説明

力覚付与型入力装置

【課題】 小型化が可能で安価な複合操作型の力覚付与型入力装置を提供すること。
【解決手段】 回転操作およびスライド操作が可能な操作体2と、モータ軸4aが操作体2にクラッチ機構3を介して連結されこの操作体2に回転力を付与するモータ4と、このモータ4をスライド可能に支持するモータホルダ5と、モータ軸4aと同軸状に連結されこのモータ軸4aと一体的に回転するピニオン9と、このピニオン9と噛合するラック11と、このラック11を回転自在に支持するラックホルダ10と、操作体2のスライド操作時にラック11をスライド方向に固定するラック固定手段とを備え、このラック固定手段がモータ軸4aとラック11との間に介設されたアーム部材12を有している構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作体にその操作状態に応じた力覚が付与される力覚付与型入力装置に係り、特に、操作体の複合操作が可能な力覚付与型入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、力覚付与型入力装置の一例として、操作者によって手動で回転操作されるノブ(操作体)と、モータ軸がノブに固定されこのノブに回転力を与える回転モータと、ノブの操作状態を検出する検出手段と、この検出手段の出力信号に基づいて回転モータの駆動を制御する制御手段とを備え、ノブにその操作状態に応じた力覚を付与するように構成した車載電気機器用の力覚付与型入力装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このように構成された力覚付与型入力装置では、各種車載電気機器の所定操作においてノブの操作方向や操作量に応じてノブに種々の力覚を付与することができるので、操作者にノブの操作内容をブラインドタッチで報知することができ、操作者はノブが所望の方向に所望の操作量だけ操作されているか否かを感覚的に知ることができる。これにより、ノブの誤操作が防止され、複数の車載電気機器の所望の機能選択と機能調整とが1つのノブを操作することによって容易に行うことができるようになっている。
【0004】
上述した力覚付与型入力装置は、操作体を回転操作するタイプであるが、このような回転操作型の他、操作体を揺動操作するタイプも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この揺動操作型の力覚付与型入力装置では、揺動可能な操作部材(操作体)と、この操作部材に力覚を付与するための一対の回転モータと、操作部材の揺動位置を検出するための検出手段と、この検出手段の出力信号に基づいて前記回転モータの駆動を制御する制御部とを備え、操作部材にその操作状態に応じた力覚を付与するように構成されている。
【特許文献1】特開2003−100175号公報(第6−11頁、図1)
【特許文献2】特開2003−122439号公報(第4−11頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した2つの力覚付与型入力装置はそれぞれ操作体を回転操作するタイプと揺動操作するタイプであるが、これら回転操作および揺動操作を1つの操作体によって行う複合操作型にできれば、より多機能な操作を行うことが可能となる。これを実現するために、例えば、特許文献2に示す揺動操作型の力覚付与型入力装置において、操作部材の揺動操作に加えさらにこの操作部材の回転操作が可能な機構を付加し、この操作部材に回転力を付与する回転モータを新たに追加することが考えられる。しかしながら、このように構成した場合、操作部材の複合操作化のために、回転モータが3つに増加してしまい装置が大型化するばかりでなく、部品点数の増加によりコストアップを招くという問題が発生する。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化が可能で安価な複合操作型の力覚付与型入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の力覚付与型入力装置では、回転操作およびスライド操作が可能な操作体と、モータ軸が前記操作体に連結されこの操作体に回転力を付与するモータと、このモータをスライド可能に支持するモータ支持手段と、前記モータ軸と同軸状に連結され該モータ軸と一体的に回転するピニオンと、このピニオンと噛合するラックと、このラックを回転自在に支持するラック支持手段と、前記操作体のスライド操作時に前記ラックをスライド方向に固定するラック固定手段とを備える構成とした。
【0008】
このように構成された力覚付与型入力装置では、操作体のスライド操作時には、ラックが固定されることでモータの回転力が操作体のスライド方向に働く外力に変換されてこの操作体に伝達されると共に、操作体の回転操作時には、ラックが自由に回転することでモータの回転力がそのまま操作体に伝達される。これにより、1つのモータで回転操作時およびスライド操作時に操作体に力覚を付与することができ、複合操作型の力覚付与型入力装置の小型化が可能となると共に、部品点数の増加を抑えて低コスト化が可能となる。
【0009】
上記の構成において、前記操作体のスライド操作時に前記モータ軸の回転が前記操作体へ伝達されるのを防止するクラッチ機構を設けることが好ましく、このような構成を採用すると、操作体をスライド操作したときに、この操作体が回転してしまうことを防止できるので、より操作性に優れた複合操作型の力覚付与型入力装置が実現できる。
【0010】
また、上記の構成において、前記クラッチ機構が、前記モータ軸に固着され前記操作体を連結/解放可能に支持する回転駆動板と、前記操作体に回転可能に設けた回転板と、この回転板と前記回転駆動板との間に介設され前記操作体を前記回転駆動板と連結する方向へ付勢するコイルバネとを有し、前記操作体のスライド操作時に、この操作体を解放方向へ変位させることで前記回転駆動板による前記操作体への回転駆動を解除するように構成することが好ましく、このような構成を採用すると、クラッチ機構が簡単な構成で実現できるので、複合操作型の力覚付与型入力装置がさらに低コストで実現できる。
【0011】
また、上記の構成において、前記ラック固定手段が前記モータ軸と前記ラックとの間に介設されたアーム部材を有し、このアーム部材の一端を前記モータ軸に回転可能に連結し、該アーム部材の他端に突部を設けると共に、前記ラックに長孔を形成し、この長孔に前記アーム部材の突部を前記ラックの長さ方向へ移動可能に嵌合させることが好ましく、このような構成を採用すると、ラック固定手段が簡単な構成で実現できるので、複合操作型の力覚付与型入力装置がさらに低コストで実現できる。
【0012】
また、上記の目的を達成するために、本発明の力覚付与型入力装置では、回転操作および揺動操作が可能な操作体と、モータ軸が前記操作体に連結されこの操作体に回転力を付与するモータと、このモータを揺動可能に支持するモータ支持手段と、前記モータ軸と同軸状に連結され該モータ軸と一体的に回転するピニオンと、このピニオンと噛合するラックと、このラックを回転自在に支持するラック支持手段と、前記操作体の揺動操作時に前記ラックを揺動方向に固定するラック固定手段とを備える構成とした。
【0013】
このように構成された力覚付与型入力装置では、操作体の揺動操作時には、ラックが固定されることでモータの回転力が操作体の揺動方向に働く外力に変換されてこの操作体に伝達され、操作体の回転操作時には、ラックが自由に回転することでモータの回転力がそのまま操作体に伝達される。これにより、1つのモータで回転操作時および揺動操作時に操作体に力覚を付与することができ、複合操作型の力覚付与型入力装置の小型化が可能となると共に、部品点数の増加を抑えて低コスト化が可能となる。
【0014】
上記の構成において、前記ラック支持手段が前記ラックと一体的に回転するラックホルダを有すると共に、前記ラック固定手段が前記ラックホルダと係脱する方向に移動可能な操作ピンと、この操作ピンを離脱方向へ付勢する復帰バネとを有し、前記操作体の揺動操作時に前記操作ピンの操作によりこの操作ピンを前記ラックホルダと係合させることで、このラックホルダの回転を阻止するように構成することが好ましく、このような構成を採用すると、ラック固定手段が簡単な構成で実現できるので、複合操作型の力覚付与型入力装置がさらに低コストで実現できる。
【発明の効果】
【0015】
操作体の揺動またはスライド操作時には、ラックが固定されることでモータの回転力が操作体の操作方向に働く外力に変換されてこの操作体に伝達されると共に、操作体の回転操作時には、ラックが自由に回転することでモータの回転力がそのまま操作体に伝達される。これにより、1つのモータで回転操作時および揺動またはスライド操作時に操作体に力覚を付与することができ、複合操作型の力覚付与型入力装置の小型化が可能となると共に、部品点数の増加を抑えて低コスト化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の第1実施形態例に係る力覚付与型入力装置の平面図、図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3は該力覚付与型入力装置に備えられる操作体の底面図、図4は該力覚付与型入力装置に備えられる回転駆動板の平面図、図5は図2のV−V線に沿う断面図、図6はノブをX1方向への操作した状態を示す断面図、図7はノブのスライド操作時におけるピニオンとラックの関係を示す説明図である。なお、図5においては該力覚付与型入力装置に備えられるハウジングを省略している。また、以下の説明において、X方向が左右方向に、Y方向が前後方向に相当している。
【0017】
図1〜図7に示すように、本実施形態例に係る力覚付与型入力装置は、ハウジング1と、回転操作およびスライド操作が可能な操作体2と、モータ軸4aがクラッチ機構3を介して操作体2に連結されるモータ4と、このモータ4を支持するモータホルダ5と、モータホルダ5を弾性的に保持するコイルバネ6と、操作体2の操作方向を検出する検出スイッチ7と、モータ4の回転角を検出する回転検出部8と、モータ軸4aに同軸状に嵌着されたピニオン9と、ラックホルダ10と、このラックホルダ10に一体的に形成されピニオン9と噛合するラック11と、モータ軸4aとラック11との間に介設されるアーム部材12とから主として構成されている。
【0018】
ハウジング1は箱状を呈しており、上面中央部を開口する貫通孔1aと、貫通孔1aの周縁部において下方向へ凹ませた段差部1bを有している。また、このハウジング1は、高さ方向の中央部よりやや上方の位置において内周に沿って形成された第1の環状溝部1cと、この第1の環状溝部1cの上部において同様に内周に沿って形成された第2の環状溝部1dとを有している(図1参照)。また、ハウジング1の内底面にはバネ係止部1eが形成されている。操作体2は上下方向に貫通する中央孔2aを有すると共に、上端部にノブ2bが形成されている。また、この操作体2の下端部にはフランジ部2cが形成され、さらに、操作体2の下面における中央孔2aの周囲には複数の山形の歯を周方向に配列したスプライン部2dが形成されている(図3参照)。そして、この操作体2は貫通孔1aの上部に突出した状態でハウジング1に支持される。
【0019】
クラッチ機構3は回転駆動板31と回転板32およびコイルバネ33とで構成されており、このうち回転駆動板31は、モータ4から上方へ突出するモータ軸4aの先端に同軸状に嵌着された円柱状の基部31aと、この基部31aの上面に突設された中空円筒部31bを有している。そして、この中空円筒部31bは操作体2の中央孔2aに嵌合され、操作体2が回転駆動板31に対してモータ軸4aの軸線方向へスライド可能に、かつモータ軸4aの軸周りに回転可能に支持されるようになっている。図4に示すように、この基部31aの上面には、操作体2のスプライン部2dと対向しこのスプライン部2dと同様な形状を有するスプライン部31cが形成されている。また、回転板32は円板状を呈しており、ノブ2bの上面中央部に回転自在に支持されている。
【0020】
コイルバネ33は中央孔2aの内部に収納されており、その上下端部が前記中空円筒部31bの内底面および回転板32の下面にそれぞれ係止されている。このコイルバネ33によって操作体2が回転駆動板31と連結する方向へ付勢され、このとき操作体2のスプライン部2dが回転駆動板31のスプライン部31cに所定の圧接力で連結される。この状態では、回転駆動板31と操作体2とが一体的に回転可能であり、回転駆動板31の回転力が操作体2に伝達されるようになっている。一方、操作体2をコイルバネ33のバネ力に抗して回転駆動板31から離間させることにより各スプライン部2d,31c同士の連結が解放され、回転駆動板31の回転力が操作体2へ伝達されることを防止できるようになっている。
【0021】
モータホルダ5は、モータ4が同軸状に取り付けられる円板状のフランジ部5aと、モータ本体部4bの外周部を囲う円筒部5bと、この円筒部5bから右方へ突出した操作アーム5cと、円筒部5bの外周部に形成されたリング状のバネ係止部5dとを有している。そして、モータ4が収納されたモータホルダ5は、左右前後方向へ移動自在となるようにハウジング1に保持されている。すなわち、フランジ部5aの外径が第1の環状溝部1cの外径よりも小さく形成されていると共に、このフランジ部5aの外周部が第1の環状溝部1c内に挿入されており、このフランジ部5aの上下方向への移動が規制されるが、径方向へは操作体2のスライド操作量だけ移動できるようになっている。
【0022】
また、コイルバネ6はモータホルダ5とハウジング1の内底面との間に介設されており、その上下端部はバネ係止部5d,1eによってそれぞれ係止されている。このコイルバネ6のバネ力によって、モータホルダ5がX−Y直交座標の原点位置(中立位置)に弾性的に保持されるようになっている。したがって、モータ軸4aにクラッチ機構3を介して連結された操作体2もまた中立位置に保持され、このとき、操作体2のフランジ部2cがハウジング1の段差部1bに載置されるようになっている。検出スイッチ7はX1,X2,Y1,Y2の各方向へ傾倒可能なレバー7aを有するレバー型スイッチであり、ハウジング1の内側面に配設されている。この検出スイッチ7のレバー7aの先端部にはモータホルダ5の操作アーム5cが係合されており、モータホルダ5の移動方向、すなわち操作体2の操作方向が検出されるようになっている。
【0023】
回転検出部8は、モータ本体部4bから下方に突出したモータ軸4aに固着されたコード板8aと、モータホルダ5の円筒部5bに固定された透過型のフォトインタラプタ8bとを有しており、このフォトインタラプタ8bによりコード板8aの所定パターン(スリット)を読み取ることで、モータ軸4aに連結された操作体2の回転角に応じた信号を出力するようになっている。図5に示すように、ラックホルダ10はリング状を呈しており、ピニオン9を取り囲んだ状態で回転可能に支持されている。このラックホルダ10にはラック11が一体的に形成されており、ラック11はモータ軸4aに嵌着されたピニオン9に噛合している。すなわち、ラックホルダ10の外径寸法はハウジング1の第2の環状溝部1dの直径とほぼ同じ寸法とされると共に、ラックホルダ10の外周部が第2の環状溝部1d内に挿入されており、このラックホルダ10の上下方向への移動と径方向への移動が規制された状態で回転動作のみが可能となるようになっている。また、ラック11の上面にはこのラック11の長さ方向に沿って形成した長孔11aが設けられている。
【0024】
図1と図5に示すように、アーム部材12は平面視で細長い板状を呈しており、一端がモータ軸4aに回転可能に連結され、他端の下面に係合軸12aが植設されている。この係合軸12aは前記ラック11の長孔11aに移動自在に嵌合されている。なお、アーム部材12のモータ軸4aから係合軸12aまでの距離は、モータ軸4aから長孔11aの中心線に下ろした垂線の長さよりも大きくなるように設定されている。
【0025】
このように構成された力覚付与型入力装置においては、動作の詳細は後述するが、操作者が手動によりノブ2bを回転操作および前後左右方向へスライド操作させることが可能であり、ノブ2bの回転操作時には、フォトインタラプタ8bからの回転角情報に基づいてモータ4が図示しない制御部により制御されて所定の回転力(力覚)がノブ2bに付与される。また、ノブ2bのスライド操作時にも、フォトインタラプタ8bからの回転角情報に基づいてモータ4が前記制御部により制御されて所定の外力(力覚)がノブ2bに付与される。このように操作者にノブ2bの操作内容をブラインドタッチで報知することができ、操作者はノブ2bが所望の方向に所望の操作量だけ操作されているか否かを感覚的に知ることができる。これにより、ノブ2bの誤操作が防止され、例えば複数の電気機器の所望の機能選択と機能調整とが1つのノブ2bの回転およびスライド操作を含む複合操作により行うことができるようになっている。
【0026】
次に、上記の力覚付与型入力装置の動作について説明する。
【0027】
図1と図2に示すように、ノブ2bに操作力が加わらない状態では、モータ4が固定されたモータホルダ5はコイルバネ6のバネ力によって中立状態に保持され、モータ4にクラッチ機構3を介して連結される操作体2はX−Y直交座標の原点に位置している。このとき、操作体2のフランジ部2cがハウジング1の段差部1bに載置されていると共に、操作体2のスプライン部2dは回転駆動板31のスプライン部31cに結合されている。また、モータ軸4aに嵌着されたピニオン9はラックホルダ10の回転中心に位置している(図5参照)。この中立位置では、検出スイッチ7のレバー7aはモータホルダ5の操作アーム5cによっていずれの方向へも操作されておらずOFF状態となっている。
【0028】
この中立状態からノブ2bを回転操作すると、この回転操作力がクラッチ機構3を介してモータ軸4aに伝達されるため、ノブ2bの回転操作量がフォトインタラプタ8bによって検出され、この回転角情報に基づいてモータ4が上述したように図示しない制御部によって制御されてノブ2bに力覚が付与される。このとき、ノブ2bの回転に伴ってピニオン9が一体的に回転し、ピニオン9の回転力がこのピニオンと噛合するラック11に伝達されるが、図5に示すように、モータ軸4aがラックホルダ10の回転中心に位置しており、このラック11に伝達された力はラックホルダ10に回転トルクを発生させることになる。その結果、ラックホルダ10に設けられたラック11はピニオン9の周りを回転するだけであり、ノブ2bの回転操作時にはこのラック11は何ら機能することなく、モータ4によるノブ2bへの力覚付与がスムーズに行われる。
【0029】
一方、中立状態からノブ2bを例えば図6に示すようにX2の向きにスライド操作すると、ノブ2bと共にこのノブ2bに連結されたモータ4およびモータホルダ5がコイルバネ6のバネ力に抗して一体的にX2方向へスライドを開始する。このとき、操作体2のフランジ部2cが段差部1bから外側のハウジング1上面に乗り上げることにより、この操作体2はコイルバネ33のバネ力に抗して上方への変位を開始する。これにより、操作体2のスプライン部2dが回転駆動板31のスプライン部31cから解放され、回転駆動板31および回転板32が操作体2に対して回転自由とされるため、モータ軸4aの回転がノブ2bに伝達されることが防止される。
【0030】
また、このノブ2bのX2方向へのスライド操作によって、モータ軸4aに嵌着されたピニオン9は図7(a)の中立状態(このとき、ラック11はY軸に沿って延びる方向に位置しているものとする。)から操作体2と共にX2方向に移動を開始する。このピニオン9の移動に伴って、長孔11aに係合軸12aが嵌合されたアーム部材12によってラック11をモータ軸4a側に引っぱる力Fが発生し、この力Fの長孔11a内側面に直交する分力Fxによって、ラック11が一体化されたラックホルダ10(図5参照)は時計回りに回転を開始すると共に、図7(b)に示すように、ピニオン9のY2側においてラック11をX軸に沿って延びる方向へ瞬時に移動させる。この後、ピニオン9のさらなるX2方向への移動により、ピニオン9と共に移動するアーム部材12の係合軸12aがラック11の長孔11aに沿って移動していくことによりラックホルダ10の回転が阻止され、ラック11が操作体2のスライド方向(X2)に固定される。この状態でノブ2bをX2方向へスライド操作するのに伴い、ラック11に噛合するピニオン9が回転し、フォトインタラプタ8bによってその回転角が検出される。そして、この回転角情報に基づいてモータ4が制御部によって制御され、このモータ4の回転力がピニオン9とラック11を介してノブ2bのスライド方向に働く外力に変換されてこのノブ2bに力覚が付与される。
【0031】
また、ノブ2bを中立状態から例えば上記のX2方向とは反対方向であるX1方向にスライド操作させると、上述したX2方向へのスライド操作の場合と反対に、アーム部材12によってラック11をモータ軸4aとは反対側に押す力Fが発生し、この力の分力Fxによって、ラック11が一体化されたラックホルダ10は反時計回りに回転を開始すると共に、図7(c)に示すように、ピニオン9のY1側においてラック11をX軸に沿って延びる方向に瞬時に移動させる。以降は前述したX2方向へのスライド操作の場合と同様にノブ2bに所定の力覚が伝達される。また、例えば図7(d),(e)に示すように、ノブ2bをそれぞれY1およびY2方向へスライド操作する場合において、ノブ2bの操作方向にラック11の長さ方向が揃っている場合、ノブ2bのスライド操作が開始されてもラック11は回転することなくそのままの位置に固定され、以降はX1,X2方向へスライド操作する場合と同様にノブ2bには所定の力覚が伝達される。
【0032】
なお、図7(a)〜(e)では、ラック11がY軸に沿って延びる方向に位置している場合について説明したが、ノブ2bの操作方向に対してラック11が上記以外のいずれの方向を向いて位置している場合であっても、ノブ2bのスライドと共にラック11をこのノブ2bの操作方向に確実に固定させることができ、操作体2に安定して力覚が付与される。また、ノブ2bのスライド操作を停止すると、このノブ2bと一体的に移動するモータホルダ5に係止しているコイルバネ6の復元力によってノブ2bを中立位置に復帰させるようになっている。
【0033】
このように本実施形態例に係る力覚付与型入力装置にあっては、回転操作およびスライド操作が可能な操作体2と、モータ軸4aが操作体2に連結されこの操作体2に回転力を付与するモータ4と、このモータ4をスライド可能に支持するモータホルダ5と、モータ軸4aに同軸状に嵌着されこのモータ軸4aと一体的に回転するピニオン9と、このピニオン9と噛合するラック11と、このラック11を回転自在に支持するラックホルダ10と、モータ軸4aとラック11との間に介設されたアーム部材12とを備え、操作体2のスライド操作時にラック11をスライド方向に固定するようにしたので、操作体2のスライド操作時には、ラック11が固定されることでモータ4の回転力が操作体2のスライド方向に働く外力に変換されてこの操作体2に伝達されると共に、操作体2の回転操作時には、ラック11が自由に回転することでモータ4の回転力がそのまま操作体2に伝達される。これにより、1つのモータ4で回転操作時およびスライド操作時に操作体2に力覚を付与することができ、複合操作型の力覚付与型入力装置の小型化が可能となると共に、部品点数の増加を抑えて低コスト化が可能となる。
【0034】
また、操作体2のスライド操作時にモータ軸4aの回転が操作体2へ伝達されるのを防止するクラッチ機構3を設けたので、操作体2をスライド操作したときに、この操作体2が回転してしまうことを防止できる、より操作性に優れた複合操作型の力覚付与型入力装置が実現できる。
【0035】
また、クラッチ機構3が、モータ軸4aに固着され操作体2を連結/解放可能に支持する回転駆動板31と、操作体2に回転可能に設けた回転板32と、この回転板32と回転駆動板31との間に介設され操作体2を回転駆動板31と連結する方向へ付勢するコイルバネ33とを備え、操作体2のスライド操作時に、この操作体2を解放方向へ変位させることで回転駆動板31による操作体2への回転駆動を解除するように構成したので、クラッチ機構3が簡単な構成で実現でき、複合操作型の力覚付与型入力装置がさらに低コストで実現できる。
【0036】
また、ラック固定手段がモータ軸4aとラック11との間に介設されたアーム部材12を備え、このアーム部材12の一端をモータ軸4aに回転可能に連結し、他端に係合軸12aを設けると共に、ラック11に長孔11aを形成し、この長孔11aにアーム部材12の係合軸12aをラック11の長さ方向に移動自在に嵌合させたので、ラック固定手段が簡単な構成で実現でき、複合操作型の力覚付与型入力装置がさらに低コストで実現できる。
【0037】
なお、図1と図2に示すように、本実施形態例では、回転板32がノブ2bの上面中央部に露出した状態で操作体2に配設されるようにしたが、この操作体2に回転板32の回転を妨げることなくノブ2bの上面を覆うカバーを設けてもよい。このように構成すると、ノブ2bを手動でスライド操作する場合に、回転板32の回転が手のひらに伝わることがないので、より良好な操作感を得ることができる。
【0038】
図8は本発明の第2実施形態例に係る力覚付与型入力装置の断面図であり、図1〜図7に対応する部分には同一符号を付してある。
【0039】
前述した第1実施形態例が操作体を回転およびスライド操作するタイプの力覚付与型入力装置であるのに対し、図8に示すように、本実施形態例に係る力覚付与型入力装置は操作体を回転および揺動操作するタイプである。すなわち、この力覚付与型入力装置は、ハウジング13と、ハウジング13に対して回転および揺動可能に支持された操作体14と、この操作体14に連結されたモータ4と、このモータ4を支持するモータホルダ15と、操作体14と一体的に回転するピニオン17と、このピニオン17と歯合するラック19が一体形成されたラックホルダ18と、ハウジング13に設けられた操作ピン20と、この操作ピン20を付勢する復帰バネ21とから主として構成されている。
【0040】
ハウジング13は箱状を呈しており、このハウジング13は内周に沿って形成した環状溝部13aを有している。操作体14はノブ14aおよびシャフト部14bを有しており、この操作体14はシャフト部14bを介してモータ軸4aに連結されている。そして、モータ4を保持するモータホルダ15がハウジング13に設けた回転軸16を回転中心として回転可能に支持されることで、操作体14は矢印A方向に揺動自在になっている。なお、操作体14は図示しない弾性部材によって図8に示す中立位置に保持されている。また、ピニオン17がシャフト部14bに同軸状に嵌着されていると共に、このピニオン17に噛合するラック19が一体に形成されたラックホルダ18は、ハウジング13の環状溝部13aに回転可能に支持されている。なお、ピニオン17およびラック19は操作体14の揺動操作時に噛合可能なように、それぞれ円錐台状および扇状に形成されている。
【0041】
また、前記ラックホルダ18には上下方向に貫通する貫通孔18aが穿設されており、ハウジング13にはこの貫通孔18aに嵌合する操作ピン20が上下動可能に配設されている。操作ピン20は復帰バネ21によって上方へ付勢されており、押圧操作によりこの操作ピン20を復帰バネ21のバネ力に抗して貫通孔18aに嵌合させることで、ラックホルダ18の回転を規制し、ラック19を操作体14の揺動操作方向(A方向)に固定することができるようになっている。
【0042】
このように構成された力覚付与型入力装置において、ノブ14aを回転操作する場合は、第1実施形態例と同様にラックホルダ18に設けられたラック19はピニオン17の周りを回転するだけであり、ノブ14aの回転操作に対しこのラック19は何ら機能することなくモータ4によるノブ2bへの力覚付与がスムーズに行われる。また、ノブ14aをA方向へ揺動操作する場合、ラックホルダ18の回転を操作ピン20によって阻止することで、ラック19がノブ14aの揺動操作方向に固定されるので、モータ4の回転力がピニオン17を介してノブ14aの操作方向に働く外力に変換されてこの操作体2に力覚が伝達される。
【0043】
このように本実施形態例に係る力覚付与型入力装置にあっても、1つのモータ4で回転操作時および揺動操作時にノブ14aに力覚を付与することができ、複合操作型の力覚付与型入力装置の小型化が可能となると共に、部品点数の増加を抑えて低コスト化が可能となる。
【0044】
また、操作ピン20によってラックホルダ18の回転を阻止するように構成したので、ラック固定手段が簡単な構成で実現でき、回転および揺動操作型の力覚付与型入力装置がさらに低コストで実現できる。
【0045】
なお、本実施形態例では、操作体14の揺動操作方向が一方向(A方向)のみの場合を例示したが、例えば第1実施形態例のように操作体をX,Y方向に揺動操作させるような場合であっても、本発明は適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る力覚付与型入力装置の平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】該力覚付与型入力装置に備えられる操作体の底面図である。
【図4】該力覚付与型入力装置に備えられる回転駆動板の平面図である。
【図5】図2のV−V線に沿う断面図である。
【図6】ノブをX1方向へ操作した状態を示す断面図である。
【図7】ノブのスライド操作時におけるピニオンとラックの関係を示す説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態例に係る力覚付与型入力装置の断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1,13 ハウジング
2,14 操作体
3 クラッチ機構
31 回転駆動板
32 回転板
33 コイルバネ
4 モータ
4a モータ軸
5,15 モータホルダ
6 コイルバネ
7 検出スイッチ
8 回転検出部
9,17 ピニオン
10,18 ラックホルダ
11,19 ラック
12 アーム部材
12a 係合軸(突部)
20 操作ピン
21 復帰バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作およびスライド操作が可能な操作体と、モータ軸が前記操作体に連結されこの操作体に回転力を付与するモータと、このモータをスライド可能に支持するモータ支持手段と、前記モータ軸と同軸状に連結され該モータ軸と一体的に回転するピニオンと、このピニオンと噛合するラックと、このラックを回転自在に支持するラック支持手段と、前記操作体のスライド操作時に前記ラックをスライド方向に固定するラック固定手段とを備えたことを特徴とする力覚付与型入力装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記操作体のスライド操作時に前記モータ軸の回転が前記操作体へ伝達されるのを防止するクラッチ機構を設けたことを特徴とする力覚付与型入力装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記クラッチ機構が、前記モータ軸に固着され前記操作体を連結/解放可能に支持する回転駆動板と、前記操作体に回転可能に設けた回転板と、この回転板と前記回転駆動板との間に介設され前記操作体を前記回転駆動板と連結する方向へ付勢するコイルバネとを有し、前記操作体のスライド操作時に、この操作体を解放方向へ変位させることで前記回転駆動板による前記操作体への回転駆動を解除するように構成したことを特徴とする力覚付与型入力装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記ラック固定手段が前記モータ軸と前記ラックとの間に介設されたアーム部材を有し、このアーム部材の一端を前記モータ軸に回転可能に連結し、該アーム部材の他端に突部を設けると共に、前記ラックに長孔を形成し、この長孔に前記アーム部材の突部を前記ラックの長さ方向へ移動可能に嵌合させたことを特徴とする力覚付与型入力装置。
【請求項5】
回転操作および揺動操作が可能な操作体と、モータ軸が前記操作体に連結されこの操作体に回転力を付与するモータと、このモータを揺動可能に支持するモータ支持手段と、前記モータ軸と同軸状に連結され該モータ軸と一体的に回転するピニオンと、このピニオンと噛合するラックと、このラックを回転自在に支持するラック支持手段と、前記操作体の揺動操作時に前記ラックを揺動方向に固定するラック固定手段とを備えたことを特徴とする力覚付与型入力装置。
【請求項6】
請求項5の記載において、前記ラック支持手段が前記ラックと一体的に回転するラックホルダを有すると共に、前記ラック固定手段が前記ラックホルダと係脱する方向に移動可能な操作ピンと、この操作ピンを離脱方向へ付勢する復帰バネとを有し、前記操作体の揺動操作時に前記操作ピンの操作によりこの操作ピンを前記ラックホルダと係合させることで、このラックホルダの回転を阻止するように構成したことを特徴とする力覚付与型入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−4091(P2006−4091A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178577(P2004−178577)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】