加工機械並びに測定装置およびその測定器
【課題】被測定物の外寸のみならず内寸をも測定し得る使い勝手が良い加工機械並びに測定装置およびその測定器を提供する。
【解決手段】測定時は、被測定物(ワーク)Wをその軸心Pが垂直になるようにセットする。測定器10の本体11をワークの側面W1上に載置させる。測定子50の軸心が載置面Gと平行である側面W1に対し、垂直状態になる。そのため、接触部52がワークの外周面W2または内周面W3のいずれにも対向し得る。そして、接触部52をスライドさせてワークの外周面または内周面にそれぞれ接触させることができるので、ワークの外径L3および内径L4を測定し得る。即ち、本体11をワーク上に載置させる構成としたので、1台の測定器によって例えばリング状のワークの外径のみではなく、内径をも測定できる。従って、1台の測定器が外寸用および内寸用に兼用となるので、例えば内寸用の測定装置などが不要となり、使い勝手が良くなる。
【解決手段】測定時は、被測定物(ワーク)Wをその軸心Pが垂直になるようにセットする。測定器10の本体11をワークの側面W1上に載置させる。測定子50の軸心が載置面Gと平行である側面W1に対し、垂直状態になる。そのため、接触部52がワークの外周面W2または内周面W3のいずれにも対向し得る。そして、接触部52をスライドさせてワークの外周面または内周面にそれぞれ接触させることができるので、ワークの外径L3および内径L4を測定し得る。即ち、本体11をワーク上に載置させる構成としたので、1台の測定器によって例えばリング状のワークの外径のみではなく、内径をも測定できる。従って、1台の測定器が外寸用および内寸用に兼用となるので、例えば内寸用の測定装置などが不要となり、使い勝手が良くなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の移動可能な測定子を備え、これらの測定子の接触部を被測定物に接触させることによって被測定物の寸法を測定する測定器および測定装置並びに加工機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対の移動可能な測定子を備え、これらの測定子を円筒状の被測定物(ワーク)に接触させることによって被測定物の外形寸法を測定する外形寸法測定装置が開示されている(要約および段落番号「0017」並びに図1参照)。なお、上述した外形寸法測定装置は、測定速度が速く、高精度で且つ測定子を歪ませたり損傷することを防止するものである(要約の「課題」参照)。
【0003】
特許文献2は、測定子の測定部分を稜線状とする共に、駆動装置等を設け、各種の歯車の歯厚を簡易に測定する歯車の歯厚計測装置を提供するものである(要約の「目的」参照)。その実施例における枠体には、一対のブラケットの位置を正確に測定する測長器であるリニアスケールが、リニアレールと平行すると共にブラケットに接続されて設置されており、ブラケットにスライダを介して取付けられた一対の測定子の測定部の間隔を測定し得るようになっている(段落番号「0015」及び図2参照)。
【0004】
また、上述した枠体は、歯車に接近、離反するように、移動用のガイドとなる支持台に移動自在に支持されている。さらに、本装置には、枠体を支持台上で移動し得る前後進軸が備えられている(段落番号「0017」及び図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−189502号公報
【特許文献2】特開平5−209703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、両特許文献に係る測定装置は、被測定物の寸法を測定する際、測定子の測定部と被測定物の外形面(歯面を含む概念)とが同一平面上になるようにしている。そのため、両特許文献に係る測定装置では、歯厚などを含む外側の寸法(外寸と同義)しか測定できない。
【0007】
即ち、両特許文献に係る測定装置は、被測定物の外寸を測定する構成となっているのみであり、例えば円筒状ワークの内径(言い換えれば、内側の寸法)をも測定し得る構成では無い。従って、両特許文献に係る測定装置では、円筒状ワークなどの内側の寸法(内寸と同義)を測定するため、例えば内寸用の測定装置などが別途必要となり、使い勝手が悪い。
【0008】
本発明の目的は、被測定物の外側寸法のみならず内側寸法をも測定し得る使い勝手が良い測定器および測定装置並びに加工機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る測定器は、複数の移動可能な測定子を備え、上記測定子の接触部を被測定物に接触させることによって上記被測定物の寸法を測定する測定器であって、上記測定器の本体を上記被測定物に載置させた状態または上記被測定物の上方より所定間隔をもって保持した状態で上記被測定物の寸法を測定することを特徴とする。この場合、上記接触部を上記被測定物の外側面または内側面にそれぞれ接触させて外側面の寸法または内側面の寸法を測定しても良い。また、上記測定器においては、一対の引掛部を測定子操作用ハンドルの測定方向に沿う両端にそれぞれ設けると共に、一対の付勢手段を上記測定方向に沿って上記引掛部および上記引掛部同士の間に配置される上記測定子にそれぞれ介在させるようにしても良い。
【0010】
本発明に係る測定装置は、上述した各測定器と、上記測定器を載置すると共に、上記被測定物の外側寸法または内側寸法を測る際の基準長さを設定する基準部を有する置台と、を備えることを特徴とする。本発明に係る加工機械は、加工物を製造または切削する加工機械であって、上述した各測定器または上記測定装置を搭載し、製造または切削された加工済み加工物の寸法を上記測定器で測定することを特徴とする。この場合、上記加工済み加工物の軸心と直交する方向に上記測定子が位置するよう位置決めする上記測定器の位置決め手段を設けるようにしても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る加工機械並びに測定装置およびその測定器では、被測定物の寸法を測定する際、測定器の本体を被測定物上に載置または被測定物の上方より所定間隔をもって保持させるので、例えば測定時における被測定物(円筒状ワークなど)の側面に対し、測定子の軸心が垂直状態になる。そのため、本発明では、測定子の接触部が被測定物の外周面および内周面に対向し得る。本発明においては、測定子を移動させることによって測定子の接触部を被測定物の外周面または内周面にそれぞれ接触させることができるので、被測定物の外径(言い換えれば、外側の寸法)および内径(言い換えれば、内側の寸法)を測定し得る。
【0012】
即ち、本発明によれば、測定器の本体を被測定物上に載置または被測定物の上方より所定間隔をもって保持させる構成としたので、1台の測定器によって例えばリング状の被測定物の外側の寸法(外寸と同義)のみではなく、内側の寸法(内寸と同義)をも測定できる。従って、本発明によれば、1台の測定器が外寸用および内寸用に兼用となるので、例えば内寸用の測定装置などが不要となり、使い勝手が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施例1の測定器の斜視図である。
【図2】図1に示す測定器本体の異なる方向から見た部分拡大斜視図である。
【図3】図2に示す測定器本体の異なる方法から見た部分拡大斜視図である。
【図4】図1に示すコードケースの変化状態の概略図である。
【図5】図4に示す5−5線の拡大断面図である。
【図6】図1に示す測定器本体および置台で構成される測定装置を示し、(A)は測定装置を簡素化した側面図、(B)は図1(A)の平面図、(C)は図1(B)の基準板を拡大した平面図である。
【図7】図1に示す測定器本体を被測定物に載置した状態で寸法測定している側面図である。
【図8】本発明に係る実施例2の測定器本体を被測定物に載置した状態の斜視図である。
【図9】図8に示す測定器本体の断面図である。
【図10】本発明に係る実施例3における測定器本体およびブラケットを用いて、被測定物の寸法を測定する状態の側面図である。
【図11】本発明に係る実施例4における測定器本体を縦型旋盤機の機上にセットした際の加工機械の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、具体化した実施例1乃至実施例4を説明する。
【実施例1】
【0015】
以下、図1乃至図6に基づいて、本発明の実施例1である測定装置およびその測定器について説明する。
【0016】
(測定器に関する構成)
図1に示すように、測定器10は、測定器本体(「本体」ともいう)11とカウンタ14を備える。本体11とカウンタ14は、コード40を介して接続されている。カウンタ14は、入力キー(図示省略)などで構成される操作部16と表示部18を備える。なお、カウンタ14には、図示しないCPU及びメモリが配置されている。CPUは、カウンタ14の全体的な動作を司り、図示しない操作キーが操作された場合に、その操作に基づく処理(演算処理など)を行う。メモリは、CPUに接続され、各種の処理を制御するプログラム等を記憶している。
【0017】
本体11は、上方が開放された長尺状の筐体12及び蓋体13(図5参照)を備え、その筐体12の両端付近には回転可能な把持部24(図6A参照)が配置されている。なお、本体11の長手方向の長さは、例えば140cmである。また、本体11の短手方向の長さは、例えば12cmである。更に、筐体12の底板には、図2及び図3に示すように、測長器であるリニアスケール26及びガイドレール28が、筐体12の長手方向(測定方向と同義)に沿って平行するようにそれぞれ配置されている。このガイドレール28は、測定可動部30の移動をガイドする。
【0018】
(測定可動部の手動機構に関する構成)
図1に示すように、本体11には、一対の測定可動部30が、本体11の長手方向に沿って手動でスライドし得るようにそれぞれ配置されている。この測定可動部30は、図2に示すように、円棒状のハンドル32及びこのハンドル32を保持する保持台34を備える。
【0019】
図5に示すように、ハンドル32の先端には、ユーザによる力の加減を調整するバネ46(図2参照)及び支持杆48が連結されている。この支持杆48は、その一部が保持台34内に埋設されている。そのため、ハンドル32に加えられるスライド力は、このスライド力を調整するバネ46を介して保持台34に伝達される。
【0020】
支持杆48には棒状の測定子50が着脱可能に連結されており、この測定子50には球状の接触部52が接続されている(図3参照)。この接触部52は、その直径が測定子50の太さよりも若干大きくなっている。そのため、測定時において、接触部52のみが後述する被測定物(以下、「ワーク」ともいう)Wに接触する。筐体12には測定子50に対向する部位に長孔12A(図1参照)が形成されており、測定子50及び接触部52は筐体12から突出している(図5参照)。なお、接触部52を含む測定子50は、上述したように交換可能となっており、任意の大きさ(例えば、接触部52の直径または測定子50の長さなど)のものを選択できる。
【0021】
また、保持体34には、図3に示すように、読取ヘッド36がリニアスケール26に対向するよう固定されている。更に、保持体34には断面コ字状のリニアブロック38(図5参照)が固定されており、このリニアブロック38がガイドレール28に嵌め合っている。保持体34は、ハンドル32をスライド操作することにより、ガイドレール28に沿ってスライドする。
【0022】
そのため、測定器10は、図1に示すカウンタ14のCPU(図示省略)に基づき、リニアスケール26に対向する一対の保持体34の間隔を演算すなわち測定できる。一方、図1に示すように、筐体12の底板にはストッパ39が保持台34に対向するよう長孔12Aの両端に配置されており、このストッパ39が保持台34に当接することによって測定可動部30のスライドを停止させる(図3参照)。
【0023】
なお、図5に示すように、蓋体13にはハンドル32をスライド可能にする長孔13Aが形成されており、この長孔13Aは筐体12の長孔12A(図1参照)と同一の長さとなっている。そして、蓋体13には、図示しない可撓性の防塵部材が、長孔13Aに沿って配置されている。この防塵部材には切込み線が形成されており、この切込み線に対応するハンドル32部分が割込むようになっている。そのため、ハンドル32を長孔13Aに沿ってスライドさせても、粉塵が本体11内に侵入するのを防止する。
【0024】
図3及び図5に示すように、コード40が読取ヘッド30から導出されており、このコード40はコードケース42に挿通されている。このコードケース42は、図1及び図4に示すように、その一部が半円状になるよう複数の連結部材で連結され、チェーンのように一体形成している。そして、図4に示すように、コードケース42の一端は支持体34に連結された連結片44に固定されており、コードケース42の他端は筐体12に固定されている。
【0025】
即ち、コードケース42の連結部材は、支持体34のスライドに伴い、半円の部分が順次移り変わっていく(図4の実線および2点鎖線参照)。そのため、支持体34が移動しても、コード40はコードケース42の変形に伴って円滑に屈曲する。なお、図1に示すように、一対のコード40は、筐体12に配置されたコード導出部56を経て導出され、カウンタ14に接続する。
【0026】
本体11には、測定可動部30を所定位置に位置決めする位置決め手段が配置されている。即ち、図5に示すように、筐体12及び保持体34には、位置決め手段を構成するネジ孔12B及び孔34A(図5参照)が形成されており、このネジ孔12B及び孔34Aにネジ54をねじ込むことによって保持体34を所定位置に位置決めする。即ち、図1に示すように、ネジ孔12Bは筐体12の側板に所定間隔をもって形成されており、ユーザは保持体34を適宜位置に位置決めさせることができる。
【0027】
(置台に関する構成)
図6に示すように、置台60は、例えばベヤリング用リングなどにおける被測定物(図7参照)の外径(外側の寸法ともいう)または内径(内側の寸法ともいう)を測る際の基準長さを設定する平板状の基準板62を備える。この基準板62には、図6(C)に示すコ字状の切欠部(基準部と同義)63が、測定子50の接触部52にそれぞれ対向するよう一対形成されている。これらの切欠部63は、その長手方向(長孔12Aと同一方向)の端面63Aおよび63Bが、それぞれ被測定物の外側の寸法(外寸と同義)および内側の寸法(内寸と同義)を測る際の基準面(接触部52の変位する際の原点)となる。
【0028】
具体的には、切欠部63の端面63Aまたは63Bを、測定子52が被測定物の内側面または外側面と想定している。即ち、基準板62の外側における端面63B同士の間隔は予め長さL1に設定されていると共に、基準板62の内側における端面63A同士の間隔は予め長さL2に設定されている。
【0029】
そして、被測定物の内径を測定する際には、図6(C)の実線に示すように、一対の接触部52を切欠部63の端面63Bにそれぞれ当接させると共に、予め設定されている長さL1の数値をカウンタ14の操作部16(図1参照)を用いて入力する。一方、被測定物の外径を測定する際には、図6(C)の2点鎖線に示すように、一対の接触部52を切欠部63の端面63Aに当接させると共に、予め設定されている長さL2の数値をカウンタ14の操作部16を用いて入力する。
【0030】
これらの入力データはリニアスケール26に対する接触部52(図5参照)間の基準データ(接触部52の原点データおよび接触部52間の基準距離に関するデータなどを含む)となり、この基準データがカウンタ14(図1参照)のメモリに記録される。その後は、ハンドル32をスライドさせることにより、上述した基準データに基づき接触部52間の相対距離(即ち、基準長さデータに対しての比較距離)をカウンタ14のCPUが演算すると共に、その演算値を表示部18(図1参照)に表示する。
【0031】
また、図6(A)及び(B)に示すように、置台60は、測定器本体11を載置する。そのため、置台60は、本体11から突出する接触部52を含む測定子50が、置台60の載置面G(図6A参照)に干渉しないような高さとなっている。そして、本発明に係る測定装置S1は、図6(A)及び(B)に示すように、置台60および測定器本体11で構成する。
【0032】
(本実施例の作用)
先ず、図6(A)に示すように、測定器本体11を置台60上に載置した後、上述した基準データを生成すると共に、その基準データをカウンタ14のメモリに記録させる。この際、ユーザは、いずれか一方の測定可動部30(図1参照)を固定することによって測定がし易くなる(具体的には、使い勝手が良くなる)と判断する場合、ネジ54を適宜位置のネジ孔12Bに締結させて保持体34を位置決めしても良い(図5参照)。反対に、ユーザは、いずれか一方の測定可動部30を固定させない方が、使い勝手が良いと判断した場合、保持体34を位置決めしなくても良い。
【0033】
そして、回転させた把持部24をユーザが把持し、図7に示すように、本体11を例えばリングなどの被測定物Wの側面(「リングの平坦な面」或いは「水平面または垂直面」と同義)W1上に載置させる。即ち、測定時における被測定物Wは、その軸心P(図7の1点鎖線参照)が垂直となるよう載置面G上に倒した状態である。この状態における被測定物Wの側面W1が、測定器本体11の載置面となる。なお、測定器本体11は、被測定物Wがリング体に限らず、円柱形状や角筒形状などのワークでも同様に測定(載置を含む)対象となる。
【0034】
次に、被測定物Wの外径を測定する際には、図7の実線に示すように、ハンドル32を把持してスライドさせることにより、一対の接触部52を被測定物Wの外周面(外側面と同義)W2にそれぞれ当接(即ち、点接触)させる。測定モードになっているカウンタ14のCPUは、基準データに基づき接触部52間の相対距離(即ち、外径)を演算すると共に、その外径値L3を表示部18に表示させる。一方、被測定物の内径を測定する際には、図7の2点鎖線に示すように、ハンドル32を把持してスライドさせることにより、一対の接触部52を被測定物Wの内周面(内側面と同義)W3にそれぞれ当接させる。測定モードになっているカウンタ14のCPUは、基準データに基づき接触部52間の相対距離(即ち、内径)を演算すると共に、その内径値L4を表示部18に表示させる。
【0035】
本実施例においては、被測定物Wの寸法を測定する際は、被測定物Wをその軸心Pが垂直になるようにセット(「置く」と同義)する。そのため、側面W1上に載置する本体11の測定子50の軸心は、側面W1と平行である載置面Gに対し、垂直状態になる。即ち、本体11を被測定物W上に載置させるので、図7に示す測定時における被測定物Wの側面W1に対し、測定子50の軸心が垂直状態になる。従って、本実施形態では、図7に示すように、接触部52が被測定物Wの外周面W2または内周面W3のいずれにも対向し得る。
【0036】
本実施形態によれば、接触部52をスライドさせることによって被測定物Wの外周面W2または内周面W3にそれぞれ接触させることができるので、被測定物Wの外寸および内寸を測定し得る。即ち、本実施形態によれば、本体11を被測定物W上に載置させる構成としたので、1台の測定器10によって例えばリング状の被測定物Wの外径L3のみではなく、内径L4をも測定できる。従って、本実施形態によれば、1台の測定器10が外寸用および内寸用に兼用となるので、例えば内寸用の測定装置などが不要となり、使い勝手が良くなる。
【0037】
なお、本実施形態では保持台34を位置決めさせる位置決め手段としてネジ54をネジ孔12Bに締結させているが、本発明は測定可動部30を例えばユーザが位置決めしたい場所で固定できるフリー位置固定手段としても良い。また、本実施形態では測定器本体11とカウンタ14との情報通信をコード40で接続させた有線タイプとしているが、本発明では測定器本体とカウンタとの情報通信を無線タイプとしても良い。更に、本実施形態では測定可動部30を手動でスライドさせる手動機構とした例であるが、本発明は電動機構などとしても良い。
【実施例2】
【0038】
図8及び図9を用いて、ハンドル荷重調整手段が配置された測定器本体70の実施例2を説明する。この測定器本体70は、実施例1のハンドルを、更に測定操作し易くしたものである。なお、上述した実施例1の図1に示す測定器本体11と実質的に同一部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0039】
図8および図9に示すように、測定子操作用ハンドル(以下、単に「ハンドル」という)72は断面コ字状の平板となっており、この操作手段であるハンドル72は蓋体13を覆い隠すようにスライドする。図9に示すように、ハンドル72の裏面には、一対の引掛部73が測定方向に沿う両端にそれぞれ配置されている。
【0040】
また、一対の付勢手段(即ち、同一性能のコイルスプリング74)は、ハンドル負荷調整手段を構成し、測定方向に沿って移動可能に配置される測定子50を、中心にして配置される。これらのコイルスプリング74の一端は、支持杆48の頭部49に引っ掛けられる。一方、コイルスプリング74の他端は、ハンドル72の引掛部73にそれぞれ引っ掛けられる。即ち、一対のコイルスプリング74は、測定方向に沿ってハンドル72の引掛部73および引掛部73同士の間に配置される測定子50にそれぞれ介在している。
【0041】
そして、一対のコイルスプリング74は、支持杆48の頭部49(例えば、接触部52なども含む)に対する伸び具合とこれに対応する荷重を用いて、接触部52に伝達される荷重加減を調整するものである。即ち、このハンドル荷重調整手段は、一対のコイルスプリング74をスライド方向の両側から接触部52に介在させているので、ユーザのハンドル74に対する力の入れ具合による片寄りを防止する。従って、本実施形態によれば、実施例1のハンドル機構に比べて更に測定操作し易くなるので、正確な測定ができる。
【0042】
なお、図8に示すように、ハンドル72にはロック釦76が配置されており、このロック釦76はハンドル72のスライド開始(即ち、図示しないロック機構をオフ)および停止(即ち、ロック機構をオンして位置決め固定)させるものである。その他の構成及び作用効果は、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0043】
図10を用いて、実施例1の測定器本体11または実施例2の測定器本体70を、ブラケット80に装着する実施例3を説明する。このブラケット80は、被測定物を載置させると共に、上述した測定器本体11または70を上記被測定物上に配置させるものである。なお、上述した実施例1の図1に示す測定器本体11と実質的に同一部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0044】
図10に示すように、断面コ字状のブラケット80は、その底板80Aに被測定物Wを載置させると共に、天板80Bに測定器本体11または70を図示しない装着機構を介して装着させる構成となっている。即ち、測定器本体11または70は、ブラケット80に対して着脱可能となっている。ブラケット80の天板80Bには長孔80C(図10の破線参照)が形成されており、この長孔80Cは測定器本体11または70のハンドル32または72に対応する部位に開口している。そして、ユーザは、長孔80C内に手を入れてハンドル32または72をスライドさせ、被測定物Wの寸法を測定する。
【0045】
なお、底板80Aには、被測定物Wの軸心Pと直交する方向に、測定器本体11または70における接触部52の中心が位置できようにする位置合わせ機構(図示省略)を設けるようにしても良い。また、ブラケット80の背板80Dには高さ調整機構を設けるようにしても良く、この高さ調整機構は被測定物Wと測定器本体11または70との間隔Hを調整する。その他の構成及び作用効果は、実施例1と同様である。即ち、ブラケット80から取外した測定器本体11または70は、携帯した他の場所でも、測定処理を行う。
【実施例4】
【0046】
図11を用いて、実施例2の測定器本体70(実施例1の測定器本体11にも適用できる)を、加工機械の機上に装着する実施例4を説明する。この加工機械S2は、例えば縦型旋盤などに好適である。なお、上述した実施例2の図8に示す測定器本体70と実質的に同一部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0047】
図11に示すように、縦型旋盤(以下、単に「旋盤」という)S2はチャック盤82を備え、このチャック盤82には複数のチャック84が配置されている。複数のチャック84で挟持されるワークは、図示しない切削工具で切削されて被測定物(加工済み加工物と同義)Wとなる。そして、被測定物Wの寸法を測定する際、旋盤S2に一対の補助杆(位置決め手段の一部を構成する)86を図示しない孔にそれぞれ嵌合(支持と同義)させる。これらの孔は、チャック盤82の外側で且つチャック盤84(被測定物W)の軸心Pと直交する直線上に位置するよう配置している。
【0048】
測定器本体70の両端には、補助杆86を嵌合させるための溝78(図11の破線参照)がそれぞれ形成されている。そのため、測定器本体70は、補助杆86(即ち、旋盤S2)に対して着脱可能となっている。また、補助杆86に嵌合される本体70は、被測定物Wの側面W1に載置される。従って、本実施形態によれば、本体70によって被測定物Wの寸法を迅速かつ正確に測定し得る。なお、本実施形態では、実施例2の測定器本体70または実施例1の測定器本体11および置台60をセットとした測定装置S1を、加工機械S2に搭載するようにしても良い。その他の構成及び作用効果は、実施例1と同様である。即ち、加工機械S2から取外した測定器本体70または11は、携帯用としても使用できる。
【0049】
なお、本実施形態では加工機械を縦型旋盤の例であるが、本発明は鋳物製造機械または研磨(切削の一態様)機械などにも適用できる。また、本発明の加工機械では、測定データを有線または無線に拘らず機械本体へ送るように構成しても良い。即ち、加工機械の機上に搭載することによって加工済みの被測定物の精度管理が容易となり、測定器本体の測定結果を加工機械にフィードバックさせることによって加工精度を向上させることができる。更に、本発明に係る測定器では、接触部が被測定物に接触することによって表示ランプが点灯するように構成しても良く、また測定子の本数を3本以上の複数としても良い。実施例1〜4の組合せは、例えば上記各実施例の構成の内、2つの例または2つ以上の例を組合せるパターンとしても良い。
【符号の説明】
【0050】
10…測定器、11または70…測定器本体、50…測定子、52…接触部、60…置台、63…切欠部(基準部)、72…ハンドル、73…引掛部、74…コイルスプリング(付勢手段)、80…ブラケット、86…補助杆(位置決め手段)、S1…測定装置、S1…加工機械、W…被測定物(加工済み加工物)、W1…側面、W2…外周面、W3…内周面、P…軸心
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の移動可能な測定子を備え、これらの測定子の接触部を被測定物に接触させることによって被測定物の寸法を測定する測定器および測定装置並びに加工機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対の移動可能な測定子を備え、これらの測定子を円筒状の被測定物(ワーク)に接触させることによって被測定物の外形寸法を測定する外形寸法測定装置が開示されている(要約および段落番号「0017」並びに図1参照)。なお、上述した外形寸法測定装置は、測定速度が速く、高精度で且つ測定子を歪ませたり損傷することを防止するものである(要約の「課題」参照)。
【0003】
特許文献2は、測定子の測定部分を稜線状とする共に、駆動装置等を設け、各種の歯車の歯厚を簡易に測定する歯車の歯厚計測装置を提供するものである(要約の「目的」参照)。その実施例における枠体には、一対のブラケットの位置を正確に測定する測長器であるリニアスケールが、リニアレールと平行すると共にブラケットに接続されて設置されており、ブラケットにスライダを介して取付けられた一対の測定子の測定部の間隔を測定し得るようになっている(段落番号「0015」及び図2参照)。
【0004】
また、上述した枠体は、歯車に接近、離反するように、移動用のガイドとなる支持台に移動自在に支持されている。さらに、本装置には、枠体を支持台上で移動し得る前後進軸が備えられている(段落番号「0017」及び図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−189502号公報
【特許文献2】特開平5−209703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、両特許文献に係る測定装置は、被測定物の寸法を測定する際、測定子の測定部と被測定物の外形面(歯面を含む概念)とが同一平面上になるようにしている。そのため、両特許文献に係る測定装置では、歯厚などを含む外側の寸法(外寸と同義)しか測定できない。
【0007】
即ち、両特許文献に係る測定装置は、被測定物の外寸を測定する構成となっているのみであり、例えば円筒状ワークの内径(言い換えれば、内側の寸法)をも測定し得る構成では無い。従って、両特許文献に係る測定装置では、円筒状ワークなどの内側の寸法(内寸と同義)を測定するため、例えば内寸用の測定装置などが別途必要となり、使い勝手が悪い。
【0008】
本発明の目的は、被測定物の外側寸法のみならず内側寸法をも測定し得る使い勝手が良い測定器および測定装置並びに加工機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る測定器は、複数の移動可能な測定子を備え、上記測定子の接触部を被測定物に接触させることによって上記被測定物の寸法を測定する測定器であって、上記測定器の本体を上記被測定物に載置させた状態または上記被測定物の上方より所定間隔をもって保持した状態で上記被測定物の寸法を測定することを特徴とする。この場合、上記接触部を上記被測定物の外側面または内側面にそれぞれ接触させて外側面の寸法または内側面の寸法を測定しても良い。また、上記測定器においては、一対の引掛部を測定子操作用ハンドルの測定方向に沿う両端にそれぞれ設けると共に、一対の付勢手段を上記測定方向に沿って上記引掛部および上記引掛部同士の間に配置される上記測定子にそれぞれ介在させるようにしても良い。
【0010】
本発明に係る測定装置は、上述した各測定器と、上記測定器を載置すると共に、上記被測定物の外側寸法または内側寸法を測る際の基準長さを設定する基準部を有する置台と、を備えることを特徴とする。本発明に係る加工機械は、加工物を製造または切削する加工機械であって、上述した各測定器または上記測定装置を搭載し、製造または切削された加工済み加工物の寸法を上記測定器で測定することを特徴とする。この場合、上記加工済み加工物の軸心と直交する方向に上記測定子が位置するよう位置決めする上記測定器の位置決め手段を設けるようにしても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る加工機械並びに測定装置およびその測定器では、被測定物の寸法を測定する際、測定器の本体を被測定物上に載置または被測定物の上方より所定間隔をもって保持させるので、例えば測定時における被測定物(円筒状ワークなど)の側面に対し、測定子の軸心が垂直状態になる。そのため、本発明では、測定子の接触部が被測定物の外周面および内周面に対向し得る。本発明においては、測定子を移動させることによって測定子の接触部を被測定物の外周面または内周面にそれぞれ接触させることができるので、被測定物の外径(言い換えれば、外側の寸法)および内径(言い換えれば、内側の寸法)を測定し得る。
【0012】
即ち、本発明によれば、測定器の本体を被測定物上に載置または被測定物の上方より所定間隔をもって保持させる構成としたので、1台の測定器によって例えばリング状の被測定物の外側の寸法(外寸と同義)のみではなく、内側の寸法(内寸と同義)をも測定できる。従って、本発明によれば、1台の測定器が外寸用および内寸用に兼用となるので、例えば内寸用の測定装置などが不要となり、使い勝手が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る実施例1の測定器の斜視図である。
【図2】図1に示す測定器本体の異なる方向から見た部分拡大斜視図である。
【図3】図2に示す測定器本体の異なる方法から見た部分拡大斜視図である。
【図4】図1に示すコードケースの変化状態の概略図である。
【図5】図4に示す5−5線の拡大断面図である。
【図6】図1に示す測定器本体および置台で構成される測定装置を示し、(A)は測定装置を簡素化した側面図、(B)は図1(A)の平面図、(C)は図1(B)の基準板を拡大した平面図である。
【図7】図1に示す測定器本体を被測定物に載置した状態で寸法測定している側面図である。
【図8】本発明に係る実施例2の測定器本体を被測定物に載置した状態の斜視図である。
【図9】図8に示す測定器本体の断面図である。
【図10】本発明に係る実施例3における測定器本体およびブラケットを用いて、被測定物の寸法を測定する状態の側面図である。
【図11】本発明に係る実施例4における測定器本体を縦型旋盤機の機上にセットした際の加工機械の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、具体化した実施例1乃至実施例4を説明する。
【実施例1】
【0015】
以下、図1乃至図6に基づいて、本発明の実施例1である測定装置およびその測定器について説明する。
【0016】
(測定器に関する構成)
図1に示すように、測定器10は、測定器本体(「本体」ともいう)11とカウンタ14を備える。本体11とカウンタ14は、コード40を介して接続されている。カウンタ14は、入力キー(図示省略)などで構成される操作部16と表示部18を備える。なお、カウンタ14には、図示しないCPU及びメモリが配置されている。CPUは、カウンタ14の全体的な動作を司り、図示しない操作キーが操作された場合に、その操作に基づく処理(演算処理など)を行う。メモリは、CPUに接続され、各種の処理を制御するプログラム等を記憶している。
【0017】
本体11は、上方が開放された長尺状の筐体12及び蓋体13(図5参照)を備え、その筐体12の両端付近には回転可能な把持部24(図6A参照)が配置されている。なお、本体11の長手方向の長さは、例えば140cmである。また、本体11の短手方向の長さは、例えば12cmである。更に、筐体12の底板には、図2及び図3に示すように、測長器であるリニアスケール26及びガイドレール28が、筐体12の長手方向(測定方向と同義)に沿って平行するようにそれぞれ配置されている。このガイドレール28は、測定可動部30の移動をガイドする。
【0018】
(測定可動部の手動機構に関する構成)
図1に示すように、本体11には、一対の測定可動部30が、本体11の長手方向に沿って手動でスライドし得るようにそれぞれ配置されている。この測定可動部30は、図2に示すように、円棒状のハンドル32及びこのハンドル32を保持する保持台34を備える。
【0019】
図5に示すように、ハンドル32の先端には、ユーザによる力の加減を調整するバネ46(図2参照)及び支持杆48が連結されている。この支持杆48は、その一部が保持台34内に埋設されている。そのため、ハンドル32に加えられるスライド力は、このスライド力を調整するバネ46を介して保持台34に伝達される。
【0020】
支持杆48には棒状の測定子50が着脱可能に連結されており、この測定子50には球状の接触部52が接続されている(図3参照)。この接触部52は、その直径が測定子50の太さよりも若干大きくなっている。そのため、測定時において、接触部52のみが後述する被測定物(以下、「ワーク」ともいう)Wに接触する。筐体12には測定子50に対向する部位に長孔12A(図1参照)が形成されており、測定子50及び接触部52は筐体12から突出している(図5参照)。なお、接触部52を含む測定子50は、上述したように交換可能となっており、任意の大きさ(例えば、接触部52の直径または測定子50の長さなど)のものを選択できる。
【0021】
また、保持体34には、図3に示すように、読取ヘッド36がリニアスケール26に対向するよう固定されている。更に、保持体34には断面コ字状のリニアブロック38(図5参照)が固定されており、このリニアブロック38がガイドレール28に嵌め合っている。保持体34は、ハンドル32をスライド操作することにより、ガイドレール28に沿ってスライドする。
【0022】
そのため、測定器10は、図1に示すカウンタ14のCPU(図示省略)に基づき、リニアスケール26に対向する一対の保持体34の間隔を演算すなわち測定できる。一方、図1に示すように、筐体12の底板にはストッパ39が保持台34に対向するよう長孔12Aの両端に配置されており、このストッパ39が保持台34に当接することによって測定可動部30のスライドを停止させる(図3参照)。
【0023】
なお、図5に示すように、蓋体13にはハンドル32をスライド可能にする長孔13Aが形成されており、この長孔13Aは筐体12の長孔12A(図1参照)と同一の長さとなっている。そして、蓋体13には、図示しない可撓性の防塵部材が、長孔13Aに沿って配置されている。この防塵部材には切込み線が形成されており、この切込み線に対応するハンドル32部分が割込むようになっている。そのため、ハンドル32を長孔13Aに沿ってスライドさせても、粉塵が本体11内に侵入するのを防止する。
【0024】
図3及び図5に示すように、コード40が読取ヘッド30から導出されており、このコード40はコードケース42に挿通されている。このコードケース42は、図1及び図4に示すように、その一部が半円状になるよう複数の連結部材で連結され、チェーンのように一体形成している。そして、図4に示すように、コードケース42の一端は支持体34に連結された連結片44に固定されており、コードケース42の他端は筐体12に固定されている。
【0025】
即ち、コードケース42の連結部材は、支持体34のスライドに伴い、半円の部分が順次移り変わっていく(図4の実線および2点鎖線参照)。そのため、支持体34が移動しても、コード40はコードケース42の変形に伴って円滑に屈曲する。なお、図1に示すように、一対のコード40は、筐体12に配置されたコード導出部56を経て導出され、カウンタ14に接続する。
【0026】
本体11には、測定可動部30を所定位置に位置決めする位置決め手段が配置されている。即ち、図5に示すように、筐体12及び保持体34には、位置決め手段を構成するネジ孔12B及び孔34A(図5参照)が形成されており、このネジ孔12B及び孔34Aにネジ54をねじ込むことによって保持体34を所定位置に位置決めする。即ち、図1に示すように、ネジ孔12Bは筐体12の側板に所定間隔をもって形成されており、ユーザは保持体34を適宜位置に位置決めさせることができる。
【0027】
(置台に関する構成)
図6に示すように、置台60は、例えばベヤリング用リングなどにおける被測定物(図7参照)の外径(外側の寸法ともいう)または内径(内側の寸法ともいう)を測る際の基準長さを設定する平板状の基準板62を備える。この基準板62には、図6(C)に示すコ字状の切欠部(基準部と同義)63が、測定子50の接触部52にそれぞれ対向するよう一対形成されている。これらの切欠部63は、その長手方向(長孔12Aと同一方向)の端面63Aおよび63Bが、それぞれ被測定物の外側の寸法(外寸と同義)および内側の寸法(内寸と同義)を測る際の基準面(接触部52の変位する際の原点)となる。
【0028】
具体的には、切欠部63の端面63Aまたは63Bを、測定子52が被測定物の内側面または外側面と想定している。即ち、基準板62の外側における端面63B同士の間隔は予め長さL1に設定されていると共に、基準板62の内側における端面63A同士の間隔は予め長さL2に設定されている。
【0029】
そして、被測定物の内径を測定する際には、図6(C)の実線に示すように、一対の接触部52を切欠部63の端面63Bにそれぞれ当接させると共に、予め設定されている長さL1の数値をカウンタ14の操作部16(図1参照)を用いて入力する。一方、被測定物の外径を測定する際には、図6(C)の2点鎖線に示すように、一対の接触部52を切欠部63の端面63Aに当接させると共に、予め設定されている長さL2の数値をカウンタ14の操作部16を用いて入力する。
【0030】
これらの入力データはリニアスケール26に対する接触部52(図5参照)間の基準データ(接触部52の原点データおよび接触部52間の基準距離に関するデータなどを含む)となり、この基準データがカウンタ14(図1参照)のメモリに記録される。その後は、ハンドル32をスライドさせることにより、上述した基準データに基づき接触部52間の相対距離(即ち、基準長さデータに対しての比較距離)をカウンタ14のCPUが演算すると共に、その演算値を表示部18(図1参照)に表示する。
【0031】
また、図6(A)及び(B)に示すように、置台60は、測定器本体11を載置する。そのため、置台60は、本体11から突出する接触部52を含む測定子50が、置台60の載置面G(図6A参照)に干渉しないような高さとなっている。そして、本発明に係る測定装置S1は、図6(A)及び(B)に示すように、置台60および測定器本体11で構成する。
【0032】
(本実施例の作用)
先ず、図6(A)に示すように、測定器本体11を置台60上に載置した後、上述した基準データを生成すると共に、その基準データをカウンタ14のメモリに記録させる。この際、ユーザは、いずれか一方の測定可動部30(図1参照)を固定することによって測定がし易くなる(具体的には、使い勝手が良くなる)と判断する場合、ネジ54を適宜位置のネジ孔12Bに締結させて保持体34を位置決めしても良い(図5参照)。反対に、ユーザは、いずれか一方の測定可動部30を固定させない方が、使い勝手が良いと判断した場合、保持体34を位置決めしなくても良い。
【0033】
そして、回転させた把持部24をユーザが把持し、図7に示すように、本体11を例えばリングなどの被測定物Wの側面(「リングの平坦な面」或いは「水平面または垂直面」と同義)W1上に載置させる。即ち、測定時における被測定物Wは、その軸心P(図7の1点鎖線参照)が垂直となるよう載置面G上に倒した状態である。この状態における被測定物Wの側面W1が、測定器本体11の載置面となる。なお、測定器本体11は、被測定物Wがリング体に限らず、円柱形状や角筒形状などのワークでも同様に測定(載置を含む)対象となる。
【0034】
次に、被測定物Wの外径を測定する際には、図7の実線に示すように、ハンドル32を把持してスライドさせることにより、一対の接触部52を被測定物Wの外周面(外側面と同義)W2にそれぞれ当接(即ち、点接触)させる。測定モードになっているカウンタ14のCPUは、基準データに基づき接触部52間の相対距離(即ち、外径)を演算すると共に、その外径値L3を表示部18に表示させる。一方、被測定物の内径を測定する際には、図7の2点鎖線に示すように、ハンドル32を把持してスライドさせることにより、一対の接触部52を被測定物Wの内周面(内側面と同義)W3にそれぞれ当接させる。測定モードになっているカウンタ14のCPUは、基準データに基づき接触部52間の相対距離(即ち、内径)を演算すると共に、その内径値L4を表示部18に表示させる。
【0035】
本実施例においては、被測定物Wの寸法を測定する際は、被測定物Wをその軸心Pが垂直になるようにセット(「置く」と同義)する。そのため、側面W1上に載置する本体11の測定子50の軸心は、側面W1と平行である載置面Gに対し、垂直状態になる。即ち、本体11を被測定物W上に載置させるので、図7に示す測定時における被測定物Wの側面W1に対し、測定子50の軸心が垂直状態になる。従って、本実施形態では、図7に示すように、接触部52が被測定物Wの外周面W2または内周面W3のいずれにも対向し得る。
【0036】
本実施形態によれば、接触部52をスライドさせることによって被測定物Wの外周面W2または内周面W3にそれぞれ接触させることができるので、被測定物Wの外寸および内寸を測定し得る。即ち、本実施形態によれば、本体11を被測定物W上に載置させる構成としたので、1台の測定器10によって例えばリング状の被測定物Wの外径L3のみではなく、内径L4をも測定できる。従って、本実施形態によれば、1台の測定器10が外寸用および内寸用に兼用となるので、例えば内寸用の測定装置などが不要となり、使い勝手が良くなる。
【0037】
なお、本実施形態では保持台34を位置決めさせる位置決め手段としてネジ54をネジ孔12Bに締結させているが、本発明は測定可動部30を例えばユーザが位置決めしたい場所で固定できるフリー位置固定手段としても良い。また、本実施形態では測定器本体11とカウンタ14との情報通信をコード40で接続させた有線タイプとしているが、本発明では測定器本体とカウンタとの情報通信を無線タイプとしても良い。更に、本実施形態では測定可動部30を手動でスライドさせる手動機構とした例であるが、本発明は電動機構などとしても良い。
【実施例2】
【0038】
図8及び図9を用いて、ハンドル荷重調整手段が配置された測定器本体70の実施例2を説明する。この測定器本体70は、実施例1のハンドルを、更に測定操作し易くしたものである。なお、上述した実施例1の図1に示す測定器本体11と実質的に同一部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0039】
図8および図9に示すように、測定子操作用ハンドル(以下、単に「ハンドル」という)72は断面コ字状の平板となっており、この操作手段であるハンドル72は蓋体13を覆い隠すようにスライドする。図9に示すように、ハンドル72の裏面には、一対の引掛部73が測定方向に沿う両端にそれぞれ配置されている。
【0040】
また、一対の付勢手段(即ち、同一性能のコイルスプリング74)は、ハンドル負荷調整手段を構成し、測定方向に沿って移動可能に配置される測定子50を、中心にして配置される。これらのコイルスプリング74の一端は、支持杆48の頭部49に引っ掛けられる。一方、コイルスプリング74の他端は、ハンドル72の引掛部73にそれぞれ引っ掛けられる。即ち、一対のコイルスプリング74は、測定方向に沿ってハンドル72の引掛部73および引掛部73同士の間に配置される測定子50にそれぞれ介在している。
【0041】
そして、一対のコイルスプリング74は、支持杆48の頭部49(例えば、接触部52なども含む)に対する伸び具合とこれに対応する荷重を用いて、接触部52に伝達される荷重加減を調整するものである。即ち、このハンドル荷重調整手段は、一対のコイルスプリング74をスライド方向の両側から接触部52に介在させているので、ユーザのハンドル74に対する力の入れ具合による片寄りを防止する。従って、本実施形態によれば、実施例1のハンドル機構に比べて更に測定操作し易くなるので、正確な測定ができる。
【0042】
なお、図8に示すように、ハンドル72にはロック釦76が配置されており、このロック釦76はハンドル72のスライド開始(即ち、図示しないロック機構をオフ)および停止(即ち、ロック機構をオンして位置決め固定)させるものである。その他の構成及び作用効果は、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0043】
図10を用いて、実施例1の測定器本体11または実施例2の測定器本体70を、ブラケット80に装着する実施例3を説明する。このブラケット80は、被測定物を載置させると共に、上述した測定器本体11または70を上記被測定物上に配置させるものである。なお、上述した実施例1の図1に示す測定器本体11と実質的に同一部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0044】
図10に示すように、断面コ字状のブラケット80は、その底板80Aに被測定物Wを載置させると共に、天板80Bに測定器本体11または70を図示しない装着機構を介して装着させる構成となっている。即ち、測定器本体11または70は、ブラケット80に対して着脱可能となっている。ブラケット80の天板80Bには長孔80C(図10の破線参照)が形成されており、この長孔80Cは測定器本体11または70のハンドル32または72に対応する部位に開口している。そして、ユーザは、長孔80C内に手を入れてハンドル32または72をスライドさせ、被測定物Wの寸法を測定する。
【0045】
なお、底板80Aには、被測定物Wの軸心Pと直交する方向に、測定器本体11または70における接触部52の中心が位置できようにする位置合わせ機構(図示省略)を設けるようにしても良い。また、ブラケット80の背板80Dには高さ調整機構を設けるようにしても良く、この高さ調整機構は被測定物Wと測定器本体11または70との間隔Hを調整する。その他の構成及び作用効果は、実施例1と同様である。即ち、ブラケット80から取外した測定器本体11または70は、携帯した他の場所でも、測定処理を行う。
【実施例4】
【0046】
図11を用いて、実施例2の測定器本体70(実施例1の測定器本体11にも適用できる)を、加工機械の機上に装着する実施例4を説明する。この加工機械S2は、例えば縦型旋盤などに好適である。なお、上述した実施例2の図8に示す測定器本体70と実質的に同一部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0047】
図11に示すように、縦型旋盤(以下、単に「旋盤」という)S2はチャック盤82を備え、このチャック盤82には複数のチャック84が配置されている。複数のチャック84で挟持されるワークは、図示しない切削工具で切削されて被測定物(加工済み加工物と同義)Wとなる。そして、被測定物Wの寸法を測定する際、旋盤S2に一対の補助杆(位置決め手段の一部を構成する)86を図示しない孔にそれぞれ嵌合(支持と同義)させる。これらの孔は、チャック盤82の外側で且つチャック盤84(被測定物W)の軸心Pと直交する直線上に位置するよう配置している。
【0048】
測定器本体70の両端には、補助杆86を嵌合させるための溝78(図11の破線参照)がそれぞれ形成されている。そのため、測定器本体70は、補助杆86(即ち、旋盤S2)に対して着脱可能となっている。また、補助杆86に嵌合される本体70は、被測定物Wの側面W1に載置される。従って、本実施形態によれば、本体70によって被測定物Wの寸法を迅速かつ正確に測定し得る。なお、本実施形態では、実施例2の測定器本体70または実施例1の測定器本体11および置台60をセットとした測定装置S1を、加工機械S2に搭載するようにしても良い。その他の構成及び作用効果は、実施例1と同様である。即ち、加工機械S2から取外した測定器本体70または11は、携帯用としても使用できる。
【0049】
なお、本実施形態では加工機械を縦型旋盤の例であるが、本発明は鋳物製造機械または研磨(切削の一態様)機械などにも適用できる。また、本発明の加工機械では、測定データを有線または無線に拘らず機械本体へ送るように構成しても良い。即ち、加工機械の機上に搭載することによって加工済みの被測定物の精度管理が容易となり、測定器本体の測定結果を加工機械にフィードバックさせることによって加工精度を向上させることができる。更に、本発明に係る測定器では、接触部が被測定物に接触することによって表示ランプが点灯するように構成しても良く、また測定子の本数を3本以上の複数としても良い。実施例1〜4の組合せは、例えば上記各実施例の構成の内、2つの例または2つ以上の例を組合せるパターンとしても良い。
【符号の説明】
【0050】
10…測定器、11または70…測定器本体、50…測定子、52…接触部、60…置台、63…切欠部(基準部)、72…ハンドル、73…引掛部、74…コイルスプリング(付勢手段)、80…ブラケット、86…補助杆(位置決め手段)、S1…測定装置、S1…加工機械、W…被測定物(加工済み加工物)、W1…側面、W2…外周面、W3…内周面、P…軸心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動可能な測定子を備え、上記測定子の接触部を被測定物に接触させることによって上記被測定物の寸法を測定する測定器であって、
上記測定器の本体を上記被測定物に載置させた状態または上記被測定物の上方より所定間隔をもって保持した状態で上記被測定物の寸法を測定することを特徴とする測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の測定器において、上記接触部を上記被測定物の外側面または内側面にそれぞれ接触させて外側面の寸法または内側面の寸法を測定することを特徴とする測定器。
【請求項3】
請求項1に記載の測定器において、一対の引掛部を測定子操作用ハンドルの測定方向に沿う両端にそれぞれ設けると共に、一対の付勢手段を上記測定方向に沿って上記引掛部および上記引掛部同士の間に配置される上記測定子にそれぞれ介在させることを特徴とする測定器。
【請求項4】
請求項1または3の少なくとも一方に記載の測定器と、
上記測定器を載置すると共に、上記被測定物の外側寸法または内側寸法を測る際の基準長さを設定する基準部を有する置台と、
を備えることを特徴とする測定装置。
【請求項5】
加工物を製造または切削する加工機械であって、
請求項1または3の少なくとも一方に記載の測定器または請求項4に記載の測定装置を搭載し、製造または切削された加工済み加工物の寸法を上記測定器で測定することを特徴とする加工機械。
【請求項6】
請求項5に記載の加工機械において、上記加工済み加工物の軸心と直交する方向に上記測定子が位置するよう位置決めする上記測定器の位置決め手段を備えることを特徴とする加工機械。
【請求項1】
複数の移動可能な測定子を備え、上記測定子の接触部を被測定物に接触させることによって上記被測定物の寸法を測定する測定器であって、
上記測定器の本体を上記被測定物に載置させた状態または上記被測定物の上方より所定間隔をもって保持した状態で上記被測定物の寸法を測定することを特徴とする測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の測定器において、上記接触部を上記被測定物の外側面または内側面にそれぞれ接触させて外側面の寸法または内側面の寸法を測定することを特徴とする測定器。
【請求項3】
請求項1に記載の測定器において、一対の引掛部を測定子操作用ハンドルの測定方向に沿う両端にそれぞれ設けると共に、一対の付勢手段を上記測定方向に沿って上記引掛部および上記引掛部同士の間に配置される上記測定子にそれぞれ介在させることを特徴とする測定器。
【請求項4】
請求項1または3の少なくとも一方に記載の測定器と、
上記測定器を載置すると共に、上記被測定物の外側寸法または内側寸法を測る際の基準長さを設定する基準部を有する置台と、
を備えることを特徴とする測定装置。
【請求項5】
加工物を製造または切削する加工機械であって、
請求項1または3の少なくとも一方に記載の測定器または請求項4に記載の測定装置を搭載し、製造または切削された加工済み加工物の寸法を上記測定器で測定することを特徴とする加工機械。
【請求項6】
請求項5に記載の加工機械において、上記加工済み加工物の軸心と直交する方向に上記測定子が位置するよう位置決めする上記測定器の位置決め手段を備えることを特徴とする加工機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−145230(P2011−145230A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7544(P2010−7544)
【出願日】平成22年1月16日(2010.1.16)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月16日(2010.1.16)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】
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