説明

剥離剤組成物及び剥離シート

【課題】接着樹脂を塗工した際のぬれ性と塗工により形成した接着樹脂層との剥離性との両方をバランス良く有する剥離シートを与える剥離剤組成物及び該組成物の硬化物からなる剥離剤層を有する剥離シートを提供すること。
【解決手段】(A)ビスフェノール型樹脂、(B)熱硬化性樹脂、及び(C)変性アルキド樹脂を含有する剥離剤組成物及び基材上に前記組成物からなる剥離剤層を設けてなる剥離シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離剤組成物及び剥離シートに関する。さらに詳しくは、本発明は、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂などからなる接着樹脂を塗工する際の濡れ性と当該接着樹脂層との剥離性とを高い水準で且つバランス良く有する剥離シートを与える剥離剤組成物及び該組成物の硬化物からなる剥離剤層を有する剥離シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小型、薄型、軽量で実装密度の高い半導体製造装置への要求が高まっているが、そのような半導体製造装置の半導体デバイス組立工程においては、デバイスの基板への高密度実装は接着樹脂を介して行われる。そして該接着樹脂として、一般にポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂などが用いられる。
この場合、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基材上に剥離剤層を設けてなる剥離シートの該剥離剤層に、前記の接着樹脂を塗工して、その未硬化層(接着樹脂層)を形成し、このものを電子部品に貼合したのち、剥離シートを剥がすことにより、電子部品上に前記接着樹脂層を転写させ、次いでその電子部品を接着樹脂層が当接する形で基板に載置して、該接着樹脂層を硬化させる方法が一般に用いられている。
【0003】
一般的に剥離シートの剥離剤層には、シリコーン系剥離剤がよく用いられるが、シリコーン系剥離剤によって形成した剥離剤層上に前記の接着樹脂を塗工した場合、該接着樹脂の該剥離剤層面に対する濡れ性が低くてはじきが生じ、所期の未硬化層(接着樹脂層)を形成することが困難となる場合がある。
また、脂肪酸で変性したアルキド樹脂若しくはアクリル樹脂(変性樹脂)とアミノ樹脂などの熱硬化性樹脂との架橋樹脂からなるアルキド系剥離剤を用いることも提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)が、その場合、変性樹脂と熱硬化性樹脂との比率を変えても、接着樹脂塗工時のぬれ性と剥離剤層からの接着樹脂層の剥離性との両方をバランスよく得ることは困難であり、更に、剥離フィルムを加熱環境下又は湿熱環境下に放置した場合に、当初の剥離性能を維持できないといった問題があり、その改善が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−277614号公報
【特許文献2】特開平10−6459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下で、接着樹脂を塗工した際のぬれ性と塗工により形成した接着樹脂層との剥離性との両方をバランス良く有する剥離シートを与える剥離剤組成物及び該組成物の硬化物からなる剥離剤層を有する剥離シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、(A)ビスフェノール型樹脂、(B)熱硬化性樹脂、及び(C)変性アルキド樹脂を含有する剥離剤組成物により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)(A)ビスフェノール型樹脂、(B)熱硬化性樹脂、及び(C)変性アルキド樹脂を含有することを特徴とする剥離剤組成物、
(2)(B)熱硬化性樹脂の固形分質量が、(A)ビスフェノール型樹脂、(B)熱硬化性樹脂、及び(C)変性アルキド樹脂の合計固形分100質量部中、30〜90質量部である、上記(1)の剥離剤組成物、
(3)(C)変性アルキド樹脂に対する(A)ビスフェノール型樹脂の固形分質量比(A)/(C)が、1〜400である、上記(1)の剥離剤組成物、
(4)(A)ビスフェノール型樹脂が、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂エステルである、上記(1)の剥離剤組成物、
(5)(B)熱硬化性樹脂が、アミノ樹脂である、上記(1)の剥離剤組成物、
(6)(C)変性アルキド樹脂が、炭素数12〜28の油脂若しくは脂肪酸で変性されたアルキド樹脂又はシリコ−ンで変性されたアルキド樹脂である、上記(1)の剥離剤組成物、
(7)上記(1)〜(6)のいずれかの剥離剤組成物の硬化物からなる剥離剤層が、基材上に形成されてなる剥離シート、
(8)剥離剤層の厚さが0.03〜5μmである、上記(7)の剥離シート、及び
(9)エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂又はポリイミド系樹脂からなる接着樹脂が適用される、上記(7)又は(8)の剥離シート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、接着樹脂を塗工した際のぬれ性と塗工により形成した接着樹脂層との剥離性との両方をバランス良く有する剥離シートを与える剥離剤組成物及び該組成物の硬化物からなる剥離剤層を有する剥離シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の剥離剤組成物は、(A)ビスフェノール型樹脂、(B)熱硬化性樹脂、及び(C)変性アルキド樹脂を含むものである。
(A)成分のビスフェノール型樹脂としては特に制限はなく、公知のもの、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂エステル、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂エステルの中から適宜選択して用いることができるが、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂エステルが硬化後の皮膜硬度、基材との密着性の点から好ましい。
【0009】
(B)成分の熱硬化性樹脂としては特に制限はなく、公知のもの、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂などのアミノ樹脂の他、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂の中から適宜選択して用いることができるが、アミノ樹脂がアルキド樹脂との反応性や後述する基材との密着性の点から好ましい。
このアミノ樹脂の具体例としては、ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有するメラミン樹脂、尿素樹脂、尿素−メラミン樹脂、グアナミン樹脂、グリコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂、スクシニルアミド−ホルムアルデヒド樹脂、エチレン尿素−ホルムアルデヒド樹脂などを挙げることができる。これらは、メラミン、尿素、グアナミン、グリコールウリル、スクシニルアミド、エチレン尿素などを沸騰水中でホルマリンと反応させてメチロール化、あるいはこれにさらに低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどを反応させてエーテル化することにより、容易に得られるものである。
これらの熱硬化性樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
(C)成分の変性アルキド樹脂としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、炭素数12〜28の油脂若しくは脂肪酸で変性されたアルキド樹脂又はシリコ−ンで変性されたアルキド樹脂が好ましい。
【0011】
変性アルキド樹脂は、多価アルコール、多塩基酸及び変性剤の縮合反応によって得られる樹脂である。
該変性アルキド樹脂の原料として用いられる多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニット、ソルビットなどの四価以上の多価アルコールを挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
また、多塩基酸としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメット酸などの芳香族多塩基酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸などの脂肪族不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、テルペン−無水マレイン酸付加物、ロジン−無水マレイン酸付加物などのディールズ・アルダー反応による多塩基酸などを挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
変性剤としては、油脂変性アルキド樹脂及び脂肪酸変性アルキド樹脂の場合は、炭素数12〜28の油脂及び脂肪酸、例えば、オクチル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸、あるいはヤシ油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油、サフラワー油及びこれらの脂肪酸などを用いることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
シリコーン変性アルキド樹脂の場合の変性剤としては、例えば、アルコキシシリル基やシラノール基を有する化合物、具体的にはジメチルポリシロキサンを主成分とするオルガノポリシロキサンなどを用いることができ、メチル基の一部がフェニル基、エチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、水酸基、ビニル基などによって置換されていても良い。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
変性アルキド樹脂の変性率は、接着樹脂のぬれ性と接着樹脂層との剥離性との両方をバランス良く有する剥離剤層を得るためには、油脂変性アルキド樹脂及び脂肪酸変性アルキド樹脂の場合は、5〜60質量%の範囲が好ましく、シリコーン変性アルキド樹脂の場合は、1〜30質量%の範囲が好ましい。
【0016】
本発明の剥離剤組成物においては、(B)成分の熱硬化性樹脂の割合は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計固形分100質量部中の質量部として、充分な硬化性と加熱条件下の安定性を得るためには、30質量部以上が好ましく、良好な剥離性を得るには、90質量部以下が好ましい。即ち、(B)成分の割合は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計固形分100質量部中、30〜90質量部の範囲が好ましく、50〜70質量部の範囲が特に好ましい。
【0017】
本発明の剥離剤組成物においては、(C)成分の変性アルキド樹脂に対する(A)成分のビスフェノール樹脂の固形分質量比(A)/(C)は、接着樹脂の塗工性を良好に保つためには1以上が好ましく、形成された接着樹脂層との剥離性を良好に保つためには400以下が好ましい。即ち、(C)成分に対する(A)成分の固形分質量比(A)/(C)は、1〜400の範囲が好ましく、3〜40の範囲が特に好ましい。
【0018】
本発明の剥離剤組成物においては、硬化触媒として酸性触媒を用いることができる。この酸性触媒としては特に制限はなく、従来アルキド樹脂とメラミン樹脂との架橋反応触媒として知られている公知の酸性触媒の中から適宜選択して用いることができる。このような酸性触媒としては、例えばp−トルエンスルホン酸やメタンスルホン酸などの有機系の酸性触媒が好適である。この酸性触媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計固形分100質量部に対し、通常0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜10質量部の範囲で選定される。
【0019】
本発明の剥離剤組成物は、使用上の利便性などから、通常有機溶剤溶液の形態で用いられる。この際用いられる有機溶剤としては、前記(A)〜(C)成分に対する溶解性が良好であって、それらに対して不活性な公知の溶剤の中から適宜選択して用いることができる。このような溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソブタノール、n−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
これらの有機溶剤中に、前記(A)〜(C)成分、酸性触媒及び所望により用いられる各種添加成分を、それぞれ所定の割合で加え、塗工可能な粘度に調整することにより、剥離剤層形成用の塗工液が得られる。
この際用いられる添加成分としては特に制限はなく、従来アルキド樹脂−メラミン樹脂系剥離剤組成物の添加成分として知られている公知の添加成分の中から、適宜選択して使用することができる。例えばカチオン系界面活性剤などの帯電防止剤、酸化チタンなどの艶消し剤、可撓性や粘度調整などのためのアクリル系樹脂などの他の樹脂などを用いることができる。
【0021】
次に、本発明の剥離シートについて説明する。
本発明の剥離シートは、基材上に前述の剥離剤組成物の硬化物からなる剥離剤層を設けたものである。
この剥離シートにおける基材としては特に制限はなく、従来剥離シートの基材として知られている公知の基材の中から、適宜選択して用いることができる。そのような基材としては、例えばグラシン紙、コート紙、キャストコート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリメチルペンテンなどのポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、酢酸セルロース系フィルムなどのプラスチックフィルムや、これらを含む積層シートなどが挙げられる。これらの基材の中では、剥離剤組成物との密着性の点からは、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
基材の厚さとしては特に制限はないが、通常10〜150μm程度である。
【0022】
基材としてプラスチックフィルムを用いる場合には、プラスチックフィルムと剥離剤層との密着性を向上させるなどの目的で、所望により、該プラスチックフィルムの剥離剤層が設けられる側の面に、酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、基材の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が、効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、プライマー処理を施すこともできる。
【0023】
これらの基材上に、例えばバーコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、グラビアコート法、エアドクターコート法、ドクターブレードコート法など、従来公知の塗工方法により、前述の本発明の剥離剤組成物の有機溶剤溶液を塗工し、80〜150℃程度の温度で加熱硬化させることにより剥離剤層を形成することができる。
このようにして形成された剥離剤層の厚さは、塗工性を安定させ、均一な塗膜を得るには0.03μm以上が好ましく、剥離剤層の基材に対する密着性、硬化性などを低下させないためには5μm以下が好ましい。即ち、0.03〜5μmの範囲が好ましく、0.05〜2μmの範囲が特に好ましく、0.08〜1μmの範囲が更に好ましい。
【0024】
本発明の剥離シートは、特に、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などからなる接着樹脂を使用した、半導体製造装置の半導体デバイス組立工程に好適に適用することができるが、その他の粘・接着フィルム用の剥離シートとしても使用することができる。
次に、半導体製造装置の半導体デバイス組立工程において、それらの接着樹脂を使用してデバイスの基板への高密度実装を行う場合の手順について説明する。
先ず、本発明の剥離シートの剥離剤層上に、前記の接着樹脂からなる未硬化層を設けて、接着性積層体を得る。未硬化層を設ける方法としては特に制限はなく、前記剥離剤組成物を基材上に塗工する方法で挙げた方法を用い、該接着樹脂を剥離剤層に塗工し、乾燥処理すればよい。このようにして形成された、接着樹脂からなる未硬化層の厚さは、用途により異なるが、通常0.1〜20μm、好ましくは0.5〜15μmの範囲である。
【0025】
次に、ポリイミドフィルムなどからなる基板上に、接着樹脂からなる未硬化層が接するようにして接着性積層体を貼合したのち、剥離シートを剥がして、該未硬化層を基板上に転写する。次に、所望の電子部品を前記未硬化層上に載置し、150〜250℃程度の温度で加熱処理して該未硬化層を硬化させることにより、前記電子部品を基板に接着させる。
この工程において、剥離シートを剥がす際に、剥離剤層に本発明の剥離剤組成物が用いられていることから、未硬化層と剥離剤層との界面において、トラブルなく容易に剥離させることができる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0027】
製造例 ポリイミド系接着樹脂の製造
p−フェニレンジアミン8.3g(0.083モル)と4,4′−ジアミノジフェニルエーテル4.6g(0.02モル)を、窒素雰囲気下にてN−メチルピロリドン100gに溶解させた。次いで、この溶液に3,4,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸33g(0.1モル)を加え、50℃にて3時間反応させ、ポリアミド酸のN−メチルピロリドン溶液を得た。得られたポリアミド酸のN−メチルピロリドン溶液100gにイミダゾリル−ジアミノアジン5gを添加し、更に、N−メチルピロリドンを加えて、固形分濃度10質量%のポリイミド系接着樹脂を製造した。
【0028】
実施例1
(1)剥離シートの作製
ビスフェノールA型のエポキシエステル樹脂[日立化成ポリマー社製「TA31−059D」、固形分濃度50質量%]0.6g、ステアリル酸変性アルキド樹脂[日立化成ポリマー社製「テスファイン101」、固形分濃度50質量%、変性率50質量%]0.2g及びメチル化メラミン樹脂[日立化成ポリマー社製「テスファイン200」、固形分濃度80質量%]0.75gをトルエン/メチルエチルケトン混合溶液に溶解した後、p−トルエンスルホン酸の50質量%メタノール溶液0.06gを添加し、固形分濃度3質量%の剥離剤組成物溶液を調製した。
次いで、基材としての厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[三菱化学ポリエステル社製「T−100」]に、前記剥離剤組成物溶液を、マイヤーバー#4にて塗工したのち、140℃で1分間加熱処理して硬化させ、厚さ0.15μmの剥離剤層を形成することにより、剥離シートを作製した。
【0029】
(2)接着樹脂の塗工性評価
上記(1)で作製した剥離シートの剥離剤層上に、製造例で得たポリイミド系接着樹脂をドクターブレードにて塗工し、その際のはじきの有無を目視にて確認した。
はじきが発生しなかった場合を○、はじきが発生した場合を×と、評価した。
【0030】
(3)接着樹脂の剥離性評価
上記(1)で作製した剥離シートの剥離剤層上に、製造例で得たポリイミド系接着樹脂をドクターブレードにて塗工した後、70℃dryで乾燥処理して厚さ10μmの未硬化層を形成した。
次いで、この接着樹脂の未硬化層にポリエチレンテレフタレート基板を張り合わせた後、該未硬化層と剥離シート(剥離剤層)の剥離力をJIS−Z0237に準拠して、23℃50%RHの雰囲気下で、引張試験機を用いて180°方向に300mm/分の速度で剥離させることにより測定した。
また、上記(1)で作製した剥離シートを70℃dryの促進条件下に7日間放置した後の剥離シートについて、上記と同様にして剥離力を測定した。
剥離力が100mN/20mm以上になると、接着樹脂層(未硬化層)の凝集破壊が生じるおそれがあるため、100mN/20mm以上を×と、100mN/20mm未満を○と、評価した。
【0031】
実施例2
エポキシエステル樹脂[日立化成ポリマー社製「TA31−059D」]の量を0.7gに、ステアリル酸変性アルキド樹脂[日立化成ポリマー社製「テスファイン101」]の量を0.1gに、各々変更した以外は、実施例1と全く同様に実施した。
【0032】
実施例3
エポキシエステル樹脂[日立化成ポリマー社製「TA31−059D」]の量を0.75gに、ステアリル酸変性アルキド樹脂[日立化成ポリマー社製「テスファイン101」]の量を0.75gに、各々変更した以外は、実施例1と全く同様に実施した。
【0033】
実施例4
エポキシエステル樹脂[日立化成ポリマー社製「TA31−059D」]の量を0.78gに、ステアリル酸変性アルキド樹脂[日立化成ポリマー社製「テスファイン101」]の量を0.02gに、各々変更した以外は、実施例1と全く同様に実施した。
【0034】
実施例5
エポキシエステル樹脂[日立化成ポリマー社製「TA31−059D」]の量を0.78gに変更し、ステアリル酸変性アルキド樹脂[日立化成ポリマー社製「テスファイン101」]0.2gをシリコーン変性アルキド樹脂[日立化成ポリマー社製「テスファイン309」、固形分濃度50質量%、変性率3質量%]0.02gに、各々変更した以外は、実施例1と全く同様に実施した。
【0035】
比較例1
エポキシエステル樹脂[日立化成ポリマー社製「TA31−059D」]の量を0.8gに変更し、且つ、ステアリル酸変性アルキド樹脂[日立化成ポリマー社製「テスファイン101」]を使用しなかった以外は、実施例1と全く同様に実施した。
【0036】
比較例2
ステアリル酸変性アルキド樹脂[日立化成ポリマー社製「テスファイン101」]の量を1.8gに、メチル化メラミン樹脂[日立化成ポリマー社製「テスファイン200」]の量を0.125gに、各々変更し、且つ、エポキシエステル樹脂[日立化成ポリマー社製「TA31−059D」]を使用しなかった以外は、実施例1と全く同様に実施した。
【0037】
比較例3
アルキド樹脂[日立化成ポリマー社製「3203タイプ」、固形分濃度80質量%]1.0g及びメチル化メラミン樹脂[住友化学社製「M−56T」、固形分濃度80質量%]1.0gをトルエン/メチルエチルケトン混合溶液に溶解した後、50%p−トルエンスルホン酸0.06gを添加し、固形分濃度3質量%の剥離剤組成物溶液を調製した。
剥離剤組成物溶液を、このようにして得られた剥離剤組成物溶液に変更した以外は、実施例1と全く同様に実施した。
【0038】
実施例1〜5及び比較例1〜3について、剥離剤組成物における各樹脂成分の配合比率を表1に、剥離シートの評価結果を表2に、各々記載した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビスフェノール型樹脂、(B)熱硬化性樹脂、及び(C)変性アルキド樹脂を含有することを特徴とする剥離剤組成物。
【請求項2】
(B)熱硬化性樹脂の固形分質量が、(A)ビスフェノール型樹脂、(B)熱硬化性樹脂、及び(C)変性アルキド樹脂の合計固形分100質量部中、30〜90質量部である、請求項1に記載の剥離剤組成物。
【請求項3】
(C)変性アルキド樹脂に対する(A)ビスフェノール型樹脂の固形分質量比(A)/(C)が、1〜400である、請求項1に記載の剥離剤組成物。
【請求項4】
(A)ビスフェノール型樹脂が、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂エステルである、請求項1に記載の剥離剤組成物。
【請求項5】
(B)熱硬化性樹脂が、アミノ樹脂である、請求項1に記載の剥離剤組成物。
【請求項6】
(C)変性アルキド樹脂が、炭素数12〜28の油脂若しくは脂肪酸で変性されたアルキド樹脂又はシリコ−ンで変性されたアルキド樹脂である請求項1に記載の剥離剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の剥離剤組成物の硬化物からなる剥離剤層が、基材上に形成されてなる剥離シート。
【請求項8】
剥離剤層の厚さが0.03〜5μmである請求項7に記載の剥離シート。
【請求項9】
エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂又はポリイミド系樹脂からなる接着樹脂が適用される請求項7又は8に記載の剥離シート。

【公開番号】特開2007−106856(P2007−106856A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298528(P2005−298528)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】