説明

加工用粘着シート

【課題】 粘着性、剥離性及びエキスパンド性に優れた加工用粘着シートを提供する。
【解決手段】 少なくとも基材および粘着剤層を有する加工用粘着シートであって、前記粘着剤層は放射線重合性化合物を含み構成されており、前記基材と粘着剤層との間には、ガラス転移温度が20℃以上のアクリル系ポリマーを主成分とする中間層が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウェハ等の被加工物に対して加工する際に使用する加工用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ゲルマニウムまたはガリウム−ヒ素などからなる半導体ウェハは大径の状態で製造された後、その裏面(回路パターン形成面とは反対側の面)に粘着シートが貼り合わされ、その状態でダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンド、ピックアップ、マウントの各工程が行われる。
【0003】
前記半導体ウェハのダイシング工程で用いられる粘着シートとしては、近年、ダイシング工程からエキスパンド工程にいたるまでは十分な粘着力を有し、ピックアップ時には粘着シートに於ける粘着剤がチップに付着しない程度の粘着力を有するものが望まれている。
【0004】
そのような粘着シートとして、例えば下記特許文献1及び2には、分子内に光重合性炭素−炭素2重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物からなる粘着剤が塗布された粘着シートであって、ポリ塩化ビニルからなる基材面に光照射をするとその感圧性接着剤層(粘着剤層)が3次元網状化し得るものが提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された粘着シートには、次のような問題点を有している。すなわち、粘着シートを長期間の保存後に使用すると、粘着剤層中に存在する放射線重合性化合物がポリ塩化ビニルからなる基材中に移行するため、UV(紫外線)照射の際には、放射線重合性化合物の含有量が減少し、粘着剤層の硬化反応が不十分になる場合がある。その結果、UVを照射しても剥離性が低下し、チップのピックアップの際にチップに粘着剤が付着するという問題があった。
【0006】
また、基材中に存在する可塑剤が粘着剤層中に移行すると、粘着剤層が軟化することが多い。そのため、UV照射後に半導体チップをピックアップしようとしても確実にピックアップができないという問題があった。さらに、UV照射前に於いては粘着シートの粘着力が低下するという問題点もあった。
【0007】
ここで、基材から粘着剤層中への可塑剤の移行に対し、これを防止した粘着シートが、例えば下記特許文献3に開示されている。即ち、基材としての基材樹脂シートと粘着剤層との間に中間層を設け、これにより基材から粘着剤層への可塑剤の移行を効果的に抑制するものである。中間層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアルキレンテレフタレートおよび変性アルキド樹脂から選ばれる樹脂層が用いられている。しかし、特許文献3に記載の粘着シートでは、老化防止剤等の各種添加剤の移行までも十分抑制するものではない。その結果、当該粘着シートを半導体ウェハの加工に用いる場合に行われるエキスパンド工程に於いて、粘着シートのエキスパンド性やエキスパンド後の復元性が低下し、基材に撓みが発生していた。
【0008】
この様な問題に対し、さらに老化防止剤等の添加剤の移行を防止して、エキスパンド性等の向上を目的とした粘着シートが、例えば下記特許文献4及び特許文献5に開示されている。しかしながら、これらの各特許文献に開示されている粘着シートであると、紫外線照射後の粘着力の低下が不足しており、剥離性が十分であるとは言い難い。
【0009】
【特許文献1】特開昭60−196956号公報
【特許文献2】特開昭60−223139号公報
【特許文献3】特開平1−56111号公報
【特許文献4】日本国特許第3060417号
【特許文献5】日本国特許第2703467号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、粘着性、剥離性及びエキスパンド性に優れた加工用粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、加工用粘着シートについて鋭意検討した。その結果、所定の物性値を有するアクリル系ポリマーを主成分とした中間層を基材と粘着剤層との間に設けることにより前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る加工用粘着シートは、前記の課題を解決する為に、少なくとも基材および粘着剤層を有する加工用粘着シートであって、前記粘着剤層は放射線重合性化合物を含み構成されており、前記基材と粘着剤層との間には、ガラス転移温度が20℃以上のアクリル系ポリマーを主成分とする中間層が設けられていることを特徴とする。
【0013】
前記構成の様に、基材と粘着剤層との間に、ガラス転移温度が20℃以上のアクリル系ポリマーを主成分とする中間層を設けると、これがバリア層となり室温保存下に於いて、粘着剤層中に存在する放射線重合性化合物が基材中に移行するのを防止することができる。これにより、粘着剤層に対して放射線を照射する際には、放射線重合性化合物の重合反応により、粘着剤層を十分に硬化させることができ、粘着剤層の剥離性の向上が可能になる。その結果、被加工物との剥離の際に、糊残りが発生するのを防止することができる。
【0014】
前記基材は、少なくとも添加剤を含有した軟質塩化ビニルフィルムであってもよい。
【0015】
前記構成のように、基材中に、例えば可塑剤や老化防止剤等の添加剤を含む構成であっても、前記の中間層はこれらの添加剤が粘着剤層中に移行するのを防止することができる。この為、可塑剤の移行に起因する粘着剤層の軟化を防止し、剥離性の低下を防止したり、老化防止剤の移行に起因する粘着シートの伸長性や、伸長後の復元性の低下を防止し基材に撓みが発生するのを抑制することができる。
【0016】
前記粘着剤層には、放射線重合開始剤が含まれていてもよい。
【0017】
前記構成のように、粘着剤層中に放射線重合開始剤を含む構成であっても、前記の中間層は放射線重合開始剤の基材中への移行を防止することができる。この為、放射線照射による重合が阻害されて、粘着剤層の硬化が不十分となるのを防止することができる。その結果、粘着剤層の剥離性を良好な状態に維持することができる。
【0018】
前記アクリル系ポリマーは、メタクリレートポリマーまたはメチルメタクリルレートポリマーを含むことが好ましい。
【0019】
アクリル系ポリマーとして前記のメタクリレートポリマーまたはメチルメタクリルレートポリマーを用いることにより、結果的に高いガラス転移点を有する中間層を形成することができる。
【0020】
前記アクリル系ポリマーには、架橋剤が配合されていることが好ましい。
【0021】
アクリル系ポリマーに架橋剤を配合することにより中間層を3次元網状構造とし、該中間層が有するブロッキング機能を一層向上させることができる。
【0022】
前記架橋剤の配合量は、前記アクリル系ポリマーに於ける主ポリマー100重量部に対して0.1〜50重量部であることが好ましい。
【0023】
添加剤の配合量を主ポリマー100重量部に対して0.1重量部以上とすることにより、中間層が有するブロッキング機能を一定以上に維持することができる。その一方、添加剤の配合量を50重量部以下とすることにより、粘着シートの伸長性や伸長後の復元性を、基材に撓みを発生させることなく、好適な範囲に維持することができる。
【0024】
前記アクリル系ポリマーには、可塑剤が配合されていることが好ましい。
【0025】
前記構成のようにアクリル系ポリマーに可塑剤を配合することにより、該可塑剤が基材から移行してきた可塑剤に対し親和性を発揮することにより、中間層中に留まらせ粘着剤層中に移行するのを防止することができる。その結果、可塑剤の移行に起因する粘着剤層の軟化を防止し、剥離性の低下を防止することができる。
【0026】
前記可塑剤の配合量は、前記アクリル系ポリマーに於ける主ポリマー100重量部に対して1〜55重量部であることが好ましい。
【0027】
可塑剤の配合量を主ポリマー100重量部に対して1重量部以上とすることにより、中間層が有するブロッキング機能を一定以上に維持することができる。その一方、可塑剤の配合量を55重量部以下とすることにより、本発明に係る加工用粘着シートを貼り付けた被加工物を加工する際に、その被加工物に割れや欠けなどの不具合が生じるのを防止することができる。
【0028】
前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤であることが好ましい。
【0029】
これにより、他の架橋剤を用いた場合と比較して、中間層に於ける硬化反応を短期間で生じさせることができる。その結果、生産効率の向上など製造プロセスの面で有利な加工用粘着シートを提供することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
即ち、本発明に係る加工用粘着シートであると、ガラス転移温度が20℃以上のアクリル系ポリマーを主成分とする中間層を基材と粘着剤層との間に設けることにより、粘着剤層中の放射線重合性化合物や放射線重合開始剤が基材中に移行するのを防止できるので、粘着剤層中にはその硬化機能を維持でき、剥離性の低下を極力抑制することができる。その結果、糊残りを低減させ、剥離性に優れた加工用粘着シートを提供できるという効果を奏する。
【0031】
また、前記中間層は、基材中に存在する可塑剤や老化防止剤が粘着剤層中に移行するのを防止するので、粘着剤層の軟化に起因する粘着性及びエキスパンド性の低下や、基材の撓みを防止できる加工用粘着シートを提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施の形態について、図を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にする為に拡大または縮小等して図示した部分がある。
【0033】
図1は、本実施の形態1に係る加工用粘着シート(以下、単に粘着シートと言う。)の概略構成を示す断面模式図である。同図に示すように、本実施の形態に係る粘着シート11は、基材12、中間層13、及び粘着剤層14が順次積層された構造である。
【0034】
前記基材12は中間層13及び粘着剤層14の支持母体となるものであり、軟質塩化ビニルフィルムからなる。基材12は一層からなるものでもよく、二層以上の積層体からなるものでもよい。基材12が二層以上の積層体である場合、少なくとも1つの層が軟質塩化ビニルフィルムであればよい。この場合、他方の層には、基材12に対する中間層13の接着性を向上させる為、基材12上にアンダーコート層を用いてもよい。その様なアンダーコート層としては、例えば、アクリルニトリルを含有する様な共重合されたアクリルポリマー等が例示できる。尚、基材12は、粘着剤層14を放射線硬化させるためにX線、紫外線、電子線等の放射線を少なくとも一部透過させる性質を有する。また、ダイシング後のエキスパンディングに耐え得る柔軟性を有しているものが好ましい。
【0035】
基材12の構成材料としては特に限定されるものではなく、例えば、ポリ塩化ビニル、ウレタン−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル共重合体およびこれらの混合物、または他の樹脂およびエラストマーとの混合物等が例示できる。尚、前記共重合体はクラフト共重合物を含み、混合物はいわゆるアロイを含む。
【0036】
また、前記基材12には、前記の構成材料に加えて、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、及びこれらの架橋体などのポリマーを必要に応じて数種ブレンドしたものを用いることもできる。
【0037】
前記基材12には、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソデシルフタレートのようなフタル酸エステル、その他ポリエステル可塑剤、エポキシ系可塑剤、またはトリメット系可塑剤等の可塑剤が添加されていてもよい。尚、エポキシ系可塑剤は、二次可塑剤兼安定剤としてのエポキシ化大豆油でも良い。
【0038】
また、前記基材12中には、鉱油等の軟化剤、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ、クレー等の充鎮材、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、分散剤、中和剤、α晶核剤、β晶核剤、加工助剤、老化防止剤等の公知の各種添加剤が必要に応じて配合されていてもよい。
【0039】
前記基材12は、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸または二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。基材12の表面には、必要に応じてマット処理、コロナ放電処理、プライマー処理、架橋処理(化学架橋(シラン))などの慣用の物理的または化学的処理を施すことができる。また前記基材12の厚み(二層以上の積層体である場合は総厚)は特に限定されるものではなく、約50〜250μmであることが好ましく、約70〜230μmであることがより好ましい。
【0040】
尚、基材12は、従来より公知の製膜方法により製膜できる。具体的には、例えば湿式キャスティング法、インフレーション押出し法、Tダイ押出し法などが利用できる。
【0041】
前記中間層13は、基材12中に含まれる可塑剤や老化防止剤等の各種の添加剤が粘着剤層14中に移行するのをブロックする移行防止層としての機能を有する。可塑剤等の移行を防止することにより、粘着剤層14が軟化して粘着力が低下するのを防止することができる。また、放射線の照射後に於いては、粘着剤層14の軟化に起因する剥離性の低下も防止できる。さらに、粘着剤層14中に含まれる放射線重合開始剤や放射線重合性化合物が基材12中に移行するのをブロックする機能をも併せ持つ。これにより、粘着剤層14に放射線を照射した際に、放射線重合性化合物の硬化反応が不十分となるのを防ぎ、剥離性の低下を防止できる。
【0042】
中間層13は、ガラス転移温度が20℃以上、より好ましくは50〜130℃のアクリル系ポリマーを主成分とする。アクリル系ポリマーとしては、例えばメタクリレートポリマー、メチルメタクリルレートポリマー等が例示できる。ガラス転移温度を20℃以上としたのは、室温でのテープ保管に於いて移行を防止でき、長期間安定的な品質を得ることができるという利点がある為である。その一方、ガラス転移温度が20℃未満の場合は、室温にて中間層の機能が低下し移行が促進されるという問題点がある。
【0043】
前記中間層13を構成する材料の重量平均分子量は特に限定されないが、1000〜200万の範囲内であることが好ましく、3000〜150万の範囲内であることがより好ましい。前記範囲内とすることにより、中間層13が有するブロッキング機能を十分なものにすることができる。
【0044】
前記中間層13の厚さは特に限定されないが、0.5〜15μmの範囲内であることが好ましい。前記範囲内とすることにより、十分に移行防止機能を有した中間層を形成することができる。
【0045】
前記中間層13は、これを構成するアクリル系ポリマーを架橋させる為に、該アクリル系ポリマーが有する水酸基、カルボキシル基またはアミノ基等にグラフト共重合させたものを含み構成されていても良い。
【0046】
前記アクリル系ポリマーには、架橋剤が配合されていることが好ましい。アクリル系ポリマーに架橋剤を配合することにより中間層13を3次元網状構造とし、該中間層13が有するブロッキング機能を一層向上させることができる。前記架橋剤としては特に限定されるものではなく、具体的には、例えばエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤等が例示できる。これらの架橋剤のうち、本発明に於いてはエポキシ系架橋剤がより好ましい。中間層13に於ける硬化反応を短期間で生じさせることができ、生産効率の向上など製造プロセスの面で有利な加工用粘着シートを提供することができるからである。
【0047】
前記架橋剤の配合量は、前記アクリル系ポリマーに於ける主ポリマー100重量部に対して0.1〜50重量部であることが好ましく、0.5〜30重量部であることがより好ましい。添加剤の配合量を主ポリマー100重量部に対して0.1重量部以上とすることにより、中間層13が有するブロッキング機能を一定以上に維持することができる。すなわち、0.1重量部未満であると、前記ブロッキング機能が低下する恐れがある。その一方、添加剤の配合量を50重量部以下とすることにより、粘着シートの伸長性や伸長後の復元性を、基材に撓みを発生させることなく、好適な範囲に維持することができる。すなわち、50重量部より多いと、粘着シートの伸長性や伸長後の復元性が低下し、基材に撓みを発生させる恐れがある。
【0048】
前記アクリル系ポリマーには、可塑剤が配合されていることが好ましい。アクリル系ポリマーに可塑剤を配合することにより、該可塑剤が基材12中に含まれる可塑剤等に対し、例えば親和性等を発揮することにより、基材12中の可塑剤等が粘着剤層中に移行するのを留まらせることができる。その結果、可塑剤の移行に起因する粘着剤層の軟化を防止し、剥離性の低下を防止することができる。前記可塑剤としては特に限定されるものではなく、具体的には、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル、その他ポリエステル可塑剤、エポキシ系可塑剤、トリメット系可塑剤等が例示できる。
【0049】
前記可塑剤の配合量は、前記アクリル系ポリマーに於ける主ポリマー100重量部に対して1〜55重量部であることが好ましく、3〜45重量部であることがより好ましい。前記可塑剤の配合量を主ポリマー100重量部に対して1重量部以上とすることにより、中間層13が有するブロッキング機能を一定以上に維持することができる。すなわち、1重量部未満であると、前記ブロッキング機能の向上が困難になる恐れがある。その一方、可塑剤の配合量を55重量部以下とすることにより、本発明に係る加工用粘着シートを貼り付けた被加工物を加工する際に、その被加工物に割れや欠けなどの不具合が生じるを防止することができる。
【0050】
前記粘着剤層14を構成する粘着剤としては特に限定されるものではなく、従来公知の粘着剤を使用することができるが、本実施の形態に於いてはアクリル系粘着剤が好ましい。具体的には、アクリル酸エステルを主たる構成単量体単位とする単独重合体および共重合体から選ばれたアクリル系重合体その他官能性単量体との共重合体およびこれら重合体の混合物が好適である。
【0051】
前記アクリル酸エステルとしては、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチルなど、また、上記メタクリル酸を例えば、アクリル酸に変えたものなども好ましく用いることができる。このような粘着性ポリマーには、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ビニルエステル系などの各種のポリマーが用いられる。これらの粘着性ポリマーのうち、半導体ウェハやガラス等の汚染を嫌う電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性などの点から、アクリル系ポリマーが特に好ましい。このアクリル系ポリマーは、前記中間層13に於いて使用するアクリル系ポリマーと異なり、常温(約23℃)において粘着性を示す必要があることから、そのガラス転移温度を0℃以下とするのが好ましく、−100℃〜−20℃とするのがより好ましい。
【0052】
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステルなどのアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステルなど)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマーなどが例示できる。
【0053】
また、前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこれ以外の共重合性モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシブチルエステル、ヒドロキシヘキシルエステルなど)、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(ジメチルアミノエチルエステル、t−ブチルアミノエチルエステルなど)、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどとの共種合体も用いられる。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0054】
更に、前記アクリル系ポリマーは、架橋させるため、多官能性モノマーなども必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。このような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0055】
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。前記アクリル系ポリマーの分子量は、重量平均分子量が通常20万以上、好ましくは30万〜200万、より好ましくは50万〜150万であるのがよい。
【0056】
又、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の重量平均分子量を高めるため、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤などのいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法があげられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、更には、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、上記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、更には0.1〜5重量部配合するのが好ましい。更に粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤などの添加剤を用いてもよい。
【0057】
本実施の形態に係る粘着剤層14中には放射線重合性化合物が含まれる。粘着剤層14中に放射線重合性化合物が含まれると、放射線の照射により放射線重合性化合物が重合し粘着剤層14の粘着力を低下させることができる。さらに、放射線重合性化合物には、重量平均分子量が500〜40000、より好ましくは重量平均分子量が750〜30000程度の放射線重合性化合物成分が含まれる。
【0058】
前記放射線重合性化合物としては、例えば、特開昭60−196956号公報、及び特開昭60−223139号公報に開示されている様に、紫外線、電子線等の放射線照射によって3次元網状化し得る、分子内に光重合性炭素−炭素2重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物が広く用いられる。具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレートなどが例示できる。
【0059】
また、放射線重合性化合物として、この他にウレタンアクリレート系のオリゴマーを使用することもできる。このようなウレタンアクリレート系オリゴマーとして、特に重量平均分子量が500〜40000、好ましくは750〜30000のものを用いると半導体ウェハ表面が粗い場合においても、半導体チップのピックアップ時にチップ表面に粘着剤が付着するのを防止できる。
【0060】
放射線重合性化合物の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば約10重量部以上であることが好ましく、20〜140重量部であることがより好ましい。また、重量平均分子量が750以上の放射線重合性化合物成分の含有量は、40重量%以上であることが好ましく、60〜100重量%であることがより好ましい。
【0061】
本実施の形態に係る粘着剤層14には、紫外線等の放射線により硬化させる為、放射線重合開始剤が含有されていてもよい。放射線重合開始剤としては、半導体装置の製造工程において一般的に使用されている高圧水銀灯の特性波長である365nmにおけるモル吸光係数が1,000mol−1・cm−1以上、好ましくは1,500mol−1・cm−1以上(通常、30,000mol−1・cm−1以下)であり、かつ長波長側の最大吸収波長が420nm以上、好ましくは430nm以上(通常、460nm以下)のものが用いられる。具体的には、例えば、2−ペンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1や、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフオスフインオキサイドなどが挙げられる。また、その他にも、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどが挙げられる。
【0062】
放射線重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば20〜140重量部程度である。
【0063】
本実施の形態に係る粘着シート11は、例えば半導体(Si、Ge、Ga−As等)ウェハの加工に好適に用いることができる。すなわち、例えば半導体ウェハの回路パターン形成面に粘着シート11を貼り合わせて、半導体ウェハをダイシングし半導体チップを作製する。その後、粘着シート11に放射線を照射し、半導体チップのピックアップを行う。ここで、本実施の形態に係る粘着シート11は、放射線の照射に対し十分な硬化機能を有しているので、半導体チップに糊残りを生じさせることなく容易に剥離することができ、ピックアップ性に優れる。また、粘着剤層14は放射線の照射に対する十分な硬化機能を維持し続けるので、長期保存性にも優れる。
【0064】
(その他の事項)
以上の説明に於いては、本発明の最も好適な実施態様について説明した。しかし、本発明は当該実施態様に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一の範囲で種々の変更が可能である。
【0065】
すなわち、本発明の加工用粘着シートは、粘着剤層の保護のため、その上に剥離層を積層しておいてもよい。剥離層としては、従来公知のプラスチックフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなど)、紙、非極性材料(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)などからなるものが挙げられる。また、剥離層には、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の離型処理が施されていても良い。これにより、粘着シートを巻いてテープ状にすることができる。剥離層の厚みは特に限定されないが、通常10〜200μm、好ましくは25〜100μm程度である。
【0066】
また、本発明に係る加工用粘着シートは、前記半導体ウェハの加工用に限定されるものではなく、例えば、半導体パッケージや、ガラス等のダイシング用粘着シートとしても好適である。
【0067】
また、本発明に係る加工用粘着シートの形状は、テープ状、ラベル状などあらゆる形状を取り得る。
【実施例】
【0068】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。尚、以下に於いては、「重量部」を単に「部」と記す。
【0069】
(実施例1)
メチルメタクリレート98部と、アクリル酸2部とを常法により共重合して、重量平均分子量8万のアクリル系ポリマー(ガラス転移温度95℃)を含有する溶液を得た。
【0070】
次に、アクリル系ポリマーを含有する溶液をセパレータ上に塗布し乾燥して中間層(厚さ5μm)を形成し、この中間層を軟質塩化ビニルフィルム(基材、厚さ100μm)上に転写した。尚、軟質塩化ビニルフィルム中には、可塑剤としてのDOP(ジオクチルフタレート)が含有されている。
【0071】
続いて、アクリル酸メチル50部、アクリル酸2−エチルヘキシル20部及びアクリル酸5部を常法により共重合して、重量平均分子量100万のアクリル系ポリマーを含有する溶液を得た。この溶液100部に、光重合開始剤としての2,2−ジメトキシ−1,2−フェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア651、光波長365nmにおけるモル吸光係数が1,50mol−1・cm−1、長波長側の最大吸収波長が400nm)3部と、架橋剤としてのメラミン系架橋剤2部とを加えた。さらに、前記の溶液に放射線重合性化合物としてUVオリゴマー1700B(商品名、日本合成化学工業(株)製)60部を加え、紫外線硬化型粘着剤組成物の溶液を得た。
【0072】
紫外線硬化型粘着剤組成物の溶液をセパレータ上に塗布し乾燥して粘着剤層(厚さ5μm)を形成し、この粘着剤層を前記の中間層上に転写した。これにより、本実施例1に係る粘着シートAを作製した。
【0073】
(実施例2)
本実施例に於いては、中間層の構成材料に於いて、前記実施例1で使用したアクリル系ポリマーに代えてポリメチルメタクリレートからなるアクリル系ポリマーを用いた点が異なる。該ポリメチルメタクリレートを用いたアクリル系ポリマーの重量平均分子量は5万であり、ガラス転移温度は105℃であった。本実施例により得られた粘着シートを粘着シートBとした。
【0074】
(実施例3)
本実施例に於いては、中間層の構成材料として次の通りに調製したものを用いた。即ち、前記実施例1で使用したアクリル系ポリマーに代えて、アミノ基がグラフト共重合されたNK−380(商品名、(株)日本触媒製)からなるアクリル系ポリマーを用意し、このアクリル系ポリマー100部に対し、エポキシ系架橋剤(商品名:エピコート828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)20部と、可塑剤としてのジオクチルフタレート40部とを添加して、中間層の構成材料を作製した。当該材料を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、本実施例に係る粘着シートCを作製した。尚、前記NK−380を用いたアクリル系ポリマーの重量平均分子量は7万であり、ガラス転移温度は90℃であった。
【0075】
(比較例1)
アクリル酸メチル50部、アクリル酸2−エチルヘキシル20部及びアクリル酸5部を常法により共重合して、重量平均分子量100万のアクリル系ポリマーを含有する溶液を得た。この溶液100部に、光重合開始剤としての2,2−ジメトキシ−1,2−フェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア651、光波長365nmにおけるモル吸光係数が1,50mol−1・cm−1、長波長側の最大吸収波長が400nm)3部と、架橋剤としてのメラミン系架橋剤2部とを加えた。さらに、前記の溶液に放射線重合性化合物としてUVオリゴマー1700B(商品名、日本合成化学工業(株)製)60部を加え、紫外線硬化型粘着剤組成物の溶液を得た。
【0076】
紫外線硬化型粘着剤組成物の溶液をセパレータ上に塗布し乾燥して粘着剤層(厚さ5μm)を形成し、この粘着剤層を前記軟質塩化ビニルフィルム(基材、厚さ100μm)上に転写した。これにより、本比較例1に係る粘着シートDを作製した。
【0077】
(比較例2)
本実施例に於いては、中間層の構成材料に於いて、前記実施例1で使用したアクリル系ポリマーに代えて2−エチルヘキシルアクリレート50重量部と、ブチルアクリレート45重量部と、アクリル酸5重量部とを常法により共重合して、重量平均分子量30万のアクリル系ポリマーを用いた点が異なる。前記アクリル系ポリマーのガラス転移温度は−27.5℃であった。本比較例により得られた粘着シートを粘着シートEとした。
【0078】
(ガラス転移温度の測定)
ガラス転移温度は、DSC(ディファレンシャル・スキャニング・カロリメトリー)により測定した。
【0079】
(重量平均分子量)
ウォーターズ社製のゲル浸透クロマトグラフ[GPC−150C]を用い、溶媒にo−ジクロロベンゼンを、また、カラムとして昭和電工(株)製の[Shodex−80M]を用いて135℃で測定した。データ処理にはTRC社製データ収集システムを用いて行なった。また、分子量はポリスチレンを基準として算出した。
【0080】
(評価)
実施例1〜3および比較例1の各粘着シートについて6ヶ月の間保管し、その後、以下の方法により紫外線照射前と紫外線照射後との引き剥がし粘着力を測定した。
【0081】
<引き剥がし粘着力試験>
粘着シートを流れ方向に対し20mm幅×12cm長さでサンプル片を切り出し、これをシリコンミラーウェハに貼り付け、約30分間放置して、紫外線照射前の引き剥がし粘着力を測定した。また、下記の照射条件により紫外線を照射したのち、引き剥がし粘着力を測定した。測定条件は、測定機器:テンシロン、引張速度:300mm/分、剥離角度:90°とした。
【0082】
<照射条件>
光源として高圧水銀灯を使用し、照射強度50mW/cm(測定機器:ウシオ社製の「紫外線照度計・UT101」)、照射時間20秒とした。
【0083】
<ダイシング条件>
粘着シートA〜Dをそれぞれ貼り合わせたシリコンミラーウェハを、ダイシング装置(ディスコ社製DFD−651)及びブレード(ディスコ社製、27HECC)にて、ダイシング速度80m/min、ダイシングブレード(ディスコ社製、2050HFDD)の回転数4万r.p.m.、粘着シート切込み深さ(粘着シート表面からの深さ)30μmの条件でダウンカットし、8mm×8mmのチップに切断した。
【0084】
<ピックアップ性>
ダイシングされた8mm×8mmのチップ200個をダイボンダー(NEC Machinery CPS−100)にてピックアップした際のチップ裏面への粘着剤の付着、すなわち糊残りの有無を確認した。糊残りの確認は、目視ないしは顕微鏡(50〜500倍)により観察して行った。なお、ピックアップは、前記照射条件にて紫外線を照射した後に行った。また、ピックアップ条件は下記の通りとした。
【0085】
ピン数:4本
ピンの間隔:3.5mm×3.5mm
ピンの先端曲率:0.250mm
ピン突き上げ量:0.50mm
ピン突き上げスピード:50mm/sec
【0086】
<エキスパンド性>
粘着シートA〜Dのそれぞれについてエキスパンド性も評価した。すなわち、ダイシングリングとして2−6−1(ディスコ製、内径19.5cm)、ダイボンダーとしてCPS−100(NEC機械製)を使用し、引落し量を13mmとしてチップ間隔を評価した。10mm以上の場合を○とした。
【0087】
【表1】

【0088】
表1から明らかな様に、実施例1〜3に係る粘着シートA〜CのUV照射前に於ける粘着力は、それぞれ10.42N/20mm幅、12.00N/20mm幅、8.80N/20mm幅であった。これに対し比較例1に係る粘着シートDのUV照射前に於ける粘着力は、5.50N/20mm幅であった。また、実施例1〜3に係る粘着シートA〜CのUV照射後に於ける粘着力は、それぞれ0.29N/20mm幅、0.22N/20mm幅、0.10N/20mm幅であった。これに対し比較例1に係る粘着シートDのUV照射後に於ける粘着力は、0.10N/20mm幅であった。これにより、実施例1〜3に係る粘着シートA〜Cは、UV照射後に於いても各粘着剤層中に十分な量の放射線重合性化合物及び放射線重合開始剤を含んでおり、所定の剥離性能を保持していることが確認された。
【0089】
さらにシリコンミラーウェハに対する糊残りを調べたところ、粘着シートA〜Cを用いた場合では糊残りは見られなかったが、粘着シートD及びEを用いた場合では糊残りが確認された。これらの結果から、比較例に係る粘着シートD及びEを用いた場合には、半導体チップのピックアップ時にピックアップ不良を引き起こす可能性があることを示している。その一方、実施例1〜3に係る粘着シートA〜Cを用いた場合には、良好なピックアップ性を示すと考えられる。
【0090】
また、エキスパンド性については、実施例1〜3に係る粘着シートA〜Cに於いてチップ間隔がそれぞれ200、120、210μmであり、十分な伸長性を示し、また基材にも撓みが発生していないことが確認された。その一方、比較例1の粘着シートDについては、引き落とし量が10mmに達する前に破断した。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の一形態に係る加工用粘着シートの概略構成を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0092】
11 加工用粘着シート
12 基材
13 中間層
14 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材および粘着剤層を有する加工用粘着シートであって、
前記粘着剤層は放射線重合性化合物を含み構成されており、
前記基材と粘着剤層との間には、ガラス転移温度が20℃以上のアクリル系ポリマーを主成分とする中間層が設けられていることを特徴とする加工用粘着シート。
【請求項2】
前記基材は、少なくとも添加剤を含有した軟質塩化ビニルフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の加工用粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層には、放射線重合開始剤が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の加工用粘着シート。
【請求項4】
前記アクリル系ポリマーは、メタクリレートポリマーまたはメチルメタクリルレートポリマーを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の加工用粘着シート。
【請求項5】
前記アクリル系ポリマーには、架橋剤が配合されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の加工用粘着シート。
【請求項6】
前記架橋剤の配合量は、前記アクリル系ポリマーに於ける主ポリマー100重量部に対して0.1〜50重量部であることを特徴とする請求項5に記載の加工用粘着シート。
【請求項7】
前記アクリル系ポリマーには、可塑剤が配合されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の加工用粘着シート。
【請求項8】
前記可塑剤の配合量は、前記アクリル系ポリマーに於ける主ポリマー100重量部に対して1〜55重量部であることを特徴とする請求項7に記載の加工用粘着シート。
【請求項9】
前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤であることを特徴とする請求項5または6に記載の加工用粘着シート。

【図1】
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【公開番号】特開2008−50406(P2008−50406A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225540(P2006−225540)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】