説明

制振組成物

【課題】優れた制振性能を発揮させることの容易な制振組成物を提供する。
【解決手段】制振組成物には、高分子材料とその高分子材料に制振性を付与する制振性付与成分とが含有されている。制振組成物は、高分子材料と前記制振性付与成分としてのポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを溶融混合して得られる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの配合量は、高分子材料とポリオキシアルキレンアルキルエーテルとの合計量100質量部としたときに、同100質量部に対して3質量%以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料とその高分子材料に制振性を付与する制振性付与成分とを含有する制振組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物等は、各種高分子材料に制振性を付与する制振性付与成分として知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】国際公開第97/42844号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
制振組成物においては、優れた制振性能を発揮することが要求されている。本発明は、本発明者らが制振性をさらに高めることのできる制振組成物を見出すことでなされたものである。本発明の目的は、優れた制振性能を発揮させることの容易な制振組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の制振組成物は、高分子材料とその高分子材料に制振性を付与する制振性付与成分とを含有する制振組成物であって、前記高分子材料と前記制振性付与成分としてのポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを溶融混合して得られることを要旨とする。
【0005】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の制振組成物において、前記高分子材料と前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとの合計量100質量部としたときに、同100質量部に対して前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの配合量が3質量%以上であることを要旨とする。
【0006】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の制振組成物において、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがポリオキシアルキレンラウリルエーテルであることを要旨とする。
【0007】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制振組成物において、前記高分子材料がアクリル系樹脂であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた制振性能を発揮させることが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
制振組成物には、高分子材料とその高分子材料に制振性を付与する制振性付与成分とが含有されている。制振組成物は、高分子材料と前記制振性付与成分としてのポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを溶融混合して得られる。
【0010】
高分子材料は、制振組成物の母材として含有されるものであって、溶融混合し得る高分子材料を適宜選択して使用することができる。そうした高分子材料は、熱可塑性樹脂及びゴム類に分類される。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン・アクリロニトリル系樹脂の他、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。オレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、各種ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、非晶性ポリアミド、ポリメタクリルイミド等が挙げられる。スチレン・アクリロニトリル系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
【0011】
ゴム類としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0012】
これらの高分子材料は、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせたポリマーアロイやブロック共重合体として使用してもよい。
高分子材料の中でも、制振性能が発揮される温度領域を常温付近に調整することが容易であるという観点からアクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルを単量体とする単独重合体、これらの単独重合体の混合物、並びにこれらの単量体が重合した共重合体が挙げられる。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、2−エチルヘキシルエステル、エトキシエチルエステル等が挙げられる。アクリル系樹脂は、単独種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、高分子材料の溶融状態においてその高分子材料に混合されることで高分子材料に制振性を付与する。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、炭素数が6〜24の直鎖又は分岐のアルキルアルコールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが付加した化合物である。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの中でも、制振性を高める作用効果に優れるという観点から、ポリオキシアルキレンラウリルエーテルが好ましい。
【0014】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの配合量は、高分子材料とポリオキシアルキレンアルキルエーテルとの合計量100質量部としたときに、同100質量部に対して3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを3質量%以上配合することで、優れた制振性能を発揮させることができるようになる。
【0015】
制振組成物には、その他の成分として、無機充填剤、ゲル化剤、発泡助剤、分散剤、粘度調整剤、増粘剤、流動改良剤、硬化剤、消泡剤、造膜助剤、凍結防止剤、沈降防止剤等を必要に応じて配合することが可能である。無機充填剤としては、例えばマイカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、ガラス、シリカ、アルミナ、アルミニウム、水酸化アルミニウム、鉄、アスベスト、酸化チタン、酸化鉄、珪藻土、ゼオライト、フェライト等が挙げられる。ゲル化剤としては、有機ゲル化剤と無機ゲル化剤とに分類され、有機ゲル化剤としてはでんぷん、でんぷん誘導体等が挙げられ、無機ゲル化剤としては硝酸アンモニウム、硝酸カルシウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム等が挙げられる。また、上記制振性付与成分以外の制振性付与成分として、上記芳香族第二級アミン系化合物以外の芳香族第二級アミン系化合物、上記ベンゾフェノン系化合物以外のベンゾフェノン系化合物、ベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、正リン酸エステル系化合物、トリアジン系化合物等を含有させてもよい。
【0016】
制振組成物は、アクリル系樹脂、制振性付与成分等を攪拌機等の公知の混合手段を用いて加熱混合することによって調製することができる。
ここで、従来の制振性付与成分としては、ベンゾチアジル系化合物としてのN−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド、正リン酸エステル系化合物としてのトリフェニルホスフェート、ベンゾトリアゾール系化合物としての2−[2′−ハイドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラハイドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール等が挙げられる。こうした化合物よりも上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは制振性を高める効果に優れる。
【0017】
また、アクリル系樹脂とポリオキシアルキレンラウリルエーテルとを溶融混合して得られる制振組成物においては、上記従来の制振性付与成分よりも制振性付与成分の配合量を削減したとしても、上記従来の制振性付与成分の配合に比して制振性を高めることができる。例えば、アクリル系樹脂とポリオキシアルキレンラウリルエーテルとの合計量100質量部としたときに、ポリオキシアルキレンラウリルエーテルを例えば8質量%以下となるように配合したとしても、優れた制振性能が発揮されるようになる。このため制振性付与成分の配合量を削減することができるため、制振性付与成分の配合に伴う手間を軽減することができる。
【0018】
こうした制振組成物の制振性能は、制振組成物の損失弾性率又は損失係数によって示される。つまり、制振組成物の損失弾性率の値又は損失係数の値が高ければ高いほど、制振組成物の制振性能が優れることが示される。制振組成物の損失弾性率は周知の動的粘弾性測定装置により測定することができるとともに損失係数は周知の中央加振法損失係数測定装置によって測定することができる。本実施形態の制振組成物は、特に損失弾性率が高まる。ここで、シート状の非拘束型制振材料は、シート面を適用箇所の形状に沿うようにして適用箇所に設けることで、適用箇所とは反対側のシート面が拘束されていない状態で使用される。そして、上記損失弾性率は、非拘束型制振材料の制振性能についての指標となる。すなわち、損失弾性率が高まれば、非拘束型制振材料としての制振性能が高まるため、本実施形態の制振組成物は、シート状の非拘束型制振材料としての利用価値が極めて高い。
【0019】
制振組成物は、制振材料として、振動エネルギーの抑制が要求される各種分野において利用することができる。制振組成物の適用分野としては、例えば自動車、壁材、床材、屋根材、フェンス等の建材、家電機器、産業機械等が挙げられる。
【0020】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)制振組成物は、高分子材料と制振性付与成分としてのポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを溶融混合することにより得られることで、制振性を高めることができるようになる。従って、優れた制振性能を発揮させることが容易である。
【0021】
(2)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの配合量は、高分子材料とポリオキシアルキレンアルキルエーテルとの合計量100質量部としたときに、同100質量部に対して3質量%以上であることが好ましい。このように構成した場合、優れた制振性能を発揮させることができるようになる。
【0022】
(3)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがポリオキシアルキレンラウリルエーテルであることにより、優れた制振性能を発揮させることがさらに容易となる。
(4)高分子材料がアクリル系樹脂であることにより、制振性能が発揮される温度領域を常温付近に調整することが容易となる。
【0023】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・前記高分子材料がアクリル系樹脂であるとともに前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがポリオキシアルキレンラウリルエーテルであり、前記アクリル系樹脂と前記ポリオキシアルキレンラウリルエーテルとの合計量100質量部としたときに、同100質量部に対して前記ポリオキシアルキレンラウリルエーテルの配合量が3〜8質量%である制振組成物。
【実施例】
【0024】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜3)
表1に示されるように、メタクリル酸メチル樹脂に対して制振性付与成分を所定量配合して混練機で加熱混練した。これにより、メタクリル酸メチル樹脂と制振性付与成分を溶融混合することで、制振組成物を調製した。なお、表1に示される配合量を示す数値は質量部である。
【0025】
【表1】

(比較例1〜6)
表2に示されるように、メタクリル酸メチル樹脂に対して制振性付与成分を所定量配合して混練機で加熱混練することで制振組成物を調製した。なお、表2に示される配合量を示す数値は質量部である。
【0026】
【表2】

<動的粘弾性の測定>
各例で得られた制振組成物をシート状に成形することによって、厚さ1mmのシート材を得た。各シート材を35mm×3mmの寸法に切断し、動的粘弾性測定用の試験片とした。動的粘弾性測定装置(RSA−II:レオメトリック社製)を用いて各試験片を加振しながら連続的に昇温した際の損失弾性率E″を測定した。測定条件は、加振の周波数10Hz、測定温度範囲−40℃〜+90℃、昇温速度5℃/分とした。各例のシート材について、損失弾性率E″のピーク値及びピーク温度を表3に示す。
【0027】
また、図1にはポリオキシアルキレンラウリルエーテルの配合量と損失弾性率E″のピーク値との関係、及び2−[2′−ハイドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラハイドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(図1には2HPMMBと示している。)の配合量と損失弾性率E″のピーク値との関係をグラフで示している。なお、各例で用いたメタクリル酸メチル樹脂単体の損失弾性率E″のピーク値は24.1(10Pa)、ピーク温度は29℃である。
【0028】
【表3】

表3の結果から明らかなように、各比較例において制振性付与成分を同じ配合量とした場合、比較例3〜6の損失弾性率E″のピーク値が高い傾向にあることがわかる。ここで、図1に示されるように、ポリオキシアルキレンラウリルエーテルでは、2HPMMBよりも、それら配合量を同じとした場合に損失弾性率E″のピーク値が高まっている。従って、各実施例では、優れた制振性能を発揮させることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】制振性付与成分の配合量と損失弾性率のピーク値との関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料とその高分子材料に制振性を付与する制振性付与成分とを含有する制振組成物であって、前記高分子材料と前記制振性付与成分としてのポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを溶融混合して得られることを特徴とする制振組成物。
【請求項2】
前記高分子材料と前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとの合計量100質量部としたときに、同100質量部に対して前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの配合量が3質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の制振組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルがポリオキシアルキレンラウリルエーテルであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の制振組成物。
【請求項4】
前記高分子材料がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制振組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−242708(P2009−242708A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93450(P2008−93450)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】