制振部材及び構造物の制振構造
【課題】簡易な構成で小さな設置スペースに容易に設置することができるとともに、構造物などに発生した振動エネルギを吸収(散逸)することができる制振部材及び構造物の制振構造を提供する。
【解決手段】構造物に両端が固定される可撓性のケーブル14と、ケーブル14を支持しケーブル14との間で発生する摩擦力により構造物に発生した振動エネルギを吸収する支持部材(各摺動部)12A、12Bと、を備えた制振部材10とした。
【解決手段】構造物に両端が固定される可撓性のケーブル14と、ケーブル14を支持しケーブル14との間で発生する摩擦力により構造物に発生した振動エネルギを吸収する支持部材(各摺動部)12A、12Bと、を備えた制振部材10とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地震などにより構造物に発生した振動エネルギを吸収(散逸)する制振部材及び構造物の制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、日本各地において、旧耐震基準で建設された小中学校の校舎、病院、集合住宅などの建物の耐震性を向上するために、補強工事が行われている。
【0003】
この補強工事には、例えば、図18に示すように、建築物200の外壁202に多くの鉄骨204を斜めに配置した耐震技術や、図19に示すように、建築物の室内の内壁にエネルギ吸収用のオイルダンパ206を用いた制振技術が知られており、従来から建築物の補強工事として実行されている。
【特許文献1】特開2002−089081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図18及び図19に示す補強技術は、外壁や内壁に沿う形で設置されるため、必然的に、鉄骨204やオイルダンパ206などで窓などの開口部を塞いでしまうことになる。このため、室内にいる使用者に閉塞感や圧迫感を与えてしまう問題がある。
【0005】
また、鉄骨204やオイルダンパ206などを用いた補強工事は、大がかりな工事になり、工事期間と工事に伴うコストが増大する傾向にある。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成で小さな設置スペースに容易に設置することができるとともに、構造物などに発生した振動エネルギを吸収(散逸)することができる制振部材及び構造物の制振構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、構造物に両端が固定される可撓性のケーブルと、前記ケーブルを支持し前記ケーブルとの間で発生する摩擦力により前記構造物に発生した振動エネルギを吸収する支持部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、ケーブルと支持部材との間で発生する摩擦力により構造物に発生した振動エネルギが吸収される。これにより、ケーブルと支持部材という簡易な構成で構造物の振動エネルギを吸収することができるため、制振部材を小型化することができ、構造物に容易に設置(施工)することができる。また、制振部材を構造物に設置した場合には、制振部材の設置に必要となる設置スペースが小さくなる。この結果、制振部材を設置したことによる閉塞感及び圧迫感を解消することができる。また、制振部材は簡易な構成であるため、製造コスト及び施工コストを低減できる。さらに、制振部材を構造物に容易に設置することができるため、制振部材の施工性を高めることができる。
【0009】
なお、本明細書において「制振」とは、固体表面の振動の振動エネルギを熱エネルギに変換し、固体表面の振動を小さくする技術を意味する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の制振部材において、前記ケーブルは、前記構造物の前記振動エネルギによる変位とともに前記支持部材に対して相対移動するものであり、前記ケーブルと前記支持部材との間に発生する動摩擦力により前記振動エネルギを吸収することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、ケーブルは構造物の振動エネルギによる変位とともに支持部材に対して相対移動するものであり、このケーブルの移動によりケーブルと支持部材との間に動摩擦力が発生する。この動摩擦力を利用することにより、振動エネルギを吸収することができる。このように、構造物の変位に伴いケーブルが支持部材に対して相対移動するが、その現象を利用して構造物に発生した振動エネルギを吸収することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の制振部材において、前記支持部材は、前記ケーブルが接触する湾曲部を有し、前記湾曲部に沿って撓んだ前記ケーブルの軸方向に作用する軸力に基づいて、前記摩擦力又は前記動摩擦力を調整することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ケーブルが支持部材の湾曲部に沿って撓んだ状態では、ケーブルの軸方向に作用する軸力(引張力)の一成分が湾曲部からケーブルに作用する反作用力となる。すなわち、ケーブルが支持部材の湾曲部から受ける反作用力(垂直抗力)はケーブルの軸力の一成分なので、軸力の大きさを調整することにより、上記反作用力の大きさも調整することができる。これにより、ケーブルの軸力の大きさを調整することにより、ケーブルと支持部材との間に発生する摩擦力又は動摩擦力の大きさも調整することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制振部材において、前記支持部材に対する相対移動により前記支持部材との間に前記振動エネルギを吸収する振動吸収部材を有し、前記支持部材と前記振動吸収部材との間で発生する摩擦力により前記構造物に発生した振動エネルギを吸収することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、支持部材に対する相対移動により支持部材との間に振動エネルギを吸収する振動吸収部材を有し、支持部材と振動吸収部材との間で発生する摩擦力により構造物に発生した振動エネルギが吸収される。これにより、支持部材がケーブルと共に移動した場合でも、支持部材と振動吸収部材との間で発生する摩擦力により構造物に発生した振動エネルギを吸収することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制振部材を用いた構造物の制振構造であって、前記ケーブルの両端を前記構造物に固定し、前記支持部材を前記構造物に固定し、前記構造物の前記振動エネルギによる変位により前記ケーブルが前記支持部材に対して相対移動し、前記相対移動に基づいて前記ケーブルと前記支持部材との間に発生した摩擦力により前記振動エネルギを吸収することを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、ケーブルと支持部材との間で発生する摩擦力により構造物に発生した振動エネルギが吸収される。これにより、ケーブルと支持部材という簡易な構成で構造物の振動エネルギを吸収することができるため、制振部材を小型化することができ、構造物に容易に設置(施工)することができる。また、制振部材を構造物に設置した場合には、制振部材の設置に必要となる設置スペースが小さくなる。この結果、制振部材を設置したことによる閉塞感及び圧迫感を解消することができる。さらに、制振部材は簡易な構成であるため、製造コスト及び施工コストを低減でき、また、容易に設置することができるため、施工性を高めることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構造物の制振構造において、前記ケーブルは、前記構造物の層間のせん断変位により前記支持部材に対して相対移動するように前記構造物に固定されていることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、ケーブルは構造物の層間のせん断変位により支持部材に対して相対移動し、ケーブルの相対移動に基づいてケーブルと支持部材との間に発生した摩擦力により振動エネルギが吸収される。これにより、水平地震動で生じる構造物の層間のせん断変位を利用してケーブルと支持部材との摩擦力を発生させ、振動エネルギを吸収することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易な構成で小さな設置スペースに容易に設置することができるとともに、構造物などに発生した振動エネルギを吸収(散逸)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の第1実施形態に係る制振部材について説明する。
【0022】
図1に示すように、第1実施形態の制振部材10は、一対の板状の摺動部(支持部材)12A、12Bを備えている。この一対の摺動部12A、12Bの間には、ケーブル14が配置されている。なお、ケーブル14は、鉄で構成されており、各摺動部12A、12Bは、鋼材で構成されている。このとき、ケーブル14は、両方の摺動部12A、12Bから所定の圧力で挟まれている。さらに、各摺動部12A、12Bには、複数の貫通孔が形成されており、この貫通孔には各摺動部12A、12Bに跨るようにしてボルト状の軸部16が挿通されている。各軸部16には、2個のナット状の固着部18A、18Bが螺合している。2個の固着部18A、18Bは、各摺動部12A、12Bの外側から各摺動部12A、12Bを挟むようにして設けられており、各固着部18A、18Bの軸部16に対する螺合度(位置関係)により各摺動部12A、12Bの離間距離を調整することができる。1つの軸部16上の各固着部18A、18Bの離間距離が大きくなれば、各摺動部12A、12Bの離間距離も大きくなり、1つの軸部16上の各固着部18A、18Bの離間距離が小さくなれば、各摺動部12A、12Bの離間距離も小さくなる。
【0023】
ここで、各摺動部12A、12Bからケーブル14に作用する圧力の大きさは、各摺動部12A、12Bの離間距離で決定される。すなわち、各摺動部12A、12Bからケーブル14に大きな圧力を作用させる場合には、各摺動部12A、12Bの離間距離が小さくなるように設定することで実現できる。また、各摺動部12A、12Bからケーブル14に小さな圧力を作用させる場合には、各摺動部12A、12Bの離間距離が大きくなるように設定することにより実現できる。なお、上述したように、各摺動部12A、12Bの離間距離は、軸部16と固着部18A、18Bとの相対的な位置関係で調整される。
【0024】
第1実施形態の制振部材10によれば、例えば、ケーブル14の両端部が構造物に固定され、各摺動部12A、12Bも構造物に固定された状態では、地震動などにより構造物に振動エネルギが発生すると、構造物が変位する。構造物が変位すると、ケーブル14も構造物の変位とともに変位する。ここで、構造物の変位の小さくてケーブル14が各摺動部12A、12Bに対して静止している間は、ケーブル14と各摺動部12A、12Bとの間に静止摩擦力が発生し、この静止摩擦力がケーブル14に作用する。そして、構造物の変位が大きくなりケーブル14が各摺動部12A、12Bに対して移動すると、ケーブル14と各摺動部12A、12Bとの間に動摩擦力が発生し、この動摩擦力がケーブル14に作用する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、ケーブル14と各摺動部12A、12Bとの間には摩擦力が発生し、その摩擦力がケーブル14に作用する。そして、構造物の振動エネルギは、上記摩擦力によって熱エネルギに変換される。この結果、構造物に発生した振動エネルギは、ケーブル14と各摺動部12A、12Bに発生する摩擦力(摩擦エネルギ)で吸収されることになる。
【0025】
ここで、第1実施形態の制振部材10を用いた構造物の制振構造(制振工法)について説明する。
【0026】
図2に示すように、構造物20は、5本の柱(左から第1柱22A、第2柱22B、第3柱22C、第4柱22D、第5柱22E)と、上下各4本ずつの梁(上側第1梁24A、上側第2梁24B、上側第3梁24C、上側第4梁24D、下側第1梁26A、下側第2梁26B、下側第3梁26C、下側第4梁26D)と、で構成されている。構造物20には、2本のケーブル14A、14Bが取り付けられる。一方のケーブル14Aの軸方向一方側端部は、第1柱22Aの上端部に固定され、軸方向他方側端部は第5柱22Eの上端部に固定される。このケーブル14Aを挟み込む各摺動部12A、12Bは、第2柱22Bの下端部、第3柱22Cの上端部、第4柱22Dの下端部にそれぞれ固定されている。このように、一方のケーブル14Aは、各柱の上端部と下端部を交互に掛け渡されるようにして配置されている。他方のケーブル14Bの軸方向一方側端部は、第1柱22Aの下端部に固定され、軸方向他方側端部は第5柱22Eの下端部に固定される。このケーブル14Bを挟み込む各摺動部12A、12Bは、第2柱22Bの上端部、第3柱22Cの下端部、第4柱22Dの上端部にそれぞれ固定されている。このように、他方のケーブル14Bも、一方のケーブル14Aと位相ずれ(逆位相)するように、各柱22A、22B、22C、22D、22Eの上端部と下端部を交互に掛け渡されるようにして配置されている。
【0027】
第1実施形態の制振部材10を用いた構造物の制振構造によれば、構造物20に発生した振動エネルギにより構造物20がせん断変位すると、一方のケーブル14Aは各摺動部12A、12Bに対して相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなる。そして、構造物20に発生した振動エネルギにより構造物20が逆方向にせん断変位すると、ケーブル14Aは各摺動部12A、12Bに対して逆向きに相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなる。地震が発生している間は、上述したケーブル14Aの相対移動が繰り返される。なお、他方のケーブル14Bの動作も、一方のケーブル14Aの動作と逆位相になるが、ケーブル14Bが各摺動部12A、12Bに対して相対移動する点は同様である。このように、構造物20に発生した振動エネルギにより構造物20にせん断変位が生じると、ケーブル14A、14Bが各摺動部12A、12Bに対して相対移動し、ケーブル14A、14Bと各摺動部12A、12Bとの間で動摩擦力が発生する。なお、ケーブル14A、14Bが各摺動部12A、12Bに対して相対移動する直前(ケーブル14A、14Bの停止状態)は、ケーブル14A、14Bと各摺動部12A、12Bとの間で静止摩擦力が発生する。
【0028】
以上のように、構造物20に発生した振動エネルギは、ケーブル14と各摺動部12A、12Bとの間で発生する静止摩擦力又は動摩擦力によって熱エネルギに変換されて、摩擦力により吸収されることになる。これにより、簡易な構成の制振部材10により制振効果を実現することができる。また、制振部材10は簡易な構成であるため、製造コスト及び施工コストを低減できる。さらに、ケーブル14は可撓性があり取扱性が優れており、制振部材10を構造物20に容易に設置することができるため(ケーブル14の設置自由度が高いため)、制振部材10の施工性を高めることができる。
【0029】
次に、本発明の第2実施形態に係る制振部材について説明する。
【0030】
図3に示すように、第2実施形態の制振部材30は、鞍掛部(支持部材)32を備えている。この鞍掛部32には、断面視にて凹部湾曲状の湾曲面34が形成されている。この湾曲面34にケーブル14の一部が掛けられている。鞍掛部32の湾曲部34に掛けられたケーブル14は、湾曲面34が凹部湾曲状に形成されているため、湾曲面34の幅方向に位置ずれすることを防止できる。なお、ケーブル14は、鉄で構成されており、鞍掛部32は、鋼材で構成されている。
【0031】
ここで、ケーブル14に引張力が作用し、かつケーブル14が鞍掛部32の湾曲面34上に停止しているときは、ケーブル14と湾曲面34との間に静止摩擦力が発生し、この静止摩擦力がケーブル14に作用する。また、ケーブル14に引張力が作用し、かつケーブル14が鞍掛部32の湾曲面34上を摺動(相対移動)するときは、ケーブル14と鞍掛部32の湾曲面34との間に動摩擦力が発生し、ケーブル14に対して動摩擦力を作用する。
【0032】
特に、ケーブル14と鞍掛部32の湾曲面34との間に作用する摩擦力(静止摩擦力、動摩擦力)の大きさは、ケーブル14に作用させる軸力(引張力)により調整することができる。すなわち、図4に示すように、ケーブル14の軸方向に軸力Tが作用すると、その軸力Tの一成分TNが鞍掛部32の湾曲面34に対して垂直に作用する。この鞍掛部32の湾曲面34に作用した軸力Tの一成分TNの反作用力が垂直抗力N(=TN)として湾曲面34からケーブル14に対して作用する。摩擦力は、F=μN(F:摩擦力、μ:摩擦係数、N:垂直抗力)で決定されるため、軸力Tの大きさを調整することにより、垂直抗力Nの大きさも調整することができ、ひいては、摩擦力の大きさを調整することができる。
【0033】
第2実施形態の制振部材30によれば、例えば、ケーブル14の両端部が構造物に固定され、鞍掛部32も構造物に固定された状態では、地震動などにより構造物に振動エネルギが発生すると、構造物が変位する。構造物が変位すると、ケーブル14も構造物の変位とともに変位する。ここで、構造物の変位の小さくてケーブル14が鞍掛部32の湾曲面34に対して静止している間は、ケーブル14と鞍掛部32の湾曲面34との間に静止摩擦力が発生する。そして、構造物の変位が大きくなりケーブル14が湾曲面34に対して移動すると、ケーブル14と鞍掛部32の湾曲面34との間に動摩擦力が発生する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、ケーブル14と鞍掛部32の湾曲面34との間には摩擦力が発生する。そして、振動エネルギは、摩擦力によって熱エネルギに変換される。この結果、構造物に発生した振動エネルギは、制振部材30に発生する摩擦力(摩擦エネルギ)で吸収されることになる。
【0034】
特に、鞍掛部32の湾曲面34からケーブル14に作用する摩擦力は、ケーブル14に付与する軸力により自由に調整することができるため、構造物に発生する振動エネルギの大きさを考慮して自由に変更することができる。
【0035】
ここで、第2実施形態の制振部材30を用いた構造物の制振構造(制振工法)について説明する。
【0036】
図5に示すように、構造物40は、5本の柱(左から第1柱22A、第2柱22B、第3柱22C、第4柱22D、第5柱22E)と、上下各4本ずつの梁(上側第1梁24A、上側第2梁24B、上側第3梁24C、上側第4梁24D、下側第1梁26A、下側第2梁26B、下側第3梁26C、下側第4梁26D)と、で構成されている。構造物40には、2本のケーブル14A、14Bが取り付けられる。一方のケーブル14Aの軸方向一方側端部は、第1柱22Aの上端部に固定され、軸方向他方側端部は第5柱22Eの上端部に固定される。このケーブル14Aが掛けられる鞍掛部32は、第2柱22Bの下端部、第3柱22Cの上端部、第4柱22Dの下端部にそれぞれ固定されている。このように、一方のケーブル14Aは、各柱の上端部と下端部を交互に掛け渡されるようにして配置されている。他方のケーブル14Bの軸方向一方側端部は、第1柱22Aの下端部に固定され、軸方向他方側端部は第5柱22Eの下端部に固定される。このケーブル14Bが掛けられる鞍掛部32は、第2柱22Bの上端部、第3柱22Cの下端部、第4柱22Dの上端部にそれぞれ固定されている。このように、他方のケーブル14Bも、一方のケーブル14Aと位相ずれ(逆位相)するように、各柱22A、22B、22C、22D、22Eの上端部と下端部を交互に掛け渡されるようにして配置されている。
【0037】
第2実施形態の制振部材30を用いた構造物の制振構造によれば、構造物40に発生した振動エネルギにより構造物40がせん断変位すると、ケーブル14Aは鞍掛部32の湾曲面34に対して相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなる。そして、構造物40に発生した振動エネルギにより構造物40が逆方向にせん断変位すると、ケーブル14Aは鞍掛部32の湾曲面34に対して逆向きに相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなる。地震が発生している間は、上述したケーブル14Aの相対移動が繰り返される。なお、他方のケーブル14Bの動作も、一方のケーブル14Aの動作と逆位相になるが、ケーブル14Bが鞍掛部32の湾曲面34に対して相対移動する点は同様である。このように、構造物40に発生した振動エネルギにより構造物40にせん断変位が生じると、ケーブル14A、14Bが鞍掛部32の湾曲面34に対して相対移動し、ケーブル14A、14Bと鞍掛部32の湾曲面34との間で動摩擦力が発生する。なお、ケーブル14A、14Bが鞍掛部32の湾曲面34に対して相対移動する直前(ケーブル14A、14Bの停止状態)は、ケーブル14A、14Bと鞍掛部32の湾曲面34との間で静止摩擦力が発生する。
【0038】
以上のように、構造物40に発生した振動エネルギは、ケーブル14と鞍掛部32の湾曲面24との間で発生する静止摩擦力又は動摩擦力によって熱エネルギに変換されて、摩擦力により吸収されることになる。特に、ケーブル14に作用させる軸力の大きさを調整することにより、ケーブル14に作用する摩擦力の大きさを調整することができるため、構造物40に発生する振動エネルギの大きさに応じて摩擦力を容易に変更することができる。
【0039】
次に、本発明の第3実施形態に係る制振部材について説明する。
【0040】
図6に示すように、第3実施形態の制振部材50は、中心回りに回転可能な滑車部(支持部材)52を備えている。この滑車部52の外周面(湾曲部)54は、湾曲状に形成されており、外周面54にケーブル14が掛けられている。滑車部52の内部には、高減衰ゴムなどの振動減衰部材(振動吸収部材)56が設けられている。具体的には、滑車部52の内周面に振動減衰部材56の外周面が面接触している。そして、滑車部52が振動減衰部材56に対して相対移動可能に構成されている。滑車部52が振動減衰部材56に対して相対移動(回転)すると、滑車部52と振動減衰部材56との間に動摩擦力が発生し、滑車部52に対して動摩擦力が作用する。なお、ケーブル14に作用させる軸力の大きさにより、摩擦力の大きさを調整する点は、第2実施形態と同様である。また、ケーブル14は、鉄で構成されており、滑車部52は、鋼材で構成されている。
【0041】
第3実施形態の制振部材50によれば、例えば、ケーブル14の両端部が構造物に固定され、滑車部52も構造物に固定された状態では、地震動などにより構造物に振動エネルギが発生すると、構造物が変位する。構造物が変位すると、ケーブル14も構造物の変位とともに変位する。ここで、構造物の変位の小さくてケーブル14が滑車部52の外周面54に対して静止している間は、ケーブル14と滑車部52の外周面54との間に静止摩擦力が発生する。そして、構造物の変位が大きくなりケーブル14が滑車部52の外周面54に対して移動すると、ケーブル14と滑車部52の外周面54との間に動摩擦力が発生する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、ケーブル14と滑車部52の外周面54との間には摩擦力が発生する。そして、振動エネルギは、摩擦力によって熱エネルギに変換される。この結果、構造物に発生した振動エネルギは、制振部材50に発生する摩擦力(摩擦エネルギ)で吸収されることになる。
【0042】
ここで、ケーブル14から滑車部52に対しても摩擦力(静止摩擦力又は動摩擦力)が作用することになる。そして、滑車部52に作用した摩擦力により滑車部52が回転する場合には、滑車部52は振動減衰部材56に対して相対移動することになる。このめた、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の外周面との間には摩擦力(静止摩擦力又は動摩擦力)が発生し、滑車部52には摩擦力(静止摩擦力又は動摩擦力)が作用する。詳細には、構造物の変位の小さくて滑車部52が振動減衰部材56に対して静止している間は、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の外周面の間に静止摩擦力が発生する。そして、構造物の変位が大きくなり滑車部52が振動減衰部材56に対して移動すると、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の外周面との間に動摩擦力が発生する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、滑車部52と振動減衰部材56との間には摩擦力が発生する。そして、振動エネルギは、摩擦力によって熱エネルギに変換される。この結果、構造物に発生した振動エネルギは、制振部材50に発生する摩擦力(摩擦エネルギ)で吸収することになる。
【0043】
なお、振動減衰部材56は、鋼材など他の材質で構成されていてもよく、鋼で構成される滑車部52と振動減衰部材56との間に発生する摩擦力で振動エネルギを吸収することができる。
【0044】
ここで、第3実施形態の制振部材50を用いた構造物の制振構造(制振工法)について説明する。
【0045】
図7に示すように、構造物60は、5本の柱(左から第1柱22A、第2柱22B、第3柱22C、第4柱22D、第5柱22E)と、上下各4本ずつの梁(上側第1梁24A、上側第2梁24B、上側第3梁24C、上側第4梁24D、下側第1梁26A、下側第2梁26B、下側第3梁26C、下側第4梁26D)と、で構成されている。構造物60には、2本のケーブル14A、14Bが取り付けられる。一方のケーブル14Aの軸方向一方側端部は、第1柱22Aの上端部に固定され、軸方向他方側端部は第5柱22Eの上端部に固定される。このケーブル14Aが掛けられる滑車部52は、第2柱22Bの下端部、第3柱22Cの上端部、第4柱22Dの下端部にそれぞれ固定されている。このように、一方のケーブル14Aは、各柱の上端部と下端部を交互に掛け渡されるようにして配置されている。他方のケーブル14Bの軸方向一方側端部は、第1柱22Aの下端部に固定され、軸方向他方側端部は第5柱22Eの下端部に固定される。このケーブル14Bが掛けられる滑車部52は、第2柱22Bの上端部、第3柱22Cの下端部、第4柱22Dの上端部にそれぞれ固定されている。このように、他方のケーブル14Bも、一方のケーブル14Aと位相ずれ(逆位相)するように、各柱22A、22B、22C、22D、22Eの上端部と下端部を交互に掛け渡されるようにして配置されている。
【0046】
第3実施形態の制振部材50を用いた構造物の制振構造によれば、構造物60に発生した振動エネルギにより構造物60がせん断変位すると、ケーブル14Aは滑車部52の外周面54に対して相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第4柱24Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなる。そして、構造物60に発生した振動エネルギにより構造物60が逆方向にせん断変位すると、ケーブル14Aは滑車部52の外周面54に対して逆向きに相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなる。地震が発生している間は、上述したケーブル14Aの相対移動が繰り返される。なお、他方のケーブル14Bの動作も、一方のケーブル14Aの動作と逆位相になるが、ケーブル14Bが滑車部52の外周面54に対して相対移動する点は同様である。このように、構造物60に発生した振動エネルギにより構造物60にせん断変位が生じると、ケーブル14A、14Bが滑車部52の外周面54に対して相対移動し、ケーブル14A、14Bと滑車部52との間で動摩擦力が発生する。なお、ケーブル14A、14Bが滑車部52の外周面54に対して相対移動する直前(ケーブル14A、14Bの停止状態)は、ケーブル14A、14Bと滑車部52の外周面54との間で静止摩擦力が発生する。
【0047】
また、滑車部52が摩擦力により回転する場合もある。このとき、滑車部52は、振動減衰部材56に対して相対移動する。これにより、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の外周面との間に摩擦力(静止摩擦力又は動摩擦力)が発生し、滑車部52には摩擦力が作用する。
【0048】
以上のように、構造物60に発生した振動エネルギは、ケーブル14A、14Bと滑車部52との間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、滑車部52と振動減衰部材56との間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、によって熱エネルギに変換されて、摩擦力により吸収されることになる。このように、ケーブル14A、14Bと滑車部52との間に発生する摩擦力と、滑車部52と振動減衰部材56との間に発生する摩擦力と、の2つの摩擦力で振動エネルギを吸収することにより、制振効果を一層高めることができる。
【0049】
次に、本発明の第4実施形態に係る制振部材について説明する。
【0050】
図8に示すように、第4実施形態に係る制振部材70は、第1実施形態の制振部材10と第2実施形態の制振部材30を合体させて構成したものである。すなわち、第4実施形態に係る制振部材70は、各摺動部12A、12Bと、軸部16と、固着部18A、18Bと、鞍掛部32と、を備えている。鞍掛部32の両側面は、各摺動部12A、12Bに挟まれた状態になっている。そして、鞍掛部32の湾曲面34に掛けられたケーブル14は、各摺動部12A、12Bから所定の圧力で挟まれた状態になっている。なお、ケーブル14に作用させる軸力の大きさにより、ケーブル14と鞍掛部32との間に発生する摩擦力の大きさを調整する点は、第2実施形態と同様である。
【0051】
第4実施形態の制振部材70によれば、構造物が変位すると、ケーブル14と各摺動部12A、12B及び鞍掛部32との間には静止摩擦力が作用し、ケーブル14が各摺動部12A、12B及び鞍掛部32に対して相対移動すると、ケーブル14と各摺動部12A、12B及び鞍掛部32との間には動摩擦力が作用する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、ケーブル14と鞍掛部32及び各摺動部12A、12Bとの間には摩擦力が発生する。そして、振動エネルギは、摩擦力によって熱エネルギに変換される。この結果、構造物に発生した振動エネルギは、制振部材70に発生する摩擦力(摩擦エネルギ)で吸収されることになる。
【0052】
また、第4実施形態の制振部材70を用いた構造物の制振構造(制振工法)は、図9に示すように、各摺動部12A、12Bと、軸部16と、固着部18A、18Bと、鞍掛部32と、を備えた構成体72に、ケーブル14が掛けられている。上記構成体72の取付位置は、第1実施形態の各摺動部12A、12Bの取付位置と同じである。
【0053】
第4実施形態の制振部材70を用いた構造物の制振構造によれば、構造物80に発生した振動エネルギにより構造物80がせん断変位すると、ケーブル14Aは鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bに対して相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなる。そして、構造物80に発生した振動エネルギにより構造物80が逆方向にせん断変位すると、ケーブル14Aは鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bに対して逆向きに相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなる。地震が発生している間は、上述したケーブル14Aの相対移動が繰り返される。なお、他方のケーブル14Bの動作も、一方のケーブル14Aの動作と逆位相になるが、ケーブル14Bが鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bに対して相対移動する点は同様である。このように、構造物80に発生した振動エネルギにより構造物80にせん断変位が生じると、ケーブル14A、14Bが鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bに対して相対移動し、ケーブル14A、14Bと鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bとの間で動摩擦力が発生する。なお、ケーブル14A、14Bが鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bに対して相対移動する直前(ケーブル14A、14Bの停止状態)は、ケーブル14A、14Bと鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bとの間で静止摩擦力が発生する。
【0054】
以上のように、構造物80に発生した振動エネルギは、ケーブル14A、14Bと鞍掛部32の湾曲面34との間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、ケーブル14A、14Bと各摺動部12A、12Bとの間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、によって熱エネルギに変換されて、かかる摩擦力により吸収されることになる。このように、ケーブル14A、14Bと鞍掛部32の湾曲面34との間に発生する摩擦力と、ケーブル14A、14Bと各摺動部12A、12Bとの間に発生する摩擦力と、の2つの摩擦力で振動エネルギを吸収することにより、制振効果を一層高めることができる。
【0055】
次に、本発明の第5実施形態に係る制振部材について説明する。
【0056】
図10に示すように、第5実施形態に係る制振部材90は、第1実施形態の制振部材10と第3実施形態の制振部材50を合体させ、さらに振動減衰部材56の形状を変形させて構成したものである。すなわち、第4実施形態に係る制振部材90は、各摺動部12A、12Bと、軸部16と、固着部18A、18Bと、滑車部52と、振動減衰部材56と、を備えている。振動減衰部材56は、滑車部52の内周面側に位置する中心減衰部56Aと、中心減衰部56Aの軸方向両側端部に形成され摩擦片56Bと、で構成されている。滑車部52の両側面には、振動減衰部材56の摩擦片56Bが取り付けられている。また、各摺動部12A、12Bの内側側面には、摩擦片56Bが面接触している。そして、滑車部52の外周面54に掛けられたケーブル14は、振動減衰部材56の摩擦片56Bから所定の圧力で挟まれた状態になっている。なお、ケーブル14に作用させる軸力の大きさにより、ケーブル14と滑車部52との間に発生する摩擦力の大きさを調整する点は、第2実施形態と同様である。
【0057】
第5実施形態の制振部材90によれば、構造物が変位すると、ケーブル14と振動減衰部材56の摩擦片56B及び滑車部52との間には静止摩擦力が作用し、ケーブル14が振動減衰部材56の摩擦片56B及び滑車部52に対して相対移動すると、ケーブル14と振動減衰部材56の摩擦片56B及び滑車部52との間には動摩擦力が作用する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、ケーブル14と振動減衰部材56の摩擦片56B及び滑車部52との間には摩擦力が発生する。また、構造物が変位すると、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の中心減衰部56Aとの間に静止摩擦力が発生し、滑車部52が振動減衰部材56に対して相対移動する場合には、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の中心減衰部56Aとの間に動摩擦力が発生する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、滑車部52と振動減衰部材56の中心減衰部56Aとの間に摩擦力が発生する。そして、振動エネルギは、摩擦力によって熱エネルギに変換される。この結果、構造物に発生した振動エネルギは、制振部材90に発生する摩擦力(摩擦エネルギ)で吸収されることになる。
【0058】
また、第5実施形態の制振部材90を用いた構造物の制振構造(制振工法)は、図11に示すように、各摺動部12A、12Bと、軸部16と、固着部18A、18Bと、滑車部52と、振動減衰部材56と、を備えた構成体92に、ケーブル14A、14Bが掛けられている。上記構成体92の取付位置は、第1実施形態の各摺動部12A、12Bの取付位置と同じである。
【0059】
第5実施形態の制振部材90を用いた構造物の制振構造によれば、構造物100に発生した振動エネルギにより構造物100がせん断変位すると、ケーブル14Aは滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bに対して相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなる。そして、構造物100に発生した振動エネルギにより構造物100が逆方向にせん断変位すると、ケーブル14Aは滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bに対して逆向きに相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなる。地震が発生している間は、上述したケーブル14Aの相対移動が繰り返される。なお、他方のケーブル14Bの動作も、一方のケーブル14Bの動作と逆位相になるが、ケーブル14Bが滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bに対して相対移動する点は同様である。このように、構造物100に発生した振動エネルギにより構造物100にせん断変位が生じると、ケーブル14A、14Bが滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bに対して相対移動し、ケーブル14A、14Bと滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bとの間で動摩擦力が発生する。なお、ケーブル14A、14Bが滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bに対して相対移動する直前(ケーブル14A、14Bの停止状態)は、ケーブル14A、14Bと滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bとの間で静止摩擦力が発生する。
【0060】
また、滑車部52が振動減衰部材56の中心減衰部56Aに対して相対移動する場合には、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の中心減衰部56Aとの間に摩擦力(静止摩擦力又は動摩擦力)が発生し、滑車部52には摩擦力が作用する。
【0061】
以上のように、構造物100に発生した振動エネルギは、ケーブル14A、14Bと滑車部52の外周面54との間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、ケーブル14A、14Bと振動減衰部材56の摩擦片56Bとの間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の中心減衰部56Aとの間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、によって熱エネルギに変換されて、摩擦力により吸収されることになる。このように、ケーブル14A、14Bと滑車部52の外周面54との間に発生する摩擦力と、ケーブル14A、14Bと振動減衰部材56の摩擦片56Bとの間に発生する摩擦力と、滑車部52と振動減衰部材56の中心減衰部56Aとの間に発生する摩擦力と、の3つの摩擦力で振動エネルギを吸収することにより、制振効果を一層高めることができる。
【0062】
次に、本発明の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションについて以下に示す。
【0063】
図12及び図13に示すように、建物120の2架構の両端に可撓性のあるケーブル14をクロス状に設置し、2架構面にわたって設置した中間の架構部に摺動部、鞍掛部、滑車部(各実施形態参照)などの支持部材122を設置する。架構部に設置する摺動部、鞍掛部、滑車部などの支持部材122は、各層間で供用(図12参照)又は個別(図13参照)に設置する。
【0064】
図14及び図15に示すように、建物120の架構の両端に可撓性のあるケーブル14をハ型状に設置し、各架構面の梁の中央部に摺動部、鞍掛部、滑車部(各実施形態参照)などの支持部材122を設置する。架構部に設置する摺動部、鞍掛部、滑車部などの支持部材122は、各層間で供用(図14参照)又は個別(図15参照)に設置する。
【0065】
図16及び図17に示すように、建物120の2架構の両端に可撓性のあるケーブル14を◇状に設置し、2架構内に摺動部、鞍掛部、滑車部(各実施形態参照)などの支持部材122を設置する。架構部に設置する摺動部、鞍掛部、滑車部などの支持部材122は、各層間で供用(図16及び図17参照)に設置する。
【0066】
図12乃至図17に示すように、建物に発生した振動エネルギにより建物120がせん断変位した場合には、ケーブル14が摺動部、鞍掛部、滑車部(各実施形態参照)などの支持部材122に対して相対移動し、ケーブル14と支持部材122との間に摩擦力が発生する。この摩擦力により振動エネルギが熱エネルギに変換される。このようにして、建物120に発生した振動エネルギを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(A)は、本発明の第1実施形態に係る制振部材のケーブル軸方向に切断した断面図であり、(B)は、そのケーブル幅方向に切断した断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【図3】(A)は、本発明の第2実施形態に係る制振部材のケーブル軸方向に切断した断面図であり、(B)は、そのケーブル幅方向に切断した断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る制振部材のケーブルに作用する力学状態を示した説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態の制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【図6】(A)は、本発明の第3実施形態に係る制振部材のケーブル軸方向に切断した断面図であり、(B)は、そのケーブル幅方向に切断した断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態の制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【図8】(A)は、本発明の第4実施形態に係る制振部材のケーブル軸方向に切断した断面図であり、(B)は、そのケーブル幅方向に切断した断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態の制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【図10】(A)は、本発明の第5実施形態に係る制振部材のケーブル軸方向に切断した断面図であり、(B)は、そのケーブル幅方向に切断した断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態の制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【図12】本発明の各実施形態の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションであって、建物の2架構の両端に可撓性のあるケーブルをクロス状に設置した状態(供用タイプ)を示す説明図である。
【図13】本発明の各実施形態の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションであって、建物の2架構の両端に可撓性のあるケーブルをクロス状に設置した状態(個別タイプ)を示す説明図である。
【図14】本発明の各実施形態の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションであって、建物の架構の両端に可撓性のあるケーブルをハ型状に設置した状態(供用タイプ)を示す説明図である。
【図15】本発明の各実施形態の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションであって、建物の架構の両端に可撓性のあるケーブルをハ型状に設置した状態(個別タイプ)を示す説明図である。
【図16】本発明の各実施形態の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションであって、建物の2架構の両端に可撓性のあるケーブルを◇状に設置した状態(供用タイプ)を示す説明図である。
【図17】本発明の各実施形態の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションであって、建物の2架構の両端に可撓性のあるケーブルを◇状に設置した状態(個別タイプ)を示す説明図である。
【図18】従来技術となる制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【図19】従来技術となる制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【符号の説明】
【0068】
10 制振部材
12A 摺動部(支持部材)
12B 摺動部(支持部材)
14 ケーブル
30 制振部材
32 鞍掛部(支持部材)
34 湾曲部
50 制振部材
52 滑車部(支持部材)
54 外周面(湾曲部)
56 振動減衰部材(振動吸収部材)
70 制振部材
90 制振部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地震などにより構造物に発生した振動エネルギを吸収(散逸)する制振部材及び構造物の制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、日本各地において、旧耐震基準で建設された小中学校の校舎、病院、集合住宅などの建物の耐震性を向上するために、補強工事が行われている。
【0003】
この補強工事には、例えば、図18に示すように、建築物200の外壁202に多くの鉄骨204を斜めに配置した耐震技術や、図19に示すように、建築物の室内の内壁にエネルギ吸収用のオイルダンパ206を用いた制振技術が知られており、従来から建築物の補強工事として実行されている。
【特許文献1】特開2002−089081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図18及び図19に示す補強技術は、外壁や内壁に沿う形で設置されるため、必然的に、鉄骨204やオイルダンパ206などで窓などの開口部を塞いでしまうことになる。このため、室内にいる使用者に閉塞感や圧迫感を与えてしまう問題がある。
【0005】
また、鉄骨204やオイルダンパ206などを用いた補強工事は、大がかりな工事になり、工事期間と工事に伴うコストが増大する傾向にある。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成で小さな設置スペースに容易に設置することができるとともに、構造物などに発生した振動エネルギを吸収(散逸)することができる制振部材及び構造物の制振構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、構造物に両端が固定される可撓性のケーブルと、前記ケーブルを支持し前記ケーブルとの間で発生する摩擦力により前記構造物に発生した振動エネルギを吸収する支持部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、ケーブルと支持部材との間で発生する摩擦力により構造物に発生した振動エネルギが吸収される。これにより、ケーブルと支持部材という簡易な構成で構造物の振動エネルギを吸収することができるため、制振部材を小型化することができ、構造物に容易に設置(施工)することができる。また、制振部材を構造物に設置した場合には、制振部材の設置に必要となる設置スペースが小さくなる。この結果、制振部材を設置したことによる閉塞感及び圧迫感を解消することができる。また、制振部材は簡易な構成であるため、製造コスト及び施工コストを低減できる。さらに、制振部材を構造物に容易に設置することができるため、制振部材の施工性を高めることができる。
【0009】
なお、本明細書において「制振」とは、固体表面の振動の振動エネルギを熱エネルギに変換し、固体表面の振動を小さくする技術を意味する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の制振部材において、前記ケーブルは、前記構造物の前記振動エネルギによる変位とともに前記支持部材に対して相対移動するものであり、前記ケーブルと前記支持部材との間に発生する動摩擦力により前記振動エネルギを吸収することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、ケーブルは構造物の振動エネルギによる変位とともに支持部材に対して相対移動するものであり、このケーブルの移動によりケーブルと支持部材との間に動摩擦力が発生する。この動摩擦力を利用することにより、振動エネルギを吸収することができる。このように、構造物の変位に伴いケーブルが支持部材に対して相対移動するが、その現象を利用して構造物に発生した振動エネルギを吸収することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の制振部材において、前記支持部材は、前記ケーブルが接触する湾曲部を有し、前記湾曲部に沿って撓んだ前記ケーブルの軸方向に作用する軸力に基づいて、前記摩擦力又は前記動摩擦力を調整することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ケーブルが支持部材の湾曲部に沿って撓んだ状態では、ケーブルの軸方向に作用する軸力(引張力)の一成分が湾曲部からケーブルに作用する反作用力となる。すなわち、ケーブルが支持部材の湾曲部から受ける反作用力(垂直抗力)はケーブルの軸力の一成分なので、軸力の大きさを調整することにより、上記反作用力の大きさも調整することができる。これにより、ケーブルの軸力の大きさを調整することにより、ケーブルと支持部材との間に発生する摩擦力又は動摩擦力の大きさも調整することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制振部材において、前記支持部材に対する相対移動により前記支持部材との間に前記振動エネルギを吸収する振動吸収部材を有し、前記支持部材と前記振動吸収部材との間で発生する摩擦力により前記構造物に発生した振動エネルギを吸収することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、支持部材に対する相対移動により支持部材との間に振動エネルギを吸収する振動吸収部材を有し、支持部材と振動吸収部材との間で発生する摩擦力により構造物に発生した振動エネルギが吸収される。これにより、支持部材がケーブルと共に移動した場合でも、支持部材と振動吸収部材との間で発生する摩擦力により構造物に発生した振動エネルギを吸収することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制振部材を用いた構造物の制振構造であって、前記ケーブルの両端を前記構造物に固定し、前記支持部材を前記構造物に固定し、前記構造物の前記振動エネルギによる変位により前記ケーブルが前記支持部材に対して相対移動し、前記相対移動に基づいて前記ケーブルと前記支持部材との間に発生した摩擦力により前記振動エネルギを吸収することを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、ケーブルと支持部材との間で発生する摩擦力により構造物に発生した振動エネルギが吸収される。これにより、ケーブルと支持部材という簡易な構成で構造物の振動エネルギを吸収することができるため、制振部材を小型化することができ、構造物に容易に設置(施工)することができる。また、制振部材を構造物に設置した場合には、制振部材の設置に必要となる設置スペースが小さくなる。この結果、制振部材を設置したことによる閉塞感及び圧迫感を解消することができる。さらに、制振部材は簡易な構成であるため、製造コスト及び施工コストを低減でき、また、容易に設置することができるため、施工性を高めることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構造物の制振構造において、前記ケーブルは、前記構造物の層間のせん断変位により前記支持部材に対して相対移動するように前記構造物に固定されていることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、ケーブルは構造物の層間のせん断変位により支持部材に対して相対移動し、ケーブルの相対移動に基づいてケーブルと支持部材との間に発生した摩擦力により振動エネルギが吸収される。これにより、水平地震動で生じる構造物の層間のせん断変位を利用してケーブルと支持部材との摩擦力を発生させ、振動エネルギを吸収することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易な構成で小さな設置スペースに容易に設置することができるとともに、構造物などに発生した振動エネルギを吸収(散逸)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の第1実施形態に係る制振部材について説明する。
【0022】
図1に示すように、第1実施形態の制振部材10は、一対の板状の摺動部(支持部材)12A、12Bを備えている。この一対の摺動部12A、12Bの間には、ケーブル14が配置されている。なお、ケーブル14は、鉄で構成されており、各摺動部12A、12Bは、鋼材で構成されている。このとき、ケーブル14は、両方の摺動部12A、12Bから所定の圧力で挟まれている。さらに、各摺動部12A、12Bには、複数の貫通孔が形成されており、この貫通孔には各摺動部12A、12Bに跨るようにしてボルト状の軸部16が挿通されている。各軸部16には、2個のナット状の固着部18A、18Bが螺合している。2個の固着部18A、18Bは、各摺動部12A、12Bの外側から各摺動部12A、12Bを挟むようにして設けられており、各固着部18A、18Bの軸部16に対する螺合度(位置関係)により各摺動部12A、12Bの離間距離を調整することができる。1つの軸部16上の各固着部18A、18Bの離間距離が大きくなれば、各摺動部12A、12Bの離間距離も大きくなり、1つの軸部16上の各固着部18A、18Bの離間距離が小さくなれば、各摺動部12A、12Bの離間距離も小さくなる。
【0023】
ここで、各摺動部12A、12Bからケーブル14に作用する圧力の大きさは、各摺動部12A、12Bの離間距離で決定される。すなわち、各摺動部12A、12Bからケーブル14に大きな圧力を作用させる場合には、各摺動部12A、12Bの離間距離が小さくなるように設定することで実現できる。また、各摺動部12A、12Bからケーブル14に小さな圧力を作用させる場合には、各摺動部12A、12Bの離間距離が大きくなるように設定することにより実現できる。なお、上述したように、各摺動部12A、12Bの離間距離は、軸部16と固着部18A、18Bとの相対的な位置関係で調整される。
【0024】
第1実施形態の制振部材10によれば、例えば、ケーブル14の両端部が構造物に固定され、各摺動部12A、12Bも構造物に固定された状態では、地震動などにより構造物に振動エネルギが発生すると、構造物が変位する。構造物が変位すると、ケーブル14も構造物の変位とともに変位する。ここで、構造物の変位の小さくてケーブル14が各摺動部12A、12Bに対して静止している間は、ケーブル14と各摺動部12A、12Bとの間に静止摩擦力が発生し、この静止摩擦力がケーブル14に作用する。そして、構造物の変位が大きくなりケーブル14が各摺動部12A、12Bに対して移動すると、ケーブル14と各摺動部12A、12Bとの間に動摩擦力が発生し、この動摩擦力がケーブル14に作用する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、ケーブル14と各摺動部12A、12Bとの間には摩擦力が発生し、その摩擦力がケーブル14に作用する。そして、構造物の振動エネルギは、上記摩擦力によって熱エネルギに変換される。この結果、構造物に発生した振動エネルギは、ケーブル14と各摺動部12A、12Bに発生する摩擦力(摩擦エネルギ)で吸収されることになる。
【0025】
ここで、第1実施形態の制振部材10を用いた構造物の制振構造(制振工法)について説明する。
【0026】
図2に示すように、構造物20は、5本の柱(左から第1柱22A、第2柱22B、第3柱22C、第4柱22D、第5柱22E)と、上下各4本ずつの梁(上側第1梁24A、上側第2梁24B、上側第3梁24C、上側第4梁24D、下側第1梁26A、下側第2梁26B、下側第3梁26C、下側第4梁26D)と、で構成されている。構造物20には、2本のケーブル14A、14Bが取り付けられる。一方のケーブル14Aの軸方向一方側端部は、第1柱22Aの上端部に固定され、軸方向他方側端部は第5柱22Eの上端部に固定される。このケーブル14Aを挟み込む各摺動部12A、12Bは、第2柱22Bの下端部、第3柱22Cの上端部、第4柱22Dの下端部にそれぞれ固定されている。このように、一方のケーブル14Aは、各柱の上端部と下端部を交互に掛け渡されるようにして配置されている。他方のケーブル14Bの軸方向一方側端部は、第1柱22Aの下端部に固定され、軸方向他方側端部は第5柱22Eの下端部に固定される。このケーブル14Bを挟み込む各摺動部12A、12Bは、第2柱22Bの上端部、第3柱22Cの下端部、第4柱22Dの上端部にそれぞれ固定されている。このように、他方のケーブル14Bも、一方のケーブル14Aと位相ずれ(逆位相)するように、各柱22A、22B、22C、22D、22Eの上端部と下端部を交互に掛け渡されるようにして配置されている。
【0027】
第1実施形態の制振部材10を用いた構造物の制振構造によれば、構造物20に発生した振動エネルギにより構造物20がせん断変位すると、一方のケーブル14Aは各摺動部12A、12Bに対して相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなる。そして、構造物20に発生した振動エネルギにより構造物20が逆方向にせん断変位すると、ケーブル14Aは各摺動部12A、12Bに対して逆向きに相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなる。地震が発生している間は、上述したケーブル14Aの相対移動が繰り返される。なお、他方のケーブル14Bの動作も、一方のケーブル14Aの動作と逆位相になるが、ケーブル14Bが各摺動部12A、12Bに対して相対移動する点は同様である。このように、構造物20に発生した振動エネルギにより構造物20にせん断変位が生じると、ケーブル14A、14Bが各摺動部12A、12Bに対して相対移動し、ケーブル14A、14Bと各摺動部12A、12Bとの間で動摩擦力が発生する。なお、ケーブル14A、14Bが各摺動部12A、12Bに対して相対移動する直前(ケーブル14A、14Bの停止状態)は、ケーブル14A、14Bと各摺動部12A、12Bとの間で静止摩擦力が発生する。
【0028】
以上のように、構造物20に発生した振動エネルギは、ケーブル14と各摺動部12A、12Bとの間で発生する静止摩擦力又は動摩擦力によって熱エネルギに変換されて、摩擦力により吸収されることになる。これにより、簡易な構成の制振部材10により制振効果を実現することができる。また、制振部材10は簡易な構成であるため、製造コスト及び施工コストを低減できる。さらに、ケーブル14は可撓性があり取扱性が優れており、制振部材10を構造物20に容易に設置することができるため(ケーブル14の設置自由度が高いため)、制振部材10の施工性を高めることができる。
【0029】
次に、本発明の第2実施形態に係る制振部材について説明する。
【0030】
図3に示すように、第2実施形態の制振部材30は、鞍掛部(支持部材)32を備えている。この鞍掛部32には、断面視にて凹部湾曲状の湾曲面34が形成されている。この湾曲面34にケーブル14の一部が掛けられている。鞍掛部32の湾曲部34に掛けられたケーブル14は、湾曲面34が凹部湾曲状に形成されているため、湾曲面34の幅方向に位置ずれすることを防止できる。なお、ケーブル14は、鉄で構成されており、鞍掛部32は、鋼材で構成されている。
【0031】
ここで、ケーブル14に引張力が作用し、かつケーブル14が鞍掛部32の湾曲面34上に停止しているときは、ケーブル14と湾曲面34との間に静止摩擦力が発生し、この静止摩擦力がケーブル14に作用する。また、ケーブル14に引張力が作用し、かつケーブル14が鞍掛部32の湾曲面34上を摺動(相対移動)するときは、ケーブル14と鞍掛部32の湾曲面34との間に動摩擦力が発生し、ケーブル14に対して動摩擦力を作用する。
【0032】
特に、ケーブル14と鞍掛部32の湾曲面34との間に作用する摩擦力(静止摩擦力、動摩擦力)の大きさは、ケーブル14に作用させる軸力(引張力)により調整することができる。すなわち、図4に示すように、ケーブル14の軸方向に軸力Tが作用すると、その軸力Tの一成分TNが鞍掛部32の湾曲面34に対して垂直に作用する。この鞍掛部32の湾曲面34に作用した軸力Tの一成分TNの反作用力が垂直抗力N(=TN)として湾曲面34からケーブル14に対して作用する。摩擦力は、F=μN(F:摩擦力、μ:摩擦係数、N:垂直抗力)で決定されるため、軸力Tの大きさを調整することにより、垂直抗力Nの大きさも調整することができ、ひいては、摩擦力の大きさを調整することができる。
【0033】
第2実施形態の制振部材30によれば、例えば、ケーブル14の両端部が構造物に固定され、鞍掛部32も構造物に固定された状態では、地震動などにより構造物に振動エネルギが発生すると、構造物が変位する。構造物が変位すると、ケーブル14も構造物の変位とともに変位する。ここで、構造物の変位の小さくてケーブル14が鞍掛部32の湾曲面34に対して静止している間は、ケーブル14と鞍掛部32の湾曲面34との間に静止摩擦力が発生する。そして、構造物の変位が大きくなりケーブル14が湾曲面34に対して移動すると、ケーブル14と鞍掛部32の湾曲面34との間に動摩擦力が発生する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、ケーブル14と鞍掛部32の湾曲面34との間には摩擦力が発生する。そして、振動エネルギは、摩擦力によって熱エネルギに変換される。この結果、構造物に発生した振動エネルギは、制振部材30に発生する摩擦力(摩擦エネルギ)で吸収されることになる。
【0034】
特に、鞍掛部32の湾曲面34からケーブル14に作用する摩擦力は、ケーブル14に付与する軸力により自由に調整することができるため、構造物に発生する振動エネルギの大きさを考慮して自由に変更することができる。
【0035】
ここで、第2実施形態の制振部材30を用いた構造物の制振構造(制振工法)について説明する。
【0036】
図5に示すように、構造物40は、5本の柱(左から第1柱22A、第2柱22B、第3柱22C、第4柱22D、第5柱22E)と、上下各4本ずつの梁(上側第1梁24A、上側第2梁24B、上側第3梁24C、上側第4梁24D、下側第1梁26A、下側第2梁26B、下側第3梁26C、下側第4梁26D)と、で構成されている。構造物40には、2本のケーブル14A、14Bが取り付けられる。一方のケーブル14Aの軸方向一方側端部は、第1柱22Aの上端部に固定され、軸方向他方側端部は第5柱22Eの上端部に固定される。このケーブル14Aが掛けられる鞍掛部32は、第2柱22Bの下端部、第3柱22Cの上端部、第4柱22Dの下端部にそれぞれ固定されている。このように、一方のケーブル14Aは、各柱の上端部と下端部を交互に掛け渡されるようにして配置されている。他方のケーブル14Bの軸方向一方側端部は、第1柱22Aの下端部に固定され、軸方向他方側端部は第5柱22Eの下端部に固定される。このケーブル14Bが掛けられる鞍掛部32は、第2柱22Bの上端部、第3柱22Cの下端部、第4柱22Dの上端部にそれぞれ固定されている。このように、他方のケーブル14Bも、一方のケーブル14Aと位相ずれ(逆位相)するように、各柱22A、22B、22C、22D、22Eの上端部と下端部を交互に掛け渡されるようにして配置されている。
【0037】
第2実施形態の制振部材30を用いた構造物の制振構造によれば、構造物40に発生した振動エネルギにより構造物40がせん断変位すると、ケーブル14Aは鞍掛部32の湾曲面34に対して相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなる。そして、構造物40に発生した振動エネルギにより構造物40が逆方向にせん断変位すると、ケーブル14Aは鞍掛部32の湾曲面34に対して逆向きに相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなる。地震が発生している間は、上述したケーブル14Aの相対移動が繰り返される。なお、他方のケーブル14Bの動作も、一方のケーブル14Aの動作と逆位相になるが、ケーブル14Bが鞍掛部32の湾曲面34に対して相対移動する点は同様である。このように、構造物40に発生した振動エネルギにより構造物40にせん断変位が生じると、ケーブル14A、14Bが鞍掛部32の湾曲面34に対して相対移動し、ケーブル14A、14Bと鞍掛部32の湾曲面34との間で動摩擦力が発生する。なお、ケーブル14A、14Bが鞍掛部32の湾曲面34に対して相対移動する直前(ケーブル14A、14Bの停止状態)は、ケーブル14A、14Bと鞍掛部32の湾曲面34との間で静止摩擦力が発生する。
【0038】
以上のように、構造物40に発生した振動エネルギは、ケーブル14と鞍掛部32の湾曲面24との間で発生する静止摩擦力又は動摩擦力によって熱エネルギに変換されて、摩擦力により吸収されることになる。特に、ケーブル14に作用させる軸力の大きさを調整することにより、ケーブル14に作用する摩擦力の大きさを調整することができるため、構造物40に発生する振動エネルギの大きさに応じて摩擦力を容易に変更することができる。
【0039】
次に、本発明の第3実施形態に係る制振部材について説明する。
【0040】
図6に示すように、第3実施形態の制振部材50は、中心回りに回転可能な滑車部(支持部材)52を備えている。この滑車部52の外周面(湾曲部)54は、湾曲状に形成されており、外周面54にケーブル14が掛けられている。滑車部52の内部には、高減衰ゴムなどの振動減衰部材(振動吸収部材)56が設けられている。具体的には、滑車部52の内周面に振動減衰部材56の外周面が面接触している。そして、滑車部52が振動減衰部材56に対して相対移動可能に構成されている。滑車部52が振動減衰部材56に対して相対移動(回転)すると、滑車部52と振動減衰部材56との間に動摩擦力が発生し、滑車部52に対して動摩擦力が作用する。なお、ケーブル14に作用させる軸力の大きさにより、摩擦力の大きさを調整する点は、第2実施形態と同様である。また、ケーブル14は、鉄で構成されており、滑車部52は、鋼材で構成されている。
【0041】
第3実施形態の制振部材50によれば、例えば、ケーブル14の両端部が構造物に固定され、滑車部52も構造物に固定された状態では、地震動などにより構造物に振動エネルギが発生すると、構造物が変位する。構造物が変位すると、ケーブル14も構造物の変位とともに変位する。ここで、構造物の変位の小さくてケーブル14が滑車部52の外周面54に対して静止している間は、ケーブル14と滑車部52の外周面54との間に静止摩擦力が発生する。そして、構造物の変位が大きくなりケーブル14が滑車部52の外周面54に対して移動すると、ケーブル14と滑車部52の外周面54との間に動摩擦力が発生する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、ケーブル14と滑車部52の外周面54との間には摩擦力が発生する。そして、振動エネルギは、摩擦力によって熱エネルギに変換される。この結果、構造物に発生した振動エネルギは、制振部材50に発生する摩擦力(摩擦エネルギ)で吸収されることになる。
【0042】
ここで、ケーブル14から滑車部52に対しても摩擦力(静止摩擦力又は動摩擦力)が作用することになる。そして、滑車部52に作用した摩擦力により滑車部52が回転する場合には、滑車部52は振動減衰部材56に対して相対移動することになる。このめた、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の外周面との間には摩擦力(静止摩擦力又は動摩擦力)が発生し、滑車部52には摩擦力(静止摩擦力又は動摩擦力)が作用する。詳細には、構造物の変位の小さくて滑車部52が振動減衰部材56に対して静止している間は、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の外周面の間に静止摩擦力が発生する。そして、構造物の変位が大きくなり滑車部52が振動減衰部材56に対して移動すると、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の外周面との間に動摩擦力が発生する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、滑車部52と振動減衰部材56との間には摩擦力が発生する。そして、振動エネルギは、摩擦力によって熱エネルギに変換される。この結果、構造物に発生した振動エネルギは、制振部材50に発生する摩擦力(摩擦エネルギ)で吸収することになる。
【0043】
なお、振動減衰部材56は、鋼材など他の材質で構成されていてもよく、鋼で構成される滑車部52と振動減衰部材56との間に発生する摩擦力で振動エネルギを吸収することができる。
【0044】
ここで、第3実施形態の制振部材50を用いた構造物の制振構造(制振工法)について説明する。
【0045】
図7に示すように、構造物60は、5本の柱(左から第1柱22A、第2柱22B、第3柱22C、第4柱22D、第5柱22E)と、上下各4本ずつの梁(上側第1梁24A、上側第2梁24B、上側第3梁24C、上側第4梁24D、下側第1梁26A、下側第2梁26B、下側第3梁26C、下側第4梁26D)と、で構成されている。構造物60には、2本のケーブル14A、14Bが取り付けられる。一方のケーブル14Aの軸方向一方側端部は、第1柱22Aの上端部に固定され、軸方向他方側端部は第5柱22Eの上端部に固定される。このケーブル14Aが掛けられる滑車部52は、第2柱22Bの下端部、第3柱22Cの上端部、第4柱22Dの下端部にそれぞれ固定されている。このように、一方のケーブル14Aは、各柱の上端部と下端部を交互に掛け渡されるようにして配置されている。他方のケーブル14Bの軸方向一方側端部は、第1柱22Aの下端部に固定され、軸方向他方側端部は第5柱22Eの下端部に固定される。このケーブル14Bが掛けられる滑車部52は、第2柱22Bの上端部、第3柱22Cの下端部、第4柱22Dの上端部にそれぞれ固定されている。このように、他方のケーブル14Bも、一方のケーブル14Aと位相ずれ(逆位相)するように、各柱22A、22B、22C、22D、22Eの上端部と下端部を交互に掛け渡されるようにして配置されている。
【0046】
第3実施形態の制振部材50を用いた構造物の制振構造によれば、構造物60に発生した振動エネルギにより構造物60がせん断変位すると、ケーブル14Aは滑車部52の外周面54に対して相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第4柱24Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなる。そして、構造物60に発生した振動エネルギにより構造物60が逆方向にせん断変位すると、ケーブル14Aは滑車部52の外周面54に対して逆向きに相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなる。地震が発生している間は、上述したケーブル14Aの相対移動が繰り返される。なお、他方のケーブル14Bの動作も、一方のケーブル14Aの動作と逆位相になるが、ケーブル14Bが滑車部52の外周面54に対して相対移動する点は同様である。このように、構造物60に発生した振動エネルギにより構造物60にせん断変位が生じると、ケーブル14A、14Bが滑車部52の外周面54に対して相対移動し、ケーブル14A、14Bと滑車部52との間で動摩擦力が発生する。なお、ケーブル14A、14Bが滑車部52の外周面54に対して相対移動する直前(ケーブル14A、14Bの停止状態)は、ケーブル14A、14Bと滑車部52の外周面54との間で静止摩擦力が発生する。
【0047】
また、滑車部52が摩擦力により回転する場合もある。このとき、滑車部52は、振動減衰部材56に対して相対移動する。これにより、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の外周面との間に摩擦力(静止摩擦力又は動摩擦力)が発生し、滑車部52には摩擦力が作用する。
【0048】
以上のように、構造物60に発生した振動エネルギは、ケーブル14A、14Bと滑車部52との間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、滑車部52と振動減衰部材56との間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、によって熱エネルギに変換されて、摩擦力により吸収されることになる。このように、ケーブル14A、14Bと滑車部52との間に発生する摩擦力と、滑車部52と振動減衰部材56との間に発生する摩擦力と、の2つの摩擦力で振動エネルギを吸収することにより、制振効果を一層高めることができる。
【0049】
次に、本発明の第4実施形態に係る制振部材について説明する。
【0050】
図8に示すように、第4実施形態に係る制振部材70は、第1実施形態の制振部材10と第2実施形態の制振部材30を合体させて構成したものである。すなわち、第4実施形態に係る制振部材70は、各摺動部12A、12Bと、軸部16と、固着部18A、18Bと、鞍掛部32と、を備えている。鞍掛部32の両側面は、各摺動部12A、12Bに挟まれた状態になっている。そして、鞍掛部32の湾曲面34に掛けられたケーブル14は、各摺動部12A、12Bから所定の圧力で挟まれた状態になっている。なお、ケーブル14に作用させる軸力の大きさにより、ケーブル14と鞍掛部32との間に発生する摩擦力の大きさを調整する点は、第2実施形態と同様である。
【0051】
第4実施形態の制振部材70によれば、構造物が変位すると、ケーブル14と各摺動部12A、12B及び鞍掛部32との間には静止摩擦力が作用し、ケーブル14が各摺動部12A、12B及び鞍掛部32に対して相対移動すると、ケーブル14と各摺動部12A、12B及び鞍掛部32との間には動摩擦力が作用する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、ケーブル14と鞍掛部32及び各摺動部12A、12Bとの間には摩擦力が発生する。そして、振動エネルギは、摩擦力によって熱エネルギに変換される。この結果、構造物に発生した振動エネルギは、制振部材70に発生する摩擦力(摩擦エネルギ)で吸収されることになる。
【0052】
また、第4実施形態の制振部材70を用いた構造物の制振構造(制振工法)は、図9に示すように、各摺動部12A、12Bと、軸部16と、固着部18A、18Bと、鞍掛部32と、を備えた構成体72に、ケーブル14が掛けられている。上記構成体72の取付位置は、第1実施形態の各摺動部12A、12Bの取付位置と同じである。
【0053】
第4実施形態の制振部材70を用いた構造物の制振構造によれば、構造物80に発生した振動エネルギにより構造物80がせん断変位すると、ケーブル14Aは鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bに対して相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなる。そして、構造物80に発生した振動エネルギにより構造物80が逆方向にせん断変位すると、ケーブル14Aは鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bに対して逆向きに相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなる。地震が発生している間は、上述したケーブル14Aの相対移動が繰り返される。なお、他方のケーブル14Bの動作も、一方のケーブル14Aの動作と逆位相になるが、ケーブル14Bが鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bに対して相対移動する点は同様である。このように、構造物80に発生した振動エネルギにより構造物80にせん断変位が生じると、ケーブル14A、14Bが鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bに対して相対移動し、ケーブル14A、14Bと鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bとの間で動摩擦力が発生する。なお、ケーブル14A、14Bが鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bに対して相対移動する直前(ケーブル14A、14Bの停止状態)は、ケーブル14A、14Bと鞍掛部32の湾曲面34及び各摺動部12A、12Bとの間で静止摩擦力が発生する。
【0054】
以上のように、構造物80に発生した振動エネルギは、ケーブル14A、14Bと鞍掛部32の湾曲面34との間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、ケーブル14A、14Bと各摺動部12A、12Bとの間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、によって熱エネルギに変換されて、かかる摩擦力により吸収されることになる。このように、ケーブル14A、14Bと鞍掛部32の湾曲面34との間に発生する摩擦力と、ケーブル14A、14Bと各摺動部12A、12Bとの間に発生する摩擦力と、の2つの摩擦力で振動エネルギを吸収することにより、制振効果を一層高めることができる。
【0055】
次に、本発明の第5実施形態に係る制振部材について説明する。
【0056】
図10に示すように、第5実施形態に係る制振部材90は、第1実施形態の制振部材10と第3実施形態の制振部材50を合体させ、さらに振動減衰部材56の形状を変形させて構成したものである。すなわち、第4実施形態に係る制振部材90は、各摺動部12A、12Bと、軸部16と、固着部18A、18Bと、滑車部52と、振動減衰部材56と、を備えている。振動減衰部材56は、滑車部52の内周面側に位置する中心減衰部56Aと、中心減衰部56Aの軸方向両側端部に形成され摩擦片56Bと、で構成されている。滑車部52の両側面には、振動減衰部材56の摩擦片56Bが取り付けられている。また、各摺動部12A、12Bの内側側面には、摩擦片56Bが面接触している。そして、滑車部52の外周面54に掛けられたケーブル14は、振動減衰部材56の摩擦片56Bから所定の圧力で挟まれた状態になっている。なお、ケーブル14に作用させる軸力の大きさにより、ケーブル14と滑車部52との間に発生する摩擦力の大きさを調整する点は、第2実施形態と同様である。
【0057】
第5実施形態の制振部材90によれば、構造物が変位すると、ケーブル14と振動減衰部材56の摩擦片56B及び滑車部52との間には静止摩擦力が作用し、ケーブル14が振動減衰部材56の摩擦片56B及び滑車部52に対して相対移動すると、ケーブル14と振動減衰部材56の摩擦片56B及び滑車部52との間には動摩擦力が作用する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、ケーブル14と振動減衰部材56の摩擦片56B及び滑車部52との間には摩擦力が発生する。また、構造物が変位すると、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の中心減衰部56Aとの間に静止摩擦力が発生し、滑車部52が振動減衰部材56に対して相対移動する場合には、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の中心減衰部56Aとの間に動摩擦力が発生する。このように、地震動により構造物に振動エネルギが発生すると、滑車部52と振動減衰部材56の中心減衰部56Aとの間に摩擦力が発生する。そして、振動エネルギは、摩擦力によって熱エネルギに変換される。この結果、構造物に発生した振動エネルギは、制振部材90に発生する摩擦力(摩擦エネルギ)で吸収されることになる。
【0058】
また、第5実施形態の制振部材90を用いた構造物の制振構造(制振工法)は、図11に示すように、各摺動部12A、12Bと、軸部16と、固着部18A、18Bと、滑車部52と、振動減衰部材56と、を備えた構成体92に、ケーブル14A、14Bが掛けられている。上記構成体92の取付位置は、第1実施形態の各摺動部12A、12Bの取付位置と同じである。
【0059】
第5実施形態の制振部材90を用いた構造物の制振構造によれば、構造物100に発生した振動エネルギにより構造物100がせん断変位すると、ケーブル14Aは滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bに対して相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなる。そして、構造物100に発生した振動エネルギにより構造物100が逆方向にせん断変位すると、ケーブル14Aは滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bに対して逆向きに相対移動して、第1柱22Aと第2柱22Bとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第2柱22Bと第3柱22Cとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなり、第3柱22Cと第4柱22Dとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが長くなり、第4柱22Dと第5柱22Eとの間に位置するケーブル14Aの軸方向長さが短くなる。地震が発生している間は、上述したケーブル14Aの相対移動が繰り返される。なお、他方のケーブル14Bの動作も、一方のケーブル14Bの動作と逆位相になるが、ケーブル14Bが滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bに対して相対移動する点は同様である。このように、構造物100に発生した振動エネルギにより構造物100にせん断変位が生じると、ケーブル14A、14Bが滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bに対して相対移動し、ケーブル14A、14Bと滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bとの間で動摩擦力が発生する。なお、ケーブル14A、14Bが滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bに対して相対移動する直前(ケーブル14A、14Bの停止状態)は、ケーブル14A、14Bと滑車部52の外周面54及び振動減衰部材56の摩擦片56Bとの間で静止摩擦力が発生する。
【0060】
また、滑車部52が振動減衰部材56の中心減衰部56Aに対して相対移動する場合には、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の中心減衰部56Aとの間に摩擦力(静止摩擦力又は動摩擦力)が発生し、滑車部52には摩擦力が作用する。
【0061】
以上のように、構造物100に発生した振動エネルギは、ケーブル14A、14Bと滑車部52の外周面54との間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、ケーブル14A、14Bと振動減衰部材56の摩擦片56Bとの間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、滑車部52の内周面と振動減衰部材56の中心減衰部56Aとの間に発生する静止摩擦力又は動摩擦力と、によって熱エネルギに変換されて、摩擦力により吸収されることになる。このように、ケーブル14A、14Bと滑車部52の外周面54との間に発生する摩擦力と、ケーブル14A、14Bと振動減衰部材56の摩擦片56Bとの間に発生する摩擦力と、滑車部52と振動減衰部材56の中心減衰部56Aとの間に発生する摩擦力と、の3つの摩擦力で振動エネルギを吸収することにより、制振効果を一層高めることができる。
【0062】
次に、本発明の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションについて以下に示す。
【0063】
図12及び図13に示すように、建物120の2架構の両端に可撓性のあるケーブル14をクロス状に設置し、2架構面にわたって設置した中間の架構部に摺動部、鞍掛部、滑車部(各実施形態参照)などの支持部材122を設置する。架構部に設置する摺動部、鞍掛部、滑車部などの支持部材122は、各層間で供用(図12参照)又は個別(図13参照)に設置する。
【0064】
図14及び図15に示すように、建物120の架構の両端に可撓性のあるケーブル14をハ型状に設置し、各架構面の梁の中央部に摺動部、鞍掛部、滑車部(各実施形態参照)などの支持部材122を設置する。架構部に設置する摺動部、鞍掛部、滑車部などの支持部材122は、各層間で供用(図14参照)又は個別(図15参照)に設置する。
【0065】
図16及び図17に示すように、建物120の2架構の両端に可撓性のあるケーブル14を◇状に設置し、2架構内に摺動部、鞍掛部、滑車部(各実施形態参照)などの支持部材122を設置する。架構部に設置する摺動部、鞍掛部、滑車部などの支持部材122は、各層間で供用(図16及び図17参照)に設置する。
【0066】
図12乃至図17に示すように、建物に発生した振動エネルギにより建物120がせん断変位した場合には、ケーブル14が摺動部、鞍掛部、滑車部(各実施形態参照)などの支持部材122に対して相対移動し、ケーブル14と支持部材122との間に摩擦力が発生する。この摩擦力により振動エネルギが熱エネルギに変換される。このようにして、建物120に発生した振動エネルギを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(A)は、本発明の第1実施形態に係る制振部材のケーブル軸方向に切断した断面図であり、(B)は、そのケーブル幅方向に切断した断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【図3】(A)は、本発明の第2実施形態に係る制振部材のケーブル軸方向に切断した断面図であり、(B)は、そのケーブル幅方向に切断した断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る制振部材のケーブルに作用する力学状態を示した説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態の制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【図6】(A)は、本発明の第3実施形態に係る制振部材のケーブル軸方向に切断した断面図であり、(B)は、そのケーブル幅方向に切断した断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態の制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【図8】(A)は、本発明の第4実施形態に係る制振部材のケーブル軸方向に切断した断面図であり、(B)は、そのケーブル幅方向に切断した断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態の制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【図10】(A)は、本発明の第5実施形態に係る制振部材のケーブル軸方向に切断した断面図であり、(B)は、そのケーブル幅方向に切断した断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態の制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【図12】本発明の各実施形態の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションであって、建物の2架構の両端に可撓性のあるケーブルをクロス状に設置した状態(供用タイプ)を示す説明図である。
【図13】本発明の各実施形態の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションであって、建物の2架構の両端に可撓性のあるケーブルをクロス状に設置した状態(個別タイプ)を示す説明図である。
【図14】本発明の各実施形態の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションであって、建物の架構の両端に可撓性のあるケーブルをハ型状に設置した状態(供用タイプ)を示す説明図である。
【図15】本発明の各実施形態の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションであって、建物の架構の両端に可撓性のあるケーブルをハ型状に設置した状態(個別タイプ)を示す説明図である。
【図16】本発明の各実施形態の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションであって、建物の2架構の両端に可撓性のあるケーブルを◇状に設置した状態(供用タイプ)を示す説明図である。
【図17】本発明の各実施形態の制振部材を利用した制振工法の配置バリエーションであって、建物の2架構の両端に可撓性のあるケーブルを◇状に設置した状態(個別タイプ)を示す説明図である。
【図18】従来技術となる制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【図19】従来技術となる制振部材を用いた構造物の制振構造(制振工法)の説明図である。
【符号の説明】
【0068】
10 制振部材
12A 摺動部(支持部材)
12B 摺動部(支持部材)
14 ケーブル
30 制振部材
32 鞍掛部(支持部材)
34 湾曲部
50 制振部材
52 滑車部(支持部材)
54 外周面(湾曲部)
56 振動減衰部材(振動吸収部材)
70 制振部材
90 制振部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に両端が固定される可撓性のケーブルと、
前記ケーブルを支持し前記ケーブルとの間で発生する摩擦力により前記構造物に発生した振動エネルギを吸収する支持部材と、
を有することを特徴とする制振部材。
【請求項2】
前記ケーブルは、前記構造物の前記振動エネルギによる変位とともに前記支持部材に対して相対移動するものであり、
前記ケーブルと前記支持部材との間に発生する動摩擦力により前記振動エネルギを吸収することを特徴とする請求項1に記載の制振部材。
【請求項3】
前記支持部材は、前記ケーブルが接触する湾曲部を有し、
前記湾曲部に沿って撓んだ前記ケーブルの軸方向に作用する軸力に基づいて、前記摩擦力又は前記動摩擦力を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の制振部材。
【請求項4】
前記支持部材に対する相対移動により前記支持部材との間に前記振動エネルギを吸収する振動吸収部材を有し、
前記支持部材と前記振動吸収部材との間で発生する摩擦力により前記構造物に発生した振動エネルギを吸収することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制振部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制振部材を用いた構造物の制振構造であって、
前記ケーブルの両端を前記構造物に固定し、
前記支持部材を前記構造物に固定し、
前記構造物の前記振動エネルギによる変位により前記ケーブルが前記支持部材に対して相対移動し、前記相対移動に基づいて前記ケーブルと前記支持部材との間に発生した摩擦力により前記振動エネルギを吸収することを特徴とする構造物の制振構造。
【請求項6】
前記ケーブルは、前記構造物の層間のせん断変位により前記支持部材に対して相対移動するように前記構造物に固定されていることを特徴とする請求項5に記載の構造物の制振構造。
【請求項1】
構造物に両端が固定される可撓性のケーブルと、
前記ケーブルを支持し前記ケーブルとの間で発生する摩擦力により前記構造物に発生した振動エネルギを吸収する支持部材と、
を有することを特徴とする制振部材。
【請求項2】
前記ケーブルは、前記構造物の前記振動エネルギによる変位とともに前記支持部材に対して相対移動するものであり、
前記ケーブルと前記支持部材との間に発生する動摩擦力により前記振動エネルギを吸収することを特徴とする請求項1に記載の制振部材。
【請求項3】
前記支持部材は、前記ケーブルが接触する湾曲部を有し、
前記湾曲部に沿って撓んだ前記ケーブルの軸方向に作用する軸力に基づいて、前記摩擦力又は前記動摩擦力を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の制振部材。
【請求項4】
前記支持部材に対する相対移動により前記支持部材との間に前記振動エネルギを吸収する振動吸収部材を有し、
前記支持部材と前記振動吸収部材との間で発生する摩擦力により前記構造物に発生した振動エネルギを吸収することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制振部材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制振部材を用いた構造物の制振構造であって、
前記ケーブルの両端を前記構造物に固定し、
前記支持部材を前記構造物に固定し、
前記構造物の前記振動エネルギによる変位により前記ケーブルが前記支持部材に対して相対移動し、前記相対移動に基づいて前記ケーブルと前記支持部材との間に発生した摩擦力により前記振動エネルギを吸収することを特徴とする構造物の制振構造。
【請求項6】
前記ケーブルは、前記構造物の層間のせん断変位により前記支持部材に対して相対移動するように前記構造物に固定されていることを特徴とする請求項5に記載の構造物の制振構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−236249(P2009−236249A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84884(P2008−84884)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000200367)川田工業株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000200367)川田工業株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
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