説明

前立腺特異的遺伝子、ならびにその前立腺癌治療および診断のための標的としての使用

ヒト前立腺腫瘍組織で上方制御される遺伝子および対応するタンパク質を同定する。これらの遺伝子および対応する抗原は、前立腺癌の治療、診断または予防の好適な標的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺癌細胞表面に発現される遺伝子において選択的にスプライシングされた結果物に対応するDNA配列の同定に関する。これらの遺伝子またはそれに対応するタンパク質を、癌の治療、予防および/または診断の目標とする。それらの遺伝子は癌、特に前立腺癌において特異に調節され、および/またはスプライシングされる。
【背景技術】
【0002】
ヒトの疾病状態の遺伝子検出は急速に発展している分野である(Taparowsky et al., 1982; Slamon et al., 1989; Sidransky et al., 1992; Miki et al., 1994; Dong et al., 1995; Morahan et al., 1996; Lifton, 1996; Barinaga, 1996)。しかし、この手法にはいくつかの問題がある。既知の多数の遺伝子損傷は単に、個人の特異的な疾病状態発症の素因となるだけである。遺伝子損傷を持つ個人が疾病状態を発症しないかもしれないし、その一方で他の個人が特定の遺伝子損傷を持たなくても疾病状態を発症するかもしれない。ヒトの癌においては、遺伝子欠陥が既知の多数の腫瘍抑制遺伝子および癌原遺伝子に起こっている可能性がある。
【0003】
癌の遺伝子検出は長い歴史を有する。癌の素因となることが示された最初の遺伝子損傷の幾つかは、ras癌遺伝子中の形質転換性点突然変異であった(Taparowsky et al., 1982)。形質転換性ras点突然変異は良性および悪性の結腸直腸腫瘍を有する個人の糞便中に検出することができる(Sidransky et al., 1992)。しかし、そのような腫瘍のわずか50%がras突然変異を含んでいたにすぎない(Sidransky et al., 1992)。同様の結果が、乳癌および前立腺癌中のHER−2/neuの増幅(Slamon et al., 1989)、膀胱癌におけるp53の欠失と突然変異(Sidransky et al., 1991)、結腸直腸癌におけるDCCの欠失(Fearon et al., 1990)、ならびに乳癌および前立腺癌におけるBRCA1の突然変異(Miki et al., 1994)についても得られている。
【0004】
これらの遺伝子損傷のいずれも大多数の癌を有する個人を予測することができず、大部分は疑わしい腫瘍の直接採取を必要とし、スクリーニングを困難にしている。さらに、上述のマーカーの何れも癌の転移性型と非転移性型とを区別することができない。癌患者に効果的に対応するには、既に転移した腫瘍または転移する可能性のある腫瘍を有する患者個人の識別が決定的である。転移癌によって米国では毎年56万人の人々が死亡する(ACSホームページ)ので、転移性前立腺癌のためのマーカーの同定ができるとしたら、重要な進歩となる。
【0005】
前立腺癌については、癌の検出と診断において特殊な問題が生ずる。前立腺癌は米国において最も多く診断される男性の癌である(Veltri et al., 1996)。1998年に約189,500人の男性が前立腺癌と診断され、約40,000人がこの悪性疾病で死亡した(Landis et al., 1998)。比較的少数の前立腺癌しか患者の生存中に臨床的重要性を持つまでには進行しないが、元来進行性の癌は検出時までに転移している可能性が高い。転移性前立腺癌を有する個人の生存率は極めて低い。これらの両極端の間に、将来転移するであろうがまだ転移していない前立腺癌患者が有り、その患者には外科的前立腺除去が治療効果を有する。患者がどの群に属するかを決定することは、最善の治療の決定と患者の生存に極めて重要である。
【0006】
1984年におけるFDAの血清前立腺特異性抗原(PSA)テストの承認が、前立腺疾患を処置する方法を変えた(Allhoff et al., 1989; Cooner et al., 1990; Jacobson et al., 1995; Orozco et al., 1998)。PSAは前立腺癌患者の治療応答を検出し、モニターする血清バイオマーカーとして広く用いられている(Badalament et al., 1996; O'Dowd et al., 1997)。PSA分析の幾つかの改良(Partin and Oesterling,1994; Babian et al., 1996; Zlotta et al, 1997)の結果、より初期の診断および治療の改善がもたらされた。
【0007】
PSAは1988年以来前立腺癌の臨床マーカーとして広く用いられているが(Partin and Oesterling,1994)、PSAを単独でまたは直腸内触診(DRE)と組み合わせて利用したスクリーニングのプログラムは、前立腺癌を有する男性の生存率の改善に成功していない(Partin and Oesterling, 1994)。PSAは前立腺組織に特異的であるが、悪性はもちろん、正常または良性の前立腺上皮によっても生成され、前立腺癌の検出に対して高い擬陽性率をもたらす結果になる(Partin and Oesterling,1994)。
【0008】
PSA血清レベルは、血清レベルが比較的高い場合は前立腺癌の効果的な指標となるが、少しだけ上昇した場合例えばレベルが2〜10 ng/mlの場合は、よりあいまいな指標である。このような大きくない上昇においては、血清PSAはBPH(良性前立腺肥大)、前立腺炎、または物理的外傷などの非癌性疾病状態から生じた可能性がある(McCormack et al, 1995)。血清PSAのより低い2.0 ng/mlの癌検出カットオフ濃度の適用によって、特に触診不可能な早期病期腫瘍(病期T1c)の若年の男性における前立腺癌の診断が増加したが(Soh et al., 1997; Carter and Coffey,1997; Harris et al., 1997; Orozco et al., 1998)、低PSA血清レベルでのPSA測定の前立腺癌検出に対する特異性の問題は残存している。
【0009】
幾人かの研究者は、血清PSA濃度に加えて様々な他のバイオマーカーを検査することにより前立腺癌の血清学的検出の特異性を改善するために努力した(Ralph and Veltri, 1997)。これらの他のバイオマーカー中最も盛んに研究されたものの1つが、患者血液中のフリーPSA対全PSA比(f/tPSA)である。血清中の大部分のPSAはα1-抗キモトリプシン(ACT)またはα2-マクログロブリンなどの他のタンパク質に結合した分子形である(Christensson et al,1993; Stenman et al., 1991; Lilja et al., 1991)。フリーPSAは他のタンパク質に結合していない。フリー対全PSA比(f/tPSA)は、BPH患者の方が器官に限定された前立腺癌患者に比較して通常有意に高い(Marley et al., 1996; Oesterling et al., 1995; Pettersson et al., 1995)。f/tPSA定量に対して適当なカットオフを決めると、f/tPSA定量は、PSAレベルが少しだけ上昇した場合に、BPHの患者を前立腺癌の患者から識別するために役立つことができる(Marley et al., 1996; Partin and Oesterling,1996)。残念ながらf/tPSAは前立腺癌検出を改善することはできるが、f/tPSA比の情報は前立腺癌の血清学的検出の感度と特異度を望みのレベルに改善するには不十分である。
【0010】
前立腺癌検出のために用いられてきた他のマーカーには、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)および前立腺分泌タンパク質(PSP)が含まれる。PAPはホルモンの制御の下に、前立腺細胞によって分泌される(Brawn et al., 1996)。PAPはPSAに比較して低い特異度と感度を有する。その結果、現在は極めてまれにしか使われていないが、PAPは初期治療に失敗した転移患者をモニターするために未だにある程度適用される。一般に、PSPの方がPAPよりも敏感なバイオマーカーであるが、PSAほどには敏感でない(Huang et al., 1993)。PSAと同様に、PSPのレベルは、前立腺癌の患者はもちろんであるが、BPHを有する患者においてもしばしば上昇する。
【0011】
前立腺疾患に関連した別の血清マーカーには前立腺特異的膜抗原(PSMA)がある(Horoszewicz et al., 1987 ; Carter and Coffey,1996; Murphy et al., 1996)。PSMAはII型細胞膜タンパク質であって、葉酸加水分解酵素(FAH)であると同定された(Carter and Coffey, 1996)。PSMAに対する抗体は、正常前立腺組織および前立腺癌組織の両方と反応する(Horoszewicz et al., 1987)。Murphy ら(1995)は進行した前立腺癌の血清PSMAを検出するためにELISAを用いた。血清検査としては、PSMAレベルは前立腺癌の比較的劣る標識である。しかし、PSMAはある状況では利用できる。PSMAは転移性前立腺癌の毛細血管床において発現し(Silver et al., 1997)、転移性癌患者の血液中により多く存在すると報告されている(Murphy et al., 1996)。PSMAのメッセンジャーRNA(mRNA)はLNCaP前立腺癌細胞系統において、5-α-ジヒドロキシテストステロン(DHT)へ曝露後に8〜10倍下方制御される(Israeli et al., 1994)。
【0012】
前立腺癌に対する2つの比較的新しい有力なバイオマーカーがヒト・カリクレイン2(HK2)(Piironen et al., 1996)および前立腺特異的トランスグルタミナーゼ(pTGase)(Dubbink et al., 1996)である。HK2は前立腺から分泌されるカリクレインファミリーのメンバーである(Piironen et al., 1996)。前立腺特異的トランスグルタミナーゼは、タンパク質の翻訳後架橋を触媒する、前立腺細胞中に発現されるカルシウム依存性酵素である(Dubbink et al., 1996)。理論的には、HK2またはpTGaseの血清濃度は前立腺癌の検出または診断に有用でありうるが、しかしこれらのマーカーの有用性はいまだに評価中である。
【0013】
インターロイキン8(IL−8)もまた前立腺癌のマーカーとして報告されている(Veltri et al., 1999)。血清IL−8濃度は前立腺癌の病期の進行に相関があり、またBPHを悪性前立腺腫瘍から識別することができると報告された(同上)。このマーカーの前立腺癌検出と診断に対する広範囲の適用性については未だ研究中である。
【0014】
これらの前立腺癌に対するタンパク質マーカーに加えて、いくつかの遺伝子変化が前立腺癌に関連していると報告されている。それには、対立遺伝子喪失(Bova, et al., 1993; Macoska et al., 1994; Carter et al., 1990);DNA過剰メチル化(Isaacs et al., 1994); 網膜芽細胞腫(Rb)、p53およびKAI1遺伝子の点突然変異または欠失(Bookstein et al., 1990a; Bookstein et al., 1990b; Isaacs et al., 1991; Dong et al., 1995);ならびに蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)によって検出される染色体の異数性および体細胞異数性(Macoska et al..1994; Visakorpi et al., 1994; Takahashi et al., 1994; Alcaraz et al., 1994)が含まれる。これらのどれも、無症候性前立腺癌に対する一般的スクリーニング手法として有用であるための十分な感度および特異度を発揮するものであるとは報告されていない。
【0015】
現在の臨床診療では、血清PSA測定および直腸内触診(DRE)が、どの患者が前立腺生検を受けるべきかを明らかにするために用いられている(Lithrup et al., 1994; Orozco et al., 1998)。生検組織の組織学的検査が前立腺癌の診断のために用いられる。1998年に前立腺癌と診断された189,500の症例(Landis, 1998)、および既知の癌検出率が約35%であること(Parker et al., 1996)に基づいて、1998年に米国で50万を超える前立腺生檢が行われたと推定される(Orozco et al., 1998; Veltri et al., 1998)。明らかに、小さい初期の前立腺腫瘍を検出するために十分な感度を持ち、また癌性でないかまたは臨床的に重要でない状態の患者の大部分を除くために十分な特異度を持つ血清学的テストがあれば、それから大きな利益が導かれよう。
【0016】
前立腺癌の進行とリンクした遺伝子の同定、および疾患の進行をモニターする診断方法の発展に関しては、従来技術に欠陥が残っている。同様に、前立腺癌において特異に発現される遺伝子の同定は、迅速で廉価な癌診断方法の発展において相当重要であろう。いくつかの前立腺特異的遺伝子がクローニングされている(PSA、PSMA、HK2、pTGase、その他)が、これらは通常前立腺癌において上方制御されない。非悪性前立腺組織に比較して前立腺癌で特異に発現される新規の前立腺特異的遺伝子が同定されれば、前立腺癌の診断、予後および治療にとって際立った予想外の進歩となろう。
【0017】
表面タンパク質を標的とする癌処置のための治療用抗体の使用が知られている。その例としては、B細胞リンパ腫上のCD20を標的とするRITUXAN(登録商標)、慢性リンパ球性白血病によって発現される表面抗原CD52を標的とするCampath(登録商標)、乳癌その他の癌のerbB2を標的とするHerceptin(登録商標)、白血病細胞上に発現されるCD33表面抗原を標的とするMybtaraが挙げられる。しかしながら、前立腺癌治療用のモノクローナル抗体が治療用の使用に認められたことは現在までに無い。
【0018】
発明の開示
本発明は、前立腺癌の細胞または組織に特有であって患者のそのような病状の処置または診断の標的となる、新規の核酸およびアミノ酸配列の同定に関する。
【0019】
本発明はより具体的には、新規の発現配列をコードする159個の特異的で単離された核酸分子を開示する。これらの内の122個は、特異なスプライシングを受けて配列番号1〜65、74、80、85、102〜134、136、141、146、150〜165、167、168に対応する、発現配列タグである。さらに、42個の既知の遺伝子の特異的なアイソフォームが同定され、それらは、配列番号67〜72、75〜77、81〜83、86〜90、92、93、95〜98、100、101、137〜139、143、144、147〜149、169〜173、175、177、179、および181に対応している。これらの新規の配列は、正常な前立腺と前立腺癌の間で異なる発現がされることが見出された。発現配列タグは、前立腺癌中で選択的にスプライシングされた新規のエクソンを表し、それにより異なるアイソフォ−ムを直接的に識別する。これらの配列および分子は、前立腺癌の検出、診断、そして処置のための方法と材料を開発するための標的および価値ある情報である。
【0020】
前立腺癌の処置と診断のための方法と材料を提供することが本発明の1つの目的である。
【0021】
前立腺癌の処置と診断のための有力な遺伝子標的であって、前立腺癌組織によって発現される新規のエクソン(新規のスプライシング変異体)を同定することが、本発明のさらに具体的な目的である。
【0022】
特異的に前立腺癌によって発現される新規の遺伝子標的に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与または使用を含む、前立腺癌の処置のための新規の治療法を開発することが、本発明の具体的な目的である。
【0023】
前立腺癌細胞中で特異的に上方制御されるエクソンおよびそれらのエクソンによりコードされる対応するタンパク質ドメインを同定することが、本発明のもう一つの具体的な目的である。
【0024】
ある前立腺癌によって、エクソンによりコードされ、タンパク質ドメインとして発現される抗原に結合するリガンド(これにはモノクローナル抗体が含まれるがそれには限られない)を生成することが、本発明の別の具体的な目的である。
【0025】
ある前立腺癌において発現される抗原を単独でもしくはアジュバントと組み合わせて投与または使用し、そのような抗原を発現している癌細胞に対して抗原特異的細胞毒性を有するT−細胞リンパ球応答を引き起こすことを含む、前立腺癌処置のための新しい治療法を提供することが、本発明の別の具体的な目的である。
【0026】
ある前立腺癌によって発現される新規の抗原に特異的に結合するリガンド、特にモノクローナル抗体を投与または使用することを含む、前立腺癌処置のための新しい治療法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0027】
上に述べたリガンドまたは抗原を、薬学的に許容できる担体または賦形剤および/またはアジュバントと組み合わせて含む医薬品組成物を提供することが、本発明の別の目的である。
【0028】
ある前立腺癌により特異的に発現される抗原に特異的に結合するリガンド、例えばモノクローナル抗体などを用いた前立腺癌の診断のための新しい方法を、被験者が前立腺癌に罹患しいるか、またはその発症の危険性が増加しつつあるかを検出するために提供することが、本発明の別の目的である。
【0029】
ある前立腺癌により発現される新しい遺伝子標的とハイブリダイズするラベルされたDNAを用いて、前立腺癌に罹患しているかまたはその発症の危険性が増加している人達を検知する新規な方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0030】
前立腺癌に罹患しているか、またはその発症の危険性がある人達を検出するための診断テストキットであって、例えば前立腺癌細胞により発現される抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体などのリガンド、および例えば、標識用酵素、放射性ラベル、蛍光団、または常磁性粒子などの検出可能なラベルを含むキットを提供することが、本発明のさらに別の目的である
【0031】
前立腺癌に罹患しているか、またはその発症の危険性がある人達を検出するための診断キットであって、前立腺癌細胞において特異的に発現される新規な遺伝子標的に対して特異的なDNAプライマーまたはプローブ、および例えば、標識用酵素、放射性ラベル、蛍光団、または常磁性粒子などの検出可能なラベルを含むキットを提供することが、本発明の別の目的である。
【0032】
生物学的活性を有する化合物を選択し、同定し、スクリーニングし、特性を決定し、または最適化するための方法であって、候補化合物が本出願において開示されるような抗原またはポリヌクレオチドに、好ましくは選択的に結合するかどうかを決定することを含む方法を提供することが、本発明の別の目的である。そのような化合物は癌疾患、特に前立腺癌を処置するための薬物候補または新薬である。
【0033】
前立腺癌細胞中で変化した形で発現される遺伝子を同定することが、本発明の別の目的である。この形は、遺伝子のスプライシング変異体を表し、DATAS(登録商標)断片は、1)遺伝子内で起こっているスプライシング事象を明らかにするか、または2)活発にスプライシングされて異なる遺伝子産物を生成する遺伝子を指し示している。これらの特異のスプライシング変異体もしくはアイソフォームは治療処置のための標的となり得る。
【0034】
発明の詳細な説明
DATAS(選択的スプライシングによる転写物の差異分析)は、発現された遺伝子間の構造的差異を解析し、RNAスプライシングの変化に対する系統的アクセスを可能にする(U.S. Patent No. 6,251,590に開示され、その開示はその全体を参照して組み入れる)。細胞のホメオスタシスにとって重要なスプライシングされた配列にアクセス可能なことは、機能ゲノミクスの有用な進歩を表している。
【0035】
正常組織と腫瘍組織のような2つの試料を比較する場合、DATAS技術は2つのライブラリーを生成する。各ライブラリーは1つの試料の中に存在し、より多く発現される配列のクローンを特に含む。例えば、ライブラリーAは、正常試料の遺伝子中には存在するが、腫瘍試料の遺伝子には存在しない配列を含むことになる。これらの配列は、腫瘍試料中の遺伝子から除去されたか、スプライシングによって除去されたものとされる。対照的に、ライブラリーBは腫瘍試料中にのみ存在し、正常試料中には存在しない配列を含むことになる。これらは、腫瘍試料のみにおいて発現される遺伝子の中へ選択的にスプライシングされたエクソン/イントロンを表わす。
【0036】
本発明は、DATASを使用して単離され、したがって前立腺腫瘍試料中で特異に調節されるかまたは発現されると確定されるエクソンを同定することに一部分基礎を置いている。具体的には、122個の発現配列タグがDATASによって同定され、正常前立腺組織と前立腺腫瘍組織の間で異なって発現されることが確認された。これらのDATAS断片(DF)は、1つの試料には含まれるが他の試料に含まれないまたは1つの試料には含まれないが他の試料に含まれるという選択がされた遺伝子の小さな区間である。これらの小さな区間は発現された遺伝子転写物の一部であり、また遺伝子のいくつかの異なる領域に由来した配列から成ることができ、これは単一のエクソンの一部、いくつかのエクソン、イントロン由来の配列、およびエクソンとイントロンに由来する配列を含むがこれに限られない。異なる生体試料中におけるエクソンのこの選択的な使用により、選択的RNAスプライシングとして周知のプロセスによって同一の遺伝子から種々の遺伝子産物が生産される。特に、37個の選択的にスプライシングされたアイソフォームがDATAS断片配列から同定され、これは下の標的および遺伝子産物についての記述のすべてに適合する選択的遺伝子産物を生産する。
【0037】
同じ遺伝子から生産され選択的にスプライシングされたmRNAは、異なるリボヌクレオチド配列を含んでおり、したがって異なるアミノ酸配列を有するタンパク質へと翻訳される。遺伝子産物内へ、あるいは遺伝子産物から選択的にスプライシングされる核酸配列は、元の遺伝子配列に由来するフレーム内にまたはフレーム外に挿入もしくは欠失をさせることができる。これにより、各変異体から異なるタンパク質が翻訳されることになる。差異には、単純な配列欠失、あるいは遺伝子産物に挿入された新規の配列情報が含まれ得る。フレーム外に挿入された配列が、初期停止コドンの生成をもたらし、タンパク質の短縮形を生み出すことができる。あるいは、核酸のフレーム内挿入により、付加的なタンパク質領域がmRNAから発現されるようになる可能性がある。最終段階の標的は、新規なエピトープあるいは機能を含む新規なタンパク質である。既知の遺伝子の多くの変異体が同定されており、それはタンパク質の本来の生物活性に対して作動的または拮抗的になりうるタンパク質変異体を生産する。
【0038】
DATAS断片は、このように前立腺癌細胞において特異な調節および選択的スプライシングを受ける遺伝子およびタンパク質を同定する。DATAS断片によって、このように前立腺癌の診断あるいは治療に適合した標的分子の確定が可能になる。その標的分子には、DATAS断片の配列を含む遺伝子またはRNA、あるいはDATAS断片の配列がそこに由来する遺伝子またはRNAのすべてまたは一部、ならびに対応するポリペプチドまたはタンパク質およびその変異体が含まれる。
【0039】
第1の型の標的分子は、本出願に開示されるようなDATAS断片の配列を含む遺伝子またはRNA分子全体の配列を含む標的核酸分子である。確かに、DATASは前立腺腫瘍に関連した遺伝子の調節解除を同定するので、前記DATAS断片が由来する遺伝子またはRNA配列全体を、治療処置または診断の標的として用いることができる。
【0040】
同様に、別の型の標的分子は、本出願に開示されるようなDATAS断片によってコードされるアミノ酸配列を含む全長のタンパク質配列を含む標的ポリペプチド分子である。
【0041】
さらに別の型の標的分子が、上に開示されるような遺伝子またはRNAの断片を含む標的核酸分子である。確かに、DATASが前立腺腫瘍細胞の中で変化した遺伝子およびRNAを同定するので、DATAS断片の配列を含まない部分を含めてそのような遺伝子あるいはRNAの部分は、治療処置または診断の標的として使用することができる。そのような部分の例には:DATAS断片、その部分、前記遺伝子またはRNAの選択的エクソンまたはイントロン、あるいは前記RNAなどの中でのスプライシングにより生成された、エクソン-エクソン、エクソン-イントロン、またはイントロン-イントロン結合部の配列等が含まれる。特別の部分が、ポリペプチドの細胞外ドメインをコードする配列を含む。
【0042】
同様に、別の型の標的分子が、本出願に開示されるようなDATAS断片によってコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質の断片である。そのような断片は、DATAS配列を含んでもよいし含まなくてもよく、また例えばフレームシフト、新しいエクソン・エクソンあるいはエクソン-イントロン結合部、新しい停止コドンの生成その他から生ずる、新しく生成されたアミノ酸配列を含んでもよい。
【0043】
これらの標的分子(遺伝子、断片、タンパク質およびそれらの変異体を含む)は、診断用薬剤として、および治療法開発の標的として役立てることができる。例えば、これらの治療法が、前立腺腫瘍増殖力に関連した生物過程を調節する可能性がある。前立腺腫瘍細胞中でアポトーシス(細胞死)の誘導に関係している薬物も同定される可能性がある。タンパク質またはその変異体に結合し、細胞増殖にとって重要な生物過程を変更するモノクローナル抗体などの他の薬剤もまた開発することができる。あるいは、抗体が、細胞の成長を阻止して、細胞死をもたらすことができる毒素を配布することができる。
【0044】
具体的には、本発明は変異タンパク質中で発現され、前立腺腫瘍に特異的または前立腺に特異的な配列を提供する。これらの配列は、バイオインフォマティック解析により細胞の原形質膜に存在すると同定された遺伝子の一部であり、本発明の特異的配列はタンパク質の細胞外ドメインで発現し、その結果配列は予防用および治療用ワクチンを含む前立腺腫瘍ワクチンの調製に役立つことができる。
【0045】
これに基づいて、特異に発現される配列および対応する変異体タンパク質に関係している開示される遺伝子は、例えば抗体、小分子阻害剤、アンチセンス治療法、およびリボザイムの開発などの前立腺癌の治療、予防あるいは診断のための適切な標的となるに違いないと期待される。可能性のある治療法についてより詳細に下に記述する。
【0046】
そのような治療法には、前立腺癌中で上方調節されるように見える対象の核酸に対してアンチセンス方向の配列を有するオリゴヌクレオチドの合成が含まれることになる。適当な治療用のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的には長さが2〜数百のヌクレオチド、より典型的には長さが50〜70ヌクレオチドまたはそれ未満まで変化する。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、裸の核酸としてまたは保護された形式で、例えばリポソームのカプセルに入れて投与してもよい。リポソーム形式のまたは他の保護された形式の使用は、生体内における安定性と、それによる標的部位すなわち前立腺腫瘍細胞への送達を促進するために、有利な可能性がある。
【0047】
さらに、対象とする新規な遺伝子を、前立腺腫瘍細胞中の対応するmRNAの切断を目的とする新規なリボザイムを設計するために使用してもよい。同様に、裸の形で、これらのリボザイムを投与してもよいし、あるいは安定性および/または標的へ指向することを促進する送達システム、例えばリポソームを使用して投与してもよい。
【0048】
さらに、本発明は、以下において同定される新規の核酸標的にハイブリダイズする核酸の使用を行うことを含む。使用される核酸は、治療用エフェクター部分、例えば、核酸標的を発現する細胞即ち前立腺腫瘍細胞を選択的に標的とし、また死滅させるための放射性ラベル(例えば90Y、131I)、細胞毒素、細胞毒性酵素その他に結合している。
【0049】
さらに本発明は、変化した遺伝子、または変化したタンパク質、特に対応する前立腺腫瘍細胞において変化型で発現されるスプライシング変異体、を標的とすることによる前立腺癌の治療および/または診断を含む。これらの方法は、細胞の選択的な検出および/またはそのような変化型を発現する細胞の根絶をもたらし、それによる正常細胞への悪影響を最小限にする。
【0050】
さらにまた、本発明は核酸を基礎としない治療を含む。例えば、本発明は、ここで同定される新規の抗原に対応する新規のcDNAの1つを含むDNAの使用を含む。そのようにコードされた抗原を治療的または予防的な抗腫瘍ワクチンとして使用できると期待される。例えば、これらの抗原の特別に考慮された応用には、それらをアジュバントと共に投与して細胞毒性Tリンパ球応答を引き起こすことが含まれる。
【0051】
対象とする新規の抗原のアジュバントと組み合わせた投与が、結果としてそのような抗原に対する液性免疫反応をもたらし、それにより前立腺癌の進行を遅らせるかまたは防止する。
【0052】
本発明のこれらの実施態様が、対象とする新規前立腺癌抗原の1つ以上を、理想的にはアジュバント、例えばとりわけ、PROVAX(登録商標)(U. S. Patents 第5,709,860号, 5,695,770号,および 5,585,103号に開示されているように、スクワレン、トゥイーンおよびPluronicを含む微小流体化されたアジュバントを含む)、ISCOM’S(登録商標)、DETOX(登録商標)、SAF、フロイントアジュバント、Alum(登録商標)、Saponin(登録商標)などと組み合わせて投与することを含むことになる。この組成物を治療上あるいは予防上有効であるのに十分な量だけ、例えば50〜20,000mg/kg体重または100〜5,000mg/kg体重のオーダー、投与することになる。
【0053】
さらに別の本発明の実施態様は、以下に開示する核酸配列を含む新規の遺伝子によりコードされる抗原に対するモノクローナル抗体の調製を含むことになる。そのようなモノクローナル抗体は、従来方法によって生産され、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、例えばscFvのような単一鎖抗体、ならびにFabおよびFab断片のような抗原結合性抗体断片を含む。モノクローナル抗体の調製方法は周知である。一般に、モノクローナル抗体の調製は、対象とする前立腺癌抗原による適切な(相同でない)宿主の免疫化、そこからの免疫細胞の単離、モノクローナル抗体を分離するためのそのような免疫細胞の使用、およびそのような抗原のどれかに特異的に結合するモノクローナル抗体のスクリーニングを含むことになる。抗体断片は、例えばモノクローナル抗体の酵素的変換などの既知の方法により調製できる。
【0054】
これらのモノクローナル抗体および断片は受動的な抗腫瘍免疫療法に役立つことになり、または例えば標的を定めた細胞毒性をもたらすために、即ちヒト前立腺腫瘍細胞を死滅させるために、放射性ラベル、細胞毒素、治療用酵素、細胞死を誘導する薬剤その他の、治療用のエフェクター部分に結合させることも可能である。多くの正常組織が対象とする遺伝子を大量には発現しないように見えるという事実を考慮すれば、これは著しく有害な副作用(非標的組織に対する毒性)をもたらさないに違いない。
【0055】
本発明の1つの実施態様においては、そのような抗体あるいは断片をラベルされたまたはラベルされない形で、単独であるいは他の治療法、例えばシスプラチン、メトトレキサート、アドリアマイシンその他の前立腺癌治療に適切な化学療法剤と共に、投与することになる。投与される組成物はまた、通常は薬学的に許容できる担体、および場合によっては治療用に抗体組成物中で用いられるアジュバント、安定剤などを含む。
【0056】
好ましくは、対象とするモノクローナル抗体が標的抗原に、例えば10-6〜10-12Mのオーダーの結合能(Kd)を有するような高親和性を持って結合する。
【0057】
指摘したように、本発明はまた、ここに開示する前立腺特異的なスプライシング変異体の発現検出のための診断用応用を含む。これは、RNAレベルおよび/またはタンパク質レベルにおけるこれらの遺伝子の1つ以上の発現を検出することを含む。
【0058】
核酸については、対象とする遺伝子の発現を既知の核酸検出方法、例えばノーザンブロット ハイブリダイゼーション、ストランド ディスプレースメント増幅(SDA)、カタリティック ハイブリダイゼーション増幅(CHA)および他の既知の核酸検出法により、検出する。好ましくは、cDNAライブラリーを、前立腺癌に関して検査される被験者から得られた前立腺細胞から、本出願で開示される新規のアイソフォームに対応するプライマーを使用するPCRにより作製する。
【0059】
前立腺癌が存在するかしないかを、PCR生成物が得られるか否か、および発現のレベルに基づいて決定することができる。特定の前立腺癌患者の予後を決定するためにそのようなPCR生成物の発現レベルを定量化してもよい(PCR生成物の発現レベルが疾病の進行と共にしばしば著しく増加するか減少するからである)。これは前立腺癌患者の状態をモニターする方法となる。
【0060】
あるいは、前立腺癌に関して検査を行う被験者の状態を体液、例えば血液、尿、リンパ液などを、ここに開示される新規な前立腺腫瘍抗原に特異的に結合する1もしくは複数の抗体または断片で試験することにより評価してもよい。
【0061】
抗原発現を検出するために抗体を用いる方法は周知でありELISA、競合結合測定法その他を含む。一般にそのような測定法は、例えば標識酵素、放射性ラベル、蛍光体または常磁性粒子のような検出用ラベルに直接または間接的に結合した、標的抗原に特異的に結合する抗体または抗体フラグメントを使用する。
【0062】
前立腺細胞上の抗原の増加に陽性反応を示す患者は、前立腺癌に罹患しているか発症する危険が増加していると診断されることになる。さらに抗原発現のレベルは患者の状態を、即ち疾病がどの程度進行したか(前立腺癌の病期)を、決定することに役立つ可能性がある。
【0063】
述べたように、本発明は、ヒトの前立腺癌に関連する抗原をコードする新規なスプライシング変異体を提供する。本発明はまたそれの変異体を含む。ここに用いられている「変異体」とは、そのDNA塩基配列を対象のDNAをコードする核酸配列または少なくとも約50ヌクレオチドの大きさを持つその断片と比較したときに、少なくとも約75%それに同一、より好ましくは少なくとも約85%同一、そして最も好ましくは少なくとも90%同一、さらにより好ましくは少なくとも約95〜99%同一である配列を意味する。これは対象の遺伝子の対立遺伝子変異体およびスプライシング変異体を含んでいる。本発明はさらに、対象のスプライシング変異体と、高い、中、または低厳格性条件下でハイブリダイズする、例えば以下に記述するような核酸配列を含む。
【0064】
さらに本発明は、所望の細胞源、典型的にはヒトの前立腺細胞または組織の試料から得たmRNAのライブラリー中の、対象とする新規な遺伝子またはその一部分をコードするDNAを増幅することができるプライマー対を提供する。典型的には、そのようなプライマーは長さが約12〜50のオーダーのヌクレオチドであり、標的遺伝子の全てまたは大部分を増幅するように構成される。
【0065】
さらに、本発明は、対象とするDNAまたはその断片によってコードされる、全長の抗原に特異的な抗体に結合するかまたはそれを誘発する抗原を含む。典型的には、そのような断片は長さが少なくとも10個のアミノ酸、より典型的には長さが少なくとも25個のアミノ酸である。
【0066】
述べたように、対象のDNA断片は検査した前立腺腫瘍試料の大多数において発現される。本発明は、そのような遺伝子を発現する他の癌の同定、およびそのような癌を検出し治療するためのその遺伝子の使用をさらに意図する。例えば、他の癌、例えば乳癌、子宮癌、膵臓癌、肺癌、前立腺癌において、対象のDNA断片またはその変異体が発現される可能性がある。本質的に本発明は、対象の新規の遺伝子またはその変異体の発現が、癌または癌の可能性の増加と関連するようなあらゆる癌の検出を含む。本発明の理解を助けるために、次の定義を与える。
【0067】
「単離した腫瘍抗原または腫瘍タンパク質」とは、正常な細胞環境にない任意のタンパク質を指す。これには、例として以下に開示する遺伝子によりコードされる組換え型タンパク質を含む組成物、そのような精製されたタンパク質を含む医薬品組成物、そのような精製されたタンパク質を含む診断用組成物、およびそのようなタンパク質を含む単離されたタンパク質組成物が含まれる。好ましい実施態様において、本発明による単離した前立腺腫瘍タンパク質は、他のタンパク質を実質的に含まず好ましくは少なくとも90%純粋であるという点で実質的に純粋な、ここに記載したアミノ酸配列または基本的に同一配列を有する自然の相同体または突然変異体であるタンパク質を含む。自然に発生した突然変異体が、例えば本発明による突然変異したタンパク質をコードする遺伝子を発現している腫瘍細胞において見出される可能性がある。
【0068】
「未変性の腫瘍抗原または腫瘍タンパク質」とは、以下の記述に含まれるアミノ酸配列を有するタンパク質のヒト以外の霊長類における相同体であるタンパク質を指す。
【0069】
「単離した前立腺腫瘍遺伝子または核酸配列」とは、本発明による腫瘍抗原をコードする核酸分子であって、正常なヒトの細胞環境にない、例えばヒトまたはヒト以外の霊長類の染色体DNAに含まれていない核酸分子を指す。これには、例として、本発明による遺伝子を含むベクター、本発明による遺伝子を含むプローブ、および検出できる部分、例えば蛍光性もしくは放射性ラベルに直接または間接的に結合された核酸配列、または本発明による遺伝子をコードする核酸分子が異なるDNA(例えば検知できるマーカーまたはエフェクター部分をコードするプロモーターまたはDNA)へ5’または3’端で融合したものを含むDNA融合体が含まれる。さらに、実質的に同じ配列を有する自然の相同体または突然変異体も含まれる。自然に存在する縮重した相同体は、対応するアミノ酸配列を変化させないヌクレオチドの差異を含みながら同一タンパク質をコードすることになる。腫瘍細胞において、自然に発生した突然変異体が見出される可能性があり、そのヌクレオチドの差異が突然変異腫瘍抗原をもたらす可能性がある。保存的置換を含む自然に発生した相同体もまた含まれる。
【0070】
「前立腺腫瘍抗原または腫瘍タンパク質の変異体」とは、少なくとも90%の配列同一性を、より好ましくは少なくとも91%の配列同一性を、さらに好ましくは少なくとも92%の配列同一性を、さらに好ましくは少なくとも93%の配列同一性を、さらに好ましくは少なくとも94%の配列同一性を、さらに好ましくは少なくとも95%の配列同一性を、さらに好ましくは少なくとも96%の配列同一性を、さらにより好ましくは少なくとも97%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%の配列同一性を、そして最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を、対応する自然の腫瘍抗原に対して有するアミノ酸配列を所持するタンパク質を指す。なお配列同一性とは以下に定義する通りである。好ましくは、この変異体は少なくとも1つの生物学的性質を天然のタンパク質と共有することになる。
【0071】
「前立腺腫瘍の遺伝子または核酸分子または配列の変異体」とは、少なくとも90%の配列同一性を、より好ましくは少なくとも91%を、より好ましく少なくとも92%を、さらに好ましくは少なくとも93%を、さらに好ましくは少なくとも94%を、さらに好ましくは少なくとも95%を、さらに好ましくは少なくとも96%を、さらにより好ましくは少なくとも97%を、さらにより好ましくは少なくとも98%の配列同一性を、そして最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を、対応する自然のヒト核酸配列に対して所有する核酸配列を指す。なお「配列同一性」とは以下に定義する通りである。
【0072】
「前立腺抗原をコードする核酸分子または配列の断片」とは、自然のヒト遺伝子の一部に対応する核酸配列であって、前記ヒト遺伝子の一部が少なくとも約50個のヌクレオチドの長さ、または100個の長さ、より好ましくは少なくとも150個のヌクレオチドの長さである核酸配列を指す。
【0073】
「前立腺腫瘍抗原の抗原断片」とは、前立腺タンパク質もしくはその変異体の断片またはそれらの相同体に対応するポリペプチドであって、それ自体がまたは免疫原のキャリアーに連結されて使用された場合に、特異的にタンパク質に結合する抗体を誘発するポリペプチドを指す。典型的には、そのような抗原断片は長さで少なくとも8〜15のアミノ酸となり、はるかに長い可能性もある。
【0074】
配列同一性またはパーセント同一性とは、ヒトのタンパク質Aまたはタンパク質Bあるいは遺伝子Aまたは遺伝子Bに関して、Lasergene biocomputing software(DNASTAR, INC, Madison, WI)の多重配列アラインメントのClustal法[Higgins et al, Cabios 8 : 189-191(1992)]を用いて、あるいはGenetics Computer Group(GCG Wisconsin package, Accelrys, San Diego, CA)から入手可能なアラインメント プログラムを用いて2つの配列をアラインメントする場合に、2つの配列間で共有されている同一残基のパーセンテージを意味する。この方法では、一連のペアワイズアラインメントから計算される類似度を用いて、次第に大きなアラインメント群を組み立てるという漸進的な手法で多重アラインメントを行なう。最適の配列アラインメントは最大のアラインメント・スコアを見つけることにより得られる。アラインメント・スコアは、与えられた進化の時間間隔における2つの関連するタンパク質に生じる与えられたアミノ酸変化の確率を記述した残基重み表(residue weight table)から決定される、そのアラインメントにおける個別の残基間のすべてのスコアの平均である。アラインメントにおいて、ギャップをあけることおよび延長することに科せられるペナルティーがスコアに寄与する。このプログラムと共に用いられるデフォールトパラメーターは以下のとおりである:多重アラインメントに対するギャップペナルティー=10;多重アラインメントに対するギャップ長ペナルティー=10;ペアワイズアラインメントの k-tuple値=1;ペアワイズアラインメントのギャップ・ペナルティー=3;ペアワイズアラインメントのウィンドウ値=5;ペアワイズアラインメントで保存された対角線=5。アラインメント・プログラムに用いられたアミノ酸置換行列はPAM250である [Dayhoffet al., in Atlas of Protein Sequence and Structure, Dayhoff, Ed.,NDRF, Washington, Vol.5, suppl.3, p.345,(1978)]。
【0075】
パーセント保存率を、同一残基であるパーセンテージを、2つの残基が保存的置換(PAM250アミノ酸置換行列で0.3以上の対数オッズ値を有するとして定義される)である位置のパーセンテージに加えることにより、上記のアラインメントから計算する。ヒト以外の遺伝子Aまたは遺伝子Bのパーセント保存率を決定する場合、保存はヒト遺伝子Aまたは遺伝子Bを参照する。例えばパーセント保存率を決定する場合、遺伝子A、または遺伝子Bを基準にする。この要求を満たす保存的アミノ酸変化には:R−K;E−D、Y−F、L−M;V−I、Q−H、があげられる。
【0076】
ポリペプチド断片
本発明は、開示されたタンパク質のポリペプチド断片を提供する。本発明のポリペプチド断片は、少なくとも8個の、より好ましくは少なくとも25個の、さらに好ましくは、少なくとも50個の、タンパク質またはその類似物質のアミノ酸残基含むことができる。より詳細には、そのような断片が、対応する遺伝子によってコードされるポリペプチドの少なくとも75個、100個、125個、150個、175個、200個、225個、250個、275個の残基を含む。さらにより好ましくは、タンパク質断片は、天然タンパク質の大部分、例えば天然タンパク質の約100個の隣接する残基を含む。
【0077】
生物学的活性を有する変異体
本発明はさらに、以下に開示される新規の前立腺タンパク質の突然変異体を含み、それは少なくとも80%の、より好ましくは90%の、さらより好ましくは95−99%の天然タンパク質に類似するアミノ酸配列を含む。
【0078】
生物学または免疫学的活性を失わずに、どのアミノ酸残基を置換、挿入、欠失することができるかを決定する指針を、DNASTARまたはGenectics Computer Group(GCG)から得られるソフトウェアのような周知のコンピューター プログラムを用いることにより見出すことができる。好ましくは、タンパク質変異体中のアミノ酸変化は保存的なアミノ酸変化、即ち同様な電荷を有するまたは電荷を有しないアミノ酸への置換である。保存的なアミノ酸変化は、その側鎖が関連しているアミノ酸ファミリーのうちの1つによる置換を含む。自然に存在するアミノ酸は通常4組のファミリーに分けられる:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、無電荷で極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、シスチン、セリン、トレオニン、チロシン)、のアミノ酸、である。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、ある場合は芳香族アミノ酸として共に分類される。
【0079】
突然変異タンパク質と呼ばれる突然変異体の1つの部分集合が、ジスルフィド結合に参加しないシステイン残基がセリンのような中性アミノ酸によって置換されている一群のポリペプチドである。これらの突然変異体は、自然の分泌されたタンパク質より広い温度領域で安定である可能性がある。 Mark et al., U.S. Patent 4,959,314 を参照のこと。
【0080】
ロイシンのイソロイシンまたはバリンによる置換、アスパラギン酸のグルタミン酸による置換、トレオニンのセリンによる置換、またはあるアミノ酸の構造上関連するアミノ酸による同様の置換、が単独で生ずることによって、その結果生ずる分泌タンパク質またはポリペプチド変異体の生物学性質が重大な影響を受けないと期待することは合理的である
【0081】

タンパク質変異体には、グリコシル化型、他の分子との凝集性の結合体、および無関係の化学物質部分と共有結合した結合体が含まれる。さらに、タンパク質変異体には、対立遺伝子変異体、種変異体および突然変異タンパク質も含まれる。遺伝子の特異な発現に影響しない領域の切断または欠失もまた変異体である。共有結合した変異体を、従来知られているように官能基性をアミノ酸鎖またはN−またはC−末端残基に見出される基にリンクさせることにより調製することができる。
【0082】
本発明の前立腺タンパク質のあるアミノ酸配列を、タンパク質の構造または機能に対して重要な影響を与えることなく変化させることができることを、従来技術においても認識することになる。そのような配列の差異をつくろうと意図する場合、タンパク質上に活性を決定する重要な領域が存在することを思い出さなければならない。一般に、三次構造を形成する残基を交換することは、もし同様の機能を遂行できる残基を用いれば、可能である。他の場合においては、変化がタンパク質の重要でない領域で生じる場合、残基の型は全く重要でない。アミノ酸の置換はまた、細胞表面レセプターに結合する選択性を変化させることもできる。Ostade et al., Nature 361:266- 268(1993)は、ある突然変異によって、TNF-αが2つの既知の型のTNFレセプターのうちの1つのみに選択的に結合する結果となることを記述している。このように、本発明のポリペプチドは、自然突然変異または人間の操作のいずれかから生じた1つ以上のアミノ酸置換、欠失または付加を含むことができる。
【0083】
本発明は、類似の発現パターンを示すかまたは抗原領域を含む以下に開示される前立腺タンパク質の変異体をさらに含む。そのような突然変異体は、欠失、挿入、逆位、反復、および部位の置換を含んでいる。どのアミノ酸変化が表現型においてサイレントとなりやすいかに関する手引きを、Bowie,J.U., et al., "Deciphering the Message in Protein Sequences: Tolerance to Amino Acid Substitutions", Science 247: 1306-1310(1990) に見出すことができる。
【0084】
特別に興味のあるのは、電荷を持つアミノ酸の、別の電荷を持つアミノ酸との置換、および中性のアミノ酸または負電荷を持つアミノ酸との置換である。後者は正荷電が減少したタンパク質をもたらし、開示されたタンパク質の特性を改善する。凝集の予防は極めて望ましい。タンパク質の凝集は活性の損失に帰着するだけでなく、それらが免疫原となる可能性があるので、薬学的製剤を調製する場合にさらに問題になり得る(Pinckard et al., Clin. Exp.Immunol.2: 331-340(1967); Robbins et al., Diabetes 36: 838-845(1987); Cleland et al., Crit. Rev. Therapeutic Drug Carrier Systems 10: 307-377(1993))。
【0085】
本発明のポリペプチド中の機能に不可欠なアミノ酸を、部位特異的突然変異誘発またはアラニンスキャニング突然変異誘発のような既知の方法により同定することができる(Cunningham and Wells, Science 244: 1081-1085(1989))。後者の手法は、分子中のすべての残基に、単一のアラニン突然変異を導入する。その結果の突然変異体分子について次に、自然のまたは合成の結合パートナーとの結合などの生物活性をテストする。リガンド・レセプター結合に決定的に重要な部位もまた、結晶化、核磁気共鳴、または光親和性標識化(Smith et al., J.Mol. Biol. 224: 899-904(1992) およびde Vos et al. Science 255: 306-312(1992)) などの構造的解析により決定することができる。
【0086】
指摘したように、変化は、タンパク質の折り畳みや活性に著しくは影響しない保存的なアミノ酸置換などの些細な性質であることが好ましい。もちろん、当業者がつくるアミノ酸置換の数は、上述のものを含む多くの要因に依存する。一般的に言えば、いかなる所定のポリペプチドに対する置換の数も、50、40、30、25、20、15、10、あるいは3を越えない。
【0087】
融合タンパク質
対象とする前立腺腫瘍抗原のタンパク質またはポリペプチド断片を含む融合タンパク質をさらに構築することができる。融合タンパク質は、アミノ酸配列に対する抗体の生成、および様々な定量システムで使用する上で役立つ。例えば、融合タンパク質を本発明のタンパク質と相互作用するかまたはその生物学的機能に干渉するタンパク質を同定するために用いることができる。タンパク質親和性クロマトグラフィーなどの物理的方法、または、酵母の2-ハイブリッドシステムもしくはファージディスプレイシステムのようなタンパク質−タンパク質間相互作用のためのライブラリーに基づいた測定法もまた、この目的に用いることができる。そのような方法は周知であり、薬物のスクリーニング法として用いることができる。本発明によるタンパク質またはその断片の信号配列および/または膜貫通領域を含む融合タンパク質を用いて、他のタンパク質領域を、正常ではその領域が見出されない細胞部位(細胞膜に結合するかもしくは細胞外に分泌するなど)を標的として向かわせることができる。
【0088】
融合タンパク質は、ペプチド結合によって融合した2つのタンパク質セグメントを含む。指摘したように、これらの断片の大きさは、約8個のアミノ酸からタンパク質の全長までに亘ることができる。
【0089】
第2のタンパク質セグメントは、全長のタンパク質とすることも、またはポリペプチド断片とすることもできる。融合タンパク質作成に一般に用いられるタンパク質には、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自己蛍光タンパク質、グルタチオン−S−転移酵素(GST)、ルシフェラーゼ、西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)およびクロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)が含まれる。さらに、ヒスチジン(His)タグ、FLAGタグ、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)タグ、Mycタグ、VSV−Gタグおよびチオレドキシン(Trx)タグを含むエピトープタグを融合タンパク質作成に用いることができる。他の融合構造には、マルトース結合タンパク質(MBP)、Sタグ、Lex DNA結合領域(DBD)融合物、GAL4 DNA結合領域融合物、および単純疱疹ウイルス(HSV)BP16タンパク質融合物が含まれ得る。
【0090】
これらの融合物を、例えば2つのタンパク質セグメントを共有結合的にリンクすることにより、または分子生物学の従来技術の標準手法により作製することができる。融合タンパク質を調製するために組換DNA法を用いることができる。その方法は周知のように、例えば第2のタンパク質セグメントをコードするヌクレオチドを備えた適切な読み取り枠中に本発明の抗原候補またはその断片をコードするコード配列を含むDNAコンストラクトを作製し、DNAコンストラクトを宿主細胞中で発現させることにより可能である。融合タンパク質を作成するための多くのキットが、例えばPromega Corporation(Madison, WI)、Stratagene(La Jolla, CA)、Clontech(Mountain View, CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA)、MBL International Corporation(MIC; Watertown, MA)およびQuantum Biotechnology(Montreal, Canada; 1-888-DNA-KITS)を含む、実験用ツールを研究所に供給する会社から入手可能である。
【0091】
本発明のタンパク質、融合タンパク質またはポリペプチドを組換DNA法により生産することができる。組換えタンパク質、融合タンパク質またはポリペプチドを生産するために、タンパク質をコードする配列を、原核生物もしくは真核生物の宿主細胞中で周知の発現系を用いて発現させることができる。これらの発現系には、細菌、酵母、昆虫および哺乳動物の細胞が含まれる。
【0092】
その結果発現されたタンパク質を、その後周知の精製手段を用いて培地または培養細胞の抽出物から精製することができる。例えば、完全に培地中に分泌されたタンパク質については、酢酸ナトリウムで無細胞の培地を希釈し、陽イオン交換樹脂に接触させ、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィーを行うことができる。この方法を用いると、典型的には希望のタンパク質またはポリペプチドは95%以上純粋になる。例えば上に挙げた技法のうちのどれかを用いて、さらに一層の精製を試みることができる。
【0093】
機能的タンパク質を得るために、酵母またはバクテリア中で生産されたタンパク質を、例えば適切な部位の燐酸化またはグリコシル化によって修飾することが必要である可能性がある。そのような共有結合的連結を、既知の化学的または酵素的な方法を用いて作製することができる。
【0094】
本発明のタンパク質またはポリペプチドを、精製を容易にする形で培養宿主細胞中に発現させることも可能である。例えばタンパク質またはポリペプチドを例えばマルトース結合タンパク質、グルタチオン−S―転移酵素またはチオレドキシンを含む融合タンパク質として発現させ、市販のキットを用いて精製することができる。そのような融合タンパク質の発現および精製用キットは、New England BioLabs、PharmaciaおよびInvitrogenのような会社から入手可能である。タンパク質、融合タンパク質またはポリペプチドに、「フラグ」エピトープ(Kodak)などのエピトープのタグを付けることができ、そのエピトープに特異的に結合する抗体を用いて精製することができる。
【0095】
ここに開示された配列により同定されたタンパク質変異体のコード配列を、マウス、ラット、モルモット、ウシ、ヤギ、ブタまたはヒツジなどのトランスジェニック動物を作成するために用いることができる。雌のトランスジェニック動物はその後、乳中に本発明のタンパク質、ポリペプチドまたは融合タンパク質を生産することができる。そのような動物を作成する方法は周知であり、広く用いられている。
【0096】
あるいは、固相ペプチド合成のような合成化学的手法を、分泌タンパク質またはポリペプチドを合成するために用いることができる。ペプチド、類似物質または誘導体の生産のための一般的な手段は、「Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins--A Survey of Recent Developments, B. Weinstein,編(1983)」で概説されている。正常なL−立体異性体に代えてD−アミノ酸の置換を行ない、分子の半減期を増加させることができる。
【0097】
通常、この分野で知られているように、相同ポリヌクレオチド配列を厳格な条件下のハイブリダイゼーションにより確認することができる。例えば次の洗浄条件:2×SSC(0.3M NaCl、0.03Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.1%SDS、室温で2回各30分;その後2×SSC、0.1%SDS、50℃1回、30分;その後2×SSC、室温で2回各10分、を用いることにより多くて約25〜30%の塩基対ミスマッチを含む相同的配列を同定することができる。相同の核酸鎖は、より好ましくは15〜25%の塩基対ミスマッチを、さらにより好ましくは5〜15%の塩基対ミスマッチを含む。
【0098】
本発明はさらに、相補的ヌクレオチド配列を検出するために例えばノーザンまたはサザンブロッティングまたはin situハイブリダイゼーションなどのハイブリダイゼーションプロトコール中で使用できるポリヌクレオチドプローブを提供する。本発明のポリヌクレオチドプローブは、ここで提供される核酸配列のうちの、少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、30もしくは40個、またはそれより多くの隣接するヌクレオチドを含む。本発明のポリヌクレオチドプローブは、放射性同位体の、蛍光性の、酵素の、または化学発光のラベルなどの検知できるラベルを含むことができる。
【0099】
さらにここに開示するcDNA配列に対応する単離した遺伝子を提供する。ここに提供されるcDNA配列を用いて対応する遺伝子を分離するために、標準の分子生物学的方法を用いることができる。これらの方法には、ヒトを含む哺乳動物のゲノムライブラリーまたはヒトゲノムDNAの他の供給源から得られる遺伝子を同定または増幅する際に使用するために、ここに開示されるヌクレオチド配列からプローブまたはプライマーを調製することが含まれる。
【0100】
本発明のポリヌクレオチド分子を、ポリヌクレオチドの増幅方法を用いてさらにポリヌクレオチドのコピーを得るためのプライマーとして、使用することもできる。周知の技術を用いて、ポリヌクレオチド分子をベクターおよび細胞系統中で増殖させることができる。ポリヌクレオチド分子は直鎖状または環状の分子上に存在し得る。それらは、自律的に複製する分子上に、または複製配列を有しない分子上に存在し得る。周知のように、それらは自分自身の、または他の調節配列により調節されることが可能である。
【0101】
ポリヌクレオチドコンストラクト
ここに開示する配列を通じて同定された遺伝子変異体のコード配列を含むポリヌクレオチド分子を、DNAコンストラクトまたはRNAコンストラクトなどのポリヌクレオチドコンストラクト中で用いることができる。本発明のポリヌクレオチド分子を、例えば、タンパク質、変異体、融合タンパク質、または単鎖抗体の全部または一部を宿主細胞中で発現するための発現コンストラクト中で用いることができる。発現コンストラクトは、選ばれた宿主細胞において機能するプロモーターを含む。当業者は既知で従来用いられている多くの細胞型に特異的なプロモーターの中から、容易に適切なプロモーターを選ぶことができる。発現コンストラクトは、さらに宿主細胞において機能する転写ターミネーターを含むことができる。発現コンストラクトは、望みのタンパク質のすべてまたは一部をコードするポリヌクレオチド・セグメントを含む。ポリヌクレオチド・セグメントはプロモーターよりも下流に位置する。ポリヌクレオチド・セグメントの転写はプロモーターから始まる。発現コンストラクトは直鎖状または環状であり得、またもし望むなら自律的複製のための配列を含むことができる。
【0102】
さらに、関連するタンパク質のコード配列および/または検出可能なまたは選択可能なマーカーをコードする配列に操作可能な状態でリンクされた、新規な対象遺伝子のプロモーターならびにUTR配列を含むポリヌクレオチド分子が含まれる。そのようなプロモーターおよび/またはUTRに基づいたコンストラクトは、タンパク質発現の転写および翻訳調節の研究、および活性化または抑制する調節タンパク質の同定のために役立つ。
【0103】
宿主細胞
発現コンストラクトを宿主細胞へ導入することができる。発現コンストラクトを含む宿主細胞は任意の適切な原核細胞または真核細胞でよい。バクテリア中の発現系には、Chang et al., Nature 275: 615(1978); Goeddel et al., Nature 281: 544(1979); Goeddel et al., Nucleic Acids Res. 8: 4057(1980); EP 36,776 ; U. S. 4,551, 433; deBoer et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 80: 21-25(1983); および Siebenlist et al., Cell 20 : 269(1980) に記述されたものが含まれる。
【0104】
酵母中の発現系には、Hinnnen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 1929(1978); Ito et al., J Bacteriol 153 : 163(1983); Kurtz et al., Mol. Cell. Biol. 6: 142(1986); Kunze et al., J Basic Microbiol. 25: 141(1985); Gleeson et al., J. Gen. Microbiol. 132: 3459(1986), Roggenkamp et al., Mol. Gen. Genet. 202: 302(1986)); Das et al., J Bacteriol. 158: 1165(1984); De Louvencourt et al., J Bacteriol. 154: 737(1983), Van den Berg et al., Bio/Technology 8: 135(1990); Kunze et al., J. Basic Microbiol. 25: 141(1985); Cregg et al., Mol. Cell. Biol. 5: 3376(1985); U. S. 4,837,148; U. S. 4,929,555; Beach and Nurse, Nature 300: 706(1981); Davidow et al., Curr. Genet. 10: 380(1985); Gaillardin et al., Curr. Genet. 10: 49(1985); Ballance et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 112: 284-289(1983); Tilburn et al., Gene 26: 205-22(1983); Yelton et al., Proc. Natl. Acad, Sci. USA 81: 1470-1474(1984); Kelly and Hynes, EMBO J. 4: 475479(1985); EP 244,234; および WO 91/00357 に記述されたものが含まれる。
【0105】
昆虫中の非相同遺伝子の発現を、U.S. 4,745,051; Friesen et al.(1986) "The Regulation of Baculovirus Gene Expression"in: THE MOLECULAR BIOLOGY OF BACULOVIRUSES(W. Doerfler, ed.); EP 127,839; EP 155,476; Vlak et al., J. Gen. Virol. 69: 765-776(1988); Miller et al., Ann. Rev. Microbiol. 42: 177(1988); Carbonell et al, Gene 73: 409(1988); Maeda et al., Nature 315: 592-594(1985); Lebacq-Verheyden et al., Mol. Cell Biol. 8: 3129(1988); Smith et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 : 8404(1985); Miyajima et al., Gene 58: 273(1987); および Martin et al., DNA 7: 99(1988) に記述されるようにして遂行することができる。多数のバキュロウイルス系統および変異体ならびに宿主から得られた対応する許容昆虫宿主細胞が、Luckow et al., Bio/Technology(1988) 6: 47-55, Miller et al., in GENETIC ENGINEERING(Setlow, J. K. et al. eds.), Vol. 8, pp. 277-279(Plenum Publishing, 1986); および Maeda et al., Nature, 315: 592-594(1985)に記述されている。
【0106】
哺乳動物での発現を、Dijkema et al., EMBO J. 4: 761(1985); Gormanetal., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 6777(1982b); Boshart et al., Cell 41:521(1985); および U. S. 4,399,216に記述されているように遂行することができる。哺乳動物発現の他の特徴を、Ham and Wallace, Meth Enz. 58: 44(1979) に記述されるようにして促進することができる。
【0107】
発現コンストラクトを、従来技術を用いて宿主細胞へ導入することができる。これらの技術には、トランスフェリン−ポリカチオンを介するDNA転移、裸のまたはカプセルに入れられた核酸によるトランスフェクション、リポソームを介する細胞の融合、DNAでコートしたラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、エレクトロポレーション、「遺伝子銃」およびリン酸カルシウムを介したトランスフェクションが含まれる。
【0108】
本発明は、さらにハイブリッドおよびその修飾形を含む。この修飾形には、あるアミノ酸が欠失または置換されている融合タンパク質、その断片、ハイブリッド、およびその修飾形、ならびに1つ以上のアミノ酸が修飾されたアミノ酸または異常アミノ酸に変換された場合等の修飾、が含まれる。
【0109】
さらに、実質的に相同であるという意味の範囲内には、ヒトまたはヒト以外の霊長類のタンパク質であって、ここに記載した遺伝子によりコードされるタンパク質に対する抗体との交差反応性により単離されることができる任意のヒト、またはヒト以外の霊長類のタンパク質であって、ゲノムDNA、mRNAまたはcDNAを含むそのタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、ゲノム、サブゲノムのヌクレオチド配列またはここに記述する遺伝子のcDNAまたはその断片の相補的配列とのハイブリダイゼーションにより分離できるタンパク質が含まれる。さらに当業者は、縮重したDNA配列は、本発明による腫瘍タンパク質をコードすることができ、この配列も対象遺伝子の対立遺伝子変異体として、本発明の中に含まれるように意図されたものである、と認識する。
【0110】
好ましいのは組換DNA技術により調製された本発明の前立腺タンパク質である。「純粋な形」または「精製された形」、または「実質的に精製された形」とは、タンパク質組成物中に望みのタンパク質以外の他のタンパク質が実質的に存在しないことを意味する。
【0111】
本発明にはまた、罹患した患者を治療するために有効な量の本発明のタンパク質を含む治療用組成物または医薬品組成物、および治療上有効な量のタンパク質の投与を含む方法が含まれる。これらの組成物と方法は、対象とするタンパク質に関連した例えば前立腺癌のような癌を治療するために役立つ。当業者は、タンパク質が生存を促進するかまたは特別の細胞型の中で機能するのに役立つかどうかを判断するために、様々な既知の測定法を容易に用いることができる。
【0112】
抗−前立腺抗原抗体
述べたように、本発明は、診断と治療に用いるための抗−前立腺抗原抗体および断片の調製および使用を含む。これらの抗体はポリクローナルでもモノクローナルでもよい。ポリクローナル抗体を、ウサギまたは他の動物を抗原の注入とそれに続く適切な間隔でのブーストにより免疫化することにより調製することができる。動物を採血し、血清を精製されたタンパク質について、通常ELISAまたは対応する遺伝子の作用を遮断する能力に基づいた生物検定により検定する。鳥類の種、例えば鶏、七面鳥その他を用いる場合、卵の卵黄から抗体を分離することができる。モノクローナル抗体を、MilsteinとKohlerの方法により、免疫化されたマウスから得た脾細胞を骨髄腫またはリンパ腫の細胞のような持続的に複製する腫瘍細胞と融合させることにより調製することができる [Milstein and Kohler, Nature 256 : 495-497(1975); Gulfre and Milstein, Methods in Enzymology : Immunochemical Techniques 73 : 1-46, Langone and Banatis eds., Academic Press,(1981)、これらを参照して取り込む]。このように形成されたハイブリドーマ細胞を次に限界希釈法によりクローン化し、上清をELISA、RIAまたは生物検定によって抗体産生について検定する。
【0113】
標的タンパク質を認識し特異的に結合するという抗体の独特の能力が、タンパク質の過剰発現を処置するための手法を提供する。したがって、本発明の別の態様は、タンパク質に対する特異抗体を用いて患者を治療することによりタンパク質の過剰発現を含む病気を予防または処置する方法を提供する。
【0114】
上に議論したように、タンパク質に対するポリクローナルまたはモノクローナルの特異抗体を周知の適切な方法により生産することができる。例えば、組換え法により、好ましくは真核細胞でマウスまたはヒトのモノクローナル抗体をハイブリドーマ技術によって生産することができる。あるいは、あるタンパク質または免疫学的活性を有するその断片、または抗−イディオタイプ抗体またはその断片を動物に投与して、そのタンパク質を認識し結合することができる抗体の産生を誘発することができる。そのような抗体はIgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEを含む任意のクラスの抗体であり得るがしかしそれらに制限されないし、あるいは鳥類の種の場合には、IgY、および抗体の任意のサブクラスであってよい。
【0115】
単離したタンパク質を利用できることにより、タンパク質の結合パートナーとの結合を阻害する小分子および低分子量化合物を、ハイスループットスクリーニング法(HTS)を普通に使用して、同定することが可能になる。HTS法とは、一般に新化合物の治療上の可能性を迅速に検査することを可能にする技術を指す。HTS技術は、ロボットによる試験材料の取り扱い、陽性信号の検出、およびデータの解釈を採用する。新化合物は、放射活性の取込みによって、または吸光度、蛍光またはルミネセンスを読み出すことに依存する光学的測定によって、同定できる [Gonzalez, J. E. et al., Curr. Opin. Biotech. 9: 624-63 1(1998)]。
【0116】
タンパク質のリガンドとの相互作用を例えばリガンド結合についてタンパク質と競合することにより阻害する化合物をハイスループットスクリーニングするために用いる適当なモデルシステムが利用可能である。Sarubbi et al., Anal. Biochem. 237 : 70-75(1996)は、自然なリガンドと、IL−1レセプターの活性部位への結合を競合する分子を発見するための、無細胞系の放射性同位元素を用いない定量法について記述している。Martens, C. et al., Anal. Biochem. 273: 20-31(1999)は、粒子をベースにした放射性同位元素を用いない一般的方法について記述している。即ち:ラベルされたリガンドが粒子上に固定されたレセプターに結合し、粒子上のラベルはラベルされたリガンドとレセプターへの結合を競合する分子が存在すると減少する。
【0117】
抗体の調製
(i)出発物質および方法
免疫グロブリン(Ig)およびそれの一定の変異体は公知であり、組み換え細胞培養によって多数調製されている。例えば、U. S. Pat. No. 4,745,055; EP 256,654; EP 120,694 ; EP 125,023 ; EP 255,694 ; EP 266,663 ; WO 30 88/03559; Faulkner et al., Nature, 298 : 286(1982); Morrison, J. Immun., 123: 793(1979); Koehler et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 2197(1980); Raso et al., Cancer Res., 41: 2073(1981); Morrison et al., Ann. Rev. Immunol., 2: 239(1984); Morrison, Science, 229: 1202(1985); および Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851(1984)89を参照のこと。再組み合わせの免疫グロブリン鎖もまた公知である。例えば、U. S. Pat. No. 4,444,878 ; WO 88/03565; および EP 68,763 およびそこに引用されている参考文献を参照のこと。本発明のキメラ中の免疫グロブリン部分は、IgG−1、IgG−2、IgG−3、またはIgG−4サブタイプ、IgA、IgE、IgDまたはIgM、しかし好ましくはIgG−1またはIgG−3、から得ることができる。
【0118】
(ii)ポリクローナル抗体
対象の前立腺抗原に対するポリクローナル抗体が一般に動物中で、複数回の抗原およびアジュバントの皮下(sc)注射または腹腔内(ip)注射により生成される。標的アミノ酸配列を含む抗原または断片を、免疫化する種において免疫原となるタンパク質、例えば、キーホールリンペット・ヘモシニアン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、または大豆トリプシンインヒビターに、例えばマレイミドベンゾイル スルホスクシンイミドエステル(システイン残基による結合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸などの二官能性もしくは誘導体化試薬を用いて結合させることが有用である可能性がある。
【0119】
動物を、ポリペプチドもしくは断片、免疫結合体または誘導体に対して、約1mgまたは1μgのペプチドまたは結合体(それぞれウサギまたはマウスに対して)を3容量のフロイント完全アジュバントと組み合わせ、その溶液を複数の部位に皮内注射することにより免疫化する。1か月後に、フロイント完全アジュバント中の元の1/5〜1/10量のペプチドまたは結合体を複数の部位に皮下注射することにより、動物をブーストする。7〜14日後に、動物から採血し、血清の抗原またはその断片に対する抗体価を測定する。抗体価がプラトーになるまで動物をブーストする。好ましくは、同じポリペプチドまたはその断片の結合体であるが、異なるタンパク質および/または異なる架橋試薬を介して結合している結合体で動物をブーストする。結合体はまた、タンパク質融合体として組換え細胞培養中で作製することもできる。さらに、免疫反応を増強するために適切にミョウバンのような凝集剤を用いる。
【0120】
(iii)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は実質的に均一な抗体の集団から得られる。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、小量存在する可能性のある自然発生の突然変異を除いて同一である。したがって「モノクローナル」という修飾詞は、別々の抗体の混合物ではないという抗体の性質を示す。
【0121】
例えばこの発明の実施に用いるモノクローナル抗体を、Kohler and Milstein, Nature, 256: 495(1975) によって最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製してもよく、または組換えDNA法(Cabilly et al., 上出)によって作製してもよい。
【0122】
ハイブリドーマ法では、上に説明されているように、マウス、またはハムスターなどの適切な宿主動物を免疫化して、免疫化に用いられた抗原またはその断片に特異的に結合することになる抗体を生産するか生産することができるリンパ球を誘発する。あるいはリンパ球を生体外で免疫化してもよい。その後、ポリエチレングリコールなどの適当な融合試薬を用いて、リンパ球を骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 [Academic Press, 1986])。
【0123】
このように調製されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは融合していない親の骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1以上の物質を含む適当な培地中に播種し生育させる。例えば、親の骨髄腫細胞がヒポキサンチン グアニン ホスホリボシル転移酵素(HGPRTまたはHPRT)を欠失していれば、ハイブリドーマ用の培地は通常、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含み(HAT培地)、それらの物質がHGPRT欠失細胞の成長を阻止する。
【0124】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高水準の産生を支持し、HAT培地などの培地に敏感な細胞である。これらの中で、好ましい骨髄腫細胞系統は、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, Calif.USA から入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍、ならびにAmerican Type Culture Collection, Rockville, Md USA から入手可能なSP−2細胞に由来する系統などの、マウス骨髄腫系統である。
【0125】
ハイブリドーマ細胞が成長している培地を、前立腺抗原に対するモノクローナル抗体の産生について検査する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生産されたモノクローナル抗体の結合特異性をラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素免疫定量法(ELISA)などの、免疫沈降法または生体外での結合分析により決定する。
【0126】
モノクローナル抗体の結合親和性を例えば、Munson and Pollard, Anal. Biochem., 107: 220(1980) のスキャッチャード解析によって決定することができる。
【0127】
望みの特異性、親和性および/または活性を有する抗体を生産するハイブリドーマ細胞を同定した後に、限界希釈法によりクローンをサブクローニングし、そして標準的な方法によって成長させてもよい(Goding, 上出)。この目的にふさわしい培地には、例えばD−MEMまたはRPMI−1640培地が挙げられる。さらに、ハイブリドーマ細胞を、動物中の腹水腫瘍として生体内で成長させてもよい。
【0128】
サブクローンから分泌されたモノクローナル抗体は、例えばタンパク質Aセファロース、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手法により、培地、腹水または血清から適切に分離される。
【0129】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)、容易に分離され、配列決定される。本発明のハイブリドーマ細胞がそのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦分離されれば、DNAを発現ベクトルに入れ、その後DNAをそうでなければ免疫グロブリンタンパク質を生産しないE.coli細胞、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞などの宿主細胞へトランスフェクションさせ、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体を合成させる。バクテリアにおける抗体をコードするDNAの組換体の発現に関する総説には、Skerra et al., Curr.Opinion in Immunol., 5: 256-262(1993) および Pluckthun, Immunol. Revs., 130: 151-188(1992) が挙げられる。
【0130】
さらに、例えばヒトの重鎖および軽鎖不変領域をコードする配列で相同のマウスの配列を置換することにより(Morrison, et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851 [1984])、または免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのすべてまたは一部のコード配列を共有結合で連結することにより、DNAを修飾してもよい。そのようにして、抗−前立腺抗原モノクローナル抗体の結合特異性を有する「キメラの」または「ハイブリッドの」抗体をここで調製する。
【0131】
通常は、そのような非免疫グロブリンポリペプチドにより本発明の抗体の定常ドメインを置換し、あるいはそれらにより本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインを置換して、本発明による前立腺抗原用特異性を有する1つの抗原結合部および異なる抗原に対して特異性を有するもう1つの抗原結合部を含む、キメラの二価抗体を作成する。
【0132】
さらに、キメラ抗体またはハイブリッド抗体を、架橋剤を包含する方法を含む合成タンパク質化学の既知の方法を用いて生体外で調製してもよい。例えば免疫毒素を、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成して構成してもよい。この目的にふさわしい試薬の例には、イミノチオラートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミド酸が含まれる。
【0133】
(iv)ヒト化抗体
ヒト以外の抗体をヒト化する方法は周知である。一般にヒト化抗体は、ヒト以外の供給源から導入された1以上のアミノ酸残基を有する。しばしば、これらのヒト以外のアミノ酸残基を「輸入」残基と呼ぶ。それは通常「輸入」可変ドメインから採取する。ヒト化は基本的にWinterとその同僚の方法(Jones et al., Nature 321,522-525 [1986]; Riechmann et al., Nature 332,323-327 [1988]; Verhoeyen et al., Science 239,1534-1536 [1988]) に従って、げっ歯動物CDRまたはCDR配列によってヒト抗体の対応する配列を置き換えることにより行なうことができる。従って、そのような「ヒト化」抗体は、元のままのヒト可変ドメインより相当少ない領域をヒト以外の種の対応する配列で置き換えたキメラ抗体(Cabilly et al., 上出)である。実際上、ヒト化抗体は、通常はいくつかのCDR残基および恐らくいくつかのFR残基が、げっ歯動物抗体中の相似部位の残基によって置き換えられたヒト抗体である。
【0134】
ヒト化抗体の作製に用いる軽鎖および重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択が、抗原性を減少させるのに非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してげっ歯動物抗体可変ドメインの配列をスクリーニングする。げっ歯動物の配列に最も近いヒト配列を次にヒト化抗体のためのヒトの枠組み(FR)として受け入れる(Sims et al., J. Immunol., 151: 2296 [1993]; Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196: 901 [1987])。別の方法では、軽鎖または重鎖の特別のサブグループのすべてのヒト抗体の共通配列に由来する特別の枠組みを用いる。同じ枠組みをいくつかの異なるヒト化抗体に用いてもよい(Carter et al., Proc. Natl.Acad. Sci. USA, 89: 4285 [1992]; Presta et al., J. Immnol., 151: 2623 [1993])。
【0135】
抗原に対する高親和性および他の好ましい生物学的性質を保持したままで、抗体をヒト化することがさらに重要である。この目標を達成するために、好ましい方法に従えば、親およびヒト化配列の3次元モデルを用いて、親の配列および様々な概念上のヒト化生成物を解析する手順により、ヒト化抗体を調製する。三次元の免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の予想三次元立体構造を図解し表示するコンピュータープログラムが利用可能である。これらの表示を点検することにより、候補免疫グロブリン配列の機能上で残基の果たす可能性のある役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンの抗原結合能力に影響を及ぼす残基の解析が可能になる。このように、増大した標的抗原親和性などの望ましい抗体特性を達成するように、FR残基を共通配列および輸入配列から選択して組み合わせることができる。一般に、抗原結合に影響を及ぼす上で、CDR残基が直接的にまた最も本質的に関係している。
【0136】
(v)ヒト抗体
ヒトモノクローナル抗体をハイブリドーマ法により作製することができる。ヒトモノクローナル抗体産生用のヒト骨髄腫およびマウス ヒト ヘテロ骨髄腫細胞系統については、例えば、 Kozbor, J. Immunol. 133,3001(1984); Brodeur, et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51- 63(Marcel Dekker, Inc.,New York,(1987); および Boerner et al., J. Immunol., 147: 86-95(1991) によって記述されている。
【0137】
現在では、免疫化により、内因的な免疫グロブリンは生産せず、ヒト抗体の全レパートリーを生産することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産出することが可能である。例えば、キメラマウスおよび生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子の同型接合の欠失が、内因的な抗体産生の完全な抑制をもたらすことが報告された。そのような生殖系列突然変異体マウスにヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイを移入すると、抗原が投与された時に、ヒト抗体の産生をもたらすことになる。例えば、Jakobovits et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 2551(1993); Jakobovits et al., Nature, 362: 255-258(1993); Bruggermann et al., Year in Immuno., 7: 33(1993) を参照のこと。
【0138】
あるいは、ファージディスプレー技術(McCafferty et al. , Nature, 348: 552-553 [1990])を用いて、免疫化されていない供給者から得た免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、ヒト抗体および抗体フラグメントを生体外で生産することができる。この技術によれば、抗体V領域遺伝子が、M13またはfdなどの繊維状バクテリオファージの主要なもしくは主要でないコートタンパク質遺伝子中に組み立てられてクローニングされ、機能的な抗体フラグメントとしてファージ粒子の表面に提示される。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含んでいるので、機能的な性質に基づいて抗体を選択することは、その結果さらにそれらの特性を示す抗体をコードする遺伝子を選択することになる。したがって、ファージはB細胞の特性のうちのいくつかを模倣する。様々な形式でファージディスプレーを行なうことができる。それらの総説としては、例えば Johnson and Chiswell, Curr. Op. Struct. Biol.,3: 564-571(1993) を参照のこと。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源をファージディスプレーに用いることができる。Clackson et al., Nature, 352: 624-628(1991)は、免疫化マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さな無作為の組み合わせのライブラリーから抗−オキサゾロン抗体の広範なアレイを分離した。免疫化されていないヒト供給者からのV遺伝子のレパートリーを構成することができ、基本的に Marks et al., J. Mol.Biol. , 222: 581-597(1991),または Griffith et al., EMBO J. , 12: 725-734(1993) に記載の技術に従って、抗原(自己抗原を含む)の広範なアレイに対する抗体を分離することができる。
【0139】
自然の免疫反応では、抗体遺伝子が高頻度で突然変異を蓄積する(体細胞性過剰変異)。導入された変化のうちのいくつかがより高い親和性を与え、次の抗原投与の間に高親和性表面免疫グロブリンを提示するB細胞が優先的に複製され分化する。この自然の過程を「chainシャフリング」として知られる技術を採用して模倣することができる(Marks et al., Bio/Technology, 10: 779- 783 [1992])。この方法では、ファージディスプレーによって得られた「一次」ヒト抗体の親和性を、重鎖および軽鎖のV領域遺伝子を、免疫化されていない供給者から得たV領域遺伝子の自然発生変異体のレパートリー(レパートリー)で次々と置き替えることにより改善することができる。この技術が、nMオーダーの親和性を備えた抗体および抗体フラグメントの産生を可能にする。非常に大きなファージ抗体レパートリーを作るための戦略について、Waterhouse et al., Nucl. Acids Res., 21: 2265-2266(1993) により記述されている。
【0140】
遺伝子シャフリングを用いて、出発点のげっ歯動物抗体と同様の親和性および特異性を有するヒト抗体をげっ歯動物抗体から導出することができる。「エピトープ インプリンティング」とも呼ばれるこの方法によれば、ファージディスプレー技術によって得られたげっ歯動物抗体の重鎖または軽鎖のVドメイン遺伝子を、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーによって置き替え、げっ歯動物・ヒトキメラを作成する。抗原を用いて選択することによって、機能的抗原結合部位を復元できたヒト可変部位を単離することが可能になる。つまり、エピトープがパートナーの選択を支配する(インプリントする)。残っているげっ歯動物V領域を置き換えるために、この手続き繰り返すことにより、ヒト抗体が得られる(PCT WO 93/06213、1993年4月1日公表を参照)。従来のCDR移植によるげっ歯動物抗体のヒト化と異なり、この技術はげっ歯動物起源の枠組みまたはCDR残基を有しない完全なヒト抗体を提供する。
【0141】
(vi)二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒト抗体またはヒト化抗体である。本明細書の場合には、結合特異性のうちの1つは、本発明による前立腺抗原に対するものとなる。二重特異性抗体を作製する方法は既知である。
【0142】
伝統的には、二重特異性抗体の組換体の生成は、2つの重鎖が異なる特異性を有する、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対を共発現させることに基づいている(Milstein and Cuello, Nature, 305: 537-539 [1983])。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の無作為的組合せのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生し、そのうちの1つだけが正しい二重特異性構造を持っている。正しい分子の精製は、通常アフィニティークロマトグラフィー工程によって行われるが、かなり厄介であり、また収率が低い。同様の手法が1993年5月13日に公表された WO 93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J.,10: 3655-3659(1991)に開示されている。
【0143】
別のより好ましい手法によれば、望みの結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)を免疫グロブリン不変領域配列に融合する。その融合は好ましくは、少なくともヒンジ、CH2およびCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖不変ドメインと行う。融合体の少なくとも1つの中に、軽鎖結合に必要な部位を含んでいる最初の重鎖不変部ドメイン(CH1)を持つことが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体およびもし望めば免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、個別の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物へ同時トランスフェクションする。これが、構築の中で用いられる3つのポリペプチド鎖を等しくない比率で用いて最適の収率をもたらす実施態様において、3つのポリペプチド断片の相互の比率を調節する際に大きな柔軟性を与える。しかしながら、少なくとも2つの等しい比率のポリペプチド鎖の生産が高収率をもたらす場合、または比率が特に重要でない場合、1つの発現ベクトルに2または3つのポリペプチド鎖すべてのコード配列を挿入することができる。この方法の好ましい実施態様では、二重特異性抗体は、1つの腕の中の第1の結合特異性を備えたハイブリッドの免疫グロブリン重鎖、および別の腕の中のハイブリッドの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性を与える)から成る。二重特異性分子の2分の1の中だけに免疫グロブリン軽鎖が存在することが、分離を容易にするので、この非対称構造が、望まない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの希望する二重特異性複合物の分離を促進することを見出した。
【0144】
二重特異性抗体生成のさらなる詳細は、例えば Suresh et al., Methods in Enzymology, 121: 210(1986)を参照のこと。
【0145】
(vii)ヘテロ結合抗体
ヘテロ結合抗体もまた本発明の範囲内である。ヘテロ結合抗体は2つの共有結合で連結された抗体から成る。そのような抗体は、例えば望ましくない細胞を免疫細胞の標的とするために(U. S. Pat. No. 4,676,980)そしてHIV感染の治療のために(WO 91/00360; WO 92/00373; および EP 03089)提案された。ヘテロ結合抗体は任意の便利な架橋法を用いて作ればよい。適当な架橋剤は周知であって、U. S. Pat. No. 4,676,980に多くの架橋技術と共に開示されている。
【0146】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを遺伝子送達媒体の中で利用することができる。遺伝子送達媒体はウイルス起源でも非ウイルス起源でもよい(一般には, Jolly, Cancer Gene Therapy 1: 51-64(1994); Kimura, Human Gene Therapy 5: 845-852(1994); Connelly, Human Gene Therapy 1: 185-193(1995); および Kaplitt, Nature Genetics 6: 148-153(1994) を参照のこと)。本発明による治療用コード配列を含むコンストラクトの送達のための遺伝子療法媒体は局所的にまたは全身的に投与することができる。これらのコンストラクトは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターの手法を利用することができる。内因的な哺乳動物のまたは異種のプロモーターを用いてそのようなコード配列の発現を誘導することができる。コード配列の発現は恒常的であるか調節されるかのどちらでもよい。遺伝子療法の好ましい媒体にはレトロウイルスのおよびアデノウイルスのベクターが含まれる。
【0147】
アデノウイルスのベクターの代表的な例には、Berkner, Biotechniques 6 : 616-627(Biotechniques); Rosenfeld et al., Science 252 : 431-434(1991); WO 93/19191 ; Kolls et al., P. N. A. S. 215-219(1994); Kass-Bisler et al., P. N. A. S. 90: 11498-11502(1993); Guzman et al., Circulation 88: 2838-2848(1993); Guzman et al., Cir. Res. 73: 1202-1207(1993); Zabner et al., Cell 75: 207-216(1993); Li et al., Hum. Gene Then. 4: 403-409(1993); Cailaud et al., Eur. J Neurosci. 5: 1287-1291(1993); Vincent et al., Nat. Genet. 5: 130-134(1993); Jaffe et al., Nat. Genet. 1: 372-378(1992); および Levrero et al., Gene 101: 195- 202(1992)に記載されたものが含まれる。本発明において採用できる典型的なアデノウイルスの遺伝子療法ベクターには、さらに、WO 94/12649, WO 93/03769; WO 93/19191 ; WO 94/28938 ; WO 95/11984 および WO 95/00655 に記述されたものが含まれる。Curiel, Hum. Gene Ther. 3: 147-154(1992)に記述されている死んだアデノウイルスに連結したDNAの投与を採用してもよい。
【0148】
他の遺伝子送達媒体および方法を使用してもよい;それには、死んだアデノウイルスのみに連結したポリカチオン濃縮DNA、例えばCuriel, Hum. Gene Ther. 3: 147-154(1992); リガンドにリンクしたDNA、例えば Wu, J. Biol. Chem. 264: 16985- 16987(1989) 参照; 真核生物細胞送達媒体細胞、例えばU. S. Serial No. 08/240,030, filed May 9,1994, および U. S. Serial No. 08/404,796参照; 光重合されたヒドロゲル材料の沈着; U. S. Patent No. 5,149,655に記載された携帯型の遺伝子移入粒子銃; U. S. Patent No. 5,206,152 および WO 92/11033に記載された電離放射線;核電荷の中和または細胞膜との融合、が含まれる。追加の手法がPhilip, Mol. Cell Biol. 14 : 2411-2418(1994), および Woffendin, Proc. Natl. Acad. Sci. 91 : 1581-1585(1994)に記載されている。
【0149】
裸のDNAも使用できる。典型的な裸のDNAの導入方法についてWO 90/11092およびU.S.Patent No.5,580,859に記載されている。生物分解性のラテックスビーズを用いて、取り込み効率を改善できる。DNAでコートされたラテックスビーズは、ビーズによるエンドサイトーシス開始後に細胞内へ効率的に輸送される。ビーズの疎水性を増加させる処理、およびそれによるエンドソームの破壊と細胞質中へのDNAの放出の促進によって方法をさらに改善できる。遺伝子送達媒体として作用することができるリポソームが、 U. S. Patent No. 5,422,120, PCT Patent Publication Nos. WO 95/13796, WO 94/23697, および WO 91/14445, ならびに EP No. 0 524 968 に記載されている。
【0150】
ウイルスによらないさらに使用に適した送達には、Woffendin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91(24): 11581- 11585(1994) に記載された手法のような機械的な送達システムが含まれる。さらに、コード配列、およびその発現生成物を、光重合されたヒドロゲル材料の沈着により送達することができる。コード配列の送達に用いることができる他の遺伝子送達用の従来方式には、例えば、U.S.Patent No. 5,149, 655に記載の携帯型の遺伝子移入粒子銃の使用;U. S. Patent No. 5,206,152 および PCT Patent Publication No. WO 92/11033.に記載の移送された遺伝子を活性化するための電離放射線の使用が含まれる。
【0151】
目的の抗体または抗体フラグメントは有効な部分、例えば、放射性核種、毒素、化学療法剤、プロドラッグ、細胞溶解性薬剤、酵素その他、に直接または間接的に結合させてもよい。好ましい実施態様において、抗体または断片を、処置または診断用の放射性ラベルに直接に、またはキレート剤を使用して結合させる。適当な放射性ラベルの例は周知であり、90Y, 125I, 13lI, 111I, l05Rh, 153Sm, 67Cu, 67Ga,166Ho,177Lu,186Reおよび188Reが含まれる。
【0152】
抗体に結合される適当な薬剤の例には、メトトレックス酸、アドリアマイシン、およびインターフェロン、インターロイキンその他のリンホカインが含まれる。連結できる適当な毒素には、リシン、コレラおよびジフテリア毒素が含まれる。
【0153】
好ましい実施態様において、目的の抗体を治療の放射性ラベルに結合して、放射線免疫治療に用いる。
【0154】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
ある状況では、前立腺細胞によって発現されるタンパク質の量を調整するか減少させることが望ましい可能性がある。したがって本発明の別の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドを作製することができ、そして1つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することを含む方法を、細胞による本発明の前立腺抗原発現のレベルを減少させるために利用できる。アンチセンスオリゴヌクレオチドとは、塩基対形成により標的の発現に関与する特異的な相補的核酸配列と相互作用して、遺伝子の発現を減少させるヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを指す。好ましくは、遺伝子の発現に関与する特定の核酸配列は、遺伝子をコードするゲノムDNA分子またはmRNA分子である。このゲノムDNA分子は、遺伝子の調節領域または成熟した遺伝子のためのコード配列を含むことができる。
【0155】
アンチセンスのオリゴヌクレオチドおよびそのための方法という文脈中の「ヌクレオチド配列に相補的」という用語は、細胞中で、即ち生理学的条件下で、その配列にハイブリダイゼーションすることができるほどに十分に配列に相補的であることを意味する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは好ましくは約8〜約100のヌクレオチドの配列を含み、より好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは約15〜約30のヌクレオチドを含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、さらに例えば修飾されたヌクレオチド間結合 [Uhlmann and Peyman, Chemical Reviews 90: 543-548(1990); Schneider and Banner, Tetrahedron Lett. 31: 335,(1990)。これらを参照して取り込む]、5,958,773およびそこに開示されている特許中に公開済の修飾された核酸塩基および/または糖その他の、核酸加水分解に対する抵抗力を与える様々な修飾を含むことができる。
【0156】
広くアンチセンス技術に適用可能であるとして当業者に知られているアンチセンス分子のいかなる修飾または変異も、本発明の範囲内に含まれる。そのような修飾には、U. S. Patents 5,536,821; 5,541,306; 5,550,111; 5,563,253; 5,571,799; 5,587,361, 5,625,050 および 5,958,773 に開示されているような、リンを含む結合を調製することが含まれる。
【0157】
本発明のアンチセンス化合物は修飾された塩基を含むことができる。オリゴヌクレオチドを1つ以上の部分または結合体に化学的に連結することにより本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを修飾して、アンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取り込みを促進することができる。そのような部分あるいは結合体は、例えば U. S. Patents 5,514, 758, 5,565,552, 5,567,810, 5,574,142, 5,585,481, 5,587,371, 5,597,696 および 5,958,773の中に開示されている、コレステロール、コール酸、チオエーテル、脂肪鎖、リン脂質、ポリアミン、ポリエチレングリコール(PEG)、パルミチル部分その他の脂質を含む。
【0158】
キメラのアンチセンスオリゴヌクレオチドもまた本発明の範囲内であって、例えば、U.S. Patents 5,013,830, 5,149,797, 5,403,711, 5,491,133, 5,565,350, 5,652,355, 5,700,922 および 5,958,773.に記載されている方法を用いて、本発明のオリゴヌクレオチドから調製することができる。
【0159】
アンチセンス技術においては、個々の標的に対して最適のアンチセンス分子を選ぶために、ある程度の型通りの実験作業が要求される。効果的であるために、アンチセンス分子は、好ましくは標的RNA分子のアクセス可能部分、または露出された部分を標的とする。ある場合には、標的mRNA分子の構造に関して情報が利用可能であるが、アンチセンスを用いる抑制に対する現在のアプローチは実験を介して行われる。細胞中のmRNAレベルを、治療する細胞および対照細胞中でmRNAの逆転写およびcDNAレベルを定量することにより普通に測定することができる。生物学的効果を、細胞成長または生存度を測定することによって当業者に知られているように型どおりに決定することができる。
【0160】
cDNAレベルの検査および解析によりアンチセンス活性の特異性を測定することが、アンチセンスの結果を確証する技術的に認められた方法である。治療された細胞または対照細胞から得られたRNAを逆転写し、その結果得られるcDNA集団を解析すべきであることが示唆されてきた[Branch, A.D., T.I.B.S.23: 45-50(1998)]。
【0161】
本発明の治療用または医薬品組成物を、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、経皮的、クモ膜下、または大脳内を含む、既知の適当な経路により投与することができる。投与は、注射のように迅速にも、またはゆっくりとした注入や徐放製剤の投与による一定期間に亘るようにもできる。
【0162】
さらに、対象の前立腺腫瘍タンパク質を、望ましい薬学的または薬力学性質を与える薬剤とリンクさせるか結合させることができる。例えば、トランスフェリンレセプターに対する抗体などの、血液脳関門を横切る浸透または輸送を促進することが知られている任意の物質にタンパク質を連結させ、静脈注射によって投与することができる(例えば、Friden et al., Science 259: 373-377(1993)を参照のこと。これを参照して取り込む)。更に、可溶性、安定性、半減期についての望ましい性質、および他の薬学的に有利な性質を得るために、目的のタンパク質Aまたはタンパク質Bを、ポリエチレングリコールなどのポリマーに安定してリンクすることができる [例えば、Davis et al., Enzyme Eng. 4: 169-73(1978); Buruham, Am. J. Hosp. Pharm. 51: 210- 218(1994) を参照のこと。これらを参照して取り込む]。
【0163】
組成物を通常は製剤の形で使用する。そのような調製を製薬技術において周知の手法で行う。例えば、 Remington Pharmaceutical Science, 18th Ed., Merck Publishing Co. Eastern PA,(1990)を参照のこと。好ましい1つの調合は、生理的食塩水の媒体を利用する。しかし、生理的濃度の他の無毒な塩類、5%グルコース水溶液、滅菌水その他の、他の薬学的に許容できる担体を用いることも考えられる。適当な緩衝液が組成物中に存在することも望ましい。望むなら、そのような溶液を凍結乾燥し、即座の注入用に滅菌水を追加して再構成するよう準備された無菌のアンプルに格納することができる。一次溶媒は水性あるいは非水性であり得る。対象の前立腺腫瘍抗原、その断片または変異体を、治療を要する組織へ移植することができる固体または半固体の生物学的適合性のある基質に組み入れることもできる。
【0164】
担体はさらに、製剤のpH、浸透圧、粘性、透明性、色彩、滅菌性、安定性、溶解速度、または匂いを修正しもしくは維持するための他の薬学的に許容できる賦形剤を含んでもよい。同様に担体は、放出または吸収、または血液脳関門を横切る浸透を修正し、もしくは維持するためにさらに他の薬学的に許容できる賦形剤を含んでもよい。そのような賦形剤は、単回投与または複数回投与形式のいずれかによる非経口投与のための用量を、または連続的または周期的な注入による脳脊髄液中への直接注入のための用量を配合するために通常慣習的に採用する物質である。
【0165】
服用量投与は、用量製剤の薬物動力学のパラメーターおよび用いた投与経路に応じて、繰り返すことができる。
【0166】
さらに対象の抗体または核酸拮抗剤を含む一定の製剤を経口投与することも考慮する。そのような製剤を好ましくはカプセルに入れ、固体の剤形中に適当な担体と共に製剤化する。適当な担体、賦形剤および希釈剤のいくつかの例は、ラクトース、デキストロース、蔗糖、ソルビトール、マニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、メチル-およびプロピルヒドロキシ安息香酸、タルク、マグネシウム、ステアリン酸塩、水、鉱油その他、が含まれる。製剤はさらに、平滑剤、湿潤剤、乳化および懸濁剤、保存剤、甘味剤、または芳香剤を含むことができる。患者への投与の後に、有効成分を迅速放出、徐放または遅延放出によって与えるように周知の手法を採用して組成物を製剤化すればよい。製剤はさらにタンパク質の加水分解による崩壊を減じ吸収を促進する物質、例えば界面活性薬剤などを含むことができる。
【0167】
患者の近似的な体重または体表面積、あるいは身体スペースが占める体積により具体的な用量を計算する。用量はまた選択された特別の投与経路に応じて計算することになる。治療用に適切な用量を決定するのに必要な計算のさらなる精細化は、通常の当業者によって型どおりに行われる。そのような計算はここに標的細胞の分析用試料中に開示された活性に照らして当業者が過度の実験作業なしに遂行することができる。正確な用量を標準の用量-応答関係の研究と関連して決定する。治療する条件、投与する組成物の選択、個々の患者の年齢、体重および応答、患者の症状の重症度、および選択する投与経路、を含む関連した状況に照らして、実際に投与する組成物の量を担当医が決定するであろうと理解される。
【0168】
この発明の1つの実施態様では、タンパク質の生物学的な活性型、またはタンパク質の前駆物質、つまり身体によってタンパク質の生物学的活性型に容易に変換されることができる分子を生産することができるベクターまたは細胞を患者へ移植することにより、タンパク質を治療用に投与することができる。1つの方法では、タンパク質を分泌する細胞を、患者への移植用半透膜中にカプセル化して入れてもよい。細胞は、タンパク質またはその前駆物質を通常に発現する細胞であってもよいし、またはタンパク質またはその前駆物質を発現するように細胞を形質転換してもよい。疾患者がヒトである場合、細胞はヒト起源であることが好ましく、タンパク質はヒトタンパク質であることが好ましい。しかしながら、以下に議論されるヒト以外の霊長動物のタンパク質相同体もまた有効である可能性があると予想される。
【0169】
対象とする前立腺タンパク質または核酸の検出
多くの状況において、患者中のタンパク質または対応するmRNAのレベルを決定することが望ましい。以下に開示する証拠が、例えば癌などのいくつかの疾病中において対象とする前立腺タンパク質が異なるレベルで発現している可能性を示唆している。それにより、これらのタンパク質の存在が細胞の増殖と生存に関係する正常な生理機能に役立つという結論に根拠が与えられる。内生的に生成された本発明のタンパク質も、ある疾病状態において役割を果たす可能性がある。
【0170】
患者の中のタンパク質の存在を検出するという文脈の中で、ここに用いられる「検出」という用語は、患者中のタンパク質の量またはタンパク質の一定量を発現する能力の決定、予想される疾病の結果および回復の見込みの観点からの予後の推定、症状の状態の尺度としての一定期間にわたるタンパク質レベルのモニタリング、および例えば前立腺癌などの患者の好ましい治療処置を決定するためのタンパク質レベルのモニタリング、を含むことを意図している。
【0171】
本発明の前立腺タンパク質が患者中に存在することを検出するために、患者から試料を得る。試料は、組織生検試料または血液、血漿、血清、CSF、尿その他の試料でよい。いくつかの癌において、目的のタンパク質が高水準で発現されることが見出された。タンパク質を検出するための試料を前立腺組織から得ることができる。末梢のタンパク質レベルを評価する場合、試料は血液、血漿または血清の試料であることが好ましい。中枢神経系中のタンパク質レベルを評価する場合、好ましい試料は脳脊髄液または神経組織から得られた試料である。組織コレクションまたは培養などの非侵襲性の方法によって試料を得てもよいし、または直接入手可能な組織材料(尿、唾液、便、毛髪、など)を用いてもよい。
【0172】
いくつかの例においては、遺伝子が、患者あるいは患者内部の組織または細胞系統において無損傷かどうか判断することが望ましい。無損傷の遺伝子とは、点突然変異、欠失、挿入、染色体切断、染色体の再配列その他の、遺伝子の変質がないことを意味する。そのような変質は、対応するタンパク質の生産を変更するかまたはその生物活性、安定性その他を変更して、疾病過程を招く可能性がある。したがって、本発明の1つの実施態様において、遺伝子の任意の変更を検出し特徴づけるための方法を提供する。その方法には遺伝子、ゲノムDNAまたはその断片を含む、オリゴヌクレオチドまたはその誘導体を提供することが含まれる。オリゴヌクレオチドの誘導体とは、誘導された配列が自分が由来する配列に対して十分な配列の相補性を持っていて、遺伝子に特異的にハイブリダイズできるという点で、誘導されたオリゴヌクレオチドがその由来する配列と実質的に同一であることを意味する。誘導されたヌクレオチド配列は、必ずしも物理的にヌクレオチド配列から導出されるのではなく、例えば、化学合成、またはDNA複製、または逆転写もしくは転写を含む任意の方法で生成されてもよい。
【0173】
通常は、患者のゲノムDNAを患者の細胞試料から分離し、例えばTaqI、AluIなどの1つ以上の制限エンドヌクレアーゼで消化する。周知のサザンブロットプロトコールを用いて、この定量が、患者または患者中の特別の組織が無損傷の本発明の前立腺遺伝子を持つか、または遺伝子異常を持っているか決定する。
【0174】
遺伝子へのハイブリダイゼーションは、一本鎖DNAを得るために染色体DNAを変性させること、一本鎖DNAを遺伝子配列に結合した遺伝子プローブと接触させること、およびハイブリダイズしたDNAプローブを同定して遺伝子の少なくとも一部を含む染色体DNAを検出すること、を含むことになろう。
【0175】
ここに用いられる「プローブ」という用語は、そのプローブ配列と標的領域中の配列との相補性により、標的配列とハイブリッド構造を形成するポリヌクレオチドから成る構造を指す。プローブとしての使用に適したオリゴマーは、標的とされた配列に相補的な最低約8〜12の隣接するヌクレオチドを、また好ましくは最小約20のヌクレオチドを含めばよい。
【0176】
本発明による遺伝子はDNAまたはRNAのオリゴヌクレオチドであってよく、例えば切出し、転写または化学合成などの既知の任意の方法によって作製することができる。プローブは、例えば放射性もしくは蛍光性ラベルまたは酵素のマーカーなどの既知の任意の検出できるラベルでラベルしてもよい。プローブのラベル付けを、PCR、ランダムプライミング、末端ラベリング、ニックトランスレーションその他の既知の任意の方法によって行うことができる。当業者はまた、ラベルされたプローブを使用しない他の方法を、ハイブリダイゼーションを確認するために用いることができることを認識することになる。ハイブリダイゼーションの検出のために用いることができる方法の例には、サザンブロッティング、蛍光in situハイブリダイゼーションおよびPCR増幅による一本鎖DNA高次構造多型が含まれる。
【0177】
ハイブリダイゼーションは、通常25〜45℃で、より好ましくは32〜40℃で、およびより好ましくは37〜38℃で実行する。ハイブリダイゼーションに必要な時間は、約0.25〜約96時間、より好ましくは約1〜約72時間、および最も好ましくは約4〜約24時間である。
【0178】
遺伝子異常をまた、PCR法を用い、遺伝子の側面または遺伝子内に位置するプライマーを用いることにより検出することができる。PCR法は周知である。簡潔に述べれば、遺伝子内に存在する標的配列に隣接する核酸配列にハイブリダイズすることができる2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて標的配列を増幅することによりこの方法を行なう。ここに用いられる「オリゴヌクレオチドプライマー」という用語は、約8〜約30塩基の長さのDNAまたはRNAの短い鎖を指す。上流および下流のプライマーは通常、約20〜約30の塩基対の長さであり、ヌクレオチド配列複製のためにフランキング領域にハイブリダイズする。DNAポリメラーゼがデオキシヌクレオチド三燐酸またはヌクレオチド類似体の存在下で重合を触媒し、二本鎖DNA分子を産生する。その後、物理的、化学的、または酵素的な方法を含む任意の変性方法によって二本鎖を分離する。一般に、典型的には80℃〜105℃の温度で約1から約10分間核酸を加熱することを含む物理的な変性方法を用いる。望みのサイクル数だけその工程を繰り返す。
【0179】
プライマーは、増幅されるDNA鎖に実質的に相補的であるように選択する。したがって、プライマーは鋳型の正確な配列を反映する必要はないが、選択的に増幅される鎖にハイブリダイズするために十分に相補的でなければならない。
【0180】
PCR増幅の後に、遺伝子またはその断片を含むDNA配列を直接配列決定し、ここに開示された配列と比較して解析して、活性または発現レベルその他を変化させる可能性のある変更を同定する。
【0181】
別の実施態様において、遺伝子を発現する組織の解析に基づいて本発明の腫瘍タンパク質を検出する方法を提供する。前立腺組織などの一定の組織が対象の遺伝子を過剰発現することが見出された。この方法はポリヌクレオチドを正常に遺伝子を発現する組織の試料から得られるmRNAにハイブリダイズさせることを含む。遺伝子に異常を有する疑いのある患者から試料を得る。
【0182】
タンパク質をコードするmRNAの存在を検出するために、患者から試料を得る。試料は血液、または組織生検試料から得ればよい。そこに含まれている核酸を抽出するために試料を処理してもよい。試料から得た核酸に、ゲル電気泳動法または他のサイズによる分離技術を適用する。
【0183】
試料のmRNAを、ハイブリッド二重鎖を形成するプローブとして働くDNA配列に接触させる。上に議論したようなラベルされたプローブを用いることにより二重鎖の検出が可能になる。
【0184】
タンパク質をコードするcDNAまたはそのcDNAの誘導体をプローブとして用いる場合には、偽陽性を防ぐために高い厳格性条件を用いることができる。偽陽性とは、実際は無損傷でかつ機能する遺伝子が存在しない場合のハイブリダイゼーションであり、遺伝子ヌクレオチド配列の見かけの検出である。遺伝子cDNAに由来する配列を用いるとすれば、より低い厳格性条件を用いることができるかもしれないがしかし、これは、偽陽性が起こりやすいという理由で、あまり好ましくない手法になる可能性がある。ハイブリダイゼーションの厳格性は、温度、イオン強度、時間の長さ、およびフォルムアミド濃度を含む、ハイブリダイゼーション中および洗浄工程中の多くの要因により決定される。これらの要因は、例えば Sambrook et al. [Sambrook et al.(1989), 上記] の中で概説されている。
【0185】
タンパク質Aまたはタンパク質BをコードするmRNAを試料中で検出する感度を増大させるために、逆転写/重合連鎖反応(RT/PCR)の技術を用いて、前立腺腫瘍抗原をコードするmRNAから転写されたcDNAを増幅することができる。RT/PCRの方法は周知であり、以下のようにして実施することができる。例えば標準のグアニジウムイソチオシアネート法によって全細胞RNAを分離し、全RNAを逆転写する。逆転写の方法には、RNAの鋳型上における逆転写酵素および3’端プライマーを用いるDNA合成が含まれる。通常は、プライマーはオリゴ(dT)配列を含む。このようにして生成したcDNAを次に、PCR法および遺伝子Aまたは遺伝子Bに特異的なプライマーを用いて増幅する [Belyavsky et al., Nucl.Acid Res. 17: 2919-2932(1989); Krug and Berger, Methods in Enzymology, 152: 316- 325, Academic Press, NY(1987)。これらを参照して取り入れる]。
【0186】
増幅するDNAセグメントの2つのフランキング領域と実質的に相補的である2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、上記のようにポリメラーゼ連鎖反応法を実施する。増幅に続いて次にPCR生成物を電気泳動にかけ、エチジウムブロマイド染色またはリン画像化により検出する。
【0187】
本発明は、さらに患者から得られた試料中のタンパク質の存在を検出する方法を提供する。タンパク質を検出するために任意の既知の方法を用いることができる。そのような方法には、免疫拡散、免疫電気泳動、免疫化学的方法、バインダー リガンド測定法、免疫組織化学技術、凝集反応および補体測定が含まれる、しかしそれらに限定されない [Basic and Clinical Immunology, 217-262, Sites and Terr, eds., Appleton & Lange, Norwalk, CT,(1991)、これは参照して取り入れる]。抗体を前立腺腫瘍抗原タンパク質の1個または複数のエピトープと反応させ、ラベルされた本発明の前立腺抗原またはその誘導体を拮抗的に置き換えることを含むバインダー リガンド免疫測定法が好ましい。
【0188】
ここで用いられているように、対象の前立腺腫瘍抗原の誘導体は、あるアミノ酸が欠失したかあるいは修飾されたアミノ酸または異常なアミノ酸に置き換えられるか変えられたポリペプチドを含んでおり、その誘導体は遺伝子と生物学的に等価であり、そしてそのポリペプチド誘導体はタンパク質に対して生成された抗体と交差反応するように考慮されている。交差反応とは、抗体が抗体形成を引き起こした抗原以外の抗原と反応することを意味する。
【0189】
多数の拮抗的または非拮抗的タンパク結合免疫測定法が周知である。そのような測定で採用される抗体は、例えば凝集検査で用いられる場合のようにラベルされないか、または広範囲の様々なアッセイ方法で使用するためにラベルされる。用いることができるラベルには、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などの酵素免疫定量法、蛍光免疫分析法その他で使用される、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、酵素基質、または補因子、酵素阻害剤、粒子、染料その他が含まれる
【0190】
さらなる本発明の態様は、候補化合物が上に開示した標的分子に好ましくは選択的に結合するかどうかの決定を含む、生物学的活性化合物を選択し、同定し、選別し、特性決定し、または最適化する方法に関する。そのような標的分子は、核酸配列、ポリペプチドおよびそれらの断片を、通常は前立腺特異抗原を、さらにより好ましくはその細胞外部分を含む。生体外または生体内で、通常は生体外で、細胞ベースの系または非細胞系で結合を評価することができる。通常は、標的分子を任意の適当な装置中において候補化合物と接触させ、複合体形成を測定する。標的分子および/または候補化合物を支持体上に固定してもよい。同定されたまたは選択された化合物は、癌疾病を、特に前立腺癌を治療するための薬物候補または新薬となる。
【0191】
本発明について、好ましい実施態様を含めて上述したが、さらに本発明を説明するために次の実施例を提供する。
【実施例】
【0192】
組織源:
研究プロトコールの評価のために適切な患者試料を入手した。試料は適切な臨床的パラメーターを備え、また患者の同意を得たものである。すべての試料について組織学的評価を行なった。また病理学による診断により、各試料内の悪性腫瘍の存在および/または不存在を確認した。臨床データは一般に患者の病歴、生理病理学、および前立腺癌生理学に関係したパラメーターを含んでいた。10の正常な試料および10の悪性腫瘍の試料を利用可能な臨床情報と共に入手した。さらに、エピトープの組織特異的発現プロフィールを決定するために正常な前立腺以外および前立腺癌以外の器官からの10の試料を入手した。既知の販売元から正常組織試料由来のRNAを得た。
【0193】
DATASライブラリー試料の生成
病理学的診断(腫瘍対正常)に基づいて、試料をプールした。等量の全RNAに基づいて試料をプールし、全体で100μgのプールしたRNA試料を生成した。以前に U.S. Patent No. 6,251,590 で開示した通りにDATASライブラリーを構成した。なおこの開示文献は全体として取り入れる。簡潔に述べれば、正常および腫瘍のプールした試料から全RNAを単離し、続いてプールした各試料の全RNAからmRNAを精製した。ビオチン化オリゴ(dT)プライマーを用いて、cDNAの合成を行なった。ビオチン化cDNAを、正常、腫瘍が逆の試料のmRNAとハイブリダイズさせ、cDNAとmRNAの間のヘテロ二本鎖を形成した。例えば、プールした正常前立腺試料のビオチン化cDNAを前立腺腫瘍mRNAとハイブリダイズさせた。同様に前立腺腫瘍のビオチン化cDNAを前立腺の正常なRNAとハイブリダイズさせ、第2のDATASライブラリーを生成した。ストレプトアビジンでコートされたビーズを使用してcDNA上に存在するビオチンを結合させ、複合体を精製した。RNAseHでヘテロ二本鎖を消化し、cDNAに相補的なRNAを分解した。cDNAと異るmRNAの配列はすべて無損傷のままであった。これらの一本鎖RNA断片または「ループ」を、続いて縮退プライマーによって増幅し、pGEM−TまたはpCR II TOPOベクター(会社供給源)にクローニングしてDATASライブラリーを生成した。
【0194】
クローンの配列決定およびバイオインフォマティクス解析:
DATASライブラリーを用いてE.coliを形質転換し、個々のクローンを、標準分子生物学技術を用いて分離することができた。これらのライブラリーから、10,665の個々のクローンを単離し、自動化されたApplied Biosystems 3100 シーケンサーを用いて配列決定した。得られたヌクレオチド配列を、解析のためにバイオインフォマティクスパイプラインに付託した。DATASライブラリーはPCR増幅されたDNAによって作製されているので、同じ配列の多くのコピーがライブラリーから単離されたクローン中に存在する。したがってクローンの冗長度を減少させて、ユニークで繰り返しのない単離された配列の数を同定することが重要である。DATAS断片のこの大きなセットから、1699のユニークな、冗長度の無い配列を同定し、各DATAS断片に候補遺伝子で注釈を付けた。2つの方法によりDATAS断片をヒトゲノム配列にアラインメントさせることにより、注釈付けを行なった;それは1)公的に利用可能なアラインメントおよびゲノムビューアツールのBlat(Kent et al., 2002));および、2)市販のゲノムアラインメントおよびビューアツール、Prophecy(Doubletwist)である。各DATAS断片配列を、DATAS断片を含むゲノム配列と重複する対応する遺伝子で注釈した。RefSeq受入番号、または、例えばGenscan、Twinscan、Fgenesh++などの、様々なアルゴリズムによる仮定的遺伝子予測、のいずれかで遺伝子を注釈した。同定された遺伝子は、DATAS断片の配列に合致したか(エクソンから断片への合致の場合)、またはDATAS断片に重複し(イントロンから断片への合致の場合)、そして遺伝子の全配列が同定された。これらの配列を、すべての可能性のある膜貫通タンパク質を検出するためにさらに解析した。膜タンパク質を、公的に利用可能な様々なアルゴリズムを使用して予測した。例えば、候補遺伝子のアミノ酸配列内に存在する膜貫通領域を同定するためにTMHMM(CBS)を用いた。DATAS断片を、スプライシングの結果物が細胞内領域または細胞外ドメインに影響したかどうかの判断を試みて、配列内に位置を決めた。良好な治療標的の同定を最大にするために配列に関連する遺伝子に順位を付けた。最優先遺伝子は、遺伝子が既知の膜タンパク質であり、遺伝子の機能が知られおり、そしてDATAS断片はタンパク質の細胞外ドメイン上のイントロンに位置するという特性を有していた。これはDATAS断片が細胞外に提示されていて、そしてモノクローナル抗体による治療処置に利用可能であることを示している。
【0195】
バイオインフォマティクス解析に基づいて、クローンに優先順位をつけて次の3群に分けた:
A)細胞外ドメイン上のイントロンに位置するDATAS断片を有する既知の膜貫通遺伝子。
B)細胞外または細胞内領域のいずれかでエクソンに位置するDATAS断片を有する既知および予測される膜貫通遺伝子。
C)ゲノムと一致しなかったDATAS断片。
【0196】
発現モニタリング:
前立腺癌の有効なエピトープ標的は、エピトープの発現が前立腺組織、または好ましくは前立腺腫瘍に限定されていることが必要である。優先順位をつけた各配列の発現プロフィールの評価を、周知の手法であるRT−PCRによって行なった。タッチダウンPCRとして知られる、GeneAmpPCRsystem9700, Applied Biosystems 用のユーザーマニュアルに記載されているプロトコールを用いた。手短かに言えば、DATAS断片に対するPCRプライマーを設計し、エンドポイントRT−PCR解析に用いた。各RT反応は、5μgの全RNAを含み、100μl容量中で、Archive RT Kit(Applied Biosystems) を用いて行なった。RT反応液を、水で1:50に薄め:4μlの希釈したストックを50μlのPCR反応液中で用い、PCR反応は、94℃3分間の1サイクル、94℃30秒、60℃30秒、および72℃45秒間の5サイクルから成り、各サイクル毎にアニーリング温度を0.5℃度低下させた。これに続けて、94℃30秒、55℃30秒、および72℃45秒間で30サイクルを行った。解析のために各反応物から15μlを取り除き、そして反応物をさらに10サイクル進行させた。これは30および40サイクルにおける解析のための反応物を生成し、発現の差の検出を可能にした。なお反応は40サイクルで飽和していた。正常および腫瘍前立腺の全RNA中、ならびに脳、心臓、肝臓、肺、腎臓、結腸、骨髄、筋肉、ひ臓および精巣の正常な試料からの全RNA中のDATAS断片の発現プロフィールを決定した。従って、前立腺腫瘍中の特異的発現および正常な前立腺を含む正常組織で見出された低い発現に対して、発現プロフィールに優先順位をつけた。
【0197】
RNA構造の検証:
DATASが、実験試料間で変化している配列を同定する。しかしながら、DATAS断片が表わす接合部または境界の正確な配列を単離したDATAS断片配列から直接決定することはできない。しかし、DATAS断片を用いて各試料中に存在する個々の転写物の配列を解明する実験を設計した。プライマーを提案されたDATAS断片配列より大きな遺伝子領域を増幅するために設計した。続いてこれらのアンプリコンをクローニングし、すべてのエクソンおよびイントロンの正確な接合部を同定するために配列決定した。これには、アイソフォームの一次構造(配列)を確認するために、同定された試料から得たアイソフォームの部分的なクローニングが必要であった。DATASライブラリーを生成するために最初に用いた20の試料(10の正常および10の腫瘍試料)をすべて、優先順位をつけた遺伝子のmRNA構造の確認に用いた。
【0198】
アイソフォームの全長クローンの単離:
構造確認過程で生成された情報とDNA断片とを利用して、両方のアイソフォームを含む全長クローンの単離を完遂した。いくつかの方法が全長クローンの単離に適用できる。コード配列に関する全配列情報が利用可能な場合には、配列から遺伝子に特異的なプライマーを設計し、組織試料の全RNAからコード配列を直接増幅するために用いた。これらの遺伝子特異的プライマーを用いて、RT−PCR反応を組み立てた。cDNAのプライマーとなるオリゴdTを用いて、以下に記述するようにRT反応を行なった。標準の方法により第二の鎖を生成し、二重鎖cDNAを生成した。遺伝子特異的プライマーを用いて、遺伝子のPCR増幅を行なった。PCRは、94℃30秒間、55℃30秒間、および72℃45秒間の30サイクルから成っていた。反応生成物を1%のアガロースゲル上で解析し、アンプリコンクローニングのためのAオーバーハングを備えた準備されたベクターに、アンプリコンをライゲートさせた。1μlのライゲーション反応混合物を用いて、アンプリコンをクローニングし単離するための大腸菌へ形質導入した。一度精製した後、アンプリコンを含むプラスミドをABI3100自動化シーケンサーで配列決定した。
【0199】
限られた配列情報のみが利用可能であった場合は、オリゴプリング法を利用した。手短に述べれば、DATAS断片に基づいて、遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドを設計した。オリゴヌクレオチドをビオチンでラベルし、それを用いて、正常な前立腺組織または前立腺腫瘍組織のいずれかから調製された一本鎖プラスミドDNAライブラリーとSambrook et al(1989)の手法に従ってハイブリダイズさせた。ストレプトアビジンを結合したビーズによって、ハイブリダイズしたcDNAを分離し、加熱して溶出した。溶出したcDNAを二本鎖プラスミドDNAに変換し、E.coli細胞に形質導入するために用いて、最長のcDNAクローンについてDNA塩基配列決定を行なった。
【0200】
結果
上記の方法を用いて、照合した正常な前立腺組織と比較した場合、前立腺腫瘍組織中に排他的にまたは増加したレベルで発現された、エクソン(新規のスプライシング変異体)に推定上相当する1699のDNA断片を同定した。
【0201】
これらの配列を用いてヒトゲノム配列を含む公開データベースを検索し、関連する遺伝子を同定した。この検索により、細胞表面タンパク質であることが既知のまたは可能性のあるエクソンに対応する122の断片が同定された。
【0202】
さらに細胞表面タンパク質の新規の配列情報を含むように見える最初の配列タグから、37の互いに異なる、選択的スプライシングされたアイソフォームを同定した。
【0203】
これらのDNA配列は配列リストおよび表1中で開示されており、配列番号1〜173、175、177、179、および181を有する核酸配列に対応する。一団の正常なヒト組織中の特異的なmRNAの発現を確認するために、各DATAS断片対してオリゴヌクレオチド プライマーを設計した。図1中に一例を示すが、配列番号92に対応するクローンが前立腺中に特異的な発現を示し、極めて低レベルが腎臓(レーン4)および膵臓(レーン9)において検出された。前立腺に特異的に発現されるか、または他の組織と比較して高度に前立腺に発現されることが判明したクローンすべてについて腫瘍試料中の発現を解析した。
【0204】
図2は、1つのDATASクローンの正常および腫瘍前立腺組織中の発現プロフィールを示す。3つの腫瘍のプールされた試料のうちの2つにおいてこのクローンの発現が上方制御され、4つの個々の腫瘍試料のうちの3つに高度に発現されている。腫瘍試料中でこのスプライス結果物が正常な前立腺と比較して高度に発現されること、および他の正常なヒト組織の中で低く発現されることは、前立腺癌用の新規のエピトープとして開発する用途を持つ一候補の例である。
【0205】
前立腺における特異的な発現プロフィールおよび前立腺腫瘍における高度の他と異なる発現プロフィールを表示したDATASクローンのスプライス結果物を単離して、各結果物の配列を決定した。図3に例を示す。ここで単離した結果物の配列を、Blat中のゲノム、およびUCSCのバイオインフォマティクス教室(Kent et al., 2002)により開発されたゲノムビューアにマップした。STEAP2に対する遺伝子座に位置する別々の5つのクローンを分離した。1つの発現配列タグ(EST)AK092666が、DATASを用いて分離されたスプライス結果物と多くの類似領域を含んでいた。5つのクローンすべてに対する配列および予測されたタンパク質翻訳について配列番号173〜182に記述し、図3中に図示する。各アイソフォームの読取枠の長さおよび予測されたタンパク質サイズについて表2に記述する。EST、AK092666は、エクソン5、即ちSTEAP2の3’末端エクソンに大きな欠失を含み、転写物の5’領域中に2つの新規のエクソンを有している。DATAS由来の結果物に対する命名法は、STEAP2に対するRefSeq配列と比較した場合のより高い類似性のために、AK092666を基礎にしている。同定された最初のアイソフォーム、AK092666_01(配列番号173)は、AK093666と比較すると新規のC末端エクソンを含んでおり、したがって、新規の接合部および翻訳のための新規の配列を生成し、また独特のアミノ酸配列(配列番号183)を生成する。同じ新規のエクソンを含むアイソフォームAK092666_03(配列番号177)により同じ新規の配列が生成され、それはエクソン4フレーム内の切り詰めという付加的なスプライシング結果物を有する。また同じ新規の配列がアイソフォームAK092666_05(配列番号181)によって生成され、これはAK092666_01からの単一のコドン欠失を含んでいる。AK092666_02(配列番号175)は、AK092666のエクソン6をスキップし、配列番号184の新規のアミノ酸配列を生成した。AK092666_04(配列番号179)は、エクソン4のフレーム外の短い切り詰めを含んでいて、それが早期停止コドンに遭遇する前に8つの新規のアミノ酸の生成をもたらす(配列番号185)。
【0206】
【表1】

【0207】
配列番号183および184に見出される新規のアミノ酸は、前立腺癌の膜タンパク質中において特異的に発現される新規のエピトープを表わす。これらのエピトープは、前立腺癌治療用のモノクローナル抗体免疫療法の標的である。存在する様々なアイソフォームを図示するために、5’領域(あるいはタンパク質のアミノ末端部分)にある不変配列から、種々のアイソフォームをすべて認識する抗体を生成した。
【0208】
STEAP2とAK092666の中に存在することはもちろん、5つのアイソフォームすべてに共通に存在したアミノ酸配列に対して抗体を生成した。前立腺癌細胞系統を、タンパク質レベルで様々なアイソフォームのいずれが発現されるかを確認するためにウェスタンブロットにより解析した。図4は、抗体によって特異的に検出された2本のバンドを示す。バンドAは、グリコシル化された野生型STEAP2である可能性があり、またバンドBはゲル解析によっては分離できないアイソフォーム、AK092666、AK092666_01またはAK092666_05を示す。さらに、適当なサイズの複数のバンドが検出され、STEAP2座位のアイソフォームが発現されて、前立腺癌における免疫療法の標的となることが示唆された。
【0209】
【表2】









































【0210】
【表3】

















【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】正常ヒト組織における配列番号92の発現。プライマーをDATASクローン配列を検出するように設計し、またRT−PCR解析を30サイクル行った。第1レーン、前立腺; 第2レーン、心臓; 第3レーン、肺臓; 第4レーン、腎臓; 第5レーン、肝臓; 第6レーン、脳; 第7レーン、胎盤; 第8レーン、骨格筋; 第9レーン、膵臓; 第10レーン、脾臓; 第11レーン、胸腺; 第12レーン、睾丸; 第13レーン、卵巣; 第14レーン、小腸; 第15レーン、結腸; 第16レーン、白血球。
【図2】正常および腫瘍前立腺試料におけるクローン(配列番号92)の発現。プライマーをDATASクローン配列を検出するように設計し、またRT−PCR解析を40サイクル行った。個々のRNA試料(正常および腫瘍)を、プールした試料として、および個々の試料として、の両方でテストした。プールしたRNA試料はオリゴdT手法(dT)またはランダムプライマープロトコール(RP)を用いてcDNAを生成するために使用した。個々の患者のcDNA試料(第9〜12レーン)はランダムプライマープロトコール(RP)により調製した。第1レーン、前立腺腫瘍プール1(RP cDNA); 第2レーン、正常前立腺プール1(RP cDNA); 第3レーン、前立腺腫瘍プール2(RP cDNA); 第4レーン、正常前立腺プール2(RP cDNA); 第5レーン、前立腺腫瘍プール1(dT cDNA); 第6レーン、正常前立腺プール1(dT cDNA); 第7レーン、正常前立腺プール2(dT cDNA); 第8レーン、NTC; 第9レーン、患者1(OHK); 第10レーン、患者2(T523); 第11レーン、患者3(82B); 第12レーン、患者4(4BK)。
【図3】クローン(DATASクローン番号)の構造解析から単離した種々のアイソフォームのアラインメント。DATASから導かれたスプライシング結果物から単離した配列を、Blatを用いてヒトゲノムに対してマップして遺伝子に注釈をつけ、それぞれの固有のスプライシング事象を確定した。5つの結果物が、5つの結果物に極めて類似しているESTであるAK092666と共にマップされている。
【図4】STEAP2アイソフォームの発現のウェスタンブロット解析。前立腺癌細胞系統からのタンパク質抽出物をSDS PAGEゲルによって分離し、ニトロセルロースに移し、そして野生型STEAP2タンパク質のN末端部分に存在するペプチド配列に対して生成した抗体を用いて探索した。5つの異なる細胞系統を解析した:レーン1)LNCaP; 2)22Rv1; 3)MDA-PCa2b; 4)PC3; 5)DU145。ブロットは標準の化学発光試薬を用いて現像した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト前立腺癌細胞によって発現される単離された核酸配列であって:
(i)配列番号1〜173、175、177、179、181に含まれる核酸配列;
(ii)ギャップを許さずにアラインメントしたとき(i)の配列に少なくとも70%同一な核酸配列を有するそれの変異体;および
(iii)少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する(i)または(ii)の断片;
からなる群より選ばれる核酸配列。
【請求項2】
配列番号1〜173、175、177、179、181のうちのいずれか1つに含まれる核酸配列またはその断片を含む、請求項1に記載の核酸配列。
【請求項3】
請求項1に記載の核酸配列のうちの1つを特異的に増幅する結果となるプライマーを含むプライマー混合物。
【請求項4】
ヒト前立腺細胞試料が、標的核酸分子を発現するかどうかを判定することを含む前立腺癌の検出方法であって、前記標的核酸分子が、配列番号1〜173、175、177、179、181からなる群より選ばれる核酸配列を含む遺伝子またはRNAの配列、または少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する前記遺伝子またはRNAの断片の配列を含む、前立腺癌の検出方法。
【請求項5】
前記標的核酸分子の発現を、特異的にそれにハイブリダイズする核酸配列を用いて検出することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記標的核酸分子の発現を、それの増幅をもたらすプライマーを用いて検出すること含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸によってコードされる抗原を測定することにより前記標的核酸分子の発現を検出する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記測定が前記抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体または断片の使用を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記測定がELISAまたは競合結合アッセイを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(i)配列番号1〜173、175、177、179、181に少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる抗原;
(ii)配列番号174、176、178、180、182〜185に少なくとも90%の同一性を有する配列を含むタンパク質由来の抗原;および
(iii)(i)または(ii)の抗原性断片;
からなる群より選ばれる、ヒト前立腺癌細胞により発現される抗原。
【請求項11】
(i)配列番号1〜173、175、177、179、181からなる群より選ばれる核酸配列によりコードされるアミノ酸配列;あるいは(ii)配列番号174、176、178、180、および182〜185から選ばれるアミノ酸配列;あるいは(iii)(i)または(ii)の抗原性断片、を含む前立腺抗原。
【請求項12】
(i)配列番号1〜173、175、177、179、181からなる群より選ばれる配列を含む遺伝子もしくはRNAの配列を含む核酸分子によって、または少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する前記遺伝子またはRNAの断片によってコードされるポリペプチド、あるいは配列番号174、176、178、180、および182〜185、に由来するポリペプチド;
(ii)請求項10または11に記載の抗原;および
(iii)(i)または(ii)の抗原性断片、
から選ばれる、標的ポリペプチド分子に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項13】
請求項11に記載の抗原を特異的に結合する、モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項14】
検出可能なラベルに直接的または間接的に結合されている、請求項10または11に記載の抗原。
【請求項15】
検出可能なラベルに直接的または間接的に結合されている、請求項12または13に記載の抗体。
【請求項16】
請求項1に記載のDNAおよび検出可能なラベルを含む、前立腺癌の検出のための診断キット。
【請求項17】
請求項3に記載のプライマーおよび診断用に許容され得る担体を含む、前立腺癌検出のための診断キット。
【請求項18】
請求項12または請求項13記載のモノクローナル抗体および検出可能なラベルを含む、前立腺癌検出のための診断キット。
【請求項19】
(i)配列番号1〜173、175、177、179、181からなる群より選ばれる配列を含む遺伝子もしくはRNA、それらの変異体、または少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する前記遺伝子もしくはRNAの断片; および(ii)配列番号1〜173、175、177、179、181からなる群より選ばれる配列を含む遺伝子もしくはRNAにより、またはその変異体により、または少なくとも20のヌクレオチドの長さを有する前記遺伝子もしくはRNAの断片により、コードされるタンパク質もしくはポリペプチド、あるいは配列番号174、176、178、180、および182〜185に由来するポリペプチド; から選ばれる標的分子を特異的に結合する治療上有効な量のリガンドを患者へ投与することを含む、前立腺癌を処置するための方法。
【請求項20】
リガンドが、配列番号1〜173、175、177、179、181からなる群より選ばれるDNA配列を有する遺伝子またはその断片もしくは変異体の、あるいは配列番号174、176、178、180および182〜185に由来するポリペプチドの発現を阻害するリボザイムもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
リガンドがエフェクター部分に直接的または間接的に結合されている、請求項19または請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記エフェクター部分が治療用の放射性ラベル、酵素、細胞毒素、成長因子または薬剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
患者に治療上有効な量の請求項10または11に記載の抗原を投与すること、および場合によっては前記抗原に対する液性反応または細胞傷害性Tリンパ球反応を誘発するアジュバントを投与することを含む、前立腺癌の処置のための方法。
【請求項24】
配列番号1〜173、175、177、179、181からなる群より選ばれる配列を含む遺伝子またはRNAによってコードされるタンパク質、またはその断片もしくは変異体に、あるいは配列番号174、176、178、180、および182〜185に由来するポリペプチドに特異的に結合している、場合によっては直接的もしくは間接的に治療用エフェクター部分に結合されている、治療上有効な量のリガンドを患者に投与することを含む、前立腺癌を処置するための方法。
【請求項25】
前記エフェクター部分が放射性ラベル、酵素、細胞毒素、成長因子または薬剤である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
放射性ラベルがイットリウムである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
放射性ラベルがインジウムである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記リガンドがモノクローナル抗体またはその断片である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記リガンドが小分子である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記リガンドがペプチドである、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記リガンドが前記タンパク質の細胞外ドメインに結合する、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
(i)配列番号1〜185からなる群より選ばれる配列を含む遺伝子またはRNAによりコードされるタンパク質の細胞外ドメインの配列を含むポリペプチド;および
(ii)(i)のポリペプチドをコードする核酸分子、
から選択される分子。
【請求項33】
前記ポリペプチドが8〜100アミノ酸の長さを有する、請求項32に記載の分子。
【請求項34】
生物学的活性を有する化合物を選択するか、同定するか、スクリーニングするか、特性決定するか、または最適化するための方法であって、候補化合物を標的分子と接触させること、および候補化合物が前記標的分子を結合するかどうか判定することを含み、前記標的分子が(i)配列番号1〜173、175、177、179、181からなる群より選ばれる核酸配列を含む遺伝子もしくはRNAの配列を含む核酸分子、(ii)少なくとも20ヌクレオチドの長さを有する前記遺伝子またはRNAの断片、および(iii)(i)または(ii)によってコードされるポリペプチドあるいは配列番号174、176、178、180および182〜185に由来するポリペプチド、から選択される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−527699(P2007−527699A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516602(P2006−516602)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002394
【国際公開番号】WO2004/113571
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(599022270)エグゾニ・テラピューティック・ソシエテ・アノニム (12)
【氏名又は名称原語表記】EXONHIT THERAPEUTICS SA
【Fターム(参考)】