説明

制振性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物

【課題】 高温での制振特性に優れ、且つ低収縮性、低そり性に優れ、更に精密成形性、難燃性にも優れ、家電用、OA・AV用機器部品として有用な制振性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、(B) ポリカーボネート樹脂10〜30重量部、(C) (C-1)ビニル芳香族化合物成分と共役ジエン系化合物成分からなるブロック共重合体及び/又は(C-2)ポリエステル・エステルブロック共重合体10〜50重量部、(D) 無機充填剤20〜100重量部、(E) 臭素系難燃剤30〜50重量部及び(F) アンチモン化合物10〜30重量部を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温での制振特性に優れ、且つ低収縮性、低そり性に優れた制振性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びそれを射出成形してなる家電用、OA・AV用機器部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、優れた機械的特性、電気的特性、耐熱性、耐候性、耐水性及び耐溶剤性を有するため、エンジニアリングプラスチックとして、自動車、電気・電子部品等の種々の用途に広く利用されている。一方、利用分野が拡大するにつれて、その要求特性はしだいに高度化し、例えば、電気・電子部品においては、難燃性や電気的特性とともに、機械的特性及び流動性、成形性等を一層向上させることが望まれている。更に、電気・電子機器、特に家電用、OA・AV用機器材料においては制振性が重視され、振動が持続しないこと、あるいは振動が他の部位へ伝播しないことが要求される。振動源となる機構あるいは振動が伝播すると不具合がある機構として、機器空冷用のファン、コンプレッサーハウジング、音響スピーカー、DVDやCD等のデジタルディスク駆動部、ギアボックス等が挙げられる。即ち、ポリブチレンテレフタレートを家電用、OA・AV用機器部品として用いる場合には、上述したような制振性、静音性、精密成形性、難燃性等の特性が厳しく要請される。
【0003】
従来、特許文献1には、制振性を付与した熱可塑性樹脂組成物として、ポリアミド等の特定の熱可塑性樹脂に特殊なブロック共重合体を添加した樹脂組成物が提案されているが、精密成形性、難燃性の要求に対しては不十分である。
【0004】
特許文献2には、特殊なブロック共重合体を配合した制振性ポリエステル樹脂組成物が提案され、制振性判断のために粘弾性評価を実施し損失正接を測定している。しかし、上述の如き精密小型機器用ファンやコンプレッサーハウジング部品等の家電用、OA・AV用機器部品として用いるには、難燃性等の特性付与が必要で組成調整が必須であり、十分なものとは言えない。
【0005】
特許文献3では、ポリエステル樹脂に扁平な断面形状を有するガラス繊維やエラストマーを添加することで制振性を実現している。この組成物は、制振性付与には有用であるものの、特殊なガラス使用のため価格面での問題や、更に精密成型への特性付与が必須であるという問題がある。
【特許文献1】特開平5−202287号公報
【特許文献2】特開平9−227766号公報
【特許文献3】特開平3−263457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高温での制振特性に優れ、且つ低収縮性、低そり性に優れ、更に精密成形性、難燃性にも優れ、家電用、OA・AV用機器部品として有用な制振性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対し、ポリカーボネート樹脂、特定のブロック共重合体、無機充填剤、臭素系難燃剤及びアンチモン化合物を夫々特定量併用配合することにより、上記特性を兼備した制振性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、
(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、
(B) ポリカーボネート樹脂10〜30重量部、
(C) (C-1)ビニル芳香族化合物成分と共役ジエン系化合物成分からなるブロック共重合体及び/又は(C-2)ポリエステル・エステルブロック共重合体10〜50重量部、
(D) 無機充填剤20〜100重量部、
(E) 臭素系難燃剤30〜50重量部、
(F) アンチモン化合物10〜30重量部
を配合してなる制振性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、およびかかる樹脂組成物を射出成形してなる家電用もしくはOA・AV用機器部品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の制振性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、高温での制振特性、静音性に優れ、低収縮性、低そり性、精密成形性、難燃性においても優れており、家電用、OA・AV用機器部品、例えば、ファン及びファンハウジング部品、コンプレッサーハウジング部品、モーターハウジング部品、スピーカー部品、デジタルディスク駆動用部品、ギアボックス等に最適な成形部品とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、順次本発明の樹脂材料の構成成分について詳しく説明する。まず本発明に使用される(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂は、主成分としてジカルボン酸にテレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル、ジヒドロキシ化合物に1,4−ブタンジオールを使用してなる縮合重合体である。
【0011】
主成分以外にジカルボン酸として、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸の如き公知のジカルボン酸及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等を含んでいてもかまわない。また、ジヒドロキシ化合物には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ジエトキシ化ビスフェノールAの如きジヒドロキシ化合物、またポリオキシアルキレングリコール及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等を含んでいてもよく、一種又は二種以上を混合使用することができる。
【0012】
また、その他にもオキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等のオキシカルボン酸及びこれらのエステル形成可能な誘導体も使用できる。更に、これらの他に三官能性モノマー、即ちトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等を少量併用した分岐又は架橋構造を有するポリエステルであっても良い。また、ジブロモテレフタル酸、テトラブロモテレフタル酸、テトラクロロテレフタル酸、1,4−ジメチロールテトラブロモベンゼン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのエチレンまたはプロピレンオキサイド付加物のような芳香族核にハロゲン化合物を置換基として有し、かつエステル形成基を有する化合物を用いたハロゲンを有するポリエステルコポリマーも含まれる。更に、高融点ハードセグメントと低融点ハードセグメントのブロック共重合体を構成するポリエステル系エラストマーも使用することができる。本発明で用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂は、溶剤としてo−クロロフェノールを用い30℃で測定した固有粘度が0.55dl/g以上のものが好ましく、更には0.55〜1.2dl/g、特に0.55〜1.0dl/gのものが好ましい。
【0013】
次に本発明で使用される(B) ポリカーボネート樹脂は、溶剤法、即ち塩化メチレン等の溶剤中で公知の酸受容体、分子量調整剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応、又は二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応により製造することができる。ここで、好適に使用し得る二価フェノールとしてはビスフェノール類があり、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ちビスフェノールAが好ましい。また、ビスフェノールAの一部又は全部を他の二価フェノールで置換したものであってもよい。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルのような化合物、又はビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンのようなハロゲン化ビスフェノール類を挙げることができる。これら二価フェノールは、二価フェノールのホモポリマー又は2種以上のコポリマーであってもよい。更に、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、多官能性芳香族化合物を二価フェノール及び/又はカーボネート前駆体と反応させた熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、特に高流動性のものが好ましい。
【0014】
(B) ポリカーボネート樹脂は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し10〜30重量部添加される。10重量部未満では十分な低そり性、低収縮性が発現せず、30重量部を超えると流動性を低下させるなど成形性を悪化させることがある。
【0015】
本発明で使用する(C) 成分のブロック共重合体は、(C-1)ビニル芳香族化合物成分と共役ジエン系化合物成分からなるブロック共重合体及び/又は(C-2)ポリエステル・エステルブロック共重合体である。
【0016】
(C-1)ビニル芳香族化合物成分と共役ジエン系化合物成分からなるブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物成分が構成するビニル芳香族モノマーから構成され、そのモノマーがアニオン重合可能なビニル芳香族モノマーであればいずれでもよく、ビニル芳香族モノマーのビニル基及び/又は芳香核はアルキル基、フェニル基、ベンジル基等で置換されていても置換されていなくてもよい。その具体例としては、スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等を挙げることができるが、スチレンが最も好ましい。もう一方の共役ジエン系化合物成分として、イソプレン重合体ブロック及びイソプレン/ブタジエン重合体ブロックの一方又は両方を有しており、これらの重合体ブロックのうちでイソプレン重合体ブロックがより好ましい。イソプレン重合体ブロック及び/又はイソプレン/ブタジエン重合体ブロックにおいては、ビニル結合含有量が40%以上であるのが好ましく、そのような重合体ブロックは、これらの重合体ブロックの製造時(重合時)にイソプレン及び/又はブタジエンにおける2個の不飽和二重結合の少なくとも40%以上が1,2−または3,4−付加重合により重合が行われるようにすることにより形成することができる。イソプレン重合体ブロック及びイソプレン/ブタジエン重合体ブロックにおけるビニル結合含有量を40%以上(40〜100%)にすることによって、優れた制振性能を発揮させることができる。イソプレン/ブタジエン重合体ブロックでは、イソプレンとブタジエンの共重合形態はランダム、ブロック、テーパードのいずれでもよく、またイソプレンの共重合割合が40重量%以上であるのが優れた制振性能を発揮させる点で好ましい。特に好ましい(C-1)としては、スチレン−ビニルイソプレン系ブロック共重合体が挙げられる。
【0017】
次に、(C-2)ポリエステル・エステルブロック共重合体は、芳香族ジカルボン酸と炭素原子数5以上のグリコールとを主たる構成成分とする非晶性のポリエステル部分と結晶性ポリエステル部分とからなる。ポリエステル・エステルブロック共重合体の非晶性ポリエステル部分を構成する芳香族ジカルボン酸とは、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環にカルボキシル基が直接結合したジカルボン酸を言い、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。この非晶性ポリエステル部分は、低融点または結晶化度が低いことが必要なため、イソフタル酸、テレフタル酸等のポリエステルにした際に直線性の少ない芳香族ジカルボン酸が全酸成分に対し60モル%以上であるポリエステルが好ましく用いられる。また、炭素数5以上のグリコールとしては、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、3−メチルペンタメチレングリコール、2−メチルオクタメチレングリコール等が例示され、炭素数12以下のものが一般的である。この非晶性ポリエステル部分は、上記の芳香族ジカルボン酸とグリコールとからなるポリエステルであるが、上記以外に例えば脂肪族、脂環族等のジカルボン酸や、芳香族、脂環族等のジオールが共重合されていてもよい。この非晶性ポリエステル部分を構成するポリエステルは融点100℃未満であることが好ましい。融点が100℃を超える場合、制振性の改良効果が低くなる場合がある。
【0018】
他方、ポリエステル・エステルブロック共重合体の結晶性ポリエステル部分を構成する成分とは、一般的には、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸等の直線性の高い芳香族ジカルボン酸と炭素数2〜4のグリコール又はシクロヘキサンジメタノールを主たる構成成分とするポリエステルであり、これらの中でもポリブチレンテレフタレートが最も好ましい。この結晶性ポリエステル部分を構成するポリエステルは共重合体であってもよく、共重合成分は特に限定されるものではなく、融点が150℃以上のものであればいずれのものでもよい。非晶性ポリエステル部分と結晶性ポリエステル部分との比率は、通常、30/70〜80/20(重量比)である。結晶性ポリエステル部分の比率を上げると機械的強度は向上するが、動的損失正接は低下する。また、本発明に使用するポリエステル・エステルブロック共重合体の損失正接の極大値が0.05以下では樹脂組成物の制振静音効果が低下してしまう。十分な制振静音効果を得るには、ポリエステル・エステルブロック共重合体の損失正接の極大値を0.1以上とするのが好ましい。そのため、上記の非晶性ポリエステル部分と結晶性ポリエステル部分との比率は、50/50〜80/20(重量比)であることが特に好ましい。このポリエステル・エステルブロック共重合体は、例えば、非晶性ポリエステル部分に相当する高分子量のポリエステルと、結晶性ポリエステル部分に相当する高分子量のポリエステルとを、溶融反応させ、融点が結晶性ポリエステル部分に相当する高分子量のポリエステルの融点より低いものとすることにより製造できるが、これ以外の製造法により製造されたものであってもよい。特に好ましい(C-2)としては、イソフタル酸及び/又はセバシン酸及びヘキサメチレングリコールよりなる非晶性ポリエステル部分とポリブチレンテレフタレートよりなる結晶性ポリエステル部分とから構成される共重合体が挙げられる。
【0019】
ポリエステル・エステルブロック共重合体は、通常、溶剤としてo−クロロフェノールを用い30℃で測定した固有粘度が0.60dl/g以上、好ましくは0.80dl/g以上である。
【0020】
(C) 成分である(C-1)ビニル芳香族化合物成分と共役ジエン系化合物成分からなるブロック共重合体及び/又は(C-2)ポリエステル・エステルブロック共重合体は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し10〜50重量部配合される。10重量部未満では制振性が十分に発揮されず、50重量部を超えると難燃性、成形性等の他特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0021】
本発明で用いられる(D) 無機充填剤としては、板状物、繊維状物、粉粒状物が挙げられるが、板状物、または板状物と繊維状物の併用系が好ましい。板状物は、十分な低そり性、低収縮性を発現させるためアスペクト比(最大粒径と厚みの比率)20以上のものが好ましい。具体的には、マイカ、ベントナイト、板状ベーマイト、ガラスフレーク等が挙げられ、好ましくはマイカが用いられる。繊維状物としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウム繊維、アスベスト繊維等の一般無機繊維が挙げられ、好ましくはガラス繊維が用いられる。
【0022】
勿論、本発明の組成物では、目的に応じ、制振性、低そり性、低収縮性、難燃性等を損なわない範囲で、上記板状、繊維状以外の無機の強化剤、充填剤、例えば、炭酸カルシウム、高分散性珪酸塩、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、ガラス粉、ガラスビーズ、石英粉、珪砂、ウォラストナイト、硫酸バリウム、焼石膏、炭化珪素、ボロンナイトライドや窒化珪素等の粉粒状物質の1種又は2種以上を配合することもできる。
【0023】
用いられる無機充填剤については、アクリル化合物やシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されていてもかまわない。
【0024】
(D) 無機充填剤は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し20〜100重量部添加される。20重量部未満では低そり性、低収縮性が不十分であり、100重量部を超えると溶融混練時の生産性が低下したり物性の著しい低下をもたらす可能性がある。
【0025】
本発明で使用される(E) 臭素系難燃剤としては、臭素化アクリル重合体、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ化合物、臭素化芳香族ビスイミド、臭素化ジフェニルエーテル等、公知の臭素含有化合物系難燃剤が用いられる。(E) 臭素系難燃剤は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し30〜50重量部添加される。30重量部未満では十分な難燃性が発現できず、一方50重量部を超えると機械物性、成形性等の他特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0026】
また、本発明においては、難燃助剤として(F) アンチモン化合物が用いられる。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ハロゲン化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。(F) アンチモン化合物は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し10〜30重量部添加される。10重量部未満では十分な難燃性が発現できず、一方30重量部を超えると機械物性、成形性等の他特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0027】
尚、本発明においては、難燃性を付与するための難燃剤、難燃助剤として、上記臭素系難燃剤、アンチモン化合物以外のものを、本発明の目的を損なわない範囲で併用してもかまわない。
【0028】
また、ドリッピング防止のために、アスベストやフッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)等を併用すると好適である。
【0029】
本発明組成物には更にその目的に応じ所望の特性を付与するため、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等に添加される公知の物質、すなわち酸化防止剤や耐熱安定剤、紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、可塑剤及び結晶化促進剤、結晶核剤等を配合することも勿論可能である。
【0030】
本発明の組成物の調製は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる設備と方法を用いて容易に調製できる。例えば、1)各成分を混合した後、1軸又は2軸の押出機により練り混み押出してペレットを調製し、しかる後成形する方法、2)一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し成形後に目的組成の成形品を得る方法、3)成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法等、何れも使用できる。また、樹脂成分の一部を細かい粉体として、これ以外の成分と混合して添加する方法は、これらの成分の均一配合を図る上で好ましい方法である。また、上述した充填剤等は、任意の時期に添加し、所望の組成物を得ることも可能である。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、成形加工性が良好であり、例えば上記樹脂組成物を溶融混練し、押出成形や射出成形等の慣用の成形方法により容易に成形でき、効率よく成形品を得ることができる。特に射出成形が好ましい。
【実施例】
【0032】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜7、比較例1〜3
表1に示すように、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し各成分を表1に示す混合比率でドライブレンド後、30mmφ2軸押出機を用いて、250℃で溶融混練後ペレット化した。この溶融混練したペレットから各試験片を用いて各種物性を測定した。結果をあわせて表1に示す。
【0033】
また、使用した成分の詳細は以下の通りである。
(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂
ウィンテックポリマー製500FP
(B) ポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアプラスチック製ユーピロンH−3000
(C) ブロック共重合体
(C-1)ビニル芳香族化合物成分と共役ジエン系化合物成分からなるブロック共重合体;クラレ製ハイブラー5127
(C-2)ポリエステル・エステルブロック共重合体;
イソフタル酸ジメチル175重量部、セバシン酸ジメチル23重量部、ヘキサメチレングリコール140重量部をジブチル錫ジアセテート触媒でエステル交換反応後、減圧下に重縮合して、固有粘度1.06dl/g、DSC法によって結晶の溶融に起因する吸熱ピークを有さない非晶性のポリエステルを得た。このポリエステルに、別途同様に重縮合して得た固有粘度0.98dl/gのポリブチレンテレフタレートのチップを乾燥して107重量部添加し、240℃で更に45分間反応させた後、フェニルフォスフィン酸0.1重量部を添加し、反応を停止させた。このポリエステル・エステルブロック共重合体を取り出し、チップ化して原料とした。このチップの固有粘度は1.03dl/gであった。
(D) 無機充填剤
(D-1) マイカ;クラレ製クラライトマイカ80D
(D-2) ガラス繊維;日本電気硝子製ECS03T187
(E) 臭素系難燃剤
大日本インキ製プロサームEP100
(F) アンチモン化合物
日本精鉱製PATOX−M
・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);
三井デュポンフロロケミカル製800J
・酸化防止剤;
日本チバガイギー製イルガノックス1010
尚、以下の例に示した物性評価の測定法は次の通りである。
[制振性]
下記の燃焼試験用試験片を用い、レオメトリック社製レオメーターRMS−800により粘弾性測定を実施し、100℃、100rad/sでの損失係数tanδを測定した。損失係数値が高いほど制振性能に優れることを示す。
[そり性、収縮率]
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、成形温度250℃、金型温度80℃で射出成形を行った。120mm×120mm×2mmの平板を射出圧力60MPaで成形し、収縮率を測定した。そりについては、成形品の1点を平面上で押さえ、最大高さとなる数値をハイトゲージにて測定した。
[燃焼性]
アンダーライターラボラトリーズのサブジェクト94(UL−94)の方法に準じ、5本の試験片(厚み1/32インチ)を用いて燃焼性についての評価を実施した。
[引張強さ、伸び]
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、成形温度250℃、金型温度80℃で射出成形を行った。射出成形により得たISO3167引張試験片についてISO527−1、2に定められている評価基準に従い評価した。
【0034】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、
(B) ポリカーボネート樹脂10〜30重量部、
(C) (C-1)ビニル芳香族化合物成分と共役ジエン系化合物成分からなるブロック共重合体及び/又は(C-2)ポリエステル・エステルブロック共重合体10〜50重量部、
(D) 無機充填剤20〜100重量部、
(E) 臭素系難燃剤30〜50重量部、
(F) アンチモン化合物10〜30重量部
を配合してなる制振性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項2】
100℃、100rad/sにおける粘弾性測定で損失係数tanδが0.1以上である請求項1記載の制振性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
(C-1)ビニル芳香族化合物成分と共役ジエン系化合物成分からなるブロック共重合体が、スチレン−ビニルイソプレン系ブロック共重合体である請求項1又は2記載の制振性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
(C-2)ポリエステル・エステルブロック共重合体が、イソフタル酸及び/又はセバシン酸及びヘキサメチレングリコールよりなる非晶性ポリエステル部分とポリブチレンテレフタレートよりなる結晶性ポリエステル部分とから構成される共重合体である請求項1〜3の何れか1項記載の制振性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項5】
(D) 無機充填剤が、板状物、または板状物と繊維状物との併用系である請求項1〜4の何れか1項記載の制振性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項記載の制振性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形してなる家電用もしくはOA・AV用機器部品。
【請求項7】
ファン及びファンハウジング部品、コンプレッサーハウジング部品、モーターハウジング部品、スピーカー部品、デジタルディスク駆動用部品又はギアボックスである請求項6記載の家電用もしくはOA・AV用機器部品。

【公開番号】特開2007−9143(P2007−9143A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195184(P2005−195184)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(501183161)ウィンテックポリマー株式会社 (54)
【Fターム(参考)】