説明

剛性基材のための柔軟な手触りのコーティング

剛性基材および柔軟な手触りのコーティングを有する製品が、開示される。この柔軟な手触りのコーティングは、酸官能性ポリウレタン分散物および架橋剤を含有する。このポリウレタン分散物は、活性水素含有ポリエーテル、ジメチロールプロピオン酸、ポリイソシアネートおよび鎖長延長剤を含有し、この酸官能性のうちの少なくとも70%は、中和されている。この酸官能性ポリウレタンは、架橋剤と反応し、そして硬化して、柔軟な手触りのコーティングを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、基材に「柔軟な手触り」を付与するコーティングでコーティングされた、剛性基材に関する。より特定すると、このコーティングは、本明細書中にさらに記載されるように、酸官能性ポリウレタン組成物および架橋剤を含有する。
【背景技術】
【0002】
(背景情報)
剛性基材または硬質基材は、しばしば、「柔軟な手触り」(すなわち、皮革様の手触りまたはビロード様の手触り)をこの基材に付与する組成物でコーティングされる。このような柔軟な手触りのコーティングは、何度も手を触れられる基材(例えば、消費者電子製品)について特に望ましい。このような柔軟な手触りを付与する一方で、望ましいレベルの機械的耐性および化学的耐性をなお与えるコーティングを達成することは、困難であり得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
本発明は、剛性基材と、この基材の少なくとも一部の上の柔軟な手触りのコーティングとを備える、製品に関する。このコーティングは、酸官能性ポリウレタン分散物を含有し、この分散物は、2000以上の重量平均分子量を有する活性水素含有ポリエーテル;ジメチロールプロピオン酸;ポリイソシアネート;および鎖長延長剤を含有する。この酸官能性のうちの少なくとも70%は、中和されている。この酸官能性ポリウレタンは、架橋剤と反応し、そして硬化して、柔軟な手触りのコーティングを形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
(発明の詳細な説明)
本発明は、剛性基材と、この基材の少なくとも一部の上の柔軟な手触りのコーティングとを備える、製品に関し、このコーティングは、酸官能性ポリウレタン分散物と架橋剤との反応生成物を含有し、この酸官能性ポリウレタン分散物は、2000以上の重量平均分子量を有する活性水素含有ポリエーテル、ジメチロールプロピオン酸、ポリイソシアネート、および鎖長延長剤を含有し、そしてこの酸官能性のうちの少なくとも70%は、中和されている。「ポリウレタン」とは、本明細書中で使用される場合、ポリウレタン、ポリ尿素、およびこれらの混合物を包含する。
【0005】
用語「製品」は、その広い意味で使用され、そして本発明による、剛性基材と柔軟な手触りのコーティングとを備える事実上あらゆる物品を包含し得る。例えば、製品としては、家具;設備;カメラ;筆記用具(ペンおよび鉛筆が挙げられるが、これらに限定されない);コンピュータ構成要素(マウス、キーボードなどが挙げられるが、これらに限定されない);消費者電子機器(電話、PDA、iPOD(登録商標)、ディクタフォン、カセットプレーヤー、コンパクトディスク、MP3プレーヤーなどが挙げられるが、これらに限定されない);個人用衛生設備;サングラス;自動車構成要素(ハンドル、ダッシュボード、変速レバーなどが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。「剛性」基材とは、圧縮不可能なあらゆる基材(例えば、種々のプラスチック製品または木材製品)をいう。「プラスチック」としては、例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレンポリマーブレンド(「ABS」)、ポリプロピレン、マグネシウム、および/またはこれらの混合物が挙げられ得る。「プラスチック」は、充填剤を添加されていても添加されていなくてもよい。軽量金属(例えば、マグネシウム)もまた、本発明の範囲内の剛性基材である。「木材製品」としては、例えば、木材を含有するあらゆる製品(例えば、中実木材、硬質木材、または少なくとも2層を有する製品(例えば、化粧張り、複合材料、ベニヤ板、中密度ファイバーボード、低密度ファイバーボード)など)が挙げられ得るが、これらに限定されない。剛性基材は、ある程度の可撓性を依然として示し得るが、代表的に、有意な不可逆変化なしで有意な機械適応力(例えば、屈曲または伸長など)を受け得る基材ではないことが、理解される。
【0006】
本発明に従って使用されるコーティングは、基材に「柔軟な手触り」を付与するコーティングである。用語「柔軟な手触り」は、この手触りが与えられなければ硬質である基材に、ビロード様の手触りまたは皮革様の手触りを与えることであると理解される。
【0007】
本発明に従って使用される、柔軟な手触りのコーティングは、酸官能性ポリウレタン分散物と架橋剤との反応生成物を含有する。このポリウレタン分散物は、2000以上の重量平均分子量を有する活性水素含有ポリエーテルを含有する。適切なポリエーテルとしては、イソシアネートと反応性である活性水素含有基を有する、ポリエーテルが挙げられる。例としては、ヒドロキシル基およびアミン基が挙げられるが、これらに限定されない。適切な活性水素含有材料の非限定的な例としては、ポリオール、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミン、ポリオレフィン、シロキサンポリオール、およびこれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態において、活性水素含有材料は、酸官能基を含まない。例えば、活性水素含有ポリエーテルは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(例えば、Invista,Inc.からTERETHANE 2000として市販されているもの)であり得る。
【0008】
ポリエーテルポリオールの他の例としては、ポリアルキレンエーテル(ポリ(オキシアルキレン))ポリオールが挙げられ、これには、以下の構造式:
【0009】
【化1】

を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。この構造式において、置換基Rは、水素、または1個〜5個の炭素原子を含む低級アルキル(混合された置換基を含む)であり、mは、1〜4の整数(例えば、1または2)であり、そしてnは、5〜200の範囲の整数であり、m、nおよびRは、重量平均分子量が、2000以上になるように選択される。
【0010】
また、種々のポリオールのオキシアルキル化から得られるポリエーテル(例えば、1,6−ヘキサンジオールのようなジオール、またはトリメチロールプロパンおよびソルビトールのようなより高級なポリオール)が、使用され得る。1つの通常利用されるオキシアルキル化方法は、ポリオールと、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)との、酸性触媒または塩基性触媒の存在下での、当業者に周知の様式での反応である。
【0011】
他の適切な活性水素含有ポリエーテルの例は、ポリマー性ポリアミン(例えば、ポリエーテルポリアミンであり、例えば、ポリオキシアルキレンポリアミン)である。本発明の実施において、「ポリオキシアルキレンポリアミン」との表現が使用される場合、意図されるものは、1分子あたりオキシアルキレン基と少なくとも2つのアミン基(代表的には、第一級アミン基)との両方を含有するポリアミンである。
【0012】
特に有用なポリオキシアルキレンポリアミンの例は、以下の構造式:
【0013】
【化2】

によって表される。この構造式において、mは、0〜50の範囲であり得、nは、1〜50の範囲であり得、n’は、1〜50の範囲であり得、xは、1〜50の範囲であり得、yは、0〜50の範囲であり得、そしてR〜Rは、同じであっても異なっていてもよく、そして独立して、水素または低級アルキル基(好ましくは、1個〜6個の炭素原子を有する)からなる群より選択され得る。ここでまた、これらの可変物は、重量平均分子量が2000以上になるように選択される。
【0014】
有用なポリオキシアルキレンポリアミンの別の例は、以下の構造:
【0015】
【化3】

のものである。この構造において、Rは、同じであっても異なっていてもよく、そして水素、1個〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基から選択され、そしてnは、1〜50の範囲の整数を表し、そして1〜35であり得る。ここでまた、これらの可変物は、重量平均分子量が2000以上になるように選択される。非限定的な例としては、ポリオキシプロピレンジアミン(例えば、Huntsman Corporation,Houston,Texasから市販されている、JEFFAMINE D−2000)が挙げられる。
【0016】
混合ポリオキシアルキレンポリアミンが、使用され得る。すなわち、オキシアルキレン基が1つより多くの部分から選択され得る、ポリオキシアルキレンポリアミンである。例としては、以下の構造式:
【0017】
【化4】

を有するもののような、混合ポリオキシエチレン−プロピレンポリアミンが挙げられる。この構造式において、mは、1〜49の範囲の整数であり、そして1〜34であり得、そしてnは、1〜34の範囲の整数であり、そしてn+mの合計は、1〜50に等しく、そして1〜35であり得る。ここでまた、これらの変数は、重量平均分子量が2000以上になるように選択される。
【0018】
上記ポリオキシアルキレンポリアミンに加えて、ポリオキシアルキレンポリオールの誘導体もまた、使用され得る。適切な誘導体の例は、アミノアルキレン誘導体であり、これは、ポリオキシアルキレンポリオール(例えば、上記のもの)を、アクリロニトリルと反応させ、続いてこの反応生成物を、当該分野において周知の様式で水素化することによって調製される。適切な誘導体の例は、ポリテトラメチレングリコールビス(3−アミノプロピル(エーテル))である。他の適切な誘導体は、以下の構造式:
【0019】
【化5】

を有する。この構造式において、置換基Rは、水素、または1個〜5個の炭素原子を含む低級アルキル(混合された置換基を含む)であり、mは、1〜4の整数であり、好ましくは、1または2であり、そしてnは、代表的に、5〜200の範囲の整数である。ここでまた、これらの可変物は、重量平均分子量が2000以上になるように選択される。
【0020】
ポリエーテルセグメントにおける、混合されたオキシエチレン−プロピレン基について、オキシプロピレン含有量は、樹脂固形物の総重量に基づいて、少なくとも60重量%であり得、例えば、少なくとも70重量%であり得るか、または少なくとも80重量%であり得る。
【0021】
ポリエーテルセグメントは、1種類のポリエーテルポリオールまたはポリアミンから、あるいはこれらの種々の混合物から、誘導され得る。
【0022】
他の適切なポリオールとしては、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ヒドロキシル含有ポリジエンポリマー、ヒドロキシル含有二官能性アクリルポリマーまたはヒドロキシ含有三官能性アクリルポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
ポリエステルポリオールおよびヒドロキシル含有二官能性アクリルポリマーまたはヒドロキシル含有三官能性アクリルポリマーの例は、米国特許第3,962,522号および同第4,034,017号にそれぞれ記載されており、これらは、本明細書中に参考として援用される。ポリカーボネートポリオールの例は、米国特許第4,692,383号の第1欄第58行〜第4欄第14行に記載されており、これは、本明細書中に参考として援用される。ヒドロキシル含有ポリジエンポリマーの例は、米国特許第5,863,646号の第2欄第11行〜第54行に記載されており、これは、本明細書中に参考として援用される。これらのポリマー性ポリオールは、一般に、1分子あたり400〜10,000グラムの重量平均分子量を有し得る。
【0024】
一般に、ポリウレタンを調製するために使用される活性水素含有材料の量は、このポリウレタン成分を作製するために使用される樹脂固形物の総重量に基づいて、70重量%までであり得、そして10重量%〜25重量%の範囲であり得る。
【0025】
このポリウレタン分散物は、ジメチロールプロピオン酸をさらに含有する。「ジメチロールプロピオン酸」は、置換されたジメチロールプロピオン酸を含む。本発明によれば、ジメチルプロピオン酸は、ピロリドンも他の水適合性の高沸点溶媒も使用せずに、ポリマーに組み込まれる。従って、特定の実施形態は、このような溶媒(例えば、ピロリドンおよび/またはN−メチルピロリドン)を明白に除外する。
【0026】
ポリウレタンを調製するために使用されるジメチロールプロピオン酸の量は、このポリウレタンを形成するために使用される樹脂固形物の総重量に基づいて、少なくとも1重量%であり、代表的には、少なくとも1重量%〜20重量%の範囲であり、そしていくつかの実施形態においては、6重量%〜10重量%の範囲である。
【0027】
酸官能性ポリウレタンは、ポリイソシアネートをさらに含有する。このポリウレタン成分を調製するために使用される適切なポリイソシアネートとしては、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、脂肪芳香族(araliphatic)イソシアネート、および芳香族イソシアネート、ならびにこれらの混合物が挙げられ得る。
【0028】
適切な脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートの例としては、4,4−メチレンビスジシクロヘキシルジイソシアネート(水素化MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、メタ−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、およびシクロヘキシレンジイソシアネート(水素化XDI)が挙げられる。他の脂肪族ポリイソシアネートとしては、IPDIおよびHDIのイソシアヌレートが挙げられる。
【0029】
適切な芳香族ポリイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)(すなわち、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、またはこれらの混合物)、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、粗製TDI(すなわち、TDIとそのオリゴマーとの混合物)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、粗製MDI(すなわち、MDIとそのオリゴマーとの混合物)、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびフェニレンジイソシアネートが挙げられる。
【0030】
ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(「IPDI」)(これらのイソシアヌレートを含む)、および/または4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンから調製される、ポリイソシアネート誘導体もまた、適切である。
【0031】
ポリウレタン成分を調製するために使用されるポリイソシアネートの量は、このポリウレタン成分を調製するために使用される樹脂固形物の総重量に基づいて、一般に、15重量%〜50重量%の範囲であり、そして20重量%〜35重量%の範囲であり得る。
【0032】
ポリウレタン分散物の酸官能性は、ジメチロールプロピオン酸を誘導することが理解される。本発明によれば、このポリウレタン分散物における酸官能性のうちの少なくとも約70%が、中和される。特定の実施形態において、例えば、長いポットライフが望ましい場合、中和の百分率は、ほぼ100%(例えば、少なくとも90%)であり得る。他の実施形態において、過剰な中和剤が添加され得る。任意の適切な中和剤が使用され得る。例としては、無機塩基および有機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アミン、アルコールアミン(少なくとも1つの第一級アミノ基、第二級アミノ基、または第三級アミノ基と、少なくとも1つのヒドロキシル基とを有するもの))が挙げられるが、これらに限定されない。適切なアミンとしては、アルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジイソプロパノールアミンなど)が挙げられる。中和剤は、ポリウレタンの酸官能基と塩を形成することが、さらに理解される。この塩は、酸官能基と架橋剤との間の反応を妨害する点で、ある程度、ブロッキング剤のように働く。これにより、本発明において使用される未硬化コーティング組成物に、優れた「ポットライフ」が与えられる。すなわち、未硬化コーティング組成物のポットライフは、1ヶ月〜6ヶ月の範囲であり得る。上記のように、中和剤の量とポットライフとの間には、相関関係がある。コーティングが基材上に堆積され、そして/または熱が加えられると、この中和剤が揮発して、架橋剤と自由に反応する酸官能基が残り、これによって、このコーティングを硬化させる。
【0033】
このポリウレタンは、鎖長延長剤(例えば、ポリアミン)をさらに含有する。有用なポリアミンとしては、第一級または第二級の、ジアミンまたはポリアミンが挙げられ、これらのジアミンまたはポリアミンにおいて、窒素原子に結合する基は、飽和または不飽和の、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香族置換脂肪族、脂肪族置換芳香族、および複素環式であり得る。例示的な適切な脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミンとしては、1,2−エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、イソホロンジアミン、プロパン−2,2−シクロヘキシルアミン、アジピン酸ジヒドラジド、2−アミノエチルエタノールアミンなどが挙げられる。適切な芳香族ジアミンとしては、フェニレンジアミンおよびトルエンジアミン(例えば、o−フェニレンジアミンおよびp−トルエンジアミン)が挙げられる。これらおよび他の適切なポリアミンは、米国特許第4,046,729号、第6欄第61行〜第7欄第26行に詳細に記載されており、これは、本明細書中に参考として援用される。ポリウレタン成分が形成される樹脂固形物の総重量に基づいて、鎖長延長剤の量は、1重量%〜8重量%であり、そしていくつかの実施形態においては、2.5重量%〜5重量%であり得る。
【0034】
任意の適切な架橋剤が、使用され得る。特に適切なものは、カルボジイミド架橋剤またはアジリジン架橋剤である。特定の実施形態において、架橋剤の組み合わせが使用され得る。他の実施形態において、1種のみの架橋剤(例えば、カルボジイミドまたはアジリジン)が、使用される。
【0035】
架橋剤対酸官能性の比は、使用者の要求に依存して変動し得る。例えば、この比は、0.1〜1.5:1の範囲(例えば、0.5:1)であり得る。
【0036】
本発明の特定の実施形態において、コーティングは、実質的に溶媒を含まない。「実質的に溶媒を含まない」とは、本明細書中で使用される場合、そのコーティング組成物が、約15重量%未満〜20重量%未満(例えば、5重量%未満または10重量%未満)の有機溶媒を含有することを意味し、この重量%は、コーティング組成物の総重量に基づく。例えば、このコーティング組成物は、0〜2重量%または0〜3重量%の有機溶媒を含有し得る。
【0037】
本発明の特定の実施形態において、コーティングは、「水ベース」である。用語「水ベース」とは、本明細書中で使用される場合、組成物のキャリア流体が、重量%を基礎として主として水である(すなわち、キャリアの50重量%より多くが水を含む)コーティング組成物を意味する。このキャリアの残りの部分は、50重量%未満(例えば、25重量%未満または15重量%未満)の有機溶媒を含有する。コーティング組成物(固形物ブレンド中のキャリアを含む)の総重量に基づいて、水は、この組成物全体の、約20重量%〜約80重量%(例えば、約30重量%〜約70重量%)を構成し得る。
【0038】
ポリウレタン分散物および架橋剤は、一般に、このコーティング中に、20重量%より多い(例えば、40重量%より多い)量で存在し、そして90重量%より少ない量で存在する。この重量%は、硬化したコーティングの総固形物重量に基づく。例えば、ポリウレタン分散物および架橋剤の重量%は、20重量%と80重量%との間であり得る。
【0039】
本発明のコーティング組成物は、必要に応じて、他の標準的な成分(例えば、着色剤、充填剤、増量剤、UV吸収剤、光安定剤、可塑剤、レオロジー改変剤、界面活性剤、増粘剤および/または湿潤剤)を、このコーティング組成物の総重量%に基づいて80重量%までの総量で、含有し得る。「着色剤」および類似の用語は、色および/または不透明性および/または視覚的効果を組成物に付与する、任意の物質をいう。着色剤は、このコーティングに、任意の適切な形態(例えば、不連続な粒子、分散物、溶液および/または薄片)で添加され得る。単一の着色剤または2種以上の着色剤の混合物が、本発明のコーティングにおいて使用され得る。
【0040】
例示的な着色剤としては、例えば、塗料産業において使用されるもの、ならびに/あるいはDry Color Manufacturers Association(DCMA)に列挙されるものである、顔料、色素および染料、ならびに特殊効果顔料および/または特殊効果組成物が挙げられる。着色剤が、例えば、不溶性であるが使用条件下において濡れ可能である、微細に分割された固体粉末を含有し得る。着色剤は、有機物であっても無機物であってもよく、そして凝集していても凝集していなくてもよい。
【0041】
例示的な顔料および/または顔料組成物としては、カルバゾールジオキサジン粗製顔料、アゾ、モノアゾ、ジスアゾ、ナフトールAS、塩型(レーキ)、ベンゾイミダゾロン、縮合物(condensation)、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリンおよび多環式フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンタントロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPBOレッド」)、二酸化チタン、カーボンブラックおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。用語「顔料」および「有色充填剤」は、交換可能に使用され得る。
【0042】
例示的な色素としては、溶媒ベースのものおよび/または水性ベースのものであって、例えば、フタログリーンまたはフタロブルー、酸化鉄、バナジン酸ビスマス、アントラキノン、ペリレン、アルミニウムおよびキナクリドンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
例示的な染料としては、水ベースのキャリアまたは水混和性キャリア中に分散された顔料であって、例えば、AQUA−CHEM 896(Degussa,Inc.から市販されている)、ならびにCHARISMA COLORANTSおよびMAXITONER INDUSTRIAL COLORANTS(Eastman Chemical,Inc.のAccurate Dispersions部門から市販されている)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
上記のように、着色剤は、分散物の形態(ナノ粒子分散物が挙げられるが、これらに限定されない)であり得る。ナノ粒子分散物は、1種以上の高度に分散されたナノ粒子の着色剤または着色剤粒子を含有し得、これらが、望ましい視覚的な色および/または不透明性および/または視覚的効果を生じる。ナノ粒子分散物は、約150nm未満(例えば、70nm未満、または30nm未満)の粒子サイズを有する、顔料または色素のような着色剤を含有し得る。ナノ粒子は、ストック有機顔料を、0.5mm未満の粒子サイズを有する粉砕媒体を用いて製粉することによって、生成され得る。例示的なナノ粒子分散物およびこれらを作製するための方法は、米国特許出願公開第2003/0125417号において確認され、これは、本明細書中に参考として援用される。ナノ粒子分散物はまた、結晶化、沈殿、気相凝縮、および化学アトリション(すなわち、部分的溶解)によって生成され得る。コーティング内のナノ粒子の再凝集を最小にする目的で、樹脂でコーティングされたナノ粒子の分散物が使用され得る。本明細書中で使用される場合、「樹脂でコーティングされたナノ粒子の分散物」とは、ナノ粒子と、このナノ粒子上の樹脂コーティングとを含む、不連続な「複合微粒子」が、連続相中に分散している、連続相をいう。例示的な、樹脂でコーティングされたナノ粒子の分散物およびこれらを作製するための方法は、2004年6月24日に出願された、米国特許出願番号10/876,315(これは、本明細書中に参考として援用される)および2003年6月24日に出願された、米国仮出願番号60/482,167(これもまた、本明細書中に参考として援用される)において確認される。
【0045】
本発明のコーティングにおいて使用され得る例示的な特殊効果顔料および/または特殊効果組成物としては、1つ以上の外観上の効果(例えば、反射率、真珠光沢、金属光沢、リン光、蛍光、フォトクロミズム、感光性、サーモクロミズム、ゴニオクロミスム(goniochromism)および/または色変化)を生じる、顔料および/または組成物が挙げられる。さらなる特殊効果顔料および/または特殊効果組成物は、他の知覚特性(例えば、不透明性またはきめ)を提供し得る。非限定的な実施形態において、特殊効果組成物は、色シフトを生じ得、その結果、コーティングが異なる角度で観察される場合に、このコーティングの色が変化する。色効果組成物の例は、米国特許出願公開第2003/0125416号(本明細書中に参考として援用される)において確認される。さらなる色効果組成物としては、透明物質でコーティングされたマイカおよび/または合成マイカ、コーティングされたシリカ、コーティングされたアルミナ、透明液晶顔料、液晶コーティング、ならびに/あるいは干渉が材料の表面と空気との間の屈折率の差に起因するのではなく、材料内の屈折率の差から生じる、任意の組成物が挙げられ得る。
【0046】
特定の非限定的な実施形態において、感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物(これらは、1つ以上の光源に曝露される場合に、その色を可逆的に変化させる)が、本発明のコーティングにおいて使用され得る。フォトクロミック組成物および/または感光性組成物は、特定の波長の放射線への曝露によって、達成され得る。この組成物が励起されると、その分子構造が変化し、そしてこの変化した構造は、その組成物の元の色とは異なる新たな色を示す。放射線への曝露が除かれると、このフォトクロミック組成物および/または感光性組成物は、休止状態に戻り得、この状態において、この組成物の元の色が戻る。1つの非限定的な実施形態において、フォトクロミック組成物および/または感光性組成物は、非励起状態において無色であり得、そして励起状態において色を示し得る。全色での変化が、数ミリ秒から数分以内(例えば、20秒〜60秒)に現れ得る。例示的なフォトクロミック組成物および/または感光性組成物としては、フォトクロミック色素が挙げられる。
【0047】
非限定的な実施形態において、感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物は、ポリマーおよび/または重合性成分に、会合し得、そして/または少なくとも部分的に(例えば、共有結合によって)結合し得る。感光性組成物がコーティングから移動して基材内に結晶化し得るいくつかのコーティングとは異なり、本発明の非限定的な実施形態に従って、ポリマーおよび/または重合性成分に会合し、そして/または少なくとも部分的に結合した、感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物は、コーティングからの最小の移動を有する。例示的な感光性組成物および/またはフォトクロミック組成物、ならびにこれらを作製するための方法は、2004年7月16日に出願され、本明細書中に参考として援用される、米国特許出願番号10/892,919において確認される。
【0048】
一般に、着色剤は、使用される場合、望ましい手触りを依然として維持しながら、望ましい視覚効果および/または色効果を付与するために十分な任意の量で、このコーティング組成物中に存在し得る。
【0049】
任意の適切な方法を使用して、基材をコーティングし得る。例えば、コーティングは、噴霧、ロール、浸漬、ブラッシング、フローコーティング、カーテンコーティングなどをされ得る。基材への塗布に続いて、このコーティングは、硬化を受け得る。例えば、硬化は、室温で数時間で行われても、高温(例えば、120°F以上、例えば、180°F以上)で行われてもよく、オーブン内での滞留時間は、温度、空気流などに基づいて変化し、そして当業者によって最適化され得る。代表的に、硬化したコーティングの乾燥フィルム厚は、0.5ミル〜4ミルであり、例えば、1ミル〜2ミルである。
【0050】
本発明の1つの実施形態において、ポリウレタン分散物は、ポリエステル(ポリエステルポリオールを含む)の使用を除外し、そして別の実施形態において、ネオペンチルグリコールの使用を除外する。本発明の別の実施形態において、中和剤は、1つのみのヒドロキシ基を有するのではなく、そして別の実施形態において、中和剤は、1つより多くのヒドロキシ基を有さない。本発明の別の実施形態において、ポリエーテルは、いかなる芳香族部分も含まない。本発明のなお別の実施形態において、ポリウレタンを形成するために、1種のみのジオールが使用される。なお別の実施形態において、環式カーボネート基が除外され、別の実施形態において、500g/mol未満の数平均分子量を有する低分子量のポリオールが除外され、そして別の実施形態において、ポリカプロラクトンジオールが除外される。
【0051】
本明細書中で使用される場合、他に明白に言及されない限り、全ての数値(例えば、値、範囲、量または百分率を表す数値)は、単語「約」が明瞭に現れない場合でさえも、単語「約」が先行するかのように読まれ得る。本明細書中に記載されるあらゆる数値範囲は、この範囲に含まれる全ての部分範囲を含むことが意図される。複数形は、単数形を包含し、そして逆もまたいえる。例えば、ポリウレタン分散物は、「a」ポリエーテルグリコール、「an」酸官能性材料、「a」ポリイソシアネートおよび「a」鎖長延長剤の観点で記載されるが、1種より多くの任意のこれらの成分が、1種より多くの中和剤、架橋剤、または他の任意の成分と同様に、使用され得る。
【実施例】
【0052】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図され、そして本発明をいかなる様式でも限定すると解釈されるべきではない。
【0053】
(実施例1)
攪拌棒、熱電対、凝縮器および窒素入口を備える反応容器に、1010.3グラム(g)のポリテトラメチレンエーテルグリコール(TERATHANE 2000の名称で販売されている)および50.7gのジメチロールプロピオン酸を入れ、そして60℃まで加熱した。336.7グラムのイソホロンジイソシアネートを10分間かけて添加し、続いて、356.2gのメチルエチルケトンおよび1.51gのジラウリン酸ジブチルスズを添加した。この反応は、63℃まで発熱した。この反応温度を80℃まで上昇させ、そしてその内容物を、イソシアネート当量が1380になるまで攪拌した。次いで、39.4gのジメチロールプロピオン酸を、この反応フラスコに添加した。その内容物を、イソシアネート当量が2094になるまで攪拌した。
【0054】
得られた生成物は、83.4重量%の固形物含有量(110℃で1時間測定した)、21.20mg KOH/gの酸価および14971の重量平均分子量(THF中)を有した。
【0055】
76℃の1552.0グラムの上記プレポリマーを、バッフル、二重ピッチ刃攪拌機、熱電対および凝縮器を備える円筒形ガロン反応フラスコ内の、21℃および500rpmで攪拌している2259.9gの脱イオン水、40.6gのアジピン酸ジヒドラジドおよび52.2gのジメチルエタノールアミンの溶液に、25分間かけて添加した。この添加後の分散物の温度は、36℃であった。この反応内容物を、イソシアネートの証拠がFTIRによって観察されなくなるまで攪拌した。
【0056】
この分散物を、攪拌棒、熱電対、凝縮器および受器を備えるフラスコに移した。この分散物を60℃まで加熱し、そしてメチルエチルケトンおよび水を、減圧蒸留によって除去した。
【0057】
最終分散物は、38.7重量%の固形物含有量(110℃で1時間測定した)、144センチポアズのBrookfield粘度(#2スピンドルを60rpmで使用した)、0.171meq酸/gの酸含有量、0.177meq塩基/gの塩基含有量、8.26のpH、0.15重量%の残留メチルエチルケトン含有量、および95536の重量平均分子量(DMF中)を有した。次いで、この分散物を使用して、以下のようにコーティングを作製した。
【0058】
【表1】

樹脂実施例1に記載される樹脂を組み込んで、コーティングを、以下の様式で調製した。分散物を、Cowles刃を使用して激しく攪拌した。消泡剤および湿潤剤を添加し、次いで、二酸化ケイ素をゆっくりと添加した。二酸化ケイ素の添加後、この混合物をさらに30分間攪拌した。次いで、以下に記載されるような塗布のために適切な固形物/粘度まで希釈するために、水を添加した。噴霧塗布の前に、この混合物にカルボジイミド架橋剤を添加し、そして手で攪拌した。コーティング#1を、ポリカーボネート/ABS板に噴霧塗布した。コーティング#2(より高い固形物が相殺されている)を、黒色(アクリルベースコート)の中密度ファイバーボード(MDF)に塗布した。
【0059】
【表2】

ASTM D−3359:100%=コーティングの接着の損失がない。
示されるようにアセトンまたはMEKのいずれかを使用するASTM D−5402−03。
サンプルを、100°F、100%相対湿度に10日間曝露した。次いで、これらのサンプルを湿度チャンバから取り出し、拭き取り、そして接着について、ASTM D−3359に従って評価した。
染色試験:全ての染色剤を、約24時間にわたって塗布し、除去し、そして表面状態におけるあらゆる変化を記録した。
【0060】
本発明の特定の実施形態が、説明の目的で上に記載されたが、本発明の細部の多数の変更が、添付の特許請求の範囲において規定されるような本発明から逸脱することなくなされ得ることが、当業者に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品であって、該製品は、
(A)剛性基材;
(B)該基材の少なくとも一部の上の、柔軟な手触りのコーティング、
を備え、該コーティングは、
(i)酸官能性ポリウレタン分散物と、
(ii)架橋剤と、
の反応生成物を含有し、該酸官能性ポリウレタン分散物は、
(a)2000以上の分子量を有する活性水素含有ポリエーテル;
(b)ジメチロールプロピオン酸;
(c)ポリイソシアネート;および
(d)鎖長延長剤、
を含有し、該酸官能性のうちの少なくとも70%は、中和されている、製品。
【請求項2】
前記基材が、プラスチックを含む、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記基材が、木材製品を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項4】
前記基材が、中密度のファイバーボードを含む、請求項3に記載の製品。
【請求項5】
前記ポリエーテルが、ポリエーテルグリコールを含有する、請求項1に記載の製品。
【請求項6】
前記ポリエーテルグリコールが、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含有する、請求項5に記載の製品。
【請求項7】
前記酸官能性が、ジメチルエタノールアミンで中和されている、請求項1に記載の製品。
【請求項8】
前記ポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネートを含有する、請求項1に記載の製品。
【請求項9】
前記鎖長延長剤が、ジヒドラジンを含有する、請求項1に記載の製品。
【請求項10】
前記架橋剤が、カルボジイミドを含有する、請求項1に記載の製品。
【請求項11】
(a)前記ポリエーテルが、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを含有し;
(b)前記ポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネートを含有し;
(c)前記鎖長延長剤が、ジヒドラジンを含有し;そして
(d)前記架橋剤が、カルボジイミドを含有する、
請求項1に記載の製品。
【請求項12】
前記コーティングが、実質的に溶媒を含まない、請求項1に記載の製品。
【請求項13】
前記コーティングが、水ベースである、請求項1に記載の製品。
【請求項14】
前記酸官能性のうちの90%以上が、中和されている、請求項1に記載の製品。

【公表番号】特表2008−525601(P2008−525601A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548612(P2007−548612)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/047619
【国際公開番号】WO2006/072080
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】