説明

剛性杆用リール

【課題】 リール枠より人為的に繰り出した以上の剛性杆の繰り出しが行われることがなく、しかも、その中断操作を自動的に行える剛性杆用リールを提供する。
【解決手段】 基台1に籠状体で成るリール枠4を枢軸2によって回動自在に枢支し、該リール枠4に巻回状に収容した剛性杆7を順次繰り出すようにする。そして、前記基台1に支持枠14を取付け、該支持枠14に、前記リール枠4の回動方向に並設した骨杆5,5間を出入する円筒状の制動片19を、該制動片19に緩く貫通させた支軸18で組付ける。また、前記剛性杆7よりも強い弾性作用によって前記制動片19の周面を押圧して前記骨杆5,5間に介在させる弾性片20を前記支持枠14に設ける。さらに、この支持枠14の、前記リール枠4から前記剛性杆7を繰り出す方向の下流側の一側に、前記リール枠4の外部において前記制動片19が前記骨杆5に押圧されて接する規制部片14cを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ケーブル架線工事に用いる通線ロッド(剛性杆で構成する)を収容するために用いるリールに適用する剛性杆用リールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
基台に籠状体で成るリール枠を支軸によって回動自在に枢着し、該リール枠に前記支軸を取り囲むように巻回状に収容した剛性杆を前記リール枠より順次繰り出すようにした構造のものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−17013号公報(第3頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
剛性杆は、巻回状にしたとき、いうまでもなく、剛性により原状すなわち直線状になろうとするが、従来の前記リールの場合は、剛性杆の先端を規制状態から解放してリール枠より引き出して放置すると、その剛性によりリール枠を回動させつつリール枠より自然に繰り出され、従って、その繰り出しを人為的に中断する必要があり、このため、例えば、ケーブル架線工事に際し、剛性杆用リールを設置し、高所等の離れた作業位置で作業者が通線ロッドとしての剛性杆を架空の架設設備内又は配線用管路内に押し込む際、剛性杆リール操作専従の別の作業者を配置し、リールを停止させる必要があった。
【0005】
なお、剛性杆の剛性による自発的な繰り出しを防止する目的でリール中心回動軸又は剛性杆の取り出し箇所で接触摩擦による制動板を設置し連続的に回転抵抗を付加する場合が考えられるが、この場合は作業者の繰り出し及び巻き取り収納時のリール回転操作の負荷が増加し、作業の支障となる。
【0006】
本発明は、リール枠より人為的に繰り出した以上の繰り出しが行われることがなく、しかも、その中断操作を自動的に行える剛性杆用リールを提供すべく創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基台に籠状体で成るリール枠を枢軸によって回動自在に枢支し、該リール枠に前記支軸を取り囲むように巻回状に収容した剛性杆を、前記リール枠より順次繰り出すようにした剛性杆用リールにおいて、前記基台に支持枠を取付け、該支持枠に、前記リール枠の回動方向に並設した骨杆間を出入する円筒状の制動片を、該制動片に緩く貫通させた支軸で組付けると共に、前記剛性杆よりも強い弾性作用によって前記制動片の周面を押圧して前記骨杆間に介在させる弾性片を前記支持枠に設け、この支持枠の、前記リール枠から前記剛性杆を繰り出す方向の下流側の一側に、前記リール枠の外部において前記制動片が前記骨杆に押圧されて接する規制部片を設けた構成としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剛性杆の剛性によるリール枠の回動は、基台に取付けた制動片がリール枠を構成する骨杆間に係合し、しかも、該制動片に剛性よりも強い弾性が作用して阻止され、その結果、リール枠からの剛性杆の繰り出しを規制することができる。そして、この状態で剛性杆を牽引して、その牽引力が弾性より強く働いたとき、制動片はそれに対応して骨杆間の出入を繰り返し、リール枠から剛性杆が繰り出され、外力の負荷を中断することにより、リール枠からの繰り出しを自動的に中止することができる。
【実施例】
【0009】
図面は本発明に係る剛性杆用リールの一実施例を示し、図1は正面図、図2は図1の一部拡大図、図3は図2の平面図、図4は図2の側面図、図5は制動装置の斜視図である。
【0010】
実施例の剛性杆用リールAは、金属杆を互いに組付けて構成した基台1に片持ち梁状にして枢軸2を横設し、該枢軸2を中央の軸管3に貫通させるようにしてリール枠4を前記枢軸2に回動自在に枢支させて基台1に組付けて構成したものである。
【0011】
リール枠4は、屈曲部を円曲させたややL字形の、複数本の骨杆5,…を等間隔を存して放射状に配し、該骨杆5,…を,該骨杆5の長杆部5aの中間部と短杆部5bの自由端部および長杆部5aと端杆部5b間の屈曲杆部5cにそれぞれ円形の、第一乃至第三のリング杆6,6´,6´´を配してこれらを互いに熔接して組付けた籠体を、長杆部5aの自由端部において前記軸管3に熔接して軸管3を中心とする正面視円形状の籠状態で構成し、軸管3部において基台1の枢軸2に前記の通り回動自在に枢支させたものである。
【0012】
そして、リール枠4は、各短杆部5b,…の自由端部を接続した第二リング杆6´で取り囲まれる円形の空隙部を剛性杆7の収容口8と成し、剛性杆7は該収容口8を通じて剛性を利用して前記枢軸2乃至軸杆3を取り囲むようにして巻回状に収容され、その収容状態は、末端がリール枠4に固定した支持筒9に嵌挿され、先端が該先端に設けたフック22を適宜の骨杆5に係止することにより剛性機能を規制して確実に維持するようにしてある。
【0013】
前記基台1は、二又に分岐した脚杆1a,1a´と該脚杆1a,1a´の接続部から上方に延設した把手杆1bおよび前記接続部から水平方向に延設した前記枢軸2とで成り、脚杆1a,1aの前記枢軸2側の上部には制動装置Bを設けてある。
【0014】
図示10は制動装置Bの基枠で、基枠10は、主体部片10aの基端部側に第一部片10bと第二部片10cを互いに反対方向に突設して構成し、主体部片10aの片面側に突設した前記第一部片10bを前記脚杆1a,1a間にわたすようにして配し、この第一部片10bと挟持片11とで該脚杆1a,1aを介在して取付ボルト12とこれに螺合したナット13によって締め付けて脚杆1aに取付けたものである。
【0015】
脚杆1aから前記リール枠4方向に突出させた、基枠10の主体部片10aの前記片面側には支持枠14を、他の片面側にはL字形の調節枠15を重ね合わせ、これらを前記主体部片10aに設けた長孔を通じた締付ねじ17と支軸18によって互いに接続してある。
【0016】
支持枠14は、方形状の基部片14aの、一方の相対する両端に支持部片14b,14bを相対して、また、他の一方の相対する両端に規制部片14cと部片14dを相対してそれぞれ突設した方形枠体で構成し、前記支持部片14b,14bと規制部片14cとで区画される空間域には制動片19を係合し、該制動片19に緩く貫通させた前記支軸18によって前記支持枠14に回動自在に取付けてある。
【0017】
制動片19は円筒体(楕円状の筒体でも良い)を呈し、該制動片19と支持枠14の前記基部片14a間に介在させた弾性片(ゴム又は樹脂を素材とする)20の押圧によって内面が前記支軸18に偏して、しかも、その軸線aが前記規制部片14c(の先端部)に重なり合う位置に常時位置するように配され、リール枠4の骨杆5,5間に前記弾性片20に相対する一端が出入するように部分的に係合してある。
【0018】
なお、基枠10の前記第二部片10cと、締付ねじ17と支軸18とによって基枠10の主体部片10aに組付けた調節枠15の部片15aと、これに相対する基枠10の前記第二部片10cに調節ねじ21をわたし、締付ねじ17を緩めた状態で調節ねじ21を操作して調節枠15を進退させると、これに支軸18などで組付けた支持枠14は調節枠15に伴って移動し、支持枠14に搭載した制動片19の骨杆5,5間の係合量が調節され、その状態時に締付ねじ17を締付けることによってリール枠4は最も好適な状態で制動されるのである。
【0019】
また、支持枠14は、リール枠4から剛性杆7を繰り出す方向の上流側に係合部片14dを、下流側に規制部片14cが位置するようにして基台1(の脚杆1a)に取り付けてある。
【0020】
そして、この支持枠14の規制部片14c(の先端部)に弾性片20の存在によって制動片19の軸線が重なる位置に配せられるから、剛性杆7を牽引すると、剛性杆7は、弾性片20の弾性に抗する骨杆5の制動片19に対する押圧によってリール枠4から強制的に繰り出され、この強制繰り出し中、制動片19は支軸18によって移動の制約を受ける一方、規制部片14cの存在によって、回動(揺動)が規制されることになる。
【0021】
そして、牽引力の負荷(繰り出し操作)を停止すると、剛性杆7はその剛性により直線状になろうとして、リール枠4を回動させつつリール枠4より繰り出ようとするが、骨杆5,5間に存する制動片19に骨杆5に当接して剛性杆7の剛性を規制、すなわち、制動片19を押圧している弾性片20の弾性が剛性杆7の剛性に勝ってその繰り出しが(剛性杆7による剛性による)規制され、規制部片14cの存在による制動片19の回動規制により尚一層確実に回動規制が行われる。
【0022】
また、剛性杆7をリール枠4方向に押送すると、剛性杆7のリール枠4収容方向の下流側(繰り出し方向の上流側)には前記規制部片14cに対応するものがないので(規制部片14cは省略されているので)、制動片19はリール枠4に収容される(繰り込まれる)剛性杆7部分の接触によって回動(揺動)し、弾性片20の弾性力が低減された状態で剛性杆7は順次リール枠4内に収容される(繰り込まれる)から、前記の剛性杆7のリール枠4方向への押送操作は比較的軽い外力の負荷によって行うことができるのである。
【0023】
しかして、剛性杆7がその剛性によってリール枠4から繰り出されようとしてリール枠4を回動させようとしても、リール枠4の骨杆5が制動片19に接し、制動片19は規制部片14cの存在によって骨杆5,5間位置を保持するから、リール枠4の骨杆5を通じての、剛性杆7の剛性が弾性片20よりも強い弾性作用が働かない限りリール枠4から剛性杆7は繰り出されることなく、剛性杆7の剛性のみによるリール枠4の繰り出し作業を確実に防ぐことができる。
【0024】
また、剛性杆7を牽引すると、その牽引力は剛性に付加して、リール枠4すなわち骨杆5に作用するから、骨杆5は規制部片14cで移動が規制される制動片19を弾性片20の付勢に抗する方向に押圧して該骨杆5,5間から後退することとなり、剛性杆7の繰り出し操作を行うことができ、牽引操作を中断すると弾性片20の付勢によって制動片19は骨杆5,5間を確実に維持することができるのである。
【0025】
そして、リール枠4方向に剛性杆7を押送すると、該押送(圧)力によりリール枠4は回動しようとして、骨杆5の制動片19との摩擦抵抗は繰り出し方向とは逆に規制部片14cの規制のない方向に制動片19に作用し、制動片19は、弾性片20の付勢に抗して骨杆5,5間から後退し、剛性杆7のリール枠4への収容操作が支障なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】正面図。
【図2】図1の一部拡大図。
【図3】図2の平面図。
【図4】図2の側面図。
【図5】制動装置の斜視図。
【符号の説明】
【0027】
1 基台
2 枢軸
4 リール枠
5 骨杆
7 剛性杆
14 支持枠
18 支軸
19 制動片
20 弾性片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に籠状体で成るリール枠を枢軸によって回動自在に枢支し、該リール枠に前記支軸を取り囲むように巻回状に収容した剛性杆を、前記リール枠より順次繰り出すようにした剛性杆用リールにおいて、前記基台に支持枠を取付け、該支持枠に、前記リール枠の回動方向に並設した骨杆間を出入する円筒状の制動片を、該制動片に緩く貫通させた支軸で組付けると共に、前記剛性杆よりも強い弾性作用によって前記制動片の周面を押圧して前記骨杆間に介在させる弾性片を前記支持枠に設け、この支持枠の、前記リール枠から前記剛性杆を繰り出す方向の下流側の一側に、前記リール枠の外部において前記制動片が前記骨杆に押圧されて接する規制部片を設けた、剛性杆用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−306551(P2006−306551A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129589(P2005−129589)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000232494)日本電話施設株式会社 (12)
【出願人】(592157076)イワブチ株式会社 (80)
【Fターム(参考)】