説明

加工機械

【課題】作動状態を監視するための加工機械の提供。
【解決手段】本発明に係る加工機械は、加工工具を交換可能に取り付けられる加工主軸及び加工主軸を駆動する電気モータが取り付けられたモータによって複数の座標軸に沿って移動可能な機械加工ユニットと、プログラム可能な制御ユニットと、加工機械の作動状態を監視する手段とを備え、少なくとも1つの作動パラメータを検出する少なくとも1つのセンサ・システムが、作動パラメータに関連する加工機械の構成部材に配置され、評価ユニットが、センサ・システム及び制御ユニットの双方に結合され、センサ・システムによって検出された測定値を処理するようになっており、光学表示装置が、操作者が直視できる範囲に設けられ、評価ユニットからのデータに基づき、加工機械の正常な作動状態、注意すべき作動状態、及び危険な作動状態を表示するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工機械、とりわけプログラム制御されたフライス盤及びボール盤に関するものである。この加工機械は複数の座標軸上をモータによって移動可能な機械加工ユニットを備え、この機械加工ユニットには、加工工具を交換可能に取り付けられる加工主軸及び加工主軸を回転駆動させる電気モータが取り付けられ、プログラム可能な制御ユニット、及び加工機械の作動状態を監視する手段を備える。
【背景技術】
【0002】
現代のプログラム制御された加工機械及び複合加工機械では、具体的な1つの加工物又は複数の加工物の機械加工前の機械の設定が、最適化された状態で円滑な作業工程を行うためにかなり重要である。それはさておき、発生の初期段階で混乱を起こし得る要因を認識し、時を違えずに対応策を開始できるようにするために、機械の作業モード中の作動状態を連続的に監視することが非常に重要である。これまでのところ、作業の開始前の機械の設定及び作動中の機械を監視することは、通常は、機械に隣接又は対角線上前方にあり限定されて動くことができるスタンド上にある制御ユニットの制御パネルを介してのみ行われてきた。したがって、操作者は、機械加工に取りかかるとき、制御パネル上の関連する作動パラメータの表示を監視する必要があり、可能であれば、実際の作動中に、同時に実際の工具の作業状態を見る必要がある。操作者は、長い作業時間にわたる可能性のある状態監視の間に類似の要求を達成しなければならない。その理由は、制御パネル上の表示の連続的な観察、及び機械の作業空間の各加工物への工具の係合の連続的な観察は努力を要するからである。
【0003】
誤りが実際に起こる前にできるだけ早く、誤りの原因を認識することは、連続作業手順にとっての重要な役割を果たす。その理由は、これらの誤りが起こること、すなわち加工物の機械加工への深刻な悪影響は、工具の交換を開始するなどの操作者の介入によって防止され得るからである。連続的に正確に複数の複雑な機械の状態を監視するには、経験のある操作者及びそれまでに使用されたシステムに対する高精度の連続的注意が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、作動状態を監視するための加工機械の設定により、機械加工すべき加工物に対する機械によるアプローチを促進し、操作者から苦痛を取り除き、各加工機械の信頼性のある作業能力を増進するような加工機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1に記載された構成によって達成される。選択された加工機械の構成部材に少なくとも1つのセンサ・システムを設けることにより、特にこの作動パラメータに関連する機械部品の具体的な作動パラメータを連続的に監視することが可能である。作動パラメータとして、例えば、加工主軸の電気モータの電力消費、主軸の出力端部での振動、熱応力を受けた機械部品の温度及び潤滑剤の状態も使用できる。評価ユニットが、一方でセンサ・システムに接続され、他方で制御ユニットに接続されるので、機械の各作動状態向けデータを受信するために、制御ユニットからのデータ及びセンサ・システムからのデータが互いに連結され処理できる。光学表示装置が、操作者が直視できる範囲に機械部品上に配置されるという事実によって、集約的かつ疲労を軽減する表示が達成される。その表示装置は、評価ユニットによるデータ出力に基づいて機械の正常な作動状態、注意すべき作動状態、及び危険な作動状態を表示する。
【0006】
本発明による監視手段は、機械の動作範囲内に配置されることが好ましい光学表示装置を操作者が最初に観測することにより、操作者が加工機械の正常な作動状態及び注意すべき作動状態を早い段階に簡単な方法で認識できるという利点を提供する。制御パネルの表示と工具の動作範囲とを交代で観測することはもはや必要ない。異なる色により各作動状態を表示することにより、特に突然に色が変化することにより、操作者に長期的注意を維持させる。したがって、表示される色が変化することによって、攪乱及び誤りが、それらが影響を与える前に初期段階で認識され得る可能性があり、その結果、故障が実際的な強い影響を与える前に、対応策が、操作者により又は制御により開始できる。試運転中の誤りの発生の検出及び表示により、機械の作動手順が改善され停止回数が減少される。これらの効果は、各機械の状態の監視に強い影響を有するばかりでなく、それらの効果は、いつ一人の操作者が一群の機械を作動し監視しなければならないかも示す。
【0007】
好ましくは3色の交通信号機の色での光学表示は監視機能を十分に達成するが、光学表示を音声表示と組み合わせることも適しており、注意の要因を増加させる。
【0008】
本発明の適切な設計によれば、表示は交互に活性化される複数の色彩範囲を含む。すなわち、正常な作動には緑色、注意すべき作動には黄色/オレンジ色及び危険な作動には赤色となる色彩範囲を含む。ここで、特別な表示装置では、正常な作動の緑色領域は、実質的に注意すべき作動向け黄色/オレンジ色領域よりも大きく、同様に黄色/オレンジ色領域は危険な作動状態の赤色領域よりも大きい。緑色領域が60%、黄色/オレンジ色領域が20%、赤色領域が10%という領域の大きさの比率分布が特に適すると証明された。より大きな緑色領域は正常な作動状態を示し、緑色領域の相対的な大きさは監視される作動パラメータの実際の大きさを表示する。したがって、機械設定の際、操作者は、緑色領域の上限、すなわち60%よりもわずかに下の上限に近い値に機械を調節できる。したがって、操作者は、例えば、加工主軸の電気モータの電力消費が緑色領域の上部範囲にあるように工具の前送りが大きくなるように選択できる。そのような方法で最適化された前送りは、対応する加工機械の性能につながる。例えば、工具ホルダでの振動を監視することによって類似の手法が実行され得る。
【0009】
光学表示装置の黄色/オレンジ色領域は、例えば、主軸モータの電力消費、或いは加工主軸又は工具の振動が制限範囲内にあり、これらの作動パラメータを正常の大きさに戻すためにすぐに対策が開始されるべきであることを操作者に指摘する。これは、例えば、前送りを低減させ、工具又は他の手段を変えることによってもたらされることができる。重要なことは、非常に多岐にわたる設定作業が実行され複数の機械が監視されるとき、機械を監視するための努力及び注意深さが操作者にとって軽減されるということであり、そのことによりすべての機械の長期の作動に良い効果をもたらす。
【0010】
表示装置は機械ユニットの側壁の外側に光学発光体要素として適切に取り付けられるので、もし操作者が機械の動作範囲にある加工物上の工具の作動を見ているならば、表示装置は操作者が直視する範囲にあることになる。
【0011】
好ましくは、表示装置はLEDなどの複数の発光体を有し、この複数の発光体は、透明な外側壁を有する筺体カプセルに配置され、電気的にそれぞれ評価ユニット及び制御ユニットに接続されている。この場合、各発光体の数が各パラメータの測定された大きさに比例するならば有利である。操作者は、それぞれ活性化された発光体の数によって、したがって各発光体領域の大きさによって、それぞれ関連する作動パラメータの大きさ及び感知された値を明示される。
【0012】
本発明の実施例が図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】回転ヘッドを備える一般的フライス盤の概略側面図。
【図2】鉛直に配向された回転ヘッドを備える鉛直フライス盤の図。
【実施例】
【0014】
図1に示される一般的なフライス盤は、後部スタンド1及びその下面に配置された機械床2を備え、その上に加工物テーブル4が案内レール3上をモータによってY座標軸方向に駆動できる。水平送り台7はスタンド1の前方で水平な案内レール5及び6に取り付けられ、その結果、送り台7はモータによってX座標軸方向に移動でき、送り台7の前方には横送り台9が鉛直方向の案内レール10で案内されて、モータによってZ座標軸方向に移動され得る。横送り台9の前方にヘッド11が取り付けられ、その結果、ヘッド11は水平軸12の回りに回転可能であり、45°傾斜したヘッド11の前面13上に回転ヘッド15が支持され、回転ヘッド15は45°傾斜した軸14の回りにモータによって動くことができる。主軸筺体16は、この回転ヘッド15の1つのカテーテル面に固定され、主軸筺体16の左部分に主軸モータ17、及びその前面に加工主軸18が配置され、それぞれが破線で示されている。主軸モータ17の後部領域の主軸16の後部端にセンサ20が配置され、連続的にモータ17の消費電力を検出する。主軸筺体16の前部端領域に振動センサ21が配置され、振動センサ21は、作動中に工具ホルダ又はクランプされた工具に発生する振動を検出する。2つのセンサ20及び21はセンサ・システムを形成し、データ・ライン22及び23を介して、従来型の制御ユニット25に接続される評価ユニットに接続24される。データ・ライン26は、制御ユニット25から、支持ヘッド11の側壁に人間工学的に好ましい位置に回転可能に固定された円形の発光体要素として配置される表示装置28につながり、その結果、表示装置28は機械に隣接して立つ操作者が直視できる範囲にある。この表示装置28は、LEDなどの複数の発光体が配置された透明の筺体カプセルを含む。さらに、表示装置28は3つの領域に分けられる。すなわち発光体面の60%を占める大きな緑色領域、発光体領域の20%を占める中サイズの黄色/オレンジ色領域、及び発光体領域の20%を占める小さい赤色領域である。センサ・システム20及び21によって得られた測定値、及び評価ユニット24で決定された作動状態に応じて、LED線がより多く又はより少なく、緑色、黄色/オレンジ色又は赤色領域として目に見えるようになる。緑色領域は正常な加工機械の作動状態を示し、黄色/オレンジ色領域は注意すべき加工機械の作動状態の始まりを示し、及び赤色領域は危険な加工機械の作動状態を示し、それぞれが、検出された電力消費及び/又は振動パラメータの大きさに依存する。加工機械の他の状態及び特性を監視するために、例えば、具体的に押圧された構成要素などの温度などの追加の作動パラメータが、対応するセンサによって検出され、評価ユニットを介して監視できる。
【0015】
図2の正面図で概略的に示されるフライス盤及びボール盤が、側壁31及び32をその上に備える基底部30を有し、加工物テーブル33がこれら2つの側壁の間に配置される。横断する横移動部35が側壁31及び32の上面に取り付けられた2つの案内レールに取り付けられ、Y座標軸方向にモータによって移動可能になっており、横送り台36がその面に配置され、上下滑り台37が横送り台36の前方面に配置され、それぞれが案内レール内に配置されて、その結果、それらがモータによって移動され得る。ここで、電気リニア・モータ、例えば37が送り台を駆動するように働く。Z座標軸方向に移動可能な鉛直な送り台が、鉛直フライス盤ヘッド38を支持し、その筺体内に、加工主軸及びその駆動モータが支持される。
【0016】
機械作動中、工具ホルダ39又はその中のクランプされた工具に起こる振動を検出するために、この実施例では、主軸筺体38の前方部にセンサ21も提供され、このセンサ21はデータ・ライン22を介して評価ユニット24に接続される。図1の実施例と同じ方法で、別のセンサ20が主軸筺体38の主軸駆動モータの端部に配置され、そのセンサ20が電気駆動モータの電力消費を検出し、データ・ライン23を介して評価ユニット24に接続される。データ・ライン26は、この評価ユニット24から表示装置40につながる。表示装置40は、機能については図1の表示装置28に対応するが、この場合は細長い楕円形状を有する。この表示装置40も、複数の色彩領域又は色彩区域を含み、それらは連続的に検出された作動パラメータの大きさに応じて特定の色を点灯させ、加工機械の各作動状態を操作者に示す。この工程では、ただ1つのパラメータの表示、例えば、測定された振動のパラメータ又は主軸モータの電力消費のパラメータの表示は、制御ユニットの制御パネル又は評価ユニットに提供され得るキー又はスイッチを介して操作者による設定に応じてなされ得る。
【0017】
本発明による表示は、例えば領域サイズ区分の区分比率の形態での縮尺目盛を適切に含む。測定された作動パラメータの大きさ及び/又は感知された値に適合された、活性化された発光体要素、すなわちLEDの変化する数による縮尺目盛が好ましい。
【0018】
特定の加工物を加工するための加工機械を設定する方法は、設定作業が達成される間に、同時にまたは実際の操作の間に操作者が機械の動作範囲内の工具/加工物の接触面を視覚的に監視するということを特徴とする。作業手順及び結果を最適化するために、操作者は、連続的に監視される表示が緑色領域の上部範囲にあるように、例えば、主軸前送り、主軸速度などの作動パラメータをキーボード上に設定することができる。
【0019】
本発明は、上記に図示され、説明された実施例に限定されない。例えば、センサが、異なる多くの作動パラメータを検出するために設けられ、評価ユニット又は制御ユニットにも直接接続されることができる。各作動パラメータの優先順位に応じて、個々のセンサの測定値が表示装置の評価ユニットを介して別々に表示されることができる。評価ユニットが様々な作動パラメータの測定値を互いに関連付け、これらの測定値の組み合わせからデータを表示ユニットに供給するという可能性もある。したがって、例えば、加工主軸の支持温度、主軸モータの消費電力及び工具ホルダの振動が個々に測定され、(選択肢としては、順番を変化させて)パラメータとして個々に表示されることができる。また、3つ以上のパラメータが評価ユニット内で共通のデータセットに処理されてもよく、そのデータセットは表示されて、組み合わされたパラメータの評価で機械の作動状態を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機械、とりわけ、プログラム制御された旋盤、フライス盤及びボール盤において、
モータによって複数の座標軸に沿って移動可能な機械加工ユニットであって、加工工具を交換可能に取り付けられる加工主軸(18)及び前記加工主軸(18)を駆動する電気モータ(17)が取り付けられた機械加工ユニットと、
プログラム可能な制御ユニット(25)と、
前記加工機械の作動状態を監視する手段と
を備え、
少なくとも1つの作動パラメータを検出する少なくとも1つのセンサ・システム(20,21)が、前記作動パラメータに関連する前記加工機械の構成部材(11;38)に配置され、
評価ユニット(24)が、前記センサ・システム(20,21)及び前記制御ユニット(25)の双方に結合され、前記センサ・システムによって検出された測定値を処理するようになっており、
光学表示装置(28,40)が、操作者が直視できる範囲に設けられ、前記評価ユニット(24)からのデータに基づき、前記加工機械の正常な作動状態、注意すべき作動状態、及び危険な作動状態を表示するようになっていることを特徴とする、加工機械。
【請求項2】
前記評価ユニット(24)が、前記制御ユニットに機能的に結合され、前記センサ・システム(20,21)の前記測定データ及び前記制御ユニット(25)のデータから監視された作動パラメータの変動する各状態を決定し、変動する状態に対応する前記表示装置(28,40)の色を活性化させることを特徴とする、請求項1に記載された加工機械。
【請求項3】
前記表示装置(28,40)が、作動状態に応じて、正常な作動状態では緑色、注意すべき作動状態では黄色/オレンジ色、及び危険な作動状態では赤色に変化する色彩領域を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載された加工機械。
【請求項4】
前記表示装置(28,40)が、前記機械加工ユニット(11,38)の側壁の外側の人間工学的に好ましい位置に配置されることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された加工機械。
【請求項5】
前記表示装置(28,40)がLEDなどの複数の発光体を含み、該複数の発光体は、透明な筺体カプセル内に配置され、電気的に前記評価ユニット(24)及び前記制御ユニット(25)にそれぞれ接続されることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載された加工機械。
【請求項6】
前記表示装置(28;40)が、それぞれ色彩活性化された範囲の比率の大きさを表示する縮尺目盛を含むことを特徴とする、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載された加工機械。
【請求項7】
前記緑色領域が色彩面全体の約60〜70%を占め、前記黄色/オレンジ色領域が約20〜30%を占め、及び前記赤色領域が約10〜20%を占めることを特徴とする、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載された加工機械。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−133781(P2012−133781A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−275911(P2011−275911)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【出願人】(506381599)ディッケル マホ プロンテン ゲーエムベーハー (16)
【Fターム(参考)】