E(登録商標)は、酸性溶媒中で膨潤し溶解するメタクリル酸コ
ポリマーの一例である。Eudragit L(登録商標)は、約5.7未満のpHでは膨潤せず、約6を
上回るpHで可溶なメタクリル酸コポリマーである。Eudragit S(登録商標)は、約6.5未満
のpHでは膨潤せず、約7を上回るpHで可溶である。Eudragit RL(登録商標)およびEudragi
t RS(登録商標)は、水で膨潤し、これらのポリマーに吸収される水の量はpHに依存するが
、Eudragit RLおよびRS(登録商標)でコーティングされた剤形は、pHに依存しない。
【0062】
特定の好適な実施形態では、アクリルコーティングは、Eudragit RL30D(登録商標)およ
びEudragit RS30D(登録商標)という商品名でそれぞれRohm Pharmaから市販されている2
つのアクリル樹脂ラッカーの混合物を含む。Eudragit RL30D(登録商標)およびEudragit R
S30D(登録商標)は、低量の4級アンモニウム基を有するアクリル酸エステルおよびメタク
リル酸エステルのコポリマーであり、残る中性(メト)アクリル酸エステルに対するアンモ
ニウム基のモル比はEudragit RL30D(登録商標)において1:20、Eudragit RS30D(登録商標
)において1:40である。平均分子量は約150,000である。コード符号RL(高透過性)およびR
S(低透過性)は、これらの薬物の透過性特性を指す。Eudragit RL/RS(登録商標)混合物は
、水および消化液中で不溶性である。しかし、これらで形成されるコーティングは、水溶
液および消化液中で膨潤および浸透可能である。
【0063】
本発明のEudragit RL/RS(登録商標)分散溶液は、所望の溶出プロフィールを有する徐放
性製剤を最終的に得るために、任意の割合で混合してよい。所望の持続放出性製剤は、例
えば、Eudragit RL(登録商標) 100%、Eudragit RL(登録商標) 50%およびEudragit RS(
登録商標) 50%、ならびにEudragit RL(登録商標) 10%およびEudragit RS(登録商標) 90
%から得られる抑制コーティングにより達成される。勿論、当業者は、例えば、Eudragit
L(登録商標)などの他のアクリルポリマーも使用できることは理解できるであろう。
【0064】
可塑剤
アルキルセルロースまたはアクリルポリマーなどの疎水性物質の分散水溶液がコーティ
ングに含まれる本発明の実施形態では、疎水性物質の分散水溶液に有効量の可塑剤を含ま
せることで、徐放性コーティングの物理的性質がさらに改善される。例えば、エチルセル
ロースは比較的高いガラス転移温度を有し、通常のコーティング条件下では可塑性膜を形
成しないため、徐放性コーティングを含むエチルセルロースコーティングをコーティング
材料として使用する前に可塑剤を入れることが好ましい。一般に、コーティング溶液に含
まれる可塑剤の量は、膜形成剤の濃度に基づく(例えば、最も多くの場合には、膜形成剤
の約1〜約50重量%)。しかし、可塑剤の濃度は、用途に応じた特定のコーティング溶液お
よび方法での注意深い実験を行って初めて正確に決定できるものである。
【0065】
エチルセルロースのための適切な可塑剤の例としては、セバシン酸ジブチル、フタル酸
ジエチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、およびトリアセチンなどの水不溶
性可塑剤が挙げられるが、その他の水不溶性可塑剤(例えば、アセチル化モノグリセリド
、フタル酸エステル、ヒマシ油など)も使用可能である。クエン酸トリエチルは、本発明
のエチルセルロースの分散水溶液に特に好ましい可塑剤である。
【0066】
本発明のアクリルポリマーに適した可塑剤の例としては、クエン酸トリエチルNF XVIな
どのクエン酸エステル、クエン酸トリブチル、フタル酸ジブチル、および場合によっては
1,2-プロピレングリコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。Eudragit RL/RS
(登録商標)ラッカー溶液などのアクリル膜から形成される膜の可塑性向上に適しているこ
とが分かっているその他の可塑剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコ
ール、フタル酸ジエチル、ヒマシ油、およびトリアセチンが挙げられる。クエン酸トリエ
チルは、本発明のエチルセルロースの分散水溶液に特に好ましい可塑剤である。
【0067】
少量のタルクを添加することにより、分散水溶液が、処理の途中で固着して研磨剤とし
て作用する性向を低下させることがさらに分かっている。
【0068】
疎水性物質の分散水溶液を使用して、薬物を含む基質(例えば、ノンパレイユ(nu parie
l)18/20ビーズなどの不活性医薬ビーズ)をコーティングする場合、得られる複数の安定化
固形制御放出性ビーズを、その後、環境液(例えば、胃液または溶出媒体)に摂取および接
触した場合に有効な制御放出性用量を得るのに十分な量で、ゼラチンカプセルに入れる。
また、基質は、徐放性コーティング、あるいはさらにOpadry(登録商標)などの膜形成剤ま
たは着色剤でコーティングされた錠剤コアであってもよい。
【0069】
アルキルセルロースなどの疎水性ポリマーの分散水溶液を基質に適用する製剤において
は、コーティングされた製剤が、例えば、高温および/または高湿といった保存条件に曝
されても、実質的に影響を受けない溶出プロフィールを獲得するという最終目標に達する
まで、コーティングされた基質を可塑化ポリマーのガラス転移温度よりも高い温度且つ周
囲状態を上回る相対湿度にて硬化させることが好ましい。一般的に、このような製剤にお
いて、硬化時間は約24時間以上であり、硬化条件は例えば約60℃で、相対湿度は85%であ
る。このような製剤の安定化についての詳細な情報は、米国特許第5,273,760号、同第5,6
81,585号、および同第5,472,712号に記載されており、該文献全てについてその内容全体
を参照として本明細書に援用する。
【0070】
アクリルポリマーの分散水溶液を基質に適用する製剤においては、コーティングされた
製剤が、例えば、高温および/または高湿といった保存条件に曝されることで実質的に影
響を受けない溶出プロフィールを獲得するという最終目標に到達するまで、コーティング
された基質が可塑化ポリマーのガラス転移温度より高い温度にて硬化されることが好まし
い。一般的に、硬化時間は24時間以上で、硬化温度は例えば約45℃である。このような製
剤の安定化についての詳細な情報は、米国特許第5,286,493号、同第5,580,578号および同
第5,639,476号に記載されており、該文献全てについてその内容全体を参照として本明細
書に援用する。
【0071】
本発明のコーティングされた製剤の徐放性プロフィールは、例えば、疎水性物質の分散
水溶液でコーティングする量を変化させること、疎水性物質の分散水溶液に可塑剤を添加
する手法を変えること、疎水性物質に対する可塑剤の量を変化させること、追加の成分ま
たは賦形剤を含有させること、製造方法を変えることなどによって変えることができる。
最終的な製品の溶出プロフィールも、例えば、抑制コーティングの厚みを厚くしたり薄く
したりすることにより変えることができる。
【0072】
治療上の有効成分でコーティングされた球状物またはビーズは、例えば、治療上の有効
成分を水に溶解し、その溶液をウスターインサート(Wuster insert)を使用して基質(例え
ば、ノンパレイユ18/20ビーズ)に噴霧することにより調製される。適宜、ビーズをコーテ
ィングする前に追加の成分を添加して、薬物とビーズとの結合を補ったり、および/また
は溶液を着色したりする。例えば、着色料が入った、または入っていないヒドロキシプロ
ピルメチルセルロースなどを含む製品(例えば、Colorcon, Incから市販されているOpadry
(登録商標))を溶液に添加して、該溶液をビーズに適用する前に (例えば、約1時間)混合
してもよい。このビーズの例の場合、得られるコーティングされた基質は、任意に防護剤
(barrier agent)でさらにコーティングして、治療上の有効成分を疎水性の制御放出性コ
ーティングから分離してもよい。適切な防護剤の例としては、ヒドロキシプロピルメチル
セルロースを含むものがある。しかし、当該分野で公知の膜形成剤を任意に使用できる。
防護剤は、最終製品の溶出速度に影響を与えないことが好ましい。
【0073】
次いで、ビーズを、疎水性物質の分散水溶液でオーバーコーティングする。疎水性物質
の分散水溶液は、有効量の可塑剤(例えば、トリエチルクエン酸)をさらに含むことが好ま
しい。予め調製されたエチルセルロースの分散水溶液(例えば、Aquacoat(登録商標)また
はSurelease(登録商標)など)が使用できる。Sureleaseを使用する場合、可塑剤を別に添
加する必要はない。あるいはまた、予め調製されたアクリルポリマーの分散水溶液(例え
ば、Eudragit)を使用してもよい。
【0074】
本発明のコーティング溶液は、膜形成剤、可塑剤および溶媒系(すなわち、水)の他に、
着色料を含有させて、外観を良くし、製品区別できることが好ましい。着色料は、疎水性
物質の分散水溶液の代わりにまたはそれに加えて、治療的活性剤の溶液に添加してもよい
。例えば、着色料を、アルコールまたはプロピレングリコールベースの着色分散溶液、磨
砕アルミニウムレーキ(aluminum lake)および乳白剤(二酸化チタン)を使用して、水溶
性ポリマー溶液に剪断力(shear)をかけながら、次いで可塑化Aquacoatに低い剪断力(shea
r)を用いて着色料を添加することにより、Aquacoatに添加してもよい。あるいはまた、本
発明の製剤を着色するために任意の適切な方法を使用してもよい。アクリルポリマーの分
散水溶液を使用した製剤を着色するのに適切な成分としては、二酸化チタン、および酸化
鉄顔料などの顔料が挙げられる。ただし、顔料を取り込む場合には、コーティングの遅延
作用が上昇することがある。
【0075】
疎水性物質の可塑化分散水溶液を、治療的活性剤を含む基質に、当該分野で公知の適切
な噴霧装置を任意に使用して噴霧して施すことができる。好ましい方法においては、アク
リルポリマーコーティングが噴霧される間、下から噴射されるエアジェットによりコア物
質を流動化して乾燥させるビュルスター流動床系を使用する。コーティングされた基質が
水性溶液(例えば、胃液)に曝された場合に治療的活性剤(すなわち、薬物)の所定の徐放を
得るのに十分な量の疎水性物質の分散水溶液を、治療的活性剤の物理的特性および可塑剤
の取り込みかたなどを考慮して施すことが好ましい。疎水性物質でコーティングした後、
膜形成剤(例えば、Opadry)のさらなるオーバーコーティングを任意にビーズに施してもよ
い。このオーバーコーティングは、施される場合には、ビーズの凝集を実質的に減少させ
るために施される。
【0076】
本発明の徐放性製剤からの薬物の放出は、1つ以上の放出調節剤を添加することで、ま
たはコーティングにより1つ以上の進路を作ることで、さらに影響を与えることができる
(すなわち、所望の速度に調節できる)。疎水性物質と水溶性物質との比率は、とりわけ、
必要とされる放出速度および選択された物質の溶解特性などの要因に応じて決定される。
【0077】
孔形成剤として機能する放出調節剤は、有機物質または無機物質であり、使用環境にお
いてコーティングから溶出、抽出または浸出できる物質を含む。孔形成剤は、ヒドロキシ
プロピルメチルセルロースなどの1つ以上の親水性物質を含んでいてもよい。
【0078】
本発明の徐放性コーティングはまた、デンプンおよびゴムなどの侵食促進剤を含むこと
もできる。
【0079】
本発明の徐放性コーティングはまた、例えば、重合鎖において炭酸基が再度生じる炭酸
の直鎖状ポリエステルからなるポリカーボネートなど、使用環境下で微孔性積層を作るの
に有用な物質を含んでいてもよい。
【0080】
放出調節剤はまた、半透性ポリマーを含んでいてもよい。
【0081】
特定の好適な実施形態では、放出調節剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラ
クトース、ステアリン酸金属塩、および前記の任意の混合物から選択される。
【0082】
本発明の徐放性コーティングはまた、少なくとも1つの進路、オリフィスなどを含む出
口を含んでいてもよい。進路は、米国特許第3,845,770号、同第3,916,889号、同第4,063,
064号および同第4,088,864号(全て参照により本明細書に援用する)に開示されているよう
な方法により形成できる。進路は、円、三角、四角、楕円、変形などの任意の形状であっ
てよい。
【0083】
本発明の基質は、球状化されて球状物を形成しうる活性剤成分と共に、球状化剤により
調製されてもよい。微晶性セルロースが好ましい。適切な微晶性セルロースとしては、例
えば、Avicel PH 101(商品名、FMC Corporation)として販売されている物質がある。この
ような実施形態では、活性成分および球状化剤の他に、球状物は結合剤を含んでいてもよ
い。低粘度の水溶性ポリマーなどの適切な結合剤は、医薬分野の当業者に周知である。し
かし、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性ヒドロキシ低級アルキルセルロースが
好ましい。さらに(あるいはまた)、球状物は、水溶性ポリマー、特にアクリルポリマー、
メタクリル酸-アクリル酸エチルコポリマーなどのアクリルコポリマー、またはエチルセ
ルロースを含んでいてもよい。このような実施形態では、徐放性コーティングは、通常、
(a)単独もしくは脂肪アルコールと混合されたワックス、または(b)シェラックもしくは
ゼイン、などの水不溶性物質を含む。
【0084】
本発明の特に好適な実施形態では、制御/調節放出メチルフェニデート製剤は、コーテ
ィングされた不活性ビーズを含む多層放出(MLR)製剤として調製される。このような製剤
を製造するための1つの方法の概要を以下に要約する。まず、約8%の薬物充填で、流動
床乾燥機中で糖ビーズにメチルフェニデート水溶液を噴霧することにより、即時放出性(I
R)薬物でコーティングされたビーズを調製する。噴霧プロセスは、ビュルスターカラムを
備える流動床乾燥機中で行われる。Opadry(登録商標)物質(例えば、Opadry(登録商標) Cl
ear (製剤番号:YS-1-7006))を使用して、透明なHPMCのオーバーコーティングを重量が約
1%増すように施す。次に、制御放出性コーティングをIRビーズに施し、これにより制御
放出性(CR)ビーズに変換させる。これは、Eudragit(登録商標) RS30D、トリエチルクエン
酸(可塑剤)、およびタルク(潤滑剤)の溶液をIRビーズに噴霧することにより達成される。
次に、コーティングされたビーズを硬化処理して、治療的活性剤の安定した放出速度を得
る。CRコーティングにアクリル樹脂を利用して薬物の放出を制御する本発明の好ましい実
施形態では、この段階でのCRビーズを、可塑化アクリルポリマーのTgより高い温度にて所
望の時間の間オーブン硬化(oven curing)にかける。特定の製剤の温度および時間の最
適値は、実験的に決定される。本発明の特定の実施形態では、約40〜50℃の温度において
約12〜約24時間以上にわたって行うオーブン硬化を経て安定化された製品を得る。次いで
、CRビーズに腸溶性コーティングを施して、腸溶性コーティングCR(ECCR)ビーズに変換さ
せる。これは、Eudragit(登録商標) L30D-55分散溶液、トリエチルクエン酸(可塑剤)およ
びタルク(潤滑剤)の溶液をCRビーズに噴霧することによって達成される。最終的に、即時
放出性コーティング(例えば、IRトップコートと称する)をECCRビーズに施す。これは、メ
チルフェニデート水溶液をEC CRビーズに噴霧することで達成される。
【0085】
初期の研究の結果は、この製剤が室温(25℃、60%RH)およびそれ以上の条件下(40℃、7
5%RH)において安定であることを示している。
【0086】
徐放性マトリックス
本発明のある好適な実施形態では、徐放性製剤は、薬物と徐放性担体とを含むマトリッ
クスを含んでなる。該徐放性担体は、1種以上の疎水性物質、例えば、本明細書中で既に
定義したようなアルキルセルロースおよび/またはアクリルポリマーを含むことができる
。徐放性マトリックスへ配合するのに適した物質は、マトリックスの形成方法によるであ
ろう。
【0087】
本発明の徐放性マトリックスへ配合するのに適した物質としては、薬物以外に下記のも
のが挙げられる:
(A)親水性および/または疎水性物質、例えば、ゴム、アルキルセルロース、セルロー
スエーテル(ヒドロキシアルキルセルロースおよびカルボキシアルキルセルロース等)、ア
クリル樹脂(上述のアクリルポリマーとアクリルコポリマーは全て含まれる)、およびタン
パク質より誘導した物質。これらの例示は限定を意味するものではなく、薬剤の望ましい
徐放プロフィールを賦与することのできる任意の製薬上許容し得る疎水性物質または親水
性物質が含まれることを意味している。該剤形は、例えば、このような物質を約1重量%
〜約80重量%含んでいてもよい。
【0088】
本発明のある好適な実施形態では、疎水性物質は製薬上許容し得るアクリルポリマーで
あり、例えば、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、メチルメタクリレート、メチ
ルメタクリレートのコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリ
レート、アミノアルキルメタクリレートのコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタク
リル酸)、メタクリル酸アルキルアミンコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(
メタクリル酸)(無水物)、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(無水メタクリ
ル酸)、およびグリシジルメタクリレートコポリマーが挙げられるが、これらに限定され
ない。別の実施形態では、疎水性物質は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒド
ロキシアルキルセルロース、および上述した物質の混合物等の物質から選択される。さら
に別の実施形態では、疎水性物質はアルキルセルロースである。
【0089】
(B)消化可能な長鎖(C8-C50、特にC12-C40)置換または未置換炭化水素、例えば、脂肪酸
、脂肪アルコール、脂肪酸のグリセリルエステル、鉱油および植物油並びに天然もしくは
合成ワックス、多価アルコール(ポリアルキレングリコール等)。本発明の経口剤形は、こ
のような物質を60%(重量)まで含んでいてもよい。ある実施形態では、2種以上の炭化水
素物質を組み合わせてマトリックス製剤に配合する。炭化水素物質をさらに配合する場合
には、天然および合成ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、およびこれらの混合物から選
択するのが好ましい。
【0090】
好適な炭化水素は水不溶性であって、ある程度顕著な親水性および/または疎水性傾向
を示し、融点は約30℃〜約200℃、好ましくは約45℃〜約90℃である。
【0091】
本発明では、ワックス様物質を、室温では通常固体であって、約30℃〜約100℃の融点
を有する任意の物質と定義する。適切なワックスとしては、例えば、ミツロウ、グリコワ
ックス(glycowax)、カスターワックスおよびカルナウバワックスが挙げられる。
【0092】
脂肪族アルコールは、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコールまたはステ
アリル、セチルおよび/もしくはセトステアリルアルコールであってよい。本発明の経口
剤形に配合する場合、脂肪族アルコールの量は、上述したように、要求される薬物放出の
正確な速度によって決まる。ある実施形態では、経口剤形には20%〜50%(重量)の脂肪族
アルコールが含まれる。少なくとも1種のポリアルキレングリコールが経口剤形に含まれ
る場合には、少なくとも1種の脂肪族アルコールと少なくとも1種のポリアルキレングリ
コールを合わせた重量が、全投与量の20%〜50%(重量)を占めるのが好ましい。
【0093】
実施形態の1つでは、例えば、少なくとも1種のヒドロキシアルキルセルロースまたは
アクリル樹脂と少なくとも1種の脂肪族アルコール/ポリアルキレングリコールとの比に
よって、かなりの程度まで、製剤からの薬物の放出速度が決まる。
【0094】
適切なポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリプロピレングリコールまたは
ポリエチレングリコールが挙げられる。少なくとも1種のポリアルキレングリコールの数
平均分子量は、1,000〜15,000、特に1,500〜12,000であるのが好適である。
【0095】
上述の成分以外にも、制御放出マトリックスには、適量の他の物質、例えば、製薬分野
で慣用の希釈剤、滑沢剤、結合剤、造粒助剤、着色剤、着香剤および流動促進剤が含まれ
ていてもよい。
【0096】
本発明の経口用徐放性固形剤形の調製を容易にするには、当業者に公知のマトリックス
製剤を調製する任意の方法を使用すればよい。例えば、マトリックスへの配合は、(a)少
なくとも1種の水溶解性ヒドロキシアルキルセルロースと薬物またはその塩を含む顆粒を
形成し、(b)ヒドロキシアルキルセルロースを含む該顆粒と少なくとも1種のC12-C36脂肪
族アルコールとを混合し、(c)任意に、顆粒を圧縮および成形することによって行うこと
が可能である。好ましくは、ヒドロキシアルキルセルロース/薬物を水を用いて湿式造粒
することによって顆粒を形成する。この方法の特に好適な実施形態では、湿式造粒工程時
の水の添加量を、好ましくは薬物の乾燥重量の1.5〜5倍、特に1.75〜3.5倍にする。
【0097】
さらに別の実施形態では、球状化剤(spheronizing agent)を有効成分と共に球状化して
球状物を形成する。微結晶性セルロースが好適である。適切な微結晶性セルロースは、例
えば、Avicel PH 101(商標、FMC Corporation)として販売されている物質である。このよ
うな実施形態では、有効成分と球状化剤の他にも、結合剤が球状物に含まれていてもよい
。低粘度の水溶解性ポリマー等の適切な結合剤は、製薬分野の当業者に周知であろう。し
かしながら、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶解性ヒドロキシ低級アルキルセルロ
ースが好適である。さらに(または、それに代わるものとして)球状物には水不溶性ポリマ
ー、特にアクリルポリマー、アクリルコポリマー(メタクリル酸-エチルアクリレートコポ
リマー等)またはエチルセルロースが含まれていてもよい。このような実施形態では、通
常、徐放性コーティングに疎水性物質、例えば、(a)ワックスを単独でもしくは脂肪アル
コールと組み合わせて、または(b)シェラックもしくはゼインを、配合する。
【0098】
溶融押出マトリックス
本発明のある好適な実施形態では、徐放性マトリックスを、溶融造粒技術または溶融押
出技術によって調製してもよい。このような製剤は、米国特許出願第08/334,209号(1994
年11月4日出願)および米国特許出願第08/833,948号(1997年4月10日出願)に開示されて
いる(これらの特許出願はいずれも引用により全内容が本明細書に含まれるものとする)。
一般に、溶融造粒技術は、通常は固形の疎水性物質(ワックス等)を溶融し、粉末化薬物を
そこへ配合するものである。徐放性剤形を得るには、追加の疎水性物質(エチルセルロー
スまたは水不溶性アクリルポリマー等)を溶融したワックス系疎水性物質へ配合すること
が必要である。溶融造粒技術で調製した徐放性製剤の例は、米国特許第4,861,598号に見
られる(本特許は本発明の譲受人に譲渡されたものであり、引用により全内容が本明細書
に含まれるものとする)。
【0099】
追加の疎水性物質には、1種以上の水不溶性ワックス様熱可塑性物質が含まれていても
よく、該1種以上の水不溶性ワックス様物質よりも疎水性が低い1種以上のワックス様熱
可塑性物質との混合物としてもよい。定常的な放出を達成するためには、製剤中の個々の
ワックス様物質が、初期放出相の際に胃腸液に対して実質的に非分解性かつ不溶性でなけ
ればならない。有用な水不溶性ワックス様物質は、水溶解度が約1:5,000(w/w)未満のもの
である。
【0100】
上記成分以外にも、徐放性マトリックスには、適量の他の物質、例えば、製薬分野で慣
用の希釈剤、滑沢剤、結合剤、造粒助剤、着色剤、着香剤および流動促進剤が含まれてい
てもよい。これらの追加物質の量は、所望の製剤に所望の効果を賦与するのに十分な量で
ある。溶融押出多粒子を配合した徐放性マトリックスには、上記成分以外にも、必要であ
れば、適量の他の物質、例えば、製薬分野で慣用の希釈剤、滑沢剤、結合剤、造粒助剤、
着色剤、着香剤および流動促進剤が、粒子の約50重量%までの量で含まれていてもよい。
【0101】
経口剤形の製剤化に使用可能な製薬上許容し得る担体および賦形剤の具体的な例は、Ha
ndbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Association (1986)(
引用により本明細書に含まれるものとする)に記載されている。
【0102】
本発明の適切な溶融押出マトリックスの調製には、例えば、鎮痛薬(即ち、薬物)を少な
くとも1種の疎水性物質および好ましくは追加の疎水性物質と混合して均一混合物を得る
工程が含まれていてもよい。次いで均一混合物を、該混合物を少なくとも軟化させるのに
十分な温度まで加熱して、該混合物を押出せるようにする。次いで得られた均一混合物を
押出してストランドを形成する。好ましくは押出物を冷却し、当該技術分野で公知の手段
で多粒子へ切断する。ストランドを冷却して多粒子へ切断する。次いで、多粒子を単位用
量へ分配する。好ましくは、押出物の直径は約0.1〜約5mmであり、治療上活性な薬剤を
約8〜約24時間にわたって徐放する。多粒子は、ゼラチンカプセルへ封入することで単位
用量に分配してもよいし、適切な錠剤形状へ圧縮してもよい。
【0103】
本発明の溶融押出物を調製する任意の方法には、疎水性物質、製薬上活性な薬剤、およ
び任意に結合剤を直接計量して押出機へ供給し、均一混合物を加熱し、均一混合物を押出
すことによりストランドを形成し、均一混合物からなるストランドを冷却し、ストランド
を直径約0.1mm〜約12mmの粒子へ切断し、前記粒子を単位用量へ分配することが含まれる
。本発明のこの態様では、比較的連続した製造手順が実現される。
【0104】
押出機の開口部または排出部の直径を調整して押出されるストランドの太さを変えるこ
ともできる。さらに、押出機の排出部は円形である必要はなく、長楕円形、長方形等であ
ってもよい。熱線カッター、裁断機等を利用して、排出されるストランドを粒子へ切断し
てもよい。
【0105】
溶融押出多粒子系は、押出機の出口オリフィスに応じて、例えば、顆粒、球状物または
ペレットの形状にすることができる。本発明では、用語「溶融押出多粒子」、「溶融押出
多粒子系」および「溶融押出粒子」は、好ましくは同等のサイズおよび/または形状の範
囲内に含まれる複数の単位物であって、1種以上の活性薬剤と1種以上の賦形剤、好まし
くは本明細書に記載の疎水性物質を含むものを指す。この点については、溶融押出多粒子
は、長さが約0.1〜約12mmの範囲にあり、約0.1〜約5mmの直径を有する。さらに、溶融押
出多粒子は、このサイズ範囲に収まる任意の幾何学形状であってよいと理解されるべきで
ある。あるいは、押出物を単に所望の長さに切断し、球状化工程を経ずに治療上活性な薬
剤の単位用量へ分配してもよい。
【0106】
好適な実施形態の1つでは、経口剤形を、有効量の溶融押出多粒子をカプセルに封入す
るように調製する。例えば、複数の溶融押出多粒子を、摂取され胃液に接触した際に有効
な徐放性用量が得られるような十分な量でゼラチンカプセルへ封入すればよい。
【0107】
別の好適な実施形態では、標準的な技術を利用する慣用の打錠装置を用いて、適量の多
粒子押出物を経口錠剤へ圧縮する。錠剤(圧縮および成形錠剤)、カプセル(硬質および軟
質ゼラチン)並びに丸剤を製造する技術および組成は、Remington's Pharmaceutical Scie
nces, (Arthur Osol編), 1553-1593(1980)にも開示されている(引用により本明細書に含
まれるものとする)。
【0108】
さらに別の好適な実施形態では、米国特許第4,957,681号(Klimeschら)に記載されてい
るように押出物を錠剤へ成形することが可能である。該特許は、先に詳述されており、引
用により本明細書に含まれるものとする。
【0109】
任意に、上述の徐放性コーティング等の徐放性コーティングによって、徐放性溶融押出
多粒子系または錠剤をコーティングしてもよく、また、ゼラチンカプセルをさらにコーテ
ィングしてもよい。このようなコーティングには、好ましくは、重量増加レベルが約2〜
約30%となるような十分な量の疎水性物質が配合されるが、使用する特定の鎮痛薬化合物
の物理的特性と所望の放出速度に応じて、オーバーコートが他の物質よりも多くなってい
てもよい。
【0110】
さらに本発明の溶融押出単位剤形には、カプセルへ封入する前に、上述したような1種
以上の治療上活性な薬剤を含む溶融押出多粒子を組み合わせて配合してもよい。さらに、
該単位剤形には、迅速な治療効果を得るために、一定量の治療上活性な即時放出性薬剤を
配合することが可能である。治療上活性な即時放出型薬剤は、例えば、別個の粒剤として
ゼラチンカプセル内に封入してもよく、また、剤形を調製した後に多粒子の表面へコーテ
ィングしてもよい(例えば、制御放出コーティングまたはマトリックス系)。本発明の単位
剤形はまた、所望の効果を達成するため、制御放出ビーズとマトリックス多粒子の組み合
わせを含んでいてもよい。
【0111】
本発明の徐放性製剤は、例えば、摂取され、胃液そして腸液へ接触した際に、好ましく
は治療上活性な薬剤を徐放するものである。本発明の溶融押出製剤の徐放プロフィールは
、例えば、遅延剤(即ち、疎水性物質)の量を変えたり、疎水性物質に対する可塑剤の量を
変えたり、追加の成分または賦形剤を配合したり、製造方法を変えたりすることで、変更
することができる。
【0112】
本発明の他の実施形態では、治療上活性な薬剤を配合せずに溶融押出物質を調製し、該
薬剤は後から押出物へ添加する。このような製剤では、徐放性製剤を得るために、典型的
には治療上活性な薬剤を押出マトリックス材料と混合し、次いで混合物を打錠する。この
ような製剤は、例えば、製剤へ配合される治療上活性な薬剤が、疎水性物質および/また
は遅延剤物質を軟化させるのに要する温度の影響を受け易い場合に有利である。
【0113】
本発明の基材は、溶融ペレット化技術によって調製することも可能である。このような
場合には、微細分割した活性薬物を結合剤(同じく粒子状)および他の任意の不活性成分と
配合し、次いで、混合物を高剪断ミキサーで機械的に処理するなどしてペレット化し、ペ
レット(顆粒、球状物)を形成する。その後、必要なサイズのペレットを得るために、ペレ
ット(顆粒、球状物)を篩にかけてもよい。結合剤物質は好ましくは粒子状であり、融点が
約40℃以上である。適切な結合剤物質としては、例えば、硬化ヒマシ油、硬化植物油、他
の硬化脂肪、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド等が挙げられる。
【0114】
本発明のメチルフェニデート製剤の推奨される力価(strength)は、例えば、10、15、20
および30mgである。本発明のMLRメチルフェニデート多粒子製剤では、このような投与力
価に対して推奨されるカプセルサイズと充填重量は以下の通りである:

【0115】
本発明のある好適な実施形態では、有効量の即時放出型薬物を薬物製剤に配合する。該
即時放出型薬物は、薬物の血中濃度(例えば、血漿濃度)が最大濃度に至るまでの時間を短
縮するのに有効な量で配合され、Tmaxまでの時間が、例えば約0.5〜約2時間へ短縮され
る。一定量の即時放出型薬物を製剤に配合することで、作用が発現するまでの時間が大幅
に短縮され、参考標準IR処理(リタリンIR)と同等またはそれよりも短縮される。
【0116】
このような実施形態では、有効量の即時放出型薬物を、本発明の基材(例えば、多粒子
または錠剤)上へコーティングしてもよい。例えば、薬物の製剤からの持続放出が制御放
出性コーティングによる場合には、即時放出層を制御放出性コーティングの最外面上へオ
ーバーコーティングすることができる。一方、薬物が制御放出マトリックス内に配合され
ている基材の場合には、その表面へ即時放出層をコーティングしてもよい。有効単位用量
の薬物を含む複数の徐放性基材(例えば、ペレット、球状物、ビーズ等の多粒子系)を硬質
ゼラチンカプセルへ封入する場合には、十分な量の即時放出型薬物を粉末または顆粒とし
てカプセル内に封入することで、即時放出される薬物用量をゼラチンカプセルへ含有させ
てもよい。あるいは、ゼラチンカプセル自体を薬物の即時放出層でコーティングしてもよ
い。当業者であれば、即時放出される薬物量を単位用量へ含有させるさらに別の代替手法
が明らかであろう。このような代替手法は、特許請求の範囲に包含されると考えられる。
【0117】
好適な実施形態の詳細な説明
以下の実施例は、本発明の様々な態様を例示する。これらの実施例は、特許請求の範囲
を何ら限定するものではない。
【0118】
実施例1
塩酸メチルフェニデート即時放出性ビーズ
【表1】

1. Niro-Aeromatic Strea 1 Fluid Bed Wurster Coaterに14/18メッシュNupareil(登録
商標)PG(糖球(sugar spheres)NF)を装入する。
2. 塩酸メチルフェニデート(12% w/w)およびOpadry clear(4% w/w)の水溶液を噴霧す
ることにより、ビーズを60℃にてコーティングする。
3. コーティングが完了したら、ビーズを60℃にて2分または3分間乾燥させる。
【0119】
4. 室温にて浅い皿の中でビーズを冷却する。
5. 塊があれば破砕する。
6. ビーズをTyler 10メッシュの篩(穴のサイズ:1.77mm)にかけた後、Tyler 20メッシ
ュの篩(穴のサイズ:850μm)にかけて、微粉を除去する。
7. 着色したOpadry clear溶液(4% w/w)を噴霧することにより、1% w/wの理論重量増加ま
でビーズにトップコーティングを施す。
【0120】
オーバーコーティングが完了した後、20mgの力価までビーズを硬質ゼラチンカプセルに
充填する。
【0121】
USP装置1(バスケット法)を用い、酵素を含まない人工胃液500mL中、100rpm、37℃に
て、ビーズを充填したIRカプセルについて溶出試験を実施した。結果は以下の通りである

【0122】
【表2】

上記表に記載した溶出結果は、塩酸メチルフェニデートの98.5%が45分間で溶出したこ
とを示す。
【0123】
実施例2
アクリルポリマーコーティングを施した塩酸メチルフェニデート制御放出性(CR)ビーズ
【表3】

【0124】
制御放出性コーティングは以下のように製造した。
1. Eudragit(登録商標)RS30Dを、トリエチルクエン酸およびタルクで約30分間可塑化す
る。
2. 多量のIRビーズを、1mmのスプレーノズルを用いてエアロマチック流動床乾燥器(Aerom
atic Fluid Bed Dryer)のウイルステル・インサート(Wurster insert)に入れ、ビーズを
約8%重量増加するまでコーティングする。
3. コーティングが完了したら、ビーズを40℃〜50℃にて24時間硬化する。
次に、20mgの力価でビーズを硬質ゼラチンカプセルに充填する。
以下のUSP装置(バスケット法)を用い、ビーズを充填したCRカプセルについて溶出試
験を行った。カプセルを、最初の2時間は、100rpm、37℃にて酵素を含まない人工胃液500
mL中に入れた後、残りの試験時間の間は、酵素を含まない人工腸液500mL中に入れた。結
果は以下の通りである。
【0125】
【表4】

上記表に記載した溶出結果は、24時間で塩酸メチルフェニデートの92.8%が溶出したこと
を示す。
【0126】
実施例3および4
制御放出性(CR)ビーズからの塩酸メチルフェニデートの放出率の、アクリルポリマーコ
ーティングの量への依存性
塗布するEudragit(登録商標)RS 30Dの量を調節することにより、放出率を調節するこ
とができる。この効果を以下の実施例3および4に示す。
【0127】
【表5】

実施例3および4における制御放出性ビーズを製造するための方法は、実施例2で記載
した方法と似ており、ビーズとEudragit(登録商標)RS 30Dとの割合を変化させることに
より行う。
【0128】
硬化したビーズを20mgの力価で硬質ゼラチンカプセルに充填する。
【0129】
実施例2と同じ条件下で行った溶出試験の結果を以下に示す。
【0130】
【表6】

上記表に記載した溶出結果は、12時間で塩酸メチルフェニデートの82.1%および92.8%
がそれぞれ溶出したことを示す。しかし、実施例4での薬物の放出は、1、2、3、4、6お
よび8時間目で有意な速さを示した。
【0131】
実施例5
腸溶性コーティング(EC)コーティング放出性(CR)ビーズ‐EC・CRビーズ
【表7】

腸溶性コーティング法を以下に記載する。
1. Eudragit(登録商標)L30D55を、トリエチルクエン酸およびタルクで約30分間可塑化
する。
2. 多量のメチルフェニデートCRビーズを、1mmのスプレーノズルを用いてエアロマチック
流動床乾燥器(Aeromatic Fluid Bed Dryer)のウイルステル・インサート(Wurster insert
)に入れ、ビーズを約9%重量増加までコーティングする。
3. コーティングが完了したら、ビーズを40℃にて18時間硬化する。
4. 次に、硬化したビーズをTyler 10メッシュ(穴のサイズ:1.7mm)およびTyler 20メッ
シュ(穴のサイズ:850μm)で篩にかけて、微粉を除去する。
次に、ビーズを20mgの力価で硬質ゼラチンカプセルに充填した。
USP装置1(バスケット法)を用い、最初の2時間は、100rpm、37℃にて酵素を含まない
SGF(500mL)を用いて、および残りの試験時間は酵素を含まないSIFを用いて、ビーズを
充填したCR充填カプセルについて溶出試験を行った。結果を以下に示す。
【0132】
【表8】

上記表に記載した溶出結果は、腸溶性コーティングの後には胃液中にて非常に少量の薬
物しか溶出しないこと、およびCRビーズの溶出プロフィールが変更されたことを示す。
【0133】
実施例6
臨床試験用の製剤
以下の実施例6A、6Bおよび6Cには、臨床試験で開発および試験された製剤を記載す
る。
【0134】
実施例6A:(IR・EC・CRビーズ)
腸溶性コーティングされた制御放出性(EC・CR)メチルフェニデートビーズの即時放出性
(IR)コーティング
(IR・EC・CRビーズ)製剤(以後、製剤1と呼ぶ)は、即時放出性および制御放出性成
分の両方を有する多層放出性ビーズを含むカプセルである。これは、胃内容排出まで溶解
を遅らせるために腸溶性コーティングで覆われた制御放出性ビーズから成る。腸溶性コー
ティングされた制御放出性ビーズは、即時放出性の表皮を有することにより、Ritalin(
商標登録)IR即時放出性錠剤と同じか、これより速い初期吸収速度を提供する。即時放出
性成分は、1ビーズ当たり、全用量の40%を占め、制御放出性成分は60%を占める。
【0135】
【表9】

【0136】
腸溶性コーティングされたCRビーズの表面への即時放出性コーティングの実施について
、以下に記載する。
1.塩酸メチルフェニデート USPとOpadryを攪拌しながら水に溶解させる。
2.EC・CRビーズをエアロマチック流動床乾燥器(Aeromatic Fluid Bed Dryer)のウイ
ルステル・インサート(Wurster insert)に装入する。
3.50℃より低い温度で、1mmスプレーノズルを用いて、コーティング溶液をビーズに噴
霧する。
4.コーティングが完了したら、該ビーズを室温で冷却し、Tyler10メッシュおよびTyler
20メッシュの篩にかけて、微粉を除去する。
次に、20mg力価までビーズを硬質ゼラチンカプセルに充填する。
UPS装置1(バスケット法)を用い、最初の1時間および2時間は、酵素を含まない人
工胃液500mL中、それ以降は、酵素を含まない腸液500mL中、100rpm、37℃にて、製剤1を
充填したビーズについて、溶出試験を実施した。
結果は以下の通りである。
【0137】
【表10】

上記表に記載した溶出結果は、溶出が急速に開始した後、作用が長続きすることを示す

【0138】
実施例6B:(IR+EC・CRブレンド)
即時放出性メチルフェニデートビーズ(IR)と、腸溶性コーティングされた制御放出性(EC
・CR)メチルフェニデートビーズとの組合せ
実施例5に記載した腸溶性コーティングされた制御放出性(EC・CR)ビーズを、実施例
1に記載した即時放出性(IR)ビーズと、比率を変えながら混合し、カプセルに充填する
ことにより、最終ブレンド投与形態、(IR+EC・CRブレンド)(以後、製剤2と呼ぶ)を
得た。製剤2は、製剤1より速い制御放出性部分の吸収速度を提供するよう設計されてい
る。即時放出性成分は、1カプセル当たり、全用量の35%を占め、制御放出性成分は65%
を占める。
【0139】
溶出試験を実施し、その比較結果を以下の表11に示す。
【0140】
実施例6C:(IR・CRビーズ)
制御放出性(CR)メチルフェニデートビーズの即時放出性(IR)コーティング
IR・CRビーズ製剤(以後、製剤3と呼ぶ)は、即時放出性表皮と、制御放出性コアとか
ら構成される個々のビーズを含み、制御放出性製剤である製剤1および2の間の制御放出
性部分の吸収速度を提供するように設計されている。即時放出性成分は、1ビーズ当たり
、全用量の30%を占め、制御放出性成分は、70%を占める。
【0141】
実施例6Aで製剤1について記載したのと同様に、制御放出性表皮をCRビーズにコーテ
ィングする。
【0142】
製剤1〜3および比較対照として用いるRitalin(商標登録)SRの溶出プロフィールを
以下の表11に示す。500mlの人工胃液中に1時間および2時間浸した。3時間以降は、人
工腸液(500ml)を使用した。溶出試験の結果から、予想されたin vivo溶出プロフィール
が確認された。
【0143】
【表11】

【0144】
実施例7
1回投与の製剤1(摂食および絶食時)および2回投与のRitalin IR(摂食および絶食時)
の4通りの比較
メチルフェニデートMLRカプセルの生物学的利用能を、4通りのブラインド試験で検定
した。この試験では、摂食および絶食条件下で、1回投与する用量20mgの製剤1と、2回
投与する(4時間おき)Ritalin (商標登録)IRとを比較した。
【0145】
健康な男性ボランティアに、用量20mgの製剤1を1回投与するか、もしくは、即時放出
性メチルフェニデート10mgを4時間あけて、2回投与した。いずれも、摂食および絶食条
件の両方で行った(n=12)。「摂食」条件とは、被験者が、高脂肪の朝食を取った後に
、試験製剤を投与したことを意味する。一晩、少なくとも10.0時間、絶食した後、正常、
健康かつ非喫煙の男性に、ウイリアム設計4処置無作為化計画に従い、次の処置を施した

【0146】
処置1:試験製剤:絶食条件下で、メチルフェニデート制御放出性、製剤1、20mgカプ
セルを朝投与。
処置2:対照製剤:絶食条件下で、メチルフェニデート即時放出性、Ritalin (商標登
録)(Novartis)、10mg錠剤を朝およびその4時間後に投与。
処置3:試験製剤:高脂肪朝食から5分後、メチルフェニデート制御放出性、製剤1、
20mgカプセルを投与。
処置4:対照製剤:高脂肪朝食から5分後、朝と4時間後に、メチルフェニデート即時
放出性、Ritalin (商標登録)(Novartis)、10mg錠剤を投与。
【0147】
試験期間の間に7日のウォッシュアウト期間を置いた。各試験期間中に、投与前の1時
間以内に各被験者から血液サンプル(各1×5ml)を採取し、製剤1については、投与か
ら0.250、0.500、0.750、1.00、1.50、2.00、2.50、3.00、3.50、4.00、5.00、6.00、7.0
0、8.00、10.0、12.0、16.0、24.0時間後および投与前に、また、Ritalin (商標登録)I
Rについては、投与から0.250、0.500、0.750、1.00、1.50、2.00、2.50、3.00、3.50、4.
00、4.50、5.00、6.00、7.00、8.00、10.0、12.0、16.0、24.0時間後にそれぞれ採取した
。各血液サンプルから血漿を取り出し、−20℃のフリーザーに貯蔵した後、血漿メチルフ
ェニデート濃度を検定した。血漿メチルフェニデート濃度の検定は、ガスクロマトグラフ
ィー/質量分析法(GC/MS)を用いて実施した。
【0148】
平均血漿濃度、標準偏差および変動係数は、絶食および摂食条件のそれぞれについて、
表12および13に時間の関数として示す。
【0149】
このデータは、図1〜4にグラフとして表す。図1は、絶食条件下での製剤1およびRi
talin (商標登録)についての、平均血漿濃度対時間を示す。また、図2は、摂食条件下
での製剤1およびRitalin (商標登録)についての、平均血漿濃度対時間を示す。図3は
、摂食および絶食条件下での製剤1についての、平均血漿濃度対時間を示す。また、図4
は、摂食および絶食条件下でのRitalin (商標登録)についての、平均血漿濃度対時間を
示す。
【0150】
【表12】

【0151】
【表13】

【0152】
実験結果
4通りの試験から得られたデータをもとに、薬物動力学的パラメーターを算出した。AU
C0-t(pg・h/mL)、AUC0-inf(pg・h/mL)、AUCνinf(%)、Cmax(pg/ml)、Tmax(時
間)、T1/2 el(時間)、K el(時間-1)、TLIN(時間)およびLQCT(時間)は、以下に
記載するように、算出した。
【0153】
本発明の目的のため、下記の用語は、次のような意味を有する。
【0154】
薬物動力学的データの分析と統計的分析
AUC0-t:ゼロ濃度時間から最後の非ゼロ濃度の時間までの濃度−時間曲線下の面積(これ
は、制御放出性および即時放出性製剤の両方についての試験製剤の投与間隔にわたる、濃
度−時間曲線下の面積に相当する)
AUC0-inf:ゼロ時間から無限までの濃度−時間曲線下の面積
C.I.:信頼区間
CV:変動係数
Cmax:最大観測濃度
K el:除去速度定数
LQCT:最後の定量化可能濃度時間
SD:標準偏差
TLIN:対数−線形除去(log-linear elimination)が開始する時点
T1/2 el:観測されたCmaxの時間
サンプル採取時間:試験しようとするパラメーターに基づく血漿コレクションの投与後時

予定時間:サンプル採取の予定(時計)時間
実際時間:サンプルを採取した正確な(時計)時間
【0155】
Tmax≦4時間の薬物についてのサンプル採取中の時間偏差は、次のように扱った:
血液採取の実際および予定時間の遅延が<10%の場合には、投与後0〜6時間までのサン
プル採取時間を統計的分析に使用した。投与から6時間以降については、血漿採取の実際
および予定時間の遅延が<15%の場合、サンプル採取時間を統計的分析に使用した。既述
した許容基準の場合には、サンプル採取時間を使用し、薬物動力学的パラメーターの計算
を実施する際に、補正されたサンプル採取項目を使用する。サンプル採取時間は、統計報
告書の濃度表およびグラフに示す。
【0156】
各サンプル採取時間および処置におけるメチルフェニデートの血漿濃度について、平均
、標準偏差(SD)および変動係数(CV)を算出した。同様に、AUC0-t(pg・h/mL)、AUC0
-inf(pg・h/mL)、Cmax(pg/mL)、Tmax(時間)、T1/2 el(時間)、K el(時間-1)、
TLIN(時間)およびLQCT(時間)について、平均、SDおよびCVを計算した。これら薬物動
力学的パラメーターの計算については、以下に説明する。
【0157】
濃度−時間曲線下の面積
線形台形法則を用いてAUC0-tを算出した。
【0158】
AUC0-tを導き出すが、ここで、tは、各処置について、最後の測定可能な(非ゼロ)濃
度(Ct)の時間(t)である。
【0159】
AUC0-infは、次のように算出した:

ただし、上記式において、Ct=その処置の最後の非ゼロ濃度、AUC0-t=ゼロ時間から、そ
の処置の最後の非ゼロ濃度時間までのAUC、ならびに、K el=除去速度係数とする。
【0160】
最大観測濃度と、観測されたピーク濃度の時間
各被験者および各処置について、最大観測濃度Cmaxと、ピーク濃度に達するまでの観測
時間Tmaxとを決定した。
【0161】
半減期および除去速度定数
除去速度定数(K el)を算出するために、血漿濃度値(y)対時間(x)の自然対数(
Ln)について、線形回帰分析を実施した。計算は、対数−線形除去段階が開始する時点か
ら、(LQCT)が出現した時点までの間に行った。K el=は、(−1)で掛けた傾きとして
、見かけ半減期(T1/2 el)は0.693/ K elとして得られた。
【0162】
TLINおよびLQCT
各被験者および各処置について、TLIN、すなわち、対数−線形除去が開始する時点と、
LQCT、すなわち、最後の定量化可能な濃度時間を決定した。
【0163】
吸収された薬物パーセンテージ
吸収された薬剤パーセンテージは、次の式に従い、キネティカ(Kinetica)ソフトウエ
ア、バージョン2.0.1で実施されるように、修正されたワグナー−ネルソン法により、各
サンプル採取時間(t)で算出した。
【0164】

【0165】
ANOVAはすべて、SAS一般線形モデル手順(GLM)を用いて実施した。すべての分析につ
いて、'F'を伴う確率が、0.050より小さい場合には、効果が統計的に有意であるとみな
した。対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmaxデータの対毎の比較に基づき、式:"e
(X-Y)×100"に従い算出した幾何平均値の相対比、ならびに、90%幾何信頼区間を決定し
た。
【0166】
結果
制御放出性配合物である製剤1の投与後に不変のメチルフェニデートの血漿濃度は、絶
食条件下で平均3.27時間、ならびに、摂食条件下で平均7.29時間で、最大濃度(Cmax)に
達し、二相吸収プロフィールを示す。即時放出性製剤(Ritalin (商標登録)IR)を2回
投与した後に不変のメチルフェニデートの血漿濃度は、絶食条件下で5.96時間、ならびに
、摂食条件下で3.54時間で、最大濃度(Cmax)に達した。Cmaxの決定を、即時放出性メチ
ルフェニデートの1回目の投与に限定すると、Tmaxは、絶食条件下で1.71時間、ならびに
、摂食条件下で1.63時間であった。
【0167】
絶食条件および摂食条件下での制御放出性メチルフェニデート20mg製剤1と、即時放出
性メチルフェニデート10mg(Ritalin (商標登録)IR)の完全な薬物動力学的パラメータ
ーを以下の表14および15にまとめる。
【0168】
【表14】

【0169】
【表15】

【0170】
対数変換されたAUC0-tデータに関して実施されるANOVAおよびダンカンの多重検定(Dun
can's Multiple Range Test)の結果から、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有
意な相違が明らかになる。ダンカンの多重検定によれば、処置1のAUC0-tは、処置2およ
び3のAUC0-tとは有意に相違した。しかし、ダンカンの多重検定では、処置3と4の該パ
ラメーターに、統計的に有意な相違は検出されなかった。上記データに関して実施された
統計的分析を以下の表16にまとめる:
【表16】

【0171】
対数変換されたAUC0-infデータに関して実施されるANOVAおよびダンカンの多重検定の
結果から、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカ
ンの多重検定によれば、処置1のAUC0-infは、処置2および3のAUC0-infとは有意に相違
した。しかし、ダンカンの多重検定では、処置3と4の該パラメーターに、統計的に有意
な相違は認められなかった。上記データに関して実施された統計的分析を以下の表17にま
とめる:
【表17】

【0172】
対数変換されたCmaxデータに関して実施されるANOVAおよびダンカンの多重検定の結果
から、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの
多重検定によれば、処置1のCmaxは、処置3のCmaxとは有意に相違しなかった。しかし、
ダンカンの多重検定では、処置1と2、ならびに、3と4を比較すると、Cmaxに統計的に
有意な相違が認められた。上記データに関して実施された統計的分析を以下の表18にまと
める:
【表18】

【0173】
Tmaxデータに関して実施されたANOVAおよびダンカンの多重検定により、各処置間で、
該パラメーターの、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多重検定によれば、処
置1と2、処置3と4、ならびに、処置1と3の該パラメーターに、統計的に有意な相違
が認められた。
【0174】
T1/2 elデータに関して実施されたANOVAおよびダンカンの多重検定の結果から、各処置
間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多重検定では、
処置1と3のT1/2 elに、統計的に有意な相違は認められなかった。しかし、ダンカンの
多重検定により、処置1と2、処置3と4の該パラメーターに、統計的に有意な相違が認
められた。
【0175】
K elデータに関して実施されるANOVAおよびダンカンの多重検定の結果から、各処置間
で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの多重検定により
、処置1と2、処置3と4に、統計的に有意な相違が認められたが、処置1と3には認め
られなかった。
【0176】
まとめと分析
摂食および絶食条件下での制御放出性メチルフェニデート20mg製剤1のAUCおよびCmax
比を以下の表19にまとめる。絶食条件下での即時放出性メチルフェニデート10mg(Ritali
n (商標登録)IR)と製剤1のAUCおよびCmax比の比較を以下の表20にまとめる。表21は
、摂食条件下での即時放出性メチルフェニデート10mg(Ritalin (商標登録)IR)と製剤
1に関する比較比を示す。
【0177】
処置1(製剤1、絶食時)対処置3(製剤1、摂食時)
対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax、Kel、T1/2el
に関して、ANOVAでは、各処置間に、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多重
検定によれば、処置1および3の対数変換AUC0-tおよびAUC0-inf、ならびに、非変換Tmax
に統計的に有意な相違が認められた。しかし、ダンカンの多重検定では、対数変換された
Cmaxと、非変換KelおよびT1/2elには、統計的に有意な相違が認められなかった。すべて
の製剤比、ならびに、試験製剤(製剤1、絶食条件)の対照製剤(製剤1、摂食条件)に
対する相対平均AUC0-t、AUC0-infおよびCmaxの90%幾何信頼区間は、80〜125%の範囲内
に認められた。これを以下の表19にまとめる:
【表19】

【0178】
処置1(製剤1、絶食時)対処置2(Ritalin (商標登録)、絶食時)
対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax、Kel、T1/2el
に関して、ANOVAにより、各処置間に、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多
重検定では、処置1および2のすべてのパラメーターに、統計的に有意な相違が認められ
た。Cmaxを除くすべての製剤比、ならびに、試験製剤(製剤1)の対照製剤(Ritalin )
に対する相対平均AUC0-tおよびAUC0-infの90%幾何信頼区間は、80〜125%の範囲内に認
められた。これを以下の表20にまとめる:
【表20】

【0179】
処置3(製剤1、摂食時)対処置4(Ritalin (商標登録)、摂食時)
対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax、Kel、T1/2el
に関して、ANOVAにより、各処置間に、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多
重検定では、対数変換されたAUC0-t、AUC0-infを除いて、処置3および4のすべてのパラ
メーターに、統計的に有意な相違が認められた。Cmaxを除くすべての製剤比、ならびに、
試験製剤(製剤1)の対照製剤(Ritalin )に対する相対平均AUC0-tおよびAUC0-infの90
%幾何信頼区間は、80〜125%の範囲内に認められた。これを以下の表21にまとめる:
【表21】

【0180】
結論
個々の血漿MPH時間曲線を見直したところ、次のことがわかった:
12時間での血漿MPH濃度は、摂食および絶食の両条件下で、被験者全員において、Rital
in より製剤1の方が高かった。
【0181】
絶食条件下では、12被験者のうち7〜10人、また摂食条件下では、12被験者のうち8〜
12人で、二相プロフィールが明らかであった。従って、絶食条件下で安定したプラトーを
示す平均曲線が、個々のプロフィールを十分に表すわけではない。このように、腸溶性コ
ーティングは、絶食条件下であっても、何人かの被験者に二相プロフィールを生じさせた

【0182】
絶食条件下での血漿MPH上昇の見かけ速度は、12被験者のうち、絶食条件下で8人、ま
た、摂食条件下で4〜5人において、Ritalin IRのそれと同等か、それより速かった。従
って、絶食条件下で同等の上昇速度を、また、摂食条件下でそれより遅い速度を示す平均
曲線は、個々のプロフィールを大体表しているといえた。
【0183】
Ritalin IRと比較した製剤1の生物学的利用能は、摂食および絶食の両条件下で、許容
可能であった(相対AUCinf 106%および112%)。摂食すると、製剤1およびRitalin の
両方で、AUCの増加が認められた(それぞれ、13.1%、17.9%)。
【0184】
製剤1は、2回投与したRitalin IRより長続きする平均血漿MPH濃度時間プロフィール
を有していた。横断的(across)試験比較によっても、製剤1は、Ritalin SRより長く続
くプロフィールを有することがわかる。
【0185】
絶食条件下で、製剤1は、Ritalin IRに類似した血漿MPH上昇の平均初期速度を有し、
投与後8時間まで、比較的平坦なプラトーを示した。
【0186】
摂食条件下では、製剤1からの血漿MPH初期上昇は、絶食条件下より遅く、プラトーは
、二相プロフィールを示した。このことは、腸溶性コーティングが、制御放出性成分の放
出を遅らせる、また、この遅れは、摂食条件下の方が長い(従って、IR成分により、初期
血漿濃度ピークが、制御放出性成分からの放出開始前に降下する)という予想と一致した

【0187】
製剤1を使用すると、血漿メチルフェニデート濃度の初期上昇速度が高くなり、しかも
持続期間が長続きする。絶食条件下での長いプラトープロフィールから、摂食条件下での
二相プロフィールへの変換は、予想通りであった。従って、製剤1は、急速に効果を発揮
し且つ治療効果が長続きするという2つの目的を満たす可能性を有し、これらは、ADD/AD
HD治療用の制御放出性メチルフェニデート製剤の望ましい特徴と考えられる。
【0188】
成人の健康なボランティアで完了した初期試験生物学的利用能調査から、1回投与(20
mg)の上記製剤が、4時間の間隔をあけて2回投与される即時放出性メチルフェニデート
(10mg)と同等の吸収度を有することが確認された。制御放出性製剤を用いた場合の最大
血漿濃度は、即時放出性メチルフェニデートの1回目の投与で達成されるものと類似して
おり、投与後約10時間からは、即時放出性メチルフェニデートの2回目の投与後に得られ
るものより高い。
【0189】
これらの結果から、この製剤を朝、1回投与することにより、朝食および昼食時に、即
時放出性メチルフェニデートを2回投与して得られる効果と少なくとも同等の臨床効果が
達成される可能性があり、同時に、作用が長く持続するため、同じ日の後に、3回目の即
時放出性メチルフェニデート投与の必要性を減らし得ることがわかる。
【0190】
実施例8
1回投与の製剤2(摂食および絶食時)、1回投与の製剤3(摂食および絶食時)および
1回投与のRitalin SR(絶食時)の5通りの比較
5通りのブラインド試験を実施し、この試験で、摂食および絶食の両条件下で、1回投
与する製剤2、20mgと、摂食および絶食の両条件下で、1回投与する製剤3、20mgと、絶
食時に1回投与するRitalin SR、20mgとを比較した。発表された文献および医師からの実
体験に基づく所見によれば、Ritalin SRを使用しているのは、メチルフェニデート治療患
者の20%を下回る。
【0191】
健康な男性ボランティア12人に、それぞれ用量20mgの製剤2または製剤3を、いずれも
、摂食および絶食の両条件下で、4時間毎に1回ずつ投与するか(n=12)、あるいは、緩徐
放出性メチルフェニデート(Ritalin SR)20mgを絶食条件下で投与した。「摂食」条件と
は、被験者が、高脂肪の朝食を取った後に、試験製剤を投与したことを意味する。一晩(
少なくとも10.0時間)絶食した後、正常、健康かつ非喫煙の男性被験者に対して、ウイリ
アムズ設計5処置無作為化計画に従い、次の処置を実施した。
処置1:試験製剤:絶食条件下で、メチルフェニデート制御放出性製剤2、20mgカプセ
ルを朝投与。
処置2:試験製剤:摂食条件下で、メチルフェニデート制御放出性製剤2、20mgカプセ
ルを朝投与。
処置3:試験製剤:絶食条件下で、メチルフェニデート制御放出性製剤3、20mgカプセ
ルを朝投与。
処置4:試験製剤:摂食条件下で、メチルフェニデート制御放出性製剤3、20mgカプセ
ルを朝投与。
処置5:対照製剤:絶食条件下で、メチルフェニデート緩徐放出性Ritalin SR(Novart
is)、20mg錠剤を投与。
【0192】
試験期間の間に7日のウォッシュアウト期間を置いた。各試験期間中、投与前の1時間
以内、ならびに、投与から0.250、0.500、0.750、1.00、1.50、2.00、2.50、3.00、3.50
、4.00、4.50、5.00、6.00、7.00、8.00、10.0、12.0、16.0、24.0時間後にそれぞれ、各
被験者から血液サンプル(各1×5ml)を採取した。各血液サンプルから血漿を回収し、
−20℃のフリーザーに貯蔵した後、血漿メチルフェニデート濃度を検定した。
【0193】
このデータは、図5〜8にグラフとして表す。図5は、絶食および摂食条件下の製剤2
、ならびに、絶食条件下のRitalin (商標登録)についての、平均血漿濃度対時間を示す
。また、図6は、絶食および摂食条件下の製剤3ならびに絶食条件下のRitalin (商標登
録)についての、平均血漿濃度対時間を示す。図7は、絶食条件下の製剤2および3につ
いての、平均血漿濃度対時間を示す。また、図8は、摂食条件下の製剤2および3につい
ての、平均血漿濃度対時間を示す。
【0194】
絶食および摂食条件下の制御放出性メチルフェニデート20mg(製剤2および3)と、絶
食条件下の緩徐放出性メチルフェニデート20mg(Ritalin (商標登録)SR)の完全薬物動
力学的パラメーターを以下の表22〜24にまとめる。
【0195】
【表22】

【表23】

【表24】

【0196】
対数変換されたCmaxデータに関して実施されるANOVAおよびダンカンの多重検定の結果
から、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの
多重検定によれば、処置3のCmaxは、処置4および5のCmaxと有意に相違した。しかし、
ダンカンの多重検定では、処置1と処置2、または処置1と処置5との間に、統計的に有
意な相違は認められなかった。上記データに関して実施された統計的分析を以下の表25に
まとめる:
【表25】

【0197】
対数変換されたTmaxデータに関して実施されたANOVAおよびダンカンの多重検定により
、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになった。ダンカンの多
重検定によれば、処置1と2、処置3と4の該パラメーターに、統計的に有意な相違が認
められた。また、ダンカンの多重検定では、処置1と3、処置3と5の比較において、Tm
axに、統計的に有意な相違は認められなかった。
【0198】
T1/2 elデータに関して実施されたANOVAにより、各処置間で、該パラメーターの、統計
的に有意な相違が明らかになった。ダンカンの多重検定によれば、処置1と3、処置3と
4、ならびに、処理1と5のT1/2 elには、統計的に有意な相違は認められなかった。し
かし、ダンカンの多重検定では、処置3と5の該パラメーターに、統計的に有意な相違が
認められた。
【0199】
K elデータに関して実施されるANOVAにより、このパラメーターについて各処置間で、
統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの多重検定では、処置1と2、処置3と4
、または処置1と5を比較した際、K elに各処置間で統計的に有意な相違は認められなか
った。しかし、ダンカンの多重検定により、処置3と5の該パラメーターに、統計的に有
意な相違が認められた。
【0200】
対数変換されたAUC0-tデータに関して実施されたANOVAおよびダンカンの多重検定によ
り、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの多
重検定によれば、処置1および3のAUC0-tは、処置2および4のAUC0-tとはそれぞれ有意
に相違した。しかし、ダンカンの多重検定では、処置1と処置5、または処置3と処置5
をそれぞれ比較した際、該パラメーターに、統計的に有意な相違は検出されなかった。上
記データに関して実施された統計的分析を以下の表26にまとめる:
【表26】

【0201】
対数変換されたAUC0-infデータに関して実施されるANOVAおよびダンカンの多重検定に
より、各処置間で、該パラメーターの、統計的に有意な相違が明らかになる。ダンカンの
多重検定によれば、処置1および3のAUC0-infは、処置2および4のAUC0-infとはそれぞ
れ有意に相違した。しかし、ダンカンの多重検定では、処置1と処置3、または処置3と
処置5を比較した際、該パラメーターに、統計的に有意な相違は認められなかった。上記
データに関して実施された統計的分析を以下の表27にまとめる:
【表27】

【0202】
処置1(製剤2、絶食時)対処置2(製剤2、摂食時)
ANOVAでは、対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax、T
1/2elおよびKelに関して、摂食条件および絶食条件、すなわち処置1および処置2間で、
統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多重検定によれば、処置1および2の対数
変換AUC0-tとAUC0-inf、ならびに、非変換Tmaxに統計的に有意な相違が認められた。しか
し、ダンカンの多重検定では、対数変換されたCmaxと、非変換T1/2elおよびKelに、各処
置間で、統計的に有意な相違は認められなかった。すべての製剤比、ならびに、相対平均
AUC0-t、AUC0-infおよびCmaxの90%幾何信頼区間は、以下の表28に示されるように80〜
125%の範囲内に認められた。従って、製剤2については、食物が、メチルフェニデート
の吸収度を増加することが明らかである。しかし、この食物効果は、平均して20%に満た
ない。:
【表28】

【0203】
処置3(製剤3、絶食時)対処置4(製剤3、摂食時)
ANOVAでは、対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax、T
1/2elおよびKelに関して、各処置間で、統計的に有意な相違が認められた。ダンカンの多
重検定によれば、処置3および4の対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならび
に、非変換のTmaxに、統計的に有意な相違が認められた。しかし、ダンカンの多重検定で
は、T1/2elおよびKelについては、各処置間に統計的に有意な相違が認められなかった。C
maxの幾何信頼区間が90%を下回る以外は、すべての製剤比、ならびに、相対平均AUC0-t
、AUC0-infおよびCmaxの90%幾何信頼区間は、以下の表29に示されるように、80〜125%
の範囲内に認められた。従って、製剤3については、食物が、メチルフェニデートの吸収
度を増加することが明らかである。しかし、この食物効果は、平均して20%に満たない。
【0204】
【表29】

【0205】
処置1(製剤2、絶食時)対処置5(Ritalin SR(商標登録)、絶食時)
ANOVAにより、対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax
、T1/2elおよびKelに関して、各処置間で、統計的に有意な相違が認められた。ダンカン
の多重検定によれば、処置1および5のすべてのパラメーターに、統計的に有意な相違は
認められなかった。以下の表30に示すように、すべての製剤比、ならびに、対照製剤に対
する試験製剤の相対平均AUC0-t、AUC0-infおよびCmaxの90%幾何信頼区間は、80〜125%
の範囲内に認められた。従って、製剤2は、絶食条件下で、対照製剤Ritalin SR(商標登
録)と生体内利用率が等価である。
【0206】
【表30】

【0207】
処置3(製剤3、絶食時)対処置5(Ritalin SR(商標登録)、絶食時)
ANOVAにより、対数変換されたAUC0-t、AUC0-infおよびCmax、ならびに、非変換のTmax
、T1/2elおよびKelに関して、各処置間で、統計的に有意な相違が認められた。ダンカン
の多重検定によれば、処置3および5の対数変換されたCmax、ならびに、非変換のT1/2el
およびKelに、統計的に有意な相違が認められた。しかし、ダンカンの多重検定では、対
数変換されたAUC0-tおよびAUC0-inf、ならびに、非変換のTmaxに、各処置間で、統計的に
有意な相違は認められなかった。以下の表31に示すように、すべての製剤比、ならびに、
対照製剤に対する試験製剤の相対平均AUC0-t、AUC0-infおよびCmaxの90%幾何信頼区間は
、80〜125%の範囲内に認められた。従って、製剤3は、絶食条件下で、対照製剤Ritalin
SR(商標登録)と生体内利用率が等価である。
【0208】
【表31】

【0209】
結論
Ritalin SR(商標登録)に対する製剤2の生物学的利用能は、絶食条件下で、許容可能
であった(相対AUCinf 101%、摂食条件下では試験せず)。
【0210】
絶食条件下でのRitalin SR(商標登録)の生物学的利用能は、実施例7に記載したよう
に、Ritalin IR(商標登録)のそれと類似している(それぞれ、AUCinf 29.2対46.5ng.h/
mL)。文献データによれば、Ritalin (商標登録)IRおよびSRは、同等の速度で吸収され
ることがわかっており、これは、実施例7および8に示した試験の比較が妥当であること
を示している。
【0211】
製剤1および2の生物学的利用能は、絶食および摂食条件下で、類似している(絶食時
:49.8.対51.2 ng.h/mL;摂食時:55.7対57.9 ng.h/mL)。
【0212】
製剤2およびRitalin SR(商標登録)の平均曲線から、血漿MPHの初期上昇速度は、Rita
lin SR(商標登録)と比較して、製剤2の方が若干速い。摂食条件下では、製剤2での血
漿MPHの上昇速度は、低下し、絶食時の製剤2および絶食時のRitalin SR(商標登録)と
比較して、Tmaxが遅れる。
【0213】
Ritalin SR(商標登録)に対する製剤3の生物学的利用能は、絶食条件下で、許容可能
であった(相対AUCinf 100.8%、摂食条件下では試験せず)。
【0214】
製剤1および3の生物学的利用能は、絶食および摂食条件下で、類似している(絶食時
:50.0対51.2 ng.h/mL;摂食時:56.3対57.9 ng.h/mL)。また、製剤2および3がほとん
ど同じAUC値を有することにも留意すべきである。
【0215】
製剤3およびRitalin SR(商標登録)の平均曲線から、血漿MPH濃度の初期上昇速度は
、Ritalin SR(商標登録)と比較して、製剤3の方が若干速い。
【0216】
製剤2とは対照的に、濃度の初期上昇速度に対する食物の影響は最小限である。製剤3
が、腸溶性コーティングを含まないことから、これは、腸溶性コーティングが、同じビー
ズの一部である(製剤1の場合、IRコーティングの下)場合と、別個のビーズである(製
剤2のように)場合の両方で、食物が、腸溶性コーティングを含む製剤のIR成分からの初
期放出を遅らせることを示唆している。
【0217】
また、製剤2とは対照的に、製剤3の平均曲線のTmaxは、絶食および摂食条件下で、Ri
talin SR(商標登録)のそれと同様の時間に出現する。製剤2(および製剤1)について
は、摂食条件下の第2吸収段階のTmaxが、Ritalin SR(商標登録)に対して、実質的に遅
れている。
【0218】
結論−実施例7および8
1.少なくとも絶食条件下で、初期上昇速度が高く、且つ、効果が長く持続する。絶食条
件下で長く続くプラトー・プロフィールから、摂食条件下での二相プロフィールへの変換
は、予想通りである。これらの条件は、極端な「食物ストレス」を示すことから、正常の
食事と時間を組み合わせて投与すれば、中間のプロフィールを提供すると推測できる。ま
た、正常の食事スケジュールでは、子供の胃内容排出は、高脂肪の食事を取った成人より
速いため、第2吸収段階が、早く起こると共に、12時間以降は濃度が低下する傾向がある
と考えられる。従って、製剤1は、急速に効果を発揮し、且つ効果が長く持続する、とい
う2つの目的を満たす。
【0219】
2.製剤2はまた、絶食条件下でRitalin SR(商標登録)と非常に類似しているが、摂食
条件下ではピークの遅れが認められ、その結果、投与後6時間以降、血漿MPH濃度が、Rit
alin SR(商標登録)(絶食時)より高くなる。製剤2の制御放出性成分は、製剤1より
放出が速く、血漿MPH濃度は、投与後10時間から、製剤2の方が低い。
【0220】
3.全体として、製剤3(腸溶性コーティングなし)は、絶食および摂食の両条件下で、
Ritalin SR(商標登録)と非常に類似したプロフィールを有する。製剤3のIR成分により
、絶食条件下のRitalin SR(商標登録)と比較して、初期吸収速度が増加する。同日中で
時間が経過すると、2つの製剤の濃度は類似してくることから、全用量の成分の放出を遅
らせない限り、高い初期上昇速度と、同日の時間経過後の濃度増加は、同じ用量では不可
能であるという考えが確認された。
【0221】
実施例9
実施例9は、製剤を調製する本発明の別の実施形態に関する。該製剤は、最初に作用を
迅速に発現するだけでなく持続時間も延長されており、また、そのピーク濃度がリタリン
IRを下回ることがない一方で、持続時間は、夜間に不眠を引き起こすほど長期間に及ぶも
のではない。理想的な標的血漿薬物濃度プロフィールを図9に示す。このプロフィールは
、リタリンIR、リタリンSR、製剤1(実施例7に記載)および実施例9の「標的」製剤をプ
ロットしたものである。
【0222】
ヒトにおけるメチルフェニデートの一次排泄を想定して、一次排泄速度定数を、リタリ
ンIRを経口投与した後の血漿メチルフェニデート濃度曲線(片対数用紙にプロット)の後半
部分の直線勾配から推定した。上述の製剤1の吸収プロフィールは、Wagner-Nelsen法(「
Fundamentals of Clinical Pharmacokinetics」, John G. Wagner, Drug Intelligence P
ublications, Inc. 1975, 174頁)を利用して、血漿薬物濃度プロフィールに逆重畳積分計
算を行って求めることができる。図10に示すように、in vitroにおける薬物溶解プロフィ
ールはin vivoにおける吸収プロフィールとよく相関している。この相関関係は、in vitr
o溶解法を利用してin vivoにおける薬物吸収を予測できるということを示唆する。
【0223】
標的吸収/溶解プロフィールを得るために、ヒトにおけるメチルフェニデートの一次排
泄を想定して、一次排泄速度定数を、Wagner-Nelsen法を利用して、リタリンIRを経口投
与した後の血漿メチルフェニデート濃度曲線(片対数用紙にプロット)の最終の直線勾配か
ら推定した。標的吸収プロフィールを図11に示す。図10に示したようにin vitro/in viv
o間に相関関係が確立されることから、同様の薬物放出機構が利用されていると想定すれ
ば、このin vivo吸収曲線を標的溶解プロフィールとして採用することができる。
【0224】
実施例10
実施例10では、溶融押出造粒(MEG)技術を利用して本発明のメチルフェニデート製剤を
調製する。成分を下記の表32に示す。
【0225】
【表32】

【0226】
製造方法
メチルフェニデート塩酸塩、Eudragit RSPO、ステアリルアルコール、Eudragit L100-5
5およびAvicelを配合する。粉末状配合物を回転スクリュー溶融押出機へ供給する。加熱
帯域を80℃に、スクリュー速度を30rpmに設定し、粉末を高温の押出機中へ送り込み、温
かいストランドとして1mmの孔を有するダイプレートから押出す。押出されたストランド
をコンベヤーベルト上で冷却する。次いで冷却したストランドを細かく砕く。次いで砕い
たストランドを、Fitzmillを用いて顆粒へ粉砕する。次いで顆粒をタルクおよびステアリ
ン酸マグネシウムと配合し、打錠機を用いて錠剤へ圧縮する。
【0227】
パドル速度を100rpmに設定したUSPバスケット装置1を用い、500mlのSGF中pH1.2にて2
時間、次いで500mlのリン酸緩衝液(pH5.8)中にて予想されるこれらの錠剤の溶解を表33に
示す。
【0228】
【表33】

【0229】
実施例11
実施例11では、実施例10に記載したような溶融押出造粒(MEG)技術を利用して本発明の
メチルフェニデート製剤を調製する。成分を表34に示す。
【0230】
【表34】

パドル速度を100rpmに設定したUSPバスケット装置1を用い、500mlのSGF中pH1.2にて2
時間、次いで500mlのリン酸緩衝液(pH5.8)中にて予想されるこれらの錠剤の溶解を表35に
示す。
【0231】
【表35】

【0232】
実施例12
実施例12では、直接圧縮技術を利用した、本発明の制御放出型メチルフェニデート塩酸
塩錠剤を製造する別の方法を使用する。
【0233】
実施例12の成分を下記の表36に示す。
【0234】
【表36】

【0235】
製造方法
該成分を配合する。配合した材料を錠剤へ圧縮する。上記と同様の方法論を用いてこれ
らの錠剤を溶解について試験し、得られた結果を下記の表37に示す。
【0236】
【表37】

【0237】
実施例13
実施例13では、実施例12の制御放出型メチルフェニデート塩酸塩錠剤の製造方法を利用
し、直接圧縮技術によって別の製剤を製造する。実施例13の成分を下記の表38に示す。
【0238】
【表38】

【0239】
上記と同様の方法論を用いて錠剤を溶解について試験し、得られた結果を下記の表39に
示す。
【0240】
【表39】

【0241】
上述の実施例は限定を意味するものではない。本発明の多くの他の改変が当業者には明
らかであり、このような改変は特許請求の範囲の範囲内に含まれるものと思料する。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】図1は、被検者を絶食条件下で製剤1およびRitalin(登録商標)で処置した場合のメチルフェニデート(methylphenidate)の平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図2】図2は、被検者を摂食条件下で製剤1およびRitalin(登録商標)で処置した場合のメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図3】図3は、被検者を絶食条件下および摂食条件下で製剤1で処置した場合のメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図4】図4は、被検者を絶食条件下および摂食条件下でRitalin(登録商標)で被験者を処置した場合のメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図5】図5は、被検者を、絶食条件下および摂食条件下で製剤2で処置した場合と、絶食条件下でRitalin(登録商標)SRで処置した場合とのメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図6】図6は、被検者を、絶食条件下および摂食条件下で製剤3で処置した場合と、絶食条件下でRitalin(登録商標)SRで処置した場合とのメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図7】図7は、被検者を絶食条件下で製剤2および製剤3で処置した場合のメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図8】図8は、被検者を摂食条件下で製剤2および製剤3で処置した場合のメチルフェニデートの平均血漿濃度を、時間の関数としてグラフ上で比較したものである。
【図9】図9は、本発明の標的血漿薬物濃度プロフィールの1つを示すグラフである。
【図10】図10は、製剤1におけるin vitro薬物溶解プロフィールとin vivo吸収プロフィールとの相関を示すグラフである。
【図11】図11は、本発明の製剤の標的吸収プロフィールを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のメチルフェニデートまたは製薬上許容し得るその塩と、基材の約2〜約25%
の重量を得るように適用される少なくとも1種のpH依存性コーティングとを含有する基
材を含んでなる経口製剤であって、製剤の最大血漿濃度に至るまでの時間を経口投与後約
0.5〜約4時間とし、ピーク血漿濃度を経口製剤に含まれるメチルフェニデートの用量
20mg当たり約3ng/ml〜約6.5ng/mlとするものであり、該ピーク血漿濃
度が、経口投与してから約9時間後に製剤によってもたらされるメチルフェニデートの血
漿濃度の約1.0〜約2.0倍であり、米国薬局方XXII(1990)のUSP装置1(バスケッ
ト法)を用い、最初の2時間は、100rpm、37℃にて酵素を含まない人工胃液50
0ml中に入れ、そして、前記最初の2時間の後は、酵素を含まない人工腸液中に入れて
測定する、in vitroにおいて下記の溶解を示し、

そして、製剤に含まれるメチルフェニデートによる作用が、経口投与してから約8〜約
12時間後に有効血漿濃度以下に低下することを特徴とする、前記経口製剤。
【請求項2】
最大血漿濃度に至るまでの時間を、経口投与後約0.5〜約2時間とする、請求項1記
載の経口製剤。
【請求項3】
ピーク血漿濃度が、経口投与してから約9時間後に製剤によってもたらされるメチルフ
ェニデートの血漿濃度の約1.0〜約1.7倍である、請求項2記載の経口製剤。
【請求項4】
経口製剤に含まれるメチルフェニデートによる作用が、経口投与してから約8〜約10
時間後に有効血漿濃度以下に低下する、請求項3記載の経口製剤。
【請求項5】
図1で見られるような「方形波」状の血漿プロフィールを示す、請求項1記載の経口製
剤。
【請求項6】
in vitroにおいて下記の溶解を示す、請求項1記載の経口製剤:

【請求項7】
メチルフェニデートまたは製薬上許容し得るその塩の部分が、即時放出性製剤の中にあ
る、請求項1記載の経口製剤。
【請求項8】
pH依存性コーティングが、シェラック、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸フ
タル酸ポリビニル(PVAP)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydrox
yproplmethylcellulose phthalate)、pH依存性メタクリル酸エステルコポリマー及び
ゼインからなる群から選ばれる、請求項1記載の経口製剤。
【請求項9】
pH依存性コーティングが、pH依存性メタクリル酸エステルコポリマーである、請求
項8記載の経口製剤。
【請求項10】
基材が、マトリクスに含まれるメチルフェニデートまたは製薬上許容し得るその塩を含
む、請求項1記載の経口製剤。
【請求項11】
マトリクスが、マトリクス球状物錠剤コアの大部分である、請求項10記載の経口製剤

【請求項12】
マトリクスが、溶融造粒技術により製造される、請求項10記載の経口製剤。
【請求項13】
マトリクスが、溶融押出技術により製造される、請求項10記載の経口製剤。
【請求項14】
基材が、不活性のビーズ上にコーティングされたメチルフェニデートまたは製薬上許容
し得るその塩を含む、請求項1記載の経口製剤。
【請求項15】
コーティングされた不活性のビーズが、pH依存性コーティングによりオーバーコーテ
ィングされている、請求項14記載の経口製剤。
【請求項16】
有効量のメチルフェニデートまたは製薬上許容し得るその塩と、基材の約2〜約25%
の重量を得るように適用される少なくとも1種のpH依存性コーティングとを含有する基
材を含んでなる経口製剤であって、米国薬局方XXII(1990)のUSP装置1(バスケット法
)を用い、最初の2時間は、100rpm、37℃にて酵素を含まない人工胃液500m
l中に入れ、そして、前記最初の2時間の後は、酵素を含まない人工腸液中に入れて測定
する、in vitroで製剤を溶解させた場合に、薬物を0.25時間後に約0〜約4
5%放出させ、約1時間後に約10〜約50%放出させ、約4時間後に約30〜約80%
放出させ、8時間後に約65%以上放出させ、約12時間後に約80%以上放出させるも
のであり、該経口製剤はさらに、ヒト患者へ経口投与した場合に、最大血漿濃度に至るま
での時間を経口投与後約0.5〜約2時間とし、作用持続時間を経口投与後約8〜約10
時間とするものであり、該薬物の血漿濃度を、経口投与後約8〜約10時間で最小有効血
漿濃度未満のレベルまで急速に低下させることを特徴とする、前記経口製剤。
【請求項17】
経口投与した場合に、経口製剤に含まれるメチルフェニデートの用量20mg当たり約
4ng/ml〜約6.5ng/mlのピーク血漿濃度をもたらす、請求項16記載の経口
製剤。
【請求項18】
経口投与した場合に、経口製剤に含まれるメチルフェニデートの用量20mg当たり約
5ng/ml〜約6.5ng/mlのピーク血漿濃度をもたらす、請求項16記載の経口
製剤。
【請求項19】
ピーク血漿濃度が、経口投与してから約9時間後に製剤によってもたらされるメチルフ
ェニデートの血漿濃度の約1.0〜約2.0倍である、請求項16記載の経口製剤。
【請求項20】
ピーク血漿濃度が、経口投与してから約9時間後に製剤によってもたらされるメチルフ
ェニデートの血漿濃度の約1.0〜約1.7倍である、請求項16記載の経口製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−184235(P2012−184235A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95985(P2012−95985)
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【分割の表示】特願2006−315261(P2006−315261)の分割
【原出願日】平成11年12月17日(1999.12.17)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】