説明

加工部品の表面からイオン性の汚染物質を除去するための水溶液と方法

少なくとも部分的に半田レジストマスクによって覆われ、かつ、銅構造体上にトップ層を備えられたプリント回路基板上のイオン性汚染物を減少するために、少なくとも一つのエタノールアミン化合物及び/またはその塩、少なくとも一つのアルコール性溶媒、及び、必要に応じて少なくとも一つのグアニジン化合物及び/またはその塩を含む水性洗浄液が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田レジストマスク及び表面トップ層を有する加工部品の表面から、イオン性の汚染物質を除去するための水溶液及び方法に関する。上記水溶液及び方法は、好ましくは電気回路キャリヤを製造するため、より具体的にはプリント回路基板を製造するため、特にエッジコネクタ接触及びプリント回路基板上の押しボタン接触のような回路キャリヤ上の接触を製造するために使われる。
【背景技術】
【0002】
電気回路キャリヤの製造中、ベース材料の銅表面上に有機及び/または金属層が装着される。これらの層は、様々な機能を果たし得る。例えば有機層は、次に続くプロセスにおける銅表面に構造を与えるために用いられ得る。この目的で、フォトレジストが、銅表面上に、それらを完全に覆うように塗布される。その後、当該層はフォトレジスト上に所望の線構造体を描く特殊なフォトマスクを用いながら光に部分的に暴露され得る。その次に、描かれた構造体は、類似の化学品によって現像される。フォトレジストの種類によって、即ち、陰画又は陽画であっても良いが、光に暴露された範囲、又は暴露されていない範囲のいずれかが現像によって除去される、それによって、その下に配置された銅層の領域が露出される。これら領域は、それから選択的にエッチング、又は無電解の方法、化学的方法又は電気化学的方法を用いることによって銅又は他の金属によって選択的にめっきされ得る。
【0003】
【特許文献1】SU 859 433 A1
【特許文献2】CN 1124285 A
【特許文献3】US 6,566,315 B2
【特許文献4】WO 99/16855 A1
【特許文献5】US 6,121,217 A
【特許文献6】CN 1316495 A
【特許文献7】CN 1316417 A
【特許文献8】DE 199 45 221 A1
【特許文献9】DE 195 18 990 A1
【非特許文献1】ケミカルアブストラクツ(Chem. Abstr.)95:221722
【非特許文献2】ケミカルアブストラクツ(Chem. Abstr.)130:155316
【非特許文献3】ケミカルアブストラクツ(Chem. Abstr.)137:187413
【非特許文献4】ケミカルアブストラクツ(Chem. Abstr.)137:187414
【非特許文献5】試験方法:IPC-TM-650、項目No. 2.3.25、電子産業界関連協会/IPCの技術委員会によって創りだされた試験方法IPC-TM-650−抽出溶液の抵抗率(ROSE)によるイオン性表面汚染物の検出と測定
【0004】
金属層が上記のように部分的にエッチング又は析出される場合、得られた回路キャリヤはいくらかの線構造体を有する。複雑な構造体を作り上げるために、方法ステップが繰り返されても良い。個々の層は、多層回路を形成するために、互いに圧縮されても良い。
【0005】
電子構成部品を、線構造体を施された回路キャリヤ上に装着することを可能にするために、金、銀、スズ、ニッケル層のような更なる層が、例えば、無電解法、化学的又は電気化学的方法を用いて、半田レジストを用いる間に表面トップ層を形成するように次に析出される。一方では、これら表面トップ層は構成部品を装着するために必要とされた半田付け可能な表面領域を形成するために用いられる。他方で、金表面領域は、ケースに入れられた、又はケースに入れられていない半導体構成部品を結合するためにも最適である。
【0006】
これら表面トップ層はまた、銅表面の酸化を防ぐこと、及び、それらの半田付け性を維持することを意図した保護層としても用いられる。これらトップ層は必須である、というのは、回路キャリアの製造及びそれの更なる処理、例えばその上への構成部品の装着が、通常同一の製造サイト上で起こらないからである、それによって、更なる処理が後の段階においてのみ生じる。
【0007】
金及び銀層は、例えば分離できる電気接点、例えば接触ソケット内にプラグコネクタを挿入することによって回路キャリヤを接続するためのプラグコネクタ及び押しボタンを製造するための接触領域を製造するための表面トップ層としても形成される。
【0008】
一旦回路キャリヤが完成されると、即ち、表面トップ層が付けられた後、それらが乾燥されて、次に保管される又は更なる処理を受ける前に、様々な方法ステップから由来する、より具体的には表面トップ層を製造するための析出方法によって生じたいかなるイオン性汚染物を洗浄するために、回路キャリヤは再度徹底的に洗浄される。
【0009】
清浄度を制御するため、かつ、回路キャリヤの表面汚染物の濃度を決定するための試験が実施された。これら規格化された試験(例えば、電子産業界関連協会/IPCの技術委員会によって創りだされた試験方法IPC-TM-650−抽出溶液の抵抗率(ROSE)によるイオン性表面汚染物の検出と測定)において、水(脱イオンされた)/2-プロパノール混合物を用いることによって、回路キャリヤの表面から例えば手動で、依然として接着しているいかなるイオン性汚染物も抽出される。抽出物はその総量において集められ、電気抵抗又は伝導率が決定される。抵抗値または電気伝導率値を各々、様々な標準NaCl溶液の濃度値の関数としてプロットすることによって得られた(直線の)検量線から、イオン性汚染物の濃度が標準NaCl溶液の単位で決定され得る。用いられた体積及び回路キャリヤの表面の大きさに基いて、次に各領域に対するイオン性汚染物が、μg/cm2又はμg/inch2の単位で得られる。
【0010】
回路キャリヤ表面の徹底的な洗浄は、イオン性汚染物によって引き起こされる、導電性構造体の接触腐食の危険性を回避するために主に必要とされる。この危険性は特に、回路キャリヤ上の、表面積辺りの回路キャリヤの縮小化を促進する又は線構造体の複雑性を増す背景において増加する。このことは、回路キャリヤ表面上の汚染物の値が残存する際により複雑なコンダクタ構造体は統計的により頻繁にイオン性汚染物と出会い、その結果接触腐食の危険性は大きく増加するという事実による。また、より細かいコンダクタ構造体は、それらの機能的に関して、例えば、それらインピーダンス挙動、に関して、より大きなものよりもはるかに損傷しやすい、その結果、汚染物の存在によって、かかるより細かいコンダクタ構造体は、例えば構成部品装着にはしばしば使い物にならない。その上、橋絡しているイオン性汚染物は、隣接するコンダクタ構造体間における漏電を生じたり、又は回路をショートすらし、コンダクタ内のインピーダンス変動によって、その上に配置された回路キャリヤ及び構成部品を著しく影響したり、又は破壊すらするかもしれない。
【0011】
実施において、特に半田レジストを備えた回路キャリヤの場合、及び、洗浄ステップを繰り返すにも関わらず、溶液及び用いられる方法は、表面トップ層の析出後、表面上に見つけられるイオン性汚染物を除去することにおいて十分ではない又は欠陥があるということが判明した。その結果、表面は洗浄後においてさえ、イオン性汚染物の望まない高い濃度を有し、これら汚染物は更なる処理において上記問題を導く。
【0012】
構成部品を洗浄するための洗剤及び、無線電子装置用ユニットが特許文献1と関連している非特許文献1に開示されている。この洗剤は、実際に、トリエタノールアミンおよびエタノールを含む。
【0013】
また、特許文献2と関連している非特許文献2は半導体産業用洗浄洗剤を開示しており、洗剤は実際にエタノールアミン、エタノール及び水を含んでいる。
【0014】
また、特許文献3は、銅構造体を含む半導体基板から残渣を除去するための1,3-カルボニル化合物キレート試薬、及び銅阻害試薬を含む製剤を開示している。これら製剤は、実際にトリエタノールアミン、水及びエチレングリコールを含む。
【0015】
また、特許文献4は、製造において、より具体的には光学レンズの製造において用いられる樹脂及び高分子材料を洗浄するための洗浄合成品及び方法を開示している。合成品はエタノールアミンとアルコールを含む。
【0016】
また、特許文献5は、アルカノールアミン半導体プロセス残渣除去合成品、及び、プロセスを開示している。合成品はアルカノールアミン、及び、水のような極性溶媒、又は、エチレングリコール又はそのエーテルのような極性有機溶媒を含む。
【0017】
また、特許文献6に関連する非特許文献3は、プリント回路基板洗浄用水ベースの洗剤を開示している。洗剤は実際に、アルカノールアミン、及びエタノール又は他の脂肪族アルコールを含む。
【0018】
また、特許文献7に関連する非特許文献4は、金属部品又は半導体洗浄用液体洗剤を開示している。この洗剤は実際に、アルカノールアミン、C16−C18脂肪族アルコール及びエチレングリコールを含む。
【0019】
また、特許文献8は、ローラー用洗浄試薬を開示しており、この試薬は実際に、例えば2-プロパノール及び2-アミノ-2-(メチル-1-プロパノール)のような一価のアルコール、及び、アミノアルコールを含む。
【0020】
また、特許文献9は、インクジェットヘッド及びそのノズルを洗浄するための試薬を開示している。この試薬は実際に、脱イオン水、トリエタノールアミン、及びエチレングリコールを含む。
【0021】
本発明の基礎にある問題は、部分的に半田レジストマスクによって、及び部分的に導電性表面トップ層で覆われた、銅構造体を有する回路キャリヤの表面を洗浄するための溶液と方法の公知の不利益を除去することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って本発明の課題は、半田レジストマスク及び表面トップ層を有する加工部品の表面からイオン性汚染物を除去するための化学溶液(化学的解決法)を見つけることである。
【0023】
本発明の更なる課題は、かかる加工部品の表面からのイオン性汚染物を大きくかつ確実に減少するための化学溶液を見つけることである。
【0024】
本発明の他の課題は、費用効率良く、かつ操作が簡単な、かかる加工部品の表面からのイオン性汚染物を除去するための化学溶液を見つけることである。
【0025】
更なる本発明の課題は、かかる加工部品からのイオン性汚染物を除去する方法を見つけることである。
【0026】
更に他の本発明の課題は、費用効率良く、かつ操作が簡単な、かかる加工部品の表面からのイオン性汚染物を除去する方法を見つけることである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
これら課題の解決法は、請求項1に記載の水溶液、請求項13の半田レジストマスク及び表面トップ層を有する加工部品表面からのイオン性汚染物を除去する方法、及び、請求項11及び12に係る水溶液の使用によって成し遂げられる。好ましい本発明の実施形態は、従属請求項に列挙されている。
【0028】
本発明は、加工部品の表面からの、より具体的には導電性表面トップ層が加工部品上に析出された後、より明確には、加工部品の表面上の半田レジストで覆われていない銅表面領域又は銅構造体上の、イオン性汚染物を除去するため、かかる表面領域に半田付け可能な及び/または結合可能な領域を形成するため、並びに、エッジコネクタ接触及び押しボタン接触のような接触を製造するために用いられる。
【0029】
本発明の溶液は、水溶液であり、以下のa)、b)を含む、
a)エタノールアミン化合物、及びその塩から構成される群から選択された、少なくとも一つの第一化合物、及び、
b)アルコール性溶媒から構成される群から選択された、少なくとも一つの第二化合物。
【0030】
必要に応じて、溶液は更に、グアニジン化合物及びその塩から構成される群から選択された、少なくとも一つの第三化合物を含んでも良い。
【0031】
溶液は、プリント回路基板のような電気回路キャリヤを製造するために好ましくは使われ、かつ、垂直な及び/または水平なラインにおいて使用され得る。本発明の溶液は、より具体的には、エッジコネクタ接触及び押しボタン接触のような接触を製造するために回路キャリヤ上に塗布されるように用いられ得る。
【0032】
本発明の方法は単純であって、実施し易く、かつ、費用効率が良い。それは、銅構造体上に被覆された半田レジストマスク及び表面トップ層を有する加工部品の表面からのイオン性汚染物を除去するために用いられ、その方法は、一旦トップ層が析出された加工部品を本発明の水溶液で処理することを含む。加工部品は、好ましくは、半田付け可能な及び/または結合可能な領域を有するプリント回路基板のような電気回路キャリヤ、並びに、エッジコネクタ接触及び押しボタン接触のような接触を含む。
【0033】
本発明の水溶液及び方法を用いることによって、公知の手段を用いることから生じる問題が除去され得る。本発明の水溶液によって、特に小型化が進んだ結果要求される、強く洗浄された表面が可能となる。
【0034】
本発明の水溶液を用いることによって、汚染値が大きく減少され得ることが判明した。半田レジストマスクとして使用された材料に依って、加工部品表面上のイオン性汚染物の量は従来方法よりも50〜87%減少することができる。加工部品表面からのイオン性汚染物除去における問題は、半田レジストマスクが適正に硬化されなかった、又は、トップ層を析出するためのプロセスによって影響された場合に生じることが判明した。これらの場合、従来の溶液及び方法に対する清浄度における重要な改善は、本発明を用いることによって成し遂げられた。半田レジストマスクを備えた及び備えていないプリント回路基板に関する比較試験は、イオン性汚染物が表面(金属)トップ層を形成するために用いられる(金属)析出浴(めっき浴)から発生しないということも明白にすることができた。イオン性汚染物は、析出浴の活性な浴化学物質によって攻撃される半田レジストマスクからも流れ出ることを示すことができた。
【0035】
本発明の一般的なアイデアを制限することなく、本発明の水溶液の洗浄効果は、本発明の方法が実施される場合、半田レジストマスクが本発明の水溶液に僅かに溶解するという事実に依存する、これのことは、半田レジストマスクから放出され、かつ、水溶液中に吸収される又は束縛されるべきイオン性汚染物を生じる。水溶液なしでは、汚染物は代わりに後の段階においてのみ半田レジストマスクから放出されるであろう、よって、時間的に後の点において、加工部品の表面上に望まない汚染物の発生を導く。
【0036】
加工部品表面の清浄度の質が、上記のような規格化試験によって制御される。これら試験は、ここで参考文献に含まれている(非特許文献5)、試験方法マニュアルIPC-TM-650に従って好ましくは実施される。この試験において、プリント回路基板は、75%(又は50%)の2-プロパノール及び25%(又は50%)のD.I.水(脱イオン化された)の組成のアルコール/水混合液へ好ましくは浸漬される。水は、1MΩよりも高い抵抗を有するべきである。2-プロパノールは、「電子グレード」の純度を有するべきである。また、ガラス器具は使われるべきではない。
【0037】
アルコール/水混合液を用いることによって、イオン性汚染物がプリント回路基板表面から流される。混合液は慎重に回収される。混合液によって抽出された、プリント回路基板上の(及び/または半田レジストマスク内に含まれた)イオン性汚染物は、アルコール/水混合液の導電率の増加を引き起こす。全測定(30分)の間、導電率が測定され、かつ、μg/cm2又はμg/inch2NaCl等価(換算)において表される、その際、NaCl等価(値)は、NaCl溶液の幾つかの標準濃度の値を、相当する導電率の値に対してプロットされた、(直線)検量線によって決定される。
【0038】
本発明の水溶液は、好ましくは7よりも高いpHを有する。9よりも高いpH範囲が特に好ましい。11を越える範囲におけるpHが最も好ましい。
【0039】
イオン性汚染物を除去することによって上記洗浄効果を実現するために、本発明の水溶液は、好ましくは5〜25g/lの範囲の濃度における、少なくとも一つの第一化合物(エタノールアミン化合物及び/またはその塩)を含み、その際、約14g/lの濃度が特に好ましい(全ての第一化合物が一緒にされる)。モノエタノールアミンが、エタノールアミン化合物として好ましくは添加される。
【0040】
アルコール性溶媒の濃度は、好ましくは0.5〜5g/lの範囲であり、その際、約1g/lの濃度が特に好ましい(全てのアルコール性溶媒が一緒にされる)。メタノール、エタノール、n-ブタノール、イソブタノール、又はtert-ブタノールのような低分子アルコール性溶媒が好ましくは添加される。2-プロパノールが特に好ましい。
【0041】
本発明の水溶液において、グアニジン化合物及び/またはその塩はおそらく、イオン性汚染物に関し、グアニジンの窒素含有構造フラグメントに対する金属イオン/金属の直接配位による、キレート錯体として働く。この効果は、本発明の水溶液の、他の物質によって恐らくは強められる。
【0042】
少なくとも一つの第三化合物(グアニジン化合物、及び/またはその塩)の濃度は、好ましくは0.5〜5g/lの範囲であり、約1.5g/lの濃度が特に好ましい(全ての第三化合物が一緒にされる)。グアニジン化合物は、好ましくは塩(グアニジニウム化合物)として添加される。グアニジニウムカルボナート(guanidinium carbonate)、グアニジニウムホスフェート(guanidinium phosphate)、又はグアニジニウムスルフェート(guanidinium sulfate)が特に好ましい。グアニジニウム化合物の酸素含有塩アニオンは、電子効果によってキレート錯体の効率をおそらくは強める。
【0043】
好ましい組成において、本発明の水溶液は1リットルの脱イオン水をベースとして、1.5gのグアニジニウムカルボナート、14gのモノエタノールアミン(850ml/l)、及び1gの2-プロパノールを含む。水溶液に対して9〜12のpHが特に好ましい。
【0044】
処理用に、本発明の水溶液は洗浄効果を改善するための加熱され得る、というのは、かようにしてイオン性汚染物がより効果的に除去され得るということが判明したからである。加工部品の処理の間、本発明の水溶液は好ましくは50〜70℃の範囲の温度を有する。約60℃の温度が特に好ましい。
【0045】
加工部品は、水溶液によって好ましくは0.5〜2分間の継続時間処理される。一分間が特に好ましい。
【0046】
イオン性汚染物の濃度は、本発明の水溶液で処理される前に少なくとも一回脱イオン水によって加工部品を洗浄した場合に、より減少され得る。
【0047】
代替として又はそれに加えて、加工部品は、本発明の水溶液で処理された後に少なくとも一回脱イオン水によって洗浄され得る。
【0048】
加工部品の保存期限を改善するために、より具体的には表面トップ層で覆われた加工部品の結合可能な及び半田付け可能な領域を維持するために、上記加工部品は脱イオン水で洗浄された後に乾燥器内で乾燥され得る、このことも腐食の危険性を減少する。
【0049】
特に良好な洗浄効果、それに伴う低い汚染物値が、特に、例えばTaiyo PSR 4000 MH、Taiyo PSR 4000 MP、Taiyo 4000 AUS 5、Taiyo 4000 GHP 3のマスクのように、エポキシ樹脂アクリレートのような有機化合物から作られた半田レジストマスクが用いられる場合に得られる。これらは、例えばSiO2又はAl2O3のような無機材料によって更に増量される。
【0050】
析出される導電性表面トップ層は、ビスマス、スズ、金、銀、パラジウム、及びニッケル又はその合金から構成される群から好ましくは選択される。
【0051】
析出される導電性表面トップ層は、例えば結合可能なかつ半田付け可能な層、又は、押しボタン乃至エッジコネクタ接触用電気接触/接触層として用いられても良い。表面トップ層は、例えば電気化学的方法、無電解の方法又は化学的方法を用いて析出されても良い。金属間の電荷交換反応による化学的析出が好ましく、その際、一つの金属(ここでは銅又は銅合金)が部分的に溶解し、一方で溶解した金属が析出される。浸漬銀又は浸漬スズの化学的析出によって得られた(電荷交換反応によって析出された)表面トップ層がそのために特に好ましい。例えばニッケルの、浸漬金による無電解めっきが、その上に用いられることも好ましい。
【0052】
無電解の方法によって無電解ニッケル−金層を形成するために、銅表面は先ず、表面上にパラジウム核を析出するための浴で処理される。次に、例えば硫酸塩の形態にあるニッケルイオン、並びに還元剤を含む他の浴内において、金属めっきが実施され得る。通常用いられる還元剤は、例えばナトリウム塩又は相当する酸のような次亜リン酸塩である。この場合、ニッケル/リン層が形成する。ニッケル/ホウ素層が形成される場合、例えばジメチルアミノボランのようなホウ素、又はヒドリドホウ素ナトリウムのようなヒドリドホウ酸塩が還元剤として用いられる。純ニッケル層が析出される場合、用いられる好ましい還元剤はヒドラジン又はヒドラジン誘導体である。これら浴は、更に錯化剤、具体的には有機カルボン酸、アンモニア又は酢酸塩のようなpH調整剤、並びに、硫黄化合物又は鉛塩のような安定化剤を含む。無電解の方法で析出されたニッケル層に、好ましくは電荷交換反応において金層が付けられる。
【0053】
化学的スズ層を形成するために、銅表面は例えば硫酸スズ(II)のようなスズ(II)イオンを含む溶液、硫酸のような酸、並びに、チオ尿素、またはチオ尿素誘導体と接触される。スズ層が、電荷交換反応を介して銅表面に形成する、その際、銅はスズに有利なように溶解する。
【0054】
浸漬銀の層を析出するために、加工部品上の銅構造体は銀イオンを含む酸性溶液で処理され得る。
【0055】
加工部品は、従来のめっき(浸漬)ラインにおいて処理され得る。プリント回路基板を処理するためには、スプレー又は流出ノズルのような適切なノズルを介して処理液と接触する間、水平に運搬する(コンベア)路上を、ラインを通ってプリント回路基板が運搬される、コンベアラインと呼ばれるものを用いることが特に有利であることが判明した。この目的で、プリント回路基板は水平に又は垂直に又は他の向きに保持され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下の実施例は、本発明を更に説明するために用いられる。
【0057】
この目的で、プリント回路基板上の銅構造体を部分的に覆う様々な半田レジストマスクを備えたプリント回路基板は、表面トップ層を形成するために様々な析出方法を用いて処理された。次に、プリント回路基板は本発明の水溶液を用いて又は用いないで処理された。その後、プリント回路基板上に形成されたイオン性汚染物の量が、上記の規格化された試験に従って決定された。
【実施例1】
【0058】
4つの異なる半田レジストマスク(Taiyo PSR 4000 MH, Taiyo PSR 4000 MP, Taiyo 4000 AUS 5、 Taiyo 4000 GHP 3)を備えたプリント回路基板が、表1に係るスズ析出方法によって処理され、1μm厚みの浸漬スズの単層が付けられた。スズ析出浴は、メタンスルホン酸スズ(II)、メタンスルホン酸、及びチオ尿素を含んでいた。析出後、各プリント回路基板タイプのうち一つのボードが、本発明に従って処理され、かつ、もう一つのボードは本発明に従うことなく処理された(比較用)。
【0059】
本発明の水溶液は、1lの脱イオン水をベースとして以下の組成を有した。
1.5g/lのグアニジニウムカルボナート(純度98%)
14g/lのモノエタノールアミン(脱イオン水中、850ml/l)
1g/lのイソプロパノール
約pH10.5
【0060】
次に、基板上のイオン性汚染物の量が規格化された試験を用いて決定された。結果は表2に記載されている。
【0061】
結果は、本発明の処理方法を用いることによって、ある程度のイオン性汚染物を著しく減少することができたことを示している。イオン性汚染物の量は、MPに対して58%、AUS 5に対して87%減少された。
【実施例2】
【0062】
各々半田レジストマスクTaiyo PSR 4000 MPで覆われた二つのプリント回路基板が、表3に係る浸漬銀めっき用の垂直に実施する方法で処理され、1μm厚みの銀層が付けられた。銀めっき浴は、メタンスルホン酸銀及びメタンスルホン酸を含んだ。析出後、各プリント回路基板タイプのうち一つの基板は本発明に従って処理され、もう一つの基板は本発明に従わないで処理された(比較用)。
【0063】
次に、基板上のイオン性汚染物の量が規格化された試験を用いることによって決定された。結果は表4に記載されている。
【0064】
結果は、本発明の処理方法を用いることによって、ある程度のイオン性汚染物を著しく減少することができたことを示している。イオン性汚染物の量は、約63%減少された。
【0065】
上記実施例及び実施形態は例証目的のためのみであり、その見地における修正及び変更、並びに本明細書に記載の特徴の組み合わせは当業者に示唆され、かつ、記載の発明の精神及び視野内に及び添付の請求項の範囲に含まれているということが理解される。ここに引用された全ての出版物、特許及び特許明細書は引用文献に含まれる。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のa)、b)即ち、
a)エタノールアミン化合物及びその塩から構成される群から選択された、少なくとも一つの第一化合物、及び、
b)アルコール性溶媒から構成される群から選択された、少なくとも一つの第二化合物、
を含む、半田レジストマスク及び表面トップ層を有する加工部品の表面からイオン性汚染物を除去するための水溶液。
【請求項2】
水溶液は、グアニジン化合物及びその塩から構成される群から選択された、少なくとも一つの第三化合物を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の水溶液。
【請求項3】
少なくとも一つのエタノールアミン化合物が、モノエタノールアミンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水溶液。
【請求項4】
少なくとも一つのアルコール性溶媒が、2-プロパノール及びn-プロパノールから構成される群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水溶液。
【請求項5】
少なくとも一つのグアニジン化合物の塩が、グアニジニウムカルボナート、グアニジニウムホスフェート、又はグアニジニウムスルフェートから構成される群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水溶液。
【請求項6】
少なくとも一つの第一化合物の濃度が、約5〜約25g/lの範囲にあることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水溶液。
【請求項7】
少なくとも一つのアルコール性溶媒の濃度が、約0.5〜約5g/lの範囲にあることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水溶液。
【請求項8】
少なくとも一つの第三化合物の濃度が、約0.5〜約5g/lの範囲にあることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水溶液。
【請求項9】
水溶液のpHが約7よりも高いことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の水溶液。
【請求項10】
水溶液のpHが約11よりも高いことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の水溶液。
【請求項11】
垂直な、及び/または、水平なラインでの電気回路キャリヤの製造における、請求項1〜10のいずれか一項に係る水溶液の使用。
【請求項12】
電気回路キャリヤ上の電気接触の製造における、請求項1〜10のいずれか一項に係る水溶液の使用。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に係るイオン性汚染物を除去するための水溶液を用いて加工部品を処理することを含む、半田レジストマスク及び表面トップ層を有する加工部品の表面からイオン性汚染物を除去する方法。
【請求項14】
イオン性汚染物を除去するための水溶液が、約50℃〜約70℃の範囲の温度を有することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
加工部品が、約0.5分間〜約2分間の継続する時間、イオン性汚染物を除去するための水溶液で処理されることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
半田レジストマスクが、Taiyo PSR 4000 MH, Taiyo PSR 4000 MP, Taiyo 4000 AUS 5 又はTaiyo 4000 GHP 3タイプから成ることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
表面トップ層が、ビスマス、スズ、金、銀、パラジウム、ニッケル及びその合金から構成される群から選択された、一つの金属で作られることを特徴とする、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
表面トップ層が、無電解の方法、化学的方法、及び電気化学的方法から構成される群から選択された、一つの析出方法を用いて加工部品表面上に析出されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
表面トップ層が、半田付け可能な及び結合可能な表面トップ層の少なくとも一つであることを特徴とする、請求項13〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
上記方法は、水溶液による処理をされる前、及び/または後に、脱イオン水で少なくとも一回加工部品を洗浄することを更に含むことを特徴とする、請求項13〜19のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−506216(P2009−506216A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528389(P2008−528389)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008315
【国際公開番号】WO2007/025675
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(597075328)アトーテヒ ドイッチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (33)
【Fターム(参考)】