説明

制電性組成物、その製造方法、及びそれを用いた成形品、塗料、制電性被覆物

【課題】 ブリ−ディング、ブル−ミング、および移行汚染が発生せず、湿度に依存せずに、即効性に優れ、物性の低下を招かず、かつ優れた制電性が持続する制電性組成物を提供することを主要な目的とする。
【解決手段】 本発明の制電性組成物は、樹脂および/またはエラストマ-を含む組成物中に、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が分散されてなる制電性組成物にかかる。上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、水に溶解された状態で分散されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に帯電防止性に優れた制電性組成物に関するものであり、より特定的にはブリ-ディングやブル-ミングを起こさないように改良された制電性組成物に関する。この発明はまたそのような制電性組成物の製造方法およびそれを用いた成形品、塗料、制電性被覆物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂に制電性を付与することが重要になってきており、これを達成するために、従来より、界面活性剤等の帯電防止剤を樹脂成形品の表面に塗布したり、帯電防止剤を樹脂中に練り込む方法が知られている。しかしながら、前者の方法では、長時間経過すると制電性が著しく低下するため、持続性を有する高制電性樹脂として、実用化には供し難い。一方、後者の方法では、帯電防止剤と樹脂との相溶性が悪く、帯電防止剤が成形品の表面にブリ-ディングやブル-ミングしてしまい、制電効果が低下するという問題がある。
【0003】
また、界面活性剤などの帯電防止剤は、湿度依存性があり、低湿度下では、制電効果が失活する、あるいは、樹脂を成形した後に、帯電防止効果が発現するまでに最低1〜3日掛かり、遅効性であるという問題がある。
【0004】
また、カ-ボンブラックやカ-ボンファイバ-などを樹脂に練り込む方法が提案されている。この方法によると、帯電防止性にすぐれ、帯電防止性に持続性がある樹脂組成物が得られる。しかし、この方法では、透明な成形品が得られなかったり、成形品の色の選択が制限されるなどの問題がある。
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決する方法として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であるカチオン、およびイオン 解離可能なカチオンによって構成される金属塩類を、−{O(AO)n}−基(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜7の整数を示す)を有し、且つ全ての分子末端がCH3基および/またはCH2基である有機化合物に溶解した溶液を、ポリアミド樹脂、ポリエ-テルエステルアミド樹脂、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸系樹樹、熱可塑性エラストマ-およびゴムに添加したアルカリ金属またはアルカリ土類金属であるカチオン、およびイオン解離可能なカチオンによって構成される金属塩類の制電性組成物を提案した(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、ポリウレタンからなる塩改質静電気散逸型重合体(Salt-modified electrostatic dissipative polymers)の製造方法として、リチウムビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドを補助溶剤(co-solvents)に溶解して添加する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】国際公開WO01/79354 A1公報(特許請求の範囲)
【0008】
【特許文献2】米国特許6,140,405号 (Claim1、14および15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この制電性組成物に添加する金属塩類の種類によっては、制電性能が十分でない場合があった。また、過塩素酸等の金属塩類を用いると、この制電性組成物から成るフイルムやシ-トを用いて金属類を包装する場合、金属表面を腐食、発錆あるいは汚染するという欠点があった。
【0010】
また、特許文献2に記載の方法では、金属塩類を溶解するための補助溶剤(エチレンカ-ボネ-ト、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、N-メチル-2-ピロリドン等)が制電性組成物の成形品の表面にブリ-ディングやブル-ミングしてしまい、製品を汚染する。また、成形品の表面を払拭することなどにより制電性が低下し、帯電防止性の耐久性が十分でない。特に、高温高湿度の雰囲気下では、ブリ-ディングやブル-ミングが促進されるため、制電性の低下が著しいという問題点がある。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、熱安定性に優れ、ブリ-ディング、ブル-ミングおよび移行汚染が発生せず、湿度に依存せずに、即効性に優れ、物性の低下を招かず、かつ、優れた制電性が持続する制電性組成物を提供することを目的とする。
【0012】
この発明の他の目的は、そのような制電性組成物の製造方法を提供することにある。
【0013】
この発明のさらに他の目的は、そのような制電性組成物を用いた成形品、塗料および制電性被覆物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に従う制電性組成物は、樹脂および/またはエラストマ-を含む組成物中に、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が分散されてなるものであり、上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は水に溶解された状態で分散されていることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が、組成物中で、樹脂および/またはエラストマ-の物性を維持しつつ、制電性を発揮する。さらに、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、組成物を構成する分子と相溶性に優れるので、ブリ-ディング、ブル-ミング、および移行汚染が発生せず、湿度に依存せずに、即効性に優れ、かつ優れた制電性が持続する制電性組成物を得ることができる。
【0016】
また、上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は水に溶解しやすく、濃度を濃くすることができ、これを分散させることにより、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を、多量にかつ均一に、上記樹脂および/またはエラストマ-中に取り込ませることができる。
【0017】
上記樹脂は、ポリオレフィン系重合体、ポリスチレン系重合体、ポリアミド系重合体、塩化ビニル系重合体、ポリアセタ-ル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリカ-ボネ-ト系重合体、アクリレ-ト/メタクリレ-ト系重合体、ポリアクリロニトリル系重合体、熱可塑性エラストマ-系重合体、不飽和ポリエステル系重合体、エポキシ系重合体、フェノ-ル系重合体、ジアリ-ル系重合体、メラミン系重合体、液晶ポリエステル系重合体、フッ素系重合体、ポリスルホン系重合体、ポリフェニレンエ-テル系重合体、ポリイミド系重合体、およびシリコ-ン系重合体から選択された1種であればよい。
【0018】
この中でも水に親和性を有する基を有するものは特に好ましく用いられる。
【0019】
上記エラストマ-は、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、シリコ-ンゴム、フッ素ゴムおよびウレタンゴムから選択された1種であればよい。
【0020】
上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンは、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオンおよびフルオロアルキルスルホン酸イオンからなる群から選ばれた陰イオンである。
【0021】
上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、アルカリ金属、2A族元素、遷移金属、両性金属のいずれかの陽イオンと、上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンとからなるのが好ましい。
【0022】
上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、特にビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドのアルカリ金属塩、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドのアルカリ金属塩およびトリフルオロアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩からなる群から選ばれた塩であるのが好ましい。
【0023】
上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、水100質量部に対して、0.1質量部以上95質量部以下の割合で水に溶解されて、樹脂および/またはエラストマ中に分散される。
【0024】
上記組成物中の全ての樹脂および/またはエラストマ-100質量部に対して、上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、0.01質量部以上30質量部以下の割合で配合されるのが好ましい。
【0025】
このように規制するのは、上記陰イオンを備えた塩の配合量が、0.01質量部未満であると、制電性が十分発揮されないからである。一方、上記陰イオンを備えた塩の配合量が、30質量部を超えると、制電性付与効果が飽和するので、コスト高を招来するという問題があるからである。
【0026】
上記組成物は、さらに重合体型帯電防止剤を含んでもよい。本発明の組成物に重合体型帯電防止剤を含めると、上記陰イオンを備えた塩を安定化することができることが見出された。上記陰イオンを備えた塩は水に溶解された状態で分散されるので、この塩(水溶液)は親水性を有する重合体型帯電防止剤の存在する所に集まり、両者の親和力により安定化したものと考えられる。このような重合体型帯電防止剤としては、ポリエ-テルブロックポリオレフィン共重合体、ポリオキシアルキレン系共重合体またはエチレンオキサイド-プロピレンオキサイド-アリルグリシジル共重合体が挙げられる。
【0027】
上記樹脂および/またはエラストマ-100質量部に対して、上記重合体型帯電防止剤を、0.1質量部以上65質量部以下の割合で含有していればよい。
【0028】
このように規制するのは、上記重合体型帯電防止剤の配合量が0.1質量部未満であると、制電性が十分発揮されないからである。一方、上記重合体型帯電防止剤の配合量が65質量部を超えると、制電性付与効果が飽和するので、コスト高を招来するという問題があるからである。また、組成物の物性が失われることがあるからである。
【0029】
この発明の他の局面に従う製造方法は、樹脂および/またはエラストマ-を含む組成物中に、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が分散されてなる制電性組成物の製造方法であって、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を溶解した水溶液と、樹脂および/またはエラストマ-を含む組成物とを一度に配合し、混練することを特徴とする。
【0030】
この方法によると、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、樹脂およびエラストマ-に、均一に親和することが見出された。ブリ−ディング、ブル−ミングおよび移行汚染が発生せず、湿度に依存せずに、即効性に優れ、物性の低下を招かず、かつ優れた制電性が持続する制電性組成物が得られた。
【0031】
この発明のさらに他の局面に従う製造方法は、樹脂および/またはエラストマ-を含む組成物中に、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が分散されてなる制電性組成物の製造方法であって、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を溶解した水溶液(第1成分)を樹脂および/またはエラストマ-を含む組成物(第2成分)とを混練し組成物を形成する工程と、上記組成物を常圧または減圧下で加熱乾燥する工程と、上記加熱乾燥後の上記組成物を上記第2成分と混練あるいはブレンドする工程とを備える。
【0032】
熱乾燥する工程を加えることにより、組成物中の水分の量を少なくすることができる。
【0033】
本発明の制電性組成物を用いて、種々の成形品、フイルム、塗料等を得ることができる。また、本発明の制電性組成物を成形表面で効果させて、制電性の被覆物とすることもできる。
【発明の効果】
【0034】
本発明では、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を水に溶解し、樹脂および/またはエラストマ-に添加・配合する。本発明で用いるフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、樹脂およびエラストマ-に、均一に親和する。このような陰イオンを備えた塩は、高い導電率、高い耐熱性、不燃性、不揮発性を有するので、制電性・熱安定性に優れ、金属を腐食せず、湿度などの環境によらない制電性組成物をうることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明に用いられるフルオロ基およびスルホニル 基を有する陰イオン を備えた塩は、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン、フルオロアルキルスルホン酸イオンからなる群の内の少なくとも1つから選ばれた陰イオンと、アルカリ金属、2A族元素、遷移金属、両性金属からなる群の少なくとも1つから選ばれた陽イオンからなる。
【0036】
上記陰イオンおよび陽イオンによって構成される塩は数多くあるが、中でも、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン、フルオロアルキルスルホン酸イオンからなり、具体的には、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムLi(CF3SO22N、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリカリウムK(CF3SO22N、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウムNa(CF3SO22N、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムLi(CF3SO23C、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウムK(CF3SO23C、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドナトリウムNa(CF3SO23C、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLi(CF3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸カリウムK(CF3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムNa(CF3SO3)が好ましい。中でも、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、およびトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムが挙げられる。特に、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムおよびトリフルオロメタンスルホン酸リチウムは好ましく、これらを少量添加するだけで、上記効果が一層発揮されることになる。
【0037】
[樹脂およびエラストマ-]
【0038】
本発明の組成物に用いられる樹脂およびエラストマ-は、特に制限がなく、公知の重合体およびエラストマ-を使用することができる。
【0039】
使用される樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系重合体、ポリスチレン系重合体、ポリアミド系重合体、塩化ビニル系重合体、ポリアセタ-ル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリカ-ボネ-ト系重合体、アクリレ-ト/メタクリレ-ト系重合体、ポリアクリロニトリル系重合体、熱可塑性エラストマ-系重合体、不飽和ポリエステル系重合体、エポキシ系重合体、フェノ-ル系重合体、ジアリ-ル系重合体、メラミン系重合体、液晶ポリエステル系重合体、フッ素系重合体、ポリスルホン系重合体、ポリフェニレンエ-テル系重合体、ポリイミド系重合体、およびシリコ-ン系重合体などが挙げられる。
【0040】
使用されるエラストマ-としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、シリコ-ンゴム、フッ素ゴム、およびウレタンゴム等が挙げられる。
【0041】
また、これらの樹脂およびエラストマ-は、1種類に限定されず、複数の樹脂およびエラストマ-を組合せて使用してもよい。
【0042】
[配合割合]
【0043】
本発明の制電性組成物は、樹脂および/またはエラストマ-100質量部に対して、上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を、0.01質量部以上30質量部以下、さらに好ましくは、0.1質量部以上15重量部以下含む。
【0044】
[重合体型帯電防止剤]
【0045】
本発明の制電性組成物は、樹脂および/またはエラストマ-とフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンの2成分であっても、十分に効果を奏する。しかし、さらに、重合体型帯電防止剤を含めることで、優れた制電性を発揮することが見出された。すなわち、上記陰イオンを備えた塩は水に溶解された状態で分散されるので、この塩(水溶液)は親水性を有する重合体型帯電防止剤の存在する所に集まり、局在化し、2種類の帯電防止剤の相乗効果によって制電効果を強く発揮したものと考えられる。使用できる重合型帯電防止剤としては、ポリエ-テルブロックポリオレフィン系共重合体、ポリオキシアルキレン系共重合体またはエチレンオキサイド-プロピレンオキサイド-アリルグリシジル系共重合体が挙げるられる。
【0046】
このような重合体型帯電防止剤は、上記樹脂および/またはエラストマ-100質量部に対して、0.05質量部以上65質量部以下、好ましくは、0.1質量部以上50質量部以下の割合で含有させればよい。
【0047】
[他の添加剤]
【0048】
本発明の制電性組成物には、さらに酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、顔料、抗菌・抗カビ剤、耐光剤、可塑剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、硬化触媒、硬化剤、レベリング剤、カップリング剤、フィラ-、加硫剤、加硫促進剤などの公知の添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0049】
[製造方法]
【0050】
本発明の組成物および成形品は、例えば、以下のようにして製造される。
【0051】
先ず、イオン交換水に、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を溶解させる。フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、水100質量部に対して、0.1質量部以上95質量部の割合になるように溶解する。
【0052】
樹脂および/またはエラストマ-に、上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を溶解させた水溶液を添加して、制電性組成物を製造するためには、両成分の所定の量を公知の方法を用いて混合すればよい。例えば、ヘンシェルミキサ-、リボンブレンダ-、ス-パ-ミキサ-、タンブラ-などでドライブレンドを行うこともできる。また、単軸または二軸押出機、バンバリ-ミキサ-、プラストミル、コニ-ダ-、ロ-ルなどで溶融混合をおこなってもよい。必要に応じて、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。
【0053】
上記製法によって得られたポリマ-及び/又は樹脂またはゴム配合物は、圧縮成形、トランスファ-成形、押出成形、吹込成形、カレンダ-加工、注形、ペ-スト加工、粉末化、反応成形、熱成形、ブロ-成形、回転成形、真空成形、キャスト成形、ガスアシスト成形などの成形に用いられる公知の方法によって成形することができる。また、本発明の制電性組成物を、制電性塗料としても用いることができる。
【0054】
本発明の成形品は、家電機器部品、電子機器部品、電子材料製造機器、情報事務機器部品、通信機器、ハウジング部品、光学機械部材、自動車用部品、工業用部材、家庭用雑貨品、包装流通部材など、長期間保持して高い制電性を必要とする製品、その他の各種パ-ツ、パッケイジ、チュ-ブ、被覆、容器関係などの静電気対策関係に好適に使用することができる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例に基づいて、本発明の内容を具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0056】
以下の実施例、比較例において、表面抵抗率および体積抵抗率の測定は、URSプロ−ブ(三菱油化(株)社製、ハイレスタUP(登録商標))を用いて、JIS K 9611に準じて行い、印加電圧は、100ボルト、500ボルトで測定した。
【0057】
また、環境依存性は、次式(1)に従って算出した。
【0058】
ΔLog10ρv= Log10ρv(10℃、 相対湿度15%)−Log10ρv(32.5℃、相対湿度90%)・・・・(1)
【0059】
ここで、ρvは、体積抵抗率を表す。
【0060】
ブリ-ドの評価は、次の方法により行った。
【0061】
幅 6cm×長さ 6cm×厚さ0.3cmのフイルムゲ-ト式の試験片を作成し、温度40℃、相対湿度90%の雰囲気下で7日間放置し、7日間経過後の試験片の状態を下記の標準により、目視評価した。
【表1】

【0062】
(実施例1〜5)
【0063】
イオン交換水100質量部に、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム Li(CF3SO22Nまたはトリフルオロメタンスルホン酸リチウムLi(CF3SO3)を95質量部添加して溶解させた。次いで、表2に示すように、樹脂および/またはエラストマ−を100質量部に対して高分子型帯電防止剤を所定の質量部を加え、上記水溶液を所定量配合した。次に、樹脂および/またはエラストマ-の加工温度に設定したニ-ダ-を用いて、混練した後、射出成形して、幅6cm×長さ6cm×厚さ0.3cmの実施例1〜5の試験片を作成した。
【0064】
(比較例1〜5)
【0065】
上記実施例において、上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩の水溶液を添加しなかった以外は、実施例1〜5と同様にして、比較例1〜5の試験片を作成した。
【0066】
(実験1)
【0067】
実施例1〜5の試験片と比較例1〜5の試験片とを用いて、JIS K 6911に準じて、表面抵抗率(Ω/sq)を測定した。結果を表2に示す。
【表2】

【0068】
表2中の略語は次の通りである。
【0069】
ABS:アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン3元系共重合体(東レ(株)社製 トヨラック(登録商標) 600)
【0070】
PP : ポリプロピレン ( 日本ポリケム (株 )社製 ノバテック(登録商標) PP BC6)
【0071】
TPU:熱可塑製ポリウレタンエラストマ- (大日本インキ 化学工業( 株 )製 パンデックス(登録商標) T−1190)
【0072】
NBR: アクリロニトリル- ブタジエン ゴム( ジェイエスア-ル( 株 )製、 N520)
【0073】
PMMA: ポリメチルメタクリレ-ト ( 三菱レイヨン( 株 )製、 IRK 304 )
【0074】
R: ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム Li(CF3SO22N (森田化学工業( 株 )製、LiTFSI )
【0075】
T: トリフルオロメタンスルホン酸リチウム Li(CF3SO3)(森田化学工業( 株 )製、 LiTFS )
【0076】
M: トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウム Li(CF3SO23C (米国特許第5554664 号公報に準じて合成)
【0077】
A: ポリエ-テルエステルアミド ( 三洋化成工業 ( 株 )製 ペレスタット(登録商標)6321)
【0078】
B: ポリエ-テルポリオレフィンブロックポリマ- ( 三洋化成工業( 株 )製 ペレスタット(登録商標) 230)
【0079】
C: エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド-アリルグリシジルエ-テル 共重合体( 日本ゼオン(株) 製、 ゼオスパン(登録商標) 8030)
【0080】
(実施例6)
【0081】
プロピレングリコ−ル系ポリエ−テルポリオ−ル(OHV=56)100部に対して、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム50質量部を水100質量部に溶解させた水溶液4.5部、ペンタメチレントリアミン0.1部、シリコ−ン系界面活性剤2.0部を添加して混合、調製した後、これにトリレンジイソシアネ−ト56部を混合し、攪拌すると、フォ−ムの泡数48個/inの良好な軟質ポリウレタンフォ−ムが得られた。本フォ−ムの表面固有抵抗率は、8x107 Ω/sqであった。ブリ−ド性試験結果は◎であった。
【0082】
(比較例6)
【0083】
実施例6において、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムを50質量部溶解したエチレンカ−ボネ−ト5部とトリフルオロメタンスルホン酸リチウム含まない水4.5部を添加した以外は、実施例6と同様にして比較例6の軟質ポリウレタンフォ−ムを得た。本フォ−ムの表面固有抵抗率は、8x1010Ω/sqであった。ブリ−ド性試験結果は△であった。
【0084】
(実施例7)
【0085】
水素添加スチレン系熱可塑製エラストマ−(クラレ(株)社製、セプトン(登録商標)2104)20部、ポリプロピレン(日本ポリケム(株)社製、ノバテック(登録商標)PP BC6)15部、オイル35部を含む混合液中に、ゴム分が65部である油展EPDMを含む組成物を動的架橋により分散させた。その後、この混合液に、重合体型帯電防止剤(三洋化成工業(株)社製、ペレスタット(登録商標)300)に、予め水100質量部に対してビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(森田化学工業(株)製、LiTFSI)を20質量部溶解した水溶液5.0部を混練したものを5部添加し、再度混練機で5分間混練した。これをさらに、樹脂押出機にて加熱しながら、ロ−ラ状に成形した。得られた試料の体積抵抗率は、5×106 Ω・cmであった。上記(1)式を用いて、環境依存製を算出したところ、環境依存性は、0.6であった。この成形品の表面には、ブリ−ド物の存在は認められなかった。ロ−ラ−状の成形物に、1KVの定電圧を連続して100時間印加した後の体積抵抗率は、8×106Ω・cmであった。
【0086】
(比較例7)
【0087】
実施例7において、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの代わりに、過塩素酸リチウムを5質量部、直接、添加・混練した以外は、実施例7と同様にして比較例7のロ−ラ−状の成形体を得た。環境依存性は、2.0であった。得られた試料の体積抵抗率は、5×1010Ω・cmであった。ロ−ラ−状の成形物に、1KVの定電圧を連続して100時間印加した後の体積抵抗率は、9×1011Ω・cmであった。
【0088】
(実施例8)
【0089】
水溶性エポキシ樹脂22部、ジエチルアミン1.8部、チタン白8部、塩基性珪酸塩1.5部と水100質量部に対しビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを5.0質量部溶解した水33.6部からなる電解質溶液(A)と、ポリイソシアナ−ト8.6部とセロソルブ22.2部からなる電解質溶液(B)を調製した。A液とB液とを配合して、水洗洗浄により十分な密着性を確保した鋼板を基材として静電塗装(印加電圧60KV)により、膜厚30μmで塗装した後、170℃で20分間焼付けを行い、白色の塗膜を形成した。この塗膜の表面抵抗率は、9×109Ω・cmであった。
【0090】
(比較例8)
【0091】
(実施例8)において、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムの代わりに、過塩素酸化リチウムを溶解した以外は、実施例と同様にして電解液Aを調製したが、沈殿物が生じて均一な電解液はできなかった。
【0092】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明にかかる制電性組成物は、家電機器部品、電子機器部品、電子材料製造機器、情報事務機器部品、通信機器、ハウジング部品、光学機械部材、自動車用部品、工業用部材、家庭用雑貨品、包装流通部材など、長期間保持して高い制電性を必要とする製品、その他の各種パ-ツ、パッケイジ、チュ-ブ、被覆、容器関係などの静電気対策関係に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂および/またはエラストマ-を含む組成物中に、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が分散されてなる制電性組成物において、
前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、水に溶解された状態で分散されていることを特徴とする制電性組成物。
【請求項2】
前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、水100質量部に対して、0.1質量部以上95質量部以下の割合で水に溶解されていることを特徴とする請求項1に記載の制電性組成物。
【請求項3】
前記組成物中の樹脂および/またはエラストマ-100質量部に対して、前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、0.01質量部以上30質量部以下含まれる請求項1または2に記載の制電性組成物。
【請求項4】
前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンは、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオンおよびフルオロアルキルスルホン酸イオンからなる群から選ばれた陰イオンである請求項1から3のいずれか1項に記載の制電性組成物。
【請求項5】
前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、アルカリ金属、2A族元素、遷移金属、両性金属のいずれかの陽イオンと、前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンとからなる塩である請求項1から4のいずれか1項に記載の制電性組成物。
【請求項6】
前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドのアルカリ金属塩、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドのアルカリ金属塩およびトリフルオロアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩からなる群から選ばれた塩である請求項1から5のいずれか1項に記載の制電性組成物。
【請求項7】
重合体型帯電防止剤がさらに配合されている請求項1から6のいずれか1項に記載の制電性組成物。
【請求項8】
前記樹脂および/またはエラストマ-100質量部に対して、前記重合体型帯電防止剤が0.05質量部以上65質量部以下配合されていることを特徴とする請求項7に記載の制電性組成物。
【請求項9】
樹脂および/またはエラストマ-を含む組成物中に、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が分散されてなる制電性組成物の製造方法であって、
フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を溶解した水溶液と、樹脂および/またはエラストマ-を含む組成物とを一度に配合し、混練することを特徴とする制電性組成物の製造方法。
【請求項10】
樹脂および/またはエラストマ-を含む組成物中に、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が分散されてなる制電性組成物の製造方法であって、
フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩を溶解した水溶液(第1成分)を樹脂および/またはエラストマ-を含む組成物(第2成分)と混練し組成物を形成する工程と、
前記組成物を常圧または減圧下で加熱乾燥する工程と、
前記加熱乾燥後の前記組成物を前記第2成分と混練あるいはブレンドする工程とを備えた制電性組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の制電性組成物を成形したことを特徴とする成形品。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の制電性組成物を含む塗料。
【請求項13】
請求項1から10のいずれかに記載の制電性組成物を成形品表面で硬化させた制電性被覆物。


【公開番号】特開2006−137790(P2006−137790A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326247(P2004−326247)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(398033921)三光化学工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】