剪断式分散装置、循環式分散システム及び循環式分散方法
【課題】 局所的分散と平均化分散の効果を得るとともに、さらに効率的で適切な分散処理を可能とする剪断式分散装置を提供する。
【解決手段】 ローターと、該ローターに対向して配置される対向部材とを備え、前記ローター及び前記対向部材の間に、スラリー状又は液体状の混合物を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる剪断式分散装置において、前記ローター及び前記対向部材の間に形成され、前記混合物を外周方向に導く複数のギャップ部と、最外周側のギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、前記混合物を滞留させるバッファ部とを備え、前記バッファ部は、該バッファ部を形成する外周側の壁部が前記ローターに設けられるように形成される。
【解決手段】 ローターと、該ローターに対向して配置される対向部材とを備え、前記ローター及び前記対向部材の間に、スラリー状又は液体状の混合物を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる剪断式分散装置において、前記ローター及び前記対向部材の間に形成され、前記混合物を外周方向に導く複数のギャップ部と、最外周側のギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、前記混合物を滞留させるバッファ部とを備え、前記バッファ部は、該バッファ部を形成する外周側の壁部が前記ローターに設けられるように形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー状又は液体状の混合物内の物質を分散させる剪断式分散装置、循環式分散システム及び循環式分散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速回転するローターと、回転しないステータとの間の狭い空間に、複数の液体又はスラリーを通過させ、高速回転によって発生する高い剪断力によって、複数の液体又はスラリー中の粉末状の物質を連続的に分散する装置が知られている(例えば、特許文献1)。なお、「分散」とは、スラリー中の粉末状の物質を均一に分散すること、あるいは、複数の液体を均一に混合することを意味するものとする。特許文献1等に記載された分散装置は、ローターとステータとがフラットな対向面を有し、この面の間で剪断力を発生させこの剪断力により分散を行うものである。
【0003】
しかしながら、この分散装置においては、ローターとステータとの隙間を原料が短時間で通過するため、1回の通過で目的の分散状態に達しない場合には、分散装置から排出された原料をポンプ等で再び分散装置に戻して循環処理をするか、複数台の分散装置を直列に接続して複数段階の分散処理を行う必要があるという問題があった。
【0004】
また、分散が必要な粗大な粒子(凝集物)がなくなる時間を基準に処理時間を設定すると、分散の必要がない微小な粒子に、余分な剪断エネルギーが加えられ、効率的で適切な分散処理を行うことができないという問題があった。尚、ここでは、固体粒子(粉末状の物質)が小さな粒状になったもの、これらが集まって凝集物を形成したものを、同じように粒子と呼ぶこととする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−153167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、さらに効率的で適切な分散処理を可能とする剪断式分散装置及び循環式分散システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る剪断式分散装置は、ローターと、該ローターに対向して配置される対向部材とを備え、前記ローター及び前記対向部材の間に、スラリー状又は液体状の混合物を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる剪断式分散装置において、前記ローター及び前記対向部材の間に形成され、前記混合物を外周方向に導く複数のギャップ部と、最外周側のギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、前記混合物を滞留させるバッファ部とを備え、前記バッファ部は、該バッファ部を形成する外周側の壁部が前記ローターに設けられるように形成される。
また、本発明に係る循環式分散システムは、上述の剪断式分散装置と、前記剪断式分散装置の出口側に接続されるタンクと、前記混合物を循環させる循環ポンプと、前記剪断式分散装置、前記タンク及び前記循環ポンプを直列的に接続する配管とを備え、前記混合物を循環させながら分散させる。
また、本発明に係る循環式分散方法は、剪断式分散装置と、前記剪断式分散装置の出口側に接続されるタンクと、前記混合物を循環させる循環ポンプと、前記剪断式分散装置、前記タンク及び前記循環ポンプを直列的に接続する配管とを備える循環式分散システムを用いて、前記混合物を循環させながら分散させる循環式分散方法において、前記剪断式分散装置は、ローターと、該ローターに対向して配置される対向部材とを備え、前記ローター及び前記対向部材の間に、スラリー状又は液体状の混合物を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させるとともに、さらに、前記ローター及び前記対向部材の間に形成され、前記混合物を外周方向に導く複数のギャップ部と、最外周側のギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、前記混合物を滞留させるバッファ部とを備え、前記バッファ部は、該バッファ部を形成する外周側の壁部が前記ローターに設けられるように形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、複数のギャップ部を通過する際の混合物に発生する剪断力による局所的な分散作用と、混合物が滞留され平均化されることによる分散作用とを発揮させるとともに、最外周側のギャップ部に接続されるバッファ部に滞留する混合物に発生する遠心力により、バッファ部の外周側のローターの壁部側にこの混合物が擦り付けられることで当該部分においても分散作用を発揮でき、より効率的で適切な分散処理機能を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用した剪断式分散装置の概略断面図である。
【図2】剪断式分散装置の他の例を示す概略断面図である。
【図3】剪断式分散装置のさらに他の例を示す概略断面図である。
【図4】図1の剪断式分散装置の変形例を示す概略断面図である。
【図5】図2の剪断式分散装置の変形例を示す概略断面図である。
【図6】図2の剪断式分散装置のステータをローターに変形した剪断式分散装置のさらに具体的な構成を示す断面図である。
【図7】図5の剪断式分散装置のステータをローターに変形した剪断式分散装置の回転軸を水平として配置した例における具体的な構成を示す断面図である。
【図8】本発明を適用した循環式分散システムの構成を示す概要図である。
【図9】本発明の剪断式分散装置と比較する比較例を示すものであり、フラットローター方式の分散装置の概略断面図である。
【図10】実験例と比較例の分散装置による処理時間に対するメディアン径の変化を示す図である。
【図11】本発明を適用した循環式分散システムの他の例を説明するための図であり、ローター及び対向部材の対向間隔を調整する機構を有する分散装置を備えた例の構成を示す概要図である。
【図12】図11の循環式分散システム等のより具体的な構成例を示す斜視図である。
【図13】図11の循環式分散システム等により行う薄練・濃縮方式の利点を固練り・希釈方式と比べて説明するための図であり、固練り・希釈方式における処理時間と粘度及び濃度の関係を示す図である。
【図14】薄練・濃縮方式における処理時間と粘度及び濃度の関係を示す図である。
【図15】図11の循環式分散システムにより2段階混合処理を連続的に行う場合の処理時間と、濃度、圧力及び対向間隔との関係の一例を示す図である。
【図16】本発明を適用した循環式分散システムの更に他の例を説明するための図であり、特徴的なスクリュー式粉体供給装置を有するタンク装置を備えた例の構成を示す概要図である。
【図17】図16に示す循環式分散システムを構成するタンク装置の構成を示す概略断面図である。
【図18】図17に示すタンク装置を構成する攪拌羽根の斜視図である。
【図19】図16に示す循環式分散システムを構成するタンク装置の他の例を示す図であり、減圧機構を有する例の概略断面図である。
【図20】図16に示す循環式分散システムを構成するタンク装置の更に他の例を示す図であり、スクリュー式粉体供給装置及び攪拌機の位置を変更した例の概略断面図である。
【図21】図20に示すタンク装置を構成するスクリュー先端羽根の斜視図である。
【図22】図16に示すタンク装置の変形例であり、単体として用いられる例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した剪断式分散装置について、図面を参照して説明する。以下で説明する剪断式分散装置は、スラリー状の混合物を循環させながら分散(「固−液分散」又は「スラリー化」ともいう)させ、又は液体状の混合物を循環させながら分散(「液−液分散」又は「乳化」ともいう)させたりするものである。また、分散とは、該混合物内の物質を分散させること、すなわち、該混合物内の各物質が均一に存在するように混ぜることを意味する。
【0011】
まず、図1に示す本発明を適用した剪断式分散装置(以下、「分散装置」という。)1について説明する。分散装置1は、ローター2と、該ローター2に対向して配置される対向部材であるステータ3とを備え、ローター2及び対向部材(ステータ3)の間に、スラリー状又は液体状の混合物4を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる。
【0012】
また、分散装置1は、複数のギャップ部として第1ギャップ部5及び第2ギャップ部6と、バッファ部8とを備える。複数のギャップ部(第1及び第2ギャップ部5,6)は、ローター2及びステータ3の間に形成され、軸中心位置に供給される混合物4を外周方向に導く。換言するとこの複数のギャップ部は、対向配置されるローター及び対向部材のそれぞれの対向する面の間に形成され、混合物を中心側から外周側に放射状に導く隙間である。第1ギャップ部5は、外周側に設けられ、第2ギャップ部6は、回転中心側に設けられる。また、この複数のギャップ部は、バッファ部8等を形成するために軸方向の位置を変えて形成され、ローター2及びステータ3のそれぞれに設けられた対向する面の間に設けられる、バッファ部8は、最外周側のギャップ部(第1ギャップ部5)とこの内周側に位置するギャップ部(第2ギャップ部6)とを接続するように設けられ、混合物4を滞留させる。このバッファ部8を形成する外周側の壁部10は、ローター2に設けられる。
【0013】
このローター2に設けられるバッファ部8を形成する外周側の壁部10は、対向部材(ステータ3)側の端部10aにおいて回転中心側に延伸する張出部11を有している。また、ローター2は、第1及び第2ギャップ部5,6を形成するための、平坦なギャップ形成面12,13を有している。具体的にローター2は、回転軸28に一体に取り付けられるローター本体14と、このローター本体14の外周からステータ3側に立ち上げられる壁部10とを有する。ローター本体14は、円板状に形成され、回転軸28に取り付けるための取付部14aを有している。このローター本体14の内周と、回転軸28の外周には、例えば固定用のネジ部が形成される。ローター本体14のステータ3側の内面の内周には、第2ギャップ部6を形成するギャップ形成面13が設けられ、このギャップ形成面13の外側がバッファ部8の上方側を形成するバッファ形成面15として機能する。バッファ形成面15は、ここでは、ギャップ形成面13と同一平面上に設けられている。壁部10の内側は、バッファ部8の外周側を形成するバッファ形成面16として機能する。壁部10に連続的に設けられた張出部11のステータ3側には、第1ギャップ部5を形成するギャップ形成面12が設けられ、張出部11の反対側(上側)には、バッファ部8の下方側を形成するバッファ形成面17が設けられる。
【0014】
ステータ3は、第1及び第2ギャップ部5,6を形成するための、平坦なギャップ形成面22,23を有している。具体的には、ステータ3は、軸状部材29に一体に取り付けられ、円板状のステータ本体21と、このステータ本体21の内周部分において、ローター2側に立ち上げられる立ち上がり壁部24とを有する。立ち上がり壁部24の内周と、軸状部材29の外周には、例えば固定用のネジが形成される。立ち上がり壁部24のローター2側の内面には、第2ギャップ部6を形成するギャップ形成面23が設けられる。立ち上がり壁部24の外側は、バッファ部8の内周側を形成するバッファ形成面25として機能する。ステータ本体21の外周部分のローター2側の内面には、第1ギャップ部5を形成するギャップ形成面22が設けられる。
【0015】
複数のギャップ部は、外周側に位置するギャップ部が、内周側に位置するギャップ部より隙間が狭くなる関係を有している。すなわち、第1ギャップ部5が、第2ギャップ部6より隙間が狭くなるように、各ギャップ形成面12,13,22,23が形成されている。また、これらの第1,第2ギャップ部5,6は、それぞれ2mm以下の隙間(0.01mm〜2.00mm)を有してローター2及びステータ3の間に形成されている。
【0016】
ローター2及び対向部材(ステータ3)は、ローター2の回転軸が鉛直方向に平行であるように配置され、対向部材(ステータ3)が下方側に位置している。このような分散装置1は、分散処理終了後、装置内(特にバッファ部8)に残った混合物を、装置を分解することなく排出させることができ、分散処理の歩留まりを向上させることができる。
【0017】
対向部材(ステータ3)は、第1,第2ギャップ部5,6を形成する部分が、外周に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。同様に、ローター3も、第1、第2ギャップ部5,6を形成する部分が、外周に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。すなわち、各ギャップ形成面12,13,22,23並びに第1及び第2ギャップ部5,6が外側に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。また、張出部11は、その上面が内側に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。このような構成とされた分散装置1は、分散処理終了後、装置内に残った混合物を、装置を分解することなく排出させることができ、分散処理の歩留まりを向上させることができる。特に粘度が高いスラリー状の混合物の場合に有効である。
【0018】
また、ステータ3における軸状部材29には、混合物4が供給される供給口29aが設けられている。具体的に軸状部材29は、円筒状(パイプ状)に形成され、その内側を通って混合物4が供給される。一方で、ローター2の回転軸28は、円筒状(パイプ状)に形成され、その先端に閉塞部28aが形成されている。尚、これに限られるものではなく、ローター2及び対向部材(ステータ3)のいずれか一方又は両方に、(ローター2の)回転中心位置から混合物4が供給される供給口が設けられていればよい。両方に供給口を設け、種類の異なる物質を供給して当該装置内で混合分散させるようにしてもよい。ただし、固形分濃度が高い(以下「高濃度」ともいう。)スラリー状の混合物を処理する際に、シール部材の耐久性が低い場合には、図1を用いて説明したように、ステータ3の中心位置に設けた供給口29aから混合物を供給する構成が有利である。すなわち、この供給口29aから混合物4を供給するために、軸状部材29にはホース等の混合物供給管が接続されることとなる。例えば、供給口をローター側に設けた場合には、この混合物供給管を接続するための継ぎ手(回転継手)が必要となる。この回転継手を接続するときのシール部材が高濃度のスラリー混合物の場合に劣化しやすい場合があり、シール面の機能が損なわれることで漏れを発生させる可能性がある。このように、ステータ3側に供給口29aを設けることにより、回転継手を設ける必要もなく、さらにこのような漏れ等の問題が発生することを防止できるという効果がある、
【0019】
以上のような分散装置1の分散プロセスについて説明する。まず、供給口29aから供給された混合物は、第2のギャップ部6を通過する際に粗大な粒子の凝集物が分解される。第2のギャップ部6を通過した混合物は、バッファ部8に流入され遠心力で壁部10側に押し付けられるようにして滞留される。バッファ部8に滞留している混合物の中で粗大で質量の大きな粒子は、遠心力によって選択的に壁部10のバッファ形成面16に押し付けられながら、ローター2の一部である壁部10が回転されることで、こすられることによって、凝集物の分解、分散が行われる。小さな粒子は、バッファ部8から排出される流れに乗って第1のギャップ部5側に導かれる。第1のギャップ部5は、第2のギャップ部6よりも隙間が狭くなっているため、更に細かく分散される。
【0020】
バッファ部8において、粒子の分散をより効率的に制御するには、ローター2の回転数の制御によって遠心力を変えたり、混合物の流入量を調整することで可能である。例えば、分散を抑制するには、ローター2の回転数を下げて遠心力及び剪断力を減少させる。あるいは、混合物の流入量を増加させると、第2のギャップ部6からバッファ部8には混合物が高速且つ大量に流入するため、先にバッファ部8に流入して滞留している混合物と激しく混ざり合うとともに、混合物の滞留時間が減少するため、遠心力による粗大粒子のバッファ部8の外周壁面(壁部10)への移動効果を抑制することができる。尚、混合物の滞留時間の減少は、粒子が剪断エネルギーを受ける時間の減少でもあり、同じく分散の抑制効果がある。逆に、分散を促進するには、ローター2の回転数を上げて遠心力及び剪断力を増大させる。あるいは、混合物の供給量(ポンプ排出量)を減らして装置内部への混合物流入量を制限し、遠心力による効果を高めたり、粒子が剪断エネルギーを受ける時間を増大させればよい。
【0021】
本発明を適用した分散装置1は、第1、第2のギャップ部5,6を通過する際の混合物4に発生する剪断力による局所的な分散作用と、バッファ部8で混合物4が滞留され平均化されることによる分散作用とを発揮させる。それとともに、分散装置1は、外周側のギャップ部である第1ギャップ部5に接続されるバッファ部8に滞留する混合物に発生する遠心力により、バッファ部8の外周側のローター2の壁部10側にこの混合物4が押し付けられ擦り付けられることで当該部分においても分散作用を発揮できる。このように、分散装置1は、より効率的で適切な分散処理機能を実現する。
【0022】
また、図1に示す分散装置1では、後述の図2及び図3に示す分散装置に比べて、ローター回転が停止したときに原料が残留するバッファ部を有しておらず、且つ第1及び第2ギャップ部5,6には重力で混合物が装置外部に流れ落ちるような傾斜が設けられているので、運転終了時に原料を装置外部に排出でき、歩留まりを向上できる。
【0023】
また、図1に示す分散装置1は、以下のような効果がある。回転する中空軸の内部から混合物を供給するためには、後述の図6及び図7に示すような回転軸継手(ロータリージョイント)のように、固定部と回転軸を結合する継ぎ手が必要となる。液体原料同士の混合分散であれば問題となりにくいが、液体原料と固体原料(粉末)を混合・分散するスラリー状混合物の場合には、回転軸継手の軸封部の耐久性が問題となる。この場合、原料を供給する側の中空軸を回転させず、ステータとして使用することが好ましい。ところでステータには遠心力が発生しないため、ステータ側にバッファ部を設ける場合、換言するとバッファ部の外周側の壁部がステータにあるような場合は、バッファ部の剪断機能が発揮できないことを意味する。したがって、図1に示す分散装置1は、バッファ部8がローター2側に設けられ、すなわちバッファ部8を形成する外周側の壁部10がローター2側に設けられ、下方側で混合物供給口29aがある側をステータ3とすることで上述した様々な効果を兼ね備えて得ることができる。
【0024】
なお、上述では、ローター2の回転軸が鉛直方向に平行になるように配置したが、これに限られるものではなく、ローター2及び対向部材(ステータ3)が、ローター2の回転軸が水平方向に平行になるように配置するように構成してもよい。水平方向の場合は、装置を設置する環境において鉛直は位置が困難である場合には、それを解消できる。ただし、図1に示すような鉛直配置とした方が、上述したように、分散処理終了後に混合物を排出する機能を有しているため、歩留まりの観点では有利である。
【0025】
さらに、上述では、ローター2及びステータ3の組み合わせとしたが、一対のローターからなるように構成しても良い。すなわち、ローター2に対向する対向部材が、ローター2の回転軸と平行な回転軸を有するとともに、ローター2の回転方向とは反対方向に回転される第2のローターであるように構成してもよい。一対のローターの場合は、反対方向に回転させるものの相対的な回転によりギャップ部で剪断力を発揮できる。ただし、ローター2及びステータ3の組み合わせの方が、上述したように高濃度スラリー状の混合物には、回転軸継手の軸封部に悪影響を与えるおそれがないという点で有利である。
【0026】
また、ローター2及び対向部材(ステータ3)の構成は、図1に限られるものではない。すなわち、上述では、2個のギャップ部と1個のバッファ部を有する例について説明したが、後述の図2に示すように、バッファ部を追加して、3個のギャップ部と2個のバッファ部を有するように構成しても良い。
【0027】
次に、図2に示す本発明を適用した剪断式分散装置(以下、「分散装置」という。)31について説明する。分散装置31は、ローター32と、該ローター32に対向して配置される対向部材であるステータ33とを備え、ローター32及び対向部材(ステータ33)の間に、スラリー状又は液体状の混合物4を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる。
【0028】
また、分散装置31は、複数のギャップ部として第1ギャップ部35、第2ギャップ部36及び第3ギャップ部37と、第1バッファ部38及び第2バッファ部39とを備える。複数のギャップ部(第1〜第3ギャップ部35,36,37)は、ローター32及びステータ33の間に形成され、混合物4を外周方向に導く。第1ギャップ部35は、外周側に設けられ、第3ギャップ部37は、回転中心側に設けられ、第2ギャップ部36は、中間に設けられる。第1バッファ部38は、最外周側のギャップ部(第1ギャップ部35)とこの内周側に位置するギャップ部(第2ギャップ部36)とを接続するように設けられ、混合物4を滞留させる。この第1バッファ部38を形成する外周側の壁部40は、ローター32に設けられる。
【0029】
図2に示す分散装置31では、第2バッファ部39が設けられ、この第2バッファ部39は、最外周側のギャップ部(第1ギャップ部35)の内周側に位置するギャップ部(第2ギャップ部36)とこの内周側に位置するギャップ部(第3ギャップ部37)とを接続するように設けられ、混合物4を滞留させる。この第2バッファ部39は、平均化作用を増加させる機能を有しており、分散処理効果を高めることができる。さらに、この分散装置31においても、対向部材(ステータ33)をローターに変更してもよく、その場合には、この第2バッファ部39との相乗効果を発揮できる。すなわち、対向部材であるステータ33を回転して「ローター」として構成した場合には、第2バッファ部39においても、上述したバッファ部8やバッファ部38と同様の壁面押し付け力による剪断力を発揮して分散機能を向上させることができる。
【0030】
ローター32に設けられる第1バッファ部38を形成する外周側の壁部40は、対向部材(ステータ33)側の端部において回転中心側に延伸する張出部41を有している。また、ローター32は、第1〜第3ギャップ部35,36,37を形成するための、平坦なギャップ形成面42,43,44を有している。具体的に説明すると、ローター32は、回転軸68に一体に取り付けられ円板状のローター本体45と、このローター本体45の外周からステータ33側に立ち上げられる壁部40と、内周側に立ち上げられる立ち上がり壁部46を有する。立ち上がり壁部46の外周側は、第2バッファ部39の内周側を形成するバッファ形成面63として機能する。立ち上がり壁部46のステータ33側の面には、ギャップ形成面44が設けられ、ローター本体45のステータ33側には、ギャップ形成面43が設けられ、このギャップ形成面43の外側が第1バッファ部38の上方側を形成するバッファ形成面47として機能する。壁部40の内側は、第1バッファ部38の外周側を形成するバッファ形成面48として機能する。壁部40に連続的に設けられた張出部41のステータ33側には、第1ギャップ部35を形成するギャップ形成面42が設けられ、張出部41の反対側(上側)には、第1バッファ部38の下方側を形成するバッファ形成面49が設けられる。
【0031】
ステータ33は、第1〜第3ギャップ部35,36,37を形成するための、平坦なギャップ形成面52,53,54を有している。具体的には、ステータ33は、軸状部材69に一体に取り付けられる円板状のステータ本体51と、このステータ本体51の内周部分において、ローター32側に立ち上げられる立ち上がり段部55と、この立ち上がり段部55の外周側でさらに立ち上げられる壁部56とを有する。この壁部56は、第2バッファ部39を形成する外周側の壁部であり、ローター32側の端部において回転中心側に延伸する張出部57を有している。立ち上がり段部55の内面には、ギャップ形成面54が設けられ、このギャップ形成面54の外側が第2バッファ部39の下方側を形成するバッファ形成面58として機能する。壁部56の内側は、第2バッファ部39の外周側を形成するバッファ形成面59として機能する。張出部57のローター32側には、ギャップ形成面53が設けられ、張出部57の反対側(下側)には、第2バッファ部39の上方側を形成するバッファ形成面60が設けられる。壁部56の外側は、第1バッファ部38の内周側を形成するバッファ形成面61として機能する。ステータ本体51の外周部分のローター32側の内面には、ギャップ形成面52が設けられる。ところで、ローター32やステータ33に設けられる張出部41,57は、バッファ部に流入した混合物を回りこませて各ギャップ部(ここでは、第1、第2ギャップ部35,36)の長さを大きくして局所的剪断力を増加させる機能を有している。尚、この点は、図1の張出部11も同様である。
【0032】
複数のギャップ部は、外周側に位置するギャップ部が、内周側に位置するギャップ部より隙間が狭くなる関係を有している。すなわち、第1ギャップ部35が、第2ギャップ部36より隙間が狭くなり、且つ第2ギャップ部36が、第3ギャップ部37より狭くなるように、各ギャップ形成面42,43,44,52,53,54が形成されている。また、これらの第1,第2,第3ギャップ部35,36,37は、それぞれ2mm以下の隙間を有してローター32及びステータ33の間に形成されている。この関係の効果は後述するが、各ギャップ部の隙間を同じ距離にしてもよく、本発明のその他の効果は得られる。
【0033】
例えば、分散装置31において、ローター32及びステータ33の外形は200mmの場合に、図中に示す高さh1,h2,h3は、55mm,16mm,39.5mmとしたときに、第1ギャップ部35の隙間が0.5mmであり、第2ギャップ部36の隙間が1.0mmであり、第3ギャップ部37の隙間が1.5mmである。外周に向かうにつれて段階的に小さくなっている。回転数は、インバータ制御により0〜3600rpm程度の間で設定できるようにされているが、電動機、プーリー、ギアなどの選定によって適宜変更することができる。
【0034】
また、図2においては、混合物の流れが矢印で示されている。便宜上、一つの流れしか示していないが、実際には、ローター31及びステータ32によって構成される空間の至るところで同様の流れが発生している。ローター31が回転している状態で、回転軸68に回転継手の混合物供給口より、重力、ポンプ等の手段により混合物を供給すると、該混合物4は、第3ギャップ部37、第2バッファ部39、第2ギャップ部36、第1バッファ部38、第1ギャップ部35の順に、遠心力の方向に沿って通過して、ローター31及びステータ32の外周の混合物排出部35aから排出される。この混合物排出部35aは、第1ギャップ部35の外周端部である。このように、第1〜第3ギャップ部35,36,37と、第1及び第2バッファ部38,39は、ローター及び対向部材の間に形成され、混合物を外周方向に導く複数のギャップ部と、最外周側のギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、混合物を滞留させるバッファ部と、を構成し、それぞれ局所的剪断作用による分散機能と、平均化作用による分散機能とを有する。また、この構成を換言すると、ローターと対向部材との間に混合物が中心側から外周側に通過する空間が形成され、この空間は、2mm以下の狭い空間(ギャップ部に相当)と、これより大きな広い空間(バッファ部に相当)とがそれぞれ1段以上で且つ交互に配列されており、この狭い空間で局所的剪断作用を付与し、広い空間で滞留平均化作用を付与している。尚、この混合物の流れや、各ギャップ部や各バッファ部の機能は、図1や後述の図3〜図7の分散装置においても同様である。
【0035】
ローター32及び対向部材(ステータ33)は、ローター32の回転軸が鉛直方向に平行であるように配置され、対向部材(ステータ33)が下方側に位置している。分散装置31は、分散処理終了後、容積の大きな第1バッファ部38に残った混合物を、装置を分解することなく排出させることができ、分散処理の歩留まりを向上させることができる。
【0036】
対向部材(ステータ33)は、第1〜第3ギャップ部35,36,37を形成する部分が、水平となるように形成されているが、図1を用いて説明した例と同様に、外周に向かうにつれて下方に傾斜するように形成してもよい。図1と同様に構成した場合には、処理終了後の混合物を排出でき、歩留まりを向上する効果が得られる。
【0037】
また、ローター32の回転軸68には、混合物4が供給される供給口68aが設けられている。具体的に回転軸68は、円筒状に形成され、その内側を通って混合物4が供給される。一方で、ステータ33の軸状部材69は、円筒状に形成され、その先端に閉塞部69aが形成されている。尚、これに限られるものではなく、ローター32及び対向部材(ステータ33)のいずれか一方又は両方に、(ローター32の)回転中心位置から混合物4が供給される供給口が設けられていればよい。ただし、固形分濃度が高いスラリー状の混合物等のシール部材の耐久性が低い場合には、図1を用いて説明したように、ステータ33の中心位置に設けた供給口から混合物を供給するように構成したほうが有利である。
【0038】
以上のような分散装置31の分散プロセスについて説明する。まず、供給口68aから供給された混合物は、1段目のギャップ部として第3のギャップ部37を通過する際に粗大な粒子の凝集物が分解される。第3のギャップ部37を通過した混合物は、1段目のバッファ部として第2バッファ部39に流入され遠心力で壁部56側に押し付けられるようにして滞留される。続いて、混合物は、2段目のギャップ部として第2のギャップ部36を通過するが、この際にも粒子の凝集物が分解される。第2のギャップ部36は、第3のギャップ部37よりも隙間が狭くなっているため、細かく分散させる。第2のギャップ部36を通過した混合物は、2段目のバッファ部として第1バッファ部38に流入され遠心力で壁部40側に押し付けられるようにして滞留される。第1バッファ部38に滞留している混合物の中で粗大で質量の大きな粒子は、遠心力によって選択的に壁部40のバッファ形成面48に押し付けられながら、ローター32の一部である壁部40が回転されることで、こすられることによって、凝集物の分解、分散が行われる。小さな粒子は、3段目のギャップ部として第1バッファ部38から排出される流れに乗って第1のギャップ部35側に導かれる。第1のギャップ部35は、第2のギャップ部36よりも隙間が狭くなっているため、更に細かく分散される。
【0039】
バッファ部において、粒子の分散をより効率的に制御するには、ローター32の回転数の制御によって遠心力を変え、混合物の流入量を調整することで可能である。例えば、分散を抑制するには、ローター32の回転数を下げて遠心力及び剪断力を減少させる。あるいは、混合物の流入量を増加させると、第3のギャップ部37から第2バッファ部39、或いは第2のギャップ部36から第1バッファ部38には混合物が高速且つ大量に流入するため、先にバッファ部38、39に流入して滞留している混合物と激しく混ざり合うとともに、混合物の滞留時間が減少するため、遠心力による粗大粒子のバッファ部38,39の外周壁面(壁部40,56)への移動効果を抑制することができる。尚、混合物の滞留時間の減少は、粒子が剪断エネルギーを受ける時間の減少でもあり、同じく分散の抑制効果がある。逆に、分散を促進するには、ローター32の回転数を上げて遠心力及び剪断力を増大させる。あるいは、混合物の供給量(ポンプ排出量)を減らして装置内部への混合物流入量を制限し、遠心力による効果を高めればよく、又は粒子が剪断エネルギーを受ける時間を増大させればよい。
【0040】
本発明を適用した分散装置31は、第1〜第3のギャップ部35,36,37を通過する際の混合物4に発生する剪断力による局所的な分散作用と、第1及び第2バッファ部38,39で混合物4が滞留され平均化されることによる分散作用とを発揮させる。それとともに、分散装置31は、外周側のギャップ部である第1ギャップ部35に接続される第1バッファ部38に滞留する混合物に発生する遠心力により、バッファ部38の外周側のローター32の壁部40側にこの混合物4が押し付けられ擦り付けられることで当該部分においても分散作用を発揮できる。このように、分散装置31は、より効率的で適切な分散処理機能を実現する。
【0041】
また、この分散装置31は、ギャップ部を3つ有し、バッファ部を2つ有していることから、局所的剪断分散作用と、平均化分散作用の観点で、より効率的な分散処理を実現可能である。
【0042】
なお、上述では、ローター32の回転軸が鉛直方向に平行になるように配置したが、これに限られるものではなく、ローター32及び対向部材(ステータ33)が、ローター32の回転軸が水平方向に平行になるように配置するように構成してもよい。
【0043】
さらに、上述では、ローター32及びステータ33の組み合わせとしたが、一対のローターからなるように構成しても良い。すなわち、ローター32に対向する対向部材が、ローター32の回転軸と平行な回転軸を有するとともに、ローター32の回転方向とは反対方向に回転される第2のローターであるように構成してもよい。図2を一対のローターに変更する場合は、反対方向に回転させるものの相対的な回転によりギャップ部で剪断力を発揮できるとともに、第2のバッファ部39を形成する外周側の壁部56も回転させることで、混合物を壁面に押し付け擦り付けられる効果が得られ、当該部分においても分散作用を発揮できるので、より効率的で適切な分散処理機能を実現する。
【0044】
尚、バッファ部の形状は、図2に示すような矩形断面に限定されるものでなく、例えば、図3に示すように、外周側面が傾斜する形状であってもよい。この場合、製作上有利である。
【0045】
次に、図3に示す本発明を適用した剪断式分散装置(以下、「分散装置」という。)71について説明する。分散装置71は、ローター72と、該ローター72に対向して配置される対向部材であるステータ73とを備え、ローター72及び対向部材(ステータ73)の間に、スラリー状又は液体状の混合物4を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる。
【0046】
また、分散装置71は、複数のギャップ部として第1ギャップ部75、第2ギャップ部76及び第3ギャップ部77と、第1バッファ部78及び第2バッファ部79とを備える。複数のギャップ部(第1〜第3ギャップ部75,76,77)は、ローター72及びステータ73の間に形成され、混合物4を外周方向に導く。第1ギャップ部75は、外周側に設けられ、第3ギャップ部77は、回転中心側に設けられ、第2ギャップ部76は、中間に設けられる。第1バッファ部78は、最外周側のギャップ部(第1ギャップ部75)とこの内周側に位置するギャップ部(第2ギャップ部76)とを接続するように設けられ、混合物4を滞留させる。この第1バッファ部78を形成する外周側の壁部80は、ローター72に設けられる。
【0047】
図3に示す分散装置71では、第2バッファ部79が設けられ、この第2バッファ部79は、最外周側のギャップ部(第1ギャップ部75)の内周側に位置するギャップ部(第2ギャップ部76)とこの内周側に位置するギャップ部(第3ギャップ部77)とを接続するように設けられ、混合物4を滞留させる。この第2バッファ部79は、平均化作用を増加させる機能を有しており、分散処理効果を高めることができる。さらに、この分散装置71においても、対向部材(ステータ74)をローターに変更してもよく、その場合には、この第2バッファ部79と相乗効果を発揮できる。
【0048】
複数のギャップ部は、外周側に位置するギャップ部が、内周側に位置するギャップ部より隙間が狭くなる関係を有している。すなわち、第1ギャップ部75が、第2ギャップ部76より隙間が狭くなり、且つ第2ギャップ部76が、第3ギャップ部77より狭くなるように、各ギャップ形成面が形成されている。また、これらの第1,第2,第3ギャップ部75,76,77は、それぞれ2mm以下の隙間を有してローター72及びステータ73の間に形成されている。以上のような分散装置71の分散プロセスは、図2に示す分散装置61の場合と略同様であるので省略する。
【0049】
本発明を適用した分散装置71は、第1〜第3のギャップ部75,76,77を通過する際の混合物4に発生する剪断力による局所的な分散作用と、第1及び第2バッファ部78,79で混合物4が滞留され平均化されることによる分散作用とを発揮させる。それとともに、分散装置71は、外周側のギャップ部である第1ギャップ部75に接続される第1バッファ部78に滞留する混合物に発生する遠心力により、バッファ部78の外周側のローター72の壁部80側にこの混合物4が押し付けられ擦り付けられることで当該部分においても分散作用を発揮できる。このように、分散装置71は、より効率的で適切な分散処理機能を実現する。
【0050】
図1〜図3では、剪断力を発生するギャップ部は3段又は2段であり、バッファ部は、2段又は1段の構成となっているが、この段数の組み合わせに限定されるわけでなく、対象原料や目標とする分散の度合いによって任意の組み合わせとすることができる。
【0051】
また、図1〜図3を用いて説明した分散装置1,31,71において、ローター及び対向部材のいずれか一方又は両方には、ローター及び対向部材の間の混合物を冷却する冷却液が流通される冷却液流通部が設けられるように構成しても良い。すなわち、混合物は、一対のローターの間あるいはローターとステータとの間の隙間を通過する際、あるいはバッファ部で滞留している間にバッファ部の内壁とこすれ合う際に、大きな剪断力を受けて発熱するため、温度上昇によって変質する混合物を処理する等の場合に問題となる。上述の冷却液流通部を設け、すなわち、ローター、ステータをジャケット構造にして、その中を中空軸の内部、あるいは別途設けた管路から冷却液を通すことで、発生した熱を冷却することができる。
【0052】
次に、冷却液流通部を設けた例として、図1の変形例として図4に示す分散装置81と、図2の変形例として図5に示す分散装置91とについて説明する。尚、冷却液流通部を設けたことを除いて上述した図1及び図2の場合と同様であるので、同じ構成・機能を有する部分には同じ符号を付して詳細な説明は省略する(他の図も同様)。
【0053】
図4に示す分散装置81は、図1に示すローター2及びステータ3と比較して、冷却液流通部84,85を有することを除いて同様の構成とされたローター82及びステータ83を備え、ローター82と対向部材(ステータ83)の間に、スラリー状又は液体状の混合物4を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる。すなわち、このローター82及びステータ83には、第1及び第2ギャップ部5,6やバッファ部8や壁部10等が設けられる。
【0054】
ローター82には、冷却液が流通される冷却液流通部84と、冷却液供給部84a及び冷却液排出部84bとが設けられ、この冷却液供給部84a,84bには、供給管86a及び排出管86bが接続されている。ステータ83には、冷却液が流通される冷却液流通部85と、冷却液供給部85a及び冷却液排出部85bとが設けられ、この冷却液供給部85a及び冷却液排出部85bには、供給管87a及び排出管87bが接続されている。
【0055】
同様に、図5に示す分散装置91は、図2に示すローター32及びステータ33と比較して、冷却液流通部94,95を有することを除いて同様の構成とされたローター92及びステータ93を備え、ローター92と対向部材(ステータ93)の間に、スラリー状又は液体状の混合物4を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる。すなわち、このローター92及びステータ93には、第1〜第3ギャップ部35,36,37や第1及び第2バッファ部38,39や壁部40等が設けられる。
【0056】
ローター92には、冷却液が流通される冷却液流通部94と、冷却液供給部94a及び冷却液排出部94bとが設けられ、この冷却液供給部94a,94bには、供給管96a及び排出管96bが接続されている。ステータ93には、冷却液が流通される冷却液流通部95と、冷却液供給部95a及び冷却液排出部95bとが設けられ、この冷却液供給部95a及び冷却液排出部95bには、供給管97a及び排出管97bが接続されている。
【0057】
図4、図5に示す分散装置81,91は、上述した図1に示す分散装置1、図3に示す分散装置31と同様の効果を奏して、より効率的で適切な分散処理機能を実現するとともに、冷却液が流通される冷却液流通部84,85,94,95を有することにより、剪断力付与により発生した熱を冷却して混合物の変質を防止することができる。
【0058】
ここで、上述した分散装置の軸受部等を含めたより具体的な構成について、図6及び図7を用いて説明する。図6では、図2の分散装置31のステータ33を回転する構成としてローター133に変更した変形例(これを「分散装置131」とする)を説明するものとする。尚、ローター133の各部の構成、形状はステータ33と同様であるものとする。図6の分散装置131は、凹凸を有する2枚のローター32,133を、回転中心軸を同一にして、鉛直方向に対向するように設置したものである。分散装置131は、それぞれの凹凸部の組み合わせによって、上述の分散装置31と同様に、第1〜第3ギャップ部35,36,37と矩形断面を有する第1及び第2バッファ部38,39を有する。
【0059】
一対のローター32,133は、それぞれ回転軸68、169に接続され、これらの回転軸68,169は、軸受141を介して強固に固定された軸受箱142で支えられ(固定方法は図示せず)、ベルト、チェーン、歯車などと接続された電動機(図示せず)で駆動され、その回転方向は互いに逆となる。ここでは、回転軸68,169をそれぞれ混合物供給口143,144の側から見て、時計回り方向に回転することとする。回転数は、対象原料や目標とする分散の度合いによって、任意に設定することができる。尚、ここでは、中空回転軸169の先端は、栓145によって閉塞され、混合物が流入・流出しないようになっている。混合物供給口143,144は、回転軸68,169に対して回転継手146を介して接続されている。
【0060】
尚、中空回転軸169の栓145を除去し、混合物供給口144から別の原料を供給し、混合物供給口143から供給した原料とローター部分で混合することも可能である。この場合は供給口144用のポンプが必要となる。また、ここでは、2つの回転軸68,169は、それぞれ別個の電動機から駆動されるが、歯車などで動力を分配し、1台の電動機で駆動してもよい。
【0061】
また、図5に示す分散装置91のステータ93を回転する構成としてローター193に変更した変形例(これを「分散装置191」とする)の具体的構成は、図7に示すように構成される。分散装置191は、ローター92,193の回転軸が水平方向に平行であるように配置された例である。図7では、図6と同様に、軸受141、軸受箱142、混合物供給口143、回転継手146が示されている他、処理した混合物を次の工程に導くローターカバー197や、さらに、装置全体の架台198やローター92,193を駆動するモータ199が示されている。尚、図7のローター92には、冷却液流通部94が設けられていないが、図5と同様に設けてもよい。
【0062】
図6に示す分散装置131や図7に示す分散装置191は、上述の図2、図5に示す分散装置31,91に対してステータをローターに変えた例の軸受部分等の具体的構成であるので、同様の効果を有するものである。図1、図3及び図4の分散装置も、同様の軸受部分等を有する構成とされている。尚、図1〜図5で説明したようなローター及びステータの組み合わせの場合には、ステータ側に軸受141や回転継手146は不要であり、構成は簡素化される。
【0063】
次に、上述のような分散装置を用いた循環式分散システムの一例について図8を用いて説明する。図8に示す循環式分散システム200は、混合物4を分散させるローター型且つ連続型の分散装置(図1〜図7等で説明した分散装置1,31,71,81,91,131,191のいずれか(ステータをローターに変更したものも含む)であり、以下では「分散装置1等」という。)を備える。図中では、Mがモータを示し、分散装置1のステータをローターに変更したものを水平方向に設置した例を挙げているが、上述したようにこれに限られるものではない。また、循環式分散システム200は、分散装置1等の出口側に接続されるタンク201と、タンク201の出口側に接続され混合物4を循環させる循環ポンプ202と、分散装置1等、タンク201及び循環ポンプ202を直列的に接続する配管203とを備える。
【0064】
尚、ここで、タンク201や分散装置や配管203内を循環する流体は、最初は原料であり、分散装置を経由する毎に添加原料が次第に分散された混合物となり、最終的には分散処理済みの混合物となるが、上述及び以下の説明では、最初の「原料」も、処理途中の「混合物」も併せて「混合物」と呼ぶこととする。
【0065】
循環式分散システム200には、循環途中の配管に供給装置206が設けられ、この供給装置206は、ホッパ204に貯蔵されている添加物205(液体または粉粒体)を、循環している混合物(最初は原料)に注入させる。分散装置1等で分散処理された混合物は、重力によってタンク201に戻される。タンク201の中の混合物は、攪拌機207による攪拌で偏析などが防止される。
【0066】
タンク201には、真空ポンプ208が接続される。この真空ポンプ208は、分散装置1等からの排出量が不足する場合に、タンク内を減圧して、排出を補助することができる。また、この真空ポンプ208による減圧は、混合物に気泡が混入した場合の脱泡処理用としても機能する。
【0067】
以上のような循環式分散システム200において、運転時には、バルブ209は、常時開とされ、バルブ210は、常時閉とされている。分散処理が終了したらバルブ209は、閉とされ、バルブ210は、開とされる。これにより、バルブ210から処理物を排出・回収することができる。
【0068】
循環式分散システム200は、図1〜図7に示すような分散装置1等を有することにより、効率的で適切な分散処理を行うことを実現し、よって、システム全体としても分散処理機能が向上するとともに、分散処理時間の短縮を実現する。
【0069】
次に、分散装置の実験例について説明する。この実験例では、図7で説明した一対のローター92,193を水平に設置した分散装置191を用い、これを図8に示したバッファタンクとしてのタンク201、送液用の循環ポンプ202を接続した循環式分散システム200によって分散テストを行った。ローターの材質はSUS304(ステンレス鋼)であり、ローター形状は、図2や図5に示す多段形ローター(以下、「多段ローター」という。)を使用した。この実験例で用いた分散装置では、3箇所のローター隙間(第1〜第3ギャップ部35,36,37)の条件は同じであり、約0.39mmであり、剪断面積(ローター隙間部分の面積の合計)は、約271cm2であった。これを図8に示すような循環式分散システムに組み込んで、繰り返し分散処理を行った。試料としては、蒸留水にアエロジル#200(日本アエロジル株式会社製)を重量比率で10%添加した。分散テストの手順としては、まず、原料貯蔵タンクに所定量の蒸留水をいれ、ローターは停止させたままポンプを起動して循環させる。次に、原料貯蔵タンクを真空ポンプで減圧することで、系全体を負圧状態とし、原料貯蔵タンクとポンプの間の配管から断続的にアエロジルを吸引供給した。アエロジルを供給終了した時点を原料の初期状態として、ローターを回転させて分散処理を行った。
【0070】
尚、この実験例を比較するための比較例の分散装置として、ローターを図9に示すようにフラットな形状のもの(以下、「フラットローター」という。)を用い、同様のテストを行った。フラットローター301は、図9に示すように、一対のローター302,303と、回転軸304,305とを有する。回転軸304には、混合物供給部306が設けられ、回転軸305には、閉塞栓307が設けられる。フラットローターの材質は、多段ローターと同様に、SUS304(ステンレス鋼)であり、ローター間の隙間は、約0.36mm、剪断面積は約304cm2である。
【0071】
以上のような多段ローターを用いた実験例(実験番号(1)〜(3))と、フラットローターを用いた比較例(実験番号(4)〜(5))の運転条件を以下の表1に示し、処理時間に対するメディアン径の変化を図10に示す。図10中の線分に付した番号(1)〜(5)は、表1中の番号と対応する。また、表中「原料供給側ローター」とは、図7ではローター92を示し、図9ではローター302を示す。表中「冷却側ローター」とは、図7ではローター193を示し、図9ではローター303を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
メディアン径は、レーザー回折式粒度測定器(SALD−2100、島津製作所)によって計測した。多段ローターとフラットローターとで同じ回転速度の条件(番号(1)、(4))を比較すると、一対のローターを逆方向に3000rpmで回転させた場合、バッファ部をもつ多段ローターの方がメディアン径の減少が早く、分散効率が良いことがわかる(番号(1))。また、片側を3600rpmで回転させた場合(番号(2)、(3)、(5))は、同じ多段ローターであっても、バッファ部の容量が大きく、遠心力も大きい方のローターのみを3600rpmで回転させた方(番号(2))が、バッファ部の容量が小さく、遠心力も小さい方(番号(3))のローターのみを3600rpmで回転させるよりも、メディアン径の減少が早い。フラットローターを片側のみ回転させた場合(番号(5))は、分散性能は最も小さくなる。
【0074】
上述の実験から、本発明者達は、以下のことを見出し確認した。片側ローターの構成(すなわちローター及びステータの組み合わせに相当)においては、番号(5)及び番号(3)に比べて番号(2)の場合が分散効果を発揮している結果が得られており、このことから、バッファ部(8、38等)の外側にローター側の外壁(10,40等)を設けるようにすることで剪断作用を発揮できることを見出した。さらに、両側回転の構成(すなわち一対のローターの組み合わせに相当)においては、番号(1)が番号(4)に比べてかなり良い分散効果を発揮していることから、複数のギャップ部における局所的剪断作用やバッファ部における平均化分散作用の効果に加えて上述のバッファ部の壁部における遠心力及び剪断作用を発揮していることを見出した。以上のような本発明を適用した剪断式分散装置は、ギャップ部とバッファ部を上述のように構成することで、より効率的で適切な分散処理機能を実現する。
【0075】
また、上述した分散装置1,31,71,81,91,131,191と、分散装置の出口側に接続されるタンクと、混合物を循環させる循環ポンプと、分散装置、タンク及び循環ポンプを直列的に接続する配管とを備える循環式分散システム200を用いて、混合物を循環させながら分散させる循環式分散方法は、より効率的で適切な分散処理を実現する。
【0076】
以上のように、上述では、図1〜図10を用いて、ローター及びステータからなる剪断式分散装置、又は一対のローターからなる剪断式分散装置において、少なくとも一つのバッファ部を設けるとともに、このバッファ部を形成する外周側の壁部がローターに設けられる点に特徴を有するものについて説明した。換言すると、ローターと対向部材(ステータ又はローター)の間に形成され内周から外周に混合物を導く通路となるギャップ部(例えば2mm以下程度の剪断力を発揮できる程度の小さな隙間)の途中においてローター及び対向部材の隙間(対向方向の間隔)が広げられるように形成されることで混合物を滞留させるバッファ部が少なくとも一つ形成されるように、ローター及び対向部材に凹凸部を設けることで、該バッファ部と、該バッファ部の内周側及び外周側に形成される複数のギャップ部とが形成されており、該バッファ部を形成する外周側の壁部がローターに設けられる点に特徴を有するものについて説明した。
【0077】
次に、図1〜図10を用いて説明したバッファ部に特徴を有する剪断式分散装置等に付加して良好な特徴として、対向間隔を調整する特徴について図11〜図15を用いて説明する。
【0078】
すなわち、上述した循環式分散システム200やこれを構成する分散装置1,31,71,81,91,131,191において、ローター及び対向部材の少なくともいずれか一方を駆動することにより、他方に対して近接及び離間する方向に駆動する駆動機構を設けるように構成してもよい。この駆動機構は、分散装置における一対のローター間や、ローター及びステータ間に混合物の詰まりが発生することにより、管内圧力が上昇して機器や配管の破損が発生することを防止することを目的として循環式分散システムに設けられるものであるが、駆動機構の具体的構成や、機能や効果については、図11の循環式分散システム400で具体的に説明するものとする。
【0079】
次に、図11及び図12を用いて本発明を適用した循環式分散システム400について、説明する。図11に示す循環式分散システム400は、混合物を分割させるローター型且つ連続型の分散装置(図1〜図7等で説明した分散装置1,31,71,81,91,131,191のいずれか(ステータをローターに変更したものも含む)に間隔を調整する機構(駆動機構420)を設けたものであり、以下では例えば、駆動機構420を有することを除いて上述の分散装置1と全く同様の構成を有する分散装置421であるものとして説明する。)を備える。図中では、Mがモータを示し、垂直方向に設置した例を挙げているが、上述したようにこれに限られるものではない。また、循環式分散システム400は、分散装置421等の出口側に接続されるタンク401と、タンク401の出口側に接続され混合物4を循環させる循環ポンプ402と、分散装置421等、タンク401及び循環ポンプ402を直列的に接続する配管403とを備える。図11中のQinは、混合物の流れを示し、Qoutは、タンク401側に向けて排出される分散処理後の混合物の流れを示す。
【0080】
尚、図12は、図11の循環式分散システム400や、後述する図16の循環式分散システム500の各構成要素の具体的な配置の一例を示す図であり、本発明の循環式分散システムはこの配置例に限定されるものではない。図12に示すように、循環式分散システム400は、添加粉末貯留タンク491が添加剤供給管492を介して接続されている。添加粉末貯留タンク491は、吸引力を発生させることにより添加剤供給管492を介して供給装置406に添加粉末を供給する。また、図12に示す循環式分散システム400には、メンテナンス時にタンク401の上蓋401aを昇降する昇降機495が設けられている。
【0081】
尚、ここで、タンク401や分散装置や配管403内を循環する流体は、最初は原料であり、分散装置を経由する毎に添加原料が次第に分散された混合物となり、最終的には分散処理済みの混合物となるが、上述及び以下の説明では、最初の「原料」も、処理途中の「混合物」も併せて「混合物」と呼ぶこととする。
【0082】
また、循環式分散システム400は、分散装置421のローター2及びステータ(対向部材)3の少なくともいずれか一方を駆動(以下では、例えばローター2を駆動するものとする)することにより、他方に対して近接及び離間する方向に駆動する駆動機構420と、この駆動機構420を制御する制御部430とを備える。駆動機構420は、例えばサーボシリンダであり、ここでは、ローター2の回転軸やこれを回転駆動するモータMを含めたユニット部分を上下に駆動して、このローター2とステータ3との隙間δ1を広げたり、狭めたりすることが可能である。以下では、この駆動機構420として、例えば、ロードセル(荷重変換器420a)等を有する電動サーボシリンダが用いるものとして説明する。
【0083】
駆動機構420を備える循環式分散システム400は、ローター2及びステータ3間に混合物の詰まりが発生した場合や、発生のおそれがある場合に隙間δ1を広げることで詰まりを解消して、管内圧力が上昇してポンプ等の機器や配管(特に継ぎ手部分)の破損が発生することを防止する。
【0084】
制御部430は、ローター及びステータの間の混合物の圧力を検出する圧力センサ423、及びローター及びステータ間から放出される混合物の温度を検出する温度センサ424の両方の検出結果に基づいて、ローター2及びステータ3の対向間隔を調整する。尚、制御部430は、圧力センサ423、温度センサ424の少なくとも一方の検出結果に基づいて調整するようにしてもよい。
【0085】
圧力センサ423は、配管中403で最も圧力が上昇する位置に配置され、例えば、図11に示すように、分散装置421に混合物を流入させる位置の手前に配置される。尚、駆動機構420としてサーボシリンダを用いる場合にはシリンダ先端に設けたロードセル(荷重変換器420a)を圧力センサとして使用してもよいし、併用してもよい。また、サーボシリンダに内蔵した圧力センサを用いてもよい。
【0086】
温度センサ424は、分散装置421から排出される混合物の温度を検出するため、図11に示すように、分散装置421の出口側の直後の配管403に取り付けられている。また、この循環式分散システム400には、ローター2の軸受部分の温度を検出する温度センサ425が設けられている。この温度センサ425の検出結果と、温度変化による各部の機械部品の熱膨張又は熱収縮により変化する隙間δ1の変化との関係を事前に計測し、制御部430内の記憶部に記憶させておくことで、制御部430は、温度センサ425の検出結果に応じて駆動装置420を駆動してローター2を軸方向に移動させて、隙間δ1を調整することで、圧力上昇又は降下を事前に防止することをも可能とする。
【0087】
以下、さらに具体的に説明する。図11に示すように、混合物の入っている貯蔵タンクとしてのタンク401は、その排出口が、循環ポンプ402に接続される。循環ポンプ402は、混合物を搬送して循環させる。タンク401の上部に設けられた供給装置406は、ホッパ404に貯蔵されている添加物405(液体または粉粒体)を、循環している混合物(最初は原料)に注入させる。添加物が添加された後の混合物は、タンク401の垂直(鉛直)方向の上方側に設置されたローター型の連続分散装置421内に、供給される。
【0088】
分散装置421は、垂直方向に対向して配置されるローター2及びステータ3を有する。分散装置421は、軸が垂直方向に設置され、ローター2が、上側に設けられ、ステータ3が、下側に設けられる。尚、これを互いに逆方向に回転する一対のローターに変更してもよい。また、軸を水平に配置して、ローター及びステータを水平方向に対向して設置するようにしてもよい。ローター2及びステータ3は、原料に添加物が均一に分散された状態とする。分散装置421のローター2及びステータ3間で分散処理された混合物は、分散装置421のローターカバー内で滞留することなく重力によってタンク401に戻される。タンク401の中の混合物は、攪拌機407による攪拌で偏析などが防止される。
【0089】
ここで、添加原料405の供給装置406としては、スクリューフィーダ、ロータリーバルブ、プランジャーポンプなどを適宜用いることができる。また、供給装置406の設置場所としては、循環途中の配管403中に設けてもよく、配管403の任意の場所を選ぶことができる。
【0090】
タンク401には、真空ポンプ408が接続される。この真空ポンプ408は、分散装置421からの排出量が不足する場合に、タンク内を減圧して、排出を補助することができる。また、この真空ポンプ408による減圧は、混合物に気泡が混入した場合の脱泡処理用としても機能する。
【0091】
以上のような循環式分散システム400において、運転時には、バルブ409は、常時開とされ、バルブ410、411は、常時閉とされている。分散処理が終了したらバルブ409は、閉とされ、バルブ410は、開とされる。これにより、バルブ410から処理物を排出・回収することができる。また、分散装置421や配管403の中に残った混合物は、バルブ411を開とすることで排出、回収される。なお、混合物の排出・回収用のバルブはタンクや配管の任意の場所に取り付けることができる。
【0092】
循環式分散システム400は、図1〜図7に示すような分散装置1等と同様の構成、作用及び効果を有する分散装置421を有することにより、効率的で適切な分散処理を行うことを実現し、よって、システム全体としても分散処理機能が向上するとともに、分散処理時間の短縮を実現する。
【0093】
また、循環式分散システム400は、システム全体としてはバッチ処理をしているシステム(以下「バッチ循環システム」という。)であり、このため、均一分散を十分に行った後に処理済製品を排出することができるので、均一分散を高度化させることができる。また、バッチ循環システムの採用により、原料トレーサビィリティを確保できる。すなわち、処理済製品の検査により、所望の範囲外(粒子の大きさにバラツキがあった場合や、不純物の量が多くなってしまった場合等)となった場合に、問題となり得た原料(液体原料)及び添加剤(粉体原料)を特定しやすく、換言すると、当該製品に用いた原料及び添加剤と同じロットで準備された原料及び添加剤を追跡することができる。これは、例えば分散装置やタンクを1回ずつ通過させるような所謂連続式分散システムでは追跡が困難であるのに対して、バッチ方式の利点である。また、バッチ循環システムの採用により、例えば真空ポンプ408等による真空脱泡処理が可能であり、脱泡処理時間の短縮を可能とするという利点を有する。さらに、バッチ循環システムの採用により、前工程に配置される添加粉末貯留タンクや、後工程に配置される分散処理済製品貯留タンク等の前後工程との連動システムの構築が容易となる。すなわち、分散システム400には、添加粉末貯留タンク491を追加することが可能であり、また、分散システム400は、構成が簡素化されているので、分散処理済製品貯留タンクの近傍に配置することを可能とする。このように、循環式分散システム400は、バッチ循環システムであるとともに上述のような革新的なスラリー製造(分散処理)を実現するので、高い分散性とトレーサビィリティを確保しながらの連続運転を実現化し、且つ高性能・高信頼性でコンパクトなシステムにより、顧客のものづくりのシンプル、スリム化、高度化、複雑化に応えるものであり、この段落で説明した点等については、上述及び後述の循環式分散システム200,500も同様である。
【0094】
また、循環式分散システム400は、処理原料を循環させ、この処理原料に添加物を添加させながら剪断式分散装置による分散を行うシステムであることにも特徴を有する。換言すると、最初は粘度が低い状態(添加粉末の割合が薄い状態)で、練りこみながら徐々に添加粉末を濃縮していく「薄練・濃縮方式」を採用している点にも特徴を有する。この方式と比較するための方式として、最初から添加粉末を全てタンク内に添加して、最初は粘度が非常に高い状態(添加粉末の割合が高い状態)にして、比較的小さな剪断速度で強力に練り込み、その後全体に分散させるように徐々に希釈していく、「固練り・希釈方式」を例に挙げて、これと比較して「薄練・濃縮方式」の利点を説明する。処理時間に対する粘度及び濃度の関係について、図13に「固練り・希釈方式」の場合を示し、図14に「薄練・濃縮方式」の場合を示す。図13及び図14中、横軸が、処理時間を示し、縦軸が、粘度及び濃度を示し、Vi1,Vi2が粘度の変化を示し、Co1,Co2が濃度の変化を示す。T11が、添加物質及び溶媒の投入期間を示し、T12が、固練り期間を示し、T13が、希釈及び混合期間を示し、T14が終了のタイミングを示す。また、T21が、溶媒投入のタイミングを示し、T22が、粉末投入及び分散・混合期間を示し、T23が、混練及び分散・混合期間を示し、T24が終了のタイミングを示す。また、Lo1,Lo2は、モータ容量を決定する負荷を示す。すなわち、最大の粘度を考慮して、モータ容量を決定する必要がある。以上のように、循環式分散システムのように、「薄練・濃縮方式」を採用することにより、分散装置421のローター用のモータ等の容量を小さくした状態で最大の分散効果を得ることができる。モータの容量を小さくできるので装置全体の構成を小型化できる。さらに、図14に示すように、粘度の変化が図13の場合に比べて少ないので、モータの能力を有効に使用した状態で分散処理を行うことができるので効率的な処理を実現する。
【0095】
さらに、循環式分散システム400は、駆動機構420等を有することにより特有の効果を奏する。駆動機構420等を有する特有の効果の説明に先立ち、循環式分散システム400において、駆動機構420を有しないとした場合の問題となり得る点を説明する。すなわち、駆動機構を有さない循環式分散システムのトラブルとしては、管内圧力の異常上昇による機器や配管の破損が考えられる。管内圧力が異常上昇する原因としては、流動抵抗が最も大きな部分、すなわちローター及びステータ間の隙間(図11では隙間δ1に相当)、又は一対のローター間の隙間での固形分の詰まりが最も可能性が高い。例えば、これを防止して、装置やシステムを保護するため、あらかじめ上限圧力を設定し、最も圧力が高くなる場所で圧力センサによって圧力を検知し、上限圧力を超えたときに運転を停止させるように構成してもよい。しかし、運転を停止させる構成としても、復帰までの時間のロスがあり、上限圧力の手前の段階で圧力上昇を防止すること、すなわち、ローター及びステータ間の隙間、又は一対のローター間の隙間での詰まりを解消することが望ましい。
【0096】
ローター及びステータ間の隙間、又は一対のローター間の隙間での固形分の詰まりを解消する手法としては、第1に、この隙間を増大する手法があり、第2に、ローター回転数を増大する手法があり、第3に、ポンプ流量を減少する手法がある。すなわち、検知圧力があらかじめ設定した閾値以上となったときに、例えば第1の手法の場合には、隙間を増大することで、詰まった固形物を流動させるものである。また第2の手法の場合には、ローターの回転数を上げて剪断力を増大させ、隙間に詰まった固形物を破壊する。さらに第3の手法の場合には、ポンプ流量を下げて管内圧力を下げ、現状のローターの回転による剪断力で固形分が破壊され、詰まりがなくなるまでの時間を稼ぐというものである。この中で、第1の手法は、詰まりの解消を考えた上では最も直接的であり、優れており、循環式分散システム400ではこれを採用している。尚、第2及び第3の手法は、詰まった固形物を破壊するという観点では本質的な方法であるが、詰まった固形物の破壊強度が大きければ、即座に破壊され、取り除かれるとは限らない。上述及び後述では、第1の手法を採用するものとしてその機能や効果を説明するが、第1の手法に換えて若しくは加えて第2、第3の手法を取り入れることも可能である。すなわち、隙間を広げて詰まった固形物を流し、圧力上昇を解消した後に、必要に応じて回転数を増加し、あるいは流量を減少させ、循環運転の中で徐々に隙間、回転数、流量を本来の設定値(通常運転値)に復帰させるのが、効率的な方法である。この制御は、制御部430により行わせるようにすればよい。
【0097】
上述したように、循環式分散システム400及びこれを構成する分散装置421では、ローター2及びステータ3間の隙間δ1を調整するために、サーボシリンダ等の駆動機構420を設けている。また、循環式分散システム400は、高濃度且つ高粘度のスラリー状混合物を分散処理可能とするものである。上側のディスク状部材にモータMを接続してローター2として構成し、このローター2を含む上側のユニット部分を、駆動機構420(サーボシリンダ)により、上下に移動させてステータ3との隙間δ1を調整する。スラリーに対する耐久性を向上させるため、下側のディスク状部材は、ステータ3として軸封部のない構造(回転部分がないため軸封部を必要としない)とし、ステータ3の中心軸を介して分散部(ローター2及びステータ3の間)に分散中のスラリー状混合物を供給することとしている。尚、圧力の検知は、配管中の最も圧力が上昇する位置に設けた圧力センサ423で行うようにしたが、駆動機構420(サーボシリンダ)に内蔵若しくはシリンダ先端等に設けたロードセル(例えば図11に示す荷重変換器420a)で行うようにしてもよい。さらに、ローター回転数の制御や、ポンプ流量の制御は、制御部430により、それぞれ駆動モータに接続したインバーターを介して行うことができる。
【0098】
このような循環式分散システム400における分散過程において、混合物の特性が予想可能な場合は、あらかじめローター2及びステータ3間の隙間δ1等や、ローター回転数や、流量の制御プログラムを準備することで、効率的な分散を実現できる。例えば、液体状の処理原料を循環させ、これに粉末状の添加物を徐々に投入してスラリー状の混合物を製造する工程において、運転初期に固形分が凝集しやすく、ローター及びステータ間の隙間等に詰まりやすい場合がある。このとき、運転初期ではこの隙間をあらかじめ広くし、ローター回転数を上げておく。粉末状の添加物の投入が完了し、液体状の処理原料及び粉末状の添加物からなる混合物が循環する間に凝集固形分が破壊され、スラリーの性質が安定し、詰まる恐れがなくなった段階で、この隙間とローター回転数を本来の設定値(通常運転値)に戻して、所望の分散処理を行うようにしてもよい。この場合、流量を減少させることは、剪断(分散)領域を通過する液の頻度が減少することを意味するため、処理時間が延びることになるため、この手法を採用しなくてもよい。
【0099】
また、循環式分散システム400におけるスラリー作成工程において、複数の粉末状の添加物を順次投入する場合には、それぞれの段階で最適なローター及びステータ間の隙間、ローター回転数、流量が異なるときには、あらかじめ制御プログラムを準備することで、効率的で適切な分散処理を実現できる。
【0100】
また、循環式分散システム400において分散処理が完了し、分散処理後の混合物(製品)の排出工程においても、制御によって効率的な処理が可能である。排出工程においては、分散工程の後に運転を停止することなく継続実施されるが、この際、バルブ409を閉じて、バルブ410,411を開とすることで、バルブ410,411から混合物(製品)を排出して回収できる。このとき、過分散を防止するため、分散装置421は運転が停止され、すなわち、ローター2の回転が停止されているため、ローター2及びステータ3間の混合物(製品)は、この隙間の流動抵抗が大きいため排出されにくい。このとき、隙間を広げることで、流動抵抗を下げ、排出速度を促進することができる。これは、混合物の粘度が高い場合や、分散装置のローターやステータ部分にバッファ部を設けた場合(図1〜図7を用いて上述したような場合)には排出すべき混合物が多いため効果が大きい。
【0101】
また、上述した分散装置421等のディスク型の分散装置は、高速回転によって、大きな剪断応力を発生させ、分散させるため、摩擦によりディスク状部材であるローター2及びステータ3の対向部分が発熱する。対向部分や軸部分やその他の関連部品の熱膨張によって、ローター2及びステータ3の隙間が減少する場合がある。
【0102】
ローター2及びステータ3の隙間が減少すると、流動抵抗が増加し、異常圧力発生の原因となる。そのため、圧力の検出とともに原料温度も検出し、圧力上昇の予測と防止に利用することにより、システムの安全性を増すことができる。原料温度が最も上昇する箇所は、ローター2及びステータ3の隙間であり、この部分が高速回転部であることから、この部分の混合物の温度検出は、難しいが、この直後の配管に温度センサ424を配置することで、ほぼ同等の温度が検出できる。ステータ3には、比較的簡単に温度センサが取り付け可能である。
【0103】
また、必要であれば、軸受部の温度も温度センサ425で検出しておくようにしてもよい。あらかじめ、温度と、ローター2及びステータ3の隙間との関係を調べておくことで、温度上昇により、この隙間の減少をサーボシリンダ(駆動機構420)等の手段で補正し、適正な隙間に制御することで、圧力上昇を防止することができる。尚、この制御の目的は、圧力上昇の解消であるが、結果的に温度上昇の解消をも実現する。
【0104】
更に、検出温度による運転制御は、次の2つの目的にも利用できる。第1の目的は、熱膨張による隙間の減少は、ローター2及びステータ3(一対のローターの場合も同様)の接触による過負荷、異音(騒音)、対向部分(ディスク状部分)の破損の原因となることに鑑みたものである。すなわち、第1の目的は、これらを防止することであり、隙間の適正制御を行うというものである。第2の目的は、原料の温度上昇による変質防止等のために、より積極的な温度管理のための運転制御を行うというものである。すなわち、検出した混合物の温度が規定値を超えた場合、圧力とは関係なく、ローター2及びステータ3の隙間の増大、ローター2の回転数の減少を行い、混合物に発生する摩擦熱を抑えることができる。
【0105】
以上のように、駆動機構420を備える循環式分散システム400は、分散装置421におけるローター2及びステータ3間の隙間δ1に混合物の詰まりが発生することを防止し、管内圧力が上昇することにより機器や配管の破損が発生することを防止することを実現でき、よって、効率的で適切な分散処理を行うことができる。尚、駆動機構420は、ローター及びステータ方式の分散装置のみならず、一対のローター方式の分散装置にも用いることができ、一対のローター間の隙間に混合物の詰まりが発生することを防止し、管内圧力が上昇することにより機器や配管の破損が発生することを防止できる。
【0106】
また、循環式分散システム400は、制御部430が、圧力センサ423、温度センサ424の一方又は両方の検出結果に基づいて、ローター2及びステータ3の対向間隔(隙間δ1)を調整する構成であるので、混合物の詰まりが発生しうる状態であることを事前に検知して防止し、機器や配管の破損等の発生を確実に防止することを実現できる。
【0107】
さらに、循環分散システム400では、制御部430により、粘度が高いうちは回転速度を押さえて徐々に速度を上昇させ、粘度が高いうちは隙間(対向間隔)が小さすぎると負荷が大きすぎるので隙間を増やすとともにこなれてきたら隙間を小さくして剪断力を大きくする制御を行い、これにより例えば図14に示すような粘度及び濃度と処理時間との関係となるように運転することで適正な分散処理を行うことを実現する。
【0108】
また、循環式分散システム400は、分散装置421のローター高速回転による高剪断力効果により短時間で分散処理を実現する。ここで、分散装置421の剪断力は、τ=μ×(dv/dx)の関係式のτで表すことができる。μは、粘度であり、dvは、速度であり、dxは、ローター及び対向部材の隙間(対向間隔)である。分散装置421は、所望の剪断力を得るdxとなるように駆動機構420を制御することにより、高剪断力効果を得ることができ、短時間で分散処理を実現する。また、制御部430により、ローター及び対向部材の対向間隔の制御や、循環ポンプ402による循環量の制御や、ローター2の回転数の制御を行うことができ、これにより最適な条件でフレキシブルな分散処理を行うことが可能である。例えば、対向間隔、循環量、回転数の適正な制御を行うことにより、図14に示すような粘度及び濃度と処理時間との関係となるように制御を行うことで、モータの能力を最大限に発揮した分散処理を実現することができ、換言すると装置の小型化及び処理時間の短縮を実現する。
【0109】
さらに、循環式分散システム400は、その構造及び仕様により、清掃及びメンテナンス作業の効率化を実現するものである。循環式分散システム400は、分散処理終了後、清掃用の液体を循環させることで停滞物を除去できる。また、循環式分散システム400は、各部が、分解が容易な構造とされている。例えば、分散装置421は、駆動機構420によりローター2及びステータ3を分割できる。また、配管403は、フェルール等のクイックカップリングで接続するように構成されているため、脱着を簡単に行うことができる。また、タンク401の上蓋401aは、昇降機495で昇降可能なように構成されているため、ボルト等の結合部材を外した状態で昇降機495により容易に上昇させることができる。以上のように、循環式分散システム400は、清掃及びメンテナンス作業の効率化を実現する。
【0110】
また、駆動機構420を有する分散装置421は、ローター2及びステータ3間の隙間δ1に混合物の詰まりが発生することを防止し、管内圧力が上昇することにより機器や配管の破損が発生することを防止することを実現できる。上述した駆動機構420は、分散装置1に追加した例として説明したが、図2〜図7を用いて説明した分散装置31,71,81,91,131,191にも適用可能であり、これらに追加する(これらに駆動機構420を含めて以下「分散装置421等」ともいう。)ことで上述の分散装置421と同様の効果を奏する。
【0111】
さらに、駆動機構420を有する分散装置421等及びこれを用いた循環式分散システム400等は、次のような利点がある。すなわち、駆動機構420を有する分散装置421は、第1の混合と、第2の混合とからなる2段階混合を分散することにより行う装置としてもよい。ここで、第1の混合とは、処理原料と第1の添加物とを混合することである。第2の混合とは、該第1の混合が完了することにより得られた第1の混合物と第2の添加物とを混合することである。この分散装置421等において、駆動機構420は、第1の混合が完了して第2の混合を開始する際に、ローター2及びステータ3の対向間隔を変更する点に特徴を有する。
【0112】
ところで、これらの分散装置421等は、例えば、電池原料、塗料原料、無機化学製品等を得るために用いることが可能である。電池原料の場合、処理原料は、例えば水(蒸留水、イオン交換水)、NMP(1−メチル−2−ピロリドン)である。第1の添加物は、例えばカルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」ともいう)粉末、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」ともいう)粉末等の増粘材である。第2の添加物は、リチウムイオン電池用正極活物質(LiCoO2系化合物、LiNiO2系化合物、LiMn2O4系化合物、Co-Ni-Mn複合系化合物、LiFePO4/LiCoPO4系化合物等)、リチウムイオン電池用負極活物質、リチウムイオンキャパシタ用正負極活物質又は導電助剤である炭素系材料(黒鉛、コークス、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、ケッチェンブラック等)、リチウムイオン電池用負極活物質(アンチモン系化合物(SbSn、InSb、CoSb3、Ni2MnSb)、スズ系化合物(Sn2Co、V2Sn3、Sn/Cu6Sn5、Sn/Ag3Sn)、Si系複合材料等)、ニッケル水素電池用正極活物質(Ni(OH)2)、ニッケル水素電池用負極活物質すなわち水素吸蔵合金(TiFe、ZrMn2、ZrV2、ZrNi2、CaNi5、LaNi5、MmNi5、Mg2Ni、Mg2Cu等)、バインダー(フッ素系樹脂(PTEF(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビリニデン))、フッ素ゴム(フッ化ビリニデン系)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、BR(ブタジエンゴム)、ポリアクリロニトリル、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレンプロピレンゴム、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリビニルエーテル、ポリイミド等)である。その他にも、各種インキ、塗料、顔料、セラミックス粉、金属粉、磁性粉、医薬品、化粧品、食品、農薬、プラスチック(樹脂)粉末、木粉、天然・合成ゴム、接着剤、熱硬化性/熱可塑性樹脂等が処理原料として挙げられる。
【0113】
また、上述の第1の混合において、開始時は前記対向間隔を大きく設定して分散が進むとともに徐々に間隔を小さく変化させるとともに、第1の混合が完了して第2の混合を開始する際に、対向間隔を更に小さく変更するように構成されてもよい。
【0114】
以上のように構成された駆動機構420を有する分散装置421は、第1及び第2の混合を循環式分散システム400のみで行うことを実現し、装置の簡素化や、トータルの処理時間を短縮できるという効果を奏するが、次に具体例を挙げてこの効果について具体例を挙げて説明する。
【0115】
ここで、駆動機構420を有する分散装置421による第1及び第2の混合処理を行わせることの効果を、当該分散装置421を有する循環式分散システム400をリチウムイオン電池のペースト製造に用いる場合を例に挙げて説明する。この分散装置421及び循環式分散システム400では、処理原料である水に、第1の添加物であるCMC粉末を混合して第1の混合物を得て、この第1の混合物に第2の添加物である活物質を混合して分散処理済みの第2の混合物(製品)を得る。分散装置400のローター及びステータの対向間隔は、第1の混合では、詰まらないように大きくし、第2の混合では、分散のため所望の剪断力を発揮させるために小さくする。
【0116】
すなわち、循環式分散システム400では、まず、水を循環させているところにCMC粉末を徐々に投入してCMC水溶液を得る。CMC水溶液はダマ(「継粉」ともいう。)を作りやすいため、最初は、分散装置421のローター2及びステータ3の対向間隔(隙間)を大きくしておいて閉塞や、それによる圧力上昇を防ぎ、分散とともに徐々に隙間を小さくして剪断力を上昇させ、CMCを水に均一に分散させる。継粉とは、液中にこなれないで粉末のまま固まった状態のもので、粘度が高い状態のものができた部分を有する液と粉との混合物を意味する。次に、循環式分散システム400では、分散装置421の隙間を所定の隙間(2mm以下程度)となるように自動的に狭めるように制御部430で調整し、運転を止めることなく活物質(粉末)を投入し、活物質のCMC水溶液への分散を行い、第2の混合物であるスラリー状の製品を得る。
【0117】
以上のように、2段階の混合処理を行う循環式分散システム400及び分散装置421は、CMC水溶液を別途作成するための別の装置を不要とでき、これにより、CMC水溶液の搬送や投入を不要とでき、また、CMC水溶液の作成に使った装置の清掃及びメンテナンスの手間を省くことができる。したがって、循環式分散システム400及び分散装置421は、CMCを徐々に投入しながら水溶液を得る工程の分だけ時間が増えることとなるが、運転を止めることなく隙間の自動調整を行いながら分散を続けるため、トータルの処理時間を短縮することが可能となり、よって、効率的で適切な分散処理を行うことができる。換言すると、駆動機構420を有さない分散装置の場合には、CMC水溶液は別途作成する必要があり、この準備した処理原料としてのCMC水溶液に活物質を添加して分散させる必要があるが、これに対し分散装置421等では、対向間隔を調整することで2段階の混合処理ができ、すなわち一括処理により上述の効果を奏するものである。
【0118】
ここで、2段階混合処理を連続的に行う場合における、処理時間の経過に伴う濃度、圧力(圧力センサ423による検出圧力)、及び対向間隔(ローター及びステータの対向間隔)の変化の一例について図15を用いて説明する。図15中、横軸が、処理時間を示し、縦軸が、濃度、圧力、対向間隔を示し、Co3が濃度の変化を示し、Pr3が圧力の変化を示し、Fd3が対向間隔の変化を示す。T31が、溶媒の投入タイミングを示し、T32が、第1の添加物(粉体)を投入する期間を示し、T33が、分散・混合期間を示し、T34が、第2の添加物(粉体)を投入する期間を示し、T35が、分散・混合期間を示し、T36が終了のタイミングを示す。
【0119】
図15に示すように、循環式分散システム400及び分散装置421を用いて2段階混合を行う際に、第1の添加物投入工程、第1の分散混合工程、第2の添加物投入工程、第2の分散混合工程を順次行う場合に、第1の添加物投入工程(T32)においては、ローター及びステータの対向間隔をステップ状に順次増大させるようにし、第1の分散混合工程(T33)においては、対向間隔をステップ状に順次縮小させるようにし、第2の添加物投入工程(T34)においては、対向間隔をステップ状に順次増大させるようにし、第2の分散混合工程(T35)においては、対向間隔をステップ状に順次縮小させる点に特徴を有する。尚、ここではステップ状に増大縮小させたが、連続的に変化させてもよい。「粉体投入期間においては対向間隔を徐々に増大させ粉体投入期間完了後分散混合工程においては対向間隔を徐々に縮小させる」という対向間隔の制御は、1段階の混合においても有効であり、ここでは、それを2回繰り返したものである。また、第1の添加物投入工程(T32)が完了するタイミングの対向間隔より、第2の添加物投入工程(T34)が完了するタイミングの対向間隔が小さくなっている点にも特徴を有する。さらに、第1の添加物投入工程(T32)を開始するタイミングの対向間隔より、第2の添加物投入工程(T34)を開始するタイミングの対向間隔が小さくされているとともに、第2の添加物投入工程(T34)を開始するタイミングの対向間隔より、終了時(T36)の対向間隔が小さくされている。換言すると「粉体投入期間においては対向間隔を徐々に増大させ粉体投入期間完了後分散混合工程においては対向間隔を徐々に縮小させる」という方式に、全体としては「対向間隔を小さくして最終的に一番大きな剪断力を発生させ」る方式を取り入れて分散を行うものである。以上のような図15に示すような特徴的な対向間隔の制御を行うことにより、圧力変動を抑えて、適切に2段階混合を行い、適切な一括処理を行うことを実現する。
【0120】
すなわち、分散装置421及び循環式分散システム400は、図1〜図10を用いて説明した特徴的なバッファ部が形成されることにより、効率的で適切な分散処理を実現するとともに、図11を用いて説明した対向間隔を調整する機構(駆動機構420)を有する構成により、ローター及びステータ間の隙間δ1に混合物の詰まりが発生することや、管内や機器内の圧力が上昇することによる機器や配管の破損を防止できる。また、駆動機構420を有するので、ローター及びステータを大きく離すことを可能として清掃やメンテナンス作業の効率化を実現する。さらに、駆動機構420を有するので、上述したような2段階以上の混合分散処理を実現して、トータル処理時間を短縮化し、別途必要であった装置を不要にし、トータル装置の小型化を実現する。
【0121】
また、上述した分散装置421等と、分散装置の出口側に接続されるタンクと、混合物を循環させる循環ポンプと、分散装置、タンク及び循環ポンプを直列的に接続する配管とを備える循環式分散システム400を用いて、混合物を循環させながら分散させる循環式分散方法は、より効率的で適切な分散処理を実現する。
【0122】
また、この循環式分散システム400を用いた循環式分散方法において、分散装置421が、ローター2及び対向部材(ステータ3)の少なくともいずれか一方を駆動することにより、他方に対して近接及び離間する方向に駆動する駆動機構420を備え、ローター2及び対向部材(ステータ3)の間の混合物の圧力を検出する圧力センサ423、及びローター及び対向部材間から放出される混合物の温度を検出する温度センサ424の一方又は両方の検出結果に基づいて、ローター及び対向部材の対向間隔を調整しながら分散処理を行う点に特徴を有する。当該方法は、混合物の詰まりが発生しうる状態であることを事前に検知して防止し、機器や配管の破損等の発生を確実に防止することを実現できる。
【0123】
また、当該分散方法において、処理原料を循環させ、該処理原料に第1の添加物を添加させながら分散装置による分散を行うことで処理原料と第1の添加物とを混合して第1の混合物を得る第1の混合工程と、第1の混合工程で得られた第1の混合物を循環させ、該第1の混合物に第2の添加物を添加させながら分散装置による分散を行うことで第1の混合物と第2の添加物とを混合して第2の混合物を得る第2の混合工程とを有する点に特徴を有する。当該方法は、第1及び第2の混合を循環式分散システム400のみで行うことを実現し、装置の簡素化や、トータルの処理時間を短縮することを実現する。
【0124】
さらに、当該分散方法において、第1の混合工程が完了して第2の混合工程を開始する際に、ローター2及び対向部材(ステータ3)の対向間隔を変更する点に特徴を有する。当該方法は、それぞれの工程における最適な剪断力を各混合物に与えることができ、適切で効率的な分散処理を実現する。さらに、当該分散方法は、水に増粘材を加えて活物質を分散させたいような例えば電池原料を得る際に非常に有効である。
【0125】
以上のような分散方法や、分散装置421や、循環式分散システム400によれば、分散装置における一対のローター間や、ローター及びステータ間に混合物の詰まりが発生することにより、管内圧力が上昇して機器や配管の破損が発生することを防止して、適切で且つ効率的な分散処理を実現できる。さらに、2段階の混合処理を可能とし、これによりさらに適切で且つ効率的な分散処理を実現できる。
【0126】
以上のような、図11を用いて説明した駆動機構420の特徴や、これにより可能とされる2段階混合処理の特徴は、図1〜図10のバッファ部の特徴と組み合わせることにより、上述のような効果を有して分散装置及び循環式分散システムの性能を向上させるものであるが、図1〜図10で説明したバッファ部の特徴を有しないローター及びステータ、若しくは一対のローターを有する分散装置(例えば対向する円板形状等のローターやステータからなる分散装置)にも適用可能であり、その場合には、駆動機構による効果、2段階混合による効果を発揮する。
【0127】
次に、図1〜図10を用いて説明したバッファ部の特徴や、図11を用いて説明した対向間隔を調整する駆動機構、2段階混合の特徴に付加して良好な特徴として、タンクに取り付けるスクリュー式粉体供給装置の特徴について図16〜図22を用いて説明する。
【0128】
すなわち、上述した循環式分散システム200,400において、タンク201,401に換えて特徴的なタンク装置501を設けるように構成してもよい。このタンク装置501は、特徴的構成として、スクリュー式粉体供給装置531が設けられ、粉体供給部先端532がタンク内の混合物に挿入される状態で取り付けられている。このタンク装置501は、タンク内面に粉体原料が付着することや、タンク内に粉体原料を飛散させることを防止し、粉体が液面に漂うことや凝集したりすることを防止し、適切で効率的な分散処理を実現することを目的として循環式分散システムに設けられるものであるが、駆動機構の具体的構成や、機能や効果については、図16の循環式分散システム500で具体的に説明するものとする。
【0129】
尚、循環式分散システム500は、タンク401やこれに取り付けられる供給装置406等に換えてスクリュー式粉体供給装置等を有するタンク装置501を設けることを除いて循環式分散システム400と同様の構成を有するので、共通部分については同一の符号を付すとともに詳細な説明は省略する。
【0130】
次に、図16及び図17を用いて本発明を適用した循環式分散システム500について、説明する。図16に示す循環式分散システム500は、混合物を分割させるローター型且つ連続型の分散装置421を備える。図中では、Mがモータを示し、垂直方向に設置した例を挙げているが、上述したようにこれに限られるものではない。また、循環式分散システム500は、分散装置421等の出口側に接続されるタンク装置501と、タンク装置501の出口側に接続され混合物4を循環させる循環ポンプ402と、分散装置421等、タンク装置501及び循環ポンプ402を直列的に接続する配管403とを備える。尚、循環式分散システム500を構成する分散装置は、分散装置421に限られるものではなく、上述した分散装置1,31,71,81,91,131,191のいずれか(ステータをローターに変更したものも含む)や、これらに駆動機構420を追加したものであってもよい。
【0131】
また、循環式分散システム500は、循環式分散システム400と同様に、例えば図12に示すように配置され、必要に応じて添加剤供給管492を介して添加粉末貯留タンク491に接続されてもよく、タンク装置501の上蓋541dを昇降する昇降機495を設けるようにしてもよい。
【0132】
尚、ここで、タンク装置501や分散装置や配管403内を循環する流体は、最初は原料(スラリー状又は液体状の処理原料であるものとする。)であり、分散装置を経由する毎に添加原料(この循環式分散システム500においては粉体の添加物であるものとする。)が次第に分散された混合物となり、最終的には分散処理済みの混合物となるが、上述及び以下の説明では、最初の「原料」も、処理途中の「混合物」も併せて「混合物」と呼ぶこととする。また、上述及び後述の説明中の「液体」には、特に記載がない場合には、スラリー状のものも含むものとする。
【0133】
また、循環式分散システム500は、循環式分散システム400と同様に、分散装置421に設けられる駆動機構420、制御部430、圧力センサ423、温度センサ424,425、バルブ409,410,411等を有する。
【0134】
循環式分散システム500は、処理原料を循環させ、該処理原料に添加物を添加させながら剪断式分散装置による分散を行うシステムである。分散装置421には、対向部材(ステータ3)に設けられた供給通路(供給口29a)を介して循環される処理原料が供給される。
【0135】
タンク装置501には、タンク装置501内の処理原料に添加物を供給するスクリュー式粉体供給装置531が設けられる。スクリュー式粉体供給装置531の粉体供給部先端532がタンク装置501内の混合物4中に挿入されている。
【0136】
タンク装置501は、タンク装置501内の混合物4を攪拌する攪拌機533を有し、攪拌機533の攪拌羽根534が粉体供給部先端532からタンク装置501内の処理原料液中に供給された添加物粉体を粉体供給部先端532の出口付近から掻き出してタンク装置501内の処理原料液中に分散させる。
【0137】
スクリュー式粉体供給装置531は、粉体に含まれる空気を脱気する脱気装置535を有する。尚、タンク装置501において、脱気装置535を設けなくてもよい。ここで、脱気装置535を設けた場合には、液体に供給する前に粉体中の空気を除去できる。
【0138】
また、タンク装置501には、タンク装置501内部を減圧する減圧ポンプ536が設けられる。尚、タンク装置501において、減圧ポンプ536を設けなくてもよい。減圧ポンプ536を設けた場合の効果は後述する。
【0139】
以下、さらに具体的に説明する。図16及び図17に示すように、液体が貯蔵されたタンク装置501の上部に粉体を供給するスクリューフィーダ等のスクリュー式粉体供給装置531を設置し、スクリューフィーダの導入管546の先端部分(546a)を液中(混合物4(尚、最初は液体原料547である。))に浸すように設置する。分散処理するタンク装置501内の液体を攪拌する攪拌羽根534を、スクリューフィーダから液中に供給された粉体542を直接液体中に混ぜ込むように作動させる。
【0140】
このタンク装置501は、粉体を液中に供給して分散処理する装置(その機能上分散装置ともいえる)である。タンク装置501は、液体を貯蔵するタンク本体541と、スクリュー式粉体供給装置531と、攪拌機533とを備える。スクリュー式粉体供給装置531は、粉体542を貯蔵するホッパ543と、ホッパ543から粉体542をタンク本体541に供給するスクリュー544と、スクリュー544を駆動する電動機ユニット545と、スクリュー544を液中に導入する導入管546とを有する。攪拌機533は、液体原料547と粉体原料542を分散する攪拌羽根534と、攪拌羽根534を駆動する電動機ユニット548とを有する。タンク本体541は、例えば円筒状の胴部541cと、曲面状の下部閉塞部541aと、平板状の上部閉塞用の上蓋541dとを有する。タンク本体541の下部閉塞部541aの中心付近に排出口541bが設けられている。水平面内において、攪拌機533は、タンク本体541の中心に取り付けられ、スクリュー式粉体供給装置531は、中心から偏倚した位置に取り付けられている。
【0141】
スクリュー544及び導入管546は、その先端がタンク本体541に貯蔵された液体原料547に浸るように設置される。攪拌羽根534は、図17に示すように、隙間δ2(0.5〜10mm)をもってスクリュー導入管546から液中に供給された粉体542を掻き取るような形状となっている。
【0142】
より具体的には、図17及び図18に示すように、攪拌羽根534は、タンク本体541の底面541aと所定の隙間(1〜50mm)を有して配置され、底面541a付近の液体を攪拌する底部攪拌部534aと、タンク本体541内の液面547bと所定の隙間(10〜200mm)を有して配置され、液面547b付近の液体を攪拌する液面攪拌部534bとを有する。底部攪拌部534aと、液面攪拌部534bは、攪拌機533の回転軸533aに接合され回転される。
【0143】
また、攪拌羽根534は、粉体掻き出し部534cと、接続部534dと、接続部534eとを有する。粉体掻き出し部534cは、液面攪拌部534bと平行であるとともに液面攪拌部534bより下方側(底部攪拌部534a側)に設けられ、スクリュー式粉体供給装置531の先端(粉体供給部先端532)と上述の所定の隙間δ2(0.5〜10mm)離間するように形成されている。
【0144】
接続部534dは、液面攪拌部534bをその両側の粉体掻き出し部534cのそれぞれに接続するように鉛直方向に形成されている。接続部534eは、接続部534dと平行に設けられ、底部攪拌部534aと粉体掻き出し分534cとを接続するとともに液面攪拌部534bと同じ高さまで延長して形成されている。接続部534d及び接続部534eは、それぞれ攪拌羽根534がスクリュー導入管546を通過する回転位置となるときに、スクリュー導入管546と所定の隙間δ2離間するように形成されている。
【0145】
以上のような攪拌羽根534は、全体として板状に形成されている。尚、上述の板状の部材を2枚以上準備して、これらを回転方向に等間隔となるように組み合わせたような攪拌羽根を用いてもよく、その場合には攪拌性能が向上する。ホッパ543内の粉体542は、スクリュー544に接続されたスクレーパ551によってホッパ内壁の付着や棚吊り(ブリッジ)が防止される。
【0146】
粉体542が微粉で、空気を多量に含む場合は、図17に示すスクリュー544の途中に設けられる脱気装置535により、粉体を液体に供給する前に粉体から空気を除去できる。脱気装置535は、金属若しくはセラミック製のフィルターであり、真空ポンプ552によって導入管に設置された部分から粉体内に含まれる空気を吸い出す機能をもつ。これにより、粉体に含まれる空気を抜く(脱気する)ことにより、液体中に空気が混入されることを抑制することができ、特に液体の粘度が高い場合には、後工程の脱泡時間の短縮に効果がある。また、粉体のみかけ密度(「嵩密度(bulk density)」ともいう。)が増えるため、供給速度も大きくすることができる。嵩密度は、体積が既知の容器に粉体を充填して、その粉体の質量を測定し、測定により得られた質量を体積で割った値を意味する。
【0147】
タンク装置501は、上述したような構成とされたスクリュー式粉体供給装置531や攪拌機533により、タンク内面に粉体原料が付着することや、タンク内に粉体原料を飛散させることを防止し、粉体が液面に漂うことや凝集したりすることを防止し、適切で効率的な分散処理を実現する。
【0148】
このタンク装置501は、単体でも分散機能を有するが、図16や図17に示すように配管403により分散能力が高い剪断式の分散装置421等に接続し、ポンプ402によってタンク内の液体を循環させて分散装置421による分散処理を繰り返すことで、分散能力を格段に向上させることができる。
【0149】
タンク装置501を有する循環式分散システム500における循環操作は、粉体と液体の比重差が大きいとき等に、粉体が液体表面に滞留することや、逆に粉体がタンク底に堆積することを防ぐことができ、すなわち、均一な分散がされなくなることを防ぐ。また、この循環式分散システムに分散装置421を設けた場合には、特に液体の粘度が高い場合等に、効果的である。液体の粘度が高い場合には、タンク装置501の攪拌羽根で対流を起こすことは難しい場合があり、分散効果が低下するが、剪断式の分散装置は、高粘度の混合物に対してもその分散機能を発揮できるからである。
【0150】
また、タンク装置501においては、循環式分散システム500の配管403により分散装置421で分散処理されて循環された混合物4をタンク内に戻す(循環混合物をタンクに供給する)導入管553が設けられ、導入管553の先端がタンク内の液中に浸す程度に形成されている。この導入管553により、戻ってきた混合物4がタンク内の液面に落下し飛沫がタンク内壁に付着することを防ぐ。
【0151】
タンク本体541に接続された減圧ポンプ536は、混合物4の脱泡処理用として機能する。
【0152】
以上のような循環式分散システム500において、運転時には、バルブ409は、常時開とされ、バルブ410、411は、常時閉とされている。分散処理が終了したらバルブ409は、閉とされ、バルブ410は、開とされる。これにより、バルブ410から処理物を排出・回収することができる。また、分散装置421や配管403の中に残った混合物は、バルブ411を開とすることで排出、回収される。なお、混合物の排出・回収用のバルブはタンクや配管の任意の場所に取り付けることができる。
【0153】
循環式分散システム500は、上述した分散装置421を有することにより、効率的で適切な分散処理を行うことを実現し、よって、システム全体としても分散処理機能が向上するとともに、分散処理時間の短縮を実現する。また、循環式分散システム500は、駆動機構420を有することにより、上述した循環式分散システム400と同様の効果を有するが、その作用や効果は、循環式分散システム400の場合と同じであるので、ここでは詳細は省略する。
【0154】
さらに、循環式分散システム500は、タンク装置501を有することにより、タンク内面に粉体原料が付着することや、タンク内に粉体原料を飛散させることを防止し、粉体が液面に漂うことや凝集したりすることを防止し、適切で効率的な分散処理を実現する。また、貯蔵ホッパや配管での詰まりの発生を防止でき、液中への空気の混入を最小限に抑え、微粉の場合でも供給速度を上げて連続的に供給することを可能とする。このように、循環式分散システム500は、適切な分散を実現する。
【0155】
具体的には、タンク装置501及びこれを用いた循環式分散システム500は、スクリューフィーダの先端を液中に浸すことにより、粉体原料が貯蔵タンク内の空間中に放出されないようにでき、拡散した粉体原料がタンク内面に付着するという問題や、粉体が液面に落下するときに飛沫が跳ね上がり、タンク内面に付着するという問題を解消できる。
【0156】
また、タンク装置501及びこれを用いた循環式分散システム500は、バッチ分散処理を行うものであり、貯蔵タンクを攪拌する羽根を、スクリューフィーダから液中に供給された粉体を直接液体中に混ぜ込むように作動させることにより、粉体原料が液体中に混ぜ込まれ、粉体が液表面近くで漂うことや、凝集することを防ぎ、液体中に分散することができる、
【0157】
また、タンク装置501及びこれを用いた循環式分散システム500は、スクリューフィーダの途中で脱気を行うことにより、液体への空気の混入が最小限に抑えられるため、液体への空気の混入が最小限に抑えられる。それと共に、粉体のみかけ密度(嵩密度)が大きくなることで、供給速度を上げることができ、液中における粉体の浮き上がりも抑制することができる。
【0158】
尚、循環式分散システム500に用いることができるタンク装置は、タンク装置501に限られるものではなく、例えば、図19に示すタンク装置561であってもよい。すなわち、図19のタンク装置561は、タンク装置501の変形例であり、スクリュー式粉体供給装置531のホッパ543に減圧機構562が追加されたことを除いてタンク装置501と同様の構成を有するので、共通部分については同一の符号を付すとともに詳細な説明は省略する。
【0159】
タンク装置561は、図19に示すように、スクリュー式粉体供給装置531、攪拌機533、攪拌羽根534、減圧ポンプ536、ホッパ543、スクリュー544、電動機ユニット545、導入管546、電動機ユニット548、スクレーパ551等を有する。尚、タンク装置561は、脱気装置535を設けない場合の例について説明したが、タンク装置501と同様に脱気装置535を設けてもよく、その場合は、脱気装置による効果が得られてより適正な分散を実現する。
【0160】
さらに、タンク装置561は、減圧機構562を有している。減圧機構562は、ホッパ543の上部に設けられる供給受け部563と、供給受け部563とホッパ543とを接続する減圧用配管564及び接続配管565と、バルブ566,567と、減圧ポンプ568とを有する。バルブ566,567は、通常時は閉とされる。
【0161】
粉体をスクリュー式粉体供給装置531に供給する場合には、バルブ566を開として、供給受け部563から減圧用配管564に粉体を供給する。次いで、バルブ566を閉として、減圧ポンプ568により減圧用配管564内を減圧する。減圧した後に、減圧ポンプ568で減圧したまま、バルブ567を開として、減圧用配管564内の脱気済みの粉体を接続配管565を介してホッパ543内に導き、完了したらバルブ567を閉とする。その後、減圧ポンプ568を停止する。尚、減圧ポンプ568の停止は、バルブ567の開動作の前に行ってもよい。
【0162】
以上の減圧機構562は、スクリュー式粉体供給装置531内を常に減圧した状態にすることができ、粉体内の空気を取り除いた状態とすることができ脱泡処理を早期に完了できるとともに、上述した減圧ポンプ536の機能を最大限発揮できる。
【0163】
尚、循環式分散システム500に用いることができるタンク装置は、タンク装置501,561に限られるものではなく、例えば、図20に示すタンク装置571であってもよい。すなわち、図20のタンク装置571は、タンク装置501の変形例であり、スクリュー式粉体供給装置の取り付け位置と、攪拌機の取り付け位置及び構造と、攪拌を補強する構造が追加されたことを除いてタンク装置501と同様の構成を有するので、共通部分については同一の符号を付すとともに詳細な説明は省略する。
【0164】
タンク装置571は、図20に示すように、スクリュー式粉体供給装置531と同一の構成とされたスクリュー式粉体供給装置573、ホッパ543、スクリュー544、電動機ユニット545、導入管546、電動機ユニット548、スクレーパ551等を有する。スクリュー式粉体供給装置573の粉体供給部先端574がタンク装置571内の混合物4中に挿入されている。尚、タンク装置571は、脱気装置535を設けない場合の例について説明したが、タンク装置501と同様に脱気装置535を設けてもよく、その場合は、それぞれの効果が得られてより適正な分散を実現する。また、図19で説明した減圧機構562を追加してもよく、その場合は、減圧機構562の効果が得られてより適正な分散を実現する。
【0165】
タンク装置571は、タンク装置501内の混合物4を攪拌する攪拌機572を有している。水平面内において、スクリュー式粉体供給装置573は、タンク本体541の中心部付近に取り付けられており、攪拌機572は中心から偏倚した位置に取り付けられている。粉体供給部先端574は、攪拌機572の攪拌部分(攪拌羽根575)の位置と比較してタンク本体541の排出口541bに近接する位置に配置されている。
【0166】
タンク装置571は、スクリューフィーダとその導入管の先端を液中に浸す際に、タンクの排出口に近づけることにより、循環する流れによって粉体原料が液体中に混ぜ込まれ、粘度が高い液体の場合も、粉体が液表面近くで漂うことや、凝集することを防ぎ、液体中に分散することができる。
【0167】
また、粉体供給部先端574に、スクリュー先端羽根576が設けられる。スクリュー先端羽根576は、スクリュー式粉体供給装置573のスクリュー544の軸544aと一体に回転される。
【0168】
タンク装置571では、スクリュー544や電動機ユニット545などをタンク中心に設置し、スクリュー544及び導入管546の先端(粉体供給部先端574)をタンクの排出口541bの近傍に設置している。タンク内の液体は排出口541bから強制的に流れ出るため、スクリュー544から液中に供給された粉体は液体の流れに巻き込まれ、液体とともに配管403を経て分散装置421に搬送される。特に粉体の比重が液体の比重よりも軽い場合、浮力によって液中を上昇し、液中に分散されないまま液面に暴露しタンク内の空間に拡散しやすいという問題が発生しやすいが、タンク装置571は、この問題を防止するという効果がある。攪拌羽根575は、プロペラ状、又はタービン状のものが用いられ、タンクの中心からずらして設置・駆動することで、攪拌羽根575の攪拌作用によって液体を対流させ、粉体の偏析などを防止できる。
【0169】
また、スクリュー先端羽根576は、図21に示すように、スクリュー544の軸544aに取り付けるための軸取付部576aと、軸取付部576aより外周側に設けられる羽根取付部576bと、羽根取付部576bの外面全周にわたり複数設けられる羽根部576cと、羽根取付部576b及び軸取付部576aを接続する接続部576dとを備える。尚接続部576dは、水平状態に対して傾斜した状態とされている。
【0170】
以上のような形状とされたスクリュー先端羽根576は、羽根取付部576b及び軸取付部576aを接続部576dで接続する構造とすることで、内部に大きく空間Sを取っているため粉体の流れを妨げないとともに次の効果を得る。すなわち、スクリュー先端羽根576は、内部の構成部材である接続部576dに傾斜が付いているため、回転によって攪拌機能と共に排出口541bに向かう流れを発生させる機能を有する。
【0171】
また、周囲の構成部材である羽根取付部576b及び羽根部576cは、傾斜が付いた多数の溝を有することとなり、回転によって排出口541bに向かう流れを発生させる機能を有する。従って、スクリュー先端羽根576は、粉体を液に分散するだけでなく、排出口に向かう流れを発生させるため、粉体の浮力による上昇の抑制を促進することができる。
【0172】
スクリュー先端羽根576を有するタンク装置571は、スクリューから液中に供給された粉体が凝集し、タンクから排出された後、途中の配管内で詰まることや、ポンプや分散機が過負荷となることを防ぐことができる。
【0173】
また、このタンク装置571を循環式分散システム500に用いた場合には、貯蔵タンクで処理された液体を排出したあと、再びタンクに戻して繰り返し処理を行う循環式の分散システムとなり、スクリュー544とその導入管546を排出口541bの近傍に設置することにより、液体の排出流れによって粉体を混ぜ込みながら処理をするので、効率的な分散処理を実現する。
【0174】
以上のように図19及び図20に示すタンク装置561,571は、上述の特有の構成により特有の効果を得るのみならず、タンク装置501と同様に、スクリュー式粉体供給装置531,571及び攪拌機533,572を有することにより、タンク内面に粉体原料が付着することや、タンク内に粉体原料を飛散させることを防止し、粉体が液面に漂うことや凝集したりすることを防止し、適切で効率的な分散処理を実現する。さらに、タンク装置561,571は、上述したタンク装置501で説明した構成と同様の構成を持つ場合には、その構成による効果も同様に享受しうる。
【0175】
さらに、タンク装置561,571を用いた循環式分散システム500は、上述のタンク装置561,571自体の作用効果に加えて液中への空気の混入を最小限に抑え、微粉の場合でも供給速度を上げて連続的に供給することを可能として、適切な分散を実現する。
【0176】
以上のように、図16〜図21を用いて循環式分散システム500に用いうるタンク装置501,561,571について説明したが、これらは、循環式分散システム500に用いられてその機能を最大限発揮するものではあるが、単体でもその分散機能を有するものである。
【0177】
すなわち、図22のようなタンク装置581のように構成してもよい。尚、このタンク装置581は、循環用の構成(導入管553,排出口541b)を有さないことを除いて、図17のタンク装置501と同様であるので、共通部分については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0178】
タンク装置581は、図22に示すように、スクリュー式粉体供給装置531、攪拌機533、攪拌羽根534、ホッパ543、スクリュー544、電動機ユニット545、導入管546、電動機ユニット548、スクレーパ551等を有する。尚、タンク装置581は、脱気装置535、減圧ポンプ536を設けない場合の例について説明したが、タンク装置501と同様に脱気装置535、減圧ポンプ536を設けてもよく、その場合は、これらによる効果が得られてより適正な分散を実現する。
【0179】
タンク装置581は、スクリュー式粉体供給装置531及び攪拌機533を有することにより、タンク内面に粉体原料が付着することや、タンク内に粉体原料を飛散させることを防止し、粉体が液面に漂うことや凝集したりすることを防止し、適切で効率的な分散処理を実現する。尚、ここでは、タンク装置501を単体で用いるようにした変形例としてタンク装置581について説明したが、タンク装置561,571も同様に単体で用いても同様の効果が得られる。
【0180】
次に、タンク装置501,561,571,581を用いた分散方法について説明する。当該分散方法は、スラリー状又は液体状の処理原料をタンク装置501,561,571,581(以下「タンク装置501等」という。)のタンク本体541に貯蔵するとともに該処理原料に混合する粉状の添加物を供給して分散する。ここで、タンク本体541に一体となるように設けられるスクリュー式粉体供給装置531,573の粉体供給部先端532,574がタンク本体内の混合物中に挿入された状態で、タンク本体内の処理原料に前記添加物を供給して分散する点に特徴を有する。
【0181】
また、タンク装置501,561,571を用いた循環式分散システム500を用いた分散方法は、循環ポンプ402により、タンク装置501,561,571や、分散装置421等や、配管403内を混合物を循環させながら分散させるものであり、タンク本体541に一体となるように設けられるスクリュー式粉体供給装置531,573の粉体供給部先端532,574がタンク本体内の混合物中に挿入された状態で、タンク本体内の処理原料に前記添加物を供給して分散する点に特徴を有する。
【0182】
また、上述したこれらの当該分散方法において、添加物を供給して分散する際に、タンク装置501等に設けた攪拌機533により、タンク本体内の処理原料及び添加物からなる混合物を攪拌するとともに、攪拌機の攪拌羽根534が粉体供給部先端からタンク本体内の処理原料液中に供給された添加物粉体を掻き出しながら分散する点にも特徴を有する。
【0183】
また、当該分散方法において、添加物を供給する際に、タンク装置に設けた脱気装置535により、粉体に含まれる空気を脱気する点にも特徴を有する。
【0184】
また、当該分散方法において、添加物を供給して分散する際に、タンク装置に設けた攪拌機572により、タンク本体内の処理原料及び添加物からなる混合物を攪拌し、粉体供給部先端574は、攪拌機572と比較してタンク本体の排出口に近接する位置に配置されている点にも特徴を有する。
【0185】
また、当該分散方法において、添加物を供給して分散する際に、粉体供給部先端574に設けられるとともに、スクリュー式粉体供給装置573のスクリューの軸544aと一体に回転されるスクリュー先端羽根574により混合物を攪拌しながら分散する点にも特徴を有する。
【0186】
また、当該分散方法において、添加物を供給して分散する際に、タンク装置に設けた減圧ポンプ536により、タンク本体内部を減圧しながら分散する点にも特徴を有する。
【0187】
以上のような分散方法や、タンク装置501,561、571,581や、循環式分散システム500によれば、タンク内面に粉体原料が付着することや、タンク内に粉体原料を飛散させることを防止し、粉体が液面に漂うことや凝集したりすることを防止し、適切で効率的な分散処理を実現する。
【符号の説明】
【0188】
1 分散装置
2 ローター
3 ステータ
4 混合物
5,6 第1、第2ギャップ部
8 バッファ部
10 壁部
420 駆動機構
531 スクリュー式粉体供給装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー状又は液体状の混合物内の物質を分散させる剪断式分散装置、循環式分散システム及び循環式分散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速回転するローターと、回転しないステータとの間の狭い空間に、複数の液体又はスラリーを通過させ、高速回転によって発生する高い剪断力によって、複数の液体又はスラリー中の粉末状の物質を連続的に分散する装置が知られている(例えば、特許文献1)。なお、「分散」とは、スラリー中の粉末状の物質を均一に分散すること、あるいは、複数の液体を均一に混合することを意味するものとする。特許文献1等に記載された分散装置は、ローターとステータとがフラットな対向面を有し、この面の間で剪断力を発生させこの剪断力により分散を行うものである。
【0003】
しかしながら、この分散装置においては、ローターとステータとの隙間を原料が短時間で通過するため、1回の通過で目的の分散状態に達しない場合には、分散装置から排出された原料をポンプ等で再び分散装置に戻して循環処理をするか、複数台の分散装置を直列に接続して複数段階の分散処理を行う必要があるという問題があった。
【0004】
また、分散が必要な粗大な粒子(凝集物)がなくなる時間を基準に処理時間を設定すると、分散の必要がない微小な粒子に、余分な剪断エネルギーが加えられ、効率的で適切な分散処理を行うことができないという問題があった。尚、ここでは、固体粒子(粉末状の物質)が小さな粒状になったもの、これらが集まって凝集物を形成したものを、同じように粒子と呼ぶこととする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−153167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、さらに効率的で適切な分散処理を可能とする剪断式分散装置及び循環式分散システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る剪断式分散装置は、ローターと、該ローターに対向して配置される対向部材とを備え、前記ローター及び前記対向部材の間に、スラリー状又は液体状の混合物を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる剪断式分散装置において、前記ローター及び前記対向部材の間に形成され、前記混合物を外周方向に導く複数のギャップ部と、最外周側のギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、前記混合物を滞留させるバッファ部とを備え、前記バッファ部は、該バッファ部を形成する外周側の壁部が前記ローターに設けられるように形成される。
また、本発明に係る循環式分散システムは、上述の剪断式分散装置と、前記剪断式分散装置の出口側に接続されるタンクと、前記混合物を循環させる循環ポンプと、前記剪断式分散装置、前記タンク及び前記循環ポンプを直列的に接続する配管とを備え、前記混合物を循環させながら分散させる。
また、本発明に係る循環式分散方法は、剪断式分散装置と、前記剪断式分散装置の出口側に接続されるタンクと、前記混合物を循環させる循環ポンプと、前記剪断式分散装置、前記タンク及び前記循環ポンプを直列的に接続する配管とを備える循環式分散システムを用いて、前記混合物を循環させながら分散させる循環式分散方法において、前記剪断式分散装置は、ローターと、該ローターに対向して配置される対向部材とを備え、前記ローター及び前記対向部材の間に、スラリー状又は液体状の混合物を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させるとともに、さらに、前記ローター及び前記対向部材の間に形成され、前記混合物を外周方向に導く複数のギャップ部と、最外周側のギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、前記混合物を滞留させるバッファ部とを備え、前記バッファ部は、該バッファ部を形成する外周側の壁部が前記ローターに設けられるように形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、複数のギャップ部を通過する際の混合物に発生する剪断力による局所的な分散作用と、混合物が滞留され平均化されることによる分散作用とを発揮させるとともに、最外周側のギャップ部に接続されるバッファ部に滞留する混合物に発生する遠心力により、バッファ部の外周側のローターの壁部側にこの混合物が擦り付けられることで当該部分においても分散作用を発揮でき、より効率的で適切な分散処理機能を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用した剪断式分散装置の概略断面図である。
【図2】剪断式分散装置の他の例を示す概略断面図である。
【図3】剪断式分散装置のさらに他の例を示す概略断面図である。
【図4】図1の剪断式分散装置の変形例を示す概略断面図である。
【図5】図2の剪断式分散装置の変形例を示す概略断面図である。
【図6】図2の剪断式分散装置のステータをローターに変形した剪断式分散装置のさらに具体的な構成を示す断面図である。
【図7】図5の剪断式分散装置のステータをローターに変形した剪断式分散装置の回転軸を水平として配置した例における具体的な構成を示す断面図である。
【図8】本発明を適用した循環式分散システムの構成を示す概要図である。
【図9】本発明の剪断式分散装置と比較する比較例を示すものであり、フラットローター方式の分散装置の概略断面図である。
【図10】実験例と比較例の分散装置による処理時間に対するメディアン径の変化を示す図である。
【図11】本発明を適用した循環式分散システムの他の例を説明するための図であり、ローター及び対向部材の対向間隔を調整する機構を有する分散装置を備えた例の構成を示す概要図である。
【図12】図11の循環式分散システム等のより具体的な構成例を示す斜視図である。
【図13】図11の循環式分散システム等により行う薄練・濃縮方式の利点を固練り・希釈方式と比べて説明するための図であり、固練り・希釈方式における処理時間と粘度及び濃度の関係を示す図である。
【図14】薄練・濃縮方式における処理時間と粘度及び濃度の関係を示す図である。
【図15】図11の循環式分散システムにより2段階混合処理を連続的に行う場合の処理時間と、濃度、圧力及び対向間隔との関係の一例を示す図である。
【図16】本発明を適用した循環式分散システムの更に他の例を説明するための図であり、特徴的なスクリュー式粉体供給装置を有するタンク装置を備えた例の構成を示す概要図である。
【図17】図16に示す循環式分散システムを構成するタンク装置の構成を示す概略断面図である。
【図18】図17に示すタンク装置を構成する攪拌羽根の斜視図である。
【図19】図16に示す循環式分散システムを構成するタンク装置の他の例を示す図であり、減圧機構を有する例の概略断面図である。
【図20】図16に示す循環式分散システムを構成するタンク装置の更に他の例を示す図であり、スクリュー式粉体供給装置及び攪拌機の位置を変更した例の概略断面図である。
【図21】図20に示すタンク装置を構成するスクリュー先端羽根の斜視図である。
【図22】図16に示すタンク装置の変形例であり、単体として用いられる例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した剪断式分散装置について、図面を参照して説明する。以下で説明する剪断式分散装置は、スラリー状の混合物を循環させながら分散(「固−液分散」又は「スラリー化」ともいう)させ、又は液体状の混合物を循環させながら分散(「液−液分散」又は「乳化」ともいう)させたりするものである。また、分散とは、該混合物内の物質を分散させること、すなわち、該混合物内の各物質が均一に存在するように混ぜることを意味する。
【0011】
まず、図1に示す本発明を適用した剪断式分散装置(以下、「分散装置」という。)1について説明する。分散装置1は、ローター2と、該ローター2に対向して配置される対向部材であるステータ3とを備え、ローター2及び対向部材(ステータ3)の間に、スラリー状又は液体状の混合物4を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる。
【0012】
また、分散装置1は、複数のギャップ部として第1ギャップ部5及び第2ギャップ部6と、バッファ部8とを備える。複数のギャップ部(第1及び第2ギャップ部5,6)は、ローター2及びステータ3の間に形成され、軸中心位置に供給される混合物4を外周方向に導く。換言するとこの複数のギャップ部は、対向配置されるローター及び対向部材のそれぞれの対向する面の間に形成され、混合物を中心側から外周側に放射状に導く隙間である。第1ギャップ部5は、外周側に設けられ、第2ギャップ部6は、回転中心側に設けられる。また、この複数のギャップ部は、バッファ部8等を形成するために軸方向の位置を変えて形成され、ローター2及びステータ3のそれぞれに設けられた対向する面の間に設けられる、バッファ部8は、最外周側のギャップ部(第1ギャップ部5)とこの内周側に位置するギャップ部(第2ギャップ部6)とを接続するように設けられ、混合物4を滞留させる。このバッファ部8を形成する外周側の壁部10は、ローター2に設けられる。
【0013】
このローター2に設けられるバッファ部8を形成する外周側の壁部10は、対向部材(ステータ3)側の端部10aにおいて回転中心側に延伸する張出部11を有している。また、ローター2は、第1及び第2ギャップ部5,6を形成するための、平坦なギャップ形成面12,13を有している。具体的にローター2は、回転軸28に一体に取り付けられるローター本体14と、このローター本体14の外周からステータ3側に立ち上げられる壁部10とを有する。ローター本体14は、円板状に形成され、回転軸28に取り付けるための取付部14aを有している。このローター本体14の内周と、回転軸28の外周には、例えば固定用のネジ部が形成される。ローター本体14のステータ3側の内面の内周には、第2ギャップ部6を形成するギャップ形成面13が設けられ、このギャップ形成面13の外側がバッファ部8の上方側を形成するバッファ形成面15として機能する。バッファ形成面15は、ここでは、ギャップ形成面13と同一平面上に設けられている。壁部10の内側は、バッファ部8の外周側を形成するバッファ形成面16として機能する。壁部10に連続的に設けられた張出部11のステータ3側には、第1ギャップ部5を形成するギャップ形成面12が設けられ、張出部11の反対側(上側)には、バッファ部8の下方側を形成するバッファ形成面17が設けられる。
【0014】
ステータ3は、第1及び第2ギャップ部5,6を形成するための、平坦なギャップ形成面22,23を有している。具体的には、ステータ3は、軸状部材29に一体に取り付けられ、円板状のステータ本体21と、このステータ本体21の内周部分において、ローター2側に立ち上げられる立ち上がり壁部24とを有する。立ち上がり壁部24の内周と、軸状部材29の外周には、例えば固定用のネジが形成される。立ち上がり壁部24のローター2側の内面には、第2ギャップ部6を形成するギャップ形成面23が設けられる。立ち上がり壁部24の外側は、バッファ部8の内周側を形成するバッファ形成面25として機能する。ステータ本体21の外周部分のローター2側の内面には、第1ギャップ部5を形成するギャップ形成面22が設けられる。
【0015】
複数のギャップ部は、外周側に位置するギャップ部が、内周側に位置するギャップ部より隙間が狭くなる関係を有している。すなわち、第1ギャップ部5が、第2ギャップ部6より隙間が狭くなるように、各ギャップ形成面12,13,22,23が形成されている。また、これらの第1,第2ギャップ部5,6は、それぞれ2mm以下の隙間(0.01mm〜2.00mm)を有してローター2及びステータ3の間に形成されている。
【0016】
ローター2及び対向部材(ステータ3)は、ローター2の回転軸が鉛直方向に平行であるように配置され、対向部材(ステータ3)が下方側に位置している。このような分散装置1は、分散処理終了後、装置内(特にバッファ部8)に残った混合物を、装置を分解することなく排出させることができ、分散処理の歩留まりを向上させることができる。
【0017】
対向部材(ステータ3)は、第1,第2ギャップ部5,6を形成する部分が、外周に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。同様に、ローター3も、第1、第2ギャップ部5,6を形成する部分が、外周に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。すなわち、各ギャップ形成面12,13,22,23並びに第1及び第2ギャップ部5,6が外側に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。また、張出部11は、その上面が内側に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。このような構成とされた分散装置1は、分散処理終了後、装置内に残った混合物を、装置を分解することなく排出させることができ、分散処理の歩留まりを向上させることができる。特に粘度が高いスラリー状の混合物の場合に有効である。
【0018】
また、ステータ3における軸状部材29には、混合物4が供給される供給口29aが設けられている。具体的に軸状部材29は、円筒状(パイプ状)に形成され、その内側を通って混合物4が供給される。一方で、ローター2の回転軸28は、円筒状(パイプ状)に形成され、その先端に閉塞部28aが形成されている。尚、これに限られるものではなく、ローター2及び対向部材(ステータ3)のいずれか一方又は両方に、(ローター2の)回転中心位置から混合物4が供給される供給口が設けられていればよい。両方に供給口を設け、種類の異なる物質を供給して当該装置内で混合分散させるようにしてもよい。ただし、固形分濃度が高い(以下「高濃度」ともいう。)スラリー状の混合物を処理する際に、シール部材の耐久性が低い場合には、図1を用いて説明したように、ステータ3の中心位置に設けた供給口29aから混合物を供給する構成が有利である。すなわち、この供給口29aから混合物4を供給するために、軸状部材29にはホース等の混合物供給管が接続されることとなる。例えば、供給口をローター側に設けた場合には、この混合物供給管を接続するための継ぎ手(回転継手)が必要となる。この回転継手を接続するときのシール部材が高濃度のスラリー混合物の場合に劣化しやすい場合があり、シール面の機能が損なわれることで漏れを発生させる可能性がある。このように、ステータ3側に供給口29aを設けることにより、回転継手を設ける必要もなく、さらにこのような漏れ等の問題が発生することを防止できるという効果がある、
【0019】
以上のような分散装置1の分散プロセスについて説明する。まず、供給口29aから供給された混合物は、第2のギャップ部6を通過する際に粗大な粒子の凝集物が分解される。第2のギャップ部6を通過した混合物は、バッファ部8に流入され遠心力で壁部10側に押し付けられるようにして滞留される。バッファ部8に滞留している混合物の中で粗大で質量の大きな粒子は、遠心力によって選択的に壁部10のバッファ形成面16に押し付けられながら、ローター2の一部である壁部10が回転されることで、こすられることによって、凝集物の分解、分散が行われる。小さな粒子は、バッファ部8から排出される流れに乗って第1のギャップ部5側に導かれる。第1のギャップ部5は、第2のギャップ部6よりも隙間が狭くなっているため、更に細かく分散される。
【0020】
バッファ部8において、粒子の分散をより効率的に制御するには、ローター2の回転数の制御によって遠心力を変えたり、混合物の流入量を調整することで可能である。例えば、分散を抑制するには、ローター2の回転数を下げて遠心力及び剪断力を減少させる。あるいは、混合物の流入量を増加させると、第2のギャップ部6からバッファ部8には混合物が高速且つ大量に流入するため、先にバッファ部8に流入して滞留している混合物と激しく混ざり合うとともに、混合物の滞留時間が減少するため、遠心力による粗大粒子のバッファ部8の外周壁面(壁部10)への移動効果を抑制することができる。尚、混合物の滞留時間の減少は、粒子が剪断エネルギーを受ける時間の減少でもあり、同じく分散の抑制効果がある。逆に、分散を促進するには、ローター2の回転数を上げて遠心力及び剪断力を増大させる。あるいは、混合物の供給量(ポンプ排出量)を減らして装置内部への混合物流入量を制限し、遠心力による効果を高めたり、粒子が剪断エネルギーを受ける時間を増大させればよい。
【0021】
本発明を適用した分散装置1は、第1、第2のギャップ部5,6を通過する際の混合物4に発生する剪断力による局所的な分散作用と、バッファ部8で混合物4が滞留され平均化されることによる分散作用とを発揮させる。それとともに、分散装置1は、外周側のギャップ部である第1ギャップ部5に接続されるバッファ部8に滞留する混合物に発生する遠心力により、バッファ部8の外周側のローター2の壁部10側にこの混合物4が押し付けられ擦り付けられることで当該部分においても分散作用を発揮できる。このように、分散装置1は、より効率的で適切な分散処理機能を実現する。
【0022】
また、図1に示す分散装置1では、後述の図2及び図3に示す分散装置に比べて、ローター回転が停止したときに原料が残留するバッファ部を有しておらず、且つ第1及び第2ギャップ部5,6には重力で混合物が装置外部に流れ落ちるような傾斜が設けられているので、運転終了時に原料を装置外部に排出でき、歩留まりを向上できる。
【0023】
また、図1に示す分散装置1は、以下のような効果がある。回転する中空軸の内部から混合物を供給するためには、後述の図6及び図7に示すような回転軸継手(ロータリージョイント)のように、固定部と回転軸を結合する継ぎ手が必要となる。液体原料同士の混合分散であれば問題となりにくいが、液体原料と固体原料(粉末)を混合・分散するスラリー状混合物の場合には、回転軸継手の軸封部の耐久性が問題となる。この場合、原料を供給する側の中空軸を回転させず、ステータとして使用することが好ましい。ところでステータには遠心力が発生しないため、ステータ側にバッファ部を設ける場合、換言するとバッファ部の外周側の壁部がステータにあるような場合は、バッファ部の剪断機能が発揮できないことを意味する。したがって、図1に示す分散装置1は、バッファ部8がローター2側に設けられ、すなわちバッファ部8を形成する外周側の壁部10がローター2側に設けられ、下方側で混合物供給口29aがある側をステータ3とすることで上述した様々な効果を兼ね備えて得ることができる。
【0024】
なお、上述では、ローター2の回転軸が鉛直方向に平行になるように配置したが、これに限られるものではなく、ローター2及び対向部材(ステータ3)が、ローター2の回転軸が水平方向に平行になるように配置するように構成してもよい。水平方向の場合は、装置を設置する環境において鉛直は位置が困難である場合には、それを解消できる。ただし、図1に示すような鉛直配置とした方が、上述したように、分散処理終了後に混合物を排出する機能を有しているため、歩留まりの観点では有利である。
【0025】
さらに、上述では、ローター2及びステータ3の組み合わせとしたが、一対のローターからなるように構成しても良い。すなわち、ローター2に対向する対向部材が、ローター2の回転軸と平行な回転軸を有するとともに、ローター2の回転方向とは反対方向に回転される第2のローターであるように構成してもよい。一対のローターの場合は、反対方向に回転させるものの相対的な回転によりギャップ部で剪断力を発揮できる。ただし、ローター2及びステータ3の組み合わせの方が、上述したように高濃度スラリー状の混合物には、回転軸継手の軸封部に悪影響を与えるおそれがないという点で有利である。
【0026】
また、ローター2及び対向部材(ステータ3)の構成は、図1に限られるものではない。すなわち、上述では、2個のギャップ部と1個のバッファ部を有する例について説明したが、後述の図2に示すように、バッファ部を追加して、3個のギャップ部と2個のバッファ部を有するように構成しても良い。
【0027】
次に、図2に示す本発明を適用した剪断式分散装置(以下、「分散装置」という。)31について説明する。分散装置31は、ローター32と、該ローター32に対向して配置される対向部材であるステータ33とを備え、ローター32及び対向部材(ステータ33)の間に、スラリー状又は液体状の混合物4を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる。
【0028】
また、分散装置31は、複数のギャップ部として第1ギャップ部35、第2ギャップ部36及び第3ギャップ部37と、第1バッファ部38及び第2バッファ部39とを備える。複数のギャップ部(第1〜第3ギャップ部35,36,37)は、ローター32及びステータ33の間に形成され、混合物4を外周方向に導く。第1ギャップ部35は、外周側に設けられ、第3ギャップ部37は、回転中心側に設けられ、第2ギャップ部36は、中間に設けられる。第1バッファ部38は、最外周側のギャップ部(第1ギャップ部35)とこの内周側に位置するギャップ部(第2ギャップ部36)とを接続するように設けられ、混合物4を滞留させる。この第1バッファ部38を形成する外周側の壁部40は、ローター32に設けられる。
【0029】
図2に示す分散装置31では、第2バッファ部39が設けられ、この第2バッファ部39は、最外周側のギャップ部(第1ギャップ部35)の内周側に位置するギャップ部(第2ギャップ部36)とこの内周側に位置するギャップ部(第3ギャップ部37)とを接続するように設けられ、混合物4を滞留させる。この第2バッファ部39は、平均化作用を増加させる機能を有しており、分散処理効果を高めることができる。さらに、この分散装置31においても、対向部材(ステータ33)をローターに変更してもよく、その場合には、この第2バッファ部39との相乗効果を発揮できる。すなわち、対向部材であるステータ33を回転して「ローター」として構成した場合には、第2バッファ部39においても、上述したバッファ部8やバッファ部38と同様の壁面押し付け力による剪断力を発揮して分散機能を向上させることができる。
【0030】
ローター32に設けられる第1バッファ部38を形成する外周側の壁部40は、対向部材(ステータ33)側の端部において回転中心側に延伸する張出部41を有している。また、ローター32は、第1〜第3ギャップ部35,36,37を形成するための、平坦なギャップ形成面42,43,44を有している。具体的に説明すると、ローター32は、回転軸68に一体に取り付けられ円板状のローター本体45と、このローター本体45の外周からステータ33側に立ち上げられる壁部40と、内周側に立ち上げられる立ち上がり壁部46を有する。立ち上がり壁部46の外周側は、第2バッファ部39の内周側を形成するバッファ形成面63として機能する。立ち上がり壁部46のステータ33側の面には、ギャップ形成面44が設けられ、ローター本体45のステータ33側には、ギャップ形成面43が設けられ、このギャップ形成面43の外側が第1バッファ部38の上方側を形成するバッファ形成面47として機能する。壁部40の内側は、第1バッファ部38の外周側を形成するバッファ形成面48として機能する。壁部40に連続的に設けられた張出部41のステータ33側には、第1ギャップ部35を形成するギャップ形成面42が設けられ、張出部41の反対側(上側)には、第1バッファ部38の下方側を形成するバッファ形成面49が設けられる。
【0031】
ステータ33は、第1〜第3ギャップ部35,36,37を形成するための、平坦なギャップ形成面52,53,54を有している。具体的には、ステータ33は、軸状部材69に一体に取り付けられる円板状のステータ本体51と、このステータ本体51の内周部分において、ローター32側に立ち上げられる立ち上がり段部55と、この立ち上がり段部55の外周側でさらに立ち上げられる壁部56とを有する。この壁部56は、第2バッファ部39を形成する外周側の壁部であり、ローター32側の端部において回転中心側に延伸する張出部57を有している。立ち上がり段部55の内面には、ギャップ形成面54が設けられ、このギャップ形成面54の外側が第2バッファ部39の下方側を形成するバッファ形成面58として機能する。壁部56の内側は、第2バッファ部39の外周側を形成するバッファ形成面59として機能する。張出部57のローター32側には、ギャップ形成面53が設けられ、張出部57の反対側(下側)には、第2バッファ部39の上方側を形成するバッファ形成面60が設けられる。壁部56の外側は、第1バッファ部38の内周側を形成するバッファ形成面61として機能する。ステータ本体51の外周部分のローター32側の内面には、ギャップ形成面52が設けられる。ところで、ローター32やステータ33に設けられる張出部41,57は、バッファ部に流入した混合物を回りこませて各ギャップ部(ここでは、第1、第2ギャップ部35,36)の長さを大きくして局所的剪断力を増加させる機能を有している。尚、この点は、図1の張出部11も同様である。
【0032】
複数のギャップ部は、外周側に位置するギャップ部が、内周側に位置するギャップ部より隙間が狭くなる関係を有している。すなわち、第1ギャップ部35が、第2ギャップ部36より隙間が狭くなり、且つ第2ギャップ部36が、第3ギャップ部37より狭くなるように、各ギャップ形成面42,43,44,52,53,54が形成されている。また、これらの第1,第2,第3ギャップ部35,36,37は、それぞれ2mm以下の隙間を有してローター32及びステータ33の間に形成されている。この関係の効果は後述するが、各ギャップ部の隙間を同じ距離にしてもよく、本発明のその他の効果は得られる。
【0033】
例えば、分散装置31において、ローター32及びステータ33の外形は200mmの場合に、図中に示す高さh1,h2,h3は、55mm,16mm,39.5mmとしたときに、第1ギャップ部35の隙間が0.5mmであり、第2ギャップ部36の隙間が1.0mmであり、第3ギャップ部37の隙間が1.5mmである。外周に向かうにつれて段階的に小さくなっている。回転数は、インバータ制御により0〜3600rpm程度の間で設定できるようにされているが、電動機、プーリー、ギアなどの選定によって適宜変更することができる。
【0034】
また、図2においては、混合物の流れが矢印で示されている。便宜上、一つの流れしか示していないが、実際には、ローター31及びステータ32によって構成される空間の至るところで同様の流れが発生している。ローター31が回転している状態で、回転軸68に回転継手の混合物供給口より、重力、ポンプ等の手段により混合物を供給すると、該混合物4は、第3ギャップ部37、第2バッファ部39、第2ギャップ部36、第1バッファ部38、第1ギャップ部35の順に、遠心力の方向に沿って通過して、ローター31及びステータ32の外周の混合物排出部35aから排出される。この混合物排出部35aは、第1ギャップ部35の外周端部である。このように、第1〜第3ギャップ部35,36,37と、第1及び第2バッファ部38,39は、ローター及び対向部材の間に形成され、混合物を外周方向に導く複数のギャップ部と、最外周側のギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、混合物を滞留させるバッファ部と、を構成し、それぞれ局所的剪断作用による分散機能と、平均化作用による分散機能とを有する。また、この構成を換言すると、ローターと対向部材との間に混合物が中心側から外周側に通過する空間が形成され、この空間は、2mm以下の狭い空間(ギャップ部に相当)と、これより大きな広い空間(バッファ部に相当)とがそれぞれ1段以上で且つ交互に配列されており、この狭い空間で局所的剪断作用を付与し、広い空間で滞留平均化作用を付与している。尚、この混合物の流れや、各ギャップ部や各バッファ部の機能は、図1や後述の図3〜図7の分散装置においても同様である。
【0035】
ローター32及び対向部材(ステータ33)は、ローター32の回転軸が鉛直方向に平行であるように配置され、対向部材(ステータ33)が下方側に位置している。分散装置31は、分散処理終了後、容積の大きな第1バッファ部38に残った混合物を、装置を分解することなく排出させることができ、分散処理の歩留まりを向上させることができる。
【0036】
対向部材(ステータ33)は、第1〜第3ギャップ部35,36,37を形成する部分が、水平となるように形成されているが、図1を用いて説明した例と同様に、外周に向かうにつれて下方に傾斜するように形成してもよい。図1と同様に構成した場合には、処理終了後の混合物を排出でき、歩留まりを向上する効果が得られる。
【0037】
また、ローター32の回転軸68には、混合物4が供給される供給口68aが設けられている。具体的に回転軸68は、円筒状に形成され、その内側を通って混合物4が供給される。一方で、ステータ33の軸状部材69は、円筒状に形成され、その先端に閉塞部69aが形成されている。尚、これに限られるものではなく、ローター32及び対向部材(ステータ33)のいずれか一方又は両方に、(ローター32の)回転中心位置から混合物4が供給される供給口が設けられていればよい。ただし、固形分濃度が高いスラリー状の混合物等のシール部材の耐久性が低い場合には、図1を用いて説明したように、ステータ33の中心位置に設けた供給口から混合物を供給するように構成したほうが有利である。
【0038】
以上のような分散装置31の分散プロセスについて説明する。まず、供給口68aから供給された混合物は、1段目のギャップ部として第3のギャップ部37を通過する際に粗大な粒子の凝集物が分解される。第3のギャップ部37を通過した混合物は、1段目のバッファ部として第2バッファ部39に流入され遠心力で壁部56側に押し付けられるようにして滞留される。続いて、混合物は、2段目のギャップ部として第2のギャップ部36を通過するが、この際にも粒子の凝集物が分解される。第2のギャップ部36は、第3のギャップ部37よりも隙間が狭くなっているため、細かく分散させる。第2のギャップ部36を通過した混合物は、2段目のバッファ部として第1バッファ部38に流入され遠心力で壁部40側に押し付けられるようにして滞留される。第1バッファ部38に滞留している混合物の中で粗大で質量の大きな粒子は、遠心力によって選択的に壁部40のバッファ形成面48に押し付けられながら、ローター32の一部である壁部40が回転されることで、こすられることによって、凝集物の分解、分散が行われる。小さな粒子は、3段目のギャップ部として第1バッファ部38から排出される流れに乗って第1のギャップ部35側に導かれる。第1のギャップ部35は、第2のギャップ部36よりも隙間が狭くなっているため、更に細かく分散される。
【0039】
バッファ部において、粒子の分散をより効率的に制御するには、ローター32の回転数の制御によって遠心力を変え、混合物の流入量を調整することで可能である。例えば、分散を抑制するには、ローター32の回転数を下げて遠心力及び剪断力を減少させる。あるいは、混合物の流入量を増加させると、第3のギャップ部37から第2バッファ部39、或いは第2のギャップ部36から第1バッファ部38には混合物が高速且つ大量に流入するため、先にバッファ部38、39に流入して滞留している混合物と激しく混ざり合うとともに、混合物の滞留時間が減少するため、遠心力による粗大粒子のバッファ部38,39の外周壁面(壁部40,56)への移動効果を抑制することができる。尚、混合物の滞留時間の減少は、粒子が剪断エネルギーを受ける時間の減少でもあり、同じく分散の抑制効果がある。逆に、分散を促進するには、ローター32の回転数を上げて遠心力及び剪断力を増大させる。あるいは、混合物の供給量(ポンプ排出量)を減らして装置内部への混合物流入量を制限し、遠心力による効果を高めればよく、又は粒子が剪断エネルギーを受ける時間を増大させればよい。
【0040】
本発明を適用した分散装置31は、第1〜第3のギャップ部35,36,37を通過する際の混合物4に発生する剪断力による局所的な分散作用と、第1及び第2バッファ部38,39で混合物4が滞留され平均化されることによる分散作用とを発揮させる。それとともに、分散装置31は、外周側のギャップ部である第1ギャップ部35に接続される第1バッファ部38に滞留する混合物に発生する遠心力により、バッファ部38の外周側のローター32の壁部40側にこの混合物4が押し付けられ擦り付けられることで当該部分においても分散作用を発揮できる。このように、分散装置31は、より効率的で適切な分散処理機能を実現する。
【0041】
また、この分散装置31は、ギャップ部を3つ有し、バッファ部を2つ有していることから、局所的剪断分散作用と、平均化分散作用の観点で、より効率的な分散処理を実現可能である。
【0042】
なお、上述では、ローター32の回転軸が鉛直方向に平行になるように配置したが、これに限られるものではなく、ローター32及び対向部材(ステータ33)が、ローター32の回転軸が水平方向に平行になるように配置するように構成してもよい。
【0043】
さらに、上述では、ローター32及びステータ33の組み合わせとしたが、一対のローターからなるように構成しても良い。すなわち、ローター32に対向する対向部材が、ローター32の回転軸と平行な回転軸を有するとともに、ローター32の回転方向とは反対方向に回転される第2のローターであるように構成してもよい。図2を一対のローターに変更する場合は、反対方向に回転させるものの相対的な回転によりギャップ部で剪断力を発揮できるとともに、第2のバッファ部39を形成する外周側の壁部56も回転させることで、混合物を壁面に押し付け擦り付けられる効果が得られ、当該部分においても分散作用を発揮できるので、より効率的で適切な分散処理機能を実現する。
【0044】
尚、バッファ部の形状は、図2に示すような矩形断面に限定されるものでなく、例えば、図3に示すように、外周側面が傾斜する形状であってもよい。この場合、製作上有利である。
【0045】
次に、図3に示す本発明を適用した剪断式分散装置(以下、「分散装置」という。)71について説明する。分散装置71は、ローター72と、該ローター72に対向して配置される対向部材であるステータ73とを備え、ローター72及び対向部材(ステータ73)の間に、スラリー状又は液体状の混合物4を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる。
【0046】
また、分散装置71は、複数のギャップ部として第1ギャップ部75、第2ギャップ部76及び第3ギャップ部77と、第1バッファ部78及び第2バッファ部79とを備える。複数のギャップ部(第1〜第3ギャップ部75,76,77)は、ローター72及びステータ73の間に形成され、混合物4を外周方向に導く。第1ギャップ部75は、外周側に設けられ、第3ギャップ部77は、回転中心側に設けられ、第2ギャップ部76は、中間に設けられる。第1バッファ部78は、最外周側のギャップ部(第1ギャップ部75)とこの内周側に位置するギャップ部(第2ギャップ部76)とを接続するように設けられ、混合物4を滞留させる。この第1バッファ部78を形成する外周側の壁部80は、ローター72に設けられる。
【0047】
図3に示す分散装置71では、第2バッファ部79が設けられ、この第2バッファ部79は、最外周側のギャップ部(第1ギャップ部75)の内周側に位置するギャップ部(第2ギャップ部76)とこの内周側に位置するギャップ部(第3ギャップ部77)とを接続するように設けられ、混合物4を滞留させる。この第2バッファ部79は、平均化作用を増加させる機能を有しており、分散処理効果を高めることができる。さらに、この分散装置71においても、対向部材(ステータ74)をローターに変更してもよく、その場合には、この第2バッファ部79と相乗効果を発揮できる。
【0048】
複数のギャップ部は、外周側に位置するギャップ部が、内周側に位置するギャップ部より隙間が狭くなる関係を有している。すなわち、第1ギャップ部75が、第2ギャップ部76より隙間が狭くなり、且つ第2ギャップ部76が、第3ギャップ部77より狭くなるように、各ギャップ形成面が形成されている。また、これらの第1,第2,第3ギャップ部75,76,77は、それぞれ2mm以下の隙間を有してローター72及びステータ73の間に形成されている。以上のような分散装置71の分散プロセスは、図2に示す分散装置61の場合と略同様であるので省略する。
【0049】
本発明を適用した分散装置71は、第1〜第3のギャップ部75,76,77を通過する際の混合物4に発生する剪断力による局所的な分散作用と、第1及び第2バッファ部78,79で混合物4が滞留され平均化されることによる分散作用とを発揮させる。それとともに、分散装置71は、外周側のギャップ部である第1ギャップ部75に接続される第1バッファ部78に滞留する混合物に発生する遠心力により、バッファ部78の外周側のローター72の壁部80側にこの混合物4が押し付けられ擦り付けられることで当該部分においても分散作用を発揮できる。このように、分散装置71は、より効率的で適切な分散処理機能を実現する。
【0050】
図1〜図3では、剪断力を発生するギャップ部は3段又は2段であり、バッファ部は、2段又は1段の構成となっているが、この段数の組み合わせに限定されるわけでなく、対象原料や目標とする分散の度合いによって任意の組み合わせとすることができる。
【0051】
また、図1〜図3を用いて説明した分散装置1,31,71において、ローター及び対向部材のいずれか一方又は両方には、ローター及び対向部材の間の混合物を冷却する冷却液が流通される冷却液流通部が設けられるように構成しても良い。すなわち、混合物は、一対のローターの間あるいはローターとステータとの間の隙間を通過する際、あるいはバッファ部で滞留している間にバッファ部の内壁とこすれ合う際に、大きな剪断力を受けて発熱するため、温度上昇によって変質する混合物を処理する等の場合に問題となる。上述の冷却液流通部を設け、すなわち、ローター、ステータをジャケット構造にして、その中を中空軸の内部、あるいは別途設けた管路から冷却液を通すことで、発生した熱を冷却することができる。
【0052】
次に、冷却液流通部を設けた例として、図1の変形例として図4に示す分散装置81と、図2の変形例として図5に示す分散装置91とについて説明する。尚、冷却液流通部を設けたことを除いて上述した図1及び図2の場合と同様であるので、同じ構成・機能を有する部分には同じ符号を付して詳細な説明は省略する(他の図も同様)。
【0053】
図4に示す分散装置81は、図1に示すローター2及びステータ3と比較して、冷却液流通部84,85を有することを除いて同様の構成とされたローター82及びステータ83を備え、ローター82と対向部材(ステータ83)の間に、スラリー状又は液体状の混合物4を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる。すなわち、このローター82及びステータ83には、第1及び第2ギャップ部5,6やバッファ部8や壁部10等が設けられる。
【0054】
ローター82には、冷却液が流通される冷却液流通部84と、冷却液供給部84a及び冷却液排出部84bとが設けられ、この冷却液供給部84a,84bには、供給管86a及び排出管86bが接続されている。ステータ83には、冷却液が流通される冷却液流通部85と、冷却液供給部85a及び冷却液排出部85bとが設けられ、この冷却液供給部85a及び冷却液排出部85bには、供給管87a及び排出管87bが接続されている。
【0055】
同様に、図5に示す分散装置91は、図2に示すローター32及びステータ33と比較して、冷却液流通部94,95を有することを除いて同様の構成とされたローター92及びステータ93を備え、ローター92と対向部材(ステータ93)の間に、スラリー状又は液体状の混合物4を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる。すなわち、このローター92及びステータ93には、第1〜第3ギャップ部35,36,37や第1及び第2バッファ部38,39や壁部40等が設けられる。
【0056】
ローター92には、冷却液が流通される冷却液流通部94と、冷却液供給部94a及び冷却液排出部94bとが設けられ、この冷却液供給部94a,94bには、供給管96a及び排出管96bが接続されている。ステータ93には、冷却液が流通される冷却液流通部95と、冷却液供給部95a及び冷却液排出部95bとが設けられ、この冷却液供給部95a及び冷却液排出部95bには、供給管97a及び排出管97bが接続されている。
【0057】
図4、図5に示す分散装置81,91は、上述した図1に示す分散装置1、図3に示す分散装置31と同様の効果を奏して、より効率的で適切な分散処理機能を実現するとともに、冷却液が流通される冷却液流通部84,85,94,95を有することにより、剪断力付与により発生した熱を冷却して混合物の変質を防止することができる。
【0058】
ここで、上述した分散装置の軸受部等を含めたより具体的な構成について、図6及び図7を用いて説明する。図6では、図2の分散装置31のステータ33を回転する構成としてローター133に変更した変形例(これを「分散装置131」とする)を説明するものとする。尚、ローター133の各部の構成、形状はステータ33と同様であるものとする。図6の分散装置131は、凹凸を有する2枚のローター32,133を、回転中心軸を同一にして、鉛直方向に対向するように設置したものである。分散装置131は、それぞれの凹凸部の組み合わせによって、上述の分散装置31と同様に、第1〜第3ギャップ部35,36,37と矩形断面を有する第1及び第2バッファ部38,39を有する。
【0059】
一対のローター32,133は、それぞれ回転軸68、169に接続され、これらの回転軸68,169は、軸受141を介して強固に固定された軸受箱142で支えられ(固定方法は図示せず)、ベルト、チェーン、歯車などと接続された電動機(図示せず)で駆動され、その回転方向は互いに逆となる。ここでは、回転軸68,169をそれぞれ混合物供給口143,144の側から見て、時計回り方向に回転することとする。回転数は、対象原料や目標とする分散の度合いによって、任意に設定することができる。尚、ここでは、中空回転軸169の先端は、栓145によって閉塞され、混合物が流入・流出しないようになっている。混合物供給口143,144は、回転軸68,169に対して回転継手146を介して接続されている。
【0060】
尚、中空回転軸169の栓145を除去し、混合物供給口144から別の原料を供給し、混合物供給口143から供給した原料とローター部分で混合することも可能である。この場合は供給口144用のポンプが必要となる。また、ここでは、2つの回転軸68,169は、それぞれ別個の電動機から駆動されるが、歯車などで動力を分配し、1台の電動機で駆動してもよい。
【0061】
また、図5に示す分散装置91のステータ93を回転する構成としてローター193に変更した変形例(これを「分散装置191」とする)の具体的構成は、図7に示すように構成される。分散装置191は、ローター92,193の回転軸が水平方向に平行であるように配置された例である。図7では、図6と同様に、軸受141、軸受箱142、混合物供給口143、回転継手146が示されている他、処理した混合物を次の工程に導くローターカバー197や、さらに、装置全体の架台198やローター92,193を駆動するモータ199が示されている。尚、図7のローター92には、冷却液流通部94が設けられていないが、図5と同様に設けてもよい。
【0062】
図6に示す分散装置131や図7に示す分散装置191は、上述の図2、図5に示す分散装置31,91に対してステータをローターに変えた例の軸受部分等の具体的構成であるので、同様の効果を有するものである。図1、図3及び図4の分散装置も、同様の軸受部分等を有する構成とされている。尚、図1〜図5で説明したようなローター及びステータの組み合わせの場合には、ステータ側に軸受141や回転継手146は不要であり、構成は簡素化される。
【0063】
次に、上述のような分散装置を用いた循環式分散システムの一例について図8を用いて説明する。図8に示す循環式分散システム200は、混合物4を分散させるローター型且つ連続型の分散装置(図1〜図7等で説明した分散装置1,31,71,81,91,131,191のいずれか(ステータをローターに変更したものも含む)であり、以下では「分散装置1等」という。)を備える。図中では、Mがモータを示し、分散装置1のステータをローターに変更したものを水平方向に設置した例を挙げているが、上述したようにこれに限られるものではない。また、循環式分散システム200は、分散装置1等の出口側に接続されるタンク201と、タンク201の出口側に接続され混合物4を循環させる循環ポンプ202と、分散装置1等、タンク201及び循環ポンプ202を直列的に接続する配管203とを備える。
【0064】
尚、ここで、タンク201や分散装置や配管203内を循環する流体は、最初は原料であり、分散装置を経由する毎に添加原料が次第に分散された混合物となり、最終的には分散処理済みの混合物となるが、上述及び以下の説明では、最初の「原料」も、処理途中の「混合物」も併せて「混合物」と呼ぶこととする。
【0065】
循環式分散システム200には、循環途中の配管に供給装置206が設けられ、この供給装置206は、ホッパ204に貯蔵されている添加物205(液体または粉粒体)を、循環している混合物(最初は原料)に注入させる。分散装置1等で分散処理された混合物は、重力によってタンク201に戻される。タンク201の中の混合物は、攪拌機207による攪拌で偏析などが防止される。
【0066】
タンク201には、真空ポンプ208が接続される。この真空ポンプ208は、分散装置1等からの排出量が不足する場合に、タンク内を減圧して、排出を補助することができる。また、この真空ポンプ208による減圧は、混合物に気泡が混入した場合の脱泡処理用としても機能する。
【0067】
以上のような循環式分散システム200において、運転時には、バルブ209は、常時開とされ、バルブ210は、常時閉とされている。分散処理が終了したらバルブ209は、閉とされ、バルブ210は、開とされる。これにより、バルブ210から処理物を排出・回収することができる。
【0068】
循環式分散システム200は、図1〜図7に示すような分散装置1等を有することにより、効率的で適切な分散処理を行うことを実現し、よって、システム全体としても分散処理機能が向上するとともに、分散処理時間の短縮を実現する。
【0069】
次に、分散装置の実験例について説明する。この実験例では、図7で説明した一対のローター92,193を水平に設置した分散装置191を用い、これを図8に示したバッファタンクとしてのタンク201、送液用の循環ポンプ202を接続した循環式分散システム200によって分散テストを行った。ローターの材質はSUS304(ステンレス鋼)であり、ローター形状は、図2や図5に示す多段形ローター(以下、「多段ローター」という。)を使用した。この実験例で用いた分散装置では、3箇所のローター隙間(第1〜第3ギャップ部35,36,37)の条件は同じであり、約0.39mmであり、剪断面積(ローター隙間部分の面積の合計)は、約271cm2であった。これを図8に示すような循環式分散システムに組み込んで、繰り返し分散処理を行った。試料としては、蒸留水にアエロジル#200(日本アエロジル株式会社製)を重量比率で10%添加した。分散テストの手順としては、まず、原料貯蔵タンクに所定量の蒸留水をいれ、ローターは停止させたままポンプを起動して循環させる。次に、原料貯蔵タンクを真空ポンプで減圧することで、系全体を負圧状態とし、原料貯蔵タンクとポンプの間の配管から断続的にアエロジルを吸引供給した。アエロジルを供給終了した時点を原料の初期状態として、ローターを回転させて分散処理を行った。
【0070】
尚、この実験例を比較するための比較例の分散装置として、ローターを図9に示すようにフラットな形状のもの(以下、「フラットローター」という。)を用い、同様のテストを行った。フラットローター301は、図9に示すように、一対のローター302,303と、回転軸304,305とを有する。回転軸304には、混合物供給部306が設けられ、回転軸305には、閉塞栓307が設けられる。フラットローターの材質は、多段ローターと同様に、SUS304(ステンレス鋼)であり、ローター間の隙間は、約0.36mm、剪断面積は約304cm2である。
【0071】
以上のような多段ローターを用いた実験例(実験番号(1)〜(3))と、フラットローターを用いた比較例(実験番号(4)〜(5))の運転条件を以下の表1に示し、処理時間に対するメディアン径の変化を図10に示す。図10中の線分に付した番号(1)〜(5)は、表1中の番号と対応する。また、表中「原料供給側ローター」とは、図7ではローター92を示し、図9ではローター302を示す。表中「冷却側ローター」とは、図7ではローター193を示し、図9ではローター303を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
メディアン径は、レーザー回折式粒度測定器(SALD−2100、島津製作所)によって計測した。多段ローターとフラットローターとで同じ回転速度の条件(番号(1)、(4))を比較すると、一対のローターを逆方向に3000rpmで回転させた場合、バッファ部をもつ多段ローターの方がメディアン径の減少が早く、分散効率が良いことがわかる(番号(1))。また、片側を3600rpmで回転させた場合(番号(2)、(3)、(5))は、同じ多段ローターであっても、バッファ部の容量が大きく、遠心力も大きい方のローターのみを3600rpmで回転させた方(番号(2))が、バッファ部の容量が小さく、遠心力も小さい方(番号(3))のローターのみを3600rpmで回転させるよりも、メディアン径の減少が早い。フラットローターを片側のみ回転させた場合(番号(5))は、分散性能は最も小さくなる。
【0074】
上述の実験から、本発明者達は、以下のことを見出し確認した。片側ローターの構成(すなわちローター及びステータの組み合わせに相当)においては、番号(5)及び番号(3)に比べて番号(2)の場合が分散効果を発揮している結果が得られており、このことから、バッファ部(8、38等)の外側にローター側の外壁(10,40等)を設けるようにすることで剪断作用を発揮できることを見出した。さらに、両側回転の構成(すなわち一対のローターの組み合わせに相当)においては、番号(1)が番号(4)に比べてかなり良い分散効果を発揮していることから、複数のギャップ部における局所的剪断作用やバッファ部における平均化分散作用の効果に加えて上述のバッファ部の壁部における遠心力及び剪断作用を発揮していることを見出した。以上のような本発明を適用した剪断式分散装置は、ギャップ部とバッファ部を上述のように構成することで、より効率的で適切な分散処理機能を実現する。
【0075】
また、上述した分散装置1,31,71,81,91,131,191と、分散装置の出口側に接続されるタンクと、混合物を循環させる循環ポンプと、分散装置、タンク及び循環ポンプを直列的に接続する配管とを備える循環式分散システム200を用いて、混合物を循環させながら分散させる循環式分散方法は、より効率的で適切な分散処理を実現する。
【0076】
以上のように、上述では、図1〜図10を用いて、ローター及びステータからなる剪断式分散装置、又は一対のローターからなる剪断式分散装置において、少なくとも一つのバッファ部を設けるとともに、このバッファ部を形成する外周側の壁部がローターに設けられる点に特徴を有するものについて説明した。換言すると、ローターと対向部材(ステータ又はローター)の間に形成され内周から外周に混合物を導く通路となるギャップ部(例えば2mm以下程度の剪断力を発揮できる程度の小さな隙間)の途中においてローター及び対向部材の隙間(対向方向の間隔)が広げられるように形成されることで混合物を滞留させるバッファ部が少なくとも一つ形成されるように、ローター及び対向部材に凹凸部を設けることで、該バッファ部と、該バッファ部の内周側及び外周側に形成される複数のギャップ部とが形成されており、該バッファ部を形成する外周側の壁部がローターに設けられる点に特徴を有するものについて説明した。
【0077】
次に、図1〜図10を用いて説明したバッファ部に特徴を有する剪断式分散装置等に付加して良好な特徴として、対向間隔を調整する特徴について図11〜図15を用いて説明する。
【0078】
すなわち、上述した循環式分散システム200やこれを構成する分散装置1,31,71,81,91,131,191において、ローター及び対向部材の少なくともいずれか一方を駆動することにより、他方に対して近接及び離間する方向に駆動する駆動機構を設けるように構成してもよい。この駆動機構は、分散装置における一対のローター間や、ローター及びステータ間に混合物の詰まりが発生することにより、管内圧力が上昇して機器や配管の破損が発生することを防止することを目的として循環式分散システムに設けられるものであるが、駆動機構の具体的構成や、機能や効果については、図11の循環式分散システム400で具体的に説明するものとする。
【0079】
次に、図11及び図12を用いて本発明を適用した循環式分散システム400について、説明する。図11に示す循環式分散システム400は、混合物を分割させるローター型且つ連続型の分散装置(図1〜図7等で説明した分散装置1,31,71,81,91,131,191のいずれか(ステータをローターに変更したものも含む)に間隔を調整する機構(駆動機構420)を設けたものであり、以下では例えば、駆動機構420を有することを除いて上述の分散装置1と全く同様の構成を有する分散装置421であるものとして説明する。)を備える。図中では、Mがモータを示し、垂直方向に設置した例を挙げているが、上述したようにこれに限られるものではない。また、循環式分散システム400は、分散装置421等の出口側に接続されるタンク401と、タンク401の出口側に接続され混合物4を循環させる循環ポンプ402と、分散装置421等、タンク401及び循環ポンプ402を直列的に接続する配管403とを備える。図11中のQinは、混合物の流れを示し、Qoutは、タンク401側に向けて排出される分散処理後の混合物の流れを示す。
【0080】
尚、図12は、図11の循環式分散システム400や、後述する図16の循環式分散システム500の各構成要素の具体的な配置の一例を示す図であり、本発明の循環式分散システムはこの配置例に限定されるものではない。図12に示すように、循環式分散システム400は、添加粉末貯留タンク491が添加剤供給管492を介して接続されている。添加粉末貯留タンク491は、吸引力を発生させることにより添加剤供給管492を介して供給装置406に添加粉末を供給する。また、図12に示す循環式分散システム400には、メンテナンス時にタンク401の上蓋401aを昇降する昇降機495が設けられている。
【0081】
尚、ここで、タンク401や分散装置や配管403内を循環する流体は、最初は原料であり、分散装置を経由する毎に添加原料が次第に分散された混合物となり、最終的には分散処理済みの混合物となるが、上述及び以下の説明では、最初の「原料」も、処理途中の「混合物」も併せて「混合物」と呼ぶこととする。
【0082】
また、循環式分散システム400は、分散装置421のローター2及びステータ(対向部材)3の少なくともいずれか一方を駆動(以下では、例えばローター2を駆動するものとする)することにより、他方に対して近接及び離間する方向に駆動する駆動機構420と、この駆動機構420を制御する制御部430とを備える。駆動機構420は、例えばサーボシリンダであり、ここでは、ローター2の回転軸やこれを回転駆動するモータMを含めたユニット部分を上下に駆動して、このローター2とステータ3との隙間δ1を広げたり、狭めたりすることが可能である。以下では、この駆動機構420として、例えば、ロードセル(荷重変換器420a)等を有する電動サーボシリンダが用いるものとして説明する。
【0083】
駆動機構420を備える循環式分散システム400は、ローター2及びステータ3間に混合物の詰まりが発生した場合や、発生のおそれがある場合に隙間δ1を広げることで詰まりを解消して、管内圧力が上昇してポンプ等の機器や配管(特に継ぎ手部分)の破損が発生することを防止する。
【0084】
制御部430は、ローター及びステータの間の混合物の圧力を検出する圧力センサ423、及びローター及びステータ間から放出される混合物の温度を検出する温度センサ424の両方の検出結果に基づいて、ローター2及びステータ3の対向間隔を調整する。尚、制御部430は、圧力センサ423、温度センサ424の少なくとも一方の検出結果に基づいて調整するようにしてもよい。
【0085】
圧力センサ423は、配管中403で最も圧力が上昇する位置に配置され、例えば、図11に示すように、分散装置421に混合物を流入させる位置の手前に配置される。尚、駆動機構420としてサーボシリンダを用いる場合にはシリンダ先端に設けたロードセル(荷重変換器420a)を圧力センサとして使用してもよいし、併用してもよい。また、サーボシリンダに内蔵した圧力センサを用いてもよい。
【0086】
温度センサ424は、分散装置421から排出される混合物の温度を検出するため、図11に示すように、分散装置421の出口側の直後の配管403に取り付けられている。また、この循環式分散システム400には、ローター2の軸受部分の温度を検出する温度センサ425が設けられている。この温度センサ425の検出結果と、温度変化による各部の機械部品の熱膨張又は熱収縮により変化する隙間δ1の変化との関係を事前に計測し、制御部430内の記憶部に記憶させておくことで、制御部430は、温度センサ425の検出結果に応じて駆動装置420を駆動してローター2を軸方向に移動させて、隙間δ1を調整することで、圧力上昇又は降下を事前に防止することをも可能とする。
【0087】
以下、さらに具体的に説明する。図11に示すように、混合物の入っている貯蔵タンクとしてのタンク401は、その排出口が、循環ポンプ402に接続される。循環ポンプ402は、混合物を搬送して循環させる。タンク401の上部に設けられた供給装置406は、ホッパ404に貯蔵されている添加物405(液体または粉粒体)を、循環している混合物(最初は原料)に注入させる。添加物が添加された後の混合物は、タンク401の垂直(鉛直)方向の上方側に設置されたローター型の連続分散装置421内に、供給される。
【0088】
分散装置421は、垂直方向に対向して配置されるローター2及びステータ3を有する。分散装置421は、軸が垂直方向に設置され、ローター2が、上側に設けられ、ステータ3が、下側に設けられる。尚、これを互いに逆方向に回転する一対のローターに変更してもよい。また、軸を水平に配置して、ローター及びステータを水平方向に対向して設置するようにしてもよい。ローター2及びステータ3は、原料に添加物が均一に分散された状態とする。分散装置421のローター2及びステータ3間で分散処理された混合物は、分散装置421のローターカバー内で滞留することなく重力によってタンク401に戻される。タンク401の中の混合物は、攪拌機407による攪拌で偏析などが防止される。
【0089】
ここで、添加原料405の供給装置406としては、スクリューフィーダ、ロータリーバルブ、プランジャーポンプなどを適宜用いることができる。また、供給装置406の設置場所としては、循環途中の配管403中に設けてもよく、配管403の任意の場所を選ぶことができる。
【0090】
タンク401には、真空ポンプ408が接続される。この真空ポンプ408は、分散装置421からの排出量が不足する場合に、タンク内を減圧して、排出を補助することができる。また、この真空ポンプ408による減圧は、混合物に気泡が混入した場合の脱泡処理用としても機能する。
【0091】
以上のような循環式分散システム400において、運転時には、バルブ409は、常時開とされ、バルブ410、411は、常時閉とされている。分散処理が終了したらバルブ409は、閉とされ、バルブ410は、開とされる。これにより、バルブ410から処理物を排出・回収することができる。また、分散装置421や配管403の中に残った混合物は、バルブ411を開とすることで排出、回収される。なお、混合物の排出・回収用のバルブはタンクや配管の任意の場所に取り付けることができる。
【0092】
循環式分散システム400は、図1〜図7に示すような分散装置1等と同様の構成、作用及び効果を有する分散装置421を有することにより、効率的で適切な分散処理を行うことを実現し、よって、システム全体としても分散処理機能が向上するとともに、分散処理時間の短縮を実現する。
【0093】
また、循環式分散システム400は、システム全体としてはバッチ処理をしているシステム(以下「バッチ循環システム」という。)であり、このため、均一分散を十分に行った後に処理済製品を排出することができるので、均一分散を高度化させることができる。また、バッチ循環システムの採用により、原料トレーサビィリティを確保できる。すなわち、処理済製品の検査により、所望の範囲外(粒子の大きさにバラツキがあった場合や、不純物の量が多くなってしまった場合等)となった場合に、問題となり得た原料(液体原料)及び添加剤(粉体原料)を特定しやすく、換言すると、当該製品に用いた原料及び添加剤と同じロットで準備された原料及び添加剤を追跡することができる。これは、例えば分散装置やタンクを1回ずつ通過させるような所謂連続式分散システムでは追跡が困難であるのに対して、バッチ方式の利点である。また、バッチ循環システムの採用により、例えば真空ポンプ408等による真空脱泡処理が可能であり、脱泡処理時間の短縮を可能とするという利点を有する。さらに、バッチ循環システムの採用により、前工程に配置される添加粉末貯留タンクや、後工程に配置される分散処理済製品貯留タンク等の前後工程との連動システムの構築が容易となる。すなわち、分散システム400には、添加粉末貯留タンク491を追加することが可能であり、また、分散システム400は、構成が簡素化されているので、分散処理済製品貯留タンクの近傍に配置することを可能とする。このように、循環式分散システム400は、バッチ循環システムであるとともに上述のような革新的なスラリー製造(分散処理)を実現するので、高い分散性とトレーサビィリティを確保しながらの連続運転を実現化し、且つ高性能・高信頼性でコンパクトなシステムにより、顧客のものづくりのシンプル、スリム化、高度化、複雑化に応えるものであり、この段落で説明した点等については、上述及び後述の循環式分散システム200,500も同様である。
【0094】
また、循環式分散システム400は、処理原料を循環させ、この処理原料に添加物を添加させながら剪断式分散装置による分散を行うシステムであることにも特徴を有する。換言すると、最初は粘度が低い状態(添加粉末の割合が薄い状態)で、練りこみながら徐々に添加粉末を濃縮していく「薄練・濃縮方式」を採用している点にも特徴を有する。この方式と比較するための方式として、最初から添加粉末を全てタンク内に添加して、最初は粘度が非常に高い状態(添加粉末の割合が高い状態)にして、比較的小さな剪断速度で強力に練り込み、その後全体に分散させるように徐々に希釈していく、「固練り・希釈方式」を例に挙げて、これと比較して「薄練・濃縮方式」の利点を説明する。処理時間に対する粘度及び濃度の関係について、図13に「固練り・希釈方式」の場合を示し、図14に「薄練・濃縮方式」の場合を示す。図13及び図14中、横軸が、処理時間を示し、縦軸が、粘度及び濃度を示し、Vi1,Vi2が粘度の変化を示し、Co1,Co2が濃度の変化を示す。T11が、添加物質及び溶媒の投入期間を示し、T12が、固練り期間を示し、T13が、希釈及び混合期間を示し、T14が終了のタイミングを示す。また、T21が、溶媒投入のタイミングを示し、T22が、粉末投入及び分散・混合期間を示し、T23が、混練及び分散・混合期間を示し、T24が終了のタイミングを示す。また、Lo1,Lo2は、モータ容量を決定する負荷を示す。すなわち、最大の粘度を考慮して、モータ容量を決定する必要がある。以上のように、循環式分散システムのように、「薄練・濃縮方式」を採用することにより、分散装置421のローター用のモータ等の容量を小さくした状態で最大の分散効果を得ることができる。モータの容量を小さくできるので装置全体の構成を小型化できる。さらに、図14に示すように、粘度の変化が図13の場合に比べて少ないので、モータの能力を有効に使用した状態で分散処理を行うことができるので効率的な処理を実現する。
【0095】
さらに、循環式分散システム400は、駆動機構420等を有することにより特有の効果を奏する。駆動機構420等を有する特有の効果の説明に先立ち、循環式分散システム400において、駆動機構420を有しないとした場合の問題となり得る点を説明する。すなわち、駆動機構を有さない循環式分散システムのトラブルとしては、管内圧力の異常上昇による機器や配管の破損が考えられる。管内圧力が異常上昇する原因としては、流動抵抗が最も大きな部分、すなわちローター及びステータ間の隙間(図11では隙間δ1に相当)、又は一対のローター間の隙間での固形分の詰まりが最も可能性が高い。例えば、これを防止して、装置やシステムを保護するため、あらかじめ上限圧力を設定し、最も圧力が高くなる場所で圧力センサによって圧力を検知し、上限圧力を超えたときに運転を停止させるように構成してもよい。しかし、運転を停止させる構成としても、復帰までの時間のロスがあり、上限圧力の手前の段階で圧力上昇を防止すること、すなわち、ローター及びステータ間の隙間、又は一対のローター間の隙間での詰まりを解消することが望ましい。
【0096】
ローター及びステータ間の隙間、又は一対のローター間の隙間での固形分の詰まりを解消する手法としては、第1に、この隙間を増大する手法があり、第2に、ローター回転数を増大する手法があり、第3に、ポンプ流量を減少する手法がある。すなわち、検知圧力があらかじめ設定した閾値以上となったときに、例えば第1の手法の場合には、隙間を増大することで、詰まった固形物を流動させるものである。また第2の手法の場合には、ローターの回転数を上げて剪断力を増大させ、隙間に詰まった固形物を破壊する。さらに第3の手法の場合には、ポンプ流量を下げて管内圧力を下げ、現状のローターの回転による剪断力で固形分が破壊され、詰まりがなくなるまでの時間を稼ぐというものである。この中で、第1の手法は、詰まりの解消を考えた上では最も直接的であり、優れており、循環式分散システム400ではこれを採用している。尚、第2及び第3の手法は、詰まった固形物を破壊するという観点では本質的な方法であるが、詰まった固形物の破壊強度が大きければ、即座に破壊され、取り除かれるとは限らない。上述及び後述では、第1の手法を採用するものとしてその機能や効果を説明するが、第1の手法に換えて若しくは加えて第2、第3の手法を取り入れることも可能である。すなわち、隙間を広げて詰まった固形物を流し、圧力上昇を解消した後に、必要に応じて回転数を増加し、あるいは流量を減少させ、循環運転の中で徐々に隙間、回転数、流量を本来の設定値(通常運転値)に復帰させるのが、効率的な方法である。この制御は、制御部430により行わせるようにすればよい。
【0097】
上述したように、循環式分散システム400及びこれを構成する分散装置421では、ローター2及びステータ3間の隙間δ1を調整するために、サーボシリンダ等の駆動機構420を設けている。また、循環式分散システム400は、高濃度且つ高粘度のスラリー状混合物を分散処理可能とするものである。上側のディスク状部材にモータMを接続してローター2として構成し、このローター2を含む上側のユニット部分を、駆動機構420(サーボシリンダ)により、上下に移動させてステータ3との隙間δ1を調整する。スラリーに対する耐久性を向上させるため、下側のディスク状部材は、ステータ3として軸封部のない構造(回転部分がないため軸封部を必要としない)とし、ステータ3の中心軸を介して分散部(ローター2及びステータ3の間)に分散中のスラリー状混合物を供給することとしている。尚、圧力の検知は、配管中の最も圧力が上昇する位置に設けた圧力センサ423で行うようにしたが、駆動機構420(サーボシリンダ)に内蔵若しくはシリンダ先端等に設けたロードセル(例えば図11に示す荷重変換器420a)で行うようにしてもよい。さらに、ローター回転数の制御や、ポンプ流量の制御は、制御部430により、それぞれ駆動モータに接続したインバーターを介して行うことができる。
【0098】
このような循環式分散システム400における分散過程において、混合物の特性が予想可能な場合は、あらかじめローター2及びステータ3間の隙間δ1等や、ローター回転数や、流量の制御プログラムを準備することで、効率的な分散を実現できる。例えば、液体状の処理原料を循環させ、これに粉末状の添加物を徐々に投入してスラリー状の混合物を製造する工程において、運転初期に固形分が凝集しやすく、ローター及びステータ間の隙間等に詰まりやすい場合がある。このとき、運転初期ではこの隙間をあらかじめ広くし、ローター回転数を上げておく。粉末状の添加物の投入が完了し、液体状の処理原料及び粉末状の添加物からなる混合物が循環する間に凝集固形分が破壊され、スラリーの性質が安定し、詰まる恐れがなくなった段階で、この隙間とローター回転数を本来の設定値(通常運転値)に戻して、所望の分散処理を行うようにしてもよい。この場合、流量を減少させることは、剪断(分散)領域を通過する液の頻度が減少することを意味するため、処理時間が延びることになるため、この手法を採用しなくてもよい。
【0099】
また、循環式分散システム400におけるスラリー作成工程において、複数の粉末状の添加物を順次投入する場合には、それぞれの段階で最適なローター及びステータ間の隙間、ローター回転数、流量が異なるときには、あらかじめ制御プログラムを準備することで、効率的で適切な分散処理を実現できる。
【0100】
また、循環式分散システム400において分散処理が完了し、分散処理後の混合物(製品)の排出工程においても、制御によって効率的な処理が可能である。排出工程においては、分散工程の後に運転を停止することなく継続実施されるが、この際、バルブ409を閉じて、バルブ410,411を開とすることで、バルブ410,411から混合物(製品)を排出して回収できる。このとき、過分散を防止するため、分散装置421は運転が停止され、すなわち、ローター2の回転が停止されているため、ローター2及びステータ3間の混合物(製品)は、この隙間の流動抵抗が大きいため排出されにくい。このとき、隙間を広げることで、流動抵抗を下げ、排出速度を促進することができる。これは、混合物の粘度が高い場合や、分散装置のローターやステータ部分にバッファ部を設けた場合(図1〜図7を用いて上述したような場合)には排出すべき混合物が多いため効果が大きい。
【0101】
また、上述した分散装置421等のディスク型の分散装置は、高速回転によって、大きな剪断応力を発生させ、分散させるため、摩擦によりディスク状部材であるローター2及びステータ3の対向部分が発熱する。対向部分や軸部分やその他の関連部品の熱膨張によって、ローター2及びステータ3の隙間が減少する場合がある。
【0102】
ローター2及びステータ3の隙間が減少すると、流動抵抗が増加し、異常圧力発生の原因となる。そのため、圧力の検出とともに原料温度も検出し、圧力上昇の予測と防止に利用することにより、システムの安全性を増すことができる。原料温度が最も上昇する箇所は、ローター2及びステータ3の隙間であり、この部分が高速回転部であることから、この部分の混合物の温度検出は、難しいが、この直後の配管に温度センサ424を配置することで、ほぼ同等の温度が検出できる。ステータ3には、比較的簡単に温度センサが取り付け可能である。
【0103】
また、必要であれば、軸受部の温度も温度センサ425で検出しておくようにしてもよい。あらかじめ、温度と、ローター2及びステータ3の隙間との関係を調べておくことで、温度上昇により、この隙間の減少をサーボシリンダ(駆動機構420)等の手段で補正し、適正な隙間に制御することで、圧力上昇を防止することができる。尚、この制御の目的は、圧力上昇の解消であるが、結果的に温度上昇の解消をも実現する。
【0104】
更に、検出温度による運転制御は、次の2つの目的にも利用できる。第1の目的は、熱膨張による隙間の減少は、ローター2及びステータ3(一対のローターの場合も同様)の接触による過負荷、異音(騒音)、対向部分(ディスク状部分)の破損の原因となることに鑑みたものである。すなわち、第1の目的は、これらを防止することであり、隙間の適正制御を行うというものである。第2の目的は、原料の温度上昇による変質防止等のために、より積極的な温度管理のための運転制御を行うというものである。すなわち、検出した混合物の温度が規定値を超えた場合、圧力とは関係なく、ローター2及びステータ3の隙間の増大、ローター2の回転数の減少を行い、混合物に発生する摩擦熱を抑えることができる。
【0105】
以上のように、駆動機構420を備える循環式分散システム400は、分散装置421におけるローター2及びステータ3間の隙間δ1に混合物の詰まりが発生することを防止し、管内圧力が上昇することにより機器や配管の破損が発生することを防止することを実現でき、よって、効率的で適切な分散処理を行うことができる。尚、駆動機構420は、ローター及びステータ方式の分散装置のみならず、一対のローター方式の分散装置にも用いることができ、一対のローター間の隙間に混合物の詰まりが発生することを防止し、管内圧力が上昇することにより機器や配管の破損が発生することを防止できる。
【0106】
また、循環式分散システム400は、制御部430が、圧力センサ423、温度センサ424の一方又は両方の検出結果に基づいて、ローター2及びステータ3の対向間隔(隙間δ1)を調整する構成であるので、混合物の詰まりが発生しうる状態であることを事前に検知して防止し、機器や配管の破損等の発生を確実に防止することを実現できる。
【0107】
さらに、循環分散システム400では、制御部430により、粘度が高いうちは回転速度を押さえて徐々に速度を上昇させ、粘度が高いうちは隙間(対向間隔)が小さすぎると負荷が大きすぎるので隙間を増やすとともにこなれてきたら隙間を小さくして剪断力を大きくする制御を行い、これにより例えば図14に示すような粘度及び濃度と処理時間との関係となるように運転することで適正な分散処理を行うことを実現する。
【0108】
また、循環式分散システム400は、分散装置421のローター高速回転による高剪断力効果により短時間で分散処理を実現する。ここで、分散装置421の剪断力は、τ=μ×(dv/dx)の関係式のτで表すことができる。μは、粘度であり、dvは、速度であり、dxは、ローター及び対向部材の隙間(対向間隔)である。分散装置421は、所望の剪断力を得るdxとなるように駆動機構420を制御することにより、高剪断力効果を得ることができ、短時間で分散処理を実現する。また、制御部430により、ローター及び対向部材の対向間隔の制御や、循環ポンプ402による循環量の制御や、ローター2の回転数の制御を行うことができ、これにより最適な条件でフレキシブルな分散処理を行うことが可能である。例えば、対向間隔、循環量、回転数の適正な制御を行うことにより、図14に示すような粘度及び濃度と処理時間との関係となるように制御を行うことで、モータの能力を最大限に発揮した分散処理を実現することができ、換言すると装置の小型化及び処理時間の短縮を実現する。
【0109】
さらに、循環式分散システム400は、その構造及び仕様により、清掃及びメンテナンス作業の効率化を実現するものである。循環式分散システム400は、分散処理終了後、清掃用の液体を循環させることで停滞物を除去できる。また、循環式分散システム400は、各部が、分解が容易な構造とされている。例えば、分散装置421は、駆動機構420によりローター2及びステータ3を分割できる。また、配管403は、フェルール等のクイックカップリングで接続するように構成されているため、脱着を簡単に行うことができる。また、タンク401の上蓋401aは、昇降機495で昇降可能なように構成されているため、ボルト等の結合部材を外した状態で昇降機495により容易に上昇させることができる。以上のように、循環式分散システム400は、清掃及びメンテナンス作業の効率化を実現する。
【0110】
また、駆動機構420を有する分散装置421は、ローター2及びステータ3間の隙間δ1に混合物の詰まりが発生することを防止し、管内圧力が上昇することにより機器や配管の破損が発生することを防止することを実現できる。上述した駆動機構420は、分散装置1に追加した例として説明したが、図2〜図7を用いて説明した分散装置31,71,81,91,131,191にも適用可能であり、これらに追加する(これらに駆動機構420を含めて以下「分散装置421等」ともいう。)ことで上述の分散装置421と同様の効果を奏する。
【0111】
さらに、駆動機構420を有する分散装置421等及びこれを用いた循環式分散システム400等は、次のような利点がある。すなわち、駆動機構420を有する分散装置421は、第1の混合と、第2の混合とからなる2段階混合を分散することにより行う装置としてもよい。ここで、第1の混合とは、処理原料と第1の添加物とを混合することである。第2の混合とは、該第1の混合が完了することにより得られた第1の混合物と第2の添加物とを混合することである。この分散装置421等において、駆動機構420は、第1の混合が完了して第2の混合を開始する際に、ローター2及びステータ3の対向間隔を変更する点に特徴を有する。
【0112】
ところで、これらの分散装置421等は、例えば、電池原料、塗料原料、無機化学製品等を得るために用いることが可能である。電池原料の場合、処理原料は、例えば水(蒸留水、イオン交換水)、NMP(1−メチル−2−ピロリドン)である。第1の添加物は、例えばカルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」ともいう)粉末、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」ともいう)粉末等の増粘材である。第2の添加物は、リチウムイオン電池用正極活物質(LiCoO2系化合物、LiNiO2系化合物、LiMn2O4系化合物、Co-Ni-Mn複合系化合物、LiFePO4/LiCoPO4系化合物等)、リチウムイオン電池用負極活物質、リチウムイオンキャパシタ用正負極活物質又は導電助剤である炭素系材料(黒鉛、コークス、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、ケッチェンブラック等)、リチウムイオン電池用負極活物質(アンチモン系化合物(SbSn、InSb、CoSb3、Ni2MnSb)、スズ系化合物(Sn2Co、V2Sn3、Sn/Cu6Sn5、Sn/Ag3Sn)、Si系複合材料等)、ニッケル水素電池用正極活物質(Ni(OH)2)、ニッケル水素電池用負極活物質すなわち水素吸蔵合金(TiFe、ZrMn2、ZrV2、ZrNi2、CaNi5、LaNi5、MmNi5、Mg2Ni、Mg2Cu等)、バインダー(フッ素系樹脂(PTEF(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビリニデン))、フッ素ゴム(フッ化ビリニデン系)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、BR(ブタジエンゴム)、ポリアクリロニトリル、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレンプロピレンゴム、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリビニルエーテル、ポリイミド等)である。その他にも、各種インキ、塗料、顔料、セラミックス粉、金属粉、磁性粉、医薬品、化粧品、食品、農薬、プラスチック(樹脂)粉末、木粉、天然・合成ゴム、接着剤、熱硬化性/熱可塑性樹脂等が処理原料として挙げられる。
【0113】
また、上述の第1の混合において、開始時は前記対向間隔を大きく設定して分散が進むとともに徐々に間隔を小さく変化させるとともに、第1の混合が完了して第2の混合を開始する際に、対向間隔を更に小さく変更するように構成されてもよい。
【0114】
以上のように構成された駆動機構420を有する分散装置421は、第1及び第2の混合を循環式分散システム400のみで行うことを実現し、装置の簡素化や、トータルの処理時間を短縮できるという効果を奏するが、次に具体例を挙げてこの効果について具体例を挙げて説明する。
【0115】
ここで、駆動機構420を有する分散装置421による第1及び第2の混合処理を行わせることの効果を、当該分散装置421を有する循環式分散システム400をリチウムイオン電池のペースト製造に用いる場合を例に挙げて説明する。この分散装置421及び循環式分散システム400では、処理原料である水に、第1の添加物であるCMC粉末を混合して第1の混合物を得て、この第1の混合物に第2の添加物である活物質を混合して分散処理済みの第2の混合物(製品)を得る。分散装置400のローター及びステータの対向間隔は、第1の混合では、詰まらないように大きくし、第2の混合では、分散のため所望の剪断力を発揮させるために小さくする。
【0116】
すなわち、循環式分散システム400では、まず、水を循環させているところにCMC粉末を徐々に投入してCMC水溶液を得る。CMC水溶液はダマ(「継粉」ともいう。)を作りやすいため、最初は、分散装置421のローター2及びステータ3の対向間隔(隙間)を大きくしておいて閉塞や、それによる圧力上昇を防ぎ、分散とともに徐々に隙間を小さくして剪断力を上昇させ、CMCを水に均一に分散させる。継粉とは、液中にこなれないで粉末のまま固まった状態のもので、粘度が高い状態のものができた部分を有する液と粉との混合物を意味する。次に、循環式分散システム400では、分散装置421の隙間を所定の隙間(2mm以下程度)となるように自動的に狭めるように制御部430で調整し、運転を止めることなく活物質(粉末)を投入し、活物質のCMC水溶液への分散を行い、第2の混合物であるスラリー状の製品を得る。
【0117】
以上のように、2段階の混合処理を行う循環式分散システム400及び分散装置421は、CMC水溶液を別途作成するための別の装置を不要とでき、これにより、CMC水溶液の搬送や投入を不要とでき、また、CMC水溶液の作成に使った装置の清掃及びメンテナンスの手間を省くことができる。したがって、循環式分散システム400及び分散装置421は、CMCを徐々に投入しながら水溶液を得る工程の分だけ時間が増えることとなるが、運転を止めることなく隙間の自動調整を行いながら分散を続けるため、トータルの処理時間を短縮することが可能となり、よって、効率的で適切な分散処理を行うことができる。換言すると、駆動機構420を有さない分散装置の場合には、CMC水溶液は別途作成する必要があり、この準備した処理原料としてのCMC水溶液に活物質を添加して分散させる必要があるが、これに対し分散装置421等では、対向間隔を調整することで2段階の混合処理ができ、すなわち一括処理により上述の効果を奏するものである。
【0118】
ここで、2段階混合処理を連続的に行う場合における、処理時間の経過に伴う濃度、圧力(圧力センサ423による検出圧力)、及び対向間隔(ローター及びステータの対向間隔)の変化の一例について図15を用いて説明する。図15中、横軸が、処理時間を示し、縦軸が、濃度、圧力、対向間隔を示し、Co3が濃度の変化を示し、Pr3が圧力の変化を示し、Fd3が対向間隔の変化を示す。T31が、溶媒の投入タイミングを示し、T32が、第1の添加物(粉体)を投入する期間を示し、T33が、分散・混合期間を示し、T34が、第2の添加物(粉体)を投入する期間を示し、T35が、分散・混合期間を示し、T36が終了のタイミングを示す。
【0119】
図15に示すように、循環式分散システム400及び分散装置421を用いて2段階混合を行う際に、第1の添加物投入工程、第1の分散混合工程、第2の添加物投入工程、第2の分散混合工程を順次行う場合に、第1の添加物投入工程(T32)においては、ローター及びステータの対向間隔をステップ状に順次増大させるようにし、第1の分散混合工程(T33)においては、対向間隔をステップ状に順次縮小させるようにし、第2の添加物投入工程(T34)においては、対向間隔をステップ状に順次増大させるようにし、第2の分散混合工程(T35)においては、対向間隔をステップ状に順次縮小させる点に特徴を有する。尚、ここではステップ状に増大縮小させたが、連続的に変化させてもよい。「粉体投入期間においては対向間隔を徐々に増大させ粉体投入期間完了後分散混合工程においては対向間隔を徐々に縮小させる」という対向間隔の制御は、1段階の混合においても有効であり、ここでは、それを2回繰り返したものである。また、第1の添加物投入工程(T32)が完了するタイミングの対向間隔より、第2の添加物投入工程(T34)が完了するタイミングの対向間隔が小さくなっている点にも特徴を有する。さらに、第1の添加物投入工程(T32)を開始するタイミングの対向間隔より、第2の添加物投入工程(T34)を開始するタイミングの対向間隔が小さくされているとともに、第2の添加物投入工程(T34)を開始するタイミングの対向間隔より、終了時(T36)の対向間隔が小さくされている。換言すると「粉体投入期間においては対向間隔を徐々に増大させ粉体投入期間完了後分散混合工程においては対向間隔を徐々に縮小させる」という方式に、全体としては「対向間隔を小さくして最終的に一番大きな剪断力を発生させ」る方式を取り入れて分散を行うものである。以上のような図15に示すような特徴的な対向間隔の制御を行うことにより、圧力変動を抑えて、適切に2段階混合を行い、適切な一括処理を行うことを実現する。
【0120】
すなわち、分散装置421及び循環式分散システム400は、図1〜図10を用いて説明した特徴的なバッファ部が形成されることにより、効率的で適切な分散処理を実現するとともに、図11を用いて説明した対向間隔を調整する機構(駆動機構420)を有する構成により、ローター及びステータ間の隙間δ1に混合物の詰まりが発生することや、管内や機器内の圧力が上昇することによる機器や配管の破損を防止できる。また、駆動機構420を有するので、ローター及びステータを大きく離すことを可能として清掃やメンテナンス作業の効率化を実現する。さらに、駆動機構420を有するので、上述したような2段階以上の混合分散処理を実現して、トータル処理時間を短縮化し、別途必要であった装置を不要にし、トータル装置の小型化を実現する。
【0121】
また、上述した分散装置421等と、分散装置の出口側に接続されるタンクと、混合物を循環させる循環ポンプと、分散装置、タンク及び循環ポンプを直列的に接続する配管とを備える循環式分散システム400を用いて、混合物を循環させながら分散させる循環式分散方法は、より効率的で適切な分散処理を実現する。
【0122】
また、この循環式分散システム400を用いた循環式分散方法において、分散装置421が、ローター2及び対向部材(ステータ3)の少なくともいずれか一方を駆動することにより、他方に対して近接及び離間する方向に駆動する駆動機構420を備え、ローター2及び対向部材(ステータ3)の間の混合物の圧力を検出する圧力センサ423、及びローター及び対向部材間から放出される混合物の温度を検出する温度センサ424の一方又は両方の検出結果に基づいて、ローター及び対向部材の対向間隔を調整しながら分散処理を行う点に特徴を有する。当該方法は、混合物の詰まりが発生しうる状態であることを事前に検知して防止し、機器や配管の破損等の発生を確実に防止することを実現できる。
【0123】
また、当該分散方法において、処理原料を循環させ、該処理原料に第1の添加物を添加させながら分散装置による分散を行うことで処理原料と第1の添加物とを混合して第1の混合物を得る第1の混合工程と、第1の混合工程で得られた第1の混合物を循環させ、該第1の混合物に第2の添加物を添加させながら分散装置による分散を行うことで第1の混合物と第2の添加物とを混合して第2の混合物を得る第2の混合工程とを有する点に特徴を有する。当該方法は、第1及び第2の混合を循環式分散システム400のみで行うことを実現し、装置の簡素化や、トータルの処理時間を短縮することを実現する。
【0124】
さらに、当該分散方法において、第1の混合工程が完了して第2の混合工程を開始する際に、ローター2及び対向部材(ステータ3)の対向間隔を変更する点に特徴を有する。当該方法は、それぞれの工程における最適な剪断力を各混合物に与えることができ、適切で効率的な分散処理を実現する。さらに、当該分散方法は、水に増粘材を加えて活物質を分散させたいような例えば電池原料を得る際に非常に有効である。
【0125】
以上のような分散方法や、分散装置421や、循環式分散システム400によれば、分散装置における一対のローター間や、ローター及びステータ間に混合物の詰まりが発生することにより、管内圧力が上昇して機器や配管の破損が発生することを防止して、適切で且つ効率的な分散処理を実現できる。さらに、2段階の混合処理を可能とし、これによりさらに適切で且つ効率的な分散処理を実現できる。
【0126】
以上のような、図11を用いて説明した駆動機構420の特徴や、これにより可能とされる2段階混合処理の特徴は、図1〜図10のバッファ部の特徴と組み合わせることにより、上述のような効果を有して分散装置及び循環式分散システムの性能を向上させるものであるが、図1〜図10で説明したバッファ部の特徴を有しないローター及びステータ、若しくは一対のローターを有する分散装置(例えば対向する円板形状等のローターやステータからなる分散装置)にも適用可能であり、その場合には、駆動機構による効果、2段階混合による効果を発揮する。
【0127】
次に、図1〜図10を用いて説明したバッファ部の特徴や、図11を用いて説明した対向間隔を調整する駆動機構、2段階混合の特徴に付加して良好な特徴として、タンクに取り付けるスクリュー式粉体供給装置の特徴について図16〜図22を用いて説明する。
【0128】
すなわち、上述した循環式分散システム200,400において、タンク201,401に換えて特徴的なタンク装置501を設けるように構成してもよい。このタンク装置501は、特徴的構成として、スクリュー式粉体供給装置531が設けられ、粉体供給部先端532がタンク内の混合物に挿入される状態で取り付けられている。このタンク装置501は、タンク内面に粉体原料が付着することや、タンク内に粉体原料を飛散させることを防止し、粉体が液面に漂うことや凝集したりすることを防止し、適切で効率的な分散処理を実現することを目的として循環式分散システムに設けられるものであるが、駆動機構の具体的構成や、機能や効果については、図16の循環式分散システム500で具体的に説明するものとする。
【0129】
尚、循環式分散システム500は、タンク401やこれに取り付けられる供給装置406等に換えてスクリュー式粉体供給装置等を有するタンク装置501を設けることを除いて循環式分散システム400と同様の構成を有するので、共通部分については同一の符号を付すとともに詳細な説明は省略する。
【0130】
次に、図16及び図17を用いて本発明を適用した循環式分散システム500について、説明する。図16に示す循環式分散システム500は、混合物を分割させるローター型且つ連続型の分散装置421を備える。図中では、Mがモータを示し、垂直方向に設置した例を挙げているが、上述したようにこれに限られるものではない。また、循環式分散システム500は、分散装置421等の出口側に接続されるタンク装置501と、タンク装置501の出口側に接続され混合物4を循環させる循環ポンプ402と、分散装置421等、タンク装置501及び循環ポンプ402を直列的に接続する配管403とを備える。尚、循環式分散システム500を構成する分散装置は、分散装置421に限られるものではなく、上述した分散装置1,31,71,81,91,131,191のいずれか(ステータをローターに変更したものも含む)や、これらに駆動機構420を追加したものであってもよい。
【0131】
また、循環式分散システム500は、循環式分散システム400と同様に、例えば図12に示すように配置され、必要に応じて添加剤供給管492を介して添加粉末貯留タンク491に接続されてもよく、タンク装置501の上蓋541dを昇降する昇降機495を設けるようにしてもよい。
【0132】
尚、ここで、タンク装置501や分散装置や配管403内を循環する流体は、最初は原料(スラリー状又は液体状の処理原料であるものとする。)であり、分散装置を経由する毎に添加原料(この循環式分散システム500においては粉体の添加物であるものとする。)が次第に分散された混合物となり、最終的には分散処理済みの混合物となるが、上述及び以下の説明では、最初の「原料」も、処理途中の「混合物」も併せて「混合物」と呼ぶこととする。また、上述及び後述の説明中の「液体」には、特に記載がない場合には、スラリー状のものも含むものとする。
【0133】
また、循環式分散システム500は、循環式分散システム400と同様に、分散装置421に設けられる駆動機構420、制御部430、圧力センサ423、温度センサ424,425、バルブ409,410,411等を有する。
【0134】
循環式分散システム500は、処理原料を循環させ、該処理原料に添加物を添加させながら剪断式分散装置による分散を行うシステムである。分散装置421には、対向部材(ステータ3)に設けられた供給通路(供給口29a)を介して循環される処理原料が供給される。
【0135】
タンク装置501には、タンク装置501内の処理原料に添加物を供給するスクリュー式粉体供給装置531が設けられる。スクリュー式粉体供給装置531の粉体供給部先端532がタンク装置501内の混合物4中に挿入されている。
【0136】
タンク装置501は、タンク装置501内の混合物4を攪拌する攪拌機533を有し、攪拌機533の攪拌羽根534が粉体供給部先端532からタンク装置501内の処理原料液中に供給された添加物粉体を粉体供給部先端532の出口付近から掻き出してタンク装置501内の処理原料液中に分散させる。
【0137】
スクリュー式粉体供給装置531は、粉体に含まれる空気を脱気する脱気装置535を有する。尚、タンク装置501において、脱気装置535を設けなくてもよい。ここで、脱気装置535を設けた場合には、液体に供給する前に粉体中の空気を除去できる。
【0138】
また、タンク装置501には、タンク装置501内部を減圧する減圧ポンプ536が設けられる。尚、タンク装置501において、減圧ポンプ536を設けなくてもよい。減圧ポンプ536を設けた場合の効果は後述する。
【0139】
以下、さらに具体的に説明する。図16及び図17に示すように、液体が貯蔵されたタンク装置501の上部に粉体を供給するスクリューフィーダ等のスクリュー式粉体供給装置531を設置し、スクリューフィーダの導入管546の先端部分(546a)を液中(混合物4(尚、最初は液体原料547である。))に浸すように設置する。分散処理するタンク装置501内の液体を攪拌する攪拌羽根534を、スクリューフィーダから液中に供給された粉体542を直接液体中に混ぜ込むように作動させる。
【0140】
このタンク装置501は、粉体を液中に供給して分散処理する装置(その機能上分散装置ともいえる)である。タンク装置501は、液体を貯蔵するタンク本体541と、スクリュー式粉体供給装置531と、攪拌機533とを備える。スクリュー式粉体供給装置531は、粉体542を貯蔵するホッパ543と、ホッパ543から粉体542をタンク本体541に供給するスクリュー544と、スクリュー544を駆動する電動機ユニット545と、スクリュー544を液中に導入する導入管546とを有する。攪拌機533は、液体原料547と粉体原料542を分散する攪拌羽根534と、攪拌羽根534を駆動する電動機ユニット548とを有する。タンク本体541は、例えば円筒状の胴部541cと、曲面状の下部閉塞部541aと、平板状の上部閉塞用の上蓋541dとを有する。タンク本体541の下部閉塞部541aの中心付近に排出口541bが設けられている。水平面内において、攪拌機533は、タンク本体541の中心に取り付けられ、スクリュー式粉体供給装置531は、中心から偏倚した位置に取り付けられている。
【0141】
スクリュー544及び導入管546は、その先端がタンク本体541に貯蔵された液体原料547に浸るように設置される。攪拌羽根534は、図17に示すように、隙間δ2(0.5〜10mm)をもってスクリュー導入管546から液中に供給された粉体542を掻き取るような形状となっている。
【0142】
より具体的には、図17及び図18に示すように、攪拌羽根534は、タンク本体541の底面541aと所定の隙間(1〜50mm)を有して配置され、底面541a付近の液体を攪拌する底部攪拌部534aと、タンク本体541内の液面547bと所定の隙間(10〜200mm)を有して配置され、液面547b付近の液体を攪拌する液面攪拌部534bとを有する。底部攪拌部534aと、液面攪拌部534bは、攪拌機533の回転軸533aに接合され回転される。
【0143】
また、攪拌羽根534は、粉体掻き出し部534cと、接続部534dと、接続部534eとを有する。粉体掻き出し部534cは、液面攪拌部534bと平行であるとともに液面攪拌部534bより下方側(底部攪拌部534a側)に設けられ、スクリュー式粉体供給装置531の先端(粉体供給部先端532)と上述の所定の隙間δ2(0.5〜10mm)離間するように形成されている。
【0144】
接続部534dは、液面攪拌部534bをその両側の粉体掻き出し部534cのそれぞれに接続するように鉛直方向に形成されている。接続部534eは、接続部534dと平行に設けられ、底部攪拌部534aと粉体掻き出し分534cとを接続するとともに液面攪拌部534bと同じ高さまで延長して形成されている。接続部534d及び接続部534eは、それぞれ攪拌羽根534がスクリュー導入管546を通過する回転位置となるときに、スクリュー導入管546と所定の隙間δ2離間するように形成されている。
【0145】
以上のような攪拌羽根534は、全体として板状に形成されている。尚、上述の板状の部材を2枚以上準備して、これらを回転方向に等間隔となるように組み合わせたような攪拌羽根を用いてもよく、その場合には攪拌性能が向上する。ホッパ543内の粉体542は、スクリュー544に接続されたスクレーパ551によってホッパ内壁の付着や棚吊り(ブリッジ)が防止される。
【0146】
粉体542が微粉で、空気を多量に含む場合は、図17に示すスクリュー544の途中に設けられる脱気装置535により、粉体を液体に供給する前に粉体から空気を除去できる。脱気装置535は、金属若しくはセラミック製のフィルターであり、真空ポンプ552によって導入管に設置された部分から粉体内に含まれる空気を吸い出す機能をもつ。これにより、粉体に含まれる空気を抜く(脱気する)ことにより、液体中に空気が混入されることを抑制することができ、特に液体の粘度が高い場合には、後工程の脱泡時間の短縮に効果がある。また、粉体のみかけ密度(「嵩密度(bulk density)」ともいう。)が増えるため、供給速度も大きくすることができる。嵩密度は、体積が既知の容器に粉体を充填して、その粉体の質量を測定し、測定により得られた質量を体積で割った値を意味する。
【0147】
タンク装置501は、上述したような構成とされたスクリュー式粉体供給装置531や攪拌機533により、タンク内面に粉体原料が付着することや、タンク内に粉体原料を飛散させることを防止し、粉体が液面に漂うことや凝集したりすることを防止し、適切で効率的な分散処理を実現する。
【0148】
このタンク装置501は、単体でも分散機能を有するが、図16や図17に示すように配管403により分散能力が高い剪断式の分散装置421等に接続し、ポンプ402によってタンク内の液体を循環させて分散装置421による分散処理を繰り返すことで、分散能力を格段に向上させることができる。
【0149】
タンク装置501を有する循環式分散システム500における循環操作は、粉体と液体の比重差が大きいとき等に、粉体が液体表面に滞留することや、逆に粉体がタンク底に堆積することを防ぐことができ、すなわち、均一な分散がされなくなることを防ぐ。また、この循環式分散システムに分散装置421を設けた場合には、特に液体の粘度が高い場合等に、効果的である。液体の粘度が高い場合には、タンク装置501の攪拌羽根で対流を起こすことは難しい場合があり、分散効果が低下するが、剪断式の分散装置は、高粘度の混合物に対してもその分散機能を発揮できるからである。
【0150】
また、タンク装置501においては、循環式分散システム500の配管403により分散装置421で分散処理されて循環された混合物4をタンク内に戻す(循環混合物をタンクに供給する)導入管553が設けられ、導入管553の先端がタンク内の液中に浸す程度に形成されている。この導入管553により、戻ってきた混合物4がタンク内の液面に落下し飛沫がタンク内壁に付着することを防ぐ。
【0151】
タンク本体541に接続された減圧ポンプ536は、混合物4の脱泡処理用として機能する。
【0152】
以上のような循環式分散システム500において、運転時には、バルブ409は、常時開とされ、バルブ410、411は、常時閉とされている。分散処理が終了したらバルブ409は、閉とされ、バルブ410は、開とされる。これにより、バルブ410から処理物を排出・回収することができる。また、分散装置421や配管403の中に残った混合物は、バルブ411を開とすることで排出、回収される。なお、混合物の排出・回収用のバルブはタンクや配管の任意の場所に取り付けることができる。
【0153】
循環式分散システム500は、上述した分散装置421を有することにより、効率的で適切な分散処理を行うことを実現し、よって、システム全体としても分散処理機能が向上するとともに、分散処理時間の短縮を実現する。また、循環式分散システム500は、駆動機構420を有することにより、上述した循環式分散システム400と同様の効果を有するが、その作用や効果は、循環式分散システム400の場合と同じであるので、ここでは詳細は省略する。
【0154】
さらに、循環式分散システム500は、タンク装置501を有することにより、タンク内面に粉体原料が付着することや、タンク内に粉体原料を飛散させることを防止し、粉体が液面に漂うことや凝集したりすることを防止し、適切で効率的な分散処理を実現する。また、貯蔵ホッパや配管での詰まりの発生を防止でき、液中への空気の混入を最小限に抑え、微粉の場合でも供給速度を上げて連続的に供給することを可能とする。このように、循環式分散システム500は、適切な分散を実現する。
【0155】
具体的には、タンク装置501及びこれを用いた循環式分散システム500は、スクリューフィーダの先端を液中に浸すことにより、粉体原料が貯蔵タンク内の空間中に放出されないようにでき、拡散した粉体原料がタンク内面に付着するという問題や、粉体が液面に落下するときに飛沫が跳ね上がり、タンク内面に付着するという問題を解消できる。
【0156】
また、タンク装置501及びこれを用いた循環式分散システム500は、バッチ分散処理を行うものであり、貯蔵タンクを攪拌する羽根を、スクリューフィーダから液中に供給された粉体を直接液体中に混ぜ込むように作動させることにより、粉体原料が液体中に混ぜ込まれ、粉体が液表面近くで漂うことや、凝集することを防ぎ、液体中に分散することができる、
【0157】
また、タンク装置501及びこれを用いた循環式分散システム500は、スクリューフィーダの途中で脱気を行うことにより、液体への空気の混入が最小限に抑えられるため、液体への空気の混入が最小限に抑えられる。それと共に、粉体のみかけ密度(嵩密度)が大きくなることで、供給速度を上げることができ、液中における粉体の浮き上がりも抑制することができる。
【0158】
尚、循環式分散システム500に用いることができるタンク装置は、タンク装置501に限られるものではなく、例えば、図19に示すタンク装置561であってもよい。すなわち、図19のタンク装置561は、タンク装置501の変形例であり、スクリュー式粉体供給装置531のホッパ543に減圧機構562が追加されたことを除いてタンク装置501と同様の構成を有するので、共通部分については同一の符号を付すとともに詳細な説明は省略する。
【0159】
タンク装置561は、図19に示すように、スクリュー式粉体供給装置531、攪拌機533、攪拌羽根534、減圧ポンプ536、ホッパ543、スクリュー544、電動機ユニット545、導入管546、電動機ユニット548、スクレーパ551等を有する。尚、タンク装置561は、脱気装置535を設けない場合の例について説明したが、タンク装置501と同様に脱気装置535を設けてもよく、その場合は、脱気装置による効果が得られてより適正な分散を実現する。
【0160】
さらに、タンク装置561は、減圧機構562を有している。減圧機構562は、ホッパ543の上部に設けられる供給受け部563と、供給受け部563とホッパ543とを接続する減圧用配管564及び接続配管565と、バルブ566,567と、減圧ポンプ568とを有する。バルブ566,567は、通常時は閉とされる。
【0161】
粉体をスクリュー式粉体供給装置531に供給する場合には、バルブ566を開として、供給受け部563から減圧用配管564に粉体を供給する。次いで、バルブ566を閉として、減圧ポンプ568により減圧用配管564内を減圧する。減圧した後に、減圧ポンプ568で減圧したまま、バルブ567を開として、減圧用配管564内の脱気済みの粉体を接続配管565を介してホッパ543内に導き、完了したらバルブ567を閉とする。その後、減圧ポンプ568を停止する。尚、減圧ポンプ568の停止は、バルブ567の開動作の前に行ってもよい。
【0162】
以上の減圧機構562は、スクリュー式粉体供給装置531内を常に減圧した状態にすることができ、粉体内の空気を取り除いた状態とすることができ脱泡処理を早期に完了できるとともに、上述した減圧ポンプ536の機能を最大限発揮できる。
【0163】
尚、循環式分散システム500に用いることができるタンク装置は、タンク装置501,561に限られるものではなく、例えば、図20に示すタンク装置571であってもよい。すなわち、図20のタンク装置571は、タンク装置501の変形例であり、スクリュー式粉体供給装置の取り付け位置と、攪拌機の取り付け位置及び構造と、攪拌を補強する構造が追加されたことを除いてタンク装置501と同様の構成を有するので、共通部分については同一の符号を付すとともに詳細な説明は省略する。
【0164】
タンク装置571は、図20に示すように、スクリュー式粉体供給装置531と同一の構成とされたスクリュー式粉体供給装置573、ホッパ543、スクリュー544、電動機ユニット545、導入管546、電動機ユニット548、スクレーパ551等を有する。スクリュー式粉体供給装置573の粉体供給部先端574がタンク装置571内の混合物4中に挿入されている。尚、タンク装置571は、脱気装置535を設けない場合の例について説明したが、タンク装置501と同様に脱気装置535を設けてもよく、その場合は、それぞれの効果が得られてより適正な分散を実現する。また、図19で説明した減圧機構562を追加してもよく、その場合は、減圧機構562の効果が得られてより適正な分散を実現する。
【0165】
タンク装置571は、タンク装置501内の混合物4を攪拌する攪拌機572を有している。水平面内において、スクリュー式粉体供給装置573は、タンク本体541の中心部付近に取り付けられており、攪拌機572は中心から偏倚した位置に取り付けられている。粉体供給部先端574は、攪拌機572の攪拌部分(攪拌羽根575)の位置と比較してタンク本体541の排出口541bに近接する位置に配置されている。
【0166】
タンク装置571は、スクリューフィーダとその導入管の先端を液中に浸す際に、タンクの排出口に近づけることにより、循環する流れによって粉体原料が液体中に混ぜ込まれ、粘度が高い液体の場合も、粉体が液表面近くで漂うことや、凝集することを防ぎ、液体中に分散することができる。
【0167】
また、粉体供給部先端574に、スクリュー先端羽根576が設けられる。スクリュー先端羽根576は、スクリュー式粉体供給装置573のスクリュー544の軸544aと一体に回転される。
【0168】
タンク装置571では、スクリュー544や電動機ユニット545などをタンク中心に設置し、スクリュー544及び導入管546の先端(粉体供給部先端574)をタンクの排出口541bの近傍に設置している。タンク内の液体は排出口541bから強制的に流れ出るため、スクリュー544から液中に供給された粉体は液体の流れに巻き込まれ、液体とともに配管403を経て分散装置421に搬送される。特に粉体の比重が液体の比重よりも軽い場合、浮力によって液中を上昇し、液中に分散されないまま液面に暴露しタンク内の空間に拡散しやすいという問題が発生しやすいが、タンク装置571は、この問題を防止するという効果がある。攪拌羽根575は、プロペラ状、又はタービン状のものが用いられ、タンクの中心からずらして設置・駆動することで、攪拌羽根575の攪拌作用によって液体を対流させ、粉体の偏析などを防止できる。
【0169】
また、スクリュー先端羽根576は、図21に示すように、スクリュー544の軸544aに取り付けるための軸取付部576aと、軸取付部576aより外周側に設けられる羽根取付部576bと、羽根取付部576bの外面全周にわたり複数設けられる羽根部576cと、羽根取付部576b及び軸取付部576aを接続する接続部576dとを備える。尚接続部576dは、水平状態に対して傾斜した状態とされている。
【0170】
以上のような形状とされたスクリュー先端羽根576は、羽根取付部576b及び軸取付部576aを接続部576dで接続する構造とすることで、内部に大きく空間Sを取っているため粉体の流れを妨げないとともに次の効果を得る。すなわち、スクリュー先端羽根576は、内部の構成部材である接続部576dに傾斜が付いているため、回転によって攪拌機能と共に排出口541bに向かう流れを発生させる機能を有する。
【0171】
また、周囲の構成部材である羽根取付部576b及び羽根部576cは、傾斜が付いた多数の溝を有することとなり、回転によって排出口541bに向かう流れを発生させる機能を有する。従って、スクリュー先端羽根576は、粉体を液に分散するだけでなく、排出口に向かう流れを発生させるため、粉体の浮力による上昇の抑制を促進することができる。
【0172】
スクリュー先端羽根576を有するタンク装置571は、スクリューから液中に供給された粉体が凝集し、タンクから排出された後、途中の配管内で詰まることや、ポンプや分散機が過負荷となることを防ぐことができる。
【0173】
また、このタンク装置571を循環式分散システム500に用いた場合には、貯蔵タンクで処理された液体を排出したあと、再びタンクに戻して繰り返し処理を行う循環式の分散システムとなり、スクリュー544とその導入管546を排出口541bの近傍に設置することにより、液体の排出流れによって粉体を混ぜ込みながら処理をするので、効率的な分散処理を実現する。
【0174】
以上のように図19及び図20に示すタンク装置561,571は、上述の特有の構成により特有の効果を得るのみならず、タンク装置501と同様に、スクリュー式粉体供給装置531,571及び攪拌機533,572を有することにより、タンク内面に粉体原料が付着することや、タンク内に粉体原料を飛散させることを防止し、粉体が液面に漂うことや凝集したりすることを防止し、適切で効率的な分散処理を実現する。さらに、タンク装置561,571は、上述したタンク装置501で説明した構成と同様の構成を持つ場合には、その構成による効果も同様に享受しうる。
【0175】
さらに、タンク装置561,571を用いた循環式分散システム500は、上述のタンク装置561,571自体の作用効果に加えて液中への空気の混入を最小限に抑え、微粉の場合でも供給速度を上げて連続的に供給することを可能として、適切な分散を実現する。
【0176】
以上のように、図16〜図21を用いて循環式分散システム500に用いうるタンク装置501,561,571について説明したが、これらは、循環式分散システム500に用いられてその機能を最大限発揮するものではあるが、単体でもその分散機能を有するものである。
【0177】
すなわち、図22のようなタンク装置581のように構成してもよい。尚、このタンク装置581は、循環用の構成(導入管553,排出口541b)を有さないことを除いて、図17のタンク装置501と同様であるので、共通部分については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0178】
タンク装置581は、図22に示すように、スクリュー式粉体供給装置531、攪拌機533、攪拌羽根534、ホッパ543、スクリュー544、電動機ユニット545、導入管546、電動機ユニット548、スクレーパ551等を有する。尚、タンク装置581は、脱気装置535、減圧ポンプ536を設けない場合の例について説明したが、タンク装置501と同様に脱気装置535、減圧ポンプ536を設けてもよく、その場合は、これらによる効果が得られてより適正な分散を実現する。
【0179】
タンク装置581は、スクリュー式粉体供給装置531及び攪拌機533を有することにより、タンク内面に粉体原料が付着することや、タンク内に粉体原料を飛散させることを防止し、粉体が液面に漂うことや凝集したりすることを防止し、適切で効率的な分散処理を実現する。尚、ここでは、タンク装置501を単体で用いるようにした変形例としてタンク装置581について説明したが、タンク装置561,571も同様に単体で用いても同様の効果が得られる。
【0180】
次に、タンク装置501,561,571,581を用いた分散方法について説明する。当該分散方法は、スラリー状又は液体状の処理原料をタンク装置501,561,571,581(以下「タンク装置501等」という。)のタンク本体541に貯蔵するとともに該処理原料に混合する粉状の添加物を供給して分散する。ここで、タンク本体541に一体となるように設けられるスクリュー式粉体供給装置531,573の粉体供給部先端532,574がタンク本体内の混合物中に挿入された状態で、タンク本体内の処理原料に前記添加物を供給して分散する点に特徴を有する。
【0181】
また、タンク装置501,561,571を用いた循環式分散システム500を用いた分散方法は、循環ポンプ402により、タンク装置501,561,571や、分散装置421等や、配管403内を混合物を循環させながら分散させるものであり、タンク本体541に一体となるように設けられるスクリュー式粉体供給装置531,573の粉体供給部先端532,574がタンク本体内の混合物中に挿入された状態で、タンク本体内の処理原料に前記添加物を供給して分散する点に特徴を有する。
【0182】
また、上述したこれらの当該分散方法において、添加物を供給して分散する際に、タンク装置501等に設けた攪拌機533により、タンク本体内の処理原料及び添加物からなる混合物を攪拌するとともに、攪拌機の攪拌羽根534が粉体供給部先端からタンク本体内の処理原料液中に供給された添加物粉体を掻き出しながら分散する点にも特徴を有する。
【0183】
また、当該分散方法において、添加物を供給する際に、タンク装置に設けた脱気装置535により、粉体に含まれる空気を脱気する点にも特徴を有する。
【0184】
また、当該分散方法において、添加物を供給して分散する際に、タンク装置に設けた攪拌機572により、タンク本体内の処理原料及び添加物からなる混合物を攪拌し、粉体供給部先端574は、攪拌機572と比較してタンク本体の排出口に近接する位置に配置されている点にも特徴を有する。
【0185】
また、当該分散方法において、添加物を供給して分散する際に、粉体供給部先端574に設けられるとともに、スクリュー式粉体供給装置573のスクリューの軸544aと一体に回転されるスクリュー先端羽根574により混合物を攪拌しながら分散する点にも特徴を有する。
【0186】
また、当該分散方法において、添加物を供給して分散する際に、タンク装置に設けた減圧ポンプ536により、タンク本体内部を減圧しながら分散する点にも特徴を有する。
【0187】
以上のような分散方法や、タンク装置501,561、571,581や、循環式分散システム500によれば、タンク内面に粉体原料が付着することや、タンク内に粉体原料を飛散させることを防止し、粉体が液面に漂うことや凝集したりすることを防止し、適切で効率的な分散処理を実現する。
【符号の説明】
【0188】
1 分散装置
2 ローター
3 ステータ
4 混合物
5,6 第1、第2ギャップ部
8 バッファ部
10 壁部
420 駆動機構
531 スクリュー式粉体供給装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローターと、該ローターに対向して配置される対向部材とを備え、前記ローター及び前記対向部材の間に、スラリー状又は液体状の混合物を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる剪断式分散装置において、
前記ローター及び前記対向部材の間に形成され、前記混合物を外周方向に導く複数のギャップ部と、
最外周側のギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、前記混合物を滞留させるバッファ部とを備え、
前記バッファ部は、該バッファ部を形成する外周側の壁部が前記ローターに設けられるように形成される剪断式分散装置。
【請求項2】
前記複数のギャップ部は、外周側に位置するギャップ部が、内周側に位置するギャップ部より隙間が狭くなる関係を有している請求項1記載の剪断式分散装置。
【請求項3】
前記ローター及び前記対向部材は、前記ローターの回転軸が鉛直方向に平行であるように配置され、
前記対向部材が下方側に位置している請求項2記載の剪断式分散装置。
【請求項4】
前記対向部材は、前記ギャップ部を形成する部分が、外周に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている請求項3記載の剪断式分散装置。
【請求項5】
前記ローター及び前記対向部材のいずれか一方又は両方には、前記ローターの回転中心位置から前記混合物が供給される供給口が設けられている請求項4記載の剪断式分散装置。
【請求項6】
前記ローター及び前記対向部材のいずれか一方又は両方には、前記ローター及び前記対向部材の間の混合物を冷却する冷却液が流通される冷却液流通部が設けられる請求項5記載の剪断式分散装置。
【請求項7】
前記複数のギャップ部は、2mm以下の隙間を有して前記ローター及び前記対向部材の間に形成されている請求項6記載の剪断式分散装置。
【請求項8】
前記最外周側のギャップ部の内周側に位置するギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、前記混合物を滞留させる第2のバッファ部とを備える請求項2記載の剪断式分散装置。
【請求項9】
前記ローター及び前記対向部材は、前記ローターの回転軸が水平方向に平行であるように配置されている請求項2記載の剪断式分散装置。
【請求項10】
前記ローター及び前記対向部材の少なくともいずれか一方を駆動することにより、他方に対して近接及び離間する方向に駆動する駆動機構を備える請求項1記載の剪断式分散装置。
【請求項11】
前記駆動機構を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記ローター及び前記対向部材の間の混合物の圧力を検出する圧力センサ、及び前記ローター及び前記対向部材間から放出される混合物の温度を検出する温度センサの一方又は両方の検出結果に基づいて、前記ローター及び前記対向部材の対向間隔を調整する請求項10記載の剪断式分散装置。
【請求項12】
前記駆動機構は、サーボシリンダである請求項11記載の剪断式分散装置。
【請求項13】
当該剪断式分散装置は、混合物を循環させながら分散させる循環式分散システムに用いられるとともに、処理原料と第1の添加物とを混合する第1の混合と、該第1の混合が完了することにより得られた第1の混合物と第2の添加物とを混合する第2の混合とを分散することにより行う装置であり、
前記駆動機構は、前記第1の混合が完了して前記第2の混合を開始する際に、前記ローター及び前記対向部材の対向間隔を変更する請求項10記載の剪断式分散装置。
【請求項14】
前記処理原料は、水であり、前記第1の添加物は、増粘材であり、前記第2の添加物は、活物質である請求項13記載の剪断式分散装置。
【請求項15】
前記駆動機構は、前記第1の混合において、開始時は前記対向間隔を大きく設定して分散が進むとともに徐々に間隔を小さく変化させるとともに、前記第1の混合が完了して前記第2の混合を開始する際に、前記対向間隔を更に小さく変更する請求項14記載の剪断式分散装置。
【請求項16】
前記対向部材は、前記ローターの回転軸と平行な回転軸を有するとともに、前記ローターの回転方向とは反対方向に回転される第2のローターである請求項1乃至請求項15の内いずれか1項に記載の剪断式分散装置。
【請求項17】
請求項1乃至請求項15の内いずれか1項に記載の剪断式分散装置と、
前記剪断式分散装置の出口側に接続されるタンクと、
前記混合物を循環させる循環ポンプと、
前記剪断式分散装置、前記タンク及び前記循環ポンプを直列的に接続する配管とを備え、
前記混合物を循環させながら分散させる循環式分散システム。
【請求項18】
当該循環式分散システムは、処理原料と第1の添加物とを混合する第1の混合と、該第1の混合が完了することにより得られた第1の混合物と第2の添加物とを混合する第2の混合とを行う請求項17記載の循環式分散システム。
【請求項19】
前記処理原料は、水であり、前記第1の添加物は、増粘材であり、前記第2の添加物は、活物質である請求項18記載の循環式分散システム。
【請求項20】
請求項16記載の剪断式分散装置と、
前記剪断式分散装置の出口側に接続されるタンクと、
前記混合物を循環させる循環ポンプと、
前記剪断式分散装置、前記タンク及び前記循環ポンプを直列的に接続する配管とを備え、
前記混合物を循環させながら分散させる循環式分散システム。
【請求項21】
前記混合物は、スラリー状又は液体状の処理原料と粉体の添加物とが混合されてなり、
当該循環式分散システムは、前記処理原料を循環させ、該処理原料に前記添加物を添加させながら前記剪断式分散装置による分散を行うシステムであり、
前記剪断式分散装置には、前記対向部材に設けられた供給通路を介して前記循環される処理原料が供給され、
前記タンクには、前記タンク内の処理原料に添加物を供給するスクリュー式粉体供給装置が設けられ、
前記スクリュー式粉体供給装置の粉体供給部先端が前記タンク内の混合物中に挿入されている請求項17記載の循環式分散システム。
【請求項22】
前記タンクは、前記タンク内の混合物を攪拌する攪拌機を有し、
前記攪拌機の攪拌羽根が前記粉体供給部先端から前記タンク内の処理原料液中に供給された添加物粉体を掻き出す請求項21記載の循環式分散システム。
【請求項23】
前記スクリュー式粉体供給装置は、粉体に含まれる空気を脱気する脱気装置を有する請求項21記載の循環式分散システム。
【請求項24】
前記タンクは、前記タンク内の混合物を攪拌する攪拌機を有し、
前記粉体供給部先端は、前記攪拌機と比較して前記タンクの排出口に近接する位置に配置されている請求項21記載の循環式分散システム。
【請求項25】
前記粉体供給部先端に、スクリュー先端羽根が設けられ、
前記スクリュー先端羽根は、前記スクリュー式粉体供給装置のスクリューの軸と一体に回転される請求項24記載の循環式分散システム。
【請求項26】
前記タンクには、前記タンク内部を減圧する減圧ポンプが設けられる請求項21記載の循環式分散システム。
【請求項27】
剪断式分散装置と、前記剪断式分散装置の出口側に接続されるタンクと、前記混合物を循環させる循環ポンプと、前記剪断式分散装置、前記タンク及び前記循環ポンプを直列的に接続する配管とを備える循環式分散システムを用いて、前記混合物を循環させながら分散させる循環式分散方法において、
前記剪断式分散装置は、ローターと、該ローターに対向して配置される対向部材とを備え、前記ローター及び前記対向部材の間に、スラリー状又は液体状の混合物を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させるとともに、さらに、前記ローター及び前記対向部材の間に形成され、前記混合物を外周方向に導く複数のギャップ部と、最外周側のギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、前記混合物を滞留させるバッファ部とを備え、
前記バッファ部は、該バッファ部を形成する外周側の壁部が前記ローターに設けられるように形成される循環式分散方法。
【請求項28】
前記剪断式分散装置は、前記ローター及び前記対向部材の少なくともいずれか一方を駆動することにより、他方に対して近接及び離間する方向に駆動する駆動機構を備え、
前記ローター及び前記対向部材の間の混合物の圧力を検出する圧力センサ、及び前記ローター及び前記対向部材間から放出される混合物の温度を検出する温度センサの一方又は両方の検出結果に基づいて、前記ローター及び前記対向部材の対向間隔を調整しながら分散処理を行う請求項27記載の循環式分散方法。
【請求項29】
処理原料を循環させ、該処理原料に第1の添加物を添加させながら前記剪断式分散装置による分散を行うことで前記処理原料と前記第1の添加物とを混合して第1の混合物を得る第1の混合工程と、
前記第1の混合工程で得られた前記第1の混合物を循環させ、該第1の混合物に第2の添加物を添加させながら前記剪断式分散装置による分散を行うことで前記第1の混合物と前記第2の添加物とを混合して第2の混合物を得る第2の混合工程とを有する請求項27記載の循環式分散方法。
【請求項30】
前記第1の混合工程が完了して前記第2の混合工程を開始する際に、前記ローター及び前記対向部材の対向間隔を変更する請求項29記載の循環式分散方法。
【請求項31】
前記処理原料は、水であり、前記第1の添加物は、増粘材であり、前記第2の添加物は、活物質である請求項30記載の循環式分散方法。
【請求項32】
前記タンクには、前記タンク内の処理原料に添加物を供給するスクリュー式粉体供給装置が設けられ、前記スクリュー式粉体供給装置の粉体供給部先端が前記タンク内の混合物中に挿入された状態で混合物を循環させながら分散させる請求項27記載の循環式分散方法。
【請求項1】
ローターと、該ローターに対向して配置される対向部材とを備え、前記ローター及び前記対向部材の間に、スラリー状又は液体状の混合物を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させる剪断式分散装置において、
前記ローター及び前記対向部材の間に形成され、前記混合物を外周方向に導く複数のギャップ部と、
最外周側のギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、前記混合物を滞留させるバッファ部とを備え、
前記バッファ部は、該バッファ部を形成する外周側の壁部が前記ローターに設けられるように形成される剪断式分散装置。
【請求項2】
前記複数のギャップ部は、外周側に位置するギャップ部が、内周側に位置するギャップ部より隙間が狭くなる関係を有している請求項1記載の剪断式分散装置。
【請求項3】
前記ローター及び前記対向部材は、前記ローターの回転軸が鉛直方向に平行であるように配置され、
前記対向部材が下方側に位置している請求項2記載の剪断式分散装置。
【請求項4】
前記対向部材は、前記ギャップ部を形成する部分が、外周に向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている請求項3記載の剪断式分散装置。
【請求項5】
前記ローター及び前記対向部材のいずれか一方又は両方には、前記ローターの回転中心位置から前記混合物が供給される供給口が設けられている請求項4記載の剪断式分散装置。
【請求項6】
前記ローター及び前記対向部材のいずれか一方又は両方には、前記ローター及び前記対向部材の間の混合物を冷却する冷却液が流通される冷却液流通部が設けられる請求項5記載の剪断式分散装置。
【請求項7】
前記複数のギャップ部は、2mm以下の隙間を有して前記ローター及び前記対向部材の間に形成されている請求項6記載の剪断式分散装置。
【請求項8】
前記最外周側のギャップ部の内周側に位置するギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、前記混合物を滞留させる第2のバッファ部とを備える請求項2記載の剪断式分散装置。
【請求項9】
前記ローター及び前記対向部材は、前記ローターの回転軸が水平方向に平行であるように配置されている請求項2記載の剪断式分散装置。
【請求項10】
前記ローター及び前記対向部材の少なくともいずれか一方を駆動することにより、他方に対して近接及び離間する方向に駆動する駆動機構を備える請求項1記載の剪断式分散装置。
【請求項11】
前記駆動機構を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記ローター及び前記対向部材の間の混合物の圧力を検出する圧力センサ、及び前記ローター及び前記対向部材間から放出される混合物の温度を検出する温度センサの一方又は両方の検出結果に基づいて、前記ローター及び前記対向部材の対向間隔を調整する請求項10記載の剪断式分散装置。
【請求項12】
前記駆動機構は、サーボシリンダである請求項11記載の剪断式分散装置。
【請求項13】
当該剪断式分散装置は、混合物を循環させながら分散させる循環式分散システムに用いられるとともに、処理原料と第1の添加物とを混合する第1の混合と、該第1の混合が完了することにより得られた第1の混合物と第2の添加物とを混合する第2の混合とを分散することにより行う装置であり、
前記駆動機構は、前記第1の混合が完了して前記第2の混合を開始する際に、前記ローター及び前記対向部材の対向間隔を変更する請求項10記載の剪断式分散装置。
【請求項14】
前記処理原料は、水であり、前記第1の添加物は、増粘材であり、前記第2の添加物は、活物質である請求項13記載の剪断式分散装置。
【請求項15】
前記駆動機構は、前記第1の混合において、開始時は前記対向間隔を大きく設定して分散が進むとともに徐々に間隔を小さく変化させるとともに、前記第1の混合が完了して前記第2の混合を開始する際に、前記対向間隔を更に小さく変更する請求項14記載の剪断式分散装置。
【請求項16】
前記対向部材は、前記ローターの回転軸と平行な回転軸を有するとともに、前記ローターの回転方向とは反対方向に回転される第2のローターである請求項1乃至請求項15の内いずれか1項に記載の剪断式分散装置。
【請求項17】
請求項1乃至請求項15の内いずれか1項に記載の剪断式分散装置と、
前記剪断式分散装置の出口側に接続されるタンクと、
前記混合物を循環させる循環ポンプと、
前記剪断式分散装置、前記タンク及び前記循環ポンプを直列的に接続する配管とを備え、
前記混合物を循環させながら分散させる循環式分散システム。
【請求項18】
当該循環式分散システムは、処理原料と第1の添加物とを混合する第1の混合と、該第1の混合が完了することにより得られた第1の混合物と第2の添加物とを混合する第2の混合とを行う請求項17記載の循環式分散システム。
【請求項19】
前記処理原料は、水であり、前記第1の添加物は、増粘材であり、前記第2の添加物は、活物質である請求項18記載の循環式分散システム。
【請求項20】
請求項16記載の剪断式分散装置と、
前記剪断式分散装置の出口側に接続されるタンクと、
前記混合物を循環させる循環ポンプと、
前記剪断式分散装置、前記タンク及び前記循環ポンプを直列的に接続する配管とを備え、
前記混合物を循環させながら分散させる循環式分散システム。
【請求項21】
前記混合物は、スラリー状又は液体状の処理原料と粉体の添加物とが混合されてなり、
当該循環式分散システムは、前記処理原料を循環させ、該処理原料に前記添加物を添加させながら前記剪断式分散装置による分散を行うシステムであり、
前記剪断式分散装置には、前記対向部材に設けられた供給通路を介して前記循環される処理原料が供給され、
前記タンクには、前記タンク内の処理原料に添加物を供給するスクリュー式粉体供給装置が設けられ、
前記スクリュー式粉体供給装置の粉体供給部先端が前記タンク内の混合物中に挿入されている請求項17記載の循環式分散システム。
【請求項22】
前記タンクは、前記タンク内の混合物を攪拌する攪拌機を有し、
前記攪拌機の攪拌羽根が前記粉体供給部先端から前記タンク内の処理原料液中に供給された添加物粉体を掻き出す請求項21記載の循環式分散システム。
【請求項23】
前記スクリュー式粉体供給装置は、粉体に含まれる空気を脱気する脱気装置を有する請求項21記載の循環式分散システム。
【請求項24】
前記タンクは、前記タンク内の混合物を攪拌する攪拌機を有し、
前記粉体供給部先端は、前記攪拌機と比較して前記タンクの排出口に近接する位置に配置されている請求項21記載の循環式分散システム。
【請求項25】
前記粉体供給部先端に、スクリュー先端羽根が設けられ、
前記スクリュー先端羽根は、前記スクリュー式粉体供給装置のスクリューの軸と一体に回転される請求項24記載の循環式分散システム。
【請求項26】
前記タンクには、前記タンク内部を減圧する減圧ポンプが設けられる請求項21記載の循環式分散システム。
【請求項27】
剪断式分散装置と、前記剪断式分散装置の出口側に接続されるタンクと、前記混合物を循環させる循環ポンプと、前記剪断式分散装置、前記タンク及び前記循環ポンプを直列的に接続する配管とを備える循環式分散システムを用いて、前記混合物を循環させながら分散させる循環式分散方法において、
前記剪断式分散装置は、ローターと、該ローターに対向して配置される対向部材とを備え、前記ローター及び前記対向部材の間に、スラリー状又は液体状の混合物を遠心力によって外周方向に通過させることによって分散させるとともに、さらに、前記ローター及び前記対向部材の間に形成され、前記混合物を外周方向に導く複数のギャップ部と、最外周側のギャップ部とこの内周側に位置するギャップ部とを接続するように設けられ、前記混合物を滞留させるバッファ部とを備え、
前記バッファ部は、該バッファ部を形成する外周側の壁部が前記ローターに設けられるように形成される循環式分散方法。
【請求項28】
前記剪断式分散装置は、前記ローター及び前記対向部材の少なくともいずれか一方を駆動することにより、他方に対して近接及び離間する方向に駆動する駆動機構を備え、
前記ローター及び前記対向部材の間の混合物の圧力を検出する圧力センサ、及び前記ローター及び前記対向部材間から放出される混合物の温度を検出する温度センサの一方又は両方の検出結果に基づいて、前記ローター及び前記対向部材の対向間隔を調整しながら分散処理を行う請求項27記載の循環式分散方法。
【請求項29】
処理原料を循環させ、該処理原料に第1の添加物を添加させながら前記剪断式分散装置による分散を行うことで前記処理原料と前記第1の添加物とを混合して第1の混合物を得る第1の混合工程と、
前記第1の混合工程で得られた前記第1の混合物を循環させ、該第1の混合物に第2の添加物を添加させながら前記剪断式分散装置による分散を行うことで前記第1の混合物と前記第2の添加物とを混合して第2の混合物を得る第2の混合工程とを有する請求項27記載の循環式分散方法。
【請求項30】
前記第1の混合工程が完了して前記第2の混合工程を開始する際に、前記ローター及び前記対向部材の対向間隔を変更する請求項29記載の循環式分散方法。
【請求項31】
前記処理原料は、水であり、前記第1の添加物は、増粘材であり、前記第2の添加物は、活物質である請求項30記載の循環式分散方法。
【請求項32】
前記タンクには、前記タンク内の処理原料に添加物を供給するスクリュー式粉体供給装置が設けられ、前記スクリュー式粉体供給装置の粉体供給部先端が前記タンク内の混合物中に挿入された状態で混合物を循環させながら分散させる請求項27記載の循環式分散方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−147936(P2011−147936A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−32376(P2011−32376)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32376(P2011−32376)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】
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