制振装置及びそれを用いた木造建物の制振構造
【課題】伝統構法における柔構造の特性を維持しながら耐震性能の向上を図る。
【解決手段】本発明に係るに係る木造建物の制振構造1に用いる制振装置6は、柱3aに設置された制振機構7aと、柱3bに設置された制振機構7bと、制振機構7a,7bの間に架け渡された接合材8とからなる。制振機構7aは、柱3aの側面に取り付けられ柱側取付部材11aと、接合材側取付部材12aと、柱側取付部材11a及び接合材側取付部材12aを相互に連結する制振材13aとで構成してあり、該制振材は、柱側取付部材11aと接合材側取付部材12aにそれぞれの面を接着する形で両者の間に挟み込んであるとともに、接合材側取付部材12aと柱側取付部材11aが水平軸線廻りに相対回転自在となるよう粘弾性体で形成してあり、該相対回転に伴うねじれ変形によって建物5の振動エネルギーを吸収できるようになっている。
【解決手段】本発明に係るに係る木造建物の制振構造1に用いる制振装置6は、柱3aに設置された制振機構7aと、柱3bに設置された制振機構7bと、制振機構7a,7bの間に架け渡された接合材8とからなる。制振機構7aは、柱3aの側面に取り付けられ柱側取付部材11aと、接合材側取付部材12aと、柱側取付部材11a及び接合材側取付部材12aを相互に連結する制振材13aとで構成してあり、該制振材は、柱側取付部材11aと接合材側取付部材12aにそれぞれの面を接着する形で両者の間に挟み込んであるとともに、接合材側取付部材12aと柱側取付部材11aが水平軸線廻りに相対回転自在となるよう粘弾性体で形成してあり、該相対回転に伴うねじれ変形によって建物5の振動エネルギーを吸収できるようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として木造建物、特に伝統構法で構築された木造建物に採用される制振装置及びそれを用いた木造建物の制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
既存木造建築物のうち、文化的価値が高いものや古民家については、建替えではなく修復によって建物再生を図った上、後世に残していこうというニーズが年々高まりを見せている。
【0003】
木造建築物の構法としては、柱、梁といった軸組部材を組み合わせた在来軸組木造がその代表であるが、社寺建築や古民家においては、いわゆる伝統構法が採用されていることが多い。
【0004】
伝統構法は、柱や梁を主たる構造部材として用いる点で在来軸組構法と共通しているが、在来軸組構法が、連続RC基礎である布基礎の上に土台を敷設して該土台の上に柱を立設するのに対し、伝統構法では、礎石の上に柱をそれぞれ立設し、該柱に土台や梁を水平に架け渡す点が異なる。
【0005】
また、在来軸組構法では、接合金物を用いて柱梁の仕口を補強するとともに適宜箇所に耐力壁を配置するのに対し、伝統構法では、接合金物は使用せず、ほぞとほぞ穴を使った接合によって柱梁を連結するとともに、耐力壁を配置することもない。
【0006】
したがって、在来軸組構法の建物は、地震で生じた部材力を剛性と強度で抵抗しようとするいわゆる剛構造であると言える。
【0007】
それに対し、伝統構法で建てられた建物は、地震動の卓越周期にもよるが、我が国においては、建物固有周期が長周期側にずれることにより、地震で発生する部材力自体が小さくなるいわゆる柔構造となる。加えて、柱脚と礎石とのずれが許容されることによる入力地震動の低減作用も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−076396号公報
【特許文献2】特開2005−220614号公報
【特許文献3】特開2007−077572号公報
【特許文献4】特開2007−239439号公報
【特許文献5】特開2008−019693号公報
【特許文献6】特開2008−063914号公報
【特許文献7】特開2008−144362号公報
【特許文献8】特開2008−308906号公報
【特許文献9】特開2009−046923号公報
【特許文献10】特開2009−074294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような長所を持つ伝統構法ではあるが、柔構造であるがゆえに地震時においては層間変形が大きくなり、構造部材の経年劣化とも重なると、大地震時には柱梁接合部である仕口が損傷する事態が生じ得る。
【0010】
そのため、耐震補強が必要になる場合が少なくないが、伝統構法の建物に在来軸組工法で採用されている接合金物を適用すると、仕口が剛接に近い状態となって全体の剛性バランスに変化を来たし、柔構造としての特性が損なわれて不測の部位に地震力が集中する懸念があるという問題を生じていた。
【0011】
また、仕口に工夫が施されている伝統構法の特性上、該仕口にはできるだけ手を加えたくない場合があるが、かかる場合には、仕口近傍に設けるように構成された在来軸組用のダンパーを採用することができないという問題も生じていた。
【0012】
加えて、伝統構法では、社寺建築や古民家でよく見られるように、間仕切り壁を設けずに開放的な室内空間を形成したものが多いため、柱梁構面全体を使ったブレース系のダンパーを採用するのが困難である場合も生じる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、伝統構法における柔構造の特性を維持しながら耐震性能の向上を図ることが可能な制振装置及びそれを用いた木造建物の制振構造を提供することを目的とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る制振装置は請求項1に記載したように、互いに離間配置された一対の柱のうち、一方の柱の側面に取り付けられる第1の柱側取付部材及び該第1の柱側取付部材に連結された第1の接合材側取付部材で構成された第1の制振機構と、他方の柱の側面に取り付けられる第2の柱側取付部材及び該第2の柱側取付部材に連結された第2の接合材側取付部材で構成された第2の制振機構とを備え、前記第1の柱側取付部材を前記一方の柱に取り付けた状態において前記第1の接合材側取付部材及び前記第1の柱側取付部材が水平軸線廻りに相対回転自在となるようにそれらの間に粘弾性体からなる第1の制振材を挟み込むとともに該相対回転によって前記第1の制振材がねじれ変形を生じるように構成し、前記第2の柱側取付部材を前記他方の柱に取り付けた状態において前記第2の接合材側取付部材及び前記第2の柱側取付部材が水平軸線廻りに相対回転自在となるようにそれらの間に粘弾性体からなる第2の制振材を挟み込むとともに該相対回転によって前記第2の制振材がねじれ変形を生じるように構成したものである。
【0015】
また、本発明に係る制振装置は、前記第1の接合材側取付部材と前記第1の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第1の制振材を配置するとともに、前記第2の接合材側取付部材と前記第2の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第2の制振材を配置したものである。
【0016】
また、本発明に係る制振装置は、前記第1の接合材側取付部材が一端に取り付けられ前記第2の接合材側取付部材が他端に取り付けられる接合材を備えたものである。
【0017】
また、本発明に係る木造建物の制振構造は、請求項3記載の制振装置を、前記一対の柱の頂部に架け渡された梁の直下に拡がる天井裏空間に配置したものである。
【0018】
また、本発明に係る木造建物の制振構造は、請求項3記載の制振装置を、前記一対の柱に架け渡された土台の直下に拡がる床下空間に配置したものである。
【0019】
また、本発明に係る木造建物の制振構造は、請求項3記載の制振装置を、伝統構法で構築された建物に設置したことを特徴するものである。
【0020】
また、本発明に係る制振装置は、前記第1の接合材側取付部材が一端に取り付けられ前記第2の接合材側取付部材が他端に取り付けられる接合材と、前記柱又は該柱に架け渡された横架材に一端が連結され前記接合材に他端が連結されたダンパーとを備えるとともに、前記第1の接合材側取付部材と前記第1の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第1の制振材を配置し、前記第2の接合材側取付部材と前記第2の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第2の制振材を配置したものである。
【0021】
また、本発明に係る木造建物の制振構造は、前記接合材が前記梁の下方に位置するように配置するとともに、前記ダンパーを、上端が前記梁の下面に連結され下端が前記接合材の上面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置したものである。
【0022】
また、本発明に係る木造建物の制振構造は、前記接合材が前記土台の上方に位置するように配置するとともに、前記ダンパーを、下端が前記土台の上面に連結され上端が前記接合材の下面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置したものである。
【0023】
また、本発明に係る木造建物の制振構造は、前記接合材が前記土台の下方に位置するように配置するとともに、前記ダンパーを、上端が前記土台の下面に連結され下端が前記接合材の上面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置したものである。
【0024】
(制振装置)
本発明に係る制振装置においては、互いに離間配置された一対の柱のうち、一方の柱の側面に第1の柱側取付部材を、他方の柱の側面に第2の柱側取付部材をそれぞれ取り付けることで、第1の制振機構と第2の制振機構を各柱に対向設置するとともに、それらの間に接合材を架け渡して該接合材の一端を第1の制振機構を構成する第1の接合材側取付部材に、他端を第2の制振機構を構成する第2の接合材側取付部材にそれぞれ接合する。
【0025】
このようにすると、建物に水平地震動が入力して層間変形が生じ、一対の柱が同じ方向、例えば右側に傾斜したとき、第1の制振機構及び第2の制振機構は、柱の傾斜方向と同じ方向、前述の例では時計廻りにそれぞれ回転しようとするが、第1の制振機構を構成する第1の接合材側取付部材と第2の制振機構を構成する第2の接合材側取付部材とは、接合材の各端に取り付けられることで該接合材と一体化するとともに、第1の柱側取付部材や第2の柱側取付部材とは相対回転自在に連結してある。
【0026】
そのため、接合材は、ほぼ元の姿勢、典型的には水平姿勢を維持しつつ、その端部においては、第1の接合材側取付部材と第1の柱側取付部材との間、及び第2の接合材側取付部材及び第2の柱側取付部材との間に上述した柱の傾斜角度とほぼ同じ角度の相対回転が生じる。
【0027】
かかる相対回転は、第1の制振機構を構成する第1の接合材側取付部材と第1の柱側取付部材との間に挟み込まれた第1の制振材にねじれ変形を発生させるとともに、第2の制振機構を構成する第2の接合材側取付部材と第2の柱側取付部材との間に挟み込まれた第2の制振材にねじれ変形を発生させる。
【0028】
これらのねじれ変形は、地震による交番荷重によって一対の柱が左右に振動するのに合わせて、時計廻りと反時計回りのねじれ変形を繰り返し、かくして建物の振動エネルギーは、各制振材での変形による熱エネルギーに変換される形で消失し、建物の層間変形も抑制される。
【0029】
本発明でいうところの制振材のねじれ変形は、制振材を全体として捉えた場合の変形表現であり、局所的にはせん断変形と言える。
【0030】
第1の制振機構は例えば、円板状に形成されてなる第1の制振材を、第1の柱側取付部材と第1の接合材側取付部材との間に挟み込んだ上、該制振材の一方の面を第1の柱側取付部材に、他方の面を第1の接合材側取付部材にそれぞれ接着して構成することができる。
【0031】
第2の制振機構も同様であり、例えば、円板状に形成されてなる第2の制振材を、第2の柱側取付部材と第2の接合材側取付部材との間に挟み込んだ上、該制振材の一方の面を第2の柱側取付部材に、他方の面を第2の接合材側取付部材にそれぞれ接着して構成することができる。
【0032】
以下、単に制振機構と呼ぶときは、第1の制振機構及び第2の制振機構に共通する事項であっていずれの制振機構にも該当するものであり、柱側取付部材、接合材側取付部材、制振材についても同様とする。
【0033】
制振機構は、一対の柱に対向配置したとき、該一対の柱を含む鉛直構面に直交する水平軸線廻りの相対回転に対し、各制振材がねじれ変形を生ずるように、該制振材を柱側取付部材と接合材側取付部材との間に挟み込んで構成する。
【0034】
柱側取付部材と接合材側取付部材との間に制振材を挟み込む構成は任意であり、例えば柱側取付部材と接合材側取付部材に設けた各連結部をオフセット配置、すなわち材軸をずらして配置し、それらの間に制振材を配置する構成や、柱側取付部材の連結部を2枚の連結板を離間配置して構成し該連結板の間に接合材側取付部材の連結部を挿入して該連結部と2枚の連結板の間に制振材をそれぞれ挟み込む構成などが考えられる。
【0035】
各制振材を形成する粘弾性体は、天然ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴムといった各種ゴム材料や熱可塑性エラストマーをはじめ、公知の制振材料から適宜選択することが可能である。
【0036】
接合材は、一対の柱間の寸法を基準とし各制振機構の形状や寸法を考慮して適宜その長さを定める。接合材の調達方法は任意であって、工場でプレカットしたものを現場で搬入するようにしてもよいが、寸法決めに微調整が必要な場合は、例えば木質系材料を現場でカットして製作するようにしてもよい。一方、制振機構の接合材側取付部材を端部に取り付ける際に寸法調整することにより、柱間寸法に合わせるようにしてもかまわない。
【0037】
地震時における層間変形に伴って柱側取付部材が接合材側取付部材に対して相対回転する際、その回転中心が接合材側取付部材に対して常に一定である場合は、制振材には、ねじれ変形のみが生じるが、かかる回転中心が接合材側取付部材に対してずれる場合、制振材にはねじれ変形に加えて、上下及び/又は水平方向のせん断変形が生じる。
【0038】
すなわち、地震時においては、建物はその一次固有周期で水平に振動するモードが主体となり、一対の柱は、同位相で左右に振動し、接合材設置高さにおける柱間距離も概ね変化しないが、建物の非対称性等に起因した理由で、柱の傾斜角度は必ずしも同一ではないため、その柱間距離が変動し、両端における接合材の設置高さの差(水平設置の場合はゼロ)も変動が生じる懸念がある。
【0039】
しかし、本発明によれば、このような水平鉛直方向のずれを制振材のせん断変形が吸収するため、制振機構に過大な力が入って破損したり、建物の水平剛性に影響を与えたりといったおそれがなくなる。
【0040】
このように、一対の制振機構とそれらに架け渡される接合材は、地震時水平力を負担するものではないため、柱に対してピン接合あるいはヒンジ接合となる必要はなく、地震時に生じる連結箇所での水平又は鉛直方向のずれは、制振材のせん断変形によって吸収することができるが、地震時において柱間距離が実質的に変動せず、接合材の設置高さの差も実質的に変動しない場合においては、接合材側取付部材と柱側取付部材とをピン接合し、該ピン接合箇所の回転軸線周囲に制振材を配置するようにしてもかまわない。
【0041】
かかる構成においては、制振材はねじれ変形のみを考慮すればよいため、制振材の設計あるいは製作時の負担が軽減されるとともに、ピン接合によって水平及び鉛直方向に沿った力の伝達が行われるため、例えば伝統構法で構築された柱脚部に設置することで足固めとしても用いることが可能となる。
【0042】
制振装置は、一対の柱間であればどこに設置してもかまわないが、一対の柱の頂部に架け渡された梁の直下に拡がる天井裏空間に配置した場合、あるいは一対の柱に架け渡された土台の直下に拡がる床下空間に配置した場合には、居住空間に露出することがないため、美観低下を防止することができるとともに、リフォーム前の室内空間を元のまま維持することも可能となる。
【0043】
本発明に係る制振装置は、地震時に層間変形を生ずる木造建物であればどのような木造建物にも適用することが可能であり、在来軸組構法による建物にも適用可能であるが、伝統構法による建物に適用すれば、柔構造ゆえに大きくなりがちな層間変形角を効果的に抑制し、不測の地震被害を未然に防止することが可能となる。
【0044】
(制振装置とダンパーの併用)
【0045】
本発明に係る制振装置を一対の制振機構及び接合材で構成するほか、ダンパーを備えることも可能である。
【0046】
従来、層間変形を制振用ダンパーに入力することで建物の振動を抑制する場合、上階と下階との相対変形(速度差)をダンパーに伝達するため、さまざまな工夫がなされてきた。
【0047】
例えば、間柱を途中でカットしてその間にダンパーを挟み込んだり、腰壁や垂壁を新規に設置してその間にダンパーを設置したり、X型ブレース、K型ブレース、Y型ブレースといったさまざまなブレースと組み合わせたりといった構成が知られている。
【0048】
一方、本発明の接合材は上述したように、層間変形による柱の傾斜に伴い、各制振機構の制振材にねじれ変形を発生させる役目を果たすが、ダンパー併用の場合には、上下間相対変位の一方を入力させるための部材としても機能する。
【0049】
ダンパー併用の構成としては例えば、
(a) 一対の柱の頂部に架け渡された梁の下方に位置するように接合材を配置するとともに、ダンパーを、上端が梁の下面に連結され下端が接合材の上面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置する
(b) 一対の柱に架け渡された土台の上方に位置するように接合材を配置するとともに、ダンパーを、下端が土台の上面に連結され上端が接合材の下面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置する
(c) 一対の柱に架け渡された土台の下方に位置するように接合材を配置するとともに、ダンパーを、上端が土台の下面に連結され下端が接合材の上面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置する
これらのうち、(a)と(b)は、制振装置を天井裏空間と床下空間にそれぞれ配置することができるので、室内空間への露出を防ぐことが可能となる。
【0050】
一方、(c)は、室内空間を区画したい場合あるいは区画してもよい場合に適した構成であり、ダンパーのストロークを長くとることができるため、制振効果を高めることが可能となるとともに、床下や天井に手を加えなくて済む。
【0051】
ダンパーは、軸方向に沿った相対速度によって減衰力を発生させるものであれば、公知のものから適宜選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態に係る木造建物の制振構造1の正面図。
【図2】本実施形態に係る制振装置6を構成する制振機構7aの図であり、(a)は正面図、(b)はA−A線方向から見た矢視図。
【図3】制振機構7aの分解斜視図。
【図4】本実施形態に係る制振装置6を構成する制振機構7bの図であり、(a)は正面図、(b)はB−B線方向から見た矢視図。
【図5】制振装置6の作用を説明した図。
【図6】同じく制振装置6の作用を説明した図。
【図7】制振装置6を床下空間72に配置した様子を示した正面図。
【図8】ピン接合で相互連結された制振機構87a,87bを備えた制振装置86とそれを用いた制振構造を示した正面図。
【図9】制振機構87aの図であり、(a)は正面図、(b)はC−C線方向から見た矢視図。
【図10】制振機構107aの図であり、(a)は正面図、(b)はD−D線に沿った断面図。
【図11】同じく制振機構107aの分解斜視図。
【図12】ダンパー142,142を備えた制振装置143とそれを用いた制振構造の正面図。
【図13】制振装置143の変形例を示した正面図。
【図14】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図15】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図16】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図17】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図18】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図19】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図20】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図21】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図22】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図23】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明に係る制振装置及びそれを用いた木造建物の制振構造の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図1は、本実施形態に係る木造建物の制振構造を示した正面図、図2は、それに用いる制振装置、図3はその分解斜視図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係る木造建物の制振構造1は、礎石2a,2bの上にそれぞれ脚部が載せられた一対の柱3a,3bに横架材としての梁4が架け渡されてなる伝統構法の建物5に制振装置6を適用したものである。
【0055】
制振装置6は、梁4の直下、すなわち梁4の下面と天井設置位置10の間に拡がる天井裏空間9に設置してあり、柱3aに設置された第1の制振機構としての制振機構7aと、柱3bに設置された第2の制振機構としての制振機構7bと、制振機構7a,7bの間に架け渡された接合材8とからなる。
【0056】
制振機構7aは図2及び図3でよくわかるように、柱3aの側面に取り付けられる第1の柱側取付部材としての柱側取付部材11aと、第1の接合材側取付部材としての接合材側取付部材12aと、柱側取付部材11a及び接合材側取付部材12aを相互に連結する第1の制振材としての制振材13aとで構成してある。
【0057】
一方、制振機構7bは図4に示すように、柱3bの側面に取り付けられる第2の柱側取付部材としての柱側取付部材11bと、第2の接合材側取付部材としての接合材側取付部材12bと、柱側取付部材11b及び接合材側取付部材12bを相互に連結する第2の制振材としての制振材13bとで構成してある。なお、制振機構7bは、柱3a,3bに設置した状態で制振機構7aと鉛直面に対し対称な構造であるので、全体斜視図については省略する。
【0058】
柱側取付部材11a,11bは、矩形プレート31に柱取付け用ビスが挿通されるビス孔32を穿設するとともに、半円状連結板33をその直線縁部側で矩形プレート31の中央に溶着してなる。
【0059】
接合材側取付部材12a,12bは、段差34が形成されるように折曲げ形成してなり、該段差の一方の側に延びる矩形部35には、接合材8の各端部に取り付けるためのボルトが挿通されるボルト孔36を設けてあるとともに、段差34の他方の側には半円状連結部37を延設してある。
【0060】
制振材13aは、柱側取付部材11aの半円状連結板33と接合材側取付部材12aの半円状連結部37にそれぞれの面を接着する形で両者の間に挟み込んであるとともに、接合材側取付部材12aと柱側取付部材11aが水平軸線廻りに相対回転自在となるよう粘弾性体で形成してあり、該相対回転に伴うねじれ変形によって建物5の振動エネルギーを吸収できるようになっている。
【0061】
制振材13bも制振材13aと同様、柱側取付部材11bの半円状連結板33と接合材側取付部材12bの半円状連結部37にそれぞれの面を接着する形で両者の間に挟み込んであるとともに、接合材側取付部材12bと柱側取付部材11bが水平軸線廻りに相対回転自在となるよう粘弾性体で形成してあり、該相対回転に伴うねじれ変形によって建物5の振動エネルギーを吸収できるようになっている。
【0062】
接合材8は、柱3a,3bの柱間距離に応じて例えば木質系材料で適宜製作すればよい。
【0063】
本実施形態に係る制振装置6を建物5に設置するには、まず、制振機構7a,7bを柱3a,3bにそれぞれ設置する。制振機構7aを柱3aに設置するには、該制振機構の矩形プレート31を柱3aの側面に当接し、かかる状態でビス孔32にビスを通して柱3aにねじ込めばよい。制振機構7bについても、柱3aに対向する柱3bの側面に制振機構7aと向かい合わせとなるように同様に取り付ける。
【0064】
次に、制振機構7a,7bの設置高さに接合材8を仮保持し、かかる状態で制振機構7aの接合材側取付部材12aを接合材8の一端に、制振機構7bの接合材側取付部材12bを接合材8の他端にそれぞれ取り付ける。
【0065】
かかる取付け作業は、接合材側取付部材12a,12bの矩形部35に形成されたボルト孔36にボルト(図示せず)を挿通するとともに該ボルトを接合材8に貫通させ、反対側から図示しないナットを螺合し締め付ければよい。
【0066】
このようにすると、建物5に水平地震動が入力して層間変形が生じ、一対の柱3a,3bが図5(a)に示すように右側に傾斜したとき、制振機構7a,7bは、柱3a,3bの傾斜方向と同じ時計廻りにそれぞれ回転しようとするが、制振機構7aを構成する接合材側取付部材12aと制振機構7bを構成する接合材側取付部材12bとは、接合材8の各端にそれぞれ取り付けられており、該接合材と一体に挙動するとともに、柱側取付部材11aや柱側取付部材11bとはそれぞれ相対回転自在に連結してある。
【0067】
そのため、接合材8は、ほぼ元の水平姿勢を維持しつつ、その端部においては、接合材側取付部材12aと柱側取付部材11aとの間、及び接合材側取付部材12b及び柱側取付部材11bとの間に上述した柱3a,3bの傾斜角度とほぼ同じ角度の相対回転が生じる。
【0068】
かかる相対回転は、図5(b)に示すように、制振機構7aを構成する接合材側取付部材12aと柱側取付部材11aとの間に挟み込まれた制振材13aにねじれ変形を発生させるとともに、制振機構7bを構成する接合材側取付部材12bと柱側取付部材11bとの間に挟み込まれた制振材13bにねじれ変形を発生させる。
【0069】
そして、これらのねじれ変形は、地震による交番荷重によって一対の柱3a,3bが左右に振動するのに合わせて、時計廻りと反時計回りのねじれ変形を繰り返し、建物5の振動エネルギーは、各制振材13a,13bでの変形による熱エネルギーに変換される形で消失する。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る制振装置6及びそれを用いた制振構造1によれば、柱側取付部材11a,11bと接合材側取付部材12a,12bとを制振材13a,13bを介して水平軸線廻りに回動自在に連結して制振機構7a,7bを構成するとともに、これらを柱3a,3bの対向側面にそれぞれ設置し、接合材側取付部材12a,12bについては接合材8を介して相互に接続するようにしたので、地震時においては、接合材側取付部材12aと柱側取付部材11aとの間、及び接合材側取付部材12b及び柱側取付部材11bとの間に柱3a,3bの傾斜角度とほぼ同じ角度の相対回転が生じるとともに、該相対回転に伴って制振材13a,13bにねじれ変形が生じ、かかるねじれ変形が振動エネルギーを吸収する。
【0071】
そのため、建物5に入力した振動エネルギーは、制振材13a,13bのねじれ変形によって速やかに熱エネルギーに変わり、かくして建物5の層間変形を大幅に抑制することが可能となる。
【0072】
また、本実施形態に係る制振構造1によれば、制振装置6を伝統構法で構築された建物5に適用するようにしたので、建物5全体が柔構造であってそもそも我が国の地震波動とは共振しにくく、加えて柱3a,3bがその脚部で礎石2a,2bに固定されていないために地震入力を遮断する作用があるという伝統構法固有の制振特性を何ら損なうことなく、過大になりがちな層間変形を効果的に抑えることが可能となる。
【0073】
また、本実施形態に係る制振装置6及びそれを用いた制振構造1によれば、制振機構7aの連結箇所に水平方向や鉛直方向のずれ(相対変位)が生じた場合であっても、図6(a)、(b)に示すように、水平方向のずれ(同図(a))や鉛直方向のずれ(同図(b))を制振材13aのせん断変形で吸収することができる。制振機構7bについても同様である。
【0074】
そのため、建物5の非対称性等に起因して柱3a,3bの傾斜角度が異なり、それが原因で、柱間距離が変動したり、接合材8の両端における設置高さが変動して水平でなくなった場合であっても、制振材13a,13bは、ねじれ変形による減衰作用を発揮しながら、鉛直方向及び水平方向の相対変位を吸収し、かくして制振機構7a,7bに過大な力が入って破損したり、建物の水平剛性に影響を与えたりといったおそれがなくなる。
【0075】
また、本実施形態に係る制振装置6及びそれを用いた制振構造1によれば、制振装置6を一対の柱3a,3bの頂部に架け渡された梁4の直下に拡がる天井裏空間9に配置するようにしたので、居住空間への露出を避けて美観の低下を防止することが可能となり、リフォーム前の室内空間を元のまま維持することも可能となる。
【0076】
本実施形態では、制振装置6を天井裏空間9に設置するようにしたが、これに代えて、図7に示すように横架材としての土台71の直下に拡がる床下空間72に設置するようにしてもよい。かかる構成によっても、天井裏空間に設置した場合と同様の作用効果を享受することができる。
【0077】
一方、柱3a,3bの間に壁がある場合であって、リフォーム後も壁として復旧する場合には、制振装置6を柱3a,3bの中間高さに設置すればよい。
【0078】
かかる場合においては、柱梁接合部の仕口に設ける公知のダンパーに比べ、天井や床下に手を加える必要がなくなり、壁材を剥ぐだけでよいため、改修工事が大幅に簡略化される。
【0079】
また、本実施形態では、伝統構法で構築された建物5に制振装置6を適用したが、これに代えて在来軸組構法で構築された建物に適用してもかまわない。
【0080】
また、本実施形態では、柱側取付部材11a,11bと接合材側取付部材12a,12bで挟み込まれた制振材13a,13bを、相対回転によるねじれ変形のみならず、並進2方向の相対変位によるせん断変形が生じるように構成することで、水平地震動の低減と柱傾斜角度のずれに伴う連結箇所での相対変位の発生を吸収するように構成したが、柱傾斜角度が実質的にずれる懸念がない場合には、図8及び図9に示すように、柱側取付部材11aと接合材側取付部材12aとの間に制振材13aを挟み込んでそれらをピン88で貫通させることで制振機構87aを構成するとともに、図面は省略するが制振機構87aと同様、柱側取付部材11bと接合材側取付部材12bとの間に制振材13bを挟み込んでそれらをピン88で貫通させることで制振機構87aを構成し、これらに接合材8を接続してなる制振装置86を床下空間72に設置するようにしてもかまわない。
【0081】
かかる変形例においては、制振材13a,13bによるねじれ変形で上述したと同様の層間変形角の抑制作用を享受できるほか、柱3a,3bが接合材8とのピン接合によって脚部近傍で相互に接合されるため、伝統構法における足固めとしても機能させることができる。
【0082】
また、本実施形態では、柱側取付部材11aと接合材側取付部材12aとの間に図2(a)に示すような半円が重なり合った、いわばラグビーボール状の形を平面形状とする制振材13aを一枚だけ挟み込むことで制振機構7aを構成するとともに、制振機構7bも同様に構成したが、本発明に係る制振機構は、一対の柱に対向配置したとき、該一対の柱を含む鉛直構面に直交する水平軸線廻りの相対回転に対し、各制振材がねじれ変形を生ずるように、該制振材を柱側取付部材と接合材側取付部材との間に挟み込んで構成すれば足りるものであり、柱側取付部材と接合材側取付部材との間に制振材をどのように挟み込むかは任意である。
【0083】
例えば、上記実施形態では、柱側取付部材11aの半円状連結板33と接合材側取付部材12aの半円状連結部37とは、互いに同一平面ではなく、いわばオフセット配置された構成であるが、これに代えて、図10及び図11に示す構成とすることができる。
【0084】
同図の制振機構107aは、接合材8に形成されたスリットに差し込まれるようになっているとともにボルト孔36が形成された取付け板138から2枚の連結板137,137を二股分岐状にかつ離間配置されるように延設してなる接合材側取付部材112aと、先端が半円に形成された連結板133をその直線縁部側でビス孔32が穿設された矩形プレート31の中央に溶着してなる柱側取付部材111aと、ほぼ円形をなす一対の制振材113a,113aとで構成してあり、一方の制振材113aは、その各面を連結板133の一方の面と一方の連結板137の内面にそれぞれ接着してあり、他方の制振材113aは、その各面を連結板133の他方の面と他方の連結板137の内面にそれぞれ接着してある。
【0085】
かかる変形例においても、上述の実施形態とほぼ同様の作用効果を奏するほか、制振材113aを円形に構成してあるため、ねじれ変形による減衰作用が向上するとともに制振材113aの設計製作も容易となる。
【0086】
制振機構107bも同様に構成するが、制振機構107aとは対称性を除き、全く同一の構成であるので、添字aを添字bと読み替えることで、説明を省略する。
【0087】
かかる制振機構107a,107b及び接合材8からなる制振装置を建物5に設置するには、まず、制振機構107a,107bを柱3a,3bにそれぞれ設置する。制振機構107a,107bは制振機構7a,7bと同様に取り付ければよい。
【0088】
次に、接合材8の両端部に縦スリットを中央近傍にそれぞれ加工形成しておき、該接合材を制振機構107a,107bの設置高さに仮保持した状態で、接合材側取付部材112a,112bの取付け板138,138を接合材8の各端に形成された縦スリットにそれぞれ挿入し、次いで、取付け板138に形成されたボルト孔36にボルト(図示せず)を挿通するとともに該ボルトを接合材8に貫通させて締め付ける。
【0089】
以下、制振機構107a,107bによる作用効果は、上述した実施形態の作用効果とほぼ同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0090】
なお、接合材8の幅が小さい場合には、縦スリットを設ける代わりに、取付け板138を接合材8の側面にあてがい、かかる状態でボルト止めするようにしてもかまわない。
【0091】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、柱側取付部材と接合材側取付部材とがピンで連結されたタイプの制振機構(制振機構87a,87b、図8及び図9参照)をダンパーと併用することが可能である。
【0092】
図12は、変形例に係る木造建物の制振構造を示した正面図である。
【0093】
同図でわかるように、本変形例に係る木造建物の制振構造は、建物5の梁4の直下に制振装置143を設置してあり、制振装置143は、柱3aに設置された制振機構87aと、柱3bに設置された制振機構87bと、制振機構87a,87bの間に架け渡された接合材8と、ダンパーとしての2本の油圧ダンパー142,142とからなり、制振機構87a,87bは第1実施形態で説明したように、柱側取付部材11aと接合材側取付部材12a、及び柱側取付部材11bと接合材側取付部材12bを、制振材13a,13bを挟み込んだ状態でピン88を介してそれぞれ連結してあり、水平方向及び鉛直方向に沿った力が伝達されるようになっている。
【0094】
油圧ダンパー142,142は、逆V字状(ハの字状)に配置してあり、それらの上端を梁4の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結してある。
【0095】
本変形例に係る制振構造においては、建物5に地震時水平力が加わったとき、層間変形に伴って各油圧ダンパー142,142が伸縮し、それぞれが減衰力を発揮する。
【0096】
したがって、本変形例によれば、制振機構87a,87bによる上述の減衰作用とも相俟って、地震による振動エネルギーを速やかに低減し、層間変形を大幅に抑制することが可能となる。
【0097】
油圧ダンパー142,142の配置形態は、上述した配置以外にもさまざまな配置が可能であり、以下にその例を列挙する。なお、以下に列挙する制振装置においては、制振装置143とは、油圧ダンパー142の配置及び本数が異なるのみであるため、それ以外の構成については説明を省略する。
【0098】
(1)制振装置143a
油圧ダンパー142,142をV字状に配置するとともに、それらの上端を梁4の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図13)
【0099】
(2)制振装置143b
油圧ダンパー142,142をX字状に配置するとともに、それらの上端を梁4の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図14)
【0100】
(3)制振装置143c
油圧ダンパー142,142を逆V字状(ハの字状)に配置するとともに、それらの上端を接合材8の下面に、下端を柱3a,3bの側面にそれぞれ連結したもの(図15)
【0101】
(4)制振装置143d
一組の油圧ダンパー142,142を逆V字状(ハの字状)に配置して、それらの上端を接合材8の下面に、下端を柱3a,3bの側面にそれぞれ連結するとともに、もう一組の油圧ダンパー142,142をV字状に配置して、それらの上端を梁4の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図16)
【0102】
(5)制振装置143e
油圧ダンパー142,142を逆V字状(ハの字状)に配置するとともに、それらの上端を接合材8の下面に、下端を土台71の上面にそれぞれ連結したもの(図17)
【0103】
(6)制振装置143f
油圧ダンパー142,142をV字状に配置するとともに、それらの上端を接合材8の下面に、下端を土台71の上面にそれぞれ連結したもの(図18)
【0104】
(7)制振装置143g
油圧ダンパー142,142をX字状に配置するとともに、それらの上端を接合材8の下面に、下端を土台71の上面にそれぞれ連結したもの(図19)
【0105】
(8)制振装置143h
一組の油圧ダンパー142,142を逆V字状(ハの字状)に配置して、それらの上端を接合材8の下面に、下端を土台71の上面にそれぞれ連結するとともに、もう一組の油圧ダンパー142,142をV字状に配置して、それらの上端を柱3a,3bの側面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図20)
【0106】
(9)制振装置143i
油圧ダンパー142,142を逆V字状(ハの字状)に配置するとともに、それらの上端を土台71の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図21)
【0107】
(10)制振装置143j
油圧ダンパー142,142をV字状に配置するとともに、それらの上端を土台71の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図22)
【0108】
(11)制振装置143k
油圧ダンパー142,142をX字状に配置するとともに、それらの上端を土台71の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図23)
【符号の説明】
【0109】
1 制振構造
3a,3b 一対の柱
4 梁(横架材)
5 建物
6,86,143,143a〜143k
制振装置
7a,7b,87a,87b,107a,107b
制振機構
8 接合材
9 天井裏空間
11a,11b,111a,111b
柱側取付部材
12a,12b,112a,112b
接合材側取付部材
13a,13b 制振材
71 土台(横架材)
72 床下空間
88 ピン
142 油圧ダンパー(ダンパー)
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として木造建物、特に伝統構法で構築された木造建物に採用される制振装置及びそれを用いた木造建物の制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
既存木造建築物のうち、文化的価値が高いものや古民家については、建替えではなく修復によって建物再生を図った上、後世に残していこうというニーズが年々高まりを見せている。
【0003】
木造建築物の構法としては、柱、梁といった軸組部材を組み合わせた在来軸組木造がその代表であるが、社寺建築や古民家においては、いわゆる伝統構法が採用されていることが多い。
【0004】
伝統構法は、柱や梁を主たる構造部材として用いる点で在来軸組構法と共通しているが、在来軸組構法が、連続RC基礎である布基礎の上に土台を敷設して該土台の上に柱を立設するのに対し、伝統構法では、礎石の上に柱をそれぞれ立設し、該柱に土台や梁を水平に架け渡す点が異なる。
【0005】
また、在来軸組構法では、接合金物を用いて柱梁の仕口を補強するとともに適宜箇所に耐力壁を配置するのに対し、伝統構法では、接合金物は使用せず、ほぞとほぞ穴を使った接合によって柱梁を連結するとともに、耐力壁を配置することもない。
【0006】
したがって、在来軸組構法の建物は、地震で生じた部材力を剛性と強度で抵抗しようとするいわゆる剛構造であると言える。
【0007】
それに対し、伝統構法で建てられた建物は、地震動の卓越周期にもよるが、我が国においては、建物固有周期が長周期側にずれることにより、地震で発生する部材力自体が小さくなるいわゆる柔構造となる。加えて、柱脚と礎石とのずれが許容されることによる入力地震動の低減作用も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−076396号公報
【特許文献2】特開2005−220614号公報
【特許文献3】特開2007−077572号公報
【特許文献4】特開2007−239439号公報
【特許文献5】特開2008−019693号公報
【特許文献6】特開2008−063914号公報
【特許文献7】特開2008−144362号公報
【特許文献8】特開2008−308906号公報
【特許文献9】特開2009−046923号公報
【特許文献10】特開2009−074294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような長所を持つ伝統構法ではあるが、柔構造であるがゆえに地震時においては層間変形が大きくなり、構造部材の経年劣化とも重なると、大地震時には柱梁接合部である仕口が損傷する事態が生じ得る。
【0010】
そのため、耐震補強が必要になる場合が少なくないが、伝統構法の建物に在来軸組工法で採用されている接合金物を適用すると、仕口が剛接に近い状態となって全体の剛性バランスに変化を来たし、柔構造としての特性が損なわれて不測の部位に地震力が集中する懸念があるという問題を生じていた。
【0011】
また、仕口に工夫が施されている伝統構法の特性上、該仕口にはできるだけ手を加えたくない場合があるが、かかる場合には、仕口近傍に設けるように構成された在来軸組用のダンパーを採用することができないという問題も生じていた。
【0012】
加えて、伝統構法では、社寺建築や古民家でよく見られるように、間仕切り壁を設けずに開放的な室内空間を形成したものが多いため、柱梁構面全体を使ったブレース系のダンパーを採用するのが困難である場合も生じる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、伝統構法における柔構造の特性を維持しながら耐震性能の向上を図ることが可能な制振装置及びそれを用いた木造建物の制振構造を提供することを目的とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る制振装置は請求項1に記載したように、互いに離間配置された一対の柱のうち、一方の柱の側面に取り付けられる第1の柱側取付部材及び該第1の柱側取付部材に連結された第1の接合材側取付部材で構成された第1の制振機構と、他方の柱の側面に取り付けられる第2の柱側取付部材及び該第2の柱側取付部材に連結された第2の接合材側取付部材で構成された第2の制振機構とを備え、前記第1の柱側取付部材を前記一方の柱に取り付けた状態において前記第1の接合材側取付部材及び前記第1の柱側取付部材が水平軸線廻りに相対回転自在となるようにそれらの間に粘弾性体からなる第1の制振材を挟み込むとともに該相対回転によって前記第1の制振材がねじれ変形を生じるように構成し、前記第2の柱側取付部材を前記他方の柱に取り付けた状態において前記第2の接合材側取付部材及び前記第2の柱側取付部材が水平軸線廻りに相対回転自在となるようにそれらの間に粘弾性体からなる第2の制振材を挟み込むとともに該相対回転によって前記第2の制振材がねじれ変形を生じるように構成したものである。
【0015】
また、本発明に係る制振装置は、前記第1の接合材側取付部材と前記第1の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第1の制振材を配置するとともに、前記第2の接合材側取付部材と前記第2の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第2の制振材を配置したものである。
【0016】
また、本発明に係る制振装置は、前記第1の接合材側取付部材が一端に取り付けられ前記第2の接合材側取付部材が他端に取り付けられる接合材を備えたものである。
【0017】
また、本発明に係る木造建物の制振構造は、請求項3記載の制振装置を、前記一対の柱の頂部に架け渡された梁の直下に拡がる天井裏空間に配置したものである。
【0018】
また、本発明に係る木造建物の制振構造は、請求項3記載の制振装置を、前記一対の柱に架け渡された土台の直下に拡がる床下空間に配置したものである。
【0019】
また、本発明に係る木造建物の制振構造は、請求項3記載の制振装置を、伝統構法で構築された建物に設置したことを特徴するものである。
【0020】
また、本発明に係る制振装置は、前記第1の接合材側取付部材が一端に取り付けられ前記第2の接合材側取付部材が他端に取り付けられる接合材と、前記柱又は該柱に架け渡された横架材に一端が連結され前記接合材に他端が連結されたダンパーとを備えるとともに、前記第1の接合材側取付部材と前記第1の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第1の制振材を配置し、前記第2の接合材側取付部材と前記第2の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第2の制振材を配置したものである。
【0021】
また、本発明に係る木造建物の制振構造は、前記接合材が前記梁の下方に位置するように配置するとともに、前記ダンパーを、上端が前記梁の下面に連結され下端が前記接合材の上面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置したものである。
【0022】
また、本発明に係る木造建物の制振構造は、前記接合材が前記土台の上方に位置するように配置するとともに、前記ダンパーを、下端が前記土台の上面に連結され上端が前記接合材の下面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置したものである。
【0023】
また、本発明に係る木造建物の制振構造は、前記接合材が前記土台の下方に位置するように配置するとともに、前記ダンパーを、上端が前記土台の下面に連結され下端が前記接合材の上面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置したものである。
【0024】
(制振装置)
本発明に係る制振装置においては、互いに離間配置された一対の柱のうち、一方の柱の側面に第1の柱側取付部材を、他方の柱の側面に第2の柱側取付部材をそれぞれ取り付けることで、第1の制振機構と第2の制振機構を各柱に対向設置するとともに、それらの間に接合材を架け渡して該接合材の一端を第1の制振機構を構成する第1の接合材側取付部材に、他端を第2の制振機構を構成する第2の接合材側取付部材にそれぞれ接合する。
【0025】
このようにすると、建物に水平地震動が入力して層間変形が生じ、一対の柱が同じ方向、例えば右側に傾斜したとき、第1の制振機構及び第2の制振機構は、柱の傾斜方向と同じ方向、前述の例では時計廻りにそれぞれ回転しようとするが、第1の制振機構を構成する第1の接合材側取付部材と第2の制振機構を構成する第2の接合材側取付部材とは、接合材の各端に取り付けられることで該接合材と一体化するとともに、第1の柱側取付部材や第2の柱側取付部材とは相対回転自在に連結してある。
【0026】
そのため、接合材は、ほぼ元の姿勢、典型的には水平姿勢を維持しつつ、その端部においては、第1の接合材側取付部材と第1の柱側取付部材との間、及び第2の接合材側取付部材及び第2の柱側取付部材との間に上述した柱の傾斜角度とほぼ同じ角度の相対回転が生じる。
【0027】
かかる相対回転は、第1の制振機構を構成する第1の接合材側取付部材と第1の柱側取付部材との間に挟み込まれた第1の制振材にねじれ変形を発生させるとともに、第2の制振機構を構成する第2の接合材側取付部材と第2の柱側取付部材との間に挟み込まれた第2の制振材にねじれ変形を発生させる。
【0028】
これらのねじれ変形は、地震による交番荷重によって一対の柱が左右に振動するのに合わせて、時計廻りと反時計回りのねじれ変形を繰り返し、かくして建物の振動エネルギーは、各制振材での変形による熱エネルギーに変換される形で消失し、建物の層間変形も抑制される。
【0029】
本発明でいうところの制振材のねじれ変形は、制振材を全体として捉えた場合の変形表現であり、局所的にはせん断変形と言える。
【0030】
第1の制振機構は例えば、円板状に形成されてなる第1の制振材を、第1の柱側取付部材と第1の接合材側取付部材との間に挟み込んだ上、該制振材の一方の面を第1の柱側取付部材に、他方の面を第1の接合材側取付部材にそれぞれ接着して構成することができる。
【0031】
第2の制振機構も同様であり、例えば、円板状に形成されてなる第2の制振材を、第2の柱側取付部材と第2の接合材側取付部材との間に挟み込んだ上、該制振材の一方の面を第2の柱側取付部材に、他方の面を第2の接合材側取付部材にそれぞれ接着して構成することができる。
【0032】
以下、単に制振機構と呼ぶときは、第1の制振機構及び第2の制振機構に共通する事項であっていずれの制振機構にも該当するものであり、柱側取付部材、接合材側取付部材、制振材についても同様とする。
【0033】
制振機構は、一対の柱に対向配置したとき、該一対の柱を含む鉛直構面に直交する水平軸線廻りの相対回転に対し、各制振材がねじれ変形を生ずるように、該制振材を柱側取付部材と接合材側取付部材との間に挟み込んで構成する。
【0034】
柱側取付部材と接合材側取付部材との間に制振材を挟み込む構成は任意であり、例えば柱側取付部材と接合材側取付部材に設けた各連結部をオフセット配置、すなわち材軸をずらして配置し、それらの間に制振材を配置する構成や、柱側取付部材の連結部を2枚の連結板を離間配置して構成し該連結板の間に接合材側取付部材の連結部を挿入して該連結部と2枚の連結板の間に制振材をそれぞれ挟み込む構成などが考えられる。
【0035】
各制振材を形成する粘弾性体は、天然ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴムといった各種ゴム材料や熱可塑性エラストマーをはじめ、公知の制振材料から適宜選択することが可能である。
【0036】
接合材は、一対の柱間の寸法を基準とし各制振機構の形状や寸法を考慮して適宜その長さを定める。接合材の調達方法は任意であって、工場でプレカットしたものを現場で搬入するようにしてもよいが、寸法決めに微調整が必要な場合は、例えば木質系材料を現場でカットして製作するようにしてもよい。一方、制振機構の接合材側取付部材を端部に取り付ける際に寸法調整することにより、柱間寸法に合わせるようにしてもかまわない。
【0037】
地震時における層間変形に伴って柱側取付部材が接合材側取付部材に対して相対回転する際、その回転中心が接合材側取付部材に対して常に一定である場合は、制振材には、ねじれ変形のみが生じるが、かかる回転中心が接合材側取付部材に対してずれる場合、制振材にはねじれ変形に加えて、上下及び/又は水平方向のせん断変形が生じる。
【0038】
すなわち、地震時においては、建物はその一次固有周期で水平に振動するモードが主体となり、一対の柱は、同位相で左右に振動し、接合材設置高さにおける柱間距離も概ね変化しないが、建物の非対称性等に起因した理由で、柱の傾斜角度は必ずしも同一ではないため、その柱間距離が変動し、両端における接合材の設置高さの差(水平設置の場合はゼロ)も変動が生じる懸念がある。
【0039】
しかし、本発明によれば、このような水平鉛直方向のずれを制振材のせん断変形が吸収するため、制振機構に過大な力が入って破損したり、建物の水平剛性に影響を与えたりといったおそれがなくなる。
【0040】
このように、一対の制振機構とそれらに架け渡される接合材は、地震時水平力を負担するものではないため、柱に対してピン接合あるいはヒンジ接合となる必要はなく、地震時に生じる連結箇所での水平又は鉛直方向のずれは、制振材のせん断変形によって吸収することができるが、地震時において柱間距離が実質的に変動せず、接合材の設置高さの差も実質的に変動しない場合においては、接合材側取付部材と柱側取付部材とをピン接合し、該ピン接合箇所の回転軸線周囲に制振材を配置するようにしてもかまわない。
【0041】
かかる構成においては、制振材はねじれ変形のみを考慮すればよいため、制振材の設計あるいは製作時の負担が軽減されるとともに、ピン接合によって水平及び鉛直方向に沿った力の伝達が行われるため、例えば伝統構法で構築された柱脚部に設置することで足固めとしても用いることが可能となる。
【0042】
制振装置は、一対の柱間であればどこに設置してもかまわないが、一対の柱の頂部に架け渡された梁の直下に拡がる天井裏空間に配置した場合、あるいは一対の柱に架け渡された土台の直下に拡がる床下空間に配置した場合には、居住空間に露出することがないため、美観低下を防止することができるとともに、リフォーム前の室内空間を元のまま維持することも可能となる。
【0043】
本発明に係る制振装置は、地震時に層間変形を生ずる木造建物であればどのような木造建物にも適用することが可能であり、在来軸組構法による建物にも適用可能であるが、伝統構法による建物に適用すれば、柔構造ゆえに大きくなりがちな層間変形角を効果的に抑制し、不測の地震被害を未然に防止することが可能となる。
【0044】
(制振装置とダンパーの併用)
【0045】
本発明に係る制振装置を一対の制振機構及び接合材で構成するほか、ダンパーを備えることも可能である。
【0046】
従来、層間変形を制振用ダンパーに入力することで建物の振動を抑制する場合、上階と下階との相対変形(速度差)をダンパーに伝達するため、さまざまな工夫がなされてきた。
【0047】
例えば、間柱を途中でカットしてその間にダンパーを挟み込んだり、腰壁や垂壁を新規に設置してその間にダンパーを設置したり、X型ブレース、K型ブレース、Y型ブレースといったさまざまなブレースと組み合わせたりといった構成が知られている。
【0048】
一方、本発明の接合材は上述したように、層間変形による柱の傾斜に伴い、各制振機構の制振材にねじれ変形を発生させる役目を果たすが、ダンパー併用の場合には、上下間相対変位の一方を入力させるための部材としても機能する。
【0049】
ダンパー併用の構成としては例えば、
(a) 一対の柱の頂部に架け渡された梁の下方に位置するように接合材を配置するとともに、ダンパーを、上端が梁の下面に連結され下端が接合材の上面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置する
(b) 一対の柱に架け渡された土台の上方に位置するように接合材を配置するとともに、ダンパーを、下端が土台の上面に連結され上端が接合材の下面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置する
(c) 一対の柱に架け渡された土台の下方に位置するように接合材を配置するとともに、ダンパーを、上端が土台の下面に連結され下端が接合材の上面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置する
これらのうち、(a)と(b)は、制振装置を天井裏空間と床下空間にそれぞれ配置することができるので、室内空間への露出を防ぐことが可能となる。
【0050】
一方、(c)は、室内空間を区画したい場合あるいは区画してもよい場合に適した構成であり、ダンパーのストロークを長くとることができるため、制振効果を高めることが可能となるとともに、床下や天井に手を加えなくて済む。
【0051】
ダンパーは、軸方向に沿った相対速度によって減衰力を発生させるものであれば、公知のものから適宜選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態に係る木造建物の制振構造1の正面図。
【図2】本実施形態に係る制振装置6を構成する制振機構7aの図であり、(a)は正面図、(b)はA−A線方向から見た矢視図。
【図3】制振機構7aの分解斜視図。
【図4】本実施形態に係る制振装置6を構成する制振機構7bの図であり、(a)は正面図、(b)はB−B線方向から見た矢視図。
【図5】制振装置6の作用を説明した図。
【図6】同じく制振装置6の作用を説明した図。
【図7】制振装置6を床下空間72に配置した様子を示した正面図。
【図8】ピン接合で相互連結された制振機構87a,87bを備えた制振装置86とそれを用いた制振構造を示した正面図。
【図9】制振機構87aの図であり、(a)は正面図、(b)はC−C線方向から見た矢視図。
【図10】制振機構107aの図であり、(a)は正面図、(b)はD−D線に沿った断面図。
【図11】同じく制振機構107aの分解斜視図。
【図12】ダンパー142,142を備えた制振装置143とそれを用いた制振構造の正面図。
【図13】制振装置143の変形例を示した正面図。
【図14】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図15】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図16】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図17】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図18】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図19】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図20】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図21】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図22】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【図23】制振装置143の別の変形例を示した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明に係る制振装置及びそれを用いた木造建物の制振構造の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図1は、本実施形態に係る木造建物の制振構造を示した正面図、図2は、それに用いる制振装置、図3はその分解斜視図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係る木造建物の制振構造1は、礎石2a,2bの上にそれぞれ脚部が載せられた一対の柱3a,3bに横架材としての梁4が架け渡されてなる伝統構法の建物5に制振装置6を適用したものである。
【0055】
制振装置6は、梁4の直下、すなわち梁4の下面と天井設置位置10の間に拡がる天井裏空間9に設置してあり、柱3aに設置された第1の制振機構としての制振機構7aと、柱3bに設置された第2の制振機構としての制振機構7bと、制振機構7a,7bの間に架け渡された接合材8とからなる。
【0056】
制振機構7aは図2及び図3でよくわかるように、柱3aの側面に取り付けられる第1の柱側取付部材としての柱側取付部材11aと、第1の接合材側取付部材としての接合材側取付部材12aと、柱側取付部材11a及び接合材側取付部材12aを相互に連結する第1の制振材としての制振材13aとで構成してある。
【0057】
一方、制振機構7bは図4に示すように、柱3bの側面に取り付けられる第2の柱側取付部材としての柱側取付部材11bと、第2の接合材側取付部材としての接合材側取付部材12bと、柱側取付部材11b及び接合材側取付部材12bを相互に連結する第2の制振材としての制振材13bとで構成してある。なお、制振機構7bは、柱3a,3bに設置した状態で制振機構7aと鉛直面に対し対称な構造であるので、全体斜視図については省略する。
【0058】
柱側取付部材11a,11bは、矩形プレート31に柱取付け用ビスが挿通されるビス孔32を穿設するとともに、半円状連結板33をその直線縁部側で矩形プレート31の中央に溶着してなる。
【0059】
接合材側取付部材12a,12bは、段差34が形成されるように折曲げ形成してなり、該段差の一方の側に延びる矩形部35には、接合材8の各端部に取り付けるためのボルトが挿通されるボルト孔36を設けてあるとともに、段差34の他方の側には半円状連結部37を延設してある。
【0060】
制振材13aは、柱側取付部材11aの半円状連結板33と接合材側取付部材12aの半円状連結部37にそれぞれの面を接着する形で両者の間に挟み込んであるとともに、接合材側取付部材12aと柱側取付部材11aが水平軸線廻りに相対回転自在となるよう粘弾性体で形成してあり、該相対回転に伴うねじれ変形によって建物5の振動エネルギーを吸収できるようになっている。
【0061】
制振材13bも制振材13aと同様、柱側取付部材11bの半円状連結板33と接合材側取付部材12bの半円状連結部37にそれぞれの面を接着する形で両者の間に挟み込んであるとともに、接合材側取付部材12bと柱側取付部材11bが水平軸線廻りに相対回転自在となるよう粘弾性体で形成してあり、該相対回転に伴うねじれ変形によって建物5の振動エネルギーを吸収できるようになっている。
【0062】
接合材8は、柱3a,3bの柱間距離に応じて例えば木質系材料で適宜製作すればよい。
【0063】
本実施形態に係る制振装置6を建物5に設置するには、まず、制振機構7a,7bを柱3a,3bにそれぞれ設置する。制振機構7aを柱3aに設置するには、該制振機構の矩形プレート31を柱3aの側面に当接し、かかる状態でビス孔32にビスを通して柱3aにねじ込めばよい。制振機構7bについても、柱3aに対向する柱3bの側面に制振機構7aと向かい合わせとなるように同様に取り付ける。
【0064】
次に、制振機構7a,7bの設置高さに接合材8を仮保持し、かかる状態で制振機構7aの接合材側取付部材12aを接合材8の一端に、制振機構7bの接合材側取付部材12bを接合材8の他端にそれぞれ取り付ける。
【0065】
かかる取付け作業は、接合材側取付部材12a,12bの矩形部35に形成されたボルト孔36にボルト(図示せず)を挿通するとともに該ボルトを接合材8に貫通させ、反対側から図示しないナットを螺合し締め付ければよい。
【0066】
このようにすると、建物5に水平地震動が入力して層間変形が生じ、一対の柱3a,3bが図5(a)に示すように右側に傾斜したとき、制振機構7a,7bは、柱3a,3bの傾斜方向と同じ時計廻りにそれぞれ回転しようとするが、制振機構7aを構成する接合材側取付部材12aと制振機構7bを構成する接合材側取付部材12bとは、接合材8の各端にそれぞれ取り付けられており、該接合材と一体に挙動するとともに、柱側取付部材11aや柱側取付部材11bとはそれぞれ相対回転自在に連結してある。
【0067】
そのため、接合材8は、ほぼ元の水平姿勢を維持しつつ、その端部においては、接合材側取付部材12aと柱側取付部材11aとの間、及び接合材側取付部材12b及び柱側取付部材11bとの間に上述した柱3a,3bの傾斜角度とほぼ同じ角度の相対回転が生じる。
【0068】
かかる相対回転は、図5(b)に示すように、制振機構7aを構成する接合材側取付部材12aと柱側取付部材11aとの間に挟み込まれた制振材13aにねじれ変形を発生させるとともに、制振機構7bを構成する接合材側取付部材12bと柱側取付部材11bとの間に挟み込まれた制振材13bにねじれ変形を発生させる。
【0069】
そして、これらのねじれ変形は、地震による交番荷重によって一対の柱3a,3bが左右に振動するのに合わせて、時計廻りと反時計回りのねじれ変形を繰り返し、建物5の振動エネルギーは、各制振材13a,13bでの変形による熱エネルギーに変換される形で消失する。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係る制振装置6及びそれを用いた制振構造1によれば、柱側取付部材11a,11bと接合材側取付部材12a,12bとを制振材13a,13bを介して水平軸線廻りに回動自在に連結して制振機構7a,7bを構成するとともに、これらを柱3a,3bの対向側面にそれぞれ設置し、接合材側取付部材12a,12bについては接合材8を介して相互に接続するようにしたので、地震時においては、接合材側取付部材12aと柱側取付部材11aとの間、及び接合材側取付部材12b及び柱側取付部材11bとの間に柱3a,3bの傾斜角度とほぼ同じ角度の相対回転が生じるとともに、該相対回転に伴って制振材13a,13bにねじれ変形が生じ、かかるねじれ変形が振動エネルギーを吸収する。
【0071】
そのため、建物5に入力した振動エネルギーは、制振材13a,13bのねじれ変形によって速やかに熱エネルギーに変わり、かくして建物5の層間変形を大幅に抑制することが可能となる。
【0072】
また、本実施形態に係る制振構造1によれば、制振装置6を伝統構法で構築された建物5に適用するようにしたので、建物5全体が柔構造であってそもそも我が国の地震波動とは共振しにくく、加えて柱3a,3bがその脚部で礎石2a,2bに固定されていないために地震入力を遮断する作用があるという伝統構法固有の制振特性を何ら損なうことなく、過大になりがちな層間変形を効果的に抑えることが可能となる。
【0073】
また、本実施形態に係る制振装置6及びそれを用いた制振構造1によれば、制振機構7aの連結箇所に水平方向や鉛直方向のずれ(相対変位)が生じた場合であっても、図6(a)、(b)に示すように、水平方向のずれ(同図(a))や鉛直方向のずれ(同図(b))を制振材13aのせん断変形で吸収することができる。制振機構7bについても同様である。
【0074】
そのため、建物5の非対称性等に起因して柱3a,3bの傾斜角度が異なり、それが原因で、柱間距離が変動したり、接合材8の両端における設置高さが変動して水平でなくなった場合であっても、制振材13a,13bは、ねじれ変形による減衰作用を発揮しながら、鉛直方向及び水平方向の相対変位を吸収し、かくして制振機構7a,7bに過大な力が入って破損したり、建物の水平剛性に影響を与えたりといったおそれがなくなる。
【0075】
また、本実施形態に係る制振装置6及びそれを用いた制振構造1によれば、制振装置6を一対の柱3a,3bの頂部に架け渡された梁4の直下に拡がる天井裏空間9に配置するようにしたので、居住空間への露出を避けて美観の低下を防止することが可能となり、リフォーム前の室内空間を元のまま維持することも可能となる。
【0076】
本実施形態では、制振装置6を天井裏空間9に設置するようにしたが、これに代えて、図7に示すように横架材としての土台71の直下に拡がる床下空間72に設置するようにしてもよい。かかる構成によっても、天井裏空間に設置した場合と同様の作用効果を享受することができる。
【0077】
一方、柱3a,3bの間に壁がある場合であって、リフォーム後も壁として復旧する場合には、制振装置6を柱3a,3bの中間高さに設置すればよい。
【0078】
かかる場合においては、柱梁接合部の仕口に設ける公知のダンパーに比べ、天井や床下に手を加える必要がなくなり、壁材を剥ぐだけでよいため、改修工事が大幅に簡略化される。
【0079】
また、本実施形態では、伝統構法で構築された建物5に制振装置6を適用したが、これに代えて在来軸組構法で構築された建物に適用してもかまわない。
【0080】
また、本実施形態では、柱側取付部材11a,11bと接合材側取付部材12a,12bで挟み込まれた制振材13a,13bを、相対回転によるねじれ変形のみならず、並進2方向の相対変位によるせん断変形が生じるように構成することで、水平地震動の低減と柱傾斜角度のずれに伴う連結箇所での相対変位の発生を吸収するように構成したが、柱傾斜角度が実質的にずれる懸念がない場合には、図8及び図9に示すように、柱側取付部材11aと接合材側取付部材12aとの間に制振材13aを挟み込んでそれらをピン88で貫通させることで制振機構87aを構成するとともに、図面は省略するが制振機構87aと同様、柱側取付部材11bと接合材側取付部材12bとの間に制振材13bを挟み込んでそれらをピン88で貫通させることで制振機構87aを構成し、これらに接合材8を接続してなる制振装置86を床下空間72に設置するようにしてもかまわない。
【0081】
かかる変形例においては、制振材13a,13bによるねじれ変形で上述したと同様の層間変形角の抑制作用を享受できるほか、柱3a,3bが接合材8とのピン接合によって脚部近傍で相互に接合されるため、伝統構法における足固めとしても機能させることができる。
【0082】
また、本実施形態では、柱側取付部材11aと接合材側取付部材12aとの間に図2(a)に示すような半円が重なり合った、いわばラグビーボール状の形を平面形状とする制振材13aを一枚だけ挟み込むことで制振機構7aを構成するとともに、制振機構7bも同様に構成したが、本発明に係る制振機構は、一対の柱に対向配置したとき、該一対の柱を含む鉛直構面に直交する水平軸線廻りの相対回転に対し、各制振材がねじれ変形を生ずるように、該制振材を柱側取付部材と接合材側取付部材との間に挟み込んで構成すれば足りるものであり、柱側取付部材と接合材側取付部材との間に制振材をどのように挟み込むかは任意である。
【0083】
例えば、上記実施形態では、柱側取付部材11aの半円状連結板33と接合材側取付部材12aの半円状連結部37とは、互いに同一平面ではなく、いわばオフセット配置された構成であるが、これに代えて、図10及び図11に示す構成とすることができる。
【0084】
同図の制振機構107aは、接合材8に形成されたスリットに差し込まれるようになっているとともにボルト孔36が形成された取付け板138から2枚の連結板137,137を二股分岐状にかつ離間配置されるように延設してなる接合材側取付部材112aと、先端が半円に形成された連結板133をその直線縁部側でビス孔32が穿設された矩形プレート31の中央に溶着してなる柱側取付部材111aと、ほぼ円形をなす一対の制振材113a,113aとで構成してあり、一方の制振材113aは、その各面を連結板133の一方の面と一方の連結板137の内面にそれぞれ接着してあり、他方の制振材113aは、その各面を連結板133の他方の面と他方の連結板137の内面にそれぞれ接着してある。
【0085】
かかる変形例においても、上述の実施形態とほぼ同様の作用効果を奏するほか、制振材113aを円形に構成してあるため、ねじれ変形による減衰作用が向上するとともに制振材113aの設計製作も容易となる。
【0086】
制振機構107bも同様に構成するが、制振機構107aとは対称性を除き、全く同一の構成であるので、添字aを添字bと読み替えることで、説明を省略する。
【0087】
かかる制振機構107a,107b及び接合材8からなる制振装置を建物5に設置するには、まず、制振機構107a,107bを柱3a,3bにそれぞれ設置する。制振機構107a,107bは制振機構7a,7bと同様に取り付ければよい。
【0088】
次に、接合材8の両端部に縦スリットを中央近傍にそれぞれ加工形成しておき、該接合材を制振機構107a,107bの設置高さに仮保持した状態で、接合材側取付部材112a,112bの取付け板138,138を接合材8の各端に形成された縦スリットにそれぞれ挿入し、次いで、取付け板138に形成されたボルト孔36にボルト(図示せず)を挿通するとともに該ボルトを接合材8に貫通させて締め付ける。
【0089】
以下、制振機構107a,107bによる作用効果は、上述した実施形態の作用効果とほぼ同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0090】
なお、接合材8の幅が小さい場合には、縦スリットを設ける代わりに、取付け板138を接合材8の側面にあてがい、かかる状態でボルト止めするようにしてもかまわない。
【0091】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、柱側取付部材と接合材側取付部材とがピンで連結されたタイプの制振機構(制振機構87a,87b、図8及び図9参照)をダンパーと併用することが可能である。
【0092】
図12は、変形例に係る木造建物の制振構造を示した正面図である。
【0093】
同図でわかるように、本変形例に係る木造建物の制振構造は、建物5の梁4の直下に制振装置143を設置してあり、制振装置143は、柱3aに設置された制振機構87aと、柱3bに設置された制振機構87bと、制振機構87a,87bの間に架け渡された接合材8と、ダンパーとしての2本の油圧ダンパー142,142とからなり、制振機構87a,87bは第1実施形態で説明したように、柱側取付部材11aと接合材側取付部材12a、及び柱側取付部材11bと接合材側取付部材12bを、制振材13a,13bを挟み込んだ状態でピン88を介してそれぞれ連結してあり、水平方向及び鉛直方向に沿った力が伝達されるようになっている。
【0094】
油圧ダンパー142,142は、逆V字状(ハの字状)に配置してあり、それらの上端を梁4の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結してある。
【0095】
本変形例に係る制振構造においては、建物5に地震時水平力が加わったとき、層間変形に伴って各油圧ダンパー142,142が伸縮し、それぞれが減衰力を発揮する。
【0096】
したがって、本変形例によれば、制振機構87a,87bによる上述の減衰作用とも相俟って、地震による振動エネルギーを速やかに低減し、層間変形を大幅に抑制することが可能となる。
【0097】
油圧ダンパー142,142の配置形態は、上述した配置以外にもさまざまな配置が可能であり、以下にその例を列挙する。なお、以下に列挙する制振装置においては、制振装置143とは、油圧ダンパー142の配置及び本数が異なるのみであるため、それ以外の構成については説明を省略する。
【0098】
(1)制振装置143a
油圧ダンパー142,142をV字状に配置するとともに、それらの上端を梁4の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図13)
【0099】
(2)制振装置143b
油圧ダンパー142,142をX字状に配置するとともに、それらの上端を梁4の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図14)
【0100】
(3)制振装置143c
油圧ダンパー142,142を逆V字状(ハの字状)に配置するとともに、それらの上端を接合材8の下面に、下端を柱3a,3bの側面にそれぞれ連結したもの(図15)
【0101】
(4)制振装置143d
一組の油圧ダンパー142,142を逆V字状(ハの字状)に配置して、それらの上端を接合材8の下面に、下端を柱3a,3bの側面にそれぞれ連結するとともに、もう一組の油圧ダンパー142,142をV字状に配置して、それらの上端を梁4の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図16)
【0102】
(5)制振装置143e
油圧ダンパー142,142を逆V字状(ハの字状)に配置するとともに、それらの上端を接合材8の下面に、下端を土台71の上面にそれぞれ連結したもの(図17)
【0103】
(6)制振装置143f
油圧ダンパー142,142をV字状に配置するとともに、それらの上端を接合材8の下面に、下端を土台71の上面にそれぞれ連結したもの(図18)
【0104】
(7)制振装置143g
油圧ダンパー142,142をX字状に配置するとともに、それらの上端を接合材8の下面に、下端を土台71の上面にそれぞれ連結したもの(図19)
【0105】
(8)制振装置143h
一組の油圧ダンパー142,142を逆V字状(ハの字状)に配置して、それらの上端を接合材8の下面に、下端を土台71の上面にそれぞれ連結するとともに、もう一組の油圧ダンパー142,142をV字状に配置して、それらの上端を柱3a,3bの側面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図20)
【0106】
(9)制振装置143i
油圧ダンパー142,142を逆V字状(ハの字状)に配置するとともに、それらの上端を土台71の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図21)
【0107】
(10)制振装置143j
油圧ダンパー142,142をV字状に配置するとともに、それらの上端を土台71の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図22)
【0108】
(11)制振装置143k
油圧ダンパー142,142をX字状に配置するとともに、それらの上端を土台71の下面に、下端を接合材8の上面にそれぞれ連結したもの(図23)
【符号の説明】
【0109】
1 制振構造
3a,3b 一対の柱
4 梁(横架材)
5 建物
6,86,143,143a〜143k
制振装置
7a,7b,87a,87b,107a,107b
制振機構
8 接合材
9 天井裏空間
11a,11b,111a,111b
柱側取付部材
12a,12b,112a,112b
接合材側取付部材
13a,13b 制振材
71 土台(横架材)
72 床下空間
88 ピン
142 油圧ダンパー(ダンパー)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間配置された一対の柱のうち、一方の柱の側面に取り付けられる第1の柱側取付部材及び該第1の柱側取付部材に連結された第1の接合材側取付部材で構成された第1の制振機構と、他方の柱の側面に取り付けられる第2の柱側取付部材及び該第2の柱側取付部材に連結された第2の接合材側取付部材で構成された第2の制振機構とを備え、前記第1の柱側取付部材を前記一方の柱に取り付けた状態において前記第1の接合材側取付部材及び前記第1の柱側取付部材が水平軸線廻りに相対回転自在となるようにそれらの間に粘弾性体からなる第1の制振材を挟み込むとともに該相対回転によって前記第1の制振材がねじれ変形を生じるように構成し、前記第2の柱側取付部材を前記他方の柱に取り付けた状態において前記第2の接合材側取付部材及び前記第2の柱側取付部材が水平軸線廻りに相対回転自在となるようにそれらの間に粘弾性体からなる第2の制振材を挟み込むとともに該相対回転によって前記第2の制振材がねじれ変形を生じるように構成したことを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記第1の接合材側取付部材と前記第1の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第1の制振材を配置するとともに、前記第2の接合材側取付部材と前記第2の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第2の制振材を配置した請求項1記載の制振装置。
【請求項3】
前記第1の接合材側取付部材が一端に取り付けられ前記第2の接合材側取付部材が他端に取り付けられる接合材を備えた請求項1又は請求項2記載の制振装置。
【請求項4】
請求項3記載の制振装置を、前記一対の柱の頂部に架け渡された梁の直下に拡がる天井裏空間に配置したことを特徴とする木造建物の制振構造。
【請求項5】
請求項3記載の制振装置を、前記一対の柱に架け渡された土台の直下に拡がる床下空間に配置したことを特徴とする木造建物の制振構造。
【請求項6】
請求項3記載の制振装置を、伝統構法で構築された建物に設置したことを特徴する木造建物の制振構造。
【請求項7】
前記第1の接合材側取付部材が一端に取り付けられ前記第2の接合材側取付部材が他端に取り付けられる接合材と、前記柱又は該柱に架け渡された横架材に一端が連結され前記接合材に他端が連結されたダンパーとを備えるとともに、前記第1の接合材側取付部材と前記第1の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第1の制振材を配置し、前記第2の接合材側取付部材と前記第2の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第2の制振材を配置した請求項1記載の制振装置。
【請求項8】
前記接合材が前記梁の下方に位置するように配置するとともに、前記ダンパーを、上端が前記梁の下面に連結され下端が前記接合材の上面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置した請求項7記載の木造建物の制振構造。
【請求項9】
前記接合材が前記土台の上方に位置するように配置するとともに、前記ダンパーを、下端が前記土台の上面に連結され上端が前記接合材の下面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置した請求項7記載の木造建物の制振構造。
【請求項10】
前記接合材が前記土台の下方に位置するように配置するとともに、前記ダンパーを、上端が前記土台の下面に連結され下端が前記接合材の上面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置した請求項7記載の木造建物の制振構造。
【請求項1】
互いに離間配置された一対の柱のうち、一方の柱の側面に取り付けられる第1の柱側取付部材及び該第1の柱側取付部材に連結された第1の接合材側取付部材で構成された第1の制振機構と、他方の柱の側面に取り付けられる第2の柱側取付部材及び該第2の柱側取付部材に連結された第2の接合材側取付部材で構成された第2の制振機構とを備え、前記第1の柱側取付部材を前記一方の柱に取り付けた状態において前記第1の接合材側取付部材及び前記第1の柱側取付部材が水平軸線廻りに相対回転自在となるようにそれらの間に粘弾性体からなる第1の制振材を挟み込むとともに該相対回転によって前記第1の制振材がねじれ変形を生じるように構成し、前記第2の柱側取付部材を前記他方の柱に取り付けた状態において前記第2の接合材側取付部材及び前記第2の柱側取付部材が水平軸線廻りに相対回転自在となるようにそれらの間に粘弾性体からなる第2の制振材を挟み込むとともに該相対回転によって前記第2の制振材がねじれ変形を生じるように構成したことを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記第1の接合材側取付部材と前記第1の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第1の制振材を配置するとともに、前記第2の接合材側取付部材と前記第2の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第2の制振材を配置した請求項1記載の制振装置。
【請求項3】
前記第1の接合材側取付部材が一端に取り付けられ前記第2の接合材側取付部材が他端に取り付けられる接合材を備えた請求項1又は請求項2記載の制振装置。
【請求項4】
請求項3記載の制振装置を、前記一対の柱の頂部に架け渡された梁の直下に拡がる天井裏空間に配置したことを特徴とする木造建物の制振構造。
【請求項5】
請求項3記載の制振装置を、前記一対の柱に架け渡された土台の直下に拡がる床下空間に配置したことを特徴とする木造建物の制振構造。
【請求項6】
請求項3記載の制振装置を、伝統構法で構築された建物に設置したことを特徴する木造建物の制振構造。
【請求項7】
前記第1の接合材側取付部材が一端に取り付けられ前記第2の接合材側取付部材が他端に取り付けられる接合材と、前記柱又は該柱に架け渡された横架材に一端が連結され前記接合材に他端が連結されたダンパーとを備えるとともに、前記第1の接合材側取付部材と前記第1の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第1の制振材を配置し、前記第2の接合材側取付部材と前記第2の柱側取付部材とをピン接合して該ピン接合箇所の回転軸線周囲に前記第2の制振材を配置した請求項1記載の制振装置。
【請求項8】
前記接合材が前記梁の下方に位置するように配置するとともに、前記ダンパーを、上端が前記梁の下面に連結され下端が前記接合材の上面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置した請求項7記載の木造建物の制振構造。
【請求項9】
前記接合材が前記土台の上方に位置するように配置するとともに、前記ダンパーを、下端が前記土台の上面に連結され上端が前記接合材の下面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置した請求項7記載の木造建物の制振構造。
【請求項10】
前記接合材が前記土台の下方に位置するように配置するとともに、前記ダンパーを、上端が前記土台の下面に連結され下端が前記接合材の上面に連結されるようにかつV字状、逆V字状又はX字状となるように配置した請求項7記載の木造建物の制振構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−64024(P2011−64024A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216461(P2009−216461)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(597007282)住友林業ホームテック株式会社 (43)
【出願人】(502141636)江戸川木材工業株式会社 (6)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(597007282)住友林業ホームテック株式会社 (43)
【出願人】(502141636)江戸川木材工業株式会社 (6)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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