説明

加圧式超音波振動接合方法および加圧式超音波振動接合装置

【課題】本発明は、薄厚の基体に対してリード線を接合する際に加圧式超音波振動接合を利用したとしても、当該リード線の撓みを抑制することができる加圧式超音波振動接合方法および加圧式超音波振動接合装置を提供する。
【解決手段】本発明では、薄厚の基体11を所定のテーブル10に設置する。さらに、当該基体11上に、導電性のリード線12を配置させる。そして、ボンディングツール4,5を用いて、所定テーブル10側に所定の圧力を加えながらリード線12上に超音波振動を印加することにより、基体11にリード線12を接合する。ここで、本発明では、押さえ部材9により、リード線12における超音波振動の印加部の両脇を、所定のテーブル10側に押圧しながら、リード線12に前記超音波振動を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加圧式超音波振動接合方法および加圧式超音波振動接合装置に関する発明であり、たとえば、薄厚の基体上に導電性を有するリード線を超音波振動接合する場合に適用される。
【背景技術】
【0002】
従来より、たとえばワイヤーハーネスにおける中間ジョイント接合の方法として、加圧式超音波振動接合が採用されている。当該加圧式超音波振動接合では、所定の部材にワークを配置し、当該ワークに対して押圧しながらの超音波振動を印加する。当該押圧と超音波振動とのエネルギーにより、ワークは所定の部材と強力に接合される。
【0003】
また、半導体の分野においても、電子部品を実装する際に加圧式超音波振動接合技術が採用されることもある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−6570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、たとえば2mm以下の薄厚のガラスのような基体に対して、そのガラス基体にクラックなどの損傷を与えずに、薄膜の導電性を有するリード線を接合する要請が高まってきている。当該接合の方法として、半田やペーストを利用した方法も考えられるが、簡易な接合方法、コスト低減、省エネルギーや常温での接合の観点から、加圧式超音波振動接合が採用されることが期待される。
【0006】
しかしながら、たとえば、基体に対してリード線を配置し、当該リード線に押圧しながらの超音波振動を印加すると、リード線が撓む(基体に対して湾曲して浮き上がる)という問題が生じる。特に、リード線上で所定の間隔を設けながら複数点の接合を行った場合には、各接合点間においてリード線が湾曲した浮き上がりが顕著に生じる。
【0007】
そこで、本発明は、薄厚の基体に対してリード線を接合する際に加圧式超音波振動接合を利用したとしても、当該リード線の撓みを抑制することができる加圧式超音波振動接合方法および加圧式超音波振動接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の加圧式超音波振動接合方法は、(A)薄厚の基体を所定のテーブルに設置する工程と、(B)前記基体上に、導電性のリード線を配置させる工程と、(C)前記所定テーブル側に所定の圧力を加えながら前記リード線上に超音波振動を印加することにより、前記基体に前記リード線を接合する工程とを、備えており、前記工程(C)は、前記リード線における前記超音波振動の印加部の両脇を、前記所定のテーブル側に押圧しながら、前記リード線に前記超音波振動を印加する工程である。
【0009】
また、本発明に係る請求項3に記載の加圧式超音波振動接合装置は、薄厚の基体を設置する所定のテーブルと、前記基体上に導電性を有するリード線を配置した状態で、前記所定テーブル側に所定の圧力を加えながら前記リード線上に超音波振動を印加するボンディングツールと、前記リード線における前記ボンディングツールによる前記超音波振動の印加部の両脇を、前記所定のテーブル側に押圧する押さえ部材とを、備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、リード線における超音波振動の印加部の両脇を、所定のテーブル側に押圧しながら、リード線に超音波振動を印加する。したがって、リード線の撓み(浮き上がり)を防止または抑制できる。
【0011】
また、当該押圧により、所定のテーブルに対する基体の固定がより強固なものとなり、リード線に対する加圧式超音波振動接合を施す際に、基体が所定のテーブルに対して移動することを防止できる。したがって、超音波振動によるリード線と基体との接合を、より短時間でより効率良く行うことが可能となる。
【0012】
また、リード線における超音波振動の印加部の両脇の2点を押さえ部材により押圧する。これにより、リード線を1点のみで押圧したときに発生した、加圧式超音波振動による基体への損傷を防止することができる。
【0013】
さらに、基体11とリード線12との間における接合の接合力(密着力)のばらつきを格段に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係る加圧式超音波振動接合装置の構成を示す図である。
【図2】押さえ部材がリード線を押圧する様子を示す拡大側面図である。
【図3】押さえ部材がリード線を押圧する様子を示す拡大断面図である。
【図4】押さえ部材がリード線を押圧する様子を示す拡大平面図である。
【図5】押さえ部材を省略した加圧式超音波振動接合装置を用いて加圧式超音波振動接合を実施した場合に生じる、問題点を説明するための図である。
【図6】実施の形態2に係る加圧式超音波振動接合の振動方向を説明する側面図である。
【図7】実施の形態2に係る加圧式超音波振動接合の振動方向を説明する平面図である。
【図8】実施の形態3に係る押さえ部材の構成を説明するための側面図である。
【図9】実施の形態3に係る押さえ部材の構成を説明するための断面図である。
【図10】実施の形態3に係る押さえ部材の他の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、薄厚の基体上に導電性を有するリード線を超音波振動接合することができる、加圧式超音波振動接合方法および加圧式超音波振動接合装置に関する発明である。本願発明では、基体は、基板または上面に所定の薄膜(たとえば、クロムや透明性導電膜など)が形成された基板のことである。また、当該基体の厚さは、たとえば2mm以下程度である。以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0016】
<実施の形態1>
図1は、本発明に係る加圧式超音波振動接合装置100の構成を示す図である。図1は、加圧式超音波振動接合装置100を横方向から見た図である。
【0017】
図1に示すように、加圧式超音波振動接合装置100は、電動シリンダー1、支柱部(シャフト)2、カップリング3、ロッド4、当接先端部5、振動ホーン部6、ホルダー7、超音波振動子8、押さえ部材9および所定のテーブル(たとえばアンビル)10を、各々備えている。
【0018】
なお、ロッド4および当接先端部5から成る構造体を、ボンディングツール4,5と称する。また、図1における図面上下方向がy軸方向であり、図1における図面左右方向がx軸方向である。また、他の図面で使用するx軸、y軸は、図1で示したx軸、y軸と同じ方向である。また、他の図面において、x軸とy軸とに共に直交するz軸を図示する場合もある。
【0019】
電動シリンダー1は、ボンディングツール4,5の駆動を制御することができる。具体的に、電動シリンダー1は、ボンディングツール4,5を、y軸方向に移動させることができる。さらに、電動シリンダー1は、当接先端部5を介してリード線12に対して所定の圧力を印加させることができる。なお、支柱部2は、電動シリンダー1に連接されている。したがって、当該電動シリンダー1の駆動力は、支柱部2に伝達される。
【0020】
カップリング3は、支柱部2とロッド4とを接続する部分である。電動シリンダー1からの動力は、支柱部2を介してロッド4へと伝達される。
【0021】
また、ロッド4は、ホルダー7により支持されており、当該ホルダー7内部においてロッド4は上下方向にガイドされている。当該ロッド4における所定のテーブル10側の先端部には、当接先端部5が配設されている。また、ロッド4には、振動ホーン6が接続されており、超音波振動子8で発生した超音波振動は、振動ホーン6を介してロッド4に伝達される。
【0022】
なお、当接先端部5は、超音波振動接合処理の際に、ワーク(リード線12)に当接される部分である。当該当接先端部5におけるリード線12との当接面には、所定のパターンの第一の凹凸形状が形成されており、当該第一の凹凸形状の面には、さらに第一の凹凸形状より小さな複数の第二の凹凸形状が形成されている。
【0023】
所定のテーブル10上には、薄厚の基体11が設置される。また、図示は省略しているが、所定のテーブル10上面には、少なくとも1以上穴が穿設されており、当該穴を介した真空吸着により、基体11は所定のテーブル10に固定される。
【0024】
基体11上に導電性を有するリード線12が配置された状態で、電動シリンダー1からの駆動力によりボンディングツール4,5は、所定のテーブル10側に向かう所定の圧力をリード線12に加えながら、当該ボンディングツール4,5は、当該リード線12上に超音波振動子8で発生した超音波振動を印加する。
【0025】
押さえ部材9は、超音波振動接合処理の際に、ワーク(リード線12)を所定のテーブル10側に押圧する。当該押さえ部材9がリード線12を押圧している状態を、図2乃至4に示す。
【0026】
図2は、当該押さえ部材9がリード線12を押圧している状態を、加圧式超音波振動接合装置100を横方向から見た拡大図である。また、図3は、当該押さえ部材9がリード線12を押圧している状態を、図1のx軸方向から見た拡大図である。また、図4は、当該押さえ部材9がリード線12を押圧している状態を、図1のy軸方向から見た拡大図である。なお、図2,4では図面簡略化の観点より、ボンディングツール4,5の図示を省略している。さらに、図4における砂地部分は、リード線12における超音波振動接合処理が施される領域である。
【0027】
押さえ部材9は、図示を省略しているが、シリンダーに接続されている。当該シリンダーからの動力により、押さえ部材9は、図1のy軸方向に移動し、所定のテーブル10側に押圧を印加する。図3,4に示すように、押さえ部材9は、リード線12におけるボンディングツール4,5による超音波振動の印加部の両脇を押圧する。
【0028】
つまり、超音波振動接合の際の線状のリード線12を平面視した場合(上方向から見た場合)、当該リード線12の延設方向に、押さえ部材9による第一の押圧部(z方向の幅10mm)、所定の距離(1mm)、超音波振動接合施工部(当接先端部5のz方向の幅)、所定の距離(1mm)、押さえ部材9による第二の押圧部(z方向の幅10mm)が存在することとなる(図3,4参照)。当該記載からわかるように、当接先端部5の端部から、当該端部に面する各押さえ部材9の端部までの距離は、各々1mmである。
【0029】
当該押さえ部材9によるリード線12に対する圧力は、薄厚の基体11に損傷を与えない程度の大きさであり、基体11の材質や厚さにもよるが、たとえば10kg程度である。なお、押さえ部材9は、リード線12にのみ当接され、押圧の際に基体11には接しない。
【0030】
なお、基体11は、セラミック、シリコン、ガラスやエポキシなどの薄厚(2mm以下)の部材である。または、基体11は、これらの部材上(所定のテーブル10への非載置側上)に所定の薄膜が形成された部材である。また、基体11に加圧式超音波接合されるリード線12は、たとえばアルミニウムや銅などの薄膜(100μm程度)の部材であり、所定の線幅(図1のx方向の幅)を有する線状の形状を有する。
【0031】
次に、加圧式超音波振動接合装置100を用いた、加圧式超音波振動接合方法の動作について説明する。
【0032】
まず、所定のテーブル10上に、薄厚の基体11を設置する。そして、所定のテーブル10に設けられた穴(図示せず)を介した真空吸着により、基体11を所定のテーブル10に固定させる。
【0033】
次に、図示を省略しているリールには、導電性を有する薄膜のリード線12が旋回されている。当該リールからリード線12を引き出し、当該引き出したリード線12を基体11上の所定の箇所に配置させる。
【0034】
次に、図示を省略しているシリンダーの動力により、押さえ部材9をリード線12に対して押圧(所定のテーブル10側に押圧)させる。ここで、図3,4に示すように、押さえ部材9は、加圧式超音波振動接合が実施される領域を挟むように、リード線12を押圧する。つまり、押さえ部材9は、リード線12における超音波振動の印加部の両脇を、所定のテーブル10側に押圧する。
【0035】
そして、押さえ部材9がリード線12を押圧している状態で、電動シリンダー1の駆動力により、リード線12に向けてボンディングツール4,5を下降させる。さらに、ボンディングツール12(より具体的には、当接先端部5)がリード線12に当接すると、電動シリンダー1の駆動力により、当該リード線12に対して所定テーブル10側に所定の圧力を加える。
【0036】
次に、リード線12が押さえ部材9により押圧され、ボンディングツール4,5がリード線12に所定の圧力を印加している状態において、超音波振動子8に超音波振動を発生させる。当該発生した超音波振動は、振動ホーン部6を介して、ロッド4に伝達される。そして、ロッド4と共に当接先端部5は、所定の振動数(たとえば20〜40KHz)・振幅(10μm以下で、たとえば基体11に対する損傷防止の観点から4,5μm程度)の超音波振動を行う。
【0037】
ここで、当該超音波振動の振動方向は、たとえば図3,4のz軸方向である(つまり、リード線12の延設方向である)。ボンディングツール4,5が超音波振動を行うことにより、当該超音波振動はリード線12に印加される。
【0038】
このように、リード線12を押さえ部材9により押圧しながら、当該リード線12にボンディングツール4,5を用いた加圧式超音波振動を印加することにより、リード線12が基体11に接合される。
【0039】
なお、リード線12を基体11に対して接合した後は、電動シリンダー1の駆動力によりボンディングツール4,5を上方向に移動させ、図示しないシリンダーの駆動力により押さえ部材9を上方向に移動させる。また、リード線12の他の場所と基体11とを新たに超音波振動接合させる場合は、基体11を真空吸着固定している所定のテーブル10を移動させる。
【0040】
次に、加圧式超音波振動接合装置100および上記加圧式超音波振動接合方法の効果を、問題点を提示しつつ説明する。
【0041】
まず、問題点を説明する。
【0042】
加圧式超音波振動を印加し、リード線12の所定の箇所12Aを基体11に接合した後、リード線12の延設方向に所定の距離だけ離れた、当該リード線12の他の箇所12Bを加圧式超音波振動接合を行う場合を想定する。当該他の箇所12Bと基体11との接合の際に、図5に示すように、押さえ部材9によるリード線12の押圧をせずに、ボンディングツール4,5がリード線12に対して加圧式超音波振動を印加したとする。この場合には、図5に示すように、所定の箇所12Aと他の箇所12Bとの間におけるリード線12が上方向に撓む。つまり、所定の箇所12Aと他の箇所12Bとの間におけるリード線12は、上方向に湾曲して浮き上がる。
【0043】
当該リード線12の撓みの規模(基体11の上面からの浮き上がりの高さ)は1mm以上に及ぶ場合もあり、当該撓みに起因して、リード線12が接合された基体11を備えるデバイスの小型化が阻害される。また、当該リード線12が撓むと、製造処理過程において他の部材がリード線12の当該撓んでいる箇所に引っかかることもあり、リード線12の断線の原因にもなる。
【0044】
そこで、本発明では、図2,3,4に示すように、リード線12における超音波振動の印加部の両脇を、押さえ部材9により所定のテーブル10側に押圧する。そして当該押圧を行いながら、ボンディングツール4,5を用いたリード線12に対する加圧式超音波振動接合を実施する。
【0045】
したがって、リード線12の上記撓み(浮き上がり)を防止または抑制でき、たとえリード線12の上記撓み(浮き上がり)が発生したとしても、その規模(基体11の上面からの浮き上がりの高さ)は、0.2mm以下となる。当該撓みの規模は、デバイスの薄型化に影響を及ぼさない範囲のものであり、また、製造処理過程において他の部材とリード線12の当該撓んでいる箇所との引っかかりが生じない程度のものである。
【0046】
また、押さえ部材9によりリード線12を押圧することにより、基体11を所定のテーブル10に対して押圧することにもなる。したがって、所定のテーブル10に対する基体11の固定がより強固なものとなり、リード線12に対する加圧式超音波振動接合を施す際に、基体11が所定のテーブル10に対して移動することを防止できる。このように、基体11の固定が強固となると、リード線12のみを超音波振動させることができる。つまり、ボンディングツール4,5による超音波振動エネルギーを、基体11とリード線12との接触部における摩擦エネルギーに効率良く変換できる。したがって、超音波振動によるリード線12と基体11との接合を、より短時間でより効率良く行うことが可能となる。
【0047】
なお、本実施の形態と異なり、リード線12における超音波振動の印加部の片脇のみを、押さえ部材9により所定のテーブル10側に押圧した実験を行った。結果、一点のみを押さえ部材9により押圧した場合には、加圧式超音波振動をリード線12に印加すると、押さえ部材9による押圧部において基体11に損傷が生じた。
【0048】
これに対して、本実施の形態のように、リード線12における超音波振動の印加部の両脇の2点を押さえ部材9により押圧したときには、前述のような加圧式超音波振動による基体11の損傷を防止することが確認できた。
【0049】
また、図5で示したように、押さえ部材9を省略した構成で基体11とリード線12とを複数点で接合した場合には、接合力(密着力)のばらつきは50%程度であった。これに対して、本実施の形態のように、押さえ部材9によりリード線12を2箇所で押圧する構成を採用し、基体11とリード線12とを複数点で接合した場合には、接合力(密着力)のばらつきは10%以下となった。つまり、本実施の形態を採用した場合には、接合力のバラツキを格段に抑制することができる。
【0050】
なお、上記リード線12の撓み抑制、基体11の所定のテーブル10への固定、接合力のバラツキ抑制の観点から、平面視における、当接先端部5の端部から当該端部に面する各押さえ部材9の端部までの距離を、各々1mmとすることが望ましい。
【0051】
<実施の形態2>
実施の形態1では、図3に示したように、線状のリード線12に印加する超音波振動の振動方向は、線状のリード線12の延設方向であった。本実施の形態では、他の方向に超音波振動の振幅方向を振らす場合について言及する。
【0052】
本実施の形態では、図6,7に示すように、ボンディングツール4,5による超音波振動の方向は、図面のx方向である。つまり、線状のリード線12は、x軸方向に所定の線幅を有するが、本実施の形態では、リード線12と基体11との加圧式超音波振動接合の際に、ボンディングツール4,5を当該所定の線幅方向に超音波振動をさせる。
【0053】
なお、当該超音波振動の振動方向以外の構成および動作は、実施の形態1と同様である。つまり、リード線12における超音波振動の印加部の両脇を、押さえ部材9により所定のテーブル10側に押圧すること、当該押圧を行いながら、ボンディングツール4,5を用いたリード線12に対する加圧式超音波振動接合を実施することなどは、実施の形態1と同様である。
【0054】
以上のように、本実施の形態では、加圧式超音波振動接合の際に、所定の線幅を有する線状のリード線12に対して、当該所定の線幅方向に振動する超音波振動を印加している。
【0055】
したがって、加圧式超音波振動接合をリード線12に施したとしても、図5で示したようなリード線12の撓み(浮き上がり)を完全に防止できる。
【0056】
また、実施の形態1で説明したように、加圧式超音波振動接合の際に、ボンディングツール4,5をリード線12の延設方向に振動させたとする。この場合には、当該振動により、リード線12は両押さえ部材9の方向に移動する。したがって、前記場合には、ボンディングツール4,5に面する側の押さえ部材9の端部とリード線12との間において、局所的な力が働く。
【0057】
これに対して、本実施の形態に係る方法では、リード線12に対してリード線12における所定の線幅方向に振動する超音波振動を印加している。したがって、当該振動により、リード線12が両押さえ部材9の方向に移動することはない。よって、本実施の形態の場合には、ボンディングツール4,5に面する側の押さえ部材9の端部とリード線12との間において、局所的な力が働くことも無い。
【0058】
<実施の形態3>
本実施の形態では、押さえ部材9におけるリード線12との当接部分の形態について、説明する。なお、押さえ部材9におけるリード線12との当接部分の形態以外の構成および動作は、実施の形態1と同様である。
【0059】
図8,9に示すように、本実施の形態では、押さえ部材9におけるリード線12の当接部分は、ゴムなどの弾性体9aで構成されている。
【0060】
また、本実施の形態の他の構成では、図10に示すように、押さえ部材9のリード線12の当接部は、少なくともボンディングツール4,5に面する側において、丸面取りされている。なお、図10の構成では、押さえ部材9のボンディングツール4,5が面する側が丸面取り(丸面取り部9b)されているだけでなく、押さえ部材9のボンディングツール4,5に面しない側においても丸面取り(丸面取り部9c)されている。ここで、丸面取りとは、角部が鋭角でなくなるように丸を帯びるように面取りされることである。
【0061】
以上のように、本実施の形態では、押さえ部材9におけるリード線12の当接部分は、ゴムなどの弾性体9aで構成されている。したがって、押さえ部材9によるリード線12の押圧により、当該リード線にダメージを与えることを防止できる。
【0062】
また、実施の形態1で説明したように、加圧式超音波振動接合の際に、ボンディングツール4,5をリード線12の延設方向に振動させたとする。この場合には、当該振動により、リード線12は両押さえ部材9の方向に移動する。
【0063】
そこで、本実施の形態の他の構成では、押さえ部材9のリード線12の当接部は、少なくともボンディングツール4,5に面する側において丸面取りされている。これにより、たとえボンディングツール4,5をリード線12の延設方向に振動させ、当該振動によりリード線12が両押さえ部材9の方向に移動したとしても、ボンディングツール4,5に面する側の押さえ部材9の端部とリード線12との間において、局所的な力が働くことを緩和できる。
【0064】
なお、図8,9の構成と図10の構成とを組み合わせても良い。つまり、押さえ部材9におけるリード線12の当接部分を弾性体とし、当該弾性体である押さえ部材9におけるボンディングツール4,5に面する側が丸面取りされていても良い。
【0065】
また、押さえ部材9に対して本実施の形態を適用した場合、ボンディングツール4,5の振動方向は、実施の形態1で示したように、線状のリード線12の延設方向でも良く、または、実施の形態2で示したように、線状のリード線12が有する線幅の当該線幅方向であっても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 電動シリンダー
2 支柱部
3 カップリング
4 ロッド
5 当接先端部
6 振動ホーン部
7 ホルダー
8 超音波振動子
9 押さえ部材
9a 弾性体
9b,9c 丸面取り部
10 所定のテーブル
11 基体
12 リード線
100 加圧式超音波振動接合装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)薄厚の基体を所定のテーブルに設置する工程と、
(B)前記基体上に、導電性のリード線を配置させる工程と、
(C)前記所定テーブル側に所定の圧力を加えながら前記リード線上に超音波振動を印加することにより、前記基体に前記リード線を接合する工程とを、備えており、
前記工程(C)は、
前記リード線における前記超音波振動の印加部の両脇を、前記所定のテーブル側に押圧しながら、前記リード線に前記超音波振動を印加する工程である、
ことを特徴とする加圧式超音波振動接合方法。
【請求項2】
前記リード線は、
所定の線幅を有する線状部材であり、
前記工程(C)は、
前記所定の線幅方向に振動する前記超音波振動を印加する工程である、
ことを特徴とする請求項1に記載の加圧式超音波振動接合方法。
【請求項3】
薄厚の基体を設置する所定のテーブルと、
前記基体上に導電性を有するリード線を配置した状態で、前記所定テーブル側に所定の圧力を加えながら前記リード線上に超音波振動を印加するボンディングツールと、
前記リード線における前記ボンディングツールによる前記超音波振動の印加部の両脇を、前記所定のテーブル側に押圧する押さえ部材とを、備えている、
ことを特徴とする加圧式超音波振動接合装置。
【請求項4】
前記押さえ部材の前記リード線当接部は、
弾性体である、
ことを特徴とする請求項3に記載の加圧式超音波振動接合装置。
【請求項5】
前記押さえ部材の前記リード線当接部は、
少なくとも前記ボンディングツールと面する側において、丸面取りされている、
ことを特徴とする請求項3に記載の加圧式超音波振動接合装置。
【請求項6】
前記リード線は、
所定の線幅を有する線状部材であり、
前記ボンディングツールは、
前記超音波振動の印加の際には、前記所定の線幅方向に振動する、
ことを特徴とする請求項3に記載の加圧式超音波振動接合装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−9262(P2011−9262A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148418(P2009−148418)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】