説明

剥離処理レス粘着テープ及びその製造方法

【課題】 滅菌処理等に適した剥離処理レス粘着テープ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 剥離処理レス基材と、再剥離性粘着層と、を順次に積層した剥離処理レス粘着テープ及びその製造方法であって、再剥離性粘着層の少なくとも表面に、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマー100重量部に対して、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤を30〜700重量部の範囲で含む再剥離性粘着層を有するとともに、再剥離性粘着層のJIS−Z−0237に準拠した粘着力を5〜400cN/19mmの範囲内の値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離処理レス粘着テープ及びその製造方法に関し、特に、滅菌処理等に適した剥離処理レス粘着テープ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材と、粘着剤層とから構成される医療用粘着テープは、皮膚(角質層)に貼り付けたり、巻きつけたりして使用することから、適当な滅菌処理が施されている。また、医療用粘着テープは、皮膚に対する適度な接着性とともに、皮膚の角質層に対して、剥離損傷による皮膚刺激やかぶれを発症させない適度な剥離性を有するものが求められている。
そこで、近年、皮膚接着性と剥離性との間のバランスを考慮した再剥離性粘着剤組成物や医療用粘着テープが提案されている。
【0003】
例えば、基材上に、アクリル系ポリマー80〜99.5質量%と、数平均分子量が700〜5,000のアクリル系オリゴマー0.5〜20質量%とからなるポリマーアロイであって、数平均分子量が90,000〜250,000で、かつ数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)との比率(Mw/Mn)が6〜12であるポリマーアロイを積層した医療用粘着テープ(外用医薬部材)が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、基材シートの一面に、ビニルピロリドン含量が1〜60モル%である(メタ)アクリル酸エステル−ビニルピロリドンランダム共重合体よりなり、薬剤を含有する感圧性粘着剤層が積層されてなる医療用粘着テープ(貼付剤)が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、アクリル酸エステル系ポリマーと、液体成分と、を含むアクリル系粘着剤組成物やそれを用いた医療用粘着テープ(貼付剤)が各種知られている(例えば、特許文献3参照)。より具体的には、支持体の片面に、架橋処理した重合体からなる粘着剤層を有する貼付剤であって、該粘着剤層を貼り合わせた場合の180°剥離接着力が20〜180g/12mm幅であることを特徴とする貼付剤が開示されている。より具体的には、粘着剤層として、アクリル酸エステル系ポリマーと、当該ポリマーと相溶する液状可塑剤を含む貼付剤である。
【特許文献1】特公平6−4533号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特公平3−70685号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平5−139960号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された医療用粘着テープは、それぞれ基材における粘着剤層が形成された反対面(背面)に、剥離剤による剥離処理が施された状態で基材と粘着剤層が順次に積層されているか、もしくは剥離剤による剥離処理が施された別の基材の剥離処理面を粘着剤層面に向き合わせて積層した状態に形成されており、放射線照射による滅菌処理中に、かかる剥離剤が粘着剤層に移行しやすいという問題が見られた。
さらに、放射線照射によって、剥離剤としてのシリコーン化合物が粘着剤層と結合反応し、剥離剤として機能しなくなる問題が見られた。
また、特許文献1〜3に開示された医療用粘着テープは、それぞれ製造する際に、剥離フィルム等の剥離処理基材を別途用いる必要があって、製造コストや製造時間が多くかかるという問題が見られた。
【0007】
そこで、本発明者は、上記の課題を解決するために、特定のアクリル系ポリマーおよび特定のアクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤の混合物を用いた粘着テープについて種々の実験検討を行った結果、剥離処理を施していない基材を用いた場合であっても、皮膚に対する濡れ性が高くて、所定の剥離接着力がありながら、皮膚刺激性が少なく、かつ再貼付性に優れた粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、滅菌処理等に適した剥離処理レス粘着テープ及びそのような剥離処理レス粘着テープの効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、剥離処理レス基材と、再剥離性粘着層と、を順次に積層した剥離処理レス粘着テープであって、再剥離性粘着層の少なくとも表面に、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマー100重量部に対して、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤を30〜700重量部の範囲で含む再剥離性粘着層を有するとともに、再剥離性粘着層のJIS−Z−0237に準拠した粘着力を5〜400cN/19mmの範囲内の値とした剥離処理レス粘着テープが提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、特定の再剥離性粘着層を有することにより、剥離処理を行なわない基材を用いた場合であっても、剥離処理レス基材の一方の表面との間の密着性を高めることができるとともに、背面との間では、所定の剥離性を保持することができる。
また、特定の再剥離性粘着層を有することにより、皮膚に対する濡れ面積を増加させて所定の剥離接着力が得られる一方、皮膚刺激性が低く、かつ、再貼付性に優れた剥離処理レス粘着テープを得ることができる。
【0009】
また、本発明の剥離処理レス粘着テープを構成するにあたり、アクリル系ポリマーの数平均分子量を300,000〜1,500,000の範囲内の値とし、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤の数平均分子量を200〜10,000の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、使用するアクリル系ポリマーの凝集力が高い一方、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤との相溶性が良好であって、所定の粘着力が容易に得られるとともに、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤の外部流出や蒸散損失を容易に防止することができる。
【0010】
また、本発明の剥離処理レス粘着テープを構成するにあたり、剥離処理レス基材の片面と、再剥離性粘着層との間に、プライマー層を備えるか、コロナ放電処理が施してあることが好ましい。
このように構成することにより、剥離処理を行なわない基材を用いた場合であっても、剥離処理レス基材の一方の表面との間の再剥離性粘着層の密着性をさらに高めることができるとともに、背面との間では、所定の剥離性を保持することができる。
【0011】
また、本発明の剥離処理レス粘着テープを構成するにあたり、剥離処理レス基材の両表面又は片表面に、エンボス処理が施してあることが好ましい。
このように構成することにより、剥離処理を行なわない基材を用いた場合であっても、剥離処理レス基材の一方の表面との間の再剥離性粘着層の密着性をさらに高めることができるとともに、背面との間では、所定の剥離性を保持することができる。
【0012】
また、本発明の剥離処理レス粘着テープを構成するにあたり、再剥離性粘着層の厚さを1〜300μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、剥離処理を行なわない基材を用いた場合であっても、剥離処理レス基材の一方の表面との間の再剥離性粘着層の密着性をさらに高めることができるとともに、背面との間では、所定の剥離性を保持することができる。
【0013】
また、本発明の剥離処理レス粘着テープを構成するにあたり、放射線照射滅菌処理、例えば、ガンマ線照射滅菌や電子線照射滅菌が施してあることが好ましい。
このように構成することにより、効果的な滅菌処理を施すことができる。
【0014】
また、本発明の剥離処理レス粘着テープを構成するにあたり、放射線照射滅菌処理による放射線量を1〜100kGyの範囲内の値することが好ましい。
このように構成することにより、より良好かつ完全な滅菌処理を施すことができるとともに、放射線の出力等がばらついた場合であっても、剥離処理レス基材を損傷するおそれを少なくすることができる。
【0015】
また、本発明の別の態様は、剥離処理レス基材と、再剥離性粘着層と、を順次に積層した剥離処理レス粘着テープの製造方法であって、剥離処理レス基材を準備する工程と、再剥離性粘着層として、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマー100重量部に対して、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤を30〜700重量部の範囲で含み、JIS−Z−0237に準拠した粘着力が5〜400cN/19mmの範囲内の値である再剥離性粘着層を形成する工程と、を含むことを特徴とする剥離処理レス粘着テープの製造方法である。
すなわち、このように実施することにより、剥離処理レス基材の一方の表面との間の密着性を高めることができるとともに、背面との間では、所定の剥離性を保持することができる剥離処理レス粘着テープを効率的に得ることができる。
また、このように実施することにより、アクリル系ポリマーと、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤との間の混合分散が良好になって、皮膚に対する濡れ面積を増加させ、所定の剥離接着力が得られる一方、皮膚刺激性が低く、かつ再貼付性に優れた剥離処理レス粘着テープを効率的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1(a)に例示するように、剥離処理レス基材14と、再剥離性粘着層12と、を順次に積層した剥離処理レス粘着テープ10であって、再剥離性粘着層12の少なくとも表面に、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマー100重量部に対して、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤を30〜700重量部の範囲で含む再剥離性粘着層を有するとともに、再剥離性粘着層のJIS−Z−0237に準拠した粘着力を5〜400cN/19mmの範囲内の値とした剥離処理レス粘着テープ10である。
【0017】
1.基材
(1)種類
剥離処理レス粘着テープの一部を構成する基材の種類としては、適度な強度と柔軟性を備え破断時の伸びの大きい高分子材料であれば特に制限されるものではないが、ガンマ線や電子線による放射線滅菌処理等に適合した放射線安定性のよい高分子材料を使用することが好ましい。より具体的には、被放射線量が少なくとも60kGyレベル、より好ましくは100kGyレベルであっても、機械的強度等が低下しない高分子材料が好ましい。
このような高分子材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合体樹脂、ナイロン樹脂、セルロース樹脂等の、あるいはこれらの樹脂を混合した高分子材料が挙げられる。
また、基材の形態についても特に制限されるものではなく、フィルム状、繊維状、紙状あるいは強化繊維入りフィルム等が挙げられる。さらにまた、基材の形態としては、穿孔加工やエンボス加工されたフィルム状やメッシュ状であってもよく、あるいは織布または不織布であっても良い。
【0018】
(2)厚さ
また、基材の厚さを5〜2,000μmの範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、かかる基材の厚さが5μm未満の値になると、機械的強度が低下し、粘着テープの用途に適さない場合があるためである。
一方、かかる基材の厚さが2,000μmを超えると、過度に厚くなって、取り扱いが困難となるばかりか、粘着テープを構成した場合に、皮膚等から容易に剥離する場合があるためである。したがって、基材の厚さを10〜1,000μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20〜500μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0019】
(3)プライマー層
また、図1(b)に示すように、基材14の表面に、プライマー層(サイジング層やコロナ放電処理層を含む)16を設けることが好ましい。
この理由は、ように構成することにより、基材14と、再剥離性粘着剤組成物からなる粘着剤層12との間の密着力を向上させることができ、再剥離性粘着剤組成物の基材背面への転写を有効に防止することができるためである。
なお、このようなプライマー層は、例えば、アクリル樹脂やエポキシ樹脂等から構成することが好ましい。
【0020】
2.再剥離性粘着層
(1)架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマー
再剥離性粘着層の一部を構成する架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマーは、架橋可能な官能基を有するビニルモノマーを含むアクリル系モノマーを共重合または単独重合して得られたポリマーである。
したがって、特にその種類は制限されるものではないが、例えば、カルボキシル基やヒドロキシル基等の官能基を有するビニルモノマーと、アルキル基の炭素数が1〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、を共重合して得られるアクリル系ポリマーであることが好ましい。
この理由は、このようなモノマー成分からなるアクリル系ポリマーは、外部架橋剤によって、容易に架橋されて凝集力が向上するとともに、所定のアクリル系オリゴマーと容易に相溶して、濡れ面積を最も効果的に大きくすることができるためである。
【0021】
また、このようなアルキル基の炭素数が1〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロビル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の一種単独または二種以上の組合せを挙げることができる。
【0022】
一方、架橋可能な官能基を有するビニルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸やヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシルエチル等の一種単独または二種以上の組合せを挙げることができる。
また、かかるモノマーの配合量を、重合する際のモノマー成分の全体量に対して、1〜15質量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるモノマーの配合量が1質量%未満の値になると、架橋が不十分になって、皮膚に対する剥離接着力が向上しない場合があるためである。一方、かかるモノマーの配合量が15質量%を超えると、再剥離性粘着剤組成物の皮膚刺激性が高くなる場合があるためである。
【0023】
なお、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマーは、後述するアクリル系オリゴマーと同一のモノマー成分を少なくとも一種含むことが好ましい。
この理由は、このようにアクリル系ポリマーおよびアクリル系オリゴマーが、同一のモノマー成分を含むことにより、アクリル系ポリマーと、アクリル系オリゴマーとの間の相溶性が著しく向上するためである。
【0024】
また、アクリル系ポリマーの数平均分子量を300,000〜1,500,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるアクリル系ポリマーの数平均分子量が300,000未満の値になると、粘着剤の内部凝集力が不十分となって、糊残りが生じる場合があるためである。一方、かかるアクリル系ポリマーの数平均分子量が1,500,000を超えると、均一な混合が困難となり、安定した物性が得られなくなる場合があるためである。
したがって、かかるアクリル系ポリマーの数平均分子量を500,000〜1,500,000の範囲内の値とすることがより好ましく、700,000〜1,000,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかるアクリル系ポリマーの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC法)を用いて、測定することができる。
【0025】
また、アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg1)を−70〜−10℃の範囲内の値とすることが好ましく、−45〜−15℃の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、かかるアクリル系ポリマーのガラス転移温度が−70℃未満になると、再剥離性粘着剤組成物が基材背面へ転写しやすくなったり、皮膚刺激性が高まったりする場合があるためである。一方、かかるアクリル系ポリマーのガラス転移温度が−10℃を超えると、再剥離性粘着剤組成物の皮膚に対する剥離接着力が著しく低下する場合があるためである。
なお、かかるアクリル系ポリマーおよび後述するアクリル系オリゴマーのガラス転移温度は、それぞれ示差走査型熱量計(DSC)を用いて測定することもできるし、あるいは、Foxの式から算出することもできる。
【0026】
(2) アクリル系オリゴマー及び可塑剤
また、再剥離性粘着層の一部を構成するアクリル系オリゴマーに関して、モノマー成分として、分子中に少なくとも1つのラクタム環を有するビニルモノマーを、例えば、2〜40モル%の範囲で使用することが好ましい。
この理由は、かかるラクタム環を有するビニルモノマーを所定量使用することにより、皮膚に対する濡れ面積(S)を適度に増加させ、粘着剤固有の単位面積当りの接着力(F)を増加させることなく、所定の剥離接着力(W=S×F)を容易に得ることができるためである。また、かかるビニルモノマーを使用したオリゴマーであれば、比較的多量に添加したとしても、アクリル系ポリマーにおける凝集力の過度の低下を招くことなく、良好な皮膚剥離性を示すことができるためである。さらに、かかるビニルモノマーを使用したオリゴマーであれば、アクリル系ポリマーとの相溶性が向上するとともに、再剥離性粘着剤組成物に対して、薬物や添加剤を添加した場合に、当該薬物等を分散させやすくなるためである。
なお、このようなラクタム環を有するビニルモノマーの好適例として、水溶性ビニルモノマーが挙げられるが、特に、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
【0027】
また、ラクタム環を有するビニルモノマーの使用量を、モノマー成分の全体量に対して、2〜40モル%の範囲内の値とするのは、かかるラクタム環を有するビニルモノマーの使用量が2モル%未満の値になると、皮膚に対する濡れ面積の増大効果が発現されない場合があるためである。一方、かかるラクタム環を有するビニルモノマーの使用量が40モル%を超えると、アクリル系粘着剤ポリマーの可塑化が不十分になり、あるいは、過度に粘度が上昇して、アクリル系粘着剤ポリマーと均一に混合することが困難になる場合があるためである。
したがって、ラクタム環を有するビニルモノマーの使用量を、モノマー成分の全体量に対して、5〜35モル%の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0028】
また、ラクタム環を有するビニルモノマー以外のモノマー成分の種類は特に制限されるものではないが、例えば、アルキル基の炭素数が2〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましい。より具体的には、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の一種単独または二種以上の組合せを挙げることができる。
さらに、このようなアクリル系オリゴマーのモノマー成分としては、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびN−ビニル−2−ピロリドンの組合せが好ましい。
【0029】
一方、再剥離性粘着層の一部を構成する可塑剤としては、生活環境温度域でほとんど蒸気圧を示さない高沸点性の有機液状化合物であって、且つ架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマーとの相溶性が良い有機液状化合物が好ましい。
このような有機液状化合物としては、炭素数が8〜20の直鎖または分岐のアルキル基を持つ飽和もしくは不飽和脂肪酸類と、1価アルコールもしくは2〜4価の多価アルコールとの1価のエステル類もしくは多価エステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類;2〜3価の多価カルボン酸類と、炭素数が8〜18の直鎖又は分岐のアルキル基を持つアルコール類との多価エステル類;炭素数が8〜20の直鎖または分岐のアルキル基を持つ飽和もしくは不飽和脂肪酸類と、ポリオキシアルキレングリコール類とのエステル類;炭素数が8〜18の直鎖又は分岐のアルキル基を持つ1価アルコールと、グリセリンとのモノグリセリルエーテル類もしくはジアルキルグリセリルエーテル類;炭素数が8〜18の直鎖または分岐のアルキル基を持つ1価アルコールと、ポリオキシアルキレングリコール類とのモノエーテル類等が好ましく用いられる。
具体的には、1価のエステル類としては、2−エチルヘキサン酸イソセチル、ラウリン酸へキシル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸ヘキサデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレングリコールモノオレエート等が挙げられる。
また、多価のエステル類としては、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンテトラステアレート、トリス−2−エチルヘキサン酸グリセリン、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−2−へキシルデシル、セバシン酸ジイソステアリル、トリメリト酸トリイソセチル、トリメリト酸トリオレイル等が挙げられる。
また、ポリオキシアルキレングリコール類としては、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリプロピレングリコール2000、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
また、モノアルキルグリセリルエーテル類としては、モノイソステアリルグリセリルエーテル、モノオレイルグリセリルエーテル等が挙げられる。
また、ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレングリコールモノオレイルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
その他、レモン油、オリーブ油、ヒマシ油、綿実油、スクワラン、ラノリン又はラノリン等の油脂類も有効に用いることが出来る。
【0030】
また、アクリル系オリゴマー及び可塑剤の数平均分子量をそれぞれ200〜10,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるアクリル系オリゴマー等の数平均分子量が200未満の値になると、皮膚内部に浸透しやすくなり、再剥離性粘着剤組成物における皮膚刺激性が高まる場合があるためである。一方、かかるアクリル系オリゴマー等の数平均分子量が10,000を超えると、アクリル系粘着剤ポリマーの可塑化が不十分になり、あるいは、過度に粘度が上昇して、アクリル系粘着剤ポリマーと均一に混合することが困難になったり、さらには、皮膚に対する濡れ性が低下したりする場合があるためである。
したがって、アクリル系オリゴマー等の数平均分子量を300〜7,000の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、かかるアクリル系オリゴマー等の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定することができる。
【0031】
また、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤の配合量を、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマー100重量部に対して、30〜700重量部の範囲で配合することが好ましい。
この理由は、かかるアクリル系オリゴマー等の配合量が30重量部未満の値になると、皮膚に対する濡れ性が著しく低下する場合があるためである。一方、かかるアクリル系オリゴマー等の配合量が700重量部を超えると、粘着剤の凝集力が過度に低下して、皮膚に糊残りが生じたり、所定の剥離接着力が得られなかったりする場合があるためである。
したがって、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤の配合量を、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマー100重量部に対して、50〜500重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。なお、後述するように、架橋可能な官能基を有しないアクリル系ポリマーを、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマーと併用する場合には、アクリル系オリゴマーの配合量を、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマー100重量部に対して、300〜700重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0032】
また、アクリル系オリゴマーの製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、所定量の連鎖移動剤(ラウリルメルカプタンやメルカプトエタノール等)を用いて、数平均分子量を調整しながらアクリル系モノマーを重合(単独重合又は共重合)することが好ましい。より具体的には、酢酸エチル等の溶媒を利用するとともに、所定量の連鎖移動剤を添加した溶液重合や、水系溶媒を利用するとともに、所定量の連鎖移動剤を添加したエマルション重合等により、製造することが好ましい。
【0033】
(3)架橋可能な官能基を有しないアクリル系ポリマー
また、再剥離性粘着層の一部として、架橋可能な官能基を有しないアクリル系ポリマーを、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマーと併用することが好ましい。すなわち、かかるアクリル系ポリマーを併用することにより、凝集力を過度に低下させることなく、皮膚に対する濡れ性を向上させることができるためである。
【0034】
ここで、このような架橋可能な官能基を有しないアクリル系ポリマーとしては、モノマー成分として、架橋可能な官能基を有するビニルモノマーを含まないポリマーであって、例えば、アルキル基の炭素数が1〜14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを重合して得られるアクリル系ポリマーであることが好ましい。また、アクリル系オリゴマーと同様に、ラクタム環を有するビニルモノマーを、例えば、1〜40モル%の範囲で共重合して得られるアクリル系ポリマーであることがより好ましい。
なお、架橋可能な官能基を有しないアクリル系ポリマーの数平均分子量およびガラス転移点については、上述した架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマーと同様の内容とすることができる。
【0035】
また、架橋可能な官能基を有しないアクリル系ポリマーを、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマーと併用する場合、その添加量を、再剥離性粘着剤組成物の全体量に対して、1〜50質量%の範囲内の値とすることが好ましい。この理由は、かかる添加量が1質量%未満の値になると、添加効果が発現せず、皮膚に対する濡れ性が向上しない場合があるためである。一方、かかる添加量が50質量%を超えると、相対的に架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマーの存在量が減少し、結果として、凝集力が低下する場合があるためである。したがって、架橋可能な官能基を有しないアクリル系ポリマーの添加量を、再剥離性粘着剤組成物の全体量に対して、5〜45質量%の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜35質量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0036】
(4)架橋剤
また、アクリル系ポリマーおよびアクリル系オリゴマーからなる中間組成物に、架橋剤を添加して、架橋することが好ましい。すなわち、アクリル系ポリマーの凝集力を調整するために、例えば、中間組成物の全体量に対して、0.01〜15質量%の架橋剤を添加することが好ましい。この理由は、かかる架橋剤の添加量が0.01質量%未満の値になると、架橋が不十分になって、粘着剤の糊残りが生じる場合があるためである。一方、かかる架橋剤の添加量が15質量%を超えると、過度に架橋がすすんで、皮膚に対する濡れ性が著しく低下する場合があるためである。したがって、かかる架橋剤の添加量を、中間組成物の全体量に対して、0.05〜8質量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。なお、好ましい架橋剤の種類として、例えば、エチレングリコール−ジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等の多価エポキシ化合物や、トリレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネートの付加誘導体等としての多価イソシアネート化合物、多価アジリジン化合物、あるいは多価金属キレート化合物等が挙げられる。
【0037】
(5)添加剤
また、再剥離性粘着剤組成物中に、所定の薬効を発揮できるように、添加剤の一種として、製剤(薬物)を添加することが出来る。このような製剤の種類は特に制限されるものではないが、例えば、抗炎症薬剤、消炎鎮痛剤、冠血管拡張剤、喘息薬、抗高血圧剤、抗ヒスタミン剤、精神安定剤、抗生物質、麻酔剤、ビタミン剤等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。また、製剤の添加量は、製剤の種類や再剥離性粘着剤組成物の用途によって異なるが、例えば、再剥離性粘着剤組成物の全体量に対して、0.1〜30質量%の範囲内の値とすることが好ましい。
また、再剥離性粘着剤組成物中に、各種添加剤を添加することが好ましい。例えば、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、隠蔽剤、可塑剤、ワックス、着色剤、無機フィラー、有機フィラー、増量剤、カップリング剤等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
【0038】
(6)製造方法
また、再剥離性粘着剤組成物の製造方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、以下の製造工程a〜dに拠ることが好ましい。このように実施すると、アクリル系ポリマーと、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤との間の混合分散がさらに良好になって、再貼付性に優れた再剥離性粘着剤組成物を効率的に得ることができる。
a.架橋可能な官能基を有し、数平均分子量が300,000〜1,500,000のアクリル系ポリマーを準備する工程
b.モノマー成分としてラクタム環を有するビニルモノマーを2〜40モル%含んで重合された数平均分子量が200〜10,000のアクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤を準備する工程
c.アクリル系ポリマー100重量部に対して、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤を30〜700重量部の範囲で配合し、中間組成物とする工程
d.中間組成物に、架橋剤を添加して、架橋する工程
なお、架橋可能な官能基を有しないアクリル系ポリマーを重合しておき、所望により、それを中間組成物に対して混合添加する工程を設けたり、あるいは、製剤(薬物)や添加剤をさらに混合添加したりする工程を設けることも好ましい。
【0039】
3.製造方法
剥離処理レス粘着テープの製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター等を用いて、再剥離性粘着剤組成物を基材上に均一に塗布することにより、容易に製造することができる。
【0040】
4.剥離接着力
また、JIS Z0237に準拠した再剥離性粘着剤組成物からなる再剥離性粘着層を備えた剥離処理レス粘着テープの剥離接着力(モード:180°剥離、被着体:フェノール樹脂板、剥離速度:300mm/min)を5〜400cN/19mm(5.1〜255gf/19mm)の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる剥離接着力が5cN/19mm未満の値になると、皮膚等から容易に剥離してしまい、粘着テープとしての機能に劣る場合があるためである。一方、かかる剥離接着力が400cN/19mmを超えると、再剥離性粘着剤組成物を皮膚から除去することが困難になったり、あるいは、皮膚刺激性が過度に高くなって、使用時に不快感が生じたりする場合があるためである。したがって、40〜250cN/19mmの範囲内の値とすることがより好ましく、60〜200cN/19mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。なお、再剥離性粘着剤組成物を、基材上に全面塗布せずにパターン塗布することにより、剥離処理レス粘着テープの剥離接着力を調整することも好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明を例示的に示すものであって、本発明の内容は、これらの記載に何ら制限されるものではない。
【0042】
[実施例1]
1.再剥離性粘着剤組成物および剥離処理レス粘着テープの製造
(1)アクリル系オリゴマーの製造
N−ビニル−2−ピロリドン20.5g(0.185モル、混合モル分率:12.0モル%)と、アクリル酸−2−エチルヘキシル250g(1.356モル、混合モル分率:88.0モル%)と、連鎖移動剤としてのラウリルメルカプタン18.2g(0.09モル)とを、溶媒としての酢酸エチル73gにそれぞれ均一に溶解させて、モノマー混合溶液を作成した。このモノマー混合溶液を、蒸気凝縮還流塔を備えた攪拌機付きの重合反応器に仕込んだ後、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBN)を0.5g添加した。次いで、窒素気流中で、モノマー混合溶液が均一になるまでさらに攪拌した後、重合反応器を55℃の湯浴に浸漬して、溶液重合を開始した。なお、重合開始と同時に、発生する重合反応熱によって反応溶液温度が急激に上昇し始めるので、適宜に湯浴を水冷浴に切り換えて除熱し、重合反応液の温度を65±5℃に制御しながら、約2時間溶液重合を行った。この間、重合反応の進行に伴って、反応溶液の粘度が上昇した。発熱反応がほぼ終了した段階において、さらにAIBNを0.04g加えた後、湯浴に切り換えて、反応液温度を70±2℃まで上昇させ、そのまま約5時間加熱して重合反応を完結させた。
次いで、重合反応器から重合反応溶液(アクリル系オリゴマー)を取り出し、得られたアクリル系オリゴマーの濃度(不揮発分)を乾固法(150℃、1時間)により測定したところ、80.5重量%であった。
また、得られた重合反応溶液を、1mmHgの減圧下に、85℃まで加熱して、溶媒の酢酸エチルを除去し、粘凋なアクリルオリゴマー液を得た。得られたアクリル系オリゴマーの粘度を、B型粘度計を用いて測定したところ、63dPa・S(測定温度:25℃、以下同じ)であった。
さらに、GPC法を用いて測定した、ポリスチレン換算の数平均分子量(以下、同じ)は、3,200であった。
【0043】
(2)架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマーの製造
アクリル酸20g(11重量部)と、アクリル酸−2−エチルヘキシル180g(100重量部)と、酢酸エチル300gに対して溶解させ、モノマー混合溶液とした。次いで、得られたモノマー混合溶液を、蒸気凝縮還流塔を備えた攪拌機付き重合反応器に仕込み、重合開始剤としてAIBNを0.12g添加した後、反応容器内を窒素置換した後に、65℃の湯浴に浸漬して、溶液重合を開始させた。重合開始と同時に、発生する重合反応熱によって反応溶液温度が上昇し始めるので、適宜に湯浴を水冷浴に切り換えて除熱し、重合反応液の温度を70±5℃に制御しながら、約2時間溶液重合を行った。この間重合反応の進行に伴って、反応溶液の粘度が上昇した。発熱反応がほぼ終了した段階において、さらにAIBNを0.02g加えた後、湯浴に切り換えて反応液温度を70±2℃に制御しながら、約5時間加熱して重合反応を完結させた。次いで、重合反応器から粘凋な重合反応溶液を取り出し、得られたアクリル系ポリマーの濃度(不揮発分)を乾固法(150℃、1時間)により測定したところ、42.0重量%であった。また、得られた架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマーの溶液粘度(25℃、B型粘度計を用いた酢酸エチル溶液としての粘度、以下同様である)を測定したところ、48dPa・Sであり、GPCにより測定した数平均分子量は、550,000であった。
【0044】
(3)架橋および積層工程
得られたアクリル系オリゴマー85gと、架橋可能なアクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液100g(アクリル系ポリマーとして42g)を混合した中間組成物に、反応型架橋剤として多価イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)2.5gを添加した。その後、酢酸エチルをさらに添加調整することにより、不揮発残分が50質量%の再剥離性粘着剤組成物(酢酸エチル溶液)を得た。この再剥離性粘着剤組成物におけるアクリル系オリゴマーの含有率は67質量%であった。次いで、得られた再剥離性粘着剤組成物を、剥離処理レス基材としてのポリエチレンフイルム(50μm厚)の片面に、プライマー処理としてのコロナ放電処理を行った後均一に積層塗工した後、110℃で加熱乾燥して、再剥離性粘着層の厚さが40μmの剥離処理レス粘着テープ(粘着絆創膏)を製造した。
【0045】
2.評価
(1)剥離接着力
得られた剥離処理レス粘着テープの剥離接着力を、JIS−Z−0237に準拠して、測定した。得られた結果を表1に示す。
【0046】
(2)放射線(ガンマ線)照射線量の変化による剥離処理レス基材に対する剥離接着力の変化の測定
また、得られた剥離処理レス粘着テープを、短冊状の試験片(幅:19mm、長さ:
50mm)に切断加工した後、この試験片の2枚を1セットにして、1枚目の試験片の再剥離粘着層面をニ枚目の試験片の剥離処理レス粘着テープの背面(即ち、剥離処理レス基材面)に同心的に余寸なく貼り合わせて、試験片セットを作成した。この試験片セットを、ガンマ線の放射線照射処理設備に架けて放射線を20kGy照射した後、1枚目と2枚目の試験片を剥がす際の、1枚目の試験片についての2枚目の試験片の背面への剥離接着力を測定した。実際の測定に当たっては、1つの剥離処理レス粘着テープについて試験片セットを5セット作成して測定し、その平均値をもって剥離処理レス基材に対する剥離接着力の評価とした。
さらに、20kGyであった放射線の線量をそれぞれ40kGy及び60kGyとした以外は、上述の方法と同様の方法で剥離処理レス粘着テープに放射線を照射して、剥離処理レス基材に対する剥離接着力を測定した。得られた結果を表1、図2、及び図3に示す。
なお、このとき剥離処理レス基材に対する剥離接着力の維持率(%)を下式より算出した。
剥離処理レス基材に対する剥離接着力の維持率(%)=(照射後の剥離処理レス基材に対する剥離接着力/照射前の剥離処理レス基材に対する剥離接着力)×100
また、図2、及び図3において、Aは比較例2、Bは比較例1、Cは実施例1、Dは実施例2、Eは実施例3、Fは実施例4、Gは実施例5、Hは実施例6、Iは実施例7、Jは実施例8の粘着テープにおける測定結果のデータである。
【0047】
[実施例2〜4]
実施例2〜4においては、表1に示すように、本発明が規定する範囲内において、モノマー組成や可塑剤の種類またはその配合量を変えたほかは、実施例1と同様に剥離処理レス粘着テープをそれぞれ作成して、評価した。
その結果、それぞれにおいて、照射放射線量20kGyの有効滅菌処理前後における剥離処理レス基材に対する剥離接着力の維持率は、100±40%の範囲内であって、剥離処理レス基材に対する剥離接着力が過度に大きくならず、再貼付性に優れた剥離処理レス粘着テープが得られることが判明した。
【0048】
[実施例5]
1.再剥離性粘着剤組成物および剥離処理レス粘着テープの製造
(1)アクリル系オリゴマーの製造
実施例1に準拠して、表2に示すような配合で、アクリル系オリゴマー液を得た。得られたアクリル系オリゴマーの粘度は88dPa・Sであり、数平均分子量は2200であった。
【0049】
(2)架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマーの製造
アクリル酸14g(7重量部)と、アクリル酸−2−エチルヘキシル200g(100重量部)とを酢酸エチル262gに溶解させ、モノマー混合液とした。次いで、得られたモノマー混合溶液を、蒸気凝縮還流塔を備えた攪拌機付き重合反応器に仕込み、重合開始剤としてAIBN0.12g添加した後、反応容器内を窒素気流下に置換した上で65℃の湯浴に浸漬して、溶液重合を開始させた。重合開始と同時に、発生する重合反応熱によって反応液温度が上昇し始めるので、適宜に湯浴を水冷浴に切り換えて除熱し重合反応液の温度を70±5℃に制御しながら、約2時間溶液重合を行った。この間重合反応の進行に伴って、反応溶液の粘度が上昇する。発熱反応がほぼ終了した段階において、さらにAIBNを0.02g加えた後湯浴に切り換えて反応液温度を70±2℃に制御しながら、約5時間加熱して重合反応を完結させた。
次いで、重合反応器から粘凋な重合反応溶液を取り出し、得られたアクリル系ポリマーの濃度(不揮発分)を乾固法(150℃、1時間)により測定したところ、46.5質量%であった。また、得られたアクリル系ポリマーの溶液粘度を測定したところ、43dPa・Sであり、GPC法により測定した数平均分子量は、480,000であった。
【0050】
(3)架橋可能な官能基を有しないアクリル系ポリマーの製造
N−ビニル−2−ピロリドン36.0gと、アクリル酸−2−エチルヘキシル125gと、を酢酸エチル343gに溶解させ、モノマー混合溶液とした。次いで、得られたモノマー混合溶液を、蒸気凝縮還流塔を備えた攪拌機付き重合反応器に仕込み、重合開始剤としてAIBNを0.12g添加した後、反応容器内を窒素気流下に置換した上で65℃の湯浴に浸漬して、溶液重合を開始させた。重合開始と同時に、発生する重合反応熱によって反応液温度が上昇し始めるので、適宜に湯浴を水冷浴に切り換えて除熱し重合反応液の温度を75±5℃に制御しながら、約2時間溶液重合を行った。この間重合反応の進行に伴って、反応溶液の粘度が上昇する。発熱反応がほぼ終了した段階において、さらにAIBNを0.02g加えた後湯浴に切り換えて反応液温度を70±2℃に制御しながら、約5時間加熱して重合反応を完結させた。次いで、重合反応器から粘凋な重合反応溶液を取り出し、得られたアクリル系ポリマーの濃度(不揮発分)を乾固法(150℃、1時間)により測定したところ、34.0質量%であった。また、得られたアクリル系ポリマーの溶液粘度を測定したところ、110dPa・Sであり、GPCにより測定した数平均分子量は、670,000であった。
【0051】
(4)架橋および積層工程
得られたアクリル系オリゴマー50gと、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマー溶液21.5g(アクリル系ポリマーとして10g)と、架橋可能な官能基を有しないアクリル系ポリマー溶液88g(アクリル系ポリマーとして30g)と、を混合して得た中間組成物に、反応型架橋剤としてアルミニウムトリスアセチルアセトネート0.25gを添加した。その後、酢酸エチルをさらに添加調整することにより、不揮発残分が50質量%の再剥離性粘着剤組成物(酢酸エチル溶液)を得た。この再剥離性粘着剤組成物におけるアクリル系オリゴマーの含有率は、56質量%であった。次いで、得られた再剥離性粘着剤組成物を、剥離処理レス基材としてのポリエステル不織布(40μm厚)の片面に、プライマー処理としてのコロナ放電処理を行った後均一に積層塗工した後、110℃で加熱乾燥して、再剥離性粘着層の厚さが40μmの剥離処理レス粘着テープ(粘着絆創膏)を製造した。
【0052】
2.評価
得られた剥離処理レス粘着テープの剥離接着力および剥離処理レス基材に対する剥離接着力について、実施例1と同様に評価した。その結果、表2に示すように、放射線量が20kGyの有効滅菌処理前後における剥離処理レス基材に対する剥離接着力の維持率は、それぞれ100±40%の範囲内であって、再貼付性に優れた剥離処理レス粘着テープが得られることが判明した。
【0053】
[実施例6〜8]
実施例6〜8においては、表2に示すように、本発明が規定する範囲内において、アクリル系オリゴマーや可塑剤の種類またはその配合量を変えたほかは、実施例5と同様に剥離処理レス粘着テープを作成して、評価した。その結果、放射線量が20kGyの有効滅菌処理前後における剥離処理レス基材に対する剥離接着力の維持率は、それぞれ100±40%の範囲内であって、再貼付性に優れた剥離処理レス粘着テープが得られることが判明した。
【0054】
[比較例1、2]
比較例1、2においては、従来から一般に用いられているシリコーン剥離処理基材を用いた粘着テープを用い、実施例1に準拠してテープの評価を行った。結果は表3、図2、及び図3に示す。
かかる結果から、比較例1では、放射線としてのガンマ線量の増加にともなって著しくシリコーン剥離処理基材に対する剥離接着力が増加してしまい、放射線照射前のシリコーン剥離処理基材に対する剥離接着力を維持することが困難であることがわかる。また、比較例2では、放射線としてのガンマ線量を増加させた場合であっても、シリコーン剥離処理基材に対する剥離接着力の維持率としては比較的に低く抑えることができるが、放射線照射前の段階でのシリコーン処理基材に対する剥離接着力が大きいことの結果、放射線量の増加にともなうシリコーン処理基材に対する剥離接着力の増加量は非常に大きいことがわかる。
【0055】
[比較例3]
表4に示すように、比較例3において、アクリル系オリゴマーの配合量を本発明が規定する範囲外において配合することのほかは、実施例1に準拠して剥離処理レス粘着テープを作成し、評価した。その結果、20kGyの放射線としてのガンマ線量で照射処理した試験片セットの、1枚目の試験片を2枚目の試験片の背面から剥離しようとしたところ、1枚目の試験片の再剥離性粘着層が2枚目の試験片の背面に過剰に強く接着して、無理に剥離しようとすると、1枚目の試験片の再剥離粘着層が2枚目の試験片の背面に転写してしまって、剥離処理レス粘着テープの剥離処理レス基材に対する剥離接着力を測定することが出来なかった。
【0056】
[比較例4〜6]
表4に示すように、比較例4〜6において、それぞれ本発明が規定する範囲内において、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤の種類や配合量を変えたほかは、実施例1に準拠して剥離処理レス粘着テープを作成し、評価した。その結果それぞれの比較例において、上述の比較例3と同様の結果となり測定することができなかった。また、比較例4においては、剥離接着力を測定する段階で、再剥離性粘着層の凝集力不足による粘着層の凝集破壊が生じた結果、被着体への糊残りが生じて、剥離処理レス粘着テープの正規の剥離接着力を測定することができなかった。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、剥離処理レス基材を用いているにもかかわらず、皮膚に対する濡れ性が高くて、適度な剥離接着力がありながら、皮膚刺激性が少なく、かつ再貼付性に優れるとともに、滅菌処理等に適した剥離処理レス粘着テープが効率的に得られるようになった。
したがって、剥離処理レス粘着テープをロール状に巻いたり、シート状で二重以上の多重に重ねて、高温条件や長時間条件で保存したりしても、アクリル系オリゴマーや可塑剤の基材背面への転写を有効に防止できるとともに、滅菌処理中や保管中における剥離剤の移行についても心配する必要がなく、また、適度な自背面剥離接着力が維持されるため、ロール状形態でも、二重以上の多重に重ねたシート状形態でも、型崩れが発生せず使用時の巻き戻しも容易になる結果、再貼付性に優れた剥離処理レス粘着テープが得られた。すなわち、医療用粘着テープ等として、極めて有用な粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の剥離処理レス粘着テープの構成例を説明するために供する図である。
【図2】本発明の剥離処理レス粘着テープにおける放射線照射量と剥離処理レス基材に対する剥離接着力との関係を説明するために供する図である。
【図3】本発明の剥離処理レス粘着テープにおける放射線照射量と剥離処理レス基材に対する剥離接着力の維持率との関係を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0063】
10:剥離処理レス粘着テープ
12:再剥離性粘着層
14:剥離処理レス基材
16:プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離処理レス基材と、再剥離性粘着層と、を順次に積層した剥離処理レス粘着テープであって、
前記再剥離性粘着層の少なくとも表面に、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマー100重量部に対して、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤を30〜700重量部の範囲で含む再剥離性粘着層を有するとともに、
前記再剥離性粘着層のJIS−Z−0237に準拠した粘着力を5〜400cN/19mmの範囲内の値とすることを特徴とする剥離処理レス粘着テープ。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマーの数平均分子量を300,000〜1,500,000の範囲内の値とし、前記アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤の数平均分子量を200〜10,000の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の剥離処理レス粘着テープ。
【請求項3】
剥離処理レス基材の片面と、再剥離性粘着層との間に、プライマー層を備えるか、コロナ放電処理が施してあることを特徴とする請求項1又は2に記載の剥離処理レス粘着テープ。
【請求項4】
剥離処理レス基材の両表面又は片表面に、エンボス処理が施してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の剥離処理レス粘着テープ。
【請求項5】
前記再剥離性粘着層の厚さを1〜300μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の剥離処理レス粘着テープ。
【請求項6】
放射線照射滅菌処理が施してあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の剥離処理レス粘着テープ。
【請求項7】
前記放射線照射滅菌処理による放射線量を1〜100kGyの範囲内の値とすることを特徴とする請求項6に記載の剥離処理レス粘着テープ。
【請求項8】
剥離処理レス基材と、再剥離性粘着層と、を順次に積層した剥離処理レス粘着テープの製造方法であって、
剥離処理レス基材を準備する工程と、
前記再剥離性粘着層として、架橋可能な官能基を有するアクリル系ポリマー100重量部に対して、アクリル系オリゴマー及び/又は可塑剤を30〜700重量部の範囲で含み、JIS−Z−0237に準拠した粘着力が5〜400cN/19mmの範囲内の値である再剥離性粘着層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする剥離処理レス粘着テープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−31672(P2007−31672A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221129(P2005−221129)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(504246719)ピアック株式会社 (8)
【出願人】(500465499)有限会社ケイアンドアイメディカルリサーチ (2)
【Fターム(参考)】