説明

加工機械の2つの部分の間で信号を無線送信する装置

【課題】加工機械の2つの部分の間で信号を無線送信する装置を提供する。
【解決手段】加工機械の運転時に、2つの部分の一方が他方に対して、軸18を中心に回転し、複数のアンテナ8、または、13が、2つの部分17、23のうちの少なくとも一方に、回転の周辺に沿う方向に少なくともほぼ規則的な分布で配置されている。アンテナ8、または、13は、各部分17、23に割り当てられた送信装置および/または受信装置に、並列に接続されている。個々のアンテナ8の長さは、回転の周辺に沿う方向に重なり合っており、これらのアンテナは、回転軸18の半径方向かつ/または長手方向に、少なくとも部分的にオフセットされて配置されている。送信装置から個々のアンテナへ、位相シフトされた信号が供給され、アンテナで受信された信号が、受信装置によって、位相シフトされて重ね合わせられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工機械の2つの部分の間で信号を無線送信する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工機械の2つの部分の間で信号を無線送信する装置は、独国特許出願公開第20 2004 016 751(A1)号明細書で知られており、この明細書は、誘導結合トランスポンダシステムの、機械およびシステム構築の分野への最適化について記載している。そのようなトランスポンダシステムを、金属製包囲物内で使用する場合について、この明細書は、金属内への磁力線の浸透を防ぎ、このような環境的条件での動作を保証する高透過性材料の使用を提案している。
【0003】
送信機と受信機との間で回転運動が行われる無線トランスポンダシステムでは、回転子および/または固定子における各アンテナの放射特性または受信特性が、データ伝送の品質を本質的に決定する。ここでは、送信および受信の品質が、各角度位置において可能な限り一定であることが望ましい。送信および/または受信の品質が次善の水準になることは、データの誤送信率の上昇に直接つながる。
したがって、たとえば、送信または受信の周波数と、さらに元の幾何学的条件とに適合させたワイヤループが、回転子または固定子の周辺に沿う方向に走っている場合には、この周辺の1つまたは複数の場所で放射または受信が最小になる。このことは、回転子の回転運動によって強力な振幅変調をもたらし、この振幅変調は、受信側でのデータの再構築能力に直接影響する。同じことが、ダイポールアンテナについても同じように当てはまる。この場合も、放射または受信の空間特性には、最小になる部分があり、この部分が伝送品質に悪影響を及ぼす。
【0004】
市販の無線受信部品は、そのアンテナ入力部に、制御ループによって増幅率を受信信号にマッチングさせる可変増幅器を含んでいる。この制御は、高い回転速度では、データ送信に干渉するように作用する過渡応答を有するため、多くの場合において、受信が不可能であるか、可能であっても誤り率が高くなる。このような場合は、誤り認識を可能にする符号化方法(たとえば、CRCチェック)を用い、さらに、複数のデータ送信(すなわち、送信対象の個々のデータワードの複数送信)を行うことにより、誤り率を低減することは確かに可能である。しかしながら、これは、有効データ伝送レートの低下につながり、多くの応用分野では望ましくない。
【0005】
市販の送信および受信用アンテナは、回転対称構造で使用されるようには設計されていない。実際は、このようなアンテナでは、原理的に回転対称特性が与えられているが、この回転対称特性が有効であるためには、アンテナを軸方向に取り付けなければならず、同時に、対応する相手側アンテナまでの見通し線が与えられていなければならない。しかしながら、これは構造上不可能である。それは、回転子の電子回路が、常にシャフトの周辺に取り付けられていなければならず、そのために、軸方向の見通し線が与えられないためである。
【0006】
解決策として考えられるのは、基準位置に対する現在の角度位置を、回転子上の適切なセンサで連続的に測定し、良好な伝送品質が保証される、限定された角度部分でのみ、常にデータ送信を行うことである。したがって、市販のアンテナを使用することは可能ではあるが、この解決策には、回転子の角度位置を検出して処理することのコストが高いこと、さらには、達成可能なデータレートが低くなってしまうという弱点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、干渉のないデータ送信を高データレートで可能にするレベルを目的として、装置のアンテナ配置を考案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する装置によって解決される。従属請求項において、有利な構成が指定される。
本発明は、複数のアンテナの組み合わせに基づいており、これらのアンテナはいずれも、それ自体としては、無線伝送経路によって接続されるべき2つの機械部分として望ましい、半径方向の、対称な放射特性または受信特性を有していないが、これらが、送信側において、調和的に接続され、適切に励起された場合、または、受信側において、個々の信号が適切に重ね合わせられた場合には、これらのアンテナの個々の特性は、半径方向にほぼ対称な、全体的な伝送特性をもたらす。ここで、原理的には、このようなアンテナの組み合わせを、送信側または受信側のいずれかで使用することは適切であるが、両側で使用することにより効果を高めることができる。
【0009】
第1の好ましい変形例は、回転の周辺に沿う方向に、個々のアンテナを空間的に対応するように重ね合わせることである。個々の伝送特性を、対応するように重ね合わせて、個々のアンテナの、前述の周辺に沿う方向の相対的なオフセットを適切に選択することにより、このような組み合わせは、顕著な突出が非常に少ない全体特性をもたらす。
【0010】
第2の好ましい変形例は、複数の送信アンテナの、回転の周辺に沿う方向のシーケンスに従う、位相シフトされた励起、および/または、複数の受信アンテナの受信信号の、対応する、位相シフトされた重ね合わせである。
従属請求項から、本発明の、他の有利な構成が理解されるであろう。
以下、図面を参照しながら、本発明の諸実施形態を説明する。それらの図面は、以下に示すとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】加工機械用無線センサシステムのブロック回路図である。
【図2】加工機械の、無線センサシステムを備えられた部分の長手方向断面図である。
【図3】本発明による、第1のアンテナ配置のブロック回路図である。
【図4】図3のアンテナ配置の、軸方向の概略図である。
【図5】図3および4のアンテナ配置の相互接続を示す図である。
【図6】本発明による、第2のアンテナ配置のブロック回路図である。
【図7】図6のアンテナ配置の、軸方向の概略図である。
【図8】本発明による、第3のアンテナ配置の、軸方向の概略図を、個々のアンテナの放射図と組み合わせた図である。
【図9】図8の個々のアンテナの受信電力の時間特性を示す図である。
【図10】図9の受信電力の重ね合わせの時間特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
現代の自動加工機械では、動作パラメータ(たとえば、力、トルク、温度などの値)の変化を検出するために無線センサシステムを用いる傾向がある。図1は、そのようなセンサシステムのブロック回路図を示す。ここでは、回転子電子回路1は、機械の運転時に回転している部分(以下、「回転子」と呼ぶ)に位置する。これらの電子回路は、基本的な機能単位として、1つまたは複数のセンサ2(たとえば、抵抗ひずみ計)と、センサ信号処理装置3と、マイクロコントローラ4と、他の装置から電力を誘導供給されるための、2次コイル6を有する電力変換器5と、外部との通信(特に、検出された測定データの送信)のための、アンテナ8を有する無線モジュール7と、を含む。
【0013】
固定子電子回路9は、機械の静止部分(以下、「固定子」と呼ぶ)に位置する。これらの電子回路は、基本的な機能単位として、1次コイル11を介して電力を回転子電子回路1に誘導供給するための電力変換器10と、回転子電子回路1と通信するための、アンテナ13を有する無線モジュール12と、機械の電源(図示せず)から電力を受け取るための電力変換器14と、マイクロコントローラ15と、さらに、センサ2で測定され、固定子電子回路9へ送信されたデータを、さらに高いレベルの機械コントローラへ転送するためのインタフェース16と、を含む。
【0014】
センサシステムは、既知のトランスポンダ技術に基づいており、電力は、(たとえば、約30kHzの周波数で)回転子電子回路1と誘導結合され、受信された測定データは、(たとえば、約2.4GHzの周波数、または別のISM帯)の無線により、固定子電子回路9へ送信される。
【0015】
加工機械の、そのような無線センサシステムを備えられた部分の長手方向断面図を、図2に示す。機械の運転時には、回転子17は、軸18を中心に回転する。回転子17は、回転子電子回路1が取り付けられた、金属製の円柱状シャフト(スピンドル)19を含む。部品20が、フレキシブル基板21上に構築されており、フレキシブル基板21は、スピンドル19の周囲を周辺に沿う方向に案内されていて、スピンドル19の軸18と一致する軸を有する2次コイル6に囲まれている。回転子電子回路1のアンテナ8は、回転子電子回路1の半径方向の最も外側の要素を形成しており、全体が、スピンドル19に堅固に連結されている、プラスチック製の内側保持具22に埋め込まれている。
【0016】
固定子23は、金属製の機械的機械要素24を含む。この機械要素の内側に、中空円筒形状の、プラスチック製の外側保持体25が、堅固に連結されている。内側保持体22と外側保持体25との間に、周辺に沿って一定幅のエアギャップ26が存在する。固定子電子回路9の1次コイル11およびアンテナ13は、外側保持体25に埋め込まれており、アンテナ13は、1次コイル11よりも半径方向内側に配置されている。図2に示されていない、固定子電子回路9のその他の部品も、(たとえば、外側保持体25に埋め込まれて)固定子23上に直接配置されることが可能であるが、この機械の別の場所に(たとえば、固定子23から離れた場所に)配置されることも可能である。機械の運転時には、回転子17は、固定子23に対して、所定の量だけ、軸18の長手方向にシフトされる。しかしながら、軸18に対する回転子17および固定子23の配置の、既述の回転対称性は、そのまま保たれる。
【0017】
図3は、本発明を実施する、第1のアンテナの配置を、ブロック回路図のかたちで示す。以下ではまず、図3は、送信側のアンテナ配置に関するものであるとする。図3に示されるように、3つの同等の個別ループアンテナ8A、8B、および8Cが設けられている。それぞれは、それぞれの整合素子27A、27B、または27C、ならびに給電線28A、28B、または28Cによって、共通分岐素子29に接続されている。整合素子27A、27B、および27Cは、信号処理を簡略化するために、対称ループアンテナ8A、8B、および8Cを非対称給電線28A、28B、または28Cと整合させる、既知の、いわゆる平衡−不平衡変圧器を含む。
【0018】
本発明による特別な特徴の1つが、3つのループアンテナ8A、8B、および8Cの幾何学的配置である。この配置を、図4に概略的に示す。これら3つのループ素子8A、8B、および8Cは、軸18と中心を共有して、放射状に配置されている。これらのループ素子は、それぞれの基部30A、30B、および30Cにおいて半径方向にそれぞれ角度が付けられており、基部30A、30B、および30Cは、互いに対して120°ずつ、連続してオフセットされている。図2および3で示されている、その他の部品は、明確さを期するために、図4では省略されている。図4による配置は、基部30A、30B、および30Cの位置に対し、周辺に沿う方向に、規則正しく、対称である。ループアンテナ8A、8B、および8Cは、異なる直径を有する代わりに、同じ直径で、軸18の長手方向に、互いに対してオフセットされることも可能である。ここで重要なのは、図4に見られる直径の違い、あるいは、代替として可能な、軸18の長手方向のオフセットが、平均直径に比べて相対的に小さいため、放射特性に対する有意な影響がないことである。すなわち、3つのループアンテナ8A、8B、および8Cはすべて、基部30A、30B、および30Cの位置が異なるものの、本質的に同等の放射特性を有する。
【0019】
結果として、図4のような配置では、各ループアンテナ8A、8B、および8Cの基部30A、30B、および30Cは、他の2つのループアンテナで覆われるため、上述の各基部30A、30B、および30Cにおける、この図面の面の半径方向の放射特性の最小になる部分が、他の2つのループアンテナの放射特性によってほぼ等化され、これによって、半径方向の全体的な放射特性がよりいっそう均等になる。
金属製包囲物の形状(たとえば、試錐孔の形状)の不規則性を生む放射電界の不規則性を補償するためには、連続するアンテナ間の角度オフセットに常に同じ値を選択するのではなく、選択に偏りを持たせることも有用である。
【0020】
完全を期すために、図5は、分岐素子29内の、個々の給電線28A、28B、および28Cの相互接続を示す。この図に示されるように、これらの給電線28A、28B、および28Cは、第1の抵抗を介して接地され、第2の抵抗を介して共通スターポイント31に接続されており、共通スターポイント31には、ループアンテナ8A、8B、および8Cから放射されるべき共通データ信号が結合されている。
【0021】
給電線28A、28B、および28Cに関しては、これらの長さが、図3の概略図と比べて著しく異なるものであってはならないことにも注意されたい。これは、結果としての伝搬時間の差によって、個々のアンテナ8A、8B、および8Cから放射される無線信号の間に望ましくない位相シフトが発生するためである。したがって、長さまたは伝搬時間の等化が行われなければならない。
【0022】
前述の説明は、伝送経路の送信側に関するものであった。しかしながら、本発明は、受信側にも同様に適用されることが可能である。この場合、個々のアンテナ8A、8B、および8Cは、受信アンテナである。しかしながら、受信側においては、図3および5に示された、アンテナ8A、8B、および8Cの相互接続と、さらに、図4に示された、アンテナ8A、8B、および8Cの互いに対する幾何学的配置とにおける、信号の流れの方向だけが異なる。この場合、分岐素子29のスターポイント31では、信号が、放射のために供給される代わりに、さらなる処理のために出力される。ループアンテナ8A、8B、および8Cを使用する場合、各基部の範囲に、半径方向の受信特性が最小になる部分があるが、これらは、個々のアンテナ同士の重なり合いと、対称的な一定の角度オフセットとによって、ほぼ等化される。
【0023】
明らかに、本発明のこの実施形態を、送信側および受信側の両方に同時に適用することが可能である。本発明の等化効果は、使用される別々の個々のアンテナの数が多いほど、伝送特性に強く作用することが理解されよう。送信側および受信側のそれぞれに設けられることが可能なアンテナの数は、利用可能な空間によって限定されるため、数個のアンテナを送信側に設けて、さらに受信側にも数個のアンテナを設ければ、特に実用的にもなりうる。
【0024】
本発明が設計される構成では、送信機と受信機との間の距離が非常に小さいため、アンテナの放射または受信の空間特性については、近距離場は確定的であるが、遠距離場はそうではないことに注意されたい。場の特性はさらに、金属製包囲物(スピンドル19、機械要素24)、すなわち、それらの反射挙動の影響をかなり受けるため、アンテナ配置の厳密な寸法決定のためには、これらの影響を考慮することが必須である。
【0025】
図6は、本発明を実施する、第2のアンテナの配置を、ブロック回路図のかたちで示す。以下でも、まず、図6の配置は、送信側のアンテナ配置に関するものであるとする。図6に示されるように、3つの同等の個別ダイポールアンテナ108A、108B、および108Cが設けられている。それぞれは、それぞれの整合素子127A、127B、または127C、ならびに給電線128A、128B、または128Cによって、共通分岐素子129に接続されており、共通分岐素子129は、図5に示された分岐素子29と同様に構成されている。ここで、整合素子127A、127B、および127Cも、信号処理を簡略化するために、対称ダイポールアンテナ108A、108B、および108Cを非対称給電線128A、128B、および128Cと整合させる平衡−不平衡変圧器を含む。
【0026】
本発明による第1の特別な特徴は、給電線128Bおよび128Cのそれぞれに(たとえば、遅延線のかたちの)遅延素子132Bおよび132Cが配置されていることである。これによって、個々のダイポールアンテナ108A、108B、および108Cは、放射のために同じ信号を受け取るが、それらは、同相ではなく、定義された相互位相シフトを有し、これは、120°づつ連続する。すなわち、アンテナ108Bは、アンテナ108Aに対して120°の位相シフトを有し、アンテナ108Cは、アンテナ108Aに対して240°の位相シフトを有する。金属製包囲物の形状(たとえば、試錐孔の形状)の不規則性を生む放射電界の不規則性を等化するために、連続するアンテナ間の位相シフトに常に同じ値を選択するのではなく、選択に偏りを持たせることも理にかなっている。
【0027】
本発明による、別の特別な特徴は、3つの同等のダイポールアンテナ108A、108B、および108Cの幾何学的配置である。この配置を、図7に概略的に示す。3つのダイポールアンテナ108A、108B、および108Cは、スピンドル19(図2)の軸18を中心とする円の上に互いに隣接して配置され、それぞれが、周辺に沿う方向に連続的に120°づつの角度でオフセットされており、これによって、ダイポールアンテナ108A、108B、および108Cのそれぞれは、約120°のセクタをカバーする。結果として、基部130A、130B、および130Cのそれぞれにおいて、ダイポールアンテナ108A、108B、および108Cのそれぞれの、半径方向の角度が付けられており、基部130A、130B、および130Cのそれぞれは、互いに対して、120°づつの角度で連続的にオフセットされている。図2および6で示されているその他の部品は、明確さを期するために、図7では省略されている。図7による配置は、周辺に沿う方向に、規則正しく、対称である。
アンテナ108A、108B、および108Cから放射される信号の間で遅延素子132Bおよび132Cによって引き起こされた位相シフトにより、これらの信号の重ね合わせは、個々のダイポールアンテナ108A、108B、および108Cのそれぞれの半径方向の放射特性の、最小になる部分を有意に等化し、これによって、ほぼ均一な、半径方向の全体的な放射特性が得られる。
【0028】
前述の説明は、伝送経路の送信側に関するものであった。本発明のこの実施形態は、受信側にも同様に適用されることが可能である。この場合、個々のアンテナは、受信アンテナである。しかしながら、受信側においては、図5および6に示された、アンテナ同士の相互接続と、さらに、図7に示された、それらのアンテナの、互いに対する幾何学的配置とにおける、信号の流れの方向だけが異なる。受信側の場合、遅延素子132Bおよび132Cは、アンテナ108Bおよび108Cで受信された信号の位相シフトを引き起こす。以下、本発明の第2実施形態の、受信側への適用について、図8〜10を参照しながら、より詳細に説明する。
【0029】
図8は、一例として、受信アンテナである3つのダイポールアンテナ13A、13B、および13Cの対称的な円形配置を示す。アンテナ配置の内部には、個々のダイポールアンテナについて典型的な半径方向の放射図が示されている。ここでは、半径方向の電力密度PDが、方向の関数として示されている。図示されている特性PDは、ダイポールの特定の角度位置について有効であり、顕著な最小部分Mを有する。ここでは、図示された放射特性PDを有する単一ダイポールアンテナが、回転子17上に単一の送信アンテナとして設けられ、3つのダイポールアンテナ13A、13B、および13Cが、固定子23上に受信アンテナとして設けられているものとし、3つのダイポールアンテナ13A、13B、および13Cも、図6のダイポールアンテナ108A、108B、および108Cと同様に接続されていて、信号の流れの方向だけが反対であるものとする。
【0030】
図9は、送信アンテナとして設けられたダイポールの回転角度φに対する、3つの受信アンテナ13A、13B、および13Cの受信信号の信号強度SA、SB、およびSCの特性を示す。顕著な最大部分と最小部分とが見られるであろう。ここで、図9の横軸の位置は、無作為に選択されており、ゼロ線は表示されていない。これら3つの受信信号SA、SB、およびSCのそれぞれに、図5に示されたタイプの遅延素子によって、連続する120°の位相シフトが付加された場合、定性的には、結果として得られる信号強度SRは、送信アンテナの回転角度φに対して、図10に示される特性となる。このような信号特性が、図6における送信アンテナ108A、108B、および108Cが、受信アンテナ13A、13B、および13Cに置き換えられた場合の、図6の回路のスターポイント131から出力される。SRの特性は、確かにまだ、わずかなリップルがあるが、個々の特性SA、SB、およびSCのそれぞれに比べればはるかに一様である。
【0031】
明らかに、第2の実施形態では、本発明を、送信側と、さらに受信側との両方に同時に適用することも可能である。ここでもまた、伝送特性に対する本発明の等化効果は、使用される別々の個々のアンテナの数が多いほど、顕著になることが理解されよう。空間上の都合から、ここでもまた、数個のアンテナを送信側に設けて、さらに受信側にも数個のアンテナを設けることだけでも十分実用にかなう。近距離場の確定性、ならびに、金属製包囲物の反射挙動の影響に関して前述された事柄は、本発明の第2の実施形態についても、第1の実施形態と同様に当てはまる。
【0032】
当業者であれば、ここまでの説明から、本発明を修正することに関して、別の可能性を見出されるであろう。たとえば、周辺に沿う方向の重なりは、第1の実施形態のループアンテナの場合のように、約360°にわたって均等ではなく、他のアンテナ形状の重なり配置(たとえば、重なり量が著しく小さくてもよい、ダイポールの重なり配置)が設けられてもよい。さらに、ここで説明された2つの実施形態は、互いに組み合わせることも可能である。すなわち、重なり配置において、信号の位相シフトを与えることも有用である可能性がある。これらの実施形態において与えられた3つというアンテナの数は、明らかに一例であるに過ぎず、個々の応用の要件および初期条件(空間の関係、コストなど)に応じて様々な数であってよい。回転子電子回路1と固定子電子回路9との間の通信は、双方向であってもよい(たとえば、回転子電子回路1の特定機能(たとえば、センサ2の自己診断)を固定子電子回路9から作動させる場合など)。
【符号の説明】
【0033】
1 回転子電子回路
2 センサ
3 センサ信号処理装置
4 マイクロコントローラ
5 電力変換器
6 2次コイル
7 無線モジュール
8 アンテナ
8A、8B、8C ループアンテナ
9 固定子電子回路
10 電力変換器
11 1次コイル
12 無線モジュール
13 アンテナ
14 電力変換器
15 マイクロコントローラ
16 インタフェース
17 回転子
18 軸
19 スピンドル
20 部品
21 フレキシブル基板
22 内側保持具
23 固定子
24 機械的機械要素
25 外側保持体
26 エアギャップ
27A、27B、27C 整合素子
28A、28B、28C 給電線
29 共通分岐素子
30A、30B、30C 基部
31 共通スターポイント
108A、108B、108C ダイポールアンテナ
127A、127B、127C 整合素子
128A、128B、128C 給電線
129 共通分岐素子
131 スターポイント
132B、132C 遅延素子
13A、13B、13C ダイポールアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機械の2つの部分(17、23)の間で信号を無線送信する装置であって、前記加工機械の運転時に、前記2つの部分の一方が他方に対して、軸(18)を中心に回転する、装置であり、複数のアンテナ(8A、8B、8C、または、108A、108B、108C、または、13A、13B、13C)が、前記2つの部分(17、23)のうちの少なくとも一方に、前記回転の周辺に沿う方向に少なくともほぼ規則的な分布で配置されていることと、前記アンテナ(8A、8B、8C、または、108A、108B、108C、または、13A、13B、13C)が、各前記部分(17、23)に割り当てられた送信装置(7)および/または受信装置(12)に、並列に接続されていることと、を特徴とする装置。
【請求項2】
複数のアンテナ(8A、8B、8C、または、108A、108B、108C、または、13A、13B、13C)が、前記加工機械の前記2つの部分(17、23)に、前記回転の周辺に沿う方向に少なくともほぼ規則的な分布で配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記加工機械の同じ部分に配置された前記個々のアンテナ(8A、8B、8C、または、108A、108B、108C、または、13A、13B、13C)は、互いに同じ形状を有し、少なくともほぼ、360°を前記アンテナ(8A、8B、8C、または、108A、108B、108C、または、13A、13B、13C)の数で割った角度だけ、周辺に沿う前記方向にオフセットされていることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記個々のアンテナ(8A、8B、8C)の長さは、前記回転の周辺に沿う方向に重なり合っていることと、前記個々のアンテナは、前記回転軸(18)の半径方向かつ/または長手方向に、互いに対して少なくとも部分的にオフセットされて配置されていることと、を特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記送信装置(7)から前記個々のアンテナ(8A、8B、8C)へ同相信号が供給され、前記個々のアンテナから受け取られた信号が、前記受信装置(12)によって、互いに同相で重ね合わせられることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記送信装置から前記個々のアンテナ(108A、108B、108C)へ、位相シフトされた信号が供給され、かつ/または、前記個々のアンテナ(13A、13B、13C)で受信された信号が、前記受信装置によって、互いに位相シフトされて重ね合わせられることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記位相シフトは、少なくともほぼ360°を前記アンテナ(108A、108B、108C、または13A、13B、13C)の数で割った角度であることを特徴とする、請求項6に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−273129(P2009−273129A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110349(P2009−110349)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(507082873)オット−ヤコブ シュパンテヒニック ゲーエムベーハー (6)
【Fターム(参考)】