説明

制振機能を有する橋梁及び制振機能を有する橋梁の施工方法

【課題】制振機構の設置が容易かつ低コストで行うことができる制振機能を有する橋梁、その施工方法を提供する。
【解決手段】本発明の制振機能を有する橋梁10は、上部に床版12が配置される橋桁11と、橋桁11の長手方向に所定の間隔を設けて配置される一対の支点で橋桁11を各々支持する橋脚13と、橋桁11の下部フランジ11bの下面に接合される粘弾性体14と、粘弾性体14の下面に接合される粘弾性体よりも剛性の高い平板15とを備えている。橋桁11が撓むと、下部フランジ11bと平板15の間に挟まれる粘弾性体14にはせん断変形が生じることにより、振動エネルギを吸収して橋梁10の振動を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通外乱、風の影響などにより生じる振動を抑制する制振機能を有する橋梁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、交通外乱などに基づく橋梁、特に橋桁に振動が生ずると、橋梁を通行する歩行者の不快感を除くこともさることながら、周辺住居などへの振動伝播による橋梁敷地外の環境悪化を防ぐために、橋梁の振動を抑制することが求められてきた。そのため、振動源である橋桁の振動抑制が求められ、例えば特許文献1において、図7に示すように、橋桁101の両端の下部に設けられたヒレ状板部材104と、橋脚102に、ヒレ状板部材104と交差するように橋桁101の軸方向に設けられた板部材105と、ヒレ状板部材104と板部材105との間に設けられた制振部材106とで構成される制振装置103が提案されている。制振装置103の動作原理は以下の通りである。すなわち、橋桁101に振動が加わり、支点102aを中心に橋桁101が回転すると、橋桁101に取付けられたヒレ状板部材104もそれに追従して変位する。このとき、ヒレ板状部材104と板部材105との間の制振部材106に大きな相対変形が生じ、制振部材106のせん断変形により回転変位のエネルギが吸収され、橋桁101は制振される。
また、同調質量補助振動系を設置することで震度エネルギを移設し、橋桁振動を抑制する構造も提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−55909号公報
【特許文献2】特開2003−227540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の制振装置103は、橋桁101の回転を確実に伝達するために、ヒレ状板部材104と板部材105が高い剛性を有する必要がある。したがって、コストが高くなることに加えて、これらの部材重量が増し、既存の橋梁構造の応力負担が増える。また、特許文献1は、橋桁101と橋脚102の両側に施工が必要であり、鋼製の橋桁101とコンクリート製の橋脚102のように橋桁101と橋脚102が異種材料の場合には、それを考慮した施工が煩雑であり、ひいてはコスト高を招く。
同調質量補助振動系を設置するものは、対象振動数が限定されているために、衝撃的な過渡応答に対しては効果が小さく、また、振動系とするために、まとまった質量体が必要であり、橋桁、橋脚への応力負担が大きくなる。ちなみに、質量体は、対象構造振動透過質量の1〜2%程度であり、数トン以上の質量となる。また、同調質量補助振動系を対象振動数に調整する必要があり、製作コストに加えて、設置時の調整コストが必要となる。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、制振機構の設置が容易かつ低コストで行うことができる橋梁、その施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の制振機能を有する橋梁は、上部に床版が配置される橋桁と、橋桁の長手方向に所定の間隔を設けて配置される一対の支点で橋桁を各々支持する橋脚又は橋台と、を備えることを前提とする。床版上を車両が走行して振動すると、橋桁は下向きに凸又は上向きに凸となるように撓む。したがって、橋桁には、その長手方向に延び、かつ橋桁の振動に伴って長さが移り変わる長さ変移面が存在する。その長さ変移面に、本発明の制振機能を有する橋梁は、粘弾性体を接合する。この粘弾性体は、橋桁側に配置される第1接合面と、第1接合面と対向する第2接合面とを備えるが、この第2接合面に粘弾性体よりも剛性の高い平板が接合される。
【0006】
以上の本発明の制振機能を有する橋梁における制振作用は以下の通りである。橋桁が下向きに凸となるように撓んだものとする。また、撓みのない状態(当初)の長さ変移面の長さ及び平板対の長さをともにLとし、撓みによる長さ変移面の伸びを△Lとする。つまり、撓んだ状態の長さ変移面の長さはL+△Lとなる。橋梁が撓んだとしても粘弾性体に接合されている平板は剛性が高いから、当初の長さ(L)をほぼ維持する。したがって、長さ変移面と平板の間に挟まれる粘弾性体にせん断変形が生じることにより、振動エネルギを吸収して橋梁の振動を抑制する。
【0007】
本発明の制振機能を有する橋梁は、橋桁だけに粘弾性体、平板を順次接合するものであるから、異種材料への適用を考慮した施工は不要である。また、粘弾性体には自己接着性を有するものもあるので、橋桁への粘弾性体の接合、粘弾性体への平板の接合が容易である。さらに、平板は、鋼などの粘弾性体よりも剛性の高い材料を用いればよく、その加工に要するコストも安価である。
したがって、本発明によれば、制振機構の設置が容易かつ低コストの橋梁が提供される。
【0008】
本発明において、橋桁の典型例としてH形鋼を用いることができる。このH形鋼は、床版が配置される上部フランジと、上部フランジと間隔を設けて対向配置される下部フランジと、上部フランジと下部フランジを繋ぐウェブとを備える。H型鋼からなる橋桁の場合、下部フランジの上面及び下面の一方又は双方に長さ変移面が構成され、粘弾性体は下部フランジの上面及び下面の一方又は双方に接合されるのが好ましい。
H型鋼からなる橋桁は、撓みの中立軸は一般的にウェブ上にある。したがって、上部フランジ又は下部フランジに長さ変移面が形成される。しかし、上部フランジの上面側に床版が配置されると、粘弾性体を接合できない。また、上部フランジの下面には粘弾性体を接合できるが、下部フランジに比べて高いところにあるため、粘弾性体、平板の接合作業性がよくない。これに対して、下部フランジは、上部フランジに比べて低い位置にあるので接合作業が容易である。また、下部フランジの上面に粘弾性体を接合する形態は、粘弾性体、平板が下部フランジの上面に載ることになるので、粘弾性体、平板が下部フランジから落下するのを防止する接合補助部材を設ける必要性が小さい。ただし、この形態は、下部フランジの幅方向の中央に通常はウェブがあるために、フランジの幅と同じ幅の粘弾性体を接合する場合には、ウェブの左側に粘弾性体を接合し、次いで、ウェブの右側に粘弾性体を接合する、という2つの工程が必要となる。これに対して、下部フランジの下面に粘弾性体を接合する形態は、一度の施工でフランジの幅と同じ幅の粘弾性体を接合できるので、接合の作業性が優れる。
【0009】
本発明の制振機能を有する橋梁において、粘弾性体及び平板が橋桁から落下するのを防止する接合補助部材を備えることが好ましい。特に、下部フランジの下面に粘弾性体を接合する形態の場合には、安全のために、接合補助部材を備えることが好ましい。なお、この接合補助部材は、上述した本発明の制振作用を害することがないように設けられる。
【0010】
本発明の制振機能を有する橋梁は、新設の橋梁に適用される他、既設の橋梁に対しても適用される。したがって本発明は、上部に床版が配置される橋桁と、橋桁の長手方向に所定の間隔を設けて配置される一対の支点で橋桁を各々支持する橋脚又は橋台と、を備える橋梁に、橋桁の長手方向に延び、かつ橋桁の振動に伴って長さが移り変わる長さ変移面に粘弾性体を接合し、次いで、橋桁側に配置される第1接合面と対向する粘弾性体の第2接合面に平板を接合する制振機能を有する橋梁の施工方法を提供する。
【0011】
本発明の制振機能を有する橋梁の施工方法においても、橋桁がH型鋼からなる場合には、下部フランジの上面及び下面の一方又は双方に長さ変移面が構成され、粘弾性体は下部フランジの上面及び下面の一方又は双方に接合されることが好ましく、この場合には、粘弾性体及び平板が前記橋桁から落下するのを防止する接合補助部材で粘弾性体及び平板を橋桁に固定することが好ましい。
【0012】
本発明は、橋脚に制振機構を設置することもできる。すなわち本発明は、上部に床版が配置される橋桁と、橋桁の長手方向に所定の間隔を設けて配置される一対の支点で橋桁を各々支持する橋脚と、橋脚の側面に接合され、橋脚の高さ方向に延びる粘弾性体と、橋脚側に配置される第3接合面と対向する粘弾性体の第4接合面に接合される粘弾性体よりも剛性の高い平板とを備える制振機能を有する橋梁をも提供する。
また、本発明は、この制振機能を有する橋梁を施工する方法も提供する。この施工方法は、上部に床版が載せられる橋桁と、橋桁の長手方向に所定の間隔を設けて配置される一対の支点で前記橋桁を各々支持する橋脚と、を備える橋梁に、橋脚の側面に、橋脚の高さ方向に延びる粘弾性体を接合し、次いで、橋脚側に配置される第3接合面と対向する粘弾性体の第4接合面に平板を接合する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長さ変移面と平板の間に挟まれる粘弾性体にせん断変形が生じることにより、振動エネルギを吸収して橋梁の振動を抑制する。そして、本発明によれば、橋桁又は橋脚だけに粘弾性体、平板を順次接合するものであり、粘弾性体には自己接着性を有するものもあるので、橋桁への粘弾性体の接合、粘弾性体への平板の接合が容易である。さらに、平板は、鋼などの粘弾性体よりも剛性の高い材料を用いればよく、厚さも4〜5mm程度あれば足りるので、その加工に要するコストも安価であるから、本発明の制振機能を有する橋梁によれば、制振機構の設置が容易かつ低コストで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係る橋梁の側面図である。
【図2】本実施の形態に係る橋梁の横断面図(橋脚の記載は省略)である。
【図3】本実施の形態に係る橋梁の制振作用を説明する図であり、橋桁、粘弾性体及び平板をモデル化して示す図である。
【図4】(a)は接合補助部材を示す図、(b)は下部フランジの上面に粘弾性体、平板を接合する形態を示す図である。
【図5】実施例に用いたモデル化された橋梁を示す図である。
【図6】本実施の形態に係る橋梁であって、橋脚に制振機構を設ける例を示す図である。
【図7】特許文献1に記載された制振機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1、図2に示すように、本実施の形態に係る橋梁10は、上部に床版12が配置される複数の橋桁11と、各橋桁11の長手方向に所定の間隔を設けて配置される一対の支点SP1,SP2で橋桁11を各々支持する橋脚13とを備える。人、車両は、床版12の上を図1の矢印の方向に往来するが、この矢印は橋梁10(橋桁11)の長手方向を示す。
【0016】
本実施の形態に係る橋桁11は、床版12が載せられる上部フランジ11aと、上部フランジ11aと間隔を設けて対向配置される下部フランジ11bと、上部フランジ11aと下部フランジ11bを繋ぐウェブ11cとを備えるH型鋼からなる。
【0017】
橋桁11の下部フランジ11bの下面には粘弾性体14が接合されている。粘弾性体14は、橋桁11が撓んだ際に、せん断変形が生じることで、振動エネルギを吸収する。粘弾性体14は、下部フランジ11bの下面側に配置される第1接合面14aと、第1接合面14aと対向する第2接合面14bを備えている。第2接合面14bには、後述するように、平板15が接合される。
【0018】
粘弾性体14は、下部フランジ11bと幅、長さが同じに設定されており、5つの中で3つの橋桁11に設けられている。ただし、これはあくまで一例であり、下部フランジ11bよりも幅、長さの小さい粘弾性体14を接合できるし、複数の橋桁11がある場合には最低1つの橋桁11に粘弾性体14を接合することができる。粘弾性体14の設置方法については、さらに後述する。
粘弾性体14としては、高分子材料、ゴム、アスファルト材、ウレタン材、ゲル等の中で、「粘性」と「弾性」の性質を両方あわせ持つ物質を広く適用できる。本発明では、特にアスファルトマチックに代表される瀝青材を粘弾性体14として用いることが好ましい。
粘弾性体14は、自己接着性を有する場合には、その接着力を用いて下部フランジ11bに接合される。粘弾性体14は、自己接着性を有しない場合には、接着剤を介して下部フランジ11bに接合される。その他の接合方法を用いてもよいが、制振作用を得るために粘弾性体14に必要なせん断変形が生じるのを妨げないことを前提とする。
【0019】
粘弾性体14の第2接合面14bには、鋼製の平板15が接合される。
平板15は、下部フランジ11b(粘弾性体14)と幅、長さが同じに設定されており、5つの中で3つの橋桁11に設けられている。平板15は、粘弾性体14よりも剛性が高く、かつ厚さが薄いために、橋桁11(下部フランジ11b)が撓んでも、伸びは下部フランジ11bに比べて無視できる程度である。
【0020】
床版12は、人、車両などの荷重を直接受ける部材であり、荷重を受けた際、走行性に支障をきたすような変形を起こさず、荷重を橋桁11に伝える役目を有している。床版12は、コンクリート、鋼、鋼とコンクリートを組み合わせたもの等公知の材質で構成される。
【0021】
橋脚13は、支点SP1,SP2で橋桁11を各々支持する。橋桁11は、支点SP1,SP2周りに回転可能なように、橋脚13に固定される。橋脚13は、橋桁11を介して床版12が受けた荷重を地面に伝える。橋脚13は、コンクリート、鋼、鋼とコンクリートを組み合わせたもの等公知の材質で構成される。また、本発明は、橋脚13の代わりに橋台を用いる橋梁10に適用することができる。
【0022】
次に、図3を参照しながら、橋梁10の制振作用を説明する。
初期状態において、橋桁11、粘弾性体14及び平板15の長さをLとする。
例えば車両の通行による振動に伴って橋桁11に下向きに凸の撓みが生じたものとする。橋桁11は、中立軸における長さはLのままであるが、撓むことにより橋桁11(下部フランジ11b)の下面の長さは、伸び△Lが加わりL+△Lとなる。つまり、下部フランジ11bの下面は、橋桁11の長手方向に延び、かつ橋桁11の振動に伴って長さが移り変わる長さ変移面を構成する。
下部フランジ11bの下面の長さはL+△Lとなるが、平板15の伸びは下部フランジ11bの下面に比べて無視できる程度であるから、平板15の長さはLのままとみなことができる。したがって、下部フランジ11bと平板15の間の粘弾性体14は、下部フランジ11bと接する側では長手方向に引張り力を受け、平板15と接する側では長手方向に圧縮力を受けることにより、せん断変形する。このせん断変形により振動エネルギを吸収することで、橋梁10は振動が抑制される。
【0023】
粘弾性体14は、下部フランジ11bと、粘弾性体14に接合される平板15による相対せん断変形が大きく生じる位置に設けることが好ましい。よって、下部フランジ11bの長手方向にわたって、一様に設置するのが最も得策である。
施工上、長手方向の一部に設置することが有利であっても、設置面積が同じことを前提にすると、制振特性上は長手方向により長く粘弾性体14とを設けることが有効である。
したがって、粘弾性体14は、下部フランジ11bの長手方向の全域に設置することが本発明にとって最も好ましい。
一方、下部フランジ11bの長手方向の一部に粘弾性体14を限定的に設置する場合を本発明は包含する。ただし、施工上の制約等により実施されるものであり、制振性能は低下することを念頭におく必要がある。また、この場合、橋梁の長手方向の中央部を中心にして、粘弾性体14が長手方向に等配分されることが推奨される。
【0024】
以上では、粘弾性体14が有する自己接着性を利用して粘弾性体14を下部フランジ11bへ接合し、また、平板15を粘弾性体14に接合する例を示したが、これに加えて、図4(a)に示すように、ボルト16、ナット17からなる接合補助部材を用いることができる。粘弾性体14及び平板15の橋桁11からの落下防止をより確実にするためである。なお、接合補助部材を用いる場合には、橋桁11の撓みに伴う粘弾性体14、平板15の伸縮を制約しないように、例えば粘性材料からなる緩衝体18を介して固定することが望まれる。また、ボルト16、ナット17からなる接合補助部材は、橋桁11の長手方向に相当の間隔をあけて設ければ足りる。接合補助部材は、ボルト、ナットに限定されないことはいうまでもない。
また、以上では粘弾性体14、平板15を下部フランジ11bの下面に配置した例を示したが、図4(b)に示すように、下部フランジ11bの上面に設置することもできる。この例では、接合補助部材を用いる必要性はほとんどなくなる。
【0025】
次に、具体的な設計例に基づいて本発明を説明する。
図5に示す橋梁モデルにおいて、曲げ1次モードにて振動する場合を考える。この場合、変形関数は、式(1)のようになるため、回転角は式(2)で与えられる。
【0026】
【数1】

【0027】
【数2】

【0028】
式(1)および(2)より、梁中央部における鉛直方向変位と、梁回転に起因する桁下端部の水平変位の比は式(3)のように表わされる。ここで、r:床版12下面から橋桁11の下端部までの長さ(=2000mm)とする。
【0029】
【数3】

【0030】
橋梁中央部での橋梁振動系を下記と仮定する。
一般化質量 ms*=500ton
固有振動数 fs =3.0Hz
減衰定数 hs =0.01
一般化剛性 ks*=ms*×(2πfs)=177653kN/m
一般化減衰 cs*=2×hs×ms*×(2πfs)=188kNs/m
【0031】
橋桁11の下部フランジ11b下面に粘弾性体14を介して平板15を接合し、桁下端部との間で生じる水平方向の相対変位を利用したダンパー設置を検討する。このイメージは図3に示す通りである。ダンパー設置により橋桁振動の減衰定数を3倍にすることを検討すると、△hs=0.02(△cs*=377kNs/m)となる。式(3)のモード比より、桁下端部に生じる相対変位が桁全長にわたって得られる場合と、図3のように式(3)で表される相対変位(中立軸上ではゼロ)の比率は式(4)のようになる。
【0032】
【数4】

【0033】
例えば、アスファルト系瀝青材では、単位面積(1cm)あたり、周波数3Hzの振動に対して下記の特性が得られる。
K=8.8kN/m
C=0.4kNs/m
【0034】
下部フランジ11bの下面にアスファルト系瀝青材を接合した場合、必要な面積は、式(5)より5.3mとなる。下部フランジ11bの下面の面積は15m(0.5m×30m)であるから、
1本の橋桁11に粘弾性体14を接合するだけで、振動を抑制できることが判る。
【0035】
【数5】

【0036】
次に、以上では橋桁11に粘弾性体14、平板15を設置する例を説明したが、本発明は、図6に示すように、橋脚13に粘弾性体24、平板25を設置することもできる。この場合、粘弾性体24、平板25を設置する面は任意であり、図6(a),(b)に示すように橋脚13の一側面に粘弾性体24、平板25を設置できるし、図6(c),(d)に示すように橋脚13の対向する2つの側面に粘弾性体24、平板25を設置することもできる。もちろん、全ての側面に粘弾性体24、平板25を設置することもできる。要は、粘弾性体24に振動エネルギを吸収するに足りるせん断変形が生じる位置に設置することが重要である。例えば、橋脚13が橋軸方向(白抜き矢印)に振動する場合、図6(c),(d)に示すように橋軸方向に対向する2つの側面13a,13bに設置する。一方、橋軸直角方向(実線矢印)に橋脚13が振動する場合は、橋軸直角方向に対向する2つの側面13c,13dに設置するのが好ましい。また、橋脚13の高さ方向(下端から上端)の全域にわたって粘弾性体24を接合することが好ましい。粘弾性体24の幅については、制振作用を発揮するのに必要な粘弾性体24の面積に応じて適宜調整される。
【0037】
なお、上記実施の形態では、橋桁11としてビルトH形鋼(I断面の鈑桁/Box断面の箱桁等)を用いた例を示したが、I形鋼、溝形鋼等の他の形鋼を橋桁11として用いることもできる。これら形鋼を用いる場合にも、橋桁11の振動に伴って長さが移り変わる長さ変移面が存在するので、そこに粘弾性体を接合する。
また、橋桁11は鋼製に限らず、コンクリート製の橋桁についても本発明を適用することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
10…橋梁、11…橋桁、12…床版、13…橋脚、14,24…粘弾性体、14a…第1接合面,14b…第2接合面、15,25…平板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に床版が設置される橋桁と、
前記橋桁の長手方向に所定の間隔を設けて配置される一対の支点で前記橋桁を各々支持する橋脚又は橋台と、
前記橋桁の前記長手方向に延び、かつ前記橋桁の振動に伴って長さが移り変わる長さ変移面に接合される粘弾性体と、
前記橋桁側に配置される第1接合面と対向する前記粘弾性体の第2接合面に接合される粘弾性体よりも剛性の高い平板と、
を備えることを特徴とする制振機能を有する橋梁。
【請求項2】
前記橋桁は、前記床版が載せられる上部フランジと、前記上部フランジと間隔を設けて対向配置される下部フランジと、前記上部フランジと前記下部フランジを繋ぐウェブと、を備えるH型鋼からなり、
前記下部フランジの上面及び下面の一方又は双方が前記長さ変移面を構成し、
前記粘弾性体は前記下部フランジの上面及び下面の一方又は双方に接合される、
請求項1に記載の制振機能を有する橋梁。
【請求項3】
前記粘弾性体及び前記平板が前記橋桁から落下するのを防止する接合補助部材を備える、
請求項1又は2に記載の制振機能を有する橋梁。
【請求項4】
上部に床版が設置される橋桁と、
前記橋桁の長手方向に所定の間隔を設けて配置される一対の支点で前記橋桁を各々支持する橋脚と、を備える橋梁に、
前記橋桁の前記長手方向に延び、かつ前記橋桁の振動に伴って長さが移り変わる長さ変移面に粘弾性体を接合し、
次いで、前記橋桁側に配置される第1接合面と対向する前記粘弾性体の第2接合面に平板を接合する工程と、
を備えることを特徴とする制振機能を有する橋梁の施工方法。
【請求項5】
前記橋桁は、前記床版が載せられる上部フランジと、前記上部フランジと間隔を設けて対向配置される下部フランジと、前記上部フランジと前記下部フランジを繋ぐウェブと、を備えるH型鋼からなり、
前記下部フランジの上面及び下面の一方又は双方が前記長さ変移面を構成し、
前記粘弾性体は前記下部フランジの上面及び下面の一方又は双方に接合される、請求項4に記載の制振機能を有する橋梁の施工方法。
【請求項6】
前記粘弾性体及び前記平板が前記橋桁から落下するのを防止する接合補助部材で前記粘弾性体及び前記平板を前記橋桁に固定する請求項4又は5に記載の制振機能を有する橋梁の制振方法。
【請求項7】
上部に床版が載せられる橋桁と、
前記橋桁の長手方向に所定の間隔を設けて配置される一対の支点で前記橋桁を各々支持する橋脚と、
前記橋脚の側面に接合され、前記橋脚の高さ方向に延びる粘弾性体と、
前記橋脚側に配置される第3接合面と対向する前記粘弾性体の第4接合面に接合される粘弾性体よりも剛性の高い平板と、
を備えることを特徴とする制振機能を有する橋梁。
【請求項8】
上部に床版が載せられる橋桁と、
前記橋桁の長手方向に所定の間隔を設けて配置される一対の支点で前記橋桁を各々支持する橋脚と、を備える橋梁に、
前記橋脚の側面に、前記橋脚の高さ方向に延びる粘弾性体を接合し、
次いで、前記橋脚側に配置される第3接合面と対向する前記粘弾性体の第4接合面に平板を接合する工程と、
を備えることを特徴とする制振機能を有する橋梁の施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−137317(P2011−137317A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297091(P2009−297091)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(506122246)三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社 (111)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】