説明

制震壁取付構造及び該制震壁取付構造を具備した建物

【課題】壁空間を有効に利用し得て、しかも、大きな制震機能を得ることができ、下側水平部材及び上側水平部材のうちの少なく一方と一対の柱との連結部での極端な応力集中を避けることができて、連結部での早期の損壊を低減できる制震壁取付構造及び該制震壁取付構造を具備した建物を提供すること。
【解決手段】制震壁取付構造1は、一対の鉛直柱11及び12と、下梁13と、一対の鉛直柱11及び12及び下梁13と共に壁空間14を形成している上梁15と、壁空間14に配されている下端部16及び下端部16に対して壁空間14の面内で水平方向Hに可動な上端部17を有し、下端部16に対する壁空間14の面内での上端部17の移動に対する減衰力を発生する制震壁18と、制震壁18の下端部16を下梁13に、制震壁18の上端部17を上梁15に連結する連結手段19とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱間の壁空間に制震壁を配設した制震壁取付構造及び該制震壁取付構造を具備した建物に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2000−73612号公報
【特許文献2】特開2001−295496号公報
【特許文献3】特開平10−259676号公報
【0003】
水平方向で隣接された一対の柱及び鉛直方向で隣接された上下梁で囲まれる壁空間に制震壁を配設し、この制震壁により建物の制震を行わせる技術は、特許文献1及び2等に記載されている。
【0004】
特許文献1は、箱体を下階大梁に、箱体に挿入される中板を上階大梁に夫々連結した制震壁を開示し、特許文献2は、同じく、粘性体容器を下部鉄骨フレームに、粘性体容器に挿入される内部鋼板を上部鉄骨フレームに夫々連結した制震壁を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に開示のいずれの制震壁でも、箱体又は粘性体容器(以下、容器という)は、その水平方向幅と略同幅をもって下階大梁又は下部鉄骨フレーム(以下、下側水平部材という)に、中板又は内部鋼板(以下、抵抗板という)は、その水平方向幅と略同幅をもって上階大梁又は上部鉄骨フレーム(以下、上側水平部材という)に夫々連結されている。
【0006】
ところで、水平方向で隣接された一対の柱と鉛直方向で隣接された下側水平部材及び上側水平部材とで囲まれる壁空間を有効に利用して大きな制震機能を得るために、壁空間一杯に容器及び抵抗板を設置し、これらを下側水平部材及び上側水平部材に夫々連結すると、一対の柱に連結された下側水平部材及び上側水平部材には、塑性領域が形成されなくなる結果、制震作動において下側水平部材及び上側水平部材と一対の柱との連結部に極端な応力集中が生じて、下側水平部材及び上側水平部材と一対の柱との連結部に早期の損壊が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、壁空間を有効に利用し得て、しかも、大きな制震機能を得ることができ、下側水平部材及び上側水平部材のうちの少なく一方と一対の柱との連結部での極端な応力集中を避けることができて、連結部での早期の損壊を低減できる制震壁取付構造及び該制震壁取付構造を具備した建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の制震壁取付構造は、水平方向に互いに離れて且つ隣接されて配されていると共に鉛直方向に伸びた一対の鉛直柱と、一対の鉛直柱が連結されていると共に水平方向に伸びた下側水平部材と、この下側水平部材よりも上方に離れて配されていると共に一対の鉛直柱及び下側水平部材と共に壁空間を形成しており、且つ、一対の鉛直柱が連結されていると共に水平方向に伸びた上側水平部材と、壁空間に配されていると共に水平方向に伸びた下端部及びこの下端部に対して壁空間の面内で水平方向に可動であって水平方向に伸びた上端部を有し、且つ、下端部に対する壁空間の面内での水平方向の上端部の移動で当該移動に対する減衰力を発生する制震壁と、制震壁の下端部を下側水平部材に連結すると共に制震壁の上端部を上側水平部材に連結する連結手段とを具備しており、制震壁は、水平方向における鉛直方向に伸びた両端部の夫々で当該両端部の夫々に対面する鉛直柱に水平方向の小隙間をもって近接しており、連結手段は、前記小隙間の水平方向の幅よりも大きな水平方向の幅を有した大隙間をもって一対の鉛直柱の夫々に対して対面している水平方向における両端部を有した取付体を有しており、取付体は、その両端部間の水平方向に伸びるその縁部で下側水平部材及び上側水平部材の一方に固着されており、制震壁は、取付体を介して下側水平部材及び上側水平部材の一方に連結されている。
【0009】
本発明の制震壁取付構造によれば、連結手段は、小隙間の水平方向の幅よりも大きな水平方向の幅を有した大隙間をもって一対の鉛直柱の夫々に対して対面している水平方向における両端部を有した取付体を具備しており、取付体は、その両端部間の水平方向に伸びるその縁部で下側水平部材及び上側水平部材の一方に固着されているために、両柱と下側水平部材及び上側水平部材の一方に固着された取付体の縁部の水平方向の端部との間において、下側水平部材及び上側水平部材の一方に小隙間の水平方向の幅よりも大きな水平方向の長さをもった塑性領域を形成できる結果、地震、風等による下側水平部材及び上側水平部材の一方と両柱との連結部での極端な応力集中を避けることができて、連結部での早期の損壊を低減できる上に、水平方向において壁空間を一杯に占める制震壁を用いることができるために、壁空間を有効に利用し得て、しかも、大きな制震機能を得ることができる。
【0010】
本発明の制震壁取付構造において、下側水平部材は下梁からなり、連結手段の取付体は、下方の縁部で下梁に固着されており、制震壁は、その下端部で取付体を介して下梁に連結されていてもよく、この場合、連結手段は、前記小隙間の水平方向の幅よりも大きな水平方向の幅を有した大隙間をもって一対の鉛直柱の夫々に対して対面している水平方向における両端部を有した他の取付体を有しており、他の取付体は、その両端部間の水平方向に伸びるその縁部で下側水平部材及び上側水平部材の他方に固着されており、制震壁は、他の取付体を介して下側水平部材及び上側水平部材の他方に連結されており、上側水平部材は上梁からなり、連結手段の他の取付体は、上方の縁部で上梁に固着されており、制震壁は、その上端部で他の取付体を介して上梁に連結されていてもよい。
【0011】
一方、上側水平部材は上梁からなり、連結手段の取付体は、上方の縁部で上梁に固着されており、制震壁は、その上端部で取付体を介して上梁に連結されていてもよく、この場合は、連結手段は、前記小隙間の水平方向の幅よりも大きな水平方向の幅を有した大隙間をもって一対の鉛直柱の夫々に対して対面している水平方向における両端部を有した他の取付体を有しており、他の取付体は、その両端部間の水平方向に伸びるその縁部で下側水平部材及び上側水平部材の他方に固着されており、制震壁は、他の取付体を介して下側水平部材及び上側水平部材の他方に連結されており、下側水平部材は下梁からなり、連結手段の他の取付体は、下方の縁部で下梁に固着されており、制震壁は、その下端部で他の取付体を介して下梁に連結されていてもよい。
【0012】
本発明の制震壁取付構造において、制震壁は、容器と、容器の内部に収容された粘性体と、粘性体に浸漬されていると共に容器の内部に挿入された抵抗板とを有しており、制震壁の下端部は、容器の底板であり、制震壁の上端部は、抵抗板の上端部であってもよいが、本発明は、斯かる粘性体の粘性剪断抵抗を用いた制震壁に代えて又はこれと共に、一方の摩擦板と、この一方の摩擦板に摩擦接触する他方の摩擦板とを有した摩擦板の摩擦抵抗を用いた制震壁であってもよい。
【0013】
大隙間は、好ましい例では、小隙間の水平方向の幅の1.5倍より大きい水平方向の幅をもっており、他の好ましい例では、一対の鉛直柱の水平方向の内法間隔の1/10以上であって1/3を超えない幅、他のより好ましい例では、一対の鉛直柱の水平方向の内法間隔の1/5以上であって1/4を超えない幅をもっている。
【0014】
本発明において、制震壁取付構造を建物の下階とこの下階に上下方向において隣接する上階とに連続して設ける場合には、下階の上側水平部材は、上階の下側水平部材となってもよく、また、基礎のすぐ上の建物の階に制震壁取付構造を設ける場合には、下側水平部材は、基礎部材からなっていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、壁空間を有効に利用し得て、しかも、大きな制震機能を得ることができ、下側水平部材及び上側水平部材のうちの少なく一方と一対の柱との連結部での極端な応力集中を避けることができて、連結部での早期の損壊を低減できる制震壁取付構造及び該制震壁取付構造を具備した建物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0017】
本例の制震壁取付構造1を具備した建物2は、事務所ビル、高層ビル等であって、各階に又は必要に応じて特定の階に当該制震壁取付構造1を具備している。
【0018】
制震壁取付構造1は、水平方向Hに互いに離れて且つ隣接されて配されていると共に鉛直方向Vに伸びた一対の鉛直柱11及び12と、一対の鉛直柱11及び12が連結されていると共に水平方向Hに伸びた下側水平部材としての下梁13と、下梁13よりも上方に離れて隣接して配されていると共に一対の鉛直柱11及び12及び下梁13と共に壁空間14を形成しており、且つ、一対の鉛直柱11及び12が連結されていると共に水平方向Hに伸びた上側水平部材としての上梁15と、壁空間14に配されていると共に水平方向Hに伸びた下端部16及び下端部16に対して壁空間14の面内で水平方向Hに可動であって水平方向Hに伸びた上端部17を有し、且つ、下端部16に対する壁空間14の面内での水平方向Hの上端部17の移動で当該移動に対する減衰力を発生する制震壁18と、制震壁18の下端部16を下梁13に連結すると共に制震壁18の上端部17を上梁15に連結する連結手段19とを具備している。
【0019】
鉛直柱11及び12の夫々は、H形鋼又はI形鋼からなっており、その一方のフランジ21及び22が互いに対面するように基礎上に立設されている。
【0020】
下梁13は、鉛直柱11及び12と同様にH形鋼又はI形鋼からなってそのフランジ25及び26並びにウェブ27に溶接された補強リブ28により補強されており、水平方向Hの一方の端部29で鉛直柱11のフランジ21に、水平方向Hの他方の端部30で鉛直柱12のフランジ22に夫々溶接等により固着されて鉛直柱11及び12に連結されている。
【0021】
上梁15は、下梁13と同様にH形鋼又はI形鋼からなってそのフランジ35及び36並びにウェブ37に溶接された補強リブ38により補強されており、水平方向Hの一方の端部39で鉛直柱11のフランジ21に、水平方向Hの他方の端部40で鉛直柱12のフランジ22に夫々溶接等により固着されて鉛直柱11及び12に連結されている。
【0022】
制震壁18が配される壁空間14は、鉛直柱11のフランジ21と鉛直柱12のフランジ22と下梁13のフランジ26と上梁15のフランジ35とで囲まれている。
【0023】
制震壁18は、上端45が外部に開放された容器46と、容器46の内部47に収容された粘性体48と、粘性体48に浸漬されていると共に容器46の内部47に挿入された抵抗板49と、複数の補強部材50とを有している。
【0024】
容器46は、水平方向Hに対して直交する方向において互いに対面した一対の広幅側板55及び56と、水平方向Hにおいて互いに対面していると共に一対の広幅側板55及び56に溶接された一対の狭幅側板57及び58と、広幅側板55及び56並びに狭幅側板57及び58に溶接されていると共に制震壁18の下端部16となる底板59とを有しており、広幅側板55及び56と狭幅側板57及び58と底板59とに囲まれて粘性体48を収容する内部47が形成されており、広幅側板55及び56を補強する補強部材50は、水平方向Hに伸びて広幅側板55及び56の夫々に溶接されて広幅側板55及び56の夫々に固着されている。
【0025】
抵抗板49は、広幅側板55及び56、狭幅側板57及び58並びに底板59の内面に隙間をもって粘性体48に浸漬されて容器46の内部47に挿入された抵抗板本体65と、容器46の内部47から上端45を介して容器46の外部に配された抵抗板本体65の上縁66に溶接等により固着されていると共に容器46外に配されて制震壁18の上端部17となる取付フランジ部材67とを有している。
【0026】
制震壁18は、水平方向Hにおける鉛直方向Vに伸びた両端部である狭幅側板57及び58の夫々で当該狭幅側板57及び58の夫々に対面する鉛直柱11及び12のフランジ21及び22に水平方向Hの小隙間68をもって近接しており、水平方向Hの狭幅側板57から狭幅側板58までの距離は、制震壁18全体における水平方向Hの最大幅となっている。
【0027】
連結手段19は、制震壁18の下端部16である容器46の底板59を下梁13に連結する下側連結機構71と、制震壁18の上端部17である抵抗板49の取付フランジ部材67を上梁15に連結する上側連結機構72とを具備している。
【0028】
下側連結機構71は、小隙間68の水平方向Hの幅よりも大きな水平方向Hの幅Dを有した大隙間77をもって一対の鉛直柱11及び12のフランジ21及び22の夫々に対して対面している水平方向Hにおける鉛直方向Vに伸びた両端部75及び76を有していると共に両端部75及び76間の水平方向Hに伸びる下方の縁部78で下梁13のフランジ26に溶接等により固着された下側の取付体79と、取付体79に対して鉛直方向Vに隙間をもって配されていると共に制震壁18の下端部16である底板59に溶接等により固着されたガセットプレート80と、一方ではガセットプレート80に、他方では取付体79に夫々複数のボルト81により固定されていると共にガセットプレート80及び取付体79に重ね合わされてガセットプレート80及び取付体79を挟んだ一対のスプライトプレート82と、ガセットプレート80の水平方向Hの両端部及び底板59に溶接等により固着されたフランジ83及び84と、フランジ83及び84の夫々及び底板59に溶接等により固着された補強リブ85及び86とを具備している。
【0029】
取付体79は、縁部78で下梁13のフランジ26に溶接等により固着されていると共に一対のスプライトプレート82に挟まれて当該一対のスプライトプレート82に複数のボルト81により固定されている板体91と、板体91の水平方向Hにおける鉛直方向Vに伸びた両端に溶接等により固着されていると共に取付体79の両端部75及び76となるフランジ92及び93とを具備している。
【0030】
フランジ92及び93によって規定される取付体79の両端部75及び76は、鉛直方向Vに伸びている代わりに、斜めに伸びていてもよく、取付体79は、下方の縁部78で小隙間68の水平方向Hの幅よりも大きな水平方向Hの幅Dを有した大隙間77もって一対の鉛直柱11及び12のフランジ21及び22の夫々に対して対面していればよい。
【0031】
上側連結機構72は、小隙間68の水平方向Hの幅よりも大きな水平方向Hの幅Dを有した大隙間97をもって一対の鉛直柱11及び12のフランジ21及び22の夫々に対して対面している水平方向Hにおける鉛直方向Vに伸びた両端部95及び96を有していると共に両端部95及び96間の水平方向Hに伸びる上方の縁部98で上梁15のフランジ35に溶接等により固着された下側の取付体99と、取付体99に対して鉛直方向Vに隙間をもって配されていると共に制震壁18の上端部17である取付フランジ部材67に溶接等により固着されたガセットプレート100と、一方ではガセットプレート100に、他方では取付体99に夫々複数のボルト101により固定されていると共にガセットプレート100及び取付体99に重ね合わされてガセットプレート100及び取付体99を挟んだ一対のスプライトプレート102と、ガセットプレート100の水平方向Hの両端部及び取付フランジ部材67に溶接等により固着されたフランジ103及び104と、フランジ103及び104の夫々及び取付フランジ部材67に溶接等により固着された補強リブ105及び106とを具備している。
【0032】
取付体99は、縁部98で上梁15のフランジ35に溶接等により固着されていると共に一対のスプライトプレート102に挟まれて当該一対のスプライトプレート102に複数のボルト101により固定されている板体111と、板体111の水平方向Hにおける鉛直方向Vに伸びた両端に溶接等により固着されていると共に取付体99の両端部95及び96となるフランジ112及び113とを具備している。
【0033】
フランジ112及び113によって規定される取付体99の両端部95及び96は、鉛直方向Vに伸びている代わりに、斜めに伸びていてもよく、取付体99は、上方の縁部98で小隙間68の水平方向Hの幅よりも大きな水平方向Hの幅Dを有した大隙間97をもって一対の鉛直柱11及び12のフランジ21及び22の夫々に対して対面していればよい。
【0034】
以上のようにして制震壁18は、その下端部16で取付体79、ガセットプレート80及びスプライトプレート82を介して下梁13に、その上端部17で取付体99、ガセットプレート100及びスプライトプレート102を介して上梁15に夫々連結されている。
【0035】
大隙間77及び97は、小隙間68の水平方向Hの幅dの1.5倍より大きい水平方向Hの幅Dをもっていても、また、好ましくは、一対の鉛直柱11及び12の水平方向Hの内法間隔の1/10以上であって1/3を超えない幅をもって、より好ましくは、1/5以上であって1/4を超えない幅をもっていてもよく、更には、大隙間77及び97は、互いに同じ水平方向Hの幅Dをもっていても又は互いに異なる水平方向Hの幅Dをもっていてもよい。一例として、内法間隔が2550mmの鉛直柱11及び12間に幅2000mm及び高さ2610mmの制震壁18を配置する場合、大隙間77及び97は600mmとされ、小隙間68は275mmとされ、他の例として、内法間隔が2250mmの鉛直柱11及び12間に同じく幅2000mm及び高さ2610mmの制震壁18を配置する場合、大隙間77及び97は450mmとされ、小隙間68は125mmとされる。
【0036】
以上の制震壁取付構造1を具備した建物2では、地震、風等により下梁13に対する上梁15の水平方向Hの振動において、容器46に対して抵抗板49が水平方向Hに振動され、抵抗板49の振動により粘性体48が粘性剪断されて、この粘性体48の粘性剪断による剪断抵抗で、容器46に対する抵抗板49の水平方向Hの振動、延いては下梁13に対する上梁15の水平方向Hの振動が減衰され、而して、建物2の地震、風等による水平方向Hの振動が早期に減衰されて、地震による建物2の損壊及び風等による建物2の不快な揺れを回避できる。
【0037】
ところで、制震壁取付構造1では、連結手段19は、小隙間68の水平方向Hの幅dよりも大きな水平方向Hの幅Dを有した大隙間77及び97をもって一対の鉛直柱11及び12の夫々に対して対面している水平方向Hにおける両端部75及び76並びに95及び96を有した取付体79及び99を具備しており、取付体79及び99は、両端部75及び76並びに95及び96間の水平方向Hに伸びるその縁部78及び98で下梁13及び上梁15の夫々に固着されているために、鉛直柱11及び12と下梁13及び上梁15に固着された取付体79及び99の縁部78及び98の水平方向Hの両端部75及び76並びに95及び96との間において、下梁13及び上梁15の夫々に小隙間68の水平方向Hの幅よりも大きな水平方向の長さ(幅Dに相当)をもった塑性領域を形成できる結果、地震、風等による下梁13に対する上梁15の水平方向Hの振動において下梁13及び上梁15の夫々と鉛直柱11及び12との溶接部などの連結部での極端な応力集中を避けることができて、連結部での早期の損壊を低減できる上に、水平方向Hにおいて壁空間14を一杯に占める制震壁18を用いることができるために、壁空間14を有効に利用し得て、しかも、大きな制震機能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態の好ましい例の一部断面説明図である。
【図2】図1に示すII−II線矢視断面説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 制震壁取付構造
2 建物
11、12 鉛直柱
13 下梁
14 壁空間
15 上梁
16 下端部
17 上端部
18 制震壁
19 連結手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に互いに離れて且つ隣接されて配されていると共に鉛直方向に伸びた一対の鉛直柱と、一対の鉛直柱が連結されていると共に水平方向に伸びた下側水平部材と、この下側水平部材よりも上方に離れて配されていると共に一対の鉛直柱及び下側水平部材と共に壁空間を形成しており、且つ、一対の鉛直柱が連結されていると共に水平方向に伸びた上側水平部材と、壁空間に配されていると共に水平方向に伸びた下端部及びこの下端部に対して壁空間の面内で水平方向に可動であって水平方向に伸びた上端部を有し、且つ、下端部に対する壁空間の面内での水平方向の上端部の移動で当該移動に対する減衰力を発生する制震壁と、制震壁の下端部を下側水平部材に連結すると共に制震壁の上端部を上側水平部材に連結する連結手段とを具備しており、制震壁は、水平方向における鉛直方向に伸びた両端部の夫々で当該両端部の夫々に対面する鉛直柱に水平方向の小隙間をもって近接しており、連結手段は、前記小隙間の水平方向の幅よりも大きな水平方向の幅を有した大隙間をもって一対の鉛直柱の夫々に対して対面している水平方向における両端部を有した取付体を具備しており、取付体は、その両端部間の水平方向に伸びるその縁部で下側水平部材及び上側水平部材の一方に固着されており、制震壁は、取付体を介して下側水平部材及び上側水平部材の一方に連結されている制震壁取付構造。
【請求項2】
下側水平部材は下梁からなり、連結手段の取付体は、下方の縁部で下梁に固着されており、制震壁は、その下端部で取付体を介して下梁に連結されている請求項1に記載の制震壁取付構造。
【請求項3】
連結手段は、前記小隙間の水平方向の幅よりも大きな水平方向の幅を有した大隙間をもって一対の鉛直柱の夫々に対して対面している水平方向における両端部を有した他の取付体を有しており、他の取付体は、その両端部間の水平方向に伸びるその縁部で下側水平部材及び上側水平部材の他方に固着されており、制震壁は、他の取付体を介して下側水平部材及び上側水平部材の他方に連結されている請求項1又は2に記載の制震壁取付構造。
【請求項4】
上側水平部材は上梁からなり、連結手段の他の取付体は、上方の縁部で上梁に固着されており、制震壁は、その上端部で他の取付体を介して上梁に連結されている請求項3に記載の制震壁取付構造。
【請求項5】
上側水平部材は上梁からなり、連結手段の取付体は、上方の縁部で上梁に固着されており、制震壁は、その上端部で取付体を介して上梁に連結されている請求項1に記載の制震壁取付構造。
【請求項6】
連結手段は、前記小隙間の水平方向の幅よりも大きな水平方向の幅を有した大隙間をもって一対の鉛直柱の夫々に対して対面している水平方向における両端部を有した他の取付体を有しており、他の取付体は、その両端部間の水平方向に伸びるその縁部で下側水平部材及び上側水平部材の他方に固着されており、制震壁は、他の取付体を介して下側水平部材及び上側水平部材の他方に連結されている請求項1又は5に記載の制震壁取付構造。
【請求項7】
下側水平部材は下梁からなり、連結手段の他の取付体は、下方の縁部で下梁に固着されており、制震壁は、その下端部で他の取付体を介して下梁に連結されている請求項6に記載の制震壁取付構造。
【請求項8】
制震壁は、容器と、容器の内部に収容された粘性体と、粘性体に浸漬されていると共に容器の内部に挿入された抵抗板とを有しており、制震壁の下端部は、容器の底板であり、制震壁の上端部は、抵抗板の上端部である請求項1から7のいずれか一項に記載の制震壁取付構造。
【請求項9】
大隙間は、小隙間の水平方向の幅の1.5倍より大きい水平方向の幅をもっている請求項1から8のいずれか一項に記載の制震壁取付構造。
【請求項10】
大隙間は、一対の鉛直柱の水平方向の内法間隔の1/10以上であって1/3を超えない幅をもっている請求項1から9のいずれか一項に記載の制震壁取付構造。
【請求項11】
大隙間は、一対の鉛直柱の水平方向の内法間隔の1/5以上であって1/4を超えない幅をもっている請求項1から10のいずれか一項に記載の制震壁取付構造。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の制震壁取付構造を具備した建物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−7268(P2010−7268A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165152(P2008−165152)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】