説明

加熱ユニット

【課題】 光透過性の被加熱物への遠赤外線の照射を防止し、近赤外線で被加熱物の表面裏面を均一に加熱することができる加熱ユニットを提供することにある。
【解決手段】 本発明の加熱ユニットは、白熱ランプ1から放射された近赤外線によって被加熱物Wを加熱する加熱ユニットにおいて、白熱ランプ1と被加熱物Wとの間に、石英ガラス製の光制御部材2が設けられており、光制御部材2は、内部に光制御部材2を冷却するための冷却体が流れる冷却体流路23が設けられていることを特徴とする。さらには、光制御部材2は、石英ガラス製の内側管21と石英ガラス製の外側管22とよりなる中空円筒状の2重管であって、内側管21と外側管22の間が冷却体が流れる冷却体流路23となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ペットボトル等の樹脂加熱、フラットパネル用ガラス基板の加熱など、光透過性部材の加熱に利用される加熱ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、炭酸飲料、果汁、ミネラルウォーター等の清涼飲料水の容器としてポリエチレンテレフタレート樹脂を加熱しブロー成形したペットボトルが知られている。
このようなポリエチレンテレフタレート樹脂の加熱には、加熱エネルギー制御のしやすさ、ポリエチレンテレフタレートが光透過性部材である観点から加熱源として白熱ランプが利用されている。
【0003】
ポリエチレンテレフタレート樹脂を加熱する際、ポリエチレンテレフタレート樹脂の白熱ランプ側の表面温度と反対側の裏面温度に著しい差が生じていると、ポリエチレンテレフタレート樹脂をブロー成形した際に偏肉が発生して、製品不良を起こすという問題があった。
【0004】
このような問題が起こる原因として、ポリエチレンテレフタレート樹脂を加熱する際、波長3000nm以上の遠赤外線で加熱するとポリエチレンテレフタレート樹脂の表面で遠赤外線が吸収され、裏面まで届かない現象が発生し、表面と裏面との間で大きな温度差が生じてしまうからである。
【0005】
このような問題を回避するために、予め白熱ランプから遠赤外線がほとんど放射されず、波長750〜3000nmの近赤外線が主に放射されるように、コイル径やコイル長、入力電力を規定した白熱ランプを用いて、ポリエチレンテレフタレート樹脂の表面と裏面との間で温度差が生じないように加熱していた。
これは、近赤外線は被加熱物の表面に吸収される割合が少なく、表面から裏面に渡り略均一に加熱できる特性を有しているからである。
【特許文献1】特開2001−210604号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、予め近赤外線を放射するように設計した白熱ランプであっても、フィラメントは連続スペクトルの光を放射するものであり、遠赤外線も若干放射するものであり、遠赤外線は白熱ランプを構成している石英ガラス製の発光管に常に吸収され、白熱ランプを連続点灯していると、発光管が500〜800℃程度の高温になる。
【0007】
そして、高温になった発光管からの2次輻射として遠赤外線が放射されることになり、予め主に近赤外線を放射するように設計した白熱ランプを用いてポリエチレンテレフタレート樹脂を加熱しても、結果的に、遠赤外線でも加熱することになり、ポリエチレンテレフタレート樹脂の表面と裏面との間で大きな温度差が生じてしまい、ポリエチレンテレフタレート樹脂をブロー成形した際に偏肉が発生して、製品不良を起こすという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、ポリエチレンテレフタレート樹脂のようなペットボトル用の樹脂や、フラットパネル用ガラス基板などの光透過性の被加熱物への遠赤外線の照射を防止し、近赤外線で被加熱物の表面裏面を均一に加熱することができる加熱ユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の加熱ユニットは、白熱ランプから放射された近赤外線によって被加熱物を加熱する加熱ユニットにおいて、前記白熱ランプと被加熱物との間に、石英ガラス製の光制御部材が設けられており、前記光制御部材は、内部に当該光制御部材を冷却するための冷却体が流れる冷却体流路が設けられていることを特徴とする加熱ユニット。
【0010】
請求項2に記載の加熱ユニットは、請求項1に記載の加熱ユニットであって、特に、前記白熱ランプは両端に封止部を有する管型白熱ランプであって、前記光制御部材は、石英ガラス製の内側管と石英ガラス製の外側管とよりなる中空円筒状の2重管であって、内側管と外側管の間が当該光制御部材を冷却するための冷却体が流れる冷却体流路となっており、前記白熱ランプは、前記光制御部材の内側管の内側に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の加熱ユニットは、請求項1に記載の加熱ユニットであって、特に、前記白熱ランプを取り囲むように反射鏡が設けられ、当該反射鏡の開口を覆うように石英ガラス製の光制御部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加熱ユニットによれば、白熱ランプと被加熱物との間に、石英ガラス製の光制御部材が配置され、この光制御部材は石英ガラス製であるために、石英ガラスの特性である、白熱ランプから放射された750〜3000nmの近赤外線の透過率が高く、3000nm以上の遠赤外線では透過率が減少し、逆に吸収率が増加するものであり、被加熱物に遠赤外線が照射されることを抑制することができる。
さらに、光制御部材が石英ガラスであるために、遠赤外線を吸収して加熱されても、光制御部材の冷却流路に冷却体が流れているので、光制御部材の温度上昇が抑制され、高温状態にならないので、光制御部材から被加熱物の加熱に影響を及ぼすような2次輻射の遠赤外線が放射されることない。
この結果、被加熱物を主に近赤外線で加熱し、被加熱物に遠赤外線がほとんど照射されないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の加熱ユニットを、図1、図2、図3を用いて説明する。
図1は、本発明の加熱ユニットに用いられる白熱ランプの説明図である。
図2は、本発明の加熱ユニットの一部断面図であり、図3は光制御部材の端部の拡大断面図であり、図4は、図2中のA−A断面図を示す。
図1に示すように、白熱ランプ1は、外径10mmの石英ガラス製のバルブ10の内部にフィラメント11が配置されており、両端に形成された封止部12に接着剤を用いてセラミック製のベース13が取り付けられている。
バルブ10内には、不活性ガスとハロゲン化物が封入されており、このヒータランプ1は定格200V、1000Wで点灯されるものである。
【0014】
光制御部材2は、同心円状に厚さ1mmの石英ガラス製の内側管21と厚さ1mmの石英ガラス製の外側管22を有する中空円筒状の2重管構造であり、図3に示すように、内側管21と外側管22の両端は溶着されて、内側管21と外側管22との間には1mmの間隙が形成され、後述する冷却体が流れる冷却流路23になっている。
【0015】
外側管22の両側には、内側管21と外側管22によって形成される冷却流路23に連通する冷却体流入管24と冷却体流出管25が形成されている。
【0016】
また、白熱ランプ1は、保持部材3によって、内側管21の内側の空間Sに配置されている。
この保持部材3は、バネ性を有する線径1mmのステンレス線により形成されており、光制御部材保持部31、段階的保持部32、白熱ランプ保持部33とより構成されており、光制御部材保持部31は、内径が光制御部材2の外管22の外径より若干大きくなるようにスプリング状に巻回されており、この光制御部材保持部31を外管22の端部に挿入して外管22を保持し、光制御部材保持部31に続いて段階的保持部32が形成され、この段階的保持部32に続いて白熱ランプ保持部33が形成され、この白熱ランプ保持部33は白熱ランプ1の封止部11に緊密に巻回されて、白熱ランプ1が保持部材3によって光制御部材3の内管21の内側に配置される。
【0017】
そして、冷却体流入管24内に冷却体が流れ込み、この流れ込んだ冷却体は冷却流路23を満たし、さらに、冷却体流出管25から外部に排出される構造により、光制御部材2を冷却するものである。
【0018】
冷却体は、近赤外線を良好に透過する物質である必要があり、水もしくは空気が好適である。また、遠赤外線を効果的に吸収する作用を有するものであればなお一層好適である。その他の冷却体としては、炭酸ガスや窒素を用いてもよい。
また、白熱ランプ1のバルブ10と内側管21との間には、一定の空間が必要である。
これは、バルブ10と内側管21が接触した場合、内側管21は冷却体によって冷却されているので、その冷却されている内側管21がバルブ10接触するとバルブ10が過度に冷却され、バルブ10の温度が低くなりすぎてバルブ10内でハロゲンサイクルが良好に働かず、短時間でバルブ10が黒化する問題が発生する。
【0019】
次に、図5を用いて、図1に示す加熱ユニットに組み込まれる白熱ランプの分光分布を説明する。
図5に示すように、白熱ランプは、1000nmにピーク波長を有し、3000nm以上の遠赤外線も放射するものであるが、近赤外線領域である750〜3000nmの放射強度が高く、主に近赤外線を放射するランプである。
【0020】
図6は、図2に示す石英ガラス製の光制御部材2に利用される石英ガラスの透過率を示すデータである。
このデータから理解されるように、石英ガラスは、波長750〜3000nmの近赤外線領域を90%以上透過するものあり、3000nm以上の遠赤外線領域では透過率が減少し、逆に吸収率が増加するものである。
【0021】
つまり、白熱ランプ1は石英ガラス製の光制御部材2によって覆われており、白熱ランプ1から放射された750〜3000nmの近赤外線は、光制御部材2を透過して被加熱物に照射される。
一方、白熱ランプ1から放射された3000nm以上の遠赤外線は、光制御部材で吸収される割合が高く、被加熱物に照射されることを抑制するようになっている。
【0022】
また、白熱ランプ1の点灯中に、光制御部材2に遠赤外線が吸収され、光制御部材2を加熱することになるが、光制御部材2は、冷却流路23に冷却体が流れているので、光制御部材2の温度上昇が抑制され、高温状態にならないので、光制御部材2から被加熱物の加熱に影響を及ぼすような2次輻射の遠赤外線が放射されることない。
【0023】
この結果、光透過部材2が白熱ランプ1と被処理物Wとの間に配置されることになり、光制御部材2は、近赤外線の透過率が高く、さらに、被加熱物の加熱に影響を及ぼすような2次輻射による遠赤外線が放射されないように冷却されているので、ポリエチレンテレフタレート樹脂のようなペットボトル用の樹脂や、フラットパネル用ガラス基板などの光透過性の被加熱物Wを加熱する際、可視光を含むが主に近赤外線が被加熱物Wに照射され、被加熱物Wを表面から裏面に渡り近赤外線で略均一に加熱することができるものである。
【0024】
図7は、本願発明の加熱ユニットの他の実施例を示す説明図であり、白熱ランプの管軸に直交する方向の断面図である。
白熱ランプ1は図1に示す白熱ランプと同様であって、両端に封止部を有する管型の白熱ランプであり、この白熱ランプ1を取り囲むように、樋状の反射鏡4が設けられている。
そして、反射鏡4の開口40の縁には、石英ガラス製の光制御部材2が嵌め込まれる溝41が形成され、この溝41に光制御部材2が嵌め込まれて、反射鏡40の開口を覆うようになっている。
【0025】
光制御部材2は、厚さ1mmの石英ガラス製の内側板2aと厚さ1mmの石英ガラス製の外側板2bが、隙間1mmとなるように、内側板2aと外側板2b同士を、その周辺部で溶着して形成されたものであり、この隙間が冷却体が流れる冷却流路23となっている。
この光制御部材2も石英ガラスであるので図6に示すデータと同じ透過率特性を有するものであり、波長760〜3000nmの近赤外線領域を90%以上透過するものあり、3000nm以上の遠赤外線領域では透過率が減少し、逆に吸収率が増加するものである。
【0026】
なお、図面上では、この冷却流路23に連通する冷却体流入管と冷却体流出管は省略している。
また、冷却流路23に流れる冷却体は、上述した冷却体と同様に、代表的なものとして水や空気であり、光制御部材2は、冷却体流入管内に冷却体が流れ込み、この流れ込んだ冷却体は冷却流路23を満たし、さらに、冷却体流出管から外部に排出される構造により、光制御部材2を冷却するものである。
【0027】
この結果、白熱ランプ1と被加熱物Wとの間に、石英ガラス製の光制御部材2が配置された構造になっており、白熱ランプ1から放射された760〜3000nmの近赤外線は、光制御部材2を透過して被加熱物Wに照射され、3000nm以上の遠赤外線は、光制御部材で吸収される割合が高く、被加熱物に照射されることを抑制するようになっている。
【0028】
さらに、白熱ランプ1の点灯中に、光制御部材2に遠赤外線が吸収され、光制御部材2を加熱することになるが、光制御部材2は、冷却体によって温度が上昇することが抑制され、高温状態にならないので、光制御部材2から被加熱物を加熱する程度の2次輻射の遠赤外線が放射されることない。
【0029】
この結果、光制御部材2は、近赤外線の透過率が高く、さらに、2次輻射による遠赤外線が放射されないように冷却されているので、図2の加熱ユニットと同様に、被加熱物Wを表面から裏面に渡り近赤外線で略均一に加熱することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の加熱ユニットに組み込まれる白熱ランプの説明図である。
【図2】本発明の加熱ユニットの一部断面説明図である。
【図3】光制御部材の端部の拡大断面図である。
【図4】図1中A−A断面図である。
【図5】本発明の加熱ユニットに用いられる白熱ランプの分光分布データ説明図である。
【図6】本発明の加熱ユニットに用いられる光制御部材の透過率データ説明図である。
【図7】本発明の他の加熱ユニットの断面説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 白熱ランプ
10 バルブ
11 フィラメント
12 封止部
13 ベース
2 光制御部材
21 内側管
22 外側管
23 冷却体流路
3 保持部材
4 反射鏡
W 被加熱物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白熱ランプから放射された近赤外線によって被加熱物を加熱する加熱ユニットにおいて、
前記白熱ランプと被加熱物との間に、石英ガラス製の光制御部材が設けられており、
前記光制御部材は、内部に当該光制御部材を冷却するための冷却体が流れる冷却体流路が設けられていることを特徴とする加熱ユニット。
【請求項2】
前記白熱ランプは両端に封止部を有する管型白熱ランプであって、
前記光制御部材は、石英ガラス製の内側管と石英ガラス製の外側管とよりなる中空円筒状の2重管であって、内側管と外側管の間が当該光制御部材を冷却するための冷却体が流れる冷却体流路となっており、
前記白熱ランプは、前記光制御部材の内側管の内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱ユニット。
【請求項3】
前記白熱ランプを取り囲むように反射鏡が設けられ、
当該反射鏡の開口を覆うように石英ガラス製の光制御部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加熱ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−108010(P2006−108010A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295667(P2004−295667)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】